説明

インクジェットプリンタ

【課題】 脱気を行うインクの温度制御をインクに対して直接行い、脱気モジュールにおける脱気率を安定的に向上するとともに、インクの温度制御に影響を及ぼす外乱の影響を低減する対策を備えたインクジェットプリンタを提供する。
【解決手段】 本発明のインクジェットプリンタは、温度上昇に伴い、脱気されていない非脱気インクを一時的に保留するインクタンクと、インクタンクに貯蔵された非脱気インクをインクタンク内で加熱するヒータと、インクタンクに貯蔵された非脱気インクの温度を検知するインクタンク温度検知センサを有し、インクタンク温度検知センサの検知結果に基づき、インクタンクに貯留されている非脱気インクが目標とする設定温度になるようにインクタンク制御回路によってインクタンクヒータを制御する。インクタンクヒータはインクに接触するように設置することで熱を効率よく伝える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタは、インクを貯留するインクタンクからインクジェットヘッドにインクを供給し、この供給されたインクをインクジェットヘッドから記録媒体へ吐出しすることで、所望の画像を形成する。インク中に気泡が発生するとインクジェットヘッドが気泡によって吐出不良を起こす場合がある。脱気したインクを詰めたインクカートリッジを供給することで気泡による吐出不良を回避することが考えられている。他の方法として、インクタンクからインクジェットヘッドまでのインク経路の間に脱気モジュールを設け、その脱気モジュールによってインクを脱気し、脱気したインクをインクジェットヘッドに供給するプリンタが考えられている。
【0003】
また、脱気モジュールを使用した際、インクの温度が高温より低温で脱気率が低くなるなど、温度によって脱気率が変わることが知られている。また圧電素子を用いたインクジェットヘッドは、インクの溶存気体量によって吐出性能が変わるので、インクの溶存気体量を予め一定値以下にして使用している。インクの溶存気体量がインクジェットヘッドの特性に適合しない場合、適合するように上記インクの特性を生かしてインクを脱気して使用する。
【0004】
例えば特開平11−48493号公報に記載の技術のように、インクタンクとインクジェットヘッドの間に加熱手段を備え、加熱したインクを脱気するプリンタがある。このプリンタは、インクをヒータによって常温以上に加熱し、インク中の気体の溶解度を低下させ、さらに真空ポンプによる負圧を受けさせて溶存気体を遊離させ、真空ポンプにより外部に放出している。このプリンタは、インクジェットヘッドに供給するインク内の溶存気体量を低下させ、オリフィスからのインク吐出を安定させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−48493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の技術では、インクタンクから脱気モジュールまでの少なくとも一部を加熱し、インクの加熱を行っている。しかし機器の小型化や省電力化が求められ、その結果、インクを加熱する場合にも、より小さな電力で効率的に加熱する技術が求められている。
【0007】
従来のインクの加熱法ではさまざまな課題があった。熱損失により、インク温度の調整に時間がかかるため、ウォームアップ時の温度調整時間が長くなること。また印字中のインク供給によるインク温度低下に対する回復時間が長くなること。さらには印字等によるインクの単位時間あたり消費量が大きい場合など加熱部をインクが通過する際に消費される熱量に対して供給する熱量が足らず、一時的にインク供給を停止して加熱部のインク温度を上昇させることが必要となり、印字速度が低下すること。また、効率の悪い加熱方法では、ヒータを設置する際のスペースが大きくなってしまうこと。このような課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明のインクジェットプリンタは、非脱気インクを収納するメインタンクから前記非脱気インクが供給され、供給された前記非脱気インクを一時的に収納すると共に前記非脱気インクを加熱するインクタンクと、前記インクタンクから前記非脱気インクが供給され、通過する非脱気インクの温度上昇に伴い脱気率が向上する脱気モジュールと、前記脱気モジュールにて脱気された脱気インクを一時的に収納するサブタンクと、前記サブタンクから前記脱気インクの供給を受けて前記脱気インクを吐出するインクジェットヘッドと、を有するインクジェットプリンタにおいて、前記インクタンク内に配置する放熱手段と、前記放熱手段の内部に配置された前記放熱手段を加熱する加熱手段と、前記放熱手段の内部に配置された温度検出センサと、前記温度検出センサの検出温度に基づいて前記加熱手段を制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、加熱容器であるインクタンク内のインクを直接加熱する手法を用いることで、インクに対して熱損失を抑制して加熱することが可能である。