説明

インクジェットインク及びそれを用いた記録方法

【課題】 本発明の目的は、印画時の出射安定性に優れ、様々な記録媒体上に形成した文字、画像の耐擦過性、画像平滑性が改良されるインクジェットインク及びそれを用いた記録方法を提供することにある。
【解決手段】 少なくとも顔料、水及び高分子微粒子を含有するインクジェットインクにおいて、粘度抑制物質を含有することを特徴とするインクジェットインク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印画時の出射安定性に優れ、形成した文字、画像の耐擦過性、画像平滑性が改良された印刷物が得られるインクジェットインク及びそれを用いた記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録方式は簡便かつ安価に画像形成ができるため、写真画像分野、各種印刷分野、マーキング、カラーフィルター等の特殊印刷分野などの様々な印刷、印画分野に広く応用されてきている。特に、微細なドットを出射、制御できるインクジェット記録装置や、色再現域、耐久性、出射適性等が改善されたインク及びインクの吸収性、色材の発色性、表面光沢などを飛躍的に向上させたインクジェット専用紙が開発されて、銀塩写真に匹敵する画質が得られるまでになってきている。
【0003】
しかしながら、インクジェット専用紙を必要とするインクジェット画像記録システムでは、用いることのできる記録媒体が制限されること、使用する記録媒体のコストが相対的に高い等の問題を抱えている。一方、オフィス環境において、記録媒体(例えば、普通紙、コート紙、アート紙、普通紙両面印刷等)の制約を受けずに、様々な記録媒体上に高速でフルカラー印字が行える新たなシステムに対する要望が益々高まりつつある。
【0004】
上記要望に対し、インクジェットインクの構成として、様々な記録媒体に対応可能で、高速印字ができ、文字再現性、画質に優れ、形成した画像の保存性、特に、擦り傷等に対する耐擦過性に優れたインクジェットインクの開発が求められてきている。
【0005】
上記課題を解決するための様々な方法が提案されており、その一つの方法としてはソルベント系インクであって、揮発性溶媒を含有して乾燥性を高めた油性インク(ソルベント系インクジェットインク)を用いることで、記録媒体への浸透が速く、かつ乾燥時間が短いため、定着性に優れた印刷物を得ることができる。しかしながら、溶媒として酢酸エチル、メチルエチルケトンなどの臭気があり、人体に影響のある揮発溶媒を多量に用いており、オフィス環境対応等がより求められている現状では、適用することが難しい状況にある。
【0006】
また、その他の方法としては、ホットメルトタイプのインクが挙げられる。このホットメルトタイプのインクは、室温では固体状態となり、加熱すると融解して低粘度化するワックスを主素材に用いるもので、インクジェット記録ヘッドで温めて融かしたインクを出射し、記録紙上に着弾した後、冷却、固体して、印刷画像を形成するものである。このホットメルトタイプのインクでは、揮発溶媒を使用していない等のメリットはあるが、主成分としてワックスを用いるため、形成した画像表面を擦った際に擦り傷等が発生し易く、耐擦過性に課題を抱えており、恒久的な印刷物には適用することが難しい。また、インク成分としてワックス等の固形分比率が高いため、形成した文字、画像等が記録媒体上で盛り上がってしまう欠点があった。
【0007】
また、その他の方法としては、紫外線硬化型インクジェットインクが知られている。この紫外線硬化型インクジェットインクは、紫外線により硬化可能なモノマーと紫外線硬化開始剤とを主成分にするインクで、記録媒体に印刷した後、着弾したインク液滴に紫外線を照射して硬化させる方法である。この硬化により、擦り傷等に対する耐擦過性が向上し、更に揮発性の溶媒を必要としないというようなメリットはあるが、使用する紫外線硬化可能なモノマーの多くは、皮膚刺激や感作性があり、インク自体の安全性に課題を抱えていること、あるいはインク成分中の固形分比率が高いため、形成した文字、画像等が記録媒体上で盛り上がってしまう欠点があった。
【0008】
更にその他の方法として、高分子微粒子を含有したラテックスインクが数多く開示、提案されている(例えば、特許文献1〜4参照。)。このラテックスインクでは、水を主成分にしたインク中に高分子微粒子を加えることにより、環境適性、耐擦過性に優れ、様々な記録媒体に対し印画した際、形成した文字や画像が記録媒体上で盛り上がらない印刷物が得られるとされている。しかしながら、このようなラテックスインクでは、低湿環境下に代表されるインクが非常に乾燥しやすい環境で連続印画、あるいは間欠印画を行うと、インクの乾燥に伴うインク粘度の上昇により、記録ヘッドからの出射不良を引き起こし、安定した出射を行うことができないという課題を抱えており、インクジェット印刷に適用する際の大きな障害となっていた。
【特許文献1】特開平9−87560号公報
【特許文献2】特開平9−176533号公報
【特許文献3】特開平10−60353号公報
【特許文献4】特開2000−85238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、印画時の出射安定性に優れ、様々な記録媒体上に形成した文字、画像の耐擦過性、画像平滑性が改良されるインクジェットインク及びそれを用いた記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0011】
