説明

インクジェット記録方法および記録物

【課題】光輝性に優れた画像が得られるインクジェット記録方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係るインクジェット記録方法は、ノズル孔を備えたインクジェット記録装置を用いたインクジェット記録方法であって、第1処理液または第2処理液を、インク低吸収性または非吸収性の記録媒体に付着させる第1工程と、前記記録媒体に付着させた前記第1処理液または前記第2処理液上に、前記ノズル孔から光輝性顔料を含有する光輝性インク組成物の液滴を吐出させて付着させる第2工程と、を含み、前記第1処理液は、コロイダルアルミナおよびカチオン性樹脂の少なくとも一方を含有し、前記第2処理液は、コロイダルシリカと、前記カチオン性樹脂、多価金属塩、有機酸から選択される一種以上と、を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方法およびこれにより得られる記録物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット記録用ヘッドのノズル孔から吐出させた微小なインク滴によって画像や文字を記録する、いわゆるインクジェット記録方法が知られている。インクジェット記録方法は、種々の記録媒体に対する画像の記録に利用されている。例えば、特許文献1および特許文献2には、種々の記録媒体に画像を記録するために、記録媒体の表面にインク受容層(受理層)を形成することが記載されている。
【0003】
ところで、記録媒体上に金属光沢を有する塗膜を形成する手法として、真鍮、アルミニウム微粒子等から作製された金粉、銀粉を顔料に用いた印刷インキや金属箔を用いた箔押し印刷、金属箔を用いた熱転写方式等が用いられてきた。近年、金属微粒子等の光輝性顔料を含有する光輝性インク組成物をインクジェット記録方法に用いて、金属光沢を有する画像を形成することが知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−214757号公報
【特許文献2】特開平10−58670号公報
【特許文献3】特開2003−292836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような光輝性インク組成物を用いて、インク低吸収性またはインク非吸収性の記録媒体(例えば、プラスチックメディア等)に対して画像の記録を行うと、記録媒体に付着した光輝性顔料の配列の乱れに伴って画像の光輝性が低下する場合があった。
【0006】
そのため、インク低吸収性またはインク非吸収性の記録媒体に記録される画像の光輝性を向上させるために、例えば記録媒体の表面にインク受容層を設けることが考えられる。しかしながら、インク受容層に含まれる成分によっては、光輝性顔料の配列が乱れやすくなって、画像の光輝性が十分に得られない場合があった。
【0007】
本発明に係る幾つかの態様は、前記課題の少なくとも一部を解決することで、光輝性に優れた画像が得られるインクジェット記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0009】
[適用例1]
本発明に係るインクジェット記録方法の一態様は、
ノズル孔を備えたインクジェット記録装置を用いたインクジェット記録方法であって、
第1処理液または第2処理液を、インク低吸収性または非吸収性の記録媒体に付着させる第1工程と、
前記記録媒体に付着させた前記第1処理液または前記第2処理液上に、前記ノズル孔から光輝性顔料を含有する光輝性インク組成物の液滴を吐出させて付着させる第2工程と、
を含み、
前記第1処理液は、コロイダルアルミナおよびカチオン性樹脂の少なくとも一方を含有し、
前記第2処理液は、コロイダルシリカと、前記カチオン性樹脂、多価金属塩、有機酸から選択される一種以上と、を含有する。
【0010】
適用例1のインクジェット記録方法によれば、光輝性に優れた画像が得られる。
【0011】
[適用例2]
適用例1において、
前記コロイダルアルミナおよび前記コロイダルシリカの平均粒子径(R1)が、5nm以上100nm以下であることができる。
【0012】
[適用例3]
適用例1または適用例2において、
さらに、前記第2工程前に、前記記録媒体に付着させた前記第1処理液または前記第2処理液を乾燥させる乾燥工程を含み、
前記乾燥工程によって、前記記録媒体に付着させた前記第1処理液または前記2処理液の重量を、前記記録媒体に付着させた直後の重量の5%以上60%以下にすることができる。
【0013】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか1例において、
前記第1工程において前記記録媒体に付着させた前記第1処理液または前記第2処理液の単位面積あたりの重量[W1(mg/inch)]と、前記第2工程において前記第1処理液または前記第2処理液上に付着させた前記光輝性インク組成物の単位面積あたりの重量[W2(mg/inch)]と、の比(W1/W2)が、0.1以上3以下であることができる。
【0014】
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか1例において、
さらに、前記第1処理液が、前記多価金属塩または前記有機酸を含有することができる。
【0015】
[適用例6]
適用例1ないし適用例5のいずれか1項において、
前記第1工程において、前記第1処理液または前記第2処理液を前記ノズル孔から吐出させることによって、前記記録媒体に付着させることができる。
【0016】
[適用例7]
適用例6において、
前記インクジェット記録装置は、複数の前記ノズル孔からなるノズル列を備えたヘッドと、前記ヘッドを主走査方向に走査させるキャリッジと、を有し、
前記ノズル列は、前記第1処理液または前記第2処理液を吐出するための前記ノズル孔を前記主走査方向と交差する副走査方向に複数並べてなる第1ノズル列と、前記光輝性インク組成物を吐出するための前記ノズル孔を前記副走査方向に複数並べてなる第2ノズル列と、含み、
前記第1ノズル列および前記第2ノズル列は、前記副走査方向に向かって、所定数の前記ノズル孔を含む群毎に分割して用いられ、
前記群は、前記副走査方向の上流側にある第1群と、該第1群よりも前記副走査方向の下流側にある第2群と、を備え、
前記第1工程は、前記第1ノズル列の前記第1群から前記第1処理液または前記第2処理液を吐出させることにより行われ、
前記第2工程は、前記第2ノズル列の前記第2群から前記光輝性インク組成物を吐出させることにより行われることができる。
【0017】
[適用例8]
本発明に係る記録物の一態様は、
適用例1ないし適用例7のいずれか1例に記載のインクジェット記録方法により得られたものである。
【0018】
適用例10の記録物によれば、光輝性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録方法に用いるプリンターの構成を示す斜視図。
【図2】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録方法に用いるプリンターのノズル面を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の好適な実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
【0021】
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録方法では、処理液と、光輝性インク組成物と、を用いる。
【0022】
1.処理液
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、処理液として、第1処理または第2処理液を使用する。以下、各処理液について詳細に説明する。
【0023】
1.1.第1処理液
第1処理液は、コロイダルアルミナおよびカチオン性樹脂の少なくとも一方を含有する。第1処理液は、後述する第1工程で用いられ、インク低吸収性またはインク非吸収性の記録媒体(以下、単に「プラスチックメディア」ともいう。)上に付着させることにより、後述する受容層を形成する。第1処理液により形成された受容層は、当該受容層上に付着させる光輝性インク組成物を受容する機能を備える。
【0024】
1.1.1.コロイダルアルミナ
コロイダルアルミナは、酸化アルミニウム(Al)粒子を水や有機溶媒中に分散したコロイド溶液である。コロイダルアルミナを含有する第1処理液からなる受容層上に光輝性インク組成物(後述)を付着させた場合、光輝性に優れた画像が得られる。この理由としては、次のように考えられる。
【0025】
まず、第1処理液を記録媒体上に付着させると、酸化アルミニウム粒子が配列した受容層が得られる。得られた受容層は、酸化アルミニウム粒子間に細孔を備えたものとなる。次に、受容層に光輝性インク組成物を付着させると、酸化アルミニウム粒子間の細孔に光輝性インク組成物に含まれる溶媒(水、有機溶媒等)や、比較的粒子径の小さい光輝性顔料等が入り込む。一方、比較的粒子径の大きい光輝性顔料は、酸化アルミニウム上に残され、緻密に配列する。これにより、画像が平滑になって、画像の光輝性が向上するものと考えられる。
