説明

インクジェット記録方法、インクジェット記録装置及び印刷物

【課題】被記録媒体の変形がなく、高生産性、かつ、低コストの紫外線硬化型インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置を提供すること。
【解決手段】被記録媒体上に少なくとも重合性化合物及び下記式(I)で表される化合物を含有するインク組成物Aを吐出する工程、前記インク組成物Aに蛍光灯により紫外線を照射する工程、及び、蛍光灯により紫外線を照射されたインク組成物A上に少なくとも重合性化合物を含有し、かつ、インク組成物Aとは異なる色相を有するインク組成物Bを吐出する工程を含むことを特徴とするインクジェット記録方法。
【化1】


前記式(I)において、XはO、S、又は、NRを表す。nは0又は1を表す。Rは水素原子、アルキル基、又はアシル基を表す。R1〜R8はそれぞれ独立に水素原子、又は一価の置換基を表す。R1、R2、R3、及び、R4は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成していてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方法、インクジェット記録装置及び印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子線・紫外線などの活性エネルギーの照射により硬化する活性エネルギー硬化型インクのインク滴をインクジェットヘッドにより被記録媒体上に吐出し、この吐出されたインクを活性エネルギーの照射により硬化させることで被記録媒体上への画像記録を行う活性エネルギー硬化型インクジェット記録方法が各種提案されている。
この活性エネルギー硬化型インクジェット記録方法は、活性エネルギー硬化型インクを使用しない一般的なインクジェット記録方法と比較すると、活性エネルギー硬化型インク自身の特質を活かすことで、種々の被記録媒体へ高速で記録できる、滲みにくく高精細な画像記録が可能である、環境に優しい、などの各種の利点を有する。
【0003】
特に活性エネルギーとしての紫外線の照射により硬化する紫外線硬化型(UV硬化型)インクを用いた記録方法に用いる装置としては、光源の扱い易さ、コンパクト化等の観点から、開発が進んでいる(例えば、特許文献1参照。)。
これまでのUV硬化型インクジェット記録装置では、被記録媒体に塗布されたUV硬化型インクを硬化させるために被記録媒体上にUVの照射を行う光源としては、高圧水銀灯、中圧水銀灯、メタルハライドランプ、紫外LED等が実用化されている(例えば、特許文献2参照。)。また、最近では、超高圧水銀灯を用いたUV硬化型インクジェット記録方法が提案されており、装置コストを安価に抑えることが期待できる(例えば、特許文献3参照。)。
一方、UV硬化型インクジェット記録方法に用いるUV硬化型インクとしては、硬化感度、吐出安定性等の観点から、開発が進んでいる。これまでに硬化感度の高いインクジェット記録用UV硬化型インクとして、アシルホスフィンオキサイド類やα−アミノケトン類の開始剤を用いたインクジェット記録用UV硬化型インクが提案されている(例えば、特許文献4、5参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−260790号公報
【特許文献2】特開2004−155093号公報
【特許文献3】特開2007−296735号公報
【特許文献4】特開2002−241647号公報
【特許文献5】特開2007−231082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の紫外線硬化型インクジェット記録装置で使用されていた活性エネルギー照射用の光源を用いた場合、生産性を高めるために光源の数を増やした場合は、露光により被記録媒体が変形し、印刷物のカールなどが問題になったり、また、変形が大きいと被記録媒体とヘッド面との衝突や被記録媒体詰まりなどのシステム上の問題が発生したりする。また、従来の光源は非常に高コストであるため、記録装置自体の価格が非常に高額化してしまうという問題を招いている。
一方、低コストな光源として、プロジェクターなどに使用される超高圧水銀灯がある(加藤清視、中原正二、「UV硬化技術入門」高分子刊行会出版、1986年参照。)が、超高圧水銀灯は従来の光源より露光強度が低いため、従来の紫外線硬化型インクを用いた場合は、印刷速度が遅くなり、十分な生産性を得ることができない。そのため、超高圧水銀灯を装備した紫外線硬化型インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置の実用化は実現していない。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、被記録媒体の変形がなく、高生産性、かつ、低コストの紫外線硬化型インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記課題は下記の<1>、<6>及び<11>に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>〜<5>及び<7>〜<10>とともに以下に記載する。
<1> 被記録媒体上に少なくとも重合性化合物及び下記式(I)で表される化合物を含有するインク組成物Aを吐出する工程、前記インク組成物Aに蛍光灯により紫外線を照射する工程、及び、蛍光灯により紫外線を照射されたインク組成物A上に少なくとも重合性化合物を含有し、かつ、インク組成物Aとは異なる色相を有するインク組成物Bを吐出する工程、を含むことを特徴とするインクジェット記録方法、
【0008】
【化1】

前記式(I)において、XはO、S、又は、NRを表す。nは0又は1を表す。Rは水素原子、アルキル基、又はアシル基を表す。R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8はそれぞれ独立に水素原子、又は一価の置換基を表す。R1、R2、R3、及び、R4は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成していてもよい。
【0009】
<2> インク組成物Aに照射した紫外線よりもUVB領域における露光強度が高い紫外線を照射し、インク組成物A及び/又はインク組成物Bを硬化する工程を有する、上記<1>に記載のインクジェット記録方法、
<3> 前記インク組成物Aが光重合開始剤を含有し、該光重合開始剤がアシルホスフィンオキサイド化合物及びα−アミノアセトフェノン化合物よりなる群から選択される少なくとも1つを含有する、上記<1>又は上記<2>に記載のインクジェット記録方法、
<4> 前記蛍光灯が発光する光は、少なくとも340nm以上400nm以下の範囲にピーク波長を有する、上記<1>〜上記<3>いずれか1つに記載のインクジェット記録方法、
<5> 前記蛍光灯は、バルブと、前記バルブの内壁に積層され、被記録媒体側に開口が形成された反射膜と、前記反射膜及び前記バルブの内壁に積層され、被記録媒体側に開口が形成された蛍光体膜とを有する、上記<1>〜上記<4>いずれか1つに記載のインクジェット記録方法、
<6> 少なくとも重合性化合物及び下記式(I)で表される化合物を含有するインク組成物Aを被記録媒体上に吐出する手段、インク組成物Aに紫外線を照射する蛍光灯、及び、蛍光灯によって紫外線を照射されたインク組成物A上に少なくとも重合性化合物を含有し、かつ、インク組成物Aとは異なる色相を有するインク組成物Bを吐出する手段、を有することを特徴とするインクジェット記録装置、
【0010】
【化2】

前記式(I)において、XはO、S、又は、NRを表す。nは0又は1を表す。Rは水素原子、アルキル基、又はアシル基を表す。R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8はそれぞれ独立に水素原子、又は一価の置換基を表す。R1、R2、R3、及び、R4は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成していてもよい。
【0011】
<7> インク組成物A及び/又はインク組成物Bに対して紫外線を照射する手段を有し、該紫外線は、前記インク組成物Aに照射した紫外線よりもUVB領域における露光強度が高い、上記<6>に記載のインクジェット記録装置、
<8> 前記インク組成物Aが光重合開始剤を含有し、該光重合開始剤がアシルホスフィンオキサイド化合物及びα−アミノアセトフェノン化合物よりなる群から選択される少なくとも1つを含有する、上記<6>又は上記<7>に記載のインクジェット記録装置、
<9> 前記蛍光灯が発光する光は、少なくとも340nm以上400nm以下の範囲にピーク波長を有する、上記<6>〜上記<8>いずれか1つに記載のインクジェット記録装置、
<10> 前記蛍光灯は、バルブと、前記バルブの内壁に積層され、被記録媒体側に開口が形成された反射膜と、前記反射膜及び前記バルブの内壁に積層され、被記録媒体側に開口が形成された蛍光体膜とを有する、上記<6>〜上記<9>いずれか1つに記載のインクジェット記録装置、
<11> 上記<1>〜上記<5>いずれか1つに記載のインクジェット記録方法により得られた印刷物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被記録媒体の変形がなく、高生産性、かつ、低コストの紫外線硬化型インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明のインクジェット記録方法は、被記録媒体(以下、「基材」ともいう。)上に少なくとも重合性化合物及び下記式(I)で表される化合物(以下、下記式(I)で表される化合物を、「化合物(I)」ともいう。)を含有するインク組成物Aを吐出する工程、前記インク組成物Aに蛍光灯により紫外線を照射する工程、及び、蛍光灯により紫外線を照射されたインク組成物A上に少なくとも重合性化合物を含有し、かつ、インク組成物Aとは異なる色相を有するインク組成物Bを吐出する工程を含むことを特徴とする。
また、本発明のインクジェット記録装置は、少なくとも重合性化合物及び下記式(I)で表される化合物を含有するインク組成物Aを被記録媒体上に吐出する手段、インク組成物Aに紫外線を照射する蛍光灯、及び、蛍光灯によって紫外線を照射されたインク組成物A上に少なくとも重合性化合物を含有し、かつ、インク組成物Aとは異なる色相を有するインク組成物Bを吐出する手段、を有することを特徴とする。本発明のインクジェット記録装置は、上記本発明のインクジェット記録方法に使用することができる。
【0014】
【化3】