そのため、インクタンク筐体の材質の自由度が増し、低熱伝導性の材料を選択することで、環境温度やエアフロー等の外乱の影響を受けず、かつ保温性にも長けたインクタンクとすることができ、インクを効率的に加熱することができる。また、インクヒータをインクタンク内に設置することで、元来設けられていたヒータ設置スペースを必要としないため、省スペース化が可能である。また、インクヒータを直接インクタンクに挿入することで、インクに対して直接熱を伝えられ、かつ温度検知センサもインクタンク内に設置することにより、より正確な温度検知を行うことができる。そのため、より高精度なインク温度の制御が可能となり、脱気モジュールを通過したインクの脱気率を一定に保つことができる。インク内溶存気体量を低減させた高品質のインクを不足なくインクジェットヘッドへ供給でき、インク吐出安定性の向上を図ることが可能である。
【0010】
低熱伝導性材料すなわち断熱材をインクタンクの筐体の周囲に配置した場合に、インク加熱に用いるエネルギーを低減することができ、省電力化が可能である。
【0011】
また、熱を直接インクに伝えるため、ウォーミングアップ時間や、印字中のインク供給によるインク温度低下回復時間の短縮が図れるので、ランニングコストの低減がはかれる。
【0012】
インクタンクにインクヒータを挿入する挿入口を複数ある場合に、ヒータの増設を容易にできるとともに、ヒータの脱着が容易であり、インクヒータのメンテナンスが容易となる。
【0013】
インクジェットプリンタはY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)等の多色で画像を形成するが、印字画像によっては全色を使用しない場合もあり、そのような場合、使用しない色のインクヒータを使用する色のインクタンクに装着することで、1つのインクタンクに与える熱量を増加させることができ、ウォーミングアップ時間を短縮させることができる。
【0014】
また、加熱導体と誘導コイルを用いたIHヒータ方式を用いた場合には、インクタンク内の配線が不要となり省スペース化ができると共に誘導コイルによって加熱導体を加熱し、熱変換効率を高めると省電力化も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本実施形態のインクジェットプリンタの制御ブロック図である。
【図2】図2は、本実施形態のインクジェットプリンタの概略図である。
【図3】図3は、1色分のインク供給路の概略図である。
【図4】図4は、本実施形態におけるインクタンクのインク温度制御のフローチャートである。
【図5】図5は本実施形態におけるインクジェットヘッドの印字開始前のインクの温度制御のフローチャートである。
【図6】図6は、本実施形態のインクタンクヒータの概略図である。
【図7】図7は、インクタンクヒータの設置図である。
【図8】図8は、インクタンクヒータの別の形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態のインクジェットプリンタの制御ブロック図である。インクジェットプリンタ1には制御部11が備えられており、制御部11にはインターフェース12、RAM13、ROM14、搬送モータエンコーダ15、モータ制御回路16、インクタンク制御回路6、インク供給回路18、インク供給圧力センサ27、真空度圧力センサ35、インクジェットヘッド制御回路21、サブタンク液量検出回路49、キャリッジエンコーダ30が接続されている。
【0017】
インターフェース12は、図示していないパソコン等のホスト装置とデータ送受信を行う。そして、制御部11は、インターフェース12を介して受信された印字データに基づいて各種制御回路に制御信号を出力し、記録媒体9に画像を記録する。
【0018】
