インクジェット記録ヘッドおよびインクジェット記録装置
【課題】 高濃度化と高速化を両立させることができるインクジェット記録ヘッドを提供することを目的とする。
【解決手段】 このようなインクジェット記録ヘッドは、第1の体積のインクを吐出するための吐出口が第1の方向に沿って複数配列されてなる第1の吐出口列(吐出口列A)と、第1の体積よりも小さな第2の体積のインクを吐出するための吐出口が第1の方向に沿って複数配列されてなる第2の吐出口列(吐出口列B)とを備えている。更に、第1の吐出口の数が第2の吐出口の数よりも多く、且つ第1の吐出口列の数が第2の吐出口列の数よりも多い構成としている。
【解決手段】 このようなインクジェット記録ヘッドは、第1の体積のインクを吐出するための吐出口が第1の方向に沿って複数配列されてなる第1の吐出口列(吐出口列A)と、第1の体積よりも小さな第2の体積のインクを吐出するための吐出口が第1の方向に沿って複数配列されてなる第2の吐出口列(吐出口列B)とを備えている。更に、第1の吐出口の数が第2の吐出口の数よりも多く、且つ第1の吐出口列の数が第2の吐出口列の数よりも多い構成としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる体積のインクを吐出可能なインクジェット記録ヘッドおよびそのインクジェット記録ヘッドを用いて記録を行うインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、インクジェット記録ヘッドから記録媒体にインクを吐出して記録を行うものである。このインクジェット記録ヘッド(以下、単に、記録ヘッドともいう)には、複数のインク吐出部が高密度に配置されている。インク吐出部は、記録ヘッドの端面に形成されたインク吐出口と、これに連通する液路と、各液路内に配置された記録素子(例えば、電気熱変換素子)などから構成され、これらが高密度に配置されている。
【0003】
インクジェット記録装置によって記録される画像の品位は、インクジェット記録ヘッドの構成(例えば、吐出部の密度)に大きく影響される。このため、上記のようなインク吐出部の高密度化に加え、現在では、インク吐出口の配置や各インク吐出口から吐出されるインク滴の体積などにも、種々の対策がとられている。その一例として、特許文献1には、図5に示すように、径の異なる吐出口から体積の異なる2種類のインク滴を吐出可能な記録ヘッドが開示されている。
【0004】
この特許文献1に開示の記録ヘッドは、体積が小さいインク滴を吐出するインク吐出口(S1、S2)の数を、体積が大きいインク滴を吐出するインク吐出口(L)の数よりも多く設けている。これにより、記録画像におけるスジ状の濃度ムラの発生を抑制して高画質の画像を記録することを可能にしている。
【特許文献1】特開2003−127439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の記録ヘッドを用いる場合、大きな体積のインク滴を吐出するインク吐出口の数が少ないため、高濃度に記録すべき画像領域の濃度を十分なものにすることができず、色あせた画像になることがある。このような濃度低下を軽減するためには、記録ヘッドの同一領域に対する走査回数を増やしたり、記録ヘッドの走査速度を落としたりして、単位面積当りのインク滴の吐出数を増大させる必要がある。しかし、このような方法によれば高濃度化は図れるが、その反面、記録速度が低下してしまう。以上のように高濃度化と高速化は相反する課題であり、高濃度化と高速化を両立させることは難しい。
【0006】
本発明は、上記課題に着目してなされたものであり、高濃度化と高速化を両立させることができるインクジェット記録ヘッド並びにインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は以下の構成を有する。
【0008】
本発明の第1の形態は、同色あるいは同系色で体積の異なるインクを吐出するための吐出口を有するインクジェット記録ヘッドであって、第1の体積の前記インクを吐出するための吐出口が第1の方向に沿って複数配列されてなる第1の吐出口列と、前記第1の体積よりも小さな第2の体積の前記インクを吐出するための吐出口が前記第1の方向に沿って複数配列されてなる第2の吐出口列とを有し、前記第1の吐出口の数は前記第2の吐出口の数よりも多く、前記第1の吐出口列の数は前記第2の吐出口列の数よりも多いことを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の形態は、同色あるいは同系色で体積の異なるインクを吐出するための吐出口を有するインクジェット記録ヘッドであって、第1の体積の前記インクを吐出するための吐出口が第1の方向に沿って複数配列されてなる第1の吐出口列と、前記第1の体積よりも小さな第2の体積の前記インクを吐出するための吐出口が前記第1の方向に沿って複数配列されてなる第2の吐出口列とを有し、前記第1の吐出口の数は前記第2の吐出口の数よりも多く、前記第1の吐出口列の数は前記第2の吐出口列の数よりも多く、前記第1の方向と交差する第2の方向に沿って、複数の前記第1の吐出口列の間に前記第2の吐出口列が配置されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の第3の形態は、同色あるいは同系色で体積の異なるインクを吐出するための吐出口を有するインクジェット記録ヘッドであって、第1の体積の前記インクを吐出するための吐出口が第1の方向に沿って複数配列されてなる第1の吐出口列と、前記第1の体積よりも小さな第2の体積の前記インクを吐出するための吐出口が前記第1の方向に沿って複数配列されてなる第2の吐出口列と、前記第2の体積よりも小さな第3の体積の前記インクを吐出するための吐出口が前記第1の方向に沿って複数配列されてなる第3の吐出口列とを有し、前記第1の吐出口の数は前記第2の吐出口の数よりも多く、前記第1の吐出口の数は前記第3の吐出口の数よりも多く、前記第1の方向と交差する第2の方向に沿って、前記第1の吐出口列、前記第2の吐出口列、前記第3の吐出口列、前記第1の吐出口列がこの順で配置されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の第4の形態は、上記のインクジェット記録ヘッドを用いて記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、大インク吐出口の数が小インク吐出口の数よりも多いので、高濃度化と高速化を両立させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明において適用可能なシリアル型のインクジェット記録装置の概略構成を示す斜視図である。シリアル型のインクジェット記録装置では、記録ヘッドを主走査方向に移動させながらインク吐出を行う主走査と、記録媒体を主走査方向と交差する副走査方向へと搬送する副走査を繰り返しながら、記録媒体に画像を記録していく。
【0015】
図1において、101はヘッドカートリッジである。このヘッドカートリッジ101は、複数色のインクがそれぞれ個別に貯留されたインクタンクと、各インクを吐出する複数のインク吐出口を有する単一のインクジェット記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドともいう)100とで構成されている。ここでは、インクタンクとして、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色のインクが備えられている。本実施形態における記録ヘッドは、後に詳述するように、体積の異なるインク滴を吐出するための径の異なるインク吐出口が配置されている。103は図外の駆動モータの駆動力によって回転する搬送ローラである。この搬送ローラ103は、これに対向する補助ローラ104と共に記録媒体Pを挟持しつつ、後述のキャリッジの往復動作に応じて間欠的に回転し、記録媒体Pを一定量毎に副搬送方向yへと搬送する。
【0016】
また105は搬送ローラ103側へと記録媒体Pを給送する一対の給紙ローラである。この給紙ローラ105は記録媒体Pを挟持しつつ回転し、搬送ローラ103及び補助ローラ104と共に記録媒体Pを副走査方向(y方向)へと搬送する。
【0017】
106はヘッドカートリッジ30を着脱可能に保持するキャリッジである。このキャリッジ106は、キャリッジモータの駆動力により、主走査方向に沿って配置されたガイドシャフト107に沿って往復動を行う。また、キャリッジ106は、記録動作を行っていないとき、あるいは記録ヘッド100の回復を行うときには破線で示したホームポジションhに待機する。
【0018】
また、記録動作開始前にホームポジションhに待機しているキャリッジ106は、記録動作開始命令が入力されると、x方向に移動しながら、記録ヘッド100上の複数の吐出口により記録を行う。一走査分の記録データに基づく記録動作が終了するとキャリッジ106は元のホームポジションに戻り、再びx方向へと移動しつつ記録動作を行う。
【0019】
図2は、本発明で適用可能なインクジェット記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。図2において、メインバスライン2005には、画像入力部2003、画像信号処理部2004、および中央制御部CPU2000といったソフト系処理手段が接続されている。さらに、メインバスライン2005には、操作部2006、回復系制御回路2007、ヘッド温度制御回路2014、ヘッド駆動制御回路2015、キャリッジ駆動制御回路2016、記録媒体の搬送制御回路2017などのハード系処理手段が接続されている。
【0020】
CPU2000は、ROM2001とRAM2002を有する。ROM2001には、画像入力部2003・画像信号処理部2004・ヘッド駆動制御回路2015等の各デバイスを制御するためのプログラムが格納されている。RAM2002は、各種データを処理するためのワークエリアとして機能する。
【0021】
CPU2000は、ROM2001に格納されているプログラムに従って、メインバスライン2005を介して、画像入力部2003、画像信号処理部2004、ヘッド駆動制御回路2015等の各デバイスを制御する。
【0022】
画像入力部2003には、インクジェット記録装置と接続される不図示の外部機器(例えば、ホストコンピュータ、デジタルカメラ)から転送される多値画像データが入力される。例えば、ホストコンピュータのプリンタドライバにおいて、256階調の画像データがハーフトーニング処理によって後述する5階調の画像データに変換され、この5階調の画像データ(多値画像データ)が画像入力部2003に入力される。
【0023】
画像信号処理部2004は、CPU2000の制御の下、画像入力部2003に入力された多値画像データを2値化処理(ドットパターン設定処理)し、2値画像データを生成する。2値画像データの生成は次のようにして行われる。すなわち、画像信号処理部2004には、後述する図6、図17に示されるような多値画像データの階調レベル(0〜4)に対応したドットパターンが格納されている。そして、画像信号処理部2004は、CPU2004によって指定される多値画像データの階調レベル(0〜4)に応じてドットパターンを選択し、このドットパターンに対応する2値画像データを得るのである。
【0024】
ヘッド駆動制御回路2015は、CPU2000の制御の下、記録ヘッド100のインク吐出口からインクを吐出させるために設けられた記録素子の駆動を制御する。詳しくは、ヘッド駆動制御回路2015は、画像信号処理部2004において生成された2値画像データに基づき記録素子を駆動する。これにより、2値画像データが示す画像が記録媒体に形成されることになる。なお、ここでは、記録素子として電気熱変換素子を用いる場合について説明するが、記録素子は電気熱変換素子に限られるものではない。例えば、記録素子として圧電素子(ピエゾ素子)を用いる形態であってもよい。
【0025】
回復系制御回路2007は、ROMに格納されている回復動作を行うためのプログラムに従って回復系モータ2008を駆動することで、インクジェット記録装置の回復動作を制御する。回復系モータ2008は、回復系制御回路2007からの制御信号に基づいて、記録ヘッド100とこれに対向可能な位置に設けられたクリーニングブレード2009、キャップ2010、および吸引ポンプ2011を駆動する。
【0026】
記録ヘッド100は、電気熱変換素子が設けられている基板を有する。この基板には、記録ヘッド100の温度を測定するためのダイオードセンサ2012と、記録ヘッドの温度を調整するための保温ヒータが設けられている。ヘッド温度制御回路2014は、ダイオードセンサ2012により得られたヘッド温度に基づいて保温ヒータの動作を制御し、これにより記録ヘッドの温度を調整する。
【0027】
次に、以上の構成を有するインクジェット記録装置で適用されるインクジェット記録ヘッド100の構成について説明する。
【0028】
(第1の実施形態)
この第1の実施形態におけるインクジェット記録ヘッドは、体積の異なる2種類の同じインクを吐出可能な構成を有している。すなわち、大きな体積(第1の体積)のインク滴を吐出するためのインク吐出口Lと、小さな体積(第1の体積よりも小さな第2の体積)のインク滴を吐出するための小インク吐出口Sとを有している。
【0029】
以下、この第1の実施形態におけるインクジェット記録ヘッド100の構成を、従来のインクジェット記録ヘッド120(図5参照)及び変形例のインクジェット記録ヘッド110(図4参照)と対比しながら説明する。
【0030】
図3は、第1の本実施形態におけるインクジェット記録ヘッド100を示す図であり、図5は、従来のインクジェット記録ヘッド120を示す図である。インクジェット記録ヘッド100はCMYKの4色を吐出可能なものであるが、図3では説明の便宜上、ある1色(例えば、シアン)のインク吐出口だけを図示しており、他の色(YMK)のインク吐出口については省略している。図5の従来のインクジェット記録ヘッド120も同様である。
【0031】
図5に示す従来のインクジェット記録ヘッド120は、主走査方向(x方向)と直交する副走査方向(y方向)に沿ってインク吐出口を配列した吐出口列A’’、吐出口列B’’、吐出口列C’’が設けられている。各吐出口列は、1インチ当たり600個の密度(600dpi)で、n個のインク吐出口が等間隔に配置されている。図では、便宜上、吐出口列A’’、吐出口列B’’、吐出口列C’’の各インク吐出口列を構成するインク吐出口の数(n)を4個として示している。
【0032】
図5の吐出口列A’’は、10pl(ピコリットル)の体積を有するインク滴を吐出する大口径のインク吐出口(大インク吐出口)Lのみから構成されている。一方、吐出口列B’’及び吐出口列C’’は、2plの体積を有するインク滴を吐出する小口径のインク吐出口(小インク吐出口)Sのみから構成されている。図5において、L_n1,L_n2,L_n3,L_n4は吐出口列A’’における大インク吐出口Lの番号を示している。また、S1_n1,S1_n2,S1_n3,S1_n4は吐出口列B’’における小インク吐出口Sの番号を、S2_n1,S2_n2,S2_n3,S2_n4は吐出口列C’’における小インク吐出口Sの番号をそれぞれ示している。吐出口列A’’の各インク吐出口L_n1,L_n2,L_n3,L_n4と、吐出口列B’’の各インク吐出口S_n1,S_n3,S_n4とは、副走査方向において同一位置に配置されている。一方、吐出口列B’’の各インク吐出口S1_n1,S1_n2,S1_n3,S1_n4と、吐出口列C’’の各インク吐出口S2_n1,S2_n2,S2_n3,S2_n4とは、副走査方向において1200dpiだけずれた位置に配置されている。
【0033】
図5から明らかなように、従来のインクジェット記録ヘッド120では、小インク滴の吐出口列(吐出口列B’’、吐出口列C’’)の数が2個、大インク滴の吐出口列(吐出口列A’’)の数が1個となっている。
【0034】
一方、図3に示す本発明の第1の実施形態におけるインクジェット記録ヘッド100には、インク吐出口が次のように配置されている。すなわち、このインクジェット記録ヘッド100には、副走査方向(第1の方向)と交差する主走査方向(第2の方向)に沿って、吐出口列A、吐出口列B、吐出口列Cがこの順で配置されている。吐出口列A、B、Cの夫々は、第1の方向(副走査方向)に沿って等間隔に配列された複数のインク吐出口からなる。各吐出口列は、1インチ当たり600個の密度(600dpi)で、n個のインク吐出口が等間隔に配置されている。図では、便宜上、吐出口列A、吐出口列B、吐出口列Cの各インク吐出口列を構成するインク吐出口の数(n)を4個として示している。これら吐出口列A、B、Cは同一組成のインクを吐出するものである。
【0035】
図3の吐出口列A及び吐出口列Cは、10pl(ピコリットル)の体積を有するインク滴を吐出する大口径のインク吐出口(大インク吐出口)Lのみから構成されている。一方、吐出口列Bは、2plの体積を有するインク滴を吐出する小口径のインク吐出口(小インク吐出口)Sのみから構成されている。図3において、L1_n1,L1_n2,L1_n3,L1_n4は吐出口列Aにおける大インク吐出口Lの番号を示している。また、S_n1,S_n2,S_n3,S_n4は吐出口列Bにおける小インク吐出口Sの番号を示している。更に、L2_n1,L2_n2,L2_n3,L2_n4は吐出口列Cにおける大インク吐出口Lの番号を示している。吐出口列Aの各インク吐出口L1_n1,L1_n2,L1_n3,L1_n4と、吐出口列Bの各インク吐出口S_n1,S_n3,S_n4とは、副走査方向において同一位置に配置されている。また、吐出口列Aの各インク吐出口L1_n1,L1_n2,L1_n3,L1_n4と、吐出口列Cの各インク吐出口L2_n1,L2_n2,L2_n3,L2_n4とは、副走査方向において1200dpiだけずれた位置に配置されている。
【0036】
