説明

インクジェットヘッドの吐出診断方法、インクジェットヘッドの吐出診断用テストパターン及びインクジェットプリンター

【課題】専用のスキャナや判定部が不要で、既設のインクジェットプリンターにも後付け可能であり、現場でインク吐出の良不良をノズルごとに正確かつ速やかに判定可能であるインクジェットヘッドの吐出診断方法等を提供する。
【解決手段】インクジェットヘッド1の各ノズル2ごとに、印刷用紙8に単位パターン6を印刷する。単位パターンは、副走査方向に印刷した診断パターン3と、診断パターンに接続して主走査方向に印刷した引き出しパターン5と、引き出しパターンの近傍に印刷して各ノズルを特定する特定パターン4からなる。テストパターンの各診断パターンを目視して良否を判断することにより、インク吐出の良否を各ノズルごとに診断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク滴を吐出して印刷用紙にドットを形成することにより所望の画像を形成するインクジェットヘッドに係り、特に、用紙にテストパターンを印刷し、このテストパターンを観察することにより、ノズルからのインク吐出状態の良否をノズルごとに診断することができるインクジェットヘッドの吐出診断方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、所定位置に固定されたプリントヘッドに対して用紙を搬送しながら印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、スキャナ部で印刷結果を読取ることによってヘッドのノズル抜けをチェックし、異常を検知するインクジェットプリンタが開示されている。この発明では、プリントヘッドは、用紙の一部分または用紙搬送部にテストパターンを印刷し、スキャナ部はプリントヘッドの印刷幅より広い範囲で用紙上のテストパターンを読取ることができる。テストパターンは、用紙の搬送方向である副走査方向と直交する主走査方向について適当な個数を置いて選択したノズルからインクを吐出し、さらに順次主走査方向にノズルを1個ずつずらして同様な吐出を行うことによって印刷する。このテストパターンをスキャナ部で読取り、線の本数を数えることで不吐出ノズルの有無を判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−9474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された発明によれば、インクジェットヘッドにおけるインク吐出の良不良を検知するために、テストパターンを読み取る専用のスキャナ部と、このスキャナ部で読み取ったテストパターンからインク吐出状態の良不良を判定する判定部を設ける必要があるため、全体の構成が複雑であるとともに、既存のインクジェットプリンターに後付けで装備させることが困難であった。そして、使用の際には、印刷したテストパターンをスキャナ部で読み取るとともに、その結果を判定部において基準データ等と比較する等して判定する構成であるため、インクジェットプリンターが設置されている現場でインク吐出の良不良について直ちに判定することは難しく、運用の容易性乃至使い勝手にも問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、専用のスキャナや判定部という複雑な構成を必要としないために低コストで構成可能であるとともに、既設のインクジェットプリンターにも容易に後付けが可能であり、さらに、インクジェットプリンターが設置されている現場でインク吐出の良不良をノズルごとに正確かつ速やかに判定可能であるため、運用が容易で使い勝手に優れているインクジェットヘッドの吐出診断方法等を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載されたインクジェットヘッドの吐出診断方法は、
印刷用紙が搬送される副走査方向と直交する主走査方向に沿って並ぶ複数のノズルを備えたインクジェットヘッドの前記各ノズルによるインク吐出の良否をテストパターンの印刷結果によって診断するインクジェットヘッドの吐出診断方法において、
前記各ノズルについて、隣接する他の前記各ノズルからの吐出によるパターンに対して副走査方向に所定の間隔をおいて所定の長さで印刷される診断パターンと、前記各診断パターンと対応するように印刷されて前記各診断パターンと対応する前記各ノズルを特定する特定パターンを、印刷用紙に印刷して前記テストパターンを生成し、
前記テストパターンの前記各診断パターンを目視して良否を判断することにより、前記各診断パターンに対応する前記各ノズルによるインク吐出の良否を前記各ノズルごとに診断することを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載されたインクジェットヘッドの吐出診断方法は、請求項1記載のインクジェットヘッドの吐出診断方法において、
