説明

インクジェット記録媒体

インクジェット記録媒体およびインクジェット記録媒体を形成するためのコーティング組成物。一態様によれば、インクジェット記録媒体は、コート紙基材上のインクジェット受容コーティングからなることを開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年10月9日に出願された米国仮出願61/250,207号と2009年8月31日に出願された米国仮出願61/238,428号に基づく優先権を主張し、その全体を参考文献として本願明細書に援用する。
【0002】
本願は、インクジェット記録媒体および光沢を有するインクジェット記録媒体を形成するコーティング組成物に関する。特に、ここで開示されるインクジェット記録媒体は、高速インクジェット印刷といった高速印刷に有用である。
【背景技術】
【0003】
従来、商業印刷では、印刷カタログ、パンフレット、およびダイレクトメールをオフセット印刷によって作製している。しかしながら、インクジェット技術が進歩し、商業印刷店にも浸透している。インクジェット技術は、応答速度、コスト削減、および製品需要の喚起といった改善によってオフセット印刷に高品質な選択肢を与えている。様々な高品質画像や文章を印刷するのに加え、これらのプリンタは、高速で高容量の印刷を可能にするロール紙送りシステムを備えている。いまやインクジェット技術は、世界規模で、地域刊行物、新聞、小ロット印刷、教科書、および取引文書のオンデマンド(需要に応じた)製造に利用されている。
【0004】
本発明のある態様によれば、記録媒体は、商業的印刷装置である高速インクジェット装置を使用して印刷された場合に、早い乾燥時間、高い光沢および高画質を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国仮出願61/250,207号公報
【特許文献2】米国仮出願61/238,428号公報
【特許文献3】米国出願2009/0131570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
Schliesmanらによる「多機能印刷用紙およびコーティング媒体」と題する米国特許出願2009/0131570号公報は、オフセット、インクジェットおよびレーザー印刷に適合したインクジェット記録媒体を開示している。そのある態様によれば、この媒体の組成物は、少なくとも96重量%の粒子が2μm未満の粒子径を有するという粒子径分布を有するアニオン性第1顔料、少なくとも一種の平均粒子径3μm以下である粗粉の無いカチオン性第2顔料、乾燥顔料基準で最大17重量%の親水性スチレン/ブタジエンラテックス、共結着剤からなる。この組成物は多くの商業的インクジェットプリンタにおいて良く機能するが、顔料インクを使用する高速インクジェットプリンタにおいては機能が劣ってしまう場合があった。この013570号公報の内容を、ここで参照する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願明細書は、インクジェット記録媒体およびインクジェット記録媒体を形成するためのコーティング組成物を開示する。本発明の一態様によれば、コート紙基材に塗布されたインクジェット受容コーティングからなるインクジェット記録媒体として開示される。このインクジェット受容コーティングは、無機酸化物粒子、多価金属塩および結着剤を含有し、インクジェット記録媒体が改善されたインクジェット印刷性能を、特に幾つかの顔料インクを使用し高速インクジェットプリンタで印刷された際の性能を、発揮できるようにされている。本発明のある態様によれば、多価金属塩は、結着剤と無機酸化物粒子を含む層上での分離トップコートとして提供される。
【0008】
本発明のある実施形態によれば、コート紙基材は、微粒子サイズのクレイを含むベースコーティングを有するシートからなる。幾つかの場合においては、クレイは、少なくとも90重量%の粒子が2μm未満の粒子径を有するという粒子径分布を有する粒子を含む。ベースコーティングはまた、炭酸カルシウムといった他の顔料を含む。
【0009】
本発明の他の実施形態は、ここに記述した記録媒体上にインクジェットインクを載せることからなる印刷方法に関する。記録媒体は、多くの種類のインクの優れた吸収体となる。インクジェットプリンタが幾度も通過することにより供給されるインクを速やかに吸収する。
【0010】
本発明のコーティングおよびコートされた紙は特に、顔料インクジェットインクに有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