前記式(I)において、XはO、S、又は、NRを表す。nは0又は1を表す。Rは水素原子、アルキル基、又はアシル基を表す。R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8はそれぞれ独立に水素原子、又は一価の置換基を表す。R1、R2、R3、及び、R4は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成していてもよい。
【0015】
本発明において、上記の構成を採用することによって、被記録媒体の変形が抑制され、高生産性、かつ、低コストの紫外線硬化型のインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置となる。
すなわち、本発明において、インク組成物Aは、増感作用に優れる式(I)で表される化合物を含有することにより、蛍光灯を使用した場合であっても十分な硬化性を有するため、高い生産性(記録速度)を得ることができる。また、メタルハライドランプ等による紫外線の照射によって生じていた被記録媒体の変形が抑制される。さらに、従来、紫外線光源として使用されてきたメタルハライドランプ等に比べて安価な蛍光灯を使用することにより、安価な装置を用いてインクジェット記録方法を実施することができる。
【0016】
本発明のインクジェット記録方法は、被記録媒体上にインク組成物Aを吐出し、これに蛍光灯により紫外線を照射し、次に、蛍光灯を照射されたインク組成物A上に、インク組成物Aとは異なる色相を有するインク組成物Bを吐出する。なお、本発明において、インク組成物A及びインク組成物Bを含む複数のインク組成物を「インクセット」ともいうこととする。
本発明は、多色カラー印刷物を得るためのインクジェット記録方法において、異なる色相を有する複数のインク組成物を被記録媒体に付与するにあたり、ある色相を有するインク組成物を被記録媒体上に付与後、他の色相を有するインク組成物を付与する前の紫外線の照射(「色間露光」という。)に、蛍光灯を使用するものである。
本発明は、多色のインク組成物を付与する場合、その色間露光の全てが蛍光灯により行われる場合に限定されるものではなく、いずれかの色間露光が蛍光灯により行われていればよい。使用するインクセットを構成するインク組成物の種類により、色間露光は複数回行われる場合があり、被記録媒体の変形をより効果的に抑制する観点からは、全ての色間露光を蛍光灯により行うことが好ましい。なお、多色のインク組成物を色間露光なしに連続して吐出すると、打滴間での色滲みが生じるなど、良好な画像を得ることが困難となる場合がある。また、最終光源のみでインク組成物を硬化させるため、十分な硬化性を得るためには長時間の照射が必要となり、生産性に劣る。
以下、本発明を構成する各要件について詳述する。
なお、本発明において、数値範囲を表す「a〜b」の記載は、「a以上b以下」を表し、端点であるa及びbをも含む意である。
【0017】
(インク組成物A)
本発明のインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置は、少なくともインク組成物A及びインク組成物Bを含む紫外線硬化型インクセットを使用する。
インク組成物A(以下、単にインクAともいう。)は、少なくとも、重合性化合物、及び、上記式(I)で表される化合物を含有する。本発明においてインク組成物Aは、これらの成分に加えて、光重合開始剤、着色剤、アミン化合物、界面活性剤、重合禁止剤等を含有することができる。
なお、インク組成物Aは、色間露光され、該色間露光には、蛍光灯が使用される。
【0018】
インク組成物Aにおいて、上記式(I)で表される化合物は、硬化性と非硬化性成分である該化合物の硬化膜からの泣き出し防止の両立の観点から、インク組成物Aへの添加濃度として、インク組成物Aの総重量に対して、0.5重量%以上25.0重量%以下であることが好ましく、1.0重量%以上20.0重量%以下であることがより好ましく、1.0重量%以上15.0重量%以下であることが特に好ましい。
重合性化合物は、画像定着性の観点から、インク組成物Aへの添加濃度として、インク組成物Aの総重量に対して、40重量%以上98重量%以下であることが好ましく、50重量%以上95重量%以下であることがより好ましく、60重量%以上90重量%以下であることが特に好ましい。重合性化合物の添加量が上記範囲内であると、硬化性に優れ、また、粘度が適切であるので好ましい。
【0019】
光重合開始剤の添加濃度としては、インク組成物Aの総重量に対して、0.1〜20.0重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜18.0重量%であり、さらに好ましくは1.0〜15.0重量%である。光重合開始剤の添加量が上記範囲内であると、硬化性に優れ、また、表面ベトツキ低減の観点から適切であるので好ましい。
着色剤は、該インク組成物Aへの添加濃度として、インク組成物Aの総重量に対して50重量%以下であることが好ましく、1重量%以上30重量%以下であることがより好ましく、2重量%以上20重量%以下であることがさらに好ましい。着色剤の添加量が上記範囲内であると良好な画像濃度及び保存安定性が得られるので好ましい。
【0020】
インク組成物Aは、室温で液体であればよいが、インクジェットによる打滴適正の観点から、25℃における粘度は100mPa・s以下又は60℃における粘度が30mPa・s以下であることが好ましく、25℃における粘度は60mPa・s以下又は60℃における粘度が20mPa・s以下であることがより好ましく、25℃における粘度は40mPa・s以下又は60℃における粘度が15mPa・s以下であることが特に好ましい。
同じく、インクジェットによる打滴適正の観点から、インク組成物Aの25℃における表面張力は18mN/m以上40mN/m以下が好ましく、20mN/m以上35mN/m以下がより好ましく、22mN/m以上32mN/m以下がさらに好ましい。
ここでの「粘度」は、東機産業(株)製のRE80型粘度計を用いて求めた粘度である。RE80型粘度計は、E型に相当する円錐ロータ/平板方式粘度計であり、ロータコードNo.1番のロータを用い、10rpmの回転数にて測定を行った。ただし、60mPa・sより高粘度なものについては、必要により回転数を5rpm、2.5rpm、1rpm、0.5rpm等に変化させて測定を行った。
また、ここで、前記表面張力は、一般的に用いられる表面張力計(例えば、協和界面科学(株)製、表面張力計CBVP−Z等)を用いて、ウィルヘルミー法で液温25℃にて測定した値である。
【0021】
(インク組成物B)
本発明のインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置に用いる紫外線硬化型インクセットは、前記インク組成物Aと色相の異なるインク組成物B(以下、単にインクBともいう。)を含むものである。本発明に好適に用いられるインク組成物Bは、重合性化合物を含有し、これに加えて、光重合開始剤、着色剤、界面活性剤、重合禁止剤等を含有することができる。
なお、インク組成物Bは、上記式(I)で表される化合物を含有していてもよく、特に限定されないが、被記録媒体上に吐出されたインク組成物Bに対しては、インク組成物Aよりも高い強度の紫外線を照射することが好ましく、経済性の観点から、インク組成物Bは、上記式(I)で表される化合物を含有していないことが好ましい。すなわち、インク組成物Bは、蛍光灯によって色間露光されないインク組成物である。
【0022】
重合性化合物は、画像定着性の観点から、インク組成物Bへの添加濃度として、インク組成物Bの総重量に対して、40重量%以上98重量%以下であることが好ましく、50重量%以上95重量%以下であることがより好ましく、60重量%以上90重量%以下であることが特に好ましい。重合性化合物の添加量が上記範囲内であると、硬化性に優れ、また、粘度が適切であるので好ましい。
光重合開始剤の添加濃度としては、インク組成物Bの総重量に対して、0.1〜20.0重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜18.0重量%、さらに好ましくは1.0〜15.0重量%である。光重合開始剤の添加量が上記範囲内であると、硬化性に優れ、また、表面ベトツキ低減の観点から適切であるので好ましい。
着色剤は、該インク組成物Bへの添加濃度として、インク組成物Bの総重量に対して50重量%以下であることが好ましく、1重量%以上30重量%以下であることがより好ましく、2重量%以上20重量%以下であることがさらに好ましい。着色剤の添加量が上記範囲内であると良好な画像濃度及び保存安定性が得られるので好ましい。
【0023】
インク組成物Bは、室温で液体であればよいが、インクジェットによる打滴適正の観点から、25℃における粘度は100mPa・s以下又は60℃における粘度が30mPa・s以下であることが好ましく、25℃における粘度は60mPa・s以下又は60℃における粘度が20mPa・s以下であることがより好ましく、25℃における粘度は40mPa・s以下又は60℃における粘度が15mPa・s以下であることが特に好ましい。
同じく、インクジェットによる打滴適正の観点から、インク組成物Bの25℃における表面張力は18mN/m以上40mN/m以下が好ましく、20mN/m以上35mN/m以下がより好ましく、22mN/m以上32mN/m以下がさらに好ましい。
粘度及び表面張力の測定方法は上述の通りである。
【0024】
(インクセット)
本発明のインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置に用いるインク組成物A及びインク組成物Bを含むインクセットの好適な組合せとしては、シアンインク(シアンインク組成物)、マゼンタインク(マゼンタインク組成物)、及び、イエローインク(イエローインク組成物)の組合せであり、より好ましい組合せとしては、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク(ブラックインク組成物)、及び、ホワイトインク(ホワイトインク組成物)の組合せであり、さらに好ましい組合せとしては、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク、ホワイトインク、オレンジインク(オレンジインク組成物)及びバイオレットインク(バイオレットインク組成物)の組合せである。
【0025】
シアンインク、マゼンタインク、及び、イエローインクの組合せの場合は、シアンインク、マゼンタインクをインク組成物Aとし、イエローインクをインク組成物Bとすることが好ましい。すなわち、上記式(I)で表される化合物を含むシアンインクを被記録媒体上に吐出後、蛍光灯によって紫外線を照射し、次に、式(I)で表される化合物を含むマゼンタインクを被記録媒体上に吐出し、蛍光灯によって紫外線を照射する。その後、任意で式(I)で表される化合物を含む(好ましくは不含有の)イエローインクを被記録媒体に吐出し、最終露光を行って、画像全体を硬化させることが好ましい。
【0026】
シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク、及び、ホワイトインクの組合せの場合は、シアンインク、マゼンタインク、ホワイトインクをインク組成物Aとし、イエローインク、ブラックインクをインク組成物Bとすることが好ましい。すなわち、シアンインク、マゼンタインク、及び、ホワイトインクは式(I)で表される化合物を含有し、イエローインク及びブラックインクは式(I)で表される化合物を任意で含有し、好ましくは、イエローインク及びブラックインクは式(I)で表される化合物を含有しない。吐出及び露光(紫外線の照射)の好ましい態様としては、ホワイトインクの吐出→色間露光→シアンインクの吐出→色間露光→マゼンタインクの吐出→色間露光→イエローインクの吐出→ブラックインクの吐出→最終露光の順が例示できる。ここで、イエローインクとブラックインクは、同一領域に吐出しないと考えられるため、イエローインクの吐出後の色間露光は省略している。
【0027】
シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク、ホワイトインク、オレンジインク及びバイオレットインクの組合せとする場合は、シアンインク、マゼンタインク、ホワイトインク、オレンジインク、バイオレットインクをインク組成物Aとし、イエローインク、ブラックインクをインク組成物Bとすることが好ましい。吐出及び露光(紫外線の照射)の好ましい態様としては、ホワイトインクの吐出→色間露光→シアンインクの吐出→色間露光→マゼンタインクの吐出→色間露光→オレンジインクの吐出→色間露光→バイオレットインクの吐出→色間露光→イエローインクの吐出→ブラックインクの吐出→最終露光の順が例示できる。
【0028】
(下塗り液)
被記録媒体(基材)への密着性や被記録媒体(基材)への濡れ性を制御する観点から、本発明のインクジェット記録方法は、被記録媒体(基材)に対して下塗り液を付与する工程をさらに有していてよい。さらに、下塗り液を半硬化する工程を有することが好ましい。また、本発明のインクジェット記録装置は、下塗り液を付与する手段及び下塗り液を半硬化する手段を有することが好ましい。
下塗り液は、少なくとも重合性化合物及び光重合開始剤を含み、さらに界面活性剤を含むことが好ましい。
重合性化合物は画像定着性の観点から、該下塗り液への添加濃度として、下塗り液の総重量に対して、40重量%以上98重量%以下であることが好ましく、50重量%以上95重量%以下であることがより好ましく、60重量%以上90重量%以下であることが特に好ましい。重合性化合物の添加量が上記範囲内であると、硬化性に優れ、また、粘度が適切であるので好ましい。
光重合開始剤の添加濃度としては、下塗り液の総重量に対して、0.1〜20.0重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜18.0重量%、さらに好ましくは1.0〜15.0重量%である。光重合開始剤の添加量が上記範囲内であると、硬化性に優れ、また、表面ベトツキ低減の観点から適切であるので好ましい。
【0029】
被記録媒体上に均一に塗設する観点から、下塗り液の25℃における粘度は1,000mPa・s以下又は60℃における粘度が300mPa・s以下であることが好ましく、25℃における粘度は600mPa・s以下又は60℃における粘度が200mPa・s以下であることがより好ましく、25℃における粘度は400mPa・s以下又は60℃における粘度が150mPa・s以下であることが特に好ましい。
同じく、被記録媒体上に均一に塗設する観点から、下塗り液の25℃における表面張力は16mN/m以上38mN/m以下が好ましく、18mN/m以上33mN/m以下がより好ましく、20mN/m以上30mN/m以下がさらに好ましい。
粘度及び表面張力の測定は上述の通りである。
【0030】
次に、インク組成物A、インク組成物B及び下塗り液に使用される各成分について詳述する。
(A)重合性化合物
本発明において、インク組成物A、インク組成物B及び下塗り液は、重合性化合物を含有する。重合性化合物としてはラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物が挙げられるが、本発明において、重合性化合物として、ラジカル重合性化合物を使用することが好ましい。
【0031】
<ラジカル重合性化合物>
本発明において、ラジカル重合性化合物としては、エチレン性不飽和結合を有する化合物(エチレン性不飽和化合物)を使用することが好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド化合物、ビニル化合物(例えば、脂肪族ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、N−ビニル化合物)が例示できる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸」との記載は、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」のいずれか一方、又は両方を指す省略的な表記であり、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリレート等の表記も同様である。
これらの中でもエチレン性不飽和結合を有する化合物としては、各種(メタ)アクリレートモノマーが好ましく使用でき、アクリレートモノマーがより好ましい。
(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソアミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、ラクトン変性可とう性(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の単官能モノマーが挙げられる。
【0032】
また、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO(エチレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO(プロピレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能モノマーが挙げられる。
この他、重合性のオリゴマー類も、モノマー同様に配合可能である。重合性オリゴマーとしては、エポキシアクリレート、脂肪族ウレタンアクリレート、芳香族ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、直鎖アクリルオリゴマー等が挙げられる。
【0033】
本発明において、ラジカル重合性化合物として、環状構造を有するラジカル重合性モノマーを使用することが好ましく、環状構造を有するラジカル重合性モノマーとして、脂肪族環状構造を有する単官能ラジカル重合性モノマー及び/又は芳香族単官能ラジカル重合性モノマーを使用することが好ましい。
脂肪族環状構造を有する単官能ラジカル重合性モノマー及び芳香族単官能ラジカル重合性モノマーは、以下の式(A1)で表される単官能ラジカル重合性モノマーであることが好ましい。なお、脂肪族環状構造を有する単官能ラジカル重合性モノマーとは、ヘテロ原子を含んでもよい脂環式炭化水素基を有する単官能ラジカル重合性モノマーであり、芳香族単官能ラジカル重合性モノマーとは、芳香族基を有する単官能ラジカル重合性モノマーである。また、単官能ラジカル重合性モノマーは、重合性のあるエチレン性不飽和結合を1つのみ有する化合物であり、重合性のあるエチレン性不飽和結合を有する基としては、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニル基、ビニルオキシ基が好ましく例示できる。
なお、脂肪族環状構造を有するラジカル重合性モノマーは、脂肪族環状構造の他にラジカル重合性基を有しており、脂肪族環状構造内に有するエチレン性不飽和結合は、重合性のあるエチレン性不飽和結合に該当しないものとする。
【0034】
【化4】

【0035】
上記式(A1)において、R1は水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜4のアルキル基を表し、X1は、単結合、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−C(O)O−又は−OC(O)−)、アミド結合(―C(O)NH−、又は、−NHC(O)−)、カルボニル結合(−C(O)―)、分岐を有していてもよい炭素数20以下のアルキレン基、又はこれらを組み合わせた第2の二価の連結基が結合してもよく、第1の二価の連結基のみ又は第2の二価の連結基を有する場合はエーテル結合、エステル結合及び炭素数20以下のアルキレン基を有するものが好ましい。
2は単環芳香族基及び多環芳香族基を含む芳香族基又は脂環式炭化水素基であり、前記芳香族基及び脂環式炭化水素基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、シロキサン基、炭素数30以下の置換基を有していてもよく、前記芳香族基又は脂環炭化水素基の環状構造には、O、N、S等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0036】
上記式(A1)において、R1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、より好ましくは水素原子又はメチル基であり、特に好ましくは水素原子である。
また、X1はエステル結合(−C(O)O−)を有するものであることが好ましい。
すなわち、本発明において、脂肪族環状構造を有する単官能ラジカル重合性モノマー及び芳香族単官能ラジカル重合性モノマーは、アクリレート(アクリル酸エステル)又はメタクリレート(メタクリル酸エステル)であることが好ましい。
【0037】
これらの脂肪族環状構造を有する単官能ラジカル重合性モノマー及び芳香族単官能ラジカル重合性モノマーの含有量は、インク組成物A及びインク組成物Bの1.0〜80.0重量%であることが好ましい。含有量が上記範囲内であると、良好な硬化性及び硬化膜の柔軟性を得ることができるので好ましい。より好ましくは、5.0〜70.0重量%であり、さらに好ましくは10.0〜60.0重量%である。
なお、脂肪族環状構造を有する単官能ラジカル重合性モノマーと、芳香族単官能ラジカル重合性モノマーとを併用することもできるし、いずれか一方のみを用いることも好ましい。
【0038】
〔脂肪族環状構造を有する単官能ラジカル重合性モノマー〕
式(A1)のR2は脂環式炭化水素基でもよい。また、O、N、Sなどのヘテロ原子を含む脂環式炭化水素基を有する基でもよい。
脂環式炭化水素基は、炭素数3〜12のシクロアルカン類を有する基でもよい。
上記O、N、Sなどのヘテロ原子を含む脂環式炭化水素基は、具体的には、ピロリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、イソオキサゾリジン、イソチアゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルフォリン、チオモルフォリン、ジアゾール、トリアゾール、テトラゾールから1つ以上の水素を除いた基が例示できる。
これらの脂環式炭化水素基及びヘテロ環を有する脂環式炭化水素基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、シロキサン基、さらに置換基を有していてもよい総炭素数30以下の炭化水素基若しくはO、N、S等のヘテロ原子を含む複素環基、又は、二価の置換基としてオキシ基(=O)であることが好ましい。
【0039】
脂肪族環状構造を有する単官能ラジカル重合性モノマーは、下記式(A2)で表されるノルボルネン骨格を有する化合物であることがより好ましい。
【0040】
【化5】

【0041】
式(A2)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜4のアルキル基を表し、X1は二価の連結基を表し、エーテル基(−O−)、エステル基(−C(O)O−若しくは−OC(O)−)、アミド基(−C(O)NR’−)、カルボニル基(−C(O)−)、イミノ基(−NR’−)、置換基を有していてもよい炭素数1〜15のアルキレン基、又は、これらを2以上組み合わせた二価の基であることが好ましい。なお、R’は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状若しくは環状アルキル基、又は、炭素数6〜20のアリール基を表す。R2は置換基を表し、rは0〜5の整数を表し、qは環状炭化水素構造を表し、前記環状炭化水素構造として炭化水素結合以外にカルボニル結合(−C(O)−)及び/又はエステル結合(−C(O)O−)を含んでいてもよく、r個存在するR2はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよく、また、ノルボルネン骨格中の一炭素原子をエーテル結合(−O−)及び/又はエステル結合(−C(O)O−)で置換してもよい。
式(A2)中、R1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、より好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0042】
式(A2)におけるX1のビニル基と結合する端部は、X1のカルボニル炭素とビニル基とが結合するエステル基又はアミド基であることが好ましく、より好ましくはエステル結合である。特に、H2C=C(R1)−C(O)O−の構造を有するものであることが好ましい。その場合、ノルボルネン骨格と結合するX1の他の部分は、単結合であっても、前記の基から任意に選択したものであってもよい。
1及びX1を含むビニル部分(H2C=C(R1)−X1−)は、脂環式炭化水素構造上の任意の位置で結合することができる。なお、「脂環式炭化水素構造上」とは、式(A2)におけるノルボルネン構造上及びqを含む環状炭化水素構造上を指す。
また、着色剤との親和性を向上させるという観点から、式(A2)におけるX1の脂環式炭化水素構造と結合する端部は、酸素原子であることが好ましく、エーテル性酸素原子であることがより好ましく、式(A2)におけるX1は−C(O)O(CH2CH2O)p−(pは1又は2を表す。)であることがさらに好ましい。
【0043】
式(A2)におけるR2はそれぞれ独立に置換基を表し、脂環式炭化水素構造上の任意の位置で結合することができる。また、r個存在するR2はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
r個存在するR2は、それぞれ独立に一価又は多価の置換基であってもよく、一価の置換基として水素原子、ヒドロキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、チオール基、シロキサン基、さらに置換基を有していてもよい総炭素数30以下の炭化水素基若しくは複素環基、又は、二価の置換基としてオキシ基(=O)であることが好ましい。
2の置換数rは0〜5の整数を表す。
【0044】
式(A2)におけるqは、環状炭化水素構造を表し、その両端はノルボルネン骨格の任意の位置で置換していてもよく、単環構造であっても、多環構造であってもよく、また、前記環状炭化水素構造として炭化水素結合以外に、カルボニル結合(−C(O)−)及び/又はエステル結合(−C(O)O−)を含んでいてもよい。
【0045】
前記式(A2)で表されるモノマーとしては、式(A3)又は式(A4)で表されるモノマーであることが好ましい。なお、式(A4)中の環状炭化水素構造中の不飽和結合は、ラジカル重合性が低く、本発明において、式(A4)で表される化合物は単官能ラジカル重合性モノマーであるとする。
【0046】
【化6】

【0047】
式(A3)及び式(A4)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜4のアルキル基を表し、X1は二価の連結基を表し、R3及びR4はそれぞれ独立に置換基を表し、s及びtはそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、また、s個存在するR3及びt個存在するR4はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
【0048】
式(A3)又は式(A4)におけるR1及びX1は、式(A2)におけるR1及びX1と同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(A3)又は式(A4)におけるR1及びX1を含むビニル部分は、式(A3)又は式(A4)における下記に示す各脂環式炭化水素構造上の任意の位置で結合することができる。
【0049】
【化7】

【0050】
式(A3)又は式(A4)におけるR3及びR4はそれぞれ独立に置換基を表し、式(A3)、又は式(A4)における上記各脂環式炭化水素構造上の任意の位置で結合することができる。R3及びR4における置換基は、式(A2)のR2における置換基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(A3)又は式(A4)におけるs及びtはそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、また、s個存在するR3及びt個存在するR4はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
【0051】
式(A2)で表されるモノマーとして、単官能アクリレートの好ましい具体例を以下に示す。
なお、下記例示化合物の一部において、炭化水素鎖を炭素(C)及び水素(H)の記号を省略した簡略構造式で記載する。
【0052】
【化8】

