説明

インクジェットプリンター

【課題】保湿液供給路のバルブユニットの開閉にキャップの移動動作を利用する場合でも、バルブユニットを正確に開閉できるインクジェットプリンターを提供すること。
【解決手段】インクジェットプリンター1は、保湿液吐出ヘッド30に保湿液を供給する保湿液供給路35の途中にバルブユニット40を有する。保湿液吐出ヘッド30はバルブユニット40を開閉するための押し込みレバー41を備え、キャップ12が保湿液吐出ヘッド30の液体ノズル面31aを密封するために保湿液吐出ヘッド30に接近する際に、キャップ12と共に移動するワイパーユニット26が押し込みレバー41を開位置41Bまで押し込んでバルブユニット40を開く。押し込みレバー41には、押し込みレバー41が開位置41Bに位置決めされた後において更に押し込み方向D3に移動するワイパーユニット26の移動量の誤差分を吸収する移動量誤差吸収機構63が構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドのインクノズル面を覆うキャップ内に保湿液を供給する保湿液供給機構を有するインクジェットプリンターに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターでは、インクノズル内のインクの増粘によってインクノズルに目詰まりが発生することを防止するために、インクジェットヘッドがメンテナンス位置にある間、インクノズルが形成されているインクノズル面をキャップで覆い、インクノズルからの水分の蒸発を抑制している。また、このような目詰まりの発生を抑制するために、定期的にインクノズル面にキャップを対向させて、インクノズルからキャップに向かってインクを吐出させるフラッシング動作を行っている。さらに、インクノズルに目詰まりが発生した場合には、インクノズル面をキャップで覆った状態として、吸引ポンプによってノズル面とキャップとによって形成された密封空間に負圧を発生させて、インクノズルからキャップにインクを強制的に吐出させるインク吸引動作を行い、この目詰まりを解消している。フラッシング動作およびインク吸引動作では、インクノズルから吐出されたインクはキャップの内側に収納されているフェルトなどのインク吸収材に吸収される。
【0003】
インクノズルから吐出されるインクにはグリセリンなどの保湿成分が含まれており、フラッシング動作やインク吸引動作が行われると、キャップ内のインク吸収材には、この保湿成分が堆積されていく。ここで、キャップ内から水分が蒸発してキャップ内の水分に対する保湿成分量のバランスが崩れると、キャップによってインクノズル面を覆ったときに保湿成分がキャップとインクノズル面とによって形成された密封空間内の水分を奪い、インクノズルからの水分の蒸発を促進してインクの増粘を助長する。この結果、インクノズルに目詰まりが発生し易くなってしまう。
【0004】
このような事態を防止するために、キャップ内に保湿液を供給する保湿液供給機構を備えるインクジェットプリンターは特許文献1に記載されている。同文献の保湿液供給機構は、保湿液タンクと、保湿液を吐出するための液体ノズルが形成された液体ノズル面を備える保湿液吐出ヘッドと、保湿液タンクと液体ノズルとを接続する保湿液供給路を備えており、液体ノズル面をキャップで覆った状態として、吸引ポンプによって液体ノズル面とキャップとによって形成された密封空間に負圧を発生させて、保湿液タンクから供給される保湿液を保湿液吐出ヘッドからキャップに強制的に吐出させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−226719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の保湿液供給機構は、保湿液吐出ヘッド自体に保湿液を吐出させる機構を備える必要がない。また、インク吸引動作を行う吸引ポンプを利用して保湿液吐出ヘッドから保湿液を吐出させることができる。従って、保湿液供給機構を備えるインクジェットプリンターの製造コストを抑えることができる。しかし、保湿液タンクの位置によっては、保湿液吐出ヘッドからの保湿液の漏れや、液体供給路内での保湿液の逆流が発生することがある。保湿液が漏れると、装置筐体内を濡らしてしまう恐れがある。また、保湿液の逆流が発生すると、吸引ポンプの吸引動作によってキャップ内に供給される保湿液の量が不安定になり、キャップ内の水分量を所望の水分量とすることができなくなる。
【0007】
ここで、保湿液吐出ヘッドからの保湿液の漏れや、液体供給路内での保湿液の逆流を防止するために、液体供給路の途中にバルブを配置することが考えられる。また、保湿液吐出ヘッドにバルブを開閉するための押し込みレバーを設けると共に、キャップが保湿液吐出ヘッドの液体ノズル面を密封するために保湿液吐出ヘッドに接近する際にキャップと共に保湿液吐出ヘッドに接近して押し込みレバーを押し込む押し込み部材を設け、キャップが液体ノズル面を密封する間だけ押し込み部材によって押し込みレバーを押し込んで、バルブを開状態とすることが考えられる。
【0008】
しかし、液体ノズルを密封するためのキャップの移動量とバルブを開閉するための押し込みレバーの移動量は必ずしも一致するものではないので、キャップと共に移動する押し込み部材の移動量を、押し込みレバーの押し込み量に正確に対応させることが難しい。押し込み部材の移動量と押し込みレバーの押し込み量とを対応させることができなければ、バルブの開閉動作を正確に制御することができなくなるので、キャップ内に供給する保湿液の量が不安定になり、キャップ内の水分量を所望の水分量とすることができなくなるという問題が発生する。
【0009】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、キャップ内に保湿液を供給するための保湿液供給路のバルブの開閉にキャップの移動動作を利用する場合でも、バルブを正確に開閉することができるインクジェットプリンターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明のインクジェットプリンターは、
保湿液を吐出するための液体ノズルが形成された液体ノズル面を備える保湿液吐出ヘッドと、
予め定めたメンテナンス位置に配置されている保湿液吐出ヘッドの前記液体ノズル面を密封するキャッピング位置と、当該キャッピング位置から離れたキャッピング待機位置の間を移動可能なキャップと、
保湿液タンクと前記液体ノズルの間を接続している液体供給路の途中に配置されているバルブと、
前記キャップによって前記液体ノズル面が被われていないときに前記バルブを閉状態に維持し、前記液体ノズル面が前記キャップによって密封されたときに前記バルブを開状態とすることが可能なバルブ開閉機構と、
