説明

インクジェットインク及びインクジェット記録方法

【課題】長期間にわたり保存した際でも粘度変動や粒径変動が少なく、長期保存後の吐出安定性が良好で、耐候性に優れた画像を形成することができる水系のインクジェットインクとそれを用いたインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】有機顔料、水溶性有機溶媒、水及び高分子分散剤を含有し、該高分子分散剤はアミン価と酸価の差が0より大きいブロック共重合体であり、かつ該有機顔料が下記化合物(A)、その互変異性構造体またはその水和物であるインクジェットインク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性のインクジェットインク及びインクジェット記録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録方式は、簡便・安価に画像を作成できるため、写真、各種印刷、マーキング、カラーフィルター等の特殊印刷など、様々な印刷分野に応用されてきている。特に、産業用途では吸水性に乏しい記録媒体にも印字できるインクが求められており、例えば、大判サイン用途ではポリ塩化ビニル製の基材に対して溶剤インクが使用されている。しかし、溶剤インクは、揮発性有機化合物(VOC)を大量に発生させてしまうという課題があり、最近での環境問題に関する意識の高まりから、非VOCを特徴とする水系インクやUV硬化型インクが開発されるようになった。
【0003】
産業用途として利用される印刷物は、ディスプレイとして長時間蛍光灯または太陽光に曝露されることが多く、印刷物が耐候性として不十分な場合には、顔料が本来の発色特性を維持できず、カラー画像の品質が劣化してしまうこともある。
【0004】
また、インクジェット記録方式の特徴として、インクジェット記録ヘッドより、インク液滴の吐出を安定に行うため、粘度や粒径等のインクの特性変動を極力抑えることが必要である。保存性が不安定なインクは、経時で粘度や粒径が上昇してしまい、ノズル曲がりやノズル欠が発生し、画像欠陥を招くことがある。
【0005】
従来、インクジェットインクに用いられる黄色顔料としては、主には、C.I.Pigment Yellow74、C.I.Pigment Yellow128、C.I.Pigment Yellow138、C.I.Pigment Yellow180、C.I.Pigment Yellow185などが広く用いられてきており、例えば、特許文献1においては、黄色顔料としてC.I.Pigment Yellow74を用いた水系インクジェットインクが開示されている。ここでは、C.I.Pigment Yellow74とアニシダイド化合物とを併用することにより、耐光性と吐出安定性の改善が提案されているが、本発明者らが検討したところ、水系インクジェットインクを調製してから長期間経過した場合、吐出性能が大きく低下してしまい、良好な画像が形成できくなることが判明しており、インクの保存安定性の観点からは更に改善の余地を残すものである。
【0006】
一方、黄色顔料の中でも、C.I.Pigment Yellow150は明度が高く着色濃度が良好であることが知られており、耐候性向上が期待できる。このC.I.Pigment Yellow150を用いた水系インクジェットインクの例が、特許文献2に開示されている。しかし、本発明者らの検討によると、確かに他の黄色顔料に比べて、C.I.Pigment Yellow150は、耐候性においては良好な特性を備えてはいるが、インクの保存安定性が不十分で、インク液を長期間にわたり保存した際には粘度や粒径の変動が大きく、長期での使用に際してはインクジェット記録ヘッドからの吐出性が悪化し、その結果、画質が著しく低下してしまうことが判明した。
【0007】
また、特許文献3においては、顔料分散剤として新規なブロック共重合体が提案されている。ここでは、新規ブロック共重合体が種々の黄色顔料に適用可能な分散剤であることが記載されているが、本発明者らの検討の結果、顔料や有機溶媒の種類によって、その分散安定性には大きなばらつきがあることが判明した。
【0008】
このように、現在、水系のインクジェットインクにおいて、イエローインクの耐候性と保存安定性とを両立させる技術を得るには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−63524号公報
【特許文献2】特開2007−51156号公報
【特許文献3】特表2008−527130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、長期間にわたり保存した際でも粘度変動や粒径変動が少なく、長期保存後の吐出安定性が良好で、耐候性に優れた画像を形成することができる水系のインクジェットインクとそれを用いたインクジェット記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0012】
1.少なくとも、有機顔料、水溶性有機溶媒、水及び高分子分散剤を含有し、該高分子分散剤はアミン価と酸価の差が0より大きい(0<アミン価−酸価)ブロック共重合体であり、かつ該有機顔料が下記化合物(A)、下記化合物(A)の互変異性構造体または下記化合物(A)の水和物であることを特徴とするインクジェットインク。
【0013】
【化1】

【0014】
2.前記高分子分散剤が、含窒素芳香族ヘテロ環、含窒素芳香族ヘテロ環の塩、または芳香族アミンを構造の一部に有することを特徴とする前記1に記載のインクジェットインク。
【0015】
3.前記高分子分散剤が、下記一般式(I)で表される部分構造を有する高分子化合物であることを特徴とする前記1または前記2に記載のインクジェットインク。
【0016】
一般式(I)
−(A)−(B)−(C)
〔式中、A、B、Cは各々高分子化合物を構成する単量体を表し、a、b、cは各々の単量体の高分子化合物中における構成モル比率を表す。
【0017】
