説明

インクジェットインク組成物、及び、インクジェット記録方法

【課題】硬化性に優れ、かつ、筋ムラがなく、光沢性及び柔軟性に優れた画像が得られるインクジェットインク組成物、並びに、インクジェット記録方法を提供すること。
【解決手段】(成分A)N−ビニルラクタム類、(成分B)多官能ビニルエーテル化合物、(成分C)式(I)で表される化合物、及び、(成分D)炭素数8以上13以下の鎖状炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレート、(成分E)重合開始剤、を含有するインクジェットインク組成物、並びに、前記インクジェットインク組成物をインクジェット方式により吐出して被記録体上に画像を形成する画像形成工程、及び、(b)得られた画像に活性放射線を照射して、前記インク組成物を硬化させる硬化工程を含むインクジェット記録方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットインク組成物、及び、インクジェット記録方法に関する。
【0002】
画像データ信号に基づき、紙などの被記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式などがある。
インクジェット方式は、印刷装置が安価であり、かつ、印刷時に版を必要とせず、必要とされる画像部のみにインク組成物を吐出し被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インク組成物を効率良く使用でき、特に小ロット生産の場合にランニングコストが安い。さらに、騒音が少なく、画像記録方式として優れており、近年注目を浴びている。
中でも、紫外線などの放射線の照射により硬化可能なインクジェット記録用インク組成物(放射線硬化型インクジェット記録用インク組成物)は、紫外線などの放射線の照射によりインク組成物の成分の大部分が硬化するため、溶剤系インク組成物と比べて乾燥性に優れ、また、画像がにじみにくいことから、種々の被記録媒体に印字できる点で優れた方式である。
公知のインクジェット記録用インク組成物として、特許文献1及び2が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−84419号公報
【特許文献2】特表2004/536925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、硬化性に優れ、かつ、筋ムラがなく、光沢性及び柔軟性に優れた画像が得られるインクジェットインク組成物、並びに、インクジェット記録方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、下記<1>又は<9>に記載の手段により達成された。好ましい実施態様である<2>〜<8>と共に以下に示す。
<1>(成分A)N−ビニルラクタム類、(成分B)多官能ビニルエーテル化合物、(成分C)式(I)で表される化合物、(成分D)炭素数8以上13以下の鎖状炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレート、及び、(成分E)重合開始剤、を含有するインクジェットインク組成物、
【0006】
【化1】

式(I)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、X1は単結合を含む2価の連結基を表し、R2〜R10は各々独立に、水素原子、又は、アルキル基を表す。
<2>成分Dが、炭素数10以上13以下の鎖状炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートである、<1>に記載のインクジェットインク組成物、
<3>シアン、マゼンタ、イエロー、及び、ブラックよりなる群から選択される少なくとも1種の着色剤を含有する、<1>又は<2>に記載のインクジェットインク組成物、
<4>成分A及び成分Bの総量が、11.0〜32.0重量%であり、成分C及び成分Dの総量が、33.0〜60.0重量%である、<1>〜<3>いずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<5>成分Aの含有量が5〜35重量%であり、成分Bの含有量が1.5〜10重量%であり、成分Cの含有量が24〜55重量%であり、成分Dの含有量が3〜25重量%である、<1>〜<4>いずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<6>多官能(メタ)アクリレート化合物を含有する、<1>〜<4>いずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<7>フッ素化合物及びシリコーン化合物を実質的に含有しない、<1>〜<6>いずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<8>成分Cの含有量がインク組成物全体の28重量%以上である、<1>〜<7>いずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<9>(a)<1>〜<8>いずれか1つに記載のインクジェットインク組成物をインクジェット方式により吐出して被記録媒体上に画像を形成する画像形成工程、及び、(b)得られた画像に活性放射線を照射して、前記インク組成物を硬化させる硬化工程を含むことを特徴とするインクジェット記録方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、硬化性に優れ、かつ、筋ムラがなく、光沢性及び柔軟性に優れた画像が得られるインクジェットインク組成物、並びに、インクジェット記録方法を提供を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のインクジェットインク組成物(以下、「インク組成物」ともいう。)は、(成分A)N−ビニルラクタム類、(成分B)多官能ビニルエーテル化合物、(成分C)式(I)で表される化合物、(成分D)炭素数8以上13以下の鎖状炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレート、及び、(成分E)重合開始剤、を含有することを特徴とする。
以下、「(成分A)N−ビニルラクタム類」等を単に「成分A」等ともいう。
【0009】
【化2】

式(I)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、X1は単結合を含む2価の連結基を表し、R2〜R10は各々独立に、水素原子、又は、アルキル基を表す。
【0010】
本発明のインク組成物は、活性放射線により硬化可能な油性のインク組成物である。「活性放射線」とは、その照射によりインク組成物中に開始種を発生させるエネルギーを付与できる放射線であり、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、電子線などを包含する。中でも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点から紫外線及び電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。
【0011】
活性放射線硬化型のインクジェット印刷により得た印刷物は、水性インクジェット、溶剤インクジェットにより得た印刷物に比べ、硬化膜の光沢性が低く、筋ムラが目立つといわれている。これは、インクジェット着弾直後に打滴が活性放射線によって硬化されることで、打滴の着弾形状が保存されることが1つの要因と考えられる。
一方、本発明のインク組成物は、印刷物の光沢性に優れ、筋ムラの少ないインクジェット画像を提供する。理由は定かではないが、吐出された成分A〜Eを含むインク組成物は、着弾直後の活性放射線照射によって、打滴の内部から硬化するためであると推定される。
【0012】
特に酸素溶存量が高いと推定される成分C及びDの存在により、硬化膜の最表面が酸素重合阻害をうけ、初期反応速度を低下させる。また、アクリレートとの反応性が遅い成分Bがインク滴の反応性を更に遅らせることで、打滴の最表面が長時間液状に保たれ、打滴最表面が濡れ広がり、合一が促進されると推定される。また、硬化膜を軟化させる成分Dを加えることにより、硬化中の膜のレベリングを更に促進させ、打滴の平滑性が更に促進される。その結果、より平滑な平面が形成され、高度な光沢性を有し、筋ムラの目立たない画像が得られると推定される。
特に酸素溶存量の少ないと推定される成分A及び成分Bよりも、酸素溶存量が高いと推定される成分C及び成分Dの配合量を多くすることにより後者の表面重合抑制効果を支配的とすることができる。
同一部分を重ね打ちにより印刷するマルチパスモードでの印刷では、重ね打ちの際に先に打滴された液滴上に打滴が重なるケースが発生する。この際、先に打滴されたインク膜の最表面が液状であると、後に打たれた打滴の濡れ広がりが大きくなり、より高い光沢度が得られる。
