説明

インクジェット記録用インク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ

【課題】高温保存した時の粘度安定性を充分に確保しつつ画像濃度を向上させたインクジェット記録用インク、該インクを用いたインクジェット記録方法、及び該インクを容器中に収容したインクカートリッジの提供。
【解決手段】少なくとも顔料、アルコールアルコキシレート系界面活性剤、水溶性有機溶剤、及び水を含有し、前記顔料が下記一般式(1)で表される分散剤で分散されており、最大泡圧法で測定した、25℃における泡寿命が15msecの場合の動的表面張力が36mN/m以下であるインクジェット記録用インク。


(上記式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、アリル基、又は炭素数1〜8のアラルキル基を表す。Lは0〜7の整数、nは20〜80の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用インク、該インクを用いたインクジェット記録方法、及び該インクを収容したインクカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
顔料を界面活性剤型分散剤で分散させたインクジェット記録用インクにおいて、インク中にアルコールアルコキシレート系界面活性剤を添加することにより高画質化を図る方法が既に知られている。
しかし、今までの界面活性剤を用いたインクでは画像濃度が低く、高温保存したときの粘度安定性も不十分であるという問題があった。
例えば、本出願人の出願に係る特許文献1には、画像品質を損なうことなく泡立ちが改善され、保存安定性及び吐出安定性に優れたインクの提供を目的として、顔料を界面活性剤型分散剤で分散させたインク中にアルコールアルコキシレート系界面活性剤を含有させることが開示されている。
この発明は、顔料を界面活性剤型分散剤で分散させたインクにおいてアルコールアルコキシレート系界面活性剤を含有させた点で本発明と類似している。しかし、このインクは最大泡圧法で測定した、25℃における泡寿命が15msecの場合の動的表面張力が36mN/mより大きい。その結果、紙等の記録媒体にインク滴が着弾した際のインク滴の拡がりが小さく、ドットの埋まりが悪いため、十分な画像濃度が得られない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、少なくとも顔料、アルコールアルコキシレート系界面活性剤、水溶性有機溶剤、及び水を含有し、高温保存した時の粘度安定性を充分に確保しつつ画像濃度を向上させたインクジェット記録用インク、該インクを用いたインクジェット記録方法、及び該インクを容器中に収容したインクカートリッジの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題は、次の1)〜3)の発明によって解決される。
1) 少なくとも顔料、アルコールアルコキシレート系界面活性剤、水溶性有機溶剤、及び水を含有し、前記顔料が下記一般式(1)で表される分散剤で分散されており、最大泡圧法で測定した、25℃における泡寿命が15msecの場合の動的表面張力が36mN/m以下であることを特徴とするインクジェット記録用インク。
【化1】

(上記式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、アリル基、又は炭素数1〜8のアラルキル基を表す。Lは0〜7の整数、nは20〜80の整数を表す。)
2) 1)に記載の記録用インクに刺激を印加し、該記録用インクを飛翔させて画像を形成することを特徴とするインクジェット記録方法。
3) 1)に記載の記録用インクを容器中に収容したことを特徴とするインクカートリッジ。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、少なくとも顔料、アルコールアルコキシレート系界面活性剤、水溶性有機溶剤、及び水を含有し、高温保存した時の粘度安定性を充分に確保しつつ画像濃度を向上させることができるインクジェット記録用インク、該インクを用いたインクジェット記録方法、及び該インクを容器中に収容したインクカートリッジを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】インクカートリッジの一例を示す概略図。
【図2】図1のインクカートリッジのケース(外装)も含めた概略図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
本発明のインクジェット記録用インク(以下、単にインクという)は、少なくとも顔料、アルコールアルコキシレート系界面活性剤、水溶性有機溶剤、及び水を含有し、該顔料としては前記一般式(1)で表される分散剤で分散されたものを用いる。
<アルコールアルコキシレート系界面活性剤>
アルコールアルコキシレート系界面活性剤は、インクの動的表面張力を低下させて記録媒体に対する浸透性を向上させるために加える。
その種類としては、該界面活性剤を添加したインク物性を最大泡圧法で測定した際に、25℃における泡寿命が15msecの場合の動的表面張力が36mN/m以下となるものを用いる。これにより、記録媒体にインクが着弾した際のインク滴の拡がりが大きくなり、画像濃度を向上させることができる。動的表面張力が36mN/mより大きいと、記録媒体にインク滴が着弾した際のインク滴の拡がりが小さく十分な画像濃度を得られない。
本発明で用いることができるアルコールアルコキシレート系界面活性剤の具体例としては、ビックケミー・ジャパン社製:BYK・DYNWET800、日本触媒社製:EP−5035、EP−7045などが挙げられる。
インク中のアルコールアルコキシレート系界面活性剤の添加量は1.0〜1.5重量%程度が好ましい。
【0008】