単量体AおよびBは、それぞれエチレン性不飽和モノマーであり、単量体Aおよび単量体Bの少なくとも一方は、1)スチレン類、アクリル酸またはメタクリル酸の炭素数が1〜24のアルキルエステル、2)アクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシ−炭素数が2〜6のアルキルエステル、3)アクリル酸またはメタクリル酸のジヒドロキシ−炭素数が2〜6のアルキルエステル、及び4)ポリ−炭素数が2〜4のアルキレングリコールエステル基(ここで、エステル基は、炭素数が1〜24のアルコキシ基で置換されていることができる)を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル、からなる群より選ばれるエチレン性不飽和モノマーである。単量体Cは、1)アミノ置換スチレン、2)炭素数が1〜4のアルキル基を1または2つ有するアミノ置換スチレン、3)ビニルピリジンまたはその塩、4)炭素数が1〜4のアルキル基置換ビニルピリジンまたはその塩、4)ビニルイミダゾールまたはその塩、及び5)炭素数が1〜4のアルキル基置換イミダゾールまたはその塩、からなる群より選ばれるエチレン性不飽和アミノモノマーである。
【0018】
a、b、cは各々の単量体の高分子化合物中における構成モル比率(モル%)を表し、a+bは0〜99モル%、cは1〜100モル%である。〕
4.前記単量体Cが、4−ビニルピリジンであることを特徴とする前記1から3のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【0019】
5.前記水溶性有機溶媒の少なくとも1種が、グリコールエーテル類またはアルカンジオール類であることを特徴とする前記1から4のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【0020】
6.水溶性樹脂を含有することを特徴とする前記1から5のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【0021】
7.有機顔料が含有するCl塩およびK塩の総量が、2000ppm以下であることを特徴とする前記1から6のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【0022】
8.前記1から7のいずれか1項に記載のインクジェットインクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、長期間にわたり保存した際でも粘度変動や粒径変動が少なく、長期保存後の吐出安定性が良好で、耐候性に優れた画像を形成することができる水系のインクジェットインクとそれを用いたインクジェット記録方法を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0025】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、少なくとも、有機顔料、水溶性有機溶媒、水及び高分子分散剤を含有し、該高分子分散剤はアミン価と酸価の差が0より大きい(0<アミン価−酸価)ブロック共重合体であり、かつ該有機顔料が前記化合物(A)、前記化合物(A)の互変異性構造体または前記化合物(A)の水和物であることを特徴とするインクジェットインクにより、長期間にわたり保存した際でも粘度変動や粒径変動が少なく、長期保存後の吐出安定性が良好で、耐候性に優れた画像を形成することができる水系のインクジェットインクを実現することができることを見出し、本発明に至った次第である。
【0026】
本発明で規定する構成からなるインクジェットインクにより、本願発明の目的効果を達成できた理由としては、以下のように推定している。
【0027】
耐候性に優れた本発明に係る化合物(A)であるC.I.Pigment Yellow150は、分子全体として共役系を形成しているため、複数の分子間でπ−π相互作用によって重なり合いやすく、その結果として凝集しやすい状態であると考えられる。本発明に係る高分子分散剤は、アミン価と酸価の差が0より大きい(0<アミン価−酸価)塩基性のブロック共重合体であり、酸性の顔料である化合物(A)表面に吸着して、顔料分子間の相互作用を阻害するため、良好な分散性が得られているものと推測している。従って、アミン価よりも酸価が大きいブロック重合体である高分子分散剤では、この顔料吸着効果が弱まり、十分な分散性を得ることができないものと推測している。
【0028】
一方、本発明者らが鋭意検討を進めた結果、水系のインクジェットインク中におけるこのような分散安定化効果は、溶媒が水と水溶性有機溶媒で構成されている水系溶媒によって得られるものであり、この効果は、溶媒組成が水単独で形成されている場合や難水溶性あるいは非水溶性有機溶媒を用いた場合には、十分な効果が得られないことが判明した。
【0029】
以下、本発明の水系のインクジェットインクの各構成要素およびインクジェット記録方法について詳細に説明するが、これらは本発明の実施形態の一例であり、これらの内容に限定されるものではない。
【0030】
《インクジェットインク》
本発明のインクジェットインクの主の構成要素は、1)前記化合物(A)、前記化合物(A)の互変異性構造体または前記化合物(A)の水和物である有機顔料、2)水溶性有機溶媒、3)水及び4)アミン価と酸価の差が0より大きい(0<アミン価−酸価)ブロック共重合体である高分子分散剤である。
【0031】
〔有機顔料〕
本発明に係る有機顔料は、下記化合物(A)、下記化合物(A)の互変異性構造体または下記化合物(A)の水和物であることを特徴とする。
【0032】
【化2】

【0033】
化合物(A)は、C.I.Pigment Yellow150と呼ばれているイエロー顔料であり、例えば、『Yellow Pigment E4GN』、『Yellow Pigment E4GN−GT』、『FANCHON FAST Yellow Y−5688』、『BAYPLAST Yellow 5GN−01』、『Levascreen Yellow G01』(Lanxess社製)、『Cromophtal Yellow 448』、『クロモファインイエロー6255』(大日精化工業社製)、などの商品名で市販されている。
【0034】
これらの中でも、Levascreen Yellow G01、クロモファインイエロー6255を用いることが、分散安定性、保存安定性の観点からより好ましい。
【0035】
また、有機顔料が含有するCl塩およびK塩の総量は、2000ppm以下であることが、分散安定性、保存安定性の観点からより好ましい。上記、無機塩を除去する方法としては、フィルタ濾過やイオン交換など公知の方法を用いることができ、例えば、特開平11−222573号公報などを参照することができる。
【0036】
本発明に係る有機顔料である化合物(A)は、インクジェットインク全質量の0.5〜10質量%の範囲で用いることが、吐出安定性の観点から好ましい。
【0037】
〔高分子分散剤〕