(請求項1)
少なくとも顔料、水及び高分子微粒子を含有するインクジェットインクにおいて、粘度抑制物質を含有することを特徴とするインクジェットインク。
【0012】
(請求項2)
前記粘度抑制物質が両親媒性物質であって、該両親媒性物質がN−置換アクリルアミド化合物またはビニルエーテル化合物であることを特徴とする請求項1記載のインクジェットインク。
【0013】
(請求項3)
前記高分子微粒子の平均粒径が、10〜300nmであることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェットインク。
【0014】
(請求項4)
前記粘度抑制物質の平均粒径が、10〜300nmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【0015】
(請求項5)
25℃におけるインク粘度が、10mPa・s以上、300mPa・s以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【0016】
(請求項6)
前記高分子微粒子の含有量が、5〜30質量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【0017】
(請求項7)
前記粘度抑制物質が両親媒性高分子化合物であって、かつコアシェル構造を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【0018】
(請求項8)
請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェットインクを、インクジェット記録ヘッドより吐出して画像記録することを特徴とする記録方法。
【0019】
(請求項9)
前記インクジェット記録ヘッドより吐出する前記インクジェットインクの吐出量が、1液滴あたり0.1〜2.0plであることを特徴とする請求項8に記載の記録方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、印画時の出射安定性に優れ、様々な記録媒体上に形成した文字、画像の耐擦過性、画像平滑性が改良されるインクジェットインク及びそれを用いた記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0022】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、少なくとも顔料、水及び高分子微粒子を含有するインクジェットインクにおいて、粘度抑制物質を含有することを特徴とするインクジェットインクにより、印画時の環境条件、特に低湿環境下でのインク濃縮に伴う粘度上昇を効果的に抑制できたことにより様々な印画環境下での出射安定性が飛躍的に向上し、加えて、様々な記録媒体上に形成した文字、画像の耐擦過性、画像平滑性が改良されるインクジェットインクを実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0023】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0024】
本発明のインクジェットインクは、少なくとも顔料、水及び高分子微粒子と共に、粘度抑制剤を含有することを特徴とする。
【0025】
本発明に係る粘度抑制剤とは、水可溶性の物質である場合には0.1質量%水溶液とし、また、水不溶性の物質である場合には、固形分が0.1質量%水分散物を調製し、この0.1質量%水溶液または0.1質量%水分散物から水分を除きながら濃縮を行い、濃度が20質量%となるまで濃縮する過程でそれぞれの25℃における粘度(mPa・s)を測定し、縦軸が粘度(V)、横軸が溶液あるいは分散液中の濃度(D)をプロットし、粘度(V)−濃度(D)曲線を作成し、その濃縮過程で微小領域における濃度変化(dD)に対する粘度変化巾(dV)、すなわちdV/dD=tanθが、負となる領域を経る特性を少なくとも1つ有する物質(化合物)をいう。具体的には、濃度として0.2質量%変化させる毎にそれぞれの粘度を測定して、粘度(V)−濃度(D)曲線を作成する。
【0026】
図1は、本発明に係る粘度抑制剤の粘度(V)−濃度(D)曲線の一例を示すグラフである。
【0027】
図1は、濃度(D)として0.1質量%から20質量%まで濃縮した際のそれぞれの粘度(V)をプロットして作成したグラフであり、低濃度域では濃度の増加に伴い粘度も比例して増加し、dV/dD(tanθ)が+領域領域となる。次いで、例えば、濃度がh番目の点で濃度変化に対する粘度変化が「0」となる領域、すなわちdV/dD(tanθ)=0となる領域に到達する。この点が粘度極大値(Vmax)となる。更に、水溶液あるいは水分散液の濃縮を続けると、tanθが−となる領域になり、次いで濃度k番目で濃度変化に対する粘度変化が「0」となる領域、すなわちdV/dD(tanθ)=0となる領域に到達する。この点が粘度極小値(Vmmin)となり、再び濃度の増加に伴い粘度も比例して増加するtanθが+となる領域に移行する。
【0028】
図1においては、0.1〜20質量%の濃縮過程で粘度極大値(Vmax)が1カ所、粘度極小値(Vmmin)が1カ所出現するパターンについて説明したが、本発明に係る粘度抑制剤としては、dV/dD=tanθが、負となる領域を経る特性を少なくとも1つ有する物質であればよく、例えば、粘度極大値(Vmax)が2以上存在する特性を有する物質であっても、あるいは粘度極小値(Vmmin)が0.1〜20質量%の濃縮範囲では存在しない化合物であっても良い。
