説明

インクジェット記録媒体

インクジェット記録媒体及びインクジェット記録媒体形成用塗膜組成物。本発明の一態様によれば、紙基材上にインクジェット受容塗膜を備えたインクジェット記録媒体が開示される。インクジェット受容塗膜は、インクジェット記録媒体が、特に顔料インクを用いた高速インクジェットプリンタにより印刷される際に、改良されたインクジェット印刷特性を発揮するような顔料及びバインダの相乗的な組み合わせを含む。本発明の他の態様ににおいては、インクジェット記録媒体は、インクジェット印刷の画質をさらに向上させる多価金属塩のトップコートをさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年8月12日提出の米国暫定的出願第61/233,313号に記載された全ての内容の利益を請求する。
【0002】
本発明は、インクジェット記録媒体及びインクジェット記録媒体形成用塗膜組成物に関するものである。より具体的には、ここに開示されたインクジェット記録媒体は、高速インクジェット印刷のような高速多色印刷に特に有用である。
【背景技術】
【0003】
従来、商業的印刷機により印刷されたカタログ、パンフレット及びダイレクトメールはオフセット印刷を用いている。しかしながら、インクジェット技術の進歩は商業的印刷所に浸透してきている。インクジェット技術は、応答速度を向上し、コストを低減し、製品要求を増加するオフセット印刷に代えて、高品質を提供する。高品質で可変的な画像及びテキストの印刷に加えて、これらのプリンタには、高速で大量の印刷を可能とするロール供給紙移送システムが組み込まれている。インクジェット技術は、地元紙、新聞、少量印刷、教科書及びトランザクショナルプリンティングワールドワイドのオンデマンド制作に現在も用いられている。
【0004】
連続インクジェットシステムは、大量な商業的用途のデジタル印刷において、オフセットクラス品質、生産性、信頼性及びコストに十分なメリットが得られるように開発されている。これらのシステムによれば、連続インクジェット印刷をトランザクショナルプリンタ、セカンダリーインプリンティング及び大量な商業的用途のコアベースを超えて拡張することができる。KodakのSTREAMインクジェット技術はこのようなシステムの一例である。
【0005】
本発明のある態様においては、商業的印刷用途に用いられる高速インクジェット装置を用いて印刷される際に、早い乾燥時間、高光沢及び優れた画質を提供する記録媒体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願第2009/0131570号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の名称がPaper and Coating Medium for Multifunction Printingである特許文献1(Schliesmanらによる)は、オフセット、インクジェット及びレーザー印刷と互換するインクジェット記録媒体を開示している。この媒体用の組成には、粒子の少なくとも96重量%が粒径2ミクロン未満である粒径分布を有するアニオン性主顔料と、平均粒径3ミクロン以下の少なくとも1種類の粗粒を含まないカチオン性副顔料と、乾燥顔料に対して17重量%までの親水性スチレン/ブタジエンラテックスと、共同バインダとが含まれる。この組成は多くの市販のインクジェットプリンタで良好に作用するが、KodakのSTREAMプリンタでは十分に実施できない。特許文献1の内容は参照に含まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願はインクジェット記録媒体及びインクジェット記録媒体形成用塗膜組成物を記載する。本発明の一態様によれば、紙基材上にインクジェット受容塗膜を備えたインクジェット記録媒体が開示される。インクジェット受容塗膜は、インクジェット記録媒体が、特に顔料インクを用いた高速インクジェットプリンタにより印刷される際に、改良されたインクジェット印刷特性を発揮するような顔料及びバインダの相乗的な組み合わせを含む。本発明の他の態様ににおいては、インクジェット記録媒体は、インクジェット印刷の画質をさらに向上させる多価金属塩のトップコートをさらに備える。
【0009】
ある実施形態においては、紙塗膜には、主顔料と副顔料との組み合わせが含まれる。主顔料は、少なくとも粒子の96重量%は粒径2ミクロン未満である粒径分布を有するアニオン性顔料を含む。副顔料は、平均粒径3ミクロン以下の粗粒を含まないカチオン性顔料である。塗膜には、バインダ及び任意に共同バインダも含まれる。
【0010】
アラゴナイトは、一般に、粒子形状及び粒径分布が他の炭酸カルシウムとは異なる、有用な沈殿炭酸カルシウムである。これは、主顔料として特に有用である。アラゴナイトは、針状構造を有し、主顔料として特に好適な狭い粒径分布を有している。理論により拘束されるのは望まないが、この構造により粒子が顔料をきつく包み込むのを防ぐと考えられ、異なる印刷技術から良好にインクを吸収する多孔性を提供する。アラゴナイトの使用は、いずれかの印刷工程で良好な性能を発揮する制御された多孔性を備えた表面を処理紙上に形成する。