【0013】
打滴の硬化状態のコントロールにあたっては、打滴のごく最表面のみが液状態を保持することが重要である。打滴内部までもが液状態を長時間保持してしまうと最終的に印刷物の表面がべとついたり、重ね打ち時に後から着弾した打滴が膜の内部に入り込み、印刷物にクレーター状のくぼみを形成してしまう。その結果、逆に印刷物表面の平滑性を失うことになりかねない。また、内部の硬化性が低いと、着弾後の打滴干渉(打滴の重なりにより打滴位置がずれる)を生じさせることで、筋ムラを目立たせてしまうことも考えられる。成分Aの配合により、高い内部の硬化性を保持できると推定される。
本発明によれば、成分A〜Dの組み合わせにより、打滴内部の硬化性を強く促進しつつ、硬化膜最表面のみを選択的に長時間液状に保つことが実現でき、光沢性が高く、筋ムラの目立たない印刷物が得られたものと推定される。
【0014】
以下これらの成分A〜Eについて順に説明する。
(成分A)N−ビニルラクタム類
本発明のインク組成物は、(成分A)N−ビニルラクタム類を含有する。
成分Aとしては、式(A)で表される化合物が好ましい。
【0015】
【化3】

【0016】
式(A)中、nは2〜6の整数を表し、インク組成物が硬化した後の柔軟性、被記録媒体との密着性、及び、原材料の入手性の観点から、nは3〜6の整数であることが好ましく、nが3又は5であることがより好ましく、nが5である、すなわちN−ビニルカプロラクタムであることが特に好ましい。N−ビニルカプロラクタムは安全性に優れ、汎用的で比較的安価に入手でき、特に良好なインク硬化性、及び硬化膜の被記録媒体への密着性が得られるので好ましい。
また、上記N−ビニルラクタム類は、ラクタム環上にアルキル基、アリール基等の置換基を有していてもよく、飽和又は不飽和環構造を連結していてもよい。
成分Aは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0017】
成分Aの配合量は、5重量%以上35重量%以下(5〜35重量%)が好ましく、8重量%以上24重量%以下がより好ましく、9重量%以上20重量%以下が更に好ましく、10重量%以上18重量%以下が特に好ましい。
なお、本発明において数値範囲を表す「A〜B」の記載は「A以上B以下」と同義である。
成分Aを上記の配合範囲とすることにより、本発明のインク組成物が印刷物内部の硬化性を強く促進しつつ、硬化膜最表面のみを選択的に長時間液状を保つ硬化プロファイルが促進され、光沢性が高く、筋ムラの目立たない印刷物を与えることに寄与する。
【0018】
(成分B)多官能ビニルエーテル化合物
本発明のインク組成物は多官能ビニルエーテル化合物を含有する。「多官能」とは、2官能以上を意味する。
成分Bは、硬化性の観点から、2〜4官能が好ましく、2官能ビニルエーテル化合物がより好ましい。
【0019】
多官能ビニルエーテル化合物として、ジ又はトリビニルエーテル化合物を以下に例示する。
好適に用いられるビニルエーテル化合物としては、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物が例示できる。
特にエチレングリコール鎖を有する2官能ビニルエーテル化合物が好ましく、この場合、硬化膜の柔軟性、画像の光沢性に優れる。ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテルが好ましく例示でき、トリエチレングリコールジビニルエーテルがより好ましく例示できる。
また、多官能ビニルエーテル化合物のインク組成物中の含有量は、1〜15重量%が好ましく、1.5〜10重量%がより好ましく、2〜8重量%が更に好ましく、2.5〜5重量%が特に好ましい。
上記の範囲内であると、本発明のインク組成物が硬化性、画像の光沢性に優れるインク組成物を与えることに寄与する。
【0020】
(成分C)式(I)で表される化合物
本発明のインク組成物は、光沢性の観点から、(成分C)式(I)で表される化合物を含有する。
【0021】
【化4】

式(I)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、X1は単結合を含む2価の連結基を表し、R2〜R10は各々独立に、水素原子、又は、アルキル基を表す。
【0022】
本発明のインク組成物は、(成分C)式(I)で表される化合物を含有し、かつ、その含有量が、インク組成物の全重量に対し、24〜55重量%であることが好ましい。成分Cを上記の範囲で含有することにより、本発明のインク組成物は、光沢性に優れ、筋ムラの少ない画像を与えることに寄与する。
【0023】
前記式(I)で表される化合物は、アクリレート化合物であっても、メタクリレート化合物であってもよいが、アクリレート化合物、すなわち、R1が水素原子であることが好ましい。
式(I)のX1における2価の連結基としては、本発明の効果を大きく損なうものでない限り特に制限はないが、2価の炭化水素基、又は、炭化水素基及びエーテル結合を組み合わせた2価の基であることが好ましく、2価の炭化水素基、ポリ(アルキレンオキシ)基、又は、ポリ(アルキレンオキシ)アルキル基であることがより好ましい。また、前記2価の連結基の炭素原子数は、1〜60であることが好ましく、1〜40であることがより好ましい。
式(I)におけるX1としては、単結合、2価の炭化水素基、又は、炭化水素基及びエーテル結合を組み合わせた2価の基であることが好ましく、単結合、又は、2価の炭化水素基であることがより好ましく、単結合であることが特に好ましい。
式(I)のR2〜R12におけるアルキル基としては、炭素原子数1〜8のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。また、R2〜R12におけるアルキル基は、直鎖状であっても、分岐を有していてもよく、環構造を有していてもよい。
式(I)におけるR2〜R12としてはそれぞれ独立に、水素原子、又は、炭素原子数1〜8のアルキル基であることが好ましく、水素原子、又は、炭素原子数1〜4のアルキル基であることがより好ましく、水素原子、又は、メチル基であることが更に好ましい。
また、式(I)におけるR2〜R12としては、全てが水素原子であるか、又は、R3〜R5がメチル基であり、かつR2及びR6〜R12が水素原子であることが特に好ましく、R3〜R5がメチル基であり、かつR2及びR6〜R12が水素原子であることが最も好ましい。
【0024】
式(I)で表される化合物の具体例としては、以下に示す化合物(B−1)〜(B−6)を好ましく例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
【化5】

【0026】
これらの中でも、イソボロニルアクリレート(B−1)、イソボロニルメタクリレート(B−2)、ノルボルニルアクリレート(B−3)及びノルボルニルメタクリレート(B−4)が好ましく、イソボロニルアクリレート(B−1)及びイソボロニルメタクリレート(B−2)がより好ましく、イソボロニルアクリレート(B−1)が特に好ましい。
【0027】
本発明のインク組成物は、式(I)で表される化合物を含有し、上述のとおり、特に好ましくはイソボロニルアクリレートを含有する。本発明のインク組成物は、式(I)で表される化合物を含有することで、光沢性に優れ、筋ムラの少ない画像を与えることに寄与する。
式(I)で表される化合物のインク組成物中の含有量は、20重量%〜60重量%が好ましく、より好ましくは、24重量%〜55重量%であり、更に好ましくは、28重量%〜50重量%であり、特に好ましくは、32重量%〜45重量%である。
【0028】
(成分D)炭素数8以上13以下の鎖状炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレート
本発明のインク組成物は、炭素数8以上13以下の鎖状炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートを含有する。具体的には、オクチルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソデシルアクリレート等が挙げられる。
成分Dは、炭素数10〜13の鎖状炭化水素基を有する(メタ)アクリレートであることが好ましい。
炭素数8〜13の鎖状炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートのインク組成物中の含有量は、好ましくは3〜25重量%であり、より好ましくは5〜20重量%であり、更に好ましくは8〜18重量%であり、特に好ましくは10〜16重量%である。
【0029】
本発明のインク組成物は、成分A及び成分Bの総量が、11.0〜32.0重量%であることが好ましく、13.0〜28.0重量%であることがより好ましく、13.0〜22.0重量%であることが特に好ましい。
