説明

インクジェットプリンタ

【課題】ノズル面を十分にメンテナンスすることができるメンテナンス装置を備えるインクジェットプリンタを提供する。
【解決手段】インクジェットプリンタ10は、給送された記録媒体Mに、印字ヘッド31に形成されたノズル面34aから吐出されたインクによって印字を行う印字装置30と、ノズル面34aの余分なインクを吸引するヘッドメンテナンス装置42を備える。ヘッドメンテナンス装置42は、キャップと、弾性部材と、キャップホルダ板と、キャップホルダとを備え、キャップは、側面中央部にストッパーを備え、そのストッパーをキャップホルダ板の開口部に係合することにより、キャップ中央部が上方に反ることを防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘッドメンテナンス装置を備えたインクジェットプリンタ及びインクジェットプリンタの印字ヘッドをメンテナンスするヘッドメンテナンス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタにおいては、良好な印字品質を維持するために印字ヘッドのノズル面をメンテナンスするヘッドメンテナンス装置を備えることが不可欠であった。従来のヘッドメンテナンス装置としては、特願2006−012288に記載されているように、ヘッドメンテナンス装置が備えるキャップ部分の長辺方向の両端に突起部を設け、その突起部をキャップ保持部材(キャップホルダ)が備える突起部に係合することにより、弾性部材(ばね)の弾性力を受けるヘッドメンテナンス装置があった。
【0003】
特願2006−012288に開示されたヘッドメンテナンス装置42の正面図を図6(a)に、断面図を図6(b)に、左側面図を図6(c)に示す。
ヘッドメンテナンス装置42は、キャップ420と、弾性部材421a〜421cと、キャップホルダ423とを備える。キャップ420は吸引口42aを備え、図1に示すノズル面34aに押し当て、管42bに接続された図示しないポンプにより吸引口42aの内部100aを負圧とすることにより、ノズル面34aの異物や余分なインクを吸引除去する。
弾性部材421a〜421cは、キャップ420がヘッドのノズル面34aに押圧されたときに、キャップ420は、押圧されたヘッドのノズル面34aを受け止める。
具体的には、キャップ420は、突起部420a及び420bとを備える。突起部420a及び420bは、図6(a)から図6(c)に示すように、キャップ420の短辺両端中央部から、キャップ420aの長辺外方向に突出して形成されている。
さらに、キャップホルダ423は、短辺内側中央部に、突起部423a及び423bを備え、キャップホルダ423の突起部423a及び423bが、キャップ420の長辺両端に備わる突起部420a及び420bを垂直下方に抑えることにより、弾性部材421a〜421cから受ける弾性力を受け止めている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクジェットプリンタにおいて、ヘッドのノズル面をメンテナンスするためにヘッドメンテナンス装置42を設け、キャップ420に設けられた吸引口42aの内部を負圧にすることにより、余分なインクを除去することは従来から行われている。
しかし、上記構成のヘッドメンテナンス装置42は、キャップ420の突起部420a及び420bが受ける弾性部材421a〜421cからの垂直上方向の弾性力を、キャップホルダ423の突起部423a及び423bが受けるため、図6(b)の破線及び図6(c)に示すように、キャップ420の中央部が垂直上方向に反ること(ねじれ)があった。経時変化によりこの反りは大きくなる。
その結果、キャップ420の吸引口42aに負圧をかけて、ヘッドのノズル面に付着したインクを除去しようとした場合でも、ヘッド面34aとキャップ420の吸引口42aの密閉性が確保できず、余分なインクを適切に除去することができなかった。
【0005】
この発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、インクを適切に除去できるヘッドメンテナンス装置を備えたインクジェットプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明のインクジェットプリンタは、
複数のノズルが配列されたノズル面を備えた印字ヘッドと、
前記印字ヘッドが装着され、装着された印字ヘッドをメンテナンスするヘッドメンテナンス部と、
を備えるインクジェットプリンタであって、
前記ヘッドメンテナンス部は、
前記ノズル面を覆うように印字ヘッドを収容するノズル収容部と、
前記ノズル収容部の長手方向中央部を、前記印字ヘッドの動きに応動可能に、その両側部で支持する支持部と、
