説明

インクジェットヘッド

【課題】簡単な構造のインクジェットヘッドを提供する。
【解決手段】一つの実施の形態に係るインクジェットヘッドは、インク吐出部と、インク通路部と、ICとを具備する。前記インク吐出部は、インクが供給されるインク室と、前記インク室内に設けられた駆動素子と、前記インク室に開口するノズルと、前記駆動素子に接続された配線と、を備え、前記駆動素子によって前記ノズルから前記インク室内のインクを吐出する。前記インク通路部は、前記インク吐出部に取り付けられ、前記インク室に接続されて前記インク室に供給されるインクが通る供給通路と、前記インク室に接続されて前記インク室から排出されるインクが通る排出通路と、を有する。前記ICは、前記配線を介して前記駆動素子に電気的に接続されるとともに、前記インク通路部に熱的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、インクジェットヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタには、インクジェットヘッドを通して、インクを循環させる構成を有するものがある。この種のインクジェットヘッドは、基板と、この基板に取り付けられる枠状部と、この枠状部に取り付けられるノズルプレートとを備える。
【0003】
前記基板と、前記枠状部と、前記ノズルプレートによって、前記インクジェットヘッドの内部にインク室が形成される。複数の駆動素子が、前記インク室内に配置されるように前記基板に取り付けられる。この駆動素子は、前記インク室に供給されたインクを、前記ノズルプレートに設けられたノズルから吐出する。
【0004】
前記基板に、前記インク室にインクを供給するための供給口と、前記インク室からインクを排出するための排出口とが設けられる。前記駆動素子は、前記供給口と前記排出口との間に配置される。前記供給口から前記インク室に供給されたインクは、前記駆動素子によってインクジェットヘッドのノズルから吐出される。余ったインクは、前記排出口からインクタンクに回収される。
【0005】
また、インクジェットヘッドには、駆動素子を制御するICが実装されている。このICが使用時に発熱するため、インクジェットヘッドのカバーはヒートシンク状に形成される。ICから発生する熱は、このカバーを通じて放出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−160822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ICを冷却するためにカバーをヒートシンク状に形成すると、カバーの形状が複雑になる。このため、カバーの成形が難しくなり、インクジェットヘッドの製造コストが増加してしまう。
【0008】
本発明の目的は、簡単な構造のインクジェットヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一つの実施の形態に係るインクジェットヘッドは、
インク吐出部と、インク通路部と、ICとを具備する。前記インク吐出部は、インクが供給されるインク室と、前記インク室内に設けられた駆動素子と、前記インク室に開口するノズルと、前記駆動素子に接続された配線と、を備え、前記駆動素子によって前記ノズルから前記インク室内のインクを吐出する。前記インク通路部は、前記インク吐出部に取り付けられ、前記インク室に接続されて前記インク室に供給されるインクが通る供給通路と、前記インク室に接続されて前記インク室から排出されるインクが通る排出通路と、を有する。前記ICは、前記配線を介して前記駆動素子に電気的に接続されるとともに、前記インク通路部に熱的に接続される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施の形態に係るインクジェットヘッドを示す斜視図。
【図2】第1の実施形態のインクジェットヘッドを分解して示す斜視図。
【図3】第1の実施形態のインクジェットヘッドを図1のF3−F3線に沿って示す断面図。
【図4】第1の実施形態のマニホールドと基材と枠部材とを示す平面図。
【図5】第2の実施の形態に係るインクジェットヘッドを分解して示す斜視図。
【図6】第3の実施の形態に係るインクジェットヘッドを示す斜視図。
【図7】第3の実施形態のインクジェットヘッドを分解して示す斜視図。
【図8】第3の実施形態のインクジェットヘッドを図6のF8−F8線に沿って示す断面図。
【図9】第3の実施形態のマニホールドと基材と枠部材とを示す平面図。