インクジェット受容コーティングを製造するためのコーティングは、通常、無機酸化物粒子および多価金属塩を含む。無機酸化物は、粒径の中央値が約0.5μm未満であるカチオン性多孔質シリカ分散体である。さらに、コーティングは通常、結着剤を含む。幾つかの場合においては、乾燥重量基準で、顔料がコーティング組成物の最大部分をなす。他の場合においては、多価金属塩がコーティング組成物の最大部分をなす。特に記載が無い限り、成分物質の量は、総顔料100重量部あたりの重量部の単位で表現される。
【0012】
コーティングの無機酸化物は、粒子の直径が0.5μm未満である小粒径を有するカチオン性顔料である。ある実施形態によれば、無機酸化物は、インクジェット受容コーティングの総顔料重量に対して約65〜約100部であり、特に、約70〜95部である。ある実施形態によれば、無機酸化物粒子は、コーティング中の実質的に全ての顔料を占める。ここで述べる「実質的に全て」は、無機酸化物顔料が、コーティング組成物中の顔料の少なくとも約98%、特に少なくとも99%、さらに他の実施形態においては99.5%を占めることを指す。
【0013】
インクジェット受容コーティングを製造する上で有用な無機酸化物粒子の例は、米国特許第7,393,571号に記載されており、この文献の内容がここで参照される。無機酸化物粒子は、粒子の性質を改善するために、改質される。無機粒子は、粒子に正の表面電荷(ゼータ電位)を生成させるために改質することができる。表面電荷は、少なくとも+20mVのゼータ電位を持ち、ある場合においては少なくとも+40mVである。粒子は、カチオン性部分を持つ添加剤によって改質することができ、例えば、アルミナ、有機カチオン含有シラン、およびイオン性高分子によって改質することができる。
【0014】
本発明のある態様によれば、無機酸化物粒子は、SyloJet(登録商標)(Grace Davidson)といったカチオン性多孔質シリカ分散体からなる。本発明のある態様によれば、無機酸化物粒子は、約0.2〜0.4μmの平均粒子径、少なくとも0.70ml/gの空孔容積(N)、および200m/g未満の表面積を有する。他の実施形態においては、乾燥基準で測定された粒子の総空孔容積は、約0.5〜約2.0ml/gの範囲であり、特に、約0.5〜1.5であり、さらにある実施形態においては約0.7〜1.2ml/gである。
【0015】
インクジェット受容コーティングに好適な結着剤は、無機粒子を結合させることが可能で、水に可溶または水に分散可能な高分子を含む。特に好適な高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体および改質ポリビニルアルコールが挙げられる。本発明のある態様にて使用することができる具体的なポリビニルアルコールの例は、Celanese社のCelvol−203SおよびPoval−235が挙げられる。
【0016】
他の好適な結着剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースナトリウム、水溶性エチルヒドロキシエチルセルロース、硫酸セルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミド/アクリル酸コポリマー、ポリスチレン、スチレンコポリマー、アクリルまたはメタクリルポリマー、スチレン/アクリルコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ビニルメチルエーテル/マレイン酸コポリマー、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリ(ジエチレントリアミン共アジピン酸)、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾール、ポリエチレンイミンエピクロロヒドリン改質体、ポリエチレンイミンエトキシレート、ポリエチレンオキサイド、ポリウレタン、メラミン樹脂、ゼラチン、カラギナン、デキストラン、アラビアガム、カゼイン、ペクチン、アルブミン、デンプン、コラーゲン誘導体、コロジオン、寒天が挙げられる。
【0017】
インクジェット受容コーティングはまた、多価金属塩を含む。本発明のある実施形態においては、多価金属は、2価または3価のカチオンである。特に、多価金属塩は、Mg+2,Ca+2,Ba+2,Zn+2およびAl+3から選択されるカチオンと、組み合わせられる好適な対イオンである。Ca+2およびMg+2の2価カチオンが特に有用である。複数のカチオンの組み合わせもまた、用いられる。
【0018】