<分散剤>
顔料の分散剤としては、前記一般式(1)で表されるものを用いる。
式中のnは20〜80の整数であるが、30〜50が好ましい。nが20未満の場合には分散安定性が低下する傾向があり、平均粒径が大きい顔料を含むことになるため満足な彩度が得られないことがある。また、80を超えると、インクの粘度が高くなり、インクジェット記録方式での記録が困難になることがある。
置換基Rにおける炭素数1〜4のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などが挙げられる。
置換基Rにおける炭素数1〜8のアラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基、2−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、4−メチルベンジル基などが挙げられる。
前記分散剤の具体例としては、ポリオキシエチレン(n=20)−β−ナフチルエーテル、ポリオキシエチレン(n=40)−β−ナフチルエーテル、ポリオキシエチレン(n=60)−β−ナフチルエーテルが挙げられる。これらの中でも、ポリオキシエチレン(n=40)−β−ナフチルエーテルが特に好ましい。
前記分散剤の含有割合は、インク中の顔料1重量部に対して0.1〜0.5重量部が好ましい。0.1重量部以上であれば顔料の分散が不十分になることはなく、0.5重量部以下であれば、インクの粘度が高くなってインクジェット記録方式での記録が困難になるようなこともない。
【0009】
<顔料>
着色剤である顔料の種類には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機顔料、有機顔料のいずれであってもよい。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記無機顔料としては、例えば酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、紺青、カドミウムレッド、クロムイエロー、金属粉、カーボンブラック、などが挙げられる。
前記有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、アゾメチン顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、などが挙げられる。これらの中でもアゾ顔料、多環式顔料がより好ましい。
前記アゾ顔料としては、例えばアゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、などが挙げられる。
前記多環式顔料としては、例えばフタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料、ローダミンBレーキ顔料、などが挙げられる。
【0010】
また、黒色インク用のものとしては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料、などが挙げられる。
前記カーボンブラックとしては、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックであって、一次粒径が、15〜40nm、BET法による比表面積が、50〜300m/g、DBP吸油量が40〜150mL/100g、揮発分が0.5〜10%、pH値が2〜9を有するものが好ましい。
カーボンブラックとしては市販品を用いることができ、例えばNo.2300、No.900、MCF−88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B(いずれも、三菱化学社製);Raven700、同5750、同5250、同5000、同3500、同1255(いずれも、コロンビア社製);Regal400R、同330R、同660R、Mogul L、Monarch700、同800、同880、同900、同1000、同1100、同1300、Monarch1400(いずれも、キャボット社製);カラーブラックFW1、同FW2、同FW2V、同FW18、同FW200、同S150、同S160、同S170、プリンテックス35、同U、同V、同140U、同140V、スペシャルブラック6、同5、同4A、同4(いずれも、デグッサ社製)、などが挙げられる。
【0011】
また、イエローインク用のものとしては、例えばC.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー2、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー73、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー75、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー98、C.I.ピグメントイエロー114、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー174、C.I.ピグメントイエロー180、などが挙げられる。
【0012】
また、マゼンタインク用のものとしては、例えばC.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド12、C.I.ピグメントレッド48(Ca)、C.I.ピグメントレッド48(Mn)、C.I.ピグメントレッド57(Ca)、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド176、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド202、ピグメントバイオレット19、などが挙げられる。
【0013】
