説明

インクジェットヘッド及び記録装置及び画像形成装置

【課題】内部電極の断線による静電容量値低下に起因する吐出不良及び吐出ばらつきの発生を低減することが可能な高信頼性を有するインクジェットヘッド及びこれを用いた記録装置を提供する。
【解決手段】それぞれ外部電極と接続され内部にボイド70を有する内部電極64と、内部電極64と交互に積層される圧電層と、交互に駆動される駆動圧電素子柱63a及び駆動されない非駆動圧電素子柱63bとからなる複数の圧電素子柱63と、フレキシブル基板57とを有し、駆動圧電素子柱63aとフレキシブル基板57の電極61とが接合されるインクジェットヘッド71において、駆動圧電素子柱63aの幅W1をボイド70の最大径よりも大きくなるように形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルよりインク液滴を吐出して画像を記録するインクジェットヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリンタ、ファクシミリ、複写装置、コピア、プロッタ、及びこれ等いくつかの機能を有する複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する液体吐出ヘッドにより構成された記録ヘッドを用い、媒体(以下「用紙」ともいうが材質を限定するものではなく、また被記録媒体、記録媒体、転写材、記録紙等も同義で使用する)を搬送しつつインク液滴を用紙に付着させて画像形成(記録、印刷、印写、印字も同義で使用する)を行うものがある。
【0003】
液滴吐出ヘッドとしては、インク液滴を吐出する複数の並列配置されたノズルに対して個別に配置された複数の液室の少なくとも一部の壁面を振動板によって形成し、この振動板を圧電素子によって変形させ、液室の容積を変化させてインク液滴を吐出させる圧電型アクチュエータを用いた圧電型ヘッドが知られている。このような圧電型ヘッドでは、例えば積層型圧電素子を用いて内部電極を端面に引き出した外部電極(端面電極ともいう)にフレキシブル基板(フレキシブルプリントケーブル)等のフレキシブル配線基板の電極を接合し、各圧電素子に画像信号に応じた駆動信号を与えるように構成している。
【0004】
「特許文献1」には、インクジェットヘッドにおいて多チャンネルインクジェットヘッドにおける相互干渉を低減して画像品質を向上すべく、圧電素子列の駆動圧電素子柱と液室ユニットの振動板のダイアフラム部とを接合すると共に、圧電素子列の駆動圧電素子柱間に非駆動圧電素子柱を設け、この非駆動圧電素子柱と液室ユニットの加圧液室の隔壁部分とを高い剛性で接合する技術が開示されている。また「特許文献2」には、積層型圧電素子を用いたインクジェットヘッドとして、例えば圧電層と内部電極とを交互に積層し、両端面に個別側外部電極及び共通側外部電極を形成した積層型圧電素子に、一部を残して溝加工を施すことにより複数の駆動圧電素子柱と両端の非駆動圧電素子柱とを形成し、この積層型圧電素子の共通電極を駆動圧電素子柱の列方向両端の非駆動圧電素子柱から取り出す技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、積層圧電素子を使用する方式のインクジェットヘッドにおいて、積層圧電素子は圧電層と内部電極層とを交互に積層して焼結させ、これをスリット加工等により複数の圧電素子柱に分割しているが、焼結の際に内部電極が収縮することによりボイドが発生し、これにより内部電極が断線して静電容量値低下による吐出不良や吐出ばらつきが懸念されている。また、現在では出力画像の高画質化に対応すべくインクジェットヘッドの高集積化が進められており、これに対応して圧電素子柱の配列方向の幅が狭くなると共にボイドの長さが圧電素子柱の幅以上となる可能性が従来よりも大きくなり、内部電極が断線して静電容量値低下による吐出不良や吐出ばらつきの発生が大きな問題点となっていた。
【0006】
「特許文献1」に開示された技術でも、ヘッドが高集積となり圧電素子柱の列方向の幅が狭くなると圧電層と交互に積層されている内部電極の列方向の幅も狭くなり、焼成の際に発生するボイドが内部電極の幅よりも大きくなってしまい内部電極が断線する可能性が高くなるという問題点がある。また「特許文献2」に開示された技術ではヘッドが高集積となると相互干渉も大きくなり、これにより「特許文献1」と同様の構成が必要となり同様の問題点が生じてしまう。
【0007】