【0053】
式(A2)で表されるモノマーとして、単官能メタクリレートの好ましい具体例を以下に示す。
【0054】
【化9】

【0055】
式(A2)で表されるモノマーとして、単官能アクリルアミドの好ましい具体例を以下に示す。
【0056】
【化10】

【0057】
〔芳香族単官能ラジカル重合性モノマー〕
芳香族単官能ラジカル重合性モノマーは、以下の式(A5)で表される重合性モノマーであることが好ましい。
【0058】
【化11】

(式(A5)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜4のアルキル基を表し、X1は二価の連結基を表し、R5は置換基を表し、uは0〜5の整数を表し、また、u個存在するR5はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよく、複数のR5がお互いに結合して環を形成してもよく、その環は芳香環であってもよい。)
【0059】
式(A5)中、R1として好ましくは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、より好ましくは水素原子又はメチル基であり、さらに好ましくは水素原子である。
1は式(A2)におけるX1と同義であり、その好ましい範囲も同じである。
u個存在するR5は、それぞれ独立に一価又は多価の置換基であってもよく、一価の置換基として水素原子、ヒドロキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、チオール基、シロキサン基、又は、さらに置換基を有していてもよい総炭素数30以下の炭化水素基若しくは複素環基であることが好ましい。
【0060】
式(A5)中、複数のR5は、お互いに結合して環を形成している場合には、芳香環を形成していることが好ましい。
すなわち、式(A5)中、芳香族基として好ましいものは、単環芳香族であるベンゼンから1つ以上の水素を除いた基(フェニル基、フェニレン基等)のほか、2〜4つの環を有する多環芳香族基であり、限定されるものではない。具体的には、ナフタレン、アントラセン、1H−インデン、9H−フルオレン、1H−フェナレン、フェナントレン、トリフェニレン、ピレン、ナフタセン、テトラフェニレン、ビフェニレン、as−インダセン、s−インダセン、アセナフチレン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、クリセン、プレイアンデン等から1つ以上の水素原子を除いた基が例示できる。
【0061】
これらの芳香族基は、O、N、S等のヘテロ原子を含む芳香族複素環基であってもよい。具体的には、フラン、チオフェン、1H−ピロール、2H−ピロール、1H−ピラゾール、1H−イミダゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、2H−ピラン、2H−チオピラン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール等の単環芳香族複素環化合物から、少なくとも1つの水素原子を除いた基が挙げられる。
【0062】
また、チアントレン、イソベンゾフラン、イソクロメン、4H−クロメン、キサンテン、フェノキサチイン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、4H−キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、β−カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピロリジン、等の多環芳香族複素環化合物から、少なくとも1つの水素原子を除いた基が挙げられる。
【0063】
上記の芳香族基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、シロキサン基、炭素数30以下の置換基を1又は2以上有していてもよい。例えば無水フタル酸や無水フタルイミドのように芳香族基が有する2以上の置換基でO、N、S等のヘテロ原子を含む環状構造を形成してもよい。
【0064】
本発明において、多環芳香族基としてさらに好ましいものは、2〜3つの環を有する多環芳香族基であり、特に好ましいものは、ナフチル基である。
【0065】
芳香族単官能ラジカル重合性モノマーの具体例として[L−1]〜[L−67]が好ましく挙げられるが、下記に限定されたものではない。
【0066】
【化12】

【0067】
【化13】

【0068】
【化14】

【0069】
【化15】

【0070】
【化16】

【0071】
【化17】

【0072】
なお、後述する(D)アミン化合物が重合性化合物に該当する場合がある。例えば、(D)アミン化合物がエチレン性不飽和結合を有する場合が例示できる。本発明において、ラジカル重合性化合物として、アミン化合物に該当しない、その他のラジカル重合性化合物を含有することが好ましく、特に3級アミン化合物に該当しない、その他の重合性化合物を含有することが好ましい。また、前述した重合性化合物の好ましい含有量には、(D)アミン化合物に該当する化合物の含有量は含まない。
【0073】
(B)光重合開始剤
本発明において、インク組成物A、インク組成物B及び下塗り液は、光重合開始剤を含有することが好ましい。なお、下塗り液を熱により硬化させる場合には、下塗り液に熱重合開始剤を添加することもでき、公知の熱重合開始剤から適宜選択することができる。
【0074】
本発明に用いることのできる光重合開始剤は、活性放射線の照射により重合開始種を生成する化合物である。活性放射線としては、γ線、β線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線が例示できるが、本発明において、紫外線が好ましい。
【0075】
本発明において、インク組成物Aは、光重合開始剤として、アシルホスフィンオキサイド化合物及びα−アミノアセトフェノン化合物よりなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有することが好ましい。化合物(I)とともに、光重合開始剤として、アシルホスフィンオキサイド化合物及び/又はα−アミノアセトフェノン化合物を使用することにより、インク組成物Aの硬化性を高めることができる。特に、これらの光重合開始剤を使用することにより、膜内部での硬化性を高めることができる。
また、本発明において、インク組成物Aは、光重合開始剤として、少なくとも一種のアシルホスフィンオキサイド化合物及び、少なくとも一種のα−アミノアセトフェノン化合物を併用することがより好ましい。
また、本発明において、インク組成物Aは光重合開始剤として、アシルホスフィンオキサイド化合物及びα−ヒドロキシアセトフェノン化合物以外にも公知のラジカル重合開始剤を使用することができる。
また、インク組成物B及び下塗り液において、光重合開始剤は、アシルホスフィンオキシアド化合物及びα−アミノアセトフェノン化合物を含む、公知の光重合開始剤から適宜選択することができる。
好ましく用いることができるアシルホスフィンオキサイド化合物及びα−アミノアセトフェノン化合物は以下の通りである。
【0076】
<アシルホスフィンオキサイド化合物>
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、下記式(2)又は下記式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【0077】
【化18】

【0078】
前記式(2)中のR1及びR2は、それぞれ独立に脂肪族基、芳香族基、脂肪族オキシ基、芳香族オキシ基、複素環基を表し、R3は、脂肪族基、芳香族基、複素環基を表す。前記R1とR2は結合して5員環乃至9員環を形成してもよい。前記環構造は、環構造中に酸素原子、窒素原子、硫黄原子等を有する複素環であってもよい。
前記R1、R2又はR3で表される脂肪族基は、例えば、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アラルキル基、又は置換アラルキル基等が挙げられ、中でも、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アラルキル基、又は置換アラルキル基が好ましく、アルキル基、置換アルキル基が特に好ましい。また、前記脂肪族基は、環状脂肪族基でも鎖状脂肪族基でもよい。また、鎖状脂肪族基は分岐を有していてもよい。
前記アルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアルキル基が挙げられ、該アルキル基の炭素原子数としては、1以上30以下が好ましく、1以上20以下がより好ましい。置換アルキル基のアルキル部分の炭素原子数の好ましい範囲については、アルキル基の場合と同様である。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、ネオペンチル基、イソプロピル基、イソブチル基等が挙げられる。
前記置換アルキル基の置換基としては、−COOH(カルボキシル基)、−SO3H(スルホ基)、−CN(シアノ基)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、−OH(ヒドロキシ基)、炭素数30以下のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基)、炭素数30以下のアルキルスルホニルアミノカルボニル基、炭素数30以下のアリールスルホニルアミノカルボニル基、炭素数30以下のアルキルスルホニル基、炭素数30以下のアリールスルホニル基、炭素数30以下のアシルアミノスルホニル基、炭素数30以下のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基、フェノキシエトキシ基、フェネチルオキシ基等)、炭素数30以下のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、メチルチオエチルチオエチル基等)、炭素数30以下のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、p−トリルオキシ基、1−ナフトキシ基、2−ナフトキシ基等)、ニトロ基、炭素数30以下のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数30以下のアリールオキシカルボニルオキシ基、炭素数30以下のアシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等)、炭素数30以下のアシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等)、炭素数30以下のカルバモイル基(例えば、カルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、モルホリノカルボニル基、ピペリジノカルボニル基等)、炭素数30以下の置換されていてもよいスルファモイル基(例えば、スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、モルホリノスルホニル基、ピペリジノスルホニル基等)、炭素数30以下のアリール基(例えば、フェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、α−ナフチル基等)、炭素数30以下の置換アミノ基(例えば、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アシルアミノ基等)、置換ウレイド基、置換ホスホノ基、複素環基等が挙げられる。ここで、カルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシ基、ホスホノ基は、塩の状態であってもよい。その際、塩を形成するカチオンは、陽イオンを形成し得る基であり、有機カチオン性化合物、遷移金属配位錯体カチオン(特許2791143号公報に記載の化合物等)又は金属カチオン(例えば、Na+、K+、Li+、Ag+、Fe2+、Fe3+、Cu+、Cu2+、Zn2+、Al3+等)が好ましい。
【0079】
前記アルケニル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアルケニル基が挙げられ、該アルケニル基の炭素原子数としては、2以上30以下が好ましく、2以上20以下がより好ましい。また、該アルケニル基は、置換基を有する置換アルケニル基、無置換のアルケニル基のいずれであってもよく、置換アルケニル基のアルケニル部分の炭素原子数の好ましい範囲はアルケニル基の場合と同様である。前記置換アルケニル基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基が挙げられる。
前記アルキニル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアルキニル基が挙げられ、該アルキニル基の炭素原子数としては、2以上30以下が好ましく、2以上20以下がより好ましい。また、該アルキニル基は、置換基を有する置換アルキニル基、無置換のアルキニル基のいずれであってもよく、置換アルキニル基のアルキニル部分の炭素原子数の好ましい範囲はアルキニル基の場合と同様である。置換アルキニル基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基が挙げられる。
前記アラルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアルキル側鎖を有するアラルキル基が挙げられ、該アラルキル基の炭素原子数としては、7以上35以下が好ましく、7以上25以下がより好ましい。また、該アラルキル基は、置換基を有する置換アラルキル基、無置換のアラルキル基のいずれであってもよく、置換アラルキル基のアラルキル部分の炭素原子数の好ましい範囲はアラルキル基の場合と同様である。置換アラルキル基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基が挙げられる。また、アラルキル基のアリール部分が置換基を有していてもよく、該置換基としては前記置換アルキル基の場合と同様の置換基及び炭素数30以下の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が例示できる。
【0080】
前記R1、R2又はR3で表される芳香族基としては、例えば、アリール基、置換アリール基が挙げられる。アリール基の炭素原子数としては、6以上30以下が好ましく、6以上20以下がより好ましい。置換アリール基のアリール部分の好ましい炭素原子数の範囲としては、アリール基と同様である。前記アリール基としては、例えば、フェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基等が挙げられる。置換アリール基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基及び炭素数30以下の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が挙げられる。
前記R1又はR2で表される脂肪族オキシ基としては、炭素数1以上30以下のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、フェノキシエトキシ基等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
前記R1又はR2で表される芳香族オキシ基としては、炭素数6以上30以下のアリールオキシ基が好ましく、例えば、フェノキシ基、メチルフェニルオキシ基、クロロフェニルオキシ基、メトキシフェニルオキシ基、オクチルオキシフェニルオキシ基等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
前記R1、R2又はR3で表される複素環基としては、N、O又はS原子を含む複素環基が好ましく、例えば、ピリジル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピロリル基等が挙げられる。
【0081】
【化19】

【0082】
前記式(3)中のR4及びR6は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基、複素環基を表し、R5は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環基を表す。
前記R4、R5又はR6で表される、アルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基及びアリールオキシ基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、前記式(2)における場合と同様の置換基が挙げられる。
前記式(3)におけるアルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基及びアリールオキシ基としては、前記式(2)における場合と同義である。
【0083】
前記式(2)で表される化合物は、下記式(4)で表される化合物であることがより好ましい。
【0084】
【化20】

【0085】
式(4)中、R7及びR8はそれぞれ独立に、フェニル基、メトキシ基、又は、イソプロポキシ基を表し、R9は2,4,6−トリメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2−メチルフェニル基(o−トルイル基)、イソブチル基、又は、t−ブチル基を表す。
【0086】
前記式(3)で表される化合物は、下記式(5)で表される化合物であることがより好ましい。
【0087】
【化21】

【0088】
式(5)中、R10及びR12はそれぞれ独立に、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、又は、2,6−ジメトキシフェニル基を表し、R11はフェニル基、又は、2,4,4−トリメチルペンチル基を表す。
【0089】
前記式(2)又は(3)で表されるアシルホスフィンオキサイド化合物としては、例えば、特公昭63−40799号公報、特公平5−29234号公報、特開平10−95788号公報、特開平10−29997号公報等に記載の化合物を挙げることできる。
具体的なアシルホスフィンオキサイド化合物の例としては、以下に示す化合物(例示化合物(P−1)乃至(P−26))が挙げられるが、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0090】
【化22】

【0091】
【化23】

【0092】
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、モノアシルホスフィンオキサイド化合物及びビスアシルホスフィンオキサイド化合物等を使用することができ、モノアシルホスフィンオキサイド化合物としては、公知のモノアシルホスフィンオキサイド化合物を使用することができる。例えば特公昭60−8047号公報、特公昭63−40799号公報に記載のモノアシルホスフィンオキサイド化合物が挙げられる。具体例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスインオキサイド、イソブチリル−メチルホスフィン酸メチルエステル、イソブチリル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、ピバロイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、2−エチルヘキサノイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、ピバロイル−フェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、p−トルイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、o−トルイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、2,4−ジメチルベンゾイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、p−三級ブチルベンゾイル−フェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、アクリロイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、イソブチリル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2−エチルヘキサノイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、o−トルイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、p−三級ブチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、3−ピリジルカルボニル−ジフェニルホスフィンオキサイド、アクリロイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイル−フェニルホスフィン酸ビニルエステル、アジポイル−ビス−ジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、p−トルイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、4−(三級ブチル)−ベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−2−エチルヘキサノイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、1−メチル−シクロヘキサノイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル及びピバロイル−フェニルホスフィン酸イソプロピルエステル等が挙げられる。
【0093】
ビスアシルホスフィンオキサイド化合物としては公知のビスアシルホスフィンオキサイド化合物が使用できる。例えば特開平3−101686号、特開平5−345790号、特開平6−298818号の各公報に記載のビスアシルホスフィンオキサイド化合物が挙げられる。具体例としては、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−クロルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2,4−ジメトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−デシルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−オクチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロル−3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロル−3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メトキシ−1−ナフトイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−クロル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0094】
これらの中でも、本発明において、アシルホスフィンオキサイド化合物としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(IRGACURE 819:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド(DAROCUR TPO:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、LUCIRIN TPO:BASF社製)などが好ましい。
【0095】
<α−アミノアセトフェノン化合物>
α−アミノアセトフェノン化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を使用することもできる。
該α−アミノアセトフェノン化合物としては下記の式(1)で表される化合物を好ましく用いることができる。
【0096】
【化24】

