インクジェットヘッド及びその揺動方法、並びに画像形成装置
【課題】ノズルからインク滴が吐出されることなくメニスカスを揺動させることが可能なインクジェットヘッドを提供する。
【解決手段】インクが充填された加圧室と、この加圧室に連通してこのインクのメニスカスが形成されるノズルと、この加圧室を加圧する圧電素子とを備える。また、印字時に該インクの吐出を行うとともに非印字時に該インクの固有振動周期と略同期間、該圧電素子に印加している電圧をオフすることで上記メニスカスの揺動を行う基本パルスの形成動作を行う駆動回路を備える。そして、上記非印字時に、上記駆動回路が上記基本パルスの形成動作を行う際に、その前後のいずれかに少なくとも一回以上、この基本パルスによる揺動電圧の立ち上がり時間と略同期間、上記圧電素子に印加している電圧をオフする付加パルスの形成動作を行う。
【解決手段】インクが充填された加圧室と、この加圧室に連通してこのインクのメニスカスが形成されるノズルと、この加圧室を加圧する圧電素子とを備える。また、印字時に該インクの吐出を行うとともに非印字時に該インクの固有振動周期と略同期間、該圧電素子に印加している電圧をオフすることで上記メニスカスの揺動を行う基本パルスの形成動作を行う駆動回路を備える。そして、上記非印字時に、上記駆動回路が上記基本パルスの形成動作を行う際に、その前後のいずれかに少なくとも一回以上、この基本パルスによる揺動電圧の立ち上がり時間と略同期間、上記圧電素子に印加している電圧をオフする付加パルスの形成動作を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドに関し、特に、プリンター、コピー、ファクシミリ、および、それらの複合機などの画像形成装置に好適に用いることができる、圧電インクジェットヘッドの揺動技術に関する。
【背景技術】
【0002】
オンデマンド型のインクジェットプリンタなどの画像形成装置においては、例えば、図2、3に示すように、インクが充填される加圧室2を備えたインクジェットヘッドが用いられる。この加圧室2にはノズル3が連通しており、当該加圧室2にインクが充填されることによって、このノズル3内部にインクメニスカス(以下、単に「メニスカス」という)が形成される。また、加圧室2には駆動電圧の印加によって変形する圧電素子9と、圧電素子9と積層されて駆動部Dを構成する振動板7とが連接されている。
【0003】
このようなインクジェットヘッドにおいては、駆動部Dが、圧電素子9が発生する力を加圧室2内のインクに圧力として伝えることで、この加圧室2に連通するノズル3からインク滴を吐出させるための駆動源としての役割を果たしている。すなわち、駆動部Dは、圧電素子9の、駆動電圧の印加による変形によって、振動板7を、図2中に一点鎖線で示すように、加圧室2の方向に突出するように撓ませる。こうして、加圧室2の容積を減少させることによって、加圧室2内のインクを加圧して、ノズル3の先端から、インク滴として吐出させる。それと同時に、駆動部Dは、加圧室2内のインクの圧力を受けることによって振動板7が図と反対方向に撓むため、インクの振動に対して弾性体としての役割も持っている。
【0004】
圧電素子9に電圧を印加して応力を発生させると、インクは、振動板7を介して駆動部Dから受けた圧力によって振動を起こす。この振動は、駆動部Dと加圧室2とを弾性、加圧室2にインクを供給する供給口5、加圧室2とノズル3とを繋ぐノズル流路4、およびノズル3を慣性として発生する。この振動における、上記各部内のインクの、体積速度の固有振動周期は、上記各部の寸法とインクの物性値、駆動部Dの寸法と物性値とによって決まる。圧電インクジェットヘッドにおいては、かかるインクの振動による、ノズル3内でのメニスカスの振動を利用して、インク滴を発生させている。
【0005】
特許文献1において説明されているように、このようなインクジェットヘッドにおいては、非印字時の圧電素子9に、一定の駆動電圧を継続的に印加して、圧電素子9を変形させ続けることで、振動板7を撓ませ続けて、加圧室2の容積を減少させた状態を維持しておく。そして、印字時には、
(I) 印字する直前に、駆動電圧を放電して圧電素子9の変形と、振動板7の撓みとを解除させることで、加圧室2の容積を増加させて、ノズル3内のインクメニスカスを一旦、加圧室2の側へ引き込ませた後、
(II) 再び、駆動電圧を印加して圧電素子9を変形させて、振動板7を撓ませることで、加圧室2の容積を減少させて、ノズル3の先端からインク滴を吐出させる駆動方法が一般的に用いられる。以下では、この駆動方法を、「引き打ち式の駆動方法」と略称する場合がある。
【0006】
図12は、上記引き打ち式の駆動方法において、圧電素子9に印加する駆動電圧VPの揺動電圧波形(曲線Vp)と、かかる揺動電圧波形が与えられた際の、ノズル3における、インクの体積速度の変化〔太線の実線で示す、(+)がノズル3の先端側、(−)が加圧室2の側〕との関係を簡略化して示すグラフである。以下に、前記図2、3に示す、厚みの小さい平板状または層状に形成され、揺動電圧を印加することによって面方向に収縮する横振動モードの圧電素子9を使用する場合を例にとって、図12を参照して、この揺動方法を説明する。
【0007】
図12中左端(時刻0)までの待機状態においては、駆動電圧VPをVHに維持(VP=VH)して圧電素子9を面方向に収縮させ続けることによって、振動板7を、加圧室2の容積を減少させた状態を維持するべく、一定の形状に撓ませ続けている。この時刻0まで、インクは静止状態、すなわち、ノズル3におけるインクの体積速度(曲線C)は0を維持し、ノズル3内のメニスカスは停止している。
【0008】
ノズル3からインク滴を吐出させて、紙面に印字するには、まず、その直前の時刻0の時点で、圧電素子9に印加していた駆動電圧VPを放電(VP=0)して、圧電素子9の面方向の収縮を解除させることによって、振動板7の撓みを解除させる。そうすると、加圧室2の容積が一定量だけ増加するため、ノズル3内のインクは、その容積の増加分だけ、メニスカスが加圧室2の側に引き込まれる。その際の、ノズル3内でのインクの体積速度は、図12の曲線Lに示すように一旦、(−)の側に大きくなった後、徐々に小さくなって、やがて0に近づく(時刻P1)。これは、インクの体積速度の固有振動周期の、ほぼ半周期分に相当する。
【0009】
そして、ノズル3でのインクの体積速度が限りなく0に近づいた時点(時刻P1)で、駆動電圧VPを、再びVHまで充電(VP=VH)して、圧電素子9を面方向に収縮させることによって、振動板7を撓ませる。この動作は、曲線Vpで示すように、パルス幅が固有振動周期の約1/2倍である駆動電圧波形を有する駆動電圧VPを、圧電素子9に印加していることに相当する。
【0010】
そうすると、ノズル3内のインクは、メニスカスが加圧室2の側に最も大きく引き込まれた状態から静止状態(体積速度が0の状態)を経て、逆にノズル3の先端側へ戻ろうとしているところに、振動板7を撓ませて、加圧室2の容積を減少させることになる。すると、当該加圧室2から押し出されたインクの圧力が加わることになるため、ノズル3の先端側の方向へ加速されて、ノズル3の先端から外方に大きく突出する(時刻P2)。その際の、ノズル3内でのインクの体積速度は、図12の曲線Lに示すように一旦、(+)の側に大きくなった後、徐々に小さくなって、やがて0に近づく(時刻P3)。ノズル3の先端から外方に突出したインクが略円柱状に見えることから、この突出状態のインクを、一般にインク柱と称する。そして、ノズル3でのインクの体積速度が0になった時点以降、インクの振動の速度が加圧室2の側に向かうことによって、ノズル3の先端から外方へ伸びきったインク柱が、ノズル3内のインクから切り離され、インク滴として飛翔して、紙面に印字される。
