説明

インクジェットプリンター

【課題】適正なプラテンギャップのばらつきを低減させることができるインクジェットプリンターを提供する。
【解決手段】搬送される記録媒体Pに、インクを吐出して情報を印刷するヘッド11と、前記ヘッド11に対峙するとともに、印刷位置Aを規定するプラテン4と、前記ヘッド11を搭載するとともに、キャリッジ移動機構14によって前記印刷位置Aと前記印刷位置Aから離れた待機位置Bとの間を移動可能に設けられたキャリッジ10と、前記印刷位置Aにおいて、前記ヘッド11と前記プラテン4との間隙を予め設定された寸法に保つ、前記プラテン4および/または前記キャリッジ10に設けられた間隙形成部50とを備えることを特徴とするインクジェットプリンター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンターに関する。
【背景技術】
【0002】
プラテンとインクジェットヘッドを対峙させ、プラテン上を搬送される記録媒体に対してインクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンターが知られている。この種のインクジェットプリンターは、良好な印刷品質を確保するために記録媒体に着弾するインク滴の位置精度向上や着弾状態の安定化を図る必要がある。その手段の1つとして、インクジェットヘッドのノズル面とプラテンとの距離(プラテンギャップ)、すなわちインクジェットヘッドのノズル面と記録媒体表面との距離を予め設定した基準寸法に保つことが要求される。
【0003】
そのため、記録媒体の厚さに応じてインクジェットヘッドを段階的に上下動させてインクジェットヘッドのノズル面とプラテンとの距離を調整するプラテンギャップ調整装置を設けたインクジェットプリンターが提案されている。このインクジェットプリンターは、インクジェットヘッドが搭載されたキャリッジをガイド軸に沿って記録媒体を横断する方向に移動させて印刷を行うものである。そして、インクジェットプリンターは、キャリッジを支持するガイド軸の両端を本体フレームの長溝に通して記録媒体に対して遠近方向に移動可能にするとともに、プラテンギャップ調整装置によってガイド軸の位置を調整できるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−188700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のプラテンギャップ調整装置を備えたインクジェットプリンターは、所謂シリアル型と称されるプリンターであって、インクジェットヘッドを記録媒体の搬送方向と直交する方向に移動させながら印刷を行う。近年、印刷の高速化等を目的に、インクジェットヘッドとして記録媒体の印刷領域以上の幅寸法を備えるものを用意して、インクジェットヘッドを印刷位置に停止させたままの状態で記録媒体に印刷を施すライン型と称されるプリンターが提案されている。
【0006】
ライン型のインクジェットプリンターに適用されるインクジェットヘッドは、広範囲の印刷領域を確保するため、多くのノズルが必要となり重量が重くなる。また、フルカラー印刷を実行するためにはさらに多くのノズルを広範囲に備える必要がありノズル面の面積が大きくなる。そのため、インクジェットヘッドのノズル面全体とプラテン面との距離を予め設定した基準寸法に保つことが困難になり、良好な印刷品質を確保することが難しいとの課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
(適用例1)搬送される記録媒体に、インクを吐出して情報を印刷するヘッドと、前記ヘッドに対峙するとともに、印刷位置を規定するプラテンと、前記ヘッドを搭載するとともに、キャリッジ移動機構によって前記印刷位置と前記印刷位置から離れた待機位置との間を移動可能に設けられたキャリッジと、前記印刷位置において、前記ヘッドと前記プラテンとの間隙を予め設定された寸法に保つ、前記プラテンおよび/または前記キャリッジに設けられた間隙形成部とを、備えることを特徴とするインクジェットプリンター。
【0009】
