説明

インクジェットヘッド

【課題】インクジェットヘッドの製造コストを安価にし、形状もコンパクトにする。
【解決手段】ノズル9aに連通した複数の圧力室17aが平面に沿って配置された流路ユニットと、該流路ユニットの表面に固定されて、前記圧力室17aの容積を変化させる複数の圧電アクチュエーターユニットとを備えている。前記ノズル9aはインクジェット平面視において、前記圧力室17a出口中心から一定の距離rを有する円周上に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体にインクを吐出して印刷を行うインクジェットヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の圧力室がマトリックス状に隣接配置され、前記複数の圧力室に跨って台形のシート状圧電アクチュエーターユニットが配置され、前記圧電アクチュエーターユニットを交互にヘッド主走査方向に配列してラインヘッドを形成している。
【0003】
【特許文献1】 特開2004−114342
【特許文献2】
【非特許文献1】
【非特許文献2】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、特許文献1に記載されたようなタイプのインクジェットヘッドにおいて、複数の圧力室に跨って配置された圧電アクチュエーターユニットの外形が台形形状をしているために、前記圧電アクチュエーターユニットの製造において、大判シートからの複数枚同時の切断加工がより困難となり、取り数も低減する。
【0005】
さらに、複数枚の圧電アクチュエーターユニットをヘッド副走査方向に交互に向きを違えてヘッド主走査方向に配列してラインヘッドを形成しているために、ヘッド外形が大きいものとなる。また、圧電アクチュエータの流路パーツへの接合も複雑な調整を要する。
【0006】
そこで、本発明の目的は、シート状圧電アクチュエーターユニットの外形を長方形にすることにより加工工数を低減することにある。
【0007】
さらに、前記長方形の圧電アクチュエーターユニットをヘッド主走査方向に直線状に配列することによってヘッド形状をコンパクトにしている。また、印字品質も向上させることができる。
【課題を解決するための手段と効果】
【0008】
本発明のインクジェットヘッドは、ノズルに連通した複数の圧力室が平面に沿って配置された流路ユニットと、前記流路ユニットの表面に固定されて、前記圧力室の容積を変化させる複数の圧電アクチュエーターユニットとを備えている。前記圧力室からノズルまでのインク流路はインクジェットヘッド平面視において、圧力室出口中心から一定の距離を有する円周上に位置するノズルに連通している。
【0009】
前記円周上のノズル位置は、インクジェットヘッドの副走査方向に印字媒体が相対移動して印刷するときに、所定の印字解像度を有するように、複数配列された圧力室毎に、変化している。
【0010】
前記ノズル位置の配列は、インクジェットヘッド主走査方向に一定の配列パターンを形成しており、このノズル配列パターンをヘッド主走査方向に繰り返し配置することにより、所定の長尺インクジェットヘッドを形成する。
【0011】
前記ノズル配列パターンは、略菱形をした前記圧力室の長軸の一方の出口中心からと、その反対側の圧力室出口中心からとのノズルへのインク流路を組み合わせて、所定の印字解像度を形成するように、構成されている。
【0012】
この構成において、前記ノズル配列パターンに対応する複数の圧力室配列パターンも形成され、インクジェットヘッド主走査方向に繰り返し配置される。前期各圧力室のヘッド主走査方向の間隔が、各前記圧力室パターン間において、最大の距離を有するように構成となっている。
【0013】
この構成によって、前記圧力室配列パターンの前記最大間隔の位置が、複数の前記アクチュエーターユニットの分割位置となる。これにより、アクチュエーターユニットの接着誤差等を含めた位置ずれに対応できる隙間を確保できる。
【0014】