【0011】
実際のインクジェットヘッドにおいては、例えば、図1に示すように、上記加圧室2、ノズル3、圧電素子9、および振動板7等を有する印字部を複数個、1つの基板1上に形成するのが一般的である。そして、例えば、あらかじめ設定した駆動周波数ごとに、形成画像のデータに応じて、各印字部のうち任意の印字部を選んで動作させて、その印字部のノズル3から選択的にインク滴を吐出させて紙面にドットを形成する。この動作を繰り返し行わせることによって、紙面に画像が形成される。そのため、各印字部の動作間隔は一定ではなく、駆動周波数ごとに毎回、動作する印字部もあれば、一度、動作してから次に動作するまでの間にかなりの間隔があく印字部も生じる。
【0012】
引き打ち式の場合、動作させる印字部以外の他の印字部においては、インクが、ノズル3の先端からインク滴として吐出されるのを防ぐため、上記の待機状態、つまり、圧電素子9に一定の駆動電圧を印加して変形させることで加圧室2の容積を減少させた状態が維持される。そして、この待機状態の間、インクは静止し、メニスカスは停止した状態が続く。この待機状態が長くなればなるほど、インクと外気との界面であるインクメニスカスの近傍において、インク中に含まれる溶剤等の成分が蒸発し、インクの粘度が上昇する。その結果としてインク滴の吐出が乱れたり、場合によっては、ノズル3が目詰まりしてインク滴を吐出できなくなったりするという問題を生じる。特に、紙面に形成されたドットの速乾性を高めるために、揮発性の高い溶媒を使用したインクを用いた場合に、この問題が顕著に発生する。
【0013】
そこで、インクの粘度上昇を未然に防止し、あるいは粘度上昇が発生した際にはこれを解消するため、待機状態の圧電素子9に微小な揺動電圧を印加して、振動板7を、インクが吐出されない程度に揺動させることで、加圧室2内のインクを攪拌することが提案されている(特許文献2参照)。
【0014】
さらに、上記の揺動電圧として、インクの固有振動周期と略同周期の基本パルスを形成し、これに基づく揺動電圧を上記圧電素子に印加するのが好適であることを、特許文献3において、本願発明者が明らかにしている。
【0015】
【特許文献1】特開平2−192947号公報(第3頁左上欄第19行〜同頁右上欄第6行、第3頁右上欄第14行〜同頁左下欄第2行、第16図(b))
【特許文献2】特開2003−341048号公報(請求項1、第0004〜第0006段落、第0008〜第0009段落)
【特許文献3】特開2006−150845号公報(図7、0042段落、0049段落)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記特許文献3で本願発明者が開示したのは、メニスカスを揺動させつつも、上記ノズル3からインク滴が吐出することがないようにするための、好適な基本パルスであった。
【0017】
しかし、その後の実験により、この基本パルスを用いても、インクの粘度や室温などの条件によっては、稀にノズル3からインク滴が吐出されてしまう場合があることが判明した。これを放置すると、非印字時にインクが吐出され、画像形成装置の内部を汚損するなどの問題が発生する。
【0018】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、ノズルからインク滴が吐出されることなくメニスカスを揺動させることが可能なインクジェットヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
以上の目的を達成するために、本発明では、以下のような手段を採用している。
【0020】
本願発明者は、上記基本パルスの前後に、この基本パルスの立ち上がり時間と略同周期の付加パルス電圧を少なくとも1回以上形成すると、メニスカスが揺動してもノズルからインク滴が吐出されることを防止できることを、計算機シミュレーションにより見出した。
【0021】
これに基づき、まず、本発明のインクジェットヘッドは、インクが充填された加圧室と、この加圧室に連通してこのインクのメニスカスが形成されるノズルと、この加圧室を加圧する圧電素子とを備える。また、印字時に該インクの吐出を行うとともに非印字時に該インクの固有振動周期と略同期間、該圧電素子に印加している電圧をオフすることで上記メニスカスの揺動を行う基本パルスの形成動作を行う駆動回路を備える。
【0022】
そして、上記非印字時に、上記駆動回路が上記基本パルスの形成動作を行う際に、その前後のいずれかに少なくとも一回以上、この基本パルスによる揺動電圧の立ち上がり時間と略同期間、上記圧電素子に印加している電圧をオフする付加パルスの形成動作を行う。
【0023】
これにより、ノズルからインク滴が吐出されることなくメニスカスを揺動させることが可能なインクジェットヘッドが実現できるのである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、インクジェットヘッドにおいて、インク滴を吐出することなくメニスカスを揺動させることができる。しかも、本発明は、メニスカスを揺動するための電圧の波形を改良する構成を採っているため、特別なハードウェア構成を必要とせず、安価に実現可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明を実施するためのインクジェットヘッドの一例において、圧電素子と振動板とを含む駆動部を取り付ける前の状態を示す平面図である。この図1の例のインクジェットヘッドは、1枚の基板1上に、加圧室2とそれに連通するノズル3とを含む印字部を複数個、配列したものである。各印字部のノズル3は、図1に白矢印で示す主走査方向に複数列並んでいる。図1の例では4列に並んでおり、同一列内の印字部間のピッチは90dpiであって、インクジェットヘッドの全体として360dpiを実現している。
【0027】
また、図2は、上記例のインクジェットヘッドにおいて、駆動部Dを取り付けた状態での、1つの印字部を拡大して示す断面図、図3は、1つの印字部を構成する各部の重なり状態を示す透視図である。
【0028】
各印字部は、基板1の、図2において上面側に形成した、矩形状の中央部の両端に半円形の端部を接続した平面形状(図3参照)を有する加圧室2と、上記基板1の下面側の、加圧室2の一端側の端部の、半円の中心と重なる位置に形成したノズル3とを、上記端部の半円と同径の、断面円形のノズル流路4で繋いでいる。また、これとともに、上記加圧室2の他端側の端部の、半円の中心と重なる位置に形成した供給口5を介して、加圧室2を、基板1内に、各印字部を繋ぐように形成した共通供給路6(図1に破線で示す)に繋ぐことで構成してある。
【0029】
また、上記各部は、図2の例では、加圧室2を形成した第1基板1aと、ノズル流路4の上部4aと供給口5とを形成した第2基板1bと、ノズル流路4の下部4bと共通供給路6とを形成した第3基板1cと、ノズル3を形成した第4基板1dとを、この順に積層、一体化することで形成してある。また、第1基板1aと第2基板1bには、図1に示すように、第3基板1cに形成した共通供給路6を、基板1の上面側で、図示していないインクカートリッジからの配管と接続するためのジョイント部11を構成するための通孔11aを形成してある。さらに、各基板1a〜1dは、樹脂や金属などからなり、フォトリソグラフ法を利用したエッチングなどによって、上記各部となる通孔を形成した、所定の厚みを有する板体にて形成してある。