前記ノズル収容部を前記印字ヘッド側に付勢する付勢部と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
また、前記ノズル収容部は、その長手方向中央部の両側部から突出する係合用突起を備え、
前記支持部は、前記係合用突起と係合する係合部を備え、
前記係合用突起と前記係合部とは、前記付勢部による付勢により、係合状態を維持する、
ことを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、ノズル面に付着したインクを適切に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタ10を詳細に説明する。
【0010】
本実施形態に係るインクジェットプリンタ10は、図1、図2に示すように、記録媒体給送装置20、印字装置30、メンテナンス部40を有する。このインクジェットプリンタ10は、記録媒体給送装置20が供給する記録媒体M上に印字装置30が所定の文字を印字する。そして、メンテナンス部40は、インクジェットプリンタ10の起動時、印字結果が不良であって使用者が所定の操作を行ったとき等に、印字ヘッド31の清掃、インクの充填などを行う。
【0011】
また、ノズル面34aは、プリント終了時に、ノズル34bの乾燥及びノズル面34aの汚染を防止するため、メンテナンス部40のヘッドメンテナンス装置42によりキャッピングされる。
【0012】
記録媒体Mは、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)フィルム等から構成される。
【0013】
記録媒体給送装置20は、地板21、22と、回転軸の両端が地板21、22に固定されたローラー23、24、25と、地板21、22に回転軸の両端が固定されたローラー状のプラテン26とを有する。
【0014】
ローラー23、24、25は、それぞれ、回転軸の外周に摺動回転可能に配置された円筒状回転部を備える。プラテン26は、回転軸の外周に摺動回転可能に配置された円筒状回転部を備える。
【0015】
印字装置30は、印字ヘッド31、印字ヘッド31を脱着可能に保持する印字ヘッドキャリア32、キャリアガイド33を有する。キャリアガイド33はX方向に延び、地板22の窓部22aを貫通し、その両端を地板21及び支持板44に固定されている。
【0016】
印字ヘッド31は、筐体31a内に、図3に示すヘッド本体34、インク流路(不図示)及びインクタンク(不図示)が収容されたインクジェットプリンタヘッドである。図3示すように、筐体31aの略長方形の下面31bの中央に設けた孔部31cには、ヘッド本体34の下面であるノズル面34aが嵌合され、ノズル面34aは下面31bより下方に突出している。略長方形であって撥水処理を施されたノズル面34aには、その長手方向に沿ってインク射出用のノズル34bが所定の間隔で一列に複数形成されている。
【0017】
図1に戻って、印字ヘッド31は、印字ヘッドキャリア32に脱着可能に取り付けられ、印字ヘッドキャリア32は、キャリアガイド33の上面に形成されたガイドレール33aにしたがってX方向に移動可能となっている。
【0018】
印字ヘッド31から吐出されるインクは、目的に応じたものが選択されるが、前述の記録媒体Mに印刷を行うために、溶剤を主成分とするソルベント系インクから構成される。
【0019】
印字ヘッドキャリア32に取り付けられた印字ヘッド31のノズル面34aの下方には、印字ヘッド31の移動方向(X方向)に沿ってプラテン26が配置されている。駆動装置(不図示)によってノズル面34aのノズル34bからインクが下向きに吐出されると、プラテン26上を摺動する記録媒体M上に所定の印字がなされる。
【0020】
続いて、図1、2を用いてメンテナンス部40の説明を行う。メンテナンス部40は、図1、図2に示すように、ヘッドメンテナンス装置42と、クリーニング装置50を有する。
【0021】
ヘッドメンテナンス装置42とクリーニング装置50は、一端面が地板22の外側面に垂直に固定されX方向に延びる台板43上にX方向に並べて固定され、その台板43の他端面には地板21、22と平行になるように支持板44が固定されている。詳細については後述する。
【0022】
次に、クリーニング装置50について説明する。クリーニング装置50は、ローラーワイパ部(インク吸収部)60と、ワイパ部70とを有し、印字ヘッド31がクリーニング装置50の上方を通過するだけでノズル面34aの余分なインクを吸収、拭い取ることができる。
【0023】
ローラーワイパ部60は、Z方向に並べて配置された二つのローラー状のインク吸収体61と62からなる。インク吸収体61、62は、それぞれ、ウレタン製の円筒状のインク吸収部を備える。
【0024】
インク吸収体61は、軸方向中央で2分割されており、一列をなすノズル34bには接触しないように構成されている。
【0025】