本発明のインク組成物は、成分C及び成分Dの総量が、33.0〜60.0重量%であることが好ましく、39.0〜53.0重量%であることがより好ましい。
成分A及び成分Bの総量と成分C及び成分Dの総量に関する上記の数値範囲の組み合わせはより好ましい。
【0030】
(成分E)重合開始剤
本発明のインク組成物は、(成分E)重合開始剤を含有する。
重合開始剤は、前記活性放射線等の外部エネルギーを吸収して重合開始種を生成する化合物である。重合開始剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明に用いることができる重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましく挙げられ、光ラジカル重合開始剤がより好ましく挙げられ、α−ヒドロキシケトン化合物、モノアシルホスフィン化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、及び、炭素ハロゲン結合を有する化合物等が更に好ましく挙げられる。これらの重合開始剤の具体例としては、特開2008−208190号公報に記載のラジカル重合開始剤が挙げられる。中でも、芳香族ケトン類及びアシルホスフィン化合物が好ましく挙げられ、α−ヒドロキシケトン化合物及びアシルホスフィン化合物がより好ましく挙げられる。
【0031】
前記芳香族ケトン類としては、α−ヒドロキシケトン化合物が好ましい。
具体的には例えば、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられ、中でも、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン化合物が好ましい。なお、本発明において、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン化合物には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが任意の置換基で置換された化合物も含まれる。置換基としては、ラジカル重合開始剤としての能力を発揮し得る範囲で任意に選択することができ、具体的には炭素数1〜4のアルキル基が例示できる。
【0032】
前記アシルホスフィン化合物としては、特開2008−208190号公報に記載のアシルホスフィンオキサイド化合物が好ましく挙げられ、中でも、モノアシルホスフィンオキサイド化合物がより好ましい。
モノアシルホスフィンオキサイド化合物としては、イソブチリルメチルホスフィン酸メチルエステル、イソブチリルフェニルホスフィン酸メチルエステル、ピバロイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、2−エチルヘキサノイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、ピバロイルフェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、p−トルイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、o−トルイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、2,4−ジメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、p−t−ブチルベンゾイルフェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、アクリロイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、イソブチリルジフェニルホスフィンオキサイド、2−エチルヘキサノイルジフェニルホスフィンオキサイド、o−トルイルジフェニルホスフィンオキサイド、p−t−ブチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、3−ピリジルカルボニルジフェニルホスフィンオキサイド、アクリロイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルホスフィン酸ビニルエステル、アジポイルビスジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイルジフェニルホスフィンオキサイド、p−トルイルジフェニルホスフィンオキサイド、4−(t−ブチル)ベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、テレフタロイルビスジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、バーサトイルジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−2−エチルヘキサノイルジフェニルホスフィンオキサイド、1−メチルシクロヘキサノイルジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、ピバロイルフェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられ、中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドが好ましい。
【0033】
本発明のインク組成物は、α−ヒドロキシケトン化合物、及び/又は、モノアシルホスフィンオキサイド化合物を含有することが好ましく、硬化性、耐ブロッキング性の観点から、α−ヒドロキシケトン化合物とモノアシルホスフィンオキサイド化合物との併用がより好ましい。
【0034】
本発明のインク組成物は、特定の活性エネルギー線を吸収して重合開始剤の分解を促進させるため、増感剤を含有することが好ましい。
増感剤としては、例えば、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン等)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル等)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン等)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン等)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー等)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン等)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン等)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム等)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン等)、チオキサントン類(例えば、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン等)等が挙げられる。
これらの中でも、チオキサントン類が好ましく例示できる。
また、増感剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
本発明のインク組成物における重合開始剤の含有量は、硬化性、硬化膜内での硬化度の均一性の観点から、重合性化合物の総含有量に対して、0.01〜35重量%であることが好ましく、0.5〜20重量%であることがより好ましく、1.0〜15重量%であることが更に好ましい。
また、増感剤を用いる場合、重合開始剤の総含有量は、増感剤の含有量に対して、重合開始剤:増感剤の重量比で、好ましくは200:1〜1:200、より好ましくは50:1〜1:50、更に好ましくは20:1〜1:5の範囲である。
増感剤を用いる場合、本発明のインク組成物における増感剤の含有量は、インクの着色性の観点から、インク組成物の全重量に対して、0.01〜20重量%が好ましく、0.1〜15重量%がより好ましく、0.5〜10重量%が更に好ましい。
【0036】
また、本発明において、成分A〜成分E及び以下に説明する任意成分の好ましい材料や好ましい配合範囲の組み合わせはより好ましい。
【0037】
(成分F)オリゴマー
本発明のインク組成物は、(成分F)オリゴマーを含有することが好ましい。
オリゴマーは、一般に有限個(一般的には5〜100個)のモノマーが結合した重合体であり、オリゴマーと称される公知の化合物を任意に選択可能であるが、本発明においては、重量平均分子量が400〜10,000(より好ましくは500〜5,000)の重合体を選択することが好ましい。
前記オリゴマーは、ラジカル重合性基を有していてもよい。前記ラジカル重合性基としては、エチレン性不飽和基が好ましく、(メタ)アクリロキシ基がより好ましい。