本発明で使用される塩の例は、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化バリウム、硝酸バリウム、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、塩化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、および硝酸アルミニウムが挙げられるが、これらのみに限定されない。当業者による同様の塩も評価される。特に有用な塩は、CaCl、MgCl、MgSO、Ca(NO、およびMg(NO、また、これら塩の水和物が挙げられる。これら塩の組み合わせもまた、用いられる。
【0019】
本発明のある態様によれば、多価金属塩は、顔料100部あたり、約20〜50、特に約35〜約133部使用される。本発明のある態様によれば、多価金属塩は、無機酸化物および結着剤を含む層上のトップコーティングとして提供される、インクジェット受容コーティング中の分離層として提供される。
【0020】
インクジェット受容コーティングはまた、必要に応じて、着色剤、増粘剤、離型剤、流動改質剤、公知の顔料、フュームシリカ、増白剤、界面活性剤、および/または分散剤等の追加の添加剤を含む。組成物に含有させる添加剤の量は、当業者であれば直ちに決定することができる。
【0021】
インクジェット受容コーティングは通常、所望の光沢と画像品質が得られるために充分な量が用いられる。通常、インクジェット受容コーティングは、コーティング乾燥重量で約0.15lbs〜約2lb(68.04g〜907.2g)、特に、約0.5〜1.5lb(226.8g〜680.4g)用いられる。コーティング重量は、lb/rm(rm:ream、紙の取引単位)基準で得られ、1rmは3,300ft(306.6m)である。
【0022】
本発明のある態様によれば、インクジェット受容コーティングは、最終的な仕上がりの75°光沢が少なくとも60、少なくとも70、あるケースにおいては少なくとも75となるように、ベースコート紙基材上に塗布される。
【0023】
ベースコート紙基材は通常、紙基材のそれぞれの面が塗布される。ベースコーティングは通常、約5〜12lbs/rm(7.4〜17.8g/m)の範囲、特に基材、ベースコーティング、目的の光沢によっては約8〜10lbs/rm(11.8〜14.8g/m)が用いられる。
【0024】
ある実施形態によれば、ベースコーティングは、微粒子サイズクレイを含む。クレイは、少なくとも90重量%、特に96重量%の粒子が2μm未満の粒子径を有するという粒子径分布を有する。微粒子サイズクレイは、乾燥重量基準でコーティング顔料の約20〜80部を占める。ある実施形態においては、総顔料100部基準で、クレイは約40〜60部である。HYDRAGLOSS(登録商標)90カオリンクレイ(KaMin)は、好適な性能を発揮するコーティングを提供する特に有用なクレイの例である。
【0025】
ベースコーティングはまた、他の顔料、特に、微細サイズ顔料を含む。使用できる他の顔料の例としては、炭酸塩、ケイ酸塩、シリカ、二酸化チタン、酸化アルミニウムおよびアルミニウム三水和物が挙げられる。光沢、白色度および他のコーティング性能を向上させるために必要であれば、追加の顔料を使用してもよい。これら顔料は、乾燥コーティング顔料の、最大で追加の60重量部まで使用される。顔料のうち最大で40部まで、特に30部未満は、粗下地の炭酸カルシウム、微細下地の炭酸カルシウム、プラスチック顔料、TiO、およびこれらの混合物である。下地炭酸カルシウムの例としては、Carbital 35炭酸カルシウム(Imerys, Roswell,ジョージア州)がある。他の追加の顔料は、Itochu Chemicals America(White Plains,ニューヨーク)から利用可能なアニオン性二酸化チタンがある。紙に光沢を付与するために、中空球は、特に有用なプラスチック顔料である。中空球顔料の例としては、ROPAQUE 1353およびROPAQUE AF−1055(Rohm&Haas, Philadelhia,ペンシルベニア州)が挙げられる。より高い光沢を有する紙は、小粒径の微粒子顔料を使用することで得られる。これら顔料の相対的量は、白色および所望の光沢レベルによって変化する。
【0026】
結着剤は、接着のためにベースコーティング中に含まれる。結着剤はアニオン性であり、ある実施形態においてはスチレン/ブタジエンラテックス(SBRラテックス)である。あるいは、ラテックスコポリマーはまた、最大で20重量%までのアクリロニトリル繰り返し単位を含む。SBRラテックスは、カルボキシル化スチレンブタジエンコポリマーラテックス混合物であり、アクリロニトリルを含む。高い親水性を有するポリマーが使用される。有用なポリマーの例としては、Genflo5915SBラテックスポリマー、Genflo5086SBラテックスポリマー、Gencryl PT 9525ラテックスポリマー、およびGencryl 9750ACN ラテックスポリマー(全てRohumNova,Akron,オハイオ州から利用可能)が挙げられる。ベースコーティング層中のバインダーの合計量は通常、総顔料100部あたり、約2〜約20、特に約5〜約15部である。
