説明

インクジェットプリンタ、印刷方法、及びプログラム

【課題】インクジェットプリンタにおいて、媒体の無駄を軽減して、適切にテスト作図を行う。
【解決手段】インクジェットプリンタ10であって、インクジェットヘッド12と、主走査駆動部14と、副走査駆動部であるローラ16a、16bと、制御部18とを備え、主走査方向における幅がテストパターンの主走査方向の長さの2倍よりも大きい媒体50に対してテスト作図を複数回行う場合、制御部18は、媒体50に第1のテスト作図として作図されたテストパターンの副走査方向における同じ位置に第2のテスト作図を行うスペースがあるか否かを判定し、スペースがあると判定した場合、副走査方向における同じ位置でのテスト作図を行うスペースにおいて、インクジェットヘッド12に第2のテスト作図を行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタ、印刷方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テスト作図(テストプリント)の機能が装備されたインクジェットプリンタが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このテスト作図の結果は、インクジェットヘッドのノズルの目詰まりの発見等に利用されている。また、テスト作図は、例えば複数回繰り返して行われる場合がある。この場合、インクジェットプリンタは、通常、1回のテスト作図が終了する毎に、所定の方向へ媒体(メディア)を送り、印字ラインを変更する。
【特許文献1】特開平11−48464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、インクジェットプリンタは、様々な媒体に対する印刷に用いられている。例えば、屋外広告等の印刷を行う大判の媒体に対して印刷を行う場合に、大判インクジェットプリンタ等が利用されている。
【0004】
このような大判インクジェットプリンタにおいてテスト作図を行う場合、テスト作図に必要な幅は、媒体の幅に比して小さくなる。そのため、テスト作図の後には、印刷可能な領域が媒体に残り、媒体に無駄が生じることとなる。そのため、このような場合、媒体の無駄をより軽減した方向でテスト作図を行うことが望まれる。そこで、本発明は、上記の課題を解決できるインクジェットプリンタ、印刷方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
(構成1)インクジェット方式で印刷を行うインクジェットプリンタであって、媒体にインクを吐出するノズルを有するインクジェットヘッドと、予め設定された主走査方向へインクジェットヘッドを移動させる主走査駆動部と、主走査方向と直交する副走査方向へ媒体を送る副走査駆動部と、インクジェットプリンタの動作を制御する制御部とを備え、インクジェットヘッドのノズルの状態を確認するためのテストパターンを作図するテスト作図をインクジェットプリンタが行う場合、制御部は、当該テスト作図の前にインクジェットプリンタが行った作図である前回の作図がテスト作図であるか否かを確認し、当該前回の作図がテスト作図である場合、副走査方向へ媒体を送らずにテスト作図を行うスペースが主走査方向において媒体にあるか否かを判定し、テスト作図を行うスペースがあると判定した場合、副走査方向へ媒体を送らず、主走査駆動部により主走査方向へインクジェットヘッドを移動させて、インクジェットヘッドに次のテスト作図を行わせる。副走査駆動部は、媒体に対して相対的にインクジェットヘッドを移動させることにより、副走査方向へ媒体を送ってもよい。
【0006】
このように構成すれば、例えば、複数のテストパターンを主走査方向に並べて作図できる。そのため、媒体の無駄を軽減して、適切にテスト作図を行うことができる。また、このように構成した場合、例えば、テスト作図の合間に副走査方向へ媒体を送ることなく、複数のテスト作図を繰り返し行うことができる。そのため、このように構成すれば、例えば、連続してテスト作図を行う場合に、作図に必要な時間を短縮できる。
【0007】
尚、テスト作図を行うスペースがあると制御部が判定した場合において、副走査方向へ媒体を送らないとは、例えば、実質的に媒体を送らないことである。実質的に媒体を送らないとは、例えば印字ラインの変更動作のような、副走査方向における印刷位置の変更のために媒体を送る動作を行わないことである。そのため、この場合も、例えば、位置の微調整等のために媒体を前後のずらす動作等を行ってもよい。
【0008】
