説明

インクジェットプリンター及びその制御方法

【課題】インクジェットヘッドの精細度を実際の条件下で確実に実現し、見やすい印字を行う。
【解決手段】インクジェットヘッド(IJヘッド)の各ノズルから、互いに異なるドロップ数のインク滴を共通の印刷用紙上にそれぞれ吐出させ、外径が異なる複数のドット列を形成し、読取部で読み取る。IJヘッドの精細度に対応する外径のドットを選択し、そのドットを形成したインク滴のドロップ数を最適制御データとして取得する。実際の印刷時、同一種類の印刷用紙を使用し、最適制御データでIJヘッドを制御する。当該IJヘッドの精細度に対応した外径のドットで印刷できるので、細字のような印刷でつぶれ易い画像であっても、高い再現性で見やすく印字することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク滴を吐出して印刷用紙にドットを形成することにより所望の画像を形成するインクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンターに係り、特に、用紙の種類や環境条件等の変動に係わりなく高精細な画像の再現が可能であるため、例えば細字であっても滲みなく見やすい印刷を行なうことができるインクジェットプリンターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、記録媒体判別方法およびインクジェット記録装置の発明が開示されている。この発明によれば、記録媒体に所定のピッチでドットが配列するテストパターンを記録し、その後、記録されたドットが複数含まれるエリアの濃度を測定し、得られた濃度に基づいて記録媒体の種類を判別する。これにより、個々のドットの形状に関係なく、複数のドットが含まれるエリアの濃度によって記録媒体の特徴を判断することが出来る。すなわち、高解像な読み取りセンサや高精度な移動走査機構を備えなくても、比較的精度の高い状態で記録媒体の種類を判別することが出来るものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−152670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された発明によれば、所定のテストパターンを印刷した記録媒体のエリア濃度に基づいて当該用紙の種類を判別することが可能であり、濃度で判別した用紙の種類に対応する限りにおいてインク吐出の制御を行なうことはできるが、用紙の種類だけでなく印刷時の状態(環境湿度、装置の状態等)にも対応し、当該インクジェットヘッドに要求される精細度を確実に実現できるようなインク吐出の制御を行なうことはできなかった。このため、インクの滲みによって画像のつぶれが発生しやすい細字を適正に印刷することは困難であり、細字がつぶれて判読できない場合が生じる不都合があった。
【0005】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、濃度に基づいて判別した用紙の種類のみに基づいてインク吐出の制御を行なうのではなく、当該インクジェットヘッドの精細度を実際の条件下で確実に実現するために必要なインク吐出の最適制御データを利用してインク吐出制御を行なうことにより、細字のような印刷によってつぶれ易い画像であっても、高い再現性で見やすく印字できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載されたインクジェットプリンターは、
所望のドロップ数のインク滴をそれぞれ吐出して印刷用紙にそれぞれドットを形成する複数のノズルを備えたインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドによって印刷用紙に形成されたドットの大きさを読み取る読取部と、
前記インクジェットヘッドの異なるノズルから、互いに異なるドロップ数のインク滴をそれぞれ吐出させて複数のドットを印刷用紙に形成させ、前記読取部にこの印刷用紙に形成された前記複数のドットを読み取らせ、前記インクジェットヘッドの解像度に合致する又は最も近いドットを形成するために前記ノズルから吐出されたインク滴のドロップ数を最適制御データとして取得し、画像を形成する際に前記最適制御データを基に前記インクジェットヘッドを制御する制御部と、
を有することを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載されたインクジェットプリンターは、請求項1記載のインクジェットプリンターにおいて、