【0038】
本発明におけるオリゴマーとしては、いかなるオリゴマーでもよいが、例えば、オレフィン系(エチレンオリゴマー、プロピレンオリゴマーブテンオリゴマー等)、ビニル系(スチレンオリゴマー、ビニルアルコールオリゴマー、ビニルピロリドンオリゴマーアクリレートオリゴマー、メタクリレートオリゴマー等)、ジエン系(ブタジエンオリゴマー、クロロプレンゴム、ペンタジエンオリゴマー等)、開環重合系(ジ−,トリ−,テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチルイミン等)、重付加系(オリゴエステルアクリレート、ポリアミドオリゴマー、ポリイソシアネートオリゴマー)、付加縮合オリゴマー(フェノール樹脂、アミノ樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂等)等を挙げることができる。この中で、オリゴエステル(メタ)アクリレートが好ましく、その中では、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートがより好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートが更に好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレートが好ましく挙げられるが、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートがより好ましく挙げられる。
また、ウレタン(メタ)アクリレートは、4官能以下のウレタン(メタ)アクリレートであることが好ましく、2官能以下のウレタン(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレートを含有することにより、基材の密着性に優れ、硬化性に優れるインク組成物が得られる。
オリゴマーについて、オリゴマーハンドブック(吉川淳二監修、(株)化学工業日報社)も参照することができる。
【0039】
また、オリゴマーの市販品としては、以下に示すものが例示できる。
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、第一工業製薬(株)製のR1204、R1211、R1213、R1217、R1218、R1301、R1302、R1303、R1304、R1306、R1308、R1901、R1150等や、ダイセル・サイテック(株)製のEBECRYLシリーズ(例えば、EBECRYL230、270、4858、8402、8804、8807、8803、9260、1290、1290K、5129、4842、8210、210、4827、6700、4450、220)、新中村化学工業(株)製のNKオリゴU−4HA、U−6HA、U−15HA、U−108A、U200AX等、東亞合成(株)製のアロニックスM−1100、M−1200、M−1210、M−1310、M−1600、M−1960等が挙げられる。
ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ダイセル・サイテック(株)製のEBECRYLシリーズ(例えば、EBECRYL770、IRR467、81、84、83、80、675、800、810、812、1657、1810、IRR302、450、670、830、870、1830、1870、2870、IRR267、813、IRR483、811等)、東亞合成(株)製のアロニックスM−6100、M−6200、M−6250、M−6500、M−7100、M−8030、M−8060、M−8100、M−8530、M−8560、M−9050等が挙げられる。
また、エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ダイセル・サイテック(株)製のEBECRYLシリーズ(例えば、EBECRYL600、860、2958、3411、3600、3605、3700、3701、3703、3702、3708、RDX63182、6040等)等が挙げられる。
【0040】
オリゴマーは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
本発明のインク組成物におけるオリゴマーの含有量としては、インク組成物の全重量に対して、0.1〜50重量%であることが好ましく、0.5〜20重量%であることがより好ましく、1〜10重量%であることが更に好ましい。
【0041】
(成分G)他の重合性化合物
本発明のインク組成物は、成分A、成分B、成分C、成分D以外の、他の重合性化合物を含有していてもよい。
他の重合性化合物としては、エチレン性不飽和化合物が好ましい。
他の重合性化合物としては、公知の重合性化合物を用いることができ、成分A、成分B、成分C、成分D及び成分F以外の(メタ)アクリレート化合物、ビニルエーテル化合物、アリル化合物、N−ビニル化合物、不飽和カルボン酸類等が例示できる。例えば、特開2009−221414号公報に記載のラジカル重合性モノマー、特開2009−209289号公報に記載の重合性化合物、特開2009−191183号公報に記載のエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
他の重合性化合物としては、(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、アクリレート化合物であることがより好ましい。
他の重合性化合物の具体例としては、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、及び、プロピレンオキサイド(PO)変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が好ましく挙げられる。
また、本発明のインク組成物は、その他の重合性化合物として、多官能重合性化合物を含有することが好ましく、多官能(メタ)アクリレート化合物を含有することがより好ましい。
【0042】
他の重合性化合物としては、芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物の芳香族基の環状構造には、O、N、S等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物が有していてもよい芳香環構造としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、インデン、フルオレン、1H−フェナレン、フェナントレン、トリフェニレン、ピレン、ナフタセン、テトラフェン、ビフェニル、as−インダセン、s−インダセン、アセナフチレン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、クリセン、プレイアデン、フラン、チオフェン、ピロリン、ピラゾリン、イミダゾリン、イソオキサゾリン、イソチアゾリン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアゾール及びテトラゾールよりなる群から選ばれた環構造が好ましく例示できる。
これらの中でも、芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物としては、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが特に好ましく例示できる。
【0043】
他の重合性化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エチレン性不飽和基を有する無水物、アクリロニトリル、スチレン、更に種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。
他の重合性化合物として具体的には、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、オリゴエステル(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、エポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸誘導体、その他、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体が挙げられる。
これらの中でも、PO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートが好ましく例示できる。
【0044】
更に具体的には、山下晋三編「架橋剤ハンドブック」(1981年、大成社);加藤清視編「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編「UV・EB硬化技術の応用と市場」79頁(1989年、(株)シーエムシー出版);滝山栄一郎著「ポリエステル樹脂ハンドブック」(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品又は業界で公知のラジカル重合性又は架橋性のモノマー、オリゴマー及びポリマーを用いることができる。