(構成2)主走査方向において次のテスト作図を開始すべき位置を示すテスト作図原点の座標を記憶する記憶部を更に備え、制御部は、テスト作図を行うスペースがあるか否かを判定する場合、記憶部に記憶されているテスト作図原点の座標に基づき判定を行い、インクジェットヘッドに次のテスト作図を行わせる場合、記憶部に記憶されているテスト作図原点を基準にして、インクジェットヘッドに次の前記テスト作図を行わせ、インクジェットヘッドにテスト作図を行わせる毎に、少なくともテストパターンの主走査方向の長さ分だけ、テスト作図原点の座標の値を増加させる。
【0009】
このように構成すれば、テスト作図を行うスペースがあるか否かの判定を適切に行うことができる。また、これにより、副走査方向へ媒体を送ることなく、複数回のテスト作図を適切に行うことができる。
【0010】
尚、テスト作図原点の座標の値を増加させる場合、制御部は、テストパターンの主走査方向の長さに予め設定されたマージン分を加えた長さの分だけ、座標の値を増加させることが好ましい。このように構成すれば、主走査方向に並んで作図された複数のテストパターンを、より適切に区別できる。
【0011】
(構成3)テスト作図を行うスペースがあるか否かの判定において、スペースがないと判定した場合、制御部は、少なくともテストパターンの副走査方向の長さ分だけ、副走査方向へ、媒体を、副走査駆動部に送らせ、記憶部に記憶されているテスト作図原点の座標の値を、予め設定された初期値に初期化する。
【0012】
このように構成すれば、例えば、テスト作図を複数回行うことにより主走査方向のスペースがなくなった場合に、副走査方向へ適切に媒体を送ることができる。また、これにより、次のテスト作図を適切に行うことができる。
【0013】
尚、制御部は、副走査駆動部に、テストパターンの副走査方向の長さに予備フィード分を加えた長さの分だけ、媒体を送らせることが好ましい。予備フィード分とは、例えば、媒体を送る以前に作図されている領域と次に行うテスト作図とが重ならないように予め設定された媒体の送り量の余裕分である。
【0014】
(構成4)インクジェットプリンタがテスト作図以外の作図である通常作図を行う場合、制御部は、当該通常作図の前にインクジェットプリンタが行った作図である前回の作図がテスト作図であるか否かを確認し、当該前回の作図がテスト作図である場合、少なくともテストパターンの副走査方向の長さ分だけ、副走査方向へ媒体を、副走査駆動部に送らせる。このように構成すれば、例えば、テスト作図と通常作図との切換を適切に行うことができる。
【0015】
(構成5)媒体にインクを吐出するノズルを有するインクジェットヘッドと、予め設定された主走査方向へインクジェットヘッドを移動させる主走査駆動部と、主走査方向と直交する副走査方向へ媒体を送る副走査駆動部と、インクジェットプリンタの動作を制御する制御部とを備えるインクジェットプリンタに、インクジェットヘッドのノズルの状態を確認するためのテストパターンを作図するテスト作図を行わせる印刷方法であって、当該テスト作図の前にインクジェットプリンタが行った作図である前回の作図がテスト作図であるか否かを確認し、当該前回の作図がテスト作図である場合、副走査方向へ媒体を送らずにテスト作図を行うスペースが主走査方向において媒体にあるか否かを判定し、テスト作図を行うスペースがあると判定した場合、副走査方向へ媒体を送らず、主走査駆動部により主走査方向へインクジェットヘッドを移動させて、インクジェットヘッドに次のテスト作図を行わせる。このようにすれば、例えば、構成1と同様の効果を得ることができる。
【0016】
(構成6)媒体にインクを吐出するノズルを有するインクジェットヘッドと、予め設定された主走査方向へインクジェットヘッドを移動させる主走査駆動部と、主走査方向と直交する副走査方向へ媒体を送る副走査駆動部と、インクジェットプリンタの動作を制御する制御部とを備えるインクジェットプリンタに、インクジェットヘッドのノズルの状態を確認するためのテストパターンを作図するテスト作図を行わせるプログラムであって、制御部に、当該テスト作図の前にインクジェットプリンタが行った作図である前回の作図がテスト作図であるか否かを確認させ、当該前回の作図がテスト作図である場合、副走査方向へ媒体を送らずにテスト作図を行うスペースが主走査方向において媒体にあるか否かを判定させ、テスト作図を行うスペースがあると判定した場合、副走査方向へ媒体を送らせず、主走査駆動部により主走査方向へインクジェットヘッドを移動させて、インクジェットヘッドによる次のテスト作図を行わせる。このようにすれば、例えば、構成1と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、例えば、インクジェットプリンタにおいて、媒体の無駄を軽減して、適切にテスト作図を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタ10の構成の一例を示す。インクジェットプリンタ10は、媒体50に対してインクジェット方式で印刷を行う印刷装置であり、インクジェットヘッド12、主走査駆動部14、複数のローラ16a、16b、制御部18、及び記憶部20を備える。