【0029】
本発明に係る粘度抑制剤は、具体的には両親媒性物質であって、可逆的に親水性と疎水性が変化する物質の一部で、水の多い環境では、物質と水が水素結合で結ばれているが、疎水性になると、物質同士が水素結合で結ばれ、粘度が低下する素材である。
【0030】
このような両親媒性物質としては、ポリN−置換型アクリルアミド、例えば、ポリイソプロピルアクリルアミド、疎水化プルラン、変性ポリエチレンオキシド、特開2002−146256号公報に記載の両親媒性星形ポリマー、特開平11−322866号、特開平11−322942号、特開2000−319473号、特開2001−19770号等の各公報に記載されているポリ変性ビニル、またはポリ変性ビニルエーテル化合物等から選ばれる化合物であり、その形態は直鎖状のポリマーであっても、高分子核を有する星形ポリマーエマルジョン状であってもいずれでも良い。
【0031】
その中でも、特に単量体としてはN−置換アクリルアミド化合物またはビニルエーテル化合物であることが好ましい。具体的化合物としては、例えば、N置換(メタ)アクリルアミド誘導体、ビニルメチルエーテル誘導体等が挙げられる。その中でも、本発明の効果を得るために好ましい単量体は、N置換(メタ)アクリルアミド誘導体であり、N−エチルメタアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタアクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N−シクロプロピルメタアクリルアミド、N,N−ジエチルメタアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミドが特に好ましい。
【0032】
本発明においては、さらに好ましくは、両親媒性物質がコアシェル構造を有することが好ましく、例えば、特開平7−331224号、特開2003−40916号等の各公報に記載の(メタ)アクリル系重合体からなる芯部とN−アルキルアクリルアミド重合体よりなる外殻部を有するコアシェル構造の重合体微粒子等が挙げられる。
【0033】
本発明に係る粘度抑制物質の平均粒径は、10〜300nmであることが好ましい。平均粒径が10nm以上であれば、インクの乾燥による粘度増加が抑制でき、また500nm以下であれば、記録ヘッドからの出射の際の目詰まりを起こすことなく安定した出射を達成することができ好ましい。粘度抑制物質の平均粒径は、光散乱法、電気泳動法、レーザードップラー法を用いた市販の粒径測定機器により求めることができる。
【0034】
また、本発明のインクジェットインクにおいて、本発明に係る粘度抑制剤の含有量としては、0.2質量%以上、30質量%以下とすることが、本発明の目的効果をより一層発揮できる観点から好ましい。
【0035】
次いで、本発明に係る高分子微粒子について説明する。
【0036】
本発明で用いることのできる高分子微粒子として、特に制限はないが、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル共重合体、ポリウレタン、シリコン−アクリル共重合体およびアクリル変性フッ素樹脂等のラテックスが挙げられる。ラテックスは、乳化剤を用いてポリマー粒子を分散させたものであっても、また乳化剤を用いないで分散させたものであってもよい。乳化剤としては界面活性剤が多く用いられるが、スルホン酸基、カルボン酸基等の水に可溶な基を有するポリマー(例えば、可溶化基がグラフト結合しているポリマー、可溶化基を持つ単量体と不溶性の部分を持つ単量体とから得られるポリマー)を用いることも好ましい。
【0037】
また、本発明のインクジェットインクでは、ソープフリーラテックスを用いることが特に好ましい。ソープフリーラテックスとは、乳化剤を使用していないラテックス、およびスルホン酸基、カルボン酸基等の水に可溶な基を有するポリマー(例えば、可溶化基がグラフト結合しているポリマー、可溶化基を持つ単量体と不溶性の部分を持つ単量体とから得られるポリマー)を乳化剤として用いたラテックスのことを指す。
【0038】
近年、ラテックスのポリマー粒子として、粒子全体が均一であるポリマー粒子を分散したラテックス以外に、粒子の中心部と外縁部で組成を異にしたコア・シェルタイプのポリマー粒子を分散したラテックスも存在するが、このタイプのラテックスも好ましく用いることができる。
【0039】
本発明のインクジェットインクにおいて、高分子微粒子の平均粒径は10nm以上、300nm以下が好ましく、インク安定性、吐出安定性の観点からさらに好ましくは、10nm以上、200nm以下である。高分子微粒子の平均粒径が300nm以下であれば、形成した画像の良好な光沢感を得ることができ、また10nm以上であれば、良好な耐水性、耐擦過性を得ることができる。高分子微粒子の平均粒径は、光散乱法、電気泳動法、レーザードップラー法等を用いた市販の粒径測定機器により求めることができる。
【0040】
また、本発明のインクジェットインクにおいて、本発明に係る高分子微粒子の含有量としては、5質量%以上、30質量%以下とすることが、本発明の目的効果をより一層発揮できる観点から好ましい。本発明に係る高分子微粒子の含有量が5質量%以上であれば充分な耐擦過性を得ることができ、また30質量%以下であれば、インク粘度が適度な範囲となり安定したインク出射性を得ることができる。
