説明

インクジェットヘッドおよびインクジェットヘッドの製造方法

【課題】気泡によって接着剤の外面に窪みが形成されることを抑制できるインクジェットヘッドを提供する。
【解決手段】一つの実施の形態に係るインクジェットヘッドは、基材と、アクチュエータと、接着剤と、導電パターンとを備える。前記基材は、実装面を有する。前記アクチュエータは、前記基材の実装面に対向した第1の面と、前記第1の面の反対側に位置する第2の面と、前記第1の面と前記第2の面との間に跨る一対の側面と、を有する本体と、複数の溝と、前記本体の側面に設けられ、前記基材の実装面に向く接着面を有する接着剤充填部とを有する。前記接着剤は、前記接着剤充填部に充填されて前記アクチュエータを前記基材の実装面に固定し、前記本体の側面に連続する外面を有する。前記複数の導電パターンは、前記本体の側面、前記複数の溝のそれぞれの内面、前記接着剤の外面、および前記基板の実装面に連続して設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、インクジェットヘッドおよびインクジェットヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるサイドシュータ型のインクジェットヘッドにおいて、インクを吐出するためのアクチュエータは、接着剤によってベースプレートに取り付けられる。この接着剤は、ベースプレートに対向するアクチュエータの底面に一様に塗布される。
【0003】
アクチュエータには複数の圧力室を形成する複数の溝が設けられている。この溝、溝が開口するアクチュエータの側面、アクチュエータとベースプレートとの間に介在する接着剤、およびベースプレートに、連続する導電パターンが形成される。この導電パターンに電圧が印加されることで、アクチュエータがシェアモード変形し、圧力室内のインクが吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−195689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の導体パターンが形成される前に、アクチュエータの側面は、傾斜するように切削加工される。同時に、アクチュエータとベースプレートとの間で硬化した接着剤も切削される。
【0006】
アクチュエータの底面に塗布された接着剤は、アクチュエータがベースプレートに取り付けられる際、空気を取り込むおそれがある。この空気は、接着剤の内部に気泡を形成する。もし切削された接着剤の外面に、気泡によって形成された窪みが存在すると、導電パターンの形成に影響が生じ得る。
【0007】
本発明の目的は、気泡によって接着剤の外面に窪みが形成されることを抑制できるインクジェットヘッドおよびインクジェットヘッドの製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの実施の形態に係るインクジェットヘッドは、基材と、アクチュエータと、接着剤と、導電パターンとを備える。前記基材は、実装面を有する。前記アクチュエータは、本体と、複数の溝と、接着剤充填部とを有する。前記本体は、前記基材の実装面に対向した第1の面と、前記第1の面の反対側に位置する第2の面と、前記第1の面と前記第2の面との間に跨るとともに前記第2の面との角度が鈍角となるように傾斜された一対の側面と、を有する。前記複数の溝は、前記本体の第2の面および一対の側面に開口し前記本体の長手方向に並ぶ。前記接着剤充填部は、前記本体の側面に設けられ、前記基材の実装面に向く接着面を有する。前記接着剤は、前記接着剤充填部に充填されて前記アクチュエータを前記基材の実装面に固定するとともに、前記本体の側面に連続する外面を有する。前記複数の導電パターンは、前記本体の側面、前記複数の溝のそれぞれの内面、前記接着剤の外面、および前記基板の実装面に連続して設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施の形態に係るインクジェットヘッドを分解して示す斜視図。
【図2】第1の実施形態のインクジェットヘッドを図1のF2−F2線に沿って示す断面図。
【図3】第1の実施形態のベースプレートおよびアクチュエータの一部を拡大して示す斜視図。
【図4】第1の実施形態のベースプレートに搭載されたアクチュエータを拡大して示す断面図。
【図5】第1の実施形態のベースプレートの一部と加工前のアクチュエータとを示す断面図
【図6】第1の実施形態のベースプレートに固定された加工前のアクチュエータを示す断面図。
【図7】第1の実施形態の加工前のアクチュエータの一部を拡大して示す断面図。
