説明

インクジェット記録方法および記録物

【課題】光輝性顔料による明度の低下を押さえ、所望の明度を保ったまま光輝性画像を形
成することができるインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】本インクジェット記録方法は、光輝性顔料を含む光輝性画像を準備する光輝性画像準備工程と、前記光輝性画像に対して、インクジェット法により白色系顔料を含む白色系インク組成物を、0.01以上0.5以下の吐出量(g/cm2)で吐出して前記光輝性下地画像のL*値を向上させる明度向上工程と、を含む、インクジェット記録方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方法および記録物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、記録面に光輝性を有する画像が形成された記録物に対する需要が高まっている。光輝性画像を記録するための方法として、従来は、表面が平滑な記録媒体に金属箔を押しつける方法、プラスチックフィルムに金属を真空蒸着する方法、また、記録媒体に光輝性インクを塗布し、さらにプレス加工を行う方法などが用いられてきた。しかし、これらは記録工程が煩雑となり、また記録媒体が限られるなどの問題があったため、例えば、特許文献1に示されるように、インクジェット方式を用いて光輝性画像を記録する技術の提案がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−208330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のインクジェット方式による画像形成では、光輝性画像(例えば、メタリックな光沢を表現する画像)の明度が低くなってしまうという課題があった。また、光輝性画像を転写する方式や光輝性を有する記録媒体も、光輝性材料の明度が低いものが多く、所望の明度ではない場合が多かった。具体的な一例としてインクジェット方式で説明を行うと、光輝性インクに含まれる光輝性顔料としての金属片(例えばアルミニウム片)や金属粒子(例えば銀粒子)などが、画像の明度を下げてしまい、所望の明度を保ったまま光輝性画像を形成する(光沢度を上げる)のが困難であるなどの課題があった。つまり、例えば白地の記録媒体に対して記録する一般的な従来技術を用いて光輝性を有する画像を形成しようとした場合に、光輝性画像部分の明度が低下してしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかるインクジェット記録方法は、光輝性顔料を含む光輝性画像を準備する光輝性画像準備工程と、前記光輝性画像に対して、インクジェット法により白色系顔料を含む白色系インク組成物を、0.01以上0.5以下の吐出量(g/cm2)で吐出して前記光輝性下地画像のL*値を向上させる明度向上工程と、を含む、インクジェット記録方法。
【0007】
[適用例2]前記光輝性画像準備工程で準備された前記光輝性画像の(JIS)Z8741:1997に基づく60°光沢度は250以上である、適用例1に記載のインクジェット記録方法。
【0008】
[適用例3]前記明度向上工程後の前記光輝性画像のL*値が60以上であることを特徴とする、適用例1または適用例2に記載のインクジェット記録方法。
【0009】
[適用例4]前記明度向上工程後の前記光輝性下地画像の(JIS)Z8741:1997に基づく60°光沢度が150以上であることを特徴とする、適用例1ないし適用例3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【0010】
[適用例5]前記明度向上工程で吐出される前記白色系インク組成物の単位面積当たりの吐出量(g/cm2)が、前記光輝性画像準備工程で付与された前記光輝性画像の単位面積当たりの付与量(g/cm2)の0.01倍以上0.3倍以下であることを特徴とする、適用例1ないし適用例4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【0011】
[適用例6]前記明度向上工程前の前記光輝性画像のL*値をL1、光沢度をG1、また前記明度向上工程後の前記光輝性画像のL*値をL2、光沢度をG2とした場合に、(L2/L1)−1−{1−(G2/G1)}により算出される値Edが0超であることを特徴とする適用例1ないし5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【0012】
[適用例7](L2/L1)×(G2/G1)により算出される値Efが1超であることを特徴とする適用例6に記載のインクジェット記録方法。
【0013】
[適用例8]適用例1ないし適用例7のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法を含む記録方法によって記録された記録物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した実施形態について説明する。
【0015】
1.記録方法
