説明

インクジェットインク

【課題】 本発明の目的は、様々な記録媒体上に形成した文字、画像の耐水性、耐擦過性、ブリード耐性に優れ、かつインク出射安定性が良好なインクジェットインクを提供することにある。
【解決手段】 少なくとも顔料、高分子化合物A及び高分子化合物Bを含有し、該高分子化合物Aは両親媒性高分子化合物であり、かつ該高分子化合物Bはガラス転移点(Tg)が−30℃以上、60℃以下の高分子化合物であることを特徴とするインクジェットインク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続吐出性に優れ、かつカラーブリード耐性及び定着性に優れるインクジェットインクに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、比較的簡単な装置で、高精細な画像記録が可能であり、各方面で急速な発展を遂げている。また、使用される用途も多岐にわたり、それぞれの目的にあったインクジェット記録媒体あるいはインクジェットインクが使用される。
【0003】
インクジェット記録に用いられるインクジェットインクは、色材が溶媒に溶解している染料インクと、色材が溶媒に分散されている分散インクとに大別される。染料インクは溶媒に溶解していることから、発色性が良く、また彩度も高い傾向にあり、銀塩写真画像等の出力に好ましく用いられている。しかし、染料インクは基本的に光褪色を起こしやすく、看板やポスターのように、ある期間にわたり掲示を行う場合には、表面にラミネート処理等を施さなければ、直ぐに褪色してしまうという問題があった。
【0004】
これに対し、分散インクは一般に光褪色が起こりにくく、ポスター等の掲示物の作製に好ましく用いられている。分散インクは、以前は主に分散安定性の確保の点から、分散粒子の粒径を大きく設定していたため、銀塩写真調の印刷には全く不向きであったが、昨今の分散技術の進歩により、分散粒径を小さくし、銀塩写真調の印刷も行われるようになった。現在、分散インクで用いたれる色材としては、例えば、有機顔料、無機顔料および着色微粒子が挙げられる。しかしながら、分散インクを用いて、インクジェット専用光沢紙や平滑性の高いインクジェットフィルム等に印画した場合、支持体内部まで色剤が浸透しないため、擦過性や耐水性に劣るという課題があった。
【0005】
上記課題を解決するための様々な方法が提案されており、その一つの方法はホットメルト型インクが挙げられる。このホットメルト型インクは、室温では固体状態となり、加熱すると融解して低粘度化するワックスを主素材に用いるもので、インクジェット記録ヘッドで温めて融かしたインクを出射し、記録紙上に着弾した後、冷却、固体して、印刷画像を形成するものである。このホットメルト型インクでは、室温で固体であるために取り扱い時に汚れることが無く、また、溶融時のインク溶媒等の蒸発が実質無いためノズルの目詰まりがない。さらに、付着後直ちに固化するため、色にじみも少ないという利点を有している。例えば、米国特許第4,391,369号、同4,484,948号には、紙質に関係なく良好な印刷品質を提供するホットメルト型インク組成物が提案されている。しかしながら、ホットメルト型インクは主成分としてワックスを用いるため、形成した画像表面を擦った際に擦り傷等が発生し易く、耐擦過性に課題を抱えており、恒久的な印刷物には適用することが難しい。また、インク成分としてワックス等の固形分比率が高いため、形成した文字、画像等が記録媒体上で盛り上がってしまう欠点があった。
【0006】
また、その他の方法としては、紫外線硬化型インクジェットインクが知られている。この紫外線硬化型インクジェットインクは、紫外線により硬化可能なモノマーと紫外線硬化開始剤とを主成分にするインクで、記録媒体に印刷した後、着弾したインク液滴に紫外線を照射して硬化させる方法である。例えば、エポキシ変性アクリル樹脂およびウレタン変性アクリル樹脂をバインダーとして使用し、かつ5.0μm以下の平均粒子径の顔料を着色成分とする例が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、紫外線硬化型インクジェットインクは固形分比率が高いため、形成した文字、画像等が記録媒体上で盛り上がってしまう欠点があった。更に、紫外線を充分透過しない顔料系のインクに適用した場合、インク内部で硬化に必要な紫外線量が不足し、その結果、耐擦過性に劣る等の課題があった。
【0007】
更にその他の方法として、高分子微粒子を含有したラテック含有スインクが数多く開示、提案されている(例えば、特許文献2〜7参照。)。このラテックス含有インクでは、水を主成分にしたインク中に高分子微粒子を加えることにより、耐水性、耐擦過性に優れ、様々な記録媒体に対し印画した際、形成した文字や画像が記録媒体上で盛り上がらない印刷物が得られるとされている。しかしながら、このような高分子微粒子を顔料が定着すに十分な量をインク中に含有させた場合、低湿環境下に代表されるインクが非常に乾燥しやすい環境で連続印画、あるいは間欠印画を行うと、インクの乾燥に伴うインク粘度の上昇により、記録ヘッドからの出射不良を引き起こし、安定した出射を行うことができないという課題を抱えており、高分子微粒子の含有量に自ずと制限があるため、印刷物に求められる充分な画像耐久性を得ることができないのが現状である。
【特許文献1】米国特許第4,228,438号明細書
【特許文献2】特公昭60−32663号公報
【特許文献3】特開平4−18462号公報
【特許文献4】特開平9−87560号公報
【特許文献5】特開平9−176533号公報
【特許文献6】特開平10−60353号公報
【特許文献7】特開2000−85238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、様々な記録媒体上に形成した文字、画像の耐水性、耐擦過性、ブリード耐性に優れ、かつインク出射安定性が良好なインクジェットインクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0010】