ノズル面34aは、印字ヘッド31がメンテナンスのためキャリアガイド33に沿ってヘッドメンテナンス装置42に向かう途中、及び、メンテナンスを終えて印字のために記録媒体給送装置20の上方に向かう途中において、インク吸収体61に圧接しながら所定方向へ移動する。移動するノズル面34aに圧接されたインク吸収体61は従動回転し、これに伴ってインク吸収体62も従動回転する。
ただし、ノズル34bには、インク吸収体61は接触しない。インク吸収体61の作用により、ノズル面34a上のノズル34bの周囲の余分なインクを吸収することができる。インク吸収体62は、インク吸収体61よりも大型に形成され、インク吸収体61よりもより多くのインクを蓄積でき、インク吸収体61が吸引したインクを蓄積する。
ワイパ部70は、図示しない駆動モータにてワイパブレード70aを備えた無端ベルト70bを駆動してワイパブレード70aでノズル面34aをワイピングするものである。
【0026】
ヘッドメンテナンス装置42は、その上面に、上方が開口となっている吸引口42aを備える。ヘッドメンテナンス装置42は、吸引口42aをノズル面34aに押し当て、吸引口42a内を負圧とすることにより、ノズル面34aの異物や余分なインクを吸引除去する。
【0027】
ヘッドメンテナンス装置42は、図4に示すように、キャップ420と、弾性部材421a〜421cと、キャップホルダ板422と、キャップホルダ423とから構成される。
【0028】
キャップ420は、長辺両端に、突起部420a、420bと、ストッパー420cとを備え、ストッパー420cは、後述するキャップホルダ板422の開口部422aに係合することにより、キャップ420を、後述するキャップホルダ423に固定させる。
【0029】
また、キャップ420は、ノズル面34a全体を覆い、キャップ420の上部に備わる吸引口42aが、ノズル34bに付着した余分なインクを吸引する。すなわち、管42bに接続された図示しないポンプにより吸引口42aの内部を負圧とすることにより、ノズル面34aの異物や余分なインクを吸引除去する。
【0030】
弾性部材421a〜421cは、ノズル面34aが、キャップ420に押し当てられた際に、ノズル面34aからの弾性力を受けとめる。
【0031】
キャップホルダ板422は、キャップ420をキャップホルダ423に固定させる装置であり、開口部422aを備える。開口部422aは、キャップ420のストッパー420cを係合することにより、キャップ420をキャップホルダ423に固定させる。
【0032】
具体的には、図4、図5に示すように、キャップホルダ板422は、後述するキャップホルダ423の内部に装着される。そして、キャップホルダ板422の開口部422aは、キャップ420の突起部420a及び420bと、キャップホルダ423内部の突起部423a及び423bとが接する位置よりもキャップホルダ423底部に近い位置にある。
【0033】
主に開口部422aが、弾性部材421a〜421cが振動することによるキャップ420のストッパー420cからの圧力(外側方向・上方向の圧力)を受けとめる。
従って、ノズル面34bをキャップ420に押圧した状態からノズル面34bを上昇させてキャップ420から取り去るときには、先ず開口部422aとストッパー420cとが当接触し、図5(b)に示すように、キャップ420の突起部420aとホルダ423の突起部423aとの間、キャップ420の突起部420bとキャップホルダ423の突起部423bとの間には、空間420y及び420zが生じ、両者が接することはい。なお、弾性部材421a、421cの付勢力にばらつきがあれば、それに応じてキャップ420の突起部420aとホルダ423の突起部423aと、キャップ420の突起部420bとキャップホルダ423の突起部423bとのいずれかが当接し、キャップ420がキャップホルダ423に対して位置決めされ、付勢力にばらつきがなければ、空間420y及び420zが保った状態でキャップ420がキャップホルダ423に対して位置決めされる。
また、これによりキャップの突起部420a及び420bが、キャップホルダ423の突起部423a及び423bに衝突する際の衝撃や、弾性部材421a〜421cによる付勢力が抑えられるので、キャップ420の中央部が上方向に反ることもない。
【0034】
キャップホルダ423は、キャップ420を、図1及び図2に示すように、着脱可能な状態でヘッドメンテナンス装置42に装着するための装置である。
【0035】
このような構成によれば、キャップホルダ板422の開口部422aは、キャップ420に備わる突起部420a及び420bと、キャップホルダ423に備わる突起部423a及び423bとの接点よりも、キャップホルダ423底部に近い位置にある。
【0036】