対応する前記各診断パターンと前記各特定パターンの間に、前記各診断パターンと前記各特定パターンを結ぶように主走査方向に沿って引き出しパターンをそれぞれ印刷したことを特徴としている。
【0008】
請求項3に記載されたインクジェットヘッドの吐出診断用テストパターンは、
印刷用紙が搬送される副走査方向と直交する主走査方向に沿って並ぶ複数のノズルを備えたインクジェットヘッドの前記各ノズルによるインク吐出の良否を診断するために、前記インクジェットヘッドによって印刷されるインクジェットヘッドの吐出診断用テストパターンにおいて、
前記各ノズルについて、隣接する他の前記各ノズルからの吐出によるパターンに対して副走査方向に所定の間隔をおいて所定の長さで印刷される診断パターンと、前記各診断パターンと対応するように印刷されて前記各診断パターンと対応する前記各ノズルを特定する特定パターンを、印刷用紙に印刷して構成したことを特徴としている。
【0009】
請求項4に記載されたインクジェットプリンターは、
印刷用紙が搬送される副走査方向と直交する主走査方向に沿って並ぶ複数のノズルを備えたインクジェットヘッドを有し、前記各ノズルによるインク吐出の良否を診断するために前記インクジェットヘッドによってテストパターンを印刷することができるインクジェットプリンターにおいて、
前記各ノズルについて、隣接する他の前記各ノズルからの吐出によるパターンに対して副走査方向に所定の間隔をおいて所定の長さで印刷される診断パターンと、前記各診断パターンと対応するように印刷されて前記各診断パターンと対応する前記各ノズルを特定する特定パターンとによって構成される前記テストパターンを印刷するためのテストパターンデータを備えた画像メモリーと、
前記画像メモリーの前記テストパターンデータに基づいて用紙に前記テストパターンを印刷するように前記インクジェットヘッドを制御するとともに、前記各ノズルを一括して又は選択的にクリーニング処理するように前記インクジェットヘッドを駆動する制御部とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係るインクジェットヘッドの吐出診断方法、請求項3に係るインクジェットヘッドの吐出診断用テストパターン及び請求項4に係るインクジェットプリンターによれば、複数のノズルを有するインクジェットヘッドの各ノズルごとに、診断パターンと当該診断パターンに対応するノズルを特定する特定パターンの組み合わせが用紙上に印刷されるので、テストパターンを印刷して各診断パターンをその場で目視により検査すれば、その診断パターンに対応する特定ノズルのインク吐出状態の良否を、インクジェットプリンターが設置されている現場で直ちに診断することができる。テストパターンの読取手段や、読取結果を処理するための画像処理装置その他の複雑な構成は不要であるため、既設の従来のインクジェットプリンターにおいても上記テストパターンの印字情報を提供するだけで対応可能であり、本発明の上記機能を後付けすることができる。
【0011】
請求項2に係るインクジェットヘッドの吐出診断方法によれば、請求項1に係るインクジェットヘッドの吐出診断方法において、各診断パターンと各特定パターンを引き出しパターンで視覚的に関係付けたので、テストパターンの目視検査において、ある特定の診断パターンが何れのノズルに対応するとの関係を視覚的に誤認することなく、より迅速により正しく認識することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンターのインクジェットヘッドと、該インクジェットヘッドにより印刷されたテストパターンを示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンターの構成を示す機能ブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンターの制御方法の全体を示す流れ図である。
【図4】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンターの制御方法において、テスト印字処理を行なう手順を示す流れ図である
【図5】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンターの制御方法において、メンテナンス処理を行なう手順を示す流れ図である
【図6】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンターを、具体的な解像度を有する4個のインクジェットヘッドで構成した場合の具体例と、これらインクジェットヘッドによりA4用紙に長手方向を主操作方向として印刷したテストパターンを示す図である。