また、シアンインク用のものとしては、例えばC.I.ピグメントブルー1、C.I.ピグメントブルー2、C.I.ピグメントブルー3、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:34、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー22、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー63、C.I.ピグメントブルー66;C.I.バットブルー4、C.I.バットブルー60、などが挙げられる。
なお、イエロー顔料としてピグメントイエロー74、マゼンタ顔料としてピグメントレッド122、ピグメントバイオレッド19、シアン顔料としてピグメントブルー15:3を用いることにより、色調、耐光性が優れバランスの取れたインクを得ることができる。
インク中の顔料の含有量は、0.1〜50.0重量%が好ましく、0.1〜20.0重量%がより好ましい。
顔料の50%平均粒径(D50)は、150nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましい。なお、前記50%平均粒径は、23℃、55%RHの環境下において、日機装社製マイクロトラックUPAで動的光散乱法により測定した値である。
【0014】
<水溶性有機溶剤>
水溶性有機溶剤は、保湿効果、吐出安定性向上などを目的として加える。
水溶性有機溶剤としては、例えば以下のものが挙げられる。
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、3−メチル−1,3−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネイト、炭酸エチレン等。
これらの水溶性有機溶剤は、単独で又は2種類以上を混合して使用することができる。
前記の中でも、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及び/又はグリセリンを含むことが水分蒸発による吐出不良を防止する上で優れた効果が得られる。
【0015】
水溶性有機溶剤の添加量は、インク全体の30〜40重量%が好ましい。添加量がこの範囲にあれば、インクジェット記録装置内での水分蒸発によるインクの増粘が抑制され、また記録媒体に着弾時には水分蒸発によるインクの増粘で画像にじみが抑制され高画質な記録物を得ることができる。添加量が30重量%未満では、水分蒸発し易くなり、インクジェット記録装置内のインク供給系でインクの水分蒸発により増粘してインク詰まり等を生じることがある。また、添加量が40重量%より多いと、インクを所望の粘度にするために顔料や樹脂等の固形分の減量が必要になることがあり、その場合、記録物の画像濃度が低下することがある。また、添加量が40重量%より多いと、インクジェット記録装置内での増粘によるインク詰まりは発生しにくくなるが、一方で記録媒体に着弾時にもインクが増粘しにくくなりブリードが発生し易くなる。
【0016】
本発明のインクには、上記各成分の他に、必要に応じて、樹脂エマルジョン、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤、酸化防止剤等の種々の添加剤を加えることができる。
<樹脂エマルジョン>
樹脂エマルジョンは、インクの分散安定性向上の目的で加える。
樹脂エマルジョンとしては市販品を用いることができ、例えば、SF460、SF460S、SF420、SF110、SF300、SF361(ウレタン系樹脂エマルジョン;いずれも日本ユニカー社製)、W5025、W5661(ウレタン系樹脂エマルジョン;三井武田ケミカル社製)などが挙げられる。
インク中の樹脂エマルジョンの添加量は、固形分で0.5〜5重量%程度が好ましい。0.5重量%未満では、顔料の分散安定性が不十分になることがある。また、5重量%を超えると、インク中の固形分量が多くなりインク粘度が増加して吐出が困難になることがある。
【0017】
<消泡剤>
消泡剤はインクの泡立ち防止のために加える。
消泡剤としては市販品を用いることができ、例えば、KS−508、KS−531、KM−72、KM−72F、KM−90、KM−98(信越化学工業社製)、SF−8427、SF−8428、SH−3749、SH−8400、FZ−2101、FZ−2104、FZ−2118、FZ−2203、FZ−2207(東レ・ダウコーニング社製)、BYK−345、BYK−346、BYK−348(ビッグケミー・ジャパン社製)等が挙げられる。
消泡剤の添加量は、0.05〜1重量%が好ましく、0.1〜0.5重量%がより好ましい。0.05重量%未満では消泡効果が小さいことがあり、1重量%より多いとインクの保存安定性、吐出安定性に問題を生じることがある。
【0018】
<pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤、酸化防止剤>
pH調整剤としては、調合されるインクに悪影響を及ぼさずにpHを7以上に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて任意の物質を使用することができ、例えばジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物;水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、などが挙げられる。
防腐防黴剤としては、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、等が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト、などが挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、りん系酸化防止剤、などが挙げられる。