(請求項1)
少なくとも顔料、高分子化合物A及び高分子化合物Bを含有し、該高分子化合物Aは両親媒性高分子化合物であり、かつ該高分子化合物Bはガラス転移点(Tg)が−30℃以上、60℃以下の高分子化合物であることを特徴とするインクジェットインク。
【0011】
(請求項2)
前記両親媒性高分子化合物が、N−置換アクリルアミド、変性ビニルエーテル及び変性ビニルアルコールから選ばれる少なくとも一種の共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットインク。
【0012】
(請求項3)
前記両親媒性高分子化合物の平均分子量が1000以上、100000以下であり、かつ重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnが、1.0以上、4.0以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェットインク。
【0013】
(請求項4)
前記両親媒性高分子化合物の平均粒径が、20nm以上、1.0μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【0014】
(請求項5)
前記高分子化合物Bの平均粒径が20nm以上、1.0μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【0015】
(請求項6)
総固形分含有量が、3.0%以上、40%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、様々な記録媒体上に形成した文字、画像の耐水性、耐擦過性、ブリード耐性に優れ、かつインク出射安定性が良好なインクジェットインクを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0018】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、少なくとも顔料、高分子化合物A及び高分子化合物Bを含有し、該高分子化合物Aは両親媒性高分子化合物であり、かつ該高分子化合物Bはガラス転移点(Tg)が−30℃以上、60℃以下の高分子化合物であることを特徴とするインクジェットインクにより、様々な記録媒体上に形成した文字、画像の耐水性、耐擦過性、ブリード耐性に優れ、かつインク出射安定性が良好なインクジェットインクを実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0019】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0020】
本発明のインクジェットは、顔料と共に高分子化合物A及び高分子化合物Bを含有することを特徴とする。
【0021】
はじめに、本発明に係る高分子化合物Aである両親媒性高分子化合物について説明する。
【0022】
本発明に係る両親媒性高分子とは、分子内に親水基と疎水基をもつ高分子化合物であり、疎水部と親水部がブロック共重合体であることが好ましい。また、両親媒性高分子化合物の平均分子量が1000以上、100000以下であり、かつ重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnが、1.0以上、4.0以下であることが好ましく、1.0以上、2.5以下であることがより好ましい。
【0023】
また、本発明に係る両親媒性高分子化合物が、N−置換アクリルアミド、変性ビニルエーテル及び変性ビニルアルコールから選ばれる少なくとも一種の共重合体であることが好ましい。このような高分子化合物としては、ポリN−置換型アクリルアミド、例えば、イソプロピルアクリルアミド、疎水化プルラン、ポリエチレンオキシド、特開2002−146256号公報に記載の両親媒性星形ポリマー、特開平11−322866号、特開平11−322942号、特開2000−319473号、特開2001−19770号の各公報に記載されているポリ変性ビニルアルコール化合物またはポリ変性ビニルエーテル化合物等が挙げられ、その形態は直鎖状のポリマーであっても、高分子核を有する星形ポリマーエマルジョン状であってもいずれでも良い。
【0024】
本発明においては、さらに好ましくは、両親媒性高分子化合物がコアシェル構造を有することが好ましく、例えば、特開平7−331224号、特開2003−40916号等の各公報に記載の(メタ)アクリル系重合体からなる芯部とN−アルキルアクリルアミド重合体よりなる外殻部を有するコアシェル構造の重合体微粒子等が挙げられる。
【0025】
このような両親媒性高分子化合物は、1分子内に相対的に親水的なセグメントと相対的に疎水的なセグメントが共存している。一方、インクジェットインクにおいては、水、もしくは水と有機溶媒による混合溶媒がインクの溶媒となりうる。本発明に係る両親媒性高分子化合物においては、いずれか一方のセグメントにとって水を主成分とする混合溶媒して貧溶媒となり、その他が両溶媒となる。
【0026】
本発明に係る両親媒性高分子化合物の平均粒径は、20nm以上、1.0μm以下であることが好ましい。平均粒径が20nm以上であれば、インクの乾燥による粘度増加が抑制でき、また、1.0μm以下であれば、記録ヘッドからの出射の際の目詰まりを起こすことなく安定した出射を達成することができ好ましい。両親媒性物質の平均粒径は、光散乱法、電気泳動法、レーザードップラー法を用いた市販の粒径測定機器により求めることができる。
【0027】
また、本発明のインクジェットインクにおいて、本発明に係る両親媒性高分子化合物の含有量としては、1質量%以上、30質量%以下とすることが好ましい。