他の重合性化合物の分子量は、80〜2,000であることが好ましく、80〜1,000であることがより好ましく、80〜800であることが更に好ましい。
【0045】
本発明のインク組成物が他の重合性化合物を含有する場合、本発明のインク組成物における他の重合性化合物の含有量は、インク組成物の全重量に対し、1〜30重量%が好ましく、3〜25重量%がより好ましく、5〜20重量%が特に好ましい。
また、本発明のインク組成物が多官能重合性化合物を含有する場合、多官能重合性化合物の含有量は、インク組成物の全重量に対し、1〜20重量%であることが好ましく、2〜10重量%であることがより好ましく、3〜7重量%であることが特に好ましい。
【0046】
本発明のインク組成物は、界面活性剤、着色剤、分散剤、その他の成分を含有することができる。
<界面活性剤>
光沢性、筋ムラを抑制する観点から、本発明のインク組成物は、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤を含有しないか、又は、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤の総含有量が、インク組成物の全重量に対し、0重量%を超え0.1重量%以下が好ましく、0重量%を超え0.05重量%以下がより好ましい。
なお、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤以外の界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。
【0047】
本発明のインク組成物中における界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤の含有量は、インク組成物全体の重量に対し、0〜0.1重量%であることが好ましく、0〜0.05重量%であることが更に好ましい。特に好ましくは、含有しないことである。
硬化膜の表面エネルギーを低下させる界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤は、特にマルチパスモードで描画を行った場合、先に打滴され、硬化又は半硬化された液滴の上に重ねがきされた打滴の接触角を大きく増大させ、画像の光沢が低下するものと推定される。
【0048】
<着色剤>
本発明のインク組成物は、形成された画像部の視認性を向上させるため、好ましくは着色剤を含有する。
本発明のインク組成物は、シアン、マゼンタ、イエロー、及び、ブラックよりなる群から選択される少なくとも1種の着色剤を含有する。
着色剤としては、特に制限はないが、耐候性に優れ、色再現性に富んだ顔料及び油溶性染料が好ましく、溶解性染料等の公知の着色剤から任意に選択して使用できる。着色剤は、活性放射線による硬化反応の感度を低下させないという観点から、重合禁止剤として機能しない化合物、特にラジカル重合を禁止しない化合物を選択することが好ましい。
【0049】
本発明に使用できる顔料としては、特に限定されるわけではないが、例えばカラーインデックスに記載される下記の番号の有機又は無機顔料が使用できる。
赤又はマゼンタ顔料としては、Pigment Red 3,5,19,22,31,38,42,43,48:1,48:2,48:3,48:4,48:5,49:1,53:1,57:1,57:2,58:4,63:1,81,81:1,81:2,81:3,81:4,88,104,108,112,122,123,144,146,149,166,168,169,170,177,178,179,184,185,208,216,226,257、Pigment Violet 3,19,23,29,30,37,50,88、Pigment Orange 13,16,20,36、青又はシアン顔料としては、Pigment Blue 1,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,17−1,22,27,28,29,36,60、緑顔料としては、Pigment Green 7,26,36,50、黄顔料としては、Pigment Yellow 1,3,12,13,14,17,34,35,37,55,74,81,83,93,94,95,97,108,109,110,120,137,138,139,153,154,155,157,166,167,168,180,185,193、黒顔料としては、Pigment Black 7,28,26、白色顔料としては、Pigment White 6,18,21などが目的に応じて使用できる。
本発明においては、水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で分散染料を用いることもできる。分散染料は一般に水溶性の染料も包含するが、本発明においては水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で用いることが好ましい。
【0050】
分散染料の好ましい具体例としては、C.I.ディスパースイエロー 5,42,54,64,79,82,83,93,99,100,119,122,124,126,160,184:1,186,198,199,201,204,224及び237;C.I.ディスパーズオレンジ 13,29,31:1,33,49,54,55,66,73,118,119及び163;C.I.ディスパーズレッド 54,60,72,73,86,88,91,92,93,111,126,127,134,135,143,145,152,153,154,159,164,167:1,177,181,204,206,207,221,239,240,258,277,278,283,311,323,343,348,356及び362;C.I.ディスパーズバイオレット 33;C.I.ディスパーズブルー 56,60,73,87,113,128,143,148,154,158,165,165:1,165:2,176,183,185,197,198,201,214,224,225,257,266,267,287,354,358,365及び368;並びにC.I.ディスパーズグリーン 6:1及び9;等が挙げられる。
【0051】
着色剤は、インク組成物に添加された後、適度に当該インク組成物内で分散することが好ましい。着色剤の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の各分散装置を用いることができる。
【0052】
着色剤は、インク組成物の調製に際して、各成分と共に直接添加してもよい。また、分散性向上のため、あらかじめ溶剤又は本発明に使用する重合性化合物のような分散媒体に添加し、均一分散あるいは溶解させた後、配合することもできる。
本発明において、溶剤が硬化画像に残留する場合の耐溶剤性の劣化、及び、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound:揮発性有機化合物)の問題を避けるためにも、着色剤は、重合性化合物のような分散媒体に予め添加して、配合することが好ましい。なお、分散適性の観点のみを考慮した場合、着色剤の添加に使用する重合性化合物は、最も粘度の低いモノマーを選択することが好ましい。着色剤はインク組成物の使用目的に応じて、1種又は2種以上を適宜選択して用いればよい。
【0053】
なお、インク組成物中において固体のまま存在する顔料などの着色剤を使用する際には、着色剤粒子の平均粒径は、好ましくは0.005〜0.5μm、より好ましくは0.01〜0.45μm、更に好ましくは0.015〜0.4μmとなるよう、着色剤、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定することが好ましい。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インク組成物の保存安定性、透明性及び硬化感度を維持することができるので好ましい。
インク組成物中における着色剤の含有量は、色、及び使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の重量に対し、0.01〜30重量%であることが好ましい。
【0054】
<分散剤>
本発明のインク組成物は、分散剤を含有することが好ましい。特に顔料を使用する場合において、顔料をインク組成物中に安定に分散させるため、分散剤を含有することが好ましい。分散剤としては、高分子分散剤が好ましい。なお、本発明における「高分子分散剤」とは、重量平均分子量が1,000以上の分散剤を意味する。
【0055】