この構成によれば、インクジェットプリンターは、印刷位置において、プラテンとヘッドを搭載するキャリッジとが間隙形成部によって互いに保持され、ヘッドとプラテンとの間隙、すなわちプラテンギャップを予め設定された寸法に保つことができる。そのため、プラテンギャップのばらつきに起因する不具合を低減させることができ、良好な印刷品質を確保することできる。
【0010】
(適用例2)前記間隙形成部は、前記プラテンおよび/または前記キャリッジの前記記録媒体の搬送領域以外の領域に設けられた、対峙方向に突出する3箇所以上の突起であることを特徴とする上記のインクジェットプリンター。
【0011】
この構成によれば、インクジェットプリンターにおいて、プラテンとヘッドを搭載するキャリッジとは、少なくとも3箇所以上の突起によって所定の間隙で保持されることができる。そのため、ヘッドとプラテンとの間隙、すなわちプラテンギャップを予め設定された寸法に保つことができる。
【0012】
(適用例3)前記プラテンは、前記記録媒体が搬送される搬送領域において前記記録媒体を吸引する吸引機構を有することを特徴とする上記のインクジェットプリンター。
【0013】
(適用例4)前記間隙形成部は、前記プラテンおよび/または前記キャリッジの前記搬送領域以外の領域に前記記録媒体の搬送方向に沿って設けられた、対峙方向に突出する2本以上のリブであることを特徴とする上記のインクジェットプリンター。
【0014】
これらの構成によれば、インクジェットプリンターは、記録媒体をプラテンの表面に吸引することができる。また、ヘッドとプラテンとの間隙、すなわちプラテンギャップは、2本以上のリブによって所定の寸法に保つことができる。そのため、ヘッドと記録媒体との間隙をより厳密に確保することができる。
【0015】
また、2本のリブは、記録媒体の搬送領域以外の領域に記録媒体の搬送方向に沿って設けられる。すなわち、2本のリブは、記録媒体の印刷位置において、搬送方向の両側を封鎖する壁として機能する。そのため、ヘッドからのインクの吐出時に発生するインクミストの拡散を防止することができる。その結果、印刷位置周辺の汚れを低減させることができる。また、プラテンの吸引機構による空気の流れを適正に保つことができ、記録媒体のプラテン表面への吸引効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態のプリンターの全体構成を示す縦断面図。
【図2】プリンターの印刷位置および待機位置を説明する図。
【図3】プラテンおよび第1実施形態に係る間隙形成部を示す斜視図。
【図4】キャリッジ移動機構によるキャリッジの移動過程を示す説明図。
【図5】キャリッジを吊り下げるためのモノレール機構の説明図。
【図6】キャリッジ移動機構の側面図。
【図7】キャリッジ移動機構の印刷位置側の端部の斜視図。
【図8】キャリッジ移動機構の斜め上から見た斜視図。
【図9】第2実施形態に係る間隙形成部を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、説明を簡便にするため、各部の詳細構造や尺度を実際とは異ならせしめている。
【0018】
(プリンターの構成について)
本発明の実施形態に係るインクジェットプリンターについて、図1および図2を参照して説明する。図1は、本実施形態のプリンターの全体構成を示す縦断面図である。図2は、プリンターの印刷位置および待機位置を説明する図であり、図2(a)は平面構成を示す説明図、図2(b)はプリンター前面側から見た概略断面構成を示す説明図である。インクジェットプリンター1(以下、プリンター1という)は、複数種類のカラーインクを用いて長尺状の記録紙P(記録媒体)に情報を印刷するものである。
【0019】
図1に示すように、プリンター1の一方(以下、後方と定義する)の側にはロール紙装填部2が設けられており、ここに装填されたロール紙3から引き出された記録紙Pは、ロール紙装填部2の他方(以下、前方と定義する)に配置されたプラテン4の表面4aを経由する記録紙搬送経路5に沿って、プリンター1の前方に向かって搬送される。ロール紙装填部2の上方には記録紙Pのスキューを防止するための用紙ガイド6が配置され、その後方にロール紙3から記録紙Pを引き出すための繰り出しローラー7が配置されている。記録紙Pは、ロール紙3から繰り出しローラー7に向かって斜め後方に引き出された後、繰り出しローラー7に掛け回される。
【0020】