【0028】
インクジェット記録ヘッドのノズル近傍において、ノズルの先端から水等のインク溶媒が蒸発し、インク中の水分含有量が減少する現象(デキャップ)において、貧溶媒とする片方のセグメントの溶解度が低下し、その結果、周囲に存在する顔料、高分子化合物を抱き込み凝集する。しかしながら、他の一方のセグメントは依然として溶媒に対して溶解する状態であるため分散状態は維持される。その結果、水分等の蒸発に伴う粘度上昇が抑制され、インクの連続吐出性が損なわれることはない。
【0029】
この現象は可逆的であり、ノズル内のインクがインク出射等により攪拌され、系中の水分率が回復すれば再分散状態となり、凝集によるノズルのつまりも抑制される。
【0030】
また、吐出後は、浸透や乾燥により系外へ水及び有機溶媒が除外されるため、着弾時にまず溶解度変化により顔料等を抱き込んで凝集し、その後、成膜して顔料をある程度定着し、良好な耐擦過性を得ることができる。
【0031】
次いで、本発明に係る高分子化合物Bについて説明する。
【0032】
本発明に係る高分子化合物Bは、ガラス転移点(Tg)が−30℃以上、60℃以下の高分子化合物であることを特徴とすし、好ましくは−20℃以上、60℃以下であり、更に好ましくは−10℃以上、60℃以下である。ガラス転移点が低すぎるほど耐擦過性は向上するが、逆に画像同士を重ねて放置すると、接着が起こり、画像部の剥がれが生じてしまう。また、ガラス転移点が高すぎると、擦過性が劣ってしまうためである。ガラス転移点(Tg)は、温度を変化させる過程において熱膨張係数及び比熱などが不連続的に変化することを利用して公知の方法で測定することができる。
【0033】
本発明に係る高分子化合物Bとしては、ガラス転移点(Tg)が−30℃以上、60℃以下であれば特に限定はないが、好ましくは、スチレン−ブタジエン、ポリアクリルエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリスチレン−マレイン酸、シリコン−アクリル、アクリル変性フッ素樹脂、またはこれらの共重合体及びこれらの塩が挙げられ、中でもポリエステル、ポリスチレン−アクリル、ポリスチレン−ブタジエン、スチレンマレイン酸、SBRラテックスの少なくとも一つから選ばれる共重合体が上げられる。高分子化合物Bは、乳化剤を用いてポリマー粒子を分散させたものであっても、また乳化剤を用いないで分散させたものであってもよい。乳化剤としては界面活性剤が多く用いられるが、スルホン酸基、カルボン酸基等の水に可溶な基を有するポリマー(例えば、可溶化基がグラフト結合しているポリマー、可溶化基を持つ単量体と不溶性の部分を持つ単量体とから得られるポリマー)を用いることも好ましい。
【0034】
また、本発明のインクジェットインクでは、ソープフリーラテックスを用いることができる。ソープフリーラテックスとは、乳化剤を使用していないラテックス、およびスルホン酸基、カルボン酸基等の水に可溶な基を有するポリマー(例えば、可溶化基がグラフト結合しているポリマー、可溶化基を持つ単量体と不溶性の部分を持つ単量体とから得られるポリマー)を乳化剤として用いたラテックスのことを指す。
【0035】
近年、ラテックスのポリマー粒子として、粒子全体が均一であるポリマー粒子を分散したラテックス以外に、粒子の中心部と外縁部で組成を異にしたコア・シェルタイプのポリマー粒子を分散したラテックスも存在するが、このタイプのラテックスも好ましく用いることができる。
【0036】
本発明のインクジェットインクにおいて、高分子化合物Bの平均粒径は20nm以上、1.0μm以下が好ましく、インク安定性、吐出安定性の観点からさらに好ましくは、20nm以上、600nm以下である。高分子微粒子の平均粒径が1.0μm以下であれば、形成した画像の良好な光沢感を得ることができ、また20nm以上であれば、良好な耐水性、耐擦過性を得ることができる。高分子化合物Bの平均粒径は、光散乱法、電気泳動法、レーザードップラー法等を用いた市販の粒径測定機器により求めることができる。
【0037】
また、本発明のインクジェットインクにおいて、本発明に係る高分子化合物Bの含有量としては、3質量%以上、30質量%以下とすることが好ましい。本発明に係る高分子化合物Bの含有量が3質量%以上であれば充分な耐擦過性を得ることができ、また30質量%以下であれば、インク粘度が適度な範囲となり安定したインク出射性を得ることができる。
【0038】
本発明に係る高分子化合物Bは、記録媒体上へ吐出された後、乾燥、浸透により系外へ水及び有機溶媒がある程度除外された後、成膜し、顔料を定着する効果を示す。
【0039】
次いで、顔料について説明する。
【0040】
本発明に使用できる顔料としては、従来公知の有機及び無機顔料が使用できる。例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料や、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサンジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロニ顔料等の多環式顔料や、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキや、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料、カーボンブラック等の無機顔料が挙げられる。
【0041】
具体的な有機顔料を以下に例示する。
【0042】
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0043】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
