説明

インクジェット印刷用の顔料系インク

分散顔料およびアニオン性荷電ポリマーのうちの少なくとも1種を含有し、および顔料とアニオン性荷電ポリマーの濃度と比べてより低濃度の、多価金属酸化物粒子分散体を更に含有する水性インク組成物であって、該インク組成物は、4よりも大きいpHを有し、および該多価金属酸化物粒子は、該インク組成物のpHにて負のゼータ電位を有する。これらのインク組成物は、インクにより誘発される溶解およびプリントヘッドにおいて見出されるケイ素系材料の応力亀裂により引き起されるケイ素系インクジェットプリントヘッドの破損および故障を減少させる場合に効果的である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、インクジェット印刷用のインク組成物の分野に関し、ならびに該インク組成物と接触する材料および関連する印刷装置に関し、それによって、プリントヘッドはインクと接触することによる損傷を受けない。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷は、デジタル信号に応えて画像記録要素に対してピクセル-バイ-ピクセル法でインク液滴を沈着させることにより印刷画像を作成するためのノン-インパクト法である。所望の印刷画像を得るために画像記録要素上におけるインク液滴の沈着を制御に使用する様々な方法がある。ドロップ-オン-デマンド(DOD)インクジェットとして既知の1方法においては、所望の印刷画像を形成するために、画像記録要素上に要求されるように個々の液滴が発射される。ドロップ-オン-デマンド印刷におけるインク液滴の噴出を制御する一般的な方法は、熱気泡形成(サーマルインクジェット(TIJ))および圧電変換器を含む。連続インクジェット(CIJ)として既知の別の方法において、液滴の連続ストリームは、画像記録要素の表面上に、像用(image−wise)法で生成されて放出される。一方、画像化されない液滴は、偏向され、捕捉されインクだめへ再生される。インクジェットプリンターは、卓上のドキュメントと写真品質画像から、短時間の印刷および産業的なラベル付けまで、幅広い用途におよぶ市場範囲で見出されている。
【0003】
インクジェットプリンターの多くの種類は、ケイ素、二酸化ケイ素および窒化ケイ素を含むケイ素系材料から製造されるプリントヘッドを使用する。なぜならば、これらの材料は、半導体製造設備において一般的であり、高複合集積回路および電気機械装置を形成するのに容易に加工できるからである。プリントヘッド部分は、プリントヘッドへインクを供給する流路およびプリントノズルを含み、そして、プリントノズルは、印刷用インクと直接接触するこれらのケイ素系材料の領域を含む場合が多い。先行技術においては、幅広い範囲のインク組成物がこれらのケイ素系材料を溶解させ、または機械的な破損を生じさせる応力を誘発し、分解速度を増加させることが既知である(US6730149B2)。インクジェット印刷装置の信頼性は、プリントヘッドにおけるインクとケイ素系材料との間で生じるこれらの相互作用により、劇的に減少する。
【0004】
この問題を解決するのは困難である。あるインクジェット用印刷システムにおいては、プリントヘッドのケイ素含有部分、特にインクチャンバー、ノズル、およびインクチャネルがインクカートリッジと共に置換えられ、ケイ素系材料の寿命が個々のインクカートリッジの寿命に限定される。この方法は、インクカートリッジのコストを劇的に増加させおよび印刷システムのデザインを制限する。
【0005】
インクがケイ素系材料を溶解することを防ぐ別の方法は、インクと接触する全表面において抵抗材料を蒸着またはコートすることである。これらのコーティングは、有機(例えばポリマー)または無機(例えばチタンもしくはハフニウムの酸化物)などである。この方法も、プリントヘッドのコストを増加させる欠点を有し、コーティング中のピンホールまたは乏しい不均一性に悩まされることが多く、このことは、インクからの保護を制限する。
【0006】
プリントヘッドにおけるケイ素系材料を溶解または損傷させないインク組成物に関する要求が強い。
【0007】
インクジェットプリンターにおいて使用される着色剤を含有するインク組成物は、着色剤がインク組成物中に懸濁される顔料粒子として存在する顔料系、または着色剤が1種以上の染料分子からなる十分に溶媒和された染料種として存在する染料系に分類できる。染料よりもより耐退色性を備えるので、顔料が高く望まれている。しかし、顔料系インクは、種々の欠点を有する。大きな長さのものは、顔料を十分に小さな粒径にし、粒子に対する十分なコロイド安定性をもたらように用いられるべきである。顔料系インクは、最新のインク用途に関して要求されるサブミクロン範囲に粒子を生成させるために、非常に長い微粉砕作業を必要とすることが多い。顔料粒子が極めて大きな光散乱性である場合、光学密度と印刷画像における光沢に悪影響を及ぼす。
【0008】
顔料インクの第2の欠点は、印刷後のそれらの耐久性、特に印刷画像に施される研磨力条件下における耐久性である。さらに、インクジェットレシーバー上に印刷された画像は、印刷直後からインクが乾燥する数分までの短い時間間隔において、欠陥の影響を受けやすい。最後に、乾燥画像の耐久性も、環境要因、例えば温度および湿度に依存し、このことは、ある特定の条件における画像耐久性を低下させる。
【0009】
この点で顔料インクは、後の印刷時の物理的な酷使および環境条件に耐えることができる耐久性のある画像を提供するために、種々のポリマー、分散剤および他の添加剤類と配合されている。
【0010】
インクによりケイ素系プリントヘッド材料を溶解または損傷させる傾向を減少させる数々の方法が、開示されている。これらの方法は、一般にアルカリ金属イオン濃度を調整すること、抑制有機分子(例えば、特定の染料など)を添加すること、またはカチオン性オニウム塩(US6730149B2)を添加することを含む。別の方法は、特定の金属酸化物粒子(例えば、アルミナまたは酸化セリウムなど)の分散系を使用し、この方法の場合、粒子は4〜6のpH範囲で正電荷を有し(US/2008/0129811)、このpH範囲におけるそれらの正のゼータ電位により特徴づけられる。これらの正に帯電した電子は、プリントヘッドにおける負に帯電したケイ素系表面へ付着し、それによりインクによるこれらの表面の溶解を除去すると考えられている。これらの方法は、特定のインク組成物に限定され、顔料表面において負の帯電を示す顔料系インクと良好に作用せず、ポリマーが顔料分散体および結果として生じるインクの安定性に必要不可欠である。ケイ素腐食に関するインク性能を改良させる別の一般法は、適当な緩衝液を用いてインクpH値を調節することである。例えば、イノウエ等によるUS7370952B2において、緩衝液は、腐食の影響を減少させるために、ドロップ-オン-デマンド型のインクジェットプリンターにおいて使用されるインクのpH値を調製するのに使用できる。より高いpH値(よりアルカリ性)の溶液、例えば湿潤エッチング法において使用される溶液などにより、ケイ素の腐食は加速されることが既知であり、このことが主な原因である。同時に、インクジェット用インクに有用な組成物は、溶液完全性を維持するために、例えばインク成分の沈殿を防ぐために、若干アルカリ性であることが要求される場合が多い。
【0011】
低濃度の多価金属イオン、例えばアルミニウムなどは、プリントヘッドにおける様々な材料に対する損傷を減少できることが見出されている(US6607268B2)。それらがインクの他の成分、特に負に帯電した顔料およびポリマーと接触しないように、これらのイオンが十分に低い濃度で効果的である場合には、これらの材料は有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6730149号B2明細書
【特許文献2】米国特許出願公開2008/0129811号明細書
【特許文献3】米国特許第7370952号B2明細書
【特許文献4】米国特許第6607268号B2明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
