説明

インクジェットプリンタおよび画像記録方法

【課題】対象物上の画像のエッジのがたつきや、ベタ領域における濃度の低下を抑制する。
【解決手段】インクジェットプリンタのヘッド部では、一の駆動信号の入力により、吐出口から先行液滴および後続液滴が吐出され、先行液滴と後続液滴とが記録用紙上に着弾する。このとき、先行液滴および後続液滴により記録用紙上に形成されるドット要素621,622の集合をドット要素群として、先行液滴により形成される主ドット要素621の中心C21からドット要素群の最遠点α2までの距離β2の平均値が、主ドット要素621の半径rの平均値の1.1倍以上3.0倍以下となるように駆動信号の波形が設定されている。これにより、ドットの形状を非円形とすることができ、その結果、記録用紙上の画像のエッジのがたつきや、ベタ領域における濃度の低下を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物上に画像を記録するインクジェットプリンタ、および、インクジェットプリンタにおいて実行される画像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の吐出口を有するヘッド部を対象物に対して相対的に移動しつつ、各吐出口からのインクの微小な液滴の吐出を制御することにより画像を記録するインクジェットプリンタが従来より用いられている。インクジェットプリンタでは、例えばヘッド部の吐出口近傍に設けられる圧電素子に吐出パルスを入力することにより、液滴が吐出される。特許文献1では、記録ヘッドにおける圧力発生室のヘルムホルツ周期を考慮して駆動信号を決定することにより、一定の周期で吐出される複数のインク滴を飛翔中に合体させてドットを形成する手法が開示されている。また、特許文献2では、メインインク滴に付随して吐出されるサテライトインク滴の飛翔速度がメインインク滴の飛翔速度よりも高くなるようにマイクロドット駆動パルス(吐出パルス)の波形形状を設定することにより、サテライトインク滴とメインインク滴の着弾位置を揃える手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−336970号公報
【特許文献2】特開2002−113860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数の液滴を飛翔中に合体させたり、サテライト液滴と主液滴の着弾位置を揃える場合、ほぼ円形のドットが規則的に配列されるため、複数のドットの集合により形成される領域のエッジが、がたついた状態となったり、最大階調レベルにて表現される領域(いわゆる、ベタ領域)の濃度が、ドット間の隙間の存在により低くなってしまう場合がある。液滴に含まれるインクの量を増大してドットを大きくすることにより、ベタ領域の濃度の低下を抑制することも考えられるが、当該領域の外縁が膨らんでしまう。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、対象物上の画像のエッジのがたつきや、ベタ領域における濃度の低下を抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、インクジェットプリンタであって、吐出口からインクの液滴を対象物に向けて吐出するヘッド部と、所定の走査方向へと前記対象物を前記ヘッド部に対して相対的に移動する走査機構と、前記対象物の前記ヘッド部に対する相対移動に並行して、液滴を吐出させる駆動信号を前記ヘッド部に順次入力する制御部とを備え、前記駆動信号の入力により、前記吐出口から先行液滴および後続液滴が吐出されるとともに、前記先行液滴と前記後続液滴とが前記対象物上に着弾し、前記先行液滴により前記対象物上に形成される先行ドット要素の中心から、前記先行液滴および前記後続液滴により形成されるドット要素群の最遠点までの平均距離が、前記先行ドット要素の平均半径の1.1倍以上3.0倍以下である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェットプリンタであって、前記駆動信号に含まれる一の吐出パルスにより、前記吐出口から主液滴である前記先行液滴が吐出され、前記主液滴に付随するサテライト液滴である前記後続液滴が吐出される。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェットプリンタであって、前記駆動信号に含まれる一の吐出パルスにより前記吐出口から前記先行液滴が吐出され、前記駆動信号における前記吐出パルスの次の吐出パルスにより前記吐出口から前記後続液滴が吐出される。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のインクジェットプリンタであって、前記先行液滴および前記後続液滴の少なくとも一方の液滴の吐出時に、主液滴に付随してサテライト液滴が吐出され、前記主液滴により前記対象物上に形成される主ドット要素の中心から前記主液滴および前記サテライト液滴により形成されるドット要素群の最遠点までの平均距離が、前記主ドット要素の平均半径の1.1倍以上3.0倍以下である。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載のインクジェットプリンタであって、前記吐出口からインクの液滴を前記対象物に向けて吐出することにより、前記対象物上に複数のサイズのドットが形成可能であり、最大サイズのドット、または、最大階調レベルの領域の描画に用いられるドットが形成される際に、前記吐出口から前記先行液滴および前記後続液滴が吐出される。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載のインクジェットプリンタであって、前記駆動信号とは異なる波形を有するもう1つの駆動信号が前記ヘッド部に選択的に入力可能であり、前記もう1つの駆動信号が前記ヘッド部に入力された場合に、前記吐出口から前記先行液滴および前記後続液滴が吐出され、前記先行液滴による前記先行ドット要素の中心から前記先行液滴および前記後続液滴による前記ドット要素群の最遠点までの平均距離が、前記先行ドット要素の平均半径の1.1倍未満となる、もしくは、前記吐出口から1つの液滴のみが吐出される、または、前記もう1つの駆動信号における前記平均距離が、前記先行ドット要素の平均半径の1.1倍以上3.0倍以下の範囲内にて前記駆動信号における前記平均距離と相違する。