この第1の実施形態のインクジェット記録ヘッド100では、小インク滴の吐出口列(吐出口列B)の数が1個、大インク滴の吐出口列(吐出口列A、吐出口列C)の数が2個となっている。要するに、小インク滴の吐出口列の数が、大インク滴の吐出口列の数よりも少なくなっている。更に、インクジェット記録ヘッド100では、副走査方向(第1の方向)と交差する主走査方向(第2の方向)に沿って、大インク滴の吐出口列(吐出口列A、吐出口列C)の間に小インク滴の吐出口列(吐出口列B)が配置されている。
【0037】
図3、図5に示したインクジェット記録ヘッド100、120は、各インク吐出口からインク滴を吐出するための駆動周波数が、15KHzとなっている。また、各インクジェット記録ヘッド100、120の主走査方向への走査速度は、25(inch/sec)となっており、主走査方向に600dpi間隔でインク滴を吐出させながら記録を行うようになっている。
【0038】
図7は、図5に示す従来の記録ヘッド120による1回の主走査で単位領域内の画像を完成させる、いわゆる1パス記録を実行する際の、画素に対応する画像データの量子化レベル(階調レベル)とドットパターンとの関係を示す図である。
【0039】
図7に示すように、600dpi×600dpiの解像度を有する画素は、量子化レベル(階調レベル)0〜4で指定される5段階で表現される。これは、画素の領域内に2×2のマトリクス状のエリアを設定し、これらのエリアに体積の異なる2種類のインク滴を着弾させ、大小異なる形状のドットからなるドットパターン(b)〜(e)を形成することにより行う。これにより、画像領域内に全くドットが形成されないドット無しパターン(図7(a)参照)を含む5種類のドットパターンで、量子化レベル0〜4で指定された5段階を表現することができる。なお、図7において、各種ドットについて、これを形成するインク吐出口の符号L,Sを付す。
【0040】
量子化レベル0は、図7(a)に示すように、画素領域内に全くドットが形成されないドット無しのパターンに対応する。また、量子化レベル1は、2plのインク滴で形成される1個の小ドットSを、画素領域内の1つのエリアに形成したパターン(図7(b)参照)に対応する。量子化レベル2は、10plのインク滴で形成される1個の大ドットLを、1つのエリアに形成したパターン(図7(c)参照)に対応する。量子化レベル3は、図7(d)に示すように、2plの液滴で形成される1個の小ドットと、10plの液滴で形成される1個の大ドットLとを組み合わせたパターン(図5(d)参照)に対応する。さらに、量子化レベル4は、図7(e)に示すように、2plの液滴で形成される2個の小ドットと、10plの液滴で形成される1個の大ドットLとを組み合わせたパターン(図7(e)参照)に対応する。各階調レベルでの600×600dpiの画素領域に対して付与されるインク量(体積)は、量子化レベル0では0pl、量子化レベル1では2pl、量子化レベル2では10pl、量子化レベル3では12pl、量子化レベル4では14plとなる。1回の主走査では、各インク吐出口から600dpi×600dpiの画素領域に対して形成可能なドット数は1ドットであるため、画素領域に付与可能な最大のインク量は図7(e)に示される14plとなる。
【0041】
一方、図6は、図3に示す第1の実施形態におけるインクジェット記録ヘッド100を用いて1パス記録を行う場合の、画素に対応する画像データの量子化レベル(階調レベル)とドットパターンとの関係を示す図である。
【0042】
図示のように、本実施形態においても、600×600dpiの解像度を有する画素領域内に2×2のエリアを設定し、各エリアに大小異なる形状の2種類のドットからなる、図6(b)〜(e)のドットパターンを形成する。これにより、画素領域にドットが全く形成されないパターン(図7(a)参照)を含む5種類のドットパターンで、量子化レベル0から4の5段階を表現することができる。なお、図6において、各種ドットについて、これを形成するインク吐出口の符号L1,L2,Sを付す。
【0043】
ここで、量子化レベル0は、図6(a)に示すようにドット無しのパターンに対応する。また、量子化レベル1は、2plのインク滴で形成される1個の小ドットSを1つのエリアに形成したパターン(図6(a)参照)に対応する。量子化レベル2は10plのインク滴で形成される1個の大ドットL1を1つのエリアに形成したドットパターン(図6(c)参照)に対応する。量子化レベル3は2plのインク滴で形成される1個の小ドットSと、10plのインク滴で形成される1個の大ドットL1とを組み合わせたドットパターン(図6(d)参照)に対応する。量子化レベル4は2plのインク滴で形成される1個の小ドットSと、10plのインク滴で形成される2個の大ドットL1,L2とを組み合わせたドットパターン(図6(e)参照)に対応する。
【0044】
このように第1の実施形態において、600dpi×600dpiに付与されるインク量(体積)は、量子化レベル0では0pl、量子化レベル1では2pl、量子化レベル2では10pl、量子化レベル3では12pl、量子化レベル4では22plとなる。なお、1回の主走査において、各インク吐出口が600dpi×600dpiの画素領域に形成できるドット数は1ドットであるため、画素領域に付与可能な最大のインク量は図6(e)に示される22plとなる。
【0045】
図8は、図5に示す従来の記録ヘッド120または図3に示す第1の実施形態における記録ヘッド100を用いて、単位画像領域に対して画像を記録していく様子を示した図である。
【0046】
1走査目では、記録ヘッド120または100を記録開始位置から往路方向(x1方向)に移動させ、記録媒体P上の画像領域(1)を走査させながら全てのインク吐出口を用いて記録を行い、画像領域(1)に対する画像を完成させる。その後、記録媒体Pを記録ヘッド120または100の全インク吐出口の配列幅(副走査方向における長さ)に当たる4/600インチ(8/1200インチ)量だけ副走査方向に搬送する。また、1走査目が終了すると、記録ヘッド120または100は、ホームポジションhなどの記録開始のための基準位置に復帰し、2走査目以降も1走査目と同様の方向に記録ヘッド120または100移動させつつ記録を行う。なお、このように、記録ヘッド120または100を常に一定の方向(往路方向)へと移動させつつ行う記録動作を、一方向記録と称す。
【0047】
図9は、各量子化レベル(1〜4)に対応して600dpi×600dpiの画素領域に付与されるインク量と画像濃度(光学濃度)との関係を、従来の記録ヘッド120と、第1の実施形態の記録ヘッド100のそれぞれについて示した図である。
【0048】
図示のように、600dpi×600dpiの画素領域に対するインク量が22plを上回った場合にも、その画像濃度は、22plのインクが付与されたときの画像濃度より高くならない。このことから、22plのインクが付与されたの時点では画像濃度が飽和していることがわかる。また、量子化レベルが0、1、2、3までは従来と本実施形態とは同一のインク量が画素領域内に付与されるため、これら量子化レベルに対応する画像濃度は同一となる。しかし、量子化レベルが4の場合、本実施形態の記録ヘッド100では1パス記録によって画像濃度を約0.55まで高められるのに対し、従来の記録ヘッド120では、1パス記録によって約0.40の画像濃度しか得ることができない。
【0049】
このため、従来の記録ヘッド120を用いて1パス記録を行った場合には、画像濃度が低い色あせた画像になる。従来の記録ヘッド120を用いて画像濃度の高い画像を記録するためには、画像を完成させるまでに行う記録走査回数を増やすか、記録ヘッドを走査させる速度を落とし、同一の画素領域に対し同一のインク吐出口から複数のインク滴を着弾させる必要がある。
【0050】
図10は、従来の記録ヘッド120を用いて、600dpi×600dpiの画素領域に画像濃度が飽和するまでインクを付与する場合の、画像データの量子化レベルとドットパターンとの関係を示す図である。
【0051】
量子化レベル0から3までは、図6に示すドットパターンと同一のドットパターンだが、量子化レベル4では2plの液滴からなる小ドット1個と、10plのインク滴からなる大ドット2個とを組み合わせた図10(e)に示すドットパターンを形成する。
【0052】
ここで、記録ヘッドの主走査方向への移動速度が25inch/secで、各インク吐出口から主走査方向に600dpi間隔でインク滴を吐出させる場合、図10(e)に示すドットパターンを記録するには2回の主走査が必要である。つまり、1回目の主走査で図10(e)に示す大ドット1001と、小ドット1002とを記録し、2回目の主走査で図10の大ドット1003を記録する(第1の記録方法)。
【0053】
一方、1パス記録によって図10(e)に示すドットパターンを記録するには、記録ヘッドの主走査方向への速度を25inch/secの1/2の速度である12.5inch/secに低下させる必要がある(第2の記録方法)。この場合、主走査方向に沿って、1200dpi間隔でインク滴を吐出させることにより、図10(e)に示す大ドット1001、1003を順次形成すると共に、大ドット1003と主走査方向の記録位置が同一となるタイミングで小ドット1002を記録する。このように、従来のインクジェット記録ヘッド120を用いて高濃度の記録を実現しようとした場合には、第1または第2の記録方法を採る必要があり、いずれの記録方法においても、記録動作時間が増大する。
【0054】
これに対し、第1の実施形態における記録ヘッドによれば、大インク用吐出口が小インク用吐出口よりも多く設けられているので、走査回数の増加や走査速度の低下などを招かずに、高濃度の記録を高速で行うことが可能となる。
【0055】
さらに、本実施形態における記録ヘッド100は、従来の記録ヘッド120と同数のインク吐出口から形成されているため、インクを吐出するための記録素子を集積配列した基板(半導体)のサイズが増大することもない。従って、記録ヘッドの高コスト化、大型化を抑制することができる。
【0056】
(変形例)
次に、第1の実施形態の変形例について説明する。図4は、この第1の実施形態の変形例であるインクジェット記録ヘッド110を示している。記録ヘッド110は、図3の記録ヘッド100に対して、図3の吐出口列Bと吐出口列Cを入れ替えた配置になっている。従って、図3の記録ヘッドと同様、図4の記録ヘッドにおける吐出口列A、B、Cも同一組成のインクを吐出するものである。
【0057】
図4において、L1_n1,L1_n2,L1_n3,L1_n4は吐出口列A’における大インク吐出口Lの番号を、L2_n1,L2_n2,L2_n3,L2_n4は吐出口列B’における大インク吐出口Lの番号をそれぞれ示している。また、S_n1,S_n2,S_n3,S_n4は吐出口列C’における小インク吐出口Sの番号を示している。吐出口列A’の各インク吐出口L1_n1,L1_n2,L1_n3,L1_n4と、吐出口列C’の各インク吐出口S_n1,S_n3,S_n4とは、副走査方向において同一位置に配置されている。また、吐出口列A’の各インク吐出口L1_n1,L1_n2,L1_n3,L1_n4と、吐出口列B’の各インク吐出口L2_n1,L2_n2,L2_n3,L2_n4とは、副走査方向において1200dpiだけずれた位置に配置されている。
【0058】
この図4の記録ヘッド110も、図3の記録ヘッド100と同様、小インク滴の吐出口列の数が1個、大インク滴の吐出口列の数が2個となっている。但し、図4の記録ヘッド110は、吐出口列の配列順序が図3の記録ヘッド100のものとは異なっており、主走査方向に沿って大インク吐出口列、大インク吐出口列、小インク吐出口列の順で配置されている。なお、図4のインクジェット記録ヘッド110を用いて1パス記録を行う場合の、各画素に対応する画像データの量子化レベルとドットパターンとの関係は、図6と同じである。
【0059】
図11は、記録ヘッド100及び記録ヘッド110に傾き(θ)が生じた時のインク吐出口列間での記録媒体を搬送する副走査方向へのインク滴の着弾位置のズレ量を示した図である。
【0060】
図11(a)は、+θの傾きを生じた時の記録ヘッド100及び記録ヘッド110の各インク吐出口列間の副走査方向へのインク滴の着弾位置のズレ量を示している。インク吐出口列A、A’の位置であるa−1に対して、インク吐出口列B、B’の位置であるa−2は、+△H1の距離だけ副走査方向にずれている。また、インク吐出口列B、B’の位置であるa−2に対して、インク吐出口列C、C’の位置であるa−3は、+△H2の距離だけ副走査方向にずれている。
【0061】
図11(b)は、−θの傾きを生じた時の記録ヘッド100及び記録ヘッド110の各インク吐出口列間の副走査方向へのインク滴の着弾位置のズレ量を示している。インク吐出口列A、A’の位置であるb−3に対して、インク吐出口列B、B’の位置であるb−2は、−△H1の距離だけ副走査方向にずれている。また、インク吐出口列B、B’の位置であるb−2に対して、インク吐出口列C、C’の位置であるb−1は、−△H2の距離だけ副走査方向にずれている。
【0062】
図12は、図3の記録ヘッド100が図11のように傾いた状態で、大インク滴の吐出口列Aと小インク滴の吐出口列Bによって形成されるドットパターン(図6の量子化レベル3)の、副走査方向における着弾位置のズレを示した図である。詳しくは、図12の(a)は傾きが0、(b)は傾きが+θ、(c)は傾きが−θ生じている時を示しており、小インク滴の吐出口列Bを基準とした大インク滴の吐出口列Aの副走査方向の着弾ズレ様子を示している。
【0063】
図12から理解できるように、傾きが0の場合、小インク滴Sの副走査方向の位置(a−2、b−2)は大インク滴L1の位置と同じである(図12(a)参照)。一方、傾きが+θの場合、小インク滴Sの副走査方向の位置(a−2)に対し、大インク滴L1の位置(a−1)は−Y方向に△H1だけずれている(図12(b)参照)。また、傾きが−θの場合、小インク滴Sの副走査方向の位置(b−2)に対し、大インク滴L1の位置(b−3)は+Y方向に△H1ずれている(図12(c)参照)。つまり、小インク滴の吐出口列Bにより形成される小ドットと、大インク滴の吐出口列Aにより形成される大ドットの副走査方向における着弾ズレの量は△H1である。同様に、小インク滴の吐出口列Bにより形成される小ドットと、大インク滴の吐出口列Cにより形成される大ドットの副走査方向における着弾ズレの量も△H1である。
【0064】
図13は、図4のインクジェット記録ヘッド110が図11のように傾いた状態で、大インク滴吐出口列A’と小インク滴吐出口列C’により形成されるドットパターン(図6の量子化レベル3)の、副走査方向における着弾位置のズレを示した図である。詳しくは、図13の(a)は傾きが0、(b)は傾きが+θ、(c)は傾きが−θ生じている時を示しており、小インク滴の吐出口列C’を基準とした大インク滴の吐出口列A’の副走査方向における着弾ズレの様子を示している。
【0065】
図13から理解できるように、傾きが0の場合、小インク滴Sの副走査方向の位置(a−3、b−1)は大インク滴L1の位置と同じである(図13(a)参照)。一方、傾きが+θの場合、小インク滴Sの副走査方向の位置(a−3)に対し、大インク滴L1の位置(a−1)は−Y方向に△H1+△H2だけずれている(図13(b)参照)。また、傾きが−θの場合、小インク滴Sの副走査方向の位置(b−1)に対し、大インク滴L1の位置(b−3)は+Y方向に△H1だけずれている(図13(c)参照)。つまり、小インク滴の吐出口列C’により形成される小ドットと、大インク滴の吐出口列A’により形成される大ドットの副走査方向における着弾ズレの量は△H1+△H2である。同様に、小インク滴の吐出口列C’により形成される小ドットと、大インク滴の吐出口列B’により形成される大ドットの副走査方向における着弾ズレの量も△H1+△H2である。
【0066】
なお、図6の量子化レベル4のドットパターンのL1とSについても図12と図13で説明した関係が成り立つ。
【0067】
さて、以上説明した図12と図13から理解できるように、小インク滴の吐出口列及び大インク滴の吐出口列を有する記録ヘッドを用いる場合、吐出口列の数が同じであっても、吐出口列の配置に違いがあると、小ドットと大ドットの着弾ズレ量に差が生じる。図4の記録ヘッド110を採用した場合は、図13で説明した通り、大インク滴の吐出口列A’により形成される大ドット(L1)と小インク滴の吐出口列C’により形成される小ドット(S)の副走査方向における着弾位置のズレ量は△H1+△H2となる。これに対して、図3の記録ヘッド110を採用した場合は、図12で説明した通り、大インク滴の吐出口列Aにより形成される大ドット(L1)と小インク滴の吐出口列Bにより形成される小ドット(S)の副走査方向における着弾位置のズレ量は△H1となる。このように図3の記録ヘッド110を採用した場合は、図4の記録ヘッド110を採用した場合に比べて、着弾ズレ量を△H2だけ低減させることができる。つまり、大インク滴の吐出口列と小インク滴の吐出口列の距離が大である図4のヘッド構成に比べて、大インク滴の吐出口列と小インク滴の吐出口列の距離が小である図3のヘッド構成の方が、着弾ズレによる画像品位の劣化を軽減するのに有利である。図3では、副走査方向(第1の方向)と交差する主走査方向(第2の方向)に沿って、複数の大インク吐出口列(吐出口列A,C)の間に小インク吐出口列(吐出口列B)を配置することで、大インク吐出口列と小インク吐出口列の距離を小さくしている。
【0068】
以上のように、第1の実施形態によれば、大インク用吐出口の数が小インク用吐出口の数よりも多い記録ヘッドを用いているため、記録速度を低下させずに、高濃度記録を行うことが可能となる。更に、着弾ズレによる画像品位の劣化を軽減するには、大インク用吐出口列と小インク用吐出口列の距離が比較的大であるヘッド構成よりも、大インク用吐出口列と小インク用吐出口列の距離が比較的小であるヘッド構成を採用する方が有効である。
【0069】
(第2の実施形態)
上記第1の実施形態では、同一組成のインクについて2種類のインク吐出口、すなわち体積の大きいインク滴を吐出する大インク吐出口Lと、体積の小さいインク滴を吐出する小インク吐出口Sとを備えた記録ヘッドについて説明した。しかし、本発明は上記第1の実施形態に限定されるものではなく、体積の異なる3種類以上のインク滴を吐出する3種類以上のインク吐出口を備える記録ヘッドについても本発明は適用可能である。