【図7】本発明の実施形態のテストパターンにおいて、白地の印刷用紙に対してインク色のイエローが視認しにくい場合のパターンの印刷方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態のインクジェットプリンターにおけるインクジェットヘッド1の吐出診断方法の原理を図1を参照して説明する。図1は、本実施形態のインクジェットプリンターが有するインクジェットヘッド1の一例と、このインクジェットヘッド1によって印刷用紙に印刷されるテストパターン7の一例を示している。
【0014】
このインクジェットヘッド1は、1列に並んだ複数のノズル2を備えており、印刷用紙8が搬送される副走査方向と直交する主走査方向に対し、ノズル2の列が平行となるように配置されている。各ノズル2からは、必要な数のインク滴を印刷用紙8上の同一位置に重ねて吐出することにより、それぞれ印刷用紙8上に1ドットを形成することができる。図1に示した例によれば、インクジェットヘッド1は精細度がxxxdpi(dots per inch) 、ノズル2の数がyyyy個であり、この1個のインクジェットヘッド1によって1枚の印刷用紙8に所定の色でテストパターン7を印刷できる。このようなインクジェットヘッド1が、K(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の各色ごとに設けられ、主走査方向については同一の位置となるように、副走査方向について所定間隔をおいて配置されている。なお、精細度及びノズル数の上記表記において、xxx及びyyyyは複数桁の数字を示しているが、必ずしも各桁が同一の数字であることを示すものではない。例えば、このインクジェットヘッド1が150DPI、318ノズルのインクジェットヘッドであれば、幅50mmをカバーできるので、主走査方向の幅寸法が50mm程度の印刷用紙にテストパターン7を印刷することができる。
【0015】
使用するインクの各色ごとに設けられたインクジェットヘッド1によって、K(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の各色ごとにテストパターン7を印刷する。このテストパターン7は、各ノズル2の吐出状態の良否を判定するための診断パターン3と、各診断パターン3がいずれのノズル2のものであるかを表示する特定パターン4と、診断パターン3と特定パターン4をつなぐ引き出しパターン5からなる単位パターン6の集合によって構成される。
なお、図1に示す印刷用紙8の上には、これら単位パターン6以外に、副走査方向(図中縦方向)に沿う破線が主走査方向(図中横方向)に所定間隔をおいて複数本表されているが、これらは実際に印刷用紙8上に印刷されるパターンではなく、単位パターン6相互の配置や位置関係を見やすくするための図示乃至説明上の便宜で示したものである。
【0016】
図1に示すように、診断パターン3は、副走査方向 (図中縦方向)について所定の長さで各ノズル2ごとに印刷される。この副走査方向に平行な診断パターン3の中央から、一端を当該特定パターン4に接続させて主走査方向 (図中横方向)に平行に印刷されている直線が引き出しパターン5である。そして、この引き出しパターン5の他端に近接して、この引き出しパターン5が接続している診断パターン3を個別に特定する表示が特定パターン4である。ここでは、特定パターン4として、診断パターン3と対応するノズル2を特定するノズル番号が印刷されている。
【0017】
図1に示すように、診断パターン3と引き出しパターン5と特定パターン4からなる複数の単位パターン6は、互いに重ならないように、主走査方向及び副走査方向の位置をずらし、図1に示す印刷用紙8上では、縦方向である副走査方向に対して斜めに並ぶように印刷されている。
【0018】
図1に示すインクジェットヘッド1の複数のノズル2は、制御上、ノズル2が並ぶ順序に5個で1グループとされ、各グループの各ノズル2は、副走査方向に搬送される印刷用紙8に対し、ノズル2の並び順に従って1個ずつタイミングをずらして駆動され、副走査方向に所定の間隔を置いた異なる位置にそれぞれインクを吐出し、その結果、主走査方向及び副走査方向について異なる位置にそれぞれ診断パターン3を印刷している。このようなインクジェットヘッド1の制御により形成されたテストパターン7の詳細を説明する。まず図1に示すように、図示印刷用紙8の左上の隅に印刷された特定パターン4が「001」の単位パターン6から、順次副走査方向にずれながら、右下方にかけて斜めに並ぶように各単位パターン6が印刷され、特定パターン4が「005」の単位パターン6までが第1組となる。次に、第1組の特定パターン「001」の単位パターン6よりも副走査方向にずれた位置に、第2組の最初の特定パターン「006」の単位パターン6が印刷され、ここから順次副走査方向にずれながら、右下方にかけて斜めに並ぶように各単位パターン6が印刷され、特定パターン「010」の単位パターン6までが第2組となる。以後、同様に、3組目以降の単位パターン6が印刷される。従って、本実施形態によれば、印刷用紙8の右下隅には、図示のように単位パターン6の最後の3組の各最終ノズル2に対応する特定パターン4が「yyy−10」である単位パターン6と、特定パターン4が「yyy−5」である単位パターン6と、特定パターン4が「yyy」である単位パターン6が印刷されている。その他の単位パターン6は図示の都合上、表示を省略した。なお、パターンの説明の便宜上、ノズル2の組ごとに単位パターン6の並び方を説明したが、テストパターン7の全体を印刷用紙8に印刷する際には、ノズル2の組ごとにインクジェットヘッド1を駆動するものではなく、副走査方向に搬送される印刷用紙8に対して主走査方向に並んだ各ノズル2を適宜の駆動タイミングで駆動し、テストパターン7の全体を一回の動作で印刷することになる。
