説明

インクジェット捺染用の後処理液および布帛のインクジェット捺染方法

【課題】発色、鮮明性を損なうことなく高い摩擦堅牢性を染色物に付与するインクジェット捺染用の後処理液と、高い摩擦堅牢性と優れた発色、鮮明性とを兼ね備えた染色物を可能とする布帛のインクジェット捺染方法を提供する。
【解決手段】後処理液を、ブロックイソシアネートを水に分散した分散液とし、ブロックイソシアネートのブロック剤の解離温度は120〜210℃の範囲とする。また、後処理液を、活性イソシアネートを水に分散した分散液とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット捺染に使用する後処理液と、この後処理液を用いる布帛のインクジェット捺染方法に関する。
【背景技術】
【0002】
布帛の捺染は、捺染インクをスクリーン印刷等の印刷方式により布帛表面に塗工し、その後、加熱処理等を施して、捺染インクに含まれる染料や顔料などの着色成分を布帛に定着させるものである。近年、紙の印刷分野で広く実用化しているインクジェット方式が布帛の捺染に採用されている。例えば、布帛の表面に糊剤を塗布した後にカレンダ処理を施し、その後、インクジェット方式で捺染することにより、鮮明な絵柄を形成する方法が知られている(特許文献1)。しかし、このような前処理を施して発色を良好にすると、布帛中に浸透することなく布帛表面に着色成分が蓄積し、摩擦堅牢性が悪くなる傾向にある。一方、インクジェット方式で捺染された染色物の摩擦堅牢性を向上するために、印刷後に熱と圧力による後処理を施すこと(特許文献2)、架橋済みポリウレタン分散体を含有するインクジェットインキ(特許文献3)が知られている。
【特許文献1】特開平5−148776号公報
【特許文献2】特表2005−517827号公報
【特許文献3】特表2007−522285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来のインクジェット方式による布帛の捺染では、高い摩擦堅牢性と優れた発色、鮮明性とを兼ね備えた染色物は未だ得ることができていない。また、布帛の材質によっては、摩擦堅牢性を向上するための熱と圧力による後処理が困難であったり、布帛自体が持つ風合いやしなやかさを損なう(硬くなる)という問題もあった。
本発明は、上記のような実情に鑑みてなされたものであり、発色、鮮明性を損なうことなく高い摩擦堅牢性を染色物に付与するインクジェット捺染用の後処理液と、高い摩擦堅牢性と優れた発色、鮮明性とを兼ね備えた染色物を可能とする布帛のインクジェット捺染方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このような目的を達成するために、本発明のインクジェット捺染用の後処理液は、ブロックイソシアネートを水に分散した分散液であり、前記ブロックイソシアネートのブロック剤の解離温度は120〜210℃の範囲であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記ブロックイソシアネートの含有量は、3〜10重量%の範囲であるような構成とした。
また、本発明のインクジェット捺染用の後処理液は、活性イソシアネートを水に分散した分散液であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記活性イソシアネートの含有量は、3〜10重量%の範囲であるような構成とした。
【0005】
本発明の布帛のインクジェット捺染方法は、カチオン系ポリマーの水分散液を布帛に塗布し乾燥する前処理工程と、着色剤とアニオン系バインダ樹脂を少なくとも含有し、該バインダ樹脂の含有量は5〜20重量%の範囲である捺染用インクを使用し、インクジェット方式により捺染用インクを布帛上に付与する染色工程と、染色工程を終えた布帛に上述の本発明の後処理液を塗布し加熱する後処理工程と、を有するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記カチオン系ポリマーはポリアミン系であるような構成とした。
本発明の他の態様として、ブロックイソシアネートを含有する本発明の後処理液を使用し、加熱温度を150〜220℃の範囲とするような構成とした。
本発明の他の態様として、活性イソシアネートを含有する本発明の後処理液を使用し、加熱温度を110〜220℃の範囲とするような構成とした。
【発明の効果】
【0006】
