説明

インクジェットプリンタ用インク

【課題】 ノズルの目詰りを発生させることなく、高密度および高品質で模様形成できる、インクジェットプリンタ用インクを提供すること。
【解決手段】 メジアン径が0.8〜1.7μmの範囲にあり、粒子径0.5μm以下のものが30重量%未満の割合である無機顔料と、分散剤と、溶剤とを混合して、攪拌し、インクジェットプリンタ用インクを得る。これによって、ノズルの目詰りを発生させることなく、高密度および高品質で模様形成することができる。そのため、セラミック製品や建材などに対して、高密度および高品質な模様を効率的に形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタ用インクに関し、詳しくは、陶磁器、ガラス、琺瑯、タイルなどのセラミックス製品や建材などに描画するためのインクジェットプリンタ用インクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、セラミックス製品などに対する描画には、同一模様を複数形成することができるインクジェットプリンタ法が提案されている。
同一模様を形成する方法として、インクジェットプリント法の他に、スクリーン印刷法がある。スクリーン印刷法は、製版が複雑であり、かつ、模様形成面が平滑面に限られるという不具合がある。
【0003】
この点、インクジェットプリント法によれば、製版のための時間と労力を省略化することができ、さらに、模様形成面が凹凸面であっても、鮮明な模様を形成することできる。
このようなインクジェット法に用いるインクジェットプリンタ用インクとしては、例えば、無機顔料、溶剤、分散剤を含み、無機顔料の粒子径が0.3〜2.0μmの範囲内にあるインクジェットプリンタ用カラーインクが、提案されている。(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−81363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、インクジェットプリント法において、高密度および高品質で模様形成する場合、インクを噴射するノズルの口径を小さくする必要がある。
しかし、特許文献1に記載されるインクジェットプリンタ用インクを用いると、実使用において、ノズルで目詰りを発生するという不具合がある。
そこで、本発明の目的は、ノズルの目詰りを発生させることなく、高密度および高品質で模様形成できる、インクジェットプリンタ用インクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明のインクジェットプリンタ用インクは、無機顔料、分散剤、溶剤を含有し、前記無機顔料は、そのメジアン径が0.8〜1.7μmの範囲にあり、粒子径0.5μm以下のものが30重量%の割合であることを特徴としている。
また、本発明のインクジェットプリンタ用インクでは、剪断速度が4.5〜5.0(1/sec)であるときの粘度が、0.05〜0.16Pa・sであることが好適である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のインクジェットプリンタ用インクによれば、ノズルの目詰りを発生させることなく、高密度および高品質で模様形成することができる。そのため、セラミック製品や建材などに対して、高密度および高品質な模様を効率的に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のインクジェットプリンタ用インクは、無機顔料、分散剤および溶剤を含有している。
無機顔料としては、着色顔料と体質顔料が挙げられる。
着色顔料としては、例えば、二酸化チタン、亜鉛華などの白色顔料、黄鉛、黄色酸化鉄、オーカー、チタンイエロー、カドミウムイエロー、ジンククロメートなどの黄色顔料、ベンガラ、セレンレッド、モリブデンレッドなどの赤色顔料、紫ベンガラなどの紫色顔料、紺青、群青、コバルトブルーなどの青色顔料、酸化クロムなどの緑色顔料、カーボンブラック、鉄黒などの黒色顔料などが挙げられる。
【0008】
体質顔料としては、アルミナホワイト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、クレイ、ホワイトカーボンなどが挙げられる。
また、無機顔料の結晶構造としては、例えば、スピネル、パイロクロア、ルチール、プライディライト、ペリクレース、オリビン、バデライト、コランダム、ジルコン、フェナス石、楔石、硼酸型、燐酸型などが挙げられる。
【0009】
また、無機顔料には、蛍光顔料、蓄光顔料などの発光顔料も含まれる。
このような無機顔料は、単独で使用することができ、また、複数種類を併用して使用することもできる。
無機顔料のメジアン径は、例えば、0.8〜1.7μm、好ましくは、1.4〜1.6μmである。メジアン径が0.8μmよりも小さいと、発色が不良となり、描画した模様を鮮明に形成することができず、一方、メジアン径が1.7μmよりも大きいと、ノズルで目詰りが発生する。
【0010】
また、無機顔料は、粒子径0.5μm以下のものが、例えば、30重量%未満の割合、好ましくは、10重量%未満の割合である。粒子径0.5μm以下のものが30重量%以上であると、ノズルで目詰りが発生する。
また、分散剤としては、例えば、メタリン酸六ナトリウム、二リン酸ナトリウムなどの無機系分散剤、ジエチルアミンなどの有機系分散剤が挙げられる。
【0011】