【0012】
請求項7に記載の発明は、インクジェットプリンタにおいて実行される画像記録方法であって、前記インクジェットプリンタが、吐出口からインクの液滴を対象物に向けて吐出するヘッド部を備え、前記画像記録方法が、a)所定の走査方向へと前記対象物を前記ヘッド部に対して相対的に移動する工程と、b)前記a)工程に並行して、液滴を吐出させる駆動信号を前記ヘッド部に順次入力する工程とを備え、前記駆動信号の入力により、前記吐出口から先行液滴および後続液滴が吐出されるとともに、前記先行液滴と前記後続液滴とが前記対象物上に着弾し、前記先行液滴により前記対象物上に形成される先行ドット要素の中心から、前記先行液滴および前記後続液滴により形成されるドット要素群の最遠点までの平均距離が、前記先行ドット要素の平均半径の1.1倍以上3.0倍以下である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の液滴によるドットの形状を非円形とすることにより、対象物上の画像のエッジのがたつきや、ベタ領域における濃度の低下を抑制することができる。
【0014】
請求項2および4の発明では、主液滴およびサテライト液滴によりドットの形状を非円形とすることができ、請求項3の発明では、連続する2つの吐出パルスに基づく液滴によりドットの形状を非円形とすることができ、請求項6の発明では、ドットの形状の変更の有無を選択する、または、ドットの形状の変更の度合いを選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】インクジェットプリンタの構成を示す図である。
【図2】ヘッド部の底面図である。
【図3】インクジェットプリンタの機能構成を示すブロック図である。
【図4】駆動信号を示す図である。
【図5】画像を記録する動作の流れを示す図である。
【図6】第1主ドット要素および第2主ドット要素を示す図である。
【図7】第2主ドット要素および第2サテライトドット要素を示す図である。
【図8】記録用紙上に形成された複数のドットを示す図である。
【図9】比較例に係る複数のドットを示す図である。
【図10】比較例に係るバーコードの画像を撮影した写真である。
【図11】記録用紙上に記録されたバーコードの画像を撮影した写真である。
【図12】記録用紙上に形成された複数のドットを示す図である。
【図13】駆動信号の他の例を示す図である。
【図14】駆動信号のさらに他の例を示す図である。
【図15】記録用紙上に形成された複数のドットを示す図である。
【図16】比較例に係る複数のドットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明の一の実施の形態に係るインクジェットプリンタ1の構成を示す図である。インクジェットプリンタ1は、本体10および本体10に接続されるコンピュータ5を備える。本体10は、インクの微小な液滴を記録用紙9に向けて吐出する吐出部2、吐出部2の下方((−Z)側)にて図1中の(−Y)方向へと記録用紙9を移動する紙送り機構3、並びに、吐出部2および紙送り機構3に接続される本体制御部4を備える。
【0017】
紙送り機構3は、図示省略のモータに接続された2つのベルトローラ31、および、2つのベルトローラ31に掛けられたベルト32を有する。連続紙である記録用紙9の各部位は(+Y)側のベルトローラ31の上方に設けられたローラ33を介してベルト32上へと導かれて保持され、ベルト32と共に吐出部2の下方を通過して(−Y)側へと移動する。また、紙送り機構3のベルトローラ31にはエンコーダ34(図3参照)が設けられる。以下の説明では、吐出部2の記録用紙9に対する相対的な移動方向(Y方向)を走査方向という。なお、紙送り機構3では、環状のベルト32の内側において吐出部2に対向する位置に吸引部を設け、ベルト32に微小な吸引孔を形成することにより、ベルト32上において記録用紙9が吸引吸着により保持されてもよい。
【0018】
吐出部2には、複数(本実施の形態では4個)のヘッド部23を有するヘッドユニット21が設けられる。複数のヘッド部23はそれぞれC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の色のインクを吐出し、Y方向に配列される。
【0019】
図2は1つのヘッド部23の底面図であり、図2では記録用紙9の吐出部2に対する走査方向(すなわち、Y方向)を縦向きに図示している。各ヘッド部23の底面には、複数(本実施の形態では2個)の吐出口列251,252が設けられ、各吐出口列251,252は複数の吐出口241を走査方向に垂直かつ記録用紙9に沿う方向(図1中のX方向であり、記録用紙9の幅に対応する方向であるため、以下、「幅方向」ともいう。)に一定のピッチにて配列して有する。また、複数の吐出口列251,252は走査方向に配列される。幅方向のみに着目すると、吐出口列252の各吐出口241の位置は、吐出口列251の対応する吐出口241に対して僅かにずれており、吐出口列251の隣接する2つの吐出口241の間に吐出口列252の1つの吐出口241が配置される。
【0020】
ヘッド部23には各吐出口241に対して圧電素子232(図3参照)が設けられており、圧電素子232を駆動することにより吐出口241からインクの液滴が記録用紙9に向けて吐出される。実際には、複数の吐出口241は幅方向に関して記録用紙9上の記録領域の幅全体に亘って並んでおり、インクジェットプリンタ1では、記録用紙9が吐出部2の下方を一回通過するのみで(いわゆる、ワンパスにて)画像記録が短時間にて完了する。なお、本実施の形態では、複数の吐出口列251,252が一体的に形成されたヘッド部23が設けられるが、1または数個の吐出口列が一体的に形成されたヘッド要素をX方向およびY方向に配列することにより、ヘッド部23が構築されてもよい。