本発明に係る高分子分散剤は、アミン価と酸価の差が0より大きい(0<アミン価−酸価)ブロック共重合体であることを特徴とする。本発明に係る高分子分散剤では、重量平均分子量が1000以上、200000以下であることが好ましく、より好ましくは5000以上、50000以下であり、更に好ましくは8000以上、50000以下である。
【0038】
本発明において、高分子分散剤としてブロック共重合体を適用することによる効果としては、ブロック共重合体タイプのポリマー分子は親水性領域と顔料吸着領域により構成されることにより、高い分散性を得ることができる。この効果は、ランダム共重合体や交差共重合体では、この様な分散性を得ることができない。
【0039】
具体的には、ランダム共重合体等では、共重合体を構成するモノマーは、重合体形成時に立体的あるいは電気的に共重合体中に安定的に配置される確率が高くなる。モノマーが安定的に配置された部分(分子)は、立体的あるいは電気的に安定しているため、顔料表面に吸着する際に、かえって障害となる場合が多い。これに対し、分子配列が制御されたブロック共重合体タイプの高分子分散剤では、顔料に対する分散剤の吸着を妨げる部分を、顔料と分散剤との吸着部から離れた位置に配置することができる。すなわち、顔料と分散剤との吸着部には吸着に最適な部分を配置し、溶媒親和性が必要な部分にはそれに適した部分を配置することにより、特に、結晶サイズが小さな有機顔料を含有する系のインクジェットインクの分散においては、このブロック共重合体で構成される分子配列が良好な分散性を実現することができたと推測している。
【0040】
本発明に係る高分子分散剤としては、上記特性を備えていれば制限はなく、公知のエチレン性不飽和モノマーを用いて合成されたブロック共重合体を適用でき、エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、以下のものを挙げることができる。
【0041】
スチレン及びスチレン誘導体、例えば、α−メチルスチレン又はビニルトルエン;カルボン酸のビニルエステル、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル;ハロゲン化ビニル;エチレン性不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸又はフマル酸、及び上記したジカルボン酸のアルカノール(好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)とのモノアルキルエステル、及び上記したモノアルキルエステルの誘導体、及びそのN−置換誘導体、アリールエステル、及びそれらの誘導体;不飽和カルボン酸のアミド、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド若しくはメタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド;スルホン酸基を含むエチレン性モノマー及びそのアンモニウム又はアルカリ金属塩、例えば、ビニルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸、α−アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチレンメタクリレート;ビニルアミンのアミド、例えば、ビニルホルムアミド、ビニルアセトアミド;第2、第3若しくは第4級アミノ基又は窒素含有ヘテロ環基を含む不飽和エチレン性モノマー、例えば、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、アミノアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリルアミド、アクリル酸若しくはメタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸若しくはメタクリル酸ジ−t−ブチルアミノエチル、又はジメチルアミノメチルアクリルアミド若しくはメタクリルアミド;ツビッターイオン性モノマー、例えば、スルホプロピル(ジメチル)アミノプロピルアクリレート;ジエン類、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン;(メタ)アクリル酸エステル;ビニルニトリル類;ビニルホスホン酸及びその誘導体を挙げることができる。
【0042】
このようなエチレン性不飽和モノマーを用いて、公知の方法、例えば、特開2005−60669号公報や特開2007−314617号公報などの合成方法に従って、ブロック共重合体を合成することができる。
【0043】
その中でも、(メタ)アクリル系ブロック共重合体を用いることが好ましく、例えば、特開昭60−89452号公報、特開平9−62002号公報、P.Lutz,P.Massonetal,Polym.Bull.12,79(1984)、B.C.Anderson,G.D.Andrewsetal,Macromolecules,14,1601(1981)、K.Hatada,K.Ute,etal,Polym.J.17,977(1985)、K.Hatada,K.Ute,etal,Polym.J.18,1037(1986)、右手浩一、畑田耕一、高分子加工、36、366(1987)、東村敏延、沢本光男、高分子論文集、46、189(1989)、M.Kuroki,T.Aida,J.Am.Chem.Sic,109,4737(1987)、相田卓三、井上祥平、有機合成化学、43,300(1985)、D.Y.Sogoh,W.R.Hertleretal,Macromolecules,20,1473(1987)、K.Matyaszewskietal,Chem.Rev.2001,101,2921−2990などに記載されている公知の方法を参照して合成可能である。
【0044】
本発明における高分子分散剤は、アミン価と酸価の差が0より大きい(0<アミン価−酸価)ブロック共重合体であることを特徴とするが、より好ましくは0<(アミン価−酸価)<100、さらに好ましくは10<(アミン価−酸価)<50である。アミン価と酸価との差を本発明で規定する範囲とすることにより、顔料表面への高分子分散剤の吸着力と分散安定性がより良好となる。
【0045】
高分子分散剤の酸価及びアミン価の測定は、電位差滴定法により求めることができ、例えば、色材協会誌61,[12]692−698(1988)に記載の方法で測定することができる。
【0046】
