説明

インクジェット印刷機用インク受け装置

【課題】印刷中は作業者が印刷に係る操作の障害になることがなく、かつインク受けの清掃等のメンテナンスを行う際には作業が行い易い位置にインク受けを移動可能であるインク受け装置を提供する。
【解決手段】インクジェット印刷機用インク受け装置Cは、インクジェットヘッドH111〜H144のノズルから吐出されるインクを受けるインク受けC1と、インク受けC1を水平移動可能に支持する支持部材C2とを有し、インク受けC1は、インクジェットヘッドによる印刷媒体への印刷を妨げない待機位置rと、インクジェットヘッドのインク吐出面下方で、印刷以外の目的で吐出されるインクを受けるインク受け位置sと、前記インク受け位置s及び前記待機位置rと異なる、前記インク受けC1のメンテナンスを行うメンテナンス位置tとの3つの位置に、支持部材C2によって水平移動可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行する連続した印刷媒体の上面にインク吐出面を対向させたインクジェットヘッドからインクを吐出して前記印刷媒体に印刷を行うラインヘッド型インクジェット印刷機の、前記インクジェットヘッドから、印刷以外の目的で吐出されるインクを受けるために設けられるインク受け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットによる印刷機としては、比較的小型のインクジェットヘッドを印刷媒体の幅方向に移動させるとともに、印刷媒体を長さ方向に移動(走行)させることによって印刷媒体の幅全体に渡って印刷が可能なシリアルヘッド型の印刷機と、印刷媒体の幅に対応する長さのインクジェットヘッドユニットを設けることによって、インクジェットヘッドユニットを移動させることなく印刷媒体を長さ方向に移動(走行)させて印刷媒体の幅全体に渡って印刷が可能なラインヘッド型の印刷機がある。ラインヘッド型の印刷機の場合、ヘッドを印刷媒体の幅方向に移動させる必要がないので、シリアルヘッド型の印刷機に比べ印刷速度を速くすることができるという利点がある。
【0003】
ところで、インクジェットヘッドの製作精度や製造コストの面から、1つのインクジェットヘッドで対応できる印刷媒体の幅には限度があり、幅広の印刷媒体に印刷を行うラインヘッド型印刷機では、適宜な長さのインクジェットヘッドを複数印刷媒体の幅方向に並べて設けて1つのインクジェットヘッドユニットとして、印刷媒体の幅に対応させることがある。複数のインクジェットヘッドを印刷媒体の幅方向に並べて設けて1つのインクジェットヘッドユニットとした場合、1つのインクジェットヘッドが印刷できる幅は、その筐体の幅より短いので、印刷媒体の幅方向に並べて設けられたヘッドとヘッドの境で、印刷に不連続部分が生じないようにするため、インクジェットヘッドユニットを構成する各インクジェットヘッドを印刷媒体の移動方向にずらして設け、インクジェットヘッドの筐体の一部を印刷媒体の幅方向でオーバーラップさせることにより印刷に不連続部分が生じないようにしている。
【0004】
また、カラー印刷では、一般に、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインクによる重ね刷りが行われる。従って、前述のラインヘッド型印刷機でカラー印刷を行う場合は、個別に設けられた各色の異なるインクを吐出するインクジェットヘッドユニットを印刷媒体の移動方向に並べて設置している。そして、これら複数のインクジェットヘッド、そしてインクジェットヘッドユニットは、印刷機内において精密に位置決めされて設置されている。
【0005】
インクジェットヘッドのインクを吐出するノズルの径は非常に小さく(数十ミクロンメートル)、異物や気泡の混入によってインク吐出不良を起こすことがある。また、長時間ノズルからのインク吐出が行われないと、ノズル内部のインクの溶媒が蒸発してインクの粘度が高まり、吐出不良を起こすこともある。そのため、印刷を行う前、そして必要に応じて印刷中あるいは印刷後等、適宜なタイミングでインク吐出不良を回避するために、インクジェットヘッドの保守を行うことは不可欠である。
【0006】
インクジェットヘッドの保守としては、インクパージ、あるいは予備吐出、スピッティング等と称する(以下、前記3者を「インクパージ」と記載する。)印刷以外の目的でノズルからインクを吐出させる操作が行われる。このインクパージによって、インク吐出不良の原因となるノズル内部の異物や気泡、増粘したインクを排出することができる。
【0007】
シリアルヘッド型の印刷機では、インクジェットヘッドを移動させて印刷しているので、予め、定められた位置にあるインク受けの上方までインクジェットヘッドを移動できるようにしておくことによって、インク受けに向けてインクパージを行うことができる。
【0008】
一方、ラインヘッド型の印刷機では、前述のように印刷媒体の幅に対応する長さのインクジェットヘッドユニットは、シリアルヘッド型インクジェットヘッドに比べ大きい。従って、接続されているインク配管や電気配線の数も多く、インクジェットヘッドを定められた位置にあるインク受けの上方へ移動させるために要する移動機構は複雑となり、コストがかかる上、故障を起こしやすくなる虞があった。しかもラインヘッド型印刷機のインクジェットヘッドは、印刷機内において精密に位置決めされており、インク受けの上方へ移動させた後、再び元の印刷を行う位置に正確に戻すことは容易ではなかった。
【0009】
そこで、下記特許文献1には、被記録媒体に対して液滴を吐出して印画を行う液滴吐出手段(インクジェットヘッド)と、その吐出性能の回復処理(保守)を行う吐出回復処理部と、被記録媒体を、前記液滴吐出手段との対向が可能な第1の位置と前記第1の位置とは異なる第2の位置とに移動可能とする被記録媒体移動手段と、前記吐出回復処理部を、前記液滴吐出手段と対向が可能な第1の位置と前記第1の位置とは異なる第3の位置に移動可能とする吐出回復処理部移動手段と、を備える画像形成装置が開示されている。
【0010】