【0097】
式中X1は下記(a)、(b)又は(c)で表される基を表す。
【0098】
【化25】

式中pは0又は1である。
【0099】
【化26】

式中qは0乃至3の整数であり、rは0又は1である。
【0100】
【化27】

【0101】
式中、Yは水素原子、ハロゲン原子、OH基、炭素数1以上12以下のアルキル基(なお、特に断りのない場合、アルキル基とは直鎖状又は分岐状のアルキル基を意味する。本発明において、同様。)、炭素数1以上12以下のアルコキシ基、芳香環基、又は、複素環基を表す。前記芳香環基としては、フェニル基、又は、ナフチル基が好ましく例示できる。また、前記複素環基としては、フリル基、チエニル基、又は、ピリジル基が好ましく例示できる。
Yにおけるアルキル基、アルコキシ基、芳香環基、及び、複素環基は置換基を有していてもよい。
Yにおけるアルキル基が有していてもよい置換基としては、OH基、ハロゲン原子、−N(X102(X10は水素原子、炭素数1以上8以下のアルキル基、炭素数3以上5以下のアルケニル基、炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基、炭素数1以上4以下のヒドロキシアルキル基、若しくはフェニル基を表す。)、炭素数1以上12以下のアルコキシ基、−COOR(Rは炭素数1以上18以下のアルキル基を表す。)、−CO(OCH2OCH2nOCH3(nは1以上20以下の整数を表す。)、又は、−OCOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)が挙げられる。
Yにおけるアルコキシ基が有していてもよい置換基としては、−COOR(Rは炭素数1以上18以下のアルキル基を表す。)、又は、−CO(OCH2CH2nOCH3(nは1以上20以下の整数を表す。)が挙げられる。
Yにおける芳香環基又は複素環基が有していてもよい置換基としては、−(OCH2CH2nOH(nは1以上20以下の整数を表す。)、−(OCH2CH2nOCH3(nは1以上20以下の整数を表す。)、炭素数1以上8以下のアルキルチオ基、フェノキシ基、−COOR(Rは炭素数1以上18以下のアルキル基を表す。)、−CO(OCH2CH2nOCH3(nは1以上20以下の整数を表す。)、フェニル基、又は、ベンジル基が挙げられる。
これら置換基は、可能であれば2以上有していてもよく、可能であれば、置換基をさらに置換していてもよい。
また、式中、X12は水素原子、炭素数1以上8以下のアルキル基、又は、フェニル基を表す。X13、X14及びX15は互いに独立して水素原子、又は、炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。X13とX14とは架橋して炭素数3以上7以下のアルキレン基を形成してもよい。
【0102】
式中X2は前記X1と同じ基、炭素数5若しくは6のシクロアルキル基、炭素数1以上12以下のアルキル基、又は、フェニル基を表す。
2におけるアルキル基、及び、フェニル基は置換基を有していてもよい。
2におけるアルキル基が有していてもよい置換基としては、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、フェノキシ基、ハロゲン原子、又は、フェニル基が挙げられる。
2におけるフェニル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、又は、炭素数1以上4以下のアルコキシ基が挙げられる。
これら置換基は、可能であれば2以上有していてもよく、可能であれば、置換基をさらに置換していてもよい。
また、式中X1とX2とは架橋して次式で表される基を形成してもよい。
【0103】
【化28】

【0104】
式中X3は水素原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数3以上5以下のアルケニル基、炭素数5以上12以下のシクロアルキル基、又は、炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基を表す。
3におけるアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、及び、フェニルアルキル基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、OH基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、−CN、又は、−COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)が挙げられる。
式中X4は炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数3以上5以下のアルケニル基、炭素数5以上12以下のシクロアルキル基、炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基、又は、フェニル基を表す。
4におけるアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、フェニルアルキル基、及び、フェニル基は置換基を有していてもよい。
4におけるアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、及び、フェニルアルキル基が有していてもよい置換基としては、OH基、炭素数1以上4以下のアルコキシル基、−CN、又は、−COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)が挙げられる。また、X4におけるアルキル基が置換基を有する場合、置換されるアルキル基の炭素数は2以上4以下であることが好ましい。
4におけるフェニル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、又は、−COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)が挙げられる。
ここで、X2とX4とは架橋して炭素数1以上7以下のアルキレン基、炭素数7以上10以下のフェニルアルキレン基、o−キシリレン基、2−ブテニレン基、又は、炭素数2若しくは3のオキサ−若しくはアザ−アルキレン基を形成してもよい。
また、X3とX4とは架橋して炭素数3以上7以下のアルキレン基を形成してもよい。
3とX4とが架橋して形成するアルキレン基は、置換基として、OH基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、又は、−COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキルを表す。)を有していてもよく、また、結合中に−O−、−S−、−CO−、又は、−N(X16)−(X16は水素原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、又は、結合鎖中に1若しくは2以上の−O−を介在させた炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数3以上5以下のアルケニル基、炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基、炭素数1以上4以下のヒドロキシアルキル基、−CH2CH2CN、−CH2CH2COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)、炭素数2以上8以下のアルカノイル基若しくはベンゾイル基を介在させた炭素数1以上12以下のアルキル基を表す。)を介在させてもよい。
式中X5、X6、X7、X8、X9は互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数5若しくは6のシクロアルキル基、フェニル基、ベンジル基、ベンゾイル基、−OX17基、−SX18基、−SO−X18基、−SO2−X18基、−N(X19)(X20)基、−NH−SO2−X21基、又は、次式で表される基を表す。
【0105】
【化29】

【0106】
式中、Zは−O−、−S−、−N(X10)−X11−N(X10)−又は次式で表される基を表す。X1、X2、X3及びX4は前記式(1)と同義である。
【0107】
【化30】

【0108】
式中X10は前記と同じ、X11は炭素数が2以上16以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又はこれらの鎖中に1以上の−O−、−S−、若しくはN(X10)−が介在する炭素数が2以上16以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基(X10は前記と同じ)を表す。
17は水素原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、−(CH2CH2O)nH(nは2以上20以下の整数)、炭素数2以上8以下のアルカノイル基、炭素数3以上12以下のアルケニル基、シクロヘキシル基、ヒドロキシシクロヘキシル基、フェニル基、炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基、又は、−Si(R4r(R53-r(R4は炭素数1以上8以下のアルキル基、R5はフェニル基、rは1、2若しくは3)を表す。
17におけるアルキル基、及び、フェニル基は置換基を有していてもよい。
17におけるアルキル基が有していてもよい置換基としては、−CN、−OH、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数3以上6以下のアルケニルオキシ基、−OCH2CH2CN、−CH2CH2COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)、−COOH、又は、−COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)が挙げられる。また、X17におけるアルキル基が置換基を有する場合、置換されるアルキル基の炭素数は1以上6以下であることが好ましい。
17におけるフェニル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、又は、炭素数1以上4以下のアルコキシ基が挙げられる。
18は水素原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数3以上12以下のアルケニル基、シクロヘキシル基、フェニル基、又は、炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基を表す。
18におけるアルキル基、及び、フェニル基は置換基を有していてもよい。
18におけるアルキル基が有していてもよい置換基は、−SH、−OH、−CN、−COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、−OCH2CH2CN、又は、−OCH2CH2COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキルを表す。)が挙げられる。
18におけるフェニル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、又は、炭素数1以上4以下のアルコキシ基が挙げられる。
19及びX20は互いに独立して水素原子;炭素数1以上12以下のアルキル基;炭素数2以上4以下のヒドロキシアルキル基;炭素数2以上10以下のアルコキシアルキル基;炭素数3以上5以下のアルケニル基;炭素数5以上12以下のシクロアルキル基;炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基;フェニル基;ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基若しくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基により置換されたフェニル基;又は炭素数2若しくは3のアルカノイル基;又はベンゾイル基を表す。また、X19とX20とは架橋して炭素数2以上8以下のアルキレン基、又は、OH基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基若しくはCOOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル)基により置換された炭素数2以上8以下のアルキレン基;結合鎖中に−O−、−S−若しくはN(X16)−を介在させた炭素数2以上8以下のアルキレン基(X16は前記と同じ)を形成してもよい。
21は炭素数1以上18以下のアルキル基;フェニル基;ナフチル基;又は、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基若しくは炭素数1以上8以下のアルコキシ基によって置換されたフェニル基若しくはナフチル基を表す。
【0109】
式(1)は式(d)で表されることがより好ましい。
【0110】
【化31】

【0111】
式(d)中、X1及びX2はそれぞれ独立に、メチル基、エチル基、又は、ベンジル基を表し、−NX34はジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基又は、モルフォリノ基を表し、X5は、水素原子、炭素数1以上8以下のアルキル基、炭素数1以上8以下のアルコキシ基、炭素数1以上8以下のアルキルチオ基、ジメチルアミノ基、又は、モルフォリノ基を表す。これらの中でも−NX34はジメチルアミノ基、又は、モルフォリノ基であることがより好ましい。
【0112】
さらに、α−アミノアセトフェノン化合物として、上記式(1)で表される化合物の酸付加物塩を使用することもできる。
また、市販のα−アミノアセトフェノン化合物として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製からイルガキュア907(IRGACURE 907)、イルガキュア369(IRGACURE 369)、イルガキュア379(IRGACURE 379)の商品名で入手可能な重合開始剤が例示できる。
【0113】
α−アミノアセトフェノン化合物として、具体的には、以下の化合物が例示できる。
例えば、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ジエチルアミノ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルホリノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−(4−メチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−エチルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−イソプロピルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ブチルフェニル)−2−ジメチルアミノ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(IRGACURE 907)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(IRGACURE 369)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−ジメチルアミノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォルニル)フェニル]−1−ブタノン(IRGACURE 379)などが挙げられる。
【0114】
<その他重合開始剤>
本発明において、インク組成物A、インク組成物B及び下塗り液は、その他の光重合開始剤を含有することができる。重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。
具体的な光重合開始剤は当業者間で公知のものを制限なく使用でき、具体的には、例えば、Bruce M. Monroeら著、Chemical Revue, 93, 435 (1993)や、R. S. Davidson著、Journal of Photochemistry and Biology A: Chemistry, 73, 81 (1993)や、J. P. Faussier "Photoinitiated Polymerization - Theory and Applications": Rapra Review, vol.9, Report, Rapra Technology (1998)や、M. Tsunooka et al., Prog. Polym. Sci., 21, 1 (1996)に多く、記載されている。また、有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照、に化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が多く記載されている。さらには、F. D. Saeva, Topics in Current Chemistry, 156, 59 (1990)、G. G. Maslak, Topics in Current Chemistry, 168, 1 (1993)、H. B. Shuster et al, JACS, 112, 6329 (1990)、I. D. F. Eaton et al, JACS, 102, 3298 (1980)等に記載されているような、増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、酸化的若しくは還元的に結合解裂を生じる化合物群も知られる。
【0115】
(C)式(I)で表される化合物
本発明のインク組成物は、増感剤として、(C)式(I)で表される化合物を含有する。
【0116】
【化32】

【0117】
前記式(I)において、Xは、O、S又はNRを表す。Rは、水素原子、アルキル基又はアシル基を表し、アルキル基又はアシル基であることが好ましい。
前記式(I)において、nは、0又は1を表す。
Xとしては、O又はSであることが好ましく、Sであることがより好ましい。
なお、nが0の場合、R7及びR8と結合した炭素原子は存在せず、ヘテロ原子を含むXと、R5及びR6と結合した炭素原子と、が直接結合して、Xを含む5員のヘテロ環を構成することになる。
【0118】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の置換基を表す。
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8における一価の置換基としては、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、スルフィニル基、ホスホリル基、アシル基、カルボキシル基又はスルホ基などが挙げられる。中でも、アルキル基又はハロゲン原子であることが好ましい。
【0119】
式(I)におけるR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が一価の置換基を表す場合のアルキル基としては、炭素数1〜10個のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基のような炭素数1〜4個のものがより好ましい。
同様に、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基のような炭素数1〜4個のものが好ましく挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができる。
【0120】
1、R2、R3及びR4は、それぞれ隣接する2つが互いに連結(例えば縮合)して環を形成していてもよい。
これらが環を形成する場合の環構造としては、5又は6員環の脂肪族環、芳香族環などが挙げられ、炭素原子以外の元素を含む複素環であってもよく、また、形成された環同士がさらに組み合わさって2核環、例えば、縮合環を形成していてもよい。さらにこれらの環構造は、前記式(I)において、R1乃至R8が一価の置換基を表す場合に例示した置換基をさらに有していてもよい。形成された環構造が複素環である場合のヘテロ原子の例としては、N、O及びSを挙げることができる。
【0121】
n=1の場合、R5又はR6と、R7又はR8は互いに連結して脂肪族環を形成してもよいが、芳香族環を形成することはない。脂肪族環は、3〜6員環であることが好ましく、5又は6員環であることがより好ましい。
【0122】
前記式(I)で表される化合物は、下記式(I−A)で表される化合物であることが好ましい。
【0123】
【化33】

【0124】
前記式(I−A)において、XはO又はSを表し、nは0又は1を表し、R1A、R2A、R3A、R4A、R5A、R6A、R7A及びR8Aはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシル基又はスルホ基を表す。R1A、R2A、R3A及びR4Aは、それぞれ隣接する2つが互いに連結(縮合)して環を形成していてもよい。R5A又はR6Aと、R7A又はR8Aは互いに連結して脂肪族環を形成してもよいが、芳香族環を形成することはない。
さらにこれらの環構造は、前記式(I)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が一価の置換基を表す場合に例示した各置換基をさらに有していてもよい。環構造が複素環の場合、ヘテロ原子の例としては、N、O及びSを挙げることができる。
【0125】
また、前記式(I)で表される化合物は、下記式(I−B)で表される化合物であることがより好ましい。
【0126】
【化34】

【0127】
前記式(I−B)において、XはO又はSを表し、R1B、R2B、R3B、R4B、R5B、R6B、R7B及びR8Bはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシル基又はスルホ基を表す。また、R1B、R2B、R3B及びR4Bは、それぞれ隣接する2つが互いに連結(縮合)して環を形成していてもよい。R5B又はR6Bと、R7B又はR8Bは互いに連結して脂肪族環を形成してもよいが、芳香族環を形成することはない。
さらにこれらの環構造は、前記式(I)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が一価の置換基を表す場合に例示した各置換基をさらに有していてもよい。環構造が複素環の場合、ヘテロ原子の例としては、N、O及びSを挙げることができる。
【0128】
さらに、前記式(I)で表される化合物は、下記式(I−C)で表される化合物であることがさらに好ましい。
【0129】
【化35】

【0130】
前記式(I−C)において、R1C、R2C、R3C、R4C、R5C、R6C、R7C及びR8Cはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシル基又はスルホ基を表す。
1C、R2C、R3C及びR4Cは、それぞれ隣接する2つが互いに縮合して5又は6員環の脂肪族環、芳香族環を形成していてもよく、これらの環は、炭素原子以外の元素を含む複素環であってもよく、また、形成された環同士がさらに組み合わさって2核環、例えば、縮合環を形成していてもよい。R5C又はR6Cと、R7C又はR8Cは互いに連結して脂肪族環を形成してもよいが、芳香族環を形成することはない。
さらにこれらの環構造は、前記式(I)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が一価の置換基を表す場合に例示した各置換基をさらに有していてもよい。環構造が複素環の場合、ヘテロ原子の例としては、N、O及びSを挙げることができる。
【0131】
また、R1C、R2C、R3C、R4C、R5C、R6C、R7C及びR8Cのうちの少なくとも1つはハロゲン原子であることが好ましい。好ましい置換位置としてはR1C、R2C、R3C、R4Cが挙げられ、R2Cが最も好ましい。R1C〜R8Cにおけるハロゲン原子の数としては、1つ又は2つであることが好ましく、1つであることがより好ましい。
【0132】
2Cは、水素以外の置換基であることが好ましく、中でも、光源とのマッチングがよく高感度であるため、アルキル基、ハロゲン原子、アシルオキシ基又はアルコキシカルボニル基が好ましく、アルキル基又はハロゲン原子がより好ましい。
【0133】
7C及びR8Cのいずれかは、水素以外の置換基であることが好ましく、両方とも水素以外の置換基であることがさらに好ましい。好ましい置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基が挙げられ、中でもアルキル基、アルコキシカルボニル基が好ましく、アルキル基が最も好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができ、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。
【0134】
アルキル基としては、炭素数1〜10個のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基のような炭素数が1〜4個のものがより好ましい。
【0135】
アシルオキシ基としては炭素数2〜10個の脂肪族アシルオキシ基が好ましく、炭素数が2〜5個の脂肪族アシルオキシ基がより好ましい。
アルコキシカルボニル基としては炭素数2〜10個の脂肪族アルコキシカルボニル基が好ましく、炭素数が2〜5個のアルコキシカルボニル基がより好ましい。
【0136】
本発明に好適に用いることのできる式(I)で表される化合物の具体例〔例示化合物(I−1)〜(I−133)〕を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本発明における化学式の一部において、炭化水素鎖を炭素(C)及び水素(H)の記号を省略した簡略構造式で記載する場合もある。また、下記具体例において、Meはメチル基を表し、Butはt−ブチル基を表し、Priはイソプロピル基を表す。
【0137】
【化36】