このような分散剤は、単独で使用することができ、また、複数種類を併用して使用することもできる。
また、溶剤としては、例えば、水、メジューム、極性有機溶媒が挙げられる。
メジュームとしては、例えば、グリコール類、グリセリン類、ポリビニールアルコール類などの水溶性の多価アルコールなどが挙げられる。
【0012】
極性有機溶媒としては、プロトン性溶媒、非プロトン性溶媒が挙げられる。
プロトン性溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類などが挙げられる。
非プロトン性溶媒としては、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
【0013】
このような溶剤は、単独で使用することができ、また、複数種類を併用して使用することもできる。
本発明のインクジェットプリンタ用インクにおいて、無機顔料、分散剤および溶剤の配合割合は、無機顔料100重量部に対して、分散剤が、例えば、0.1〜1.0重量部、好ましくは、0.4〜0.6重量部であり、溶剤が、例えば、150〜350重量部、好ましくは、230〜270重量部である。
【0014】
本発明のインクジェットプリンタ用インクの調製は、特に制限されず、無機顔料、分散剤および溶剤を混合して、攪拌すればよい。例えば、予め、分散剤を溶剤に分散することにより分散液を調製して、その分散液に、別途、計量した無機顔料を配合し、混合、攪拌することにより、調製することができる。また、予め分散液を調製することなく、無機顔料と分散剤とを配合した後に、溶剤を配合して、混合、攪拌することにより、調製することもできる。
【0015】
混合方法は、特に制限されず、各成分を配合したものを密閉容器に入れて、振とうすることができ、ロータリーミキサーまたはボールミルなどで振とうすることもできる。また、攪拌子を密閉容器に入れて、マグネティックスターラーなどで攪拌することもできる。
さらに、本発明のインクジェットプリンタ用インクには、上記した無機顔料、分散剤および溶剤以外にも、ガラス成分または消泡剤を含有することができる。
【0016】
ガラス成分としては、酸化物成分、炭酸塩成分、これらの複化合物成分などが挙げられる。
酸化物成分としては、酸化珪素などのケイ酸塩、ホウ酸ナトリウムなどのホウ酸塩、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ビスマス、酸化鉛などが挙げられる。
【0017】
炭酸塩成分としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属の炭酸塩などが挙げられる。
複化合物成分としては、硼砂、長石、カオリンなどが挙げられる。
ガラス成分のメジアン径は、例えば、0.8〜1.7μm、好ましくは、1.4〜1.6μmである。
【0018】
これらは単独で、または、複数種類を併用して使用することができる。このようなガラス成分の配合割合は、無機顔料100重量部に対して、例えば、10〜100重量部である。このようなガラス成分は、あらかじめ溶剤に配合し、混合したものを分散して用いることができ、また、無機顔料および分散剤とともに配合し、混合、攪拌することもできる。ガラス成分を、インクジェットプリンタ用インクが含有することにより、無機顔料の融着性を向上することができ、鮮明な発色となって模様を形成することができる。
【0019】
消泡剤としては、例えば、ポリグリコールなどが挙げられる。消防剤の配合割合は、無機顔料100重量部に対して、例えば、0.1〜1.0重量部である。消泡剤は、あらかじめ溶剤に混合したものを分散して用いることができる。消泡剤を、インクジェットプリンタ用インクが含有することにより、インクジェットプリンタ用インクの泡立ちを未然に防ぐことができる。
【0020】
また、このようにして得られるインクジェットプリンタ用インクは、その粘度が、剪断速度が4.5〜5.0(1/sec)であるとき、例えば、0.05〜0.16Pa・s、さらには、0.08〜0.12Pa・sとなるように調製することが好ましい。粘度が、0.05Pa・sよりも小さいと、無機顔料が沈殿する場合があり、0.16Pa・sよりも大きいと、ノズルからインクが出ない場合がある。
【0021】
また、インクジェットプリンタ用インクの粘度を、上記した粘度の範囲に調整するには、含有する溶剤の配合割合を適宜調整すればよい。
本発明のインクジェットプリンタ用インクは、例えば、複数のインク吐出口とこれら複数の吐出口に対応して電気エネルギーをインク吐出エネルギーに変換するためのエネルギー変換手段とを有する記録ヘッドを備えたインクジェットプリンタなどに用いられる。具体的には、ピエゾ方式やバブルジェット(登録商標)のようなサーマル方式などの噴射手段を備えるプリンタに用いられる。
【0022】
本発明のインクジェットプリンタ用インクは、ノズルから一定量噴射し、描画しても、ノズルで目詰りを起こさないため、ノズルの孔径が小さいインクジェットプリンタに用いることができ、高密度および高品質で模様を形成することができる。そのため、セラミック製品や建材などに対して、高密度および高品質な模様を効率的に形成することができる。
【0023】
そのため、本発明は、陶磁器、ガラス、琺瑯、タイルなどのセラミックス製品や建材などに描画するためのインクジェットプリンタ用インクとして、好適に用いることができる。
【実施例】