【0070】
以下に説明する第2の実施形態における記録ヘッドでは、同一組成のインクを吐出するための3種類のインク吐出口が設けられている場合を例に採って説明するが、4種類以上のインク吐出口を備える形態であってもよい。
【0071】
図14は第2の本実施形態のインクジェット記録ヘッドを示す図であり、図16は第2の実施形態の比較例として挙げた仮想のインクジェット記録を示す図である。図14および図16では、ある1色(シアン)のインクを吐出する記録ヘッドを示している。
【0072】
比較例として図16に示すインクジェット記録ヘッド220には、A’’,B’’,C’’,D’’の4つの吐出口列が設けられている。吐出口列A’’は、10plの体積を有するインク滴を吐出する大口径のインク吐出口(大インク吐出口)Lのみから構成されており、L_n1からL_n4は、この大インク吐出口Lの番号を示している。また、吐出口列B’’は、2plのインク滴を吐出する中口径のインク吐出口(中インク吐出口)Mのみから構成されており、M_n1からM_n4は、この吐出口列B’’を構成する中インク吐出口Mの番号を示している。また、吐出口列C’’は、0.5plのインク滴を吐出する小口径のインク吐出口(小インク吐出口)Sのみから構成されており、S2_n1からS2_n4は吐出口列C’’を構成する小インク吐出口Sの番号を示している。更に、吐出口列D’’は、0.5plのインク滴を吐出する小口径のインク吐出口(小インク吐出口)Sのみから構成されており、S1_n1からS1_n4は吐出口列D’’を構成する小インク吐出口Sの番号を示している。
【0073】
また、吐出口列A’’の各インク吐出口(L_n1からL_n4)に対し、その他の吐出口列B’’,C’’,D’’の各インク吐出口は、副走査方向において次のような間隔だけずれた位置に配置されている。吐出口列B’’の各インク吐出口(M_n1からM_n4)は2400dpi、吐出口列D’’の各インク吐出口(S1_n1からS1_n4)は1200dpiだけ副走査方向にずれた位置にそれぞれ配置されている。また、吐出口列C’’の各インク吐出口(S1_n1からS1_n4)は800dpiだけ副走査方向にずれた位置に配置されている。
【0074】
この比較例として挙げた仮想のインクジェット記録ヘッド220では、大インク吐出口列の数が1個、中インク吐出口列の数が1個、小インク吐出口列の数が2個となっている。また、このインクジェット記録ヘッド220では、主走査方向に沿って、大インク吐出口列、中インク吐出口列、小インク吐出口列、小インク吐出口列がこの順で配置されている。
【0075】
一方、本発明の第2の実施形態である図14のインクジェット記録ヘッド200には、4つの吐出口列A、B、C、Dが設けられている。吐出口列A,Dは、いずれも10plのインク滴を吐出する大口径のインク吐出口(大インク吐出口)のみから構成されている。図14において、L1_n1からL1_n4は、吐出口列Aにおける各インク吐出口の番号を、L2_n1からL2_n4は、吐出口列Dにおける各インク吐出口の番号をそれぞれ示している。
【0076】
また、吐出口列Bは、2plのインク滴を吐出する中口径のインク吐出口(中インク吐出口)Mのみから構成されており、各インク吐出口はM_n1からM_n4の番号によって示されている。さらに、吐出口列Cは、0.5plのインク滴を吐出する小口径のインク吐出口(小インク吐出口)Sのみから構成されており、各インク吐出口はS_n1からS_n4の番号によって示されている。
【0077】
吐出口列Aの各インク吐出口(L1_n1からL1_n4)に対し、その他の吐出口列の各インク吐出口は、副走査方向において次のような間隔だけずれた位置に配置されている。すなわち、吐出口列Bの各インク吐出口(M_n1からM_n4)は2400dpi、吐出口列Cの各インク吐出口(S_n1からS_n4)は800dpiだけ副走査方向にずれた位置にそれぞれ配置されている。また、吐出口列Dの各インク吐出口(L2_n1からL2_n4)は1200dpiだけ副走査方向にずれた位置に配置されている。
【0078】
この図14のインクジェット記録ヘッド200では、大インク吐出口列の数が2個、中インク吐出口列の数が1個、小インク吐出口列の数が1個となっている。つまり、大インク吐出口列の数が中インク吐出口列、小インク吐出口列の数よりも多くなっている。また、このインクジェット記録ヘッド200では、主走査方向に沿って、大インク吐出口列、中インク吐出口列、小インク吐出口列、大インク吐出口列がこの順で配置されている。
【0079】
なお、図14に示すインクジェット記録ヘッド200、および、図16に示すインクジェット記録ヘッド220は、いずれも副走査方向(y方向)に延在する吐出口列が、主走査方向に沿って4つ配置されている。各吐出口列には、1インチ当たり600個の密度(600dpi)でn個のインク吐出口が配置されている。図では、便宜上、各吐出口列を構成するインク吐出口の数(n)を4個として示している。
【0080】
また、図14および図16に示したインクジェット記録ヘッド220および200は、第1の実施形態と同様に各インク吐出口からインク滴を吐出するための駆動周波数を15KHzとしている。また、各記録ヘッド220および200の主走査方向への走査速度は、25(inch/sec)とし、主走査方向に600dpi間隔でインク滴を吐出させながら記録を行う。
【0081】
次に、図16の記録ヘッド220と図14の記録ヘッド200を用いて1パス記録を実行した際の、各画素に対応する画像データの量子化レベルとドットパターンとの関係を説明する。なお、図17は記録ヘッド200を用いた場合を、図18は記録ヘッド220を用いた場合をそれぞれ示している。
【0082】
図17および図18に示すように、600dpi×600dpiの解像度を有する各画素は、量子化レベル0〜4で指定される5段階で表現可能である。これは、各画素の形成内に4×4のマトリクス状のエリアを設定し、これらのエリアに体積の異なる3種類のインク滴を着弾させ、大、中、小の3種類のドットからなるドットパターン(b)〜(e)を形成することにより行う。これにより、図17(a)および図18(a)に示すドット無しパターンを含む5種類のドットパターンで、量子化レベル0〜4で指定される5段階を表現することができる。なお、各図中、各種ドット内には、これを形成する各種インク吐出口の符号S,M,Lが記してある。
【0083】
図16の記録ヘッド220を用いる場合、量子化レベル0は、(a)に示すドット無しパターンに対応し、量子化レベル1は、1個の小ドットSを1つのエリアに形成したドットパターン(図18(b)参照)に対応する。量子化レベル2は、1個の中ドットMを1つのエリアに形成したドットパターン(図18(c)参照)に対応する。量子化レベル3は、1個の大ドットL、1個の小ドットSを組み合わせたドットパターン(図18(d)参照)に対応する。量子化レベル4は、1個の大ドットL、1個の中ドットM、2個の小ドットSを組み合わせたドットパターン(図18(e)参照)に対応する。従って、記録ヘッド220を用いて1パス記録を行った場合、600dpi×600dpiに付与されるインク量(体積)は、量子化レベル0では0pl、量子化レベル1では0.5pl、量子化レベル2では2pl、量子化レベル3では10.5plとなる。さらに、量子化レベル4では、13.0plとなる。
【0084】
一方、図14の記録ヘッド200を用いる場合、量子化レベル0〜3は、記録ヘッド220を用いた場合と同様のドットパターンに対応し(図17(a)〜(d)参照)、インクの付与量も同一となる。但し、量子化レベル4は、図17(e)に示すように、2個の大ドットL、1個の中ドットM、1個の小ドットSを組み合わせたドットパターンに対応する。従って、画素領域に付与されるインク量は、量子化レベル4において22.5plとなる。ここで、図18と図17を対比するに、1回の主走査において、各インク吐出口が画素領域に形成できるドット数は1個であるため、量子化レベル4に対応する最大インク付与量は、図18の場合には14.5(pl)、図17の場合には22.5plとなる。
【0085】
図19は、各量子化レベル(1〜4)に対応して600dpi×600dpiの画素領域に付与されるインク量と画像濃度(光学濃度)との関係を、記録ヘッド220を用いた図18の場合と記録ヘッド200を用いた図17の場合について示した図である。
【0086】
図示のように、量子化レベルが1〜3までは、図17、図18のいずれの場合も、同じインク量が画素形成領域(600dpi×600dpi)に付与されるため、画像濃度は同じである。しかし、量子化レベルが4の場合、記録ヘッド220を用いた図18の場合では約0.40の濃度しか得ることができないため、さらに画像濃度を高めるためには、低速記録あるいは複数回の記録走査を行う必要がある。例えば、走査速度を12.5(inch/sec)に低下させるか、あるいは2回の走査を行えば、600dpi×600dpiの画素形成領域内に、図20(e)に示すように、記録ヘッド200を用いた場合と同量のインクを付与することができる。しかし、これでは、記録速度の低下を招くこととなる。しかも、図20(e)に示すドットパターンでは、同一の大インク吐出口Lにより、副走査方向における同一位置に2個のドットが隣接して形成されるため、画素領域内に大きな余白が形成される。この余白は、画像内にスジ状の濃度むらを発生させる要因となっている。
【0087】
一方、記録ヘッド200を用いた図17の場合、1パス記録によって、画像濃度を約0.55まで高めることができ、高速で高濃度の画像を形成することができる。さらに、記録ヘッド200では、全てのインク吐出口が、副走査方向において異なる位置に配置されているため、高濃度画像の形成時において画像領域内の副走査方向の余白部分を少なくすることができる。このため、画素領域内に大きな余白部分が形成されることに起因するスジ状の濃度ムラの発生を抑制することができる。但し、インク滴の大きさによっては、必ずしも副走査方向におけるインク吐出口の位置を異ならせた配置にする必要はなく、同じ位置に配置することも可能である。
【0088】
また、記録ヘッド200は、記録ヘッド220と同数のインク吐出口で構成できるため、記録ヘッドを構成する半導体のサイズが増大することもない。また、画像処理などのデータ処理も従来と同様に行うことができる。これにより、インクジェット記録ヘッドのコスト増大、大型化などを回避することができる。
【0089】
なお、この実施形態で説明したインク吐出口数、インク滴の体積、インク色、量子化レベルと画素パターンとの関係、所定領域を完成させる記録走査回数などは、適宜変更可能である。
【0090】
以上述べたように第2の実施形態によれば、大インク用吐出口が小インク用吐出口よりも多く設けられているので、走査回数の増加や走査速度の低下などを招かずに、高濃度の記録を高速で行うことが可能となる。
【0091】
(変形例)
次に、第2の実施形態の変形例について説明する。図15は、第2の実施形態の変形例におけるインクジェット記録ヘッド210を示している。この記録ヘッド210は、図14の記録ヘッド200に対して、図14の吐出口列Cと吐出口列Dを入れ替えた配置になっている。
【0092】
図15において、L1_n1,L1_n2,L1_n3,L1_n4は吐出口列A’における大インク吐出口Lの番号を、L2_n1,L2_n2,L2_n3,L2_n4は吐出口列C’における大インク吐出口Lの番号をそれぞれ示している。また、M_n1,M_n2,M_n3,M_n4は吐出口列B’における中インク吐出口Mの番号を示している。さらに、S_n1,S_n2,S_n3,S_n4は吐出口列D’における小インク吐出口Sの番号を示している。
【0093】
また、吐出口列A’の各インク吐出口(L1_n1からL1_n4)に対し、その他の吐出口列の各インク吐出口は、副走査方向において次のような間隔だけずれた位置に配置されている。すなわち、吐出口列B’の各インク吐出口(M_n1からM_n4)は2400dpi、吐出口列C’の各インク吐出口(L2_n1からL2_n4)は1200dpiだけ副走査方向にずれた位置にそれぞれ配置されている。また、吐出口列D’の各インク吐出口(S_n1からS_n4)は800dpiだけ副走査方向にずれた位置に配置されている。
【0094】
この図15の記録ヘッド210も、図14のインクジェット記録ヘッド200と同様、大インク吐出口列の数が2個、中インク吐出口列の数が1個、小インク吐出口列の数が1個となっている。なお、記録ヘッド210を用いて1パス記録を行う場合の、各画素に対応する画像データの量子化レベルと記録媒体に形成される画素のドットパターンとの関係は、図17の場合と同じである。 ここで、図14の記録ヘッド200及び図15の記録ヘッド210に傾き(θ)が生じた時のインク吐出口列間での副走査方向におけるインク着弾ズレについて、図11を用いて説明する。以下では、大インク吐出口列A,D(A’、C’)と小インク吐出口列C( D’)に着目した場合のドット着弾ズレについて説明する。
【0095】
図11(a)では、インク吐出口列A、A’の位置であるa−1に対して、インク吐出口列C、C’の位置であるa−2は、+△H1の距離だけ副走査方向にずれている。また、インク吐出口列C、C’の位置であるa−2に対して、インク吐出口列D、D’の位置であるa−3は、+△H2の距離だけ記録媒体を搬送する副走査方向にずれている。一方、図11(b)では、インク吐出口列A、A’の位置であるb−1に対して、インク吐出口列C、C’の位置であるb−2は、−△H1の距離だけ副走査方向にずれている。また、インク吐出口列C、C’の位置であるb−2に対して、インク吐出口列D、D’の位置であるb−3は、−△H2の距離だけ副走査方向にずれている。
【0096】
図14の記録ヘッド200について図11の傾きが生じた時の、小インク吐出口列Cによる小ドットSに対する大インク吐出口列Aによる大ドットL1の副走査方向における着弾位置のズレは、以下のようになる。すなわち、図11(a)のように傾きが+θの場合、小ドットSの位置(a−2)に対して大ドットL1の位置(a−1)は−Y方向に△H1だけずれる。また、図11(b)のように傾きが−θの場合、小ドットSの位置(b−2)に対して大ドットL1の位置(b−3)は+Y方向に△H1だけずれる。このように図11の傾きが生じた時の、小インク吐出口列Cによる小ドットSに対する大インク吐出口列Aによる大ドットの副走査方向における着弾位置のズレ量は、△H1となる。
【0097】
一方、図15に示した変形例の記録ヘッド210について図11の傾きが生じた時の、小インク吐出口列D’による小ドットSに対する大インク吐出口列A’による大ドットL1の副走査方向における着弾位置のズレは、以下のようになる。
【0098】
すなわち、図11(a)のように傾きが+θの場合、小ドットSの位置(a−3)に対して大ドットL1の位置(a−1)は−Y方向に△H1+△H2だけずれる。また、図11(b)の傾きが−θの場合、小ドットSの位置(b−1)に対して大ドットL1の位置(b−3)は+Y方向に△H1+△H2だけずれる。このように図11の傾きが生じた時の、小インク吐出口列D’による小ドットSに対する大インク吐出口列A’による大ドットL1の副走査方向における着弾位置のズレ量は、△H1+△H2となる。
【0099】
以上説明した様に、小インク吐出口列、中インク吐出口列、大インク吐出口列を有する記録ヘッドを用いる場合、吐出口列の数が同じであっても、吐出口列の配置に違いがあると、小ドットと大ドットの着弾ズレ量に差が生じる。図15の記録ヘッド210を採用した場合は、大インク吐出口列A’により形成される大ドット(L1)と小インク吐出口列D’により形成される小ドット(S)の副走査方向における着弾位置のズレ量は△H1+△H2となる。これに対して、図14の記録ヘッド200を採用した場合は、大インク吐出口列Aにより形成される大ドット(L1)と小インク滴の吐出口列Cにより形成される小ドット(S)の副走査方向における着弾位置のズレ量は△H1となる。
【0100】
このように図14の記録ヘッド200を採用した場合は、図15の記録ヘッド210を採用した場合に比べて、着弾ズレ量を△H2だけ低減させることができる。つまり、大インク滴の吐出口列と小インク滴の吐出口列の距離が大である図15のヘッド構成に比べて、大インク滴の吐出口列と小インク滴の吐出口列の距離が小である図14のヘッド構成の方が、着弾ズレによる画像品位の劣化を軽減するのに有利である。図14では、副走査方向(第1の方向)と交差する主走査方向(第2の方向)に沿って、複数の大インク吐出口列(吐出口列A,D)の間に小インク吐出口列(吐出口列C)を配置することで、大インク吐出口列と小インク吐出口列の距離を小さくしている。
【0101】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。
【0102】
第1〜2の実施形態では、単色のインク(シアン色のインク)を吐出するインクジェット記録ヘッドについて説明したが、この第3の実施形態におけるインクジェット記録ヘッドは、異なる色のインク滴を吐出するための複数のインク吐出口を備える。
【0103】
図21は、本発明の第3の本実施形態を説明するためのインクジェット記録ヘッド400におけるインク吐出口の配置を示す図である。ここに示す記録ヘッド400には、6列のインク吐出口列A,B,C,D,E,Fが設けられている。副走査方向(y方向)に延在する吐出口列A,B,C,D,E,Fは、主走査方向に沿って配置されている。各吐出口列には、1インチ当たり600個の密度(600dpi)でn個のインク吐出口が配置されている。図では、便宜上、各吐出口列を構成するインク吐出口の数(n)を4個として示している。
【0104】