少なくとも、前記インクジェットヘッドの解像度に対応するドットよりも大きいドットの列と、これよりも小さいドットの列を含む複数のドットの列が、それぞれ副走査方向に沿って印刷用紙に形成されるように、前記インクジェットヘッドを制御することを特徴としている。
【0008】
請求項3に記載されたインクジェットプリンターは、請求項1又は2に記載のインクジェットプリンターにおいて、
形成しようとする前記画像のうち、少なくとも文字領域について前記最適制御データを用いて画像形成を行なうことを特徴としている。
【0009】
請求項4に記載されたインクジェットプリンターの制御方法は、
所望のドロップ数のインク滴をそれぞれ吐出して印刷用紙にそれぞれドットを形成する複数のノズルを備えたインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドによって印刷用紙に形成されたドットの大きさを読み取る読取部と、を備えたインクジェットプリンターの制御方法において、
前記インクジェットヘッドの異なるノズルから、互いに異なるドロップ数のインク滴をそれぞれ吐出させて複数のドットを印刷用紙に形成させ、前記読取部にこの印刷用紙に形成された前記複数のドットを読み取らせ、前記インクジェットヘッドの解像度に合致する又は最も近いドットを形成するために前記ノズルから吐出されたインク滴のドロップ数を最適制御データとして取得し、画像を形成する際に前記最適制御データを基に前記インクジェットヘッドを制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載されたインクジェットプリンター又は請求項4に記載されたインクジェットプリンターの制御方法によれば、一種のテストパターンとして、インクジェットヘッドの異なるノズルから、互いに異なるドロップ数のインク滴を印刷用紙の上にそれぞれ吐出させ、大きさの異なる複数のドットを形成することができる。この印刷用紙は実際に画像を形成する際に使用するものと同一である。次に、この印刷用紙の各ドットを読取部で読み取る。当該インクジェットヘッドの解像度に合致する又はこれに最も近いドットを印刷結果中から選択し、そのドットを形成するためにノズルから吐出されたインク滴のドロップ数を、最適制御データとして取得する。画像の印刷時には、前記印刷用紙を使用し、前記最適制御データを基にインクジェットヘッドを制御することにより、当該インクジェットヘッドの解像度に合致する又はこれに近いドットを前記印刷用紙に印刷することができるので、細字のような印刷によってつぶれ易い画像であっても、高い再現性で見やすく印字することができる。
【0011】
請求項2に記載されたインクジェットプリンターによれば、互いに異なるドロップ数のインク滴を印刷用紙の上にそれぞれ吐出させ、複数のドットの列を副走査方向に沿って形成することができる。そして、印刷用紙に印刷した大きさの異なるドットで構成された各列の中から、インクジェットヘッドの解像度に合致する又はこれに最も近いドットをドット列同士の比較で選ぶことができるので、インクジェットヘッドの解像度を当該印刷用紙において高い再現性で実現するための作業を確実かつ簡単に行うことができる。
【0012】
請求項3に記載されたインクジェットプリンターによれば、形成しようとする画像のうち、少なくとも文字領域については最適制御データを用いて画像形成するので、細字のようなつぶれやすい画像であっても、使用するインクジェットヘッドの解像度に合致する又はこれに近い高い精細度で読みやすい印字を当該印刷用紙に対して行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態においてテストパターンを形成する際のインクジェットヘッドによるインク吐出状態を示す概念図である。
【図2】本発明の実施形態において形成されるテストパターンの一例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態において形成されたテストパターンからドット径(ドットゲイン)を読み取る手法を示す概念図である。
【図4】本発明の実施形態において印刷される画像イメージの一例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンターの構成を示す機能ブロック図である。