【0026】
また、コロイダルアルミナは、光輝性顔料を凝集させる機能を備えているため、受容層に吐出された光輝性顔料を緻密に配列させることができる。これにより、光輝性に優れた画像が得られると考えられる。
【0027】
特に、コロイダルアルミナは、上記のように受容層に細孔を形成させる作用と、光輝性顔料を凝集させる作用を備えているため、画像の光輝性をより一層向上できる。
【0028】
コロイダルアルミナの平均粒子径(R1)は、5nm以上100nm以下であることが好ましく、10nm以上50nm以下であることがより好ましい。コロイダルアルミナの平均粒子径が上記範囲内にあると、酸化アルミニウム粒子間の細孔を十分に確保でき、光輝性インク組成物に含まれる溶媒の受容性が良好となり、画像の光輝性を向上できる場合がある。
【0029】
コロイダルアルミナの平均粒子径(R1)は、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。このような粒度分布測定装置としては、例えば、周波数解析法としてヘテロダイン法を採用した日機装株式会社製の「マイクロトラックUPA」(商品名)が挙げられる。なお、本明細書では、「平均粒子径」とは、特に断りのない限り、体積基準の平均粒子径のことを指すものとする。
【0030】
コロイダルアルミナの含有量(固形分換算)は、第1処理液の全質量に対して、3質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上10質量%以上であることがより一層好ましい。コロイダルアルミナの含有量が上記範囲内にあると、とりわけ下限値を下回らずにあることで、光輝性インク組成物の受容性が良好となる。また、コロイダルアルミナの含有量が上記範囲内にあると、とりわけ上限値を超えずにあることで、第1処理液をインクジェット記録装置のノズル孔から吐出する場合に、第1処理液に起因するノズル詰まりを低減することができる。
【0031】
本実施形態に係るコロイダルアルミナは、カチオン性であることが好ましい。コロイダルアルミナがカチオン性であると、第1処理液に後述するカチオン性樹脂を含有する場合に、第1処理液中でのコロイダルアルミナおよびカチオン性樹脂の分散性が良好になるためである。
【0032】
本実施形態に係るコロイダルアルミナとしては、市販品を用いることもでき、例えば、アルミナゾル100(カチオン性)、アルミナゾル200(カチオン性)、アルミナゾル520(カチオン性)(以上、すべて「日産化学工業株式会社」製)が挙げられる。
【0033】
1.1.2.カチオン性樹脂
カチオン性樹脂は、光輝性顔料を凝集させる機能を備えているため、カチオン性樹脂を含む受容層に吐出された光輝性顔料を緻密に配列させることができる。これにより、光輝性に優れた画像が得られる。また、カチオン性樹脂は、光輝性インク組成物により記録される画像の定着性を向上させる機能を備えているため、画像の耐擦性を向上させることができる。
【0034】
本実施形態に係るカチオン性樹脂とは、第1処理液中でカチオン性を示すものであれば特に限定されず、例えば、カチオン性のウレタン系樹脂、カチオン性のオレフィン系樹脂、カチオン性のアリルアミン系樹脂等が挙げられる。
【0035】
カチオン性のウレタン系樹脂としては、公知のものを適宜選択して用いることができる。例えば、下記の調製により得られるカチオン性のウレタン系樹脂が挙げられ、特にカチオン性のウレタン系樹脂を水に分散させたエマルジョンとして用いることが好ましい。
【0036】
カチオン性のウレタン系樹脂の調製方法のうち、第1の調製方法として、ポリイソシアネート(A)とウレタン反応を行うポリオールとしてポリエステルポリオール(B1)を用いると共に、三級アミノ基を有する鎖伸長剤(C)を用いてウレタンプレポリマーを調製し、この三級アミノ基の一部を酸で中和又は四級化剤で四級化してアミン価を1〜40(KOHmg/g)の範囲とすることにより、カチオン性のウレタン系樹脂を得る方法が挙げられる。また、カチオン性のウレタン系樹脂の調製方法のうち、第2の調製方法として、(2)ポリカーボネートポリオール(B2)と前記三級アミノ基を有する鎖伸長剤(C)とエチレンオキサイド鎖を50質量%以上含有するポリアルキレンオキサイド(D)とを、前記ポリイソシアネート(A)を用いてウレタンプレポリマーを調製し、前記鎖伸長剤(C)によって導入される三級アミノ基を酸で中和又は四級化剤で四級化することによりカチオン性のウレタン系樹脂を得ることができる。これらのカチオン性のウレタン系樹脂は、水に分散することによって、水分散体とすることができる。
【0037】
カチオン性のウレタン系樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、ハイドラン CP−7010、CP−7020、CP−7030、CP−7040、CP−7050、CP−7060、CP−7610(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)、スーパーフレックス 600、610、620、630、640、650(商品名、第一工業製薬株式会社製)、ウレタンエマルジョン WBR−2120C、WBR−2122C(商品名、大成ファインケミカル株式会社製)等を用いることができる。
【0038】
カチオン性のオレフィン樹脂は、エチレン、プロピレン等のオレフィンを構造骨格に有するものであり、公知のものを適宜選択して用いることができる。また、カチオン性のオレフィン樹脂は、水や有機溶媒等を含む溶媒に分散させたエマルジョン状態であってもよい。カチオン性のオレフィン樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、アローベース CB−1200(エマルジョンタイプ、ポリエチレン系、固形分濃度23%)、CD−1200(エマルジョンタイプ、ポリエチレン系、固形分濃度20%)等が挙げられる。
【0039】
カチオン性のアリルアミン系樹脂としては、特に限定はなく、公知のものを適宜選択して用いることができ、例えば、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアリルアミンアミド硫酸塩、アリルアミン塩酸塩・ジアリルアミン塩酸塩コポリマー、アリルアミン酢酸塩・ジアリルアミン酢酸塩コポリマー、アリルアミン酢酸塩・ジアリルアミン酢酸塩コポリマー、アリルアミン塩酸塩・ジメチルアリルアミン塩酸塩コポリマー、アリルアミン・ジメチルアリルアミンコポリマー、ポリジアリルアミン塩酸塩、ポリメチルジアリルアミン塩酸塩、ポリメチルジアリルアミンアミド硫酸塩、ポリメチルジアリルアミン酢酸塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルアミン酢酸塩・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルメチルエチルアンモニウムエチルサルフェイト・二酸化硫黄コポリマー、メチルジアリルアミン塩酸塩・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミドコポリマー等を挙げることができる。
【0040】
このようなカチオン性のアリルアミン系樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、PAA−HCL−01、PAA−HCL−03、PAA−HCL−05、PAA−HCL−3L、PAA−HCL−10L、PAA−H−HCL、PAA−SA、PAA−01、PAA−03、PAA−05、PAA−08、PAA−15、PAA−15C、PAA−25、PAA−H−10C、PAA−D11−HCL、PAA−D41−HCL、PAA−D19−HCL、PAS−21CL、PAS−M−1L、PAS−M−1、PAS−22SA、PAS−M−1A、PAS−H−1L、PAS−H−5L、PAS−H−10L、PAS−92、PAS−92A、PAS−J−81L、PAS−J−81(商品名、日東紡績株式会社製)、ハイモ Neo−600、ハイモロック Q−101、Q−311、Q−501、ハイマックス SC−505、SC−505(商品名、ハイモ株式会社製)等を用いることができる。
【0041】
カチオン性樹脂の含有量(固形分換算)は、第1処理液の全質量に対して、3質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上10質量%以上であることがより一層好ましい。カチオン性樹脂の含有量が上記範囲内にあると、とりわけ下限値を下回らずにあることで、光輝性インク組成物の受容性が良好となる。また、カチオン性樹脂の含有量が上記範囲内にあると、とりわけ上限値を超えずにあることで、第1処理液をインクジェット記録装置のノズル孔から吐出する場合に、第1処理液に起因するノズル詰まりを低減することができる。
【0042】
第1処理液は、コロイダルアルミナおよびカチオン性樹脂の両方を含有しても、コロイダルアルミナおよびカチオン性樹脂のいずれか一方を含有しても、受容層上に形成される光輝性インク組成物からなる画像の光輝性を優れたものとすることができるが、コロイダルアルミナおよびカチオン性樹脂の両方を含有していると、両成分が相乗的に作用して、光輝性により一層優れた画像が得られる。