【図10】第4の実施の形態に係るインクジェットヘッドを分解して示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、第1の実施の形態について、図1から図4を参照して説明する。図1は、インクジェットヘッド10を示す斜視図である。図2は、インクジェットヘッド10を分解して示す斜視図である。図3は、図1のF3−F3線に沿ってインクジェットヘッド10を示す断面図である。
【0012】
図1に示すように、インクジェットヘッド10は、インク吐出部11と、インク通路部12と、一対の回路モジュール13と、図示しないカバーとを備えている。インク通路部12と、一対の回路モジュール13とは、それぞれインク吐出部11に取り付けられている。
【0013】
図2に示すように、インク吐出部11は、マニホールド21と、基材22と、枠部材23と、ノズルプレート24とを有している。さらに、図3に示すように、インク吐出部11は、内部にインク室25を有している。枠部材23とノズルプレート24とは、基材22の上に重ねられている。インク室25は、基材22と、枠部材23と、ノズルプレート24とに囲まれており、印字用のインクが供給される。
【0014】
マニホールド21は、一対の第1の面31(図2に示す)と、一対の第2の面32と、嵌合部33とを有している。一対の第1の面31と一対の第2の面32とは、それぞれ平坦に形成されている。一対の第2の面32は、対応する第1の面31の反対側にそれぞれ設けられている。嵌合部33は、一対の第1の面31の間に設けられており、第1の面31から凹んでいる。嵌合部33に、基材22が嵌り込む。
【0015】
図4は、マニホールド21と、基材22と、枠部材23とを示す平面図である。図4に示すように、マニホールド21の第1の面31に、一対の供給孔35と、一対の第1の排出孔36と、一対の第2の排出孔37とが設けられている。一対の供給孔35と、一対の第1の排出孔36と、一対の第2の排出孔37とは、それぞれインク室25に開口している。供給孔35は、インク室25にインクを供給するための孔である。第1および第2の排出孔36,37は、インク室25で使用された後に余ったインクを排出するための孔である。
【0016】
図2に示すように、マニホールド21の一対の第2の面32から、複数の管41が突き出ている。複数の管41は、対応する供給孔35と第1の排出孔36と第2の排出孔37とにそれぞれ通じている。
【0017】
図4に示すように、供給孔35は、第1の排出孔36と第2の排出孔37との間に配置されている。供給孔35と第1の排出孔36との間、および供給孔35と第2の排出孔37との間に、仕切部42がそれぞれ設けられている。仕切部42は、マニホールド21の第1の面31から突出した突起である。
【0018】
基材22は、例えばアルミナなどのセラミックスによって矩形の板状に形成されている。基材22は、平坦な表面44を有している。基材22がマニホールド21の嵌合部33に嵌め込まれると、表面44は、マニホールド21の一対の第1の面31と一続きの平面を形成する。基材22の表面44には、一対の駆動素子45と、複数の配線パターン46とが設けられている。配線パターン46は、配線の一例である。配線パターン46は、例えば無電解メッキによって形成されたニッケル薄膜によって形成されている。
【0019】
一対の駆動素子45は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)によって棒状に形成された圧電素子である。一対の駆動素子45は、インク室25の中に平行に並んで配置されている。駆動素子45は、マニホールド21の一方の第1の面31の仕切部42と他方の第1の面31の仕切部42との間に挟まれている。駆動素子45のそれぞれの端部は、仕切部42に接している。駆動素子45には複数の溝が形成され、この溝がインクを吐出するための圧力室を形成する。
【0020】
複数の配線パターン46は、基材22の側面から駆動素子45に向かってそれぞれ延びている。配線パターン46は、駆動素子45の複数の溝にそれぞれ設けられた電極に接続されている。
【0021】
枠部材23は、基材22の表面44とマニホールド21の第1の面31とに接着されている。枠部材23はインク室25を囲んでおり、枠部材23の内壁はマニホールド21の複数の仕切部42に接している。
【0022】
図2に示すように、ノズルプレート24は、ポリイミド製の矩形のフィルムによって形成されている。ノズルプレート24は、枠部材23に接着され、インク室25を囲む。
【0023】
ノズルプレート24に、複数のノズル48が設けられている。ノズル48は、ノズルプレート24に形成された孔であり、インク室25にそれぞれ開口している。複数のノズル48は、一対の駆動素子45に設けられた複数の溝にそれぞれ対応して配置されている。駆動素子45の溝が形成する圧力室で加圧されたインクは、対応するノズル48から吐出される。
