説明

インクジェットプリンタ、及びインクヘッドの洗浄装置

【課題】ポンプの制約を受けることなく、インクヘッド内に流れるインクの方向を切り替えることのできるインクジェットプリンタ、及びインクヘッドの洗浄を行う洗浄装置を提供する。
【解決手段】経路切替部9は、記録時、第1の流路31に設けられた第1の弁32と第2の流路33に設けられた第2の弁34が開放し、第3の流路35に設けられた第3の弁36と第4の流路37に設けられた第4の弁38を閉じる。また、経路切替部9は、クリーニング時、第1の弁32と第2の弁34を閉じ、第3の弁36と第4の弁38が開放する。これによって、記録時は、第2の経路12から記録部2にインクが流入し、クリーニング時は、第3の経路13から記録部2にインクが流入するため、記録部2内を流れるインクの方向を切り替えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクヘッドからインクを吐出し、画像記録を行うインクジェットプリンタ、及びインクヘッドの洗浄を行う洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的に、サーマルヘッド方式或いは電気機械変換素子(ピエゾ)方式等のインクヘッドを搭載し、このインクヘッドにより記録用紙等の記録媒体上にインク滴を吐出し、記録を行うインクジェットプリンタが知られている。
【0003】
このようなインクジェットプリンタでは、インクヘッドのノズルで目詰まりが発生した場合、この目詰まりを発生させた異物等を除去する必要がある。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1では、インクが循環する循環路を有し、ポンプによって循環路を流れるインクの方向を正逆に切り替えることによってインクヘッド内の異物等を除去している。
【0005】
つまり、ポンプによって循環路を流れるインクの方向を切り替えることによって、インクヘッド内を流れるインクの方向を切り替えて、インクヘッドの目詰まりの原因となる異物等を除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−88492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に示される従来技術では、インクヘッド内を流れるインクの方向を切り替えるために、正逆両方向にインクを流すことが出来るポンプを使用する必要がある。つまり、使用するポンプに制約が生じてしまう。
【0008】
これは、設計上ポンプの形式に拘束されることになり、そのため設計の自由度が損なわれ、さらにはコスト低減の阻害要因になりかねないという課題がある。
【0009】
そこで、本発明は上記従来の課題を解決するものであって、ポンプの制約を受けることなく、インクヘッド内に流れるインクの方向を切り替えることのできるインクジェットプリンタ、及びインクヘッドの洗浄を行う洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明による実施形態のインクジェットプリンタは、インク供給口とインク回収口とを有するインクタンクと、第1の連結口と第2の連結口とを有する記録部と、インクを記録部とインクタンクとの間に循環させるポンプと、を備えたインクジェットプリンタにおいて、インクタンクのインク供給口と記録部の第1の連結口とに連絡するインク流路の往路と、記録部の第2の連結口とインクタンクのインク回収口とに連絡するインク流路の復路とを、インクタンクのインク供給口と記録部の第2の連結口とに連絡する往路と、記録部の第1の連結口とインクタンクのインク回収口とに連絡する復路とに、切り替えるインク往復路切替部を備える、ことを特徴とする。
【0011】
また、上記課題を解決するために、本発明による実施形態の洗浄装置は、インク供給口とインク回収口とを有するインクタンクと、第1の連結口と第2の連結口とを有する記録部と、インクを記録部に供給すると共にインクを記録部とインクタンクとの間に循環させるポンプと、有するインクジェットプリンタにおいて、記録部に液送するインク流路の往路と復路を切り替える経路切替部を備え、該経路切替部は、インクタンクのインク供給口と記録部の第1の連結口とに連絡するインク流路の往路と、記録部の第2の連結口とインクタンクのインク回収口とに連絡するインク流路の復路とを、インクタンクのインク供給口と記録部の第2の連結口とに連絡する往路と、記録部の第1の連結口とインクタンクのインク回収口とに連絡する復路とに、切り替える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ポンプの制約を受けることなく、インクヘッド内に流れるインクの方向を切り替えることのできるインクジェットプリンタ、及びインクヘッドの洗浄を行う洗浄装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態1に係るインクジェットプリンタのインク経路を概略的に示している。