図21の記録ヘッドにおける6つの吐出口列のうち、吐出口列A、B、C、Dは、シアン色のインクを吐出する吐出口列であり、吐出口列E、Fは、イエロー色のインクを吐出する吐出口列である。吐出口列A、B、C、Dに関し、その各吐出口の副走査方向における位置は、上記図14に示した記録ヘッドの吐出口列A、B、C、Dと同じである。但し、主走査方向における吐出口列の配置は、図14の場合とは異なっている。すなわち、中口径のインク吐出口Mのみから構成された吐出口列Bと小口径のインク吐出口Sのみから構成された吐出口列Cとの主走査方向の間隔が、図21の記録ヘッドと図14の記録ヘッドとで異なる。図21の記録ヘッドでは、両吐出口列BとCの間に、イエロー色のインクを吐出する吐出口列E,Fが配置されている。吐出口列E,Fは、10plのインク滴を吐出する大口径のインク吐出口L(L1、L2)のみから構成されている。
【0105】
図21の記録ヘッドにおいて、シアンインクを吐出する吐出口列A、B、C、Dと、イエローインクを吐出する吐出口列E,Fとの副走査方向の位置関係は、次のように設定されている。
【0106】
すなわち、吐出口列Aの各インク吐出口(L1_n1からL1_n4)と吐出口列Eの各インク吐出口(L1_n1からL1_n4)とが、副走査方向において同一の位置に配置されている。また、吐出口列Dの各インク吐出口(L2_n1からL2_n4)と吐出口列Fの各インク吐出口(L2_n1からL2_n4)とが、副走査方向において同一の位置に配置されている。
【0107】
図21に示したインクジェット記録ヘッド400は、各インク吐出口からインク滴を吐出するための駆動周波数は15KHzとなっており、主走査方向への走査速度は25(inch/sec)となっている。従って、主走査方向に600dpi間隔でインク滴を吐出させながら記録を行う。
【0108】
図22は、上記記録ヘッド150のイエロー色のインク滴を吐出する吐出口列E,Fを用いて1パス記録を実行した際の、イエロー色の画像データの量子化レベルとドットパターンとの関係を示す図である。
【0109】
図22に示するように、600×600dpiの解像度を有する各画素は、量子化レベル0〜2で指定される3段階で表現される。これは、各画素領域内に設定された4×4のマトリクス内に一種類のインク滴(10pl)で形成されるドットでからなるドットパターン(b)、(c)を形成することにより行う。これにより、画素領域内に全くドットが形成されないドット無しパターン(図22(a)参照)を含む3種類のドットパターンで、量子化レベル0〜2で指定された3段階を表現できる。
【0110】
すなわち、量子化レベル0は、ドット無しパターン(図22(a)参照)に対応し、量子化レベル1は、2plのインク滴で形成される大ドット1個を画素領域内の1つのエリアに形成したパターン(図22(b)参照)に対応する。また、量子化レベル2は、10plのインク滴で形成される大ドット1個を、1つのエリアに形成したパターン(図22(c)参照)に対応する。従って、各階調レベルでの600×600dpiの画素形成に対して付与されるインク量(体積)は、量子化レベル0では0pl、量子化レベル1では10pl、量子化レベル2では20plとなる。1回の主走査では、吐出口列E,Fの各インク吐出口が600×600dpiの各画素領域に対して形成可能なドット数は1個であるため、各画素領域に記録可能な最大のインク量は量子化レベル2に対応した20plとなる。
【0111】
図23は、図21の記録ヘッド400の吐出口列E,Fを用いて、1パス記録を行った際に、各量子化レベル1、2に対応して600dpi×600dpiの画素領域に付与されるイエローのインク量と画像濃度(光学濃度)との関係を示した図である。図示のように、画素領域に付与されるイエローのインク量が20plを上回っても、その画像濃度は、20plのインクが付与されたときの画像濃度より高くならない。つまり、明度の高いイエロー色は、20pl付与された時点で画像濃度が飽和していることがわかる。なお、シアンインクを吐出する吐出口列A〜Dを用いて1パス記録を行った際の、シアン色の画像データの量子化レベルとドットパターンとの関係、およびインク付与量と画像濃度との関係は、第2の実施形態(図19)と同様となっている。
【0112】
この第3の実施形態において、シアン色は、10pl、2pl、0.5plの3種類のインク滴を用いて5段階の量子化レベルに対応する5階調の画像濃度を表現している。これに対し、イエロー色は、1種類のインク滴(10pl)のみを用いて3段階の量子化レベルに対応する3階調の画像濃度を表現している。これは、イエロー色は、シアン色に比べて明度が高いことから、低階調部での粒状感が目立ちにくく、また、画素領域に対して少ないインク付与量で画像濃度が飽和するためである。つまり、1種類のインク滴のみを用いて3階調の画像濃度を表現するようにしても、シアン色に劣らない高品質な画像を記録することができる。
【0113】
図24は、本実施形態の記録ヘッド400を用いて、単位画像領域に対して画像を記録していく様子を示す図である。まず1回目の主走査では、記録ヘッド400を往路方向(x1方向)に走査させて、画像領域(1)に対し記録を行う。この際、記録ヘッド400は、吐出口列D→吐出口列C→吐出口列F→吐出口列E→吐出口列B→吐出口列Aの順番で各々インク吐出口からインク滴を吐出し、往路方向x1方向に画像を記録して行く。その後、記録媒体を全インク吐出口幅に当たる4/600インチ(16/2400インチ)の搬送量で副走査方向に搬送する。次に、2回目の主走査では、画像領域(2)に対して記録ヘッドを走査させて記録を行う。この際、記録ヘッド150は、吐出口列A→吐出口列B→吐出口列E→吐出口列F→吐出口列C→吐出口列Dの順番で各インク吐出口からインク滴を吐出して、1回目の主走査方向と反対方向の復路方向(x2方向)に記録を行い、画像を完成させる。その後、1回目の主走査終了時と同様に記録媒体を全インク吐出口幅に当たる4/600インチ(16/2400インチ)の搬送量で副走査方向に搬送する。3回目以降の主走査による記録動作は、1回目、2回目の主走査と同様に行う。
【0114】
従って本実施形態では、シアン色とイエロー色が記録される順番は、往路方向では、吐出口列DおよびCから吐出されるシアン色、吐出口列FおよびEから吐出されるイエロー色、吐出口列BおよびAから吐出されるシアン色の順番となる。また、復路方向では、吐出口列AおよびBから吐出されるシアン色、吐出口列EおよびFから吐出されるイエロー色、吐出口列CおよびDから吐出されるシアン色の順番で記録される。
【0115】
以上のように、本実施形態の記録ヘッド400によれば、往路方向でも復路方向でもシアン色→イエロー色→シアン色の順番で記録される。このため、シアン色とイエロー色とが同一エリアに重ねて記録される場合、各色のドットが重なる順番は往路方向と復路方向とで同一となる。つまり、往路方向と復路方向のいずれにおいても、シアン色のドットの上にイエロー色のドットが重ねられることとなり、形成されるドットの色味は、走査方向に関係なく同一となる。これに対し、2色のドットを重ねて記録する場合、各ドットの重なる順番が異なると、形成されたドットの色味に差が生じる。本実施形態では、このような問題を生じさせずに済む。
【0116】
このように第3の実施形態によれば、高速記録を実現することが可能な往復記録方式を実施しても色ムラの発生を抑制できるという効果を奏する。また、シアンインクについては、大インク吐出口列の数が2個、中インク吐出口列の数が1、小インク吐出口列の数が1個となっており、大インク吐出口列の数が最も多い。従って、他の実施形態と同様に、1パス記録を実施した場合にも、高濃度の画像を記録することが可能となり、階調性に優れた高品質な画像を記録することができる。更に、大インク吐出口列の間に小インク吐出口列及び中インク吐出口列を配置した構成になっている。従って、他の実施形態と同様に、記録ヘッドの製造パラツキや、記録ヘッドを記録装置に取り付けたときに傾きが生じたとしても、走査方向に複数配列されたインク吐出列間での副走査方向へにおけるドット着弾ズレを最小限に抑えることができる。
【0117】
なお、この第3の実施形態では、シアン色のインク吐出に関し、上記第2の実施形態における画像データの量子化レベルとドットパターンとの関係、およびインク付与量と画像濃度との関係を採用するものとした。しかし特に高速記録が要求されるようなモード、例えば普通紙等への記録を行うモードでは、シアン色についても図22、図23に示すような量子化レベルとドットパターンとを採用することで画像データ量を削減し、より高速に記録を行うようにすることもできる。
【0118】
(その他の実施形態)
上記第1〜3の実施形態のヘッドは、同一組成のインクを吐出する大インク吐出口の数が小インク吐出口の数よりも多く、且つ大インク吐出口列の数が小インク吐出口列の数よりも多い構成であったが、本発明はこの構成に限られるものではない。大吐出口と小吐出口から吐出されるインクは同一組成のインクでなくとも、同色あるいは同系色のインクであればよい。すなわち、本発明は、組成が異なるが同色のインク、あるいは顔料、染料等の色材の含有濃度が異なる同系色のインク(例えば、濃淡シアンインク)を、大吐出口と小吐出口から吐出する構成にしてもよい。勿論、この構成の場合であっても、小吐出口から吐出される小インクと大吐出口から吐出される大インクは、低階調部から高階調部に至る所定の色相を表現するために単独であるいは組合せて用いられる。
【0119】
更に、上述した実施形態で説明した記録ヘッドを用いて記録を行うインクジェット記録装置も本発明の一形態に該当する。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明の実施形態に適用されるインクジェット記録装置の概略説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における記録ヘッドの構成を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の変形例における記録ヘッドの構成図である。
【図5】従来の記録ヘッドの構成を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態における記録ヘッドを用いて1パス記録を実行する際の、各画素に対応する画像データの量子化レベルとドットパターンとの関係を示す図である。
【図7】図5の記録ヘッドを用いて1パス記録を実行する際の、各画素に対応する画像データの量子化レベルとドットパターンとの関係を示す図である。
【図8】図3の記録ヘッドあるいは図5の記録ヘッドを用いて記録動作を行う様子を示した図である。
【図9】各量子化レベルに対応したインク量と画像濃度との関係を、図5の記録ヘッドを用いた場合と、第1の実施形態の記録ヘッドを用いた場合について示した図である。
【図10】図5の記録ヘッドを用いて画素領域に画像濃度が飽和するまでインクを付与する場合の、画像データの量子化レベルとドットパターンとの関係を示す図である。
【図11】図3の記録ヘッドと図4の記録ヘッドに傾きが生じたときの副走査方向における着弾ズレを示す図である。
【図12】図3の記録ヘッド100が図11のように傾いた状態で形成されるドットパターンの、副走査方向の着弾ズレを示す図である。
【図13】図4の記録ヘッド100が図11のように傾いた状態で形成されるドットパターンの、副走査方向の着弾ズレを示す図である。
【図14】本発明の第2の実施形態における記録ヘッドの構成を示す図である。
【図15】本発明の第2の実施形態の変形例における記録ヘッドの構成図である。
【図16】本発明の第2の実施形態の比較例として示した仮想の記録ヘッドの構成図である。
【図17】図14の記録ヘッドを用いて1パス記録を実行する際の、各画素に対応する画像データの量子化レベルとドットパターンとの関係を示す図である。
【図18】図16に示す記録ヘッドを用いて1パス記録を実行する際の、各画素に対応する画像データの量子化レベルとドットパターンとの関係を示す図である。
【図19】量子化レベルに対応したインク量と画像濃度との関係を、図16の記録ヘッドを用いた場合と図14の記録ヘッドを用いた場合について示した図である。
【図20】図16に示す記録ヘッドを用いて低速記録または2パス記録を実行する際の、各画素に対応する画像データの量子化レベルとドットパターンとの関係を示す図である。
【図21】本発明の第3の実施形態における記録ヘッドの構成を示す図である。
【図22】本発明の第3の実施形態における記録ヘッドのイエローインクを吐出する吐出口列を用いて1パス記録を実行した際の、イエロー色の画像データの量子化レベルとドットパターンとの関係を示す図である。
【図23】図21の記録ヘッドを用いて記録を行う際の、各量子化レベル1、2に対応したイエローのインク量と画像濃度との関係を示した図である。
【図24】図21の記録ヘッドを用いて記録動作を行う様子を示した図である。
【符号の説明】
【0121】
101 インクカートリッジ
100、110、120、200、210、220、400 記録ヘッド
106 キャリッジ
2000 中央制御部(CPU)
2001 ROM
2002 RAM
2004 画像信号処理部
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる体積のインクを吐出可能なインクジェット記録ヘッドおよびそのインクジェット記録ヘッドを用いて記録を行うインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、インクジェット記録ヘッドから記録媒体にインクを吐出して記録を行うものである。このインクジェット記録ヘッド(以下、単に、記録ヘッドともいう)には、複数のインク吐出部が高密度に配置されている。インク吐出部は、記録ヘッドの端面に形成されたインク吐出口と、これに連通する液路と、各液路内に配置された記録素子(例えば、電気熱変換素子)などから構成され、これらが高密度に配置されている。
【0003】
インクジェット記録装置によって記録される画像の品位は、インクジェット記録ヘッドの構成(例えば、吐出部の密度)に大きく影響される。このため、上記のようなインク吐出部の高密度化に加え、現在では、インク吐出口の配置や各インク吐出口から吐出されるインク滴の体積などにも、種々の対策がとられている。その一例として、特許文献1には、図5に示すように、径の異なる吐出口から体積の異なる2種類のインク滴を吐出可能な記録ヘッドが開示されている。
【0004】
この特許文献1に開示の記録ヘッドは、体積が小さいインク滴を吐出するインク吐出口(S1、S2)の数を、体積が大きいインク滴を吐出するインク吐出口(L)の数よりも多く設けている。これにより、記録画像におけるスジ状の濃度ムラの発生を抑制して高画質の画像を記録することを可能にしている。
【特許文献1】特開2003−127439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の記録ヘッドを用いる場合、大きな体積のインク滴を吐出するインク吐出口の数が少ないため、高濃度に記録すべき画像領域の濃度を十分なものにすることができず、色あせた画像になることがある。このような濃度低下を軽減するためには、記録ヘッドの同一領域に対する走査回数を増やしたり、記録ヘッドの走査速度を落としたりして、単位面積当りのインク滴の吐出数を増大させる必要がある。しかし、このような方法によれば高濃度化は図れるが、その反面、記録速度が低下してしまう。以上のように高濃度化と高速化は相反する課題であり、高濃度化と高速化を両立させることは難しい。
【0006】
本発明は、上記課題に着目してなされたものであり、高濃度化と高速化を両立させることができるインクジェット記録ヘッド並びにインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は以下の構成を有する。
【0008】
本発明の第1の形態は、同色あるいは同系色で体積の異なるインクを吐出するための吐出口を有するインクジェット記録ヘッドであって、第1の体積の前記インクを吐出するための吐出口が第1の方向に沿って複数配列されてなる第1の吐出口列と、前記第1の体積よりも小さな第2の体積の前記インクを吐出するための吐出口が前記第1の方向に沿って複数配列されてなる第2の吐出口列とを有し、前記第1の吐出口の数は前記第2の吐出口の数よりも多く、前記第1の吐出口列の数は前記第2の吐出口列の数よりも多いことを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の形態は、同色あるいは同系色で体積の異なるインクを吐出するための吐出口を有するインクジェット記録ヘッドであって、第1の体積の前記インクを吐出するための吐出口が第1の方向に沿って複数配列されてなる第1の吐出口列と、前記第1の体積よりも小さな第2の体積の前記インクを吐出するための吐出口が前記第1の方向に沿って複数配列されてなる第2の吐出口列とを有し、前記第1の吐出口の数は前記第2の吐出口の数よりも多く、前記第1の吐出口列の数は前記第2の吐出口列の数よりも多く、前記第1の方向と交差する第2の方向に沿って、複数の前記第1の吐出口列の間に前記第2の吐出口列が配置されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の第3の形態は、同色あるいは同系色で体積の異なるインクを吐出するための吐出口を有するインクジェット記録ヘッドであって、第1の体積の前記インクを吐出するための吐出口が第1の方向に沿って複数配列されてなる第1の吐出口列と、前記第1の体積よりも小さな第2の体積の前記インクを吐出するための吐出口が前記第1の方向に沿って複数配列されてなる第2の吐出口列と、前記第2の体積よりも小さな第3の体積の前記インクを吐出するための吐出口が前記第1の方向に沿って複数配列されてなる第3の吐出口列とを有し、前記第1の吐出口の数は前記第2の吐出口の数よりも多く、前記第1の吐出口の数は前記第3の吐出口の数よりも多く、前記第1の方向と交差する第2の方向に沿って、前記第1の吐出口列、前記第2の吐出口列、前記第3の吐出口列、前記第1の吐出口列がこの順で配置されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の第4の形態は、上記のインクジェット記録ヘッドを用いて記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、大インク吐出口の数が小インク吐出口の数よりも多いので、高濃度化と高速化を両立させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明において適用可能なシリアル型のインクジェット記録装置の概略構成を示す斜視図である。シリアル型のインクジェット記録装置では、記録ヘッドを主走査方向に移動させながらインク吐出を行う主走査と、記録媒体を主走査方向と交差する副走査方向へと搬送する副走査を繰り返しながら、記録媒体に画像を記録していく。