高分子分散剤としては、DISPERBYK−101、DISPERBYK−102、DISPERBYK−103、DISPERBYK−106、DISPERBYK−111、DISPERBYK−161、DISPERBYK−162、DISPERBYK−163、DISPERBYK−164、DISPERBYK−166、DISPERBYK−167、DISPERBYK−168、DISPERBYK−170、DISPERBYK−171、DISPERBYK−174、DISPERBYK−182(BYKケミー社製);EFKA4010、EFKA4046、EFKA4080、EFKA5010、EFKA5207、EFKA5244、EFKA6745、EFKA6750、EFKA7414、EFKA745、EFKA7462、EFKA7500、EFKA7570、EFKA7575、EFKA7580(エフカアディティブ社製);ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100(サンノプコ(株)製);ソルスパース(SOLSPERSE)3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、22000、24000、26000、28000、32000、36000、39000、41000、71000などの各種ソルスパース分散剤(Noveon社製);アデカプルロニックL31、F38、L42、L44、L61、L64、F68、L72、P95、F77、P84、F87、P94、L101、P103、F108、L121、P−123((株)ADEKA製)、イオネットS−20(三洋化成工業(株)製);ディスパロン KS−860、873SN、874(高分子分散剤)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル型)(楠本化成(株)製)が挙げられる。
インク組成物中における分散剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の重量に対し、0.05〜15重量%であることが好ましい。
【0056】
<その他の成分>
本発明のインク組成物には、必要に応じて、前記各成分以外に、共増感剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、導電性塩類、溶剤、高分子化合物、塩基性化合物等を含むことができる。これらその他の成分としては、公知のものを用いることができ、例えば、特開2009−221416号公報に記載されているものが挙げられる。
【0057】
また、本発明のインク組成物は、保存性、及び、ヘッド詰まりの抑制という観点から、重合禁止剤を含有することが好ましい。
重合禁止剤の含有量は、本発明のインク組成物の全重量に対し、200〜20,000ppmであることが好ましい。
重合禁止剤としては、ニトロソ系重合禁止剤や、ヒンダードアミン系重合禁止剤、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl等が挙げられる。
【0058】
<インク物性>
本発明においては、吐出性を考慮し、25℃における粘度が40mPa・s以下であるインク組成物を使用することが好ましい。より好ましくは5〜40mPa・s、更に好ましくは7〜30mPa・sである。また、吐出温度(好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃)における粘度が、3〜15mPa・sであることが好ましく、3〜13mPa・sであることがより好ましい。本発明のインク組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。室温(25℃)での粘度を高く設定することにより、多孔質な被記録媒体(支持体)を用いた場合でも、被記録媒体中へのインク組成物の浸透を回避し、未硬化モノマーの低減が可能となる。更にインク組成物の液滴着弾時のインク滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善されるので好ましい。
【0059】
本発明のインク組成物の25℃における表面張力は、20〜35mN/mであることが好ましく、23〜33mN/mであることがより好ましい。ポリオレフィン、PET、コート紙、非コート紙など様々な被記録媒体へ記録する場合、滲み及び浸透の観点から、20mN/m以上が好ましく、濡れ性の点では、35mN/m以下が好ましい。
【0060】
(インクジェット記録方法、インクジェット記録装置及び印刷物)
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインク組成物をインクジェット記録用として被記録媒体(支持体、記録材料等)上に吐出し、被記録媒体上に吐出されたインク組成物に活性エネルギー線を照射し、インクを硬化して画像を形成する方法である。
【0061】
より具体的には、本発明のインクジェット記録方法は、(a)本発明のインクジェットインク組成物をインクジェット方式により吐出して被記録媒体上に画像を形成する画像形成工程、及び、(b)得られた画像に活性放射線を照射して、前記インク組成物を硬化する硬化工程を含むことを特徴とする。
本発明のインクジェット記録方法は、上記(a)及び(b)工程を含むことにより、被記録媒体上において硬化したインク組成物により画像が形成される。
また、本発明の別の観点は、本発明のインクジェット記録方法によって記録された印刷物である。
【0062】
本発明のインクジェット記録方法における(a)工程には、以下に詳述するインクジェット記録装置が用いることができる。
【0063】
<インクジェット記録装置>
本発明のインクジェット記録方法に用いることができるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、目的とする解像度を達成し得る公知のインクジェット記録装置を任意に選択して使用することができる。すなわち、市販品を含む公知のインクジェット記録装置であれば、いずれも、本発明のインクジェット記録方法の(a)工程における被記録媒体へのインクの吐出を実施することができる。
【0064】
本発明で用いることができるインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、活性エネルギー線源を含む装置が挙げられる。
インク供給系は、例えば、本発明のインク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1〜100pl、より好ましくは8〜30plのマルチサイズドットを、好ましくは320×320〜4,000×4,000dpi、より好ましくは400×400〜1,600×1,600dpi、更に好ましくは720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0065】
上述したように、本発明のインク組成物は、吐出されるインク組成物を一定温度にすることが好ましいことから、インクジェット記録装置には、インク組成物温度の安定化手段を備えることが好ましい。一定温度にする部位はインクタンク(中間タンクがある場合は中間タンク)からノズル射出面までの配管系、部材の全てが対象となる。すなわち、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱及び加温を行うことができる。
温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断若しくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、あるいは、熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うと共に、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【0066】
上記のインクジェット記録装置を用いて、本発明のインク組成物の吐出は、インク組成物を、好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃に加熱して、インク組成物の粘度を、好ましくは3〜15mPa・s、より好ましくは3〜13mPa・sに下げた後に行うことが好ましい。特に、本発明のインク組成物として、25℃におけるインク粘度が50mPa・s以下であるものを用いると、良好に吐出が行えるので好ましい。この方法を用いることにより、高い吐出安定性を実現することができる。
本発明のインク組成物のような放射線硬化型インク組成物は、概して通常インクジェット記録用インクで使用される水性インクより粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。インクの粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こす。したがって、吐出時のインクの温度はできるだけ一定に保つことが必要である。よって、本発明において、インクの温度の制御幅は、好ましくは設定温度の±5℃、より好ましくは設定温度の±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃とすることが適当である。
【0067】
次に、(b)吐出されたインク組成物、すなわち得られた画像に活性放射線を照射して、前記インク組成物を硬化する工程について説明する。
被記録媒体上に吐出されたインク組成物は、活性エネルギー線を照射することによって硬化する。これは、本発明のインク組成物に含まれる重合開始剤が活性エネルギー線の照射により分解して、ラジカルなどの重合開始種を発生し、その開始種の機能に重合性化合物の重合反応が、生起、促進されるためである。このとき、インク組成物において重合開始剤と共に増感剤が存在すると、系中の増感剤が活性エネルギー線を吸収して励起状態となり、重合開始剤と接触することによって重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
【0068】
ここで、使用される活性エネルギー線は、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光又は赤外光などが使用され得る。活性エネルギー線のピーク波長は、増感剤の吸収特性にもよるが、例えば、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、320〜420nmであることが更に好ましく、活性エネルギー線が、ピーク波長が340〜400nmの範囲の紫外線であることが特に好ましい。
【0069】
また、本発明のインク組成物の、重合開始系は、低出力の活性エネルギー線であっても十分な感度を有するものである。したがって、露光面照度が、好ましくは10〜4,000mW/cm2、より好ましくは20〜2,500mW/cm2で硬化させることが適当である。
【0070】
活性エネルギー線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェット記録用インク組成物の硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。しかしながら、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。さらに、LED(UV−LED)、LD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。
また、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を活性エネルギー線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。更に一層短い波長が必要とされる場合、米国特許第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性エネルギー線を放出し得るLEDを開示している。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で特に好ましい活性エネルギー線源はUV−LEDであり、特に好ましくは340〜400nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
なお、LEDの被記録媒体上での最高照度は、10〜2,000mW/cm2であることが好ましく、20〜1,000mW/cm2であることがより好ましく、50〜800mW/cm2であることが特に好ましい。
【0071】
本発明のインク組成物は、このような活性エネルギー線に、好ましくは0.01〜120秒、より好ましくは0.1〜90秒照射されることが適当である。
活性エネルギー線の照射条件並びに基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、インク組成物の吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査することによって行われる。活性エネルギー線の照射は、インク組成物の着弾後、一定時間(好ましくは0.01〜0.5秒、より好ましくは0.01〜0.3秒、更に好ましくは0.01〜0.15秒)をおいて行われることになる。このようにインク組成物の着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、被記録媒体に着弾したインク組成物が硬化前に滲むことを防止することが可能となる。また、多孔質な被記録媒体に対しても光源の届かない深部までインク組成物が浸透する前に露光することができるため、未反応モノマーの残留を抑えることができるので好ましい。
さらに、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させてもよい。国際公開第99/54415号パンフレットでは、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されており、このような硬化方法もまた、本発明のインクジェット記録方法に適用することができる。
【0072】
上述したようなインクジェット記録方法を採用することにより、表面の濡れ性が異なる様々な被記録媒体に対しても、着弾したインク組成物のドット径を一定に保つことができ、画質が向上する。なお、カラー画像を得るためには、明度の低い色から順に重ねていくことが好ましい。明度の低いインク組成物から順に重ねることにより、下部のインク組成物まで照射線が到達しやすくなり、良好な硬化感度、残留モノマーの低減、密着性の向上が期待できる。また、照射は、全色を吐出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
このようにして、本発明のインク組成物は、活性エネルギー線の照射により高感度で硬化することで、被記録媒体表面に画像を形成することができる。
【0073】
本発明のインク組成物は、複数のインクジェット記録用インクからなるインクセットとして使用することが好ましい。
本発明のインクジェット記録方法において、吐出する各着色インク組成物の順番は、特に限定されるわけではないが、明度の低い着色インク組成物から被記録媒体に付与することが好ましく、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックを使用する場合には、イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。また、これにホワイトを加えて使用する場合にはホワイト→イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。さらに、本発明はこれに限定されず、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタ、シアン、マゼンタ、グレー、ブラック、ホワイトのインク組成物との計7色が少なくとも含まれる本発明のインクセットを好ましく使用することもでき、その場合には、ホワイト→ライトシアン→ライトマゼンタ→イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。
【0074】
本発明において、被記録媒体としては、特に限定されず、支持体や記録材料として公知の被記録媒体を使用することができる。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。また、本発明における被記録媒体として、非吸収性被記録媒体が好適に使用することができる。
【実施例】
【0075】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、以下の記載における「部」とは、特に断りのない限り「重量部」を示すものとする。
【0076】
本発明で使用した素材は下記に示す通りである。
・IRGALITE BLUE GLVO(シアン顔料、チバスペシャルティーケミカルズ社製)
・CINQUASIA MAGENTA RT−355−D(マゼンタ顔料、チバスペシャルティーケミカルズ社製)
・NOVOPERM YELLOW H2G(イエロー顔料、クラリアント社製)
・SPECIAL BLACK 250(ブラック顔料、チバスペシャルティーケミカルズ社製)
・SOLSPERSE32000(Noveon社製分散剤)
・V−CAP(N−ビニルカプロラクタム、ISP社製)
・Rapicure DVE-2(ジエチレングリコールジビニルエーテル、ISP社製)
・Rapicure DVE-3(トリエチレングリコールジビニルエーテル、ISP社製)
・Rapicure CHVE(テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ISP社製)