【0041】
本発明に係る高分子微粒子は、ガラス転移点が−20℃以上、80℃以下であることが好ましく、更に好ましくは−10℃以上、60℃以下である。ガラス転移点が低すぎるほど耐擦過性は向上するが、逆に画像同士を重ねて放置すると、接着が起こり、画像部の剥がれが生じてしまう。また、ガラス転移点が高すぎると、擦過性が劣ってしまうためである。
【0042】
本発明に係る高分子微粒子は、記録媒体上へ吐出された後、乾燥、浸透により系外へ水及び有機溶媒がある程度除外された後、成膜し、顔料を定着する効果を示す。
【0043】
次いで、顔料について説明する。
【0044】
本発明に使用できる顔料としては、従来公知の有機及び無機顔料が使用できる。例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料や、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサンジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロニ顔料等の多環式顔料や、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキや、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料、カーボンブラック等の無機顔料が挙げられる。
【0045】
具体的な有機顔料を以下に例示する。
【0046】
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0047】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
【0048】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0049】
顔料の分散方法としては、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の各種分散機を用いることができる。また、顔料分散体の粗粒分を除去する目的で、遠心分離装置を使用すること、フィルターを使用することも好ましい。
【0050】
本発明に係るインクにおいては、顔料表面にスルホン酸、カルボン酸等の極性基をペンダントした自己分散顔料、あるいは高分子分散剤を用いて分散した顔料が好ましい。
【0051】
本発明に係る高分子分散剤としては、特に制限はなく、水溶性樹脂または非水溶性樹脂が用いられる。これらの高分子としては、例えば、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、メタクリル酸、メタクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体から選ばれた単一の単量体からなる重合体、あるいは2種以上の単量体からなる共重合体およびこれらの塩を挙げることができる。またポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、ゼラチン、ポリエチレングリコールなどの水溶性高分子も用いることができる。
【0052】
これら水溶性樹脂のインク全量に対する含有量としては、0.1〜10質量%が好ましく、更に好ましくは、0.3〜5質量%である。また、これらの水溶性樹脂は二種以上併用することも可能である。
【0053】
本発明のインクジェットインクに用いる顔料の含有量は、インク全質量に対して、0.3〜20質量%であることが好ましく、更に好ましくは、2.0〜15質量%である。
【0054】
本発明のインクジェットインクにおいては、溶媒として少なくとも水を含有するが、更に水性液媒体を用いることができる。
【0055】
好ましく用いられる水溶性有機溶剤としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド)等が挙げられる
本発明インクジェットインクにおいては、インクの表面張力の調整あるいは顔料の分散安定性向上の観点から各種界面活性剤を用いることができる。
【0056】
本発明で用いることのできる界面活性剤としては、特に制限はないが、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。特にアニオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0057】
また、本発明においては、高分子界面活性剤も用いることができ、例えば、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体等を挙げることができる。
【0058】
本発明のインクジェットインクでは、上記説明した以外に、必要に応じて、出射安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、公知の各種添加剤、例えば、粘度調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を適宜選択して用いることができ、例えば、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等の油滴微粒子、特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号および特開平4−219266号等に記載されている蛍光増白剤等を挙げることができる。