【図2】本発明の実施形態1に係るインクジェットプリンタの記録部の構成を詳細に示している。
【図3】本発明の実施形態1に係るインクジェットプリンタの記録時におけるインクの流れを示し 、(a) には経路切替部を流れるインクの状態を示し、(b) には記録部に流れるインクの状態を示している。
【図4】本発明の実施形態1に係るインクジェットプリンタのクリーニング時におけるインクの流れを示し、(a) には経路切替部を流れるインクの状態を示し、(b) には記録部に流れるインクの状態を示している。
【図5】本発明の実施形態1に係るインクジェットプリンタの他のインク経路を概略的に示している。
【図6】(a),(b) は実施形態1に係るインクジェットプリンタの変形例における経路切替部を示すと共に、(a) には印字時の動作状態を示し、(b) にはクリーニング時の動作状態を示している。
【図7】(a),(b) は本発明の実施形態2に係るインクヘッドの洗浄装置における洗浄液の経路を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
[実施形態1]
図1は本発明の実施形態1に係るインクジェットプリンタのインク経路を概略的に示している。
【0015】
尚、図1には、記録媒体を供給する供給部、供給された記録媒体を搬送する搬送部、画像形成された記録媒体を搬出する排出部、インクヘッドのノズル面のクリーニングを行うクリーニング部、及びインク吐出制御を始めとして装置全体を制御する制御部等の通常のインクジェットプリンタが備えている構成は図示を省略されている。
【0016】
インクジェットプリンタ1は、インク色毎に独立したインク経路を有している。本実施形態では、例えば、4色(シアン:C、マゼンタ:M、イエロー:Y、ブラック:K)のインクによる独立4系統のインク経路を有しているが、図1には、代表的にある1色のインクに係わるインク経路のみを示している。
【0017】
このインクジェットプリンタ1は、大別すると、記録媒体に画像を記録する記録部2と、記録部2に対してインクを循環させるインク循環経路としてのインク循環部3と、インク循環部3にインクを補充する補充部4とを備えている。
【0018】
まず、補充部4について説明する。
補充部4は、メインタンク(又は、着脱可能なインクカートリッジ)5と、補充経路6と、インク供給弁7と、で構成されている。メインタンク5には、所定色のインクが貯留されている。このメインタンク5は、インク供給弁7が設けられた補充経路6を介して第2のタンク15と接続されている。
【0019】
インク供給弁7は、インク循環部3内のインク量に基づいて開閉動作が制御される。つまり、インク循環部3内のインク量が所定量以下の場合、インク供給弁7が開放されてメインタンク5から第2のタンク15にインクが補充され、インク循環部3内のインク量が所定量以上の場合、インク供給弁7が閉じられる。尚、本実施形態では、メインタンク5は、第2のタンク15にインクを補充しているが、第1のタンク8に補充させるようにしてもよい。
【0020】
次に、記録部2及びインク循環部3について説明する。
インク循環部3は、第1のタンク8と、経路切替部9と、フィルタ10と、第2のタンク15と、ポンプ16と、を有している。
【0021】
また、インク循環部3は、第1のタンク8の流出口8aと経路切替部9の第1の連結口8aとを接続する第1の経路11と、経路切替部9の第2の連結口8bと記録部2の第1の連結口2aとを接続する第2の経路12と、径路切替部9の第3の連結口8cと記録部2の第2の連結口2bとを接続する第3の経路13と、経路切替部9の第4の連結口4dと第2のタンク15の流入口15aとを接続する第4の経路14と、第1のタンク8の流入口8bと第2のタンク15の流出口15bとを接続する第5の経路17と、を有している。
【0022】
なお、第1の経路11及び第2の経路12によって構成された経路を往路とし、第3の経路13及び第4の経路14によって構成された経路を復路とする。