【0015】
図1において、101はヘッドカートリッジである。このヘッドカートリッジ101は、複数色のインクがそれぞれ個別に貯留されたインクタンクと、各インクを吐出する複数のインク吐出口を有する単一のインクジェット記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドともいう)100とで構成されている。ここでは、インクタンクとして、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色のインクが備えられている。本実施形態における記録ヘッドは、後に詳述するように、体積の異なるインク滴を吐出するための径の異なるインク吐出口が配置されている。103は図外の駆動モータの駆動力によって回転する搬送ローラである。この搬送ローラ103は、これに対向する補助ローラ104と共に記録媒体Pを挟持しつつ、後述のキャリッジの往復動作に応じて間欠的に回転し、記録媒体Pを一定量毎に副搬送方向yへと搬送する。
【0016】
また105は搬送ローラ103側へと記録媒体Pを給送する一対の給紙ローラである。この給紙ローラ105は記録媒体Pを挟持しつつ回転し、搬送ローラ103及び補助ローラ104と共に記録媒体Pを副走査方向(y方向)へと搬送する。
【0017】
106はヘッドカートリッジ30を着脱可能に保持するキャリッジである。このキャリッジ106は、キャリッジモータの駆動力により、主走査方向に沿って配置されたガイドシャフト107に沿って往復動を行う。また、キャリッジ106は、記録動作を行っていないとき、あるいは記録ヘッド100の回復を行うときには破線で示したホームポジションhに待機する。
【0018】
また、記録動作開始前にホームポジションhに待機しているキャリッジ106は、記録動作開始命令が入力されると、x方向に移動しながら、記録ヘッド100上の複数の吐出口により記録を行う。一走査分の記録データに基づく記録動作が終了するとキャリッジ106は元のホームポジションに戻り、再びx方向へと移動しつつ記録動作を行う。
【0019】
図2は、本発明で適用可能なインクジェット記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。図2において、メインバスライン2005には、画像入力部2003、画像信号処理部2004、および中央制御部CPU2000といったソフト系処理手段が接続されている。さらに、メインバスライン2005には、操作部2006、回復系制御回路2007、ヘッド温度制御回路2014、ヘッド駆動制御回路2015、キャリッジ駆動制御回路2016、記録媒体の搬送制御回路2017などのハード系処理手段が接続されている。
【0020】
CPU2000は、ROM2001とRAM2002を有する。ROM2001には、画像入力部2003・画像信号処理部2004・ヘッド駆動制御回路2015等の各デバイスを制御するためのプログラムが格納されている。RAM2002は、各種データを処理するためのワークエリアとして機能する。
【0021】
CPU2000は、ROM2001に格納されているプログラムに従って、メインバスライン2005を介して、画像入力部2003、画像信号処理部2004、ヘッド駆動制御回路2015等の各デバイスを制御する。
【0022】
画像入力部2003には、インクジェット記録装置と接続される不図示の外部機器(例えば、ホストコンピュータ、デジタルカメラ)から転送される多値画像データが入力される。例えば、ホストコンピュータのプリンタドライバにおいて、256階調の画像データがハーフトーニング処理によって後述する5階調の画像データに変換され、この5階調の画像データ(多値画像データ)が画像入力部2003に入力される。
【0023】
画像信号処理部2004は、CPU2000の制御の下、画像入力部2003に入力された多値画像データを2値化処理(ドットパターン設定処理)し、2値画像データを生成する。2値画像データの生成は次のようにして行われる。すなわち、画像信号処理部2004には、後述する図6、図17に示されるような多値画像データの階調レベル(0〜4)に対応したドットパターンが格納されている。そして、画像信号処理部2004は、CPU2004によって指定される多値画像データの階調レベル(0〜4)に応じてドットパターンを選択し、このドットパターンに対応する2値画像データを得るのである。
【0024】
ヘッド駆動制御回路2015は、CPU2000の制御の下、記録ヘッド100のインク吐出口からインクを吐出させるために設けられた記録素子の駆動を制御する。詳しくは、ヘッド駆動制御回路2015は、画像信号処理部2004において生成された2値画像データに基づき記録素子を駆動する。これにより、2値画像データが示す画像が記録媒体に形成されることになる。なお、ここでは、記録素子として電気熱変換素子を用いる場合について説明するが、記録素子は電気熱変換素子に限られるものではない。例えば、記録素子として圧電素子(ピエゾ素子)を用いる形態であってもよい。
【0025】
回復系制御回路2007は、ROMに格納されている回復動作を行うためのプログラムに従って回復系モータ2008を駆動することで、インクジェット記録装置の回復動作を制御する。回復系モータ2008は、回復系制御回路2007からの制御信号に基づいて、記録ヘッド100とこれに対向可能な位置に設けられたクリーニングブレード2009、キャップ2010、および吸引ポンプ2011を駆動する。
【0026】
記録ヘッド100は、電気熱変換素子が設けられている基板を有する。この基板には、記録ヘッド100の温度を測定するためのダイオードセンサ2012と、記録ヘッドの温度を調整するための保温ヒータが設けられている。ヘッド温度制御回路2014は、ダイオードセンサ2012により得られたヘッド温度に基づいて保温ヒータの動作を制御し、これにより記録ヘッドの温度を調整する。
【0027】
次に、以上の構成を有するインクジェット記録装置で適用されるインクジェット記録ヘッド100の構成について説明する。
【0028】
(第1の実施形態)
この第1の実施形態におけるインクジェット記録ヘッドは、体積の異なる2種類の同じインクを吐出可能な構成を有している。すなわち、大きな体積(第1の体積)のインク滴を吐出するためのインク吐出口Lと、小さな体積(第1の体積よりも小さな第2の体積)のインク滴を吐出するための小インク吐出口Sとを有している。
【0029】
以下、この第1の実施形態におけるインクジェット記録ヘッド100の構成を、従来のインクジェット記録ヘッド120(図5参照)及び変形例のインクジェット記録ヘッド110(図4参照)と対比しながら説明する。
【0030】
図3は、第1の本実施形態におけるインクジェット記録ヘッド100を示す図であり、図5は、従来のインクジェット記録ヘッド120を示す図である。インクジェット記録ヘッド100はCMYKの4色を吐出可能なものであるが、図3では説明の便宜上、ある1色(例えば、シアン)のインク吐出口だけを図示しており、他の色(YMK)のインク吐出口については省略している。図5の従来のインクジェット記録ヘッド120も同様である。
【0031】
図5に示す従来のインクジェット記録ヘッド120は、主走査方向(x方向)と直交する副走査方向(y方向)に沿ってインク吐出口を配列した吐出口列A’’、吐出口列B’’、吐出口列C’’が設けられている。各吐出口列は、1インチ当たり600個の密度(600dpi)で、n個のインク吐出口が等間隔に配置されている。図では、便宜上、吐出口列A’’、吐出口列B’’、吐出口列C’’の各インク吐出口列を構成するインク吐出口の数(n)を4個として示している。
【0032】
図5の吐出口列A’’は、10pl(ピコリットル)の体積を有するインク滴を吐出する大口径のインク吐出口(大インク吐出口)Lのみから構成されている。一方、吐出口列B’’及び吐出口列C’’は、2plの体積を有するインク滴を吐出する小口径のインク吐出口(小インク吐出口)Sのみから構成されている。図5において、L_n1,L_n2,L_n3,L_n4は吐出口列A’’における大インク吐出口Lの番号を示している。また、S1_n1,S1_n2,S1_n3,S1_n4は吐出口列B’’における小インク吐出口Sの番号を、S2_n1,S2_n2,S2_n3,S2_n4は吐出口列C’’における小インク吐出口Sの番号をそれぞれ示している。吐出口列A’’の各インク吐出口L_n1,L_n2,L_n3,L_n4と、吐出口列B’’の各インク吐出口S_n1,S_n3,S_n4とは、副走査方向において同一位置に配置されている。一方、吐出口列B’’の各インク吐出口S1_n1,S1_n2,S1_n3,S1_n4と、吐出口列C’’の各インク吐出口S2_n1,S2_n2,S2_n3,S2_n4とは、副走査方向において1200dpiだけずれた位置に配置されている。
【0033】
図5から明らかなように、従来のインクジェット記録ヘッド120では、小インク滴の吐出口列(吐出口列B’’、吐出口列C’’)の数が2個、大インク滴の吐出口列(吐出口列A’’)の数が1個となっている。
【0034】
一方、図3に示す本発明の第1の実施形態におけるインクジェット記録ヘッド100には、インク吐出口が次のように配置されている。すなわち、このインクジェット記録ヘッド100には、副走査方向(第1の方向)と交差する主走査方向(第2の方向)に沿って、吐出口列A、吐出口列B、吐出口列Cがこの順で配置されている。吐出口列A、B、Cの夫々は、第1の方向(副走査方向)に沿って等間隔に配列された複数のインク吐出口からなる。各吐出口列は、1インチ当たり600個の密度(600dpi)で、n個のインク吐出口が等間隔に配置されている。図では、便宜上、吐出口列A、吐出口列B、吐出口列Cの各インク吐出口列を構成するインク吐出口の数(n)を4個として示している。これら吐出口列A、B、Cは同一組成のインクを吐出するものである。
【0035】
図3の吐出口列A及び吐出口列Cは、10pl(ピコリットル)の体積を有するインク滴を吐出する大口径のインク吐出口(大インク吐出口)Lのみから構成されている。一方、吐出口列Bは、2plの体積を有するインク滴を吐出する小口径のインク吐出口(小インク吐出口)Sのみから構成されている。図3において、L1_n1,L1_n2,L1_n3,L1_n4は吐出口列Aにおける大インク吐出口Lの番号を示している。また、S_n1,S_n2,S_n3,S_n4は吐出口列Bにおける小インク吐出口Sの番号を示している。更に、L2_n1,L2_n2,L2_n3,L2_n4は吐出口列Cにおける大インク吐出口Lの番号を示している。吐出口列Aの各インク吐出口L1_n1,L1_n2,L1_n3,L1_n4と、吐出口列Bの各インク吐出口S_n1,S_n3,S_n4とは、副走査方向において同一位置に配置されている。また、吐出口列Aの各インク吐出口L1_n1,L1_n2,L1_n3,L1_n4と、吐出口列Cの各インク吐出口L2_n1,L2_n2,L2_n3,L2_n4とは、副走査方向において1200dpiだけずれた位置に配置されている。
【0036】
この第1の実施形態のインクジェット記録ヘッド100では、小インク滴の吐出口列(吐出口列B)の数が1個、大インク滴の吐出口列(吐出口列A、吐出口列C)の数が2個となっている。要するに、小インク滴の吐出口列の数が、大インク滴の吐出口列の数よりも少なくなっている。更に、インクジェット記録ヘッド100では、副走査方向(第1の方向)と交差する主走査方向(第2の方向)に沿って、大インク滴の吐出口列(吐出口列A、吐出口列C)の間に小インク滴の吐出口列(吐出口列B)が配置されている。
【0037】
図3、図5に示したインクジェット記録ヘッド100、120は、各インク吐出口からインク滴を吐出するための駆動周波数が、15KHzとなっている。また、各インクジェット記録ヘッド100、120の主走査方向への走査速度は、25(inch/sec)となっており、主走査方向に600dpi間隔でインク滴を吐出させながら記録を行うようになっている。
【0038】
図7は、図5に示す従来の記録ヘッド120による1回の主走査で単位領域内の画像を完成させる、いわゆる1パス記録を実行する際の、画素に対応する画像データの量子化レベル(階調レベル)とドットパターンとの関係を示す図である。
【0039】
図7に示すように、600dpi×600dpiの解像度を有する画素は、量子化レベル(階調レベル)0〜4で指定される5段階で表現される。これは、画素の領域内に2×2のマトリクス状のエリアを設定し、これらのエリアに体積の異なる2種類のインク滴を着弾させ、大小異なる形状のドットからなるドットパターン(b)〜(e)を形成することにより行う。これにより、画像領域内に全くドットが形成されないドット無しパターン(図7(a)参照)を含む5種類のドットパターンで、量子化レベル0〜4で指定された5段階を表現することができる。なお、図7において、各種ドットについて、これを形成するインク吐出口の符号L,Sを付す。
【0040】
量子化レベル0は、図7(a)に示すように、画素領域内に全くドットが形成されないドット無しのパターンに対応する。また、量子化レベル1は、2plのインク滴で形成される1個の小ドットSを、画素領域内の1つのエリアに形成したパターン(図7(b)参照)に対応する。量子化レベル2は、10plのインク滴で形成される1個の大ドットLを、1つのエリアに形成したパターン(図7(c)参照)に対応する。量子化レベル3は、図7(d)に示すように、2plの液滴で形成される1個の小ドットと、10plの液滴で形成される1個の大ドットLとを組み合わせたパターン(図5(d)参照)に対応する。さらに、量子化レベル4は、図7(e)に示すように、2plの液滴で形成される2個の小ドットと、10plの液滴で形成される1個の大ドットLとを組み合わせたパターン(図7(e)参照)に対応する。各階調レベルでの600×600dpiの画素領域に対して付与されるインク量(体積)は、量子化レベル0では0pl、量子化レベル1では2pl、量子化レベル2では10pl、量子化レベル3では12pl、量子化レベル4では14plとなる。1回の主走査では、各インク吐出口から600dpi×600dpiの画素領域に対して形成可能なドット数は1ドットであるため、画素領域に付与可能な最大のインク量は図7(e)に示される14plとなる。
【0041】
一方、図6は、図3に示す第1の実施形態におけるインクジェット記録ヘッド100を用いて1パス記録を行う場合の、画素に対応する画像データの量子化レベル(階調レベル)とドットパターンとの関係を示す図である。
【0042】
図示のように、本実施形態においても、600×600dpiの解像度を有する画素領域内に2×2のエリアを設定し、各エリアに大小異なる形状の2種類のドットからなる、図6(b)〜(e)のドットパターンを形成する。これにより、画素領域にドットが全く形成されないパターン(図7(a)参照)を含む5種類のドットパターンで、量子化レベル0から4の5段階を表現することができる。なお、図6において、各種ドットについて、これを形成するインク吐出口の符号L1,L2,Sを付す。
【0043】
ここで、量子化レベル0は、図6(a)に示すようにドット無しのパターンに対応する。また、量子化レベル1は、2plのインク滴で形成される1個の小ドットSを1つのエリアに形成したパターン(図6(a)参照)に対応する。量子化レベル2は10plのインク滴で形成される1個の大ドットL1を1つのエリアに形成したドットパターン(図6(c)参照)に対応する。量子化レベル3は2plのインク滴で形成される1個の小ドットSと、10plのインク滴で形成される1個の大ドットL1とを組み合わせたドットパターン(図6(d)参照)に対応する。量子化レベル4は2plのインク滴で形成される1個の小ドットSと、10plのインク滴で形成される2個の大ドットL1,L2とを組み合わせたドットパターン(図6(e)参照)に対応する。
【0044】
このように第1の実施形態において、600dpi×600dpiに付与されるインク量(体積)は、量子化レベル0では0pl、量子化レベル1では2pl、量子化レベル2では10pl、量子化レベル3では12pl、量子化レベル4では22plとなる。なお、1回の主走査において、各インク吐出口が600dpi×600dpiの画素領域に形成できるドット数は1ドットであるため、画素領域に付与可能な最大のインク量は図6(e)に示される22plとなる。
【0045】
図8は、図5に示す従来の記録ヘッド120または図3に示す第1の実施形態における記録ヘッド100を用いて、単位画像領域に対して画像を記録していく様子を示した図である。
【0046】
1走査目では、記録ヘッド120または100を記録開始位置から往路方向(x1方向)に移動させ、記録媒体P上の画像領域(1)を走査させながら全てのインク吐出口を用いて記録を行い、画像領域(1)に対する画像を完成させる。その後、記録媒体Pを記録ヘッド120または100の全インク吐出口の配列幅(副走査方向における長さ)に当たる4/600インチ(8/1200インチ)量だけ副走査方向に搬送する。また、1走査目が終了すると、記録ヘッド120または100は、ホームポジションhなどの記録開始のための基準位置に復帰し、2走査目以降も1走査目と同様の方向に記録ヘッド120または100移動させつつ記録を行う。なお、このように、記録ヘッド120または100を常に一定の方向(往路方向)へと移動させつつ行う記録動作を、一方向記録と称す。
【0047】
図9は、各量子化レベル(1〜4)に対応して600dpi×600dpiの画素領域に付与されるインク量と画像濃度(光学濃度)との関係を、従来の記録ヘッド120と、第1の実施形態の記録ヘッド100のそれぞれについて示した図である。