多価金属イオンの添加は、インクジェットプリントヘッドにおけるケイ素系表面に対する損傷を防ぐのに効果的であるが、多くの水性顔料系インクは、40〜50ppmよりも大きい多価金属イオン濃度にて不安定となり沈殿する、負に帯電した顔料およびポリマーを多量に含有する。インク製造において、顔料およびポリマーの不安定化を引き起すイオンの高い局所濃度が生じないよう、金属イオンを添加する間に大きく注意すべきであるので、このことは、困難性をもたらす。さらに、金属イオン塩添加剤で安定して得ることができる、より大きな多価金属イオン濃度を備えるインク処方を得ることは、印刷システムの長期的な信頼性に対して必要である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
1実施態様に従うと、本発明は、分散顔料およびアニオン性荷電ポリマーのうちの少なくとも1種を含有し、および顔料とアニオン性荷電ポリマーの濃度と比べてより低濃度の、多価金属酸化物粒子分散体を更に含有する水性インク組成物であって、該インク組成物が4よりも大きいpHを有し、および該多価金属酸化物粒子が、該インク組成物のpHにて負のゼータ電位を有する該組成物に関する。金属酸化物粒子の粒径は、好ましくは100nm未満であり、より好ましくは50nm未満であり、および所望の範囲にゼータを保持する表面処理を有してもよい。
【0015】
更なる実施態様に従うと、本発明は、a)ケイ素系プリントヘッド:およびb)分散顔料およびアニオン性荷電ポリマーのうちの少なくとも1種を含有し、および顔料とアニオン性荷電ポリマーの濃度と比べてより低濃度の、多価金属酸化物粒子分散体を更に含有する水性インク組成物であって、該インク組成物が4よりも大きいpHを有し、および該多価金属酸化物粒子が、該インク組成物のpHにて負のゼータ電位を有する該組成物を含む、インクジェットシステムに関する。
【0016】
更なる実施態様に従うと、本発明は、プリンターに水性インク組成物を装填して該インク組成物を噴出することを含む、インク組成物と接触するケイ素系材料を含有するインクジェットプリンターで水性インク組成物を印刷するための方法に対しておこなわれ、該方法において、該インク組成物は、分散顔料およびアニオン性荷電ポリマーのうちの少なくとも1種を含有し、および多価金属酸化物粒子分散体を更に含有し、ならびに、
該インク組成物が4よりも大きいpHを有し、および該多価金属酸化物粒子は、該インク組成物のpHにて負のゼータ電位を有し、該インク組成物と接触する場合にケイ素系材料の腐食を十分に抑止する濃度で存在する、該方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、pHの関数として、種々のナノ酸化アルミニウムおよびナノ酸化亜鉛粒子のゼータ電位のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
プリントヘッド損傷を防ぐために塩形態で多価金属イオンを添加する代替的方法として、金属酸化物粒子の形態で金属の比較的安定な形態を添加することは、インク組成物のpHにて負のゼータ電位を有する多価金属酸化物粒子が使用されることにより、負に帯電した顔料粒子とポリマーを不安定にする傾向を示すことなく、プリントヘッド損傷を防ぐのに十分な濃度で金属イオンを放出するのに使用できることが見出された。
【0019】
水性環境における多くの粒子は、荷電が十分に大きい場合、フロキュレーションまたはアグロメーションから粒子を安定化させ、および粒子斥力を引き起こす幾分かの表面荷電を有する。水性環境における荷電粒子は、電界におけるそれらの運動または電気運動挙動により特徴づけられる場合がある。荷電表面を有する粒子は、表面に反対荷電のイオンを引きつけて、周囲のバルク媒体内において距離と共に消失する荷電二重層を形成する。この見掛けの荷電は、粒子表面の性質と、pH、粘度および塩濃度を含む周囲媒体の性質に依存する。電気運動挙動が特徴づけられる場合、印加電界における粒子の速度は、光り散乱により測定される。ヘンリーの方程式の簡略版を用いると、速度と印加電界との関係は、ゼータ電位として既知の値まで減少し、流体層が粒子を直ちに包囲して、測定されたデバイスの印加電界において、粒子として相互に通過して滑るバルク流体が移動する二重層におけるポイントでの見掛けの荷電を表わす。高い正または負のゼータ電位値は、一般的に+または-30mVより大きく、分散安定性の高い程度と関連し、一方で、より低い値を有する分散体は、より凝集および定着する傾向を示す。ゼータ電位は、通常、媒体のpHの関数であり、特定のpHにて、粒子が0のゼータ電位を示す場合、通常、等電点と称される。
【0020】
アルミナなどのセラミックスからポリマーコロイドまたはタンパク質の範囲の種々の材料または粒子は、粒子の原子構造または固有の分子に基づくpHの関数として、ゼータ電位を示す。アルミナ粒子は広く研究されており、およびこのような粒子は一般に、pH9でのそれらの等電点より低いpH値にて、正のゼータ電位を有する。粒子のゼータ電位は、表面処理、例えば、異なる極性または電荷の分子またはポリマーを、粒子の表面に吸着させることにより変化できることが既知であり、化学産業において頻繁に使用されている。アルミナに関すると、このことは、幅広いpH域に亘って、ゼータ電位を強い負の値へシフトさせることができる。
【0021】
このような粒子の表面電荷およびゼータ電位を変化させる金属酸化物粒子の種々の表面処理は、例えば、US7101528において記載されるようにポリマーによる処理、US6916514に記載されるようにより小さな粒径の粒子による脱殻、US6669823において記載されるようにプラズマによる処理である。アルミナ(例えば、NANOARCR1112WおよびNANODUR X1112W、ナノフェーズテクノロジーから入手可能なアルミナ)および酸化亜鉛(例えば、NANOARC Q1112W ナノフェーズテクノロジーから入手可能なZnO)などの金属酸化物の極めて微細な分散体は、4より高い幅広いpH域に亘り負のゼータ電位を有する形態で商業的に入手可能である。これらの分散体は、負に帯電した顔料と、著しく不安定な相互作用を示さないポリマーとを含有するインク組成物に添加できる。小さな粒子は、インク中にゆっくりと金属を放出し、それにより、それはケイ素系材料と接触し、顔料粒子と負に帯電したポリマーを不安定化させることなくプリントヘッドに対する損傷と溶解を防ぐ。
【0022】
本発明によるインクジェット用インクは、水性インクである。水性とは、インクが、キャリア媒体として主に水を含有し、残りにインク成分を含有することを意味する。好ましい実施態様において、本発明によるインクは、少なくとも50重量パーセントの水を含有する。顔料系インクは、水に不溶の顔料粒子の分散体を少なくとも含有するインクとして定義される。染料系インクは、水性キャリア中で溶解できる、有色染料を少なくとも含有するインクとして定義される。無色のインクは、染料または顔料などの着色剤が実質的にないインクとして定義され、画像形成工程において色形成に寄与することを目的としない。
【0023】
本発明によるインク組成物は、4よりも大きいpHにて負のゼータ電位を有するアルミナおよび酸化亜鉛などの金属酸化物の分散体を、着色剤およびポリマー濃度と比べて低い濃度で含有する。これらの金属酸化物分散体は、関心のあるpH域に亘り、粒子に対して安定した負のゼータ電位をもたらすポリマーまたは界面活性剤などの添加剤または表面処理を含むことができる。これらの金属酸化物分散体は、著しく不安定な相互作用を示さないポリマーと負に帯電した顔料とを含有するインク組成物に添加できる。このことは、インクの製造および調製に関して重要な利点である。このような金属酸化物粒子の添加における好ましい濃度は、10〜10000ppm、より好ましくは50〜1000ppmである。このような範囲内のより高い濃度は可能であるが、一般に、500ppmより低い濃度が十分である。
【0024】
それらが高い表面積を有し、インク内へ活性金属イオンをゆっくりと放出することにより、それがケイ素系材料と接触し、顔料粒子と負に帯電したポリマーを不安定化させることなくプリントヘッドに対する損傷と溶解を防ぐために、粒子は十分に小さいことが有益である。好ましくは、粒子径は100nm未満、より好ましくは50nm未満または50nmである。