【図6】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンターの制御方法の全体を示す流れ図である。
【図7】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンターの制御方法において、印字最適化処理の手順を示す流れ図である
【図8】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンターの制御方法において、印字最適化処理を行なう場合における文字領域の判定手順を示す流れ図である
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態のインクジェットプリンターにおける印刷最適化手法の原理を図1〜図4を参照して説明する。
本実施形態のインクジェットプリンターは、印刷用紙にテストパターンを印刷できるインクジェットヘッド1と、このテストパターンを読み取る読取部と、これらを制御する制御部とを備えている。このようなインクジェットプリンターにおいて、実際に使用する印刷用紙を用いて、インクジェットヘッド1でインク滴の数を変えて種々のドット径のドットを印刷するテスト印字を行なう。その結果を読取部で読み取り、インクジェットヘッド1の解像度(dpi)に最も近いドット径となっているドットを選び、そのドット径を実現するために吐出したインク滴数を最適制御データとして取得する。実際の印刷時には、テスト印字に用いたのと同一の印刷用紙に対し、前記最適制御データのインク滴数でドットを形成することにより、精細度の高い印刷を行なうことができる。すなわち、そのインクジェットヘッド1の精細度を実現した印刷を行なうことができる。
【0015】
図1は、本実施形態のインクジェットプリンターが有するインクジェットヘッド1である。このインクジェットヘッド1は、1列に並んだ複数のノズル2を備えており、印刷用紙が搬送される副走査方向と直交する主走査方向に対し、ノズル2の列が平行となるように配置されている。各ノズル2からは、必要な数のインク滴3を、それぞれ印刷用紙上の同一位置に重ねて吐出することにより、それぞれ印刷用紙上に1ドットを形成することができる。ノズル2から吐出するインク滴3のドロップ数を変えれば、印刷用紙のインク吸収性に対応して、当該印刷用紙上にそれぞれ異なるサイズのドットを形成することができる。一般的には、ある所定のドット径のドットを形成するために必要なインク滴の数は、互いに比較した場合、インクを吸収しやすい用紙(例えばざら紙等)では相対的に少なく、表面をコートした用紙(例えば写真紙等)では相対的に多くなる。インクを吸収しやすい用紙では吸い取られたインクが広がりやすいからであり、表面をコートした用紙ではインクの吸収や広がりが少ないからである。また、このインクの吸収し易さや吸収された後の広がり易さは、印刷時の湿度や温度等の環境条件にも依存する。
【0016】
そこで、実際に使用する印刷用紙に、実際に印刷を行なう環境条件下で、前記インクジェットヘッド1の各ノズル2から、互いに異なるドロップ数のインク滴3をそれぞれ吐出し、図2に示すように、ドット径が異なる複数のドット4からなるドット列を形成させる。
【0017】
図2は、本実施形態のインクジェットプリンターが有するインクジェットヘッド1で印刷したテストパターンを示す。図2に示す例では、共通の印刷用紙の上に、副走査方向(図において左右方向)に平行な3本のドット列が、主走査方向(図において上下方向)に所定の間隔をおいて形成されている。これら各ドット列を構成する各ドット4は、対応するノズル2から吐出されるインク滴3のドロップ数が異なるためにドット径が異なっている。各ドット列を構成する各ドット4は、それぞれ1ドロップ以上のインク滴3から構成されており、例えば一番上のドット列では、インク滴3の1ドロップで1ドットが形成されており、中間のドット列では、インク滴3のnドロップで1ドットが形成されており、下段のドット列では、インク滴3の(n+α)ドロップで1ドットが形成されている。
【0018】