そして、下記特許文献1に開示される画像形成装置においては、印刷(特許文献1では「印画」と記載)時、吐出回復処理部はヘッド部に対して印刷を妨げない第3の位置(退避位置)に退避されている。また、吐出回復時の状態に移行するときは、プラテン、ガイドローラーを下降させてプラテン及びガイドローラーに狭持されている連続紙を吐出回復処理部の移動を妨げない第2の位置まで下降させ、その後、吐出回復処理部を第3の位置(退避位置)からヘッド部に対向する第1の位置へ水平移動させて、吐出回復処理が開始される。所定の吐出回復処理が終了すると、吐出回復処理部を第3の位置(退避位置)に移動させ、そしてガイドローラーを移動させて連続紙の印刷面をヘッド部との対向可能な第1の位置へ移動させ、更にプラテンも第1の位置へ移動させて連続紙の背面に当てて接触させるように構成されている。さらに、下記特許文献1には、吐出回復処理部が行う吐出回復処理の一例として、専用インク受けに強制的にインク吐出をさせるインクパージ(特許文献1では「スピッティング処理」と記載)が記載されている。
【0011】
ところで、連続紙に印刷する場合、一般に印刷部(インクジェットによる印刷ではインクジェットヘッド部)の上流側に連続紙に張力を与えながら送り出すインフィード部、さらにその上流に巻取紙を支持する給紙部が設けられている。そして、下流側には、印刷された連続紙を後処理部へ送り出すアウトフィード部、さらに後処理部によって、印刷された後の連続紙を所定の寸法にカットし、必要に応じて折り畳んで印刷物としている。このように連続紙に対する印刷では、給紙部から後処理部まで、連続紙の走行方向に並んだ一連の印刷装置が構成されている。そして、これら一連の印刷装置の制御を行う制御盤、インフィード部及びアウトフィード部のローラーを駆動するモーター類、アクチュエーターの駆動源となる圧縮空気やインクを送る配管等は、連続紙の幅方向で概ね一方の側(駆動側)に配置することによって、連続紙の幅方向で他方の側(操作側)において作業者が印刷装置に沿って移動して、各装置の操作が容易であるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3828411号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1に開示される画像形成装置において、吐出回復処理部は、吐出回復処理部移動手段によって移動して、ヘッド部に対向する第1の位置と、印刷時ヘッド部に対して印刷を妨げない第3の位置(退避位置)とに位置決めされている。
【0014】
しかしながら、吐出回復処理部が第1の位置にあるとき、吐出回復処理部はヘッド部に対向しており、吐出回復処理部の清掃を行う等のメンテナンスには、対向するヘッド部が障害となって適切ではない。
【0015】
一方、吐出回復処理部が第3の位置にあるときは、ヘッド部に対して印刷を妨げない位置であるから、少なくとも吐出回復処理部はヘッド部に対向しておらず、メンテナンスを行うことが可能である。しかし、第3の位置を連続紙の幅方向で操作側に定めた場合、印刷時は常に吐出回復処理部が印刷部の操作側に位置し、印刷部を含む一連の印刷装置に沿って作業者が移動して、各装置の操作を行うのに障害となる。
【0016】
また、第3の位置を連続紙の幅方向で駆動側に定めた場合、駆動側には隣接するインフィード部及びアウトフィード部のローラーを駆動するモーターや、それらと制御盤とを接続する配線、さらに印刷部のインクジェットヘッドに接続された配線やインク配管等を収納するダクトが配置されており、吐出回復処理部のメンテナンスを行うには甚だ作業性がよくなかった。
【0017】
しかも、吐出回復処理部がインクパージによって吐出されるインクを受けるインク受けである場合、インク受けに付着したインクを長時間放置すると、インクの溶剤が蒸発してインクがインク受けに固着してしまう虞があるので、清掃等のメンテナンスを頻繁に行う必要がある。そこで、メンテナンスの作業性を良好にすることができる装置の実現が求められていた。
【0018】
本発明は、上述した種々の課題の存在に鑑みて成されたものであって、その目的は、ラインヘッド型インクジェット印刷機用のインク受け装置において、印刷中は作業者が印刷に係る操作の障害になることがなく、かつインク受けの清掃等のメンテナンスを行う際には作業が行い易い位置にインク受けを移動可能であるインク受け装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係るインクジェット印刷機用インク受け装置は、走行する連続した印刷媒体の上面にインク吐出面を対向させたインクジェットヘッドからインクを吐出して前記印刷媒体に印刷を行うラインヘッド型インクジェット印刷機の、前記インクジェットヘッドから、印刷以外の目的で吐出されるインクを受けるために設けられるインクジェット印刷機用インク受け装置であって、インクジェットヘッドのノズルから吐出されるインクを受けるインク受けと、前記インク受けを水平移動可能に支持する支持部材と、を有し、インク受けは、インクジェットヘッドによる印刷媒体への印刷を妨げない待機位置と、インクジェットヘッドのインク吐出面下方で、印刷以外の目的で吐出されるインクを受けるインク受け位置と、前記インク受け位置及び前記待機位置と異なる、前記インク受けのメンテナンスを行うメンテナンス位置と、の3つの位置に前記支持部材によって水平移動可能であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係るインクジェット印刷機用インク受け装置において、待機位置とメンテナンス位置は、印刷媒体の走行経路を挟んで印刷媒体の幅方向で異なる側に位置することとすることができる。
【0021】
さらに、本発明に係るインクジェット印刷機用インク受け装置において、支持部材は、インクジェット印刷機内部に固定された固定部と、固定部にガイドされて移動可能であるとともにインク受けを取付ける移動部と、を少なくとも有することとすることができる。
【0022】
またさらに、本発明に係るインクジェット印刷機用インク受け装置は、少なくともインク受け位置と待機位置との間でインク受けを移動させるインク受け移動手段を有することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、印刷中は作業者が印刷に係る操作の障害になることがなく、かつインク受けの清掃等のメンテナンスを行う際には作業が行い易い位置にインク受けを移動可能であるインクジェット印刷機用のインク受け装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1A】本実施形態に係るインク受け装置を装備した印刷機の連続紙の走行方向に対して直角な断面を表わした断面概略図で、インク受けが待機位置に位置している図である。