【0021】
また、図1の吐出部2は、ヘッドユニット21を幅方向に移動するヘッド移動機構22を備える。ヘッド移動機構22には幅方向に細長い環状のタイミングベルト222が設けられ、モータ221がタイミングベルト222を回転することにより、ヘッドユニット21が幅方向に滑らかに移動する。インクジェットプリンタ1における非記録時には、ヘッド移動機構22はヘッドユニット21を所定の退避位置へと配置し、退避位置において各ヘッド部23の複数の吐出口241が蓋部材にて閉塞され、吐出口241近傍のインクが乾燥して吐出口241が詰まることが防止される。
【0022】
図3はインクジェットプリンタ1の機能構成を示すブロック図である。本体制御部4は、ヘッド移動機構22および紙送り機構3の駆動制御を行う駆動機構制御部41、紙送り機構3のエンコーダ34からのエンコーダ信号が入力されるとともにヘッド部23の吐出口241からの液滴の吐出のタイミングを制御するタイミング制御部42、インターフェイス(I/F)を介してコンピュータ5から入力される記録対象の元画像データからヘッド部23用の描画データを生成する画像データ処理部43、ヘッド部23に接続されるとともに描画データに基づいてヘッド部23の制御を行うヘッド制御部44、並びに、本体制御部4の全体制御を担う全体制御部45を備える。なお、図3では図示の便宜上1つのヘッド部23のみを示しているが、実際には、ヘッド制御部44から複数のヘッド部23に信号が入力される。以下、1つのヘッド部23に着目して説明を行うが、他のヘッド部23においても同様の処理が行われる。
【0023】
ヘッド部23では、複数の吐出口241のそれぞれの圧電素子232に対して素子駆動回路231が設けられており、ドットの形成の要否を指示する値(以下、「出力値」という。)、および、液滴を吐出させるための所定の駆動信号が、ヘッド制御部44から各素子駆動回路231に一定の周期にて繰り返し入力される。なお、図3では、1つの素子駆動回路231および圧電素子232のみを図示している。
【0024】
図4は、ヘッド制御部44からヘッド部23に入力される駆動信号を示す図である。図4の縦軸は電圧を示し、横軸は時間を示している。駆動信号は複数(図4では3個)のパルスを含むものであり、図4では3個のパルスの期間を符号P0,P1,P2を付す矢印にてそれぞれ示している。各パルスは圧電素子232に一連の動作を行わせるものであり、後述するように、期間P1,P2におけるパルスにより吐出口241から液滴が吐出され、期間P0におけるパルスにより吐出口241における所定の非吐出動作が行われるため、以下の説明では、期間P1,P2におけるパルスをそれぞれ第1吐出パルスP1、および、第2吐出パルスP2と呼び、期間P0におけるパルスを非吐出パルスP0と呼ぶ。
【0025】
ヘッド部23の素子駆動回路231では、ヘッド制御部44からの出力値に応じて駆動信号から非吐出パルスP0、または、第1および第2吐出パルスP1,P2が抽出されて、対応する圧電素子232に入力される。具体的には、ドットの形成を指示する出力値が入力される素子駆動回路231では、駆動信号から第1および第2吐出パルスP1,P2が抽出されて対応する圧電素子232に出力される。これにより、吐出口241では、第1吐出パルスP1に対応する液滴の吐出動作、および、第2吐出パルスP2に対応する液滴の吐出動作が短時間に連続して行われ、記録用紙9上にドットが形成される。また、ドットの非形成を指示する出力値が入力される素子駆動回路231では、駆動信号から非吐出パルスP0のみが抽出されて対応する圧電素子232に出力される。これにより、吐出口241では、非吐出動作(例えば、吐出口241から液滴が吐出されない程度の微小な振動運動)が行われ、記録用紙9上にドットは形成されない。
【0026】
後述するように、インクジェットプリンタ1では、タイミング制御部42から出力される吐出タイミング信号に同期して、出力値および駆動信号がヘッド制御部44からヘッド部23に入力される。このとき、一の吐出タイミング信号に応じて図2の一方の吐出口列251に含まれる複数の吐出口241の素子駆動回路231に出力値および駆動信号が入力され、当該吐出タイミング信号の次の吐出タイミング信号に応じて他方の吐出口列252に含まれる複数の吐出口241の素子駆動回路231に出力値および駆動信号が入力される。すなわち、インクジェットプリンタ1では、吐出口列251に含まれる複数の吐出口241、および、吐出口列252に含まれる複数の吐出口241により交互に描画が行われる。
【0027】
図5は、インクジェットプリンタ1が記録用紙9上に画像を記録する動作の流れを示す図である。インクジェットプリンタ1が画像記録動作を実行する際には、まず、駆動機構制御部41がヘッド移動機構22を駆動することにより図1のヘッドユニット21が退避位置からX方向の所定の基準位置へと移動する。続いて、紙送り機構3を駆動することにより記録用紙9の移動が開始され(ステップS11)、記録用紙9の吐出部2に対する相対移動に並行して、図3のヘッド制御部44が出力値および駆動信号をヘッド部23に順次入力することにより、インクの吐出制御が繰り返し行われる(ステップS12)。
【0028】
詳細には、記録用紙9が走査方向に所定の距離だけ移動する毎に、エンコーダ34からの出力に基づいてタイミング制御部42により吐出タイミング信号が生成される。そして、吐出タイミング信号に同期して、ヘッド制御部44から出力値および駆動信号が、吐出口列251の複数の素子駆動回路231と吐出口列252の複数の素子駆動回路231とに交互に入力される。このとき、ドットの非形成を指示する出力値が(対応する)素子駆動回路231に入力される吐出口241では、非吐出パルスP0による非吐出動作のみが行われ、記録用紙9上にドットは形成されない。一方で、ドットの形成を指示する出力値が素子駆動回路231に入力される吐出口241では、第1吐出パルスP1による液滴の吐出動作、および、第2吐出パルスP2による液滴の吐出動作が短時間に連続して行われ、記録用紙9上にドットが形成される。