そして、繰り出しローラー7から前方に引き出された記録紙Pは、用紙ガイド6の後方に配置された図示しない負荷ローラーを経由した後、用紙ガイド6およびその前方に配置された搬送ローラー対8を経由して、プラテン4の表面4aを通過するようにセットされる。なお、このプラテン4は吸引機構45を有する。プラテン4の詳細については、後述する。
【0021】
搬送ローラー対8は、記録紙Pに下側から当接する駆動ローラー8aと、駆動ローラー8aの側に上方から付勢された従動ローラー8bとを備えている。搬送ローラー対8の下側には駆動ローラー8aを正逆方向に回転させるための紙送りモーター9が配置されている。繰り出しローラー7、搬送ローラー対8、紙送りモーター9等によって、記録紙Pを記録紙搬送経路5に沿って正逆方向に搬送するための搬送手段が構成されている。
【0022】
プラテン4の上方にはプラテン4と対峙する位置に、キャリッジ10に搭載されたインクジェットヘッド11が配置されている。一方、プラテン4の下方にはインクカートリッジ装着部12が設けられている。インクカートリッジ装着部12には、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの4色のインクのそれぞれを貯留するインクカートリッジが装着される。インクカートリッジ装着部12にインクカートリッジを装着すると、インク供給管(図示省略)を介して、インク供給用のポンプ機構(図示省略)とインクカートリッジ内のインクタンクとが接続された状態となり、インクジェットヘッド11へのインクの供給が可能となる。
【0023】
図2(a)に示すように、インクジェットヘッド11は、第1ヘッド11Aおよび第2ヘッド11Bを備える複合ヘッドであり、第1ヘッド11Aにはブラックおよびシアンのインクを吐出するインクノズル列が形成され、第2ヘッド11Bにはイエローおよびマゼンタのインクを吐出するインクノズル列が形成されている。第1ヘッド11Aおよび第2ヘッド11Bは記録紙Pよりも幅広に形成されており、各ヘッドにおけるインクノズル列は、記録紙Pの印刷領域全体をカバーできる幅の領域に配列されている。このようなインクジェットヘッド11は、ライン型インクジェットと称する。
【0024】
図2(b)に示すように、第1ヘッド11Aおよび第2ヘッド11Bはノズル面11aを下向きにしてキャリッジ10に搭載されており、キャリッジ10を水平にしたとき、ノズル面11aが水平になるように構成されている。キャリッジ10は、各ヘッドのノズル面11aとプラテン4の表面4aとの間に予め設定した基準寸法Gの隙間を形成可能な高さにインクジェットヘッド11を保持している。なお、この各ヘッドのノズル面11aとプラテン4の表面4aとの間の間隙をプラテンギャップGと称する。プラテンギャップGは、後述する間隙形成部50によって形成される。
【0025】
プラテン4の側方にはメンテナンスユニット13が配置されている。キャリッジ10は、プラテン4の上方の印刷位置Aから、メンテナンスユニット13の上方のホームポジションB(退避位置/図2(a),(b)において1点鎖線で示す位置)までの範囲でインクジェットヘッド11を往復移動させる。インクジェットヘッド11は、印刷位置Aでは、長手方向を記録紙Pの搬送方向Xと直交する方向に向けた横向きの姿勢になっており、第1ヘッド11Aおよび第2ヘッド11Bに設けられた各色のインクノズル列が記録紙Pの印刷領域をカバーしている。一方、ホームポジションBでは、インクジェットヘッド11が印刷位置Aでの姿勢から90度回転した姿勢になっており、長手方向を搬送方向Xと一致させた縦向きの姿勢になっている。
【0026】
プリンター1は、インクジェットヘッド11を印刷位置Aに位置決めして停止させ、この状態で記録紙Pを所定ピッチずつ搬送する毎にインクの吐出動作を行うことにより、記録紙Pへの印刷を行う。また、プリンター1は、印刷が終了すると、インクジェットヘッド11をプラテン4の上から外れたホームポジションBに退避させ、ホームポジションBで待機させる。待機中には、メンテナンスユニット13により、インクジェットヘッド11のインクノズルの目詰まりを防止あるいは解消するためのメンテナンス動作を行う。
【0027】
