説明

インクジェット記録方法およびインクジェット記録装置

【課題】 記録紙に対し、記録に伴って予備吐出のためのインク吐出も併せて行う場合に、この予備吐出による明度の低いドットが集中することによる画像品位の低下を生じないようにする。
【解決手段】 予備吐出のパターンを、明度の低いシアンドット1201とマゼンタドット1202との距離1215が、明度の高いイエロードット1205と、明度の低い色のうちイエロードットと最も近いシアンドット1201との距離1216より長いパターン1207とする。これにより、集中したドットの集まりとして認識される距離が近い低明度のドットの形成を防ぐことができ、紙面予備吐出による記録品位の低下が生じない記録を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方法およびインクジェット記録装置に関し、詳しくは、記録ヘッドから記録に関与しないインク吐出を行う、いわゆる予備吐出を画像の記録とともに行うインクジェット記録方法およびインクジェット記録装置に関するものである。
【0002】
また、本発明は、紙、糸、繊維、布、金属、プラスチック、ゴム、ガラス、木材、セラミックなどの被記録媒体に対して記録を行う、プリンター、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリンター部を有するワードプロセッサなどの装置、さらには各種処理装置と複合的に組み合わされた産業用記録装置に適用することができるものである。
【0003】
なお、本明細書における「記録」とは、文字や図形などのように意味を持つ画像を被記録媒体に対して付与することだけではく、パターンなどの様に意味を持たない画像を付与する事も意味するものである。
【背景技術】
【0004】
インクジェットプリンタにおける予備吐出は、そのインク吐出によって記録ヘッドのインク吐出口内の増粘したインクや塵埃を排出して記録ヘッドの吐出性能を良好に維持するものである。また、染料や顔料などの色材の濃度が増したインクを排出して記録画像における濃度むらなどを防止するためにも行われる。このような予備吐出の一般的な構成は、記録ヘッドを走査させて記録を行うシリアル方式の場合、その走査範囲の一端に設けられたインク受けに対して予備吐出のためのインク吐出を行う。また、記録媒体の幅に対応してインク吐出口を配列した記録ヘッドに対して記録媒体を移動させて記録を行うフルライン方式の場合、インク受けを記録ヘッドに対して相対移動して対向させ、これにインク吐出を行うものである。
【0005】
これに対し、記録媒体中に記録する画像とともに予備吐出のためのインク吐出を行うものも知られている。例えば、特許文献1には、記録のためのインク吐出とともに一定の周期で予備吐出を行うことが記載されている。このような予備吐出によれば、記録装置に設けられた所定のインク受けに予備吐出する場合のように、予備吐出のための記録ヘッドの移動などを必要としないことから、その分スループットの低下を防ぐことが可能となる。また、この記録媒体に対して予備吐出を行う方式(本明細書では、「紙面予備吐出」ともいう)は、基本的に、画像記録のためのインク吐出に伴って行われることから、記録データとの関係で記録中に吐出が行われない吐出口が存在する場合でも、その吐出口について予備吐出を行うことができる。すなわち、記録の際には、記録ヘッドがキャップなどによって覆われずに吐出口の部分が露出した状態で記録が行われるが、この場合に、記録データによってインク吐出が行われない吐出口が存在しても、その吐出口について予備吐出によるインク吐出を行うことができ、露出状態による吐出不良などを効果的に防止することができる。
【0006】
特に、比較的大きなサイズの記録媒体に記録を行う場合に紙面予備吐出は効果的である。すなわち、大きなサイズの記録媒体に記録を行う場合、記録ヘッドの走査にそれだけ時間を要するためスループットが低下する傾向にあるが、紙面予備吐出は、このスループットの低下を防止する上で望ましい方式である。また、大サイズの記録媒体に記録を行う場合は、記録ヘッドにおける吐出口が露出した状態がそれだけ長時間になるが、その露出状態のときにインク吐出を行うことができる方式として好ましいものである。
【0007】
さらに、大サイズの記録媒体を用いる場合に限らず、インクが色剤として例えば顔料などを用い凝集などによる増粘を生じ易いものである場合には、露出状態の記録ヘッドについてインク吐出を行うことができる方式として、紙面予備吐出は好ましい方式である。
【0008】
【特許文献1】特開昭55−139269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、複数色のインクを用いて記録を行う一般的なインクジェット記録装置では、紙面予備吐出によって画像品位が低下することがある。例えば、複数色のインクそれぞれについて、特許文献1に記載のように一定の周期で予備吐出を行う場合には、明度の低いインクによるドットが集中して記録画像を見る者が認識できる程度に目立ち、それによって画像品位が低下することがある。
【0010】
本発明は、以上のような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、明度の低いドットによる画像品位の低下を生じない紙面予備吐出を行うことが可能なインクジェット記録方法およびインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのために、本発明では、複数色のインクを吐出する記録ヘッドを用い、記録媒体に複数色のインクを吐出して記録を行うときに、該記録に伴うインク吐出に併せて前記記録ヘッドから予備吐出のため複数色のインクを前記記録媒体に吐出するためのインクジェット記録方法であって、記録すべき画像に基づく記録データに、前記予備吐出のための予備吐出データを付加して記録データを生成する工程と、前記生成された記録データに基づいて、記録ヘッドから記録媒体に複数色のインクを吐出する工程とを有し、前記予備吐出データに基づき形成される前記複数色のインクによるドットのパターンは、前記複数色のドットのうち、最も明度の高いドットに最も近いドットと当該最も明度が高いドットの距離より、前記最も明度の高いドット以外の任意の2つのドット間の距離が長い関係を有したパターンであることを特徴とする。