前記液体ノズル面が前記キャップによって密封されたときに、前記液体ノズル面および当該キャップによって形成された密封空間に負圧を発生させて前記液体ノズルから前記保湿液を吐出させる吸引装置とを有し、
前記バルブ開閉機構は、
前記バルブを閉状態とするための閉位置および当該バルブを開状態とするための開位置の間をスライド可能な状態で前記保湿液吐出ヘッドに支持されている押し込みレバーと、
前記キャップが前記キャッピング待機位置から前記キャッピング位置に向かって移動して前記メンテナンス位置に配置された前記保湿液吐出ヘッドに接近する際に、前記キャップと共に前記保湿液吐出ヘッドに接近して前記押し込みレバーを前記閉位置から前記開位置へ向かう押し込み方向に押し込む押し込み部材と、
前記押し込み方向に押し込まれる前記押し込みレバーを前記開位置に位置決めするための位置決め部材と、
前記押し込みレバーが前記開位置に位置決めされた後において、更に、前記押し込み方向に移動する前記押し込み部材の移動量の誤差分を吸収する移動量誤差吸収機構とを備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、バルブを開閉するための押し込みレバーがキャップと共に移動する押し込み部材によって閉位置から開位置に向かって押し込まれる際に、押し込みレバーが位置決め部材によって開位置に位置決めされた後に、更に、押し込み部材が押し込み方向に移動すると、押し込みレバーの位置決め後に移動した押し込み部材の移動量の誤差分が移動量誤差吸収機構によって吸収される。従って、キャップと共に移動する押し込み部材の移動量を、押し込みレバーが閉位置から開位置に到達するまでの押し込み量に対応する量に正確に規定することが難しい場合であっても、押し込みレバーを開位置に正確に到達させて、バルブを開状態とすることができる。
【0012】
本発明において、前記バルブ開閉機構は、前記押し込みレバーを前記閉位置に支持していると共に、前記押し込みレバーが前記閉位置から前記開位置に押し込まれると当該押し込みレバーを前記閉位置の側に向かって付勢する第1バネ部材を備えており、前記キャップが前記キャッピング位置から前記キャッピング待機位置に向かって移動して前記押し込み部材が前記保湿液吐出ヘッドから離れる際に、前記第1バネ部材の第1付勢力によって前記押し込みレバーが前記開位置から前記閉位置へ押し戻されることが望ましい。このようにすれば、バルブを閉状態とする閉動作を、キャップが保湿液吐出ヘッドから離れる移動動作に伴って行うことができる。
【0013】
本発明において、移動量誤差吸収機構を押し込みレバーに構成することができる。この場合には、前記押し込みレバーは、前記押し込み方向にスライド可能な状態で前記保湿液吐出ヘッドに支持されていると共に、前記第1バネ部材によって支持されている第1スライド部材と、前記押し込み方向にスライド可能な状態で前記第1スライド部材の前記押し込み部材側の端部分に取り付けられている第2スライド部材と、前記第1スライド部材と前記第2スライド部材との間に配置されて前記第2スライド部材を支持しており、前記第1付勢力よりも大きな力が前記押し込み方向に付与されたときに圧縮される第2バネ部材とを備えており、前記押し込みレバーが前記開位置に位置決めされた後において、更に、前記押し込み部材が前記押し込み方向に移動すると、前記第2バネ部材が圧縮されて前記第2スライド部材が前記押し込み部材の移動量の誤差分だけ前記押し込み方向に移動することが望ましい。
【0014】
また、本発明において、移動量誤差吸収機構を押し込み部材に構成することができる。この場合には、前記押し込み部材は、前記保湿液吐出ヘッドに向かって突出している突部と、前記押し込み方向にスライド可能な状態で前記突部に支持されているスライド部材と、前記突部と前記スライド部材との間に配置されて前記スライド部材を支持しており、前記第1付勢力よりも大きな力が前記押し込み方向に付与されたときに圧縮される第2バネ部材とを備えており、前記押し込みレバーが前記開位置に位置決めされた後において、更に、前記押し込み部材が前記押し込み方向に移動すると、前記スライド部材が停止した状態で前記第2バネ部材が圧縮され、前記突部が前記押し込み部材の移動量の誤差分だけ前記押し込み方向に移動することが望ましい。
【0015】
本発明において、前記バルブは、前記保湿液供給路を開閉するための開口部が設けられた弁座と、前記弁座に対して接近する方向および離れる方向に移動して前記開口部を開閉する弁体と、前記弁体を前記弁座に付勢している第3バネ部材と、前記弁体を前記第3バネ部材の付勢力に抗して前記弁座から離れる方向に移動させる磁気吸引機構とを有し、前記磁気吸引機構は、前記弁体に搭載された磁性体およびマグネットのいずれか一方と、前記押し込みレバーに搭載された前記磁性体および前記マグネットのいずれか他方とを備えており、前記押し込みレバーが前記開位置に押し込まれると、前記マグネットと前記磁性体とが接近して当該マグネットと当該磁性体との間に働く磁気吸引力によって前記弁体が前記弁座から離れて前記開口部を開放し、前記押し込みレバーが前記開位置から前記閉位置の側に移動すると、前記バネ部材の付勢力によって前記弁体が前記弁座に当接して前記開口部を封鎖することが望ましい。このようにすれば、押し込み操作レバーの操作によってバルブを開閉することが可能となる。
【0016】
本発明において、インクノズル面を備えるインクジェットヘッドを有し、前記メンテナンス位置には前記インクジェットヘッドと前記保湿液吐出ヘッドが選択的に配置され、前記インクジェットヘッドが前記メンテナンス位置に配置されたときに、前記キャップが前記キャッピング位置に移動すると、前記キャップが前記インクノズル面を密封することが望ましい。このようにすれば、キャップによってインクジェットヘッドのインクノズル面と保湿液吐出ヘッドの液体ノズル面を密封することが容易となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、バルブを開閉するための押し込みレバーがキャップと共に移動する押し込み部材によって閉位置から開位置に向かって押し込まれる際に、押し込みレバーが位置決め部材によって開位置に位置決めされた後に、更に、押し込み部材が押し込み方向に移動すると、押し込みレバーの位置決め後に移動した押し込み部材の移動量の誤差分が移動量誤差吸収機構によって吸収される。従って、キャップと共に移動する押し込み部材の移動量を、押し込みレバーが閉位置から開位置に到達するまでの押し込み量に対応する量に正確に規定することが難しい場合であっても、押し込みレバーを開位置に正確に到達させて、バルブを開状態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】プリンターケースを取り除いたインクジェットプリンターの概略斜視図である。
【図2】図1のA−A線における断面図である。
【図3】保湿液吐出ヘッド、保湿液供給路およびガイドレールの斜視図である。