【0011】
本発明の他の実施形態は、上記塗膜が塗工された紙基材を含む塗工シートに関するものである。塗工シートは、多くのタイプのインクに対して高い吸収性を有する。これは、インクジェットプリンタのいくつかの経路からインクを素早く吸収する。
【0012】
本発明の塗膜及び塗工紙は、顔料インクジェットインクに対して特に有用である。副カチオン性顔料の限定された使用は、孔を開口し、塗膜の多孔性を向上させる、カチオン性粒子とアニオン性バインダ及び主顔料との間の相互作用を許容する。インクを3層以上に塗工する場合には、顔料インクを用いたとしても、媒体は塗膜によって均一に吸収される。
【0013】
インクジェット記録媒体を作製する塗膜は、一般に少なくとも2種類の顔料、主顔料及び副顔料を含む。主顔料は狭い粒径分布を有し、沈殿されたアニオン性顔料であってもよい。副顔料はカチオン性顔料であってもよい。顔料は一般に無機顔料である。さらに、塗膜はバインダ及び共同バインダを含む。顔料は、一般に塗膜組成の乾燥重量の大部分を構成している。他に断らない限り、成分材料の量は総顔料100重量部に対する成分部で表現される。
【0014】
塗膜の主成分は、粒子の96%が直径2ミクロン未満である狭い粒径分布を有するアニオン性顔料であってもよい。特に、粒子の少なくとも80重量%は1ミクロン未満にすべきであり、0.1〜1ミクロンの範囲内にあるべきである。他の実施形態においては、粒子の少なくとも85%が1ミクロン未満であり、0.1〜1.0ミクロンの範囲内にある分布を有する。他の実施形態においては、粒子の98%が直径2ミクロン未満である。さらなる他の実施形態は、粒子の約98%が0.1〜1.0ミクロンの範囲内にある炭酸カルシウムを用いる。ある実施形態においては、主顔料は、総顔料の約65〜85重量部、特に約70〜80重量部である。
【0015】
炭酸カルシウムは、アラゴナイト、カルサイトまたはこれらの混合物を含むいずれの形態の主顔料として有用である。炭酸カルシウムは、一般に塗膜顔料の乾燥重量の65〜85部に構成されている。ある実施形態においては、炭酸カルシウムは顔料重量の約70〜80部である。アラゴナイトは特に有用な炭酸カルシウムである。アラゴナイトを主顔料として用いる利点は、塗膜の多孔質構造が光沢仕上げのカレンダー処理に耐えられることである。他の形態の炭酸カルシウムが塗膜内に用いられる場合、表面孔が小さくなり、良好な光沢に達する前に、吸収性が損なわれる。特に有用なアラゴナイトは、Specialty Minerals OPACARB A40(ペンシルバニア州BethlehemのSpecialty Mineral社製)である。A40は、粒子の99%が直径約0.1〜1.1ミクロンの粒径分布を有している。
【0016】
主顔料としては、OMYA CoverCarb85 重質カルサイト炭酸カルシウム(スイス連邦共和国OftringenのOMYA AG社製)のような粒径分布が狭い代用炭酸カルシウムが挙げられる。これは、紙光沢を損なうことなくインク吸収性が良好な多孔質構造を提供する。この炭酸カルシウムは、ある実施形態においては、粒子の99%が直径2ミクロン未満の粒径分布を有している。
【0017】
副顔料は一般にカチオン性顔料である。これは、完全に完成した際に全体がアニオン性となる塗膜に添加される。アニオン性塗膜とカチオン性顔料との間の引力は、塗膜中に表面孔を開口させ、多孔性及びインク吸収率を増加させると考えられる。インク乾燥時間も減少する。また、イオン性相互作用は非常に小さいスケールであるため、改善された多孔性は塗膜表面上で均一である。
【0018】
副顔料の粒径分布は、平均粒径3ミクロン未満であり、一般に粗粒を含んでいない。粗粒を含んでいないとは、325メッシュスクリーン上に粒子がほぼ無いことを意味する。いくつかの実施形態においては、副顔料のほぼ全ての粒子は1ミクロン未満である。副顔料の量は、一般に総顔料の100重量部に対して20重量部未満である。過剰なカチオン性成分の使用は、塗膜の性質を変化し得る望ましくない相互作用や化学反応を引き起こす。副顔料の量は、総顔料100部に対してカチオン性顔料5部超であってもよい。副顔料の量は、約7〜13部、特に約10〜12部であってもよい。副顔料の例示としては、炭酸塩、珪酸塩、シリカ、二酸化チタン、酸化アルミニウム及び三水和アルミニウムが含まれる。特に有用な副顔料には、カチオン性OMYAJET B及びC顔料(スイス連邦共和国OftringenのOMYA AG社製)が含まれる。
【0019】