これは、インク滴数が異なるドット列が複数列形成されることを観念的に示す例示であり、実際には、互いに異なるドロップ数のドット4からなるドット列を必要な列数だけ形成する。より具体的には、前記インクジェットヘッド1の精細度に対応するドット径又はこれに最も近いドット径のドットが、いずれかのドット列において形成されるように、インク滴3のドロップ数が列間で段階的乃至連続的に変わるように複数列のドット列を形成する。例えば、使用するインクジェットヘッド1の精細度が300dpiであるとすれば、このインクジェットヘッド1で形成可能なドットの理想的なドット径は、2.5インチ/ 300ドットであり、概ね84.6μmとなるので、このようなドット径のドット4又はこれに近いドット径のドット4が、いずれかのドット列で形成されるように、ドット列の数、及び各ドット列におけるインク滴3の吐出数を設定する。この設定は、実験に基づいて定めても良いし、過去の実験データその他の知見に基づいて想定してもよい。
【0019】
図3は、このようにして形成したテストパターンの印刷物を読取部で読み取り、その結果から各ドット列を構成するドット4のドットゲインを検出するデータ処理手法を示している。このデータ処理手法は制御部において行なわれる。この図によれば、主走査方向(ノズル2が並ぶ方向、図中左右方向)の距離と、副走査方向(用紙移動方向、図中奥行き方向)の距離と、読取部(センサ)の出力値(光強度、図中上下方向)の直交3軸により、テストパターンの各ドット列の濃度が3D状に例示されている。図3に例示した各ドット列は、図2の最も下に示したドット列のように各ドット4が副走査方向に繋がって印刷されており、図示のように奥行き方向(副走査方向)について山の尾根のように連続している。この図において、光強度を表す縦軸において印刷用紙の地色を示す所定の光強度を設定し、その点を通る主走査方向と副走査方向で構成される水平面によって各ドット列の山を切断する。これによって、切断部における山の主走査方向の寸法、すなわちドット列の幅が、各ドット列におけるドット4のドット径として測定される。図3の例示では、左側のドット列のドット径d1が、右側のドット列のドット径d2よりも小さくなっている。
本実施形態では、ドット径の異なる各ドットの外径を略円形のドットごとに測定するのでなく、ドット列の幅として測定している。すなわち、インクジェットヘッドの解像度に合致する又はこれに最も近いドットを、ドット列の幅の比較で選ぶことができるので、寸法の測定及び比較が安定し、インクジェットヘッドの解像度を当該印刷用紙において高い再現性で実現するための作業をより確実かつ簡単に行うことができる。
【0020】
このようにして、テストパターンに印刷した多数のドット列について、それぞれドット径を測定し、その中から、使用したインクジェットヘッド1の精細度に対応するドット径、すなわち実質的に一致するか又は最も近い値のドット径のドット列を選択する。そして、このドット列のインク滴のドロップ数を最適制御データとしてメモリ等に記憶しておき、テストパターンの印刷に使用した印刷用紙と同一の印刷用紙に画像を形成する際に、前記最適制御データを用いて前記インクジェットヘッド1を制御する。このように、最適制御データを取得するためにテストパターンの印刷に実際に使用した印刷用紙と同一の印刷用紙において、最適制御データであるインク滴のドロップ数で実際に印刷を行なえば、前記インクジェットヘッド1の精細度に対応するドット径に近いドット径のドットを印刷することができる。この場合には、一例として挙げたインクジェットヘッド1の精細度である300dpiが実現される。このため、細字のように印刷によってつぶれ易い画像であっても、高い再現性で見やすく印字することができる。
【0021】
図4は、本発明の実施形態において印刷される画像イメージの一例を示す図であり、ここでは、画像が絵領域Pと文字領域Lで構成されている。画像をインクジェットヘッド1で印刷する場合には、そのインクジェットヘッド1により実際に形成される画像の現実の精細度が、画像の見やすさや元データに対する再現性に関係することはもちろんであり、その点においては、絵領域Pと文字領域Lで差異はない。しかしながら、特に文字の場合には、細かい線の交差や線の間隔その他の構造等によって具体的な字形が構成されていることから、印刷時の精細度が低いと文字としての認識性が低下し、読めなくなる場合があるという不都合がある。これに対し、文字とは異なるイメージである絵領域Pの場合には、一般的には細部が少々つぶれても伝達可能な情報量に大差がなく、文字の場合と比較すれば、観察時に観者が受ける印象に大きな変化がない。このように、精細度による影響は、文字領域Lと絵領域Pとでは大きく相違する。
【0022】