【0048】
図示のように、600dpi×600dpiの画素領域に対するインク量が22plを上回った場合にも、その画像濃度は、22plのインクが付与されたときの画像濃度より高くならない。このことから、22plのインクが付与されたの時点では画像濃度が飽和していることがわかる。また、量子化レベルが0、1、2、3までは従来と本実施形態とは同一のインク量が画素領域内に付与されるため、これら量子化レベルに対応する画像濃度は同一となる。しかし、量子化レベルが4の場合、本実施形態の記録ヘッド100では1パス記録によって画像濃度を約0.55まで高められるのに対し、従来の記録ヘッド120では、1パス記録によって約0.40の画像濃度しか得ることができない。
【0049】
このため、従来の記録ヘッド120を用いて1パス記録を行った場合には、画像濃度が低い色あせた画像になる。従来の記録ヘッド120を用いて画像濃度の高い画像を記録するためには、画像を完成させるまでに行う記録走査回数を増やすか、記録ヘッドを走査させる速度を落とし、同一の画素領域に対し同一のインク吐出口から複数のインク滴を着弾させる必要がある。
【0050】
図10は、従来の記録ヘッド120を用いて、600dpi×600dpiの画素領域に画像濃度が飽和するまでインクを付与する場合の、画像データの量子化レベルとドットパターンとの関係を示す図である。
【0051】
量子化レベル0から3までは、図6に示すドットパターンと同一のドットパターンだが、量子化レベル4では2plの液滴からなる小ドット1個と、10plのインク滴からなる大ドット2個とを組み合わせた図10(e)に示すドットパターンを形成する。
【0052】
ここで、記録ヘッドの主走査方向への移動速度が25inch/secで、各インク吐出口から主走査方向に600dpi間隔でインク滴を吐出させる場合、図10(e)に示すドットパターンを記録するには2回の主走査が必要である。つまり、1回目の主走査で図10(e)に示す大ドット1001と、小ドット1002とを記録し、2回目の主走査で図10の大ドット1003を記録する(第1の記録方法)。
【0053】
一方、1パス記録によって図10(e)に示すドットパターンを記録するには、記録ヘッドの主走査方向への速度を25inch/secの1/2の速度である12.5inch/secに低下させる必要がある(第2の記録方法)。この場合、主走査方向に沿って、1200dpi間隔でインク滴を吐出させることにより、図10(e)に示す大ドット1001、1003を順次形成すると共に、大ドット1003と主走査方向の記録位置が同一となるタイミングで小ドット1002を記録する。このように、従来のインクジェット記録ヘッド120を用いて高濃度の記録を実現しようとした場合には、第1または第2の記録方法を採る必要があり、いずれの記録方法においても、記録動作時間が増大する。
【0054】
これに対し、第1の実施形態における記録ヘッドによれば、大インク用吐出口が小インク用吐出口よりも多く設けられているので、走査回数の増加や走査速度の低下などを招かずに、高濃度の記録を高速で行うことが可能となる。
【0055】
さらに、本実施形態における記録ヘッド100は、従来の記録ヘッド120と同数のインク吐出口から形成されているため、インクを吐出するための記録素子を集積配列した基板(半導体)のサイズが増大することもない。従って、記録ヘッドの高コスト化、大型化を抑制することができる。
【0056】
(変形例)
次に、第1の実施形態の変形例について説明する。図4は、この第1の実施形態の変形例であるインクジェット記録ヘッド110を示している。記録ヘッド110は、図3の記録ヘッド100に対して、図3の吐出口列Bと吐出口列Cを入れ替えた配置になっている。従って、図3の記録ヘッドと同様、図4の記録ヘッドにおける吐出口列A、B、Cも同一組成のインクを吐出するものである。
【0057】
図4において、L1_n1,L1_n2,L1_n3,L1_n4は吐出口列A’における大インク吐出口Lの番号を、L2_n1,L2_n2,L2_n3,L2_n4は吐出口列B’における大インク吐出口Lの番号をそれぞれ示している。また、S_n1,S_n2,S_n3,S_n4は吐出口列C’における小インク吐出口Sの番号を示している。吐出口列A’の各インク吐出口L1_n1,L1_n2,L1_n3,L1_n4と、吐出口列C’の各インク吐出口S_n1,S_n3,S_n4とは、副走査方向において同一位置に配置されている。また、吐出口列A’の各インク吐出口L1_n1,L1_n2,L1_n3,L1_n4と、吐出口列B’の各インク吐出口L2_n1,L2_n2,L2_n3,L2_n4とは、副走査方向において1200dpiだけずれた位置に配置されている。
【0058】
この図4の記録ヘッド110も、図3の記録ヘッド100と同様、小インク滴の吐出口列の数が1個、大インク滴の吐出口列の数が2個となっている。但し、図4の記録ヘッド110は、吐出口列の配列順序が図3の記録ヘッド100のものとは異なっており、主走査方向に沿って大インク吐出口列、大インク吐出口列、小インク吐出口列の順で配置されている。なお、図4のインクジェット記録ヘッド110を用いて1パス記録を行う場合の、各画素に対応する画像データの量子化レベルとドットパターンとの関係は、図6と同じである。
【0059】
図11は、記録ヘッド100及び記録ヘッド110に傾き(θ)が生じた時のインク吐出口列間での記録媒体を搬送する副走査方向へのインク滴の着弾位置のズレ量を示した図である。
【0060】
図11(a)は、+θの傾きを生じた時の記録ヘッド100及び記録ヘッド110の各インク吐出口列間の副走査方向へのインク滴の着弾位置のズレ量を示している。インク吐出口列A、A’の位置であるa−1に対して、インク吐出口列B、B’の位置であるa−2は、+△H1の距離だけ副走査方向にずれている。また、インク吐出口列B、B’の位置であるa−2に対して、インク吐出口列C、C’の位置であるa−3は、+△H2の距離だけ副走査方向にずれている。
【0061】
図11(b)は、−θの傾きを生じた時の記録ヘッド100及び記録ヘッド110の各インク吐出口列間の副走査方向へのインク滴の着弾位置のズレ量を示している。インク吐出口列A、A’の位置であるb−3に対して、インク吐出口列B、B’の位置であるb−2は、−△H1の距離だけ副走査方向にずれている。また、インク吐出口列B、B’の位置であるb−2に対して、インク吐出口列C、C’の位置であるb−1は、−△H2の距離だけ副走査方向にずれている。
【0062】
図12は、図3の記録ヘッド100が図11のように傾いた状態で、大インク滴の吐出口列Aと小インク滴の吐出口列Bによって形成されるドットパターン(図6の量子化レベル3)の、副走査方向における着弾位置のズレを示した図である。詳しくは、図12の(a)は傾きが0、(b)は傾きが+θ、(c)は傾きが−θ生じている時を示しており、小インク滴の吐出口列Bを基準とした大インク滴の吐出口列Aの副走査方向の着弾ズレ様子を示している。
【0063】
図12から理解できるように、傾きが0の場合、小インク滴Sの副走査方向の位置(a−2、b−2)は大インク滴L1の位置と同じである(図12(a)参照)。一方、傾きが+θの場合、小インク滴Sの副走査方向の位置(a−2)に対し、大インク滴L1の位置(a−1)は−Y方向に△H1だけずれている(図12(b)参照)。また、傾きが−θの場合、小インク滴Sの副走査方向の位置(b−2)に対し、大インク滴L1の位置(b−3)は+Y方向に△H1ずれている(図12(c)参照)。つまり、小インク滴の吐出口列Bにより形成される小ドットと、大インク滴の吐出口列Aにより形成される大ドットの副走査方向における着弾ズレの量は△H1である。同様に、小インク滴の吐出口列Bにより形成される小ドットと、大インク滴の吐出口列Cにより形成される大ドットの副走査方向における着弾ズレの量も△H1である。
【0064】
図13は、図4のインクジェット記録ヘッド110が図11のように傾いた状態で、大インク滴吐出口列A’と小インク滴吐出口列C’により形成されるドットパターン(図6の量子化レベル3)の、副走査方向における着弾位置のズレを示した図である。詳しくは、図13の(a)は傾きが0、(b)は傾きが+θ、(c)は傾きが−θ生じている時を示しており、小インク滴の吐出口列C’を基準とした大インク滴の吐出口列A’の副走査方向における着弾ズレの様子を示している。
【0065】
図13から理解できるように、傾きが0の場合、小インク滴Sの副走査方向の位置(a−3、b−1)は大インク滴L1の位置と同じである(図13(a)参照)。一方、傾きが+θの場合、小インク滴Sの副走査方向の位置(a−3)に対し、大インク滴L1の位置(a−1)は−Y方向に△H1+△H2だけずれている(図13(b)参照)。また、傾きが−θの場合、小インク滴Sの副走査方向の位置(b−1)に対し、大インク滴L1の位置(b−3)は+Y方向に△H1だけずれている(図13(c)参照)。つまり、小インク滴の吐出口列C’により形成される小ドットと、大インク滴の吐出口列A’により形成される大ドットの副走査方向における着弾ズレの量は△H1+△H2である。同様に、小インク滴の吐出口列C’により形成される小ドットと、大インク滴の吐出口列B’により形成される大ドットの副走査方向における着弾ズレの量も△H1+△H2である。
【0066】
なお、図6の量子化レベル4のドットパターンのL1とSについても図12と図13で説明した関係が成り立つ。
【0067】
さて、以上説明した図12と図13から理解できるように、小インク滴の吐出口列及び大インク滴の吐出口列を有する記録ヘッドを用いる場合、吐出口列の数が同じであっても、吐出口列の配置に違いがあると、小ドットと大ドットの着弾ズレ量に差が生じる。図4の記録ヘッド110を採用した場合は、図13で説明した通り、大インク滴の吐出口列A’により形成される大ドット(L1)と小インク滴の吐出口列C’により形成される小ドット(S)の副走査方向における着弾位置のズレ量は△H1+△H2となる。これに対して、図3の記録ヘッド110を採用した場合は、図12で説明した通り、大インク滴の吐出口列Aにより形成される大ドット(L1)と小インク滴の吐出口列Bにより形成される小ドット(S)の副走査方向における着弾位置のズレ量は△H1となる。このように図3の記録ヘッド110を採用した場合は、図4の記録ヘッド110を採用した場合に比べて、着弾ズレ量を△H2だけ低減させることができる。つまり、大インク滴の吐出口列と小インク滴の吐出口列の距離が大である図4のヘッド構成に比べて、大インク滴の吐出口列と小インク滴の吐出口列の距離が小である図3のヘッド構成の方が、着弾ズレによる画像品位の劣化を軽減するのに有利である。図3では、副走査方向(第1の方向)と交差する主走査方向(第2の方向)に沿って、複数の大インク吐出口列(吐出口列A,C)の間に小インク吐出口列(吐出口列B)を配置することで、大インク吐出口列と小インク吐出口列の距離を小さくしている。
【0068】
以上のように、第1の実施形態によれば、大インク用吐出口の数が小インク用吐出口の数よりも多い記録ヘッドを用いているため、記録速度を低下させずに、高濃度記録を行うことが可能となる。更に、着弾ズレによる画像品位の劣化を軽減するには、大インク用吐出口列と小インク用吐出口列の距離が比較的大であるヘッド構成よりも、大インク用吐出口列と小インク用吐出口列の距離が比較的小であるヘッド構成を採用する方が有効である。
【0069】
(第2の実施形態)
上記第1の実施形態では、同一組成のインクについて2種類のインク吐出口、すなわち体積の大きいインク滴を吐出する大インク吐出口Lと、体積の小さいインク滴を吐出する小インク吐出口Sとを備えた記録ヘッドについて説明した。しかし、本発明は上記第1の実施形態に限定されるものではなく、体積の異なる3種類以上のインク滴を吐出する3種類以上のインク吐出口を備える記録ヘッドについても本発明は適用可能である。
【0070】
以下に説明する第2の実施形態における記録ヘッドでは、同一組成のインクを吐出するための3種類のインク吐出口が設けられている場合を例に採って説明するが、4種類以上のインク吐出口を備える形態であってもよい。
【0071】
図14は第2の本実施形態のインクジェット記録ヘッドを示す図であり、図16は第2の実施形態の比較例として挙げた仮想のインクジェット記録を示す図である。図14および図16では、ある1色(シアン)のインクを吐出する記録ヘッドを示している。
【0072】
比較例として図16に示すインクジェット記録ヘッド220には、A’’,B’’,C’’,D’’の4つの吐出口列が設けられている。吐出口列A’’は、10plの体積を有するインク滴を吐出する大口径のインク吐出口(大インク吐出口)Lのみから構成されており、L_n1からL_n4は、この大インク吐出口Lの番号を示している。また、吐出口列B’’は、2plのインク滴を吐出する中口径のインク吐出口(中インク吐出口)Mのみから構成されており、M_n1からM_n4は、この吐出口列B’’を構成する中インク吐出口Mの番号を示している。また、吐出口列C’’は、0.5plのインク滴を吐出する小口径のインク吐出口(小インク吐出口)Sのみから構成されており、S2_n1からS2_n4は吐出口列C’’を構成する小インク吐出口Sの番号を示している。更に、吐出口列D’’は、0.5plのインク滴を吐出する小口径のインク吐出口(小インク吐出口)Sのみから構成されており、S1_n1からS1_n4は吐出口列D’’を構成する小インク吐出口Sの番号を示している。
【0073】
また、吐出口列A’’の各インク吐出口(L_n1からL_n4)に対し、その他の吐出口列B’’,C’’,D’’の各インク吐出口は、副走査方向において次のような間隔だけずれた位置に配置されている。吐出口列B’’の各インク吐出口(M_n1からM_n4)は2400dpi、吐出口列D’’の各インク吐出口(S1_n1からS1_n4)は1200dpiだけ副走査方向にずれた位置にそれぞれ配置されている。また、吐出口列C’’の各インク吐出口(S1_n1からS1_n4)は800dpiだけ副走査方向にずれた位置に配置されている。
【0074】
この比較例として挙げた仮想のインクジェット記録ヘッド220では、大インク吐出口列の数が1個、中インク吐出口列の数が1個、小インク吐出口列の数が2個となっている。また、このインクジェット記録ヘッド220では、主走査方向に沿って、大インク吐出口列、中インク吐出口列、小インク吐出口列、小インク吐出口列がこの順で配置されている。
【0075】
一方、本発明の第2の実施形態である図14のインクジェット記録ヘッド200には、4つの吐出口列A、B、C、Dが設けられている。吐出口列A,Dは、いずれも10plのインク滴を吐出する大口径のインク吐出口(大インク吐出口)のみから構成されている。図14において、L1_n1からL1_n4は、吐出口列Aにおける各インク吐出口の番号を、L2_n1からL2_n4は、吐出口列Dにおける各インク吐出口の番号をそれぞれ示している。
【0076】
また、吐出口列Bは、2plのインク滴を吐出する中口径のインク吐出口(中インク吐出口)Mのみから構成されており、各インク吐出口はM_n1からM_n4の番号によって示されている。さらに、吐出口列Cは、0.5plのインク滴を吐出する小口径のインク吐出口(小インク吐出口)Sのみから構成されており、各インク吐出口はS_n1からS_n4の番号によって示されている。
【0077】
吐出口列Aの各インク吐出口(L1_n1からL1_n4)に対し、その他の吐出口列の各インク吐出口は、副走査方向において次のような間隔だけずれた位置に配置されている。すなわち、吐出口列Bの各インク吐出口(M_n1からM_n4)は2400dpi、吐出口列Cの各インク吐出口(S_n1からS_n4)は800dpiだけ副走査方向にずれた位置にそれぞれ配置されている。また、吐出口列Dの各インク吐出口(L2_n1からL2_n4)は1200dpiだけ副走査方向にずれた位置に配置されている。
【0078】
この図14のインクジェット記録ヘッド200では、大インク吐出口列の数が2個、中インク吐出口列の数が1個、小インク吐出口列の数が1個となっている。つまり、大インク吐出口列の数が中インク吐出口列、小インク吐出口列の数よりも多くなっている。また、このインクジェット記録ヘッド200では、主走査方向に沿って、大インク吐出口列、中インク吐出口列、小インク吐出口列、大インク吐出口列がこの順で配置されている。
【0079】
なお、図14に示すインクジェット記録ヘッド200、および、図16に示すインクジェット記録ヘッド220は、いずれも副走査方向(y方向)に延在する吐出口列が、主走査方向に沿って4つ配置されている。各吐出口列には、1インチ当たり600個の密度(600dpi)でn個のインク吐出口が配置されている。図では、便宜上、各吐出口列を構成するインク吐出口の数(n)を4個として示している。
【0080】
また、図14および図16に示したインクジェット記録ヘッド220および200は、第1の実施形態と同様に各インク吐出口からインク滴を吐出するための駆動周波数を15KHzとしている。また、各記録ヘッド220および200の主走査方向への走査速度は、25(inch/sec)とし、主走査方向に600dpi間隔でインク滴を吐出させながら記録を行う。
【0081】
次に、図16の記録ヘッド220と図14の記録ヘッド200を用いて1パス記録を実行した際の、各画素に対応する画像データの量子化レベルとドットパターンとの関係を説明する。なお、図17は記録ヘッド200を用いた場合を、図18は記録ヘッド220を用いた場合をそれぞれ示している。
【0082】
図17および図18に示すように、600dpi×600dpiの解像度を有する各画素は、量子化レベル0〜4で指定される5段階で表現可能である。これは、各画素の形成内に4×4のマトリクス状のエリアを設定し、これらのエリアに体積の異なる3種類のインク滴を着弾させ、大、中、小の3種類のドットからなるドットパターン(b)〜(e)を形成することにより行う。これにより、図17(a)および図18(a)に示すドット無しパターンを含む5種類のドットパターンで、量子化レベル0〜4で指定される5段階を表現することができる。なお、各図中、各種ドット内には、これを形成する各種インク吐出口の符号S,M,Lが記してある。