本発明によって、複数の長方形のアクチュエーターユニットを、インクジェット主走査方向に直線状に配置できる。さらに、アクチュエーターユニットの外形寸法は、前記圧力室配列パターンの一個あるいは複数に跨る形状となる。これにより、インクジェットヘッドの形状はコンパクトとなり、ヘッド及びアクチュエーターユニットの製造が安価となる。また、各ノズル列がインクジェットヘッド主走査方向に直線状に配置されており、印字品質も向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施の形態のインクジェットヘッド1を分解して示す斜視図である。図2は、本実施の形態のインクジェットヘッド1を構成する積層体の一部を拡大して示す分解斜視図である。
【0016】
図1及び図2を参照して、ヘッド本体8について説明する。ヘッド本体8は下層からノズルプレート9、ベースプレート10、第1流路プレート11、第2流路プレート12、第3流路プレート13、供給プレート14、絞りプレート15、連結プレート16、圧力室プレート17、の9枚の薄い金属板を積層した構造となっている。これらの金属板は相互に接着剤により貼り付けられている。圧力室プレート17の上に長方形の4枚の圧電アクチュエーターユニット18も接着剤により貼り付けられる。圧電アクチュエーターユニット18の表面電極は4個のフレキシブルプリント基板19と電気的に接続される。
【0017】
ノズルプレート9には、図2及び図3に示すように、微小径のインク噴出用ノズル9aが多数個複数のノズル列に沿って穿設されている。ノズル9aのピッチ間隔は、複数のノズル列でもって、インクジェットヘッド副走査方向に印字媒体が走査した場合に、所定の印字解像度を得られるように、所定のピッチで配置されている。
また、底プレーと10には、前記ノズル9aに連通した微小径のインク通路である貫通孔10aが多数穿設されている。
【0018】
また第1流路プレート11と第2流路プレート12には、前記貫通孔10aに連通した微小径のインク通路である貫通孔11aと12aが多数穿設されている。また、第1流路プレート11と第2流路プレート12には、インク導入口17b(図10参照)からインクを供給するインク供給路11b及び12bが形成されている。
【0019】
また第3流路プレート13には、前記貫通孔12aに連通する長円のインク通路13aが多数穿設されている。また第3流路プレート13におけるインク供給路12bに対応する位置には、インク供給路13bが形成されている。
【0020】
また、供給プレート14には、前記インク通路13aに連通する長円のインク通路14aが多数穿設されている。また、供給プレート14には、上記インク供給路13bに対応する位置に、微小の貫通孔14bが形成されている。また、絞りプレート15には、インク通路14aに連通する長円のインク通路15aが多数穿設されている。また絞りプレート15には、インク供給路14bに対応する位置に貫通孔15bが形成されている。この絞りプレート15の貫通孔15bは、流路抵抗を大きくするための絞り流路15cと連通している。絞り流路15cの貫通孔15bの反対側には、貫通孔15dが形成されている。
【0021】
また、連結プレート16には、前記インク通路15aに連通した長円のインク通路16aが複数形成されている。
さらに、圧力室プレート17には、図4に示すように、ほぼ菱形のインク圧力室17aがマトリックス状に多数配置され、インク圧力室17aの一方の鋭角部17a1(17a2の場合もある)は、インク圧力室17aにインクを供給するため貫通孔16bと連設し、またインク圧力室17aの他方の鋭角部17a2(17a1の場合もある)は、前記ノズル9aにインクを送り出すためのインク通路16aと連設している。
【0022】
圧力室プレート17の上方には、図1に示す長方形形状の圧電アクチュエーターユニット18が接着剤により貼り付けられるが、圧電アクチュエーターユニットは2枚の圧電シート(図示せず)が積層され、最上層に表面電極18a(図9参照)が形成され、圧電シートの第1層と第2層間に内部電極が形成されている。上記複数の表面電極18aの形状と位置は圧力室17aの形状と位置に対応している。上記表面電極18aには、それぞれ駆動電極18bが設けられており、個々の駆動電極18bはフレキシブルプリント基板19に接着され、それぞれ独立に駆動信号を送出して、対応する圧力室17a内のインクに噴射圧力を与えることができる。
【0023】