【0029】
実際には、第1吐出パルスP1による液滴の吐出動作では、吐出口241から比較的大きな主液滴と比較的小さなサテライト液滴(以下、それぞれ「第1主液滴」および「第1サテライト液滴」という。)がほぼ同時に吐出され、第1吐出パルスP1に続く第2吐出パルスP2による液滴の吐出動作では、吐出口241から比較的大きな主液滴と比較的小さなサテライト液滴(以下、それぞれ「第2主液滴」および「第2サテライト液滴」という。)がほぼ同時に吐出される。本実施の形態では、ミスト状に吐出されて、記録用紙9上に後述のドット要素を形成しないインクは、「液滴」に含まれないものとする。
【0030】
図6は、第1吐出パルスP1および第2吐出パルスP2を用いて吐出される第1主液滴および第2主液滴が付着する記録用紙9上の領域を示す図である。図6では、第1主液滴が記録用紙9上に着弾してインクにより形成される領域を第1主ドット要素として符号611を付す円(実線と破線にて描く円であり、後述の円621および図7中の円622において同様。)にて示し、第2主液滴が記録用紙9上に着弾してインクにより形成される領域を第2主ドット要素として符号621を付す円にて示している。図6の第1主ドット要素611および第2主ドット要素621は部分的に重なっており(すなわち、一方の液滴が付着する記録用紙9上の領域と、他方の液滴が付着する領域とが一部重畳している。)、実際には、両者が重なった部分における各ドット要素の外縁は明確ではないが、図6では、太い破線にて当該外縁を示している(後述の図7において同様)。なお、吐出口241における吐出方向等はある程度ばらつくため、第1主ドット要素611の中心C11と、中心C11よりも(+Y)側に位置する第2主ドット要素621の中心との相対的な位置関係は厳密には一定ではない。
【0031】
第1および第2吐出パルスP1,P2による液滴の吐出動作において、主液滴のみに着目すると、インクジェットプリンタ1では、第1主液滴と第2主液滴とが飛翔中に合体して着弾時に円形にならないようにするために、駆動信号における第1および第2吐出パルスP1,P2の形状が調整される。詳細には、図6中にて太い実線にて囲む第1および第2主ドット要素611,621の集合をドット要素群として、第1主ドット要素611の中心C11からドット要素群の最遠点α1までの距離β1の平均値(全ての吐出口241における全てのドット形成時における平均値である。以下同様。)が、第1主ドット要素611の半径Rの平均値のおよそ1.5倍(例えば、1.3倍以上1.7倍以下)となるように、駆動信号の波形が設定される。
【0032】
このような駆動信号の波形を決定する際には、ヘルムホルツ周期を考慮して、連続する2つの吐出パルスにより吐出される2個の液滴を飛翔中に合体させることが可能な一般的な駆動信号(実際には、サテライト液滴と主液滴との着弾位置を揃えることも可能となっている。)の波形において、例えば、第2吐出パルスP2の電圧が最大となる時間(図4中にて符号T1を付す期間)を複数通りに変更して複数の駆動信号が準備される。そして、複数の駆動信号を順に用いて、吐出口241から液滴を実際に吐出しつつ、高速度カメラにて液滴を撮像して液滴の飛翔速度等を取得し、さらに、記録用紙9上に形成されたドットの状態を確認(印字確認)することにより、第1主ドット要素611の中心C11からドット要素群の最遠点α1までの平均距離が、第1主ドット要素611の平均半径のおよそ1.5倍となる駆動信号の波形が決定される。実際には、後述するように、第1主液滴と第1サテライト液滴との着弾位置の関係、および、第2主液滴と第2サテライト液滴との着弾位置の関係も考慮して、最終的な駆動信号の波形が決定される。もちろん、吐出パルスの電圧やパルス間の時間等を変更しつつ液滴の実際の飛翔状態を撮像する等により、最終的な駆動信号が決定されてもよい。
【0033】
図7は、第2主液滴および第2サテライト液滴が付着する記録用紙9上の領域を示す図である。図7では、図6と同様に第2主ドット要素を符号621を付す円にて示し、第2サテライト液滴が記録用紙9上に着弾してインクにより形成される領域を第2サテライトドット要素として符号622を付す円にて示している。なお、第2主ドット要素621の中心C21と、中心C21よりも(+Y)側に位置する第2サテライトドット要素622の中心との相対的な位置関係は一定ではなく、実際には、当該位置関係はある程度ばらついている。
【0034】
第2吐出パルスP2による液滴の吐出動作のみに着目すると、インクジェットプリンタ1では、第2主液滴と第2サテライト液滴とが記録用紙9上に個別に着弾し、また、第2サテライトドット要素622が第2主ドット要素621の外縁近傍に位置するように、駆動信号における第2吐出パルスP2の形状が調整される。詳細には、図7中にて太い実線にて囲む第2主ドット要素621および第2サテライトドット要素622の集合をドット要素群として、第2主ドット要素621の中心C21からドット要素群の最遠点α2までの距離β2の平均値が、第2主ドット要素621の半径rの平均値のおよそ1.5倍(例えば、1.3倍以上1.7倍以下)となるように、駆動信号の波形が設定される。
【0035】
本実施の形態では、第1吐出パルスP1による液滴の吐出動作においても、第2吐出パルスP2による吐出動作と同様に、第1主ドット要素611および第1サテライトドット要素の集合をドット要素群として、第1主ドット要素611の中心C11からドット要素群の最遠点までの平均距離が、第1主ドット要素611の平均半径のおよそ1.5倍となるように、駆動信号の波形が設定される。
【0036】
以上のように、ドットの形成を指示する出力値が素子駆動回路231に入力される吐出口241では、一の駆動信号に応答して、第1吐出パルスP1による吐出動作、および、第2吐出パルスP2による吐出動作が短時間に連続して行われることにより、第1主ドット要素611、第1サテライトドット要素、第2主ドット要素621および第2サテライトドット要素622が記録用紙9上に形成され、これらのドット要素の集合が当該駆動信号に対応する1つのドットとなる。