【0012】
また、複数色のインクを吐出する記録ヘッドを用い、記録媒体に複数色のインクを吐出して記録を行うときに、該記録に伴うインク吐出に併せて前記記録ヘッドから予備吐出のため複数色のインクを前記記録媒体に吐出するインクジェット記録装置であって、記録すべき画像に基づく記録データに、前記予備吐出のための予備吐出データを付加して記録データを生成する生成手段と、前記生成手段によって生成された記録データに基づいて、記録ヘッドから記録媒体に複数色のインクを吐出する吐出手段とを有し、前記予備吐出データに基づき形成される前記複数色のインクによるドットのパターンが、前記複数色のドットのうち、最も明度の高いドットに最も近いドットと当該最も明度が高いドットの距離より、前記最も明度の高いドット以外の任意の2つのドット間の距離が長い関係を有したパターンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上の構成によれば、予備吐出データによって形成されるドットパターンが、複数色のドットのうち、最も明度の高いドットに最も近いドットと当該最も明度が高いドットの距離より、前記最も明度の高いドット以外の任意の2つのドット間の距離が長い関係を有したパターンであるので、明度の低い色同士の間隔を長く設定することができ、これらが集中したドットの集まりとして認識されることを防ぐことができるパターンの設計が容易になる。すなわち、所定長さの範囲に複数の色のドットを配置するという条件でパターンを設計するとき、各ドットが等間隔のパターンよりも、明度の低い色同士の間隔を長く設定することができる。上記条件における所定の長さは、例えば、A3のサイズの記録紙に記録を行う際に、1色のインクについて1回の走査で必要な予備吐出の量(吐出回数)をそのインクの増粘特性や走査速度などから求められ、この吐出回数で、A3サイズ記録紙の走査方向の幅を割った長さとして求めることができるものである。
【0014】
以上のような予備吐出のパターンを用いることにより、集中したドットの集まりとして認識されるドットの形成を防ぐことができるので、紙面予備吐出による記録品位の低下が生じない記録を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態では、インクジェット記録装置としてプリンターを例に挙げ説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態にかかるインクジェットプリンタの概略構成を示す外観斜視図である。図示されるように、このプリンターは、記録ヘッドとインクを貯留するインクタンクとが一体となったヘッドカートリッジを着脱可能に搭載するキャリッジ11が往復移動(この移動方向を主走査方向という)することにより記録ヘッドの記録媒体に対する走査を行い、この走査の間に記録用紙などの記録媒体にインクを吐出して記録を行う。キャリッジモータ12は、上記のキャリッジ11の移動の駆動源となり、その駆動力はベルト4およびプーリ5a、5bを介してキャリッジ11に伝達される。また、ガイドシャフト6は、キャリッジ11が主走査方向に移動する際にこれを案内支持する。記録ヘッドのインク吐出のための吐出信号などは、図4にて後述される制御部から電気信号として記録ヘッドに転送されるが、フレキシブルケーブル13はその転送を媒介する。キャップ141およびワイパブレード143は、それぞれ記録ヘッドに対するキャッピングおよびワイピングを行い、吐出回復処理に用いられるものである。カセット15は、記録媒体(例えば、記録紙)を積層状態で蓄え、また、エンコーダセンサ16およびエンコーダフィルムは、キャリッジ11の移動位置を光学的に読み取る。
【0017】
図2は、図1に示したインクジェットプリンタのキャリッジ近傍の構成を詳細に示す斜視図である。図2において、記録ヘッド22は、本実施形態では、上述したようにインクタンクと一体に構成されるとともに、キャリッジ11に対して着脱自在に搭載されるものである。そして、この記録ヘッド22は、ブラック(K)、濃シアン(C)、濃マゼンタ(M)、およびイエロー(Y)のインクの他に、上記濃インクより色剤濃度が薄い淡インクである、淡シアン(LC)、淡マゼンタ(LM)の各インクを加えた計6色のインクをそれぞれ吐出する6つの記録ヘッド22K、22C、22M、22Y、22LCおよび22LMから構成される。また、インクタンク21は、記録ヘッド22K、22LC、22C、22LM、22M、22Yの夫々に供給するインクを貯蔵する6つのインクタンク21K、21LC、21C、21LM、21M、21Yから構成される。そして、それぞれの記録ヘッドとインクタンクは対応する色のインクごとに一体に形成されヘッドカートリッジを構成する。これらのカートリッジを搭載したキャリッジ11の移動範囲の一方の端部近傍のホームポジションには、6色のインクに対応したキャップ141が設けられる。すなわち、キャップ141は、6つの記録ヘッド夫々のインク吐出面を覆うべく、6つのキャップ141K、141LC、141C、141LM、141M、及び141Yで構成されている。なお、これらの記録ヘッドやインクタンクを別個に参照するときは、夫々に付された参照番号を用い、包括的に参照するときは総称的な参照番号として、記録ヘッドは「22」、インクタンクは「21」、キャップは「141」を用いる。また、上記の例では、記録ヘッドとインクタンクが一体のヘッドカートリッジを構成するものとしたが、夫々が個別にキャリッジに対して着脱できるものでもよいことはもちろんである。
【0018】
図3は、記録ヘッド22を吐出口側から見た図である。図3に示されるように、記録ヘッド22K、22LC、22C、22LM、22M、22Yは、それぞれ1200dpiの密度で1280個の吐出口を主走査方向に略直交する方向に配列している。そして、これら6つの記録ヘッドは主走査方向に配列するようにキャリッジ11に搭載されている。それぞれの吐出口23から1回の吐出で吐出されるインク量は約4ngである。
【0019】
以上、図1〜図3を参照して説明した本実施形態のインクジェットプリンタの記録動作の概略は次のとおりである。