【0027】
ベースコーティングはまた、第1の結着剤に追加で用いられる共結着剤を含んでもよい。有用な共結着剤の例としては、ポリビニルアルコールおよび蛋白質結着剤が挙げられる。共結着剤は通常、乾燥重量で顔料100部あたり約1〜約4部の量が、特に、約1.5〜3部が用いられる。いくつかの実施形態において有用な他の共結着剤は、デンプンである。共結着剤としては、カチオン性およびアニオン性の両方のデンプンが用いられる。ADM Clineo 716デンプンは、エチル化コーンスターチ(Archer Daniels Midland,Clinton,アイオワ州)である。Penford PG 260は、利用可能な他のデンプン共結着剤である。カチオン性共結着剤が用いられる場合、コーティングの全体のアニオン性の性質が維持されるよう、使用量は制限される。結着剤レベルは注意深く調整される。もし結着剤が少なすぎる場合、コーティング構造は、物理的強度を欠き、多すぎる場合、コーティングは空孔が少なくなりインク乾燥時間が長くなる。
【0028】
他の追加の添加剤は、インクジェット受容コーティングまたはベースコーティングの性能を変化させるために使用される。Clariant T26 光学増白剤(Clariant Corporation, McHenry,イリノイ州)を増白剤として使用することができる。不溶化剤または架橋剤も、有用である。特に有用な架橋剤は、Sequarez755(RohmNova,Akron,オハイオ州)である。架橋剤または不溶化剤の量は、総顔料100部あたり、0.1〜1.0、特に約0.2〜0.6重量部の範囲である。ブレードコーターでコーティングを塗布する際の引き摺りを抑制するために、追加で潤滑剤を添加しても良い。
【0029】
コーティングを製造するために、公知の混合技術が利用される。デンプンが使用される場合、デンプンクッカーを使用し、コーティング製造に先立ってデンプンが調製される。ある実施形態によれば、デンプンは、約35%固形分までに下がるまで製造される。これとは別々に、第1の顔料、第2および他の追加顔料を含む全ての顔料が、沈殿が起きることがないように数分間混合される。研究室では、顔料は、パドルミキサーを使用してドリルプレスミキサーで混合される。そこで第1の結着剤がミキサーに投入され、1、2分後に共結着剤が追加される。デンプンを使用する場合、通常、クッカーにて未だ熱い190°F(87.78℃)近くの状態でミキサーに加えられる。混合された成分を水中で分散させることにより、最終的なコーティングが得られる。分散液の固形分は通常、約55重量%〜約68重量%である。特に、固形分は、分散液の約58重量%〜約62重量%である。
【0030】
さらに他の実施形態は、ベースコートシートの少なくとも一方の表面上に設けられたインクジェット受容コーティングを有する高光沢インクジェット記録媒体に関する。ロールコーター、ジェットコーター、カーテンコーター、ブレードコーターまたはロッドコーターを含むあらゆる塗布方法または装置が使用され、これらのみに限定されない。ある態様によるインクジェット記録媒体は通常、紙表面3,300ft(306.6m)あたり、約30lb〜約250lb(13.61kg〜113.4kg)である。必要に応じて、塗布された紙は続いて追加的に仕上げられ、所望の光沢を得る。
【0031】
基材またはベースシートは、公知のコートベースシートとすることができる。有用なベースシートの例としては、Productolith/Sterling Gloss 80#、Sterling Ultra Matte Text 80#、Fortune Matte Cover、Futura Laser High Gloss 146#、およびCentura Gloss 80#が挙げられる。
【0032】
仕上げを経たインクジェット記録媒体は、印刷に有用である。画像形成のためにインクがインクジェット記録媒体上に印刷される。印刷の後、インク担持体はコーティングを浸透し、そこで吸収される。コーティングの空孔の数および均一性は、均等で早いインク吸収をもたらす。このインクジェット記録媒体はまた、インクジェットプリンタからの染料または顔料インク、レーザープリンターからのトナー、およびオフセットまたはグラビアまたはフレキソプレスからのインクの組み合わせからコート紙媒体上の画像が生成される多機能印刷に好適である。
【実施例】
【0033】
以下に述べる例は、本発明の特定の態様を示すが、それらのみに限定はされない。
【0034】