ROM14は、インクジェットヘッド19を駆動して印字を行う際の印字プログラムや、後述する各種アクチュエータの制御プログラム等、インクジェットプリンタ1の全体の制御を行うためのプログラム、各種設定値を記録している。RAM13は、情報の一時記憶や演算のワークエリアとして使われる。またRAM13は制御部11がインターフェース12を介して受信した印字データを所定の領域に格納する。
【0019】
搬送モータエンコーダ15は、記録媒体搬送モータ20に接続されており、記録媒体搬送モータ20の回転軸の回転変位量に応じてパルス列を出力する。制御部11は搬送モータエンコーダ15から出力されたパルス数をカウントすることで回転量を演算し、記録媒体9の送り量を演算し、その結果をRAM13に記憶する。そして、制御部11は、搬送モータエンコーダ15の信号に基づいて、モータ制御回路16及びインクジェットヘッド駆動回路21に制御信号を出力して印字制御する。
【0020】
モータ制御回路16は、制御部11からの出力信号に基づいて記録媒体搬送モータ20とキャリッジ駆動モータ22を駆動する。記録媒体搬送モータ20を駆動することで、回転軸に設置されている記録媒体搬送ローラ23が回転し、記録媒体9を用紙幅方向Yに対して垂直方向Xへ搬送する。またモータ制御回路16は、制御部11からの出力信号に基づいてキャリッジ駆動モータ22を駆動することで、キャリッジ24をレール8に沿って往復移動させる。
【0021】
インクタンク制御回路6は、インクタンク62に設置されたインクタンクヒータ5、インクタンク液量センサ4、インクタンク温度検知センサ10、などを制御する制御回路である。インクタンク制御回路6は、インクタンクヒータ駆動回路43、インクタンク温度検出回路44、インクタンク液量検出回路63、インクタンクヒータPWM制御回路41、インクタンクヒータON/OFF制御回路42、を含む。インクタンク制御回路6は、インクタンク62の各種制御を行う。まず、インクタンク液量センサ4によってインクタンク62内のインク量を検知し、インクタンク液量検出回路63に出力する。インクタンク液量検出回路63はその検出した量を制御部11に出力する。ここで、インク量が満タンでない場合、制御部11の制御によってインク供給回路18を制御し、メインタンク29から非脱気インクをインクタンク62へ供給し、インクタンク62内のインク量を満タンとする。
【0022】
また、インクタンク62内のインクが満タンとなり次第、インクタンク制御回路6は、インクタンク温度検知センサ10からの出力をインクタンク温度検出回路44で受け、その時のインクタンク内のインク温度を取得する。得られたインクタンク62内のインク温度を制御部11に転送し、その値を基に、制御部11は、インクタンクヒータPWM制御回路41によってインクヒータ5のPWM制御値を決定する。さらにこの決定されたPWM制御値に基づいてインクタンクヒータON/OFF制御回路42が動作し、インクタンクヒータ駆動回路43が決定されたPWM制御値に基づいてインクタンクヒータ5を駆動するよう信号を出力する。よって、インクタンクヒータ5が駆動し、インクタンク62内のインクを加熱する。インクタンク温度検知センサ10から得られるインクタンク62内インク温度を所定時間間隔ごとに取得し、それを基に制御部11はインクタンクヒータ5のPWM制御値を変動させることで、インク温度が適正温度となるように制御する。
【0023】
脱気モジュール60に接続された真空ポンプ46を真空ポンプ制御機47によって駆動し、脱気モジュール60内の圧力を減圧する。脱気モジュール60とは、内部を減圧し、液体を通すことで液体中の溶存気体を排出するものである。真空ポンプ46は、脱気モジュール60内の圧力を一定値以下とするため使用され、真空ポンプ制御機47によって制御される。真空ポンプ制御機47は制御部11により動作の開始と停止が制御されるが、真空ポンプ制御機47に内蔵してある制御手段によってインクジェットプリンタ1とは独立して制御され、また圧力検出機能を内蔵している。真空ポンプ制御機47には、予め脱気モジュール60内の圧力の設定値が記憶されている。圧力検出機能からの出力値を所定時間の間隔で取得し、その出力値と設定値との差から真空ポンプ46の制御値を変更し、脱気モジュール60内の圧力が設定値に対して所定の範囲内に入るように制御を行う。
【0024】
また所定時間の間隔とは、予め決められた時間であり、この時間はインクタンクヒータ5の温度が所定の温度で一定に保たれているとき、加熱しても目標上限温度以上とならない時間であり、かつ加熱せずに放置しても目標加減温度以下とならない時間であり、この時間はROM14に記憶され、必要に応じて読み書きする。真空ポンプ制御機47における所定時間の間隔とは、真空ポンプ46を駆動した際、目標上限圧力以下とならない時間であり、かつ停止し、放置しても目標加減圧力以上とならない時間である。この時間は真空ポンプ制御機47内のメモリに記憶されている。