【0019】
インクジェットヘッド12は、媒体50にインクを吐出するノズルを有する印刷ヘッドである。インクジェットヘッド12は、主走査駆動部14に駆動されて、予め設定された主走査方向(Y方向)へ往復するスキャン動作を行う。また、本例において、インクジェットヘッド12は、主走査方向と直交する副走査方向(X方向)に並ぶ複数のノズルを有する。
【0020】
主走査駆動部14は、主走査方向へインクジェットヘッド12を移動させる機構部である。インクジェットプリンタ10が作図を行う作図時において、主走査駆動部14は、制御部18の指示に応じて、インクジェットヘッド12のノズルからインクを吐出させつつ、主走査方向へインクジェットヘッド12を移動させる。複数のローラ16a、16bは、副走査駆動部の一例であり、制御部18の指示に応じて、副走査方向へ媒体50を送る。
【0021】
制御部18は、例えばインクジェットプリンタ10のCPUであり、インクジェットプリンタ10の動作を制御する。本例において、制御部18は、ホストPCを介してユーザの指示を受け取り、受け取った指示に基づき、インクジェットプリンタ10の各部の動作を制御する。
【0022】
記憶部20は、例えばインクジェットプリンタ10のメモリであり、インクジェットプリンタ10の制御に必要な各種情報等を記憶する。例えば、記憶部20は、主走査駆動部14の制御の基準となる作図原点の座標を記憶する。この作図原点は、例えば、主走査方向において次の作図を開始すべき位置を示す。また、本例において、記憶部20は、テスト作図以外の通常作図を行う場合の作図原点と区別して、テスト作図を行う場合に作図原点となるテスト作図原点の座標を更に記憶する。また、テスト作図原点の座標の初期値を更に記憶する。
【0023】
また、記憶部20は、例えば、インクジェットプリンタ10の動作を制御するプログラムを更に記憶する。このプログラムは、例えばネットワークや記憶媒体を介してホストPCに読み込まれ、更にインクジェットプリンタ10へと転送される。インクジェットプリンタ10においては、制御部18が、このプログラムに応じて、インクジェットプリンタ10の各部の動作を制御する。例えば、インクジェットプリンタ10は、記憶部20に記憶されるプログラムに基づき、テスト作図を行う。テスト作図とは、例えば、インクジェットヘッド12のノズルの状態を確認するためのテストパターンを作図する動作である。
【0024】
図2は、複数回のテスト作図をインクジェットプリンタ10が行う動作の一例を示す図である。本例において、インクジェットプリンタ10は、1回のテスト作図において、主走査方向の長さがty、副走査方向の長さがtxのテストパターンを作図する。
【0025】
インクジェットプリンタ10は、テストパターンとして、例えば、全てのノズルからインクを吐出させるベタ印字のパターンを作図する。この場合、インクジェットヘッド12のノズルが詰まっていると、テストパターンにおいてそのノズルに対応する部分は、インクが吐出されず、媒体50の色(例えば白色)のままの状態となる。インクジェットプリンタ10のユーザは、このようなインクが吐出されていない箇所の有無を目視で確認することにより、インクジェットヘッド12のノズルの状態を確認する。
【0026】
ここで、制御部18は、インクジェットプリンタ10が1回のテスト作図を行う毎に、記憶部20に記憶されているテスト作図原点の座標の値を更新する。また、1回目のテスト作図を行う前の状態おいて、記憶部20は、テスト作図原点の座標の値として、予め設定された初期値を記憶している。本例において、この初期値は、例えば、予め設定されたマージン分mだけ主走査方向において媒体50の一端から離れた位置の座標である。
【0027】
図2(a)は、1回目のテスト作図後の状態を示す。1回目のテスト作図時において、主走査駆動部14は、上記のテスト作図原点の座標の位置から、主走査方向へ、インクジェットヘッド12を移動させる。これにより、インクジェットヘッド12は、1回目のテスト作図のテストパターン102aを作図する。