【0019】
本実施形態のインクジェットプリンターにより、図1に示したようなテストパターン7を印刷用紙8に印刷すれば、このテストパターン7をユーザーが目視検査することで、インクジェットヘッド1の吐出状態の良否を診断することができる。具体的には、まずテストパターン7を視認し、各診断パターン3に問題がないかどうかを確認する。診断パターン3は副走査方向について所定の長さで印刷されることが決まっているので、その長さに達しない場合や、部分的に途切れている場合、又はインクの濃度が定められたものより薄い場合等には、当該診断パターン3に対応するノズル2には問題があるものと診断される。例えば、図1において、特定パターン4が「002」である診断パターン3は、上側に示した例Aのように、副走査方向について規定の長さで途切れずに印刷されていれば問題ないが、下側に示した例Bのように、印刷されていなかったり、又は副走査方向について途切れた状態で印刷されている等であれば、インク吐出に問題があるものと診断される。そして、その診断パターン3から横方向(主走査方向)に引き出しパターン5を辿れば、引き出しパターン5の他端の近傍に、ノズル番号を示す特定パターン4が印刷されている。すなわち、各診断パターン3と各特定パターン4を引き出しパターン5で視覚的に関係付けて間違えないようにしてある。従って、印刷用紙8に多数の単位パターン6が小さな隙間をおいて密集して印刷されていても、目視により診断した診断パターン3のノズル番号を見間違えることはない。そして、このテストパターン7は、インクジェットヘッド1のすべてのノズル2について実際に印刷された診断パターン3を含んでいるので、目視によりすべてのノズル2の良否を個々に診断することができる。
【0020】
本実施形態に係るインクジェットヘッド1の吐出診断方法によれば、上述したような構造のテストパターン7を印刷し、その中の診断パターン3の状態を目視により検査するだけで、個々のノズル2のインク吐出状態の良否を直ちに診断することができる。しかも、そのような診断をインクジェットプリンターが設置されている現場で行い、直ちに結果を得ることができるので便利である。また、テストパターン7の読取手段や、読取結果を処理するための画像処理装置その他の複雑な構成は不要であるため、既設の従来のインクジェットプリンターにおいても、上記テストパターン7の印字情報(画像情報)をインクジェットヘッド1の制御手段の記憶部に記憶させるだけで、本実施形態のようなテストパターン7を印刷する機能を後付けすることができる。
【0021】
次に、前記インクジェットプリンターの具体的な構成と、これを用いて行なうテストパターン印刷動作、そしてテストパターン7によるインクジェットヘッド1の吐出診断の結果に基づいて行なわれるメンテナンス動作について、図2〜図5を参照して説明する。
図2に示すように、このインクジェットプリンター10は、使用者の指示に従って各部に制御信号を送る操作部11と、印刷時に画像データの処理を行なう画像処理部12と、印刷時に印刷機構を駆動する機構部13から構成されている。操作部11は、使用者が指示を入力するための入力手段及び必要な情報の表示手段として、タッチパネル方式の操作パネル14を有している。また、操作部11には、操作パネル14から入力された指示に従い、後述する各部を制御するための制御信号を生成する主制御部15が設けられている。
【0022】
図2に示すように、画像処理部12には、印刷しようとする画像の元データ(生データ)を1フレームごとにビットマップ形式で格納するフレームメモリーである第1の画像メモリ部16(以下、第1画像メモリ部16と称する。)が設けられている。この第1画像メモリ部16にデータを供給する第1の供給源として、原稿から画像を読み取って画像データを出力する読取部としてのスキャナ17がある。スキャナ17から出力された画像データは、入力画像処理部18を経て第1画像メモリ部16に格納される。また、第1画像メモリ部16にデータを供給する第2の供給源として、図示しない外部のパーソナルコンピュータ(PC)等から画像データが入力されるI/F入力処理部19がある。I/F入力処理部19から入力された画像データは、ラスターイメージプロセシング(RIP)20を経て第1画像メモリ部16に格納される。I/F入力処理部19から入力された画像データがビットマップ形式のデータである場合は、そのまま第1画像メモリ部16に格納されるが、コマンドデータである場合には、ラスターイメージプロセシング(RIP)20でビットマップ画像に変換されて第1画像メモリ部16に格納される。