【0025】
インク供給回路18は、後述するインク供給系28のアクチュエータを駆動し、メインタンク29からインクタンク62、脱気モジュール60を介し、サブタンク2へインクを供給する。このとき、インクタンク62から脱気モジュール60の間に設置されたインク供給圧力センサ27によりインク供給時の脱気モジュール60にかかる圧力を監視する。サブタンク2はヘッドのオリフィスにメニスカスを形成させるようインクの水頭値を調整している。サブタンク2があるため脱気モジュール60の圧損やインクタンク62の容量によって発生するインクジェットヘッド19に対する水頭値変動は無視できる。
【0026】
サブタンク2にはサブタンク液量センサ26が備わって、サブタンク2内の液量を検出する。サブタンク液量センサ2の出力をサブタンク液量検出回路49によって受け、制御部11へ液量を出力する。サブタンク2内のインクが少なくなると供給し、予め決められた量に達すると供給を停止するように制御部11が制御する。
【0027】
また、インク供給回路18はインク供給系28のアクチュエータをPWM制御で駆動することができる。また、インクタンク温度検知センサ10で検知されたインクタンク62内のインク温度がインク供給時に目標値以下に下がった場合、目標温度との乖離量からインク供給の流量をPWM制御によって調整することができる。すなわち目標温度よりインク温度が、高くなるほどインク供給の流量を大きくし、低くなるほどインク供給の流量を小さくする。
【0028】
インクジェットヘッド制御回路21は、制御部11からの信号を基に吐出制御回路39でヘッドの吐出動作を決定し、印字データをインクジェットヘッド19へ転送し、転送された印字データに基づいてインクジェットヘッド19からインクを吐出する。キャリッジエンコーダ30はリニアスケール31のメモリを検出し、レール8に沿って移動するキャリッジ24の移動量に応じて、パルス列を制御部11へ出力する。インクジェットヘッド制御回路21は、キャリッジエンコーダ30からのパルス数のカウントに基づいて演算されたキャリッジ24の速度と現在位置を取得する。また、このパルス列からインクの吐出タイミングが生成される。インクジェットヘッド制御回路21は、この吐出タイミングと位置に基づいて、インクジェットヘッド19の吐出制御を行う。また、制御部11は、キャリッジエンコーダ30からのパルス数をカウントし、それに基づいてモータ制御回路16への出力信号を決定し、キャリッジ24のレール8に沿った往復移動を制御する。リニアスケール31はキャリッジ24の移動範囲に延在させてある。記録媒体搬送モータ20によって駆動する記録媒体搬送ローラ23によって記録媒体9が搬送される。キャリッジ駆動モータ22によってキャリッジ24がレール8に沿って往復移動する。吐出制御回路39によってインクジェットヘッド19が駆動され、記録媒体9にインクが吐出される。
【0029】
また好ましくは、インクタンク62と脱気モジュール60の間のインク供給チューブ32の外周を断熱材で覆うことで、加熱したインクを冷やさないようにして供給する。
【0030】
図2は、本実施形態のインクジェットプリンタの概略図である。図3は本発明インクジェットプリンタの複数色分あるインク供給路のうち1色のみを示したものである。ここで、メインタンク29からインクジェットヘッド19までのインク供給経路を中心に説明する。インクジェットプリンタ1は、キャリッジ24にインクジェットヘッド19が搭載されている。インクジェットヘッド19は、色毎に1個設け、ここでは8色分の8個のインクジェットヘッド19がキャリッジ24に搭載されている。本体にはインクジェットヘッド19毎に1個のサブタンク2が搭載されている。キャリッジ24は、レール8に沿って往復移動する。記録媒体9上に往復移動するインクジェットヘッド19によってインクを吐出し、所望の画像を形成する。メインタンク29のインクはインク供給チューブ32を介してインクタンク62、脱気モジュール60、サブタンク2を介しインクジェットヘッド19に供給される。サブタンク2からキャリッジ24までの区間では、インク供給チューブ32はケーブルベア25の中を通る。
【0031】