【0030】
基板1の上面側には、当該基板1と同じ大きさを有する1枚の振動板7と、振動板7の上面側に積層され少なくとも各印字部を覆う振動板7と同じ大きさを有する1枚の薄膜状の共通電極8とを備えている。そして、図1中に一点鎖線で示すように各印字部の加圧室2の中央部と重なる位置に個別に設けた、略矩形状の平面形状を有する横振動モードの薄板状の圧電素子9と、各圧電素子9上に形成した、同じ平面形状を有する個別電極10とを、この順に積層することで駆動部Dを構成してある。
【0031】
なお、圧電素子9を、いくつかの印字部の加圧室2にまたがる大きさに一体形成して、個別電極10のみ、図1中に一点鎖線で示すように、各印字部の加圧室2の中央部と重なる位置に個別に設けてもよい。
【0032】
振動板7は、モリブデン、タングステン、タンタル、チタン、白金、鉄、ニッケルなどの単体金属や、これら金属の合金、あるいはステンレス鋼などの金属材料にて、所定の厚みを有する板状に形成してある。また、振動板7には、先の基板1の通孔11aとともにジョイント部11を構成する通孔11bを形成してある。共通電極8、個別電極10は、ともに、金、銀、白金、銅、アルミニウムなどの導電性に優れた金属の箔や、これらの金属からなるめっき被膜、真空蒸着被膜などで形成してある。なお振動板7を、白金などの導電性の高い金属で形成して共通電極8を省略してもよい。
【0033】
圧電素子9を形成する圧電材料としては、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)や、当該PZTにランタン、バリウム、ニオブ、亜鉛、ニッケル、マンガンなどの酸化物の1種または2種以上を添加したもの、例えばPLZTなどの、PZT系の圧電材料を挙げることができる。また、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN)、ニッケルニオブ酸鉛(PNN)、亜鉛ニオブ酸鉛、マンガンニオブ酸鉛、アンチモンスズ酸鉛、チタン酸鉛、チタン酸バリウムなどを主要成分とするものを挙げることもできる。
【0034】
薄板状の圧電素子9は、従来と同様にして形成することができる。例えば、圧電材料の焼結体を薄板状に研磨して所定の平面形状を有するチップを作製し、それを、共通電極8上の所定の位置に接着、固定することで形成できる。また、共通電極8上に、反応性スパッタリング法、反応性真空蒸着法、反応性イオンプレーティング法などの気相成長法によって、圧電材料の薄膜を所定の平面形状に形成したりすることによっても、圧電素子9を形成することができる。
【0035】
圧電素子9を横振動モードとするためには、圧電材料の分極方向を、当該圧電素子9の厚み方向、より詳しくは個別電極10から共通電極8に向かう方向に配向させる。そのためには、高温分極法、室温分極法、交流電界重畳法、電界冷却法などの従来公知の分極法を採用することができる。また、分極後の圧電素子9をエージング処理してもよい。
【0036】
圧電材料の分極方向を、上記の方向に配向させた圧電素子9は、共通電極8を接地した状態で、個別電極10から(+)の駆動電圧VPを印加することによって、分極方向と直交する面内で収縮する。しかし圧電素子9は、共通電極8を介して振動板7に固定されているため、結果的に、圧電素子9と振動板7とが、図2中に一点鎖線で示すように、加圧室の側に撓むことになる。
【0037】
このため、撓みが発生する際の力が加圧室2内のインクに圧力変化として伝えられ、この圧力変化によって、供給口5、加圧室2、ノズル流路4、およびノズル3内のインクが振動を起こす。そして振動の速度が、結果的にノズル3の先端に向かうことによって、ノズル3内のインクメニスカスが、先端から外部へと押し出される。そして、ノズル3の先端から外部に、前述したインク柱が突出する。突出したインク柱は、やがて、インクの振動の速度が加圧室2の側に向かうことによって、ノズル3内のインクから切り離され、インク滴となって、紙面の方向に飛翔して、紙面にドットを形成する。
【0038】
インク滴が飛翔して減少した分のインクは、ノズル3内のメニスカスの表面張力によって、インクカートリッジから、当該インクカートリッジの配管、ジョイント部11、共通供給路6、供給口5、加圧室2、およびノズル流路4を介してノズル3に再充てんされる。
【0039】
個別電極10を介して圧電素子9に印加する駆動電圧波形は、この例では、図4の駆動回路12を使って発生させる。図の駆動回路12は、電源線12aと接地12bとの間に、第1トランジスタTR1、抵抗R1、R2、および第2トランジスタTR2を直列に繋いで第1回路12cを形成する。また、この第1回路12cの抵抗R1、R2間から分岐させて、抵抗R3、個別電極10、圧電素子9、および共通電極8を介して、接地12dに至る第2回路12eを形成する。さらに、両トランジスタTR1、TR2のベースに、それぞれ、コントロール電圧VCを印加するための端子12fを接続したものである。圧電素子9は、等価的にコンデンサとして機能する。
【0040】
かかる駆動回路12は、圧電インクジェットヘッド上の、複数の印字部の各圧電素子9を個別に動作させるために、圧電素子9と同数を、例えば集積回路上に形成し、駆動回路12の第2回路12eを、個別に、各圧電素子9の個別電極10と接続してある。また、各駆動回路12の端子12fは、いずれも、図示しない制御回路から、各端子12fを介して各駆動回路12に、個別に、形成画像のデータに応じたコントロール電圧を印加することで、それぞれの駆動回路12を個別に駆動させることができるように、上記制御回路と個別に接続してある。
【0041】
非印字時(その意味は後述する)に、このコントロール電圧Vcとして、図9に示すような基本パルスを形成すると、上記第2回路12eに、図10に一点鎖線で示すようなメニスカスを揺動するための揺動電圧Vpが発生する。この基本パルスは、インクの固有振動周期とほぼ同期間T3のパルス幅だけ、圧電素子9に印加している電圧をオフする波形となっている。その結果、ノズル3内のインクは、図10に実線で示すような揺動を起こす。ここで、上記パルス幅T3は上述したように、インクの固有振動周期T1のほぼ同じ約15μsとなっており、この条件で、インクがノズル3から吐出されることなくメニスカスが揺動される。これが、本願発明者が特開2006−150845号公報において明らかにした、インクジェットヘッドの揺動方法であった。なお、この場合、コントロール電圧Vcは約5V、基本パルス電圧Vpは約13Vである。
【0042】
しかし、その後の実験により、この基本パルス電圧を用いても、インクの粘度や室温などの条件によっては、稀にノズル3からインク滴が吐出されてしまう場合があることが判明した。図11は、縦軸に時間経過(単位μs)を、横軸にノズル3の端からの距離(単位mm)をとり、このインク滴dの吐出の様子を計算機シミュレーションした結果である。この計算機シミュレーションにおいて、インクの粘度は3〜5mPasであり、インクジェット式印刷における標準的なインクの粘度である。
このように、従来の方法では、図11に示すように、ノズル3からインク滴dが吐出されてしまう場合があり、これを放置すると、非印字時にインクが吐出され、画像形成装置の内部を汚損するなどの問題が発生する。
【0043】