133.3部の塩化カルシウム、100部のSyloJet(登録商標)C30F、塩化アルミニウムで表面処理した微細化シリカゲル(Grace Davison)、40部のCelvol203(ポリビニルアルコール)からなるコーティングを、市販されているコートオフセット紙上にブレードコーターを使用して乾燥重量で1lb/rm(1.48g/m)で塗布した。コーティングは、3ニップ/面を使用して、1200PLI/100°F(37.78℃)でカレンダー仕上げされた。市販のオフセット紙に対して上記と同様のカレンダー条件で実施して、インクジェット受容コーティングを有さない比較例を調製した。
【0035】
標準Kodak顔料インクを有するKodak5300プリンタを使用して、得られた紙に試験対象を印刷した。試験対象は、Dmaxの黒、マゼンタ、シアン、黄色、赤、緑、青のパッチからなる。赤、緑、および青のパッチは、QEA社製Personal IAS画像分析システムによって色ムラを測定し、密度計によって光学密度を測定した。色ムラは、低い空間周波数(例えば、巨視スケールにおけるノイズ)にて生じる不均一な密度である。色ムラの単位は、ソフトウェアで特定される初期密度標準およびカラーフィルターを使用した反射率%である。色ムラ値が低いほど性能が良い。下記に示す色ムラ測定結果は、赤、緑および青のパッチの色ムラの平均である。光沢は、75°で測定された。
【0036】
色ムラ値が低いほど性能が良い。下記に示す色ムラ測定結果は、黒、マゼンタ、シアン、黄色、赤、緑および青のパッチの色ムラの平均である。本発明のある態様によれば、色ムラ値3.0未満、特に2.0未満、さらに1.5未満を、また、特定のケースにおいては、1.0未満を、得ることができる。
【0037】
表1は、インクジェット受容コーティングを有さない比較例に対する本発明例の優れた色ムラを示す。本発明例および比較例は共に、同じカレンダー条件を使用してカレンダー仕上げされた。
【0038】
【表1】

【0039】
本発明のある態様による光沢/色ムラ比は、少なくとも100、特に少なくとも110、さらに少なくとも120、さらにまた少なくとも130であり、また、特定のケースにおいては少なくとも140である。
【0040】
選択的に、シリカゲルおよび結着剤を含む層上に、独立した5%ウォッシュコートとして塩化カルシウムを用いることもできる。表2は、塩化カルシウムの独立したウォッシュコートを用いることによって得られた光沢色ムラの改善を示す。
【0041】
【表2】

【0042】
表3は、紙の光沢に及ぼすインクジェット受容コーティングの影響を示す。
【0043】
【表3】

【0044】
ベース紙Aを例外として、インクジェット受容コーティングが用いられた時に光沢の減少が観察された。この影響は14.7%差分が観察されたベース紙Fで最も顕著であった。
【0045】
Kodak Easy shareプリンタによって塗布および非塗布シートに印刷し、QEA Personal IAS画像分析機を使用して100%R,G,B,C,M,Y,Kパッチ上の色ムラを測定した。表4に示すように、塗布および非塗布サンプルの間に顕著な色ムラの差異が観察された。非塗布サンプルでは、AおよびGが最も良い結果であった。インクジェット受容コーティングの利用は、ベース紙の性能を正常化する。
【0046】
【表4】

【0047】
表5は、インクジェット受容コーティング組成物の例である。
【0048】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コート紙基材と、
前記コート紙基材の少なくとも片面に塗布されたインクジェット受容コーティングとからなり、
前記インクジェット受容コーティングは、無機酸化物粒子、多価金属塩および結着剤からなり、
75°光沢が少なくとも60であることを特徴とするインクジェット記録媒体。
【請求項2】
前記無機酸化物粒子がシリカ粒子からなることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項3】
前記シリカ粒子は、粒子径中央値が0.5μm未満であることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項4】
前記シリカ粒子は、粒子径中央値が約0.2〜0.5μmであることを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項5】
前記シリカ粒子は、カチオン性シリカ粒子からなることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項6】
前記媒体は、顔料インクを含むインクジェットプリンタで印刷した場合の色ムラ値が3.0未満であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項7】
前記結着剤は、ポリビニルアルコールからなることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項8】