【0023】
図2に示すように、画像処理部12は、バッファーメモリーである第2の画像メモリ部21(以下、第2画像メモリ部21と称する。)と、必要に応じて第2画像メモリ部21を利用することにより出力画像データを生成して出力する出力画像処理部22と、出力画像処理部22からの出力画像データによって駆動されるインクジェットヘッド1(IJヘッド)を有している。スキャナ17で読み取られ、入力画像処理部18で処理されて第1画像メモリ部16に格納されたビットマップデータは、印刷時には第1画像メモリ部16から入力画像処理部18を経て、切替手段23から出力画像処理部22に供給される。ラインデータとして供給されるこのビットマップデータは、第2画像メモリ部21においてインクジェットヘッド1のノズル配置に対応して適当に分割され、出力画像処理部22によって順次インクジェットヘッド1に与えられる。外部のPCからI/F入力処理部19を経由して入力され、第1画像メモリ部16に格納されたビットマップデータは、印刷時には第1画像メモリ部16からラスターイメージプロセシング(RIP)20を通過し、切替手段23から出力画像処理部22に供給される。ラインデータとして供給されるこのビットマップデータは、第2画像メモリ部21においてインクジェットヘッド1のノズル配置に対応して適当に分割され、出力画像処理部22によって順次インクジェットヘッド1に与えられる。
【0024】
図2に示す画像処理部12の第2画像メモリ部21には、前述したようなテストパターン7を印刷用紙8に印刷するための画像データが予め格納されている。このインクジェットプリンター10が、インクジェットヘッド1の吐出診断を行なうために、テストパターン7の印刷動作を行なう場合には、後述するようにユーザーが操作パネル14からの操作によって装置を「テスト印字モード」に切り替えて装置を始動すれば、後述するように、主制御部15からの指令により画像処理部では第2画像メモリ部21のテストパターン7のデータを出力画像処理部22を介してインクジェットヘッド1に与えることにより印刷用紙8にテストパターン7の印刷を行なうことができる。
【0025】
また、図2に示すインクジェットプリンター10において、印刷されたテストパターン7に基づいてインクジェットヘッド1の吐出診断を行い、その結果に基づいてメンテナンス動作を行なう場合には、後述するようにユーザーが操作パネル14からの操作によって装置を「メンテナンスモード」に切り替えて装置を始動すれば、後述するように、主制御部15からの指令によりインクジェットヘッド1が指示された所定のメンテナンス動作(吐出、パージ等)を行なうことができる。
【0026】
図2に示すように、機構部13は、主制御部15からの制御信号を受けて駆動信号を出力する機構制御部24と、機構制御部24からの駆動信号によって駆動される駆動部25を備えている。駆動部25は、印刷時等に印刷機構を駆動する駆動源であって、例えば印刷用紙8の搬送ベルト等の搬送手段、給紙部、排紙部、印刷用紙8の両面に印刷を行なうために機能する用紙搬送系統中の用紙反転手段、そしてスキャナ17の駆動部等を含んでいる。
【0027】
次に、図2に示した前記インクジェットプリンター10の各種通常モード及び各種機能モードにおける作用、とりわけ機能モードにおけるテスト印字モード及びメンテナンスモードの作用の詳細について、図3〜図5を参照して説明する。なお、作用の説明中に参照する装置の各部の符号については図2を参照されたい。
【0028】
図3は、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンター10の制御方法の全体を示す流れ図である。前記操作パネル14に指示を与えて電源を投入し、インクジェットプリンター10を始動すると(S1)、主制御部15は装置全体の初期化及び自己診断を実行する(S2)。初期化及び自己診断の結果が不良である場合は(S2、NO)、エラー処理に移行する(S3)。良好である場合は(S2、YES)、本装置がコピーやプリンター等の通常モード又はテスト印字処理等の機能モードのいずれにあるかを判断し、その結果に応じて各モードにおける作用を装置各部に具体的に実行させる(S4)。
【0029】
S4において通常モードと判断された場合は、操作パネル14で入力された通常動作設定の入力内容に従い、通常モードに含まれるコピー、プリンター、スキャナー、ファックスの各モードの何れかにおいて、機構部13及び画像処理部12等を制御して実際の作業を行なう。
【0030】
すなわち、コピーモードの場合はコピー処理を行い(S5〜S7)、プリンターモードの場合はプリンター処理を行い(S8〜S10)、スキャナモードの場合は読取処理を行ない(S11〜S13)、ファックスモードの場合はファックス処理を行なう(S14〜S16)。