【0020】
記録が開始されると、カセット15に積層された記録紙1が給紙ローラ(不図示)によって一枚ずつ記録領域へ供給される。そして、記録領域では、記録ヘッド22が走査するとともに、この記録ヘッド22が対向する領域に設けられたプラテン(不図示)上を、搬送ローラ対3などによって所定量ずつ搬送される。一方、インクはインクタンク21より記録ヘッド22へ供給され、記録ヘッド22は、図2の矢印B方向(往路走査方向)に走査しながら、記録データに応じて記録紙1にインクを吐出し、記録ヘッド22の吐出口の所定数に対応した幅で記録を行う。この記録におけるインク吐出は、エンコーダ16の読み取りタイミングに従い記録ヘッド駆動することによって行う。そして、矢印B方向(往路走査方向)の1走査分の記録が終了すると、記録ヘッド22は元のホームポジションに戻り、再び矢印B方向(往路走査方向)への記録を行う。一方向に向かう1回の記録動作(1走査)が終了してから次回の記録動作が開始される前に、搬送ローラ対3を駆動して記録紙1を、上記吐出口の所定数に対応した幅である所定量矢印A方向に搬送する。このように1走査分の記録動作と所定量の記録紙搬送とを繰り返すことによって、記録紙1に画像の記録を行うことができる。
【0021】
記録開始前など所定のタイミングで、記録ヘッド22はホームポジションに戻り、回復機構により回復動作を行う。すなわち、キャップ141を記録ヘッド22の吐出口面に対してキャッピングを行い、吐出口23内のインクを吸引する動作を行う。また、非記録時には上記のキャッピングを行い、インクの乾燥を防止する。さらに、ワイパブレード143によって記録ヘッド22の吐出口23面を矢印C方向に移動しながらワイピングして吐出口面に付着したインクなどを除去する動作を行う。
【0022】
また、図7以降で後述されるように、本発明の実施形態では、予備吐出として記録動作に伴い記録紙中にインクを吐出する、紙面予備吐出を行うが、本実施形態では、さらに、記録開始前などに予め予備吐出を行うべく、ホームポジションに隣接した位置にインク受けが設けられており、記録開始前など所定のタイミングでこのインク受けに予備吐出が行われる。
【0023】
図4は、以上示した本実施形態のインクジェットプリンタにおける制御系の構成を示すブロック図である。図4において、イメージコントローラ210は、ホスト装置200やプリンターの操作部(不図示)からの処理命令信号に従って、プリントエンジン制御部制御部220に制御コマンドを通知する。また、記録中は、ホスト装置200からの受信した記録データを解析、展開して各色2値の画像データへの変換を行う。プリントエンジン制御部制御部220は、イメージコントローラ210から送られた制御コマンドおよび画像データを基に記録動作を行う。イメージコントローラ210とプリントエンジン制御部制御部220の間は専用のインターフェースで接続され、イメージコントローラ210からプリントエンジン制御部制御部220へ制御コマンドを通知するコマンド送信、プリントエンジン制御部制御部220からイメージコントローラ210の状態変化を通知するステータス送信からなる通信と、イメージコントローラ210からプリントエンジン制御部制御部220へ画像データ転送とを行うことができる。
【0024】
プリントエンジン制御部220では、MPU(MicroProcessorUnit)221がROM227に格納されたプログラムに従い、各種動作を実行する。RAM228はMPU221の作業領域や一時データ保存領域として利用される。MPU221は、ASIC(ApplicationSpecificIntegratedCircuit)222を介して、キャリッジ駆動系223、搬送駆動系224、回復駆動系225、およびヘッド駆動系226の制御を行う。また、MPU221はASIC222から読み書き可能なプリントバッファ229、マスクバッファ230への読み書きが可能な構成になっている。
【0025】
プリントバッファ229は、記録ヘッドへ転送する形式に変換された画像データを一時保管する。マスクバッファ230は、記録ヘッドに転送する際にプリントバッファ229から転送される際に、マルチパス記録のためにデータに必要に応じてアンド処理を施す所定のマスクパターンを一時的に保持する。なお、パス数の異なるマルチパス記録のための複数組のマスクパターンがROM227内に用意され、実際の記録時に該当するマスクパターンがROM227から読み出されてマスクバッファ230に格納される。マスクバッファ229とのアンド処理は、1パス記録のように必要のない場合には行われない構成としている。
【0026】
上記の構成において、ホスト装置200からイメージコントローラ210に画像データが送られることにより記録動作が開始される。イメージコントローラ210は、ホスト装置200から受信した画像データを解析し、記録品位、マージン情報等の記録に必要な情報を生成し、さらに画像データを解析、展開して各色2値の画像データへの変換を開始する。この画像データの展開処理とともに、記録品位、マージン情報等の、プリントエンジン制御部220での記録に必要な情報に関しては、プリントエンジン制御部220に通知される。そして、プリントエンジン制御部220では、この通知された情報は、ASIC222を介してMPU221で処理され、RAM228に保持される。この情報は、その後、必要なときに参照され、処理の切り分けに利用される。さらに、必要に応じてマスクバッファ230へのマスクパターンの書き込みを行う。
【0027】
必要な情報の通知が終了すると、イメージコントローラ210は、画像データから変換した各色2値の記録データのプリントエンジン制御部220への転送を開始する。プリントエンジン制御部220では転送された記録データをプリントバッファ229に書き込む。そして、図7以降で後述されるように、この書き込まれた記録データと、予め生成した紙面予備吐出データとのオア(論理和)がとられ、新たな記録データが生成される。この予備吐出データが付加された記録データに基づいて記録を行うことにより、記録を行う際、紙面予備吐出行うことができる。このような、イメージコントローラ210からの記録データ転送を繰り返すことにより、プリントエンジン制御部220では、プリントバッファ229に次々に記録ヘッドに転送する記録データが保持されていく。