本実施形態の記録方法は、インクジェット式記録ヘッドによって、インク組成物を吐出させ、記録媒体に付着させることによる。以下では、この記録ヘッドを用いたインクジェット記録装置によって、記録媒体上にインク組成物を吐出し、記録媒体上に付着させてドット群を形成する記録方法の一例を示す。
【0016】
1.1.インクジェット記録装置
インクジェット記録装置に用いられる記録ヘッドの方式としては、例えば、ノズルとノズルの前方に置いた加速電極間の強電界でノズルからインクを液滴状に連続噴射させ、インク滴が飛翔する間に偏向電極から印刷情報信号を与えて記録する方式、またはインク滴を偏向することなく印刷情報信号に対応して噴射させる方式(静電吸引方式)、小型ポンプでインクに圧力を加え、ノズルを水晶振動子などで機械的に振動させることにより、強制的にインク滴を噴射させる方式、インクに圧電素子により印刷情報信号に応じて圧力を加え、インク滴を噴射・記録させる方式(ピエゾ方式)、インクを印刷情報信号に従って微小電極で加熱発泡させ、インク滴を噴射・記録させる方式(サーマルジェット方式)などが用いられる。本実施形態の記録方法は、上記の記録ヘッドを用いた方法のいずれか、あるいは、上記の方法に限らず、インクを液滴状に噴射させ、記録媒体上にドット群を形成して記録する方法であれば良い。
【0017】
本実施形態で用いるインクジェット記録装置は、インクジェット式記録ヘッド、装置本体、記録媒体供給排出機構、記録ヘッド駆動機構、コントロールボード、インクカートリッジなどを備えている。コントロールボードは、記録ヘッド駆動機構やインク吐出の制御、また記録媒体の供給排出などの制御を行う。インクカートリッジには、例えばシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックなどフルカラー印刷ができるインクや、光輝性インク、白色系インクなどのインクセットを収容している。
【0018】
1.2.記録媒体
本実施形態の記録方法で用いられる記録媒体の好適例としては、例えば、コート紙、アート紙、キャストコート紙などの表面加工紙、および、透明、不透明に限らず、塩化ビニルシートやPETフィルムなどの樹脂フィルムを用いることができる。なお、記録媒体はこれらに限定されることはなく、例えば、布、木材、プラスチック材、金属材などであってもよい。
【0019】
1.3.インクセット
本実施形態のインクセットは、白色系インクとしての白色系顔料を含む白色系インク組成物などを備えている。また、これらに加えて、光輝性インクとしての金属顔料など光輝性顔料を含む光輝性インク組成物と、有彩色顔料を備えているのが一層好ましい。なお、本発明におけるインク組成物は、水を50質量%以上含有する水系インク組成物、水を50質量%未満で含有する非水系インク組成物のいずれであってもよい。
【0020】
1.3.1.光輝性インク組成物
光輝性インク組成物は、光輝性顔料を含み、特に限定されないが、有機溶媒、界面活性剤、多価アルコールなどから構成されていてもよい。
【0021】
光輝性顔料としては、インクジェット記録方法によって当該インク組成物の液滴を吐出できる範囲内で任意のものを用いることができる。光輝性顔料は、パール顔料や金属顔料など、光輝性を付与する機能を持つ。パール顔料の代表例としては、二酸化チタン被覆雲母、魚鱗箔、酸塩化ビスマスなどの真珠光沢や干渉光沢を有する顔料が用いられる。金属顔料としてはアルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅などの小片や粒子を用いることができ、これらの単体またはこれらの合金およびこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0022】
本実施形態で使用される光輝性顔料は、光沢度(光輝性)の高さおよびコストの観点から、アルミニウム、アルミニウム合金、銀から選択される一種以上であることが好ましい。アルミニウム合金を用いる場合、アルミニウムに添加する他の金属元素または非金属元素としては、光輝性を有するものであれば特に限定されるものではなく、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅などを用いることができる。これらから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。また、光輝性インク組成物に用いる後述の有機溶媒は、金属に対する反応性が低いものを適宜選択することで、本発明に用いる光輝性顔料は特殊な表面処理を必要としない。
【0023】
本実施形態では、光散乱法による球換算50%平均粒子径(d50)が0.8〜1.2μmの光輝性顔料を用いる。
光散乱法による球換算50%平均粒子径は、下記のようにして測定、導出されるものである。すなわち、分散媒中の粒子に光を照射することにより発生する回折散乱光に関して、前方・側方・後方の各部位にディテクターを配置して測定し、計測される平均粒子径の積算百分率の分布曲線が50%の積算百分率の横軸と交差するポイントを50%平均粒子径(d50)とする。また、球換算平均粒子径とは、本来は不定形である粒子が球形であると仮定して換算し、測定した結果より求めた平均粒子径を指している。光散乱法による球換算50%平均粒子径(d50)が上記範囲にあることで、記録物上に高い光輝性を有する塗膜が形成できると共に、インク組成物のノズルからの吐出安定性も高くなる。