【図8】第1の実施形態の加工されたアクチュエータを示す断面図。
【図9】第2の実施の形態に係るベースプレートに搭載されたアクチュエータを示す断面図。
【図10】第2の実施形態のベースプレートに固定された加工前のアクチュエータを示す断面図。
【図11】第3の実施の形態に係るベースプレートに搭載されたアクチュエータを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、第1の実施の形態について、図1から図8を参照して説明する。図1は、インクジェットヘッド1を分解して示す斜視図である。図2は、図1のF2−F2線に沿ってインクジェットヘッド1の一部を示す断面図である。
【0011】
図1に示すように、インクジェットヘッド1は、いわゆるサイドシュータ型のインクジェットヘッドであり、例えばプリンタのキャリッジに搭載される。インクジェットヘッド1は、ベースプレート11と、一対のアクチュエータ12と、枠部材13と、ノズルプレート14とを備えている。ベースプレート11は、基材の一例である。また、図2に二点鎖線で示すように、インクジェットヘッド1は、マニホールド15と、フィルムキャリアパッケージ(以下、FCPと称する)16とを備えている。
【0012】
図2に示すように、一対のアクチュエータ12と、枠部材13とは、ベースプレート11に取り付けられている。ノズルプレート14は、枠部材13に取り付けられている。インクジェットヘッド1の内部に、ベースプレート11、枠部材13、およびノズルプレート14によって囲まれたインク室17が形成されている。
【0013】
図1に示すように、ベースプレート11は、例えばアルミナのようなセラミックスによって矩形の板状に形成されている。図2に示すように、ベースプレート11は、平坦な実装面21と、取付面22と、外縁23とを有している。取付面22は、実装面21の反対側に位置している。外縁23は、実装面21と取付面22との間に跨っている。取付面22は、マニホールド15に固定されている。
【0014】
ベースプレート11の実装面21には、複数の供給口26と、複数の排出口27とが開口している。図1に示すように、複数の供給口26は、ベースプレート10の中央部において、ベースプレート10の長手方向に並んでいる。供給口26は、インク室17に開口するとともに、マニホールド15を介してインクタンクに接続される。前記インクタンクに貯蔵されたインクは、供給口26からインク室17に供給される。
【0015】
複数の排出口27は、一列に並んだ供給口26を挟むように、ベースプレート11の長手方向に沿って二列に並んでいる。排出口27は、インク室17に開口するとともに、マニホールド15を介して前記インクタンクに接続される。インク室17のインクは、排出口27を通って前記インクタンクに回収される。
【0016】
枠部材13は、例えば接着剤によって実装面21に固定されている。枠部材13は、矩形の枠状に形成されている。枠部材13は、複数の供給口26および複数の排出口27を囲んでいる。
【0017】
枠部材13は、ニッケル合金製の複数のプレートを例えば拡散接合することによって形成されている。なお、接合には、拡散接合に限らず、陽極接合や他の真空接合のような他の接合方法が用いられても良い。
【0018】
ノズルプレート14は、ポリイミド製の矩形のフィルムによって形成されている。なお、ノズルプレート14はこれに限らず、レーザ加工が可能な他の樹脂材料によって形成されても良い。
【0019】
ノズルプレート14は、例えば接着剤によって枠部材13に固定され、インク室17を塞いでいる。ノズルプレート14は、ベースプレート11の実装面21と対向している。
【0020】
ノズルプレート14に、複数のノズル28が設けられている。ノズル28は、インク室17にそれぞれ開口した孔である。複数のノズル28は、ノズルプレート14の長手方向に沿って二列に並んでいる。
【0021】
図3は、ベースプレート11および一つのアクチュエータ12の一部を拡大して示す斜視図である。図4は、ベースプレート11に搭載されたアクチュエータ12を拡大して示す断面図である。図3において、アクチュエータ12の一部は切断されて示されている。一対のアクチュエータ12は互いに同様の構成および機能を有するため、以下では一つのアクチュエータ12について代表して説明する。
【0022】
図1に示すように、アクチュエータ12は、一列に並んだ複数の供給口26と、複数の排出口27の一方の列との間に挟まれている。アクチュエータ12は、複数のノズル28の一方の列に対応して配置されている。図2に示すように、アクチュエータ12は、インク室17の内部に配置され、ベースプレート11とノズルプレート14との間に挟まれている。