次に、圧力室17aとノズル9a位置関係について図4を参照して説明する。図4は圧力室17aからノズル9aに連通するインク通路の一部を平面視した図である。菱形の圧力室17aの長軸と斜辺を延長した線の交点を17cとして、上記交点17cを中心とする所定の半径rの円周上に、全てのノズル9aは位置する。さらに、ノズル9aの円周上の位置は、ヘッド副走査方向に印字媒体が相対移動して印刷されたときに、所定の印字解像度(ここでは600dpi)を形成するように位置を変えている。ここで、インク通路15a、14a、13aは、ノズル9aと同心上にあるインク通路12aに連通するように各圧力室17a毎に傾斜をもって配置されている。
【0024】
次に、図5を参照して、ノズル9aの配列パターンを説明する。図5は圧力室17aとノズル9aの配列を平面視した図である。ここでは、ヘッド副走査方向の圧力室列は16列としている。図5中に示される複数の小円は、前記交点17cを中心とする半径rの円を示している。圧力室17aからノズル9aへのインク通路は、前記16列の圧力室列において、菱形圧力室の長軸の反対側の鋭角部17a1側からも取り出されている。この圧力室長軸17a1側にノズル9aへのインク通路を設けている圧力室17aの行内の個数をヘッド主走査方向に増減させることにより、印刷時に所定の印字解像度(600dpi)を形成している。図6はノズル配列のみを示している。図7は圧力室17aの配列の一部を示している。
【0025】
ここで、図5及び図6を参照してノズル9aと圧力室17aの配列パターンを説明する。図5に示すように、ノズル9aと圧力室17aの配列パターン1は、ヘッド主走査方向に繰り返し配置されている。図5中に示される配列パターン1と配列パターン2は同じ配列パターンとなっている。上記配列パターンを、ヘッド主走査方向に繰り返し配置して、所定の長さの長尺インクジェットヘッドを形成させている。ここで、各配列パターン間の配置間隔は、所定の印字解像度(ここでは600dpi)が得られるような距離となっている。
【0026】
さらに、図5に示すように、配列パターン1は、ヘッド副走査方向に配列パターン1Aと配列パターン1Bに分けられている。配列パターン1A及び配列パターン1Bは、印字媒体がヘッド副走査方向に走査して印刷される場合に、それぞれの配列パターンで300dpiの印字解像度が得られる配列となっている。
【0027】
ここで、図8を参照して本発明における圧力室17aとノズル9aの位置関係を説明する。略菱形の圧力室17aの長軸と斜辺の交点17c1及び17c2を中心として、ノズル9aまでの距離である半径rは、印字解像度600dpiに相当するノズル間隔のp=0.042mmの6倍に相当するr=0.254mmとなっている。交点17c1と交点17c2のヘッド主走査方向の距離はp(=0.042mm)の11倍となっている。さらに、ヘッド主走査方向での隣接圧力室のそれぞれの交点17c2間の距離はpの15(=nとする)倍となっている。ここで、ヘッド副走査方向でのノズル列数はn+1列以上が必要となる。本発明においては16列(図6参照)となっている。
【0028】
次に、図9を参照して圧電アクチュエーターユニット18を説明する。本発明で示された圧電アクチュエーターユニット18の平面視を図9に示す。圧電アクチュエーターの表面電極18aは、圧力室17aの位置に対応して配列されている。表面電極18aには信号取り出し部18bが接続されている。上記圧電アクチュエーター4枚は、ヘッド主走査方向にg(=約0.2mm)の間隔をあけて圧力室プレート17に接着されている。上記間隔gの位置は、前記圧力室17aの配列パターンのヘッド主走査方向への繰り返し配置における各配列パターン間に存在する。すなわち、前記gの位置は、ヘッド主走査方向に隣接圧力室17aの位置間隔が最も広くなる個所となっている。本発明では、ヘッド主走査方向の圧力室17a間距離が大きくなる個所(ここ以外では前期距離pとなっている)が周期的に発現して、長尺一体の製造が困難な圧電アクチュエーターシートの分割接着部を設けることを可能にしている。
【0029】
図10にヘッド全体の斜視図を示す。ヘッドには、インク供給口17bにより外部からインクが供給される。
【0030】