【0043】
1.1.3.凝集剤
第1処理液は、さらに凝集剤としての有機酸または多価金属塩を含有してもよい。有機酸および多価金属塩は、光輝性顔料を凝集させる機能を備える。これにより、カチオン性樹脂を含む受容層に吐出された光輝性顔料を緻密に配列でき、画像の光輝性を向上できる。この理由としては、受容層に存在する多価金属塩に由来する金属イオンまたは有機酸が、光輝性顔料を凝集させているものと考えられる。
【0044】
多価金属塩は、二価以上の多価金属イオンとこれら多価金属イオンに結合する陰イオンとから構成され、水に可溶なものである。多価金属イオンの具体例としては、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+、Ba2+などの二価金属イオン、Al3+、Fe3+、Cr3+などの三価金属イオンが挙げられる。陰イオンとしては、Cl、NO3−、I、Br、ClO3−、OH、及びCHCOO等が挙げられる。多価金属塩は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
また、多価金属塩は、これらが重合したものを用いてもよい。多価金属塩の重合体としては、例えばポリ塩化アルミニウム([Al(OH)Cl6−n] (1≦n≦5、m≦10))が挙げられる。
【0046】
多価金属塩の含有量(固形分換算)は、第1処理液の全質量に対して、3質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上10質量%以上であることがより一層好ましい。多価金属塩の含有量が上記範囲内にあると、とりわけ下限値を下回らずにあることで、光輝性インク組成物の受容性が良好となる。また、多価金属塩の含有量が上記範囲内にあると、とりわけ上限値を超えずにあることで、第1処理液をインクジェット記録装置のノズル孔から吐出する場合に、第1処理液に起因するノズル詰まりを低減することができる。
【0047】
多価金属塩は、第1処理液中において、特にコロイダルアルミナとともに用いられることが好ましい。多価金属塩とコロイダルアルミナは、相乗的に作用して、光輝性顔料を凝集させる効果を高めることができるためである。これにより、光輝性により一層優れた画像が得られる。
【0048】
第1処理液は、光輝性インク組成物の凝集性をより向上させるという観点から、さらに、光輝性インク組成物のpHを低下させ得る有機酸を含有してもよい。有機酸は、多価金属イオンと同様に非常に良好な凝集剤として用いられる物質である。
【0049】
有機酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等が好適に挙げられる。有機酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
第1処理液が有機酸を含有する場合、第1処理液のpH(25℃)は、6以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましい。中でも、pH(25℃)は、0.5〜4の範囲であることがより一層好ましく、1〜3の範囲であることが特に好ましい。このとき、光輝性インク組成物のpH(25℃)は、7.5以上(より好ましくは8.0以上)であることが好ましい。特に、画像濃度、解像度、及びインクジェット記録の高速化の観点から、光輝性インク組成物のpH(25℃)が8.0以上であって、第1処理液のpH(25℃)が0.5〜4である場合が好ましい。
【0051】
凝集剤としては、水溶性の高い有機酸であることがより好ましく、具体的には、2価以上の有機酸がより一層好ましく、2価以上3価以下の有機酸が特に好ましい。前記2価以上の有機酸としては、第1pKaが3.5以下の有機酸であること好ましく、3.0以下の有機酸であることがより好ましい。具体的には、例えば、リン酸、シュウ酸、マロン酸、クエン酸などが好適に挙げられる。これらを含有させることで、光輝性に一層優れた画像を形成できる場合がある。
【0052】
1.1.4.その他の成分
本実施形態に係る第1処理液は、水、水溶性有機溶剤、界面活性剤を含有してもよい。
【0053】
(水)
水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水または超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を、紫外線照射または過酸化水素添加等により滅菌処理した水は、長期間に亘ってカビやバクテリアの発生が防止されるので好ましい。
【0054】
(水溶性有機溶剤)
水溶性有機溶剤としては、例えば、多価アルコール類、ピロリドン誘導体等が挙げられる。水溶性有機溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0055】
多価アルコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。これらの多価アルコールは、第1処理液をインクジェット記録装置のノズル孔から吐出させる場合に、ノズル孔の目詰まりを低減させる効果がある。
【0056】
多価アルコール類は、例えば、第1処理液の全質量に対して、1質量%以上30質量%以下の範囲内で含有される。
【0057】
ピロリドン誘導体としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
【0058】
(界面活性剤)
界面活性剤は、第1処理液の表面張力および、第1処理液と接触するノズル等のプリンター部材との界面張力を適正に保つことができる。したがって、これをインクジェット記録装置に用いた場合、吐出安定性を高めることができる。また、記録媒体上で均一に濡れ拡げる効果を有する。
【0059】
このような効果を有する界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤であることが好ましい。ノニオン系界面活性剤の中でも、シリコーン系界面活性剤およびアセチレングリコール系界面活性剤の少なくとも一方を用いることがより好ましい。
【0060】
シリコーン系界面活性剤としては、ポリシロキサン系化合物等が好ましく用いられ、ポリエーテル変性オルガノシロキサン等が挙げられる。より詳しくは、BYK−306、BYK−307、BYK−333、BYK−341、BYK−345、BYK−346、BYK−348(以上商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(以上商品名、信越化学株式会社製)等が挙げられる。シリコーン系界面活性剤を含有する場合には、その含有量が、第1処理液の全質量に対して、0.1質量%以上2質量%以下であることが好ましい。
【0061】
アセチレングリコール系界面活性剤として、たとえばサーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、104S、420、440、465、485、SE、SE−F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA、DF110D(以上全て商品名、Air Products and Chemicals. Inc.社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD−001、PD−002W、PD−003、PD−004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF−103、AF−104、AK−02、SK−14、AE−3(以上全て商品名、日信化学工業株式会社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。アセチレングリコール系界面活性剤を含有する場合には、その含有量が、第1処理液の全質量に対して、0.1質量%以上2質量%以下であることが好ましい。
【0062】
なお、上記以外の界面活性剤として、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤等をさらに添加してもよい。
【0063】
(その他の成分)
第1処理液は、さらに、浸透溶剤、pH調整剤、防腐剤・防かび剤、防錆剤、キレート化剤等を含有することができる。第1処理液は、これらの化合物を含有していると、その特性がさらに向上する場合がある。
【0064】
浸透溶剤は、記録媒体に対する第1処理液の濡れ性をさらに向上させて均一に塗らす作用を有する。浸透溶剤としては、例えば、グリコールエーテル類、一価アルコール類等が挙げられる。
【0065】
グリコールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル等が挙げられる。
【0066】
pH調整剤としては、例えば、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
【0067】
防腐剤・防かび剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン等が挙げられる。市販品では、プロキセルXL2、プロキセルGXL(以上商品名、アビシア社製)や、デニサイドCSA、NS−500W(以上商品名、ナガセケムテックス株式会社製)等が挙げられる。