本発明は上述の問題点を解消し、内部電極の断線による静電容量値低下に起因する吐出不良及び吐出ばらつきの発生を低減することが可能な高信頼性を有するインクジェットヘッド及びこれを用いた記録装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、外部電極に接続される内部電極と、該内部電極と交互に積層される圧電層とからなる複数の圧電素子柱を設けると共に、該複数の圧電素子柱を交互に並列に配置した駆動圧電素子柱と非駆動圧電素子柱とから構成されるインクジェットヘッドにおいて、前記駆動圧電素子柱の幅を前記内部電極に発生するボイドの最大径よりも大きくしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、駆動圧電素子柱の幅をその内部電極に発生するボイドの最大径よりも大きく形成することにより、駆動圧電素子柱内の内部電極が断線することを防止でき、吐出不良や吐出ばらつきの発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態を適用可能なインクジェットヘッドの概略斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態を適用可能なインクジェットヘッドの圧電アクチュエータにおける圧電素子の構成及び圧電素子とフレキシブル基板との接合状態を示す概略図である。
【図3】本発明の一実施形態を適用可能なインクジェットヘッドの圧電アクチュエータにおける圧電素子の構成及び圧電素子とフレキシブル基板との接合状態を示す概略図である。
【図4】本発明の一実施形態を適用可能なバイピッチ構造のインクジェットヘッドの概略図である。
【図5】(a)図3からフレキシブル基板を除いた概略図、(b)駆動圧電素子柱のA−A断面図、(c)は内部電極層のB−B断面図である。
【図6】図4に示したバイピッチ構造のインクジェットヘッドを高集積化したインクジェットヘッドの概略図である。
【図7】(a)図6からフレキシブル基板を除いた概略図、(b)駆動圧電素子柱のA−A断面図、(c)内部電極層のB−B断面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態を示す高集積バイピッチ構造のインクジェットヘッドの概略図である。
【図9】(a)図8からフレキシブル基板を除いた概略図、(b)内部電極層のB−B断面図である。
【図10】本発明の第1の実施形態におけるボイドの大きさを調査した結果を示すグラフである。
【図11】本発明の第2の実施形態を示す高集積バイピッチ構造のインクジェットヘッドの概略図である。
【図12】本発明の一実施形態を採用したインクジェットヘッドを搭載可能なインクジェット画像形成装置の概略図である。
【図13】本発明の一実施形態を採用したインクジェットヘッドを搭載可能な他のインクジェット画像形成装置の概略斜視図である。
【図14】本発明の一実施形態を採用したインクジェットヘッドを搭載可能な他のインクジェット画像形成装置の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の一実施形態が適用可能な液滴吐出ヘッドを分解して模式的に示した斜視図である。同図においてインクジェットヘッドである液滴吐出ヘッド50は、上部よりノズル板51、流路板53、振動板54、2個の圧電素子55、及びベース部材56が順次重ねられ、かつ各圧電素子55にフレキシブル基板(フレキシブルプリントケーブル)57が接合された状態においてフレーム58内に収容されることにより構成されている。ノズル板51にはインクが吐出される図示しない2列のノズル孔が設けられていると共に、流路板53には各ノズル孔に対応する個別の図示しない圧力室がそれぞれ形成されると共に、各圧力室から各ノズル孔にインクを連通させる複数の連通孔52aが形成されている。
【0012】
各圧電素子55はそれぞれベース部材56に取り付けられており、各圧力室においてそれぞれエネルギ発生手段として機能する。各圧電素子55は圧力室の1つの壁を形成する振動板54に接合されており、各圧電素子55には駆動制御のための図示しない制御部がフレキシブル基板57を介して電気的に接続されている。各フレキシブル基板57は、柔軟性を有し大きく変形させることが可能な薄膜状の部材(例えばポリエチレンテレフタラート板)によって形成されており、その内方には図示しない複数の電路が設けられている。
【0013】