このような本発明のインクジェット捺染用の後処理液は、含有されるイソシアネートが布帛に付与された捺染用インクのバインダ樹脂と加熱によって反応して被覆層を形成し、これにより、捺染用インクの発色や鮮明性を損なうことなく高い摩擦堅牢性を染色物に付与することができる。特に、ブロックイソシアネートを含有する本発明の後処理液は、ポットライフが長く、これにより安定した捺染工程を可能とし、一方、活性イソシアネートを含有する本発明の後処理液は、低い加熱温度で効果が奏されるので、熱に弱い布帛に対しても捺染を可能とする。
【0007】
本発明のインクジェット捺染方法では、布帛に前処理が施されているので、付与された捺染用インクの布帛への浸透が適度に抑制されて布帛表面に捺染用インクが存在し、後処理によって捺染用インクのバインダ樹脂と後処理液に含有されるイソシアネートが反応して被覆層が形成されるので、優れた発色、鮮明性と高い摩擦堅牢性とを兼ね備えた染色物を製造することができる。さらに、ブロックイソシアネートを含有する本発明の後処理液を使用する場合には、ポットライフが長く、これにより安定した製造が可能となり、一方、活性イソシアネートを含有する本発明の後処理液を使用する場合には、熱に弱い布帛に対しても捺染を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
[後処理液]
本発明のインクジェット捺染用の後処理液は、ブロックイソシアネートを水に分散した分散液である。このブロックイソシアネートは、ブロック剤の解離温度が120〜210℃の範囲にあり、例えば、第一工業製薬(株)製のエラストロンBN69等を挙げることができる。ブロック剤の解離温度が120℃未満であると、後処理液のポットライフを長く設定することが難しく、解離温度が210℃を超えると、後処理液を塗布した後に要する加熱温度が高すぎ、布帛を傷めるおそれがあり好ましくない。このようなブロックイソシアネートの含有量は、3〜10重量%の範囲であり、ブロックイソシアネートの含有量が3重量%未満であると本発明の効果が奏されず、含有量が10重量%を超えると捺染対象の布帛自体が持つ風合いやしなやかさを損なう(硬くなる)ことがあり好ましくない。
【0009】
また、本発明のインクジェット捺染用の後処理液は、活性イソシアネートを水に分散した分散液である。含有する活性イソシアネートは、例えば、旭化成ケミカルズ(株)製のデュラネート WT20−100、同 WB40−100、同 WB40−80D等を挙げることができる。このような活性イソシアネートの含有量は、3〜10重量%、好ましくは4〜7重量%の範囲であり、活性イソシアネートの含有量が3重量%未満であると本発明の効果が奏されず、含有量が10重量%を超えると捺染対象の布帛自体が持つ風合いやしなやかさを損なう(硬くなる)ことがあり好ましくない。
【0010】
このような本発明のインクジェット捺染用の後処理液は、含有されるイソシアネートが、布帛に付与された捺染用インクのバインダ樹脂と加熱によって反応して被覆層を形成する。したがって、捺染用インクの発色や鮮明性を損なうことなく高い摩擦堅牢性を染色物に付与することができる。そして、ブロックイソシアネートを含有する本発明の後処理液は、ポットライフが長く、これにより安定した捺染工程を可能とし、一方、活性イソシアネートを含有する本発明の後処理液は、低い加熱温度、例えば、80℃程度でも効果が奏されるので、熱に弱い布帛に対しても捺染を可能とする。
【0011】
[インクジェット捺染方法]
本発明の布帛のインクジェット捺染方法は、まず、前処理工程において、カチオン系ポリマーの水分散液を布帛に塗布し乾燥する。これにより、布帛に付与された捺染用インクが布帛内部へ浸透することが抑制され、布帛表面に捺染用インクが存在して、優れた発色、鮮明性を得ることを可能とする。カチオン系ポリマーとしては、例えば、ポリアミン系ポリカチオン、ジシアンジアミド系等を使用することができる。また、水分散液中のカチオン系ポリマーの含有量は特に制限はなく、例えば、1〜10重量%程度とすることができる。
【0012】
次に、染色工程において、着色剤とアニオン系バインダ樹脂を少なくとも含有した捺染用インクを使用し、インクジェット方式により捺染用インクを布帛上に付与する。アニオン系バインダ樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル共重合体等を使用することができる。このようなバインダ樹脂の含有量は5〜20重量%の範囲で適宜設定することができる。バインダ樹脂の含有量が5重量%未満であると、十分な摩擦堅牢性が得られず、20重量%を超えると、発色性や鮮明性が低下したり、布帛自体が持つ風合いやしなやかさを損なう(硬くなる)ことがあり好ましくない。