【0023】
第1のタンク8は、記録部2より重力方向上方に配置されている。この第1のタンク8には、該第1のタンク8内を大気に開放する、又は密閉するための不図示の大気開放弁と、第1のタンク8内に貯留されたインクのインク量を検出するための不図示の液面検出器が設けられている。
【0024】
大気開放弁は、画像記録時、及び後述する記録部2のクリーニング時(異物除去時)に開放され、待機時(非インク循環時)に閉じられている。また、液面検出器は、第1のタンク8内に貯留されているインク量を検出し、ポンプ16の駆動を制御する。
【0025】
すなわち、液面検出器によって第1のタンク8のインク量が十分足りていると検出された場合は、ポンプ16を停止し、逆に、液面検出器によって第1のタンク8のインク量が不足していると検出された場合は、ポンプ16を駆動する。
【0026】
この動作により、第2のタンク15からインクが第1のタンク8に汲み上げられ、第1のタンク8の液面高さが所望の範囲に維持されている。
【0027】
そして、第1のタンク8内のインクは、第1の経路11を介して経路切替部9に供給される。なお、第1のタンク8内のインクは、第1のタンク8と記録部2との高低差(水頭差)によって自重で第1のタンク8から経路切替部9に供給される。
【0028】
フィルタ10は、第1の経路11に設けられている。このフィルタ10は、第1のタンク8から流出したインク中に含まれる異物を除去する。これによって、経路切替部9には、フィルタ10によって異物が除去されたインクが流入する。
【0029】
経路切替部9は、詳細は後述するが、例えば、画像記録時は、第1の経路11と第2の経路12とを接続(連通)させると共に、第3の経路13と第4の経路14とを接続(連通)させ、記録部2のクリーニング時は、第1の経路11と第3の経路13とを接続(連通)させると共に、第2の経路12と第4の経路14とを接続(連通)させる。
【0030】
これによって、経路切替部9は、画像記録時とクリーニング時とで、記録部2に流れるインクの方向を切り替えている。
【0031】
記録部2は、図2に示すように、ラインヘッド21と、第1の分配/回収タンク22と、第2の分配/回収タンク23と、を有している。
【0032】
ラインヘッド21は、外部装置から入力された画像信号に基づいてインクを吐出し、記録媒体上に画像を記録する。本実施形態のラインヘッド21は、記録される記録媒体の幅に満たない複数のインクヘッド24を、例えば、搬送方向と直交する方向に千鳥状に並べ、フレーム等に固定することで構成されている。
【0033】
なお、図2では、図面が煩雑となるのを避けるため、インクヘッド24の千鳥状配置の手前側の列のみを示している。
【0034】
第1の分配/回収タンク22は、第2の経路12と接続されると共に、チューブ25を介してインクヘッド24の第1の連結口24aと接続されている。この第1の分配/回収タンク22は、例えば、画像記録時は、第2の経路12から流入したインクを各インクヘッド24に分配する分配器としての役目を果たし、クリーニング時は、各インクヘッド24を通過したインクを回収する回収器としての役目を果たす。
【0035】
第2の分配/回収タンク23は、第3の経路13と接続されると共に、チューブ26を介してインクヘッド24の第2の連結口24bと接続されている。この第2の分配/回収タンク23は、例えば、画像記録時は、各インクヘッド24を通過したインクを回収する回収器としての役目を果たし、クリーニング時は、第3の経路13から流入したインクを各インクヘッド24に分配する分配器としての役目を果たす。
【0036】
なお、本実施形態では、記録部2の構成として、ラインヘッド21を有するラインタイプとしたが、これに限らず、記録媒体上を走査しながら記録を行うシリアルヘッドを有するシリアルタイプとしてもよい。要は、記録部2は、ラインタイプ、シリアルタイプのどちらであってもよく、インクを循環させることが可能な少なくとも1つ以上のインクヘッドを有していればよい。
【0037】
第2のタンク15は、記録部2より重力方向下方に配置されている。この第2のタンク15には、経路切替部9から流出したインクが第4の経路14を介して流入する。また、第2のタンクには、第2のタンク15内に貯留されたインクのインク量を検出するための不図示の液面検出器が設けられている。
【0038】