補助顔料は、任意であり、光沢、白さまたは他の塗膜特性を向上するために必要な組成に用いられるアニオン性顔料を含んでもよい。乾燥塗工顔料30重量部まではアニオン性補助顔料であってもよい。顔料25部まで、特に20部未満は粗粒炭酸カルシウム、他の炭酸塩、プラスチック顔料、TiO、またはこれらの混合物であってもよい。粗粒炭酸カルシウムの例示としては、Carbital 35 炭酸カルシウム(ジョージア州RoswellのImerys社製)が挙げられる。他の補助顔料としては、Itochu Chemical America社(ニューヨーク州White Plains)から入手可能なアニオン性二酸化チタンが挙げられる。中空球は紙光沢に特に有用なプラスチック顔料である。中空球顔料の例示としては、ROPAQUE 1353及びROPAQUE AF-1055(ペンシルバニア州PhiladelphiaのRohm & Haas社製)が挙げられる。高光沢紙は粒径の小さい微細顔料を用いた場合に得られる。補助顔料の相対量は所望の白さ及び光沢レベルに依存して変化する。
【0020】
主バインダは、接着のために塗膜に添加される。主バインダは、アニオン性であってもよく、ある実施形態においては、スチレン/ブタジエンラテックス(SBRラテックス)である。ラテックス共同バインダは、アクリロニトリル繰り返し単位の20重量%まで任意に含まれる。ある実施形態においては、SBRラテックスは、カルボキシル化スチレンブタジエン共重合体ラテックス混合物であってもよく、アクリロニトリルを含んでもよい。更新水性重合体を用いてもよい。有用な重合体の例示としては、Genflo 5915 SB Latex polymer、Genflo 5086 SB Latex polymer、Gencryl PT 9525 latex polymer、及びGencryl 9750 ACN latex polymers(全てオハイオ州AkronのRohmNova社から入手可)が挙げられる。さらなる他の実施形態においては、主バインダは、共同バインダとしてのデンプンの使用に関する後述のようなデンプンであってもよい。ある実施形態においては、デンプンは塗膜組成物における単なるバインダである。主バインダの総量は、一般に総顔料100部に対して約2〜10部、特に約3〜8部及びある場合には約3.5〜5部である。
【0021】
塗膜は、主バインダに加えて用いられる共同バインダを含んでもよい。有用な共同バインダの例示としては、ポリビニルアルコール及びタンパク質バインダが挙げられる。共同バインダを存在させる場合、共同バインダの量は、一般に乾燥顔料100部に対して約1〜4部、特に乾燥顔料100部に対して約1.5〜3部で用いられる。いくつかの実施形態に有用な他の共同バインダはデンプンである。カチオン性デンプン及びアニオン性デンプンの両者を共同バインダとして用いてもよい。ADM Clineo 716デンプンはエチル化コーンスターチ(アイオワ州ClintonのArcher Daniels Midland社製)である。Penford PG260は使用可能な他のデンプン共同バインダの一例である。カチオン性デンプンを用いた場合、一般に塗膜の全体的なアニオン性が維持されるように使用量が限定される。バインダレベルは、注意深く制御されるべきである。使用バインダが少なすぎる場合には、塗膜構造は物理的整合性を欠くこととなり、一方、使用バインダが多すぎる場合には、塗膜の多孔性が低減され、インクの乾燥時間が長くなる。
【0022】
ある実施形態においては、主バインダ及び共同バインダを2.5:1未満、特に2.3:1未満、ある場合には2:1未満の比率(主バインダ重量:共同バインダ重量)とする。これらの比率は、ラテックス重合体主バインダをデンプン共同バインダと組み合わせて含む組成に特に好適である。
【0023】
いくつかの実施形態においては、塗膜は表面孔構造に著しく干渉する添加物を含まない構成とする。デンプンはコスト的観点及び表面平滑性の改善能から好適であるが、向上された乾燥時間性能はデンプンを含有しない塗膜でも観測される。デンプンは表面空隙を満たし、表面孔を消し去る傾向もある。他の実施形態においては、塗膜はデンプンを含まない構成としてもよい。さらなる他の実施形態においては、塗膜は二酸化チタンを含まない構成としてもよい。
【0024】
塗膜の特性を変化させるために、他の任意の添加剤を用いてもよい。Clariant T26光学ツヤ出し剤(イリノイ州McHenryのClariant社製)のようなツヤ出し剤を用いることもできる。不溶化剤または架橋剤を用いてもよい。特に有用な架橋剤としては、Sequarez 755(オハイオ州AkronのRohmNova社製)が挙げられる。ブレードコーターにより塗膜を塗工する場合には、引きずりを低減するために、潤滑剤を任意に加える。
【0025】
この塗膜作製に従来の混合技術を用いてもよい。デンプンを用いる場合には、一般にデンプンクッカーを用いて塗膜調製前にデンプンを加熱する。一実施形態においては、デンプンを固体分約35%に低減させてもよい。沈殿を生じさせないために、主顔料、副顔料及び補助顔料を含む顔料の全てを個々に数分間混合してもよい。研究室においては、パドルミキサーを用いるドリルプレスミキサー上で顔料を混合してもよい。主バインダをミキサーに加え、1〜2分後に共同バインダを追加する。デンプンを用いる場合には、一般的に約190°Fに加熱しつつクッカーからミキサーにデンプンを加えてもよい。最終塗膜は水中混合成分の分散体により作製される。分散体の固体分は一般に約55〜68重量%である。特に固体分は分散体の約58〜62重量%にしてもよい。