【図4】保湿液吐出ヘッド移動機構の説明図である。
【図5】バルブユニットおよびバルブ開閉機構の説明図である。
【図6】バルブユニットを開閉する開閉動作の説明図である。
【図7】保湿液供給動作のフローチャートである。
【図8】変形例のバルブ開閉機構の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したインクジェットプリンターを説明する。
【0020】
(全体構成)
図1は本実施形態のインクジェットプリンターの要部を示す概略斜視図であり、プリンターケースを取り除いた状態を示している。図2は図1のA−A線における断面図であり、図2(a)は保湿液吐出ヘッドがメンテナンス待機位置に配置されている状態を示し、図2(b)は保湿液吐出ヘッドがメンテナンス位置に配置されている状態を示す。図3は、保湿液吐出ヘッド、保湿液供給路およびガイドレールを装置後方の下側から見た斜視図である。
【0021】
図1に示すように、インクジェットプリンター1は、装置後方に設けられたロール紙装填部2に装填されたロール紙3から引き出された記録紙4を、インクジェットヘッド5による印刷位置Pを経由する記録紙搬送路6に沿って装置前方に向かう搬送方向D1に搬送して、印刷を行う。インクジェットヘッド5はインクノズルが形成されているインクノズル面7を下方に向けた状態でキャリッジ8に搭載されており、不図示のキャリッジ移動機構によって、図1において実線で示す印刷可能位置5Aと、二点鎖線で示すメンテナンス位置5Bの間を旋回する。インクジェットヘッド5には印刷位置Pの下方に配置されたインクタンク9からインクを供給するためのインク供給機構(不図示)が接続されており、インクジェットヘッド5が印刷可能位置5Aに配置されたときに、印刷位置Pを通過する記録紙4に対する印刷が可能となっている。メンテナンス位置5Bは、ロール紙装填部2および記録紙搬送路6の装置側方に位置している。
【0022】
メンテナンス位置5Bの下方には、ヘッドメンテナンスユニット11が配置されている。ヘッドメンテナンスユニット11は、メンテナンス位置5Bに配置されたインクジェットヘッド5のインクノズル面7を密封可能なキャップ12と、メンテナンス位置5Bに配置されたインクジェットヘッド5のインクノズル面7を払拭するためのワイパー機構13と、インクノズルからキャップ12にインクを強制的に吐出させるインク吸引動作を行うための吸引ポンプ(吸引装置)14(図2参照)を備えている。キャップ12、ワイパー機構13および吸引ポンプ14はユニットフレーム15に搭載されている。ユニットフレーム15はベースフレーム16(図4参照)上に昇降可能に支持されており、駆動モーター17を備える昇降機構(キャップ移動機構)18によってベースフレーム16上で昇降する。
【0023】
キャップ12は開口縁にブチルゴムなどからなる枠状のリップを備え、キャップ12内にインクジェットヘッド5から吐出されたインクを吸収するためのフェルトなどのインク吸収材を保持している。また、キャップ12はバネ部材21(図4参照)によってユニットフレーム15に支持されている。また、キャップ12は、ユニットフレーム15の昇降に伴って、メンテナンス位置5Bのインクジェットヘッド5のインクノズル面7を密封するキャッピング位置12Aと、キャッピング位置12Aから下方に離れたキャッピング待機位置12Bの間を昇降する。
【0024】
ワイパー機構13は、ワイパー25を搭載するワイパーユニット26と、このワイパーユニット26をインクノズル面7と平行な装置前後方向に移動させるワイパーユニット移動機構27を備えている(図2参照)。ワイパー機構13は、ユニットフレーム15の昇降によって、ワイパー25の上端がインクノズル面7に摺接可能なワイピング位置(不図示)に配置されたときに、ワイパーユニット移動機構27によってワイパーユニット26を装置前後方向に移動させて、インクノズル面7をワイパー25で払拭する。
【0025】
吸引ポンプ14は、キャップ12によってインクノズル面7が密封された状態となっているときに、所定のタイミングで、インクノズル面7とキャップ12によって形成された密封空間に負圧を発生させて、インクノズルからインクを吐出させる。
【0026】
メンテナンス位置5Bの後方には、キャップ12内に保湿液を供給するための保湿液吐出ヘッド30が配置されている。保湿液は、水、あるいは、水に防腐剤を含有させたものである。
【0027】
図2、図3に示すように、保湿液吐出ヘッド30は、保湿液を吐出するための液体ノズル31の液体ノズル面31aを下方に向けた状態で、装置前後方向に延びている一対のガイドレール32上に載せられている。また、保湿液吐出ヘッド30は、保湿液吐出ヘッド移動機構33によって、メンテナンス位置5Bと、メンテナンス位置5Bから装置後方に離れているメンテナンス待機位置30Aの間をガイドレール32に沿って移動させられる。図1および図2(b)では、保湿液吐出ヘッド30はメンテナンス待機位置30Aに配置されており、図2(b)では、保湿液吐出ヘッド30はメンテナンス位置5Bに配置されている。メンテナンス位置5Bには、インクジェットヘッド5および保湿液吐出ヘッド30が選択的に配置される。保湿液吐出ヘッド移動機構33は、ワイパー機構13を利用して構成されている。保湿液は、水、あるいは、水に防腐剤を含有させたものである。
【0028】
ここで、保湿液吐出ヘッド30の液体ノズル面31aは、インクジェットヘッド5のインクノズル面7と同一形状を備えている。従って、保湿液吐出ヘッド移動機構33によって保湿液吐出ヘッド30がメンテナンス位置5Bに配置されると、キャッピング位置12Aに移動するキャップ12によって液体ノズル面31aを密封することが可能となる。また、保湿液吐出ヘッド30がメンテナンス位置5Bに移動した状態でワイパー機構13がワイピング位置に配置されると、ワイパー機構13によって保湿液吐出ヘッド30の液体ノズル面31aの払拭が可能となる。
【0029】
印刷位置Pの下方において、インクタンク9の装置前方には保湿液タンク34が配置されている(図1参照)。保湿液タンク34と保湿液吐出ヘッド30の液体ノズル31の間は保湿液供給路35によって接続されている。図3に示すように、保湿液供給路35は、上流側から、剛体の基板36上に形成された平面流路37、可撓性チューブ38、保湿液吐出ヘッド30内に形成されたヘッド内流路39(図5参照)を備えている。ヘッド内流路39の途中には保湿液供給路35を開閉するためのバルブユニット(バルブ)40が設けられている。バルブユニット40は保湿液吐出ヘッド30の装置後側部分に搭載されている。
【0030】