【0068】
防錆剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0069】
キレート化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸およびそれらの塩類(エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム塩等)等が挙げられる。
【0070】
1.1.5.第1処理液の調製
本実施形態に係る第1処理液は、上記の各成分を適当な方法で分散・混合することよって製造することができる。上記の各成分を十分に攪拌した後、目詰まりの原因となる粗大粒子および異物を除去するためにろ過を行って目的の第1処理液を得ることができる。
【0071】
上述したコロイダルアルミナ、カチオン性樹脂および多価金属塩等から選択される2種以上の成分を用いる場合には、使用する成分をあらかじめ第1処理液に添加しておいてもよいし、それぞれの成分を別々に添加したプレ処理液を準備しておき、受容層の形成時(後述する第1工程時)に、プレ処理液同士を混合して第1処理液として用いたり、プレ処理液同士を記録媒体上で混合させて第1処理液として用いてもよい。
【0072】
いずれの場合も、受容層上に形成される光輝性インク組成物からなる画像の光輝性を向上できるが、特に、受容層の形成時(後述する第1工程時)に、プレ処理液同士を混合して第1処理液として用いたり、プレ処理液同士を記録媒体上で混合させて第1処理液として用いることが好ましい。こうすることで、第1処理液中における凝集物の発生を低減でき、処理液の保存安定性や、処理液の吐出安定性が良好になる場合があるためである。
【0073】
1.1.6.第1処理液の物性
第1処理液を後述するインクジェット記録装置のノズル孔から吐出させる場合には、第1処理液の20℃における粘度は、2mPa・s以上10mPa・s以下であることが好ましく、3mPa・s以上6mPa・s以下であることがより好ましい。20℃における粘度が上記範囲内にあると、ノズル孔から適量吐出され、飛行曲がりを起こすことや飛散することを一層低減できるので、インクジェット記録装置に好適に使用することができるためである。第1処理液の粘度は、振動式粘度計VM−100AL(山一電機株式会社製)を用いて、第1処理液の温度を20℃に保持することで測定できる。
【0074】
1.2.第2処理液
第2処理液は、第1工程(後述)において上記第1処理液に代えて用いられ、コロイダルシリカと、カチオン性樹脂、多価金属塩、有機酸から選択される一種以上と、を含有する。第2処理液は、第1処理液と同様の機能を備えており、具体的には、プラスチックメディア上に付着させることにより、受容層を形成する。第2処理液により形成された受容層は、当該受容層上に付着させる光輝性インク組成物を受容する機能を備える。
【0075】
1.2.1.コロイダルシリカ
第2処理液は、コロイダルシリカを含有する。コロイダルシリカは、酸化ケイ素(SiO)粒子を水や有機溶媒中に分散したコロイド溶液である。コロイダルシリカは、受容層上に形成される光輝性インク組成物からなる画像の光輝性を向上させる機能を備える。この理由としては、次のように考えられる。
【0076】
酸化ケイ素粒子が配列した受容層は、上述したコロイダルアルミナを用いた場合と同様に、細孔を備える。この細孔内には、光輝性インク組成物に含まれる溶媒(水、有機溶媒等)や、比較的粒子径の小さい光輝性顔料等が入り込む。一方、比較的粒子径の大きい光輝性顔料は、酸化ケイ素粒子上に残され、受容層上で緻密に配列する。これにより、画像が平滑になって、画像の光輝性が向上するものと考えられる。
【0077】
コロイダルシリカの平均粒子径(R1)は、5nm以上100nm以下であることが好ましく、10nm以上50nm以下であることがより好ましい。コロイダルシリカの平均粒子径が上記範囲内にあると、酸化ケイ素粒子間の細孔を十分に確保でき、光輝性インク組成物に含まれる溶媒の受容性が良好となり、画像の光輝性を向上できる場合がある。
【0078】
コロイダルシリカの平均粒子径(R1)の測定は、コロイダルアルミナで説明した装置と同様のものを用いて行うことができるので、その説明を省略する。
【0079】
コロイダルシリカの含有量(固形分換算)は、第2処理液の全質量に対して、3質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上10質量%以上であることがより一層好ましい。コロイダルシリカの含有量が上記範囲内にあると、とりわけ下限値を下回らずにあることで、光輝性インク組成物の受容性が良好となる。また、コロイダルシリカの含有量が上記範囲内にあると、とりわけ上限値を超えずにあることで、第2処理液をインクジェット記録装置のノズル孔から吐出する場合に、第2処理液に起因するノズル詰まりを低減することができる。
【0080】
本実施形態に係るコロイダルシリカは、カチオン性であることが好ましい。コロイダルシリカがカチオン性であると、第2処理液にカチオン性樹脂を含有する場合に、第2処理液中でのコロイダルシリカおよびカチオン性樹脂の分散性が良好になるためである。
【0081】
本実施形態に係るコロイダルシリカとしては、市販品を用いることもでき、例えば、スノーテックス20、スノーテックス30、スノーテックス40、スノーテックスO、スノーテックスN、スノーテックスC(以上、すべて「日産化学工業株式会社」製)が挙げられる。
【0082】
1.2.2.カチオン性樹脂
第2処理液は、カチオン性樹脂を含有する。カチオン性樹脂としては、「1.1.2.カチオン性樹脂」で例示した成分を用いることができる。また、カチオン性樹脂の機能および好ましい添加量の範囲についても、「1.1.2.カチオン性樹脂」で説明した内容と同様であるので、その説明を省略する。なお、カチオン性樹脂は、第2処理液中に多価金属塩または有機酸が含有される場合には、添加してもよいし、添加しなくてもよい。
【0083】
第2処理液において、コロイダルシリカおよびカチオン性樹脂が含まれていると、コロイダルシリカの細孔を形成する作用と、カチオン性樹脂の光輝性顔料の凝集作用とが相補的に作用して、光輝性インク組成物からなる画像の光輝性を向上させることができる。
【0084】
1.2.3.凝集剤
第2処理液は、凝集剤として多価金属塩および有機酸の少なくも一方を含有する。多価金属塩および有機酸としては、「1.1.3.凝集剤」で例示した成分を用いることができる。また、多価金属塩および有機酸の機能および好ましい添加量の範囲についても、「1.1.3.凝集剤」で説明した内容と同様であるので、その説明を省略する。多価金属塩および有機酸は、第2処理液中に上記カチオン性樹脂が含有される場合には、添加してもよいし、添加しなくてもよい。
【0085】
第2処理液に、コロイダルシリカと、多価金属塩および有機酸の少なくとも一方とが含まれている場合において、コロイダルシリカの細孔を形成する作用と、多価金属塩(有機酸)の光輝性顔料の凝集作用とが相補的に作用して、光輝性インク組成物からなる画像の光輝性を向上させることができる。
【0086】
1.2.4.その他の成分
第2処理液は、上記「1.1.4.その他の成分」で例示した成分を含有することができる。また、その他の成分の機能、好ましい添加量の範囲、および効果についても、「1.1.4.その他の成分」で説明した内容と同様であるので、その説明を省略する。
【0087】
1.2.5.第2処理液の調製
本実施形態に係る第2処理液は、上記の各成分を適当な方法で分散・混合することよって製造することができる。上記の各成分を十分に攪拌した後、目詰まりの原因となる粗大粒子および異物を除去するためにろ過を行って目的のコート液を得ることができる。
【0088】
上述したコロイダルシリカおよびカチオン性樹脂(多価金属塩または有機酸)は、これらの成分をあらかじめ第2処理液に添加しておいてもよいし、それぞれの成分を別々に添加したプレ処理液を準備しておき、受容層の形成時(後述する第1工程時)に、処理液同士を混合してから第2処理液として用いたり、プレ処理液同士を記録媒体上で混合させて第2処理液として用いてもよい。
【0089】
いずれの場合も、受容層上に形成される光輝性インク組成物からなる画像の光輝性を向上できるが、特に、受容層の形成時(後述する第1工程時)に、プレ処理液同士を混合して第2処理液として用いたり、プレ処理液同士を記録媒体上で混合させて第2処理液として用いることが好ましい。こうすることで、第2処理液中における凝集物の発生を低減でき、処理液の保存安定性や、処理液の吐出安定性が良好になる場合があるためである。
【0090】
1.2.6.第2処理液の物性
第2処理液を後述するインクジェット記録装置のノズル孔から吐出させる場合には、第2処理液の20℃における粘度は、2mPa・s以上10mPa・s以下であることが好ましく、3mPa・s以上6mPa・s以下であることがより好ましい。20℃における粘度が上記範囲内にあると、ノズル孔から適量吐出され、飛行曲がりを起こすことや飛散することを一層低減できるので、インクジェット記録装置に好適に使用することができるためである。第2処理液の粘度は、振動式粘度計VM−100AL(山一電機株式会社製)を用いて、第2処理液の温度を20℃に保持することで測定できる。