今回、本願発明者は、上記基本パルス電圧の前後に、この基本パルスによる揺動電圧の立ち上がり時間t1(図10参照)とほぼ同周期の付加パルス電圧を少なくとも1回以上形成すると、メニスカスが揺動してもノズルからインク滴が吐出されることを防止できることを、計算機シミュレーションにより見出した。これが本発明の最大の特徴である。
【0044】
即ち、上記コントロール電圧Vcとして、図5に示すように、例えばパルス幅T3の上記基本パルスの前後に、それぞれ2回、パルス幅t1の付加パルスを形成する。この付加パルスは、このパルス幅t1だけ、圧電素子9に印加している電圧をオフする波形となっている。すると、上記揺動電圧Vpとして、図6に曲線Vpで示すような波形が得られ、メニスカスは図6に曲線Cで示すような揺動を起こす。図7は図11と同様に、この条件で、縦軸に時間経過(単位μs)を、横軸にノズル3の端からの距離(単位mm)をとり、このインク滴dの吐出の様子を計算機シミュレーションした結果である。なお、この計算機シミュレーションにおいても、インクの粘度は3〜5mPasであり、インクジェット式印刷における標準的なインクの粘度である。また、付加パルス電圧の大きさは基本パルス電圧の大きさと同じ約13Vである。
【0045】
この図7に示すように、本発明によれば、メニスカスを揺動させてもノズル3からインク滴dが吐出されることはなくなる。この基本パルス電圧の前後に付加パルス電圧を印加するということは、原理的には、基本パルス電圧に基づく揺動電圧Vpの立ち上がりと立下りを緩やかにすることに相当する。その結果として、メニスカスの揺動が緩やかになり、ノズル3からインク滴が吐出されることがなくなるのである。
【0046】
なお、付加パルスのパルス幅t1は、基本パルスを印加したときの、メニスカスの揺動の立ち上がり時間とほぼ同周期である。このパルス幅t1は、図4の回路構成における抵抗R1、R3と、圧電素子9の静電容量Cとで決せられ、t1≒C(R1+R3)ln9である。本実施の形態ではt1≒1.5μsである。また、付加パルスどうしの間隔と、付加パルスと基本パルスとの間隔も、同じくt1≒1.5μsである。
【0047】
以上のように、本発明によれば、付加パルス電圧を印加するだけで、特別なハードウェア構成を必要とせずに、インク滴を吐出することなくメニスカスを揺動させることができる。なお、図5〜7では、付加パルス電圧を基本パルス電圧の前後に2回ずつ印加する場合を説明したが、これは例示であって、付加パルス電圧は基本パルス電圧の前後のいずれかに少なくとも1回印加すれば本発明の効果が得られることが実験装置を用いた試験で明らかになっている。しかしながら、インク特性のばらつきや経年変化や圧電素子の特性のばらつき等を考慮して本実施例では、基本パルス波形の前後に付加パルス波形を2回印加するようにしている。もちろん3回以上印加しても本発明の効果が得られるが、余り沢山の回数印加するのは適切ではない。なぜならば、この場合には、メニスカスの揺動が落ち着く(静止する)のに時間がかかり、メニスカスが十分静止する前に後続の印字が開始されて、印字の品質を損ねてしまうことが考えられるからである。
【0048】
さて、最後に以上の説明で用いてきた非印字時という用語について明らかにしておく。これまでの説明から明らかなように、メニスカスの揺動は非印字時に行う。この非印字時とは、第一義的には一つの印字ジョブの終了から次の印字ジョブの開始までを指すが、本発明では、さらに細密化した意味で用いている。
【0049】
例えば、図8に示すように用紙Pの搬送方向が矢印Lであるとして、1枚の用紙に対する印字であっても、画像データがない領域S1については、非印字時であるとしてメニスカスの揺動を行う。また画像データA,Bが存在する領域S2においても、画像データAとBとの間隔が500画素以上空いていれば、やはり非印字時であるとして、画像データAの印字と画像データBの印字の間に上記揺動を行う。
【0050】
このように、本実施形態では、画素ごとに(ノズル3ごとに)非印字時を決定し、非常に細密化したメニスカスの揺動を行うので、ノズル3内でインクが固化するようなことが起こらず、常になめらかで美しい印字を行うことができるのである。なお、上記の500画素というのは、メニスカスが揺動を起こしてから、このメニスカスが静止するまでの時間を反映した値であり、この時間は約2.5msである。もちろんの500画素も例示であり、印字速度に応じて適宜決定される値である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係るインクジェットヘッドは、インク滴を吐出することなくメニスカスを揺動させることができる。しかも、メニスカスを揺動するための電圧の波形を改良する構成を採っているため、特別なハードウェア構成を必要とせず、安価に実現可能である。従って、プリンター、コピア、ファクシミリ、および、それらの複合機等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明における圧電素子と振動板を含む駆動部の平面図。
【図2】本発明における1つの印字部の断面図。
【図3】本発明における1つの印字部の重なり状態を示す透視図。
【図4】本発明における駆動回路の一例を示す回路図。
【図5】本発明における付加パルス電圧の波形を示すグラフ。
【図6】本発明における揺動電圧とインクの体積速度を示すグラフ。
【図7】本発明におけるインクの吐出に関するシミュレーション図。
【図8】本発明における非印字時の説明図。
【図9】基本パルス電圧の波形を示すグラフ。
【図10】従来の揺動電圧とインクの体積速度を示すグラフ。
【図11】従来のインクの吐出に関するシミュレーション図。
【図12】従来の駆動電圧とインクの体積速度を示すグラフ。
【符号の説明】
【0053】
2 加圧室
3 ノズル
7 振動板
9 圧電素子
T1 体積速度の固有振動周期
T3 基本パルス電圧のパルス幅
t1 付加パルス電圧のパルス幅
Vc コントロール電圧
Vp 揺動電圧
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドに関し、特に、プリンター、コピー、ファクシミリ、および、それらの複合機などの画像形成装置に好適に用いることができる、圧電インクジェットヘッドの揺動技術に関する。
【背景技術】
【0002】
オンデマンド型のインクジェットプリンタなどの画像形成装置においては、例えば、図2、3に示すように、インクが充填される加圧室2を備えたインクジェットヘッドが用いられる。この加圧室2にはノズル3が連通しており、当該加圧室2にインクが充填されることによって、このノズル3内部にインクメニスカス(以下、単に「メニスカス」という)が形成される。また、加圧室2には駆動電圧の印加によって変形する圧電素子9と、圧電素子9と積層されて駆動部Dを構成する振動板7とが連接されている。
【0003】
このようなインクジェットヘッドにおいては、駆動部Dが、圧電素子9が発生する力を加圧室2内のインクに圧力として伝えることで、この加圧室2に連通するノズル3からインク滴を吐出させるための駆動源としての役割を果たしている。すなわち、駆動部Dは、圧電素子9の、駆動電圧の印加による変形によって、振動板7を、図2中に一点鎖線で示すように、加圧室2の方向に突出するように撓ませる。こうして、加圧室2の容積を減少させることによって、加圧室2内のインクを加圧して、ノズル3の先端から、インク滴として吐出させる。それと同時に、駆動部Dは、加圧室2内のインクの圧力を受けることによって振動板7が図と反対方向に撓むため、インクの振動に対して弾性体としての役割も持っている。
【0004】