【0044】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0045】
顔料の分散方法としては、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の各種分散機を用いることができる。また、顔料分散体の粗粒分を除去する目的で、遠心分離装置を使用すること、フィルターを使用することも好ましい。
【0046】
本発明のインクジェットインクにおいては、顔料の分散に高分子分散剤を用いることが好ましい。本発明で用いることのできる高分子分散剤としては、特に制限はなく、水溶性樹脂または非水溶性樹脂が用いられる。これらの高分子としては、例えば、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、メタクリル酸、メタクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体から選ばれた単一の単量体からなる重合体、あるいは2種以上の単量体からなる共重合体およびこれらの塩を挙げることができる。またポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、ゼラチン、ポリエチレングリコールなどの水溶性高分子も用いることができる。
【0047】
これら水溶性樹脂のインク全量に対する含有量としては、0.1〜10質量%が好ましく、更に好ましくは、0.3〜5質量%である。また、これらの水溶性樹脂は二種以上併用することも可能である。
【0048】
本発明において、顔料分散体中の粗大粒分を除去する目的で遠心分離装置を使用すること、フィルターを使用することも好ましい。本発明の顔料分散タイプのインクジェットインクで使用する顔料分散体の平均粒径は、500nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、100nm以下が特に好ましい。
【0049】
本発明のインクジェットインクに用いる顔料の含有量は、インク全質量に対して、1〜10質量%であることが好ましく、更に好ましくは、0.3〜5質量%である。
【0050】
本発明のインクジェットインクにおいては、水性液媒体としては水及び水溶性有機溶媒を好ましく用いることができる。
【0051】
好ましく用いられる水溶性有機溶剤としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド)等が挙げられる。
【0052】
本発明インクジェットインクのにおいては、インクの表面張力の調整あるいは顔料の分散安定性向上の観点から各種界面活性剤を用いることができる。
【0053】
本発明で用いることのできる界面活性剤としては、特に制限はないが、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。特にアニオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0054】
また、本発明においては、高分子界面活性剤も用いることができ、例えば、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体等を挙げることができる。
【0055】
本発明のインクジェットインクでは、上記説明した以外に、必要に応じて、出射安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、公知の各種添加剤、例えば、粘度調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を適宜選択して用いることができ、例えば、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等の油滴微粒子、特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号および特開平4−219266号等に記載されている蛍光増白剤等を挙げることができる。
【0056】
上記のような構成からなる本発明のインクジェットインクは、25℃におけるインク粘度が10mPa・s以上、300mPa・s以下であることが好ましく、更に好ましくは10mPa・s以上、200mPa・s以下である。インク粘度を10mPa・s以上とすることにより、画像記録時の好ましいインク流動性が得られ、高い画像鮮鋭性を実現することができる。また、300mPa・s以下とすることにより、適度なインク粘度が得られ、記録ヘッドからの安定した出射を行うことができる。
【0057】
次いで、本発明の記録方法について説明する。
【0058】
本発明のインクジェットインクを用いた記録方法においては、例えば、インクジェットインクを装填したプリンター等により、デジタル信号に基づきインクジェットヘッドよりインクを液滴として吐出させ、記録媒体に付着させることでインクジェット記録画像が形成される。
【0059】
本発明のインクジェットインクを用いた記録方法で用いることのできるインクジェット記録ヘッドとしては、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。また、インク吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)等など、何れの吐出方式を用いても構わない。
【0060】
本発明の記録方法においては、上記インクジェット記録ヘッドより吐出するインクジェットインクの吐出量を、1液滴あたり0.1〜1.5plとすることが、本発明の目的効果をいかんなく発揮できる観点から好ましい。
【0061】
本発明のインクジェットインクを用いた記録方法で用いることのできる記録媒体としては、例えば、普通紙、コート紙、キャストコート紙、光沢紙、光沢フィルム、OHPフィルム、インクジェット専用紙等が広く用いることができるが、その中でも吸収性支持体である普通紙、コート紙、キャストコート紙、光沢紙等を用いたインクジェット画像記録で、効果を発揮させることができる。