そこで、本実施形態のインクジェットプリンターにおける印刷最適化手法においては、画像イメージを絵領域Pと文字領域Lに分離し、少なくとも文字領域Lの印刷において最適制御データを用いる。さらに具体的には、文字領域Lについては、先に制御部によって取得した最適制御データであるインク滴のドロップ数で印刷を行なうが、絵領域Pについては、前記最適制御データであるドロップ数にはよらず、従前の制御で印刷を行なうものとする。ここで、従前の制御と称しているのは、最適制御データを取得して行なう本実施形態の制御以外の制御を示しており、例えば、インクジェットプリンターのインクジェットヘッド1や制御部にデフォルト値として設定されているドロップ数で行う制御である。このようにすれば、画像の中で、少なくとも、つぶれて見にくくなりがちな文字領域L(特に細字の場合)については確実に高精細度で印刷することができる。
【0023】
次に、前記インクジェットプリンターのさらに具体的な構成及びこれを用いて行なう印刷最適化手法の作用について図5〜図8を参照して説明する。
図5に示すように、このインクジェットプリンター10は、使用者の指示に従って各部に制御信号を送る操作部5と、印刷時に画像データの処理を行なう画像処理部6と、印刷時に印刷機構を駆動する機構部7から構成されている。操作部5は、使用者が指示を入力するための入力手段及び必要な情報の表示手段として、タッチパネル方式の操作パネル8を有している。また、操作部5には、操作パネル8から入力された指示に従い、後述する各部を制御するための制御信号を生成する主制御部9が設けられている。
【0024】
図5に示すように、画像処理部6には、印刷しようとする画像の元データ(生データ)を1フレームごとにビットマップ形式で格納するフレームメモリーである第1の画像メモリ部11(以下、第1画像メモリ部11と称する。)が設けられている。この第1画像メモリ部11にデータを供給する第1の供給源として、原稿から画像を読み取って画像データを出力する読取部としてのスキャナ12がある。スキャナ12から出力された画像データは、入力画像処理部13を経て第1画像メモリ部11に格納される。また、第1画像メモリ部11にデータを供給する第2の供給源として、図示しない外部のパーソナルコンピュータ(PC)等から画像データが入力されるI/F入力処理部14がある。I/F入力処理部14から入力された画像データは、ラスターイメージプロセシング(RIP)15を経て第1画像メモリ部11に格納される。I/F入力処理部14から入力された画像データがビットマップ形式のデータである場合は、そのまま第1画像メモリ部11に格納されるが、コマンドデータである場合には、ラスターイメージプロセシング(RIP)15でビットマップ画像に変換されて第1画像メモリ部11に格納される。
【0025】
図5に示すように、画像処理部6は、バッファーメモリーである第2の画像メモリ部16(以下、第2画像メモリ部16と称する。)と、必要に応じて第2画像メモリ部16を利用することにより出力画像データを生成して出力する出力画像処理部17と、出力画像処理部17からの出力画像データによって駆動されるインクジェットヘッド1(IJヘッド)を有している。スキャナ12で読み取られ、入力画像処理部13で処理されて第1画像メモリ部11に格納されたビットマップデータは、印刷時には第1画像メモリ部11から入力画像処理部13を経て、切替手段18から出力画像処理部17に供給される。ラインデータとして供給されるこのビットマップデータは、第2画像メモリ部16においてインクジェットヘッド1のノズル配置に対応して適当に分割され、出力画像処理部17によって順次インクジェットヘッド1に与えられる。外部のPCからI/F入力処理部14を経由して入力され、第1画像メモリ部11に格納されたビットマップデータは、印刷時には第1画像メモリ部11からラスターイメージプロセシング(RIP)15を通過し、切替手段18から出力画像処理部17に供給される。ラインデータとして供給されるこのビットマップデータは、第2画像メモリ部16においてインクジェットヘッド1のノズル配置に対応して適当に分割され、出力画像処理部17によって順次インクジェットヘッド1に与えられる。
【0026】
図5に示すように、機構部7は、主制御部9からの制御信号を受けて駆動信号を出力する機構制御部19と、機構制御部19からの駆動信号によって駆動される駆動部20を備えている。駆動部20は、印刷時に印刷機構を駆動する駆動源であって、例えば印刷用紙の搬送ベルト等の搬送手段、給紙部、排紙部、印刷用紙の両面に印刷を行なうために機能する用紙搬送系統中の用紙反転手段、そしてスキャナ12の駆動部20等を含んでいる。