以上説明した通り、請求項1から請求項6による発明によって、同一形状の長方形の圧電アクチュエーターユニットを、ヘッド主走査方向に任意の個数だけ直線的に配置して接着し、所定の長さの長尺インクジェットヘッドを製造できる。これによりヘッド形状がコンパクトとなる。さらに、ヘッドの製造コスト及び印刷機内でのヘッドの設置空間の低減が可能となる。また、各ノズル列(ここでは16列)が、ヘッド主走査方向に直線状に配列されており、優れた印字品質が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施の形態のインクジェットヘッドを分解して示す斜視図である。
【図2】 本実施の形態のインクジェットヘッドを構成する積層体の一部を拡大して概念的に示す断面図である。
【図3】 本実施の形態のインクジェットヘッドを構成する積層体の一部を拡大して示すインク流路断面図である。
【図4】 本実施の形態の圧力室とノズル位置を示す拡大正面図である。
【図5】 本実施の形態の圧力室とノズル位置関係を示す正面全体配列図である。
【図6】 本実施の形態のノズル配列だけを示した正面図である。
【図7】 本実施の形態の圧力室プレートの一部を示した斜視図である。
【図8】 本実施の形態の圧力室とノズルの位置関係の一部を拡大して示す正面図である。
【図9】 本実施の形態の圧電アクチュエーターユニットの一枚を示した正面図である。
【図10】 本実施の形態のインクジェットヘッドの組立斜視図である。
【・・・・】

【符号の説明】
1 インクジェットヘッド
9 ノズルプレート
10 ベースプレート
11 第1流路プレート
12 第2流路プレート
13 第3流路プレート
14 供給プレート
15 絞りプレート
16 連結プレート
17 圧力室プレート
17a 圧力室
17b インク供給口
18 圧電アクチュエーターユニット
18a 表面電極
18b 駆動電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク噴射用のノズルに連通する複数の圧力室が平面に沿って配置された流路ユニットと、前記流路ユニットの表面に固定されて、前記圧力室の容積を変化させるアクチュエータとを備えたインクジェットヘッドにおいて、前記ノズルは前記圧力室の流路出口から、ヘッド平面視において所定の半径の円周上の位置に配置されており、各圧力室に連通する前記各ノズルの円周上の位置は、所定の印字解像度によって決定されていることを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】
複数の前記ノズルの配列は、ヘッド主走査方向に平行に配置され、副走査方向に所定の印字解像度の整数倍の間隔で配列されている事を特徴とする請求項1に記載されているインクジェットヘッド
【請求項3】
前記複数のノズルの配列は、ヘッド主走査方向に所定の解像度を有する一定のマトリックスパターン配列を形成し、このマトリックスパターン配列をヘッド主走査方向に任意の個数を配置してラインヘッドを形成する事を特徴とする請求項1に記載されているインクジェットヘッド
【請求項4】
前記圧力室の表面に固定されている圧電アクチュエーターユニットは、複数の圧力室に跨り板状長方形であり、前記圧電アクチュエーターユニットの前記長方形の一辺を、ヘッド主走査方向に平行な直線上にそろえて複数個配置し、長尺のラインヘッドを形成することを特徴とする請求項1,2又は3に記載されているインクジェットヘッド
【請求項5】
前記圧力室を含むインク流路は、圧力室からノズルまで各一体の板状部材を積層接合して形成されており、前記圧力室は、ヘッド平面視において、所定の配列パターンで配置され、複数の前記配列パターンがヘッド主走査方向に繰返し配置されラインヘッドを形成することを特徴とする請求項1〜4に記載されているインクジェットヘッド
【請求項6】
前記圧電アクチュエーターユニットの分割位置は、前記圧力室の配列パターン間に位置しヘッド主走査方向に隣接圧力室間距離が最大のところにあることを特徴とする請求項1〜5に記載のインクジェットヘッド

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−248567(P2009−248567A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122746(P2008−122746)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(508138357)
【Fターム(参考)】