【0026】
さらなる他の実施形態は、塗膜が少なくとも片面上に塗工された紙基材を備える改良印刷紙に関するものである。塗工方法または装置は、いずれのものも用いられ、特に限定されないが、例示としては、ロールコーター、ジェットコーター、ブレードコーターまたはロッドコーターが挙げられる。塗工重量は、一般にサイズプレス、プレコートまたは非サイズベース紙の片面3300ftにつき約2〜10ポンド、特に約5〜8ポンドである。一般に、塗工紙は、紙表面3300ftにつき約30〜250lbの範囲である。塗工紙は、所望の光沢となるように任意に仕上げられる。
【0027】
基材またはベースシートは従来のベースシートを用いてもよい。有用なベースシートの例示としては、New Page社(ウィスコンシン州Wisconsin Rapids)製のNew Page 60 lb. Web Offset base paper, Orion及びNew Page 105 lb. Stain Return Card Base Stockが挙げられる。
【0028】
インクジェット記録媒体は、多価金属塩を含むトップコートを備えてもよい。本発明の一態様においては、多価金属は二価または三価カチオンである。特に多価金属塩はMg+2、Ca+2、Ba+2、Zn+2、及びAl+3から選択されたカチオンと好適なカウンターイオンとの組み合わせであってもよい。Ca+2及びMg+2のような二価カチオンは特に有用である。カチオンの組み合わせも用いることができる。
【0029】
トップコートに用いられる塩の例示としては、(限定されないが)塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化バリウム、硝酸バリウム、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、塩化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、及び、硝酸アルミニウムが用いられる。同様な塩は当業者により認識されるであろう。特に有用な塩としては、CaCl、MgCl、MgSO、Ca(NO、Mg(NO、及び、これらの水和物が含まれる。これらの塩の組み合わせも用いられる。トップコートは、トップコートに要求される特性を提供するために必要な様々な添加物を含有してもよい。例えば、トップコート組成は流動性改質剤を含んでもよい。トップコートの塗工重量は、片面約0.15〜2.5g、特に約0.5〜2gである。
【0030】
完成された塗工紙は印刷に有用である。画像を作製するためにインクを塗膜に塗工する。塗工後、インクの媒質が塗膜を通過し、そこに吸収される。インクを多層に塗工した場合でさえも、塗膜孔の数及び均一さが平坦性及びインク吸収速度に影響を及ぼす。この塗工紙は、多機能印刷に好適である。塗工紙媒体上の画像は、インクジェットプリンタの染料または顔料インク、レーザープリンタのトナー、及び、オフセットまたはグラビアまたはフレキソ印刷のインクの組み合わせから作製される。
【0031】
以下の非限定実施例は本発明の具体的な態様を示す。
【0032】
微細炭酸カルシウム(A-40アラゴナイト、SMI社)、プラスチック顔料(Rhopaque 1353、Omnova社)、粗炭酸カルシウム(Covercarb-35、Omya社)、カチオン性炭酸カルシウム(Omyajet-C、OMYA社)、デンプン(PG 260、Penford社)、スチレン−ブタジエンラテックス(Gencryl PT 9525、Omnova社)及び架橋剤(Sequarez 755、Omnova社)を含む組成は、Kodak 5300プリンタで印刷された際に優れた乾燥時間及び画質を提供する。このプリンタは、Kodak高速STREAMプリンタで観測された性能をシュミレートする。その後の塗工工程においてトップコートとして多価金属塩を添加することにより画質をさらに向上させることができる。
【0033】
以下の組成は、6.5lbs(3,300ftにつき)でブレードコーターによってケンタッキー州WickliffeのNew Page社製の60#基材紙上に塗工された。この実施例に用いられた基材紙は、一般に針葉樹繊維及び広葉樹繊維の混合物を含んでいる。針葉樹繊維は一般に約0〜25%であり、広葉樹繊維は約100〜75%である。特に有用な基材紙によれば、針葉樹繊維及び広葉樹繊維はそれぞれ15〜85%の比率である。基材紙は、一般に約40〜50lb/tonのサイズプレスデンプン、特に約45lb/tonのサイズプレスデンプンを含んでいる。
【0034】