【0062】
紙には、塗工紙、非塗工紙があり、塗工紙としては、1m2あたりの塗工量が片面20g前後のアート紙、1m2あたりの塗工量が片面10g前後のコート紙、1m2あたりの塗工量が片面5g前後の軽量コート紙、微塗工紙、マット調仕上げのマットコート紙、ダル調仕上げのダルコート紙、新聞用紙などを挙げることが出来る。非塗工紙としては、化学パルプ100%使用の印刷用紙A、化学パルプ70%以上使用の印刷用紙B、化学パルプ40%以上70%未満使用の印刷用紙C、化学パルプ40%未満使用の印刷用紙D、機械パルプを含有しカレンダー処理を行ったグラビア用紙などを挙げることが出来る。更に詳しくは、『最新紙加工便覧』紙加工便覧編集委員会編、テックタイムス発行、『印刷工学便覧』日本印刷学会編、などに詳細に記載されている。
【0063】
普通紙とは、非塗工用紙、特殊印刷用紙及び情報用紙の一部に属す、80〜200μmの非コート紙が用いられる。本発明で用いられる普通紙としては、例えば、上級印刷紙、中級印刷紙、下級印刷紙、薄様印刷紙、微塗工印刷用紙、色上質紙等特殊印刷用紙、フォーム用紙、PPC用紙、その他情報用紙等があり、具体的には下記する用紙及びこれらを用いた各種の変性/加工用紙があるが、本発明は特にこれらに限定されるものではない。上質紙及び色上質紙、再生紙、複写用紙・色もの、OCR用紙、ノーカーボン紙・色もの、ユポ60、80、110ミクロン、ユポコート70、90ミクロン等の合成紙、その他片面アート紙68kg、コート紙90kg、フォームマット紙70、90、110kg、発泡PET38ミクロン、みつおりくん(以上、小林記録紙)、OK上質紙、ニューOK上質紙、サンフラワー、フェニックス、OKロイヤルホワイト、輸出上質紙(NPP、NCP、NWP、ロイヤルホワイト)OK書籍用紙、OKクリーム書籍用紙、クリーム上質紙、OK地図用紙、OKいしかり、きゅうれい、OKフォーム、OKH、NIP−N(以上、新王子製紙)、金王、東光、輸出上質紙、特需上質紙、書籍用紙、書籍用紙L、淡クリーム書籍用紙、小理教科書用紙、連続伝票用紙、上質NIP用紙、銀環、金陽、金陽(W)、ブリッジ、キャピタル、銀環書籍、ハープ、ハープクリーム、SKカラー、証券用紙、オペラクリーム、オペラ、KYPカルテ、シルビアHN、エクセレントフォーム、NPIフォームDX(以上、日本製紙)、パール、金菱、ウスクリーム上質紙、特製書籍用紙、スーパー書籍用紙、書籍用紙、ダイヤフォーム、インクジェットフォーム(以上、三菱製紙)、金毯V、金毯SW、白象、高級出版用紙、クリーム金毯、クリーム白象、証券・金券用紙、書籍用紙、地図用紙、複写用紙、HNF(以上、北越製紙)しおらい、電話帳表紙、書籍用紙、クリームしおらい、クリームしおらい中ラフ、クリームしおらい大ラフ、DSK(以上、大昭和製紙)、せんだいMP上質紙、錦江、雷鳥上質、掛紙、色紙原紙、辞典用紙、クリーム書籍、白色書籍、クリーム上質紙、地図用紙、連続伝票用紙(以上、中越パルプ)、OP金桜(チューエツ)、金砂、参考書用紙、交換証用紙(白)、フォーム印刷用紙、KRF、白フォーム、カラーフォーム、(K)NIP、ファインPPC、紀州インクジェット用紙(以上、紀州製紙製)、たいおう、ブライトフォーム、カント、カントホワイト、ダンテ、CM用紙、ダンテコミック、ハイネ、文庫本用紙、ハイネS、ニューAD用紙、ユトリロエクセル、エクセルスーパーA、カントエクセル、エクセルスーパーB、ダンテエクセル、ハイネエクセル、エクセルスーパーC、エクセルスーパーD、ADエクセル、エクセルスーパーE、ニューブライトフォーム、ニューブライトNIP(以上、大王製紙製)、日輪、月輪、雲嶺、銀河、白雲、ワイス、月輪エース、白雲エース、雲岑エース(以上、日本紙業製)、たいおう、ブライトフォーム、ブライトニップ(以上、名古屋パルプ)、牡丹A、金鳩、特牡丹、白牡丹A、白牡丹C、銀鳩、スーパー白牡丹A、淡クリーム白牡丹、特中質紙、白鳩、スーパー中質紙、青鳩、赤鳩、金鳩Mスノービジョン、スノービジョン、金鳩スノービジョン、白鳩M、スーパーDX、はまなすO、赤鳩M、HKスーパー印刷紙(以上、本州製紙製)、スターリンデン(A・AW)、スターエルム、スターメイプル、スターローレル、スターポプラ、MOP、スターチェリーI、チェリーIスーパー、チェリーIIスーパー、スターチェリーIII、スターチェリーIV、チェリーIIIスーパー、チェリーIVスーパー(以上、丸住製紙製)、SHF(以上、東洋パルプ製)、TRP(以上、東海パルプ製)等が挙げられる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記実施例において、「%」、「部」は、特に断りのない限り、それぞれ「質量%」、「質量部」を表す。
【0065】
《高分子化合物A:両親媒性高分子の調製》
〔両親媒性高分子Aの調製〕
スチレン10部、ブチルメタクリレート10部、2−ヒドロキシエチルアクリレート10部、エチレングリコールジメタクリレート0.5部を混合して、モノマー液1を用意した。四つ口フラスコに、ドデシル硫酸塩0.2部及びイオン交換水180部を添加し、溶解した後、窒素置換した。この中に、モノマー液1を5部を加え、攪拌しながら60℃に昇温した。昇温後、2%の過硫酸アンモニウム水溶液を3部滴下し、更に80℃に昇温し、残りのモノマー液1(25.5部)と2%過硫酸アンモニウム水溶液の40部とを6時間かけて滴下し、4時間熟成して、コア部を調製した。
【0066】
上記反応液を80℃に保ったまま、N−イソプロピルアクリルアミドの120部とイオン交換水1000部との混合液と、0.4%過硫酸アンモニウムの240部とを4時間かけて滴下して、6時間熟成した後、遠心分離して粗大粒子を取り除いて、平均粒径が200nmのコアシェル構造からなるブロック重合体の両親媒性高分子Aを調製した。なお、平均粒径は、マルバーン社製ゼータサイザー1000HSを用いて測定した。