次に、液滴吐出ヘッド50における圧電アクチュエータとしての圧電素子55の構成及び圧電素子55とフレキシブル基板57との接合状態を図2及び図3に示す。本発明に関わる圧電素子55は、図3に示すように圧電層63と内部電極64とを交互に積層して焼結した後、図5(b)に示すようにその前後端面側にそれぞれ個別電極60と共通電極65とを加工し、さらにブレード等によって複数の溝64aを加工することにより複数の圧電素子柱63a,63bが列状に並べて配置されるように構成されている。そして、複数の圧電素子柱63a,63bの個別電極60とフレキシブル基板57に一つおきに設けられたフレキシブル基板電極61を半田部材62によって接合する。図3に示すように、複数の圧電素子柱63a,63bのうちフレキシブル基板電極61が接合された圧電素子柱を駆動圧電素子柱63a、フレキシブル基板電極61が接合されない圧電素子柱を非駆動圧電素子柱63bとし、これ等複数の駆動圧電素子柱63aと非駆動圧電素子柱63bとをそれぞれ交互に配置することによりバイピッチ構造の圧電素子55を構成している。
【0014】
図4は、上述したバイピッチ構造のインクジェットヘッドを示している。図4に示す構成では、複数の液室を形成する流路板53を支柱となる非駆動圧電素子柱63bによって支持している。このような構成とすることにより、複数の駆動圧電素子柱63aのうち所定の駆動圧電素子柱63aを駆動し、その駆動される駆動圧電素子柱63aに接合された振動板54が上下方向に変位することにより駆動する駆動圧電素子柱63aに対応する液室内のインクをノズル孔から吐出するが、その際に駆動された駆動圧電素子柱63aにより流路板53やノズル板51の全体が変位することにより、隣接する駆動しない液室に対して圧力変化が生じて液滴吐出特性が変動するという相互干渉を低減することが可能な構成となっている。
【0015】
図5(a)は図3からフレキシブル基板57及び個別電極60を除いた構成を、図5(b)は駆動圧電素子柱63aのA−A断面図を、図5(c)は内部電極64層のB−B断面図をそれぞれ示している。圧電素子55を構成する複数の圧電素子柱63a,63bは、図5(a)に示すように圧電層63と内部電極64とを交互に積層して構成されており、図5(b)に示すように内部電極64は交互に圧電素子柱63a,63bの両端面、すなわち圧電素子55の振動板54に対して垂直な側面に引き出されており、この両端面に形成された個別電極60及び共通電極65と接続されている。そして、上述したように個別電極60をフレキシブル基板57に設けられたフレキシブル基板電極61と接合することにより、個別電極60と共通電極65との間に電圧を印加することで内部電極64を介して積層された個々の圧電層63に積層方向の変位を生じさせるように構成されている。従って、個々の圧電素子柱63a,63bの変位量は、電圧及び圧電定数を変化させなければ積層数及び断面積に依存する。また、図5(c)に示すように圧電層63と内部電極64とを交互に積層して焼結する際に、内部電極64に熱が加わり熱収縮によってボイド70が発生する。
【0016】
図6は、高画質化に対応するために図4に示したバイピッチ構造のインクジェットヘッドを高集積化(ノズル間ピッチLを従来の1/2とする)したインクジェットヘッドを示している。高集積化によりノズル間ピッチが狭くなったことで、圧電素子55の駆動圧電素子柱63a及び非駆動圧電素子柱63bの幅もそれぞれ狭くなっている。なお、図6では駆動圧電素子柱63a及び非駆動圧電素子柱63bの幅を同じとした場合を示している。
【0017】
図7(a)は図6からフレキシブル基板57及び個別電極60を除いた構成を、図7(b)は駆動圧電素子柱63aのA−A断面図を、図7(c)は内部電極64層のB−B断面図をそれぞれ示している。ヘッドの高集積化によりノズル間ピッチを従来の1/2とすると共に、駆動圧電素子柱63a及び非駆動圧電素子柱63bの幅を同じとした場合には、駆動圧電素子柱63aの幅が狭くなることにより、図7(c)に示すようにボイド70の大きさが駆動圧電素子柱63aの幅よりも大きくなってしまう可能性が高まる。これにより、図7(b)の丸で示すように内部電極64が途中で断線してしまう。このように積層されている内部電極64の一部に断線が発生するとその内部電極64により駆動させる圧電層63は駆動しなくなるため、駆動圧電素子柱63a全体としては積層方向の変位量が低下して狙いの変位量に届かなくなる。すると、複数ある駆動圧電素子柱63aのうちボイド70により断線した内部電極64を有する駆動圧電素子柱63aに対応するノズル孔からのインク吐出量が、他の断線を起こしていない駆動圧電素子柱63aに対応するノズル孔からのインク吐出量よりも低下することにより吐出ばらつきが発生してしまう。このような吐出ばらつきが発生すると形成される画像の品質が著しく低下するため、ヘッド全体として使い物にならなくなってしまう。