【0024】
光輝性顔料は、金属蒸着膜を破砕して作製された平板状粒子であることが好ましい。光輝性顔料が平板状粒子である場合、該平板状粒子の平面上の長径をX、短径をY、厚みをZとしたとき、該平板状粒子のX−Y平面の面積より求めた円相当径の50%平均粒子径R50が0.5〜3μmであると好ましく、R50/Z>5の条件を満たすものであると好ましい。また、円相当径の最大粒子径Rmaxは、インクジェット記録装置におけるノズルの目詰まり防止の観点から、10μm以下であることが好ましい。厚みZの平均は、5nm以上100nm以下が好ましく、20nm以上100nm以下であれば、より好ましい。5nm以上にすることで、反射性、光輝性に優れ、光輝性顔料としての性能が高くなり、100nm以下にすることで、見かけ比重の増加を抑え、光輝性顔料の分散安定性を確保することができる。
【0025】
前記光輝性顔料のインク組成物中の濃度は、0.5〜15質量%であることが好ましい。また、0.5質量%未満の場合は十分な光輝性を表現出来ない場合があり、15質量%を超えると目詰まりなどの問題が発生する場合がある。
【0026】
なお、光輝性顔料は、上記のような平板状粒子に限らず、球形状あるいは塊状粒子であっても良い。銀粒子を用いた場合には、体積基準の平均粒子径が5〜100nmであることが好ましい。銀粒子の平均粒子径の測定の一例としては、「マイクロトラックUPA」(日機装株式会社製)を用い、測定条件は、屈折率を0.2−3.9i、溶媒(水)の屈折率を1.333、測定粒子形状を球形、とする場合が挙げられる。
【0027】
有機溶媒としては、好ましくは極性有機溶媒、例えば、アルコール類(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、又はフッ化アルコール等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、又はシクロヘキサノン等)、カルボン酸エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、又はプロピオン酸エチル等)、又はエーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、又はジオキサン等)などを用いることができる。特に、前記有機溶媒は、常温常圧下で液体であるアルキレングリコールエーテルを1種類以上含むことが好ましい。
【0028】
アルキレングリコールエーテルは、メチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、ヘキシル、および2−エチルヘキシルの脂肪族、二重結合を有するアリル並びにフェニルの各基をベースとするエチレングリコール系エーテルとプロピレングリコール系エーテルとがある。アルキレングリコールエーテルは、常温で液体であり、無色で臭いも少なく、分子内にエーテル基と水酸基を有しているので、アルコール類とエーテル類の両方の特性を備えている。また、片方の水酸基だけを置換したモノエーテル型と両方の水酸基を置換したジエーテル型があり、これらを複数種組み合わせて用いることができる。特に、前記有機溶媒は、アルキレングリコールジエーテル、アルキレングリコールモノエーテル、及びラクトンの混合物であることが好ましい。
【0029】
アルキレングリコールモノエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。
【0030】
アルキレングリコールジエーテルとしては、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどが挙げられる。
【0031】
またラクトンとしては、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどが挙げられる。
【0032】
このような好適な構成とすることにより、本発明の目的をより一層有効且つ確実に達成することができる。特に、上記有機溶媒の組合せとして、ジエチレングリコールジエチルエーテルと、γ−ブチロラクトン及び/又はテトラエチレングリコールジメチルエーテルと、テトラエチレングリコールモノブチルエーテルとの組合せがより好ましい。
【0033】
界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール系界面活剤、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪族ジエタノールアミド系などのノニオン系界面活性剤が用いられる。また、高分子系分散剤としては、分子量1000以上の高分子化合物が好適に用いられる。例えば、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ロジン、フッ素変性ポリマー、ウレタン系高分子、ポリアクリレート系高分子、脂肪族ジエタノールアミド系高分子、ポリエステル系高分子、ポリエステルポリアミド樹脂などが用いられる。
【0034】