圧電素子9に電圧を印加して応力を発生させると、インクは、振動板7を介して駆動部Dから受けた圧力によって振動を起こす。この振動は、駆動部Dと加圧室2とを弾性、加圧室2にインクを供給する供給口5、加圧室2とノズル3とを繋ぐノズル流路4、およびノズル3を慣性として発生する。この振動における、上記各部内のインクの、体積速度の固有振動周期は、上記各部の寸法とインクの物性値、駆動部Dの寸法と物性値とによって決まる。圧電インクジェットヘッドにおいては、かかるインクの振動による、ノズル3内でのメニスカスの振動を利用して、インク滴を発生させている。
【0005】
特許文献1において説明されているように、このようなインクジェットヘッドにおいては、非印字時の圧電素子9に、一定の駆動電圧を継続的に印加して、圧電素子9を変形させ続けることで、振動板7を撓ませ続けて、加圧室2の容積を減少させた状態を維持しておく。そして、印字時には、
(I) 印字する直前に、駆動電圧を放電して圧電素子9の変形と、振動板7の撓みとを解除させることで、加圧室2の容積を増加させて、ノズル3内のインクメニスカスを一旦、加圧室2の側へ引き込ませた後、
(II) 再び、駆動電圧を印加して圧電素子9を変形させて、振動板7を撓ませることで、加圧室2の容積を減少させて、ノズル3の先端からインク滴を吐出させる駆動方法が一般的に用いられる。以下では、この駆動方法を、「引き打ち式の駆動方法」と略称する場合がある。
【0006】
図12は、上記引き打ち式の駆動方法において、圧電素子9に印加する駆動電圧VPの揺動電圧波形(曲線Vp)と、かかる揺動電圧波形が与えられた際の、ノズル3における、インクの体積速度の変化〔太線の実線で示す、(+)がノズル3の先端側、(−)が加圧室2の側〕との関係を簡略化して示すグラフである。以下に、前記図2、3に示す、厚みの小さい平板状または層状に形成され、揺動電圧を印加することによって面方向に収縮する横振動モードの圧電素子9を使用する場合を例にとって、図12を参照して、この揺動方法を説明する。
【0007】
図12中左端(時刻0)までの待機状態においては、駆動電圧VPをVHに維持(VP=VH)して圧電素子9を面方向に収縮させ続けることによって、振動板7を、加圧室2の容積を減少させた状態を維持するべく、一定の形状に撓ませ続けている。この時刻0まで、インクは静止状態、すなわち、ノズル3におけるインクの体積速度(曲線C)は0を維持し、ノズル3内のメニスカスは停止している。
【0008】
ノズル3からインク滴を吐出させて、紙面に印字するには、まず、その直前の時刻0の時点で、圧電素子9に印加していた駆動電圧VPを放電(VP=0)して、圧電素子9の面方向の収縮を解除させることによって、振動板7の撓みを解除させる。そうすると、加圧室2の容積が一定量だけ増加するため、ノズル3内のインクは、その容積の増加分だけ、メニスカスが加圧室2の側に引き込まれる。その際の、ノズル3内でのインクの体積速度は、図12の曲線Lに示すように一旦、(−)の側に大きくなった後、徐々に小さくなって、やがて0に近づく(時刻P1)。これは、インクの体積速度の固有振動周期の、ほぼ半周期分に相当する。
【0009】
そして、ノズル3でのインクの体積速度が限りなく0に近づいた時点(時刻P1)で、駆動電圧VPを、再びVHまで充電(VP=VH)して、圧電素子9を面方向に収縮させることによって、振動板7を撓ませる。この動作は、曲線Vpで示すように、パルス幅が固有振動周期の約1/2倍である駆動電圧波形を有する駆動電圧VPを、圧電素子9に印加していることに相当する。
【0010】
そうすると、ノズル3内のインクは、メニスカスが加圧室2の側に最も大きく引き込まれた状態から静止状態(体積速度が0の状態)を経て、逆にノズル3の先端側へ戻ろうとしているところに、振動板7を撓ませて、加圧室2の容積を減少させることになる。すると、当該加圧室2から押し出されたインクの圧力が加わることになるため、ノズル3の先端側の方向へ加速されて、ノズル3の先端から外方に大きく突出する(時刻P2)。その際の、ノズル3内でのインクの体積速度は、図12の曲線Lに示すように一旦、(+)の側に大きくなった後、徐々に小さくなって、やがて0に近づく(時刻P3)。ノズル3の先端から外方に突出したインクが略円柱状に見えることから、この突出状態のインクを、一般にインク柱と称する。そして、ノズル3でのインクの体積速度が0になった時点以降、インクの振動の速度が加圧室2の側に向かうことによって、ノズル3の先端から外方へ伸びきったインク柱が、ノズル3内のインクから切り離され、インク滴として飛翔して、紙面に印字される。
【0011】
実際のインクジェットヘッドにおいては、例えば、図1に示すように、上記加圧室2、ノズル3、圧電素子9、および振動板7等を有する印字部を複数個、1つの基板1上に形成するのが一般的である。そして、例えば、あらかじめ設定した駆動周波数ごとに、形成画像のデータに応じて、各印字部のうち任意の印字部を選んで動作させて、その印字部のノズル3から選択的にインク滴を吐出させて紙面にドットを形成する。この動作を繰り返し行わせることによって、紙面に画像が形成される。そのため、各印字部の動作間隔は一定ではなく、駆動周波数ごとに毎回、動作する印字部もあれば、一度、動作してから次に動作するまでの間にかなりの間隔があく印字部も生じる。
【0012】
引き打ち式の場合、動作させる印字部以外の他の印字部においては、インクが、ノズル3の先端からインク滴として吐出されるのを防ぐため、上記の待機状態、つまり、圧電素子9に一定の駆動電圧を印加して変形させることで加圧室2の容積を減少させた状態が維持される。そして、この待機状態の間、インクは静止し、メニスカスは停止した状態が続く。この待機状態が長くなればなるほど、インクと外気との界面であるインクメニスカスの近傍において、インク中に含まれる溶剤等の成分が蒸発し、インクの粘度が上昇する。その結果としてインク滴の吐出が乱れたり、場合によっては、ノズル3が目詰まりしてインク滴を吐出できなくなったりするという問題を生じる。特に、紙面に形成されたドットの速乾性を高めるために、揮発性の高い溶媒を使用したインクを用いた場合に、この問題が顕著に発生する。
【0013】
そこで、インクの粘度上昇を未然に防止し、あるいは粘度上昇が発生した際にはこれを解消するため、待機状態の圧電素子9に微小な揺動電圧を印加して、振動板7を、インクが吐出されない程度に揺動させることで、加圧室2内のインクを攪拌することが提案されている(特許文献2参照)。
【0014】
さらに、上記の揺動電圧として、インクの固有振動周期と略同周期の基本パルスを形成し、これに基づく揺動電圧を上記圧電素子に印加するのが好適であることを、特許文献3において、本願発明者が明らかにしている。
【0015】
【特許文献1】特開平2−192947号公報(第3頁左上欄第19行〜同頁右上欄第6行、第3頁右上欄第14行〜同頁左下欄第2行、第16図(b))
【特許文献2】特開2003−341048号公報(請求項1、第0004〜第0006段落、第0008〜第0009段落)
【特許文献3】特開2006−150845号公報(図7、0042段落、0049段落)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記特許文献3で本願発明者が開示したのは、メニスカスを揺動させつつも、上記ノズル3からインク滴が吐出することがないようにするための、好適な基本パルスであった。
【0017】