このような通常動作設定、すなわち各通常モードの切替は、操作パネル14のタッチスイッチにより行なうことができる。
【0031】
S4において機能モードと判断された場合は、操作パネル14で入力された機能設定の入力内容に従い、機能モードに含まれるテスト印字モード又はメンテナンスモードの何れかにおいて、機構部13及び画像処理部12等を制御して実際の作業を行なう。
【0032】
テスト印字モードとは、インクジェットヘッド1のノズル詰まりを検査するためのテストパターン7を印字する機能モードの一つである。ここで、テストパターン7としては、前述したような各インクジェットヘッド1においてノズル2ごとのインク吐出状態を診断するためのテストパターン7(「不吐出ノズル検出用テストパターン」と呼ぶ)と、ノズル2ごとではなく各インクジェットヘッド1の全体としてのノズル詰まりを検出するために、印刷用紙8に印刷されるテストパターン(「簡易テストパターン」と呼ぶ)とがある。このテスト印字モードが選択されている場合には(S17、YES)、操作パネル14のタッチスイッチによって実際に選択されている「不吐出ノズル検出用テストパターン」又は「簡易テストパターン」の指定に従って、テスト印字処理(S18)においてテストパターンの印刷を行なうことができる。
【0033】
メンテナンスモードとは、インクジェットヘッド1のノズル2からインクを吐出する等により、詰まり等に起因するインクジェットヘッド1の印字上の不具合を解消させる機能モードの一つである。使用者は、前記テスト印字モードで印刷したテストパターン7を見て印字上の問題を発見した場合に、操作パネル14でメンテナンスモードを設定することができ、さらに具体的にはメンテナンスモードにおいて、メンテナンス作業を「全ヘッドクリーニング」と「ヘッド指定クリーニング」の中から選択することができる。このメンテナンスモードが選択されている場合には(S19、YES)、操作パネル14のタッチスイッチによって実際に選択された「全ヘッドクリーニング」又は「ヘッド指定クリーニング」の指定に従って、メンテナンス処理(S20)においてクリーニング動作を行なうことができる。「ヘッド指定クリーニング」では、インクジェットヘッド1が主走査方向に並べられた複数本のヘッドで形成されている場合、不具合のあるノズルのあるヘッドを指定して、その特定のヘッドのみクリーニング処理を行わせることができる。
【0034】
また、本実施形態のインクジェットプリンター10は、上述したように、テスト印字モードで印刷する「不吐出ノズル検出用テストパターン」により、各インクジェットヘッド1のノズル2を各ノズル2ごとに診断できるので、ヘッド単位のクリーニング動作ではなく、各ヘッドにおいて不具合のあるノズル2だけを指定してクリーニングする「ノズル指定クリーニング」を行なうこととしてもよい。この場合、不具合のあるノズルのノズル番号が分かるので、そのノズルを指定して、インクを吐き捨てるパージ処理を行わせればよい。
【0035】
図4は、図3に示したインクジェットプリンター10の制御方法において、テスト印字モードで行なわれるテスト印字処理(S18)の内容をさらに詳細に示した流れ図である。主制御部15は、操作パネル14のタッチスイッチによってテスト印字モード(図3、S17)が選択されている場合には、テスト印字処理(図3、S18)の手順を開始する(S40)。そして、テスト印字処理に含まれる2種類の処理、すなわち「不吐出ノズル検出用テストパターン」(ノズル2の不吐出位置検出型テストパターン)の印刷、又は「簡易テストパターン」(インクジェットヘッド1の状態を全体把握するための簡易型テストパターン)の印刷のうち、ユーザーに選択されたいずれか一方の処理を行うために必要な設定処理を実行する(S41)。その後、機構部13の給紙部等において用紙の有無を確認し(S42)、必要なサイズの用紙がある場合には(S42、YES)、そのテストパターンの印刷を実行する(S43)。そして、印字が終了すると(S44、YES)、機能モードが解除されて通常モードに移行する(S45)。
【0036】
印刷されたテストパターンはユーザーが目視で診断乃至検査する。図1に示した「不吐出ノズル検出用テストパターン」7によれば、既に説明したように、各インクジェットヘッド1のノズル2ごとにインクの吐出状態の良否を判断できる。すなわち、ノズル2のインク不吐出位置をノズル番号で把握することができる。また、「簡易テストパターン」によれば、インクジェットヘッド1におけるインク吐出の状態を全体として把握することができる。
【0037】