多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールなどの炭素数が4以上8以下の1,2−アルカンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
これらの多価アルコールは、本実施形態のインク組成物をインクジェット記録装置に適用した場合に、インク組成物の乾燥を防止し、インクジェット記録ヘッド部分における目詰まりを防止する効果がある。
【0035】
1.3.2.白色系インク組成物
白色系インク組成物は、白色系顔料を含み、特に限定されないが有機溶媒、界面活性剤などから構成される。
白色系顔料としては、二酸化チタン、二酸化ジルコニアなどの第IV族元素酸化物が用いられる。その他にも、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸バリウム、シリカ、アルミナ、カオリン、クレー、タルク、白土、水酸化アルミ、炭酸マグネシウムなどが用いられ、好ましくはこれらからなる群から選択される1種又は2種以上の混合物が用いられる。
【0036】
「白色系インク」とは、社会通念上「白」と呼称される色を記録出来るインク(インキ)であり、微量着色されているものも含む。また、その顔料を含有するインク(インキ)が「白色インク(インキ)、ホワイトインク(インキ)」などといった名称で呼称、販売されるインク(インキ)を含む。さらに、例えば、インク(インキ)が、エプソン純正写真用紙<光沢>(セイコーエプソン社製)に100%duty以上又は写真用紙の表面が十分に被覆される量で記録された場合に、インクの明度(L*)および色度(a*、b*)が、分光測光器Spectrolino(商品名、GretagMacbeth社製)を用いて、測定条件をD50光源、観測視野を2°、濃度をDIN NB、白色基準をAbs、フィルターをNo、測定モードをReflectance、として設定して計測した場合に、70≦L*≦100、−4.5≦a*≦2、−6≦b*≦2.5、の範囲を示す、インク(インキ)を含む。
【0037】
白色系顔料の体積基準の平均粒子径は、100nm以上700nm以下であることが好ましく、また、200nm以上600nm以下であることがより好ましい。白色系顔料の体積基準の平均粒子径が上記範囲を超えると、粒子が沈降するなどして分散安定性を損なうことがあり、また、インクジェット記録装置に適用した場合において、ノズルの目詰まりなどが発生する場合がある。一方、白色系顔料の体積基準の平均粒子径が上記範囲未満であると、白色度が不足する傾向にある。特に、白色系顔料として二酸化チタン粒子を用いる場合は、二酸化チタン粒子の体積基準の平均粒子径は、280nm以上440nm以下であることが好ましい。これによってインクジェット記録装置によってノズルから良好な吐出が可能になる。
【0038】
体積基準の平均粒子径は、動的光散乱法を測定原理とした粒度分布測定装置によって測定することができる。なお、体積基準の平均粒子径とは、体積で重みづけされた平均径のことを指し、粒子毎の体積および直径の測定値を基に下記式によって算出される。
体積基準の平均粒子径=Σ(Vi・di)/Σ(Vi)
(式中、Viは粒子iの体積(i=1,2,・・・,n)を示し、diは粒子iの直径(i=1,2,・・・,n)を示す。)
【0039】
また、白色系インク組成物は、白色の色材として中空構造を有する粒子を用いても良い。中空構造を有する粒子としては、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。例えば、米国特許第4880465号明細書や米国特許第3562754号公報などに記載されている粒子を用いることが好ましい。
中空構造を有する粒子はコア・シェル構造になっており外径と内径を有している。体積基準の平均粒子径(外径)(d50)は、100nm以上700nm以下であることが好ましく、200nm以上600nm以下であることがより好ましい。中空構造を有する粒子の外径が上記範囲内にあれば、白色系インク組成物中の分散を良好に保つことができ、また、記録媒体に付着された際に、白色度が良好な画像を得ることができる。一方、外径が700nmを超えると、粒子が沈降するなどして分散安定性を損なうことがあり、インクジェット記録装置に適用した場合にヘッドの目詰まりなどが発生する場合がある。一方、外径が100nm未満であると、白色度が不足する場合がある。また、中空構造を有する粒子の内径(すなわち、上述したコアの外径)は、100nm以上500nm以下程度が適当である。中空構造を有する粒子の体積基準の平均粒子径は、金属酸化物粒子の体積基準の平均粒子径と同様の方法で測定することができる。
【0040】
白色系顔料の含有量は、白色系インク組成物の全質量に対して、好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上15質量%以下である。
【0041】
有機溶媒、および界面活性剤は、光輝性インク組成物に用いるものと同様である。
【0042】
1.3.3.有彩色インク組成物
有彩色インク組成物は、有彩色顔料を含むインク組成物である。有彩色とは、白から灰色を経て黒に至る系列の色(無彩色)以外のすべての色をいう。有彩色顔料としては、耐光性、耐候性、耐ガス性などの保存安定性の観点から有機顔料であることが好ましい。