液面検出器は、第2のタンク15内に貯留されているインク量を検出し、インク供給弁7の駆動を制御する。すなわち、液面検出器によって第2のタンク15のインク量が十分足りていると検出された場合は、インク供給弁7を閉じ、逆に、液面検出器によって第2のタンク15のインク量が不足していると検出された場合は、インク供給弁7を開放する。
【0039】
この動作により、補充部4(メインタンク5)からインクが第2のタンク15に補充され、第2のタンク15の液面高さが所望の範囲に維持されている。なお、第2のタンク15内は、不図示のフィルタを介して大気圧状態となっている。
【0040】
これにより、本実施形態では、画像記録時、及び記録部2のクリーニング時(異物除去時)には、第1のタンク8と記録部2との高低差(水頭差)、及び第2のタンク15と記録部2との高低差(水頭差)によって記録部2のインクヘッド24に所定の負圧がかかっている。
【0041】
また、待機時(非インク循環時)には、第2のタンク15と記録部2との高低差(水頭差)によって記録部2のインクヘッド24に所定の負圧がかかっている。
【0042】
ポンプ16は、第5の経路17に設けられている。このポンプ16は、前述したように第1のタンク8のインク量に基づいて駆動され、第2のタンク15から第1のタンク8にインクを送液する。なお、本実施形態では、ポンプ16を第5の経路17に設けたが、これ限らず、第1の経路11や第4の経路14であってもよい。
【0043】
次に、経路切替部9の構成及び動作について説明する。
図3は、本実施形態における記録時におけるインク循環部3を流れるインクを示し 、(a) には経路切替部9を流れるインクの状態を示し、(b) には記録部2に流れるインクの状態を示している。
【0044】
図4は、本実施形態における記録部2のクリーニング時におけるインク循環部3を流れるインクを示し、(a) には経路切替部9を流れるインクの状態を示し、(b) には記録部2に流れるインクの状態を示している。なお、図中の矢印は、インクの流れる方向を示している。
【0045】
経路切替部9は、図3(a)及び図4(a)に示すように、第1の経路11と第2の経路12とを連結する第1の流路31と、第3の経路13と第4の経路14とを連結する第2の流路33と、第1の経路11と第3の経路13とを連結する第3の流路35と、第2の経路12と第4の経路14とを連結する第4の流路37と、を有している。
【0046】
また、経路切替部9のそれぞれの流路には、弁が設けられている。詳細には、第1の流路31には、第1の弁32が設けられ、第2の流路33には、第2の弁34が設けられている。さらに第3の流路35には、第3の弁36が設けられ、第4の流路37には、第4の弁38が設けられている。
【0047】
なお、図3(a)及び図4(a) に示す第1の弁32、第2の弁34、第3の弁36、及び第4の弁38は、開状態のときを白丸で示し、閉状態のときを、×印を白丸で囲んで示している。
【0048】
先ず、図3を参照して、記録部2で記録を行う印字時における経路切替部9及びインクジェットプリンタ1全体の動作を説明する。印字時には、図3(a) に示すように、第1の弁32と第2の弁34が開放され、第3の弁36と第4の弁38が閉鎖されている。
【0049】
この状態で第1のタンク8から流出したインクは、第1の経路11を介して経路切替部9に流入する。その際、第1の経路11には、フィルタ10が配置されているため、フィルタ10によって異物を除去される。
【0050】
そして、経路切替部9に流入したインクは、図3(a) に示すように、第1の弁32が開放され、且つ第3の弁36及び第4の弁38が閉じられているため、第1の流路31を通り、経路切替部9から流出する。
【0051】
経路切替部9から流出したインクは、第2の経路12を介して記録部2に流入する。記録部2に流入したインクは、図3(b)に示すように、第1の分配/回収タンク22からチューブ25を介して複数のインクヘッド24に分配される。
【0052】
そして、複数のインクヘッド24で吐出されなかったインクは、チューブ26を介して第2の分配/回収タンク23に回収され、記録部2から流出する。このように、記録時において、インクヘッド24には、第1の連結口24aから第2の連結口24bに向かってインクが流れる。
【0053】
記録部2から流出したインクは、第3の経路13を介して再び、経路切替部9に流入する。経路切替部9に流入したインクは、図3(a) に示すように、第2の弁34が開放され、且つ第3の弁36及び第4の弁38が閉じられているため、第2の流路33を通り、経路切替部9から流出する。