図5は、図3に示したインクジェットプリンター10の制御方法において、メンテナンスモードで行なわれるメンテナンス処理(S20)の内容をさらに詳細に示した流れ図である。主制御部15は、操作パネル14のタッチスイッチによってメンテナンスモード(図3、S19)が選択されている場合には、メンテナンス処理(図3、S20)の手順を開始する(S50)。まず、メンテナンスモードにおいて選択できるメンテナンス作業として、「全ヘッドクリーニング」が選択されている場合には(S51、YES)、すべてのインクジェットヘッド1に対してクリーニング処理が実行される(S52)。クリーニング処理としては、インクの吐出(パージ処理)、ワイピング等から選択可能であり、詳細には、全ヘッドに対するインク吐出、特定ヘッドに対するインク吐出、特定のノズルに対するインク吐出、全ヘッドに対するワイピング、特定のヘッドに対するワイピングの選択、ならびにそれらの組み合わせの選択が可能である。「全ヘッドクリーニング」が選択されておらず(S51、NO)、インク吐出状態が不良であると判断された特定のインクジェットヘッド1がメンテナンス対象として指定されている場合には(S53、YES)、対象となるインクジェットヘッド1を指定するための処理が実行され(S54)、その設定に基づいて当該特定のインクジェットヘッド1に対してクリーニング処理が実行される(S55)。全インクジェット1が指定されておらず、特定のインクジェットヘッド1が指定されている状態でもない場合や、クリーニング処理が実行された場合には、実行すべき処理内容が終了したか否かが判断され(S56)、処理が終了した場合には(S56、YES)、機能モードが解除されて通常モードに移行する(S57)。
【0038】
一般的には、全てのインクジェットヘッド1をクリーニングする場合に比べ、インク吐出に問題があると判断された特定のインクジェットヘッド1だけをクリーニングする場合の方が、クリーニング処理に要する資源及び時間等が少なくて済むので効率的である。例えば、インク吐出でノズル2の詰まり等を解消するクリーニング処理の場合には、特定のインクジェットヘッド1だけを処理する方が使用するインクの量が少なくて済む。
【0039】
また、本実施形態のインクジェットプリンター10は、上述したように、テスト印字モードで印刷する「不吐出ノズル検出用テストパターン」7により、各インクジェットヘッド1の各ノズル2のインク吐出状態をノズル2ごとに診断できるので、図5には示していないが、全てのインクジェットヘッド1や、特定のインクジェットヘッド1の全体をクリーニング対象とするのでなく、各ヘッドにおいてインク吐出に問題があると診断・判定されたノズル2だけを指定してクリーニング処理することもできる(ノズル指定クリーニング)。この場合は、特定のノズルに対するパージ処理を行い、その後にそのノズルを含むヘッドのみをワイピングすればよい。このようにすれば、クリーニング処理に要する資源及び時間等はさらに少なくて済み、例えばインク吐出で使用されるインクの量はさらに少なくて済む。
【0040】
図6は、本実施形態に係るインクジェットプリンター10を、4個の150DPI、318ノズルのインクジェットヘッド1aを1列に並べて構成した具体例である。このインクジェットプリンター10aによれば、図示のように、A4用紙の長手方向(296mm)を幅方向(主走査方向)として不吐出ノズル検出用テストパターン7を印刷することができる。この不吐出ノズル検出用テストパターン7では、各インクジェットヘッド1aごとに、特定パターン4が「0001」から同「0318」までの各ノズル2の各単位パターン6が、第1実施形態と略同様の配置で印刷されている。
【0041】
図7は、本実施形態のテストパターン7において、イエローのインクジェットヘッド1でテストパターン7を印刷した場合の単位パターン6aを示している。一般に、白地の印刷用紙8に対してイエローのインクは視認しにくい。同図中、白丸がイエローのインクドットを示しており、黒丸はシアンのインクドットを示している。そこで、イエローのインクジェットヘッド1の診断を行なうためにテストパターン7を印刷する場合には、診断パターン3aをイエローで印刷するとともに、これに隣接してシアンのパターン3bを印刷する。シアンのノズル2が詰まる場合も考えられるので、イエローの診断パターン3aに隣接する副走査方向に平行なシアンのパターン3bは、主走査方向の位置が異なるように、イエローの診断パターン3aの左右両位置にパターン3b1とパターン3b2の2つに分けて印刷する。このように、イエローと、これと補色の関係にあるシアンを並べて印刷することにより、診断パターン3及び引き出しパターン5は見やすくなり、診断の正確度を高めることができる。なお、図7の例では、引き出しパターン5は、イエローとシアンで重ねて印刷してもよいし、白地に対して見やすいシアンだけで印刷してもよい。また、特定パターン4は、印刷用紙8の色とコントラストが高いイエロー以外の色(例えばシアン)のインクで印刷してもよい。
【0042】