【0037】
図8は、記録用紙9上に形成された複数のドット6を示す図である。図8では、第1主ドット要素611、第1サテライトドット要素612、第2主ドット要素621および第2サテライトドット要素622のそれぞれを内部に平行斜線を付す実線の円にて示している。また、図8では、図示の都合上、第1および第2サテライトドット要素612,622を、第1および第2主ドット要素611,621の上に重ねて図示している。既述のように、実際には、これらのドット要素611,612,621,622が重なった部分における各ドット要素の外縁は明確ではない。
【0038】
インクジェットプリンタ1では、図2の吐出口列251および吐出口列252に対して交互にインクの吐出制御が行われるため、図8に示すように、記録用紙9上に形成される複数のドット6では、吐出口列251により形成されるドット6と、吐出口列252により形成されるドット6との幅方向(X方向)の位置が相違している。
【0039】
上記のようにして、記録対象の元画像データが示す画像の全体が記録用紙9上に記録されると、記録用紙9の移動が停止され、インクジェットプリンタ1による画像記録動作が完了する(図5:ステップS13)。
【0040】
ここで、インクジェットプリンタにおける比較例の画像記録動作について述べる。連続する2つの吐出パルスにより吐出される2個の主液滴を飛翔中に合体させるとともに、主液滴とサテライト液滴との着弾位置も揃える比較例の画像記録動作では、図9に示すように、ほぼ円形のドット91が規則的に配列される。したがって、これらのドット91により最大階調レベルにて一様な領域(いわゆる、ベタ領域)等、比較的高い階調レベルの領域を表現する場合、当該領域のエッジが、がたついた状態となってエッジ近傍におけるコントラストが低下したり、当該領域の濃度(または、インクが付着する部分と付着していない部分との面積比)が、ドット91間の隙間の存在により低くなってしまう。
【0041】
これに対し、インクジェットプリンタ1では、ドットの形成を指示する出力値が素子駆動回路231に入力される吐出口241において、一の駆動信号の入力により、複数の液滴が吐出されるとともに、これらの液滴が記録用紙9上の互いに近接した位置に着弾する。これにより、ドットの形状を非円形とすること(すなわち、1つの主液滴による円形の主ドット要素に他の液滴による円形のドット要素を付加して、ドットの形状を円形から変更することであり、ドットの形状を僅かにぼかしていると捉えることもできる。)ができ、その結果、記録用紙9上の画像のエッジのがたつきや、ベタ領域における濃度の低下を抑制(軽減)することができる。また、濃度ムラ等がある場合でも、ぼかして低濃度の部分を埋めることにより、ムラを軽減することが可能となる。
【0042】
図10および図11は、記録用紙9上に記録されたバーコードの画像を撮影した写真である。図10および図11では、走査方向に長い複数のバーが幅方向に並ぶバーコード(ピケとも呼ばれる。)が記録されており、図10は、ドットの形状が円形となる比較例の画像記録動作により記録されたバーコードであり、図11は、インクジェットプリンタ1によりドットの形状を非円形として記録されたバーコードである。図11の黒いバーでは、図10の黒いバーに比べてエッジのがたつきが緩和され、エッジ近傍におけるコントラストが向上しているのが判る。したがって、図11のバーコードでは、図10のバーコードよりもバーコード品質のグレードが向上している。
【0043】
また、比較例の画像記録動作にて記録されるベタ領域において、所定の濃度計を用いて測定した濃度が1.18であるのに対し、インクジェットプリンタ1にて記録されるベタ領域では、濃度が1.23に増大し、これにより、ベタ領域の濃度ムラも改善される。インクジェットプリンタ1では、記録される画像における文字等のエッジのがたつきも抑制されるため、記録用紙9上の画像の品質が向上する。
【0044】
ところで、第1および第2吐出パルスP1,P2による主液滴の吐出において、図6に示す第1主ドット要素611の中心C11からドット要素群の最遠点α1までの平均距離が、第1主ドット要素611の平均半径の1.1倍よりも小さくなると、これらの主液滴によるドットの形状がほぼ円形のまま維持されてしまう。したがって、当該平均距離は第1主ドット要素611の平均半径の1.1倍以上であることが好ましい。一方で、第1主ドット要素611の中心C11からドット要素群の最遠点α1までの平均距離が第1主ドット要素611の平均半径の3.0倍よりも大きくなると、第1主ドット要素611と第2主ドット要素621とが分離してしまうため、当該平均距離は第1主ドット要素611の平均半径の3.0倍以下であることが好ましい。また、画像中の細線が太ることを防止するという観点では、当該平均距離は当該平均半径の2.0倍以下であることがより好ましい。
【0045】
また、第2吐出パルスP2(または、第1吐出パルスP1)による主液滴およびサテライト液滴の吐出において、図7に示す第2主ドット要素621の中心C21からドット要素群の最遠点α2までの平均距離が、第2主ドット要素621の平均半径の1.1倍よりも小さくなると、主液滴およびサテライト液滴によるドットの形状がほぼ円形のまま維持されてしまう。したがって、当該平均距離は第2主ドット要素621の平均半径の1.1倍以上であることが好ましい。一方で、第2主ドット要素621の中心C21からドット要素群の最遠点α2までの平均距離が、第2主ドット要素621の平均半径の3.0倍よりも大きくなると、第2サテライトドット要素622が第2主ドット要素621の外縁近傍に位置するとはいえなくなる、換言すれば、第2サテライトドット要素622が第2主ドット要素621に付随するものとは捉えられなくなる。したがって、当該平均距離は第2主ドット要素621の平均半径の3.0倍以下であることが好ましい。また、画像中の細線が太ることを防止するという観点では、当該平均距離は当該平均半径の2.0倍以下であることがより好ましい。