【0023】
図3に示すように、アクチュエータ12は、本体31と、複数の溝32と、一対の接着剤充填部33,34とを有している。本実施形態において、接着剤充填部33,34は、いわゆる切欠である。
【0024】
本体31は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)によって形成された板状の二つの圧電体によって形成されている。前記二つの圧電体は、分極方向がその厚さ方向に互いに逆向きになるように貼り合わされている。
【0025】
図2に示すように、本体31は、第1の面35と、第2の面36と、一対の側面37,38とを有している。第1の面35は、ベースプレート11の実装面21に対向する面である。第1の面35は、平坦に形成されており、実装面21に当接している。
【0026】
第2の面36は、第1の面35の反対側に位置している。第2の面36は、ノズルプレート14に対向している。第2の面36は、例えば接着剤によってノズルプレート14に固定されている。第2の面36の幅は、例えば1mmである。第1の面35から第2の面36までの高さは、例えば500μmである。
【0027】
一対の側面37,38は、本体31の幅方向の側面である。一対の側面37,38は、第1の面35から第2の面36に進むに従って、互いに近づく方向に傾斜している。言い換えると、一対の側面37,38は、第2の面36との間の角度が鈍角となるように傾斜している。一対の側面37,38と第2の面36との間の角度は、例えば135°である。図2に示すように、本体31は、略台形状の断面を有する。
【0028】
一方の側面37は、他方の側面38よりも、ベースプレート11の外縁23および枠部材13に近い。一方の側面37は、第1の面35の幅方向における一方の端部と、第2の面36の幅方向における一方の端部との間に跨っている。
【0029】
他方の側面38は、一方の側面37よりも、ベースプレート11の中央部に近い。他方の側面38は、第1の面35の幅方向における他方の端部と、第2の面36の幅方向における他方の端部との間に跨っている。
【0030】
図3に示すように、複数の溝32は、本体31の長手方向に並んで設けられている。複数の溝32は、本体31の第2の面36、および一対の側面37,38に連続して開口している。溝32の幅は、例えば85μメートルである。溝32の底面から第2の面36までの高さは、300μmである。溝32は本体31の幅方向に対して僅かに傾斜するように形成されるが、図3において溝32は本体31の幅方向に沿うように示される。
【0031】
アクチュエータ12が供給口26と排出口27との間に配置されるため、供給口26からインク室17に供給されたインクは、複数の溝32にそれぞれ流入する。各溝32に流入したインクは、アクチュエータ12によって吐出されるか、排出口27から前記インクタンクに回収される。
【0032】
複数の溝32によって、アクチュエータ12に複数の壁部41が形成される。壁部41は、隣り合う溝32を仕切るとともに、溝32の内面の一部を形成する。
【0033】
図2に示すように、複数の溝32は、複数のノズル28に対応して設けられている。ノズル28は、対応する溝32に向かって開口している。なお、溝32の個数とノズル28の個数とは異なっていても良い。例えば、ノズル28の個数は、一対のアクチュエータ12の溝32の個数よりも少ない。
【0034】
一方の接着剤充填部33は、一方の側面37に設けられている。他方の接着剤充填部34は、他方の側面38に設けられている。一対の接着剤充填部33,34は、アクチュエータ12の長手方向における一端から他端まで延びている。
【0035】
図4に示すように、一対の接着剤充填部33,34は、接着面43と他の接着面44とによってそれぞれ形成されている。接着面43と他の接着面44とは、それぞれ本体31の一部である。接着面43は、一対の側面37,38とそれぞれ交差している。接着面43は、ベースプレート11の実装面21と対向する平坦な面である。実装面21から接着面43までの高さは、例えば5〜10μmである。なお、図2ないし図8において、実装面21から接着面43までの高さは、便宜上、大きく描かれている。
【0036】
他の接着面44は、接着面43と第1の面35との間に跨って設けられた平坦な面である。他の接着面44は、接着面43と直交するとともに、第1の面35と直交している。なお、他の接着面44は、第1の面35に対して傾斜していても良い。
【0037】