メンテナンス装置17は、インクジェットヘッド19のメンテナンスをおこなう。メンテナンス装置17は、キャップを有し、非使用時はインクジェットヘッド19にキャップをしてインクの乾燥を防止する。また、インクを吸引することでインク詰まりを防止する。また、インクを吸引することによってインクジェットヘッド19へインクを充填する。
【0032】
インクタンク62とメインタンク29の間のインク供給チューブ32の途中にインク供給モータ33が配置されている。メインタンク29内の非脱気インクは、インク供給モータ33を駆動することで、インク供給チューブ32を通ってインクタンク62に供給される。インクタンク62に供給された非脱気インクは、インクタンクヒータ5による加熱後に、脱気モジュール60に供給される。そこで脱気されたインクがサブタンク2に供給されて、そこに一時的に収納される。そして、サブタンク2からインクジェットヘッド19に脱気されたインクが供給され、インクジェットヘッド19から記録媒体9上にインクが吐出される。
【0033】
分岐部45は各色にそれぞれ設置されている脱気モジュール60を一つの真空ポンプ46で同時に減圧するために用いる。この分岐部45によって、一つの真空ポンプ46と8色分の8つの脱気モジュール60が接続される。
【0034】
インク供給系28は、メインタンク29、インク供給チューブ32、インク供給モータ33、フィルタ37、サブタンク2、サブタンク液量センサ26、インクタンク62、インクタンクヒータ5、インクタンク温度検知センサ10、エアチューブ34、真空ポンプ46、真空ポンプ制御機47、エアバッファ36、トラップ38、分岐部45、真空度圧力センサ35、インク供給圧力センサ27、インクジェットヘッド19、脱気モジュール60、インクタンク液量センサ4を備える。インク供給系28は、メインタンク29からインクジェットヘッド19までの間のインクの供給路及び脱気システムによって構成させる。エアチューブ34、真空ポンプ46、真空ポンプ制御機47、エアバッファ36、トラップ38、分岐部45、真空度圧力センサ35、インク供給圧力センサ27、脱気モジュール60によって脱気ユニット61が構成されている。脱気ユニット61はインクを脱気させるための脱気手段である。
【0035】
インク供給モータ33を動力源として、メインタンク29からサブタンク2へ、インク供給チューブ32、インクタンク62、脱気モジュール60を介して圧送する。このとき、脱気モジュール60にて非脱気インクは脱気される。サブタンク2に設けられているサブタンク2内の液量を検知するサブタンク液量センサ26でサブタンク2内が満タンと検知されるまでインクが供給され続ける。その際、インク供給圧力センサ27によって脱気モジュール60にかかる圧力を監視し、脱気モジュール60が何らかの原因で詰まり、破損する可能性のある圧力になる前にインク供給モータ33を停止する。その際、インク供給路が開放状態となるようインク供給モータ33を停止する。また、メインタンク29とインクタンク62の間にフィルタ37を設け、脱気モジュール60へごみ等が流れ込まないようする。また、サブタンク2内の減少するインク量は、インクジェットヘッド制御回路21の吐出液量カウント回路40でインク吐出量をカウントすることで行う。一定量のインクが消費された後、インク供給モータ33によってインクをサブタンク2に補充する。
【0036】
また、真空ポンプ46を駆動し、エアバッファ36、エアチューブ34、トラップ38、分岐部45を介し、脱気モジュール60内を減圧し、真空ポンプ制御機47によって読み取れる脱気モジュール60内の圧力が適正値となるように制御する。エアバッファ36は、圧力の急激な変化を緩和するために備えられたものである。トラップ38は脱気モジュール60内から何らかの原因でエアチューブ34にインクが流入し、真空ポンプ46及び真空ポンプ制御機47にインクが浸入しないための予防手段である。
【0037】
インクタンクヒータ5は、前述のインクタンク制御回路6によって、インクタンクヒータ温度検知センサ10の検知結果に基づいてON/OFFすることでインクタンク62内インク温度を可変し、非脱気インクが脱気モジュール60において適正となる脱気率となるインク温度にする。
【0038】
図4は、本実施形態におけるサブタンク2へのインク供給フローである。