【0138】
【化37】

【0139】
【化38】

【0140】
【化39】

【0141】
【化40】

【0142】
【化41】

【0143】
【化42】

【0144】
【化43】

【0145】
【化44】

【0146】
式(I)で表される化合物の合成方法としては、例えば、特開2004−189695号公報、Tetrahedron,第49巻,p939(1993年)、Journal of Organic Chemistry,p893(1945年)、及び、Journal of Organic Chemistry,p4939(1965年)などに記載の公知の方法によって合成することができる。
【0147】
本発明のインク組成物中における含有量について、前述した(B)重合開始剤との関連において述べれば、重量比で、(B)重合開始剤:(C)式(I)で表される化合物=200:1〜1:200であることが好ましく、50:1〜1:50であることがより好ましく、20:1〜1:5であることがさらに好ましい。
【0148】
〔他の増感剤〕
本発明においては、前記した式(I)で表される化合物に加え、公知の増感剤を本発明の効果を損なわない限りにおいて併用することができるが、本発明のインク組成物は、他の増感剤を含有しないことが好ましい。
本発明のインク組成物が他の増感剤を含有する場合、その含有量は、重量比で、式(I)で表される化合物に対して、式(I)で表される化合物:他の増感剤=1:5〜100:1であることが好ましく、1:1〜100:1であることがより好ましく、2:1〜100:1であることがさらに好ましい。
併用可能な他の増感剤の例としては、ベンゾフェノン、チオキサントン、イソプロピルチオキサントン、アントラキノン、3−アシルクマリン誘導体、ターフェニル、スチリルケトン、3−(アロイルメチレン)チアゾリン、ショウノウキノン、エオシン、ローダミン、エリスロシン、α−(p−ジメチルアミノベンジリデン)ケトンなどが挙げられる。
【0149】
併用可能な他の増感剤のさらなる例は、下記に示す通りである。
(1)チオキサントン
チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−ドデシルチオキサントン、2,4−ジ−エチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、1−メトキシカルボニルチオキサントン、2−エトキシカルボニルチオキサントン、3−(2−メトキシエトキシカルボニル)チオキサントン、4−ブトキシカルボニルチオキサントン、3−ブトキシカルボニル−7−メチルチオキサントン、1−シアノ−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−エトキシチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−アミノチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−フェニルスルフリルチオキサントン、3,4−ジ[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシカルボニル]チオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−(1−メチル−1−モルホリノエチル)チオキサントン、2−メチル−6−ジメトキシメチルチオキサントン、2−メチル−6−(1,1−ジメトキシベンジル)チオキサントン、2−モルホリノメチルチオキサントン、2−メチル−6−モルホリノメチルチオキサントン、n−アリルチオキサントン−3,4−ジカルボキシミド、n−オクチルチオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、N−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)チオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、1−フェノキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メトキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メチルチオキサントン、チオキサントン−2−ポリエチレングリコールエステル、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロリド;
【0150】
(2)ベンゾフェノン
ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−メトキシベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジメチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−(4−メチルチオフェニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチル−2−ベンゾイルベンゾアート、4−(2−ヒドロキシエチルチオ)ベンゾフェノン、4−(4−トリルチオ)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N,N−トリメチルベンゼンメタンアミニウムクロリド、2−ヒドロキシ−3−(4−ベンゾイルフェノキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロリド一水和物、4−(13−アクリロイル−1,4,7,10,13−ペンタオキサトリデシル)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]エチルベンゼンメタンアミニウムクロリド;
【0151】
(3)3−アシルクマリン
3−ベンゾイルクマリン、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジプロポキシクマリン、3−ベンゾイル−6,8−ジクロロクマリン、3−ベンゾイル−6−クロロクマリン、3,3’−カルボニルビス〔5,7−ジ(プロポキシ)クマリン〕、3,3’−カルボニルビス(7−メトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−イソブチロイルクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジメトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジエトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジブトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジ(メトキシエトキシ)クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジ(アリルオキシ)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−イソブチロイル−7−ジメチルアミノクマリン、5,7−ジメトキシ−3−(1−ナフトイル)クマリン、5,7−ジメトキシ−3−(1−ナフトイル)クマリン、3−ベンゾイルベンゾ〔f〕クマリン、7−ジエチルアミノ−3−チエノイルクマリン、3−(4−シアノベンゾイル)−5,7−ジメトキシクマリン;
【0152】
(4)3−(アロイルメチレン)チアゾリン
3−メチル−2−ベンゾイルメチレン−β−ナフトチアゾリン、3−メチル−2−ベンゾイルメチレンベンゾチアゾリン、3−エチル−2−プロピオニルメチレン−β−ナフトチアゾリン;
【0153】
(5)アントラセン
9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジメトキシ−2−エチルアントラセン、
【0154】
(6)他のカルボニル化合物
アセトフェノン、3−メトキシアセトフェノン、4−フェニルアセトフェノン、ベンジル、2−アセチルナフタレン、2−ナフトアルデヒド、9,10−ナフトラキノン、9−フルオレノン、ジベンゾスベロン、キサントン、2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン、2−(4−ジメチルアミノベンジリデン)インダン−1−オン、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−1−インダン−5−イルプロペノン、3−フェニルチオフタルイミド、N−メチル−3,5−ジ(エチルチオ)フタルイミド。
【0155】
(D)アミン化合物
本発明において、インク組成物Aは、アミン化合物を含有することが好ましい。本発明に用いるアミン化合物としては、3級アミン化合物(3級アミン構造を有する)であることが好ましい。3級アミン化合物を用いると、インク組成物の硬化感度をさらに向上させることができるので好ましい。
また、インク組成物Aの長期保存安定性、着色防止、及び、非硬化成分の硬化膜からの染み出しを防止する観点から、該アミン化合物は重合性不飽和結合を有する3級アミン化合物であることがさらに好ましく、重合性不飽和結合及び環状アミン構造を有する3級アミン化合物であることが特に好ましい。
以下、本発明で特に好ましく用いることができるアミン化合物である、「分子内に重合性不飽和結合及び環状アミン構造を有する化合物(特定環状アミン化合物)」について詳細に説明する。
【0156】
<特定環状アミン化合物>
該化合物が有する重合性不飽和結合としては、二重結合又は三重結合が挙げられ、ラジカル重合性の二重結合であることが好ましい。すなわち、アミン化合物はエチレン性不飽和結合を有することが好ましい。インクジェット記録用インク組成物として好適な低粘度組成物とするため、及び、画像形成において柔軟な硬化膜を得ることができるという観点から、特定環状アミン化合物が有する重合性不飽和結合、好ましくはエチレン性不飽和結合の数は1〜3であることが好ましく、1〜2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
好ましいエチレン性不飽和結合を含む官能基としては、例えば(メタ)アクリロイル基、アリル基、スチリル基、ビニルオキシ基等が挙げられ、インク組成物の硬化感度の観点から(メタ)アクリロイル基であることが好ましく、アクリロイル基であることが特に好ましい。なお(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基のいずれか又は両方をいう。
【0157】
環状アミン構造としては、環構造を形成する原子の少なくとも1つが窒素原子である環状アミン構造であれば特に限定されずに用いることができる。
環構造の環の員数は3〜7であることが好ましく、4〜7であることがより好ましく、5〜6であることが特に好ましい。
該環構造を形成する結合は単結合であっても二重結合であってもよいが、単結合であることがより好ましい。結合が単結合、すなわち形成される環状アミン構造が脂環構造となることにより、硬化速度の向上効果、特に、空気中で硬化した際の酸素による重合阻害の抑制効果が顕著になり、高い硬化性を有することができる利点を有する。
【0158】
該環構造内に含まれる窒素原子の数は1〜3が好ましく、1〜2がより好ましく、該環構造内に窒素原子を1つのみ有する構造が特に好ましい。
環状アミン構造を形成する環には、導入可能な場合には置換基を有していてもよく、好ましい置換基としては炭素数1〜4程度の比較的短鎖のアルキル基が挙げられ、メチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
また、環状アミン構造における環を形成する構成成分として、窒素原子のほかに酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子が含まれていてもよい。
【0159】
環状アミン構造のうち、特に好ましいものとしては、ピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環が挙げられ、置換基を有する下記式(1)で示されるピペリジン環が特に好ましいものとして挙げられる。
【0160】
【化45】

【0161】
式(1)中、R1はアルキル基又は置換アルキル基を表す。
1は炭素数1以上のアルキル基であり、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜12のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることが特に好ましい。好ましいアルキル基としては、より具体的には、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ノニル基などが挙げられ、メチル基、エチル基及びブチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。また、R1において、窒素原子に隣接する炭素原子上に水素原子を有することが好ましく、水素原子の数は2以上であることが好ましい。
【0162】
1が置換アルキル基の場合、導入可能な置換基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜4)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜4)、アリール基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜10)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜10)、アシル基(好ましくは炭素数1〜21、より好ましくは炭素数2〜7)、アミノ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子等が好ましく挙げられる。
2〜R5はそれぞれ独立にメチル基又はエチル基を表すが、メチル基であることが好ましく、中でも、R2〜R5の全てがメチル基であることがより好ましい。
【0163】
特定環状アミン化合物において、環状アミン構造は連結基を介して重合性不飽和結合と連結されるが、連結される部位は、環状アミン構造である前記式(I)におけるR2〜R5が存在する部位を除けば、いずれの部位が重合性不飽和結合と連結されていてもよい。
特定環状アミン化合物としては、より具体的には、下記式(2)、(3)及び(4)で表される如き化合物、すなわち環状アミン構造に、所定の連結基を介して重合性二重結合が結合している化合物が好ましい。
【0164】
【化46】

【0165】
式(2)〜(4)中、R1〜R5はそれぞれ式(1)におけるR1〜R5と同義であり、好ましい範囲も同様である。
6はメチル基又は水素原子を表し、水素原子であることが好ましい。
Zは二価の連結基又は単結合を表し、酸素原子又は上述のR1で表されるアルキル基から水素原子を除したアルキレン基が好ましく、炭素数1〜20のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数3〜12のアルキレン基であることが特に好ましい。
該Zで表されるアルキレン基は、メチレン基(−CH2−)からなるメチレン鎖中に、−CO−、−O−、−S−又は−NR7−から選択される二価の基を有していてもよく、メチレン基からなるアルキレン鎖中にエーテル結合(−O−)を有するものが好ましい。中でも、アルキレン基の両末端にエーテル結合(−O−)を有するものが特に好ましい。
なお、ここでR7は水素原子又は上述のR1がアルキル基である場合のR1と同義である。またR7がR1と同義である場合は、好ましい範囲も同様である。
ここで、Zで表されるアルキレン基としては、炭素数3〜12程度のアルキレン基が特に好ましく、具体的には例えば、プロピレン基、ブチレン基、オクチレン基、ノニレン基等が挙げられる。これらアルキレン基中のメチレン基からなる鎖状構造中には、上述の−CO−、−O−、−S−又は−NR7−から選択される二価の基を有していてもよい。また、これらの二価の連結基は2種以上を組み合わせて構成される二価の連結基であってもよい。
Aは二価の有機基を表し、メチレン基(−CH2−)又は酸素原子(−O−)であることが好ましい。
本発明において好適に用いることのできる、特定環状アミン化合物の具体例〔例示化合物(A−1)〜(A−26)〕を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、各例示化合物において立体異性体が存在する場合は、それらのいずれを用いてもよく、立体異性体の混合物を用いてもよい。
【0166】
【化47】