【0027】
次に、図5に示した前記インクジェットプリンター10における印刷最適化手法の作用を図6〜図8を参照して説明する。なお、作用の説明中に参照する装置の各部の符号については図5を参照されたい。
【0028】
図6は、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンター10の制御方法の全体を示す流れ図である。前記操作パネル8に指示を与えて電源を投入し、インクジェットプリンター10を始動すると(S1)、主制御部9は装置全体の初期化及び自己診断を実行する(S2)。初期化及び自己診断の結果が不良である場合は(S2、NO)、エラー処理に移行する(S3)。良好である場合は(S2、YES)、本装置が画像形成等の通常モード又は印刷最適化設定等の機能モードのいずれにあるかを判断し、その結果に応じて各モードにおける作用を装置各部に具体的に実行させる(S4)。
【0029】
S4において通常モードと判断された場合は、操作パネル8で入力された通常動作設定の入力内容に従い、通常モードに含まれるコピー、プリンター、スキャナの各モードの何れかにおいて、機構部7及び画像処理部6を制御して実際の作業を行なう。
【0030】
すなわち、コピーモードの場合はコピー処理を行い(S5〜S7)、プリンターモードの場合はプリンター処理を行い(S8〜S10)、スキャナモードの場合は読取処理を行なう(S11〜S13)。
このような通常動作設定、すなわち各通常モードの切替は、操作パネル8のタッチスイッチにより行なうことができる。
【0031】
S4において機能モードと判断された場合は、操作パネル8で入力された機能設定の入力内容に従い、機能モードに含まれる設定、テスト印字、印刷最適化設定の各機能の何れかにおいて、機構部7及び画像処理部6を制御して実際の作業を行なう。
【0032】
設定モードとは、前述したようにテストパターンを読み取った結果として取得し、メモリに記憶した最適制御データであるインク滴のドロップ数を実際に使用して印刷を行なえるように設定するモードであり、設定モードが選択されている場合には(S14、YES)、設定処理(S15)において印刷最適化設定をON又はOFFとすることにより、メモリに記憶した最適制御データで行なう印刷最適制御をON又はOFFとすることができる。印刷最適制御をONとした場合には、前述した印刷最適化処理において得た最適制御データを使用し、前述した通常モードにおけるコピー処理やプリンター処理を実行することができる。
【0033】
テスト印字モードとは、前述した印刷最適化のためのテストパターンを印刷するためのものではなく、一般的なノズル詰まりの検出等のために印刷用紙に所定のパターンを印刷させるモードである。このテスト印字モードが選択されている場合には(S16、YES)、テスト印字処理(S17)においてノズルチェックのためのテスト印字を行なうことができる。
【0034】
印刷最適化設定モードとは、最適制御データを取得するためのモードであり、印刷最適化設定モードが選択されている場合には(S18、YES)、後に詳述するような手順で印字最適化処理を行なう(S19)。
このような機能設定、すなわち各機能モードの切替は、操作パネル8のタッチスイッチにより行なうことができる。
【0035】
図7は、図6に示したインクジェットプリンター10の制御方法において、印刷最適化設定モードにおける印字最適化処理(S19)の内容をさらに詳細に示した流れ図である。
印字最適化処理(S19)が選択されている場合には、操作が自動的に開始され(S20)、印刷位置における用紙の有無が判断され(S21)、用紙が存在する場合にはテストパターン印刷が行なわれる(S22)。テストパターンの印刷が完了すると、印刷完了の旨と、テストパターンが印刷された用紙をスキャナ12の読取位置にセットする指示が、操作パネル8の表示部に表示される。テストパターンが印刷された用紙をスキャナ12の読取位置にセットする操作はユーザーが行なう(S23)。テストパターンのセット後、読取が可能か否かが確認され(S24)、可能とされた場合には、テストパターンの画像が読み取られ(S25)、最適制御データとして当該インクジェットヘッド1の精細度に最も近いドット径のドットのインク滴数のデータが決定され(S26)、これがメモリに記憶される(S27)。なお、最適制御データとしてのインク滴数のデータの決定(S26)は、前述したようにスキャナ12で読み取った結果を主制御部9が自動的に判断した結果によってもよいし(自動)、また自動的に決定されたデータの内容を見たユーザーがこれを変えることも可能である(手動)。また、最適制御データとしてのインク滴数のデータを記憶するメモリは主制御部9中にあってもよいし、画像処理部6の何れかの部分に設けられたものであってもよい。
【0036】
なお、メモリに記憶される最適制御データとしてのインク滴数のデータは、テストパターンの印字に使用された印刷用紙の種類のデータにリンクして記憶され、このデータを使用して行なう画像形成時には、最適制御データとともに記憶された印刷用紙データが示す用紙と実際に印刷に使用される印刷用紙とが異なる場合には、操作パネル8に警告等を表示してユーザーの注意を促すように構成されている。
【0037】
図8は、図6に示したインクジェットプリンター10の制御方法において、印字最適化処理を行い(S19)、さらに印刷最適化設定をONとした状態(S15)で、実際の印刷を行なうために文字領域Lの判定を行なう手順を示した流れ図である。
印刷最適化設定をONとした状態(S31)で実際の印刷を開始する。コピーモードが選択されている場合には(S32、YES)、スキャナ12から送られるビットマップデータである画像データに対して像域分離の処理を行い(S33)、文字領域Lと絵領域P(グラフィック領域)の各アドレスを確定して管理する(S37)。画像形成においてコピーモードが選択されていない場合には(S32、NO)、プリンターモードが選択された状態であるから、プリンター処理が行なわれる(S34)。プリンター処理で利用される画像データがビットマップデータであるか否かが判断され(S35)、ビットマップデータである場合には(S35、YES)、像域分離の処理を行い(S33)、文字領域Lと絵領域P(グラフィック領域)の各アドレスを確定して管理する(S37)。ビットマップデータでない場合には(S35、NO)、画像データはコマンドデータであるから、そのコマンドデータに対して文字領域Lと絵領域P(グラフィック領域)の管理を行うことにより、文字領域Lと絵領域P(グラフィック領域)の各アドレスを確定して管理する(S37)。その後、文字領域Lと絵領域P(グラフィック領域)の各アドレスの情報と、メモリに格納されている最適制御データを用いて画像処理部6を制御し、インクジェットヘッド1駆動する(S38)。印刷を開始してコピー処理又はプリンター処理を実行する(S39)。これによって、少なくとも画像の中で文字領域L(特に細字)については確実に高精細度で印刷を実行・終了することができる(S40)。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の装置及びこれを用いた方法によれば、実際に使用する印刷用紙を用いて、インクジェットヘッド1でインク滴3の数を変えて種々のドット4を印刷するテスト印字を行ない、その結果を読取部(スキャナ12)で読み取り、インクジェットヘッド1の解像度(dpi)に最も近いドット径となっているドット4を選び、そのドット径を実現するために吐出したインク滴数を最適制御データとして取得する。そして、実際の印刷時には、テスト印字に用いたのと同一の印刷用紙に対し、前記最適制御データのインク滴数でドットを形成することにより、精細度の高い印刷を行なうことができる。特に、細字でつぶれやすい文字領域Lに本制御を適用すれば高い効果を得ることができる。
【0039】
このような方法による最適制御データの取得は、インクジェットプリンター10の使用中、使用する印刷用紙を変えた場合や、使用状態が変わった場合、例えば使用開始時や、使用開始後、相当の時間が経過した場合等に改めて行い、その印刷用紙や印刷条件に対応した新規の最適制御データを制御に使用するようにすることが好ましい。
【0040】
また、従来は、ある印刷用紙の種類に対して、必要な精細度が得られるような吐出条件を個々に設定したとしても、実際の印刷時に用紙を間違ってしまうと、インクの滴数が過剰になって像が滲んだり、インクの滴数が少なくなって像がかすんだりしてしまう。しかし、本実施形態によれば、実際に使用する印刷用紙について必要な精細度を得るための最適制御データを取得し、実際の印刷時には当該印刷用紙を使用しなければ当該最適制御データによる画像形成ができないようにしているので、高精細な画像形成に失敗する可能性が少ない。
【0041】
また、以上説明した実施形態では、テストパターンの印刷後、スキャナ12でドット列を読み取るまでの時間経過については、特に言及しなかった。しかしながら、本発明者の知見によれば、印刷用紙にインクが吸収されてできたドットは、インク滴の着弾後、時間の経過とともに径が拡大していくが、その拡大の速度は一定ではない。インク着弾以後の所定時間は比較的浸透、拡大が早いが、その後所定時間が経過すると減速して拡大が停止する定着状態に移行する。このような径の拡大時の拡大速度や、定着状態に移行する経過時間は、印刷用紙の種類やインクの種類によって異なり、実験によって予め定めておくことができる。すなわち、インク滴着弾後に拡大していくドット径と時間との関係を示す曲線の形状は、印刷用紙の種類及びインクの種類の組み合わせにより異なった特有のものとなる。そこで、本実施形態では、テストパターンの印刷後、十分な時間をおいてインクが定着してから読み取りを行なってもよいし、インク滴着弾後、定着に至らないある時間経過後に、それまでの前記曲線の形状からドット径の定着時の収束値を予測するものとしてもよい。このようにすれば、より早い最適制御データの決定及びメモリへの記憶が可能となる。
【符号の説明】
【0042】
1…インクジェットヘッド
2…ノズル
3…インク滴
4…ドット
5…操作部
6…画像処理部
7…機構部
8…操作パネル
9…主制御部
10…インクジェットプリンター
11…第1画像メモリ部
12…読取部としてのスキャナ
16…第2画像メモリ部
P…画像中の絵領域
L…画像中の文字領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望のドロップ数のインク滴をそれぞれ吐出して印刷用紙にそれぞれドットを形成する複数のノズルを備えたインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドによって印刷用紙に形成されたドットの大きさを読み取る読取部と、
前記インクジェットヘッドの異なるノズルから、互いに異なるドロップ数のインク滴をそれぞれ吐出させて複数のドットを印刷用紙に形成させ、前記読取部にこの印刷用紙に形成された前記複数のドットを読み取らせ、前記インクジェットヘッドの解像度に合致する又は最も近いドットを形成するために前記ノズルから吐出されたインク滴のドロップ数を最適制御データとして取得し、画像を形成する際に前記最適制御データを基に前記インクジェットヘッドを制御する制御部と、
を有することを特徴とするインクジェットプリンター。
【請求項2】
少なくとも、前記インクジェットヘッドの解像度に対応するドットよりも大きいドットの列と、これよりも小さいドットの列を含む複数のドットの列が、それぞれ副走査方向に沿って印刷用紙に形成されるように、前記インクジェットヘッドを制御することを特徴とする請求項1記載のインクジェットプリンター。
【請求項3】
形成しようとする前記画像のうち、少なくとも文字領域について前記最適制御データを用いて画像形成を行なうことを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェットプリンター。
【請求項4】
所望のドロップ数のインク滴をそれぞれ吐出して印刷用紙にそれぞれドットを形成する複数のノズルを備えたインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドによって印刷用紙に形成されたドットの大きさを読み取る読取部と、を備えたインクジェットプリンターの制御方法において、
前記インクジェットヘッドの異なるノズルから、互いに異なるドロップ数のインク滴をそれぞれ吐出させて複数のドットを印刷用紙に形成させ、前記読取部にこの印刷用紙に形成された前記複数のドットを読み取らせ、前記インクジェットヘッドの解像度に合致する又は最も近いドットを形成するために前記ノズルから吐出されたインク滴のドロップ数を最適制御データとして取得し、画像を形成する際に前記最適制御データを基に前記インクジェットヘッドを制御することを特徴とするインクジェットプリンターの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−937(P2013−937A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132357(P2011−132357)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】