インクジェットヘッド19にインクを供給するためにまずはメインタンク29からサブタンク2にインクを供給する必要がある。そのためまず、ユーザにより電源が立ち上がるとインクタンクヒータ5の制御及び真空ポンプ46の制御が開始される(S1)。サブタンク液量センサ26によりサブタンク2内のインク残量を検知し、予めROM14に記憶された満タンに相当する値と比較し、サブタンク2内インクが満タンであるか否か判断される(S2)。インク量が満タンの場合はステップS6に進み、制御終了となる。インク量が満タンでない場合はステップS3に進み、インクタンクヒータ温度検知センサ10によってインクタンク62内のインク温度を検出し、インク温度が所定の温度、例えば313.15K以上、であるか判断する。ここで、313.15Kとはインクを加熱するときの下限の温度である。所望の脱気率を得る為に必要なインクの下限温度が分かるので、それ以上の温度に加熱する。上限の温度が予め決められてあり下限温度との範囲内でインク温度を保つ制御がされている。インク温度が313.15K以下であるとき、ステップS5に進み、インクタンク62内のインク温度が313.15K以上になるまでインク供給はせず、インクを加熱する。インク温度が313.15K以上である場合は、ステップS4に進み、インク供給回路18に制御信号が送信され、脱気モジュール60によりインクの脱気を行いながらサブタンク2が満タンとなるまでインクを供給する。サブタンク2が満タンとなったらステップS6に進み、制御は終了となる。
【0039】
図5は、本実施形態における脱気モジュールが破壊される恐れのある圧力が発生した場合のインク供給緊急停止フローである。まず、メインタンク29からサブタンク2にインク供給を行う際にて制御開始となる(S7)。まずインク供給圧力センサ27にて脱気モジュール60に対してかかる圧力を検出し、インク供給圧力センサ27の圧力値を制御部11に出力し、その圧力値が異常圧力であるか否か判断する(S8)。異常圧力であるか否かは、予めROM14に記憶された圧力範囲の設定値とインク供給圧力センサ27から取得した圧力値とを比較し、範囲内なら正常、範囲外なら異常と判断する。インク供給圧力センサ27で取得した圧力値に異常がない場合はステップS9に進み、減圧側に設置されている真空度圧力センサ35で検出された圧力値が異常でないか否か制御部11にて判断する(S9)。異常圧力であるか否かは、予めROM14に記憶された圧力範囲の設定値と真空度圧力センサ35から取得した圧力値とを比較し、範囲内にあれば正常と判断し、範囲外なら異常と判断する。減圧側圧力に異常がない場合は、ステップS13に進み、制御終了となる。ステップS8、S9においてどちらか一方でも異常圧力と判断された場合は、ステップS10に進み、インク供給モータ33をインク供給系28が開放状態となる位置で停止させる。インク供給モータ33はインクタンク62とメインタンク29の間にあり、モータの停止位置を制御することで、その間を連通させるか閉じるかできる。制御部11によって、インク供給回路18を制御し、インク供給モータ33の停止位置を制御する。その後、ステップS11にて印字中であるか否か制御部11で判断し、印字中でなければステップS13に進み、制御終了となる。ステップS11にて印字中であった場合、ステップS12にて印字を停止した後、ステップS13で制御終了となる。
【0040】
図6は、本実施形態のインクタンクヒータの概略図である。インクタンクヒータ5は、シールドパイプ52、そのシールドパイプ52の中にあり図中点線で示されているヒータ線3、シールドパイプ52の中を満たしている充填剤51、からなるヒータ部7と、インクタンク温度検知センサ10、一対の放熱板金53、接続子54、ハーネス55と、一対の放熱板金53を結合させるボルトとナットなどの接続手段を有し、構成されている。ヒータ線3は外周部をシールドパイプ52によって覆うことで保護される。放熱板金53にはシールドパイプ52を配置するための凹部が形成されている。まず、シールドパイプ52にヒータ線3を通し、高熱伝導率の充填剤51でシールドパイプ52とヒータ線3を熱的に接続する。ヒータ線3は放熱板金53に設けられた溝内に置かれる。その後、インクタンク温度検知センサ10とともに一対の放熱板金53で挟み込み、ボルトとナットにより固定する。シールドパイプ52及びインクタンク温度検知センサ10は放熱板金53と熱的に接続させるため、隙間に高熱伝導率の充填剤51を充填するのが好ましい。高熱伝導率の充填剤51として、窒化アルミ粉末などアルミニュウムを含むペースト状の樹脂などを用いることができる。放熱板金53はインクタンク62に挿入させるために先端と末端の幅を同じくし、平板状に形成されている。さらに好ましくは表面に凹凸部を設けることでインクとの接触面積を大きくする。
【0041】