【0054】
経路切替部9から流出したインクは、第4の経路14を介して第2のタンク15に流入する。その後、第2のタンク15内に貯留されているインクは、ポンプ16によって第5の経路17を介して第1のタンク8に帰還する。
【0055】
次に、図4を参照して、記録部2(インクヘッド24)内の異物の除去を行うクリーニング時における路切替部9及びインクジェットプリンタ1全体の動作を説明する。クリーニング時には、図4(a) に示すように、第1の弁32と第2の弁34が閉鎖され、第3の弁36と第4の弁38が開放されている。
【0056】
この状態で第1のタンク8から流出したインクは、第1の経路11を介して経路切替部9に流入する。
【0057】
その際、第1の経路11には、フィルタ10が配置されているため、フィルタ10によって異物を除去される。そして、経路切替部9に流入したインクは、図4(a) に示すように、第3の弁36が開放され、且つ第1の弁32及び第2の弁34が閉じられているため、第3の流路35を通り、経路切替部9から流出する。経路切替部9から流出したインクは、第3の経路13を介して記録部2に流入する。
【0058】
記録部2に流入したインクは、図4(b)に示すように、第2の分配/回収タンク23からチューブ26を介して複数のインクヘッド24に分配される。そして、複数のインクヘッド24を通過したインクは、チューブ25を介して第1の分配/回収タンク22に回収され、記録部2から流出する。
【0059】
このように、クリーニング時において、インクヘッド24には、第2の連結口24bから第1の連結口24aに向かってインクが流れる。
【0060】
記録部2から流出したインクは、第2の経路12を介して再び、経路切替部9に流入する。経路切替部9に流入したインクは、図4(a) に示すように、第4の弁38が開放され、且つ第1の弁32及び第2の弁34が閉じられているため、第4の流路37を通り、経路切替部9から流出する。
【0061】
経路切替部9から流出したインクは、第4の経路14を介して第2のタンク15に流入する。その後、第2のタンク15内に貯留されているインクは、ポンプ16によって第5の経路17を介して第1のタンク8に帰還する。
【0062】
このように、経路切替部9は、記録時では、フィルタ10を通過したインクを第2の経路12を介して記録部2に流入させ、クリーニング時では、第3の経路13を介して記録部2にインクを流入させる。
【0063】
これによって、記録時とクリーニング時とで、記録部2に流れるインクの方向を切り替えることができる。つまり、記録部2に流れるインクの方向を切り替えるために、正逆方向にインクを送液できるポンプを使用することに限定する必要がなく、様々なポンプを使用することができ、設計上の制約がなくなる。
【0064】
また、記録時とクリーニング時とで経路切替部9によって記録部2に流れるインクの方向は切り替わるが、インク循環部3全体としてインクの流れる方向、換言すれば、ポンプ16がインクを循環させる方向は同じである。
【0065】
つまり、第1の経路11及び第4の経路14には常に同じ方向にインクが流れる。よって、フィルタ10には常に同じ方向にインクが流れ、フィルタ10が捕獲した異物が記録部2に流れ込むことはない。
【0066】
なお、上述した実施形態では、図3の状態を記録時、図4の状態をクリーニング時としたが、経路切替部9の各流路の流路抵抗を等しくすれば、図3の状態をクリーニング時、図4の状態を記録時としてもよい。
【0067】
また、経路切替部9の各流路の流路抵抗を等しくすれば、記録中においても記録部内を流れるインクの方向を切り替えることができる。
【0068】
さらに、上述した実施形態では、2つのタンク(第1のタンク8、第2のタンク15)を設け、インクを循環させたが、インクの循環はこれに限るものではなく、1つのタンクでインクを循環させるようにしてもよい。
【0069】
例えば、図5に示すように、第1のタンク8(又は第2のタンク15)と経路切替部9とを第1の経路11によって接続(連結)し、この第1の経路11にフィルタ10とポンプ16とを設ける。
【0070】
そして、記録時では、インクは、第1のタンク8からフィルタ10を通り、経路切替部9に流入する。経路切替部9に流入したインクは、第2の経路12を介して記録部2に流入する。そして、記録部2内を通過したインクは、第3の経路13を介して再び経路切替部9に流入し、第4の経路14を介して第1のタンク8に戻る。
【0071】