一対の接着剤充填部33,34に、それぞれ接着剤46が充填されている。接着剤46は、例えば熱硬化性のエポキシ系接着剤である。接着剤46は、一対の接着剤充填部33,34の接着面43および他の接着面44と、ベースプレート11の実装面21とにそれぞれ付着している。接着剤46は硬化しており、アクチュエータ12の本体31を、ベースプレート11の実装面21に固定している。
【0038】
接着剤46は、一対の外面48,49を有している。一方の外面48は、本体31の一方の側面37に連続して形成されている。他方の外面49は、本体31の他方の側面38に連続して形成されている。このため、一対の外面48,49は本体31の第2の面36に対して、本体31の一対の側面37,38と同じく、例えば135°傾斜している。なお、一対の外面48,49と第2の面36との間の角度は、本体31の一対の側面37,38と実装面21との間の角度と異なっていても良い。
【0039】
ベースプレート11と一対のアクチュエータ12とに、複数の導体パターン51が設けられている。導体パターン51は、例えば無電解メッキによって形成されたニッケル薄膜によって構成されている。複数の導体パターン51は、電極52と、配線53とをそれぞれ有している。
【0040】
電極52は、複数の溝32のそれぞれの内面に設けられている。配線53は、本体31の一方の側面37、接着剤46の一方の外面48、およびベースプレート11の実装面21に連続して設けられている。配線53の一方の端部は、電極52に接続されている。図2に示すように、配線53は、ベースプレート11の実装面21と枠部材13との間を通り、ベースプレート11の外縁23に至るまで延びている。
【0041】
ベースプレート11の実装面21において、配線53にFCP16が接続されている。FCP16は、パターンが形成されるとともに可撓性を有するフィルムと、前記フィルムに実装された駆動ICと、を含んでいる。
【0042】
FCP16の前記駆動ICは、配線53を介して電極52に駆動電圧を印加する。これにより、壁部41がシェアモード変形し、溝32の容積が大きくなる。電極52に印加されていた電圧が解放されると、壁部41が元の位置に復帰する。このため、溝32に流入していたインクが加圧され、溝32に対応するノズル28から吐出される。
【0043】
以下に、図5ないし図8を参照しながら、インクジェットヘッド1の製造工程の一部である、ベースプレート11にアクチュエータ12を搭載する方法について例示する。図5は、ベースプレート11の一部と加工前のアクチュエータ12Aとを示す断面図である。図6は、ベースプレート11に固定された加工前のアクチュエータ12Aを示す断面図である。図7は、加工前のアクチュエータ12Aの一部を拡大して示す断面図である。図8は、加工されたアクチュエータ12Aを示す断面図である。上記のように、製造工程の途中にあるアクチュエータ12をアクチュエータ12Aと称する。
【0044】
図5に示すように、アクチュエータ12Aは、本体31Aと、接着剤46とを備えている。このように、製造工程の途中にある本体31を本体31Aと称する。本体31Aの断面は、略矩形状に形成されている。本体31Aは、一対の側面55,56を有している。一対の側面55,56は、第1の面35と第2の面36との間に跨っている。一対の接着剤充填部33,34は、一対の側面55,56にそれぞれ設けられている。
【0045】
まず、接着剤46を一対の接着剤充填部33,34に充填する。接着剤46は、接着剤充填部33,34のそれぞれの容積よりも僅かに多く充填される。このため、接着剤46は、第1の面35から僅かに飛び出る。
【0046】
次に、図5の矢印に示すように、本体31Aの第1の面35を、ベースプレート11の実装面21に押圧する。図6に示すように、第1の面35が実装面21に押圧されることで、接着剤46が実装面21に付着する。図7に示すように、接着剤46は、第1の面35を実装面21に押圧する力や、実装面21の濡れ性によって、実装面21の上で広がる。このように、接着剤46が実装面21に付着することによって、本体31Aが実装面21に固定される。次に、接着剤46を、例えば120℃で加熱することにより、熱硬化させる。
【0047】
次に、本体31Aおよび硬化した接着剤46の外側を切削加工する。なお、本体31Aおよび接着剤46は、切削加工に限らず、研削加工されても良い。図8に示すように、本体31Aおよび接着剤46の一部が削られ、一対の側面37,38および、一対の外面48,49が形成される。すなわち、本体31Aおよび接着剤46を削ることで、本体31の一対の側面37,38を第2の面36との間の角度が鈍角となるように傾斜させる。なお、図6および図7に、加工後に形成される一対の側面37,38および一対の外面48,49の位置を二点鎖線で示す。すなわち、図6および図7の二点鎖線は、本体31Aおよび接着剤46の削られる部分P1と、削られずに残る部分P2とを区切っている。削られる部分P1は、残る部分P2の外側に位置する。