【図1B】図1AのX−X断面矢視図である。
【図2A】本実施形態に係るインク受け装置を装備した印刷機の連続紙の走行方向に対して直角な断面を表わした断面概略図で、インク受けがインク受け位置に位置している図である。
【図2B】図2AのX−X断面矢視図である。
【図3A】本実施形態に係るインク受け装置を装備した印刷機の連続紙の走行方向に対して直角な断面を表わした断面概略図で、インク受けがメンテナンス位置に位置している図である。
【図3B】図3AのX−X断面矢視図である。
【図4】図2AのY−Y断面矢視図である。
【図5】図1AのZ−Z断面矢視図である。
【図6】支持部材の枠と、第1インク受け移動手段のエアーシリンダーのロッド先端との取付け部を示す図で、分図(a)は、図2AのAX矢視図であり、分図(b)は分図(a)のAY−AY断面矢視図であり、連結棒が連結位置にある状態を示している。
【図7】支持部材の枠と、第1インク受け移動手段のエアーシリンダーのロッド先端との取付け部を示す図で、図6における連結棒が解放位置にある状態を示し、分図(b)は分図(a)のAY−AY断面矢視図である。
【図8】第2インク受け移動手段の実施形態を示す印刷機の連続紙の走行方向に対して直角な断面を表わした概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0026】
図1A〜図5は、本実施形態に係るインクジェット印刷機用のインク受け装置を備えた4色刷り(カラー印刷)が可能な印刷部を有するラインヘッド型印刷機(以下、印刷機11と記載)の概略を示す図である。ここで、図1A及び図1Bはインク受けC1が待機位置rに位置している図であり、図2A及び図2Bはインク受けC1がインク受け位置sに位置している図であり、図3A及び図3Bはインク受けC1がメンテナンス位置tに位置している図である。そして、図1A、図2A、図3Aは連続紙Wの走行方向に対して直角な断面を表わした断面概略図であり、図1B、図2B、図3Bはそれぞれ図1A、図2A、図3AのX−X断面矢視図である。ただし、ガイドローラー201〜209及び枠Tは、図示を省略している。また、図4は、図2AのY−Y断面矢視図であり、印刷機11の概要を示す内面図である。さらに、図5は、図1AのZ−Z断面矢視図で、各色の異なるインクを吐出する4つのインクジェットヘッドユニットH110〜H140のインク吐出面Fを下から見上げた図である。
【0027】
印刷機11には、印刷媒体である連続紙Wの走行方向と平行に設けられている左右1組のフレーム111、112に設けられた図示しないブラケットに、シアンのインクを吐出するインクジェットヘッドユニットH110、マゼンタのインクを吐出するインクジェットヘッドユニットH120、イエローのインクを吐出するインクジェットヘッドユニットH130、ブラックのインクを吐出するインクジェットヘッドユニットH140が取付けられている。印刷機11のシアンのインクを吐出するインクジェットヘッドユニットH110は、連続紙Wの幅に対して短いインクジェットヘッドH111〜H114を連続紙の幅方向に並べて支持プレートH010に取付けることによって構成されている。支持プレートH010には、インクジェットヘッドH111〜H114の各インク吐出面Fに合わせた抜き穴が設けてあり、各インク吐出面Fは連続紙Wの上面に平行に向き合うようになっている。
【0028】
マゼンタのインクを吐出するインクジェットヘッドユニットH120もインクジェットヘッドユニットH110と同様に、連続紙Wの幅に対して短いインクジェットヘッドH121〜H124を連続紙Wの幅方向に並べて支持プレートH020に取付けることによって構成されており、インクジェットヘッドH121〜H124の各インク吐出面Fは連続紙Wの上面に平行に向き合うようになっている。そして、インクジェットヘッドユニットH120は、インクジェットヘッドユニットH110の連続紙W走行方向下流側の隣に設置されている。
【0029】
イエローのインクを吐出するインクジェットヘッドユニットH130も、連続紙Wの幅に対して短いインクジェットヘッドH131〜H134を連続紙Wの幅方向に並べて支持プレートH030に取付けることによって構成されており、インクジェットヘッドH131〜H134の各インク吐出面Fは連続紙Wの上面に平行に向き合うようになっている。そして、インクジェットヘッドユニットH130は、インクジェットヘッドユニットH120の連続紙W走行方向下流側の隣に設置されている。
【0030】
ブラックのインクを吐出するインクジェットヘッドユニットH140も、連続紙Wの幅に対して短いインクジェットヘッドH141〜H144を連続紙Wの幅方向に並べて支持プレートH040に取付けることによって構成されており、インクジェットヘッドH141〜H144の各インク吐出面Fは連続紙Wの上面に平行に向き合うようになっている。そして、インクジェットヘッドユニットH140は、インクジェットヘッドユニットH130の連続紙W走行方向下流側の隣に設置されている。
【0031】
図5において、網かけが施してある部分は、各インクジェットヘッドのインク吐出口が設けられている範囲を示している。
【0032】
図示しない給紙部及びインフィード部からガイドローラー201〜209によって案内される連続紙Wに対して、前記4つのインクジェットヘッドユニットによって、矢印Kで示す連続紙Wの走行方向上流側から順に、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインクによる重ね刷りが行われる。印刷機11によって印刷された連続紙Wは、図示しないアウトフィード部を通り、図示しない後処理装置によって所定の寸法にカットされ、必要に応じて折り畳まれて印刷物となる。
【0033】
印刷機11のガイドローラー204〜208は、連続紙WをインクジェットヘッドユニットH110〜H140のインク吐出面F直下の所定の位置に案内する案内手段であり、ガイドローラー204〜208は、それぞれの周面に連続紙Wが若干の巻き角を持って接触するように配置されている(図4参照)。
【0034】
ガイドローラー204〜208は、その軸端部を枠Tに回転自在に支持されている。そして印刷機11のフレーム111と112にブラケットを介して取付けられた4本のエアーシリンダーVのロッドに枠Tは取付けられている。4本のエアーシリンダーVのロッドを同時に押出し、あるいは引込みさせることによって枠Tを垂直方向に上昇、あるいは下降させることができる。