また、クリーニング時は、インクは、第1のタンク8からフィルタ10を通り、経路切替部9に流入する。経路切替部9に流入したインクは、第3の経路13を介して記録部2に流入する。
【0072】
そして、記録部2内を通過したインクは、第2の経路12を介して再び経路切替部9に流入し、第4の経路14を介して第1のタンク8に戻る。このようにしても、経路切替部9によって記録部2内を流れるインクの方向を切り替えることができる。
[実施形態1の変形例]
【0073】
図6(a),(b) は、実施形態1に係るインクジェットプリンタの変形例における経路切替部の構成を示すと共に、同図(a) に印字時の動作状態を示し、同図(b) にクリーニング時の動作状態を示している。
【0074】
図6に示すように、この変形例において、経路切替部9には、図3及び図4に示した第1、第2、第3、及び第4の弁32、34、36、及び38に代わって、第1の三方向弁41と、第2の三方向弁42と、が設けられている。それ以外の構成部分は、前述した実施形態1と同様である。
【0075】
第1の三方向弁41は、第1の経路11と第1の流路31とを連通させる、又は第1の経路11と第3の流路35とを連通させる。つまり、第1の三方向弁41は、第1の経路11から流入したインクを第1の流路31、又は第3の流路35に流す。
【0076】
第2の三方向弁42は、第4の経路14と第2の流路33とを連通させる、又は第4の経路14と第4の流路37とを連通させる。つまり、第2の三方向弁42は、第2の流路33、又は第4の流路37から流入したインクを第4の経路14に流す。
【0077】
図6(a) に示す記録時には、第1の三方向弁41は、第1の経路11と第1の流路31とを連通し、且つ第1の経路11と第3の流路35との連通を遮断する。また、図6(a) に示す記録時には、第2の三方向弁42は、第4の経路14と第2の流路33とを連通し、且つ第4の経路14と第4の流路37との連通を遮断する。
【0078】
これによって、図6(a) に示す記録時には、矢印で示すように、第1の経路11から流入したインクは、第1の流路31、第2の経路12を通って記録部2に流入する。そして、記録部2を通過したインクは、第3の経路13、第2の流路33を通って第4の経路14に流入する。
【0079】
図6(b) に示すクリーニング時には、第1の三方向弁41は、第1の経路11と第1の流路31との連通を遮断し、且つ第1の経路11と第3の流路35とを連通する。また、図6(b) に示すクリーニング時には、第2の三方向弁42は、第4の経路14と第2の流路33との連通を遮断し、且つ第4の経路14と第4の流路37とを連通する。
【0080】
これによって、図6(b) に示すクリーニング時には、矢印で示すように、第1の経路11から流入したインクは、第3の流路35、第3の経路13を通って記録部2に流入する。そして、記録部2を通過したインクは、第2の経路12、第4の流路37を通って第4の経路14に流入する。
【0081】
このように、本変形例によっても、前述した実施形態1と同様に、記録時とクリーニング時とで、記録部2を流れるインクの方向を切り替えることができる。さらに、三方向弁を用いることで、経路切替部9の構成を簡素化することができる。
[実施形態2]
【0082】
図7は、本発明の実施形態2に係るインクヘッドの洗浄装置における洗浄液の経路を概略的に示している。前述した実施形態1では、インクジェットプリンタに関して説明したが、本実施形態では、インクジェットプリンタに使用されるインクヘッドを洗浄する洗浄装置に関する。
【0083】
尚、図7には、前述した実施形態1と同一機能の構成部分には、同一の番号を付与して示している。
【0084】
図7に示すように、本実施形態の洗浄装置50の洗浄液経路は、洗浄液52を貯留するタンク51の流出口51aと経路切替部9の第1の連結口9aとを連結する第1の経路11と、経路切替部9の第2の連結口9bと洗浄するインクヘッドが取り付けられたヘッド部53の第1の連結口53aとを連結する第2の経路12と、経路切替部9の第3の連結口9cとヘッド部53の第2の連結口53bとを連結する第3の経路13と、経路切替部9の第4の連結口9dとタンク51の流入口51bとを接続する第4の経路14と、を有している。
【0085】
また、第1の経路11には、インクヘッド24内に洗浄液52を循環させるためのポンプ16と、洗浄液52に含まれる異物を除去するためのフィルタ10が設けられている。なお、本実施形態の経路切替部9は、前述した実施形態1やその変形例と同様な構成をしているため、詳細な説明は省略する。
【0086】
また、ヘッド部53の構成は、前述した実施形態1の記録部2と同様な構成をしているため、詳細な説明は省略する。
【0087】
このように構成された洗浄装置50は、ヘッド部53の洗浄を行う際、ポンプ16を駆動し、まず、図7(a)の矢印で示すように、洗浄液52を循環させる。つまり、図7(a)に示す状態では、洗浄液52は、タンク51からフィルタ10を通り、経路切替部9に流入する。
【0088】
経路切替部9に流入した洗浄液52は、第2の経路12を介してヘッド部53に流入する。そして、ヘッド部53内を通過したインクは、第3の経路13を介して再び経路切替部9に流入し、第4の経路14を介してタンク51に戻る。
【0089】
図7(a)に示す状態で、任意の時間経過すると、図7(b)の矢印で示すように、洗浄液52を循環させる。つまり、図7(b)に示す状態では、洗浄液52は、タンク51からフィルタ10を通り、経路切替部9に流入する。
【0090】
経路切替部9に流入した洗浄液52は、第3の経路13を介してヘッド部53に流入する。そして、ヘッド部53内を通過したインクは、第2の経路12を介して再び経路切替部9に流入し、第4の経路14を介してタンンク51に戻る。
【0091】
このように、経路切替部9によってヘッド部53内を流れるインクの方向を切り替えることで、ヘッド部53内の異物を効率よく除去することができる。また、フィルタ10には常に同じ方向にインクが流れるため、フィルタ10が捕獲した異物がヘッド部53に流れ込むことはない。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、インクジェットプリンタ、及びインクヘッドの洗浄装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 インクジェットプリンタ
2 記録部
3 インク循環部
4 補充部
5 メインタンク
6 補給経路
7 インク供給弁
8 第1のタンク
9 経路切替部
10 フィルタ
11 第1の経路
12 第2の経路
13 第3の経路
14 第4の経路
15 第2のタンク
16 ポンプ
17 第5の経路
21 ラインヘッド
22 第1の分配/回収タンク
23 第2の分配/回収タンク
24 インクヘッド
31 第1の流路
32 第1の弁
33 第2の流路
34 第2の弁
35 第3の流路
36 第3の弁
37 第4の流路
38 第4の弁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク供給口とインク回収口とを有するインクタンクと、
第1の連結口と第2の連結口とを有する記録部と、
前記インクを前記記録部と前記インクタンクとの間に循環させるポンプと、
を有するインクジェットプリンタにおいて、
前記記録部に液送するインク流路の往路と復路を切り替える経路切替部を備え、
該経路切替部は、
前記インクタンクの前記インク供給口と前記記録部の前記第1の連結口とに連絡するインク流路の往路と、前記記録部の前記第2の連結口と前記インクタンクの前記インク回収口とに連絡するインク流路の復路とを、
前記インクタンクの前記インク供給口と前記記録部の前記第2の連結口とに連絡する往路と、前記記録部の前記第1の連結口と前記インクタンクの前記インク回収口とに連絡する復路とに、切り替える、
ことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記ポンプは、前記インクタンクの前記インク供給口と前記記録部の前記第1の連結口に連絡するインク流路、又は前記記録部の前記第2の連結口と前記インクタンクの前記インク回収口とに連絡するインク流路に配置され、常に一方向にインクを流すよう制御される、ことを特徴とする請求項1記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記インクタンクの前記インク供給口と前記記録部の前記第1の連結口とに連絡するインク流路の上流側において該インク流路の内部の異物を除去するために配置され、常に一方向へ前記インクを流通させるフィルタを更に有する、ことを特徴とする請求項1記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記インク往復路切替部は、
請求項3記載のフィルタと前記記録部の前記第1の連結口とに連絡するインク流路に配置された第1の弁と、
前記記録部の前記第2の連結口と前記インクタンクの前記インク回収口とに連絡するインク流路に配置された第2の弁と、
前記フィルタと前記第1の弁との間の前記インク流路から分岐し前記第2の弁と前記記録部の前記第2の連結口との間のインク流路に合流する分岐路に配置された第3の弁と、
前記記録部の前記第1の連結口と前記第1の弁との間の前記インク流路から分岐し前記第2の弁と前記インクタンクの前記インク回収口との間の前記インク流路に合流する分岐路に配置された第4の弁と、
を有し、
前記記録部で記録を行うために前記インクタンクから前記記録部に前記インクを供給し前記記録部にて余剰な前記インクを前記インクタンクに回収するときは、前記第1及び第2の弁を開くと共に前記第3及び第4の弁を閉じるよう制御し、
前記記録部の内部に滞留する異物を洗浄するために前記第1の連結口と前記第2の連結口との間で前記インクを逆流させるときは、前記第1及び第2の弁を閉じると共に前記第3及び第4の弁を開くよう制御する、
ことを特徴とする請求項1記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
洗浄液供給口と洗浄液回収口とを有する洗浄液タンクと、
第1のインク兼洗浄液流路連結口と第2のインク兼洗浄液流路連結口とを有する記録部と、
洗浄液を前記記録部と前記インクタンクとの間に循環させるポンプと、
を備えたインクヘッド洗浄装置において、
前記洗浄液タンクの前記洗浄液供給口と前記記録部の前記第1のインク兼洗浄液流路連結口とに連絡する洗浄液流路の往路と、前記記録部の前記第2のインク兼洗浄液流路連結口と前記洗浄液タンクの前記洗浄液回収口とに連絡する洗浄液流路の復路とを、
前記洗浄液タンクの前記洗浄液供給口と前記記録部の前記第2のインク兼洗浄液流路連結口とに連絡する往路と、前記記録部の前記第1のインク兼洗浄液流路連結口と前記洗浄液タンクの前記洗浄液回収口とに連絡する復路とに、切り替える洗浄液往復路切替部を備える、ことを特徴とするインクヘッド洗浄装置。
【請求項6】
前記ポンプは、前記洗浄液タンクの前記洗浄液供給口と前記記録部の前記第1のインク兼洗浄液流路連結口とに連絡する洗浄液流路、又は前記記録部の前記第2のインク洗浄液流路連結口と前記洗浄液タンクの前記洗浄液回収口とに連絡する洗浄液流路に配置され、常に一方向に洗浄液を流すよう制御される、ことを特徴とする請求項5記載のインクヘッド洗浄装置。
【請求項7】
前記洗浄液タンクの前記洗浄液供給口と前記記録部の前記第1のインク兼洗浄液流路連結口とに連絡する洗浄液流路の上流側において該洗浄液流路の内部の異物を除去するために配置され、常に一方向へ前記洗浄液を流通させるフィルタを更に有する、ことを特徴とする請求項5記載のインクヘッド洗浄装置。
【請求項8】
前記洗浄液往復路切替部は、
請求項7記載のフィルタと前記記録部の前記第1のインク兼洗浄液流路連結口とに連絡する洗浄液流路に配置された第1の弁と、
前記記録部の前記第2のインク兼洗浄液流路連結口と前記洗浄液タンクの前記洗浄液回収口とに連絡する洗浄液流路に配置された第2の弁と、
前記フィルタと前記第1の弁との間の前記洗浄液流路から分岐し前記第2の弁と前記記録部の前記第2のインク兼液体流路連結口との間の洗浄液流路に合流する分岐路に配置された第3の弁と、
前記録部の前記第1のインク兼洗浄液流路連結口と前記第1の弁との間の前記洗浄液流路から分岐し前記第2の弁と前記洗浄液タンクの前記洗浄液回収口との間の前記洗浄液流路に合流する分岐路に配置された第4の弁と、
を有し、
前記洗浄液タンクから前記記録部に前記洗浄液を正方向に供給し、この供給した前記洗浄液を前記洗浄液タンクに回収するときは、前記第1及び第2の弁を開くと共に前記第3及び第4の弁を閉じるよう制御し、
前記記録部に前記洗浄液を逆方向に供給し、この供給した前記洗浄液を前記洗浄液タンクに回収するときは、前記第1及び第2の弁を閉じると共に前記第3及び第4の弁を開くよう制御する、
ことを特徴とする請求項5記載のインクヘッド洗浄装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−819(P2012−819A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136748(P2010−136748)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【出願人】(511050985)オルテック株式会社 (24)
【Fターム(参考)】