【0167】
【化48】

【0168】
【化49】

【0169】
これらの中でも、分子内に(メタ)アクリロイル基を有する(A−1)、(A−2)、(A−3)、(A−7)、(A−12)、(A−17)などが好ましく、(A−1)、(A−2)がより好ましく、(A−1)が特に好ましい。
特定環状アミン化合物は、例えば、Makromolekulare Chemie.第181巻3号595〜634頁(1980年)、Journal of Applied Polymer Science 第69巻13号2649〜2656頁(1998年)、Journal of Applied Polymer Science 第75巻9号1103〜1114頁(2000年)、Polymers for Advanced Technologies 第13巻247〜253頁(2002年)、特開平3−251569号公報に記載されている公知の合成方法により製造することができ、また、ファンクリルFA−711MM(日立化成工業(株)製)等の市販品としても入手可能である。
【0170】
(E)着色剤
本発明において、インク組成物A及びインク組成物Bは、着色剤を含有することが好ましい。また、下塗り液を使用する場合、下塗り液は実質的に着色剤を含有しないか、若しくは、白色顔料を含有することが好ましい。なお、前記「着色剤を実質的に含有しない」とは、被記録媒体の黄ばみを修正するための微量の青色顔料の使用や、視認できない程度のごく微量の着色剤の含有をも除外するものではない。その許容量としては、下塗り液全重量に対して1重量%以下であることが好ましく、含有しないことが特に好ましい。
本発明において用いることのできる着色剤には、特に制限はなく、用途に応じて公知の種々の顔料、染料を適宜選択して用いることができる。中でも、着色剤としては、特に耐光性に優れるとの観点から顔料であることが好ましい。
【0171】
本発明に好ましく使用される顔料について述べる。
顔料としては、特に限定されるものではなく、一般に市販されているすべての有機顔料及び無機顔料、また、樹脂粒子を染料で染色したもの等も用いることができる。さらに、市販の顔料分散体や表面処理された顔料、例えば、顔料を分散媒として不溶性の樹脂等に分散させたもの、あるいは顔料表面に樹脂をグラフト化したもの等も、本発明の効果を損なわない限りにおいて用いることができる。
これらの顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W. Herbst, K. Hunger, Industrial Organic Pigments、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報に記載の顔料が挙げられる。
【0172】
本発明において使用できる有機顔料及び無機顔料の具体例としては、例えば、イエロー色を呈するものとして、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG等)、C.I.ピグメントイエロー74の如きモノアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー12(ジスアジイエローAAA等)、C.I.ピグメントイエロー17の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー200(Novoperm Yellow 2HG)の如き非ベンジジン系のアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー100(タートラジンイエローレーキ等)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー95(縮合アゾイエローGR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー115(キノリンイエローレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー18(チオフラビンレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、フラバントロンイエロー(Y−24)の如きアントラキノン系顔料、イソインドリノンイエロー3RLT(Y−110)の如きイソインドリノン顔料、キノフタロンイエロー(Y−138)の如きキノフタロン顔料、イソインドリンイエロー(Y−139)の如きイソインドリン顔料、C.I.ピグメントイエロー153(ニッケルニトロソイエロー等)の如きニトロソ顔料、C.I.ピグメントイエロー117(銅アゾメチンイエロー等)の如き金属錯塩アゾメチン顔料等が挙げられる。
【0173】
赤あるいはマゼンタ色を呈するものとして、C.I.ピグメントレッド3(トルイジンレッド等)の如きモノアゾ系顔料、C.I.ピグメントレッド38(ピラゾロンレッドB等)の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントレッド53:1(レーキレッドC等)やC.I.ピグメントレッド57:1(ブリリアントカーミン6B)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド144(縮合アゾレッドBR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド174(フロキシンBレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド81(ローダミン6G’レーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド177(ジアントラキノニルレッド等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド88(チオインジゴボルドー等)の如きチオインジゴ顔料、C.I.ピグメントレッド194(ペリノンレッド等)の如きペリノン顔料、C.I.ピグメントレッド149(ペリレンスカーレット等)の如きペリレン顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(無置換キナクリドン、CINQUASIA Magenta RT−355T;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、C.I.ピグメントレッド122(キナクリドンマゼンタ等)の如きキナクリドン顔料、C.I.ピグメントレッド180(イソインドリノンレッド2BLT等)の如きイソインドリノン顔料、C.I.ピグメントレッド83(マダーレーキ等)の如きアリザリンレーキ顔料等が挙げられる。
【0174】
青あるいはシアン色を呈する顔料として、C.I.ピグメントブルー25(ジアニシジンブルー等)の如きジスアゾ系顔料、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3(IRGALITE BLUE GLO;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)(フタロシアニンブルー等)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントブルー24(ピーコックブルーレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー1(ビクトリアピュアブルーBOレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー60(インダントロンブルー等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントブルー18(アルカリブルーV−5:1)の如きアルカリブルー顔料等が挙げられる。
緑色を呈する顔料として、C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン)、C.I.ピグメントグリーン36(フタロシアニングリーン)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントグリーン8(ニトロソグリーン)等の如きアゾ金属錯体顔料等が挙げられる。
オレンジ色を呈する顔料として、C.I.ピグメントオレンジ66(イソインドリンオレンジ)の如きイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ51(ジクロロピラントロンオレンジ)の如きアントラキノン系顔料が挙げられる。
【0175】
黒色を呈する顔料として、カーボンブラック、チタンブラック、アニリンブラック等が挙げられる。カーボンブラックとしてはSPECIAL BLACK 250(デグサ社製)が例示できる。
【0176】
白色顔料の具体例としては、塩基性炭酸鉛(2PbCO3Pb(OH)2、いわゆる、シルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆる、ジンクホワイト)、酸化チタン(TiO2、いわゆる、チタンホワイト)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3、いわゆる、チタンストロンチウムホワイト)などが利用可能である。
ここで、酸化チタンは他の白色顔料と比べて比重が小さく、屈折率が大きく化学的、物理的にも安定であるため、顔料としての隠蔽力や着色力が大きく、さらに、酸やアルカリ、その他の環境に対する耐久性にも優れている。したがって、白色顔料としては酸化チタンを利用することが好ましい。もちろん、必要に応じて他の白色顔料(列挙した白色顔料以外であってもよい。)を使用してもよい。
【0177】
着色剤の分散には、例えばビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ニーダー、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル等の分散装置を用いることができる。
着色剤の分散を行う際には、界面活性剤等の分散剤を添加することができる。
また、着色剤を添加するにあたっては、必要に応じて、分散助剤として、各種着色剤に応じたシナージストを用いることも可能である。分散助剤は、着色剤100重量部に対し、1重量部以上50重量部以下添加することが好ましい。
【0178】
着色剤などの諸成分の分散媒としては、溶剤を添加してもよく、また、無溶媒で、低分子量成分である前記重合性化合物を分散媒として用いてもよいが、本発明において、インク組成物A及びBは、紫外線硬化型の液体であり、インク組成物は被記録媒体上に適用後、硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。これは、硬化されたインク組成物により形成された画像中に、溶剤が残留すると、耐溶剤性が劣化したり、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound)の問題が生じるためである。このような観点から、分散媒としては、重合性化合物を用い、中でも、最も粘度が低い重合性化合物を選択することが分散適性やインク組成物のハンドリング性向上の観点から好ましい。
【0179】
ここで用いる着色剤の平均粒径は、微細なほど発色性に優れるため、0.01μm以上0.4μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.02μm以上0.2μm以下の範囲である。最大粒径は3μm以下、好ましくは1μm以下となるよう、着色剤、分散剤、分散媒の選定、分散条件、ろ過条件を設定することが好ましい。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インク組成物A及びBの保存安定性、透明性及び硬化感度を維持することができる。
インク組成物A及びB中における着色剤の粒径は、公知の測定方法で測定することができる。具体的には遠心沈降光透過法、X線透過法、レーザー回折・散乱法、動的光散乱法により測定することができる。本発明においては、レーザー回折・散乱法を用いた測定により得られた値を採用する。
【0180】
<界面活性剤>
本発明において、インク組成物A、インク組成物B及び下塗り液は、界面活性剤を含有することが好ましい。特に、下塗り液は界面活性剤を含有することが好ましい。
本発明に使用される界面活性剤は、下記の界面活性剤が例示できる。例えば、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。具体的には、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記公知の界面活性剤として、有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8から17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
特に本発明において使用される界面活性剤は、上記界面活性剤に限定されることはなく、添加濃度に対して効率的に表面張力を低下させる能力のある添加剤であればよい。
【0181】
<その他添加剤>
本発明において、インク組成物A、インク組成物B及び下塗り液には、前記重合性化合物、重合開始剤など加え、目的に応じて種々の添加剤を併用することができる。例えば、本発明において、インク組成物A及びBには、得られる画像の耐候性向上の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。また、安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。
さらに、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤、吐出物性の制御を目的としたチオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などの導電性塩類、インク組成物A及び/又はインク組成物Bと基材との密着性を改良するため、極微量の有機溶剤を添加することができる。
また、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、ポリオレフィンやPET等への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーなどを含有させることができる。
【0182】
(各工程及び各手段)
次に、本発明のインクジェット記録方法の各工程及び本発明のインクジェット記録装置の各手段について詳述する。
本発明のインクジェット記録方法は、
(a)被記録媒体上にインク組成物Aを吐出する工程(吐出工程A)、
(b)インク組成物Aに蛍光灯により紫外線を照射する工程(露光工程A)、及び、
(c)蛍光灯により紫外線を照射されたインク組成物A上にインク組成物Aとは色相の異なるインク組成物Bを吐出する工程(吐出工程B)、を有する。
生産性をより向上させる観点から、上記の工程に加えて、前記インク組成物Aに照射した紫外線よりもUVB領域における露光強度が強い紫外線を照射する紫外線光源によって、インク組成物A及び/又はインク組成物Bに対して紫外線を照射し、インク組成物A及び/又はインク組成物Bを硬化する工程(工程(d)、露光工程B)を有することが好ましい。なお、工程(d)は、工程(c)の後に実施される。
また、上記の(a)〜(d)の工程に加えて、被記録媒体を搬送する工程を有することが好ましい。すなわち、被記録媒体を搬送しながらインク組成物A及び/又はインク組成物Bの吐出及び紫外線の照射を行うことが好ましい。
【0183】
また、被記録媒体(基材)への密着性や被記録媒体(基材)への濡れ性を制御する観点から、上記手段に加えて、被記録媒体(基材)上に下塗り液を付与する工程(a1)を有することが好ましい。なお、該工程(a1)は、前述した工程(a)の前に実施されることが好ましい。
さらに被記録媒体に付与された下塗り液を半硬化する工程(a2)を有することが好ましく、前記(a1)工程及び(a2)工程の後に、(a)工程を行うことが好ましい。
【0184】
本発明のインクジェット記録装置の各手段について詳述する。
本発明のインクジェット記録装置は、
少なくとも重合性化合物及び上記式(I)で表される化合物(化合物(I))を含有するインク組成物Aを被記録媒体上に吐出する手段(吐出手段A)、
紫外線を照射する蛍光灯によって紫外線を照射し、インク組成物Aを硬化する手段(露光手段A)、及び、
蛍光灯によって紫外線を照射されたインク組成物A上に少なくとも重合性化合物を含有し、かつ、インク組成物Aとは異なる色相を有するインク組成物Bを吐出する手段(吐出手段B)を有する。
また、本発明のインクジェット記録装置は、被記録媒体を搬送する手段(搬送手段)を有することが好ましい。
なお、インク組成物Aを被記録媒体上に吐出する手段の上流に、被記録媒体上に下塗り液を付与する手段及び下塗り液を半硬化させる手段を有することも好ましい。
【0185】
ここで、図1を参照しながら、本発明のインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置の好ましい一実施態様について説明する。図1に本発明に好適に使用できるインクジェット記録装置の概念図を示す。図1を参照しながら以下に詳説する。
被記録媒体6は、被記録媒体搬送手段7A及び7Bにより搬送され、図1では、左から右方向に搬送されている。被記録媒体及び被記録媒体搬送手段は特に限定されるものではないが、図1に示す実施形態では被記録媒体としてプラスチックフィルムを使用しており、また、被記録媒体搬送手段としてフィルム巻き出し機(7A)、フィルム巻き取り機(7B)を使用している。
図1では、ホワイトインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクよりなるインクセットを使用した場合の印刷工程を示す。なお、この場合は、前述の通り、シアンインク、マゼンタインク、ホワイトインクをインク組成物Aとし、イエローインク、ブラックインクをインク組成物Bとすることが好ましい。
以下に好ましい工程について記載する。
(1)第一工程にて、下塗り液を付与する手段1により、被記録媒体6上に下塗り液を付与する。下塗り液を付与する手段1としては、ロールコーターが例示できる。
(2)続いて、第二工程にて、下塗り液を半硬化させる手段2により、被記録媒体6上に付与された下塗り液を半硬化させる。下塗り液を半硬化させる手段としては、紫外線光源が例示できる。
(3)第三工程にて、ホワイトインクを吐出する手段3Wにより、ホワイトインクを被記録媒体上6に吐出する(吐出工程A)。
(4)第四工程にて、蛍光灯4Wにより、ホワイトインクを露光する(露光工程A)。
(5)第五工程にて、シアンインクを吐出する手段3Cにより、シアンインクを被記録媒体上6に吐出する(吐出工程A)。
(6)第六工程にて、蛍光灯4Cにより、シアンインクを露光する(露光工程A)。
(7)第七工程にて、マゼンタインクを吐出する手段3Mにより、マゼンタインクを被記録媒体上6に吐出する(吐出工程A)。
(8)第八工程にて、蛍光灯4Mにより、マゼンタインクを露光する(露光工程A)。
(9)第九工程にて、イエローインクを吐出する手段3Yにより、イエローインクを被記録媒体上6に吐出する(吐出工程B)。
(10)第十工程にて、ブラックインクを吐出する手段3Kにより、ブラックインクを被記録媒体上6に吐出する(吐出工程B)。なお、ブラックインクを被記録媒体上に吐出することが好ましい(吐出工程B)。
(11)第十一工程にて、画像を完全に硬化させる手段5により、被記録媒体に吐出されたインク組成物全体を完全に硬化させる。該工程では、露光工程Aにおいてインク組成物Aに照射した紫外線よりも、UVB領域における露光強度が高い紫外線を照射する紫外線光源により画像全体を露光することが好ましい(露光工程B)。図1では、メタルハライドランプにより画像全体を完全に硬化させている。
なお、上記の工程において、下塗り液を付与する工程(工程(1)、第一工程)及び下塗り液を半硬化する工程(工程(2)、第二工程)は省略してもよい。
また、上記工程(5)では、シアンインクは、被記録媒体の上に付与するが、ホワイトインクが付与された領域であってもよく、また、ホワイトインクが付与されていない領域であってもよい。同様に上記工程(9)では、イエローインクは、被記録媒体の上に付与するが、ホワイトインクが付与された領域、マゼンタインクが付与された領域、シアンインクが付与された領域、又はそれらの複数のインクが付与された領域、並びに、いずれのインクも付与されていない領域のいずれに付与してもよい。任意の画像の形成を行うに際して、少なくともイエローインクの一部の液滴は、インク組成物A(ホワイトインク、シアンインク、マゼンタインク)のいずれかの上に付与される。
次に、各工程及び対応する各手段について詳述する。なお、以下の説明においては各工程を中心に説明を行うが、当業者であれば各工程の記載から、使用される各手段を当然に理解するものである。
【0186】
(a1)工程(被記録媒体上に下塗り液を付与する工程
前記、被記録媒体上に下塗り液体を付与する工程にて、下塗り液は、被記録媒体上にインク組成物A及び/又はインク組成物Bの液滴の吐出によって形成される画像と同一領域もしくは該画像より広い領域に付与することが好ましい。
また、下塗り液の付与量(単位面積あたりの重量比)としては、インク組成物A及びインク組成物Bの最大付与量(1色につき)を1とした場合に0.05以上5以下の範囲内であることが好ましく、0.07以上4以下の範囲内がより好ましく、0.1以上3以下の範囲内がさらに好ましい。
本発明において、被記録媒体上に下塗り液を付与する手段としては、塗布装置又はインクジェットノズル等を用いることができる。
前記塗布装置としては、特に制限はなく、公知の塗布装置の中から目的等に応じて適宜選択することができ、例えば、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロットコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファーロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター、押出コーター等が挙げられる。詳しくは、原崎勇次著「コーティング工学」を参照できる。
中でも、装置コストの点で、下塗り液の被記録媒体上への付与は、比較的安価なバーコーター又はスピンコーターを用いた塗布、あるいはインクジェット法による付与が好ましい。
【0187】
(a2)工程(下塗り液を半硬化させる工程)
本発明において、「半硬化」とは、部分的な硬化(partially cured; partial curing)を意味し、下塗り液が部分的に硬化しているが完全に硬化していない状態をいう。被記録媒体(基材)上に適用された下塗り液が半硬化している場合、硬化の程度は不均一であってもよい。例えば、下塗り液は深さ方向に硬化が進んでいることが好ましい。
【0188】
下塗り液を半硬化させる方法としては、(1)酸性ポリマーに対して、塩基性化合物を付与する、又は塩基性ポリマーに対して、酸性化合物、金属化合物を付与するなど、いわゆる凝集現象を用いる方法、(2)下塗り液を予め高粘度に調製し、これに低沸点有機溶媒を添加することによって低粘化しておき、低沸点有機溶媒を蒸発させて元の高粘度に戻す方法、(3)高粘度に調製した下塗り液を加熱しておき、冷却することによって元の高粘度に戻す方法、(4)下塗り液に活性エネルギー線又は熱を与えて硬化反応を起こさせる方法など、既知の増粘方法が挙げられる。中でも(4)下塗り液に活性エネルギー線又は熱を与えて硬化反応を起こさせる方法が好ましい。
【0189】
活性エネルギー線又は熱を与えて半硬化反応を起こさせる方法とは、被記録媒体に付与された下塗り液の表面における重合性化合物の重合反応を不充分に行う方法である。
ラジカル重合性の下塗り液を、空気中又は部分的に不活性ガスで置換した空気中等の酸素を多く含む雰囲気中で重合させる場合には、酸素のラジカル重合抑制作用のために、被記録媒体上に適用された下塗り液層の表面においてラジカル重合が阻害される傾向がある。この結果、半硬化は不均一となり、下塗り液層の内部でより硬化が進行し、表面の硬化が遅れる傾向となる。ここで、下塗り液層とは、基材上に付与された下塗り液の層である。
カチオン重合性の下塗り液を、湿気を有する雰囲気中で重合させる場合にも、水分のカチオン重合阻害作用があるために、被記録媒体上に適用された下塗り液層の内部でより硬化が進行し、表面の硬化が遅れる傾向となる。
【0190】
本発明において、ラジカル重合性の下塗り液を、ラジカル重合抑制的な酸素の共存下で使用して、部分的に光硬化すると、下塗り液の硬化は外部よりも内部にて、より進行する。
特に、前記下塗り液の表面においてはその内部と比べて空気中の酸素の影響で重合反応が阻害され易い。従って、活性エネルギー線又は熱の付与条件を制御することにより、下塗り液を半硬化させることができる。
【0191】
これらの中でも、活性エネルギー線の照射により半硬化させることが好ましい。活性エネルギー線としては、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光又は赤外光などが使用され得る。これらの中でも紫外線又は可視光であることが好ましく、紫外線であることがより好ましい。さらに、活性放射線のピーク波長は、増感色素の吸収特性にもよるが、例えば、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、350〜420nmであることがさらに好ましい。
下塗り液の半硬化に必要なエネルギー量は、重合開始剤の種類や含有量などによって異なるが、活性エネルギー線によりエネルギーを付与する場合には、1〜500mJ/cm2程度が好ましい。また、加熱によりエネルギーを付与する場合は、被記録媒体の表面温度が40〜80℃の温度範囲となる条件で0.1〜1秒間加熱することが好ましい。
活性光や加熱などの活性エネルギー線又は熱の付与により、重合開始剤の分解による活性種の発生が促進されると共に、活性種の増加や温度上昇により、活性種に起因する重合性又は架橋性材料の重合もしくは架橋による硬化反応が促進される。
また、増粘(粘度上昇)も、活性光の照射、又は加熱によって好適に行うことができる。
【0192】
半硬化の状態の下塗り液上にインク組成物が打滴されると、得られる印刷物の品質に好ましい技術的効果をもたらす。また、その作用機構を印刷物の断面観察により確認できる。
【0193】
基材上に設けられた、厚さが約5μmの厚さの半硬化状態の下塗り液上に約12pL(ピコリットル;以下同様)のインク組成物を打滴した場合の高密度に打滴された部分(高濃度部分)を一例として説明する。
図2は、半硬化状態の下塗り液層上にインク組成物を打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。図2に示す印刷物の作製において、下塗り液は半硬化され、基材16側の方が表面層よりも硬化が進行している。図2では、半硬化状態の下塗り液層にインク組成物を付与された下塗り層14が示されている。
この場合には、得られる画像10の断面には、以下の3つの特徴が観察される。なお、「インク硬化物」とは打滴されたインク組成物の硬化物である。
(1)インク硬化物12の一部は表面に出ている、
(2)インク硬化物12の一部は下塗り層14に潜り込んでいる、かつ、
(3)インク硬化物12の下側と基材16の間には下塗り層14が存在する。
すなわち、半硬化状態の下塗り液層上にインク組成物を付与することによって得られた印刷物は、図2で模式的に示されるような断面を有している。上記の(1)、(2)及び(3)の状態を満たす場合には、半硬化した下塗り液にインク組成物が付与されたといえる。この場合には、高密度に打滴されたインク組成物の液滴は相互に繋がって着色膜を形成しており、均一で高い色濃度を与える。なお、下塗り層とは、下塗り液層を硬化して得られた層の意である。
【0194】
図3及び図4は、未硬化状態の下塗り液層上にインク組成物を打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。図3及び図4では、未硬化状態の下塗り液層にインク組成物を付与された下塗り層18が示されている。
未硬化状態の下塗り液層にインク組成物を打滴した場合は、インク組成物の全部が下塗り液層に潜り込むか、及び/又は、インク組成物の下部には下塗り液が存在しない状態となる。具体的には、図3においては、得られる画像10の断面切片において、インク硬化物12が、下塗り層18に完全に潜り込んでおり、インク硬化物12の一部が表面にでていない。また、図4に示すように、得られる画像10の断面切片において、インク硬化物12の下部には、下塗り層18が存在しない。
この場合は、高密度にインク組成物を付与しても、液滴同士が独立するため、色濃度が低下する原因となる場合がある。
【0195】
図5は、完全硬化状態の下塗り液層上にインク組成物を打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。図5では、完全硬化状態の下塗り液層にインク組成物を付与された下塗り層20が示されている。
完全に硬化した下塗り液層にインク組成物を打滴した場合は、インク組成物は下塗り液層に潜り込まない状態となる。具体的には図5に示されるように、インク硬化物12は、下塗り層20に潜り込んでいない。
このような状態は、打滴干渉の発生の原因となり、均一なインク層が形成できず、色再現性の低下を招く場合がある。
【0196】
(a)工程(被記録媒体上にインク組成物Aを吐出する工程、吐出工程A)及び(c)工程(インク組成物Bを吐出する工程、吐出工程B)
本発明において用いることのできるインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、後述する露光光源を含む装置が挙げられる。
インク供給系は、例えば、インク組成物(A及びB)を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1〜100pl、より好ましくは8〜30plのマルチサイズドットを、好ましくは320×320〜4,000×4,000dpi、より好ましくは400×400〜1,600×1,600dpi、さらに好ましくは720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0197】
紫外線硬化型インクは、吐出されるインクを一定温度にすることが望ましいことから、インクジェット記録装置には、インク組成物温度の安定化手段を備えることが好ましい。一定温度にする部位はインクタンク(中間タンクがある場合は中間タンク)からノズル射出面までの配管系、部材の全てが対象となる。すなわち、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱及び加温を行うことができる。
温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断若しくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、或いは熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【0198】
上記のインクジェット記録装置を用いて、インク組成物の吐出は、インク組成物を、好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃に加熱して、インク組成物の粘度を、好ましくは3〜15mPa・s、より好ましくは3〜13mPa・sに下げた後に行うことが好ましい。特に、本発明のインク組成物として、25℃におけるインク粘度が50mPa・s以下であるものを用いると、良好に吐出が行えるので好ましい。この方法を用いることにより、高い吐出安定性を実現することができる。
紫外線硬化型インク組成物は、概して通常インクジェット記録用インクで使用される水性インクより粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。インクの粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こす場合がある。したがって、吐出時のインクの温度はできるだけ一定に保つことが必要である。よって、本発明において、インクの温度の制御幅は、好ましくは設定温度の±5℃、より好ましくは設定温度の±2℃、さらに好ましくは設定温度±1℃とすることが適当である。
【0199】
本発明において、インク組成物A及びインク組成物Bは、0.1pL以上100pL以下の液滴サイズにて(好ましくはインクジェットノズルにより)打滴されることが好ましい。液滴サイズが前記範囲内であると、高鮮鋭度の画像を高い濃度で描写できる点で有効である。また、より好ましくは0.5pL以上50pL以下である。
インク組成物Aの吐出の前に、被記録媒体上に下塗り液を付与する場合、下塗り液の付与からインク組成物の液滴が打滴されるまでの打滴間隔としては、5μ秒以上10秒以下の範囲内であることが好ましい。打滴間隔が前記範囲内であると、高精細な画像を得ることができ、また、生産性の点でも好ましい。インク組成物A及び/又はインク組成物Bの液滴の打滴間隔は、好ましくは10μ秒以上5秒以下であり、特に好ましくは20μ秒以上5秒以下である。
【0200】
インク組成物A及びインク組成物Bを吐出する手段としては、インクジェットヘッドを用いることが好ましい。インクジェットヘッドとしては、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、インクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式、等のヘッドが好適である。
【0201】
(b)工程(インク組成物Aに蛍光灯により紫外線を照射する工程)
本発明で使用する蛍光灯は、少なくとも、管状をなすバルブと、バルブ管軸に沿い略半周面にわたってバルブ内面に形成された可視光の一部を反射する光反射層と、光反射層に対向するバルブ内面領域に開口部が形成されるように、開口部を除くバルブ内面及び光反射層上に形成された蛍光体層とで構成されることが好ましい。
被記録媒体上で十分な露光強度を得る観点、さらに、インクヘッド面等への迷光を防ぐ観点から、前記反射膜の開口の開口角をαとし、前記蛍光体膜の開口の開口角をβとしたとき、前記α及びβが、
(1) β<α
(2) 60°≦α≦150°
(3) 30°≦β≦90°
を満たすことが好ましい。
【0202】
また、インクヘッド面等への迷光を防ぐことの観点から、蛍光灯は、前記蛍光灯を囲うように配置され、前記被記録媒体側に開口が形成されたハウジングを有することが好ましい。同様に、インクジェットヘッド面等への迷光を防ぐ観点から、蛍光灯の射出部側には、光シャッターを設けることができる。
蛍光灯の劣化を防ぐ観点から、本発明において蛍光灯が前記ハウジング内に配置され、蛍光灯に送風し、蛍光灯を冷却する冷却機構を有することが好ましい。
【0203】
なお、露光工程Aにおける露光の露光強度は、被記録媒体上において30〜200mW/cm2(UVA領域)であることが好ましく、40〜150mW/cm2(UVA領域)であることがさらに好ましく、50〜120mW/cm2(UVA領域)であることが特に好ましい。また、UVB領域における露光強度は、被記録媒体上において、100mW/cm2以下であることが好ましく、より好ましくは50mW/cm2であり、さらに好ましくは20mW/cm2以下である。
なお、ここに示す露光強度の値は、UV測定器(EIT社製;UVパワーマップ)を用いて計測した値である。ここで、UVAは320〜390nmの波長領域、UVBは280〜320nmの波長領域、UVCは250〜260nmの波長領域を示す。
【0204】
図6は、本発明で好適に使用できる蛍光灯装置100の一例を示す概念断面図である。
図6を参照すれば、蛍光灯装置100は、紫外線を発光する蛍光灯80と、蛍光灯80を囲うように配置され、被記録媒体P側に開口が形成されたハウジング82と、ハウジング82内に配置され、蛍光灯80に送風し、蛍光灯80を冷却する冷却機構84と、を有する。インクジェットヘッド面等への迷光を防ぐ観点から、蛍光灯80の射出部側には、光シャッター81を設けることができる。
【0205】
図7(A)は、図6における蛍光灯80の側面断面概念図であり、図7(B)は、図7(A)における蛍光灯80のB−B断面図である。
図7(A)及び図7(B)に示すように、蛍光灯80は、バルブ86と、電極88と、反射膜90と、蛍光体膜92とを有する。
バルブ86は、ソーダガラスまたは石英ガラス(殺菌ガラス)等を材料として作製された管状部材(もしくは円筒部材)である。ここで、バルブ86としては、長さ500mm〜800mmの長さの管が例示される。また、バルブ86の管径としては、Φ15.5mm、20mm、25.5mm、28mm、32mm、38mm等が例示される。
電極88は、バルブ86で形成される空間内に露出し、電流が流されるフィラメントを有し、バルブ86の両端部に配置されている。
また、バルブ86とバルブ86の両端部に配置された電極88により、バルブ86内部は、真空密閉され、内部には、水銀等が封入されている。
【0206】
反射膜90は、光を反射する材料で形成されており、バルブ86の内壁面に積層されている。
蛍光体膜92は、280〜400nmの紫外線を発光する蛍光体で形成されており、反射膜90及びバルブ86の内壁面に積層されている。蛍光体としては、特開2006−104338号公報、特開2005−108853号公報等に記載の蛍光体が挙げられる。
このように、蛍光灯80は、外側から中心に向けて、バルブ86、反射膜90、蛍光体膜92が積層され、その一部が開口された(目開き(アパーチュア)を有する)構成であることが好ましい。
【0207】
また、図7(B)に示すように、反射膜90及び蛍光体膜92は、被記録媒体P側(図7(B)中下側)にそれぞれ開口94、96が形成されている。
ここで、反射膜90及び蛍光体膜92は、反射膜90の開口の開口角をαとし、蛍光体膜92の開口の開口角をβとしたとき、開口角α及び開口角βが、
(1) β<α、
(2) 60°≦α≦150°、かつ、
(3) 30°≦β≦90°
を満たす形状であることが好ましい。ここで、開口角とは、蛍光灯80の断面(長手方向に直交する面)おいて、断面の中心(つまり、円周上に形成された反射膜90または蛍光体膜92の中心)と一方の開口の端部を結んだ線分と、断面の中心と開口の他方の端部とで結んだ線分とのなす角である。
開口角α及び開口角βが上記範囲内であると、被記録媒体上で高い照射強度が得られるので好ましい。
なお、蛍光灯80は、β<αであるため、バルブ86の被記録媒体P側に、反射膜90及び蛍光体膜92の両方が積層されていない領域と、蛍光体膜92のみが積層されている領域がある。つまり、バルブ86に直接蛍光体膜92が形成されている領域がある。
このような領域を設けることで発光効率が高くなり、かつ、被記録媒体上で高い照射強度が得られるので好ましい。
【0208】
蛍光灯80は、以上のような構成であり、電極88(のフィラメント)に電流を流し、予熱すると、高温になったエミッタ(フィラメントに塗布されている)から電子が放出され、内部に封入されている水銀原子と衝突し、水銀は紫外線を発生する。その後、発生した紫外線が蛍光体膜92に当たると、各波長に発光する。その後、発光した光は、直接または反射膜90に反射され、開口94から被記録媒体に向けて射出される。
【0209】
ハウジング82は、直方体の箱型形状であり、蛍光灯80の周囲を囲うように配置されている。また、ハウジング82は、被記録媒体側の面が開放されている。つまり、ハウジング82の記録媒体側の面は、開口となっており、蛍光灯80から射出された光は、ハウジング82の開口を通過し、被記録媒体を照射する。なお、図6に示すように、光シャッター81を設けることもできる。
【0210】
冷却機構84は、冷却ファン、ブロア等の送風機であり、ハウジング82内の蛍光灯80の被記録媒体P側とは反対側(つまり図中蛍光灯80の上側)に配置されている。冷却機構84は、蛍光灯80に向けて、風を送ることで、蛍光灯80を冷却する。
冷却機構84は、さらに、蛍光灯80の温度を検出する温度センサを有し、風量、風を送る時間を調整し、冷却量を調整することで、蛍光灯80の温度を一定温度に保持することもできる。
なお、ハウジング82には、冷却機構84が蛍光灯80に送る空気を吸気するための開口83を形成することが好ましい。
【0211】
ここで、蛍光灯80は、蛍光灯80の照射面と被記録媒体Pとの最短距離hが、0.5mm以上1.5mm以下となる位置に配置することが好ましい。蛍光灯80を上記範囲を満たす位置に配置することで、効率よく被記録媒体Pに光を照射することができる。
さらに、ハウジング82は、上記hが0.5≦h<1.0の場合は、ハウジング82と被記録媒体Pとの最短距離Hが、H=hとなる位置に配置し、上記hが1.0≦hの場合は、L=1.0となる位置に配置することが好ましい。
ハウジング82を上記範囲を満たす位置に配置することで、蛍光灯80から射出され、被記録媒体P以外の部分を照射する光の量を低減することができる。
【0212】
本発明において、蛍光灯による紫外線の照射により、インク組成物Aは完全に硬化してもよく、また半硬化状態でもよく、特に限定されなが、後述する未硬化状態でないことが好ましい。
以下に図面を参照しながら、半硬化したインク組成物A上にさらにインク組成物Bが吐出された場合について説明する。
図8は、半硬化状態のインク組成物A上にインク組成物Bを打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。図8では、半硬化状態のインク組成物Aにインク組成物Bを付与されて得られたインクA硬化物24及びインクB硬化物22が示されている。
半硬化状態のインク組成物A上にインク組成物Bを打滴した場合は、インク組成物Bの一部がインク組成物Aに潜り込み、かつ、インク組成物Bの下部にはインク組成物Aが存在する状態となる。すなわち、半硬化状態のインク組成物A上にインク組成物Bを付与することによって得られた印刷物は、図8で示されるように、インクB硬化物22の一部が表面に出ており、また、インクB硬化物22の一部はインクA硬化物24に潜り込んでいる。また、インクB硬化物22の下部にはインクA硬化物24が存在している。インク組成物Aの硬化膜(インク膜A、図8のインクA硬化物24)及びインク組成物Bの硬化膜(インク膜B、図8のインクB硬化物22)が積層された状態になり、良好な色再現が可能となる。
【0213】
図9及び図10は、未硬化状態のインク組成物A上にインク組成物Bを打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。図9では、未硬化状態のインク組成物Aにインク組成物Bを付与されて得られたインクA硬化物26及びインクB硬化物22が示されている。
未硬化状態のインク組成物Aにインク組成物Bを打滴した場合は、インク組成物Bの全部がインク組成物Aに潜り込むか、及び/又は、インク組成物Bの下部にはインク組成物Aが存在しない状態となる。すなわち、得られた画像の断面図を観察すると、図9に示すように、インクB硬化物22の全部がインクA硬化物26に潜り込んでいる、及び/又は図10に示すように、インクB硬化物22の下層にはインクA硬化物26が存在しない。この場合は、高密度にインクBの液滴を付与しても、液滴同士が独立するため、2次色の彩度低下の原因となる場合がある。
【0214】
(d)工程(インク組成物A及び/又はインク組成物Bに対して紫外線を照射し、インク組成物A及び/又はインク組成物Bを硬化する工程)
(d)工程においては、被記録媒体上に付与されたインク組成物及びインク組成物Bに紫外線を照射して、完全に硬化させる。なお、「インク組成物A及び/又はインク組成物Bに対して紫外線を照射する」とは、被記録媒体上に付与されたインク組成物A及びインク組成物のいずれにも紫外線を照射することを意味する。ここで、被記録媒体の一部分のみを観察すれば、インク組成物Aのみが付与されている領域や、インク組成物Bのみが付与されている領域があるため、「インク組成物A及び/又はインク組成物Bに対して紫外線を照射する」と記載しているが、その意味するところは、被記録媒体上の画像領域全体に対して紫外線を照射して、インク組成物A及びインク組成物Bを完全に硬化させるものである。
なお、下塗り液を使用した場合には、インク組成物A、インク組成物B及び下塗り液の全体を完全に硬化させるものであり、インク組成物が付与される画像領域よりも下塗り液付与領域が広い場合には、下塗り液を付与した領域に紫外線を照射する。
【0215】
(d)工程(露光工程B)においては、(b)工程(露光工程A)で使用したインク組成物Aに照射した紫外線よりもUVB領域における露光強度が強い紫外線を照射する紫外線光源を使用することが好ましい。露光強度が強い紫外線を照射することによって、インク組成物A及びインク組成物B、並びに、任意に下塗り液を短時間で完全に硬化させることができるので好ましい。
露光工程BにおけるUVB領域におけ被記録媒体上における露光強度は、5〜1,000mW/cm2であることが好ましく、より好ましくは10〜1,000mW/cm2であり、さらに好ましくは20〜1,000mW/cm2である。
【0216】
(d)工程(露光工程B)において好ましく使用される紫外線光源としては露光工程Aで用いるインク組成物Aに照射した紫外線よりも、UVB領域における発光強度が強い紫外線を射出する紫外線光源であれば特に限定されることはない。例えば、市販のメタルハライドランプや高圧水銀灯が挙げられる。
【0217】
露光工程A及び露光工程Bにおいて、紫外線に、好ましくは0.01〜120秒、より好ましくは0.1〜90秒照射されることが適当である。
紫外線の照射条件並びに基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、インクの吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査することによって行われる。紫外線の照射は、インク着弾後、一定時間(好ましくは0.01〜0.5秒、より好ましくは0.01〜0.3秒、さらに好ましくは0.01〜0.15秒)をおいて行われることになる。このようにインク着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、被記録媒体に着弾したインクが硬化前に滲むことを防止するこが可能となる。また、多孔質な被記録媒体に対しても光源の届かない深部までインクが浸透する前に露光することができるため、未反応モノマーの残留を抑えることができるので好ましい。
さらに、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させてもよい。国際公開第99/54415号パンフレットでは、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されており、このような硬化方法もまた、本発明のインクジェット記録方法に適用することができる。
【0218】
上述したようなインクジェット記録方法を採用することにより、表面の濡れ性が異なる様々な被記録媒体に対しても、着弾したインクのドット径を一定に保つことができ、画質が向上する。なお、カラー画像を得るためには、明度の低い色から順に重ねていくことが好ましい。明度の低いインクから順に重ねることにより、下部のインクまで照射線が到達しやすくなり、良好な硬化感度、残留モノマーの低減、密着性の向上が期待できる。また、照射は、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
このようにして、本発明のインク組成物は、活性放射線の照射により高感度で硬化することで、被記録媒体表面に画像を形成することができる。
【0219】
また、本発明のインクジェット記録方法は、被記録媒体を搬送する工程(搬送工程)を有することが好ましく、搬送工程で用いる被記録媒体を搬送する手段は、特に限定されることはなく、公知の搬送装置を用いることが可能である。例えば、搬送ローラー、搬送コンベアなどが挙げられる。
【0220】
本発明において、被記録媒体としては、特に限定されず、支持体や記録材料として公知の被記録媒体を使用することができる。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。また、本発明における被記録媒体として、非吸収性被記録媒体が好適に使用することができる。
【実施例】
【0221】
以下、本発明を、実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0222】
(顔料分散物の作製)
表1に示す成分を混合し、1時間スターラーで撹拌した。撹拌後の混合物をビーズミル分散にて分散し、顔料分散物を得た。分散条件は直径0.65mmのジルコニアビーズを70%の充填率で充填し、周速を9m/sとし、分散時間は、2〜4時間で行った。
【0223】
【表1】