【0067】
〔両親媒性高分子Bの調製〕
上記両親媒性高分子Aの調製において、N−イソプロピルアクリルアミド、イオン交換水の混合液と0.4%過硫酸アンモニウムとの滴下速度と熟成時間、反応温度を適宜変更した以外は同様にして、平均粒径が220nmのコアシェル構造からなるランダム重合体の両親媒性高分子Bを調製した。
【0068】
〔両親媒性高分子Cの調製〕
上記両親媒性高分子Aの調製において、N−イソプロピルアクリルアミド、イオン交換水の混合液と0.4%過硫酸アンモニウムとの滴下速度と熟成時間、反応温度を適宜変更した以外は同様にして、平均分子量が4万のコアシェル構造からなるブロック重合体の両親媒性高分子Cを調製した。
【0069】
〔両親媒性高分子Dの調製〕
上記両親媒性高分子Aの調製において、N−イソプロピルアクリルアミドに代えて、下記の化合物Aを70部用いた以外は同様にして、平均粒径が180nmのコアシェル構造からなるブロック重合体の両親媒性高分子Dを調製した。
【0070】
(化合物Aの調製)
三方活栓を取り付けたガラス容器に、2−メトキシエチルビニルエーテルを0.38モル、酢酸エチルを1.0モル、1−ブトキシエチルアセテートを4ミリモル及びトルエンを入れ、系内の温度を0度に下げEt1.5AlCl1.5を20ミリモル含んだトルエン溶液を添加して重合を開始した。2時間後、ポリ酢酸ビニルのケン化物を添加して重合反応を停止した。次に得られたグラフトポリマーのケン化反応を行って化合物Aを得た。
【0071】
〔両親媒性高分子Eの調製〕
三方活栓を取り付けたガラス容器内に、2−メトキシエチルビニルエーテルを20ミリモル、酢酸エチルを20ミリモル、1−イソブトキシエチルアセテートを0.1ミリモル及びトルエンを11mlを加え、系内の温度を0度に冷却したところで、Et1.5AlCl1.5を0.5ミリモル加え、6時間反応させた。次いで、20ミリモルの2−エトキシエチルビニルエーテルを添加して4時間反応させた後、0.3%のアンモニア/エタノール溶液にて重合反応を停止した後、ジクロロメタンにより希釈して0.6モル/Lの塩酸とイオン交換水により洗浄した。次いで、得られた有機層をエバポレーターにより濃縮、乾燥した後、更に真空乾燥を行って、水可溶性の両親媒性高分子Eを得た。
【0072】
〔重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定〕
上記調製した各両親媒性高分子について、THF(テトラヒドロフラン)を溶媒としたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、平均分子量、重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnの測定を行い、Mw/Mnを求め、得られた結果を表1に示す。
【0073】
《インクセットの調製》
〔顔料分散液の調製〕
(マゼンダ顔料分散液の調製)
以下の各添加剤を混合し、0.5mmのジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、マゼンタ顔料の含有量が15%のマゼンダ顔料分散液を調製した。このマゼンタ顔料分散液に含まれるのマゼンタ顔料粒子の平均粒径は83nmであった。なお、粒径測定はマルバーン社製ゼータサイザ1000HSにより行った。
【0074】
C.Iピグメントレッド12 15部
ジョンクリル61(アクリルスチレン系樹脂、ジョンソン社製) 9部
グリセリン 15部
イオン交換水 61部
(ブラック顔料分散液の調製)
Cabot社製のカーボンブラック自己分散物 cabo−jet300をイオン交換水で希釈して、カーボンブラック含有量が15%のブラック顔料分散液を調製した。得られた。このブラック顔料分散液に含まれるのカーボンブラック粒子の平均粒径は153nmであった。なお、粒径測定はマルバーン社製ゼータサイザ1000HSにより行った。
【0075】
〔インクセット1の調製〕
(マゼンタインク1の調製)
マゼンタ顔料分散液 50部
高分子化合物A:両親媒性高分子A(平均分子量8万、Mw/Mn=1.4) 1部
高分子化合物B:タケラックW−605(武田薬品社製、ウレタン系ソープフリーラテックス、固形分30%、Tg=25℃、平均粒径=150nm) 15部
トリエチレングリコールモノエチルエーテル 15部
1,2−ヘキサンジオール 5部
イオン交換水 14部
マゼンタインク1の固形分量は、13%である。
【0076】
(ブラックインク1の調製)
ブラック顔料分散液 50部
高分子化合物A:両親媒性高分子A(平均分子量8万、Mw/Mn=1.4) 1部
高分子化合物B:タケラックW−605(武田薬品社製、ウレタン系ソープフリーラテックス、固形分30%、Tg=25℃、平均粒径=150nm) 15部
トリエチレングリコールモノエチルエーテル 15部
1,2−ヘキサンジオール 5部
イオン交換水 14部
上記マゼンタインク1とブラックインク1とで、インクセット1を構成した。
【0077】
ブラックインク1の固形分量は、13%である。
【0078】
〔インクセット2の調製〕
上記インクセット1において、マゼンタインク1とブラックインク1の調製に用いた両親媒製高分子Aを、同量の両親媒性高分子Dに変更した以外は同様にして、インクセット2を得た。
【0079】
〔インクセット3の調製〕
上記インクセット2において、マゼンタインクとブラックインクの調製に用いたタケラックW−605に代えて、ポリスチレンマレイン酸(分子量1万、Tg=40℃)を用いた以外は同様にして、インクセット3を得た
〔インクセット4の調製〕
上記インクセット1において、マゼンタインク1とブラックインク1の調製に用いた両親媒製高分子Aを、同量の両親媒性高分子Eに変更した以外は同様にして、インクセット4を得た。