【0013】
次いで、後処理工程において、染色工程を終えた布帛に本発明の後処理液を塗布し加熱する。この後処理によって、捺染用インクのバインダ樹脂と後処理液に含有されるイソシアネートが反応して被覆層が形成されるので、優れた発色、鮮明性と高い摩擦堅牢性とを兼ね備えた染色物を製造することができる。そして、本発明の後処理液として、ブロックイソシアネートを含有する後処理液を使用する場合には、ポットライフが長く、これにより安定した製造が可能となる。また、ブロックイソシアネートを含有する本発明の後処理液を用いる場合の加熱温度は、布帛の耐熱性を考慮して適宜設定することができ、例えば、150〜220℃の範囲とすることができるが、布帛の耐熱性が高く黄変等の劣化が発生しない場合には、加熱温度を更に高い温度に設定してもよい。
【0014】
一方、本発明の後処理液として、活性イソシアネートを含有する後処理液を使用する場合には、熱に弱い布帛に対しても捺染を行うことができ、加熱温度は、例えば、80〜220℃、好ましくは110〜220℃の範囲で設定することができる。
上述の本発明の実施形態は例示であり、本発明はこのような実施形態に限定されるものではない。また、本発明を適用可能な布帛は、特に制限はなく、例えば、綿、ポリエステル、綿/ポリエステル混紡、レーヨン、ポリ乳酸、絹等を挙げることができる。
【実施例】
【0015】
次に、具体的実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
[実施例1]
前処理工程において使用するカチオン系ポリマーの水分散液(前処理液)として、下記の2種の前処理液を準備した。
(前処理液A)
・カチオン系ポリマー(日東紡(株)製 PAA−HCl−05)… 5重量部
・水 … 95重量部
(前処理液B)
・カチオン系ポリマー(日東紡(株)製 PAA−HCl−05)… 5重量部
・アルミナゾル(日産化学(株)製 アルミナゾル520) … 1重量部
・水 … 94重量部
【0016】
また、染色工程において使用する捺染用インクとして、デュポン社製 アーティストリの4種の捺染用インク(P773:シアン、P715:マゼンタ、P746:イエロー、P794:ブラック)を準備した。
【0017】
また、後工程において使用する後処理液として、下記の5種の後処理液A〜Eを準備した。尚、下記のうち、後処理液Aが本発明の後処理液である。
(後処理液A)
・ブロックイソシアネート(第一工業製薬(株)製 エラストロンBN69)
(解離温度:120℃) … 5重量部
・水 … 95重量部
【0018】
(後処理液B)
・ブロックイソシアネート(第一工業製薬(株)製 エラストロンBN77)
(解離温度:120℃) … 5重量部
・水 … 95重量部
(後処理液C)
・ブロックイソシアネート(第一工業製薬(株)製 エラストロンBN04)
(解離温度:120℃) … 5重量部
・水 … 95重量部
(後処理液D)
・ブロックイソシアネート(第一工業製薬(株)製 エラストロンBN27)
(解離温度:180℃) … 5重量部
・水 … 95重量部
【0019】
(後処理液E)
・ポリエステル樹脂(高松油脂(株)製 ペスレジンA−680)… 5重量部
・水系架橋剤(日本触媒(株)製 エポクロスWS700) … 1重量部
・水 … 94重量部
また、布帛として、綿(晒し)(C)、ポリエステル(T)、綿/ポリエステル混紡(T/C)を準備した。
【0020】
<布帛の捺染>
上記の2種の前処理液A、B、上記の5種の後処理液A〜Eを下記の表1に示す組み合わせで用いて、以下のように布帛に染色を行った。
(前処理工程)
前処理液をディッピング法により布帛に塗布し、乾燥(100℃、5分間)した。
【0021】
(染色工程)
前処理を施した布帛に対して、インクジェットプリンタ(ブラザー工業(株)製 DCP−115C)を用いてインクジェット印刷を行った。柄は幅50mmのストライプ形状のものを用い、インクは上記の4種の捺染用インクを使用した。
(後処理工程)
染色工程を終えた布帛に、後処理液をディッピング法により塗布し、その後、180℃で加熱した。
【0022】
<評 価>