・SR9003(プロピレングリコール(PPG)変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、Sartomer社製)
・SR506(イソボロニルアクリレート、Sartomer社製)
・SR395(イソデシルアクリレート、Sartomer社製)
・SR440(イソオクチルアクリレート、Sartomer社製)
・SR489(トリデシルアクリレート、Sartomer社製)
・SR484(オクタデシルアクリレート、Sartomer社製)
・SR341(3−メチルペンタンジオールジアクリレート、Sartomer社製)
・CN964 A85(2官能脂肪族ウレタンアクリレート・15重量%トリプロピレングリコールジアクリレート含有、Sartomer社製)
・FIRSTCURE ST−1(重合禁止剤、トリス(N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミン)アルミニウム塩(10重量%)とフェノキシエチルアクリレート(90重量%)との混合物、Chem First社製)
・LUCIRIN TPO(光重合開始剤、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、BASF社製)
・IRGACURE184(光重合開始剤、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チバガイギー社製)
・SpeedcureITX(光重合開始剤、イソプロピルチオキサントン、LAMBSON社製)
【0077】
(シアンミルベースAの調製)
IRGALITE BLUE GLVOを300重量部と、SR9003を620重量部と、SOLSPERSE32000を80重量部とを撹拌混合し、シアンミルベースAを得た。なお、シアンミルベースAの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで4時間分散を行った。
【0078】
(マゼンタミルベースBの調製)
CINQUASIA MAGENTA RT−355 Dを300重量部と、SR9003を600重量部と、SOLSPERSE32000を100重量部とを撹拌混合し、マゼンタミルベースBを得た。なお、マゼンタミルベースBの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで10時間分散を行った。
【0079】
(イエローミルベースCの調製)
NOVOPERM YELLOW H2Gを300重量部と、SR9003を600重量部と、SOLSPERSE32000を100重量部とを撹拌混合しを撹拌混合し、イエローミルベースCを得た。なお、イエローミルベースCの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで10時間分散を行った。
【0080】
(ブラックミルベースDの調製)
SPECIAL BLACK 250を400重量部と、SR9003を520重量部と、SOLSPERSE32000を80重量部とを撹拌混合し、ブラックミルベースDを得た。なお、ブラックミルベースDの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで7時間分散を行った。
【0081】
(実施例1〜24、及び、比較例1〜11)
<インク組成物の作製方法>
表1に記載の素材を混合、撹拌することで、インク組成物を得た。
【0082】
<インクジェット記録方法>
UV硬化型インクジェットプリンター Acuity Advance(富士フイルム(株)製)を用い、インクジェット画像を印刷した。
Avery permanent 400(Avery社製、ポリ塩化ビニル(PVC)支持体)上に、解像度600×450dpi、サイズ2m×1mで、100%ベタ画像の印刷を行った。ランプはIntegration Technology社製SUB ZERO 082 H bulbランプユニットを装着し、前後のランプ強度をレベル7に設定した。
印字中、路面照度を測定したところ、1,250mW/cm2であった。また、吐出から露光までの時間は、0.2〜0.3秒であった。また、1ドロップあたりの吐出量は、6〜42pLの範囲で行った。
【0083】
<光沢性評価>
上記インクジェット記録方法によって得られた画像を用い、Sheen Instruments社製光沢度計を用い、測定角60°で測定を行った。評価基準は、以下の通りである。
4:光沢度40以上
3:光沢度30以上40未満
2:光沢度20以上30未満
1:光沢度20未満
【0084】
<画像筋ムラ評価>
上記インクジェット画像記録方法によって得られた画像の筋ムラを画像から2m離れた地点から目視で評価した。評価基準は、以下の通りである。
3:筋ムラが目視でははっきりと見えない。
2:筋ムラが目視でわずかに確認できる。
1:筋ムラが目視ではっきり確認できる。
【0085】
<硬化性評価>
上記インクジェット記録方法にて得られた画像を触診により、画像のべとつきの程度を以下の基準で評価した。
3:画像にべとつきなし。
2:画像がややべとついているが、未硬化のインク組成物又は硬化膜は手に転写しない。
1:画像がべとついており、未硬化のインク組成物又は硬化膜の一部が手に転写した。
【0086】
<柔軟性評価方法:折り曲げテスト>
本実施例では、硬化膜の柔軟性を評価する方法として、折り曲げテストを実施した。
前期インクジェット記録方法にて、100%、200%のベタ画像を作成し、以下の基準で評価を行った。
3:100%、200%、のサンプルでは割れが発生しない。
2:100%のサンプルでは割れが発生しないが、平均膜厚200%のサンプルで、画像部の折り曲げた部分に割れが入る。
1:平均膜厚100%、200%いずれのサンプルでも、画像部の折り曲げた部分に割れが入る。
以下に得られた結果を示す。なお、表1〜4における数値は重量部である。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
【表3】

【0090】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(成分A)N−ビニルラクタム類、
(成分B)多官能ビニルエーテル化合物、
(成分C)式(I)で表される化合物、
(成分D)炭素数8以上13以下の鎖状炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレート、及び、
(成分E)重合開始剤、を含有する
インクジェットインク組成物。
【化1】

式(I)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、X1は単結合を含む2価の連結基を表し、R2〜R12は各々独立に、水素原子、又は、アルキル基を表す。
【請求項2】
成分Dが、炭素数10以上13以下の鎖状炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートである、請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項3】
シアン、マゼンタ、イエロー、及び、ブラックよりなる群から選択される少なくとも1種の着色剤を含有する、請求項1又は2に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項4】
成分A及び成分Bの総量が、11.0〜32.0重量%であり、
成分C及び成分Dの総量が、33.0〜60.0重量%である、
請求項1〜3いずれか1つに記載のインクジェットインク組成物。
【請求項5】
成分Aの含有量が5〜35重量%であり、
成分Bの含有量が1.5〜10重量%であり、
成分Cの含有量が24〜55重量%であり、
成分Dの含有量が3〜25重量%である、
請求項1〜4いずれか1つに記載のインクジェットインク組成物。
【請求項6】
多官能(メタ)アクリレート化合物を含有する、請求項1〜4いずれか1つに記載のインクジェットインク組成物。
【請求項7】
フッ素化合物及びシリコーン化合物を実質的に含有しない、請求項1〜6いずれか1つに記載のインクジェットインク組成物。
【請求項8】
成分Cの含有量がインク組成物全体の28重量%以上である、請求項1〜7いずれか1つに記載のインクジェットインク組成物。
【請求項9】
(a)請求項1〜8いずれか1つに記載のインクジェットインク組成物をインクジェット方式により吐出して被記録媒体上に画像を形成する画像形成工程、及び、
(b)得られた画像に活性放射線を照射して、前記インク組成物を硬化させる硬化工程を含むことを特徴とする
インクジェット記録方法。

【公開番号】特開2012−25912(P2012−25912A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168534(P2010−168534)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】