【0048】
図7に示すように、接着剤46の中に、複数の気泡Bが存在する場合がある。気泡Bは、例えば、本体31Aがベースプレート11に押圧される際、接着剤46が本体31とベースプレート11との間の空気を取り込むことによって形成され得る。また、気泡Bは、接着剤46に含まれていた空気や水蒸気によって形成され得る。
【0049】
気泡Bは、接着剤46が広がることに伴い、外に向かって移動する。また、気泡Bは、加熱された接着剤46の粘度が下がることにより、外に向かって移動する。すなわち、気泡Bは、接着剤46の削られる部分P1に向かって移動する。削られる部分P1に位置する気泡Bは、上記のように硬化した接着剤46が切削加工されることにより除去される。
【0050】
次に、図8に示すように、本体31Aを、例えばICウェハーの切断等に用いられているダイシングソーのダイヤモンドホイールによって切削し、複数の溝32を形成する。続いて、無電解メッキにより、ベースプレート11の実装面21およびアクチュエータ12Aの表面に、ニッケル薄膜を形成する。例えばレーザ照射によるパターニングによって、前記ニッケル薄膜を分割するとともに、余計な部分を除去する。これにより、図4に示す複数の導体パターン51が形成される。以上より、アクチュエータ12がベースプレート11に搭載される。
【0051】
前記構成のインクジェットヘッド1によれば、アクチュエータ12の一対の接着剤充填部33,34に、接着剤46が充填されている。一対の接着剤充填部33,34は、一対の側面37,38にそれぞれ設けられている。すなわち、接着剤46が充填される一対の接着剤充填部33,34は、外に近い位置に設けられる。接着剤46は、接着剤充填部33,34のような狭い範囲に充填される。
【0052】
図7に示すように、ベースプレート11にアクチュエータ12を搭載する工程において、接着剤46の中に存在する気泡Bは、外に向かって移動する。すなわち、気泡Bは、接着剤46の削られる部分P1に向かって移動する。
【0053】
接着剤充填部33,34の最も内側に位置する部分は、他の接着面44である。この他の接着面44から接着剤46の削られる部分P1までの距離は、第1の面35の中央から削られる部分P1までの距離よりも短い。このため、接着剤46が第1の面35に塗布された場合に比べ、気泡Bが削られる部分P1まで移動し易い。
【0054】
以上より、もし接着剤46の中に気泡Bが存在したとしても、接着剤46が熱硬化する前に、気泡Bが接着剤46の削られる部分P1まで移動する。したがって、気泡Bは接着剤46の外面48,49が形成される位置から失せるため、気泡Bによって接着剤46の外面48,49に窪みが形成されることを抑制できる。これにより、気泡Bの窪みによって、配線53が途中で欠損したり、隣り合う配線53同士が短絡したりすることを防止できる。
【0055】
接着剤46は、接着面43と他の接着面44とによって形成された接着剤充填部33,34に充填される。これにより、接着剤46とアクチュエータ12との接触面積を大きく取ることができ、アクチュエータ12をベースプレート11の実装面21に強く固定することができる。
【0056】
本体31の第1の面35は、ベースプレート11の実装面21に当接している。これにより、接着剤46が第1の面35と実装面21の間に入り込むことにより気泡Bが削られる部分P1まで移動し難くなることを抑制できる。
【0057】
次に、図9および図10を参照して、第2の実施の形態について説明する。なお、以下に開示する複数の実施形態において、第1の実施形態のインクジェットヘッド1と同一の機能を有する構成部分には同一の参照符号を付す。さらに、当該構成部分については、その説明を一部または全て省略することがある。
【0058】
図9は、第2の実施の形態のベースプレート11に搭載されたアクチュエータ12を示す断面図である。図10は、ベースプレート11に固定された加工前のアクチュエータ12Aを示す断面図である。
【0059】
図9に示すように、一対の接着剤充填部33,34は、一対の接着面61によって形成されている。一方の接着面61は、一方の側面37と第1の面35の幅方向における一方の端部との間に跨る平坦な面である。他方の接着面61は、他方の側面38と第1の面35の幅方向における他方の端部との間に跨っている。
【0060】