【0080】
〔インクセット5の調製〕
上記インクセット1において、マゼンタインク1とブラックインク1の調製に用いた両親媒製高分子Aを、同量の両親媒性高分子Bに変更した以外は同様にして、インクセット5を得た。
【0081】
〔インクセット6の調製〕
上記インクセット1において、マゼンタインク1とブラックインク1の調製に用いたイオン交換水の添加量を調整して、総固形分量を30%に変更した以外は同様にして、インクセット6を得た。
【0082】
〔インクセット7の調製〕
上記インクセット1において、マゼンタインク1とブラックインク1の調製に用いたタケラックW−605に代えて、ウレタンエマルジョン(Tg=100℃、平均粒径:1.1μm)を用いた以外は同様にして、インクセット7を得た。
【0083】
〔インクセット8の調製〕
上記インクセット1において、マゼンタインク1とブラックインク1の調製に用いた両親媒製高分子Aを、同量の両親媒性高分子Cに変更し、更にタケラックW−605を除いて、代わりに同量のイオン交換水を加えた以外は同様にして、インクセット8を得た。
【0084】
〔インクセット9の調製〕
上記インクセット1において、マゼンタインク1とブラックインク1の調製に用いた両親媒製高分子Aを除いて、代わりに同量のイオン交換水を加えた以外は同様にして、インクセット9を得た。
【0085】
〔インクセット10の調製〕
上記インクセット3において、マゼンタインクとブラックインクの調製に用いた両親媒製高分子Dを除いて、代わりに同量のイオン交換水を加えた以外は同様にして、インクセット9を得た。
【0086】
〔インクセット11の調製〕
(マゼンタインクの調製)
マゼンタ顔料分散液 50部
トリエチレングリコールモノエチルエーテル 15部
1,2−ヘキサンジオール 5部
イオン交換水 30部
(ブラックインクの調製)
ブラック顔料分散液 50部
トリエチレングリコールモノエチルエーテル 15部
1,2−ヘキサンジオール 5部
イオン交換水 30部
上記マゼンタインクとブラックインクとで、インクセット11を構成した。
【0087】
〔インクセット12の調製:ホットメルト型インク〕
(マゼンタインクの調製)
C.I.ディスパーレッド9 2部
イミダゾール 50部
オクタデシルアルコール 20部
コレステロールステアリルエステル 20部
2,6−tert−ブチル−p−クレゾール 2部
各添加剤を混合し、0.5mmのジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散して、ホットメルト型のマゼンタインクを調製した。
【0088】
(ブラックインクの調製)
カーボンブラック 2部
イミダゾール 50部
オクタデシルアルコール 20部
コレステロールステアリルエステル 20部
2,6−tert−ブチル−p−クレゾール 2部
各添加剤を混合し、0.5mmのジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散して、ホットメルト型のブラックインクを調製した。
【0089】
上記ホットメルト型のマゼンタインクとブラックインクとで、インクセット12を構成した。なお、ホットメルト型のインクセット12を用いて後述の方法で印画する際には、インク液、インクジェット記録ヘッド及びインク流路を加温して使用した。
【0090】
〔インクセット13の調製:活性光線硬化型インク〕
(マゼンタインクの調製)
C.I.ピグメントRed22 10部
アジスパーPB821(味の素ファインテクノ製) 3部
アロニックスM5700(東亞合成社製) 7部
エチレンオキシド付加1,6ヘキサンジオールアクリレート 72部
3−メトキシブチルアクリレート 8部
イルガキュア369(チバスペシャリティケミカルズ社製) 5部
上記の各組成物を混合、攪拌した後、得られた溶液をフィルターでろ過して、活性光線硬化型のマゼンタインクを調製した。
【0091】
(ブラックインクの調製)
カーボンブラック(三菱化学社製、MA−7) 10部
アジスパーPB821(味の素ファインテクノ製) 3部
アロニックスM5700(東亞合成社製) 7部
エチレンオキシド付加1,6ヘキサンジオールアクリレート 72部
3−メトキシブチルアクリレート 8部
イルガキュア369(チバスペシャリティケミカルズ社製) 5部
上記の各組成物を混合、攪拌した後、得られた溶液をフィルターでろ過して、活性光線硬化型のブラックインクを調製した。
【0092】
なお、活性光線硬化型インクセットであるインクセット13は、記録媒体上に出射した後、紫外線を照射してインクを硬化させた。
【0093】
【表1】

【0094】
《インクジェット画像の形成及び評価》
(デキャップ性の評価)
20℃、30RH%の環境下で、ノズル口径25ミクロン、駆動周波数12kHz、ノズル数128、ノズル密度180dpiであるピエゾ型ヘッドを用い、1滴あたり8ピコリットルを吐出する条件で、クリーニングをせずに5日間連続して吐出した後、ノズルの出射状態を目視観察し、下記の基準に従ってデキャップ性を評価した。なお、ホットメルト型のインクセット12は、インク液、インクジェット記録ヘッド及びインク流路を50℃に加温して評価を行った。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0095】
◎:全ノズルから正常に出射されている
○:1〜3ノズルに目詰まりが認められるが、ノズル面からの吸引クリーニングにより回復した
△:4〜10ノズルに目詰まりが認められるが、ノズル面からの吸引クリーニングにより回復した
×:11ノズル以上で目詰まりが発生、あるいは、吸引クリーニングにより回復が不可能な目詰まりが1〜3ノズルで発生した
××:20ノズル以上で目詰まりが発生、あるいは、吸引クリーニングにより回復不可能な目詰まりが4ノズル以上発生。