【0224】
ここで、表1にて使用した顔料、分散剤及び重合性化合物は、以下の通りである。
・シアン顔料A:PB15:3(IRGALITE BLUE GLO;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
・マゼンタ顔料A:PV19(CINQUASIA MAGENTA RT−355D;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
・イエロー顔料A:PY155(NOVOPERM YELLOW 4Gー01;クラリアント社製)
・カーボンブラック:SPECIAL BLACK 250(デグサ社製)
・二酸化チタン:CR60−2(石原産業(株)製)
・分散剤A:BYK−168(ビックケミー社製)
・分散剤B:ソルスパース36000(ノベオン社製)
・重合性化合物A:PEA(フェノキシエチルアクリレート;第一工業製薬(株)製)
【0225】
<インク組成物の作製>
表2〜表4に示す成分(単位は重量部)を撹拌混合溶解し、インク組成物を得た。なお、これらの液体組成物の表面張力を、表面張力計(協和界面科学(株)製、表面張力計CBVP−Z等)を用いて、ウィルヘルミー法で液温25℃にて測定したところ、いずれのインク組成物の表面張力も、23〜25mN/mの範囲内であった。
また、各インク組成物の45℃での粘度を測定したところ9〜13mPa・sの範囲内であった。なお、粘度は、東機産業(株)製のRE80型粘度計を用いて求めた粘度である。RE80型粘度計は、E型に相当する円錐ロータ/平板方式粘度計であり、ロータコードNo.1番のロータを用い測定を行った。
【0226】
【表2】