具体的には、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料などのアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料などの多環式顔料、染料キレート、染色レーキ、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料などが用いられる。上記顔料は1種単独でも、2種以上併用して用いることもできる。
【0043】
1.4.インクジェット記録方法
本実施形態のインクジェット記録は、上述したインクジェット記録装置を用いて、上述したインク組成物吐出させ、上述した記録媒体に付着させることにより行う。本願発明において、明度向上工程はインクジェット法を必須とするが、光輝性画像準備工程はインクジェット法に限定されない。まず光輝性画像準備工程により光輝性画像を得て、次に明度向上工程により光輝性下地画像のL*値を向上させる。このL*値が向上した下地部分に対して画像を形成することで、所望の明度により近づいた光輝性画像を形成することができる。
【0044】
まず、光輝性画像準備工程で、光輝性画像(記録媒体が光輝性を有するものを含む)を準備する。光輝性画像はいかなる方法によって記録されたものでもよく、バーコーター、スリットコーター等によってアナログ的に印刷された画像であっても良く、特開2009−226863号の公報や下記実施例7に記載した転写方式によって画像を形成しても良いし、WXMPF17R(セイコーエプソン株式会社製)のような光輝性調の記録媒体を準備しても良く、インクジェット法により光輝性インクを吐出しても良い。なお、記録媒体上の光輝性を有する画像の光沢度がG1、明度(L*値)がL1という関係になる。
【0045】
光輝性画像準備工程で形成される(又は準備される)下地画像の(JIS)Z8741:1997に基づく60°鏡面光沢度は250以上が好ましく、より好ましくは300以上であり、一層好ましくは350以上である。下地画像が一定の光沢度を有していなければ、明度向上工程で記録される白色系インクが吐出された場合に光輝性が低下する事から、良好な光輝性の下地画像として認められなくなってしまう。
【0046】
光輝性画像準備工程で光輝性画像を準備する場合、記録媒体に(事前に)付与した付与量(g/cm2)は0.2以上1以下であることが好ましい。より好ましくは、0.35以上0.8以下である。光輝性インクの付与量が少ない場合は記録媒体が白色下地の場合は、その影響を受けてL*値が向上する傾向にあるが、付与量が少ないことによって光輝性が良好ではない場合がある。一方で、なお、付与量は、記録媒体上において光輝性顔料と樹脂が存在する場合は樹脂の固形分量の総和によって算出される。
【0047】
次に、明度向上工程では、上記領域に形成された下地画像に対して、白色系インク組成物を吐出して光輝性下地画像のL*値を向上させ、光沢度がG2、明度(L*値)がL2の下地画像を得る。明度向上工程で吐出される白色系インク組成物の吐出量(g/cm2)は0.01以上0.5以下である。この数値範囲にあることによって、下記に示すEf若しくはEdが良好な値を示す。また、上記吐出量(g/cm2)が0.01以上0.15以下の範囲であることが好ましい。この範囲にあることによって、Ef及びEd両者が良好な値を示す。なお、吐出量は白色系顔料と樹脂を含む場合は樹脂の固形分量の総和によって算出される。また、本願発明において光沢度とは、特に明記されない限り60°鏡面光沢度を表す。
【0048】
なお、吐出ヘッドから吐出される白色系インク組成物の単位面積当たりの吐出量(g/cm2)は、光輝性画像準備工程における、単位面積当たりの付与量(g/cm2)の0.01倍以上0.3倍以下が好ましく、0.01倍以上0.1倍以下とすることが一層好ましい。
【0049】
ここで得られた下地画像の光沢度および明度のバランス向上の度合いは、「1−(L*値上昇度)−{(光沢度変化度)−1}」で算出される値Edを指標値として定量的な評価を行うと好ましい。この値が1以上を超えていることによって、光沢度の低下度合いを抑えつつL*値の上昇をさせる事が出来る。値Edは0超過であることが好ましく、より好ましくは0.07以上がより好ましい。
【0050】
また、「(L*値上昇度)×(光沢度変化度)」で算出される値Efが1超であることがさらに好ましく、1.3以上であることがより好ましい。また、L2が60以上、G2が150以上となる下地画像が得られることが好ましく、一層好ましくはL2が65以上、G2が175以上、さらには、L2が70以上、G2が200以上であることがより好ましい。このような下地画像を形成することにより、他のインク(例えば有彩色顔料を含むインク)を用いて、従来よりも一層好ましい画像を得る事が出来る。なお、明度向上工程前の前記光輝性下地画像のL*値をL1、光沢度をG1、また前記明度向上工程後の前記光輝性下地画像のL*値をL2、光沢度をG2とした場合に、(L*値上昇度)は(L2/L1)で算出され、(光沢度変化度)は(G2/G1)により算出される値である。
【0051】