【0024】
図2に示すように、インク通路部12は、第1の排出側部材51と、第1のゴム板52と、供給側部材53と、第2のゴム板54と、第2の排出側部材55と、4つの固定部材56とを有している。第1のゴム板52と第2のゴム板54とは、断熱部材の一例である。
【0025】
第1の排出側部材51は、例えばアルミニウムによって矩形のブロック状に形成されている。なお、第1の排出側部材51は、例えば熱伝導率が高い銅や鉄のような熱の良導体や、他の材料によって形成されても良い。図3に太線で示すように、第1の排出側部材51の外面51aに、絶縁膜61がコーティングされている。
【0026】
第1の排出側部材51は、第1の排出通路62を有している。第1の排出通路62は、第1の排出側部材51の内面51bに開口するとともに蛇行して形成された溝を含んでいる。第1の排出通路62の一方の端部は、第1の排出側部材51の一方の端面に開口する一対の孔であり、第1の排出孔36に通じたマニホールド21の管41がそれぞれ挿入される。第1の排出通路62の他方の端部は、第1の排出側部材51の他方の端面に開口する孔であり、インクが貯蔵されるインクタンクに接続される。第1の排出通路62はインク室25に接続され、インク室25からインクタンクに排出されるインクが第1の排出通路62を通過する。
【0027】
供給側部材53は、例えば合成樹脂によって矩形のブロック状に形成されている。なお、供給側部材53は、第1の排出側部材51と同じアルミニウムや、他の材料で形成されても良い。
【0028】
図3に示すように、供給側部材53は、第1の供給通路64と、第2の供給通路65とを有している。第1の供給通路64は、供給側部材53の一方の側面53aに開口する凹部である。第2の供給通路65は、供給側部材53の他方の側面53bに開口する凹部である。図2に示すように、第1の供給通路64と第2の供給通路65とは、分岐部66と、一対の合流部67とによって繋がっている。分岐部66および一対の合流部67は、第1の供給通路64と第2の供給通路65とを隔てる隔壁にそれぞれ設けられた開口部である。
【0029】
第1および第2の供給通路64,65の一方の端部は、供給側部材53の一方の端面にそれぞれ開口する一対の孔であり、一対の合流部67と連なっている。第1および第2の供給通路64,65の一方の端部に、供給孔35に通じたマニホールド21の管41がそれぞれ挿入される。第1および第2の供給通路64,65の他方の端部は、供給側部材53の他方の端面に開口する孔であり、分岐部66と連なっている。第1および第2の供給通路64,65の他方の端部は、インクが貯蔵されるインクタンクに接続される。第1および第2の供給通路64,65はインク室25に接続され、インクタンクからインク室25に供給されるインクが第1および第2の供給通路64,65を通過する。
【0030】
第1のゴム板52は、第1の排出側部材51と供給側部材53との間に介在し、第1の排出側部材51の内面51bと、供給側部材53の一方の側面53aとに接触している。第1のゴム板52は、第1の排出通路62と第1の供給通路64とをシールするとともに、第1の排出側部材51と供給側部材53との間を断熱する。第1のゴム板52は、例えば合成ゴムによって矩形の板状に形成されている。第1のゴム板52はこれに限らず、断熱性を有し、シーリング可能な他の材料によって形成されても良い。
【0031】
第2の排出側部材55は、例えばアルミニウムによって矩形のブロック状に形成されている。なお、第2の排出側部材55は、例えば熱伝導率が高い銅や鉄のような熱の良導体や、他の材料によって形成されても良い。図3に太線で示すように、第2の排出側部材55の外面55aに、絶縁膜71がコーティングされている。
【0032】
図3に示すように、第2の排出側部材55は、第2の排出通路72を有している。第2の排出通路72は、第2の排出側部材55の内面55bに開口するとともに、第1の排出通路62と同様に蛇行して形成された溝を含んでいる。第2の排出通路72の一方の端部は、第2の排出側部材55の一方の端面に開口する一対の孔であり、第2の排出孔37に通じたマニホールド21の管41がそれぞれ挿入される。第2の排出通路72の他方の端部は、第2の排出側部材55の他方の端面に開口する孔であり、インクが貯蔵されるインクタンクに接続される。第2の排出通路72はインク室25に接続され、インク室25からインクタンクに排出されるインクが第2の排出通路72を通過する。
【0033】