【0025】
本発明において使用される多価金属酸化物粒子は、酸化ケイ素または酸化ケイ素表面と金属酸化物結合を形成できる他の多価金属イオンまたはアルミニウムイオンを含有でき、それは、インクジェットプリンターの酸化ケイ素層または下層のケイ素の溶解を抑止しまたは溶解させにくい。特にアルミニウムイオンは、酸化ケイ素系ガラスの水溶解の抑制に効果的であることが見出されている。他の多価金属イオン、例えば亜鉛、ジルコニウム、ハフニウムおよびチタンも有用である。
【0026】
インクセットは、2種以上のインクのセットとして定義される。インクセットは、例えばシアン、マゼンタ、イエロー、レッド、グリーン、ブルー、オレンジ、バイオレットまたはブラックなどの種々の色の顔料系インクを含有できる。1実施態様において、カーボンブラック色素性のインクは、独立してシアン、マゼンタ、およびイエロー着色剤を有する少なくとも3種のインクを更に含有するインクセットにおいて使用される。有用なインクセットはまた、シアン、マゼンタ、およびイエローインクに加えて、補色剤、例えばレッド、ブルー、バイオレット、オレンジまたはグリーンインクなどを含む。さらに、インクセットは、幅広い形式のプリンターのインクセットにおいて一般に使用される、ライトおよびダーク着色インク、例えば、ライトシアンおよびライトマゼンタインクを含有できる。インクセット中に、種々の着色顔料の混合物を含有する1種以上のインクを含むことも可能である。この例は、1種以上の着色顔料もしくは種々の着色顔料の組合せと混合されるカーボンブラック顔料である。インクセットは、1種以上の無色インクと組合せて1種以上の顔料系インクを含んでもよい。インクセットは、染料系インクである更なるインクと組合せて、少なくとも1種以上の顔料系インクを含んでもよい。
【0027】
本発明によるインクは、水性キャリア中に分散した顔料粒子を好ましく含有する。分散した顔料着色剤は、アニオン性の界面活性剤分散顔料、自己分散型アニオン性帯電顔料着色剤、またはアニオン性ポリマー分散型顔料着色剤であることができる。着色剤が界面活性剤分散顔料着色剤の場合、界面活性剤分散剤は、好ましくはオレイルメチルタウレートの金属塩である。本発明にいて有用な顔料粒子はインクジェット印刷の技術において既知の任意の方法により調製できる。
【0028】
記載されるように、本発明において使用されるインクは、分散剤を用いることなく分散可能な自己分散型顔料を含有できる。この種の顔料は、表面処理、例えば酸化/還元、酸/塩基処理、またはカップリング反応を介する官能化などに付されているものである。表面処理は、アニオン性基、カチオン性基または非イオン性基を用いて顔料表面へ付与できる。自己分散型顔料の例としては、以下のものが含まれるが、これらに限定されない:Cab-O-Jet(登録商標)200およびCab-O-Jet(登録商標)300(キャボット社)およびBonjet(登録商標)ブラックCW-1、CW-2およびCW-3(オリエント・ケミカル・インダストリーズ社)。1実施態様において、本発明は、アニオン性の表面処理された自己分散型顔料を用いるのに特に適している。
【0029】
分散剤を要求する顔料に関して、有用な方法は、一般に2つの工程を含む:(a)顔料を一次粒子へと粉砕するための分散または微粉砕工程(ここで、一次粒子は、粒子系において識別可能な最小区分として定義される)、および(b)インクの使用濃度をもたらすように、工程(a)からの顔料分散体を残りのインク成分で希釈する希釈工程。
【0030】
微粉砕工程(a)は、任意の型の細粉砕機、例えば媒体ミル、ボールミル、二軸ロールミル、三軸ロールミル、ビードミルおよびエアジェットミル、磨砕機、または液体相互作用チェンバーを用いて行うことができる。微粉砕工程(a)では、一般的に、工程(b)において顔料分散体を希釈するのに使用する媒体と同一若しくは類似した媒体中へ、顔料を所望により懸濁させる。一次粒子まで顔料を粉砕することを促進するために、不活性な微粉砕媒体を、所望により微粉砕工程(a)に存在させる。不活性な微粉砕媒体としては、ポリマービーズ、ガラス、セラミックス、金属、および例えばUS5891231号明細書に記載されているようなプラスチックが含まれる。微粉砕媒体は、工程(a)で得られる顔料分散液、あるいは工程(b)で得られるインク組成物のいずれかから取り除かれる。
【0031】
一次粒子内へ顔料を粉砕することを促進するために、分散剤は微粉砕工程(a)に好ましく存在する。工程(a)で得られた顔料分散体または工程(b)で得られたインク組成物に関して、粒子安定性を維持しおよび沈殿を防ぐために、分散剤が存在する。小さな分子の界面活性剤分散剤、例えば、オレイルメチルラウレートの金属塩およびポリマー分散剤などが使用できる。ポリマー分散剤は既知であり、水性顔料系インク組成物において有用である。ポリマー分散剤は、微粉砕工程の間または前に顔料分散体に添加できる。一般的に、これらのポリマー分散剤は、疎水性および親水性モノマーから調製されるコポリマーである。好ましくは、アニオン性基、例えば(メタ)アクリル酸モノマーを含有する親水性モノマーである。このようなポリマーの例は、US公開第2007/0043144に記載されている。
【0032】
本発明における使用に適当な顔料には以下のものが含まれるが、これらに限定されない:アゾ顔料、モノアゾ顔料、ジアゾ顔料、アゾ顔料レーキ、β−ナフトール顔料、ナフトールAS顔料、ベンズイミダゾロン顔料、ジスアゾ縮合顔料、金属錯体顔料、イソインドリノンおよびイソインドリン顔料、多環式顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリレンおよびペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラピリミドン顔料、フラバスロン顔料、アントアントロン顔料、ジオキサジン顔料、トリアリールカルボニウム顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、酸化チタン、酸化鉄およびカーボンブラック。
【0033】
使用できる顔料の一般例は、カラーインデックス(C.I.)ピグメントイエロー1、2、3、5、6、10、12、13、14、16、17、62、65、73、74、75、81、83、87、90、93、94、95、97、98、99、100、101、104、106、108、109、110、111、113、114、116、117、120、121、123、124、126、127、128、129、130、133、136、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、183、184、185、187、188、190、191、192、193、194、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、21、22、23、31、32、38、48:1、48:2、48:3、48:4、49:1、49:2、49:3、50:1、51、52:1、52:2、53:1、57:1、60:1、63:1、66、67、68、81、95、112、114、119、122、136、144、146、147、148、149、150、151、164、166、168、169、170、171、172、175、176、177、178、179、181、184、185、187、188、190、192、194、200、202、204、206、207、210、211、212、213、214、216、220、222、237、238、239、240、242、243、245、247、248、251、252、253、254、255、256、258、261、264、C.I.ピグメントブルー1、2、9、10、14、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、15、16、18、19、24:1、25、56、60、61、62、63、64、66、橋かけアルミニウムフタロシアニン顔料;C.I.ピグメントブラック1、7、20、31、32、C.I.ピグメントオレンジ1、2、5、6、13、15、16、17、17:1、19、22、24、31、34、36、38、40、43、44、46、48、49、51、59、60、61、62、64、65、66、67、68、69、C.I.ピグメントグリーン1、2、4、7、8、10、36、45、C.I.ピグメントバイオレット1、2、3、5:1、13、19、23、25、27、29、31、32、37、39、42、44、50、またはC.I.ピグメントブラウン1、5、22、23、25、38、41、42を含む。