2.実施例
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0052】
2.1.光輝性インク組成物の調整
光輝性インク組成物に添加される光輝性顔料を得るために、まず以下のように光輝性顔料分散液(アルミニウム顔料分散液)を作成した。
【0053】
膜厚100μmのPETフィルム上に、セルロースアセテートブチレート(ブチル化率35〜39%)3.0質量%及びジエチレングリコールジエチルエーテル97質量%からなる樹脂層塗工液をバーコート法によって均一に塗布し、60℃、10分間乾燥する事で、PETフィルム上に樹脂層薄膜を形成した。次に、真空蒸着装置を用いて、上記の樹脂層上に平均膜厚20nmのアルミニウム蒸着層を形成した。次に、上記方法にて形成した積層体を、ジエチレングリコールジエチルエーテル中にて、超音波分散機を用いて剥離・微細化・分散処理を同時に行い、超音波分散処理を積算で12時間実施して光輝性顔料分散液を作成した。得られたアルミニウム顔料分散液を、開き目5μmのSUSメッシュフィルターにてろ過処理を行い、粗大粒子を除去した。次いで、ろ液を丸底フラスコに入れ、ロータリーエバポレターを用いてジエチレングリコールジエチルエーテルを留去した。これにより、アルミニウム顔料分散液を濃縮し、その後、そのアルミニウム顔料分散液の濃度調整を行い、5質量%濃度のアルミニウム顔料分散液1を得た。レーザー回折散乱式粒度分布測定器を用いて、光アルミニウム顔料の光散乱法による球換算50%平均粒子径(d50)を測定した結果、1.001μmであった。
【0054】
上記方法にて調製したアルミニウム顔料分散液1を用いて調整した光輝性インク組成物の成分表を表1に示す。
光輝性インク組成物は、アルミニウム顔料分散液1を2質量%、ジエチレングリコールジエチルエーテル(DEGDE)を40質量%、γ−ブチロラクトンを10質量%、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDM)を10質量%、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル(TEGMB)を3質量%、界面活性剤BYK−UV3500(商品名、ビックケミー・ジャパン社製)を0.2質量%、イソプロピルアルコールを残りの質量%、として調製し、更に常温・常圧下30分間マグネティックスターラーにて混合・攪拌して、アルミニウム顔料インク(光輝性インク1)とした。
【0055】
【表1】

【0056】
また、転写に用いる光輝性インク2は以下の方法により作成した。10N−NaOH水溶液を3mL添加してアルカリ性にした水50mLに、クエン酸3ナトリウム2水和物17g、タンニン酸0.36gを溶解した。得られた溶液に対して3.87mol/L硝酸銀水溶液3mLを添加し、2時間攪拌を行い、銀コロイド液を得た。得られた銀コロイド液に対し、導電率が30μS/cm以下になるまで透析することで脱塩を行った。透析後、3000rpm、10分の条件で遠心分離を行うことで、粗大金属コロイド粒子を除去した。なお、銀粒子の平均粒径は「マイクロトラックUPA」(日機装株式会社製)を用い、測定条件は、屈折率を0.2−3.9i、溶媒(水)の屈折率を1.333、測定粒子形状を球形、とした。その結果、平均粒子径は10nmであった。
【0057】
上記方法にて、銀コロイド液(固形分)を10質量%、界面活性剤としてのオルフィンE1010を1質量%、プロピレングリコールを11質量%、1,2−ヘキサンジオール を5質量%、イオン交換水を残分質量%、として光輝性インク2を調製した。
【0058】
2.2.白色系インク組成物の調整
白色系顔料として二酸化チタンを用いて調整した白色系インク組成物の成分表を表2に示す。
【0059】
二酸化チタンの分散液は下記の方法により製造した。
ガラス転移温度40℃、質量平均分子量10,000、酸価150mgKOH/gの固形アクリル酸/n−ブチルアクリレート/ベンジルメタクリレート/スチレン共重合体の25質量部をジエチレングリコールジエチルエーテル75質量部の混合溶液に溶解させて樹脂固形分25質量%の高分子分散剤溶液を得た。
【0060】
前記高分子分散剤溶液の36質量%にジエチレングリコールジエチルエーテル19質量%を加え混合し、二酸化チタン分散用樹脂ワニスを調製し、さらに二酸化チタン(CR−90、アルミナシリカ処理(アルミナ/シリカ≧0.5)、体積基準の平均粒子径300nm、吸油量21ml/100g、石原産業(株)製)45質量%を加えて撹拌混合後、湿式サーキュレーションミルで練肉を行ない、二酸化チタン分散液を得た。
【0061】
白色系インク組成物1は、二酸化チタン分散液を10質量%、ジエチレングリコールジエチルエーテルを40質量%、γ−ブチロラクトンを10質量%、テトラエチレングリコールジメチルエーテルを10質量%、テトラエチレングリコールモノブチルエーテルを3質量%、界面活性剤BYK−UV3500(ビックケミー株式会社製)を0.2質量%、イソプロピルアルコールを残りの質量%、として調製し、更に常温・常圧下30分間マグネティックスターラーにて混合・攪拌して、二酸化チタン顔料インク(白色系インク)とした。
【0062】