【0096】
評価ランクが△以上であれば、実用上許容される品質であると判断した。
【0097】
(ブリード耐性の評価)
〈インクセット1〜11〉
ノズル口径25ミクロン、駆動周波数12kHz、ノズル数128、ノズル密度180dpiであるピエゾ型ヘッドを用い、最大記録密度720×720dpiのオンデマンド型のインクジェットプリンタを使用し、アート紙(王子製紙製 NKアート金藤N)と上質紙(コニカミノルタビジネステクノロジー社製 FirstClass紙)にマゼンダベタ地の上に巾100μmの黒細線をプリント及び目視観察し、下記の基準に従ってブリード耐性の評価を行った。
【0098】
◎:細線とベタの境界線がはっきりしている
○:わずかに境界がにじんでいる箇所があるが、実用上問題のない品質である
△:境界部ににじみが認められるが、実用上許容限界内の品質である
×:境界部で明らかなにじみの発生が認められ、線幅が1.5倍ほどとなり、実用上問題となる品質である
××:細線とベタ部の境界が不明瞭な品質であり、ブリード耐性が極めて乏しい
〈インクセット12:ホットメルト型インク〉
上記インクセット1〜11の印画方法において、インク液、インクジェット記録ヘッド及びインク流路を50℃に加温した以外は同様にして評価を行った。
【0099】
〈インクセット13:紫外線硬化型インク〉
ピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェット記録装置に、上記調製したインクセット13を装填し、アート紙(王子製紙製 NKアート金藤N)と上質紙(コニカミノルタビジネステクノロジー社製 FirstClass紙)へ画像記録を行った。インク供給系は、インクタンク、供給パイプ、ヘッド直前の前室インクタンク、フィルター付き配管、ピエゾヘッドからなり、ピエゾヘッド部は、60℃に温度調整した。ピエゾヘッド部は、2〜15plのマルチサイズドットを720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動して、各インクを連続吐出した。着弾した後、0.1秒後に、120W/cmメタルハライドランプ(日本電池社製 MAL 400NL 電源電力3kW・hr)を照射して硬化処理を行った。
【0100】
(耐擦過性の評価)
上記ブリード耐性の評価と同様にして、各記録紙上に巾100μmの黒細線をプリントし、3分後に黒細線画像を指で5往復擦って、下記の基準に従って耐擦過性の評価を行った。
【0101】
◎:印画画像に全く変化なし
○:詳細に観察すると、わずかに擦り傷が認められるが、実用上問題のない品質である
△:少量の擦り傷が認められるが、実用上許容限界内の品質である
×:擦り傷の発生に伴い画像濃度が低下し、実用上問題となる品質である
××:形成した黒細線画像が記録紙から剥離し、全く許容されない品質である
(耐水性の評価)
上記ブリード耐性の評価と同様にして、各記録紙上に巾100μmの黒細線をプリントし、3分後に純水を滴下し、更に15秒後に黒細線画像を指で5往復擦って、下記の基準に従って耐水性の評価を行った。
【0102】
◎:印画画像に全く変化なし
○:詳細に観察すると、わずかに擦り傷が認められるが、実用上問題のない品質である
△:少量の擦り傷が認められるが、実用上許容限界内の品質である
×:擦り傷の発生に伴い画像濃度が低下し、実用上問題となる品質である
××:形成した黒細線画像が記録紙から剥離し、全く許容されない品質である
以上により得られた結果を、表2に示す。
【0103】
【表2】

【0104】
表2に記載の結果より明らかなように、両親媒性高分子化合物とガラス転移点(Tg)が−30℃以上、60℃以下の高分子化合物を含むインクから構成される本発明のインクセットは、デキャップ性が向上し、かつ各種の記録紙上に形成した画像は、耐水性、耐擦過性、ブリード耐性に優れていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも顔料、高分子化合物A及び高分子化合物Bを含有し、該高分子化合物Aは両親媒性高分子化合物であり、かつ該高分子化合物Bはガラス転移点(Tg)が−30℃以上、60℃以下の高分子化合物であることを特徴とするインクジェットインク。
【請求項2】
前記両親媒性高分子化合物が、N−置換アクリルアミド、変性ビニルエーテル及び変性ビニルアルコールから選ばれる少なくとも一種の共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項3】
前記両親媒性高分子化合物の平均分子量が1000以上、100000以下であり、かつ重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnが、1.0以上、4.0以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェットインク。
【請求項4】
前記両親媒性高分子化合物の平均粒径が、20nm以上、1.0μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【請求項5】
前記高分子化合物Bの平均粒径が20nm以上、1.0μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【請求項6】
総固形分含有量が、3.0%以上、40%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェットインク。

【公開番号】特開2006−96933(P2006−96933A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−286772(P2004−286772)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】