【0019】
図1にインクカートリッジの一例を示す。また、図2は、図1のインクカートリッジのケース(外装)も含めた図である。
図2に示すように、インクカートリッジ240は、インク注入口242からインク袋241内にインクを充填し排気した後、該インク注入口242を融着により閉じる。使用時には、ゴム部材からなるインク排出口243に装置本体の針を刺して装置に供給される。
インク袋241は、透気性のないアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。このインク袋241は、図2に示すように、通常、プラスチックス製のカートリッジケース244内に収容され、各種インクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いられるようになっている。
【実施例】
【0020】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。また、表中の数値は「重量%」である。
【0021】
実施例1〜6、比較例1〜4
<分散体の調製>
表1に示す配合割合で、顔料と一般式(1)で表される分散剤(L=0、n=40)と水をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社KDL型、メディア:直径0.3mmのジルコニアボール使用)で循環分散してマゼンタ色の顔料分散体を得た。
<インクの調製>
表1の各実施例及び比較例の欄に示す処方の材料を用いて混合物を調合し、1時間30分撹拌後、孔径0.8μmのメンブランフィルターでろ過して、各インクを得た。
混合物の調合順序は、水溶性有機溶剤→界面活性剤→イオン交換水とし、30分撹拌した後、上記顔料分散体と樹脂エマルジョンと消泡剤を添加し、1時間撹拌してインクを調製した。
【0022】
上記各実施例及び比較例のインクについて、以下のようにして動的表面張力測定、保存試験、画像濃度測定を行った。
<動的表面張力>
各インクについて、SITA Messtechnic GmbH社のSITA Dyno Testerを用いて、最大泡圧法により、25℃における泡寿命が15msecの場合の動的表面張力を測定した。
【0023】
<保存試験>
各インクを密閉容器に入れて70℃の環境下に14日間保存した。保存前後のインク粘度を、R型粘度計(東機産業社製)を用いて25℃で測定し、以下の基準で評価した。
〔評価基準〕
A:保存前後の粘度変化率が3%未満
B:保存前後の粘度変化率が3%以上4.5%未満
C:保存前後の粘度変化率が4.5%以上
【0024】
<画像濃度>
各インクをインクジェットプリンタ(リコー社製、IPSiO GX3000)に充填し、25℃、50%RH環境下、マゼンタベタ画像を普通紙はやいモードでマイリサイクルペーパーGP紙(NBSリコー社製)に印字し、ベタ画像の測色をX−Rite938(X−Rite社製)で行い、以下の基準で評価した。
〔評価基準〕
A:画像濃度0.84以上
B:画像濃度0.80以上、0.84未満
C:画像濃度0.80未満
【0025】
【表1】

表中のBYK−DYNWET800はビックケミー・ジャパン社製、EP−5035、EP−7045は日本触媒社製のアルコールアルコキシレート系界面活性剤である。
また、W5025、W5661は三井化学ポリウレタン社製のウレタン系樹脂エマルジョン、J−450はジョンソンポリマー社製のスチレンアクリル系樹脂エマルジョンである。
また、KM−72Fは信越化学工業社製の消泡剤である。
【0026】
上記表1の結果から分かるように、動的表面張力が36mN/m以下である実施例のインクは保存試験、画像濃度共に良好であった。これに対し、動的表面張力が36mN/mより大きい比較例のインクは画像濃度が低かった。
特にアルコールアルコキシレート系界面活性剤の添加量が0.5重量%以下の比較例1、2、4では、画像濃度がCであった。
更に、比較例3、4では保存試験の結果もよくなかった。
【符号の説明】
【0027】
240 インクカートリッジ
241 インク袋
242 インク注入口
243 インク排出口
244 カートリッジ外装
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】特開2009−161726号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも顔料、アルコールアルコキシレート系界面活性剤、水溶性有機溶剤及び水を含有し、前記顔料が下記一般式(1)で表される分散剤で分散されており、最大泡圧法で測定した、25℃における泡寿命が15msecの場合の動的表面張力が36mN/m以下であることを特徴とするインクジェット記録用インク。
【化2】

(上記式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、アリル基、又は炭素数1〜8のアラルキル基を表す。Lは0〜7の整数、nは20〜80の整数を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載の記録用インクに刺激を印加し、該記録用インクを飛翔させて画像を形成することを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項3】
請求項1に記載の記録用インクを容器中に収容したことを特徴とするインクカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−36340(P2012−36340A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179762(P2010−179762)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】