【0091】
2.光輝性インク組成物
本実施形態に係るインクジェット記録方法では、光輝性インク組成物を使用する。光輝性インク組成物は、光輝性顔料を含有する。光輝性インク組成物は、後述する第2工程で用いられ、プラスチックメディア上に形成された受容層上に付着させることにより、光輝性インク組成物からなる画像(以下、「光輝性画像」ともいう。)を形成する。以下、光輝性インク組成物に含まれる各成分について説明する。
【0092】
2.1.光輝性顔料
光輝性顔料としては、媒体に付着させたときに光輝性を呈しうるものであれば特に限定されないが、例えば、アルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、および銅からなる群より選択される1種または2種以上の合金や、パール光沢を有するパール顔料を挙げることができる。パール顔料の代表例としては、二酸化チタン被覆雲母、魚鱗箔、酸塩化ビスマス等の真珠光沢や干渉光沢を有する顔料が挙げられる。また、光輝性顔料は、水との反応を抑制するための表面処理が施されていてもよい。これらの中でも、光輝性顔料としては、銀またはアルミニウムを用いることがより好ましい。これらは、各種金属の中でも白色度の高い金属であるため、他色のインクと重ね合わせることにより、金色、銅色等の様々な金属色を表現することができる。
【0093】
光輝性顔料の平均粒子径(R2)は、5nm以上100nm以下であることが好ましく、20nm以上100nm以下であることがより好ましい。光輝性顔料の平均粒子径が上記範囲内にあれば、受容層上に付着させたときに、良好な光輝性を呈することができる。光輝性顔料の平均粒子径(R2)の測定は、コロイダルアルミナで説明した装置と同様のものを用いて行うことができるので、その説明を省略する。
【0094】
また、上述したコロイダルアルミナまたは上述したコロイダルシリカの平均粒子径(R1)と、光輝性顔料の平均粒子径(R2)と、の比(R2/R1)は、1以上5以下であることが好ましい。比(R2/R1)が上記範囲内にあると、光輝性顔料が受容層の細孔に入り込みにくくなり、光輝性顔料が受容層上で緻密に配列しやすくなるので、光輝性に優れた画像が得られる。
【0095】
また、本明細書において、光輝性とは、例えば、得られる画像の鏡面光沢度(日本工業規格(JIS)Z8741を参照。)によって特徴付けられる性質のことを指す。例えば、光輝性の種類としては、光を鏡面反射するような光輝性や、いわゆるマット調の光輝性などがあり、それぞれ、例えば、鏡面光沢度の高低によって特徴付けることができる。
【0096】
光輝性顔料の含有率は、光輝性インク組成物の全質量に対して、0.5質量%以上30質量%以下が好ましく、5.0質量%以上15質量%以下がより好ましい。光輝性顔料の含有率が前記範囲であることにより、インクジェット記録装置のノズルからの吐出安定性、光輝性インク組成物の保存安定性を優れたものとすることができる。
【0097】
以下、光輝性顔料の好ましい態様の一例としての銀粒子について述べる。本実施形態の光輝性インク組成物に光輝性顔料として、銀粒子が含有される場合には、銀粒子は、例えば以下のような銀粒子水分散液として供給される。なお、銀粒子は、必ずしも水分散液の性状で供給されなくてもよく、分散性が確保できる限り、粉体の性状で供給されてもよい。
【0098】
銀粒子水分散液は、銀粒子および水を含む。本実施形態の銀粒子水分散液に含まれる銀粒子は、銀を主成分とする粒子である。銀粒子は、例えば、副成分として、他の金属、酸素、炭素等を含んでも良い。銀粒子における銀の純度としては、例えば、50%以上とすることができる。銀粒子は、銀と他の金属の合金であってもよい。また、銀粒子水分散液中の銀粒子は、コロイド(粒子コロイド)の状態で存在していてもよい。銀粒子がコロイド状態で分散している場合は、さらに分散性が良好となり、例えば、銀粒子水分散液、およびこれをインク組成物に配合した場合の保存安定性の向上に寄与することができる。
【0099】
銀粒子水分散液の製造方法の一例を以下に記す。以下の製造方法は、銀コロイド粒子分散液の製造方法の一例であるが、本実施形態で使用しうる銀粒子としては、これに限定されない。
【0100】
以下に例示する銀粒子の製造方法は、少なくともビニルピロリドンのポリマーと多価アルコールとを含む第1溶液を用意する第1溶液用意工程と、金属銀に還元することが可能な銀前駆体が溶媒に溶解した第2溶液を用意する第2溶液用意工程と、第1溶液を所定の温度に加熱する第1溶液加熱工程と、加熱した第1溶液と第2溶液とを混合し混合液を得る混合工程と、混合液を所定の温度で一定時間保持する反応進行工程と、反応が進行した混合液から銀粒子(銀コロイド粒子)を取り出し、水系分散媒に分散する分散工程とを有している。
【0101】
まずビニルピロリドンのポリマーと多価アルコールとを含む第1溶液を用意する。第1溶液に含まれるビニルピロリドンのポリマーの機能の一つとしては、本例の製造方法により製造される銀粒子の表面に吸着することにより、銀粒子の凝集を防止し、銀コロイド粒子を形成することが挙げられる。
【0102】
使用するビニルピロリドンのポリマーには、ビニルピロリドンの単独重合体(ポリビニルピロリドン)、ビニルピロリドンの共重合体が含まれてもよい。ビニルピロリドンの共重合体としては、例えば、ビニルピロリドンとα−オレフィンとの共重合体、ビニルピロリドンと酢酸ビニルとの共重合体、ビニルピロリドンとジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートとの共重合体、ビニルピロリドンと(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドとの共重合体、ビニルピロリドンとビニルカプロラクタムジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートとの共重合体、ビニルピロリドンとスチレンとの共重合体、ビニルピロリドンと(メタ)アクリル酸との共重合体等が挙げられる。ビニルピロリドンのポリマーとしてポリビニルピロリドンを用いる場合、ポリビニルピロリドンの重量平均分子量は、3000以上60000以下であることが好ましい。
【0103】
銀粒子水分散液には、上記以外の物質が含まれてもよい。例えば、製造後に残存した化合物、すなわち、アルコール類、分散剤、還元剤、塩類、フェノール類、アミン類、各種のポリマー類などが含まれていてもよい。これらの成分は、水以外の成分として、固形分と称することがある。
【0104】
以上例示した銀粒子水分散液は、本実施形態の光輝性インク組成物に配合される光輝性顔料として、銀粒子を選択する場合に、原料として好適に用いることができる。また、上記例示した銀粒子水分散液は、溶媒としてのベースが水であるため、容易にインク組成物に適用することができる。また、光輝性インク組成物には、複数種の光輝性顔料が配合されてもよい。
【0105】
2.2.その他の成分
光輝性インク組成物は、上記「1.1.4.その他の成分」で例示した成分を含有することができる。また、その他の成分の機能、好ましい添加量の範囲、および効果についても、「1.1.4.その他の成分」で説明した内容と同様であるので、その説明を省略する。
【0106】
2.3.光輝性インク組成物の物性
光輝性インク組成物の20℃における粘度は、2mPa・s以上10mPa・s以下であることが好ましく、3mPa・s以上6mPa・s以下であることがより好ましい。20℃における粘度が上記範囲内にあると、ノズル孔から適量吐出され、飛行曲がりを起こすことや飛散することを一層低減できるので、インクジェット記録装置に好適に使用することができる。光輝性インク組成物の粘度は、振動式粘度計VM−100AL(山一電機株式会社製)を用いて、光輝性インク組成物の温度を20℃に保持することで測定できる。
【0107】
3.インクジェット記録方法
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、ノズル孔を備えたインクジェット記録装置を用いて行われ、上述した第1処理液または第2処理液をインク低吸収性または非吸収性の記録媒体上に付着させる第1工程と、上述した光輝性インク組成物を当該記録媒体上に付着させた第1処理液または第2処理液上に付着させる第2工程と、を含む。
【0108】
3.1.装置構成
本実施形態に係るインクジェット記録方法に使用可能なインクジェット記録装置(以下、単に「インクジェット記録装置」ともいう。)について、図1〜図2を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。本実施形態では、インクジェット記録装置としてインクジェットプリンター(以下、単に「プリンター」という。)を例示する。なお、本発明はこの装置構成に限定されるわけではない。
【0109】
図1は、本実施形態におけるプリンター1の構成を示す斜視図である。図1に示すプリンター1は、シリアルプリンターである。シリアルプリンターとは、所定の方向に移動するキャリッジにヘッドが搭載されており、キャリッジの移動に伴ってヘッドが移動することにより記録媒体上に液滴を吐出するもののことをいう。
【0110】