第2のゴム板54は、供給側部材53と第2の排出側部材55との間に介在し、供給側部材53の他方の側面53bと、第2の排出側部材55の内面55bとに接触している。第2のゴム板54は、第2の供給通路65と第2の排出通路72とをシールするとともに、供給側部材53と第2の排出側部材55との間を断熱する。第2のゴム板54は、例えば合成ゴムによって矩形の板状に形成されている。第2のゴム板54はこれに限らず、断熱性を有し、シーリング可能な他の材料によって形成されても良い。
【0034】
図2に示すように、固定部材56はネジであって、第1の排出側部材51と、第1のゴム板52と、供給側部材53と、第2のゴム板54と、第2の排出側部材55との、それぞれの四隅を貫く。第1の排出側部材51と、第1のゴム板52と、供給側部材53と、第2のゴム板54と、第2の排出側部材55とは、固定部材56によって固定され、インク通路部12を形成する。なお、固体部材56に限らず、接着剤のような他の手段で第1の排出側部材51と、第1のゴム板52と、供給側部材53と、第2のゴム板54と、第2の排出側部材55とを固定しても良い。
【0035】
一対の回路モジュール13は、複数のフレキシブルプリント配線板(以下「FPC」と称する。)74と、一対のリジットプリント配線板(以下「PCB」と称する。)75と、複数の第1のドライバIC76と、複数の第2のドライバIC77とを有している。第1および第2のドライバIC76,77は、ICの一例である。
【0036】
FPC74は、柔軟性を有している。FPC74の一方の端部は、基材22に設けられた複数の配線パターン46にそれぞれ接続されている。FPC74の他方の端部は、PCB75にそれぞれ接続されている。
【0037】
第1および第2のドライバIC76,77は、例えばCOF(chip on film)やTAB(tape automated bonding)によってそれぞれパッケージ化されている。第1のドライバIC76は、例えば異方性導電フィルム(ACF)によって、第1の排出側部材51と向かい合うようにFPC74に実装されている。同様に第2のドライバIC77は、例えばACFによって、第2の排出側部材55と向かい合うようにFPC74に実装されている。第1および第2のドライバIC76,77は、FPC74および配線パターン46を介して、駆動素子45に電気的に接続される。
【0038】
図3に示すように、第1のドライバIC76は、絶縁膜61を介して第1の排出側部材51と接触している。これにより、第1のドライバIC76は、第1の排出側部材51に熱的に接触される。第1のドライバIC76は、第1の排出通路62に近い位置に配置される。
【0039】
同様に第2のドライバIC77は、絶縁膜71を介して第2の排出側部材55と接触している。これにより、第2のドライバIC77は、第2の排出側部材55に熱的に接続される。第2のドライバIC77は、第2の排出通路72に近い位置に配置される。
【0040】
第1のドライバIC76は、例えば接着によって第1の排出側部材51と接触した状態に固定されている。同様に第2のドライバIC77は、例えば接着によって第2の排出側部材55と接触した状態に固定されている。第1および第2のドライバIC76,77はこれに限らず、図示しないインクジェットヘッド10のケースによって第1の排出側部材51および第2の排出側部材55に押し付けられて固定されても良い。
【0041】
上記構成のインクジェットヘッド10は、以下のように印刷を行なう。
インクタンクのインクが配管を通って、供給側部材53に供給される。インクは、分岐部66を通って第1および第2の供給通路64,65に流れ込む。インクは第1および第2の供給通路64,65を通って合流部67で合流し、マニホールド21の管41および一対の供給孔35を通ってインク室25に供給される。
【0042】
インク室25において、一対の供給孔35から供給されたインクは、一対の駆動素子45の複数の溝が形成する複数の圧力室に供給される。インクは各圧力室を満たすとともに、駆動素子45の溝を通ってインク室25の全体に供給される。
【0043】
第1および第2のドライバIC76,77が、ユーザの操作によって入力された印字信号に基づき、配線パターン46を介して駆動素子45の複数の溝にそれぞれ設けられた電極に駆動パルス電圧を印加する。これらの電極に電圧が印加されると、駆動素子45がシェアモード変形を行い、圧力室内の圧力を高める。これにより、圧力室内のインクがノズル48から勢い良く吐出される。第1および第2のドライバIC76,77は、これらの動作に伴って発熱する。
【0044】
インク室25に供給されて余ったインクは、第1の排出孔36および第2の排出孔37からそれぞれ排出される。第1の排出孔36から排出されたインクと、第2の排出孔37から排出されたインクとは、同様の過程を経てインクタンクに戻る。このため、以下、第1の排出孔36から排出されたインクについて代表して説明する。
【0045】
第1の排出孔36から排出されたインクは、管41を通って第1の排出側部材51の第1の排出通路62に流れ込む。流入したインクは、蛇行して形成された第1の排出通路62を流れる。
【0046】
第1の排出側部材51に第1のドライバIC76が熱的に接続されているため、第1の排出側部材51は、第1のドライバIC76が発した熱を吸収する。第1の排出側部材51が吸収した熱は、第1の排出通路62を流れるインクに吸収される。なお、この熱は第1の排出通路62を流れるインクに吸収される以外にも、例えば外気やインクジェットヘッド10のケースに放出される。
【0047】
第1の排出側部材51から熱を吸収したインクは、第1の排出通路62から配管を通ってインクタンクに戻される。以上のように、インクジェットヘッド10は、印刷およびインクの循環を行なう。
【0048】
前記構成のインクジェットヘッド10によれば、第1および第2のドライバIC76,77から発せられる熱は、第1および第2の排出通路62,72を通るインクに吸収される。言い換えると、第1および第2のドライバIC76,77は、循環するインクによって冷却される。このため、第1および第2のドライバIC76,77を冷却するためにインクジェットヘッド10のカバーをヒートシンク状に形成する必要がなくなり、インクジェットヘッド10の構造を簡単なものとすることができる。したがって、インクジェットヘッド10の製造が容易となり、インクジェットヘッド10を安価に製造することができる。
【0049】
さらに、第1および第2のドライバIC76,77は、インク室25から排出されるインクが流れる第1および第2の排出通路62,72にそれぞれ熱的に接続されている。これにより、印字に影響がないインク室25から排出されるインクを第1および第2のドライバIC76,77の冷却に使うことができる。
【0050】
第1および第2の排出側部材51,55は、熱の良導体であるアルミニウムで形成されている。これにより、第1および第2のドライバIC76,77を効率よく冷却することができる。
【0051】
第1の排出側部材51と供給側部材53との間に第1のゴム板52が介在し、供給側部材53と第2の排出側部材55との間に第2のゴム板54が介在している。これにより、第1および第2の排出側部材51,55が吸収した熱が供給側部材53に伝わり、インク室25に供給されるインクが熱で変質することを防止できる。
【0052】
第1および第2の排出通路62,72は、蛇行して形成された溝を含んでいる。これにより、インクと第1および第2の排出通路62,72との接触面積が大きくなり、第1および第2の排出側部材51,55からインクへの熱伝導を効率よく行なうことができる。
【0053】
次に、図5を参照して、インクジェットヘッドの第2の実施の形態について説明する。なお、以下に開示する複数の実施形態において、第1の実施形態のインクジェットヘッド10と同一の機能を有する構成部分には同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0054】
第2の実施形態は、第1の実施形態の変形例である。図5に示すように、供給側部材53は、第1および第2の供給通路64,65の代わりに、一つの供給通路78を有している。言い換えると、第2の実施形態の供給側部材53は、第1の供給通路64と第2の供給通路65とを隔てる隔壁が除かれている。
【0055】
上述のように第1の供給通路64と第2の供給通路65とを隔てる隔壁を除いたとしても、第1の実施形態のインクジェットヘッド10と同様に第1および第2のドライバIC76,77を循環するインクによって冷却できる。
【0056】
次に、図6ないし図9を参照して、インクジェットヘッドの第3の実施の形態について説明する。なお、以下に開示する複数の実施形態において、第1の実施形態のインクジェットヘッド10と同一の機能を有する構成部分には同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0057】
図6は、第3の実施形態のインクジェットヘッド10Aを示す斜視図である。図7は、インクジェットヘッド10Aを分解して示す斜視図である。図8は、図6のF8−F8線に沿ってインクジェットヘッド10Aを示す断面図である。第3の実施形態のインクジェットヘッド10Aは、2色のインクを吐出するインクジェットヘッドである。
【0058】
図8に示すように、インクジェットヘッド10Aは、第1の実施形態のインク室25の代わりに、第1のインク室81と第2のインク室82とを有している。第1のインク室81には、例えばシアン色の第1のインクが供給される。第2のインク室82には、例えばマゼンダ色の第2のインクが供給される。なお、第1のインクの色と第2のインクの色とが異なれば、各インクの色はこれに限らない。
【0059】
駆動素子45は、第1のインク室81と第2のインク室82とにそれぞれ設けられている。第1のインク室81に設けられた駆動素子45は、第1のドライバIC76に電気的に接続されている。第2のインク室82に設けられた駆動素子45は、第2のドライバIC77に電気的に接続されている。ノズル48は、第1のインク室81と第2のインク室82とにそれぞれ開口している。
【0060】
図9は、マニホールド21と、基材22と、枠部材23とを示す平面図である。図9に示すように、枠部材23は、中枠部83を有している。中枠部83は、一対の駆動素子45の間に配置され、第1のインク室81と第2のインク室82とを隔てている。
【0061】
マニホールド21には、第1の実施形態の一対の供給孔35の代わりに、一対の第1の供給孔85と、一対の第2の供給孔86とが設けられている。一対の第1の排出孔36と一対の第1の供給孔85とは、第1のインク室81にそれぞれ開口している。一対の第2の排出孔37と一対の第2の供給孔86とは、第2のインク室82にそれぞれ開口している。第1および第2の供給孔85,86は、それぞれ対応する管41に通じている。
【0062】
図6に示すように、インクジェットヘッド10Aは、第1のインク通路部91と、第2のインク通路部92とを備えている。図7に示すように、第1のインク通路部91は、第1の排出側部材51と、第1のゴム板52と、第1の供給側部材94とを有している。第2のインク通路部92は、第2の供給側部材95と、第2のゴム板54と、第2の排出側部材55とを有している。
【0063】
第1および第2の供給側部材94,95は、例えば樹脂によって矩形のブロック状に形成されている。なお、第1および第2の供給側部材94,95は、第1の排出側部材51と同じアルミニウムや、他の材料で形成されても良い。
【0064】
図8に示すように、第1の供給側部材94は、第1の供給通路97を有している。第1の供給通路97は、第1の供給側部材94の内面94aに開口する溝を含んでいる。第1の供給通路97の一方の端部は、第1の供給側部材94の一方の端面にそれぞれ開口する一対の凹部であり、第1の供給孔85に通じたマニホールド21の管41がそれぞれ挿入される。第1の供給通路97の他方の端部は、第1のインクが貯蔵された第1のインクタンクに接続される。第1の供給通路97は第1のインク室81に接続され、第1のインクタンクから第1のインク室81に供給される第1のインクが第1の供給通路97を通過する。
【0065】
第2の供給側部材95は、第2の供給通路98を有している。第2の供給通路98は、第2の供給側部材95の内面95aに開口する溝を含んでいる。第2の供給通路98の一方の端部は、第2の供給側部材95の一方の端面にそれぞれ開口する一対の凹部であり、第2の供給孔86に通じたマニホールド21の管41がそれぞれ挿入される。第2の供給通路98の他方の端部は、第2のインクが貯蔵された第2のインクタンクに接続される。第2の供給通路98は第2のインク室82に接続され、第2のインクタンクから第2のインク室82に供給される第2のインクが第2の供給通路98を通過する。
【0066】
図6に示すように、第1のインク通路部91と第2のインク通路部92とは、並んで配置されてインク吐出部11にそれぞれ取り付けられる。このとき、第1の供給側部材94と第2の供給側部材95とは、隣り合って配置される。さらに、第1および第2の排出側部材51,55は、隣り合う第1および第2の供給側部材94,95の外側にそれぞれ配置される。
【0067】
上記構成のインクジェットヘッド10Aは、以下のように印刷を行なう。なお、第1のインクと第2のインクとは、同様の過程を経て循環する。このため、以下では、第1のインクについて代表して説明する。
【0068】
第1のインクタンクの第1のインクが配管を通って、第1の供給側部材94に供給される。第1のインクは、第1の供給通路97に流れ込む。第1のインクは第1の供給通路97を通り、マニホールド21の管41および一対の第1の供給孔85を通って第1のインク室81に供給される。
【0069】
第1のインク室81において、一対の第1の供給孔85から供給された第1のインクは、駆動素子45の複数の溝が形成する複数の圧力室に供給される。第1のインクは各圧力室を満たすとともに、駆動素子45の溝を通って第1のインク室81の全体に供給される。
【0070】
第1のドライバIC76が、ユーザの操作によって入力された印字信号に基づき、配線パターン46を介して駆動素子45の複数の溝にそれぞれ設けられた電極に駆動パルス電圧を印加する。これらの電極に電圧が印加されると、圧力室内の第1のインクがノズル48から勢い良く吐出される。これにより、シアン色の印字を行なう。同様に、第2のインク室82の第2のインクがノズル48から吐出され、マゼンダ色の印字を行なう。
【0071】
第1のインク室81に供給されて余った第1のインクは、第1の排出孔36から排出される。第1の排出孔36から排出された第1のインクは、第1の実施形態のインクと同様に、第1のドライバICの冷却に用いられて第1のインクタンクに戻される。
【0072】
前記構成のインクジェットヘッド10Aによれば、2色のインクを使用する場合であっても、第1の実施形態のインクジェットヘッド10と同様に第1および第2のドライバIC76,77を循環するインクによって冷却できる。
【0073】
さらに、第1および第2の排出側部材51,55は、隣り合う第1および第2の供給側部材94,95の外側にそれぞれ配置される。これにより、第1および第2のドライバIC76,77を第1および第2の排出側部材51,55に接触させ易くなる。
【0074】
次に、図10を参照して、インクジェットヘッドの第4の実施の形態について説明する。なお、以下に開示する複数の実施形態において、第3の実施形態のインクジェットヘッド10Aと同一の機能を有する構成部分には同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0075】
第4の実施形態は、第3の実施形態の変形例である。図10に示すように、インクジェットヘッド10Aは、第1および第2の供給側部材94,95の代わりに、一つの供給側部材101を有している。このため、第1のインク通路部91と第2のインク通路部92とは、一体に形成される。
【0076】
供給側部材101は、第1の供給通路97と、第2の供給通路98と、隔壁102と、を有している。隔壁102は、第1の供給通路97と第2の供給通路98との間を隔てている。
【0077】
第1の供給通路97の一方の端部97aは、供給側部材101の一方の端面に開口する孔であり、第1の供給孔85に通じたマニホールド21の管41がそれぞれ挿入される。第1の供給通路97の他方の端部97bは、第1のインクが貯蔵された第1のインクタンクに接続される。第1の供給通路97の両端部97a,97bと第2の供給通路98との間は塞がれている。
【0078】
第2の供給通路98の一方の端部98aは、供給側部材101の一方の端面に開口する孔であり、第2の供給孔86に通じたマニホールド21の管41がそれぞれ挿入される。第2の供給通路98の他方の端部98bは、第2のインクが貯蔵された第2のインクタンクに接続される。第2の供給通路98の両端部98a,98bと第1の供給通路97との間は塞がれている。
【0079】
上述のように第1のインク通路部91と第2のインク通路部92とを一体に形成したとしても、第3の実施形態のインクジェットヘッド10Aと同様に第1および第2のドライバIC76,77を循環するインクによって冷却できる。
【0080】
なお、前記の複数の実施形態において、インクジェットヘッド10,10Aのケースをヒートシンク状に形成し、第1および第2の排出側部材51,55に熱的に接続しても良い。
【0081】
また、第1の実施形態のインク通路部12は第1および第2のゴム板52,54を有していたが、インク通路部12はこれに限らない。例えば、第1の排出通路62を供給側部材53でシールし、第1の供給通路64を第1の排出側部材51でシールすれば、第1のゴム板52がなくとも良い。さらに、第2の供給通路65を第2の排出側部材55でシールし、第2の排出通路72を供給側部材53でシールすれば、第2のゴム板53がなくとも良い。
【0082】
また、前記の実施形態では、ドライバICは排出側部材に熱的に接続されていたが、ドライバICは供給側部材に熱的に接続されていても良い。この場合、インクタンクから供給されて供給通路を通るインクによって、ドライバICが冷却される。
【0083】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0084】
10,10A…インクジェットヘッド、11…インク吐出部、12…インク通路部、25…インク室、45…駆動素子、48…ノズル、51…第1の排出側部材、52…第1のゴム板、53,101…供給側部材、54…第2のゴム板、55…第2の排出側部材、62…第1の排出通路、64,97…第1の供給通路、65,98…第2の供給通路、72…第2の排出通路、76…第1のドライバIC、77…第2のドライバIC、78…供給通路、81…第1のインク室、82…第2のインク室、91…第1のインク通路部、92…第2のインク通路部、94…第1の供給側部材、95…第2の供給側部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクが供給されるインク室と、前記インク室内に設けられた駆動素子と、前記インク室に開口するノズルと、前記駆動素子に接続された配線と、を備え、前記駆動素子によって前記ノズルから前記インク室内のインクを吐出するインク吐出部と、
前記インク吐出部に取り付けられ、前記インク室に接続されて前記インク室に供給されるインクが通る供給通路と、前記インク室に接続されて前記インク室から排出されるインクが通る排出通路と、を有したインク通路部と、
前記配線を介して前記駆動素子に電気的に接続されるとともに、前記インク通路部に熱的に接続されたICと、
を具備することを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記インク通路部は、前記供給通路を含んだ供給側部材と、前記排出通路を含んだ排出側部材と、を含み、
前記ICは、前記排出側部材に熱的に接続されたことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記排出側部材は、熱の良導体であることを特徴とする請求項2に記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記インク通路部は、前記供給側部材と前記排出側部材との間に介在する断熱部材をさらに有したことを特徴とする請求項3に記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
前記排出通路が蛇行して形成されたことを特徴とする請求項4に記載のインクジェットヘッド。
【請求項6】
第1のインクが供給される第1のインク室と、前記第1のインクと異なる色の第2のインクが供給される第2のインク室と、前記第1のインク室と前記第2のインク室とにそれぞれ設けられた複数の駆動素子と、前記第1のインク室と前記第2のインク室とにそれぞれ開口する複数のノズルと、前記複数の駆動素子に接続された複数の配線と、を備え、前記複数の駆動素子によって前記複数のノズルから前記第1のインク室内の前記第1のインクおよび前記第2のインク室内の前記第2のインクを吐出するインク吐出部と、
前記インク吐出部に取り付けられ、前記第1のインク室に接続されて前記第1のインク室に供給される前記第1のインクが通る第1の供給通路と、前記第1のインク室に接続されて前記第1のインク室から排出される前記第1のインクが通る第1の排出通路と、を有した第1のインク通路部と、
前記インク吐出部に取り付けられ、前記第2のインク室に接続されて前記第2のインク室に供給される前記第2のインクが通る第2の供給通路と、前記第2のインク室に接続されて前記第2のインク室から排出される前記第2のインクが通る第2の排出通路と、を有した第2のインク通路部と、
前記複数の配線を介して前記複数の駆動素子に電気的に接続されるとともに、前記第1のインク通路部と前記第2のインク通路部とにそれぞれ熱的に接続された複数のICと、
を具備することを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項7】
前記第1のインク通路部は、前記第1の供給通路を含んだ第1の供給側部材と、前記第1の排出通路を含んだ第1の排出側部材と、を含み、
前記第2のインク通路部は、前記第2の供給通路を含んだ第2の供給側部材と、前記第2の排出通路を含んだ第2の排出側部材と、を含み、
前記複数のICは、前記第1の排出側部材と前記第2の排出側部材とにそれぞれ熱的に接続されたことを特徴とする請求項6に記載のインクジェットヘッド。
【請求項8】
前記第1の排出側部材と前記第2の排出側部材とは、熱の良導体であることを特徴とする請求項7に記載のインクジェットヘッド。
【請求項9】
前記第1のインク通路部は、前記第1の供給側部材と前記第1の排出側部材との間に介在する第1の断熱部材をさらに有したことを特徴とする請求項8に記載のインクジェットヘッド。
【請求項10】
前記第1のインク通路部と前記第2のインク通路部とが並んで配置され、
前記第1の排出側部材と前記第2の排出側部材とは、隣り合った前記第1の供給側部材および前記第2の供給側部材の外側にそれぞれ配置されたことを特徴とする請求項9に記載のインクジェットヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−125936(P2012−125936A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276837(P2010−276837)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】