インクジェット受容塗膜を、3nips/sideを用いて1200PLI/100°Fでカレンダー処理した。標準Kodak顔料インクを含むKodak 5300プリンタで上記紙上に図票を印刷した。図票は、Dmaxブラック、マゼンタ、シアン、イエロー、レッド、グリーン及びブルーパッチから構成されていた。QEA社製のパーソナルIAS画像分析システムを用いて各パッチのモットルを測定した。モットルは、低空間周波数で生じる濃度不均一さ(いわゆる粗いスケールでのノイズ)である。モットルの単位は、ソフトウエアで特定された初期状態の密度標準及びカラーフィルターを用いた反射率である。低モットル値は良好な性能を示している。下記のモットルの結果は、ブラック、マゼンタ、シアン、イエロー、レッド、グリーン及びブルーパッチのもっとの平均値である。本発明の一態様においては、モットル値は2.0未満であり、特に好ましくは1.5未満、ある場合には1.0未満である。
【0035】
比較例も、Kodak 5300プリンタを用いて印刷し、試験試料として同様に評価した。高品質ウルトラマットテキストを用いて対照試料を調製した。高品質ウルトラマットテキストは、クレイ、炭酸カルシウム及びラテックスバインダを含む塗液で両面を塗工された塗工紙である。名目重量80lbの塗工シート用の62lbのベースシート上における各面の塗工重量は、一般に約8〜9lbs/reamである。
【0036】
表1の結果は、本発明の実施例が比較例に比べて改善されたモットルを発揮することを示している。モットルは、完成された紙をCaClの5%溶液でトップコートすることによりさらに向上される。また、CaClでトップコートされた本発明の実施例は、CaClでトップコートされた比較例よりも優れた性能を有している。トップコートに用いられた二価金属は特に限定されるものではない。使用可能な他の二価塩の例示としては、塩化マグネシウム及び水酸化カルシウムのようなカルシウムまたはマグネシウムの塩が用いられる。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、
インクジェット受容塗膜とを備え、
前記インクジェット受容塗膜は、粒径2ミクロン未満の粒子が少なくとも96重量%である粒径分布を有する主顔料と、平均粒径3ミクロン以下である副顔料とを有し、総顔料100部に対するバインダが約2〜8重量部であることを特徴とするインクジェット記録媒体。
【請求項2】
前記主顔料は、炭酸カルシウムを含有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項3】
前記主顔料は、アラゴナイトを含有することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項4】
炭酸カルシウム及びプラスチック顔料からなる一群から選択された少なくとも1種類の副顔料をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項5】
前記媒体は、顔料インクジェットにより印刷された際に、モットル値が2.0未満であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項6】
前記塗膜は、二酸化チタンを含まないことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項7】
前記バインダは、アニオン親水性スチレンブタジエン/アクリロニトリル(SBA)共重合ラテックスであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項8】
前記塗膜は、タンパク質バインダ、ポリビニルアルコール、デンプン及びこれらの混合物からなる一群から選択された共同バインダをさらに含有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項9】
前記主顔料は、総顔料100部に対して約65〜85部であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項10】
前記塗膜は、総顔料100部に対して約2〜8部のプラスチック顔料をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項11】
前記塗膜は、塗工重量が約2〜7lbs/ream(3,300ft)であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項12】
多価金属塩を含むトップコートをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項13】
二価金属塩を含むトップコートをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項14】
前記二価金属塩は、塩化カルシウムを含むことを特徴とする請求項13に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項15】