以上説明した実施形態では、不吐出ノズル検出用テストパターンを印刷するための画像データは、画像処理部12の第2画像メモリー部21等に格納されていたが、不吐出ノズル検出用テストパターンを印刷する機能がないインクジェットプリンターであっても、当該装置の制御部乃至画像形成部等の記憶手段等に当該画像データを後から記憶させることで、本実施形態のインクジェットプリンターと同様にノズル2ごとの診断を行なうためのテストパターン7を印刷する機能を付加することができる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態のインクジェットプリンター10、10aによれば、インクジェットヘッド1の各ノズル2ごとに、ノズル2の診断パターン3と特定パターン4を印刷用紙8上に印刷できるので、これをその場で目視により検査すれば、診断パターン3に対応する特定ノズル2のインク吐出状態の良否をプリンターの設置現場で直ちに診断できる。また、各診断パターン3と各特定パターン4は引き出しパターン5で視覚的に関係付けられているので、目視検査において診断パターン3とノズル2の対応関係を誤認する恐れが小さくて済み、迅速かつ正確な診断ができる。そして、テストパターン7を読み取るスキャナー等の高価な読取手段や、読取結果を処理するための高価な画像処理装置その他の構成は不要であるため、インクジェットプリンターとしての製造コストも低く抑えることができる。また、インクジェットヘッドが複数のヘッドで構成されている場合は、不具合のノズルがあるヘッドのみを交換することが容易であるとともに、そのヘッドにおいて不具合があったノズルの特定と不具合の解析が容易となる。
【符号の説明】
【0044】
1,1a…インクジェットヘッド
2…ノズル
3,3a…診断パターン
4…特定パターン
5…引き出しパターン
6…単位パターン
7…テストパターン
8…印刷用紙
10,10a…インクジェットプリンター
15…主制御部
21…第2画像メモリ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷用紙が搬送される副走査方向と直交する主走査方向に沿って並ぶ複数のノズルを備えたインクジェットヘッドの前記各ノズルによるインク吐出の良否をテストパターンの印刷結果によって診断するインクジェットヘッドの吐出診断方法において、
前記各ノズルについて、隣接する他の前記各ノズルからの吐出によるパターンに対して副走査方向に所定の間隔をおいて所定の長さで印刷される診断パターンと、前記各診断パターンと対応するように印刷されて前記各診断パターンと対応する前記各ノズルを特定する特定パターンを、印刷用紙に印刷して前記テストパターンを生成し、
前記テストパターンの前記各診断パターンを目視して良否を判断することにより、前記各診断パターンに対応する前記各ノズルによるインク吐出の良否を前記各ノズルごとに診断することを特徴とするインクジェットヘッドの吐出診断方法。
【請求項2】
対応する前記各診断パターンと前記各特定パターンの間に、前記各診断パターンと前記各特定パターンを結ぶように主走査方向に沿って引き出しパターンをそれぞれ印刷したことを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドの吐出診断方法。
【請求項3】
印刷用紙が搬送される副走査方向と直交する主走査方向に沿って並ぶ複数のノズルを備えたインクジェットヘッドの前記各ノズルによるインク吐出の良否を診断するために、前記インクジェットヘッドによって印刷されるインクジェットヘッドの吐出診断用テストパターンにおいて、
前記各ノズルについて、隣接する他の前記各ノズルからの吐出によるパターンに対して副走査方向に所定の間隔をおいて所定の長さで印刷される診断パターンと、前記各診断パターンと対応するように印刷されて前記各診断パターンと対応する前記各ノズルを特定する特定パターンを、印刷用紙に印刷して構成したことを特徴とするインクジェットヘッドの吐出診断用テストパターン。
【請求項4】
印刷用紙が搬送される副走査方向と直交する主走査方向に沿って並ぶ複数のノズルを備えたインクジェットヘッドを有し、前記各ノズルによるインク吐出の良否を診断するために前記インクジェットヘッドによってテストパターンを印刷することができるインクジェットプリンターにおいて、
前記各ノズルについて、隣接する他の前記各ノズルからの吐出によるパターンに対して副走査方向に所定の間隔をおいて所定の長さで印刷される診断パターンと、前記各診断パターンと対応するように印刷されて前記各診断パターンと対応する前記各ノズルを特定する特定パターンとによって構成される前記テストパターンを印刷するためのテストパターンデータを備えた画像メモリーと、
前記画像メモリーの前記テストパターンデータに基づいて用紙に前記テストパターンを印刷するように前記インクジェットヘッドを制御するとともに、前記各ノズルを一括して又は選択的にクリーニング処理するように前記インクジェットヘッドを駆動する制御部と、
を有することを特徴とするインクジェットプリンター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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