【0018】
そこで、1つの圧電素子柱63a,63bにおいて複数積層されている内部電極64のうちの1層に発生するボイド70のボイド径と個数とを調査した結果を図10に示す。この調査結果は、圧電層63と内部電極64とを積層して焼結した後に、積層されている内部電極64のうち任意の1層を取り出し、所定領域(0.1304mm)を画像解析しその所定領域に含まれるボイド70の径と個数とを調べたものである。なお、上述の所定領域は、1つの圧電素子柱63a,63bにおいて複数積層されている内部電極64のうちの1層の面積に相当する領域である。図10に示すように内部電極64に発生するボイド70の最大径は25μmであり、その個数は1個であった。従って、この最大径25μmのボイド70が図7(c)に示すように複数の駆動圧電素子柱63aのうちの1つの駆動圧電素子柱63aに発生してしまうと上述したようにヘッド全体が使い物にならなくなってしまう。これは、最近普及し始めているラインヘッドのように圧電素子柱の数が約300個、1つの圧電素子柱での積層数が約20層となるようなヘッドにおいては極めて深刻な問題であり、ボイドによる内部電極の断線を確実に防止することがヘッド製造における歩留まりを向上させるため非常に重要な技術的課題となっている。そこで、このような問題点を解決する構成を、本発明の第1の実施形態として以下に説明する。
【0019】
図8は、本発明の第1の実施形態を採用したバイピッチ構造のインクジェットヘッド71を、図9(a)はインクジェットヘッド71からフレキシブル基板57を除いた構成を、図9(b)は内部電極64層のB−B断面図をそれぞれ示している。本発明は、駆動圧電素子柱63aの内部電極64にボイド70が発生することにより駆動圧電素子柱63aの内部電極64が断線することに起因する各種不具合の発生を防止すべく、駆動圧電素子柱63aの幅W1を上述したボイド70の最大径よりも大きくし、かつ幅W1と非駆動圧電素子柱63bの幅W2との関係をW1>W2としている。
【0020】
図10に示すように、圧電素子55を構成する圧電素子柱に発生するボイド70の大きさは最大で25μmであった。このことから、駆動圧電素子柱63aの幅W1が26μm以上となるように圧電素子55を形成することにより、駆動圧電素子柱63a内の内部電極64が断線することを防止でき、ノズルピッチは高集積のままで吐出不良や吐出ばらつきの発生を低減することができる。また、ヘッド製造における歩留まりを飛躍的に向上することが可能となる。なお、非駆動圧電素子柱63b内の内部電極64が断線しても液滴吐出特性に影響を及ぼすことはない。また、駆動圧電素子柱63aの幅が広がり強度が高くなるので、分割加工やフレキシブル基板57接合時における柱倒れの発生が低減されると共に、駆動圧電素子柱63aの断面積が増加することにより例えば従来よりも少ない電圧、または少ない積層数により従来と同等の圧電素子としての変位量を達成することができ、ヘッドの低コスト化を図ることが可能となる。さらに、上述の構成では幅W2を可能な限り狭くすることにより幅W1を大きく取ることができるが、幅W2が狭すぎると非駆動圧電素子柱63bが倒れてしまう。非駆動圧電素子柱63bが倒れてしまう幅W2の値は、圧電素子55の材質や深さ、加工方法に応じて変化する。
【0021】
図11は、本発明の第2の実施形態を採用したバイピッチ構造のインクジェットヘッド72を示している。このインクジェットヘッド72は、第1の実施形態で示したインクジェットヘッド71と比較すると、フレキシブル基板57にフレキシブル基板電極61以外に補強部材として機能するダミー電極66を取り付け、このダミー電極66を非駆動圧電素子柱63bに接合させている点で相違しており、他の構成は同一である。
【0022】
このように、駆動圧電素子柱63aをフレキシブル基板電極61と接合すると共に、非駆動圧電素子柱63bをダミー電極66と接合する構成としたので、第1の実施形態に比してフレキシブル基板57と圧電素子55との接合領域が増加することによりフレキシブル基板57の圧電素子55に対する接合強度が向上するため、例えばヘッドを組み立てる際にフレキシブル基板57に不用意な力が加わった場合でもフレキシブル基板57が圧電素子55から容易に剥離することがないため、ヘッド製造における歩留まりを向上することができる。また、上述した非駆動圧電素子柱63bの倒れに対しても強度が向上するため、インクジェットヘッドの信頼性を向上することができる。