しかし、その後の実験により、この基本パルスを用いても、インクの粘度や室温などの条件によっては、稀にノズル3からインク滴が吐出されてしまう場合があることが判明した。これを放置すると、非印字時にインクが吐出され、画像形成装置の内部を汚損するなどの問題が発生する。
【0018】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、ノズルからインク滴が吐出されることなくメニスカスを揺動させることが可能なインクジェットヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
以上の目的を達成するために、本発明では、以下のような手段を採用している。
【0020】
本願発明者は、上記基本パルスの前後に、この基本パルスの立ち上がり時間と略同周期の付加パルス電圧を少なくとも1回以上形成すると、メニスカスが揺動してもノズルからインク滴が吐出されることを防止できることを、計算機シミュレーションにより見出した。
【0021】
これに基づき、まず、本発明のインクジェットヘッドは、インクが充填された加圧室と、この加圧室に連通してこのインクのメニスカスが形成されるノズルと、この加圧室を加圧する圧電素子とを備える。また、印字時に該インクの吐出を行うとともに非印字時に該インクの固有振動周期と略同期間、該圧電素子に印加している電圧をオフすることで上記メニスカスの揺動を行う基本パルスの形成動作を行う駆動回路を備える。
【0022】
そして、上記非印字時に、上記駆動回路が上記基本パルスの形成動作を行う際に、その前後のいずれかに少なくとも一回以上、この基本パルスによる揺動電圧の立ち上がり時間と略同期間、上記圧電素子に印加している電圧をオフする付加パルスの形成動作を行う。
【0023】
これにより、ノズルからインク滴が吐出されることなくメニスカスを揺動させることが可能なインクジェットヘッドが実現できるのである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、インクジェットヘッドにおいて、インク滴を吐出することなくメニスカスを揺動させることができる。しかも、本発明は、メニスカスを揺動するための電圧の波形を改良する構成を採っているため、特別なハードウェア構成を必要とせず、安価に実現可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明を実施するためのインクジェットヘッドの一例において、圧電素子と振動板とを含む駆動部を取り付ける前の状態を示す平面図である。この図1の例のインクジェットヘッドは、1枚の基板1上に、加圧室2とそれに連通するノズル3とを含む印字部を複数個、配列したものである。各印字部のノズル3は、図1に白矢印で示す主走査方向に複数列並んでいる。図1の例では4列に並んでおり、同一列内の印字部間のピッチは90dpiであって、インクジェットヘッドの全体として360dpiを実現している。
【0027】
また、図2は、上記例のインクジェットヘッドにおいて、駆動部Dを取り付けた状態での、1つの印字部を拡大して示す断面図、図3は、1つの印字部を構成する各部の重なり状態を示す透視図である。
【0028】
各印字部は、基板1の、図2において上面側に形成した、矩形状の中央部の両端に半円形の端部を接続した平面形状(図3参照)を有する加圧室2と、上記基板1の下面側の、加圧室2の一端側の端部の、半円の中心と重なる位置に形成したノズル3とを、上記端部の半円と同径の、断面円形のノズル流路4で繋いでいる。また、これとともに、上記加圧室2の他端側の端部の、半円の中心と重なる位置に形成した供給口5を介して、加圧室2を、基板1内に、各印字部を繋ぐように形成した共通供給路6(図1に破線で示す)に繋ぐことで構成してある。
【0029】
また、上記各部は、図2の例では、加圧室2を形成した第1基板1aと、ノズル流路4の上部4aと供給口5とを形成した第2基板1bと、ノズル流路4の下部4bと共通供給路6とを形成した第3基板1cと、ノズル3を形成した第4基板1dとを、この順に積層、一体化することで形成してある。また、第1基板1aと第2基板1bには、図1に示すように、第3基板1cに形成した共通供給路6を、基板1の上面側で、図示していないインクカートリッジからの配管と接続するためのジョイント部11を構成するための通孔11aを形成してある。さらに、各基板1a〜1dは、樹脂や金属などからなり、フォトリソグラフ法を利用したエッチングなどによって、上記各部となる通孔を形成した、所定の厚みを有する板体にて形成してある。
【0030】
基板1の上面側には、当該基板1と同じ大きさを有する1枚の振動板7と、振動板7の上面側に積層され少なくとも各印字部を覆う振動板7と同じ大きさを有する1枚の薄膜状の共通電極8とを備えている。そして、図1中に一点鎖線で示すように各印字部の加圧室2の中央部と重なる位置に個別に設けた、略矩形状の平面形状を有する横振動モードの薄板状の圧電素子9と、各圧電素子9上に形成した、同じ平面形状を有する個別電極10とを、この順に積層することで駆動部Dを構成してある。
【0031】
なお、圧電素子9を、いくつかの印字部の加圧室2にまたがる大きさに一体形成して、個別電極10のみ、図1中に一点鎖線で示すように、各印字部の加圧室2の中央部と重なる位置に個別に設けてもよい。
【0032】
振動板7は、モリブデン、タングステン、タンタル、チタン、白金、鉄、ニッケルなどの単体金属や、これら金属の合金、あるいはステンレス鋼などの金属材料にて、所定の厚みを有する板状に形成してある。また、振動板7には、先の基板1の通孔11aとともにジョイント部11を構成する通孔11bを形成してある。共通電極8、個別電極10は、ともに、金、銀、白金、銅、アルミニウムなどの導電性に優れた金属の箔や、これらの金属からなるめっき被膜、真空蒸着被膜などで形成してある。なお振動板7を、白金などの導電性の高い金属で形成して共通電極8を省略してもよい。
【0033】
圧電素子9を形成する圧電材料としては、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)や、当該PZTにランタン、バリウム、ニオブ、亜鉛、ニッケル、マンガンなどの酸化物の1種または2種以上を添加したもの、例えばPLZTなどの、PZT系の圧電材料を挙げることができる。また、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN)、ニッケルニオブ酸鉛(PNN)、亜鉛ニオブ酸鉛、マンガンニオブ酸鉛、アンチモンスズ酸鉛、チタン酸鉛、チタン酸バリウムなどを主要成分とするものを挙げることもできる。
【0034】
薄板状の圧電素子9は、従来と同様にして形成することができる。例えば、圧電材料の焼結体を薄板状に研磨して所定の平面形状を有するチップを作製し、それを、共通電極8上の所定の位置に接着、固定することで形成できる。また、共通電極8上に、反応性スパッタリング法、反応性真空蒸着法、反応性イオンプレーティング法などの気相成長法によって、圧電材料の薄膜を所定の平面形状に形成したりすることによっても、圧電素子9を形成することができる。
【0035】
圧電素子9を横振動モードとするためには、圧電材料の分極方向を、当該圧電素子9の厚み方向、より詳しくは個別電極10から共通電極8に向かう方向に配向させる。そのためには、高温分極法、室温分極法、交流電界重畳法、電界冷却法などの従来公知の分極法を採用することができる。また、分極後の圧電素子9をエージング処理してもよい。
【0036】