また、後述の実施例6で用いる白色系インク組成物2は、表3の通り、中空樹脂粒子(SX8782(D)、JSR株式会社製)を10質量%、グリセリン10質量%、1、2−ヘキサンジオールを3質量%、BYK−348(ビックケミー株式会社製)を1質量%、イオン交換水を残分として作成した。
【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
2.3.記録物の作成
各実施例および各比較例の記録物は、インクジェット記録装置として、インクジェットプリンター型式PX−G930(セイコーエプソン株式会社製)を用いて作成した。各実施例および各比較例のインク組成物を、該プリンターの専用カートリッジのブラックインク室に充填し、これをプリンターに装着して印刷することによって作製した。記録媒体は写真用紙<光沢>(セイコーエプソン株式会社製)を用いた。いずれの試料においても、印刷条件として、用紙選択を写真用紙光沢に設定し、色補正なし、フォト−1440dpi、単方向印刷に設定して印刷した。
【0066】
(実施例1〜6)
各実施例では、表4に記載の通り、まずインクジェット法により光輝性インク組成物を吐出して光輝性画像を形成し(光輝性画像準備工程)、次にこの光輝性下地に対して、白色系インク組成物を吐出して光輝性画像のL*値を向上させた(明度向上工程)。
*値および光沢度の変化を定量的に評価するために、光輝性インク組成物の記録密度(表4の縦軸のduty)と、白色系インク組成物1の記録密度(表4の横軸のduty)との組み合わせとして、実施例1〜6および比較例1の記録物を作成した。なお、実施例6は白色系インク組成物2を用いて作成した。なお、実施例は、下記の各評価において、B以上が存在するものが実施例に相当する。
【0067】
【表4】

【0068】
表4に示すように、実施例1〜6では、光輝性インク組成物の記録密度(duty)をそれぞれ、duty20%、40%、60%とした。また、白色系インク組成物の記録密度(duty)をそれぞれ、duty1%、3%、5%、10%、20%とした。比較例1は、光輝性下地画像のみであり、白色系インク組成物の吐出を行っていない。つまり、比較例1は明度向上工程を実施していない。なお、dutyとは、下式で算出される値である。
duty(%)=実印刷ドット数/(縦解像度×横解像度)×100
式中、「実印刷ドット数」は単位面積当たりの実印字ドット数であり、「縦解像度」および「横解像度」はそれぞれ単位方向当たりの画素解像度である。
【0069】
2.4.記録物の評価
上記により作成した記録物の明度(白色度)および光沢度を評価することで、本実施例の効果を評価した。
【0070】
インク組成物によって、記録媒体に形成された画像の明度は、画像のL*値を用いて評価することができる。画像のL*値は、例えば、「938 Spectrodensitometer」(X−rite社製)などの市販の分光装置を用いて測定することができる。
また、インク組成物によって記録媒体に形成された画像の光沢度は、日本工業規格(JIS)Z8741:1997「鏡面光沢度−測定方法」の方法に従って評価することができる。光沢度は、画像の形成された面に対して特定の入射角で光を入射させ、その反射角の方向に光検出器を設置して光の強度を測定した結果に基づいて算出することができる。このような測定が可能な装置としては、例えば、コニカミノルタ株式会社製MULTI GLOSS 268、日本電色工業株式会社製GlossMeter型番VGP5000などがある。本実施例では、コニカミノルタ株式会社製MULTI GLOSS 268を用いた。
【0071】
表5に実施例1〜6、比較例1による記録物の測定結果を示す。表5は、実施例1〜6および比較例1については、光輝性インク組成物のdutyが40%、60%それぞれのL*値および光沢度を示している。なお、光沢度は入射角60°における反射光の測定により行っている。
【0072】
【表5】

【0073】
表5では、明度と光沢度のバランスを評価するために、各dutyにおいて、L*値の上昇度と光沢度の変化度を用いた差と積「1−(L*値上昇度)−{(光沢度変化度)−1}」と「(L*値上昇度)×(光沢度変化度)」を指標の値Ed、Efとして算出し示している。L*値の上昇度および光沢度の変化度の基準は、白色系インク組成物を吐出していない(明度向上工程を実施していない)比較例1を用いている。値Ef、Edは、比較例1のL*値をL1、光沢度をG1、また白色系インク組成物吐出後(明度向上工程後)のL*値をL2、光沢度をG2とした場合に算出される。すなわち、値EfとEdは、比較例1を基準としたときの明度および光沢度のバランス向上の度合いを示すことになる。
【0074】
測定結果に対する評価の基準を以下のように定めた。
1−(L*値上昇度)−{(光沢度変化度)−1}で算出される値Edにおいて、
A(より好ましい) : 0.07 ≦ Ed
B(好ましい) : 0.00 < Ed < 0.07
C(問題なし) :−0.05 < Ed ≦ 0.00
D(良好ではない) : Ed ≦ −0.05
(L*値上昇度)×(光沢度変化度)で算出される値Efにおいて、
A(より好ましい) : 1.05 ≦ Ef