図1に示すように、プリンター1は、ヘッド2を搭載すると共にインクカートリッジ3を着脱可能に装着するキャリッジ4と、ヘッド2の下方に配設され記録媒体Pが搬送されるプラテン5と、キャリッジ4を記録媒体Pの媒体幅方向に移動させるキャリッジ移動機構7と、被記録媒体Pを媒体送り方向に搬送する媒体送り機構8と、を有するものである。また、プリンター1は、当該プリンター1全体の動作を制御する制御部CONTを有している。なお、上記媒体幅方向とは、主走査方向(ヘッド走査方向)である。上記媒体送り方向とは、副走査方向(主走査方向に交差する方向)である。
【0111】
制御部CONTは、上述したキャリッジ4、ヘッド2、キャリッジ移動機構7、媒体送り機構8等の各動作の実行タイミング等を制御したり、連携させたりする実行動作を行うことができる。
【0112】
ヘッド2は、インク組成物を微少粒径の液滴にしてノズル孔17から吐出して、記録媒体P上に付着させる。ヘッド2は、上記の機能を有すれば特に限定されず、どのようなインクジェット記録方式を用いてもよい。ヘッド2のインクジェット記録方式としては、例えば、ノズルとノズルの前方に置いた加速電極の間に強電界を印加し、ノズルから液滴状のインクを連続的に吐出させ、インクの液滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏光電極に与えて記録する方式またはインクの液滴を偏向することなく印刷情報信号に対応して吐出させる方式(静電吸引方式)、小型ポンプでインク液に圧力を加え、ノズルを水晶振動子等で機械的に振動させることにより、強制的にインクの液滴を吐出させる方式、インクに圧電素子で圧力と印刷情報信号を同時に加え、インクの液滴を吐出・記録させる方式(ピエゾ方式)、インクを印刷情報信号にしたがって微小電極で加熱発泡させ、インク滴を吐出・記録させる方式(サーマルジェット方式)等が挙げられる。
【0113】
図2は、本実施形態に係るヘッド2のノズル面15を示す概略図である。図2に示すように、ヘッド2は、ノズル面15を備える。インクの吐出面でもあるノズル面15には、複数のノズル列16が配列されている。複数のノズル列16は、ノズル列毎に、インクを吐出するためのノズル孔17を複数有する。
【0114】
複数のノズル列16は、ノズル列毎に、例えば異なる組成のインクを吐出可能になっている。図2の例では、ノズル列がインクの組成に対応して2列設けられており、各ノズル列が主走査方向に沿って配列されている。具体的には、上述した第1処理液(第2処理液)をノズル孔から吐出する場合には、第1処理液(第2処理液)を吐出可能なノズル列16Aと、上述した光輝性インク組成物を吐出可能なノズル列16Bからなる。図2の例では、ノズル列が2列の場合を示したが、これに限定されず、ノズル列を3列以上備えていてもよい。
【0115】
図2の例では、ノズル列16Aおよび16Bは、それぞれ、ノズル面15上で主走査方向に対して交差する副走査方向に延びているが、これに限定されず、ノズル面15内で主走査方向に対して交差する方向に角度を与えられて配置されていてもよい。
【0116】
ノズル孔17は、所定のパターンで複数配列されることにより、ノズル列を形成する。本実施形態では、ノズル孔17は、ノズル面15における副走査方向に複数並べられて配置されているが、これに限定されず、例えばノズル面15における主走査方向と直交する方向に沿ってジグザグ状に配置されていてもよい。なお、ノズル列を構成するノズル孔17の数は、特に限定されるものではい。
【0117】
複数のノズル列16は、副走査方向に向かって、所定数のノズル孔17を含む複数の領域に分割して用いることができる。図2の例では、ノズル列16Aおよび16Bは、副走査方向の上流側T1にある第1群と、該第1群よりも副走査方向の下流側T2にある第2群と、からなる。なお、1つの群を構成するノズル孔17の数は、特に限定されるものではない。また、群を構成するノズル孔17の数は、群毎に同一であっても、異なっていてもよい。また、ノズル列は、3分割以上されて用いられてもよい。
【0118】
上述のようにシリアルヘッドタイプのプリンター(記録装置)を中心に説明したが、この態様に限定されない。具体的には、記録ヘッドが固定化され副走査方向に順に配列されているラインヘッドタイプのプリンター、特開2002−225255号公報に記載されたようなX方向、Y方向(主走査方向、副走査方向)移動する機構が設けられたヘッド(キャリッジ)を備えるラテラルタイプのプリンターであっても良い。例えば、surepressL−4033A(セイコーエプソン株式会社製)は、ラテラルタイプのプリンターである。本発明においては、後述するシリアルヘッドのノズル列を分割して画像を記録する記録装置、若しくは、ラテラルタイプの記録装置が、先に吐出される第1処理液(第2処理液)によって受容層を良好に形成した後に、後に吐出される光輝性インク組成物によって光輝性画像を良好に形成できるので好ましい。
【0119】
3.2.インクジェット記録方法
本実施形態に係るインクジェット記録方法について、上記のプリンター1を用いて具体的に説明する。なお、本発明において「画像」とは、ドット(液滴)群から形成される印字パターンを示し、テキスト印字、ベタ印字も含める。
【0120】
まず、キャリッジ4を主走査方向に移動させながら、ノズル列16Aのノズル孔17から第1処理液の液滴を吐出させて、記録媒体P上に第1処理液の液滴を付着させる(第1工程)。これにより、記録媒体P上に第1処理液からなる受容層を形成する。なお、第1処理液を使用する場合を例に挙げたが、第1処理液に代えて第2処理液を用いてもよい。
【0121】
第1工程において、第1処理液(第2処理液)の使用量を低減させるという観点から、インクジェット記録方式を用いて第1処理液(第2処理液)をノズル孔から吐出する場合を示したが、これに限定されるものではない。例えば、記録媒体に第1処理液(第2処理液)を付着させる方法としては、ロールコーター等の塗工装置を用いて画像の表面に第1処理液(第2処理液)を塗布する方法などが挙げられる。この場合、ロールコーター等の塗工装置は、上記プリンター1に組み込まれていてもよい。
【0122】
次に、キャリッジ4を主走査方向に移動させながら、ノズル列16Bのノズル孔17から光輝性インク組成物の液滴を吐出させて、受容層上に光輝性インク組成物の液滴を付着させる(第2工程)。これにより、受容層上に光輝性インク組成物からなる光輝性画像が記録された記録物が得られる。
【0123】
本実施形態に係るインクジェット記録方法では、第2工程前に第1処理液(第2処理液)を乾燥させる乾燥工程を有してもよい。乾燥工程を有すると、第1処理液(第2処理液)が記録媒体上である程度乾燥した後に、光輝性インク組成物が付着する。これにより、光輝性インク組成物および記録媒体が混ざりすぎず、光輝性顔料の配列の乱れを低減できるので、光輝性画像の光輝性が低下しにくい。
【0124】
乾燥工程では、記録媒体に付着させた第1処理液(第2処理液)の重量を、記録媒体に付着させた直後の重量の5%以上60%以下にすることが好ましく、10%以上50%以下にすることがより好ましく、15%以上30%以下にすることがより一層好ましい。上記重量が上記範囲内にあると、とりわけ下限を下回らずにあることで、光輝性インク組成物(光輝性画像)の定着性が良好となり、耐擦性に優れた画像が得られる場合がある。また、上記重量が上記範囲内、とりわけ上限を超えずにあることで、第1処理液(第2処理液)および光輝性インク組成物が混合しすぎることを低減できるので、光輝性に優れた画像が得られる場合がある。
【0125】
乾燥工程は、特別な加熱機構を用いない自然乾燥の他、記録媒体を熱源に接触させて加熱する機構や、赤外線やマイクロウェーブ(2,450MHz程度に極大波長をもつ電磁波)などを照射する機構や、温風を吹き付けたりする機構等の乾燥機構を用いて行うことができる。これらの乾燥機構は、上記プリンター1に組み込まれていてもよい。
【0126】
第1工程において記録媒体に付着させた第1処理液(第2処理液)の単位面積あたりの重量[W1(mg/inch)]と、第2工程において受容層上に付着させた光輝性インク組成物の単位面積あたりの重量[W2(mg/inch)]と、の比(W1/W2)は、0.1以上3以下であることが好ましく、0.3以上2.5以下であることがより好ましい。比(W1/W2)が上記範囲内にあると、光輝性インク組成物を受容層で十分に受容できるので、光輝性に優れた画像が得られる。
【0127】
本実施形態に係るインクジェット記録方法によれば、上述した第1処理液または上述した第2処理液を用いて受容層を形成した後、当該受容層上に光輝性インク組成物を用いた光輝性画像を形成する。これにより、光輝性に優れた画像が得られる。
【0128】
3.3.ノズル列の分割
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、ノズル列を所定数のノズル孔を含む群毎に分割する態様を好ましく用いることができる。以下、ノズル列を分割して使用する場合のインクジェット記録方法について、図2を参照しながら説明する。
【0129】
図2で示すように、ノズル列16Aおよび16Bは、副走査方向の上流側T1にある第1群と、該第1群よりも副走査方向の下流側T2にある第2群に分割して使用する。
【0130】