【0023】
さらに、非駆動圧電素子柱63bは上述のように振動板54、液室を構成する流路板53を支持する固定柱として機能し、所定のノズルからインク吐出を行うために所定の液室を駆動させた際に隣接する駆動しない液室に振動板54等の振動が伝播してしまいインク液滴吐出特性が変動することを防ぐ効果を有するが、本発明のように非駆動圧電素子柱63bの幅は従来よりも狭くなっているがダミー電極66を介してフレキシブル基板57と接合させているため、非駆動圧電素子柱63bの強度は従来と同等程度に保たれているので上述したインク液滴吐出特性が変動することを防ぐ効果を維持することが可能となる。また、図11に示すようにダミー電極66の長さを非駆動圧電素子柱63bの長さとほぼ同等とすることにより、非駆動圧電素子柱63bの強度をさらに向上することができる。
【0024】
図12は、上述したインクジェットヘッド71,72を搭載可能な記録装置であるインクジェット画像形成装置73を示している。インクジェット画像形成装置73は、記録媒体の印字領域幅以上の長さのノズル列を有するライン型の液滴吐出ヘッド(ラインヘッド)を搭載したライン型プリンタである。同図において符号214はブラック、マゼンタ、シアン、イエロの4色にそれぞれ対応した4個のライン型液滴吐出ヘッドであり、上述したインクジェットヘッド71,72と同様のものが用いられる。各ヘッド214の近傍には各ヘッド214に対応した維持機構装置215が設けられており、パージ処理、ワイピング処理等のヘッド保全動作時には、ヘッドノズル面に対向する位置へと維持機構装置215が移動する。
【0025】
装置本体213の下部に設けられた給紙トレイは、ベース200に対して圧板201及び記録紙216を給紙する給送回転体202が取り付けられて構成されている。圧板201はベース200に取り付けられた回転軸aを中心に回転可能であり、圧板ばね203によって給送回転体202に向けて付勢されている。圧板201の給送回転体202と対向する部位には、記録紙216の重送を防止するための人工皮革等の高摩擦抵抗部材からなる図示しない分離パッドが設けられている。また、圧板201と給送回転体202とを接離させる図示しないリリースカムが設けられている。
【0026】
上述の構成において、画像形成装置73の待機状態では図示しないリリースカムが圧板201を所定位置まで押し下げており、これにより圧板201と給送回転体202との当接が解除されている。そして、この状態で搬送ローラ204の駆動力が図示しないギヤ等を介して給送回転体202及び図示しないリリースカムに伝達されると、図示しないリリースカムが圧板201から離れて圧板201が上昇することにより給送回転体202と記録紙216とが当接し、給送回転体202の回転に伴い記録紙216がピックアップされて給紙が開始され、記録紙216は図示しない分離パッドによって1枚ずつに分離される。
【0027】
給送回転体202は記録紙216をプラテン217に送り込むべく回転し、記録紙216はガイド205,206の間を通過して搬送ローラ204まで導かれ、搬送ローラ204とピンチローラ207とによってプラテン217まで搬送される。その後、画像形成装置73は再び記録紙216と給送回転体202との当接を解除した待機状態となり、搬送ローラ204からの駆動力が切断される。図12において符号208は手差し給紙用の給送回転体であり、手差しトレイ209上に載置された記録紙216を図示しない制御装置からの記録信号に従って給紙し、搬送ローラ204とピンチローラ207との間に向けて搬送する。
【0028】
プラテン217まで搬送された記録紙216は、液滴吐出ヘッド214の下方を通過する。このとき、液滴吐出ヘッド214からの液滴吐出タイミング及び記録紙216の搬送速度が図示しない制御装置により制御され、これにより記録紙216上に所望の画像が記録される。画像が記録された記録紙216は、排紙ローラ210及び拍車211によって挟持搬送されて排紙トレイ212上に排出される。
【0029】