バルブユニット40には、上下方向にスライドしてバルブユニット40を閉閉する押し込みレバー41が取り付けられている。押し込みレバー41は、バルブユニット40を閉状態とするための閉位置40A(図5(b)参照)と、バルブユニット40を開状態とするための開位置40B(図5(c)参照)の間を移動可能な状態で保湿液吐出ヘッド30に支持されている。押し込みレバー41の操作部41aは、保湿液吐出ヘッド30から下方に突出している。押し込みレバー41は、ワイパー機構13のワイパーユニット26と共に、キャップ12によって保湿液吐出ヘッド30の液体ノズル面31aが被われていないときにバルブユニット40を閉状態に維持し、液体ノズル面31aがキャップ12によって密封されたときにバルブユニット40を開状態にすることを可能とするバルブ開閉機構42を構成している。
【0031】
ここで、液体ノズル面31aがキャップ12によって密封され、かつ、バルブ開閉機構42によってバルブユニット40が開状態とされているときに、吸引ポンプ14を駆動することにより、液体ノズル面31aとキャップ12によって形成された密封空間に負圧を発生させて、液体ノズル31からキャップ12内に保湿液を吐出させることができる。すなわち、保湿液吐出ヘッド30、保湿液吐出ヘッド移動機構33、保湿液タンク34、保湿液供給路35、バルブユニット40、バルブ開閉機構42、および、吸引ポンプ14は、キャップ12内に保湿液を供給する保湿液供給機構43を構成している。
【0032】
(保湿液吐出ヘッド移動機構)
図4は保湿液吐出ヘッド移動機構33の説明図である。保湿液吐出ヘッド移動機構33は、ワイパーユニット移動機構27およびワイパーユニット26を利用して、保湿液吐出ヘッド30をメンテナンス位置5Bとメンテナンス待機位置30Aの間で移動させる。保湿液吐出ヘッド移動機構33は、ワイパーユニット26と保湿液吐出ヘッド30を連結するための連結機構45を備えている。
【0033】
ワイパーユニット移動機構27は、一対のガイドレール32の内側の下方で装置前後方向に延びるワイパーユニットガイド軸46を備えている。ワイパーユニットガイド軸46は、インクジェットヘッド5のインクノズル面7および保湿液吐出ヘッド30の液体ノズル面31aと平行に延びており、その前端部分および後端部分がバネ部材47によって下方から支持されている。ワイパーユニット26はワイパーユニットガイド軸46に取り付けられており、ワイパーユニットガイド軸46に沿って装置前後方向に移動する。ワイパーユニット移動機構27としては、ワイパーユニットガイド軸46をリードスクリューとして、ワイパーユニット26にリードスクリューと螺合するネジ孔を備える構成を採用することができる。
【0034】
連結機構45は、保湿液吐出ヘッド30の装置前方の下端面部分から下方に突出している突出部48と、ワイパーユニット26において突出部48と係合可能に設けられた凹部49を備えている。
【0035】
保湿液吐出ヘッド30を図4(a)に示すメンテナンス待機位置30Aから、図4(d)、図4(e)に示すメンテナンス位置5Bに移動させる場合には、保湿液吐出ヘッド移動機構33は、まず、昇降機構18によってユニットフレーム15を下降させ、ワイパー機構13を保湿液吐出ヘッド30と干渉しない位置に配置する。次に、図4(b)に示すように、ワイパーユニット移動機構27によって、ワイパーユニット26を装置後方に移動させて、凹部49がメンテナンス待機位置30Aにある保湿液吐出ヘッド30の突出部48の真下に位置する第1係合位置26Aに配置する。その後、図4(c)に示すように、昇降機構18によってユニットフレーム15を上昇させることによりワイパーユニット26を上昇させ、ワイパーユニット26の凹部49と保湿液吐出ヘッド30の突出部48を係合させ、ワイパーユニット26と保湿液吐出ヘッド30を連結させた状態とする。
【0036】
しかる後に、ワイパーユニット移動機構27によって、ワイパーユニット26を装置前方に移動させる。これにより、ワイパーユニット26に連結された保湿液吐出ヘッド30はメンテナンス位置5Bに移動して、図4(d)に示す状態となる。
【0037】
なお、この状態で、更に昇降機構18によってユニットフレーム15を上昇させると、図4(e)に示すように、キャップ12によって保湿液吐出ヘッド30の液体ノズル面31aを被うことができる。
【0038】
次に、保湿液吐出ヘッド30をメンテナンス位置5Bからメンテナンス待機位置30Aに移動させる場合には、上記の動作の逆になる。ここで、保湿液吐出ヘッド30とワイパーユニット26の連結が解除されている場合には、昇降機構18によってユニットフレーム15を下降させ、ワイパー機構13を保湿液吐出ヘッド30と干渉しない位置まで下降させる。次に、ワイパーユニット移動機構27によって、ワイパーユニット26を装置前方に移動させて、凹部49がメンテナンス待機位置30Aにある保湿液吐出ヘッド30の突出部48の真下に位置する第2係合位置26Bに配置する。その後、昇降機構18によってユニットフレーム15を上昇させることによりワイパーユニット26を上昇させ、ワイパーユニット26の凹部49と保湿液吐出ヘッド30の突出部48を係合させる。これにより、ワイパーユニット26と保湿液吐出ヘッド30が連結した図4(d)に示す状態とする。しかる後に、ワイパーユニット移動機構27によって、ワイパーユニット26を装置後方に移動させる。これにより、ワイパーユニット26に連結された保湿液吐出ヘッド30はメンテナンス待機位置30Aに移動して、図4(c)に示す状態に戻る。
【0039】
(バルブユニットおよびバルブ開閉機構)
次に、図5を参照して、バルブユニット40およびバルブ開閉機構42を説明する。図5(a)は保湿液吐出ヘッド30を装置後方から見た部分背面図である。図5(b)、図5(c)は図5(a)のB−B線の断面図であり、図5(b)は押し込みレバー41が閉位置41Aにある状態を示し、図5(c)は押し込みレバー41が開位置41Bにある状態を示す。図6はバルブユニット40を開閉する開閉動作の説明図であり、図6(a)はキャップ12による液体ノズル面31aの密封動作に伴ってバルブユニット40を開状態とする開動作を示し、図6(b)はキャップ12により液体ノズル面31aを密封する際にバルブユニット40を閉状態に維持する場合を示す。
【0040】
バルブユニット40は、保湿液供給路35を開閉するためのヘッド内流路39の開口部50が設けられた弁座51と、弁座51に対して接近する方向および離れる方向に移動して開口部50を開閉する弁体52と、この弁体52を弁座51に付勢しているバネ部材(第3バネ部材)53と、弁体52をバネ部材53の付勢力に抗して弁座51から離れる方向に移動させる磁気吸引機構54を有している。
【0041】
弁体52は、棒状の鉄芯(磁性体)55と、この鉄芯55の先端に取り付けられたゴムなどの弾性体56を備えており、弾性体56が弁座51に当接して開口部50を開閉する。バネ部材53は圧縮コイルバネであり、鉄芯55の周りに配置されている。弁体52の移動方向D2は、押し込みレバー41の押し込み方向D3(上下方向)と直交している。
【0042】