また、ヒータ線3とハーネス55を接続子54で繋ぎ、ハーネス55をインクタンクヒータ駆動回路43の出力側に接続し駆動する。放熱板金53によってインクと接する表面積が大きくなるので、ヒータ線3からの熱を効率よくインクタンク62内のインクに伝えることができる。狭い範囲で加熱するとインクの一部だけが加熱されるが、放熱板金53によって広い範囲で加熱でき、場所による温度差を抑えることができる。
【0042】
このように、放熱手段として放熱板金53を加熱手段としてヒータ線3をもちいてインクタンク62内のインクを加熱するヒータを構成している。
【0043】
図7は、インクタンクヒータの設置図である。インクタンクヒータ5をインクタンク62に設置する例を示す。インクタンク62は、インク供給チューブ32と接続され、インク供給チューブ32を介してインクタンク62内のインクの流入と流出がされる。インクタンク液量センサ4はインクタンク62内のインクの量の検知を行う。インクタンク62には、インクタンクヒータ5を挿入する開口部であるインクタンクヒータ挿入口56が2箇所ある。インクタンクヒータ5の使用個数は、ヒータのヒート能力、インクの熱容量、加熱時間などの要因によって個数が決められる。インクタンク62のインクタンクヒータ挿入口56にインクタンクヒータ5を挿入する際、シールド性のあるOリング57を挿入口周囲に設置する。これは、シールド性が向上し、インク漏れが防止できる。インクタンクヒータ5の挿入後はボルトにより固定する。使用しない挿入口に関しては、蓋50を用意しておき、前記のOリング57を挟み、ボルトで固定することで気密性を確保する。インクタンク62は、例えば気泡入りの樹脂などの熱伝導率の低いもので全体を覆うようにし、インクタンク62内部と外部とを断熱する。断熱することで、インクタンクヒータ5によって加熱した熱を逃げにくくする。好ましくはさらに、インクタンクヒータ5をインクタンク62に挿入したときに、インクタンクヒータ5の周囲から熱が逃げないように、ハーネス55、接続子54の周囲および放熱板金53の上部などの外部との露出部分に、断熱材を配置し、放熱板金53から放熱される熱を少なくする。インクタンク62を熱伝導率の低いプラスチック材で形成しても良い。
【0044】
また、カラーのインクジェットプリンタはY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)等の多色で画像を構成する。本実施形態では8色であるが、印字画像によっては全色を使用しない場合もあり、そのような場合、使用しない色のインクヒータを使用する色のインクタンクに装着することで、1つのインクタンクに与える熱量を増加させることができ、ウォーミングアップ時間を短縮させることができる。
【0045】
図8は、インクタンクヒータの別の形態を示す概略図である。IHヒータ型インクタンクヒータ5の構造図を示したものである。インク供給チューブ32は、インクタンク62内のインクの流入と流出の経路である。インクタンク液量センサ4によってインクタンク62内のインクの量の検知を行う。インクタンク62に加熱導体59を挿入した状態でインクタンク62を組み立て、インクタンク62外部に誘導コイル58を設ける。インクタンク温度検知センサ10は加熱導体59に配置され、その出力信号より、インクタンク62内インク温度を制御する。これによって、インクタンク62内に配置された加熱導体59とインクとの接触面を広くすることができるので、インク加熱を効率よく行うことができる。
【符号の説明】
【0046】
1 インクジェットプリンタ
2 サブタンク
3 ヒータ線
4 インクタンク液量センサ
5 インクタンクヒータ
6 インクタンク制御回路
7 ヒータ部
8 レール
9 記録媒体
10 インクタンク温度検知センサ
11 制御部
12 インターフェース
13 RAM
14 ROM
15 搬送モータエンコーダ
16 モータ制御回路
17 メンテナンス装置
18 インク供給回路
19 インクジェットヘッド
20 記録媒体搬送モータ
21 インクジェットヘッド制御回路
22 キャリッジ駆動モータ
23 記録媒体搬送ローラ
24 キャリッジ
25 ケーブルベア
26 サブタンク液量センサ
27 インク供給圧力センサ
28 インク供給系
29 メインタンク
30 キャリッジエンコーダ
31 リニアスケール
32 インク供給チューブ
33 インク供給モータ
34 エアチューブ
35 真空度圧力センサ
36 エアバッファ
37 フィルタ
38 トラップ
39 吐出制御回路
40 吐出液量カウント回路
41 インクタンクヒータPWM制御回路