本発明に係る高分子分散剤は、前記アミン価と酸価の特徴に加えて、含窒素芳香族ヘテロ環またはその塩、または芳香族アミン(例えば、アニリン、アニシジン、p−トルイジン、α−ナフチルアミン、m−フェニレンジアミン、1,8−ジアミノナフタレン、ベンジルアミン、N−メチルアニリン、N−メチルベンジルアミン等)を構造の一部に有するブロック共重合体であることがより好ましい。ブロック共重合体の構造の一部に芳香族性基を有する部位がある場合には、酸−塩基相互作用に加えて、顔料と共重合体の間にπ−π相互作用が発生するので、高分子分散剤の顔料に対する吸着力が一層高まり、分散性が向上するものと推測される。含窒素芳香族ヘテロ環としては、例えば、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾオールなどの五員環芳香族ヘテロ環、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジンなどの六員環芳香族ヘテロ環、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、ブテリジン、ベンゾジアゼピン、インドール、ベンズイミダゾール、プリン、アクリジン、フェノキサジン、フェノチアジンなどの多環芳香族ヘテロ環またはその塩(例えば、無機塩、有機塩等)などが挙げられ、各々は置換基を有していても良い。
【0047】
本発明に係る高分子分散剤は、さらに下記一般式(I)で表される部分構造を有する高分子化合物であることが好ましい。
【0048】
一般式(I)
−(A)−(B)−(C)
上記一般式(I)において、A、B、Cは各々高分子化合物を構成する単量体を表し、a、b、cは各々の単量体の高分子化合物中における構成モル比率を表す。
【0049】
単量体AおよびBは、それぞれエチレン性不飽和モノマーであり、単量体Aおよび単量体Bの少なくとも一方は、1)スチレン類、アクリル酸またはメタクリル酸の炭素数が1〜24のアルキルエステル、2)アクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシ−炭素数が2〜6のアルキルエステル、3)アクリル酸またはメタクリル酸のジヒドロキシ−炭素数が2〜6のアルキルエステル、及び4)ポリ−炭素数が2〜4のアルキレングリコールエステル基(ここで、エステル基は、炭素数が1〜24のアルコキシ基で置換されていることができる)を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル、からなる群より選ばれるエチレン性不飽和モノマーである。
【0050】
上記4)のエステル基が炭素数が1〜24のアルコキシ基で置換されていることができるポリ−炭素数が2〜4のアルキレングリコールエステル基を有する代表的なアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルとしては、下記一般式(II)で示される化合物を挙げることができる。
【0051】
【化3】

【0052】
上記一般式(II)において、nは1〜100の数を表し、R及びRは、互いに独立して、水素原子またはメチル基を表す。Rは、炭素数が1〜24のアルキル基(例えば、メチル、エチル、n−またはiso−イソプロピル、n−、iso−またはtert−ブチル、n−、またはneo−ネオペンチル、n−ドデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル、n−オクタデシルの各基)、またはアリール−炭素数が1〜24のアルキル基(例えば、ベンジル若しくはフェニル−n−ノニル、並びに炭素数が1〜24のアルキルアリール、炭素数が1〜24のアルキルアリール−炭素数が1〜24のアルキル等)を表す。
【0053】
単量体Cは、1)アミノ置換スチレン、2)炭素数が1〜4のアルキル基を1または2つ有するアミノ置換スチレン、3)ビニルピリジンまたはその塩、4)炭素数が1〜4のアルキル基置換ビニルピリジンまたはその塩、4)ビニルイミダゾールまたはその塩、及び5)炭素数が1〜4のアルキル基置換イミダゾールまたはその塩、からなる群より選ばれるエチレン性不飽和アミノモノマーである。
【0054】
a、b、cは各々の単量体の高分子化合物中における構成モル比率(モル%)を表し、a+bは0〜99モル%、cは1〜100モル%である。
【0055】
本発明に係る高分子分散剤としては、特に、単量体Cが4−アミノスチレン、4−ジメチルアミノスチレン、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン及び1−ビニルイミダゾールからなる群より選択されるエチレン性不飽和アミノモノマーであることが好ましく、その中でも、4−ビニルピリジンであることが特に好ましい。このようなブロック共重合体としては、例えば、EFKA−4585(BASF社製)、EFKA−7701(BASF社製)などの市販品、あるいは、特開2008−527130号公報などに記載された合成方法に準じて得ることができる。
【0056】
本発明に係る高分子分散剤は、有機顔料に対して固形分濃度で30〜150質量%の範囲で用いることが分散安定性、保存安定性の観点から好ましく、50〜100質量%の範囲で用いることが特に好ましい。
【0057】
〔水溶性有機溶媒〕
本発明のインクジェットインクにおいては、インク中に水溶性有機溶媒を含むことを特徴としている。特に、顔料分散時の分散溶媒として水溶性有機溶媒を含有しない場合には、粒径が小さく分散安定性に優れた顔料分散液を得ることができない。
【0058】
本発明に係る水溶性有機溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノアルキルエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等)、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル類(例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等)、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル類(例えば、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等)、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類(例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等)、ジプロピレンリコールモノアルキルエーテル類(例えば、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等)、トリプロピレンリコールモノアルキルエーテル類(例えば、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、β−アルコキシプロピオンアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