【0024】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は何ら実施例および比較例に制限されるものではない。
最初に、インクジェットプリンタ用インクを調製するために用いた、無機顔料の粒度分布を、後述する粒度分布測定法により測定した。測定した粒度分布の結果を、図1〜5に示す。
【0025】
(実施例1)
密閉可能な容器に、ジルコニアボールφ2mmを200g、φ5mmを600gと、無機顔料としてカドミウムイエロー(メジアン径0.845μmで、粒子径0.5μm以下のものを27.48%含む。)100gとを入れた。
次に、別途、予め調製しておいた分散液(水750g、メジューム750g、エタノール1500g、分散剤6gおよび消泡剤6gを、配合して、均一に混合したもの。)250gを前記容器に加えて、密閉した。その後、密閉容器を、ボールミル回転台にて、回転数350〜400min-1、48時間で、振とうして、均一に混合して攪拌し、インクジェットプリンタ用インクを調製した。
【0026】
調製したインクジェットプリンタ用インクを用いて、粘度測定および目詰り試験を実施した。評価試験の結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1において、無機顔料をモリブデンレッド(メジアン径1.617μmで、粒子径0.5μm以下のものが0.34%である。)に変更した以外は、同様に操作を行い、インクジェットプリンタ用インクを調製した。評価試験の結果を表1に示す。
【0027】
(実施例3)
実施例1において、無機顔料をカーボンブラック(メジアン径1.575μmで、粒子径0.5μm以下のものが1.25%である。)に変更した以外は、同様に操作を行い、インクジェットプリンタ用インクを調製した。評価試験の結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例1において、無機顔料をコバルトブルー(メジアン径1.385μmで、粒子径0.5μm以下のものが3.32%である。)に変更した以外は、同様に操作を行い、インクジェットプリンタ用インクを調製した。評価試験の結果を表1に示す。
【0028】
(比較例1)
実施例1において、無機顔料をカドミウムイエロー(メジアン径0.681μmで、粒子径0.5μm以下のものが34.98%である。)に変更した以外は、同様に操作を行い、インクジェットプリンタ用インクを調製した。評価試験の結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
(評価試験)
<粒度分布測定>
インクジェットプリンタ用インクを調製するための無機顔料について、レーザ回折式粒度分布測定装置(SALD−2000、(株)島津製作所)により、粒度分布を測定した。粒度分布測定で分散させる溶液は、水であり、測定粒径の範囲は、0.03〜300μmと設定して、測定した。
【0031】
<粘度測定>
得られた各実施例のインクジェットプリンタ用インクについて、レオメーター(RPX−705、アイエス技研(株)製)により、粘度を測定した。
上記したレオメーターで、測定温度22℃で、まず剪断速度を15(1/s)まで上昇させ、2分間保持した。その2分後、剪断速度を50秒間で5(1/s)まで上昇させ、次いで、50秒間で0(1/s)に下降させた。
【0032】
そして、剪断速度が4.5〜5.0(1/s)の範囲内における、剪断速度上昇時の粘度、および、剪断速度下降時の粘度を、それぞれ、2点測定し、合計4点の値を平均して算出し、これをインクジェットプリンタ用インクの粘度とした。
<目詰り試験>
得られたインクジェットプリンタ用インクを、インクジェットプリンタに充填し、一定量噴射して、ノズルで目詰りが起こるかどうかの試験を実施した。充填量は15cm3とし、噴射量は、0.1cm3/minとして、目詰り試験を実施した。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例1の無機顔料カドミウムイエローの粒度分布を示すグラフである。
【図2】実施例2の無機顔料モリブデンレッドの粒度分布を示すグラフである。
【図3】実施例3の無機顔料カーボンブラックの粒度分布を示すグラフである。
【図4】実施例4の無機顔料コバルトブルーの粒度分布を示すグラフである。
【図5】比較例1の無機顔料カドミウムイエローの粒度分布を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機顔料、分散剤、溶剤を含有し、
前記無機顔料は、そのメジアン径が0.8〜1.7μmの範囲にあり、粒子径0.5μm以下のものが30重量%未満の割合であることを特徴とする、インクジェットプリンタ用インク。
【請求項2】
剪断速度が4.5〜5.0(1/sec)であるときの粘度が、0.05〜0.16Pa・sであることを特徴とする、請求項1に記載のインクジェットプリンタ用インク。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−84623(P2007−84623A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−272511(P2005−272511)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(000227722)株式会社日本ネットワークサポート (19)
【Fターム(参考)】