42 インクタンクヒータON/OFF制御回路
43 インクタンクヒータ駆動回路
44 インクタンク温度検出回路
45 分岐部
46 真空ポンプ
47 真空ポンプ制御機
49 サブタンク液量検出回路
50 蓋
51 充填剤
52 シールドパイプ
53 放熱板金
54 接続子
55 ハーネス
56 インクタンクヒータ挿入口
57 Oリング
58 誘導コイル
59 加熱導体
60 脱気モジュール
61 脱気ユニット
62 インクタンク
63 インクタンク液量検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非脱気インクを収納するメインタンクから前記非脱気インクが供給され、供給された前記非脱気インクを一時的に収納すると共に前記非脱気インクを加熱するインクタンクと、前記インクタンクから前記非脱気インクが供給され、通過する非脱気インクの温度上昇に伴い脱気率が向上する脱気モジュールと、前記脱気モジュールにて脱気された脱気インクを一時的に収納するサブタンクと、前記サブタンクから前記脱気インクの供給を受けて前記脱気インクを吐出するインクジェットヘッドと、を有するインクジェットプリンタにおいて、
前記インクタンク内に配置する放熱手段と、前記放熱手段の内部に配置された前記放熱手段を加熱する加熱手段と、前記放熱手段の内部に配置された温度検出センサと、前記温度検出センサの検出温度に基づいて前記加熱手段を制御する制御手段と、を有することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記インクタンクは開口部を複数有し、前記放熱手段は前記インクタンクに固定するための固定部を有し、前記開口部に前記放熱手段を挿入するとともに前記固定部によって前記インクタンクに固定し、前記開口部に挿入された前記放熱手段の数に応じて加熱能力を可変することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記放熱手段は前記加熱手段を内部に配置するための凹部を有し、
前記凹部に前記加熱手段を配置した時に生じる隙間に熱伝導充填剤が充填されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記放熱手段は前記温度検出センサを内部に配置するための溝を有し、前記溝に前記温度検出センサを配置した時に生じる隙間に熱伝導充填剤が充填されていることを特徴とする請求項3に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記メインタンクから前記インクタンクに前記非脱気インクを供給するためのインク供給モータを有し、
前記制御手段は、予め決められた第1の温度より前記温度検出センサの検出温度が低い場合に前記加熱手段によって加熱し、予め決められた第2の温度より前記温度検出センサの検出温度が高い場合に前記加熱手段の加熱を停止し、前記温度検出センサの検出温度が低下傾向にある場合にインク供給モータの単位時間あたりの回転数を可変して前記インクタンク内に流入する前記非脱気インクの量を少なくすることで前記非脱気インクの温度低下を抑制することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記加熱手段はヒータ線と、前記ヒータ線の外周部に前記ヒータ線を保護するシールドパイプとを有し、前記ヒータ線と前記シールドパイプの隙間に熱伝導充填剤が充填されており、前記凹部に前記シールドパイプを配置することを特徴とする請求項4に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記インクタンクの外周を断熱材によって覆うことを特徴とする請求項6に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
誘導コイルが前記インクタンク外に配置され、前記加熱手段は前記誘導コイルに流す電流に応じて発熱する加熱導体であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−207017(P2011−207017A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76372(P2010−76372)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
【出願人】(395003187)株式会社セイコーアイ・インフォテック (173)
【Fターム(参考)】