そして、図5(b)に示すように、キャップ420の突起部420a及び420bと、キャップホルダ423の突起部423a及び423bとの間に隙間420x及び420yが生じ、キャップ420の突起部420a及び420bが、キャップホルダ423の突起部423a及び423bに接する前に、キャップホルダ板422の開口部422aの上辺に接する。
このため、キャップ420の中央部が上方向に反ることがなくなり、キャップ420と、ノズル面34aとの間の密閉性が確保される。
【0037】
従って、キャップ420に備わる吸引口42aに負圧をかけて、ヘッドに付着した余分なインクを除去する場合であっても、適切にその余分なインクを除去することが出来る。
【0038】
なお、この発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上記実施の形態においては、をキャップホルダ板422に、キャップ420の突起部420a及び420bよりも、キャップホルダ423底部に近い一箇所の開口部422aを設け、キャップ420がノズル面34aから受ける圧力を、その開口部422aがストッパー420cを係合することにより受け止めている。
【0039】
しかし、これに限定されず、全体として、キャップ420が、キャップホルダ板422に安定して固定され、かつ、キャップ420の突起部420a及び420bが、キャップホルダ423の突起部423a及び423bよりも、キャップホルダ423底部近くに位置することができるならば、その構造自体は任意である。
【0040】
例えば弾性部材421a〜421cの個数と同数の開口部をキャップホルダ板422、及び弾性部材421a〜421cの個数と同数のストッパー420cを備えるキャップ420とを用いて、キャップ420をキャップホルダ板422に係合することにより、キャップ420をキャップホルダ板422に固定することとしてもよい。
【0041】
また、上記実施の形態で示した材質、数、形状は任意に変更可能であり、用途と目的に応じて適宜選択すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタの構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタの構成を示す側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る印字ヘッドの内部及びノズル面の構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るヘッドメンテナンス装置の構成を示す斜視図である。
【図5】(a)図4に示すヘッドメンテナンス装置の平面図であり、(b)図4に示すヘッドメンテナンス装置の断面図であり、(c)図4に示すヘッドメンテナンス装置の側面図である。
【図6】(a)従来技術を用いたヘッドメンテナンス装置の平面図であり、(b)従来技術を用いたヘッドメンテナンス装置の断面図であり、(c)従来技術を用いたヘッドメンテナンス装置の側面図である。
【符号の説明】
【0043】
10 インクジェットプリンタ
20 記録媒体給送装置
21、22 地板
23、24、25 ローラー
26 プラテン
30 印字装置
31 印字ヘッド
32 印字ヘッドキャリア
33 キャリアガイド
34 ヘッド本体
34a ノズル面
34b ノズル
42 ヘッドメンテナンス装置
42a 吸引口
42b 管
420 キャップ
420x、420y キャップ及びキャップホルダ間に生じる空間
421a〜c 弾性部材
422 キャップホルダ板
423 キャップホルダ50 クリーニング装置
60 ローラーワイパ部
70 ワイパ部
70a ワイパブレード
70b 無端ベルト
M 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルが配列されたノズル面を備えた印字ヘッドと、
前記印字ヘッドが装着され、装着された印字ヘッドをメンテナンスするヘッドメンテナンス部と、
を備えるインクジェットプリンタであって、
前記ヘッドメンテナンス部は、
前記ノズル面を覆うように印字ヘッドを収容するノズル収容部と、
前記ノズル収容部の長手方向中央部を、前記印字ヘッドの動きに応動可能に、その両側部で支持する支持部と、
前記ノズル収容部を前記印字ヘッド側に付勢する付勢部と、
を備えることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記ノズル収容部は、その長手方向中央部の両側部から突出する係合用突起を備え、
前記支持部は、前記係合用突起と係合する係合部を備え、
前記係合用突起と前記係合部とは、前記付勢部による付勢により、係合状態を維持する、
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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