【0034】
顔料粒子は、水性懸濁液および後続インクにおける安定性をもたらすのに十分な量のポリマー分散剤または低分子分散剤により、好ましく分散される。顔料に対する分散剤の量は、微粒子分散体の関連する表面積と分散した粒子径の関数である。分散剤の量とポリマー分散体のモノマー成分の相対比率は、所望の粒子安定性および提供される顔料に関するインク発射能をもたらすように変化できることが理解されており、顔料は、組成物およびポリマー分散剤に関する親和性に応じて変化できることも既知である。
【0035】
本発明において使用されるインク組成物において使用される顔料は、任意の効果的な量、一般に0.1〜10重量%、および好ましくは0.5〜6重量%、より好ましくは1〜4重量%で存在できる。
【0036】
インクジェットインク組成物は非着色性粒子、例えば無機粒子またはポリマー粒子を含んでもよい。そのような粒状添加剤の使用はここ数年増加しており、特に写真品質画像を得るためのインクジェットインク組成物において増加している。たとえばUS5925178には、画像記録要素上の顔料粒子の光学濃度および耐摩耗性を改善するために顔料系インク中における無機粒子の使用が記載されている。他の例においては、米国特許6508548には、印刷画像の耐光性および耐オゾン性を改善するために、染料系インク中に水分散性ポリマーを使用することが記載されている。印刷画像の光沢差、光およびオゾン抵抗性、水堅牢性、耐摩擦性および種々の他の特性を向上させるために、このような粒子が使用される:例えば、US6598967B1参照。非着色粒子を含有するまたは着色剤を含有しない無色のインク組成物も使用できる。無色のインク組成物は、当該技術分野において、“定着剤”として、または普通紙において色間のにじみおよび水堅牢性を減少させるために、着色されたインク組成物の下、上または共に印刷される不溶化流体として、しばしば使用されている;例えば、US5866638号またはUS6450632B1を参照。無色インクはまた、通常は引っ掻き抵抗および水堅牢性の改良のために、印刷画像に対してオーバーコートを提供するために使用されている;例えば、US2003/0009547A1またはEP1,022,151A1を参照。無色インクはまた、印刷された画像中での光沢差を減少するために使用されている;例えば、US6604819B2:US2003/0085974A1:US2003/0193553A1;またはUS2003/0189626A1参照。1実施態様において、本発明は、塩溶液として添加される場合、多価金属イオンに曝される際に望ましくない沈殿を生じ得るアニオン性荷電ポリマーを含有する無色のインクに関して特に有用である。
【0037】
本発明において有用なインク組成物は、高頻度の発射を低い変動で達成するために、保湿剤を含有できる。本発明で使用されてよい保湿剤の代表例として、(1)トリオール、例えばグリセロール、1,2,6−ヘキサントリオール、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、アルコキシル化トリオール、アルコキシル化ペンタエリスリトール、サッカリド、および糖アルコール;(2)ジオール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、4個以上のアルキレンオキシド基を有するポリアルキレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,7−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール;およびチオグリコール、またはこれらの混合物が含まれる。本発明において有用な典型的な水性インク組成物は、2〜25重量%の保湿剤、より好ましくは6〜20重量%の保湿剤、最も好ましくは8〜15重量%の保湿剤を含有する。
【0038】
本発明のインク組成物は、保湿剤に加えて、水混和性共溶媒または浸透剤を含有してもよい。水性インク組成物に使用される代表的な共溶媒は、(1)アルコール、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、イソ−ブチルアルコール、フルフリルアルコール、およびテトラヒドロフルフリルアルコール;(2)多価アルコールから誘導された低級モノ−およびジ−アルキルエーテル、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、およびジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート;(3)窒素含有化合物、例えばウレア、2−ピロリジノン(pyrrolidinone)、N−メチル−2−ピロリジノン、および1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(imidazolidinone);および(4)硫黄含有化合物、例えば2,2'−チオジエタノール、ジメチルスルホキシド、およびテトラメチレンスルホンを含む。本発明において有用な典型的な水性インク組成物は、2〜10重量%の共溶媒を含有できる。
【0039】
本発明において有用な特定の保湿剤および共溶媒は、1,2−アルカンジオール(例えば、1,2−ヘキサンジオールおよび1,2−ペンタンジオール)および低級アルキルグリコールエーテル(例えば、ポリエチレングリコールモノブチルエーテルおよびジエチレングリコールモノメチルエーテル)である。本発明に係るポリマー分散顔料と配合されるインクが、普通紙上に印刷される場合、増加した密度と減少した斑点をもたらすことができるので、これらの化合物が有利である。このことは、先行技術において既知の他のポリマー分散顔料または界面活性剤分散顔料に対する利点である。なぜならば、これらの系は、1,2アルカンジオールまたはアルキルグリコールエーテルの高い界面活性によって不安定になるからである。
【0040】
別の好ましい実施態様において、インク組成物の成分は、インク粘度が25セ氏温度にて4.0センチポイズ未満、より好ましくは3.0未満、正により好ましくは2.5未満、および最も好ましくは2.0未満となるように選択される。これらの好ましい実施態様により規定されるインク組成物は、数多くの発射事象の間に低いばらつきを有し、高い発射頻度をもたらすことができる。
【0041】
界面活性剤は、適当な程度にインクの表面張力を調整するのに添加できる。特定の実施態様において、インクセットにおける無色の保護インクおよび種々の顔料系インクの相対動的および静的表面張力は、US2008/0207805に記載されるように調節でき、インク間の色間滲みを制御できる。特に、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックおよび無色インクが使用される際、インクの表面張力は、以下の関係を有し得る:(i)インクセットの全てのインクに対する10ミリ秒の表面寿命における動的表面張力が、35mN/mより大きいかまたは等しく、(ii)イエローインクの静的表面張力および無色保護インクの静的表面張力は、インクセットのシアン、マゼンタおよびブラックインクの静的表面張力より少なくとも2.0mN/m小さく、および(iii) 無色保護インクの静的表面張力は、イエローインクの静的表面張力より少なくとも1.0mN/m小さい。
【0042】