【0059】
上記のような構成からなる本発明のインクジェットインクは、25℃におけるインク粘度が10mPa・s以上、300mPa・s以下であることが好ましく、更に好ましくは10mPa・s以上、200mPa・s以下である。インク粘度を10mPa・s以上とすることにより、画像記録時の好ましいインク流動性が得られ、高い画像鮮鋭性を実現することができる。また、300mPa・s以下とすることにより、適度なインク粘度が得られ、記録ヘッドからの安定した出射を行うことができる。
【0060】
次いで、本発明の記録方法について説明する。
【0061】
本発明のインクジェットインクを用いた記録方法においては、例えば、インクジェットインクを装填したプリンター等により、デジタル信号に基づきインクジェットヘッドよりインクを液滴として吐出させ、記録媒体に付着させることでインクジェット記録画像が形成される。
【0062】
本発明のインクジェットインクを用いた記録方法で用いることのできるインクジェット記録ヘッドとしては、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。また、インク吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)等など、何れの吐出方式を用いても構わない。
【0063】
本発明の記録方法においては、上記インクジェット記録ヘッドより吐出するインクジェットインクの吐出量を、1液滴あたり0.1〜2.0plとすることが、本発明の目的効果をいかんなく発揮できる観点から好ましい。
【0064】
本発明のインクジェットインクを用いた記録方法で用いることのできる記録媒体としては、例えば、普通紙、コート紙、キャストコート紙、光沢紙、光沢フィルム、OHPフィルム、インクジェット専用紙等が広く用いることができるが、その中でも吸収性支持体である普通紙、コート紙、キャストコート紙、光沢紙等を用いたインクジェット画像記録で、効果を発揮させることができる。
【0065】
紙には、塗工紙、非塗工紙があり、塗工紙としては、1m2あたりの塗工量が片面20g前後のアート紙、1m2あたりの塗工量が片面10g前後のコート紙、1m2あたりの塗工量が片面5g前後の軽量コート紙、微塗工紙、マット調仕上げのマットコート紙、ダル調仕上げのダルコート紙、新聞用紙などを挙げることが出来る。非塗工紙としては、化学パルプ100%使用の印刷用紙A、化学パルプ70%以上使用の印刷用紙B、化学パルプ40%以上70%未満使用の印刷用紙C、化学パルプ40%未満使用の印刷用紙D、機械パルプを含有しカレンダー処理を行ったグラビア用紙などを挙げることが出来る。更に詳しくは、『最新紙加工便覧』紙加工便覧編集委員会編、テックタイムス発行、『印刷工学便覧』日本印刷学会編、などに詳細に記載されている。
【0066】
普通紙とは、非塗工用紙、特殊印刷用紙及び情報用紙の一部に属す、80〜200μmの非コート紙が用いられる。本発明で用いられる普通紙としては、例えば、上級印刷紙、中級印刷紙、下級印刷紙、薄様印刷紙、微塗工印刷用紙、色上質紙等特殊印刷用紙、フォーム用紙、PPC用紙、その他情報用紙等があり、具体的には下記する用紙及びこれらを用いた各種の変性/加工用紙があるが、本発明は特にこれらに限定されるものではない。上質紙及び色上質紙、再生紙、複写用紙・色もの、OCR用紙、ノーカーボン紙・色もの、ユポ60、80、110ミクロン、ユポコート70、90ミクロン等の合成紙、その他片面アート紙68kg、コート紙90kg、フォームマット紙70、90、110kg、発泡PET38ミクロン、みつおりくん(以上、小林記録紙)、OK上質紙、ニューOK上質紙、サンフラワー、フェニックス、OKロイヤルホワイト、輸出上質紙(NPP、NCP、NWP、ロイヤルホワイト)OK書籍用紙、OKクリーム書籍用紙、クリーム上質紙、OK地図用紙、OKいしかり、きゅうれい、OKフォーム、OKH、NIP−N(以上、新王子製紙)、金王、東光、輸出上質紙、特需上質紙、書籍用紙、書籍用紙L、淡クリーム書籍用紙、小理教科書用紙、連続伝票用紙、上質NIP用紙、銀環、金陽、金陽(W)、ブリッジ、キャピタル、銀環書籍、ハープ、ハープクリーム、SKカラー、証券用紙、オペラクリーム、オペラ、KYPカルテ、シルビアHN、エクセレントフォーム、NPIフォームDX(以上、日本製紙)、パール、金菱、ウスクリーム上質紙、特製書籍用紙、スーパー書籍用紙、書籍用紙、ダイヤフォーム、インクジェットフォーム(以上、三菱製紙)、金毯V、金毯SW、白象、高級出版用紙、クリーム金毯、クリーム白象、証券・金券用紙、書籍用紙、地図用紙、複写用紙、HNF(以上、北越製紙)しおらい、電話帳表紙、書籍用紙、クリームしおらい、クリームしおらい中ラフ、クリームしおらい大ラフ、DSK(以上、大昭和製紙)、せんだいMP上質紙、錦江、雷鳥上質、掛紙、色紙原紙、辞典用紙、クリーム書籍、白色書籍、クリーム上質紙、地図用紙、連続伝票用紙(以上、中越パルプ)、OP金桜(チューエツ)、金砂、参考書用紙、交換証用紙(白)、フォーム印刷用紙、KRF、白フォーム、カラーフォーム、(K)NIP、ファインPPC、紀州インクジェット用紙(以上、紀州製紙製)、たいおう、ブライトフォーム、カント、カントホワイト、ダンテ、CM用紙、ダンテコミック、ハイネ、文庫本用紙、ハイネS、ニューAD用紙、ユトリロエクセル、エクセルスーパーA、カントエクセル、エクセルスーパーB、ダンテエクセル、ハイネエクセル、エクセルスーパーC、エクセルスーパーD、ADエクセル、エクセルスーパーE、ニューブライトフォーム、ニューブライトNIP(以上、大王製紙製)、日輪、月輪、雲嶺、銀河、白雲、ワイス、月輪エース、白雲エース、雲岑エース(以上、日本紙業製)、たいおう、ブライトフォーム、ブライトニップ(以上、名古屋パルプ)、牡丹A、金鳩、特牡丹、白牡丹A、白牡丹C、銀鳩、スーパー白牡丹A、淡クリーム白牡丹、特中質紙、白鳩、スーパー中質紙、青鳩、赤鳩、金鳩Mスノービジョン、スノービジョン、金鳩スノービジョン、白鳩M、スーパーDX、はまなすO、赤鳩M、HKスーパー印刷紙(以上、本州製紙製)、スターリンデン(A・AW)、スターエルム、スターメイプル、スターローレル、スターポプラ、MOP、スターチェリーI、チェリーIスーパー、チェリーIIスーパー、スターチェリーIII、スターチェリーIV、チェリーIIIスーパー、チェリーIVスーパー(以上、丸住製紙製)、SHF(以上、東洋パルプ製)、TRP(以上、東海パルプ製)等が挙げられる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記実施例において、「%」、「部」は、特に断りのない限り、それぞれ「質量%」、「質量部」を表す。
【0068】
実施例1
《粘度抑制物質の調製》
(粘度抑制物質1の調製)
スチレン14部、ブチルアクリレート6部、2−ヒドロエチルアクリレート10部、エチレングリコールジメタクリレート0.5部を混合して、モノマー液1を用意した。
【0069】
四つ口フラスコに、ドデシル硫酸塩0.2部及びイオン交換水180部を添加し、溶解した後、窒素置換した。この中に、モノマー液1を5部を加え、攪拌しながら60℃に昇温した。昇温後、2%の過硫酸アンモニウム水溶液を3部滴下し、更に80℃に昇温し、残りのモノマー液1(25.5部)と2%過硫酸アンモニウム水溶液の40部とを3時間かけて滴下して、2時間熟成して、コア部を調製した。
【0070】
上記反応液を80℃に保ったまま、N−イソプロピルアクリルアミドの100部とイオン交換水1000部との混合液と、0.2%過硫酸アンモニウムの240部とを2時間かけて滴下して、4時間熟成した後、遠心分離して粗大粒子を取り除いて、平均粒径が148nmのコアシェル構造からなる粘度抑制物質1を含む水分散液を調製した。なお、平均粒径は、マルバーン社製ゼータサイザー1000HSを用いて測定した。
【0071】
この粘度抑制物質1の0.1%水分散液を調製し、20%まで濃縮して25℃におけるそれぞれの粘度を測定して、粘度(V)−濃度(D)曲線を作成した。その結果、0.1%から濃縮するに従い粘度が上昇し、2.0%の時点で粘度極大値(Vmax)を示し、それ以降2.2〜5.0%の領域でdV/dDがマイナスとなり、5.2%の時点で粘度極小値(Vmin)を示し、5.4%以降は再び粘度が上昇した。
【0072】
(粘度抑制物質2の調製)
上記粘度抑制物質1の調製において、ドデシル硫酸塩0.2部に代えて、C1225O(CH2CH2O)9Hを0.2部用いた以外は同様にして、平均粒径が330nmのコアシェル構造からなる粘度抑制物質2を含む水分散物を得た。
【0073】
この粘度抑制物質2の0.1%水分散液を調製し、20%まで濃縮して25℃におけるそれぞれの粘度を測定して、粘度(V)−濃度(D)曲線を作成した。その結果、0.1%から濃縮するに従い粘度が上昇し、1.8%の時点で粘度極大値(Vmax)を示し、それ以降2.0〜4.8%の領域でdV/dDがマイナスとなり、5.0%の時点で粘度極小値(Vmin)を示し、5.2%以降は再び粘度が上昇した。
【0074】
(粘度抑制物質3の調製)
上記粘度抑制物質1の調製において、N−イソプロピルアクリルアミドに代えて、N−エチルアクリルアミドを用いた以外は同様にして、平均粒径が118nmのコアシェル構造からなる粘度抑制物質3を含む水分散物を得た。
【0075】
この粘度抑制物質3の0.1%水分散液を調製し、20%まで濃縮して25℃におけるそれぞれの粘度を測定して、粘度(V)−濃度(D)曲線を作成した。その結果、0.1%から濃縮するに従い粘度が上昇し、2.8%の時点で粘度極大値(Vmax)を示し、それ以降3.0〜7.0%の領域でdV/dDがマイナスとなり、7.2%の時点で粘度極小値(Vmin)を示し、7.4%以降は再び粘度が上昇した。
【0076】
(粘度抑制物質4の調製)
上記粘度抑制物質1の調製において、N−イソプロピルアクリルアミドに代えて、N−アクリロイルピペリジンを用いた以外は同様にして、平均粒径が125nmのコアシェル構造からなる粘度抑制物質4を含む水分散物を得た。
【0077】
この粘度抑制物質4の0.1%水分散液を調製し、20%まで濃縮して25℃におけるそれぞれの粘度を測定して、粘度(V)−濃度(D)曲線を作成した。その結果、0.1%から濃縮するに従い粘度が上昇し、2.0%の時点で粘度極大値(Vmax)を示し、それ以降2.2〜5.0%の領域でdV/dDがマイナスとなり、5.2%の時点で粘度極小値(Vmin)を示し、5.4%以降は再び粘度が上昇した。
【0078】
(粘度抑制物質5の調製)
上記粘度抑制物質1の調製において、N−イソプロピルアクリルアミドに代えて、2−エトキシエチルビニルエーテルを用いた以外は同様にして、平均粒径が223nmのコアシェル構造からなる粘度抑制物質5を含む水分散物を得た。
【0079】