【0035】
枠Tを上昇させると、ガイドローラー204〜208は、その周面がインク吐出面F近傍の所定の位置m(図1A参照)に移動して、該ガイドローラー204〜208によって案内される連続紙Wをインク吐出面F直下の印刷が行われる印刷位置に案内することができ、枠Tを下降させると、ガイドローラー204〜208は、インク吐出面Fから離隔した位置n(図2A、図3A参照)に移動して、インク吐出面F周囲にスペースを形成し、インク吐出面Fの保守作業を行うことが可能となる。なお、図4では、位置mにあるガイドローラー204〜208及びそれらによって案内される連続紙Wを二点鎖線で示している。そして、後述するインク受け装置Cのインク受けC1がインク吐出面Fに対向するときには、ガイドローラー204〜208を位置nに移動させることとなる。
【0036】
印刷機11に備えられたインク受け装置Cは、インク受けC1と、インク受けC1を待機位置r(図1参照)とインク受け位置s(図2参照)とメンテナンス位置t(図3参照)へ移動可能に支持する支持部材C2を有している。そして、インク受けC1を、インク受け位置sと待機位置rとへ移動させる第1インク受け移動手段G1はエアーシリンダーG10を有しており、印刷機11には補助フレーム113が設けられている。
【0037】
本実施形態では、印刷機11の連続紙Wの走行経路を挟んで、フレーム111が設けられている側が、印刷中に作業者が印刷機11を含む印刷装置の操作を行う操作側である。そして、補助フレーム113は、連続紙Wの走行経路を挟んで操作側と反対の側、すなわち印刷機11のフレーム112が設けられている駆動側にフレーム112と平行に設けられている。
【0038】
支持部材C2は、2つのスライドレールC21と、枠C22からなっている。スライドレールC21は、固定部である固定レールC211と、移動部である移動レールC213の間に中間レールC212がある3段タイプである。従って、移動レールC213は固定レールC211の長さを少し越えて移動することができる。
【0039】
詳細には、固定レールC211、移動レールC213及び中間レールC212は、略同じ長さを有している。移動レールC213に掛かる荷重は中間レールC212を介して固定レールC211によって支えられ、かつ、固定レールC211と中間レールC212及び中間レールC212と移動レールC213は、互いにその長さ方向に摺動可能である。
【0040】
固定レールC211に対して中間レールC212は互いの長さ方向位置が略一致した位置から一方向と他方向にそれぞれその長さの2分の1の長さより少し長く摺動して、固定レールC211から張り出すことができる。さらに、中間レールC212に対して移動レールC213は互いの長さ方向位置が略一致した位置から一方向と他方向にそれぞれその長さの2分の1の長さより少し長く摺動して、中間レールC212から張り出すことができる。従って、移動レールC213は固定レールC211に対して互いの長さ方向位置が略一致した位置から一方向と他方向にそれぞれその長さと同じ長さより少し長く移動して張り出すことができる。
【0041】
なお、各レールの摺動しあう面にはスチールボール転動面が形成されており、摺動しあうスチールボール転動面間には保持器によって保持されたスチールボールが装入されており、スチールボールが転がることによって摺動するので、摺動抵抗は小さい。
【0042】
スライドレールC21は、印刷機11のフレーム111とフレーム112に渡って連続紙Wの走行方向に直角に設けられた2つのステーJ1に、その固定レールC211を取付けている。2つのスライドレールC21は、水平に、かつ、互いに平行で向き合う位置が同じに取付けられている。そして、枠C22が2つのスライドレールC21の移動レールC213に渡って取付けられ、2つの移動レールC213と一体となっている。
【0043】
スライドレールC21は、移動レールC213が移動方向で固定レールC211と略一致した位置(中間レールC212も略一致する)で枠C22に取付けられたインク受けC1がインク受け装置sとなっている。
【0044】
また、枠C22に取付けられたインク受けC1がメンテナンス位置tにあるとき、中間レールC212が固定レールC211からその長さの2分の1より少し長く印刷機11の操作側に張り出し、さらに、移動レールC213が中間レールC212からその長さの2分の1より少し長く印刷機11の操作側に張り出して、すなわち、移動レールC213が固定レールC211の長さを少し越えて印刷機11の操作側に、その一部がフレーム111の外側に張り出して枠C22に取付けられたインク受けC1を支えている。
【0045】
一方、枠C22に取付けられたインク受けC1が待機位置rにあるとき、中間レールC212が固定レールC211からその長さの2分の1より少し長く印刷機11の駆動側に張り出し、さらに、移動レールC213が中間レールC212からその長さの2分の1より少し長く印刷機11の駆動側に張り出して、すなわち、移動レールC213が固定レールC211の長さを少し越えて印刷機11の駆動側のフレーム112と補助フレーム113の間に張り出して枠C22に取付けられたインク受けC1を支えている。
【0046】
インク受けC1は、上面が解放された箱形状で、インクジェットヘッドユニットH110〜H140に1つずつ対応して4つ設けられ、枠C22に取付けられている。各インク受けC1には、受けたインクを排出する排出口が設けられており、排出口にはインクを排インクタンク(図示せず)へ導くホースC11(インク流れ方向下流側一部図示を省略)がつながれている。インク受けC1の底面は受けたインクが排出口へ集るように傾斜が付けられている。また、ホースC11はインク受けC1が待機位置r、インク受け位置s、メンテナンス位置tのいずれの位置に移動しても追従できる長さを持って各インク受けC1と排インクタンクをつないでいる。
【0047】
一方、インク受け装置Cのインク受けC1をインク受け位置sと待機位置rとへ移動させる第1インク受け移動手段G1は、エアーシリンダーG10を有しており、エアーシリンダーG10は、スライドレールC21の移動方向と平行に、フレーム112と補助フレーム113の間に設けられ、シリンダーの両端部をフレーム112と補助フレーム113にブラケットを介して取付けられている。ロッドの先端は後述する構成によって枠C22と連結及び解放が容易に行えるようになっている。
【0048】