圧電材料の分極方向を、上記の方向に配向させた圧電素子9は、共通電極8を接地した状態で、個別電極10から(+)の駆動電圧VPを印加することによって、分極方向と直交する面内で収縮する。しかし圧電素子9は、共通電極8を介して振動板7に固定されているため、結果的に、圧電素子9と振動板7とが、図2中に一点鎖線で示すように、加圧室の側に撓むことになる。
【0037】
このため、撓みが発生する際の力が加圧室2内のインクに圧力変化として伝えられ、この圧力変化によって、供給口5、加圧室2、ノズル流路4、およびノズル3内のインクが振動を起こす。そして振動の速度が、結果的にノズル3の先端に向かうことによって、ノズル3内のインクメニスカスが、先端から外部へと押し出される。そして、ノズル3の先端から外部に、前述したインク柱が突出する。突出したインク柱は、やがて、インクの振動の速度が加圧室2の側に向かうことによって、ノズル3内のインクから切り離され、インク滴となって、紙面の方向に飛翔して、紙面にドットを形成する。
【0038】
インク滴が飛翔して減少した分のインクは、ノズル3内のメニスカスの表面張力によって、インクカートリッジから、当該インクカートリッジの配管、ジョイント部11、共通供給路6、供給口5、加圧室2、およびノズル流路4を介してノズル3に再充てんされる。
【0039】
個別電極10を介して圧電素子9に印加する駆動電圧波形は、この例では、図4の駆動回路12を使って発生させる。図の駆動回路12は、電源線12aと接地12bとの間に、第1トランジスタTR1、抵抗R1、R2、および第2トランジスタTR2を直列に繋いで第1回路12cを形成する。また、この第1回路12cの抵抗R1、R2間から分岐させて、抵抗R3、個別電極10、圧電素子9、および共通電極8を介して、接地12dに至る第2回路12eを形成する。さらに、両トランジスタTR1、TR2のベースに、それぞれ、コントロール電圧VCを印加するための端子12fを接続したものである。圧電素子9は、等価的にコンデンサとして機能する。
【0040】
かかる駆動回路12は、圧電インクジェットヘッド上の、複数の印字部の各圧電素子9を個別に動作させるために、圧電素子9と同数を、例えば集積回路上に形成し、駆動回路12の第2回路12eを、個別に、各圧電素子9の個別電極10と接続してある。また、各駆動回路12の端子12fは、いずれも、図示しない制御回路から、各端子12fを介して各駆動回路12に、個別に、形成画像のデータに応じたコントロール電圧を印加することで、それぞれの駆動回路12を個別に駆動させることができるように、上記制御回路と個別に接続してある。
【0041】
非印字時(その意味は後述する)に、このコントロール電圧Vcとして、図9に示すような基本パルスを形成すると、上記第2回路12eに、図10に一点鎖線で示すようなメニスカスを揺動するための揺動電圧Vpが発生する。この基本パルスは、インクの固有振動周期とほぼ同期間T3のパルス幅だけ、圧電素子9に印加している電圧をオフする波形となっている。その結果、ノズル3内のインクは、図10に実線で示すような揺動を起こす。ここで、上記パルス幅T3は上述したように、インクの固有振動周期T1のほぼ同じ約15μsとなっており、この条件で、インクがノズル3から吐出されることなくメニスカスが揺動される。これが、本願発明者が特開2006−150845号公報において明らかにした、インクジェットヘッドの揺動方法であった。なお、この場合、コントロール電圧Vcは約5V、基本パルス電圧Vpは約13Vである。
【0042】
しかし、その後の実験により、この基本パルス電圧を用いても、インクの粘度や室温などの条件によっては、稀にノズル3からインク滴が吐出されてしまう場合があることが判明した。図11は、縦軸に時間経過(単位μs)を、横軸にノズル3の端からの距離(単位mm)をとり、このインク滴dの吐出の様子を計算機シミュレーションした結果である。この計算機シミュレーションにおいて、インクの粘度は3〜5mPasであり、インクジェット式印刷における標準的なインクの粘度である。
このように、従来の方法では、図11に示すように、ノズル3からインク滴dが吐出されてしまう場合があり、これを放置すると、非印字時にインクが吐出され、画像形成装置の内部を汚損するなどの問題が発生する。
【0043】
今回、本願発明者は、上記基本パルス電圧の前後に、この基本パルスによる揺動電圧の立ち上がり時間t1(図10参照)とほぼ同周期の付加パルス電圧を少なくとも1回以上形成すると、メニスカスが揺動してもノズルからインク滴が吐出されることを防止できることを、計算機シミュレーションにより見出した。これが本発明の最大の特徴である。
【0044】
即ち、上記コントロール電圧Vcとして、図5に示すように、例えばパルス幅T3の上記基本パルスの前後に、それぞれ2回、パルス幅t1の付加パルスを形成する。この付加パルスは、このパルス幅t1だけ、圧電素子9に印加している電圧をオフする波形となっている。すると、上記揺動電圧Vpとして、図6に曲線Vpで示すような波形が得られ、メニスカスは図6に曲線Cで示すような揺動を起こす。図7は図11と同様に、この条件で、縦軸に時間経過(単位μs)を、横軸にノズル3の端からの距離(単位mm)をとり、このインク滴dの吐出の様子を計算機シミュレーションした結果である。なお、この計算機シミュレーションにおいても、インクの粘度は3〜5mPasであり、インクジェット式印刷における標準的なインクの粘度である。また、付加パルス電圧の大きさは基本パルス電圧の大きさと同じ約13Vである。
【0045】
この図7に示すように、本発明によれば、メニスカスを揺動させてもノズル3からインク滴dが吐出されることはなくなる。この基本パルス電圧の前後に付加パルス電圧を印加するということは、原理的には、基本パルス電圧に基づく揺動電圧Vpの立ち上がりと立下りを緩やかにすることに相当する。その結果として、メニスカスの揺動が緩やかになり、ノズル3からインク滴が吐出されることがなくなるのである。
【0046】
なお、付加パルスのパルス幅t1は、基本パルスを印加したときの、メニスカスの揺動の立ち上がり時間とほぼ同周期である。このパルス幅t1は、図4の回路構成における抵抗R1、R3と、圧電素子9の静電容量Cとで決せられ、t1≒C(R1+R3)ln9である。本実施の形態ではt1≒1.5μsである。また、付加パルスどうしの間隔と、付加パルスと基本パルスとの間隔も、同じくt1≒1.5μsである。
【0047】
以上のように、本発明によれば、付加パルス電圧を印加するだけで、特別なハードウェア構成を必要とせずに、インク滴を吐出することなくメニスカスを揺動させることができる。なお、図5〜7では、付加パルス電圧を基本パルス電圧の前後に2回ずつ印加する場合を説明したが、これは例示であって、付加パルス電圧は基本パルス電圧の前後のいずれかに少なくとも1回印加すれば本発明の効果が得られることが実験装置を用いた試験で明らかになっている。しかしながら、インク特性のばらつきや経年変化や圧電素子の特性のばらつき等を考慮して本実施例では、基本パルス波形の前後に付加パルス波形を2回印加するようにしている。もちろん3回以上印加しても本発明の効果が得られるが、余り沢山の回数印加するのは適切ではない。なぜならば、この場合には、メニスカスの揺動が落ち着く(静止する)のに時間がかかり、メニスカスが十分静止する前に後続の印字が開始されて、印字の品質を損ねてしまうことが考えられるからである。
【0048】
さて、最後に以上の説明で用いてきた非印字時という用語について明らかにしておく。これまでの説明から明らかなように、メニスカスの揺動は非印字時に行う。この非印字時とは、第一義的には一つの印字ジョブの終了から次の印字ジョブの開始までを指すが、本発明では、さらに細密化した意味で用いている。