前記バインダは、デンプンを含むことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項16】
前記バインダは、デンプンからなることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項17】
二価金属塩を含み、塗工重量が約0.15〜2.5gであるトップコートをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項18】
前記バインダは、総顔料100部に対して約3.5〜5部であることを特徴とする請求項17に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項19】
前記バインダは、アニオン親水性スチレンブタジエン/アクリロニトリル(SBA)共重合ラテックスを含み、前記インクジェット受容塗膜は、デンプンを共同バインダとしてさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項20】
前記ラテックス及びデンプンは、2.5:1(ラテックス重量:デンプン重量)未満の比率であることを特徴とする請求項19に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項21】
紙基材と、
インクジェット受容塗膜と、
多価金属塩を含むトップコートとを備え、
前記インクジェット受容塗膜は、粒径2ミクロン未満の粒子が少なくとも96重量%である粒径分布を有する主顔料と、平均粒径3ミクロン以下である副顔料と、バインダとを有することを特徴とするインクジェット記録媒体。
【請求項22】
前記主顔料は、アラゴナイトを含有することを特徴とする請求項21に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項23】
炭酸カルシウム及びプラスチック顔料からなる一群から選択された少なくとも1種類の副顔料をさらに含有することを特徴とする請求項21に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項24】
前記媒体は、顔料インクジェットにより印刷された際に、モットル値が2.0未満であることを特徴とする請求項21に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項25】
前記バインダは、アニオン親水性スチレンブタジエン/アクリロニトリル(SBA)共重合ラテックスであることを特徴とする請求項21に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項26】
前記塗膜は、タンパク質バインダ、ポリビニルアルコール、デンプン及びこれらの混合物からなる一群から選択された共同バインダをさらに含有することを特徴とする請求項21に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項27】
前記主顔料は、総顔料100部に対して約65〜85部であることを特徴とする請求項21に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項28】
前記塗膜は、総顔料100部に対して約2〜8部のプラスチック顔料をさらに含有することを特徴とする請求項21に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項29】
前記塗膜は、塗工重量が約2〜7lbs/ream(3,300ft)であることを特徴とする請求項21に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項30】
前記トップコートは、二価金属塩を含むことを特徴とする請求項21に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項31】
前記二価金属塩は、塩化カルシウムを含むことを特徴とする請求項30に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項32】
前記バインダは、総顔料100部に対して約2〜10重量部であることを特徴とする請求項21に記載のインクジェット記録媒体。

【公表番号】特表2013−501659(P2013−501659A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524857(P2012−524857)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/045259
【国際公開番号】WO2011/019866
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(505468978)ニューページ コーポレーション (5)
【Fターム(参考)】