磁気吸引機構54は、弁体52を構成している鉄芯55と、押し込みレバー41に搭載されたマグネット57から構成されている。マグネット57は押し込みレバー41に固定されており、押し込みレバー41と一体に上下方向に移動する。押し込みレバー41が上方の開位置41Bに達すると、マグネット57と弁体52が接近して、マグネット57と鉄芯55の磁気吸引力がバネ部材53の付勢力よりも強くなる。この結果、磁気吸引力によって弁体52が弁座51から離れて開口部50を開放する。すなわち、バルブユニット40が開状態とされ、保湿液供給路35が開く。押し込みレバー41が開位置41Bから下方の閉位置41Aに向かって移動すると、マグネット57と弁体52との間の距離が長くなるので、バネ部材53の付勢力の方が磁気吸引力よりも強くなる。この結果、バネ部材53の付勢力によって弁体52が弁座51に当接して開口部50を封鎖する。すなわち、バルブユニット40が閉状態とされ、保湿液供給路35が閉じられる。なお、弁体にマグネット57を搭載し、非磁性体からなる押し込みレバー41に磁性体を搭載して、磁気吸引機構54を構成することもできる。
【0043】
次に、バルブ開閉機構42は、押し込みレバー41と、ワイパーユニット(押し込み部材)26と、押し込みレバー41に下方から当接して押し込みレバー41を閉位置41Aに位置決めする第1位置決め部材(不図示)と、閉位置41Aから開位置41Bに向かう押し込み方向D3に押し込まれる押し込みレバー41に上方から当接して、押し込みレバー41を開位置41Bに位置決めする第2位置決め部材61と、押し込みレバー41を下方に向かって第1位置決め部材に押し付ける付勢力F1を発生させて、押し込みレバー41を閉位置41Aに支持しているコイルバネなどの第1バネ部材62(図5(a)参照)を備えている。位置決め部材および第1バネ部材62は保湿液吐出ヘッド30に搭載されている。また、押し込みレバー41には、押し込み方向D3に押し込まれた押し込みレバー41が開位置41Bに位置決めされた後において、更に、ワイパーユニット26が押し込み方向D3に移動すると、押し込みレバー41の位置決め後に移動したワイパーユニット26の移動量の誤差分を吸収する移動量誤差吸収機構63が構成されている。
【0044】
すなわち、押し込みレバー41は、押し込み方向D3にスライド可能な状態で保湿液吐出ヘッド30に支持されていると共に、第1バネ部材62によって支持されている第1スライド部材64と、押し込み方向D3にスライド可能な状態で第1スライド部材64の下端部分(押し込み部材側の端部分)に取り付けられている第2スライド部材65を備えている。また、押し込みレバー41は、第1スライド部材64と第2スライド部材65の係合部65bとの間に配置されて第2スライド部材65を支持している第2バネ部材66を備えている。より具体的には、第1スライド部材64の下端部分は円柱形状の円柱部64aとなっており、第2スライド部材65の第1スライド部材64側の端面は円形凹部65aが形成されており、円形凹部65aに円柱部64aが挿入されることによって、第2スライド部材65は第1スライド部材64にスライド可能に支持されている。また、第2バネ部材66は円柱部64aが突出している第1スライド部材64の円環状下端面64bと、第2スライド部材65の係止部65bの間に配置されている。第2スライド部材65は押し込みレバー41の操作部41aとなっている。
【0045】
ここで、押し込みレバー41は、第1バネ部材62の付勢力F1により第1スライド部材64が下方に付勢されて第1位置決め部材に当接することによって、閉位置41Aに位置決めされている。また、押し込みレバー41は、第2スライド部材64が第2位置決め部材61に下方から当接することによって開位置41Bに位置決めされる。さらに、第2バネ部材66は、第1スライド部材64を支持している第1バネ部材62の第1付勢力F1よりも大きな力が押し込み方向D3に付与されたときに、押し込み方向D3に圧縮される。
【0046】
ワイパーユニット26は、上方に突出する突部70を備えている。ワイパーユニット26は、ワイパーユニット移動機構27がワイパーユニット26を予め定めた押し込み位置26Cに配置したときに、その突部70がメンテナンス位置5Bにある保湿液吐出ヘッド30の押し込みレバー41の操作部41aに当接可能となる。すなわち、押し込み位置26Cでは、メンテナンス位置5Bにある保湿液吐出ヘッド30の押し込みレバー41の真下にワイパーユニット26の突部70が位置する。
【0047】
ここで、図6(a)の上側の図に示すように、メンテナンス位置5Bに保湿液吐出ヘッド30が配置され、かつ、ワイパーユニット26が押し込み位置26Cに配置された状態で、キャップ12がキャッピング位置12Aに到達するまでユニットフレーム15が上昇すると、図6(a)の下側の図に示すように、ユニットフレーム15と共に上昇するワイパーユニット26の突部70が押し込みレバー41に下方から当接して、押し込みレバー41を、上方に向かう押し込み方向D3に押し込み、閉位置41Aから開位置41Bに移動させる。これにより、液体ノズル面31aがキャップ12によって密封され、かつ、バルブユニット40が開状態となる。
【0048】
より詳細には、閉位置41Aにある押し込みレバー41に下方から当接したワイパーユニット26は、第1バネ部材62を圧縮させながら押し込みレバー41を押し込み方向D3に移動させる。これにより、押し込みレバー41は開位置41Bに到達し、第2位置決め部材61に当接して開位置41Bに位置決めされる。
【0049】
そして、押し込みレバー41が開位置41Bに位置決めされた後において、更に、ワイパーユニット26が押し込み方向D3に移動すると、図5(c)に示すように、第2バネ部材66が圧縮されて第2スライド部材65がワイパーユニット26の移動量の誤差分だけ押し込み方向D3に移動して、押し込みレバー41の位置決め後に移動したワイパーユニット26の移動量の誤差分を吸収する。従って、押し込みレバー41を開位置41Bに正確に到達させて、バルブユニット40を開状態とすることができる。この結果、液体ノズル面31aがキャップ12によって密封され、かつ、バルブユニット40が開状態となる。
【0050】
一方、ユニットフレーム15がキャッピング位置12Aからキャッピング待機位置12Bに向かって下降すると、液体ノズル面31aからキャップ12が離れ、キャップ12によって液体ノズル面31aが被われていない状態となる。この際、ユニットフレーム15の下降に伴って、ワイパーユニット26が下降して保湿液吐出ヘッド30から離れるので、第1バネ部材62の付勢力F1によって押し込みレバー41が開位置41Bから閉位置41Aへと押し戻される。従って、キャップ12によって液体ノズル面31aが被われていないときには、バルブユニット40は閉状態に維持される。
【0051】