【0049】
例えば、図8に示すように用紙Pの搬送方向が矢印Lであるとして、1枚の用紙に対する印字であっても、画像データがない領域S1については、非印字時であるとしてメニスカスの揺動を行う。また画像データA,Bが存在する領域S2においても、画像データAとBとの間隔が500画素以上空いていれば、やはり非印字時であるとして、画像データAの印字と画像データBの印字の間に上記揺動を行う。
【0050】
このように、本実施形態では、画素ごとに(ノズル3ごとに)非印字時を決定し、非常に細密化したメニスカスの揺動を行うので、ノズル3内でインクが固化するようなことが起こらず、常になめらかで美しい印字を行うことができるのである。なお、上記の500画素というのは、メニスカスが揺動を起こしてから、このメニスカスが静止するまでの時間を反映した値であり、この時間は約2.5msである。もちろんの500画素も例示であり、印字速度に応じて適宜決定される値である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係るインクジェットヘッドは、インク滴を吐出することなくメニスカスを揺動させることができる。しかも、メニスカスを揺動するための電圧の波形を改良する構成を採っているため、特別なハードウェア構成を必要とせず、安価に実現可能である。従って、プリンター、コピア、ファクシミリ、および、それらの複合機等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明における圧電素子と振動板を含む駆動部の平面図。
【図2】本発明における1つの印字部の断面図。
【図3】本発明における1つの印字部の重なり状態を示す透視図。
【図4】本発明における駆動回路の一例を示す回路図。
【図5】本発明における付加パルス電圧の波形を示すグラフ。
【図6】本発明における揺動電圧とインクの体積速度を示すグラフ。
【図7】本発明におけるインクの吐出に関するシミュレーション図。
【図8】本発明における非印字時の説明図。
【図9】基本パルス電圧の波形を示すグラフ。
【図10】従来の揺動電圧とインクの体積速度を示すグラフ。
【図11】従来のインクの吐出に関するシミュレーション図。
【図12】従来の駆動電圧とインクの体積速度を示すグラフ。
【符号の説明】
【0053】
2 加圧室
3 ノズル
7 振動板
9 圧電素子
T1 体積速度の固有振動周期
T3 基本パルス電圧のパルス幅
t1 付加パルス電圧のパルス幅
Vc コントロール電圧
Vp 揺動電圧
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクが充填された加圧室と、該加圧室に連通して該インクのメニスカスが形成されるノズルと、該加圧室を加圧する圧電素子と、印字時に該インクの吐出を行うとともに非印字時に該インクの固有振動周期と略同期間、該圧電素子に印加している電圧をオフすることで上記メニスカスの揺動を行う基本パルスの形成動作を行う駆動回路とを備えるインクジェットヘッドにおいて、
上記非印字時に、上記駆動回路が上記基本パルスの形成動作を行う際に、その前後のいずれかに少なくとも一回以上、該基本パルスによる揺動電圧の立ち上がり時間と略同期間、上記圧電素子に印加している電圧をオフする付加パルスの形成動作を行う
ことを特徴とする、インクジェットヘッド。
【請求項2】
インクが充填された加圧室と、該加圧室に連通して該インクのメニスカスが形成されるノズルと、該加圧室を加圧する圧電素子と、印字時に該インクの吐出を行うとともに非印字時に該インクの固有振動周期と略同期間、該圧電素子に印加している電圧をオフすることで上記メニスカスの揺動を行う基本パルスの形成動作を行う駆動回路とを備えたインクジェットヘッドを有する画像形成装置において、
上記非印字時に、上記駆動回路が上記基本パルスの形成動作を行う際に、その前後のいずれかに少なくとも一回以上、該基本パルスによる揺動電圧の立ち上がり時間と略同期間、上記圧電素子に印加している電圧をオフする付加パルスの形成動作を行う
ことを特徴とする、画像形成装置。
【請求項3】
インクが充填された加圧室と、該加圧室に連通して該インクのメニスカスが形成されるノズルと、該加圧室を加圧する圧電素子とを備えるインクジェットヘッドに対して、非印字時に該インクの固有振動周期と略同期間、該圧電素子に印加している電圧をオフすることで上記メニスカスの揺動を行う基本パルスの形成動作を行うインクジェットヘッドの揺動方法において、
上記非印字時に、上記駆動回路が上記基本パルス形成動作を行う際に、その前後のいずれかに少なくとも一回以上、該基本パルスによる揺動電圧の立ち上がり時間と略同期間、上記圧電素子に印加している電圧をオフする付加パルスの形成動作を行う
ことを特徴とする、インクジェットヘッドの揺動方法。
【請求項1】
インクが充填された加圧室と、該加圧室に連通して該インクのメニスカスが形成されるノズルと、該加圧室を加圧する圧電素子と、印字時に該インクの吐出を行うとともに非印字時に該インクの固有振動周期と略同期間、該圧電素子に印加している電圧をオフすることで上記メニスカスの揺動を行う基本パルスの形成動作を行う駆動回路とを備えるインクジェットヘッドにおいて、
上記非印字時に、上記駆動回路が上記基本パルスの形成動作を行う際に、その前後のいずれかに少なくとも一回以上、該基本パルスによる揺動電圧の立ち上がり時間と略同期間、上記圧電素子に印加している電圧をオフする付加パルスの形成動作を行う
ことを特徴とする、インクジェットヘッド。
【請求項2】
インクが充填された加圧室と、該加圧室に連通して該インクのメニスカスが形成されるノズルと、該加圧室を加圧する圧電素子と、印字時に該インクの吐出を行うとともに非印字時に該インクの固有振動周期と略同期間、該圧電素子に印加している電圧をオフすることで上記メニスカスの揺動を行う基本パルスの形成動作を行う駆動回路とを備えたインクジェットヘッドを有する画像形成装置において、
上記非印字時に、上記駆動回路が上記基本パルスの形成動作を行う際に、その前後のいずれかに少なくとも一回以上、該基本パルスによる揺動電圧の立ち上がり時間と略同期間、上記圧電素子に印加している電圧をオフする付加パルスの形成動作を行う
ことを特徴とする、画像形成装置。
【請求項3】
インクが充填された加圧室と、該加圧室に連通して該インクのメニスカスが形成されるノズルと、該加圧室を加圧する圧電素子とを備えるインクジェットヘッドに対して、非印字時に該インクの固有振動周期と略同期間、該圧電素子に印加している電圧をオフすることで上記メニスカスの揺動を行う基本パルスの形成動作を行うインクジェットヘッドの揺動方法において、
上記非印字時に、上記駆動回路が上記基本パルス形成動作を行う際に、その前後のいずれかに少なくとも一回以上、該基本パルスによる揺動電圧の立ち上がり時間と略同期間、上記圧電素子に印加している電圧をオフする付加パルスの形成動作を行う
ことを特徴とする、インクジェットヘッドの揺動方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−262363(P2009−262363A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112413(P2008−112413)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]