【0028】
プリントバッファ229に保持された記録データが、実際のバンドデータの記録が可能な量まで溜まった段階で、MPU221は、ASIC222を介して搬送駆動系224により用紙の搬送を行うとともに、キャリッジ駆動系223によりキャリッジ11を移動させる。また、回復駆動系225により回復系を駆動して記録動作前に必要な回復動作を行う。さらに、ASIC222に対して、画像の出力位置等の設定を行い、キャリッジ11を駆動して記録動作を開始する。キャリッジ11が移動して、ASIC222に設定した記録開始位置に到達すると、吐出タイミングに合わせて、上述した紙面予備吐出パターンが付加された記録データが順次プリントバッファ229から読み出される。また、必要に応じてマスクバッファ230から対応するマスクパターンが読み出される。そして、読み出された記録データとマスクデータのアンド(論理積)がとられ、記録ヘッドに転送される。ヘッド駆動系226の制御により、記録ヘッドでは、転送された記録データに従って記録ヘッドを駆動して吐出を行う。このように、イメージコントローラ210からの記録データ受信以降の処理を繰り返すことにより、例えば、1ページ分の記録が行われる。
【0029】
図5は、図4にて上述したホスト装置200およびプリンター240におけるデータ処理について説明する図である。
【0030】
ホスト装置200には、記録装置を制御するためのソフトウエアであるプリンタドライバ250が予めインストールされており、ユーザが所望の画像を記録しようとする際に起動される。まず、プリンタドライバ250が600dpi×600dpiのRGB(レッド,グリーン,ブルー)もしくはKCMY(ブラック,シアン,マゼンタ,イエロー)形式の多値画像データ(ここでは、各8ビット)を生成して、プリンターに転送する。イメージコントローラ210では、受信した画像データがRGB形式の場合には、プリンターにマッチした色空間にするためにRGBからR’G’B’への色変換処理500を行う。次に、プリンターで用いるインク色に合わせるためにR’G’B’の8ビットデータから600dpi×600dpiのそれぞれK,LC,LM,C,M,Yの多値データ(ここでは、各8ビット)への色分解処理510を行う。一方、イメージコントローラ210が受信したデータがKCMY形式の場合には、色変換処理500を行わずに色分解処理510を行う。このようにプリンタドライバ250で生成されるデータ形式に関わらず、色変換処理510において、プリンタで使用するインク色に対応した各色データが生成される。色変換処理500および色分解処理510では、予め決められた色変換用のルックアップテーブルを用いて色変換を行う。ルックアップテーブルは予めプリンター本体のROMデータに保持しておいても良いし、記録データとともにホスト装置200から転送したテーブルに基づいて処理を行っても良い。
【0031】
続いて、K,LC,LM,C,M,Yの8ビット(255階調)データから各色4ビット(5階調)への量子化処理520を行う。量子化処理520としては、公知の誤差拡散法あるいはディザ法を用いて行う。量子化されたK,LC,LM,C,M,Yの4ビット(5階調)データは、図6にて後述されるインデックス展開処理530が施され、K,LC,LM,C,M,Yの各色1ビット(2階調)の記録データに変換される。変換された記録データは、プリントエンジン制御部220に転送される。
【0032】
図6は、上記のインデックス展開を説明する図である。一般に、インデックス展開はRGB多値データ段階での処理負荷を低減しかつ階調性を向上させることを目的とするものであり、これにより、処理速度と画質の両立を図ることができる。本実施形態においては、イメージコントローラ210が600dpiの4ビット(5階調)データを1200dpiの1ビット(2階調)データにインデックス展開する。従って、展開するマトリクスサイズは2(横)×2(縦)となる。図に示すように5階調分の4ビットデータ(”0000”、”0001”、”0010”、”0011”、”0100”)には、予めそれによって展開するパターンが設定されている。この設定パターンは、プリンター内のROMに保持しておくか、あるいは、画像データとともにホスト装置からダウンロードしても良い。600dpiの4ビットデータは、上記設定した各階調レベルのパターンに基づいて画素単位で展開され、1200dpiの1ビット(2階調)データが生成される。そして、プリントエンジン制御部220では、このように展開されたK,LC,LM,C,M,Yの各色1ビット(2階調)のデータに対して、オア(論理和)により後述の予め生成した紙面予備吐出としての予備吐出データを付加する。
【0033】
図7は、付加する紙面予備吐出の記録データを画素において配置されたパターンで示す図である。この図7のパターンは、1色のインクについて基本パターンを示しており、それぞれの色のインクの予備吐出パターンを合わせたものは図8等で示される。なお、図7では、説明を分かり易くするために記録ヘッドの吐出口の数は実際よりも少なく16としており、記録ヘッド22における符号310〜325は16個それぞれの吐出口を示している。また、紙面予備吐出パターンの解像度は、2値化データの解像度と等しく、本実施形態では、Y方向の解像度は記録ヘッドの解像度に等しい1200dpiとし、X方向も1200dpiとしている。
【0034】
ここで、図7の見方について説明する。1つのマスは1200dpi×1200dpi相当の画素を表している。X方向に隣接して示される画素同士はX1画素分離れており、また、Y方向に隣接して示される画素同士はY1画素分離れている。本実施形態では、X1=75で、Y=1である。従って、図7では、X方向についてのみ画素を省略して記載してある。
【0035】