前記コーティングは、さらに架橋剤からなることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項9】
前記結着剤は、総顔料100部あたり約3〜50部の量含まれていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項10】
前記無機酸化物顔料は、前記コーティング中の実質的に全ての顔料を占めることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項11】
前記インクジェット受容コーティングは、塗布重量が約0.15〜1.0lbs/rm(0.222〜1.479g/m)で含まれていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体(1rmは3,300ft(306.6m))。
【請求項12】
前記多価金属塩は、総顔料100部あたり約35〜133部の量含まれていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項13】
前記多価金属塩は、無機または有機対イオンと塩を形成するMg+2,Ca+2,Zn+2,Ba+2,Al+3およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるカチオンからなることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項14】
前記多価金属塩は、CaCl、MgCl、MgSO、Ca(NO、Mg(NO、ZnCl、Zn(NO、AlCl、Al(OH)Cl、BaClおよびBa(NOおよびこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項13に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項15】
前記多価金属塩は、塩化カルシウムであることを特徴とする請求項14に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項16】
前記インクジェット受容コーティングは、第1層および第2層からなり、前記第2層は、前記第1層上にトップコート層として設けられていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項17】
前記第2層は、多価金属塩からなることを特徴とする請求項16に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項18】
前記コーティングは、粒子径の中央値が約0.2〜0.5μmのカチオン性シリカ粒子、カルシウム塩およびポリビニルアルコールからなることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項19】
前記インクジェット記録媒体は、顔料インクを含むインクジェットプリンタで印刷された際に、光沢/色ムラ比が少なくとも100であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項20】
前記インクジェット記録媒体は、色ムラ値が1.0以下であることを特徴とする請求項19に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項21】
前記インクジェット記録媒体の光沢は、少なくとも70であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項22】
前記コート紙基材は、少なくとも90重量%の粒子が2μm未満の粒子径を有するという粒子径分布を有する微粒子サイズクレイからなることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項23】
前記コート紙基材は、カルボキシル化スチレンブタジエンコポリマーラテックス結着剤からなることを特徴とする請求項22に記載のインクジェット記録媒体。


【公表番号】特表2013−503062(P2013−503062A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527084(P2012−527084)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2010/047231
【国際公開番号】WO2011/026070
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(505468978)ニューページ コーポレーション (5)
【Fターム(参考)】