B(好ましい) : 1.00 < Ef < 1.05
C(問題なし) : 0.95 < Ef ≦ 1.00
D(良好ではない) : Ef ≦ 0.95
【0075】
また、合わせて光沢感の感応評価を行なった。A4サイズの写真用紙に印刷を行なった評価試料の光沢感を、10人に0、1、2、3点の点数により評価してもらい、その平均点Esを計算して以下の評価とした。
A(好ましい) : 2.0 ≦ Es
B(効果が見られる) : 1.0 ≦ Es < 2.0
C(効果が僅かである) : 0 < Es < 1.0
D(良好ではない) : Es = 0
【0076】
表6に上記評価基準に基づく評価結果を示す。
【0077】
【表6】

【0078】
なお、表7に、各インク組成物の所定のDutyにおける単位面積足りの吐出量を示す。また、光輝性インクのDutyが低い場合に光輝性下地画像のL*値が高い理由は、光輝性インクの記録媒体上での埋まりが十分ではなく、白地の記録媒体の白色度が数値として一部反映されてしまったと推察される。
【0079】
【表7】

【0080】
3.実施形態について
また、本実施形態の一層好ましい記録方法によれば、L*値が60以上、(JIS)Z8741:1997に基づく光沢度が150以上の光輝性下地画像を形成することができ、この下地画像に重ねてカラーインクや黒インクを吐出して画像を形成することで、所望の明度が確保されたフルカラーの光輝性画像を提供することができる。
【0081】
4.変形例
表8に示した実施例7と8は以下により作成した。まず、PX−5500(セイコーエプソン社製)を用いて、転写シートとしての写真用紙<光沢>に、水系銀インクを50%dutyで付与し、画像を形成した。その後、乾燥処理を行った。なお、乾燥条件は、まず、プラテンヒーターを用いて転写シートの裏面から50℃で加熱し、さらに画像に40℃の温風を接触させることにより、付着したインクから液体成分を蒸発させた。その後、転写シートの画像が形成された面に向けて、インクジェットヘッドから接着層の材料を含むインクを吐出し付着させることにより、接着層を形成した。その後、乾燥装置を用いてさらに蒸発、乾燥を行い(50℃の温風を20秒間接触させる)、転写媒体を作製した。その後、接着層上に被転写媒体を配置し、接着層と被転写媒体とを接着させた後、転写媒体から画像を剥離した。なお、転写の際に、JOL-DIGITAL-4R230(日本オフィスラミネーター株式会社製)を用い、熱圧着ローラー温度を130℃、圧力を30kg/cm2、速度を20cm/秒と設定した。そして、得られた画像に対して白色系インク組成物1を表7に示すDutyにて吐出した。
【0082】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光輝性顔料を含む光輝性画像を準備する光輝性画像準備工程と、
前記光輝性画像に対して、インクジェット法により白色系顔料を含む白色系インク組成物を、0.01以上0.5以下の吐出量(g/cm2)で吐出して前記光輝性下地画像のL*値を向上させる明度向上工程と、を含む、インクジェット記録方法。
【請求項2】
前記光輝性画像準備工程で準備された前記光輝性画像の(JIS)Z8741:1997に基づく60°光沢度は250以上である、請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項3】
前記明度向上工程後の前記光輝性画像のL*値が60以上であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録方法。
【請求項4】
前記明度向上工程後の前記光輝性下地画像の(JIS)Z8741:1997に基づく60°光沢度が150以上であることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項5】
前記明度向上工程で吐出される前記白色系インク組成物の単位面積当たりの吐出量(g/cm2)が、前記光輝性画像準備工程で付与された前記光輝性画像の単位面積当たりの付与量(g/cm2)の0.01倍以上0.3倍以下であることを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項6】
前記明度向上工程前の前記光輝性画像のL*値をL1、光沢度をG1、また前記明度向上工程後の前記光輝性画像のL*値をL2、光沢度をG2とした場合に、
(L2/L1)−1−{1−(G2/G1)}により算出される値Edが0超であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項7】
(L2/L1)×(G2/G1)により算出される値Efが1超であることを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法を含む記録方法によって記録された記録物。

【公開番号】特開2012−183817(P2012−183817A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176572(P2011−176572)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】