図13、図14は、上述したインクジェットヘッド71,72を搭載可能な記録装置であるインクジェット画像形成装置74を示している。インクジェット画像形成装置74は、装置本体1の内部に主走査方向への移動が可能なキャリッジ、キャリッジに搭載されたインクジェットヘッドとしての記録ヘッド、記録ヘッドにインクを供給するインクカートリッジ等により構成される印字機構部2等を収納しており、装置本体1の下方には装置前方側より複数枚の用紙3を積載可能な給紙カセット(給紙トレイでもよい)4が着脱自在に設けられている。装置後面側には、装置本体1に移動自在に支持され、用紙3を載置可能な第1の位置と装置本体1に収容される第2の位置とを選択的に占める手差しトレイ5が設けられている。画像形成装置74は、給紙カセット4または手差しトレイ5から給送される用紙3を取り込み、印字機構部2において用紙3に所望の画像を記録した後、給紙カセット4の上方に配置された排紙トレイ6上に用紙3を排出する。
【0030】
印字機構部2は、図示しない左右の側板に掛け渡された主ガイドロッド11と従ガイドロッド12とによりキャリッジ13を主走査方向(図14において紙面方向)に向けて摺動自在に保持している。キャリッジ13には、イエロ、マゼンタ、シアン、ブラックの各色インク液滴を吐出する上述したインクジェットヘッド71,72と同様のヘッド14が、複数のインク吐出口を主走査方向と直交する方向に配列され、かつインク液滴吐出方向が下方となるように装着されている。またキャリッジ13には、ヘッド14に各色のインクを供給するためのインクカートリッジ15が交換可能に装着されている。インクカートリッジ15は、上方に大気と連通する大気口を、下方にはヘッド14へインクを供給する供給口を、内部にはインクが充填された多孔質体をそれぞれ有しており、多孔質体の毛細管現象によりヘッド14へと供給されるインクを僅かな負圧に維持している。
【0031】
上述の構成において、記録ヘッドとして各色のヘッド14を用いているが、各色のインク液滴を吐出するノズルを有する1個のヘッドを用いてもよい。また、ヘッド14として用いられるインクジェットヘッドは、圧電素子等の電気機械変換素子で液室壁面を形成する振動板を介してインクを加圧するピエゾ型、発熱抵抗体により気泡を生じさせてインクを加圧するバブル型、インク流路壁面を形成する振動板とこれに対向する電極との間の静電力で振動板を変位させてインクを加圧する静電型等を使用可能であるが、本実施形態では静電型のインクジェットヘッドを用いている。
【0032】
キャリッジ13は用紙搬送方向下流側である後方側を主ガイドロッド11に摺動自在に嵌め込まれており、用紙搬送方向上流側である前方側を従ガイドロッド12上に摺動自在に載置されている。そして、主走査モータ17によって回転駆動される駆動プーリ18及び従動プーリ19間にタイミングベルト20を掛け渡すと共にタイミングベルトにキャリッジ13を固定させることにより、主走査モータ17を正逆回転させることによってキャリッジ13が主走査方向に往復移動される。
【0033】
一方、給紙カセット4にセットした用紙3をヘッド14の下方へと搬送するため、給紙カセット4から用紙3を分離給送する給紙ローラ21及びフリクションパッド22、用紙3の搬送をガイドするガイド部材23、給紙された用紙3を反転搬送する搬送ローラ24、搬送ローラ24の周面に押圧される搬送コロ25、及び搬送ローラ24からの用紙3の送り出し角度を規定する先端コロ26等が設けられている。搬送ローラ24は、ギヤ列を介して副走査モータ27によって回転駆動される。
【0034】
キャリッジ13の下方には、キャリッジ13の主走査方向の移動範囲に対応して、搬送ローラ24から送り出された用紙3をヘッド14の下方でガイドする印写受け部材29が設けられており、印写受け部材29の用紙搬送方向下流側には用紙3を排紙方向へと送り出すために回転駆動される搬送コロ31及び拍車32、用紙3を排紙トレイ6へと送り出す排紙ローラ33及び拍車34、排紙経路を形成するガイド部材35,36が設けられている。
【0035】
上述の構成よりインクジェット画像形成装置74は、キャリッジ13を移動させつつ画像信号に応じてヘッド14を駆動することにより停止している用紙3にインクを吐出して1行分の画像記録を行い、用紙3を所定量搬送後に次の行の画像記録を行う。そして、画像記録終了信号または用紙3の後端が記録領域に到達した信号を受け取ることにより、インクジェット画像形成装置74は画像記録動作を終了して用紙3を排紙トレイ6上に排出させる。
【0036】