上記のように染色を行って得た染色物(試料1〜14)について、発色、滲み、耐摩擦堅牢性、毛羽立ち、耐洗濯性を以下のように評価して、結果を下記の表1に示した。
(発色の評価方法)
分光光度計(X−rite)を用いてOD値を測定し、下記の基準で評価した。
○ : OD値が1.46以上を発色良好とする。
△ : OD値が1.31以上で1.46未満を発色やや良好とする。
× : OD値が1.31未満を発色不良とする。
【0023】
(滲みの評価方法)
目視で観察して、下記の基準で評価した。
○ : 滲みがほとんどなく、鮮明な絵柄が得られた。
△ : 滲みはあるが、絵柄の識別が可能であった。
× : 滲みがひどく、絵柄の識別が困難であった。
(耐摩擦堅牢性の評価方法)
JISL−0849に準拠して、乾式、湿式の耐摩擦堅牢性の評価を5段階で
行った。乾式での評価が4以上、湿式での評価が3以上が実用上問題のないレ
ベルとした。
【0024】
(毛羽立ちの評価方法)
湿式の耐摩擦堅牢性の評価(学振式)を行った後の捺染インク面を目視で観察
して、下記の基準で評価した。
○ : 毛羽立ちがほとんどなく、良好であった。
△ : 毛羽立ちが少しあり、若干色落ちが見られた。
× : 毛羽立ちが目立ち、色落ちも見られた。
(耐洗濯性の評価方法)
後処理後、染色物を市販の合成洗剤(花王(株)製 アタック)を溶かした水
溶液(50℃)に1時間浸漬し、乾燥後の色落ち具合を目視で観察して、下記
の基準で評価した。
○ : 捺染インクがほとんど流れておらず、良好であった。
△ : 捺染インクが少し流れており、濃度の低下が見られた。
× : 捺染インクが流れ、大幅な濃度低下が見られた。
【0025】
【表1】

【0026】
表1に示されるように、本発明の後処理液Aを使用した試料1〜3は、いずれも滲みがなく優れた発色を保ち、耐摩擦堅牢性が良好で、毛羽立ちがなく、耐洗濯性が良好なものであった。
また、試料1と試料4を比較すると、本発明の後処理液Aを用いた後処理を施すことによって、前処理が施されておらず発色、滲みに問題がある染色物であっても、優れた耐摩擦堅牢性を付与することができ、毛羽立ちがなく、耐洗濯性が良好なものであることが確認された。
【0027】
また、試料1〜3と試料5〜7とを比較すると、後処理を施さない場合、発色、滲みはほぼ良好であるものの、耐摩擦堅牢性が劣り、毛羽立ちが発生し、耐洗濯性が悪いものであった。
また、試料1と試料8〜11とを比較すると、後処理を施しても、使用した後処理液が本発明の後処理液Aではない場合、発色、滲みはほぼ良好であるものの、耐摩擦堅牢性が劣り、毛羽立ちが発生し、耐洗濯性が悪いものであった。尚、試料8(後処理液Bを使用)では、布帛の黄変が見られた。
さらに、試料1〜3と試料12〜14とを比較すると、前処理および後処理を施さない場合、捺染インクは布帛内部に浸透して耐摩擦堅牢性が良好であるものの、発色、滲みに問題があり、また、毛羽立ちが発生し、耐洗濯性が悪いものであった。
【0028】
[実施例2]
前処理工程において使用するカチオン系ポリマーの水分散液(前処理液)として、実施例1と同様に、2種の前処理液A、Bを準備した。
また、染色工程において使用する捺染用インクとして、実施例1と同様の捺染用インクを準備した。
【0029】
一方、後工程において使用する後処理液として、下記の2種の後処理液F、Gを準備した。尚、下記のうち、後処理液Fが本発明の後処理液である。
(後処理液F)
・活性イソシアネート … 5重量部
(旭化成ケミカルズ(株)製 デュラネート WT20−100)
・水 … 95重量部
(後処理液G)
・ブロックイソシアネート(第一工業製薬(株)製 エラストロンBN69)
(解離温度:120℃) … 5重量部
・水 … 95重量部
また、布帛として、実施例1と同様に、綿(晒し)(C)、ポリエステル(T)、綿/ポリエステル混紡(T/C)を準備した。
【0030】
<布帛の捺染>
上記の2種の前処理液A、B、上記の2種の後処理液F、Gを下記の表2に示す組み合わせで用いて、以下のように布帛に染色を行った。
(前処理工程)
前処理液をディッピング法により布帛に塗布し、乾燥(100℃、5分間)した。
(染色工程)
前処理を施した布帛に対して、インクジェットプリンタ(ブラザー工業(株)製 DCP−115C)を用いてインクジェット印刷を行った。柄は幅50mmのストライプ形状のものを用い、インクは上記の4種の捺染用インクを使用した。
(後処理工程)
染色工程を終えた布帛に、後処理液をディッピング法により塗布し、その後、80℃、110℃、または230℃で加熱した。