【0028】
図2(b)は、2回目のテスト作図後の状態を示す。本例において、制御部18は、インクジェットヘッド12にテスト作図を行わせる毎に、テスト作図原点の座標の値を、テストパターンの主走査方向の長さ分tyと、マージン分mとの和の分だけ増加させる。そのため、2回目のテスト作図時において、主走査駆動部14は、1回目のテスト作図で作図されたテストパターン102aからマージン分mだけ主走査方向において離間した位置から、主走査方向へ、インクジェットヘッド12を移動させる。これにより、インクジェットヘッド12は、2回目のテスト作図のテストパターン102bを作図する。
【0029】
図2(c)は、3回目のテスト作図後の状態を示す。2回目のテスト作図後、制御部18は、テスト作図原点の座標の値を、更に、テストパターンの主走査方向の長さ分tyと、マージン分mとの和の分だけ増加させる。そのため、3回目のテスト作図時において、主走査駆動部14は、2回目のテスト作図で作図されたテストパターン102bからマージン分mだけ主走査方向において離間した位置から、主走査方向へ、インクジェットヘッド12を移動させる。これにより、インクジェットヘッド12は、3回目のテスト作図のテストパターン102cを作図する。
【0030】
図2(d)は、4回目のテスト作図後の状態を示す。本例において、主走査方向における媒体50の幅は、上記のように1〜3回目のテスト作図を行うために必要な幅よりも大きく、かつ、4回目のテスト作図を更に行おうとする場合に必要となる幅よりも小さい。そのため、4回目のテスト作図を行う前に、制御部18は、ローラ16a、16bに、X方向へ媒体50を送らせる。ローラ16a、16bは、制御部18の指示に応じて、テストパターンの副走査方向の長さ分txと、X方向におけるマージン分である予備フィード分fとの和の分だけ、副走査方向へ媒体50を送る。また、本例において、制御部18は、ローラ16a、16bに媒体50を送らせるのに応じて、テスト作図原点の座標の値を初期化し、1回目のテスト作図を行う前と同様に、所定の初期値に設定する。
【0031】
これにより、4回目のテスト作図時において、主走査駆動部14は、1回目のテスト作図で作図されたテストパターン102aから予備フィード分fだけ副走査方向において離間した位置から、主走査方向へ、インクジェットヘッド12を移動させる。これにより、インクジェットヘッド12は、4回目のテスト作図のテストパターン102dを作図する。
【0032】
本例によれば、例えば、複数のテストパターン102a〜102cを主走査方向に並べて作図できる。そのため、媒体50の無駄を軽減して、適切にテスト作図を行うことができる。また、例えば、テスト作図に必要なスペースが主走査方向において残っている間は、テスト作図の合間に副走査方向へ媒体50を送ることなく、複数のテスト作図を繰り返し行うことができる。そのため、本例によれば、例えば、連続してテスト作図を行う場合に、作図に必要な時間を短縮できる。
【0033】
続いて、インクジェットプリンタ10の動作について、フローチャートを用いて説明する。図3は、インクジェットプリンタ10の動作の一例を示すフローチャートである。尚、本フローチャートにおいて、ステップS100、S106、S110のように、逆さ台形で示したステップは、ユーザによる操作が行われるステップを示す。
【0034】
本例のインクジェットプリンタ10の動作においては、最初に、ユーザによる媒体50の設置(メディアセット)が行われる(S100)。媒体50としては、例えば、主走査方向における幅がテスト作図時に作図されるテストパターンの2倍よりも大きい媒体が用いられる。
【0035】
そして、媒体50の設置に応じて、インクジェットプリンタ10は、例えば公知の方法により媒体50の幅を検知し、媒体50の幅を設定する(S102)。また、媒体50の幅に応じて、主走査方向における作図開始位置である作図原点を設定する(S104)。
【0036】
尚、ステップS104で設定される作図原点は、テスト作図以外の通常作図を行う場合に作図を開始すべき位置を示す。また、この作図原点は、テスト作図の作図原点となるテスト作図原点の座標の値の初期値としても用いられる。
【0037】
次に、インクジェットプリンタ10は、ユーザによる作図原点の確認を受け付ける(S106)。このステップにおいて、ユーザは、例えば、必要に応じて、作図原点の再設定を行う。この場合、ユーザは、例えばLEDポインタを用いて、作図原点を再設定する。
【0038】