【0059】
特に、軟質塩化ビニルシートをはじめ種々の疎水性樹脂からなる記録媒体や、印刷本紙などの吸収が遅い紙支持体に対して画像出力を行なう場合には、グリコールエーテル類もしくは1,2−アルカンジオール類のような低表面張力の水溶性溶剤を添加することが好ましく、具体的には、下記のグリコールエーテル類もしくは1,2−アルカンジオール類を用いることが好ましい。グリコールエーテル類としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。また、1,2−アルカンジオール類としては、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール等が挙げられる。
【0060】
本発明に係る水溶性有機溶媒は、インクジェットインク全質量の5〜40質量%の範囲で用いることが、保存安定性や記録媒体への濡れ性の観点から好ましい。
【0061】
〔水溶性樹脂〕
本発明のインクジェットインクには、必要に応じて水溶性樹脂を添加することができる。具体的には、顔料分散時に前記高分子分散剤に加えて、公知の水溶性樹脂を分散剤として添加することができ、例えば、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体等のような水溶性樹脂を用いることができる。
【0062】
また、塩化ビニルなどの非吸収性記録媒体との接着性、塗膜の耐擦性、耐水性を向上させる目的として、例えば、ポリアクリル樹脂、ポリスチレン−アクリル系、ポリアクリロニトリル−アクリル系、酢酸ビニル−アクリル系、ポリビニルアルコール系、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂等の水溶性樹脂をインク中に添加することができる。
【0063】
〔界面活性剤〕
本発明のインクジェットインクには、必要に応じて界面活性剤を添加させることができる。具体的には、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤、シリコーン系やフッ素系の界面活性剤が挙げられ、特にシリコーン系もしくはフッ素系の界面活性剤が好ましい。シリコーン系もしくはフッ素系の界面活性剤を添加することで、塩化ビニルシートをはじめ種々の疎水性樹脂からなる記録媒体や、印刷本紙などの吸収が遅い記録媒体に対して、インク混じりをいっそう抑えることができ、高画質な印字画像を得られる。
【0064】
該シリコーン系の界面活性剤としては、好ましくはポリエーテル変性ポリシロキサン化合物があり、例えば、信越化学工業製のKF−351A、KF−642やビッグケミー製のBYK345、BYK347、BYK348などが挙げられる。
【0065】
該フッ素系の界面活性剤は通常の界面活性剤の疎水性基の炭素に結合した水素の代わりに、その一部または全部をフッ素で置換したものを意味する。この内、分子内にパーフルオロアルキル基を有するものが好ましい。
【0066】
該フッ素系の界面活性剤の内、ある種のものはDIC社からメガファック(Megafac)Fなる商品名で、旭硝子社からサーフロン(Surflon)なる商品名で、ミネソタ・マイニング・アンド・マニファクチュアリング・カンパニー社からフルオラッド(Fluorad)FCなる商品名で、インペリアル・ケミカル・インダストリー社からモンフロール(Monflor)なる商品名で、イー・アイ・デュポン・ネメラス・アンド・カンパニー社からゾニルス(Zonyls)なる商品名で、またファルベベルケ・ヘキスト社からリコベット(Licowet)VPFなる商品名で、またネオス社からフタージェントなる商品名それぞれ市販されている。
【0067】
界面活性剤の添加量としては、インク全質量に対して、0.1質量%以上、2.0質量%未満が好ましく、インクの表面張力として、15mN/m以上であればヘッドのノズル周りが濡れて吐出能力が低下することがなく、また35mN/m未満であれば表面エネルギーが通常の紙よりも低いコート紙や樹脂製の記録媒体によく濡れて白ぬけが発生することがないため好ましい。
【0068】
表面張力の測定方法については、一般的な界面化学、コロイド化学の参考書等において述べられているが、例えば、新実験化学講座第18巻(界面とコロイド)、日本化学会編、丸善株式会社発行:P.68〜117を参照することができ、具体的には、輪環法(デュヌーイ法)、垂直板法(ウィルヘルミー法)を用いて求めることができる。
【0069】
〔顔料分散体〕
本発明のインクジェットインクでは、顔料分散体を予め調製し、調製した顔料分散体を用いてインク組成物とすることができる。顔料分散体としては、少なくとも有機顔料、高分子分散剤、水溶性有機溶媒、水を含むことが好ましく、さらに水溶性樹脂や各種添加剤を加えても良い。特に、顔料分散時の分散溶媒として、水と水溶性有機溶媒を併用することが、粒径が小さく分散安定性に優れた顔料分散液およびインク組成物を得るために好ましいことが本発明者らの検討の結果判明した。
【0070】
顔料の分散方法としては、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等各種を用いることができる。
【0071】
前記顔料分散体の粗粒分を除去する目的で遠心分離装置を使用すること又はフィルタを使用することも好ましく用いられる。
【0072】
顔料と分散剤の質量比率は、好ましくは顔料/分散剤(固形分)比で100/150以上、100/30以下の範囲で選択することができる。特に画像耐久性と射出安定性やインク保存性が良好なのは100/100以上、100/40以下の範囲である。
【0073】
〔各種添加剤〕