【0031】
<評 価>
上記のように染色を行って得た染色物(試料15〜21)について、発色、滲み、耐摩擦堅牢性、毛羽立ち、耐洗濯性を実施例1と同様に評価して、結果を下記の表2に示した。
【0032】
【表2】

【0033】
表2に示されるように、本発明の後処理液Fを使用した試料15〜18は、後処理における加熱温度が低い(80℃、110℃)にもかかわらず、いずれも滲みがなく優れた発色を保ち、耐摩擦堅牢性が良好で、毛羽立ちがなく、耐洗濯性が良好なものであった。
また、試料16と試料19を比較すると、本発明の後処理液Fを用いた後処理を施すことによって、前処理が施されておらず発色、滲みに問題がある染色物であっても、優れた耐摩擦堅牢性を付与することができ、毛羽立ちがなく、耐洗濯性が良好なことが確認された。
【0034】
また、試料20は、後処理液Gを用いた後処理における加熱温度が低い(110℃)ために、含有するブロックイソシアネートの解離が生ぜず、発色、滲みはほぼ良好であるものの、耐摩擦堅牢性が劣り、毛羽立ちが発生し、耐洗濯性が悪いものであった。
一方、試料21は、後処理液Gを用いた後処理における加熱温度を230℃としたことにより、含有するブロックイソシアネートの解離が生じて、滲みがなく優れた発色を保ち、耐摩擦堅牢性が良好で、毛羽立ちがなく、耐洗濯性が良好なものであった。しかし、布帛に黄変が生じて実用に供し得ないものであった。
尚、布帛の耐熱性が高く、後処理における加熱温度を230℃、あるいはそれ以上の温度としても黄変等の劣化が発生しない場合には、本発明の後処理液Gを用いて高温での後処理を行ってもよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
種々の布帛へのインクジェット方式による捺染に適用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックイソシアネートを水に分散した分散液であり、前記ブロックイソシアネートのブロック剤の解離温度は120〜210℃の範囲であることを特徴とするインクジェット捺染用の後処理液。
【請求項2】
前記ブロックイソシアネートの含有量は、3〜10重量%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット捺染用の後処理液。
【請求項3】
活性イソシアネートを水に分散した分散液であることを特徴とするインクジェット捺染用の後処理液。
【請求項4】
前記活性イソシアネートの含有量は、3〜10重量%の範囲であることを特徴とする請求項3に記載のインクジェット捺染用の後処理液。
【請求項5】
カチオン系ポリマーの水分散液を布帛に塗布し乾燥する前処理工程と、
着色剤とアニオン系バインダ樹脂を少なくとも含有し、該バインダ樹脂の含有量は5〜20重量%の範囲である捺染用インクを使用し、インクジェット方式により捺染用インクを布帛上に付与する染色工程と、
染色工程を終えた布帛に請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の後処理液を塗布し加熱する後処理工程と、を有することを特徴とする布帛のインクジェット捺染方法。
【請求項6】
前記カチオン系ポリマーは、ポリアミン系であることを特徴とする請求項5に記載の布帛のインクジェット捺染方法。
【請求項7】
後処理液として請求項1または請求項2に記載の後処理液を使用し、加熱温度を150〜220℃の範囲とすることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の布帛のインクジェット捺染方法。
【請求項8】
後処理液として請求項3または請求項4に記載の後処理液を使用し、加熱温度を80〜220℃の範囲とすることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の布帛のインクジェット捺染方法。

【公開番号】特開2009−215686(P2009−215686A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63653(P2008−63653)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000183923)ザ・インクテック株式会社 (268)
【出願人】(508077311)株式会社インクマックス (1)
【Fターム(参考)】