なお、図6(b)の上側の図に示すように、メンテナンス位置5Bに保湿液吐出ヘッド30が配置され、かつ、ワイパーユニット26が押し込み位置26Cから外れた位置に配置されている状態で、キャップ12がキャッピング位置12Aに到達するまでユニットフレーム15が上昇すると、図6(b)の下側の図に示すように、ユニットフレーム15と共に上昇するワイパーユニット26の突部70が押し込みレバー41に当接しないので、押し込みレバー41は押し込まれない。従って、バルブユニット40が閉状態に維持されたままで、液体ノズル面31aがキャップ12によって密封される。本例では、ワイパーユニット26を押し込み位置26Cから外れた位置に配置する際に、ワイパーユニット26を第2係合位置26Bに移動させている。
【0052】
(インクジェットヘッドのメンテナンス動作および保湿液供給動作)
図7はインクジェットヘッド5のメンテナンス動作およびキャップ12への保湿液供給動作のフローチャートである。まず、インクジェットプリンター1が待機状態にあるときには、インクジェットヘッド5はメンテナンス位置5Bに配置されている。保湿液吐出ヘッド30はメンテナンス待機位置に配置されている。キャップ12はキャッピング位置12Aに配置されており、インクジェットヘッド5のインクノズル面7を密封している(ステップST1)。キャップ12によるインクノズル面7の密封によって、インクノズルからの水分の蒸発は抑制されている。
【0053】
また、インクジェットプリンター1が待機状態にあるときには、インクジェットヘッド5のメンテナンス処理動作が行われる。すなわち、所定のタイミングで、インクジェットヘッド5からインクをキャップ12に向かって吐出するフラッシング動作が行われる。また、インクノズルに目詰まりが発生していることが検出された場合などには、吸引ポンプ14によってインクノズル面7とキャップ12とによって形成された密封空間に負圧を発生させて、インクジェットヘッド5からキャップ12にインクを強制的に吐出させるインク吸引動作が行なわれる。さらに、所定のタイミングで、インクノズル面7がワイパー機構13によって払拭される(ステップST2)。
【0054】
ここで、インクジェットプリンター1が外部機器から印刷データの供給を受けると、昇降機構18は、キャップ12をキャッピング位置12Aから下降させ、インクジェットヘッド5と干渉しないキャッピング待機位置12Bに移動させる。キャップ12がキャッピング待機位置12Bに移動すると、インクジェットヘッド5は、印刷可能位置5Aに配置される(ステップST3)。インクジェットヘッド5は印刷可能位置5Aにおいて、印刷位置Pを経由して搬送される記録紙4に印刷を施す。
【0055】
インクジェットヘッド5が印刷可能位置5Aに移動すると、保湿液吐出ヘッド移動機構33は保湿液吐出ヘッド30をメンテナンス位置5Bに移動させる(ステップST4)。
【0056】
ここで、インクジェットプリンター1は、キャップ12がインクジェットヘッド5のインクノズル面7および液体吐出ヘッドの液体ノズル面31aのいずれも密封していない開放状態となっている累積開放時間を常に計数しており、この累積開放時間が予め定めた設定時間を超えているか否かが判定される(ステップST5)。
【0057】
ステップST5において、累積開放時間が設定時間を超えている場合には、蒸発によってキャップ内の水分量が少ない状態となっているものと判断して、ワイパーユニット移動機構27はワイパーユニット26を押し込み位置26Cに移動させる(ステップST6)。その後、昇降機構18はキャップ12をキャッピング待機位置12Bから上昇させて、キャッピング位置12Aに配置する。この結果、キャップ12の上昇に伴ってワイパーユニット26の突部70が押し込みレバー41の操作部41aに当接し、押し込みレバー41を閉位置41Aから開位置41Bへ向かう押し込み方向D3に押し込むので、液体ノズル面31aがキャップ12によって密封され、かつ、バルブユニット40が開状態となる(ステップST7)。
【0058】
液体ノズル面31aがキャップ12によって密封され、かつ、バルブユニット40が開状態となると、吸引ポンプ14が動作する。これにより、液体ノズル31からキャップ12内へ保湿液が吐出される。すなわち、キャップ12内への保湿液の供給が行なわれ、キャップ12内の水分に対する保湿成分量のバランスが調整される(ステップST8)。
【0059】
ステップST5において、累積開放時間が設定時間を超えていない場合には、ワイパーユニット移動機構27はワイパーユニット26を押し込み位置26Cから外れた第2係合位置26Bに移動させる(ステップST9)。しかる後に、昇降機構18はキャップ12をキャッピング待機位置12Bから上昇させてキャッピング位置12Aに配置し、キャップ12によって液体ノズル面31aを密封する(ステップST10)。ここで、ステップST10においては、キャップ12が上昇する際に、ワイパーユニット26の突部70が押し込みレバー41に当接しないので、液体ノズル面31aがキャップ12によって密封されたときに、バルブユニット40は閉状態に維持される。キャップ12によって液体ノズル面31aが密封されると、キャップ12からの水分の蒸発が抑制される。
【0060】
その後、印刷データの印刷が終了すると、インクジェットプリンター1は待機状態に戻る。すなわち、昇降機構18はキャップ12をキャッピング待機位置12Bに移動させる。また、保湿液吐出ヘッド移動機構33は、保湿液吐出ヘッド30をメンテナンス待機位置30Aに移動させる。その後、インクジェットヘッド5がメンテナンス位置5Bに戻ると、昇降機構18はキャップ12をキャピング位置に移動させて、インクジェットヘッド5のインクノズル面7を密封する(ステップST11)。
【0061】
(作用効果)
本例によれば、保湿液供給路35に配置されているバルブユニット40は、バルブ開閉機構42によって保湿液吐出ヘッド30の液体ノズル面31aがキャップ12によって密封されたときだけ開かれ、液体ノズル面31aがキャップ12で被われていない状態では閉じられた状態が維持される。従って、保湿液吐出ヘッド30からの保湿液の漏れや、保湿液供給路35内での保湿液の逆流を防止あるいは低減できる。
【0062】
また、本例によれば、キャップ12と共に移動するワイパーユニット26によって、バルブユニット40を開閉するための押し込みレバー41を操作しているので、保湿液吐出ヘッド30を密封するためのキャップ12の移動動作に伴ってバルブユニット40を開状態とする開動作を行うことができ、キャップ12が保湿液吐出ヘッド30から離れる移動動作に伴ってバルブユニット40を閉状態とする閉動作を行うことができる。
【0063】
さらに、本例によれば、ワイパーユニット26を移動させるためのワイパーユニット移動機構27を利用して保湿液吐出ヘッド移動機構33を構成しているので、保湿液吐出ヘッド移動機構33を簡易に構成することができ、インクジェットプリンター1の製造コストを抑えることができる。