エアーシリンダーG10は、そのロッドの先端を枠C22と連結した状態で、ロッドを引込めることによって、枠C22に取付けられたインク受けC1をインクジェットヘッドユニットH110〜H140が連続紙Wに印刷可能な状態、すなわちインク受けC1が連続紙Wの走行を妨げないフレーム112と補助フレーム113の間に定めた待機位置r(図1参照)に位置させ、ロッドを押出すことによって枠C22に取付けられた4つのインク受けC1をインクジェットヘッドユニットH110〜H140のインク吐出面Fに対向するインク受け位置s(図2参照)へ移動させてそれぞれ位置決めする。そして、枠C22と、エアーシリンダーG10のロッド先端の取付け部を解放することによって、枠C22とともにインク受けC1をインク受け位置sからメンテナンス位置t(図3参照)へ手動で移動させることができる。
【0049】
続いて、図6及び図7を用いて、枠C22と、エアーシリンダーG10のロッド先端との取付け部の詳細を示す。ここで、図6の分図(a)は図2AのAX矢視図であり、分図(b)は分図(a)のAY―AY断面矢視図である。図6は、連結棒C231が連結位置uにある状態を示している。また、図7は、図6における連結棒C231が解放位置vにある状態を示し、分図(b)は分図(a)のAY―AY断面矢視図である。
【0050】
エアーシリンダーG10には、そのロッド先端に2つのフランジG101とG102が間隔pをおいて取付けてある。一方、枠C22には、その移動方向で印刷機11の操作側となる側面C221の中央部に連結棒C231が挿し通された門型金具C232が取付けられている。
【0051】
連結棒C231は人手によって上下に移動させることができ、門型金具C232を介して枠C22とエアーシリンダーG10のロッドとを連結する連結位置uと、枠C22とエアーシリンダーG10のロッドとのつながりを解除する解放位置vとに移動することができる。
【0052】
また、連結棒C231は、その厚みqがフランジG101とG102の間隔pよりわずかに薄く、下端部に逆U字型の切込みが設けてある。逆U字型の切込みの幅はエアーシリンダーG10のロッドの太さよりわずかに広く、連結棒を下げて連結位置uとすると、連結棒C231の下端部は逆U字型切込みにエアーシリンダーG10のロッドが入り込み、フランジG101とG102の間に連結棒が挿し込まれて枠C22とエアーシリンダーG10のロッドが連結される。このとき、門型金具C232に取付けられているボールプランジャーC233のボールが連結棒C231の所定の位置に設けられたくぼみにはまり、連結棒C231の上下方向位置がずれることを防いでいる。
【0053】
手作業により、連結棒C231のくぼみにはまっているボールプランジャーC233のボール押付け力に抗して連結棒C231を引き上げて解放位置vとすると、連結棒の下端部はフランジG101とG102の間から抜けて、枠C22はエアーシリンダーG21のロッドとのつながりから解除される。連結棒C231を上げて解放位置vとしたとき、門型金具C232に取付けられているボールプランジャーC233のボールが連結棒C231の逆U字型の切込み部に突出し、連結棒が自重で下がることを防いでいる。連結棒を解放位置vとすれば、枠C22を手動によって移動させ、インク受けC1をインク受け位置sからメンテナンス位置tへ、そしてメンテナンス位置tからインク受け位置sへ移動することができる。
【0054】
本実施形態の第1インク受け移動手段G1では、インク受けC1をインク受け位置sからメンテナンス位置tへ、そしてメンテナンス位置tからインク受け装置sへ移動させる動作を人手によって枠C22を移動させて行う構成であるが、次に説明する第2インク受け移動手段G2とすれば、メンテナンス位置tとインク受け位置s間の移動もインク受け移動手段によって行うことが可能である。
【0055】
以下、第2インク受け移動手段G2の実施形態について説明する。ここで、図8は第2インク受け移動手段G2の実施形態を示す印刷機11の連続紙Wの走行方向に対して直角な断面を表わした概略図である。インク受けC1が実線で描かれている位置が待機位置r、破線で描かれている位置がインク受け位置s、一点鎖線で描かれている位置がメンテナンス位置tである。なお、インク受けから、インクを排インクタンクへ導くホースは図示を省略している。
【0056】
図8に示す第2インク受け移動手段G2では、2つのスライドレールc21の近傍に、それぞれ無端のチェーンあるいはベルト(以下、「ベルト」と記載)G21が、移動レールC213の移動方向と平行になるようプーリーG22、G23によって張られている。ベルトG21には、枠C22の、その移動方向で印刷機11の駆動側となる側板C222と接続されたアタッチメントG211がそれぞれ取付けられている。
【0057】
図8に図示されているプーリーG22と、図8の手前側で、図示されていないプーリーG22とが固定されている軸G221はフレーム112と補助フレーム113間に設けられている2つのステーJ2(1つは図8の手前側で、図示されていない)に渡って回転可能に支持されており、モーターG30の出力側から駆動ベルトG31によって回転が伝えられ、正転及び逆転可能となっている。プーリーG23はフレーム111に回転可能に支持されている。
【0058】
モーターG30によって軸G221に固定されているプーリーG22を回転させることによって、ベルトG21を駆動し、アタッチメントG211、枠C22を介してインク受けC1をスライドレールC21に従って移動させることができる。
【0059】
さらに、図8に示す第2インク受け移動手段G2に、モーター制御手段(図示せず)と、該モーター制御手段に信号を送るように接続され、インク受けC1が、待機位置rに移動したとき、その位置に対応したアッタチメントG211の位置を検出する第1のリミットスイッチ(図示せず)と、インク受けC1が、インク受け位置sに移動したとき、その位置に対応したアタッチメントG211の位置を検出する第2のリミットスイッチ(図示せず)と、インク受けC1が、メンテナンス位置tに移動したとき、その位置に対応したアタッチメントG211の位置を検出する第3のリミットスイッチ(図示せず)を設けることによって、インク受けC1が待機位置r、インク受け位置s又はメンテナンス位置tにあるとき、隣接する別の位置へ移動を開始させる操作(例えば制御手段に属する操作盤からのスイッチ操作)を行った後、所定の位置にインク受けC1が到着すると、前記第1〜第3のいずれかのリミットスイッチが出力するアタッチメント検出信号をモーター制御手段が受信して、モーターを停止させるように制御を行えば、インク受けC1を待機位置r、インク受け装置s又はメンテナンス位置tに位置決めできる。