【0227】
【表3】

【0228】
【表4】

【0229】
表2〜表4において使用した、重合性化合物、界面活性剤、重合禁止剤、開始剤(光重合開始剤)、アミン化合物及び増感剤(化合物(I))を以下に示す。
・重合性化合物B:FA−521AS(ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート;日立化成工業(株)製)
・重合性化合物C:DPGDA(ジプロピレングリコールジアクリレート;ダイセル・サイテック(株)製)
・重合性化合物D:A−TMPT(トリメチロールプロパントリアクリレート;新中村化学工業(株)製)
・界面活性剤A:BYK―307(ビックケミー社製、界面活性剤)
・重合禁止剤A:FIRSTCURE ST−1(Albemarle社製)
・開始剤A:Irgacure819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
・開始剤B:TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
・開始剤C:Irgacure907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
・開始剤D:Irgacure369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
・開始剤E:Irgacure127(2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
・開始剤F:Irgacure2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
・アミン化合物A:下記化合物(A−1)
・増感剤A:下記化合物(B−1)
・増感剤B:(DETX、2,4−ジメチルチオキサントン;日本化薬(株)製)
【0230】
【化50】

【0231】
(画像記録装置)
調製した5色分のインク組成物は、インクジェットプリンタ(東芝テック(株)製ヘッドCA3搭載)、ドロップサイズ:6pl〜42plを7段階に可変のヘッドを2つ配列して600npiにしたものをフルライン配列したヘッドセットを5組搭載)に装填した。
ヘッドの直下を被記録媒体が移動可能な構造に構成し、ヘッドは記録媒体搬送方向上流からホワイト、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックという順で機体に固定して設置した。
ホワイトヘッドとシアンヘッドの間、シアンヘッドとマゼンタヘッドの間、マゼンタヘッドとイエローの間には、色間露光光源を設置した。また、ブラックインクヘッド下流には最終露光光源を設置した。
被記録媒体の搬送はロール搬送とし、記録媒体上には600dpi×600dpiの画像を形成した。被記録媒体は白色PE粘着シート(Avery社製;FASSON BA1193 PE85white/S692N/BG40WH)を使用した。
【0232】
ここで、色間露光光源としては、図11に示すような発光スペクトルを有する蛍光灯とメタルハライドランプを使用した。また、最終露光光源としては、図11に示すような発光スペクトルを有するメタルハライドランプAを使用したなお、発光スペクトルは、オプトシリウス社製マルチチャンネル分光光度計(USB4000)を用いて測定した。
上記光源の露光特性を表5に示す。なお、光源の露光特性は、UV測定器(EIT社製;UVパワーマップ)にて測定した。表5に示す露光強度及び露光エネルギーは、測定器を400mm/secで搬送した場合のUVA、UVB、UVCの測定値を足し合わせた値である。
【0233】
【表5】

【0234】
(実施例1)
上記の画像記録装置の各色インクジェット記録ヘッドに、インクセット1のインクを充填し、幾つかの画像を印刷した。ここで、色間露光の光源には蛍光灯Aを設置し、最終露光光源にはメタルハライドランプAを設置した。なお、印刷速度を400、200、100、50、25mm/秒と変更して印刷物を作製した。
【0235】
(実施例2〜4、比較例1〜8)
表6に記載するように、インクセットと光源を入れ替えた以外は、実施例1と同様にして、印刷を実施した。
【0236】
(評価項目1:生産性(硬化性))
印刷後の表面のベトツキと爪擦りによる剥がれが無くなる露光速度によって生産性を定義した。
表面のベトツキの有無は、印刷直後に普通紙(富士ゼロックス(株)製コピー用紙C2)を押し付け、下塗り液及び/又はインク組成物の移りが起きる場合はベトツキ有り、移りが起きない場合はベトツキ無しと判断した。なお、この評価は表面の硬化性を評価することができる。
爪擦りによる剥がれの有無は、印刷直後にギターピックで画像表面の1往復擦り、膜が剥がれた場合は剥がれ有、膜が剥がれなかった場合は剥がれ無しと判断した。なお、この評価は内部の硬化性を評価することができる。
また、印刷速度は、400、200、100、50、25mm/秒と変化させ、下記基準に従い評価した。
<評価基準>
5:400mm/秒の印刷速度でもベトツキ、膜剥がれは無かった
4:200mm/秒の印刷速度ではベトツキ、膜剥がれは無かった
3:100mm/秒の印刷速度ではベトツキ、膜剥がれは無かった
2:50mm/秒の印刷速度ではベトツキ、膜剥がれは無かった
1:25mm/秒の印刷速度でもベトツキ、又は/及び、膜剥がれが見られた
【0237】
(評価項目2:UV照射による基材の変形)
白色PE粘着シート(Avery社製;FASSON BA1193 PE85white/S692N/BG40WH)に印刷した後、印刷物をA4サイズに切り出し、水平な平面に静置し、基材の浮き(カール)を測定することによって、UV照射による基材の変形を定義した。なお、印刷速度は、上記生産性のテストにおいてベトツキと膜剥がれが起きない条件で最も早い速度で印刷し、下記基準に従い評価した。
<評価基準>
5:基材の変形はほとんどない(基材の浮きは0.1cm未満)
4:基材の少し変形がある(基材の浮きは0.1cm以上0.5cm未満)が印刷後に一定加重を加えると元に戻る
3:基材の変形がある(基材の浮きは0.5cm以上1cm未満)が印刷後に一定加重を加えると元に戻る
2:基材の変形があり(基材の浮きは1cm以上)印刷後に一定加重を加えても元に戻らない
1:基材の変形が大きく、ヘッド面との衝突、紙つまりなどのシステム不良が見られ印刷不可能
【0238】
(評価項目3:装置コスト)
従来のUVインクジェットプリンター(光源として最終露光光源1基;比較例5〜7)と比較して、装置コストが高いものを「高い」、同等以下のものを「安い」とした。
結果を以下の表に示す。
【0239】
【表6】

【図面の簡単な説明】
【0240】
【図1】本発明に好適に使用できるインクジェット記録装置の概念図の一例である。
【図2】半硬化状態の下塗り液層上にインク組成物を打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。
【図3】未硬化状態の下塗り液層上にインク組成物を打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。
【図4】未硬化状態の下塗り液層上にインク組成物を打滴して得られた印刷物の他の一実施態様を示す断面模式図である。
【図5】完全硬化状態の下塗り液層上にインク組成物を打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。
【図6】本発明で用いることのできる好ましい蛍光灯の一例を示す斜視図である。
【図7】図6における蛍光灯を示す概念断面図である。
【図8】半硬化状態のインク組成物A上にインク組成物Bを打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。
【図9】未硬化状態のインク組成物A上にインク組成物Bを打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。
【図10】未硬化状態のインク組成物A上にインク組成物Bを打滴して得られた印刷物の他の一実施態様を示す断面模式図である。
【図11】実施例で露光に使用した蛍光灯及びメタルハライドランプの発光スペクトルである。
【符号の説明】
【0241】
1 下塗り液を付与する手段
2 下塗り液を半硬化させる手段
3W、3C、3M、3Y、4K インクを吐出する手段
4W、4C、4M 蛍光灯
5 画像を完全に硬化させる手段
6 被記録媒体
7A、7B 被記録媒体搬送手段
10 画像
12 インク硬化物
14 半硬化状態の下塗り液層にインク組成物を付与された下塗り層
16 基材
18 未硬化状態の下塗り液層にインク組成物を付与された下塗り層
20 完全硬化状態の下塗り液層にインク組成物を付与された下塗り層
22 インクB硬化物
24 半硬化状態のインク組成物Aにインク組成物Bを付与されて得られたインクA硬化物
26 未硬化状態のインク組成物Aにインク組成物Bを付与されて得られたインクA硬化物
80 蛍光灯
81 光シャッター
82 ハウジング
83 開口
84 冷却機構
86 バルブ
88 電極
90 反射膜
92 蛍光体膜
94、96 開口
100 蛍光灯装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体上に少なくとも重合性化合物及び下記式(I)で表される化合物を含有するインク組成物Aを吐出する工程、
前記インク組成物Aに蛍光灯により紫外線を照射する工程、及び、
蛍光灯により紫外線を照射されたインク組成物A上に少なくとも重合性化合物を含有し、かつ、インク組成物Aとは異なる色相を有するインク組成物Bを吐出する工程、を含むことを特徴とする
インクジェット記録方法。
【化1】

前記式(I)において、XはO、S、又は、NRを表す。nは0又は1を表す。Rは水素原子、アルキル基、又はアシル基を表す。R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8はそれぞれ独立に水素原子、又は一価の置換基を表す。R1、R2、R3、及び、R4は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成していてもよい。
【請求項2】
インク組成物Aに照射した紫外線よりもUVB領域における露光強度が高い紫外線を照射し、インク組成物A及び/又はインク組成物Bを硬化する工程を有する、請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項3】
前記インク組成物Aが光重合開始剤を含有し、該光重合開始剤がアシルホスフィンオキサイド化合物及びα−アミノアセトフェノン化合物よりなる群から選択される少なくとも1つを含有する、請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
【請求項4】
前記蛍光灯が発光する光は、少なくとも340nm以上400nm以下の範囲にピーク波長を有する、請求項1〜3いずれか1つに記載のインクジェット記録方法。
【請求項5】
前記蛍光灯は、バルブと、前記バルブの内壁に積層され、被記録媒体側に開口が形成された反射膜と、前記反射膜及び前記バルブの内壁に積層され、被記録媒体側に開口が形成された蛍光体膜とを有する、請求項1〜4いずれか1つに記載のインクジェット記録方法。
【請求項6】
少なくとも重合性化合物及び下記式(I)で表される化合物を含有するインク組成物Aを被記録媒体上に吐出する手段、
インク組成物Aに紫外線を照射する蛍光灯、及び、
蛍光灯によって紫外線を照射されたインク組成物A上に少なくとも重合性化合物を含有し、かつ、インク組成物Aとは異なる色相を有するインク組成物Bを吐出する手段、を有することを特徴とする
インクジェット記録装置。
【化2】

前記式(I)において、XはO、S、又は、NRを表す。nは0又は1を表す。Rは水素原子、アルキル基、又はアシル基を表す。R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8はそれぞれ独立に水素原子、又は一価の置換基を表す。R1、R2、R3、及び、R4は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成していてもよい。
【請求項7】
インク組成物A及び/又はインク組成物Bに対して紫外線を照射する手段を有し、該紫外線は、前記インク組成物Aに照射した紫外線よりもUVB領域における露光強度が高い、請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記インク組成物Aが光重合開始剤を含有し、該光重合開始剤がアシルホスフィンオキサイド化合物及びα−アミノアセトフェノン化合物よりなる群から選択される少なくとも1つを含有する、請求項6又は7に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記蛍光灯が発光する光は、少なくとも340nm以上400nm以下の範囲にピーク波長を有する、請求項6〜8いずれか1つに記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記蛍光灯は、バルブと、前記バルブの内壁に積層され、被記録媒体側に開口が形成された反射膜と、前記反射膜及び前記バルブの内壁に積層され、被記録媒体側に開口が形成された蛍光体膜とを有する、請求項6〜9いずれか1つに記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
請求項1〜5いずれか1つに記載のインクジェット記録方法により得られた印刷物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2010−17899(P2010−17899A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−178702(P2008−178702)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】