【0064】
また、本例では、昇降機構18によって昇降するユニットフレーム15上で移動可能なワイパーユニット26を、押し込みレバー41を押し込むための押し込み部材としているので、キャップ12がメンテナンス位置5Bに配置された保湿液吐出ヘッド30の液体ノズル面31aを密封する際に、ワイパーユニット26の位置によって、バルブユニット40の開閉を行うか否かを制御できる。
【0065】
さらに、本例では、押し込みレバー41に、押し込みレバー41が開位置41Bに位置決めされた後に移動したワイパーユニット26の移動量の誤差分を吸収する移動量誤差吸収機構63が構成されているので、キャップ12と共に移動するワイパーユニット26の移動量を、押し込みレバー41の閉位置41Aから開位置41Bに到達するまでの押し込み量に対応する量に正確に規定することが難しい場合であっても、押し込みレバー41を開位置41Bに正確に到達させて、バルブユニット40を開状態とすることができる。
【0066】
(バルブ開閉機構の変形例)
図8を参照しては移動量誤差吸収機構をワイパーユニット26の側に構成した変形例のバルブ開閉機構を説明する。図8は変形例のバルブ開閉機構の説明図である。図8(a)は保湿液吐出ヘッド30を装置後方から見た部分背面図である。図8(b)、図8(c)は図8(a)のC−C線の断面図であり、図8(b)は押し込みレバー41が閉位置41Aにある状態を示し、図8(c)は押し込みレバー41が開位置41Bにある状態を示す。なお、変形例のバルブ開閉機構42Aは、上記のバルブ開閉機構42と対応する構成を備えているので、対応する部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0067】
本例では、ワイパーユニット26は、保湿液吐出ヘッド30に向かって突出している突部70と、押し込み方向D3にスライド可能な状態で突部70に支持されているスライド部材71と、突部70とスライド部材71の間に配置されてスライド部材71を支持しており、第1バネ部材62の第1付勢力F1よりも大きな力が押し込み方向D3に付与されたときに押し込み方向D3に圧縮される第2バネ部材72を備えている。より具体的には、突部70の上端部分は円柱形状の円柱部70aとなっており、スライド部材71の下端面は円形凹部71aが形成されており、円形凹部71aに円柱部70aが挿入されることによって、スライド部材71は突部70にスライド可能に支持されている。第2バネ部材72は、突部70において円柱部70aが突出している円環状上端面70bと、スライド部材71の係止部71bの間に配置されている。
【0068】
本例において、メンテナンス位置5Bに保湿液吐出ヘッド30が配置され、かつ、ワイパーユニット26が押し込み位置26Cに配置された状態で、キャップ12がキャッピング位置12Aに到達するまでユニットフレーム15が上昇すると、ユニットフレーム15と共に上昇するワイパーユニット26のスライド部材71が押し込みレバー41に下方から当接して、押し込みレバー41を、上方に向かう押し込み方向D3に押し込み、閉位置41Aから開位置41Bに移動させる。これにより、押し込みレバー41は開位置41Bに到達し、第2位置決め部材61に当接して開位置41Bに位置決めされる。
【0069】
ここで、押し込みレバー41が開位置41Bに位置決めされた後において、更に、ワイパーユニット26が押し込み方向D3に移動すると、スライド部材71が停止した状態で、第2バネ部材72が圧縮され、突部70がワイパーユニット26の移動量の誤差分だけ押し込み方向D3に移動して、押し込みレバー41の位置決め後に移動したワイパーユニット26の移動量の誤差分を吸収する。従って、押し込みレバー41を開位置41Bに正確に到達させて、バルブユニット40を開状態とすることができる。
【0070】
(その他の実施の形態)
上記の例では、押し込みレバー41を押し込むための押し込み部材は、ワイパーユニット26となっているが、キャップ12と共に移動する部材であれば、ワイパーユニット26に限らず、いずれの部材を押し込み部材としてもよい。また、押し込み部材をキャップ12と一体に構成してもよい。なお、このように構成した場合には、キャップ12がキャッピング待機位置12Bからキャッピング位置12Aに向かって移動してメンテナンス位置5Bに配置された保湿液吐出ヘッド30の液体ノズル面31aを密封する際に、押し込み部材が常に押し込みレバー41を押し込んで、バルブユニット40を開状態とするものとなる。
【0071】
また、上記の例では、ワイパー機構13によって、メンテナンス位置5Bにある保湿液吐出ヘッド30の液体ノズル面31aを払拭することが可能となっているので、保湿液吐出ヘッド30を介してキャップ12内に保湿液を供給した後に、ワイパー機構13によって、液体ノズル面31aを払拭してもよい。すなわち、ユニットフレーム15の昇降によって、ワイパー機構13を、ワイパー25の上端がインクノズル面7に摺接可能なワイピング位置に配置し、ワイパーユニット移動機構27によってワイパーユニット26を装置前後方向に移動させて、液体ノズル面31aをワイパー25で払拭する。このようにすれば、液体ノズル面31aから保湿液が垂れることを防止できる。
【符号の説明】
【0072】
1・・インクジェットプリンター、2・・ロール紙装填部、3・・ロール紙、4・・記録紙、5・・インクジェットヘッド、5A・・印刷可能位置、5B・・メンテナンス位置、6・・記録紙搬送路、7・・インクノズル面、8・・キャリッジ、9・・インクタンク、11・・ヘッドメンテナンスユニット、12・・キャップ、12A・・キャッピング位置、12B・・キャッピング待機位置、13・・ワイパー機構、14・・吸引ポンプ(吸引装置)、15・・ユニットフレーム、16・・ベースフレーム、17・・駆動モーター、18・・昇降機構(キャップ移動機構)、21・・バネ部材、25・・ワイパー、26・・ワイパーユニット(押し込み部材)、26A・・第1係合位置、26B・・第2係合位置、26C・・押し込み位置、27・・ワイパーユニット移動機構、30・・保湿液吐出ヘッド、30A・・メンテナンス待機位置、31・・液体ノズル、31a・・液体ノズル面、32・・ガイドレール、33・・保湿液吐出ヘッド移動機構、34・・保湿液タンク、35・・保湿液供給路、36・・基板、37・・平面流路、38・・可撓性チューブ、39・・ヘッド内流路、40・・バルブユニット、40A・・閉位置、40B・・開位置、41・・押し込みレバー、41a・・操作部、41A・・閉位置、41B・・開位置、42・42A・・バルブ開閉機構、43・・保湿液供給機構、45・・連結機構、46・・ワイパーユニットガイド軸、47・・バネ部材、48・・突出部、49・・凹部、50・・開口部、51・・弁座、52・・弁体、53・・バネ部材(第3バネ部材)、54・・磁気吸引機構、55・・鉄芯(磁性体)、56・・弾性体、57・・マグネット、61・・第2位置決め部材(位置決め部)、62・・第1バネ部材、63・・移動量誤差吸収機構、64・・第1スライド部材、64a・・円柱部、65・・第2スライド部材、65a・・円形凹部、65b・・係止部、66・・第2バネ部材、70・・突部、70a・・円柱部、71・・スライド部材、71a・・円形凹部、71b・・係止部、72・・第2バネ部材、D1・・搬送方向、D2・・弁体の移動方向、D3・・押し込み方向、F1・・第1バネ部材の付勢力、P・・印刷位置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