その後、インクジェットプリンタ10は、作図指示を受けるまでの間、待機する(S108)。そして、例えばホストPCを介してユーザが作図指示を行うと(S110)、インクジェットプリンタ10は、その作図指示がテスト作図を行う指示であるか否かを確認する(S112)。
【0039】
そして、作図指示がテスト作図の指示である場合(S112:Yes)、インクジェットプリンタ10は、テスト作図を行う(S114)。テスト作図の動作については、後に更に詳しく説明する。また、テスト作図の後には、ステップS108に戻り、次の作図指示を受け付けるまでの間、更に待機する。
【0040】
また、作図指示がテスト作図の指示ではない場合(S112:No)、インクジェットプリンタ10は、通常作図を開始する。この場合、先ず、これから行う通常作図の前に行った前回の作図がテスト作図であるか否かを確認する(S116)。
【0041】
尚、本例において、制御部18は、例えば、少なくとも前回の作図を含む過去に行った作図について、テスト作図であるか否かを示す履歴を、記憶部20に記憶させておく。そして、前回の作図がテスト作図であるか否かを、この履歴に基づいて確認する。このように構成すれば、前回の作図についての確認を適切に行うことができる。
【0042】
そして、前回の作図がテスト作図である場合(S116:Yes)、インクジェットプリンタ10は、テスト作図1回分だけ、副走査方向へ媒体50を送る(S118)。この場合、制御部18は、ローラ16a、16bに、例えば、テストパターンの副走査方向の長さ分だけ、副走査方向へ媒体50を送らせる。
【0043】
そして、次に行う通常作図と前回の作図とが副走査方向において重なることを確実に避けるため、更に、インクジェットプリンタ10は、予備フィード分だけ、媒体50を副走査方向へ送る(S120)。これにより、前回の作図がテスト作図である場合、制御部18は、ローラ16a、16bに、テストパターンの副走査方向の長さと、予備フィード分との和の分だけ、副走査方向へ媒体50を送らせる。尚、前回の作図がテスト作図でない場合(S116:No)、インクジェットプリンタ10は、ステップS118を省略して、ステップS120に進む。
【0044】
そして、ステップS104で設定された作図原点を基準にして、インクジェットプリンタ10は、この作図原点から、通常作図を実行する(S122)。通常作図の後には、ステップS108に戻り、次の作図指示を受け付けるまでの間、更に待機する。
【0045】
図4は、インクジェットプリンタ10がテスト作図を行う動作の一例を示すフローチャートである。テスト作図を行う場合、本例のインクジェットプリンタ10は、先ず、例えばホストPCから、作図すべきテストパターンを示すテスト作図データを取得する(S202)。そして、これから行うテスト作図の前に行った前回の作図がテスト作図であるか否かを確認する(S204)。インクジェットプリンタ10は、この確認を、例えば通常作図を行う場合に前回の作図を確認するのと同様の方法により行う。
【0046】
そして、前回の作図がテスト作図である場合(S204:Yes)、次のテスト作図を行うスペースが主走査方向(Y方向)にあるか否かを確認する(S206)。この確認において、制御部18は、副走査方向へ媒体50を送らずにテスト作図を行うスペースがあるか否かを判定する。テスト作図を行うスペースがあるとは、例えば、作図が行われていない領域が主走査方向においてテスト作図分以上あることである。また、本例において、制御部18は、記憶部20に記憶されているテスト作図原点の座標に基づき、この判定を行う。
【0047】
そして、テスト作図を行うスペースがあると判定した場合(S206:Yes)、副走査方向へ媒体50を送らず、テスト作図のスキャンを実行する。テスト作図のスキャンにおいて、制御部18は、主走査駆動部14により主走査方向へインクジェットヘッド12を移動させて、インクジェットヘッド12に次のテスト作図を行わせる。また、この場合、制御部18は、記憶部20に記憶されているテスト作図原点を基準にして、インクジェットヘッド12にテスト作図を行わせる。
【0048】
また、インクジェットプリンタ10は、テスト作図のスキャン後に、記憶部20に記憶されているテスト作図原点を更新する(S210)。制御部18は、インクジェットヘッド12にテスト作図を行わせる毎に、テストパターンの主走査方向の長さとマージン分の和の分だけ、テスト作図原点の座標の値を増加させて、この更新を行う。本例によれば、例えば、副走査方向へ媒体50を送ることなく、複数回のテスト作図を適切に行うことができる。
【0049】
ここで、前回の作図がテスト作図であり(S204:Yes)、かつ、次のテスト作図を行うスペースが主走査方向にない場合(S206:No)、インクジェットプリンタ10は、テスト作図1回分だけ、副走査方向へ媒体50を送る(S220)。この場合、制御部18は、ローラ16a、16bに、例えば、テストパターンの副走査方向の長さ分だけ、副走査方向へ媒体50を送らせる。
【0050】
また、この場合、インクジェットプリンタ10は、更に、予備フィード分だけ、媒体50を副走査方向へ送る(S214)。また、テスト作図原点の初期化を行う(S216)。テスト作図原点の初期化において、制御部18は、記憶部20に記憶されているテスト作図原点の座標を、ステップS104(図3参照)で設定された初期値に初期化する。
【0051】
そして、S208に進み、初期化後のテスト作図原点を基準にして、テスト作図を行う。本例によれば、例えば、テスト作図を複数回行うことにより主走査方向のスペースがなくなった場合に、副走査方向へ適切に媒体50を送ることができる。また、これにより、次のテスト作図を適切に行うことができる。
【0052】
また、前回の作図がテスト作図ではない場合も(S204:No)、インクジェットプリンタ10は、次のテスト作図を行うスペースが主走査方向にあるか否かを確認する(S212)。そして、この場合、スペースがなければ(S212:No)、例えばエラー表示を行って、テスト作図を行わずに、動作を終了する(S218)。また、スペースがある場合(S212:Yes)、S214に進み、上記の説明と同様にして、テスト作図を行う。本例によれば、通常作図後においても、テスト作図を適切に行うことができる。
【0053】
尚、インクジェットプリンタ10は、テスト作図を主走査方向に行うか、副走査方向に行うかの選択を、ユーザから受け付けてもよい。テスト作図を主走査方向に行うとは、例えば、複数のテストパターンが主走査方向に並ぶように複数回のテスト作図を行うことである。テスト作図を主走査方向に行うことをユーザが選択した場合、インクジェットプリンタ10は、例えば上記で説明した動作を行う。また、テスト作図を副走査方向に行うとは、例えば、ステップ206でスペースがないと判断した場合にように、媒体50を送ってテスト作図を行うことである。テスト作図を副走査方向に行うことをユーザが選択した場合、インクジェットプリンタ10は、例えばステップ206での判断を省略し、ステップ206でスペースがないと判断した場合と同様の動作でテスト作図を行う。
【0054】
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、例えばインクジェットプリンタに好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタ10の構成の一例を示す図である。
【図2】複数回のテスト作図をインクジェットプリンタ10が行う動作の一例を示す図である。図2(a)は、1回目のテスト作図後の状態を示す。図2(b)は、2回目のテスト作図後の状態を示す。図2(c)は、3回目のテスト作図後の状態を示す。図2(d)は、4回目のテスト作図後の状態を示す。
【図3】インクジェットプリンタ10の動作の一例を示すフローチャートである。
【図4】インクジェットプリンタ10がテスト作図を行う動作の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0057】
10・・・インクジェットプリンタ、12・・・インクジェットヘッド、14・・・主走査駆動部、16a、16b・・・ローラ、18・・・制御部、20・・・記憶部、50・・・媒体、102a、102b、102c、102d・・・テストパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット方式で印刷を行うインクジェットプリンタであって、
媒体にインクを吐出するノズルを有するインクジェットヘッドと、
予め設定された主走査方向へ前記インクジェットヘッドを移動させる主走査駆動部と、
前記主走査方向と直交する副走査方向へ前記媒体を送る副走査駆動部と、
前記インクジェットプリンタの動作を制御する制御部と
を備え、
前記インクジェットヘッドの前記ノズルの状態を確認するためのテストパターンを作図するテスト作図を前記インクジェットプリンタが行う場合であり、かつ、前記主走査方向における幅が前記テストパターンの前記主走査方向の長さの2倍よりも大きい前記媒体に対して前記テスト作図を複数回行う場合、
前記制御部は、