一対の接着面61は、第1の面35との間の角度が鈍角となるように傾斜している。接着面61と第1の面35との間の角度は、例えば165°である。言い換えると、ベースプレート11の実装面21と接着面61との間の角度は15°である。
【0061】
第2の実施形態のアクチュエータ12をベースプレート11に搭載する工程において、図10に示すように、本体31Aの第1の面35がベースプレート11の実装面21に押圧される。図10の矢印Dで示すように、一対の接着剤充填部33,34に充填された接着剤46は、接着面61によって外に向かって押される。
【0062】
前記構成のインクジェットヘッド1によれば、一対の接着剤充填部33,34は、一方の側面37と第1の面35との間に跨る平坦な面である接着面61によって形成されている。すなわち、第2の実施形態の接着剤充填部33,34は、互いに直交する接着面43および他の接着面44によって形成された第1の実施形態の接着剤充填部33,34と異なり、角になる部分が無い。このため、接着剤充填部33,34に接着剤46を充填する際に、接着剤充填部33,34と接着剤46との間に空気が残ることを抑制できる。
【0063】
一対の接着面61は、第1の面35との間の角度が鈍角となるように傾斜している。本体31Aの第1の面35が実装面21に押圧される際に、接着剤46は、外に向かって押される。これにより、接着剤46が第1の面35と実装面21との間に入り込むことを抑制できる。
【0064】
次に、第3の実施の形態について、図11を参照して説明する。図11は、第3の実施形態のベースプレート11に搭載されたアクチュエータ12を示す断面図である。
【0065】
図11に示すように、第3の実施形態の接着剤46の一部は、本体31の第1の面35と、ベースプレート11の実装面21との間に介在する。第1の面35と実装面21との間に介在する接着剤46の一部の厚さは、接着剤充填部33,34に充填された接着剤46の一部の厚さよりも小さい。
【0066】
第1の面35と実装面21との間に介在する接着剤46の一部は、アクチュエータ12がベースプレート11に搭載される前に、第1の面35に塗布される。なお、第1の面35と実装面21との間に介在する接着剤46の一部は、接着剤充填部33,34に充填された接着剤46の一部が第1の面35と実装面21との間に入り込むことで形成されても良い。接着剤46は、第1の面35の全域に限らず、第1の面35の一部に付着していても良い。
【0067】
前記構成のインクジェットヘッド1によれば、接着剤46の一部が、本体31の第1の面35と、ベースプレート11の実装面21との間に介在する。これにより、アクチュエータ12をベースプレート11に強く固定することができる。
【0068】
なお、上述した実施形態において、接着剤充填部33,34は一対の側面37,38にそれぞれ設けられていたが、接着剤充填部はこれに限らない。接着剤充填部は、アクチュエータの本体の一方の側面にのみ設けられても良いし、本体の幅方向の側面のみならず長手方向の側面に設けられても良い。
【0069】
以上述べた少なくとも一つの実施形態のインクジェットヘッドによれば、アクチュエータは、本体の側面に設けられた接着剤充填部を有する。さらに、接着剤が、前記接着剤充填部に充填されて前記本体を基材の実装面に固定し、前記本体の側面に連続する一対の外面を有する。これにより、気泡によって前記接着剤の前記外面に窪みが形成されることを抑制できる。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1…インクジェットヘッド、11…ベースプレート、12,12A…アクチュエータ、21…実装面、31,31A…本体、32…溝、33,34…接着剤充填部、35…第1の面、36…第2の面、37,38,55,56…側面、43,61…接着面、44…他の接着面、46…接着剤、48,49…外面、51…導体パターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装面を有した基材と、
前記基材の実装面に対向した第1の面と、前記第1の面の反対側に位置する第2の面と、前記第1の面と前記第2の面との間に跨るとともに前記第2の面との角度が鈍角となるように傾斜された一対の側面と、を有する本体と、前記本体の第2の面および一対の側面に開口し前記本体の長手方向に並んだ複数の溝と、前記本体の側面に設けられ前記基材の実装面に向く接着面を有した接着剤充填部と、を有したアクチュエータと、
前記接着剤充填部に充填されて前記アクチュエータを前記基材の実装面に固定するとともに前記本体の側面に連続する外面を有した接着剤と、