すなわち、メンテナンスユニット13の上端に設けられたヘッドキャップを上昇させてノズル面11aをキャッピングし、必要に応じてヘッドキャップ内へのインクの吐出動作やヘッドキャップ側からのインクの吸引動作を行う。あるいは、メンテナンスユニット13にワイピング機構を設けておき、ノズル面11aをワイピングする。印刷を再開するときには、ヘッドキャップやワイピング機構を下側に退避させてから、インクジェットヘッド11を印刷位置Aに移動させる。
【0028】
(プラテンについて)
ここで、プラテンについて、図3を参照して説明する。図3は、プラテンおよび第1実施形態に係る間隙形成部を示す斜視図である。
【0029】
図1および図2(b)に示すように、プラテン4は、上述のインクジェットヘッド11のノズル面11aに対して一定の間隙(プラテンギャップG)を有し、対向配置されている。このプラテン4によってインクジェットヘッド11による印刷位置Aが規定されている。図3に示すように、プラテン4は、吸引機構45が接続されている吸引プラテンであり、この上を紙送りされる記録紙Pを、当該プラテン4の表面4aに吸引して浮き上がりや位置ずれを防止することができる。
【0030】
プラテン4は、記録紙Pの幅方向に長い扁平な直方体形状を呈しており、プラテン4の表面4aには、記録紙Pの搬送方向に延びる複数本の縦リブ42が所定の間隔で形成されている。これらの縦リブ42の間に形成されている細長い長方形の浅い凹部の底には1個または複数個の吸引孔43が上下方向に貫通した状態に形成されている。プラテン4の裏面側は封鎖空間44となっており、ここには、吸引機構45の吸引ダクト47の前端が接続されている。吸引ダクト47の後端はプリンター1の後端部に配置されている吸引ファン48の吸引口に接続されている。間隙形成部50については後述する。
【0031】
(キャリッジ移動機構について)
次いで、キャリッジ移動機構について、図2(a)および図4〜図8を参照して説明する。図4は、キャリッジ移動機構によるキャリッジの移動過程を示す説明図である。図5は、キャリッジ移動機構を構成するモノレール機構の説明図であり、図5(a)は平面構成を示す説明図、図5(b)は部分斜視図である。図6は、キャリッジ移動機構の側面図であり、詳しくは、図2(a)のY1方向から見た側面図である。なお、図2(a)のZ−Z線よりも右側の部分は図示を省略している。図7は、キャリッジ移動機構の印刷位置側の端部の斜視図であり、詳しくは、図2(a)のY2方向から見た斜視図である。図8は、キャリッジ移動機構14の斜め上から見た斜視図である。
【0032】
プリンター1は、インクジェットヘッド11およびこれを搭載するキャリッジ10を、印刷位置AからホームポジションBまでの範囲で往復移動させるためのキャリッジ移動機構14を備えている。図4に示すように、キャリッジ移動機構14は、キャリッジ10の幅方向の一端側の角部10aと他端側の角部10bの2箇所においてキャリッジ10を支持しており、この2箇所を異なる移動経路に沿って案内するように構成されている。角部10aは、印刷位置AにおいてホームポジションBの側に位置しており、角部10bは、ホームポジションBとは逆の側に位置している。図4に示すように、角部10aの移動経路T1は、搬送方向Xと直交する方向から搬送方向Xと平行な方向に方向転換しており、方向転換部分が円弧状移動経路になっている。一方、角部10bの移動経路T2は、搬送方向Xと直交する方向に延びる直線状移動経路である。
【0033】
図4(a)に示すように、角部10aの移動経路T1は、印刷位置Aの側から順に、搬送方向Xと直交する短い第1直線経路T1aと、円弧状経路T1bと、搬送方向Xと平行な第2直線経路T1cを繋げた形状をしている。キャリッジ10が印刷位置Aのとき、角部10aは第1直線経路T1a上にあり、角部10bは移動経路T2の始端部分(印刷位置A側の端部)に位置している。円弧状経路T1bは、ホームポジションBの側に向かうに従って移動経路T2から遠ざかる形状に設定されている。
【0034】
キャリッジ10が印刷位置AからホームポジションBへ移動するときは、まず、図4(b)に示すように、角部10aが第1直線経路T1aに沿って搬送方向Xと直交する方向に移動する。このとき、角部10bも同様に搬送方向Xと直交する方向に移動するため、キャリッジ10は、印刷位置Aと同じ姿勢のままで幅方向に移動する。次に、図4(c)に示すように、角部10aが円弧状経路T1bに沿って移動する。このとき、角部10bは移動経路T2に沿って直線状に進む一方で、角部10aは移動経路T2から離れてゆく。このため、キャリッジ10は、角部10bを中心として時計回りに回転しながら移動することになる。