本発明のインクジェットインクでは、上記説明した以外に必要に応じて出射安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、公知の各種添加剤、例えば、多糖類、粘度調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を適宜選択して用いることができ、例えば、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等の油滴微粒子、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号公報、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報及び同3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報及び特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤等を挙げることができる。
【0074】
《インクジェット記録方法》
本発明のインクジェットインクを吐出して画像形成を行う際に使用するインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。又吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)等など何れの吐出方式を用いても構わない。
【0075】
本発明のインクジェットインクを用いたインクジェット記録方法においては、例えば、インクジェットインクを装填したプリンター等により、デジタル信号に基づきインクジェットヘッドよりインクを吐出し記録媒体に付着させることで、インクジェット記録画像が得られる。記録媒体に付着させたインクを素早く確実に乾燥させるため、記録媒体の表面温度を高めて画像形成する方法が好ましい。
【0076】
表面温度は、記録媒体の耐久性や、用いるインクの乾燥性に応じて調節するが、好ましくは40〜100℃である。特に、記録媒体としてポリ塩化ビニルを用いる場合、表面温度を高めることにより、記録媒体表面に対するインクの濡れ性が向上するため、表面温度を高めて記録することはより好ましい。
【0077】
使用する記録媒体の銘柄によっても濡れ性やインク乾燥性に違いが生じることがあるので、各媒体の特性に応じて表面温度を調節しても良い。
【0078】
記録媒体の表面温度を高めて記録を行う場合、インクジェット記録装置にヒーターを搭載させることが好ましく、記録媒体の搬送前、もしくは搬送時に加熱を行うことにより、インクジェット記録装置単体で記録媒体の表面温度を調節することが可能である。
【0079】
《記録媒体》
本発明のインクジェット記録方法で用いる記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、紙、木、OHPシート、ポリ塩化ビニル、樹脂フィルム、不織布、多孔質膜、プラスチック板、回路基板、金属基板、ガラス板、セラミック板、タイルなどがあり、その中でも、ポリ塩化ビニルを用いることが好ましい。ポリ塩化ビニルからなる記録媒体の具体例としては、SOL−371G、SOL−373M、SOL−4701(以上、ビッグテクノス株式会社製)、光沢塩ビ(株式会社システムグラフィ社製)、KSM−VS、KSM−VST、KSM−VT(以上、株式会社きもと製)、J−CAL−HGX、J−CAL−YHG、J−CAL−WWWG(以上、株式会社共ショウ大阪製)、BUS MARK V400 F vinyl、LITEcal V−600F vinyl(以上、Flexcon社製)、FR2(Hanwha社製)LLBAU13713、LLSP20133(以上、桜井株式会社製)、P−370B、P−400M(以上、カンボウプラス株式会社製)、S02P、S12P、S13P、S14P、S22P、S24P、S34P、S27P(以上、Grafityp社製)、P−223RW、P−224RW、P−249ZW、P−284ZC(以上、リンテック株式会社製)、LKG−19、LPA−70、LPE−248、LPM−45、LTG−11、LTG−21(以上、株式会社新星社製)、MPI3023(株式会社トーヨーコーポレーション社製)、ナポレオングロス 光沢塩ビ(株式会社二樹エレクトロニクス社製)、JV−610、Y−114(以上、アイケーシー株式会社製)、NIJ−CAPVC、NIJ−SPVCGT(以上、ニチエ株式会社製)、3101/H12/P4、3104/H12/P4、3104/H12/P4S、9800/H12/P4、3100/H12/R2、3101/H12/R2、3104/H12/R2、1445/H14/P3、1438/One Way Vision(以上、Inetrcoat社製)、JT5129PM、JT5728P、JT5822P、JT5829P、JT5829R、JT5829PM、JT5829RM、JT5929PM(以上、Mactac社製)、MPI1005、MPI1900、MPI2000、MPI2001、MPI2002、MPI3000、MPI3021、MPI3500、MPI3501(以上、Avery社製)、AM−101G、AM−501G(以上、銀一株式会社製)、FR2(ハンファ・ジャパン株式会社製)、AY−15P、AY−60P、AY−80P、DBSP137GGH、DBSP137GGL(以上、株式会社インサイト社製)、SJT−V200F、SJT−V400F−1(以上、平岡織染株式会社製)、SPS−98、SPSM−98、SPSH−98、SVGL−137、SVGS−137、MD3−200、MD3−301M、MD5−100、MD5−101M、MD5−105(以上、Metamark社製)、640M、641G、641M、3105M、3105SG、3162G、3164G、3164M、3164XG、3164XM、3165G、3165SG、3165M、3169M、3451SG、3551G、3551M、3631、3641M、3651G、3651M、3651SG、3951G、3641M(以上、Orafol社製)、SVTL−HQ130(株式会社ラミーコーポレーション製)、SP300 GWF、SPCLEARAD vinyl(以上、Catalina社製)、RM−SJR(菱洋商事株式会社製)、Hi Lucky、New Lucky PVC(以上、LG社製)、SIY−110、SIY−310、SIY−320(以上、積水化学工業株式会社製)、PRINT MI Frontlit、PRINT XL Light weight banner(以上、Endutex社製)、RIJET 100、RIJET 145、RIJET165(以上、Ritrama社製)、NM−SG、NM−SM(日栄化工株式会社製)、LTO3GS(株式会社ルキオ社製)、イージープリント80、パフォーマンスプリント80(以上、ジェットグラフ株式会社製)、DSE 550、DSB 550、DSE 800G、DSE 802/137、V250WG、V300WG、V350WG(以上、Hexis社製)、Digital White 6005PE、6010PE(以上、Multifix社製)等が挙げられる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0081】