この粘度抑制物質5の0.1%水分散液を調製し、20%まで濃縮して25℃におけるそれぞれの粘度を測定して、粘度(V)−濃度(D)曲線を作成した。その結果、0.1%から濃縮するに従い粘度が上昇し、2.8%の時点で粘度極大値(Vmax)を示し、それ以降3.0〜5.0%の領域でdV/dDがマイナスとなり、5.2%の時点で粘度極小値(Vmin)を示し、5.4%以降は再び粘度が上昇した。
【0080】
(粘度抑制物質6の調製)
スチレン14部、n−ブチルアクリレート6部、2−ヒドロキシエチルアクリレート10部、エチレングリコールジメタクリレート0.5部、N−イソプロピルアクリルアミド100部を混合し、モノマー液2を用意した。
【0081】
四つ口フラスコにドデシル硫酸塩0.2とイオン交換水1180部とを加えて溶解した後、窒素置換した。この中に、モノマー液2の5部を加え、攪拌しながら60℃に昇温した。昇温後、2%過硫酸アンモニウム水溶液の43部を滴下し、更に80℃に昇温し、残りのモノマー液2と2%過硫酸アンモニウム水溶液の40部を4時間かけて滴下して、2時間熟成して、平均粒径が174nmの粘度抑制物質6を含む水分散物を得た。
【0082】
この粘度抑制物質6の0.1%水分散液を調製し、20%まで濃縮して25℃におけるそれぞれの粘度を測定して、粘度(V)−濃度(D)曲線を作成した。その結果、0.1%から濃縮するに従い粘度が上昇し、1.8%の時点で粘度極大値(Vmax)を示し、それ以降2.0〜5.0%の領域でdV/dDがマイナスとなり、5.2%の時点で粘度極小値(Vmin)を示し、5.4%以降は再び粘度が上昇した。
【0083】
(粘度抑制物質7の調製)
スチレン5部、2−ヒドロエチルアクリレート10部、メタクリル酸10部、N−イソプロピルアクリルアミド100部を混合し、モノマー液3を用意した。
【0084】
四つ口フラスコに、ドデシル硫酸塩0.2部とイオン交換水1180部を加えて溶解した後、窒素置換した。この中に、モノマー液3の5部を加え、攪拌しながら60℃に昇温した。昇温後、2%過硫酸アンモニウム水溶液の43部を滴下し、更に80℃に昇温し、残りのモノマー液3と2%過硫酸アンモニウム水溶液の40部を4時間かけて滴下して、2時間熟成した後、N,N−ジメチルエタノールアミンで中和して、粘度抑制物質7が溶解状態にある水溶液を調製した。
【0085】
この粘度抑制物質6の0.1%水溶液を調製し、20%まで濃縮して25℃におけるそれぞれの粘度を測定して、粘度(V)−濃度(D)曲線を作成した。その結果、0.1%から濃縮するに従い粘度が上昇し、1.8%の時点で粘度極大値(Vmax)を示し、それ以降2.0〜5.0%の領域でdV/dDがマイナスとなり、5.2%の時点で粘度極小値(Vmin)を示し、5.4%以降は再び粘度が上昇した。
【0086】
《インクジェットインクの調製》
〔カーボンブラック分散液〕
トーカブラック #8500(東海カーボン株式会社製) 120g
ジョンクリル62(ジョンソンポリマー株式会社製) 59g
レベノールWX(花王株式会社製) 3g
ジエチレングリコール 100g
イオン交換水 300g
上記各添加剤を混合した後、0.5mmのジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、次いで遠心分離器で粗大物を除去してブラック顔料分散液を得た。
【0087】
〔ブラックインク1〜22の調製〕
カーボンブラック分散液 固形分として10部
粘度抑制物質(表1に記載の種類) 表1に記載の量(固形分量)
エチレングリコール 10部
高分子微粒子(表1に記載の種類) 表1に記載の量(固形分量)
オルフィンE1010(日信化学製) 0.3部
プロキセルGXL(アビシア製) 0.1部
水を加えて、全量を100部をした。
【0088】
〔インク粘度の測定〕
上記調製した各ブラックインクの25℃における粘度を、東京計器社製のB型粘度計BLを用いて測定し、得られた結果を表1に示す。
【0089】
表1に記載に略称で記載の比較添加剤、高分子微粒子の詳細は、以下の通りである。
【0090】
〔比較添加剤〕
A:ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製 HPC−M 粘度極大値無)
B:ポリエチレングリコール(平均分子量:10000、粘度極大値無)
〔高分子微粒子〕
LxA:組成=St/BA/2EHA/MAA、平均分子量=55000、平均粒径105nm、Tg=15℃
LxB:組成=St/BA/2EHA/MAA、平均分子量=50000、平均粒径250nm、Tg=15℃
LxC:組成=St/BA/2EHA/MAA、平均分子量=55000、平均粒径350nm、Tg=15℃
LxD:組成=St/BMA/HEMA/MAA、平均分子量=30000、平均粒径87nm、Tg=45℃
LxE:組成=St/2EHA/HEMA/MAA、平均分子量=100000、平均粒径120nm、Tg=30℃
LxF:組成=St/BMA/HEMA/MAA、平均分子量=120000、平均粒径156nm、Tg=50℃
St:スチレン
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
MAA:メタクリル酸
BA:n−ブチルアクリレート
BMA:n−ブチルメタクリレート
《インクジェットインクの評価》
〔インクジェット画像の形成〕
上記調製した各ブラックインクを、セイコーエプソン社製のインクジェットプリンターPXG−900、または特開2004−136656号公報に記載の静電吸引型のインクジェット記録ヘッドを備えたインクジェットプリンターにより、1液滴あたり0.5plの出射量で、アート紙(特菱アート、三菱製紙社製、坪量:127.9g/m2)上に出射し、線画及びベタ画像を作成した。