【0060】
以上記載のインク受け装置Cは、例えば以下のように動作させる。なお、以下の説明は、断りあるまでインク受け移動手段が図1A〜図7に示した第1インク受け移動手段G1である場合について説明するものとする。
【0061】
インク受けC1は、インクジェットヘッドユニットH110〜H140がインクパージを行うとき及び作業者がインク受けC1のメンテナンスを行うときの他は、待機位置rに位置させておく。インク受けC1を待機位置rに位置させておくことにより、いつでも印刷を開始することができ、しかも、インク受けC1が一連の印刷装置の操作側に沿って移動する作業者の妨げにならない。
【0062】
インク受けC1が待機位置rにあるとき、枠C22の連結棒C231はフランジG101とG102の間に挿し込まれた連結位置uに位置しており、エアーシリンダーG10のロッドは引込められている。
【0063】
インクパージを行うにあたり、印刷機11が印刷中であれば、印刷を中断する。そして、印刷機11のエアーシリンダーVのロッドを引込めて、枠Tとともにガイドローラー204〜208を位置nに下げる。連続紙Wが印刷機11の内部に通された状態であれば、連続紙Wもまた、自重によってガイドローラー204〜208の周面に載って下がる。
【0064】
ガイドローラー204〜208が位置nに下がった後、エアーシリンダーG10のロッドを押出す。ロッドの伸長とともにフランジG101とG102に狭持された連結棒C231に伴い、支持部材C2の枠C22に取付けられたインク受けC1は待機位置rからインク受け位置sへ移動して、位置決めされる。
【0065】
その後、インクジェットヘッドユニットH110〜H140のすべて、あるいはインクパージの実施を必要とするインクジェットヘッドユニットにおいて、インクパージを行う。パージされたインクは各インクジェットヘッドユニットH110〜H140に対応するインク受けC1内に受けられ、そのほとんどはインク受けC1に接続されたホースC11内を流れて図示しない排インクタンクに収容される。
【0066】
インクパージを行った後、すぐに印刷を開始する場合は、エアーシリンダーG10のロッドを引込め、フランジG101とG102に挟持された連結棒C231とともに、支持部材C2の枠C22に取付けられたインク受けC1をインク受け位置sから待機位置rへ移動させる。そして、インク受けC1が待機位置rへの移動を完了した後、印刷機11のエアーシリンダーVのロッドを押出して、枠Tとともにガイドローラー204〜208を位置mに上げ、印刷を開始する。
【0067】
一方、インク受けC1のメンテナンスを行うには、印刷機11で印刷が行われていないときに、印刷機11のエアーシリンダーVのロッドを引込めて、枠Tとともにガイドローラー204〜208を位置nに下げる。その後、エアーシリンダーG10のロッドを押出して、支持部材C2に取付けられたインク受けC1を待機位置rからインク受け位置sへ移動させる。(なお、インクパージ直後にインク受けC1のメンテナンスを行うのであれば、既にインク受けC1はインク受け位置sに位置している。)
【0068】
次に、手作業により連結棒C231に設けられたくぼみにはまり位置決めしているボールプランジャーC233のボールの押付け力に抗して、枠C22に設けられている連結棒C231を引き上げて連結位置uから解放位置vとする。すると、ボールプランジャーC233のボールが連結棒C231の逆U字型の切込み部に突出し、連結棒が自重で下がることを防ぎ、連結棒C231から手を離しても解放位置vに保持される。
【0069】
連結棒C231を解放位置vとすることで、枠C22及び枠C22に取付けられているインク受けC1は第1インク受け移動手段G1との連結が解除されるので、枠C22及びインク受けC1を手動によってメンテナンス位置tへ移動することができる。
【0070】
なお、スライドレールC21には、予め定められたストロークを越えて移動レールC213が移動できないようにストッパーが設けられており、移動レールC213及び中間レールC212が固定レールから外れることはなく、枠C22及びインク受けC1を手動によって印刷機11の操作側に略引出しきった位置がメンテナンス位置tとなる。
【0071】
インク受けC1をメンテナンス位置tに位置させることにより、インク受けC1は、インクジェットヘッドユニットH110〜H140のインク吐出面Fの下方から印刷機11の操作側に出現するので、インク受けC1の内部に残ったインクの除去作業や、周囲に付着した紙粉、塵の除去等、メンテナンスを容易に行うことができる。
【0072】
インク受けC1のメンテナンス終了後、枠C22及びインク受けC1を手動によってインク受け位置sへ移動する。ボールプランジャーC233のボールが連結棒C231の逆U字型の切込み部に突出し、解放位置vに保持されている連結棒C231を、手作業により、ボールプランジャーC233のボール押付け力に抗してエアーシリンダーG10の押出された状態にあるロッドに取付けられているフランジG101とG102の間に挿入し連結位置uとする。連結棒C231を連結位置uとすることで、枠C22及びインク受けC1は第1インク受け移動手段G1と連結されるので、エアーシリンダーG10のロッドを引込めることによって、枠C22及びインク受けC1を待機位置rへ移動する。
【0073】
インク受けC1が待機位置rへの移動を完了した後、印刷機11のエアーシリンダーVのロッドを押出して枠Tとともにガイドローラー204〜208を位置mに上げ、印刷に備える。
【0074】
次に、インク受け移動手段が図8に示した第2インク受け移動手段G2であり、かつ、モーター制御手段及び待機位置r、インク受け位置s、メンテナンス位置tに対応したアタッチメントG211の位置を検出する第1〜第3のリミットスイッチを有する場合について説明する。なお、インク受けC1が待機位置r、インク受け位置s、メンテナンス位置tの各位置における役割に変わりはないので、その説明を簡略にする。
【0075】
まず、インクパージを行うにあたり、印刷機11が印刷中であれば、印刷を中断して、ガイドローラー204〜208を位置nに下げる。
【0076】