さて、360は着目画素の原点(X0,Y0)を示している。この着目画素に予備吐出の付加ドットを形成する場合には、吐出口310から吐出されるインクが付与されることになる。原点360からX方向に4×X1画素、Y方向に1画素移動した座標(X0+4×X1、1)は、吐出口311によってインクが付与される着目画素361である。上述したようにX1画素は75画素に相当する。従って、着目画素360と着目画素361はX方向に300画素分(=4×X1画素分)離間している。同様に、吐出口311によってインクが付与される着目画素361からX方向に4×X1画素、Y方向に1画素移動した座標(X0+2×4×X1、2)は、吐出口312によってインクが付与される着目画素362である。さらに、着目画素362からX方向に4×X1画素、Y方向に1画素移動した座標(X0+3×4×X1、3)が、吐出口313によってインクが付与される着目画素363である。パターンは、Y0+3=Y1−1となると、次の吐出口314によってインクが付与される着目画素364は、(X0+X1、Y1)として同様に繰り返す。このようにして、1つの色のインクについて、16の吐出口全てに対して紙面予備吐出が行われるパターンの単位である、X方向に16×X1画素、Y方向に16×Y1画素のサイズの紙面予備吐出パターンを繰り返すことにより、記録領域の全体に渡って予備吐出のためのインク吐出を行う画素を決定することができる。本実施形態において紙面予備吐出パターンの単位はX方向に1200画素、Y方向に16画素のサイズとなっており、1つの吐出口は1200画素毎に1発の予備吐出を行う。
【0036】
なお、このパターンの決定は、図8等で後述されるように、インク色相互で付与する画素の間隔を考慮して行われる。また、紙面予備吐出パターンは、色ごとに、原点X0、Y0、ドット間距離X1、Y1の4つのパラメータで記述することが可能である。もちろん、上述した紙面予備吐出パターンは一例であって、他の紙面予備吐出パターンを実現するために他の形態のパラメータであってもよく、また、パラメータを用いないでパターンを表現してもよい。
【0037】
(第1実施形態)
図8(a)〜(c)は、本発明の第一の実施形態にかかる紙面予備吐出のパターンを、インク吐出によって形成されるドットの画素における配置で示す図である。本実施形態においては、各色とも図7の基本パターンに基づいて予備吐出を行うが、その基本パターンが各色で重ならないようにオフセットした配置としている(図8参照)。同図は、説明の簡略化のため、図1〜図6を参照して説明した、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、淡シアン(LC)、淡マゼンタ(LM)およびブラック(K)の各色インクを用いて記録を行うインクジェットプリンターにおける紙面予備吐出パターンのうち、ブラックを除いたインクの予備吐出パターンを示している。
【0038】
ここで、図8は、図3に示したように各色インクの吐出口列が1cm間隔で主走査方向に同じ高さに並んでいる記録ヘッドで、それぞれのインクについて主走査方向に沿った1つの直線に対応する1つの吐出口が、走査速度25inch/secで走査し、吐出周波数25Hzで吐出を行ったときの、紙面予備吐出のパターンを示している。1つの吐出口は1inch毎に1発の予備吐出を行うものであり、本実施形態の記録解像度が1200dipであることを考慮すれば、1つの吐出口は1200画素毎に1発の予備吐出を行うことになる。
【0039】
さて、図8(a)に示される「d1」の幅は300画素分に相当する。これは図7の基本パターンのX方向における「4×X1」の幅に等しい。なお、図8(a)において「d1」の幅が300画素分に相当するため、2つの縦点線間の距離である「d」の幅は15画素分に相当する。
【0040】
ここで、図8(a)について詳しく説明する。図8(a)に示す各インク色のドットは、図7に示す基本パターンの原点画素360に形成されるドットを示しており、各色について原点画素360の位置がオフセットされている。例えば、図8(a)の1207を例に挙げれば、シアンドットに対し、イエロードットは30画素分オフセットされている。同様に、マゼンタドット、淡シアンドット、淡マゼンタドットも、シアンドットに対しそれぞれ75画素分、150画素分、225画素分オフセットされている。
【0041】
図8(a)において、パターン1206は、比較例として従来の、各インク色のドットが相互に等間隔であるパターンを示し、パターン1207〜1210は、それぞれ本実施形態による別個のパターンを示している。すなわち、本実施形態では、パターン1207〜1210のうち、いずれか1つのパターンによって紙面予備吐出が行われる。
【0042】
従来のパターン1206は、色に関係なく等間隔に(距離1211=距離1212=距離1213=距離1214)ドットを配置するパターンである。すなわち、比較的明度の低い色同士である、シアンドット1201とマゼンタドット1202との距離1211、マゼンタドット1202と淡シアンドット1203との距離1212、淡シアンドット1203と淡マゼンタドット1204との距離1213が、これら明度の低い色(同パターンの場合、淡マゼンタ)と明度が比較的高い色であるイエロードット1205との距離1214と同じに設定される。この結果、明度の低い色同士の間隔が、記録画像において相対的に明度の低い色のドット同士が集中したドットの集まりとして認識されるような短い距離となり、それによって粒状感など記録画像の品位を低下させることがある。
【0043】
これに対して、本実施形態のパターンは、その一例であるパターン1207のように、比較的明度の低いシアンドット1201とマゼンタドット1202との距離1215が、比較的明度の高いイエロードット1205と、明度の低い色のうちイエロードットと最も近いシアンドット1201との距離1216より長いパターンとする。また、距離d1の範囲内に存する1つのパターン単位の最右端に位置する淡マゼンタドット1204と、次のパターン単位の最左端に位置するシアンドット1201との距離1217も距離1216と同じ距離とする。そして、記録全体では、それぞれの色のドットが、他の色のドットとこのパターン1207の関係の下で、それぞれ、図7にて上述した距離d1の範囲内の基本パターンを繰り返すような、紙面予備吐出のパターンとする。これにより、基本的に、明度の低い色同士の間隔を長く設定することができ、上記のように集中したドットの集まりとして認識されることを防ぐことができるパターンの設計が容易になる。すなわち、図8に示すような、同じ長さd1の範囲(この方向と直交する方向も同様の範囲)に5つの色のドットを配置するという条件でパターンを設計するとき、本実施形態のパターンは、従来のパターン1206よりも、明度の低い色同士の間隔を長く設定することができるものである。上記条件における長さd1は、例えば、A3のサイズの記録紙に記録を行う際に、1色のインクについて1回の走査で必要な予備吐出の量(吐出回数)をそのインクの増粘特性や走査速度などから求めることができ、この吐出回数で、A3サイズ記録紙の走査方向の幅を割った長さとして求めることができる。以上のような予備吐出のパターンを用いることにより、集中したドットの集まりとして認識されるドットの形成を防ぐことができるので、紙面予備吐出による記録品位の低下が生じない記録を行うことができる。