保湿液を吐出するための液体ノズルが形成された液体ノズル面を備える保湿液吐出ヘッドと、
予め定めたメンテナンス位置に配置されている保湿液吐出ヘッドの前記液体ノズル面を密封するキャッピング位置と、当該キャッピング位置から離れたキャッピング待機位置の間を移動可能なキャップと、
保湿液タンクと前記液体ノズルの間を接続している保湿液供給路の途中に配置されているバルブと、
前記キャップによって前記液体ノズル面が被われていないときに前記バルブを閉状態に維持し、前記液体ノズル面が前記キャップによって密封されたときに前記バルブを開状態とすることが可能なバルブ開閉機構と、
前記液体ノズル面が前記キャップによって密封されたときに、前記液体ノズル面および当該キャップによって形成された密封空間に負圧を発生させて前記液体ノズルから前記保湿液を吐出させる吸引装置とを有し、
前記バルブ開閉機構は、
前記バルブを閉状態とするための閉位置および当該バルブを開状態とするための開位置の間をスライド可能な状態で前記保湿液吐出ヘッドに支持されている押し込みレバーと、
前記キャップが前記キャッピング待機位置から前記キャッピング位置に向かって移動して前記メンテナンス位置に配置された前記保湿液吐出ヘッドに接近する際に、前記キャップと共に前記保湿液吐出ヘッドに接近して前記押し込みレバーを前記閉位置から前記開位置へ向かう押し込み方向に押し込む押し込み部材と、
前記押し込み方向に押し込まれる前記押し込みレバーを前記開位置に位置決めするための位置決め部材と、
前記押し込みレバーが前記開位置に位置決めされた後において、更に、前記押し込み方向に移動する前記押し込み部材の移動量の誤差分を吸収する移動量誤差吸収機構とを備えていることを特徴とするインクジェットプリンター。
【請求項2】
請求項1において
前記バルブ開閉機構は、前記押し込みレバーを前記閉位置に支持していると共に、前記押し込みレバーが前記閉位置から前記開位置に押し込まれると当該押し込みレバーを前記閉位置の側に向かって付勢する第1バネ部材を備えており、
前記キャップが前記キャッピング位置から前記キャッピング待機位置に向かって移動して前記押し込み部材が前記保湿液吐出ヘッドから離れる際に、前記第1バネ部材の第1付勢力によって前記押し込みレバーが前記開位置から前記閉位置へ押し戻されることを特徴とするインクジェットプリンター。
【請求項3】
請求項2において、
前記移動量誤差吸収機構は、前記押し込みレバーに構成されており、
前記押し込みレバーは、
前記押し込み方向にスライド可能な状態で前記保湿液吐出ヘッドに支持されていると共に、前記第1バネ部材によって支持されている第1スライド部材と、
前記押し込み方向にスライド可能な状態で前記第1スライド部材の前記押し込み部材側の端部分に取り付けられている第2スライド部材と、
前記第1スライド部材と前記第2スライド部材との間に配置されて前記第2スライド部材を支持しており、前記第1付勢力よりも大きな力が前記押し込み方向に付与されたときに圧縮される第2バネ部材とを備えており、
前記押し込みレバーが前記開位置に位置決めされた後において、更に、前記押し込み部材が前記押し込み方向に移動すると、前記第2バネ部材が圧縮されて前記第2スライド部材が前記押し込み部材の移動量の誤差分だけ前記押し込み方向に移動することを特徴とするインクジェットプリンター。
【請求項4】
請求項2において
前記移動量誤差吸収機構は、前記押し込み部材に構成されており、
前記押し込み部材は、
前記保湿液吐出ヘッドに向かって突出している突出部と、
前記押し込み方向にスライド可能な状態で前記突出部に支持されているスライド部材と、
前記突出部と前記スライド部材との間に配置されて前記スライド部材を支持しており、前記第1付勢力よりも大きな力が前記押し込み方向に付与されたとき圧縮される第2バネ部材とを備えており、
前記押し込みレバーが前記開位置に位置決めされた後において、更に、前記押し込み部材が前記押し込み方向に移動すると、前記スライド部材が停止した状態で前記第2バネ部材が圧縮され、前記突出部が前記押し込み部材の移動量の誤差分だけ前記押し込み方向に移動することを特徴とするインクジェットプリンター。
【請求項5】
請求項2ないし4のうちのいずれかの項において、
前記バルブは、
前記保湿液供給路を開閉するための開口部が設けられた弁座と、
前記弁座に対して接近する方向および離れる方向に移動して前記開口部を開閉する弁体と、
前記弁体を前記弁座に付勢している第3バネ部材と、
前記弁体を前記第3バネ部材の付勢力に抗して前記弁座から離れる方向に移動させる磁気吸引機構とを有し、
前記磁気吸引機構は、
前記弁体に搭載された磁性体およびマグネットのいずれか一方と、前記押し込みレバーに搭載された前記磁性体および前記マグネットのいずれか他方とを備えており、
前記押し込みレバーが前記開位置に押し込まれると、前記マグネットと前記磁性体とが接近して当該マグネットと当該磁性体との間に働く磁気吸引力によって前記弁体が前記弁座から離れて前記開口部を開放し、前記押し込みレバーが前記開位置から前記閉位置の側に移動すると、前記バネ部材の付勢力によって前記弁体が前記弁座に当接して前記開口部を封鎖することを特徴とするインクジェットプリンター。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちのいずれかの項において、
インクノズル面を備えるインクジェットヘッドを有し、
前記メンテナンス位置には前記インクジェットヘッドと前記保湿液吐出ヘッドが選択的に配置され、前記インクジェットヘッドが前記メンテナンス位置に配置されたときに、前記キャップが前記キャッピング位置に移動すると、前記キャップが前記インクノズル面を密封することを特徴とするインクジェットプリンター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−206292(P2012−206292A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71868(P2011−71868)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】