【0035】
キャリッジ10は、このような回転による姿勢変化が可能な状態で支持されている。続いて、角部10aが第2直線経路T1cに沿って移動し、角部10bは移動経路T2の終端部分(ホームポジションB側の端部)に沿って移動するときも、角部10aは移動経路T2から離れてゆくため、キャリッジ10は時計回りに回転しながら移動する。図4(d)に示すように、キャリッジ10がホームポジションBに到達したとき、印刷位置Aのときの姿勢から90度回転した姿勢になっている。ホームポジションBから印刷位置Aに戻るときは、この逆の過程で移動する。
【0036】
次いで、キャリッジ移動機構14の各部の構成について説明する。
図2(a)に示すように、キャリッジ移動機構14は、記録紙搬送経路5による搬送方向(図2(a)のX方向)と直交する方向に延びるキャリッジフレーム15と、キャリッジフレーム15のホームポジションB側の端部に支持されているキャリッジモーター16を備えている。キャリッジフレーム15はプリンター1の装置本体フレームに支持されている。キャリッジフレーム15のホームポジションB側の端部はホームポジションBの左端まで延びており、この部分に、ホームポジションBの左端位置に沿って搬送方向上流側(図2(a)の上方)に延びる吊り下げフレーム17が取り付けられている。キャリッジフレーム15は、上下方向に延びている垂直板部15a(図6参照)と、垂直板部15aの上端から搬送方向上流側に向かって水平に延びている水平板部15bを備えており、水平板部15bの下側に吊り下げフレーム17の基端部が固定されている。
【0037】
キャリッジ移動機構14は、ホームポジションB側の角部10aを上から吊って円弧状経路T1bを含む移動経路T1に沿って案内するモノレール機構18(図5参照)と、ホームポジションBとは逆の側の角部10bを直線状の移動経路T2に沿って案内するスライド案内機構19(図6参照)とを備えている。
【0038】
(モノレール機構について)
図5に示すように、モノレール機構18は、吊り下げフレーム17におけるプラテン4側の縁部に形成されたガイドレール20と、このガイドレール20からキャリッジ10の角部10aを吊り下げるために角部10aに設けられた吊り下げ部21を備えている。ガイドレール20は、図2(a)に示すように、第1直線経路T1aを規定している短い第1直線レール部20Aと、円弧状経路T1bを規定しており、第1直線レール部20Aの左端から搬送方向上流側に向かって円弧状に延びている円弧状レール部20Bと、第2直線経路T1cを規定しており、円弧状レール部20Bの後端から搬送方向Xと平行に延びている第2直線レール部20Cとを備えている。ガイドレール20の各部分は、図5および図6に示すように、下向きに延びる垂直な壁部22aと、壁部22aの下端から壁部22aの両側に水平に延びる水平部22bとを備えており、T字型を上下逆にした断面形状をしている。
【0039】
図5(b)に示すように、吊り下げ部21は、キャリッジ10の角部10aからガイドレール20に向けて上向きに突出する突出部23と、突出部23の先端に設けられた走行部24とを備えている。走行部24は、突出部23に対し、垂直な回転軸線(図示省略)を中心として回転可能となるように取り付けられている。走行部24は、軸線方向を水平にした走行ローラー25およびこれを挟んで配置された一対のガイドローラー26を備えるローラーユニット27を、壁部22aの厚さに対応する隙間を空けて対向配置した構成である。各ガイドローラー26は、軸線方向を垂直にして配置されている。
【0040】
走行部24は、壁部22aをローラーユニット27の隙間に挿入し、水平部22bの上に各走行ローラー25を載せた状態となるようにガイドレール20に装着される。これにより、壁部22aの表裏両面をガイドローラー26によってガイドしながら、水平部22bの上を各走行ローラー25が落下することなく走行可能になる。ガイドレール20に沿って走行部24を走行させると、角部10aは、ガイドレール20に吊り下げられた状態で、第1直線レール部20A、円弧状レール部20B、第2直線レール部20Cによって規定される移動経路T1に沿って移動する。