【0091】
〔評価〕
(出射安定性の評価)
上記インクジェット画像の形成条件により、40℃、30%RH及び20℃、70%RHの環境下で、それぞれアート紙に線画及びベタ画像を間隔を空けて、連続9枚プリントし、10分間印字を停止した後、10枚目のプリントを行った。10枚目のプリント時のノズルの出射状態を目視観察し、下記の基準に則り出射安定性の評価を行った。
【0092】
◎:全ノズル共に、出射状態に変化が見られない
○:1、2個数%のノズルで斜め出射が見られるが、インク欠がない
△:インク欠が3〜10個数%未満のノズルで発生
×:インク欠が10個数%以上のノズルで発生
(耐擦過性の評価)
耐擦過性については、上記で作成した各ブラックベタ画像に対し、事務用消しゴム(MONO トンボ鉛筆社製)でその表面を5回の往復擦過を行い、20人の一般評価者による残存濃度の目視評価を行い、以下の基準に則り判定した。
【0093】
◎:ほぼ原画像の濃度が残存していると評価した人が16人以上
○:ほぼ原画像の濃度が残存していると評価した人が12〜15人
△:ほぼ原画像の濃度が残存していると評価した人が8〜11人
×:ほぼ原画像の濃度が残存していると評価した人が7人以下
(画像平滑性の評価)
印画した各画像について、画像表面を目視観察し、下記の基準に則り画像平滑性の評価を行った。
【0094】
◎:画像の盛り上がりがなく、平滑性が極めて良好である
○:一部の画像で盛り上がりが認められるが、実用上ほとんど問題がない
△:画像の盛り上がりが認められ、実用上許容限界の品質である
×:強い画像の盛り上がりが認められ、画質が劣化し、実用上問題となる品質である
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0095】
【表1】

【0096】
表1に記載の結果より明らかなように、粘度抑制物質を含有する本発明のインクは、比較例に対し、温湿度環境の異なる条件下で間欠出射を行っても出射不良を起こすことなく安定な出射性を有し、かつ形成した画像の耐擦過性及び画像平滑性に優れていることが分かる。
【0097】
実施例2
実施例1で調製したブラックインク3、20を、セイコーエプソン社製のインクジェットプリンターPXG−900、または特開2004−136656号公報に記載の静電吸引型のインクジェット記録ヘッドを備えたインクジェットプリンターにより、表2に記載の1液滴あたりの出射量で、アート紙(特菱アート、三菱製紙社製、坪量:127.9g/m2)上に出射し、線画及びベタ画像を作成し、実施例に記載の方法と同様にして、出射安定性、耐擦過性及び画像平滑性の評価を行い、得られた結果を、表2に示す。
【0098】
【表2】

【0099】
表2に記載の結果より明らかなように、1液滴あたりの出射量を0.2〜2.0plの範囲で出射及び画像形成を行うことにより、出射安定性、耐擦過性及び画像平滑性がより好ましいことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明に係る粘度抑制剤の粘度(V)−濃度(D)曲線の一例を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも顔料、水及び高分子微粒子を含有するインクジェットインクにおいて、粘度抑制物質を含有することを特徴とするインクジェットインク。
【請求項2】
前記粘度抑制物質が両親媒性物質であって、該両親媒性物質がN−置換アクリルアミド化合物またはビニルエーテル化合物であることを特徴とする請求項1記載のインクジェットインク。
【請求項3】
前記高分子微粒子の平均粒径が、10〜300nmであることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェットインク。
【請求項4】
前記粘度抑制物質の平均粒径が、10〜300nmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【請求項5】
25℃におけるインク粘度が、10mPa・s以上、300mPa・s以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【請求項6】
前記高分子微粒子の含有量が、5〜30質量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【請求項7】
前記粘度抑制物質が両親媒性高分子化合物であって、かつコアシェル構造を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェットインクを、インクジェット記録ヘッドより吐出して画像記録することを特徴とする記録方法。
【請求項9】
前記インクジェット記録ヘッドより吐出する前記インクジェットインクの吐出量が、1液滴あたり0.1〜2.0plであることを特徴とする請求項8に記載の記録方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−96857(P2006−96857A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−284236(P2004−284236)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】