【0046】
各吐出パルスP1,P2による吐出動作では、同時に吐出される液滴により形成されるドット要素群において、主ドット要素の中心から最遠点までの平均距離が、主ドット要素の平均半径の1.1倍以上3.0倍以下となるのであるならば、複数のサテライト液滴が主液滴に付随して吐出されてもよい。例えば、第2主液滴に付随して2個(もちろん、3個以上であってもよい。)の第2サテライト液滴が吐出される場合、記録用紙9上には図7に示す第2主ドット要素621および第2サテライトドット要素622と共に、符号622aを付す二点鎖線の円にて示す第2サテライトドット要素が形成される。この場合も、インクジェットプリンタ1では、第2主ドット要素621の中心C21から、第2主ドット要素621および2個の第2サテライトドット要素622,622aの集合であるドット要素群の最遠点(図7の例では、点α2)までの平均距離が、第2主ドット要素621の平均半径の1.1倍以上3.0倍以下となるように、駆動信号が調整される。
【0047】
インクジェットプリンタ1の上記動作例では、図8に示すように第1主ドット要素611、第1サテライトドット要素612、第2主ドット要素621および第2サテライトドット要素622によりドット6が形成されるが、図12に示すように、第1主ドット要素611および第2主ドット要素621のみによりドット6が形成されてもよい。この場合も、第1主ドット要素611の中心からドット要素群(第1および第2主ドット要素611,621の集合)の最遠点までの平均距離が、第1主ドット要素611の平均半径の1.1倍以上3.0倍以下とされることにより、図9の比較例に比べて、記録用紙9上の画像のエッジのがたつきや、ベタ領域における濃度の低下を抑制することができる。なお、図12の例では、原則として、サテライト液滴が飛翔中に主液滴と合体して記録用紙9上に着弾する、または、サテライト液滴は発生しない。
【0048】
また、図13に示すように、非吐出パルスP0、並びに、第1ないし第3吐出パルスP1〜P3を有する駆動信号が用いられてもよい。この場合、第1ないし第3吐出パルスP1〜P3を用いて吐出口241から吐出される第1ないし第3主液滴において、第1および第2主液滴の関係、および、第2および第3主液滴の関係が、図6を参照して説明した場合における第1および第2主液滴の関係と同様となることにより、記録用紙9上の画像のエッジのがたつきや、ベタ領域における濃度の低下をさらに抑制することが可能となる。
【0049】
このように、インクジェットプリンタ1では、駆動信号に含まれる一の吐出パルスにより吐出口241から主液滴である先行液滴が吐出され、駆動信号における当該吐出パルスの次の吐出パルスにより吐出口241から主液滴である後続液滴が吐出され、先行液滴と後続液滴とが記録用紙9上に個別に(すなわち、分離した状態で)着弾する。そして、先行液滴により記録用紙9上に形成される先行ドット要素の中心から、先行液滴および後続液滴により形成されるドット要素群の最遠点までの平均距離が、先行ドット要素の平均半径の1.1倍以上3.0倍以下とされる。これにより、連続する2つの吐出パルスに基づく液滴によりドットの形状を非円形とし、記録用紙9上の画像のエッジのがたつきや、ベタ領域における濃度の低下を抑制することができる。
【0050】
なお、3以上の主ドット要素により1つのドットを形成する場合において、当該ドットの画素に隣接する画素への過度の影響を抑制するには、最初に着弾する主液滴による先行ドット要素の中心から、当該主液滴と同じ駆動信号にて吐出される全ての主液滴(または、全ての主液滴およびサテライト液滴)により形成されるドット要素群の最遠点までの平均距離が、先行ドット要素の平均半径の1.1倍以上3.0倍以下となることが好ましい。
【0051】
また、図14に示すように、非吐出パルスP0、および、第1吐出パルスP1のみを有する駆動信号が用いられてもよい。この場合、一の駆動信号の入力により、第1主液滴および第1サテライト液滴のみが吐出されるとともに、第1主ドット要素および第1サテライトドット要素の集合をドット要素群として、第1主ドット要素の中心からドット要素群の最遠点までの平均距離が、第1主ドット要素の平均半径の1.1倍以上3.0倍以下となるように、駆動信号の波形が設定される。これにより、ドットの形状を非円形とすることができ、図9の比較例に比べて、記録用紙9上の画像のエッジのがたつきや、ベタ領域における濃度の低下を抑制することができる。
【0052】
さらに、図15に示すように、幅方向(X方向)における位置が一定となるように、複数のドット6が形成されるインクジェットプリンタにおいて、ドットの形状を非円形とする上記手法が用いられてもよい。図15では、1つのドット6が1つの主ドット要素611およびサテライトドット要素612により構成される。この場合も、円形のドット91が形成される図16の比較例に比べて、記録用紙9上の画像のエッジのがたつきや、ベタ領域における濃度の低下を抑制することができる。
【0053】
このように、インクジェットプリンタでは、駆動信号に含まれる一の吐出パルスにより、主液滴である先行液滴、および、主液滴に付随するサテライト液滴である後続液滴が吐出口241から吐出され、先行液滴と後続液滴とが記録用紙9上に個々に(個別の液滴として)着弾する。そして、先行液滴により記録用紙9上に形成される先行ドット要素の中心から、先行液滴および後続液滴により形成されるドット要素群の最遠点までの平均距離が、先行ドット要素の平均半径の1.1倍以上3.0倍以下とされる。これにより、主液滴およびサテライト液滴によりドットの形状を非円形とする(実際には、円形から不規則に相違させる)ことができ、その結果、記録用紙9上の画像のエッジのがたつきや、ベタ領域における濃度の低下を抑制することができる。なお、主液滴により形成される円形の主ドット要素と、サテライト液滴により形成される円形のサテライトドット要素とが全く重なっていない状態であっても、これらのドット要素の集合であるドットの形状は、非円形であるものとする。
【0054】
インクジェットプリンタ1では、吐出口241から異なる量のインクを記録用紙9に向けて吐出することにより、記録用紙9上に複数のサイズのドットが形成可能であってもよく、この場合に、ドットの形状を非円形とする上記手法が一部のサイズのドットに対してのみ用いられてよい。例えば、図8のドット6よりも小さいサイズ(面積)の小ドットを形成するための吐出パルスが、図4の駆動信号に第3吐出パルスとして追加され、ヘッド制御部44からの出力値が小ドットを示す場合には、圧電素子232の駆動に第3吐出パルスが用いられる。小ドットは、主液滴のみが吐出されることにより、または、主液滴に付随するサテライト液滴が飛翔中に主液滴と合体して着弾することにより形成され、高い記録解像度が求められる領域では、小ドットを用いて精細な画像が表現される。また、濃度が高い領域等では、第1および第2吐出パルスP1,P2が用いられ、最大サイズのドットである図8のドット6が形成される。
【0055】
このように、インクジェットプリンタ1では、最大サイズのドットを形成する際に、記録用紙9上に各々着弾する先行液滴および後続液滴(すなわち、連続して吐出される2つの主液滴、または、主液滴およびこれに付随するサテライト液滴)が吐出口241から吐出されることにより、ドットの形状を非円形として、記録用紙9上のベタ領域における濃度の低下や、ベタ領域のエッジのがたつきを抑制することが可能となる。
【0056】
また、中サイズのドット(中ドット)と大サイズのドットのみが画像記録に用いられる場合に、中ドットが最大階調レベルの領域の描画に用いられることがある。このような場合には、中ドットが形成される時に、記録用紙9上に個々に着弾する先行液滴と後続液滴とを吐出口241から吐出させて、非円形のドットが形成されてもよい。もちろん、全てのサイズのドットが非円形とされてもよい。以上のように、少なくとも1つのサイズのドットが形成可能なインクジェットプリンタでは、当該少なくとも1つのサイズのうち任意のサイズのドットに対して、その形状を非円形とする上記手法が用いられてよい。
【0057】
次に、インクジェットプリンタ1の他の例について述べる。他の例に係るインクジェットプリンタ1では、図4の駆動信号(以下、「第1駆動信号」という。)とは異なる波形を有するもう1つの駆動信号(以下、「第2駆動信号」という。)が準備される。第2駆動信号がヘッド部23に入力される場合に、出力値がドットの形成を指示する時には、吐出口241から先行液滴および後続液滴(すなわち、連続して吐出される2つの主液滴、または、主液滴およびこれに付随するサテライト液滴)が吐出され、先行液滴により形成される先行ドット要素の中心から、先行液滴および後続液滴により形成されるドット要素群の最遠点までの平均距離が、先行ドット要素の平均半径の1.1倍未満となる、または、吐出口241から1つの液滴のみが吐出される。これにより、ほぼ円形のドットが形成される。
【0058】
インクジェットプリンタ1では、コンピュータ5の入力部を介して第1駆動信号または第2駆動信号が操作者により選択され、実際の画像記録の際には、選択された駆動信号に基づいて吐出口241から液滴が吐出される。このように、第1駆動信号または第2駆動信号がヘッド部に選択的に入力可能とされることにより、用途に応じてドットの形状の変更(円形からの変更)の有無を選択することができ、多様な画像記録を実現することができる。
【0059】
また、インクジェットプリンタ1では、第2駆動信号がヘッド部23に入力される場合に、吐出口241から先行液滴および後続液滴が吐出され、先行液滴による先行ドット要素の中心から先行液滴および後続液滴によるドット要素群の最遠点までの平均距離が、先行ドット要素の平均半径の1.1倍以上3.0倍以下の範囲内にて、第1駆動信号における当該平均距離(図6および図7を参照して説明した例では、先行ドット要素の平均半径のおよそ1.5倍)と相違してもよい。これにより、実際の画像記録に用いる駆動信号が選択可能なインクジェットプリンタ1では、用途に応じてドットの形状の変更の度合いを選択することができる。
【0060】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0061】
図8を参照して説明した動作例では、第1吐出パルスP1により第1主液滴および第1サテライト液滴が吐出され、第2吐出パルスP2により第2主液滴および第2サテライト液滴が吐出されるが、例えば、第1吐出パルスP1により第1主液滴のみが吐出され、または、合体して着弾する第1主液滴および第1サテライト液滴が吐出され、第2吐出パルスP2により、個々に着弾する第2主液滴および第2サテライト液滴が吐出されてもよい。すなわち、駆動信号に含まれる一の吐出パルスにより吐出口241から先行の主液滴が吐出され、駆動信号における当該吐出パルスの次の吐出パルスにより吐出口241から後続の主液滴が吐出される場合には、先行の主液滴および後続の主液滴の少なくとも一方の液滴の吐出時に、主液滴に付随するとともに、主液滴とは個別に着弾するサテライト液滴が吐出されることが好ましい。
【0062】
インクジェットプリンタ1では、走査機構である紙送り機構3により記録用紙9がヘッド部23に対して走査方向に移動するが、ヘッド部23をY方向に移動する走査機構が設けられてもよい。また、記録用紙9がローラにて保持され、当該ローラを回転するモータにより記録用紙9がヘッド部23に対して走査方向に移動してもよい。このように、記録用紙9をヘッド部23に対して相対的に走査方向に移動する走査機構は様々な構成にて実現可能である。
【0063】
インクジェットプリンタは、枚葉の記録用紙に画像を記録するものであってもよい。例えば、ステージ上に記録用紙を保持するインクジェットプリンタにおいて、幅方向に関して、複数の吐出口が配列される幅が記録用紙の記録領域よりも狭くされるとともに、ヘッド部を走査方向および幅方向に記録用紙に対して相対的に移動する走査機構が設けられる。そして、ヘッド部がインクを吐出しつつ走査方向に相対移動(主走査)し、記録用紙の端部へと到達した後に幅方向に所定距離だけ相対移動(副走査)し、その後、ヘッド部がインクを吐出しつつ走査方向の直前の主走査とは逆向きに相対移動する。このように、上記インクジェットプリンタでは、ヘッド部が記録用紙に対して走査方向に主走査するとともに、主走査が完了する毎に、幅方向に間欠的に副走査することにより、記録用紙の全体に画像が印刷される。
【0064】
インクジェットプリンタ1における画像記録の対象物は、記録用紙9以外にプラスチック等にて形成される板状またはフィルム状の基材等であってもよい。
【0065】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせられてよい。
【符号の説明】
【0066】
1 インクジェットプリンタ
3 紙送り機構
4 本体制御部
6 ドット
9 記録用紙
23 ヘッド部
241 吐出口
611,612,621,622,622a ドット要素
C11,C21 (ドット要素の)中心
P1〜P3 吐出パルス
S11〜S13 ステップ
α1,α2 (中心からの)最遠点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリンタであって、
吐出口からインクの液滴を対象物に向けて吐出するヘッド部と、
所定の走査方向へと前記対象物を前記ヘッド部に対して相対的に移動する走査機構と、
前記対象物の前記ヘッド部に対する相対移動に並行して、液滴を吐出させる駆動信号を前記ヘッド部に順次入力する制御部と、
を備え、
前記駆動信号の入力により、前記吐出口から先行液滴および後続液滴が吐出されるとともに、前記先行液滴と前記後続液滴とが前記対象物上に着弾し、
前記先行液滴により前記対象物上に形成される先行ドット要素の中心から、前記先行液滴および前記後続液滴により形成されるドット要素群の最遠点までの平均距離が、前記先行ドット要素の平均半径の1.1倍以上3.0倍以下であることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェットプリンタであって、
前記駆動信号に含まれる一の吐出パルスにより、前記吐出口から主液滴である前記先行液滴が吐出され、前記主液滴に付随するサテライト液滴である前記後続液滴が吐出されることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項3】
請求項1に記載のインクジェットプリンタであって、
前記駆動信号に含まれる一の吐出パルスにより前記吐出口から前記先行液滴が吐出され、前記駆動信号における前記吐出パルスの次の吐出パルスにより前記吐出口から前記後続液滴が吐出されることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項4】
請求項3に記載のインクジェットプリンタであって、
前記先行液滴および前記後続液滴の少なくとも一方の液滴の吐出時に、主液滴に付随してサテライト液滴が吐出され、
前記主液滴により前記対象物上に形成される主ドット要素の中心から前記主液滴および前記サテライト液滴により形成されるドット要素群の最遠点までの平均距離が、前記主ドット要素の平均半径の1.1倍以上3.0倍以下であることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のインクジェットプリンタであって、
前記吐出口からインクの液滴を前記対象物に向けて吐出することにより、前記対象物上に複数のサイズのドットが形成可能であり、
最大サイズのドット、または、最大階調レベルの領域の描画に用いられるドットが形成される際に、前記吐出口から前記先行液滴および前記後続液滴が吐出されることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のインクジェットプリンタであって、
前記駆動信号とは異なる波形を有するもう1つの駆動信号が前記ヘッド部に選択的に入力可能であり、
前記もう1つの駆動信号が前記ヘッド部に入力された場合に、前記吐出口から前記先行液滴および前記後続液滴が吐出され、前記先行液滴による前記先行ドット要素の中心から前記先行液滴および前記後続液滴による前記ドット要素群の最遠点までの平均距離が、前記先行ドット要素の平均半径の1.1倍未満となる、もしくは、前記吐出口から1つの液滴のみが吐出される、または、前記もう1つの駆動信号における前記平均距離が、前記先行ドット要素の平均半径の1.1倍以上3.0倍以下の範囲内にて前記駆動信号における前記平均距離と相違することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項7】
インクジェットプリンタにおいて実行される画像記録方法であって、
前記インクジェットプリンタが、吐出口からインクの液滴を対象物に向けて吐出するヘッド部を備え、
前記画像記録方法が、
a)所定の走査方向へと前記対象物を前記ヘッド部に対して相対的に移動する工程と、
b)前記a)工程に並行して、液滴を吐出させる駆動信号を前記ヘッド部に順次入力する工程と、
を備え、
前記駆動信号の入力により、前記吐出口から先行液滴および後続液滴が吐出されるとともに、前記先行液滴と前記後続液滴とが前記対象物上に着弾し、
前記先行液滴により前記対象物上に形成される先行ドット要素の中心から、前記先行液滴および前記後続液滴により形成されるドット要素群の最遠点までの平均距離が、前記先行ドット要素の平均半径の1.1倍以上3.0倍以下であることを特徴とする画像記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−235576(P2011−235576A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110124(P2010−110124)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】