【0041】
(スライド案内機構について)
図6および図8に示すように、スライド案内機構19は、キャリッジフレーム15の垂直板部15aに沿って、搬送方向Xと直交する方向に、且つ、水平に延びているキャリッジ軸30と、このキャリッジ軸30にスライド可能に支持されているスライダー31と、スライダー31をキャリッジ軸30に沿って往復移動させるための駆動ベルト機構32を備えている。駆動ベルト機構32はキャリッジモーター16の出力回転に基づいて駆動される。
【0042】
図6に示すように、スライダー31には水平に延びる角型断面の溝31aが形成されており、溝31aの内部にキャリッジ軸30が装着されている。スライダー31は、キャリッジ軸30の表面に溝31aの内側面を摺動させながら、キャリッジ軸30に沿ってスライドする。スライダー31における溝31aの背面側には軸保持部31bが形成されている。軸保持部31bは、キャリッジ10の角部10bに取り付けられた垂直な回転軸33を回転可能に保持している。
【0043】
図6および図7に示すように、キャリッジ10の角部10bの上部には筒状部34が形成され、ここに回転軸33が挿通されている。また、角部10bの下端部分には筒状部34と同軸状に配置された円板状部分35が形成されており、円板状部分35の中央の軸孔に回転軸33の下端側の部分が挿通されている。回転軸33は、キャリッジ10を水平な姿勢にしたとき、その回転軸線Lがノズル面11aおよびこれに対峙する記録紙Pの印刷面に対して垂直になるように取り付けられている。
【0044】
キャリッジ10における筒状部34の下側は、スライダー31の軸保持部31bを装着可能な凹み形状となっている。ここに軸保持部31bが挿入され、軸保持部31bの軸孔に回転軸33の中央部分が挿入されている。このような構成により、回転軸33を介して、キャリッジ10がスライダー31に回転自在に保持されると共に、スライダー31を介してキャリッジ10の角部10b側の重量がキャリッジ軸30に支持された状態になっている。キャリッジ軸30に沿ってスライダー31を往復移動させると、これに伴い、キャリッジ10の角部10bおよび回転軸33がキャリッジ軸30に沿って搬送方向Xと直交する方向に往復移動する。
【0045】
回転軸33の上端は筒状部34の上に突出しており、その先端には上部ガイドローラー36が取り付けられている。キャリッジフレーム15の上端部分に設けられた水平板部15bの下側には、下向きに突出する矩形断面の上部ガイド37が取り付けられている。上部ガイド37と、キャリッジフレーム15における垂直板部15aの上端部分との間に上部ガイドローラー36が配置されており、上部ガイド37は、上部ガイドローラー36に対し、図6の右側から当接している。同様に、回転軸33の下端は円板状部分35の下側に突出しており、その先端に下部ガイドローラー38が取り付けられている。キャリッジフレーム15の垂直板部15aの下端部分には、下部ガイドローラー38と同一高さの部分に下部ガイドローラー38の側に突出する下部ガイド39が取り付けられている。下部ガイド39は、下部ガイドローラー38に対し、図6の左側から当接している。
【0046】
キャリッジ10がキャリッジ軸30に沿って往復移動するとき、上部ガイドローラー36が上部ガイド37の側面37aによってガイドされ、且つ、下部ガイドローラー38が下部ガイド39の側面39aによってガイドされながら移動する。ここで、キャリッジ10は、回転軸33の中央部分を支持しているスライダー31を介して片持ち状態で支持されており、キャリッジ10の重心Qは回転軸33からずれている。このため、回転軸33には、回転軸33の上端をキャリッジ10の重心Qの側(図6の右側)に傾ける回転力(図6の時計回りの方向への回転力)が作用している。しかしながら、上部ガイドローラー36に対して重心Qの側(図6の右側)に上部ガイド37が配置され、下部ガイドローラー38に対して重心Qとは逆の側(図6の左側)に下部ガイド39が配置されているため、キャリッジ10の重量に起因する傾き方向への回転軸33の傾きが防止され、キャリッジ10が水平な姿勢で保持されている。
【0047】
上述のように、キャリッジ10は、スライダー31を介してキャリッジ軸30に装着されており、キャリッジ軸30によって上下位置が規定されている。本例のプリンター1では、キャリッジ軸30の両端が、キャリッジフレーム15の左右の端部に設けられた図示しない長孔を通るように装着されており、上下動可能な状態で支持されている。プリンター1は、キャリッジ軸30を上下動させることによってキャリッジ10を上下に移動させることができる。
【0048】
(間隙形成部について)
(第1実施形態)
ここで、第1実施形態に係る間隙形成部について、図2(b)および図3を参照して説明する。図3に示すように、第1実施形態に係る間隙形成部50A(50)は、プラテン4の複数本の縦リブ42および複数個の吸引孔43が形成されている紙搬送領域(印刷位置A)以外の領域に形成される。本実施形態では、間隙形成部50Aは、キャリッジ10方向に高さHで突出する少なくとも3箇所の円柱状の突起部52a,52b,52cから構成されている。突起部52a,52b,52cは、例えば図3に示す記録紙Pの幅方向Yの一方の側に2個の突起部52a,52bが設けられ、他方の側に1個の突起部52cが設けられている。
【0049】
間隙形成部50Aとしての突起部52a,52b,52cの高さHは、図2(b)に示すノズル面11aとプラテン4の表面4aとの間に予め設定した隙間(プラテンギャップG)を確保可能な寸法に形成されている。上述のようにプリンター1は、印刷時にキャリッジ10をキャリッジ移動機構14によってホームポジションBから印刷位置Aに移動する。そして、プリンター1は、キャリッジ軸30とともにキャリッジ10を上下動することができる。
【0050】
そのため、キャリッジ10は、プラテン4に設けられた間隙形成部50Aとしての突起部52a,52b,52cによって支えられる。その結果、キャリッジ10に搭載されるインクジェットヘッド11のノズル面11aとプラテン4の表面4aと間隙を所定のプラテンギャップGとすることができる。従って、プリンター1は、記録紙Pに着弾するインク滴の位置精度向上や着弾状態の安定化を実現することができ、良好な印刷品質を確保することが可能になる。
【0051】
なお、本実施形態では、間隙形成部50Aとしての3個の突起部52a,52b,52cを設けた場合について説明したがこれに限定されない。3個以上であればよい。また、円柱状の突起部52a,52b,52cを例にとり説明したがこれに限定されない。樹脂製の四角形状であってもよいし、板金の絞り加工による突き出しであってもよい。高さHを確保できキャリッジ10を保持できる形状であればよい。
【0052】
また、本実施形態では、間隙形成部50Aとしての突起部52a,52b,52cをプラテン4側に設けた場合について説明したがこれに限定されない。突起部52a,52b,52cは、キャリッジ10側に設けてもよいし、プラテン4およびキャリッジ10に各々分離して設けてもよい。また、嵌合する構造であってもよい。キャリッジ10がプラテン4に保持されたとき、トータル高さHを確保できればよい。
【0053】
(第2実施形態)
ここで、第2実施形態に係る間隙形成部について、図2(b)および図9を参照して説明する。図9に示すように、第2実施形態に係る間隙形成部50B(50)は、プラテン4の複数本の縦リブ42および複数個の吸引孔43が形成されている紙搬送領域(印刷位置A)以外の領域に形成される。本実施形態では、間隙形成部50Bは、キャリッジ10方向に高さHで突出する2本のリブ54a,54bから構成されている。リブ54a,54bは、例えば図9に示す記録紙Pの幅方向Yの一方の側にリブ54aが設けられ、他方の側にリブ54bが設けられている。
【0054】
間隙形成部50Bとしてのリブ54a,54bの高さHは、図2(b)に示すノズル面11aとプラテン4の表面4aとの間に予め設定した隙間(プラテンギャップG)を確保可能な寸法に形成されている。上述のようにプリンター1は、印刷時にキャリッジ10をキャリッジ移動機構14によってホームポジションBから印刷位置Aに移動する。そして、プリンター1は、キャリッジ軸30とともにキャリッジ10を上下動することができる。
【0055】
そのため、キャリッジ10は、プラテン4に設けられた間隙形成部50Bとしてのリブ54a,54bによって支えられる。その結果、キャリッジ10に搭載されるインクジェットヘッド11のノズル面11aとプラテン4の表面4aと間隙を所定のプラテンギャップGとすることができる。従って、プリンター1は、記録紙Pに着弾するインク滴の位置精度向上や着弾状態の安定化を実現することができ、良好な印刷品質を確保することが可能になる。