《高分子分散剤の合成》
特開2008−527130号公報に記載の方法に従って、表1に記載の単量体配合比からなる高分子分散剤1〜6を合成した。
【0082】
また、合成した高分子分散剤1〜6について、アミン価及び酸価を下記の方法に従って測定し、測定結果を表1に示す。
【0083】
(分散剤のアミン価の測定)
分散剤をメチルイソブチルケトンに溶解し、0.01モル/Lの過塩素酸メチルイソブチルケトン溶液で電位差滴定を行い、mgKOH/g換算したものを分散剤のアミン価とした。電位差滴定は、平沼産業株式会社製自動滴定装置COM−1500を用いて測定した。
【0084】
(分散剤の酸価の測定)
分散剤をメチルイソブチルケトンに溶解し、0.01モル/Lのカリウムメトキシド−メチルイソブチルケトン/メタノール(4:1)溶液で電位差滴定を行い、mgKOH/g換算したものを分散剤の酸価とした。電位差滴定は、平沼産業株式会社製自動滴定装置COM−1500を用いて測定した。
【0085】
【表1】

【0086】
なお、表1に略称で記載した各単量体の詳細は、以下の通りである。
【0087】
BA:ブチルアクリレート
M−PEGMA:メトキシ−ポリエチレングリコール(550)モノアクリレート
DMAEA:ジメチルアミノエチルアクリレート
1−VI:1−ビニルイミダゾール
4−VP:4−ビニルピリジン
《顔料分散液の調製》
上記合成した高分子分散剤1〜6を用いて、表2に示す組み合わせで、顔料分散液1〜11を調製した。
【0088】
各顔料分散液は、各構成成分を混合撹拌し、水で100部に仕上げた後、0.5mmジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて、6時間振蓋分散を行った後、ビーズを取り除いて、顔料分散液1〜11を調製した。
【0089】
【表2】

【0090】
なお、上記調製した顔料分散液の中で、顔料分散液11は分散過程でゲル化を起こしたため、顔料分散液として用いることができなかった。ゲル化の要因としては、分散溶媒として水溶性溶媒を含まなかったために、高分子分散剤による顔料粒子の分散が効果的に行なわれなかったものと推測している。
【0091】
《インクの調製》
〔インク1の調製〕
下記に示す各添加剤を各々混合、攪拌した後、孔径が5μmのフィルタを用いてろ過を行って、インク1を調製した。
【0092】
顔料分散液:顔料分散液1 顔料固形分2.5部
定着樹脂:ジョンクリルJDX−6500(BASF社製アクリル樹脂、固形分29.5%) 固形分換算6.0部
有機溶媒1:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 10.0部
有機溶媒2:2−ピロリドン 10.0部
界面活性剤:フタージェント100(ネオス社製) 0.5部
イオン交換水で、100部となる様に仕上げた。
【0093】
〔インク2〜10の調製〕
上記インク1の調製において、顔料分散液1に代えて、顔料分散液2〜10を用いた以外は同様にして、インク2〜10を調製した。
【0094】
《インクの評価》
上記調製した各インクを用いて、下記の方法に従って画像形成し、各評価を行った。なお、各インクについてプレート法で測定した表面張力は15〜35mN/m、インクの粘度は5〜19mPa・sの範囲であった。
【0095】
〔インクの保存安定性の評価〕
調製した各インクを、カラス瓶に充填、密栓した後、60℃環境下で3週間保存した後、常温に戻した。上記保存処理前後でインクが含有する顔料粒子の平均粒子径およびインク粘度を測定し、下式に従って平均粒子径変動率及び粘度変動率を求めた。なお顔料粒子の平均粒子径は、各インクを1000倍に希釈した後、マルバーン社製ゼータサイザー1000を用いて測定を行った。また、インク粘度は、25℃に温度調整し、振動式粘度計(ビスコメイトVM−1L:CBCマテリアルズ社製)を用いて測定した。
【0096】
平均粒子径変動率={(保存処理後のインク中の顔料粒子の平均粒子径)−(保存処理前のインク中の顔料粒子の平均粒子径)}/(保存処理前のインク中の顔料粒子の平均粒子径)×100(%)
粘度変動率={(保存処理後のインク粘度)−(保存処理前のインク粘度)}/(保存処理前のインク粘度)×100(%)
上記測定した平均粒子径変動率及び粘度変動率をもとに、下記の基準に従ってインクの保存安定性を評価した。
【0097】
(平均粒径変動率)
◎:平均粒子径変動率が、10%未満である
○:平均粒子径変動率が、10%以上、20%未満である
△:平均粒子径変動率が、20%以上、100%未満である
×:平均粒子径変動率が、100%以上である
(粘度変動率)
◎:粘度変動率が、10%未満である
○:粘度変動率が、10%以上、20%未満である
△:粘度変動率が、20%以上、100%未満である
×:粘度変動率が、100%以上である
〔画像形成〕
ピエゾ型のインクジェットヘッド(インク液滴量20pl)4基を並列に配置した4色のプリントが可能なインクジェットプリント装置を用いて評価を行った。解像度は720dpi×720dpi(本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す)に設定した。インクジェットプリント装置には、記録媒体を下方より接触式ヒーターにて任意に加温できる加熱機能を備え、インクジェットヘッドの格納ポジションには、インクの空打ちポジションとブレードワイプ式のメンテナンスユニットを備え、任意の頻度でヘッドクリーニングができる機構を備えている。
【0098】
上記インクジェットプリント装置のイエローインク用インクジェットヘッドに、上記60℃の環境下で3週間保存したインク1〜10を各々導入し、溶剤インクジェットインクプリンタ用の軟質塩化ビニルシートに、それぞれのインクを10%Dutyから100%Dutyまでの条件で、10%Duty刻みで10cm×50cmの長方形ベタ画像を各々プリントした。プリント時には、記録媒体の下方より、接触式ヒーターにて、軟質塩化ビニルシートの表面温度が55℃となる条件で加熱しながら記録した。記録後、更に後乾燥工程として60℃で3分間の加熱処理を施した。
【0099】
〔各評価〕