前記媒体に第1の前記テスト作図として作図された前記テストパターンの前記副走査方向における同じ位置に第2の前記テスト作図を行うスペースがあるか否かを判定し、
第2の前記テスト作図を行うスペースがあると判定した場合、前記副走査方向における同じ位置での前記テスト作図を行うスペースにおいて、前記主走査駆動部により前記主走査方向へ前記インクジェットヘッドを移動させて、前記インクジェットヘッドに第2の前記テスト作図を行わせることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記テスト作図を行うスペースがあるか否かの判定において、第2の前記テスト作図を行うスペースがないと判定した場合、
前記制御部は、前記副走査駆動部に、
前記媒体を少なくとも前記テストパターンの前記副走査方向の長さ分だけ、前記副走査方向へ送らせ、
前記主走査駆動部により前記主走査方向へ前記インクジェットヘッドを移動させて、前記インクジェットヘッドに第2の前記テスト作図を行わせることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記制御部は、
前記媒体に第1の前記テスト作図として作図された前記テストパターンの前記副走査方向における同じ位置に第2の前記テスト作図を行う第1のモードと、
前記媒体に第1の前記テスト作図として作図された前記テストパターンの前記主走査方向における同じ位置に第2の前記テスト作図を行う第2のモードとを有し、
前記第1のモードと前記第2のモードとをユーザによって切り換え可能に構成したことを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
媒体にインクを吐出するノズルを有するインクジェットヘッドと、予め設定された主走査方向へ前記インクジェットヘッドを移動させる主走査駆動部と、前記主走査方向と直交する副走査方向へ前記媒体を送る副走査駆動部と、インクジェットプリンタの動作を制御する制御部とを備えるインクジェットプリンタに、前記インクジェットヘッドの前記ノズルの状態を確認するためのテストパターンを作図するテスト作図を行わせる印刷方法であって、
前記主走査方向における幅が前記テストパターンの前記主走査方向の長さの2倍よりも大きい前記媒体に対して前記テスト作図を複数回行う場合において、
前記媒体に第1の前記テスト作図として作図された前記テストパターンの前記副走査方向における同じ位置に第2の前記テスト作図を行うスペースがあるか否かを判定し、
第2の前記テスト作図を行うスペースがあると判定した場合、前記副走査方向における同じ位置での前記テスト作図を行うスペースにおいて、前記主走査駆動部により前記主走査方向へ前記インクジェットヘッドを移動させて、前記インクジェットヘッドに第2の前記テスト作図を行わせることを特徴とする印刷方法。
【請求項5】
媒体にインクを吐出するノズルを有するインクジェットヘッドと、予め設定された主走査方向へ前記インクジェットヘッドを移動させる主走査駆動部と、前記主走査方向と直交する副走査方向へ前記媒体を送る副走査駆動部と、インクジェットプリンタの動作を制御する制御部とを備えるインクジェットプリンタに、前記インクジェットヘッドの前記ノズルの状態を確認するためのテストパターンを作図するテスト作図を行わせるプログラムであって、
前記主走査方向における幅が前記テストパターンの前記主走査方向の長さの2倍よりも大きい前記媒体に対して前記テスト作図を複数回行う場合において、
前記制御部に、
前記媒体に第1の前記テスト作図として作図された前記テストパターンの前記副走査方向における同じ位置に第2の前記テスト作図を行うスペースがあるか否かを判定させ、
第2の前記テスト作図を行うスペースがあると判定された場合、前記副走査方向における同じ位置での前記テスト作図を行うスペースにおいて、前記主走査駆動部により前記主走査方向へ前記インクジェットヘッドを移動させて、前記インクジェットヘッドに第2の前記テスト作図を行わせることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−18290(P2013−18290A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−211894(P2012−211894)
【出願日】平成24年9月26日(2012.9.26)
【分割の表示】特願2008−21223(P2008−21223)の分割
【原出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【Fターム(参考)】