【0044】
本実施形態のパターンの他の例である、パターン1208は、イエロードット1205と最も近い明度の低いドットをマゼンタドット1202としたものである。同様に、さらに他の例であるパターン1209は、イエロードット1205と最も近い明度の低いドットを淡シアンドット1203としたものであり、パターン1210は、イエロードット1205と最も近い明度の低いドットを淡マゼンタドット1204としたものである。
【0045】
なお、上記の例では、ブラックインクのドットの配置について説明していないが、ブラックドットについても、低明度の色のドットとして、イエロードットの距離関係を他の低明度の色のドットと同じようにし、6色のインクのパターンとして設定することができることは、以上の説明からも明らかである。
【0046】
ところで、図8(a)では、図7の基本パターンにおける原点画素360の位置についてのみしか示されていないが、当然、その他の画素361〜375についても予備吐出は行われる。そこで、図8(b)、(c)において、図7の基本パターンに基づく各色の予備吐出位置を原点画素のみならずその他画素も併せて示す。なお、図8(b)および(c)において、X方向における1マスの距離は15画素に相当し、Y方向における1マスの距離は1画素に相当する。また、図7の基本パターンとの対応関係を明瞭化するべく、図7にて付されている画素番号を援用している。詳しくは、シアンの予備吐出パターンを360(C)・361(C)・362(C)等で示し、同様に、マゼンタの予備吐出パターンを360(M)・361(M)・362(M)等で、イエローの予備吐出パターンを360(Y)・361(Y)・362(Y)等で、淡シアンの予備吐出パターンを360(Lc)・361(Lc)等で、淡マゼンタの予備吐出パターンを360(Lm)・361(Lm)等で示している。
【0047】
さて、図8(b)は、図8(a)の1207で示される各色パターンに図7の基準パターンを適用した場合を示している。具体的には、基準となるシアンの予備吐出パターンに対して、イエローの予備吐出パターンはX方向へ30画素分オフセットさせ、マゼンタの予備吐出パターンはX方向へ75画素分オフセットさせ、淡シアンの予備吐出パターンはX方向へ150画素分オフセットさせ、イエローの予備吐出パターンはX方向へ225画素分オフセットさせている。一方、図8(c)は、基準となるシアンの予備吐出パターンに対して、イエローの予備吐出パターンはX方向へ30画素分且つY方向へ1画素分オフセットさせ、マゼンタの予備吐出パターンはX方向へ75画素分且つY方向へ1画素分オフセットさせ、淡シアンの予備吐出パターンはX方向へ150画素分且つY方向へ2画素分オフセットさせ、イエローの予備吐出パターンはX方向へ225画素分且つY方向へ2画素分オフセットさせている。
【0048】
各色の予備吐出位置をこのような関係にすることで、明度の低い紙面予備吐出ドットを極力離間させた状態にすることができる。
【0049】
(第2実施形態)
図9は、本発明の第2の実施形態にかかる紙面予備吐出のパターンを、インク吐出によって形成されるドットの画素における配置で示す図である。本実施形態は、用いるインクがシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)およびブラック(K)のインクであるインクジェットプリンターにおける紙面予備吐出パターンに関するものであり、図9は、上述の第一実施形態と同様、説明の簡略化のためブラックを除いたインクの予備吐出パターンを示している。また、同パターンは第一実施形態と同様、各色インクの吐出口列が1cm間隔で主走査方向に同じ高さに並んでいる記録ヘッドで、それぞれのインクについて主走査方向に沿った1つの直線に対応する1つの吐出口が、走査速度25inch/secで走査し、吐出周波数25Hzで吐出を行ったときの、紙面予備吐出パターンを示している。また、第一実施形態と同様、1つの吐出口は1inch毎に1発の予備吐出を行うものであり、本実施形態の記録解像度が1200dipであることを考慮すれば、1つの吐出口は1200画素毎に1発の予備吐出を行うことになる。
【0050】
さて、図9に示される「d2」の幅は1200画素分に相当する。これは図7の基本パターン単位である「16×X1画素」に等しい。なお、図9において「d2」の幅が1200画素分に相当するため、2つの縦点線間の距離である「d」の幅は200画素分に相当する。
【0051】
ここで、図9について詳しく説明する。図9に示す各インク色のドットは、図7に示す基本パターンの原点画素360に形成されるドットを示しており、各色について原点画素360の位置がオフセットされている。例えば、図9の1109を例に挙げれば、シアンドットに対し、イエロードットは300画素分オフセットされ、マゼンタドットは600画素分オフセットされている。
【0052】
図9において、パターン1108は、比較例として従来の、各インク色のドットが相互に等間隔であるパターンを示し、パターン1109および1110は、それぞれ本実施形態による別個のパターンを示している。すなわち、本実施形態では、パターン1109または1110のうち、いずれか1つのパターンによって紙面予備吐出が行われる。
【0053】