次いで、下記に示す各評価を行った。
【0100】
(吐出安定性の評価)
上記プリント条件で、25℃、相対湿度50%の環境下で連続10回プリントした。その後、10回目の100%Duty画像について目視観察し、下記の基準に従って吐出安定性を評価した。
【0101】
◎:作成画像において、斜め出射あるいはノズル欠に起因する画像欠陥はまったく認められない
○:作成画像の書き出し部(数mm)において、極僅かなかすれの発生が認められるが、実用上は許容される品質である
△:作成画像の書き出し部(数mm)において、明らかなかすれの発生が認められ、実用上問題となる品質である
×:作成画像において、斜め出射あるいはノズル欠に起因する明らかな画像欠陥が多数発生している
(耐候性の評価)
上記方法により形成した各画像について、キセノンフェードメーター(スガ試験機(株)製、WEL−6X−HC−Ec)を用いて、下記の条件で耐候性試験を行った。
【0102】
(a)ランプ照射(照度70,000lx):60℃、55%RH環境下で8時間照射
(b)ランプ照射(照度70,000lx)+シャワー:50℃、95%RH環境で、水シャワーを与えながら10分間照射
(c)ランプ照射なし:50℃、95%RHの環境で50分間保存
上記条件について、(a)+{(b)+}c)}×4を1サイクルとして、500時間まで繰り返して耐候性試験を行った。
【0103】
上記耐候性試験の前後で、各試料の反射濃度を十点測定してそれぞれの平均値を求め、下式に従って濃度残存率(%)を測定した。なお、反射濃度は分光測色濃度計(エックスライト社製、エックスライト938)を用いて測定した。
【0104】
濃度残存率(%)=(光照射後の平均画像濃度/光照射前の平均画像濃度)×100
得られた濃度残存率より、下記の基準に従って、耐候性を評価した。
【0105】
○:濃度残存率が、80%以上である
△:濃度残存率が、50%以上、80%未満である
×:濃度残存率が、50%未満である
上記評価ランクにおいて、実用上許容されるレベルは、○である。
【0106】
以上により得られた各結果を、表3に示す。
【0107】
【表3】

【0108】
表3に記載の結果より明らかなように、本発明のインク1〜6は保存安定性に優れ、インクを調製した後、長期間経ても安定に吐出することができた。一方、比較例であるインク7〜10は、保存安定性が不良なため、インク物性(顔料粒径、粘度)が変動してしまい、吐出不良が発生してしまうことがわかる。また、本発明のインク1〜6は、吐出性能が優れているだけでなく、形成した画像の耐候性も良好であり、産業用途印刷にも適していることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、有機顔料、水溶性有機溶媒、水及び高分子分散剤を含有し、該高分子分散剤はアミン価と酸価の差が0より大きい(0<アミン価−酸価)ブロック共重合体であり、かつ該有機顔料が下記化合物(A)、下記化合物(A)の互変異性構造体または下記化合物(A)の水和物であることを特徴とするインクジェットインク。
【化1】

【請求項2】
前記高分子分散剤が、含窒素芳香族ヘテロ環、含窒素芳香族ヘテロ環の塩、または芳香族アミンを構造の一部に有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項3】
前記高分子分散剤が、下記一般式(I)で表される部分構造を有する高分子化合物であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェットインク。
一般式(I)
−(A)−(B)−(C)
〔式中、A、B、Cは各々高分子化合物を構成する単量体を表し、a、b、cは各々の単量体の高分子化合物中における構成モル比率を表す。
単量体AおよびBは、それぞれエチレン性不飽和モノマーであり、単量体Aおよび単量体Bの少なくとも一方は、1)スチレン類、アクリル酸またはメタクリル酸の炭素数が1〜24のアルキルエステル、2)アクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシ−炭素数が2〜6のアルキルエステル、3)アクリル酸またはメタクリル酸のジヒドロキシ−炭素数が2〜6のアルキルエステル、及び4)ポリ−炭素数が2〜4のアルキレングリコールエステル基(ここで、エステル基は、炭素数が1〜24のアルコキシ基で置換されていることができる)を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル、からなる群より選ばれるエチレン性不飽和モノマーである。単量体Cは、1)アミノ置換スチレン、2)炭素数が1〜4のアルキル基を1または2つ有するアミノ置換スチレン、3)ビニルピリジンまたはその塩、4)炭素数が1〜4のアルキル基置換ビニルピリジンまたはその塩、4)ビニルイミダゾールまたはその塩、及び5)炭素数が1〜4のアルキル基置換イミダゾールまたはその塩、からなる群より選ばれるエチレン性不飽和アミノモノマーである。
a、b、cは各々の単量体の高分子化合物中における構成モル比率(モル%)を表し、a+bは0〜99モル%、cは1〜100モル%である。〕
【請求項4】
前記単量体Cが、4−ビニルピリジンであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【請求項5】
前記水溶性有機溶媒の少なくとも1種が、グリコールエーテル類またはアルカンジオール類であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【請求項6】
水溶性樹脂を含有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【請求項7】
有機顔料が含有するCl塩およびK塩の総量が、2000ppm以下であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のインクジェットインクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法。

【公開番号】特開2012−97129(P2012−97129A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243233(P2010−243233)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(305002394)コニカミノルタIJ株式会社 (317)
【Fターム(参考)】