界面活性剤はアニオン性、カチオン性、両性または非イオン性であってよく、インク組成物の0.01〜5%の濃度で使用される。適切な非イオン性界面活性剤の例として、線状または第2アルコールエトキシレート(例えば、ユニオン・カーバイド(Union Carbide)社から入手できるTergitol(登録商標)15−SおよびTergitol(登録商標)TMNシリーズならびにUniquemaから入手できるBrij(登録商標)シリーズ)、エトキシル化アルキルフェノール(例えば、ユニオン・カーバイド社から入手できるTriton(登録商標)シリーズ)、フルオロ界面活性剤(例えば、デュポン社から入手できるZonyls(登録商標);および3M社から入手できるFluorads(登録商標))、脂肪酸エトキシル化物、脂肪酸アミドエトキシレート、エトキシル化およびプロポキシル化ブロックコポリマー(例えば、BASF社から入手できるPluronic(登録商標)およびTetronic(登録商標)シリーズ)、エトキシル化およびプロポキシル化シリコーン系界面活性剤(例えば、CK ウイトコ社から入手できるSilwet(登録商標))、アルキルポリグリコシド(コグニス社からのGlucopons(登録商標)など)およびアセチレン性ポリエチレンオキシド界面活性剤(例えば、エアー・プロダクツ社から入手できるSurfynols(登録商標))が含まれる。
【0043】
アニオン性界面活性剤の例には以下のものが含まれる:カルボキシル化物(例えば、エーテルカルボキシレートおよびスルホスクシネート)、スルフェート化物(例えば、ナトリウムドデシルスルフェート)、スルホネート化物(例えば、ドデシルベンゼンスルホネート、アルファ−オレフィンスルホネート、アルキルジフェニルオキシドジスルホネート、脂肪酸タウレート(fatty acid taurates)、およびアルキルナフタレンスルホネート)、ホスフェート化物(例えば、アルキルおよびアリールアルコールのホスフェート化エステル、例えば、デクスター・ケミカル社から入手できるStrodex(登録商標)シリーズ)、ホスホネート化およびアミンオキシド界面活性剤、およびアニオン性フッ素化界面活性剤。両性界面活性剤の例として、以下のものが含まれる:ベタイン、スルタイン(sultaines)、およびアミノプロピオネート。カチオン性界面活性剤の例には以下のものが含まれる:第4級アンモニウム化合物、カチオン性アミンオキシド、エトキシ化脂肪アミン、およびイミダゾリン界面活性剤。上記界面活性剤の追加例は、「マッカーチオンの乳化剤と洗剤(McCutcheon's Emulsifiers and Detergents)」北米版1995年に記載されている。
【0044】
殺生物剤(0.01〜1.0重量%)は、時間が経つにつれインク中に生じ得る所望でない微生物の成長を抑制するために添加できる。本発明において使用されるインクに関する好ましい殺生物剤は、0.05〜0.1重量%の濃度でProxel(登録商標)GXL(ゼネカ カラー社)、および/または0.05〜0.1重量%の濃度でKordek(登録商標)(ロームアンドハース社)である(活性含有物100%に基づく)。インクジェット用インク組成物中に所望により存在できる更なる添加剤には、増粘剤、伝導性向上剤、コゲーション防止剤(anti-kogation agent)、乾燥剤、耐水剤、染料可溶化剤、キレート化剤、バインダー、光安定剤、増粘剤(viscosifier)、緩衝剤、かび防止剤、カール防止剤、安定剤および脱泡剤が含まれる。
【0045】
本発明において使用される水性インク組成物のpHは、有機もしくは無機の酸もしくは塩基を添加することにより調整できる。無機塩基が好ましいが少量の有機塩基、例えばトリエタノールアミンは、インクのpHを調整するのに使用できる。有用なインクは、使用する顔料の種類に基づき、4〜10の好ましいpHを有する。好ましくは、本発明によるインクのpHは、6〜10、より好ましくは6〜9および最も好ましくは7.5〜9.0である。このようなpH域を最良に適合させることにより、多価金属酸化物粒子は、5〜10の全pH域または少なくとも6〜10の全pH域に亘り、負のゼータ電位を好ましく有する。
【0046】
本発明によるインクは、少なくとも10メーター/秒の接近ノズル速度を用いて、少なくとも12kHzの発射周波数をもたらすことが可能なインクジェットプリントヘッドを介して印刷できる。これらの高速発射頻度をもたらすことができる、インクジェット印刷の技術において既知のプリントヘッド構造における任意のものが使用できる。好ましくは、インクジェットプリンターは、サーマルインクジェットプリントヘッドを備える。特に好ましいプリントヘッド構造は、US2006/0103691およびUS2008/0137867において開示されている。
【0047】
本発明のインクは写真光沢受像紙または普通受像紙に適用可能である。当該2つのタイプの受像紙は、写真光沢受像紙が下地の紙支持体上に被覆層を用いて製造される点で互いに区別される。普通紙の具体例には以下のものが含まれる:コダック・ブライト・ホワイト・インクジェットペーパー、ヒューレット・パッカード・カラー・インクジェットペーパー、ゼロックス・エクストラ・ブライト・ホワイト・インクジェット・ペーパー、ジョージア・パシフィック・インクジェット・ペーパー・カタログ番号999013、ステープルズ・インクジェット・ペーパー・インターナショナル・ペーパー・グレート・ホワイト・マルチユース20ペーパー、ゼロックス・プレミアム・マルチパーパス・ペーパー、ハンマーミル・コピー・プラスまたはフォア・エム・ピー・ペーパー、およびヒューレット・パッカード・マルチパーパス・ペーパー。普通紙は、当該紙の製造中または製造後において多価塩で処理された紙を包含する。
【0048】
本発明によるインクは、光沢インクジェットペーパー等の適切な記録媒体を使用する場合、写真画質を有するデジタル画像として印刷できる。写真光沢受像紙は、膨潤性媒体(非多孔質ポリマー被膜を有する)または微多孔質媒に更に分類されるが、ハイブリッド構造を有するものも周知である。微多孔質媒体は、一般的には、微多孔質構造の被膜を形成するポリマー親水性バインダーと混合された微粒子または粉体からなる吸水性から構成される。微粒子または粉体は、一般的には、例えば、ベーマイトアルミナ、多孔質および非多孔質シリカ(例えば、SylojetまたはLudox粒子)等の多結晶無機材料、またはアルミニウムシリケート等の非晶質無機材料である。微多孔質写真光沢媒体は、膨潤性媒体と比較して、相対的に迅速な乾燥能を有し、かつ改善された耐水性および耐汚染性(smudge resistance)を有するので好ましい。普通紙および写真光沢媒体の両方の構造は、材料および製紙方法に依存して広範囲に変化させることができ、本発明の範囲は制限して解釈されるべきではない。
【0049】
以下に実施例を示すが、本発明の有用性はこれに制限されるものではない。
【実施例】
【0050】
アクリルポリマーAC1:67wt%のベンジルメタクリレートおよび33%のメタクリル酸を有するコポリマーを、以下のようにして調製した:
100gのジエチレングリコール(DEG)と0.25gの2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を、機械的撹拌機および窒素入口を備える、1リットルの、三ツ口丸底フラスコ中に充填する。得られる溶液を20分間窒素でパージし、定温バス中で150℃まで加熱する。独立した容器中で、100gのDEG、0.25gのAIBN、33.5gのベンジルメタクリレート(BM)および16.5gのメタクリル酸(MA)を混合し、よく混合して、次いで、2時間かけて第1溶液へ添加する。重合を3時間継続する。次いで、温度を65〜70℃まで減少させ、t-ブチルヒドロペルオキシド(10重量パーセント)およびホルムアルデヒド二亜硫酸ナトリウム(10重量パーセント)をそれぞれ1mL添加する。得られるポリマーは、水酸化カリウムを用いて、化学量論的酸価が215のポリマーを70%まで中和することにより、20wt%水溶液としてとして単離した。ベンジルメタクリレートおよびメタクリル酸の得られたランダムコポリマーは、67/33-重量比であり、8000の重量平均分子量と5000の数平均分子量を有し、る。
【0051】
アクリルポリマーAC2:77.5wt%のベンジルメタクリレートおよび22.5%のメタクリル酸を有するコポリマーを、以下のようにして調製した:
還流冷却器を備える1リットルの、三ツ口丸底フラスコ中で、窒素雰囲気下、78gのベンジルメタクリレート、22gのメタクリル酸、4.6gの1-ドデカンチオール、および400mLのメチルエチルケトンを混合させた。溶液を攪拌し、20分間窒素でパージし、定温バス中で70℃まで加熱し、1.5gのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を添加した。24時間後、得られた溶液を冷却した。得られるポリマー溶液を、水と水酸化カリウムで混合し、85%の酸中和をおこなった。その後、混合物全体を減圧下、50℃にて蒸留し、有機溶媒を除去した。最終的な水溶性ポリマー溶液は、水中で約20wt%の濃度を有し、そのpHは約8.5であった。数平均分子量は4320であり、重量平均分子量は7160であり、酸価は146であった。
【0052】
酸化アルミニウムおよび酸化亜鉛ナノ粒子の特性評価
種々の商業的に入手可能なナノ酸化アルミニウム(NANOARC R1112W、およびNANODUR X1100DEGアルミナ、ナノフェーズテクノロジー社製;DISPAL1804-18アルミナ、サソルノースアメリカ社製:およびCAB-O-SPERSE PG008アルミナ、キャボット社から入手可能)およびナノ酸化亜鉛(NANOARC Q1112W ZnO、ナノフェーズテクノロジー社から入手可能)の粒子分散体に関するゼータ電位を、pHの関数として測定した。図1は、酸化アルミニウムのゼータ電位が、インク配合物に関する代表的なpH域の大部分にわたり負であるかまたは正であることを示す。負のゼータ電位を備える酸化亜鉛も示される。
【0053】
顔料インクの調製
以下の比較例および本発明に係るインクを調製した。全てのインクのpHを8.0〜9.0の範囲に調製した。
【0054】
インク例I-1(比較):攪拌することなく、約500mlの高密度ポリエチレンボトル内へ、以下の成分を順に添加した:
高純度水、8wt%のグリセロール、4wt%のジエチレングリコール、4wt%の1,5-ペンタンジオール、0.4wt%のトリエタノールアミン、0.4wt%のTergitol15-S-12界面活性剤、0.3wt%のアクリルポリマーAC-1、0.1wt%のアクリルポリマーAC-2、4.5wt%の負に帯電した自己分散型カーボンブラック顔料CW-3(アメリカのオリエントコーポレーションから販売)、および0.02wt%の殺生物剤Kordek MLX。混合物を、30分間攪拌し、得られた500gのインクを1.0μmの円盤型フィルターで濾過した。インクのpHは8.6であった。
【0055】
インク例I-2(比較):このインクは、自己分散型カーボンブラック顔料をインク混合物に添加する前に、最終的なインク溶液において20ppmのアルミニウムイオン濃度を得るのに適切な濃度で、自己分散型顔料CW3へ、攪拌しながら5wt%硝酸アルミニウム九水和物を添加することを除き、例I-1と同じように調製した。
【0056】
インク例I-3(比較):このインクは、自己分散型カーボンブラック顔料をインク混合物に添加する前に、最終的なインク溶液において40ppmのアルミニウムイオン濃度を得るのに適切な濃度で、自己分散型顔料CW3へ、攪拌しながら5wt%硝酸アルミニウム九水和物を添加することを除き、例I-1と同じように調製した。
【0057】
インク例I-4(比較):このインクは、自己分散型カーボンブラック顔料をインク混合物に添加する前に、最終的なインク溶液において100ppmのアルミニウムイオン濃度を得るのに適切な濃度で、自己分散型顔料CW3へ、攪拌しながら1wt%硝酸アルミニウム九水和物を添加することを除き、例I-1と同じように調製した。
【0058】
インク例I-5:攪拌することなく、約500mlの高密度ポリエチレンボトル内へ、以下の成分を順に添加した:
高純度水、8wt%のグリセロール、4wt%のジエチレングリコール、4wt%の1,5-ペンタンジオール、0.4wt%のトリエタノールアミン、0.4wt%のTergitol15-S-12界面活性剤、0.3wt%のアクリルポリマーAC-1、0.1wt%のアクリルポリマーAC-2、4.5wt%の自己分散型カーボンブラック顔料CW-3(アメリカのオリエントコーポレーションから販売)、0.02wt%または200ppmの、NanoArcR1112W(20nm粒径)としてナノフェーズテクノロジー社から入手可能なナノ粒子酸化アルミニウム、および0.02wt%の殺生物剤Kordek MLX。混合物を、30分間攪拌し、得られた500gのインクを1.0μmの円盤型フィルターで濾過した。
【0059】
インク例I-6:攪拌することなく、約500mlの高密度ポリエチレンボトル内へ、以下の成分を順に添加した:
高純度水、8wt%のグリセロール、4wt%のジエチレングリコール、4wt%の1,5-ペンタンジオール、0.4wt%のトリエタノールアミン、0.4wt%のTergitol15-S-12界面活性剤、0.3wt%のアクリルポリマーAC-1、0.1wt%のアクリルポリマーAC-2、4.5wt%の自己分散型カーボンブラック顔料CW-3(アメリカのオリエントコーポレーションから販売)、0.05wt%または500ppmの、NanoArcR1112Wとしてナノフェーズテクノロジー社から入手可能なナノ粒子酸化アルミニウム、および0.02wt%の殺生物剤Kordek MLX。混合物を、30分間攪拌し、得られた500gのインクを1.0μmの円盤型フィルターで濾過した。
【0060】
インク例I-7:このインクは、自己分散型カーボンブラック顔料をインク混合物に添加する前に、最終的なインク溶液において20ppmのアルミニウムイオン濃度を得るのに適切な濃度で、自己分散型顔料CW3へ、攪拌しながら5wt%硝酸アルミニウム九水和物を添加することを除き、例I-5と同じように調製した。
【0061】
インク例I-8:このインクは、自己分散型カーボンブラック顔料をインク混合物に添加する前に、最終的なインク溶液において20ppmのアルミニウムイオン濃度を得るのに適切な濃度で、自己分散型顔料CW3へ、攪拌しながら5wt%硝酸アルミニウム九水和物を添加することを除き、例I-6と同じように調製した。
【0062】
インク例I-9:このインクは、ナノ粒子酸化アルミニウムを、NanoArcQ1112W(20nm粒径)としてナノフェーズテクノロジー社から入手できるナノ粒子酸化亜鉛で、同じ濃度にて置換えた。
【0063】
インク例I-10:このインクは、NanoArcQ1112Wとしてナノフェーズテクノロジー社から入手できるナノ粒子酸化亜鉛の濃度を0.05wt%または500ppmに増加させたことを除き、例I-9と同じように調製した。
【0064】
インク例I-11(比較):攪拌することなく、約500mlの高密度ポリエチレンボトル内へ、以下の成分を順に添加した:
高純度水、5wt%のグリセロール、15wt%のジエチレングリコール、0.2wt%のトリエタノールアミン、0.4wt%のTergitol15-S-12界面活性剤、0.3wt%のアクリルポリマーAC-1、0.05wt%のアクリルポリマーAC-2、4.5wt%の自己分散型カーボンブラック顔料CW-3(アメリカのオリエントコーポレーションから販売)、および0.02wt%の殺生物剤Kordek MLX、ならびに、表1に示されるような、3〜10のpH域に亘り+46.3〜+39.7のゼータ電位をそれぞれ有し、キャボット社から40%水性分散液として入手可能なCAB-O-SPERSE PG008(約130nmの粒子径)と称されるヒュームドアルミナ分散液を0.02wt%。混合物を、30分間攪拌し、得られた500gのインクを1.0μmの円盤型フィルターで濾過した。
【0065】
インク例I-12(比較):このインクは、TEA濃度を0.4wt%へ増加させたことを除き、例I-11と同じように調製した。
【0066】
インク例I-13(比較):このインクは、ヒュームドアルミナ分散液を、上記表1に示されるような、3〜10のpH域に亘り42.5〜31.6のゼータ電位域を有し、サソルノースアメリカ社から入手可能なDispal 1804-80(約50nmの粒子径)と称されるベーマイト型のアルミナ分散液で、同濃度にて置換えたことを除き、例I-11と同じように調製した。