【0083】
図16の記録ヘッド220を用いる場合、量子化レベル0は、(a)に示すドット無しパターンに対応し、量子化レベル1は、1個の小ドットSを1つのエリアに形成したドットパターン(図18(b)参照)に対応する。量子化レベル2は、1個の中ドットMを1つのエリアに形成したドットパターン(図18(c)参照)に対応する。量子化レベル3は、1個の大ドットL、1個の小ドットSを組み合わせたドットパターン(図18(d)参照)に対応する。量子化レベル4は、1個の大ドットL、1個の中ドットM、2個の小ドットSを組み合わせたドットパターン(図18(e)参照)に対応する。従って、記録ヘッド220を用いて1パス記録を行った場合、600dpi×600dpiに付与されるインク量(体積)は、量子化レベル0では0pl、量子化レベル1では0.5pl、量子化レベル2では2pl、量子化レベル3では10.5plとなる。さらに、量子化レベル4では、13.0plとなる。
【0084】
一方、図14の記録ヘッド200を用いる場合、量子化レベル0〜3は、記録ヘッド220を用いた場合と同様のドットパターンに対応し(図17(a)〜(d)参照)、インクの付与量も同一となる。但し、量子化レベル4は、図17(e)に示すように、2個の大ドットL、1個の中ドットM、1個の小ドットSを組み合わせたドットパターンに対応する。従って、画素領域に付与されるインク量は、量子化レベル4において22.5plとなる。ここで、図18と図17を対比するに、1回の主走査において、各インク吐出口が画素領域に形成できるドット数は1個であるため、量子化レベル4に対応する最大インク付与量は、図18の場合には14.5(pl)、図17の場合には22.5plとなる。
【0085】
図19は、各量子化レベル(1〜4)に対応して600dpi×600dpiの画素領域に付与されるインク量と画像濃度(光学濃度)との関係を、記録ヘッド220を用いた図18の場合と記録ヘッド200を用いた図17の場合について示した図である。
【0086】
図示のように、量子化レベルが1〜3までは、図17、図18のいずれの場合も、同じインク量が画素形成領域(600dpi×600dpi)に付与されるため、画像濃度は同じである。しかし、量子化レベルが4の場合、記録ヘッド220を用いた図18の場合では約0.40の濃度しか得ることができないため、さらに画像濃度を高めるためには、低速記録あるいは複数回の記録走査を行う必要がある。例えば、走査速度を12.5(inch/sec)に低下させるか、あるいは2回の走査を行えば、600dpi×600dpiの画素形成領域内に、図20(e)に示すように、記録ヘッド200を用いた場合と同量のインクを付与することができる。しかし、これでは、記録速度の低下を招くこととなる。しかも、図20(e)に示すドットパターンでは、同一の大インク吐出口Lにより、副走査方向における同一位置に2個のドットが隣接して形成されるため、画素領域内に大きな余白が形成される。この余白は、画像内にスジ状の濃度むらを発生させる要因となっている。
【0087】
一方、記録ヘッド200を用いた図17の場合、1パス記録によって、画像濃度を約0.55まで高めることができ、高速で高濃度の画像を形成することができる。さらに、記録ヘッド200では、全てのインク吐出口が、副走査方向において異なる位置に配置されているため、高濃度画像の形成時において画像領域内の副走査方向の余白部分を少なくすることができる。このため、画素領域内に大きな余白部分が形成されることに起因するスジ状の濃度ムラの発生を抑制することができる。但し、インク滴の大きさによっては、必ずしも副走査方向におけるインク吐出口の位置を異ならせた配置にする必要はなく、同じ位置に配置することも可能である。
【0088】
また、記録ヘッド200は、記録ヘッド220と同数のインク吐出口で構成できるため、記録ヘッドを構成する半導体のサイズが増大することもない。また、画像処理などのデータ処理も従来と同様に行うことができる。これにより、インクジェット記録ヘッドのコスト増大、大型化などを回避することができる。
【0089】
なお、この実施形態で説明したインク吐出口数、インク滴の体積、インク色、量子化レベルと画素パターンとの関係、所定領域を完成させる記録走査回数などは、適宜変更可能である。
【0090】
以上述べたように第2の実施形態によれば、大インク用吐出口が小インク用吐出口よりも多く設けられているので、走査回数の増加や走査速度の低下などを招かずに、高濃度の記録を高速で行うことが可能となる。
【0091】
(変形例)
次に、第2の実施形態の変形例について説明する。図15は、第2の実施形態の変形例におけるインクジェット記録ヘッド210を示している。この記録ヘッド210は、図14の記録ヘッド200に対して、図14の吐出口列Cと吐出口列Dを入れ替えた配置になっている。
【0092】
図15において、L1_n1,L1_n2,L1_n3,L1_n4は吐出口列A’における大インク吐出口Lの番号を、L2_n1,L2_n2,L2_n3,L2_n4は吐出口列C’における大インク吐出口Lの番号をそれぞれ示している。また、M_n1,M_n2,M_n3,M_n4は吐出口列B’における中インク吐出口Mの番号を示している。さらに、S_n1,S_n2,S_n3,S_n4は吐出口列D’における小インク吐出口Sの番号を示している。
【0093】
また、吐出口列A’の各インク吐出口(L1_n1からL1_n4)に対し、その他の吐出口列の各インク吐出口は、副走査方向において次のような間隔だけずれた位置に配置されている。すなわち、吐出口列B’の各インク吐出口(M_n1からM_n4)は2400dpi、吐出口列C’の各インク吐出口(L2_n1からL2_n4)は1200dpiだけ副走査方向にずれた位置にそれぞれ配置されている。また、吐出口列D’の各インク吐出口(S_n1からS_n4)は800dpiだけ副走査方向にずれた位置に配置されている。
【0094】
この図15の記録ヘッド210も、図14のインクジェット記録ヘッド200と同様、大インク吐出口列の数が2個、中インク吐出口列の数が1個、小インク吐出口列の数が1個となっている。なお、記録ヘッド210を用いて1パス記録を行う場合の、各画素に対応する画像データの量子化レベルと記録媒体に形成される画素のドットパターンとの関係は、図17の場合と同じである。 ここで、図14の記録ヘッド200及び図15の記録ヘッド210に傾き(θ)が生じた時のインク吐出口列間での副走査方向におけるインク着弾ズレについて、図11を用いて説明する。以下では、大インク吐出口列A,D(A’、C’)と小インク吐出口列C( D’)に着目した場合のドット着弾ズレについて説明する。
【0095】
図11(a)では、インク吐出口列A、A’の位置であるa−1に対して、インク吐出口列C、C’の位置であるa−2は、+△H1の距離だけ副走査方向にずれている。また、インク吐出口列C、C’の位置であるa−2に対して、インク吐出口列D、D’の位置であるa−3は、+△H2の距離だけ記録媒体を搬送する副走査方向にずれている。一方、図11(b)では、インク吐出口列A、A’の位置であるb−1に対して、インク吐出口列C、C’の位置であるb−2は、−△H1の距離だけ副走査方向にずれている。また、インク吐出口列C、C’の位置であるb−2に対して、インク吐出口列D、D’の位置であるb−3は、−△H2の距離だけ副走査方向にずれている。
【0096】
図14の記録ヘッド200について図11の傾きが生じた時の、小インク吐出口列Cによる小ドットSに対する大インク吐出口列Aによる大ドットL1の副走査方向における着弾位置のズレは、以下のようになる。すなわち、図11(a)のように傾きが+θの場合、小ドットSの位置(a−2)に対して大ドットL1の位置(a−1)は−Y方向に△H1だけずれる。また、図11(b)のように傾きが−θの場合、小ドットSの位置(b−2)に対して大ドットL1の位置(b−3)は+Y方向に△H1だけずれる。このように図11の傾きが生じた時の、小インク吐出口列Cによる小ドットSに対する大インク吐出口列Aによる大ドットの副走査方向における着弾位置のズレ量は、△H1となる。
【0097】
一方、図15に示した変形例の記録ヘッド210について図11の傾きが生じた時の、小インク吐出口列D’による小ドットSに対する大インク吐出口列A’による大ドットL1の副走査方向における着弾位置のズレは、以下のようになる。
【0098】
すなわち、図11(a)のように傾きが+θの場合、小ドットSの位置(a−3)に対して大ドットL1の位置(a−1)は−Y方向に△H1+△H2だけずれる。また、図11(b)の傾きが−θの場合、小ドットSの位置(b−1)に対して大ドットL1の位置(b−3)は+Y方向に△H1+△H2だけずれる。このように図11の傾きが生じた時の、小インク吐出口列D’による小ドットSに対する大インク吐出口列A’による大ドットL1の副走査方向における着弾位置のズレ量は、△H1+△H2となる。
【0099】
以上説明した様に、小インク吐出口列、中インク吐出口列、大インク吐出口列を有する記録ヘッドを用いる場合、吐出口列の数が同じであっても、吐出口列の配置に違いがあると、小ドットと大ドットの着弾ズレ量に差が生じる。図15の記録ヘッド210を採用した場合は、大インク吐出口列A’により形成される大ドット(L1)と小インク吐出口列D’により形成される小ドット(S)の副走査方向における着弾位置のズレ量は△H1+△H2となる。これに対して、図14の記録ヘッド200を採用した場合は、大インク吐出口列Aにより形成される大ドット(L1)と小インク滴の吐出口列Cにより形成される小ドット(S)の副走査方向における着弾位置のズレ量は△H1となる。
【0100】
このように図14の記録ヘッド200を採用した場合は、図15の記録ヘッド210を採用した場合に比べて、着弾ズレ量を△H2だけ低減させることができる。つまり、大インク滴の吐出口列と小インク滴の吐出口列の距離が大である図15のヘッド構成に比べて、大インク滴の吐出口列と小インク滴の吐出口列の距離が小である図14のヘッド構成の方が、着弾ズレによる画像品位の劣化を軽減するのに有利である。図14では、副走査方向(第1の方向)と交差する主走査方向(第2の方向)に沿って、複数の大インク吐出口列(吐出口列A,D)の間に小インク吐出口列(吐出口列C)を配置することで、大インク吐出口列と小インク吐出口列の距離を小さくしている。
【0101】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。
【0102】
第1〜2の実施形態では、単色のインク(シアン色のインク)を吐出するインクジェット記録ヘッドについて説明したが、この第3の実施形態におけるインクジェット記録ヘッドは、異なる色のインク滴を吐出するための複数のインク吐出口を備える。
【0103】
図21は、本発明の第3の本実施形態を説明するためのインクジェット記録ヘッド400におけるインク吐出口の配置を示す図である。ここに示す記録ヘッド400には、6列のインク吐出口列A,B,C,D,E,Fが設けられている。副走査方向(y方向)に延在する吐出口列A,B,C,D,E,Fは、主走査方向に沿って配置されている。各吐出口列には、1インチ当たり600個の密度(600dpi)でn個のインク吐出口が配置されている。図では、便宜上、各吐出口列を構成するインク吐出口の数(n)を4個として示している。
【0104】
図21の記録ヘッドにおける6つの吐出口列のうち、吐出口列A、B、C、Dは、シアン色のインクを吐出する吐出口列であり、吐出口列E、Fは、イエロー色のインクを吐出する吐出口列である。吐出口列A、B、C、Dに関し、その各吐出口の副走査方向における位置は、上記図14に示した記録ヘッドの吐出口列A、B、C、Dと同じである。但し、主走査方向における吐出口列の配置は、図14の場合とは異なっている。すなわち、中口径のインク吐出口Mのみから構成された吐出口列Bと小口径のインク吐出口Sのみから構成された吐出口列Cとの主走査方向の間隔が、図21の記録ヘッドと図14の記録ヘッドとで異なる。図21の記録ヘッドでは、両吐出口列BとCの間に、イエロー色のインクを吐出する吐出口列E,Fが配置されている。吐出口列E,Fは、10plのインク滴を吐出する大口径のインク吐出口L(L1、L2)のみから構成されている。
【0105】
図21の記録ヘッドにおいて、シアンインクを吐出する吐出口列A、B、C、Dと、イエローインクを吐出する吐出口列E,Fとの副走査方向の位置関係は、次のように設定されている。
【0106】
すなわち、吐出口列Aの各インク吐出口(L1_n1からL1_n4)と吐出口列Eの各インク吐出口(L1_n1からL1_n4)とが、副走査方向において同一の位置に配置されている。また、吐出口列Dの各インク吐出口(L2_n1からL2_n4)と吐出口列Fの各インク吐出口(L2_n1からL2_n4)とが、副走査方向において同一の位置に配置されている。
【0107】
図21に示したインクジェット記録ヘッド400は、各インク吐出口からインク滴を吐出するための駆動周波数は15KHzとなっており、主走査方向への走査速度は25(inch/sec)となっている。従って、主走査方向に600dpi間隔でインク滴を吐出させながら記録を行う。
【0108】
図22は、上記記録ヘッド150のイエロー色のインク滴を吐出する吐出口列E,Fを用いて1パス記録を実行した際の、イエロー色の画像データの量子化レベルとドットパターンとの関係を示す図である。
【0109】
図22に示するように、600×600dpiの解像度を有する各画素は、量子化レベル0〜2で指定される3段階で表現される。これは、各画素領域内に設定された4×4のマトリクス内に一種類のインク滴(10pl)で形成されるドットでからなるドットパターン(b)、(c)を形成することにより行う。これにより、画素領域内に全くドットが形成されないドット無しパターン(図22(a)参照)を含む3種類のドットパターンで、量子化レベル0〜2で指定された3段階を表現できる。
【0110】
すなわち、量子化レベル0は、ドット無しパターン(図22(a)参照)に対応し、量子化レベル1は、2plのインク滴で形成される大ドット1個を画素領域内の1つのエリアに形成したパターン(図22(b)参照)に対応する。また、量子化レベル2は、10plのインク滴で形成される大ドット1個を、1つのエリアに形成したパターン(図22(c)参照)に対応する。従って、各階調レベルでの600×600dpiの画素形成に対して付与されるインク量(体積)は、量子化レベル0では0pl、量子化レベル1では10pl、量子化レベル2では20plとなる。1回の主走査では、吐出口列E,Fの各インク吐出口が600×600dpiの各画素領域に対して形成可能なドット数は1個であるため、各画素領域に記録可能な最大のインク量は量子化レベル2に対応した20plとなる。
【0111】
図23は、図21の記録ヘッド400の吐出口列E,Fを用いて、1パス記録を行った際に、各量子化レベル1、2に対応して600dpi×600dpiの画素領域に付与されるイエローのインク量と画像濃度(光学濃度)との関係を示した図である。図示のように、画素領域に付与されるイエローのインク量が20plを上回っても、その画像濃度は、20plのインクが付与されたときの画像濃度より高くならない。つまり、明度の高いイエロー色は、20pl付与された時点で画像濃度が飽和していることがわかる。なお、シアンインクを吐出する吐出口列A〜Dを用いて1パス記録を行った際の、シアン色の画像データの量子化レベルとドットパターンとの関係、およびインク付与量と画像濃度との関係は、第2の実施形態(図19)と同様となっている。
【0112】
この第3の実施形態において、シアン色は、10pl、2pl、0.5plの3種類のインク滴を用いて5段階の量子化レベルに対応する5階調の画像濃度を表現している。これに対し、イエロー色は、1種類のインク滴(10pl)のみを用いて3段階の量子化レベルに対応する3階調の画像濃度を表現している。これは、イエロー色は、シアン色に比べて明度が高いことから、低階調部での粒状感が目立ちにくく、また、画素領域に対して少ないインク付与量で画像濃度が飽和するためである。つまり、1種類のインク滴のみを用いて3階調の画像濃度を表現するようにしても、シアン色に劣らない高品質な画像を記録することができる。
【0113】
図24は、本実施形態の記録ヘッド400を用いて、単位画像領域に対して画像を記録していく様子を示す図である。まず1回目の主走査では、記録ヘッド400を往路方向(x1方向)に走査させて、画像領域(1)に対し記録を行う。この際、記録ヘッド400は、吐出口列D→吐出口列C→吐出口列F→吐出口列E→吐出口列B→吐出口列Aの順番で各々インク吐出口からインク滴を吐出し、往路方向x1方向に画像を記録して行く。その後、記録媒体を全インク吐出口幅に当たる4/600インチ(16/2400インチ)の搬送量で副走査方向に搬送する。次に、2回目の主走査では、画像領域(2)に対して記録ヘッドを走査させて記録を行う。この際、記録ヘッド150は、吐出口列A→吐出口列B→吐出口列E→吐出口列F→吐出口列C→吐出口列Dの順番で各インク吐出口からインク滴を吐出して、1回目の主走査方向と反対方向の復路方向(x2方向)に記録を行い、画像を完成させる。その後、1回目の主走査終了時と同様に記録媒体を全インク吐出口幅に当たる4/600インチ(16/2400インチ)の搬送量で副走査方向に搬送する。3回目以降の主走査による記録動作は、1回目、2回目の主走査と同様に行う。
【0114】
従って本実施形態では、シアン色とイエロー色が記録される順番は、往路方向では、吐出口列DおよびCから吐出されるシアン色、吐出口列FおよびEから吐出されるイエロー色、吐出口列BおよびAから吐出されるシアン色の順番となる。また、復路方向では、吐出口列AおよびBから吐出されるシアン色、吐出口列EおよびFから吐出されるイエロー色、吐出口列CおよびDから吐出されるシアン色の順番で記録される。
【0115】
以上のように、本実施形態の記録ヘッド400によれば、往路方向でも復路方向でもシアン色→イエロー色→シアン色の順番で記録される。このため、シアン色とイエロー色とが同一エリアに重ねて記録される場合、各色のドットが重なる順番は往路方向と復路方向とで同一となる。つまり、往路方向と復路方向のいずれにおいても、シアン色のドットの上にイエロー色のドットが重ねられることとなり、形成されるドットの色味は、走査方向に関係なく同一となる。これに対し、2色のドットを重ねて記録する場合、各ドットの重なる順番が異なると、形成されたドットの色味に差が生じる。本実施形態では、このような問題を生じさせずに済む。
【0116】
このように第3の実施形態によれば、高速記録を実現することが可能な往復記録方式を実施しても色ムラの発生を抑制できるという効果を奏する。また、シアンインクについては、大インク吐出口列の数が2個、中インク吐出口列の数が1、小インク吐出口列の数が1個となっており、大インク吐出口列の数が最も多い。従って、他の実施形態と同様に、1パス記録を実施した場合にも、高濃度の画像を記録することが可能となり、階調性に優れた高品質な画像を記録することができる。更に、大インク吐出口列の間に小インク吐出口列及び中インク吐出口列を配置した構成になっている。従って、他の実施形態と同様に、記録ヘッドの製造パラツキや、記録ヘッドを記録装置に取り付けたときに傾きが生じたとしても、走査方向に複数配列されたインク吐出列間での副走査方向へにおけるドット着弾ズレを最小限に抑えることができる。
【0117】
なお、この第3の実施形態では、シアン色のインク吐出に関し、上記第2の実施形態における画像データの量子化レベルとドットパターンとの関係、およびインク付与量と画像濃度との関係を採用するものとした。しかし特に高速記録が要求されるようなモード、例えば普通紙等への記録を行うモードでは、シアン色についても図22、図23に示すような量子化レベルとドットパターンとを採用することで画像データ量を削減し、より高速に記録を行うようにすることもできる。
【0118】
(その他の実施形態)
上記第1〜3の実施形態のヘッドは、同一組成のインクを吐出する大インク吐出口の数が小インク吐出口の数よりも多く、且つ大インク吐出口列の数が小インク吐出口列の数よりも多い構成であったが、本発明はこの構成に限られるものではない。大吐出口と小吐出口から吐出されるインクは同一組成のインクでなくとも、同色あるいは同系色のインクであればよい。すなわち、本発明は、組成が異なるが同色のインク、あるいは顔料、染料等の色材の含有濃度が異なる同系色のインク(例えば、濃淡シアンインク)を、大吐出口と小吐出口から吐出する構成にしてもよい。勿論、この構成の場合であっても、小吐出口から吐出される小インクと大吐出口から吐出される大インクは、低階調部から高階調部に至る所定の色相を表現するために単独であるいは組合せて用いられる。
【0119】
更に、上述した実施形態で説明した記録ヘッドを用いて記録を行うインクジェット記録装置も本発明の一形態に該当する。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明の実施形態に適用されるインクジェット記録装置の概略説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における記録ヘッドの構成を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の変形例における記録ヘッドの構成図である。
【図5】従来の記録ヘッドの構成を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態における記録ヘッドを用いて1パス記録を実行する際の、各画素に対応する画像データの量子化レベルとドットパターンとの関係を示す図である。
【図7】図5の記録ヘッドを用いて1パス記録を実行する際の、各画素に対応する画像データの量子化レベルとドットパターンとの関係を示す図である。
【図8】図3の記録ヘッドあるいは図5の記録ヘッドを用いて記録動作を行う様子を示した図である。
【図9】各量子化レベルに対応したインク量と画像濃度との関係を、図5の記録ヘッドを用いた場合と、第1の実施形態の記録ヘッドを用いた場合について示した図である。
【図10】図5の記録ヘッドを用いて画素領域に画像濃度が飽和するまでインクを付与する場合の、画像データの量子化レベルとドットパターンとの関係を示す図である。
【図11】図3の記録ヘッドと図4の記録ヘッドに傾きが生じたときの副走査方向における着弾ズレを示す図である。
【図12】図3の記録ヘッド100が図11のように傾いた状態で形成されるドットパターンの、副走査方向の着弾ズレを示す図である。
【図13】図4の記録ヘッド100が図11のように傾いた状態で形成されるドットパターンの、副走査方向の着弾ズレを示す図である。
【図14】本発明の第2の実施形態における記録ヘッドの構成を示す図である。
【図15】本発明の第2の実施形態の変形例における記録ヘッドの構成図である。
【図16】本発明の第2の実施形態の比較例として示した仮想の記録ヘッドの構成図である。
【図17】図14の記録ヘッドを用いて1パス記録を実行する際の、各画素に対応する画像データの量子化レベルとドットパターンとの関係を示す図である。
【図18】図16に示す記録ヘッドを用いて1パス記録を実行する際の、各画素に対応する画像データの量子化レベルとドットパターンとの関係を示す図である。
【図19】量子化レベルに対応したインク量と画像濃度との関係を、図16の記録ヘッドを用いた場合と図14の記録ヘッドを用いた場合について示した図である。
【図20】図16に示す記録ヘッドを用いて低速記録または2パス記録を実行する際の、各画素に対応する画像データの量子化レベルとドットパターンとの関係を示す図である。
【図21】本発明の第3の実施形態における記録ヘッドの構成を示す図である。
【図22】本発明の第3の実施形態における記録ヘッドのイエローインクを吐出する吐出口列を用いて1パス記録を実行した際の、イエロー色の画像データの量子化レベルとドットパターンとの関係を示す図である。
【図23】図21の記録ヘッドを用いて記録を行う際の、各量子化レベル1、2に対応したイエローのインク量と画像濃度との関係を示した図である。
【図24】図21の記録ヘッドを用いて記録動作を行う様子を示した図である。
【符号の説明】
【0121】
101 インクカートリッジ
100、110、120、200、210、220、400 記録ヘッド
106 キャリッジ
2000 中央制御部(CPU)
2001 ROM
2002 RAM
2004 画像信号処理部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同色あるいは同系色で体積の異なるインクを吐出するための吐出口を有するインクジェット記録ヘッドであって、
第1の体積の前記インクを吐出するための吐出口が第1の方向に沿って複数配列されてなる第1の吐出口列と、
前記第1の体積よりも小さな第2の体積の前記インクを吐出するための吐出口が前記第1の方向に沿って複数配列されてなる第2の吐出口列とを有し、
前記第1の吐出口の数は前記第2の吐出口の数よりも多く、
前記第1の吐出口列の数は前記第2の吐出口列の数よりも多いことを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【請求項2】
同色あるいは同系色で体積の異なるインクを吐出するための吐出口を有するインクジェット記録ヘッドであって、
第1の体積の前記インクを吐出するための吐出口が第1の方向に沿って複数配列されてなる第1の吐出口列と、
前記第1の体積よりも小さな第2の体積の前記インクを吐出するための吐出口が前記第1の方向に沿って複数配列されてなる第2の吐出口列とを有し、
前記第1の吐出口の数は前記第2の吐出口の数よりも多く、
前記第1の吐出口列の数は前記第2の吐出口列の数よりも多く、
前記第1の方向と交差する第2の方向に沿って、複数の前記第1の吐出口列の間に前記第2の吐出口列が配置されていることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【請求項3】
前記第1の吐出口列を構成する前記第1の吐出口の前記第1の方向に沿った配列間隔は、前記第2の吐出口列を構成する前記第2の吐出口の前記第1の方向に沿った配列間隔と同じであることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項4】
前記第2の体積よりも小さな第3の体積のインクを吐出するための吐出口が前記第1の方向に沿って複数配列されてなる第3の吐出口列を更に備え、
前記第3の吐出口列の数は前記第1の吐出口列の数よりも少なく、
前記第2の方向に沿って、複数の前記第1の吐出口列の間に前記第3の吐出口列が配置されていることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項5】
前記第2の吐出口列の数は前記第3の吐出口列の数と同じであることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項6】
前記体積の異なるインクを吐出するための吐出口は異なる径を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項7】
同色あるいは同系色で体積の異なるインクを吐出するための吐出口を有するインクジェット記録ヘッドであって、
第1の体積の前記インクを吐出するための吐出口が第1の方向に沿って複数配列されてなる第1の吐出口列と、
前記第1の体積よりも小さな第2の体積の前記インクを吐出するための吐出口が前記第1の方向に沿って複数配列されてなる第2の吐出口列と、
前記第2の体積よりも小さな第3の体積の前記インクを吐出するための吐出口が前記第1の方向に沿って複数配列されてなる第3の吐出口列とを有し、
前記第1の吐出口の数は前記第2の吐出口の数よりも多く、
前記第1の吐出口の数は前記第3の吐出口の数よりも多く、
前記第1の方向と交差する第2の方向に沿って、前記第1の吐出口列、前記第2の吐出口列、前記第3の吐出口列、前記第1の吐出口列がこの順で配置されていることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【請求項8】
同色あるいは同系色で体積の異なるインクを吐出するための径の異なる吐出口を有するインクジェット記録ヘッドであって、
第1の径を有する吐出口が第1の方向に沿って複数配列されてなる第1の吐出口列と、
前記第1の径より小さな第2の径を有する吐出口が前記第1の方向に沿って複数配列されてなる第2の吐出口列とを有し、
前記第2の吐出口列の数は前記第1の吐出口列の数よりも少なく、
前記第1の方向と交差する第2の方向に沿って、複数の前記第1の吐出口列の間に前記第2の吐出口列が配置されていることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【請求項9】
同色あるいは同系色で体積の異なるインクを吐出するための径の異なる吐出口を有するインクジェット記録ヘッドであって、
第1の径を有する吐出口が第1の方向に沿って複数配列されてなる第1の吐出口列と、
前記第1の径より小さな第2の径を有する吐出口が前記第1の方向に沿って複数配列されてなる第2の吐出口列と、
前記第2の径より小さな第3の径を有する吐出口が前記第1の方向に沿って複数配列されてなる第3の吐出口列とを有し、
前記第1の方向と交差する第2の方向に沿って、前記第1の吐出口列、前記第2の吐出口列、前記第3の吐出口列、前記第1の吐出口列がこの順で配置されていることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【請求項10】
前記第1の吐出口列同士の吐出口は互いに前記第1の方向の異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至9に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドを用いて記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置。
【請求項1】
同色あるいは同系色で体積の異なるインクを吐出するための吐出口を有するインクジェット記録ヘッドであって、
第1の体積の前記インクを吐出するための吐出口が第1の方向に沿って複数配列されてなる第1の吐出口列と、
前記第1の体積よりも小さな第2の体積の前記インクを吐出するための吐出口が前記第1の方向に沿って複数配列されてなる第2の吐出口列とを有し、
前記第1の吐出口の数は前記第2の吐出口の数よりも多く、
前記第1の吐出口列の数は前記第2の吐出口列の数よりも多いことを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【請求項2】
同色あるいは同系色で体積の異なるインクを吐出するための吐出口を有するインクジェット記録ヘッドであって、
第1の体積の前記インクを吐出するための吐出口が第1の方向に沿って複数配列されてなる第1の吐出口列と、
前記第1の体積よりも小さな第2の体積の前記インクを吐出するための吐出口が前記第1の方向に沿って複数配列されてなる第2の吐出口列とを有し、
前記第1の吐出口の数は前記第2の吐出口の数よりも多く、
前記第1の吐出口列の数は前記第2の吐出口列の数よりも多く、
前記第1の方向と交差する第2の方向に沿って、複数の前記第1の吐出口列の間に前記第2の吐出口列が配置されていることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【請求項3】
前記第1の吐出口列を構成する前記第1の吐出口の前記第1の方向に沿った配列間隔は、前記第2の吐出口列を構成する前記第2の吐出口の前記第1の方向に沿った配列間隔と同じであることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項4】
前記第2の体積よりも小さな第3の体積のインクを吐出するための吐出口が前記第1の方向に沿って複数配列されてなる第3の吐出口列を更に備え、
前記第3の吐出口列の数は前記第1の吐出口列の数よりも少なく、
前記第2の方向に沿って、複数の前記第1の吐出口列の間に前記第3の吐出口列が配置されていることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項5】
前記第2の吐出口列の数は前記第3の吐出口列の数と同じであることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項6】
前記体積の異なるインクを吐出するための吐出口は異なる径を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項7】
同色あるいは同系色で体積の異なるインクを吐出するための吐出口を有するインクジェット記録ヘッドであって、
第1の体積の前記インクを吐出するための吐出口が第1の方向に沿って複数配列されてなる第1の吐出口列と、
前記第1の体積よりも小さな第2の体積の前記インクを吐出するための吐出口が前記第1の方向に沿って複数配列されてなる第2の吐出口列と、
前記第2の体積よりも小さな第3の体積の前記インクを吐出するための吐出口が前記第1の方向に沿って複数配列されてなる第3の吐出口列とを有し、
前記第1の吐出口の数は前記第2の吐出口の数よりも多く、
前記第1の吐出口の数は前記第3の吐出口の数よりも多く、
前記第1の方向と交差する第2の方向に沿って、前記第1の吐出口列、前記第2の吐出口列、前記第3の吐出口列、前記第1の吐出口列がこの順で配置されていることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【請求項8】
同色あるいは同系色で体積の異なるインクを吐出するための径の異なる吐出口を有するインクジェット記録ヘッドであって、
第1の径を有する吐出口が第1の方向に沿って複数配列されてなる第1の吐出口列と、
前記第1の径より小さな第2の径を有する吐出口が前記第1の方向に沿って複数配列されてなる第2の吐出口列とを有し、
前記第2の吐出口列の数は前記第1の吐出口列の数よりも少なく、
前記第1の方向と交差する第2の方向に沿って、複数の前記第1の吐出口列の間に前記第2の吐出口列が配置されていることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【請求項9】
同色あるいは同系色で体積の異なるインクを吐出するための径の異なる吐出口を有するインクジェット記録ヘッドであって、
第1の径を有する吐出口が第1の方向に沿って複数配列されてなる第1の吐出口列と、
前記第1の径より小さな第2の径を有する吐出口が前記第1の方向に沿って複数配列されてなる第2の吐出口列と、
前記第2の径より小さな第3の径を有する吐出口が前記第1の方向に沿って複数配列されてなる第3の吐出口列とを有し、
前記第1の方向と交差する第2の方向に沿って、前記第1の吐出口列、前記第2の吐出口列、前記第3の吐出口列、前記第1の吐出口列がこの順で配置されていることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【請求項10】
前記第1の吐出口列同士の吐出口は互いに前記第1の方向の異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至9に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドを用いて記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2008−49492(P2008−49492A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225514(P2006−225514)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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