前記本体の側面、前記複数の溝のそれぞれの内面、前記接着剤の外面、および前記基板の実装面に連続して設けられた複数の導電パターンと、
を具備したことを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記接着面は、前記本体の側面と交差するとともに前記基材の実装面に対向し、
前記接着剤充填部は、前記接着面と前記本体の第1の面との間に跨った他の接着面をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記接着面は、前記本体の側面と第1の面との間に跨るとともに前記第1の面との角度が鈍角となるように傾斜されたことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記本体の第1の面が、前記基材の実装面に当接したことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
前記本体の第1の面と、前記基材の実装面と、の間に前記接着剤の一部が介在したことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載のインクジェットヘッド。
【請求項6】
前記接着剤充填部は、前記本体の一対の側面にそれぞれ設けられたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載のインクジェットヘッド。
【請求項7】
実装面を有した基材と、
前記基材の実装面に対向した第1の面と、前記第1の面の反対側に位置する第2の面と、前記第1の面と前記第2の面との間に跨る一対の側面と、を有する本体と、前記本体の第2の面および一対の側面に開口し前記本体の長手方向に並んだ複数の溝と、前記本体の側面に設けられ前記基材の実装面に向く接着面を有した接着剤充填部と、を有したアクチュエータと、
を備えたインクジェットヘッドの製造方法であって、
前記接着剤充填部に接着剤を充填し、
前記本体の第1の面を前記基材の実装面に押圧することで前記接着剤によって前記アクチュエータを前記基材の実装面に固定し、
前記接着剤を硬化させ、
前記本体および前記接着剤を削ることで、前記本体の一対の側面を前記第2の面との間の角度が鈍角となるように傾斜させるとともに、前記接着剤に前記側面に連続する外面を形成し、
前記本体の側面、前記複数の溝のそれぞれの内面、前記接着剤の外面、および前記基板の実装面に連続する複数の導電パターンを形成することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項8】
前記接着面は、前記本体の側面と交差するとともに前記基材の実装面に対向し、
前記接着剤充填部は、前記接着面と前記本体の第1の面との間に跨った他の接着面をさらに有することを特徴とする請求項7に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項9】
前記接着面は、前記本体の側面と第1の面との間に跨るとともに前記第1の面との角度が鈍角となるように傾斜されたことを特徴とする請求項7に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項10】
前記本体の第1の面が、前記基材の実装面に当接したことを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれか一つに記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項11】
前記本体の第1の面と、前記基材の実装面と、の間に前記接着剤の一部が介在したことを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれか一つに記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項12】
前記接着剤充填部は、前記本体の一対の側面にそれぞれ設けられたことを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれか一つに記載のインクジェットヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−240272(P2012−240272A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111348(P2011−111348)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】