【0067】
インク例I-14(比較):このインクは、TEA濃度を0.4wt%へ増加させたことを除き、例I-13と同じように調製した。
【0068】
インク例I-15(比較):このインクは、ヒュームドアルミナ分散液を、上記表1に示されるような、3〜10のpH域に亘り45.2〜10.3のゼータ電位域を有し、ナノフェーズテクノロジー社から入手可能なNanoDur1100DEG(40nmの粒径)と称されるアルミナ分散液で、同濃度にて置換えたことを除き、例I-11と同じように調製した。
【0069】
インク例I-16(比較):このインクは、TEA濃度を0.4wt%へ増加させたことを除き、例I-15と同じように調製した。
【0070】
インク例I-17(本発明):このインクは、ヒュームドアルミナ分散液を、上記表1に示されるような、pH5以上にて負のゼータ電位を有し、3〜10のpH域に亘り14.0〜−36.8の範囲にゼータ電位域を有し、ナノフェーズテクノロジー社から入手可能なNanoDur1X1112W(40nmの粒径)と称されるアルミナ分散液で、同濃度にて置換えたことを除き、例I-11と同じように調製した。
【0071】
インク例I-18(本発明):このインクは、TEA濃度を0.4wt%へ増加させたことを除き、例I-17と同じように調製した。
【0072】
インク例I-19(本発明):このインクは、ヒュームドアルミナ分散液を、上記表1に示されるような、3〜10のpH域に亘り−30.4〜−24.5の範囲にゼータ電位域を有し、ナノフェーズテクノロジー社から入手可能なNanoArcR1112W(20nmの粒径)と称されるアルミナ分散液で、同濃度にて置換えたことを除き、例I-11と同じように調製した。
【0073】
インク例I-20(本発明):このインクは、TEA濃度を0.4wt%へ増加させたことを除き、例I-19と同じように調製した。
【0074】
各ダイに対して2つの印刷チャンネルを含む3つの統合されたプリントヘッドから成る3つのプリントヘッド組立部品を浸漬させることにより、ケイ素系プリントヘッドに対してインクが損傷を与える能力について、インクを評価した。85℃にてインク中での1週間の浸漬後、12個のプリントヘッドチャンネルが不合格と評価された。プリントヘッドチャンネルが破損または離層を示した場合、それは破損したと判断した。インクの分散安定性も評価した。結果を表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
表1における例I-4において、40ppmよりも高いアルミニウムイオン濃度は、カーボン顔料分散液を不安定にさせることが示される。より大きな粒子の凝集は、不安定なインクを急速に沈殿させ、このことは、乏しい噴射と印刷性能を引き起す。ナノ粒子酸化アルミニウムのようなアルミニウムの添加を利用する本発明による例は、インクチャンネルにおける、剥き出しになったケイ素エッチングおよびノズルプレートに対する損傷をより減少させ、および噴射性能を低下させることなく、より高濃度のアルミニウムを添加できることを示す。また、表1は、負のゼータ電位を有するナノ粒子酸化亜鉛もノズルプレートとケイ素チャンネルエッチングの損傷を減少させることを示す。
【0077】
1週間および94時間、85℃での各インク中に、合計36個のインクチャンネルを備える6つのケイ素系プリントヘッド組立部品を浸漬することにより、I-11〜I20のインクは、ノズルプレートを損傷させるそれらの能力について評価された。損傷のあらゆる兆候または離層が観察された場合、そのチャンネルは不合格と判断した。
【0078】
【表2】

【0079】
表IIは、pH4以上にて正のゼータ電位を有するアルミナ分散液が、インクジェットプリントヘッドに対する損傷から殆どまたは全く保護しないことを示し、一方で、pH4より高い場合に負のゼータ電位を有するアルミナ分散液は、高温の加熱試験の間、ノズルプレート損傷を減少させるのに極めてより効果的であることを示す。
【0080】
インク例I-21(比較):攪拌することなく、約500mlの高密度ポリエチレンボトル内へ、以下の成分を順に添加した:
高純度水、5wt%のグリセロール、15wt%のジエチレングリコール、0.49wt%のトリエタノールアミン、0.4wt%のTergitol 15-S12界面活性剤、0.3wt%のアクリルポリマーAC-1、0.1wt%のアクリルポリマーAC-2、4.5wt%の自己分散型カーボンブラック顔料CW-3(アメリカのオリエントコーポレーションから販売)、および0.02wt%の殺生物剤Kordek MLX、ならびに、粒子のゼータ電位を改良する分散剤が添加されない、ナノフェーズテクノロジー製のR1100W(40nm粒子径)と称される0.02wt%のアルミナ。これにより、これらの粒子は、それぞれ、3〜10のpH域に亘り45.8〜16.5の範囲の正のゼータ電位を有する。混合物を、30分間攪拌し、得られた500gのインクを1.0μmの円盤型フィルターで濾過した。
【0081】
インク例I-22(本発明):このインクは、アルミナ分散液を、pH域3〜10にわたり−3.7〜−30.4の値へとアルミナ粒子のゼータ電位を改質した独自の分散剤を含有するナノフェーズテクノロジーから入手可能なX1112(40nm粒子径)と称されるアルミナ分散液の等濃度で置換えたことを除き、I-21と同様に調製した。
【0082】
インク例I-23(本発明):このインクは、アルミナ分散液を、pH域3〜10にわたり−22.8〜−48.9の極めて負の値へとアルミナ粒子のゼータ電位を強力に改良した独自の分散剤を含有するナノフェーズテクノロジーから入手可能なX1131W(20nm粒子径)と称されるアルミナ分散液の等濃度で置換えたことを除き、I-21と同様に調製した。
【0083】
表3におけるこのインクは、85℃でのインク中にプリントヘッドを浸漬することによりおよび約100時間の間隔で組立部品を検査することにより、プリントヘッド損傷を引き起すそれらの能力について評価された。各組立部品は、各ダイに関して2つの印刷チャンネルを含有する3つのケイ素系の統合プリントヘッドから構成され、合計で36個のプリントヘッドチャンネルを備える。特定の時間間隔にて、各組立部品を検査することにより、損傷増加曲線が得られ、各チャンネルにおける50%損失に関する時間を決定した。比較インクI-1を、損傷増加曲線を用いて再評価し、表IIIにインクI-21〜I23と共に記載した。
【0084】
【表3】

【0085】
表IIIにおける結果は、幅広いpH域に亘り負のゼータ電位を備えるアルミナ粒子が、分散剤を含有しないおよび正のゼータ電位を示すアルミナ粒子と比べて、よりゆっくりとした損傷速度を示すことを明確に示す。比較インクI-21の損傷速度は、アルミニウム源を有さない比較インクI-1と極めて近似し、正のゼータ電位を有するアルミナ粒子が、プリントヘッド破損を停止させるのにあまり効果的でないことを示唆する。
【0086】
イエロー顔料系インクの調製
イエロー顔料分散液Y-1:
ピグメントイエロー155の混合物、オレイルメチルタウレートのカリウム塩(KOMT)、および脱イオン水を、50mmの平均粒径を有するポリマービーズと共に混合容器内へ導入した。この場合、顔料濃度は20%、および顔料に基づき25重量%のKOMTであった。混合物を、20時間に亘り分散ブレードで粉砕し、空気の除去をおこなった。粉砕媒体は蒸留により除去され、得られた顔料分散体を、脱イオン水で約10%顔料まで希釈し、シアン顔料分散液Y-1を得た。
【0087】
ポリウレタンPU-1:
26100の重量平均分子量を有する酸価76のポリウレタンは、イソホロンジイソシアネートおよび2000Mwポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオールと2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸の組合せを用いて調製した。反応は、68℃と72℃の間で、テトラヒドロフラン中でおこなわれた。イソシアネートの完全な反応は、赤外線分光法により決定された。完了した反応混合物を、水で希釈し、100%の酸基を水酸化カリウムで希釈した。THFを真空蒸発により取り除いた。