【0056】
また、2本のリブ54a,54bは、記録紙Pの印刷領域(印刷位置A)以外の領域に記録紙Pの搬送方向に沿って設けられる。すなわち、2本のリブ54a,54bは、印刷位置Aにおいて、搬送方向Xの両側を封鎖する壁として機能する。そのため、インクジェットヘッド11からのインクの吐出時に発生するインクミストの周囲への拡散を防止することができる。その結果、印刷位置A周辺の汚れを低減させることができる。
【0057】
前述のように、プラテン4は、吸引機構45を備え、この上を搬送される記録紙Pをプラテン4の表面4aに吸引して浮き上がりや位置ずれを防止することができる。2本のリブ54a,54bは、搬送方向の両側を封鎖する壁として機能する。そのため、プラテン4の吸引機構45による空気の流れを適正に保つことができ、記録紙Pのプラテン4の表面4aへの吸引効果を向上させることができる。
【0058】
なお、本実施形態では、間隙形成部50Bとしてのリブ54a,54bをプラテン4側に設けた場合について説明したがこれに限定されない。リブ54a,54bは、キャリッジ10側に設けてもよいし、プラテン4およびキャリッジ10に各々分離して設け保持されたときにトータル高さHを確保してもよい。
【0059】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1…インクジェットプリンターとしてのプリンター、4…プラテン、5…記録紙搬送経路、8…搬送ローラー対、9…紙送りモーター、10…キャリッジ、11…ヘッドとしてのインクジェットヘッド、11A…第1ヘッド、11B…第2ヘッド、11a…ノズル面、12…インクカートリッジ装着部、13…メンテナンスユニット、14…キャリッジ移動機構、15…キャリッジフレーム、18…モノレール機構、19…スライド案内機構、30…キャリッジ軸、32…駆動ベルト機構、42…縦リブ、43…吸引孔、45…吸引機構、47…吸引ダクト、48…吸引ファン、50,50A,50B…間隙形成部、52a,52b,52c…突起部、54a,54b…リブ、A…印刷位置、B…ホームポジション、G…プラテンギャップ、P…記録紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される記録媒体に、インクを吐出して情報を印刷するヘッドと、
前記ヘッドに対峙するとともに、印刷位置を規定するプラテンと、
前記ヘッドを搭載するとともに、キャリッジ移動機構によって前記印刷位置と前記印刷位置から離れた待機位置との間を移動可能に設けられたキャリッジと、
前記印刷位置において、前記ヘッドと前記プラテンとの間隙を予め設定された寸法に保つ、前記プラテンおよび/または前記キャリッジに設けられた間隙形成部と、を、備えることを特徴とするインクジェットプリンター。
【請求項2】
前記間隙形成部は、前記プラテンおよび/または前記キャリッジの前記記録媒体の搬送領域以外の領域に設けられた、対峙方向に突出する3箇所以上の突起であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンター。
【請求項3】
前記プラテンは、前記記録媒体が搬送される搬送領域において前記記録媒体を吸引する吸引機構を有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンター。
【請求項4】
前記間隙形成部は、前記プラテンおよび/または前記キャリッジの前記搬送領域以外の領域に前記記録媒体の搬送方向に沿って設けられた、対峙方向に突出する2本以上のリブであることを特徴とする請求項1または3に記載のインクジェットプリンター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−86403(P2013−86403A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230401(P2011−230401)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】