まず、キャリッジ4を主走査方向に移動させながら、第1ノズル列16Aの第1群から第1処理液の液滴を吐出させて、記録媒体P上に第1処理液の液滴を付着させる。これにより、記録媒体P上に、第1処理液からなる第1受容層が得られる。
【0131】
次に、副走査方向の下流側T2方向に、副走査方向の第1群の長さ分だけ記録媒体Pを移動させる。そして、キャリッジ4を主走査方向に移動させながら、第2ノズル列16Bの第2群から光輝性インク組成物の液滴を吐出させて、記録媒体Pに形成した第1受容層上に光輝性インク組成物の液滴を付着させることによって、第1光輝性画像が得られる。このとき、第1受容層は、記録媒体Pを第1群の長さ分だけ移動させる間に乾燥する。これにより、第1受容層上に形成される第1光輝性画像は、光輝性に優れたものとなる。
【0132】
また、第1光輝性画像の形成時(キャリッジ4の同一走査時)に、第1ノズル列16Aの第1群から第1処理液の液滴を再度吐出させて、記録媒体P上に第1処理液の液滴を付着させる。これにより、第1受容層が記録されていない部分(第1の受容層の副走査方向の上流側)には、第2受容層が形成される。
【0133】
次に、副走査方向の下流側T2方向に、副走査方向の第2群の長さ分だけ記録媒体Pを移動させる。そして、キャリッジ4を主走査方向に移動させながら、第2ノズル列16Bの第2群から光輝性インク組成物の液滴を吐出させて、記録媒体Pに形成した第2受容層上に光輝性インク組成物の液滴を付着させることによって、第2光輝性画像が得られる。このとき、第2受容層は、記録媒体Pを第2群の長さ分だけ移動させる間に乾燥する。これにより、第2受容層上に形成される第2光輝性画像は、光輝性に優れたものとなる。
【0134】
このようにして、第1光輝性画像および第2光輝性画像からなる光輝性画像が形成された記録物が得られる。
【0135】
本実施形態では、第1光輝性画像および第2光輝性画像からなる光輝性画像の記録方法を示したが、これに限定されず、第1光輝性画像のみを形成したり、さらに第1光輝性画像および第2光輝性画像を形成する工程を繰り返したりすることで、所望のパターンの光輝性画像を形成できる。また、ノズル列を3分割以上にして用いる場合にも、同様に行うことができる。
【0136】
なお、第1処理液を使用する場合を例に示したが、第1処理液に代えて第2処理液を使用してもよい。
【0137】
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、ノズル列を分割して使用することによって、記録の高速化を図ることができる。また、ノズル列を分割して使用すると、記録媒体のバックフィードを行わない、もしくは記録媒体のバックフィードの回数を減らすことができる。これにより、記録媒体のバックフィードによって生じやすい印刷位置のずれを低減できる。
【0138】
4.記録媒体
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、インク低吸収性または低吸収性の記録媒体を用いる。後述する実施例でも示すように、インク低吸収性または低吸収性の記録媒体は、光輝性インク組成物を用いた場合、インクの受容性に乏しかったり、光輝性顔料の配列が乱れたりする等の理由から、良好な光輝性を備えた画像を形成しにくい。しかしながら、本実施形態に係るインクジェット記録方法では、インク低吸収性または低吸収性の記録媒体上に、第1処理液または第2処理液を用いて受容層を形成するので、光輝性に優れた画像を形成できる。
【0139】
インク低吸収性および非吸収性の被記録媒体としては、例えば、インクジェット印刷用に表面処理をしていない(すなわち、インク吸収層を形成していない)プラスチックフィルム、紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているものやプラスチックフィルムが接着されているもの等が挙げられる。ここでいうプラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。上記の被記録媒体以外にも、金属、ガラスなどのインク非吸収性または低吸収性の被記録媒体を用いてもよい。
【0140】
ここで、本明細書において「インク非吸収性またはインク低吸収性の被記録媒体」とは、「ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である記録媒体」を示す。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙−液体吸収性試験方法−ブリストー法」に述べられている。
【0141】
5.実施例
以下、本発明を実施例および比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0142】
5.1.処理液(プレ処理液)の調製
コロイダルアルミナ、コロイダルシリカ、カチオン性樹脂、多価金属塩、界面活性剤、水溶性有機溶剤および水を、表1に示す配合量で混合・攪拌して、プレ処理液P1〜P5を調製した。
【0143】
ここで、後述する第1工程において、プレ処理液を単独で用いる場合は、プレ処理液を処理液とする。また、後述する第1工程において、プレ処理液を複数組み合わせて用いる場合には、記録媒体上でプレ処理液同士を混ぜ合わせたものを処理液とする。
【0144】
表1に記載の成分は、具体的には次の通りである。
(コロイダルアルミナ)
・アルミナゾル 520(商品名、日産化学工業株式会社製、固形分20%)
(コロイダルシリカ)
・スノーテックス 40(商品名、日産化学工業株式会社製、固形分40%、平均粒子径10nm〜20nm)
(カチオン性樹脂)
・アローベース CD−1200(商品名、ユニチカ株式会社製、固形分20%、平均粒子径80nm、ポリエチレン系)
・ハイドラン CP2020(商品名、DIC株式会社製、固形分40%、平均粒子径30nm、ポリウレタン系)
(多価金属塩)
・ポリ塩化アルミニウム
(界面活性剤)
・オルフィン E1010(商品名、日信化学工業株式会社製、アセチレングリコール系界面活性剤)
(水溶性有機溶剤)
・プロピレングリコール
・1,2−ヘキサンジオール
(水)
・イオン交換水
【0145】
【表1】

【0146】
5.2.光輝性インク組成物の調製
ポリビニルピロリドン(PVP、重量平均分子量10000)を70℃の条件下で15時間加熱して、その後室温で冷却をした。そのPVP1000gを、エチレングリコール溶液500mlに添加してPVP溶液を調整した。別の容器にエチレングリコールを500ml入れ、硝酸銀128gを加えて電磁攪拌器で十分に攪拌をして硝酸銀溶液を調整した。PVP溶液を120℃の条件下でオーバーヘッドミキサーを用いて攪拌しつつ、硝酸銀溶液を添加して約80分間加熱して反応を進行させた。そして、その後室温で冷却をさせた。得られた溶液を遠心分離機で2200rpmの条件下で10分間遠心分離を行った。その後、分離が出来た銀粒子を取り出して、余分なPVPを除去するためエタノール溶液500mlに添加した。そして、さらに遠心分離を行い、銀粒子を取り出した。さらに、取り出した銀粒子を真空乾燥機で35℃、1.3Paの条件下で乾燥させた。
【0147】
このようにして製造された銀粒子10質量%を用いて、表2に示す材料組成にて光輝性インク組成物Ag1を調製した。なお、銀粒子の平均粒子径は「マイクロトラックUPA」(日機装株式会社製)を用い、測定条件は、屈折率を0.2−3.9i、溶媒(水)の屈折率を1.333、測定粒子形状を球形、とした。その結果、平均粒子径は30nmであった。
【0148】
表2で示した成分のうち、表1のプレ処理液において用いていない成分は、以下の通りである。
(水溶性有機溶剤)
・2−ピロリドン
【0149】
【表2】

【0150】
5.3.評価試験
以下の評価試験は、表1および表2に記載のプレ処理液(処理液)および光輝性インク組成物が充填されたカートリッジを搭載したインクジェットプリンターPX−G930(商品名、セイコーエプソン株式会社製)を用いて行った。
【0151】
5.3.1.評価サンプルの作製
(1)実施例1
実施例1の評価サンプルは、次のようにして作製した。まず、キャリッジを主走査方向に移動させながら、プリンターのノズル孔から処理液P1を吐出させ、記録媒体(リンテック株式会社製、商品名「PET50A」、PET系)上に付着させて、受容層を形成した(第1工程)。このとき、記録媒体上に付着させた処理液P1の重量(W1)は、14mg/inchであった。その後、記録媒体上に付着させた処理液P1を、記録媒体の付着直後の重量の20%になるまで乾燥させた。
【0152】
次に、プリンターのノズル孔から光輝性インク組成物Ag1を吐出させ、受容層上に付着させて、光輝性画像を形成した(第2工程)。このとき、受容層上に付着させた光輝性インク組成物Ag1の重量(W2)は、7mg/inchであった。このようにして、実施例1の評価サンプルを得た。
【0153】
なお、第1工程および第2工程における記録条件は、いずれも、画像解像度1440dpi×1440dpi、Duty50%とした。
【0154】
ここで、本明細書において、「Duty値」とは、下式で算出される値である。
【0155】
Duty(%)=実吐出ドット数/(縦解像度×横解像度)×100