また、キャリッジ13の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、ヘッド14の吐出不良を回復するための回復装置37が配置されている。回復装置37は、キャップ手段、吸引手段、クリーニング手段等を有しており、キャリッジ13は印字待機中にはキャッピング手段でヘッド14をキャッピングされ、吐出口を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良の発生を防止している。また、記録途中等に記録とは関係のないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定として安定した吐出性能を維持している。吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段でヘッド14の吐出口を密封し、チューブを介して吸引手段により吐出口からインクと共に気泡等を吸い出し、吐出口面に付着したインクやごみ等をクリーニング手段によって除去し、これにより吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは装置本体1の下部に設けられた図示しない廃インク溜まりに排出され、廃インク溜まり内部に設けられたインク吸収体に吸収保持される。
【符号の説明】
【0037】
57 フレキシブル基板(フレキシブルプリントケーブル)
61 フレキシブル基板電極
63 圧電層
63a 駆動圧電素子柱
63b 非駆動圧電素子柱
64 内部電極
66 補強部材(ダミー電極)
70 ボイド
71,72 インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)
73,74 記録装置(インクジェット画像形成装置)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0038】
【特許文献1】特開平8−164607号公報
【特許文献2】特開平10−286951号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電極に接続される内部電極と、該内部電極と交互に積層される圧電層とからなる複数の圧電素子柱を設けると共に、該複数の圧電素子柱を交互に並列に配置した駆動圧電素子柱と非駆動圧電素子柱とから構成されるインクジェットヘッドにおいて、
前記駆動圧電素子柱の幅を前記内部電極に発生するボイドの最大径よりも大きくしたことを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】
請求項1記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記駆動圧電素子柱の幅が非駆動圧電素子柱の幅よりも大きいことを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項3】
請求項1または2記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記外部電極はフレキシブル基板に設けられており、該フレキシブル基板と前記非駆動圧電素子柱とが接合されていることを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項4】
請求項3記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記非駆動圧電素子柱と前記フレキシブル基板とが補強部材を介して接合されていることを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項5】
請求項4記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記補強部材の長さが前記非駆動圧電素子柱の長さと同等であることを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか1つに記載のインクジェットヘッドを有することを特徴とする記録装置。
【請求項7】
請求項1ないし5の何れか1つに記載のインクジェットヘッドを有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−27978(P2013−27978A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163565(P2011−163565)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】