モーター制御手段から待機位置rに位置するインク受けC1をインク受け位置sへ移動させる操作、すなわち図8においてモーターG30の出力軸を反時計回り(以下、「左回り」と記載)に回転させる操作を行う(以下、「左回り」及び「右回り」は、図8を紙面に垂直な方向で見た場合における回転方向を示す語であるものとする。)。モーターG30の出力軸の回転によって、その出力軸と駆動ベルトG31でつながった軸221及び軸221に固定されているプーリーG22も左回りに回転する。プーリーG22の回転によってベルトG21に取付けられたアタッチメントG211が左に移動し、アタッチメントに接続された支持部材C2の枠C22とともにインク受けC1は待機位置rからインク受け位置sへ向けて移動する。インク受けC1がインク受け位置sに到着すると、図示しない第2のリミットスイッチがインク受け位置sに対応するアタッチメントG211の位置を検出して信号を出力し、モーター制御手段が前記信号を受信して、モーターを停止させ、インク受けC1がインク受け位置sに位置決めされる。
【0077】
その後、インクヘッドジェットユニットH110〜H140でインクパージを行う。インクパージを行った後、すぐに印刷を開始する場合は、モーター制御手段からインク受け位置sに位置するインク受けC1を待機位置rへ移動させる操作、すなわちモーターG30の出力軸を時計回り(以下、「右回り」と記載)に回転させる操作を行う。モーターG30の出力軸の回転によって、その出力軸と駆動ベルトG31でつながった軸221及び軸221に固定されているプーリーG22も右回りに回転する。プーリーG22の回転によってベルトG21に取付けられたアタッチメントG211が右に移動し、アタッチメントに接続された支持部材C2の枠C22とともにインク受けC1は待機位置rへ向けて移動する。インク受けC1が待機位置rに到着すると、図示しない第1のリミットスイッチが待機位置rに対応するアタッチメントG211の位置を検出して信号を出力し、モーター制御手段が前記信号を受信して、モーターを停止させ、インク受けC1が待機位置rに位置決めされる。
【0078】
インク受けC1が待機位置rへの移動を完了した後、印刷機11のガイドローラー204〜208を位置mに上げ、印刷を開始する。
【0079】
インク受けC1のメンテナンスを行うには、印刷機11で印刷が行われていないときに、印刷機11のガイドローラー204〜208を位置nに下げ、その後、前述と同じく、モーター制御手段から待機位置rに位置するインク受けC1をインク受け位置sへ移動させる操作を行う。インク受けC1が待機位置rからインク受け位置sへ移動し、第2のリミットスイッチがインク受け位置sに対応するアタッチメントG211の位置を検出して信号を出力し、モーター制御手段が前記信号を受信して、モーターを停止させ、インク受けC1がインク受け位置sに位置決めされる(なお、インクパージ直後にインク受けC1のメンテナンスを行うのであれば、既にインク受けC1はインク受け位置sに位置している。)。
【0080】
続いて、モーター制御手段からインク受け位置sに位置するインク受けC1をメンテナンス位置tへ移動させる操作、すなわちモーターG30の出力軸を左回りに回転させる操作を行う。モーターG30の出力軸の回転によって、プーリーG22も左回りに回転し、ベルトG21に取付けられたアタッチメントG211が左に移動して、アタッチメントに接続された支持部材C2の枠C22とともにインク受けC1はインク受け位置sからメンテナンス位置tへ向けて移動する。インク受けC1がメンテナンス位置tに到着すると、図示しない第3のリミットスイッチがメンテナンス位置tに対応するアタッチメントG211の位置を検出して信号を出力し、モーター制御手段が前記信号を受信して、モーターを停止させ、インク受けC1がメンテナンス位置tに位置決めされるので、インク受けC1のメンテナンスを行う。
【0081】
インク受けC1のメンテナンス終了後、インク受けC1を待機位置rへ移動させるために、まず、モーター制御手段からメンテナンス位置tに位置するインク受けC1をインク受け位置sへ移動させる操作、すなわちモーターG30の出力軸を右回りに回転させる操作を行う。モーターG30の出力軸の回転によって、プーリーG22も右回りに回転し、ベルトG21に取付けられたアタッチメントG211が右に移動して、アタッチメントに接続された支持部材C2の枠C22とともにインク受けC1はメンテナンス位置tからインク受け位置sへ向けて移動する。インク受けC1がインク受け位置sに到着すると、図示しない第2のリミットスイッチがインク受け位置sに対応するアタッチメントG211の位置を検出して信号を出力し、モーター制御手段が前記信号を受信して、モーターを停止させ、インク受けC1がインク受け位置sに位置決めされる。
【0082】
引き続きモーター制御手段からインク受け位置sに位置するインク受けC1を待機位置rへ移動させる操作、すなわち、モーターG30の出力軸を右回りに回転させる操作を行う。モーターG30の出力軸の回転によって、プーリーG22も右回りに回転し、ベルトG21に取付けられたアタッチメントG211が右に移動して、アタッチメントに接続された支持部材C2の枠C22とともにインク受けC1はインク受け位置sから待機位置rへ向けて移動する。インク受けC1が待機位置rに到着すると、図示しない第1のリミットスイッチが待機位置rに対応するアタッチメントG211の位置を検出して信号を出力し、モーター制御手段が前記信号を受信して、モーターを停止させ、インク受けC1が待機位置rに位置決めされる。
【0083】
インク受けC1を第2インク受け移動手段G2によって、あるいは、手動によってメンテナンス位置sへ移動させると、インク受けC1はインクジェットヘッドユニットH110〜H140の下を通り抜けて印刷機11の操作側へ出現し、作業者による清掃等のメンテナンスを行うことが容易な位置となる。
【0084】
また、インク受けC1をメンテナンス位置sで支えるスライドレールC21の移動レールC213は、中間レールC212を介して固定レールC211からその長さ分を少し越えて張り出しており、インク受けC1をインク受け位置s及び待機位置rに移動させれば、張り出していた中間レールC212及び移動レールC213は引込み、印刷機11の操作側外部に残ることはない。
【0085】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。上述したように、本発明に係るインクジェット印刷機用インク受け装置によれば、印刷中にインク受けが待機している待機位置が、連続紙走行経路を挟んで作業者が印刷装置の操作を行う操作側とは反対の駆動側であるため、印刷中、一連の印刷装置の操作を行う際、障害となることがない。
【0086】
また、インク受けのメンテナンスを行う際は、インク受けを印刷機の操作側に定めたメンテナンス位置へ移動できるので、待機位置にあるインク受けのメンテナンスを行うのに比べて、作業者が給紙部から後処理部に渡る紙経路を迂回して、待機位置にあるインク受けまで行く手間がない。
【0087】
さらに、隣接するインフィード部及びアウトフィード部のローラーを駆動するモーターや、それらと制御盤とを接続する配線、さらに印刷部のインクジェットヘッドに接続された配線やインク配管等を収納するダクトが配置されており、作業性の悪い印刷機の駆動側でメンテナンスを行わず、操作側でメンテナンスを行えるので作業が極めて容易である。
【0088】
またさらに、インク受けがメンテナンス位置に位置するときには、印刷機のフレーム内に取付けられた固定レールから張り出した移動レールに支持されており、インク受けをインク受け位置及び待機位置に移動すると、張り出していた移動レールもインク受けとともにメンテナンス位置からインク受け位置及び待機位置へ引込む。そして、インク受け移動手段は、印刷機の操作側フレームから印刷機の駆動側に設けられている補助フレームの間に設けられている。従って、インク受けがインク受け位置及び待機位置にあるときは、インク受け装置の支持部材及びインク受け移動手段が印刷機の操作側フレームより印刷機の外に突き出ていないので、印刷機の操作側を移動する作業者の障害となることがない。
【0089】
また、本発明に係るインクジェット印刷機用インク受け装置に対して第1インク受け移動手段を設ければ、インク受けを、操作側から手の届きにくい待機位置とインク受け位置とに移動、位置決めすることができる。
【0090】
さらに、本発明に係るインクジェット印刷機用インク受け装置に対して第2インク受け移動手段を設ければ、インク受けを、待機位置、インク受け位置及びメンテナンス位置に移動、位置決めすることができる。
【0091】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0092】
11 ラインヘッド型インクジェット印刷機、111,112 印刷機フレーム、113 補助フレーム、201,202,203,204,205,206,207,208,209,210,211 ガイドローラー、T 枠、V エアーシリンダー、C インク受け位置、C1 インク受け、C11 ホース、C2 支持部材、C21 スライドレール、C211 固定レール(固定部)、C212 中間レール、C213 移動レール(移動部)、C22 枠、C221 側面、C222 側板、C231 連結棒、C232 門型金具、C233 ボールプランジャー、G1 第1インク受け移動手段、G2 第2インク受け移動手段、G10 エアーシリンダー、G101,G102 フランジ、G21 ベルト、G211 アタッチメント、G22,G23 プーリー、G221 軸、G30 モーター、G31 駆動ベルト、H110,H120,H130,H140 インクジェットヘッドユニット、H010,H020,H030,H040 支持プレート、H111,H112,H113,H114 インクジェットヘッド、H121,H122,H123,H124 インクジェットヘッド、H131,H132,H133,H134 インクジェットヘッド、H141,H142,H143,H144 インクジェットヘッド、J1,J2 ステー、F インク吐出面、W 連続紙、m 連続紙に印刷可能であるガイドローラーの位置、n インクジェットヘッドインク吐出面のメンテナンスを行う際のガイドローラーの位置、p フランジ間隔、q 連結棒厚さ、r 待機位置、s インク受け位置、t メンテナンス位置、u 連結位置、v 解放位置、D インク受け位置からメンテナンス位置へ移動する方向を示す矢印、E インク受け位置から待機位置へ移動する方向を示す矢印、K 連続紙の走行方向を示す矢印。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する連続した印刷媒体の上面にインク吐出面を対向させたインクジェットヘッドからインクを吐出して前記印刷媒体に印刷を行うラインヘッド型インクジェット印刷機の、前記インクジェットヘッドから、印刷以外の目的で吐出されるインクを受けるために設けられるインクジェット印刷機用インク受け装置であって、
インクジェットヘッドのノズルから吐出されるインクを受けるインク受けと、
前記インク受けを水平移動可能に支持する支持部材と、
を有し、
インク受けは、
インクジェットヘッドによる印刷媒体への印刷を妨げない待機位置と、
インクジェットヘッドのインク吐出面下方で、印刷以外の目的で吐出されるインクを受けるインク受け位置と、
前記インク受け位置及び前記待機位置と異なる、前記インク受けのメンテナンスを行うメンテナンス位置と、
の3つの位置に前記支持部材によって水平移動可能であることを特徴とするインクジェット印刷機用インク受け装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット印刷機用インク受け装置において、
待機位置とメンテナンス位置は、印刷媒体の走行経路を挟んで印刷媒体の幅方向で異なる側に位置することを特徴とするインクジェット印刷機用インク受け装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のインクジェット印刷機用インク受け装置において、
支持部材は、
インクジェット印刷機内部に固定された固定部と、
固定部にガイドされて移動可能であるとともにインク受けを取付ける移動部と、
を少なくとも有することを特徴とするインクジェット印刷機用インク受け装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット印刷機用インク受け装置において、
少なくともインク受け位置と待機位置との間でインク受けを移動させるインク受け移動手段を有することを特徴とするインクジェットヘッド印刷機用インク受け装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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