従来のパターン1108は、色に関係なく等間隔に(距離1104=距離1105)ドットを配置するパターンである。すなわち、比較的明度の低い色同士である、シアンドット1101とマゼンタドット1102との距離1104が、これら明度の低い色(同パターンの場合、マゼンタ)と明度が比較的高い色であるイエロードット1103との距離1105と同じに設定される。この結果、明度の低い色同士の間隔が、記録画像において相対的に明度の低い色のドット同士が集中したドットの集まりとして認識されるような短い距離となり、それによって記録画像が粒状感など呈することがある。なお、この各ドットの間隔を等距離とするパターンを、仮に1つのパターン単位の最右端に明度の低いマゼンタドット1102を配置し中央にイエロードット1103を配置するパターンとしても、次のパターン単位の最左端にはシアンドット1101が位置するからそれら相互の距離(1106)も上記距離1104(1105)と等しくなる。このため、上記と同様、明度の低い色同士の間隔が、記録画像において相対的に明度の低い色のドット同士が集中したドットの集まりとして認識されるような短い距離となる。
【0054】
これに対して、本実施形態のパターンは、その一例であるパターン1109のように、比較的明度の低いシアンドット1101とマゼンタドット1102との距離1107が、比較的明度の高いイエロードット1103と、明度の低い色のうちイエロードットと最も近いシアンドット1101との距離1111より長いパターンとする。すなわち、図9に示すような、同じ長さd2の範囲(この方向と直交する方向も同様)に3つの色のドットを配置するという条件でパターンを設計するとき、本実施形態のパターンは、従来のパターン1108よりも、明度の低い色同士の間隔を長く設定することができるものである。また、隣接するパターン単位の最左端のシアンドット1101との距離1113も同様に長い距離1107と同じものとする。このような予備吐出のパターンを用いることにより、紙面予備吐出のドットによる記録品位の低下が生じない記録を行うことができる。
【0055】
本実施形態のパターンの他の例である、パターン1110は、イエロードット1103と最も近い明度の低いドットをマゼンタドット1102としたものである。
【0056】
(第3実施形態)
上述した第1および第2実施形態では、紙面予備吐出においてそれぞれの色のインクの予備吐出の量(吐出回数)が等しい場合の予備吐出パターンについて説明したが、本実施形態は、インク色によって予備吐出の量(吐出回数)を異ならせた場合の予備吐出パターンに関するものである。
【0057】
図10は、本発明の第三の実施形態にかかる紙面予備吐出のパターンを示す図である。本実施形態のパターンは、上記第二の実施形態のプリンターと同じプリンターにおいて、用いるインクの特性が異なることから、シアン(C)インクの予備吐出の量を他の色のインクに較べて多く、また、全体ではマゼンタやイエローインクの予備吐出の量は少なくできる場合のパターンを示している。すなわち、上記第二の実施形態と較べて、距離d2より大きい距離d3の範囲内にパターン単位がシアンドットが3つで、マゼンタドットおよびイエロードットがそれぞれ1つ配置されるパターンを示している。
【0058】
同図に示すように、パターン1113は、比較的明度の低いシアンドット1101とマゼンタドット1102との距離のうち最も短い距離1115が、比較的明度の高いイエロードット1103と、明度の低い色のうちイエロードットと最も近いシアンドット1101との距離1114より長いパターンとする。また、隣接するパターン単位の最左端のシアンドット1101との距離1116も同様に長い距離1115と同じものとする。このような予備吐出のパターンを用いることにより、紙面予備吐出のドットによる記録品位の低下が生じない記録を行うことができる。
【0059】
(他の実施形態)
以上の各実施形態では、インデックス展開後の2値化された記録データに対し、2値の紙面予備吐出パターンを付加するものとしたが、インデックス形式の記録データについて紙面予備吐出パターンデータの付加を行ってもよい。例えば、4ビットのインデックスデータは、2値記録データに対応した1200dpi×1200dpiの画素の2×2に対応する。このことから、このインデックスデータは、図8などに示した画素ごとのドットパターンにおいて、2画素×2画素を1単位としてその位置が対応づけられたものである。このことから、紙面予備吐出のパターンも同様に、2画素×2画素を1単位として、上記図8〜図10にて説明したドットの配置を定めるようにすることができる。
【0060】
図11は、このインデックス形式で予備吐出データを付加する場合の、ホスト装置200およびプリンター240におけるデータ処理を示すブロック図であり、上記で説明した図5と同様の図である。すなわち、ホスト装置200から転送されたデータをプリンター240で量子化処理520をするまでは同様の処理を実施する。
【0061】
量子化されたK,LC,LM,C,M,Yの4ビット(5階調)データには、紙面予備吐出パターンを付加する処理540が下記のように実施される。すなわち、量子化されたK,LC,LM,C,M,Yの4ビット(5階調)データは、図6で説明したように”0000”、”0001”、”0010”、”0011”、”0100”のうちのいずれかの値を有している。”0001”、”0010”、”0011”、”0100”の値を有する場合、その画素にインクが吐出されることになるため、紙面予備吐出データの付加は行わない。一方、”0000”である場合には、図12に示されるような紙面予備吐出データの付加を行う。
そして、予備吐出データが付加された記録データはインデックス展開処理530を行うことでK,LC,LM,C,M,Yの各色1ビット(2階調)の記録データに変換され、紙面予備吐出データが含まれた記録データとしてプリンタエンジン220に転送される。
【0062】
図12は、予備吐出に用いるインデックス展開パターンを示す図である。同図に示すように、紙面予備吐出データとして用いる”0001”の4ビットデータに対応するインデックス展開パターンとして、パターン900とパターン910に示すように、2種類のパターンを用意しておく。これら2種類のパターンを交互に切り換えて用いることにより、紙面予備吐出を行う吐出口の偏りを防ぐことが可能となる。
【0063】