(式中、「実吐出ドット数」は単位面積当たりの実吐出ドット数であり、「縦解像度」および「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。)
(2)実施例2
実施例2の評価サンプルは、処理液P1に代えて処理液P3を用いた以外は、実施例1の評価サンプルの作製と同様にして得られた。
【0156】
(3)実施例3
実施例3の評価サンプルは、処理液P1に代えて処理液P4を用いた以外は、実施例1の評価サンプルの作製と同様にして得られた。
【0157】
(4)実施例4
実施例4の評価サンプルは、次のようにして作製した。まず、キャリッジを主走査方向に移動させながら、プリンターのノズル孔からプレ処理液P1およびプレ処理液P3をキャリッジの同一走査時に吐出させ、記録媒体(リンテック株式会社製、商品名「PET50A」、PET系)上で混合・付着させて処理液とし、受容層を形成した(第1工程)。このとき、記録媒体上に付着させたプレ処理液P1およびP3の重量(W2)は、14mg/inchであった。その後、記録媒体上に付着させた処理液を、記録媒体の付着直後の重量の20%になるまで乾燥させた。
【0158】
次に、キャリッジを主走査方向に移動させながら、プリンターのノズル孔から光輝性インク組成物Ag1を吐出させ、受容層上に付着させて、光輝性画像を形成した(第2工程)。このとき、受容層上に付着させた光輝性インク組成物Ag1の重量(W2)は、7mg/inchであった。このようにして、実施例4の評価サンプルを得た。
【0159】
なお、第1工程および第2工程における記録条件は、いずれも、画像解像度1440dpi×1440dpi、Duty50%とした。
【0160】
(5)実施例5
実施例5の評価サンプルは、プレ処理液P3に代えてプレ処理液P5を使用した以外は、実施例4の評価サンプルの作製と同様にして得られた。
【0161】
(6)実施例6
実施例6の評価サンプルは、プレ処理液P1に代えてプレ処理液P2を使用した以外は、実施例4の評価サンプルの作製と同様にして得られた。
【0162】
(7)実施例7
実施例7の評価サンプルは、記録媒体上に付着させた処理液を記録媒体の付着直後の重量の65%になるまで乾燥させた以外は、実施例4の評価サンプルの作製と同様にして得られた。
【0163】
(8)実施例8
実施例8の評価サンプルは、記録媒体上に付着させた処理液を記録媒体の付着直後の重量10%になるまで乾燥させた以外は、実施例4の評価サンプルの作製と同様にして得られた。
【0164】
(9)実施例9
実施例9の評価サンプルは、プレ処理液P1に代えてプレ処理液P2を使用し、プレ処理液P3に代えてプレ処理液P5を使用した以外は、実施例4の評価サンプルの作製と同様にして得られた。
【0165】
(10)比較例1
比較例1の評価サンプルは、いずれの処理液も使用しなかった以外は、実施例1の評価サンプルの作製と同様にして得られた。
【0166】
(11)比較例2
比較例2の評価サンプルは、処理液P1に代えて処理液P2を用いた以外は、実施例1の評価サンプルの作製と同様にして得られた。
【0167】
(12)比較例3
比較例3の評価サンプルは、処理液P1に代えて処理液P5を用いた以外は、実施例1の評価サンプルの作製と同様にして得られた。
【0168】
5.3.2.評価試験
上記のようにして得られた評価サンプルの着色光輝性領域(比較例1においては、着色画像)の60°鏡面光沢度を、光沢度計(日本電色工業株式会社製、商品名「GlossMeter型番VGP5000」)を用い、JIS Z8741:1997にしたがって測定した。得られた60°鏡面光沢度を基に、画像の光輝性の評価を行った。評価基準の分類は、以下の通りである。
AA:60°鏡面光沢度が400以上
A:60°鏡面光沢度が300以上400未満
B:60°鏡面光沢度が250以上300未満
C:60°鏡面光沢度が250未満
5.4.評価結果
以上の評価結果を表3および表4に示す。
【0169】
【表3】

【0170】
【表4】

【0171】
表3に示すように、実施例に係る評価サンプルの作製によって得られた画像は、いずれも、光輝性に優れていた。
【0172】
一方、表4に示すように、比較例1に係る評価サンプルの作製では、処理液を用いていない。そのため、光輝性顔料の配列が乱れ、光輝性に優れない画像を記録した。
【0173】
比較例2に係る評価サンプルの作製で用いた処理液は、コロイダルシリカを含有するが、カチオン性樹脂および多価金属塩のいずれも含有していない。そのため、光輝性顔料が良好に配列せず、光輝性に優れない画像を記録した。
【0174】
比較例3に係る評価サンプルの作製で用いた処理液は、多価金属塩を含有するが、コロイダルアルミナ、コロイダルシリカおよびカチオン性樹脂のいずれも含有していない。そのため、光輝性顔料の配列が乱れ、光輝性に優れない画像を記録した。
【0175】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0176】
1…プリンター、2…ヘッド、3…インクカートリッジ、4…キャリッジ、5…プラテン、7…キャリッジ移動機構、8…媒体送り機構、15…ノズル面、16…複数のノズル列、17…ノズル孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル孔を備えたインクジェット記録装置を用いたインクジェット記録方法であって、
第1処理液または第2処理液を、インク低吸収性または非吸収性の記録媒体に付着させる第1工程と、
前記記録媒体に付着させた前記第1処理液または前記第2処理液上に、前記ノズル孔から光輝性顔料を含有する光輝性インク組成物の液滴を吐出させて付着させる第2工程と、
を含み、
前記第1処理液は、コロイダルアルミナおよびカチオン性樹脂の少なくとも一方を含有し、
前記第2処理液は、コロイダルシリカと、前記カチオン性樹脂、多価金属塩、有機酸から選択される一種以上と、を含有する、インクジェット記録方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記コロイダルアルミナおよび前記コロイダルシリカの平均粒子径(R1)が、5nm以上100nm以下である、インクジェット記録方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
さらに、前記第2工程前に、前記記録媒体に付着させた前記第1処理液または前記第2処理液を乾燥させる乾燥工程を含み、
前記乾燥工程によって、前記記録媒体に付着させた前記第1処理液または前記2処理液の重量を、前記記録媒体に付着させた直後の重量の5%以上60%以下にする、インクジェット記録方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記第1工程において前記記録媒体に付着させた前記第1処理液または前記第2処理液の単位面積あたりの重量[W1(mg/inch)]と、前記第2工程において前記第1処理液または前記第2処理液上に付着させた前記光輝性インク組成物の単位面積あたりの重量[W2(mg/inch)]と、の比(W1/W2)が、0.1以上3以下である、インクジェット記録方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
さらに、前記第1処理液が、前記多価金属塩または前記有機酸を含有する、インクジェット記録方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
前記第1工程において、前記第1処理液または前記第2処理液を前記ノズル孔から吐出させることによって、前記記録媒体に付着させる、インクジェット記録方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記インクジェット記録装置は、複数の前記ノズル孔からなるノズル列を備えたヘッドと、前記ヘッドを主走査方向に走査させるキャリッジと、を有し、
前記ノズル列は、前記第1処理液または前記第2処理液を吐出するための前記ノズル孔を前記主走査方向と交差する副走査方向に複数並べてなる第1ノズル列と、前記光輝性インク組成物を吐出するための前記ノズル孔を前記副走査方向に複数並べてなる第2ノズル列と、含み、
前記第1ノズル列および前記第2ノズル列は、前記副走査方向に向かって、所定数の前記ノズル孔を含む群毎に分割して用いられ、
前記群は、前記副走査方向の上流側にある第1群と、該第1群よりも前記副走査方向の下流側にある第2群と、を備え、
前記第1工程は、前記第1ノズル列の前記第1群から前記第1処理液または前記第2処理液を吐出させることにより行われ、
前記第2工程は、前記第2ノズル列の前記第2群から前記光輝性インク組成物を吐出させることにより行われる、インクジェット記録方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法により得られた記録物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−71277(P2013−71277A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210334(P2011−210334)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】