【0088】
インク例I-24(比較):攪拌することなく、約250mlの高密度ポリエチレンボトル内へ、以下の成分を順に添加した:高純度水、10wt%のグリセロール、2wt%のエチレングリコール、0.75wt%のTergitol 15-S-5界面活性剤、1.6wt%のポリウレタンポリマーPU-1、1.5wt%のアクリルポリマーAC-2、2.75wt%のイエロー顔料分散体Y-1および0.02wt%の殺生物剤Kordek MLX。混合物を、30分間攪拌し、得られた250gのインクを1.0μmの円盤型フィルターで濾過した。
【0089】
インク例I-25(本発明):このインクは、上記図1に示されるように4〜10のpH域に亘り-7〜-25の範囲のゼータ電位を有するナノフェーズテクノロジー社から入手可能なNanoArcR1112W(20nmの粒径)と称されるアルミナ分散体を、インク中で20ppmのアルミニウムをもたらす濃度にて添加したことを除き、I-24と同様に調製した。
【0090】
インク例I-26(本発明):このインクは、上記図1に示されるように3〜10のpH域に亘り-7〜-30の範囲のゼータ電位を有するナノフェーズテクノロジー社から入手可能なNanoArcQ1112W(20nmの粒径)と称される酸化亜鉛分散体を、インク中で30ppmの亜鉛をもたらす濃度にて添加したことを除き、I-24と同様に調製した。
【0091】
インク例I-27(本発明):このインクは、NanoArcR1112Wと称されるアルミナ分散体と、NanoArcQ1112Wと称される酸化亜鉛分散体を、インク中で20ppmのアルミナおよび30ppmの亜鉛がもたらされる濃度で添加されたことを除き、I-24と同様に調製した。
【0092】
【表4】

【0093】
表IVは、4よりも高いpHにて負のゼータ電位を有する金属酸化物粒子の添加は、着色顔料インクにより生じるプリントヘッドへのダメージを取り除くことを示す。この場合、顔料は、分散剤を用いて分散される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散顔料およびアニオン性荷電ポリマーのうちの少なくとも1種を含有し、および該顔料と該アニオン性荷電ポリマーの濃度と比べてより低濃度の、多価金属酸化物粒子分散体を更に含有する水性インク組成物であって、該インク組成物は4よりも大きいpHを有し、および該多価金属酸化物粒子は、該インク組成物のpHにて負のゼータ電位を有する、該インク組成物。
【請求項2】
多価金属酸化物粒子が、100nm未満の平均粒径を有する、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
多価金属酸化物粒子が、50nmよりも小さいまたは等しい平均粒径を有する、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項4】
多価金属酸化物粒子が、アルミニウム、亜鉛、ジルコニウム、ハフニウムまたはチタニウムのうちの少なくとも1種を含有する、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項5】
多価金属酸化物粒子が、アルミニウムまたは亜鉛のうちの少なくとも1種を含有する、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項6】
多価金属酸化物粒子がアルミニウムを含有する、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項7】
多価金属酸化物粒子が、インク組成物のpHにて負のゼータ電位をもたらすように表面処理されているアルミナ粒子を含有する、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項8】
インク組成物が6〜10のpHを有し、および多価金属酸化物粒子が、5〜10の全pH域で負のゼータ電位を有する、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項9】
インク組成物が7.5〜9のpHを有し、および多価金属酸化物粒子が、6〜10の全pH域で負のゼータ電位を有する、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項10】
自己分散型の負の表面荷電顔料粒子を含有する、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項11】
負に帯電した界面活性剤またはポリマー分散剤で分散された顔料粒子を含有する、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項12】
負に帯電したポリマーを含有する、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項13】
多価金属酸化物粒子が、10〜10000ppmの濃度で存在する、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項14】
多価金属酸化物粒子が、50〜1000ppmの濃度で存在する、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項15】
以下のものを含有するインクジェットシステム:
a)ケイ素系プリントヘッド、および、
b)分散顔料およびアニオン性荷電ポリマーのうちの少なくとも1種を含有し、および該顔料と該アニオン性荷電ポリマーの濃度と比べてより低濃度の、多価金属酸化物粒子分散体を更に含有する水性インク組成物であって、該インク組成物は4よりも大きいpHを有し、および該多価金属酸化物粒子は、該インク組成物のpHにて負のゼータ電位を有する。
【請求項16】
多価金属酸化物粒子が、インク組成物のpHにて負のゼータ電位をもたらすように表面処理されているアルミナ粒子を含有する、請求項15に記載のインクジェットシステム。
【請求項17】
水性インク組成物が、自己分散型の負の表面荷電顔料粒子、または負に帯電した界面活性剤もしくはポリマー分散剤で分散された顔料粒子を含有する、請求項15に記載のインクジェットシステム。
【請求項18】
プリンターに水性インク組成物を装填して該インク組成物を噴出することを含む、
該インク組成物と接触するケイ素系材料を含有するインクジェットプリンターで水性インク組成物を印刷するための方法であって、
該インク組成物が、分散顔料およびアニオン性荷電ポリマーのうちの少なくとも1種を含有し、および多価金属酸化物粒子分散体を更に含有し、
該インク組成物が4よりも大きいpHを有し、および
該多価金属酸化物粒子が、該インク組成物のpHにて負のゼータ電位を有し、
該ケイ素系材料が該インク組成物と接触する場合に、該ケイ素系材料の腐食を十分に抑止する濃度で存在する、該方法。
【請求項19】
多価金属酸化物粒子が50〜1000ppmの濃度で存在し、およびインク組成物のpHにて負のゼータ電位をもたらすように表面処理されているアルミナ粒子を含有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
水性インク組成物が、自己分散型の負の表面荷電顔料粒子または負に帯電した界面活性剤もしくはポリマー分散剤で分散させた顔料粒子を含有する、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−506730(P2013−506730A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532225(P2012−532225)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/050454
【国際公開番号】WO2011/041273
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】