また、本発明は、ホスト装置のプリンタドライバにおいて画像処理を行う構成にも適応できる。図13は、その構成の一例を示す図であり、図4と同様の図である。この場合、主に画像処理を受け持つイメージコントローラを搭載する必要が無く、コストを抑えたプリンターとなる。
【0064】
この構成では、ホスト装置200からプリントエンジン制御部220の受信バッファ250に画像データが送られることにより記録動作が開始される。プリントエンジン制御部220は、ホスト装置200から受信した画像データを解析し、記録データ、記録品位、マージン情報等の記録に必要な情報を生成する。このとき、記録データ、記録品位、マージン情報等は、ASIC222を介してMPU221で処理され、RAM228に保持される。この情報は、その後、必要な状況で参照され、処理の切り分けに利用される。さらに、マスクバッファ230へのマスクパターンの書き込みを行う。そして、記録データには、予め生成した予備吐出のデータとの論理輪(オア)をとることにより、紙面予備吐出のデータが付加された記録データを作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態にかかるインクジェットプリンタの概略構成を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示したインクジェットプリンタのキャリッジ近傍の構成を詳細に示す斜視図である。
【図3】図2に示す記録ヘッドを吐出口側から見た図である。
【図4】本実施形態のインクジェットプリンタにおける制御系の構成を示すブロック図である。
【図5】図4にて上述したホスト装置200およびプリンター240におけるデータ処理について説明する図である。
【図6】図5に示すインデックス展開を説明する図である。
【図7】本発明の実施形態で付加する紙面予備吐出の記録データを画素において配置されたパターンで示す図である。
【図8】本発明の第一の実施形態にかかる紙面予備吐出のパターンを、インク吐出によって形成されるドットの画素における配置で示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態にかかる紙面予備吐出のパターンを、インク吐出によって形成されるドットの画素における配置で示す図である。
【図10】本発明の第三の実施形態にかかる紙面予備吐出のパターンを示す図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係わり、インデックス形式で予備吐出データを付加する場合の、ホスト装置200およびプリンター240におけるデータ処理を示すブロック図である。
【図12】予備吐出に用いるインデックス展開パターンを示す図である。
【図13】本発明のさらに他の実施形態に係わり、ホスト装置のプリンタドライバにおいて画像処理を行う構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
11 キャリッジ
21 インクタンク
22 記録ヘッド
23 吐出口
200 ホスト装置
210 イメージコントローラ
220 プリントエンジン制御部
221 MPU
227 ROM
228 RAM
229 プリントバッファ
230 マスクバッファ
240 プリンター
250 プリンタドライバー
310〜325 吐出口
360〜375 画素
500 色変換処理
510 色分解処理
520 量子化処理
530 インデックス展開処理
540 紙面予備吐出付加処理


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数色のインクを吐出する記録ヘッドを用い、記録媒体に複数色のインクを吐出して記録を行うときに、該記録に伴うインク吐出に併せて前記記録ヘッドから予備吐出のため複数色のインクを前記記録媒体に吐出するためのインクジェット記録方法であって、
記録すべき画像に基づく記録データに、前記予備吐出のための予備吐出データを付加して記録データを生成する工程と、
前記生成された記録データに基づいて、記録ヘッドから記録媒体に複数色のインクを吐出する工程とを有し、
前記予備吐出データに基づき形成される前記複数色のインクによるドットのパターンは、前記複数色のドットのうち、最も明度の高いドットに最も近いドットと当該最も明度が高いドットの距離より、前記最も明度の高いドット以外の任意の2つのドット間の距離が長い関係を有したパターンである
ことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項2】
前記関係を有した複数色のドットで形成されるパターン単位が、当該ドットの配列方向と同じ方向に繰り返されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項3】
前記隣接するパターン単位間の最も近いドット同士の距離は、前記最も明度の高いドットに最も近いドットと当該最も明度が高いドットの距離より長いことを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録方法。
【請求項4】
前記関係を有した複数色のドットで形成されるパターン単位は、同じ色のドットを複数含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
【請求項5】
複数色のインクを吐出する記録ヘッドを用い、記録媒体に複数色のインクを吐出して記録を行うときに、該記録に伴うインク吐出に併せて前記記録ヘッドから予備吐出のため複数色のインクを前記記録媒体に吐出するインクジェット記録装置であって、
記録すべき画像に基づく記録データに、前記予備吐出のための予備吐出データを付加して記録データを生成する生成手段と、
前記生成手段によって生成された記録データに基づいて、記録ヘッドから記録媒体に複数色のインクを吐出する吐出手段とを有し、
前記予備吐出データに基づき形成される前記複数色のインクによるドットのパターンが、前記複数色のドットのうち、最も明度の高いドットに最も近いドットと当該最も明度が高いドットの距離より、前記最も明度の高いドット以外の任意の2つのドット間の距離が長い関係を有したパターンであることを特徴とするインクジェット記録装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate