説明

インクジェット記録用紙

【課題】インクジェット記録方式による印刷の際のコックリングを抑制すると共に、インク裏抜けやニジミおよび印刷ムラを抑制し、かつ、高白色度で表面強度の高い非塗工紙タイプのインクジェット記録用紙を提供する。
【解決手段】パルプおよび填料を含有する原料を抄紙してなる非塗工紙タイプのインクジェット記録用紙であって、パルプが機械パルプを含有し、前記機械パルプの含有量が全パルプ含有量の20〜60質量%であり、記録用紙中の灰分が10〜30質量%であり、記録用紙の白色度が80%以上であり、記録用紙がインク定着向上剤を含有し、アニオン要求量が記録用紙1g当り0.02meq以上のインクジェット記録用紙である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録適性の良好な非塗工紙タイプのインクジェット記録用紙に関するものである。さらに詳しくは、高速フルカラー記録が可能であり、コックリング、白色度、インク裏抜け、ニジミ、印刷ムラが良好であり、かつオフセット印刷にも耐えうる表面強度を備えた非塗工紙タイプのインクジェット記録用紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、種々の動作原理によりインクの微小液滴を飛翔させて紙等の記録シートに付着させ、画像・文字等の記録を行うものである。さらに、多色のインクジェット記録方式により形成される画像は、製版方式による多色印刷画像やカラー写真方式による画像と比較して、遜色のない画像を得ることが可能である。また、作成部数が少なくて済む用途において、インクジェット記録方式は製版方式やカラー写真方式よりもコストが安価であることから、インクジェット記録方式は広く応用されつつある。
【0003】
インクジェット記録方式に用いられる記録用紙としては、通常の印刷や筆記に用いられる上質紙やコーテッド紙を用いる。しかし、印刷の高速化・高精細化あるいはフルカラー化等インクジェット記録方式の性能の向上や用途の拡大に伴い、記録用紙に対してより高度な特性が要求されている。
【0004】
近年のインクジェット記録方式の高精細化に伴い、記録用紙へのインクの吐出量が増加傾向にある。インクジェット記録方式に用いられるインクの成分は、その大半が水であるため、インクジェット記録用紙は吸水性、吸湿性に富む性質を持つよう作製されている。しかし、吸水性、吸湿性に富む性質が原因となり、インクジェット記録用紙は湿度変化による寸法変動が大きく、寸法精度を要求される用途において、寸法変動は致命的な欠点であった。また、インクジェット記録方式の印刷では、インクの浸透に伴う記録用紙の伸縮によりコックリングが発生し、画質を著しく損なうばかりか、インクヘッドが記録用紙と接触し、インクヘッドが破損してしまうこともある。
【0005】
インクの浸透に伴う記録用紙のコックリングを解決するために、(1)記録用紙の物性値を規定した技術(例えば、特許文献1、2参照)、(2)記録用紙を硬化させるかまたはフィルムや合成繊維との複合材料とする技術(例えば、特許文献3、4、5参照)、(3)記録用紙のパルプ繊維間結合を阻害する薬品を用いて、コックリングの発生自体を抑制する技術(例えば、特許文献6、7、8参照)が挙げられる。さらに、(4)繊維間結合を形成しにくい機械パルプを用いて、コックリングの発生自体を抑制する技術(例えば、特許文献9参照)が挙げられる。
【0006】
しかしながら、上記(1)の技術の場合、物性値を規定するための具体的な生産管理が困難である。上記(2)の技術の場合、古紙にした時のリサイクルが困難になる。また、上記(3)の技術の場合、記録用紙の表面強度が著しく低下する欠点がある。さらに、(4)の技術の場合、記録用紙の表面強度や記録用紙の白色度が低下する欠点がある。
【0007】
最近では、インクジェット記録方式によりフルカラー画像を印刷する商業印刷用途が増えている。商業印刷用途では、時間当りの生産コストを重視するために、より高速でインクジェット記録を行うため、記録用紙にはより速いインク吸収性が要望される。
【0008】
このような用途に適合するべく、インク吸収性を速くした記録用紙がある(例えば、特許文献10、11参照)。しかしながら、これらの記録用紙はインク吸収性が十分ではない。また、インク吸収性を速くするために、単に記録用紙のサイズ性を下げてしまうと、インクが記録用紙の厚さ方向に深く浸透してしまい、インク裏抜けが発生する。裏抜けが発生すると、両面記録の用途には使用できなくなる。さらに、インクが記録用紙の面方向にも広がり、ニジミや、混色部での印刷ムラが発生し、画質を著しく損なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−143796号公報
【特許文献2】特開2005−280010号公報
【特許文献3】特開平8−169174号公報
【特許文献4】特開平8−258408号公報
【特許文献5】特開2000−263927号公報
【特許文献6】特開2002−103791号公報
【特許文献7】特開2002−219858号公報
【特許文献8】特開2004−66492号公報
【特許文献9】特開2007−10930号公報
【特許文献10】特許第3048580号公報
【特許文献11】特許第3720075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、インクジェット記録方式による印刷の際のコックリングを抑制すると共に、インク裏抜けやニジミおよび印刷ムラを抑制し、かつ、高白色度で表面強度の高い非塗工紙タイプのインクジェット記録用紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、鋭意検討した結果、(1)パルプの特定の含有量を機械パルプとし、(2)インクジェット記録用紙中の灰分を特定の範囲とし、(3)インクジェット記録用紙の白色度を特定の範囲とし、(4)インク定着向上剤を含有し、(5)インクジェット記録用紙を特定の範囲のアニオン要求量とすることにより、本発明の上記の課題を解決するに至った。
【0012】
即ち、本発明の課題は、パルプおよび填料を含有する原料を抄紙してなる非塗工紙タイプのインクジェット記録用紙であって、パルプが機械パルプを含有し、前記機械パルプの含有量が全パルプ含有量の20〜60質量%であり、インクジェット記録用紙中の灰分が10〜30質量%であり、記録用紙の白色度が80%以上であり、インクジェット記録用紙がインク定着向上剤を含有し、アニオン要求量がインクジェット記録用紙1g当り0.02meq以上であることを特徴とするインクジェット記録用紙によって達成された。
【0013】
また好ましくは、機械パルプの白色度が75%以上である。
【0014】
また好ましくは、インクジェット記録用紙がカチオン性ポリアクリルアミドを含有する。
【0015】
また好ましくは、インクジェット記録用紙がインク定着向上剤をフィルムトランスファーコーターで塗布して含有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、インクジェット記録方式による印刷の際のコックリングやニジミおよび印刷ムラが抑制され、高白色度であり、かつ、インク裏抜けが抑制され、両面印刷品質にも優れ、さらに、オフセット印刷に耐えうる表面強度を備えた非塗工紙タイプのインクジェット記録用紙を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のインクジェット記録用紙について、詳細に説明する。
【0018】
本発明のインクジェット記録用紙は、パルプおよび填料を含有する原料を抄紙してなる。パルプとして機械パルプを含有する。機械パルプとしては、砕木パルプ(GP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、晒ケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)を挙げることができる。
【0019】
本発明は、機械パルプ以外のパルプとして、従来公知の木材パルプを用いることができ、例えば広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒サルファイトパルプ(LBSP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)等の化学パルプや、古紙パルプ(DIP)を挙げることができる。また、バガス、ケナフ、竹、麻、コットン、楮、三椏、雁皮等の非木材パルプも用いることができる。
【0020】
本発明のインクジェット記録用紙が含有する機械パルプの含有量はJIS−P8120に規定された方法を用いて測定する。本発明のインクジェット記録用紙が含有する機械パルプの含有量は全パルプ含有量の20〜60質量%である。さらに好ましくは30〜50質量%である。前記範囲とすることで、コックリングの抑制効果と表面強度のバランスが良好となる。
【0021】
本発明のインクジェット記録用紙中の灰分はJIS−P8251に規定された方法を用いて測定する。本発明のインクジェット記録用紙中の灰分は10〜30質量%である。記録用紙中の灰分が10質量%未満の場合は、インク裏抜け抑制の効果が小さい。記録用紙中の灰分は、多い方がインク裏抜けを抑制するために好ましい。しかし、灰分の増加に伴い記録用紙の表面強度が低下する。記録用紙中の灰分が30質量%を超える場合にはオフセット印刷の際に、紙ムケ、粉落ち等のトラブルを招くことがある。
【0022】
本発明のインクジェット記録用紙に用いる填料は、従来公知の白色顔料が用いられ、単独あるいは併用できる。白色顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、アルミナ、リトポン、ゼオライト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムのような白色無機顔料を挙げることができる。さらに、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂のような白色有機顔料を挙げることができる。
【0023】
本発明のインクジェット記録用紙の白色度は80%以上である。インクジェット記録用紙の白色度を80%以上に調整することは、パルプを晒処理すること、填料として例えば、二酸化チタンのような高白色度の白色顔料を用いること、または従来公知の蛍光増白剤を用いることによって、あるいはこれらを組み合わせることによって達成することができ、中でもパルプを晒処理することが好ましい。
【0024】
本発明のインクジェット記録用紙が含有する機械パルプの白色度は、75%以上であることが好ましい。機械パルプの白色度を75%以上とするには、機械パルプを晒処理することで達成できる。機械パルプの白色度を75%以上にすることによって、表面強度を低下させることなく記録用紙の白色度を高めることができる。
【0025】
本発明のインクジェット記録用紙は、インク定着向上剤を含む。本発明でいうインク定着向上剤は、水に溶解したとき解離してカチオン性を呈する1級〜3級アミンまたは4級アンモニウム塩であり、例えば、ジメチルアミン・エピブロモヒドリン重縮合物、ジメチルアミン・エピヨードヒドリン重縮合物、ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、ジエチルアミン・エピブロモヒドリン重縮合物、ジエチルアミン・エピヨードヒドリン重縮合物、ジエチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物等のアミン類とエピハロヒドリン類とを縮重合させてなるポリアミンエピハロヒドリン系樹脂、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン類、ポリビニルアミン共重合物、ジメチル・ジアリル・アンモニウムクロライド樹脂、ポリエチレンイミン4級アンモニウム塩誘導体を挙げることができる。好ましくは、ポリアミンエピハロヒドリン系樹脂およびポリビニルアミン共重合物であり、さらに好ましくは、ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物である。
【0026】
本発明のインクジェット記録用紙は、下記の測定法によるインクジェット記録用紙のアニオン要求量が、インクジェット記録用紙1g当り0.02meq以上である。好ましくは、アニオン要求量がインクジェット記録用紙1g当り0.02〜0.2meqである。アニオン要求量の調整は、主にインク定着向上剤の含有量を調整することで可能である。アニオン要求量がインクジェット記録用紙1g当り0.02meq未満の場合には、インクが厚さ方向へ深く浸透してしまいインク裏抜けが発生し、またインクが面方向へも広がりニジミおよび印刷ムラが発生することがある。一方、アニオン要求量がインクジェット記録用紙1g当り0.02meq以上の場合には、インク裏抜けやニジミおよび印刷ムラの発生が抑制される。しかし、アニオン要求量がインクジェット記録用紙1g当り0.2meqを超える場合には、その抑制作用が頭打ちとなり、インク定着向上剤の使用量が過剰となる分、コスト面で不利である。
【0027】
本発明にかかるインクジェット記録用紙1g当りのアニオン要求量測定法は、下記の通りである。インクジェット記録用紙を105℃のオーブン中で3時間乾燥させ、インクジェット記録用紙の乾燥前後の質量からインクジェット記録用紙の含水量を算出し、含水量を差し引いてインクジェット記録用紙を絶乾固形分1g秤量する。秤量されたインクジェット記録用紙を1/10000Nのポリビニル硫酸カリウム(PVSK)500mlに浸漬させ、5分間マグネティックスターラーを用いて攪拌する。その後、上澄みをメンブレンフィルター(孔径:0.47μm)を用いて濾過し、得られた濾液10mlをコロイド滴定装置PCD−03(ミューテック社製)を用いて1/10000Nのポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(Poly−DADMAC)を用いて滴定を行い、インクジェット記録用紙に消費されたPVSK量からインクジェット記録用紙1g当りのアニオン要求量を測定できる。
【0028】
本発明のインクジェット記録用紙は、機械パルプを含有し、機械パルプの含有量が全パルプ含有量の20〜60質量%であり、インクジェット記録用紙がインク定着向上剤を含有し、インクジェット記録用紙の灰分が10〜30質量%であり、インクジェット記録用紙の白色度が80%以上であり、インクジェット記録用紙1g当りのアニオン要求量が0.02meq以上である。インクジェット記録用紙がインク定着向上剤を含有していない、あるいはインクジェット記録用紙の機械パルプの含有量、灰分、アニオン要求量のいずれかが本発明の範囲を外れた場合、コックリングやニジミ、インク裏抜けおよび印刷ムラの抑制効果が得られない。
【0029】
本発明のインクジェット記録用紙は、紙力増強剤を含有することが好ましい。紙力増強剤としては、例えば、酸化澱粉、カチオン化澱粉、両性澱粉、アニオン性ポリアクリルアミド、カチオン性ポリアクリルアミド、両性ポリアクリルアミド、酸化グアーガム、カチオン化グアーガム、カルボキシルメチルセルロース等を挙げることができる。好ましくは、カチオン性のインク定着向上剤と相互作用しないカチオン性ポリアクリルアミドである。
【0030】
本発明のインクジェット記録用紙がインク定着向上剤を含有するとは、例えば、インク定着向上剤をサイズプレス、ゲートロールコーター、フィルムトランスファーコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター等を用いて塗布して含有することである。特に、インクジェット記録用紙が、抄紙機に設置されているサイズプレス、ゲートロールコーター、フィルムトランスファーコーターを用いてインク定着向上剤を塗布し、オンマシンでインク定着向上剤を含有することが、操業上の点からは好ましい。さらに好ましくは、インクジェット記録用紙が、フィルムトランスファーコーターを用いてインク定着向上剤を塗布して含有することである。これによって、インクジェット記録用紙の表面付近にインク定着向上剤を含有することができ、インク裏抜け、ニジミ、印刷ムラをより抑制できる。
【0031】
本発明のインクジェット記録用紙は、パルプおよび填料以外のその他の原料として、従来公知の薬剤を含有することができる。薬剤としては、例えば、顔料分散剤、増粘剤、サイズ剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤等を挙げることができる。
【0032】
本発明において、パルプおよび填料を含有する原料を抄紙する抄紙機として、従来公知の抄紙機を用いることができる。抄紙機としては、例えば、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、コンビネーション抄紙機、円網抄紙機、ヤンキー抄紙機等を挙げることができる。
【実施例】
【0033】
以下に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)
機械パルプとして、白色度75%、濾水度320mlcsfのBCTMPが45部、機械パルプ以外のパルプとして、濾水度320mlcsfのLBKPが55部からなるパルプスラリーに、填料として軽質炭酸カルシウム(商品名:TP−121、奥多摩工業社製)18部、両性澱粉(商品名:Cato3210、日本エヌエスシー社製)0.8部、硫酸バンド0.8部、アルキルケテンダイマー型サイズ剤(商品名:サイズパインK903、荒川化学工業社製)0.03部を添加して、長網抄紙機で抄紙し乾燥した。その後、インク定着向上剤としてジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物(商品名:ジェットフィックス5052、里田化工社製)および紙力増強剤としてカチオン性ポリアクリルアミド(商品名:HG5304、星光PMC社製)の混合液を、フィルムトランスファーコーターを用いて乾燥含有量でそれぞれ1.5g/mおよび1.0g/mとなるように塗布した。その後、マシンカレンダー処理をして坪量81.4g/m、密度0.75g/cmの実施例1のインクジェット記録用紙を作製した。この時、インクジェット記録用紙の灰分は10質量%、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の40質量%、アニオン要求量はインクジェット記録用紙1g当り0.15meqであった。
【0035】
(実施例2)
実施例1の軽質炭酸カルシウム配合部数を30部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例2のインクジェット記録用紙を作製した。この時、インクジェット記録用紙の灰分は20質量%、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の40質量%、アニオン要求量はインクジェット記録用紙1g当り0.15meqであった。
【0036】
(実施例3)
実施例1の軽質炭酸カルシウム配合部数を50部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例3のインクジェット記録用紙を作製した。この時、インクジェット記録用紙の灰分は30質量%、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の40質量%、アニオン要求量はインクジェット記録用紙1g当り0.16meqであった。
【0037】
(実施例4)
機械パルプとして、白色度80%、濾水度320mlcsfのBCTMPを用いた以外は、実施例2と同様にして、実施例4のインクジェット記録用紙を作製した。この時、インクジェット記録用紙の灰分は20質量%、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の40質量%、アニオン要求量はインクジェット記録用紙1g当り0.15meqであった。
【0038】
(実施例5)
機械パルプとして、白色度75%、濾水度320mlcsfのBCTMPを25部、機械パルプ以外のパルプとして、濾水度320mlcsfのLBKPを75部としてパルプスラリーを調製した以外は、実施例2と同様にして、実施例5のインクジェット記録用紙を作製した。この時、インクジェット記録用紙の灰分は20質量%、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の20質量%、アニオン要求量はインクジェット記録用紙1g当り0.14meqであった。
【0039】
(実施例6)
機械パルプとして、白色度75%、濾水度320mlcsfのBCTMPを65部、機械パルプ以外のパルプとして、濾水度320mlcsfのLBKPを35部としてパルプスラリーを調製した以外は、実施例2と同様にして、実施例6のインクジェット記録用紙を作製した。この時、インクジェット記録用紙の灰分は20質量%、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の60質量%、アニオン要求量はインクジェット記録用紙1g当り0.16meqであった。
【0040】
(実施例7)
インク定着向上剤の乾燥含有量を0.2g/mとなるようにフィルムトランスファーコーターを用いて塗布して含有した以外は、実施例2と同様にして、実施例7のインクジェット記録用紙を作製した。この時、インクジェット記録用紙の灰分は20質量%、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の40質量%、アニオン要求量はインクジェット記録用紙1g当り0.02meqであった。
【0041】
(実施例8)
インク定着向上剤の乾燥含有量を2.0g/mとなるようにフィルムトランスファーコーターを用いて塗布して含有した以外は、実施例2と同様にして、実施例8のインクジェット記録用紙を作製した。この時、インクジェット記録用紙の灰分は20質量%、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の40質量%、アニオン要求量はインクジェット記録用紙1g当り0.20meqであった。
【0042】
(実施例9)
インク定着向上剤の乾燥含有量を3.0g/mとなるようにフィルムトランスファーコーターを用いて塗布して含有した以外は、実施例2と同様にして、実施例9のインクジェット記録用紙を作製した。この時、インクジェット記録用紙の灰分は20質量%、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の40質量%、アニオン要求量はインクジェット記録用紙1g当り0.30meqであった。
【0043】
(実施例10)
インク定着向上剤としてポリビニルアミン共重合物(商品名:ハイマックスSC−700、ハイモ社製)を用いた以外は、実施例2と同様にして、実施例10のインクジェット記録用紙を作製した。この時、インクジェット記録用紙の灰分は20質量%、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の40質量%、アニオン要求量はインクジェット記録用紙1g当り0.18meqであった。
【0044】
(実施例11)
紙力増強剤として酸化澱粉(商品名:MS#3800、日本食品化工社製)を用いた以外は、実施例10と同様にして、実施例11のインクジェット記録用紙を作製した。この時、インクジェット記録用紙の灰分は20質量%、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の40質量%、アニオン要求量はインクジェット記録用紙1g当り0.12meqであった。
【0045】
(実施例12)
紙力増強剤としてカチオン化澱粉(商品名:CHARGEMASTER R462、Grain Processing Corporation社製(米国))を用いた以外は、実施例10と同様にして、実施例12のインクジェット記録用紙を作製した。この時、インクジェット記録用紙の灰分は20質量%、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の40質量%、アニオン要求量はインクジェット記録用紙1g当り0.17meqであった。
【0046】
(実施例13)
紙力増強剤を含有しないこと以外は、実施例2と同様にして、実施例13のインクジェット記録用紙を作製した。この時、インクジェット記録用紙の灰分は20質量%、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の40質量%、アニオン要求量はインクジェット記録用紙1g当り0.13meqであった。
【0047】
(実施例14)
紙力増強剤として酸化澱粉(商品名:MS#3800、日本食品化工社製)を用いた以外は、実施例2と同様にして、実施例14のインクジェット記録用紙を作製した。この時、インクジェット記録用紙の灰分は20質量%、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の40質量%、アニオン要求量はインクジェット記録用紙1g当り0.09meqであった。
【0048】
(実施例15)
紙力増強剤としてカチオン化澱粉(商品名:CHARGEMASTER R462、Grain Processing Corporation社製(米国))を用いた以外は、実施例2と同様にして、実施例15のインクジェット記録用紙を作製した。この時、インクジェット記録用紙の灰分は20質量%、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の40質量%、アニオン要求量はインクジェット記録用紙1g当り0.14meqであった。
【0049】
(実施例16)
インク定着向上剤および紙力増強剤を、ゲートロールコーターを用いて塗布して含有した以外は、実施例2と同様にして、実施例16のインクジェット記録用紙を作製した。この時、インクジェット記録用紙の灰分は20質量%、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の40質量%、アニオン要求量はインクジェット記録用紙1g当り0.15meqであった。
【0050】
(実施例17)
インク定着向上剤および紙力増強剤を、サイズプレスを用いて塗布して含有した以外は、実施例2と同様にして、実施例17のインクジェット記録用紙を作製した。この時、インクジェット記録用紙の灰分は20質量%、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の40質量%、アニオン要求量はインクジェット記録用紙1g当り0.15meqであった。
【0051】
(実施例18)
機械パルプとして、白色度60%、濾水度320mlcsfのCGPを用い、填料として、二酸化チタン(商品名:A−110、堺化学工業社製)を用い、二酸化チタンの配合部数を60部とした以外は、実施例2と同様にして、実施例18のインクジェット記録用紙を作製した。この時、インクジェット記録用紙の灰分は20質量%、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の40質量%、アニオン要求量はインクジェット記録用紙1g当り0.14meqであった。
【0052】
(比較例1)
パルプとして、濾水度320mlcsfのLBKPを100部としてパルプスラリーを調製した以外は、実施例2と同様にして、比較例1のインクジェット記録用紙を作製した。この時、インクジェット記録用紙の灰分は20質量%、アニオン要求量はインクジェット記録用紙1g当り0.12meqであった。
【0053】
(比較例2)
機械パルプとして、白色度75%、濾水度320mlcsfのBCTMPを15部、機械パルプ以外のパルプとして、濾水度320mlcsfのLBKPを85部としてパルプスラリーを調製した以外は、実施例2と同様にして、比較例2のインクジェット記録用紙を作製した。この時、インクジェット記録用紙の灰分は20質量%、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の10質量%、アニオン要求量はインクジェット記録用紙1g当り0.13meqであった。
【0054】
(比較例3)
機械パルプとして、白色度75%、濾水度320mlcsfのBCTMPを85部、濾水度320mlcsfのLBKPを15部としてパルプスラリーを調製した以外は、実施例2と同様にして、比較例3のインクジェット記録用紙を作製した。この時、インクジェット記録用紙の灰分は20質量%、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の80質量%、アニオン要求量はインクジェット記録用紙1g当り0.17meqであった。
【0055】
(比較例4)
インク定着向上剤および紙力増強剤を含有しないこと以外は、実施例2と同様にして、比較例4のインクジェット記録用紙を作製した。この時、インクジェット記録用紙の灰分は20質量%、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の40質量%、アニオン要求量はインクジェット記録用紙1g当り−0.02meqであった。
【0056】
(比較例5)
インク定着向上剤の乾燥含有量を0.1g/mとなるようにフィルムトランスファーを用いて塗布して含有した以外は、実施例2と同様にして、比較例5のインクジェット記録用紙を作製した。この時、インクジェット記録用紙の灰分は20質量%、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の40質量%、アニオン要求量はインクジェット記録用紙1g当り0.01meqであった。
【0057】
(比較例6)
実施例1の軽質炭酸カルシウム配合部数を8部とした以外は、実施例1と同様にして、比較例6のインクジェット記録用紙を作製した。この時、インクジェット記録用紙の灰分は5質量%、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の40質量%、アニオン要求量はインクジェット記録用紙1g当り0.14meqであった。
【0058】
(比較例7)
実施例1の軽質炭酸カルシウム配合部数を55部とした以外は、実施例1と同様にして、比較例7のインクジェット記録用紙を作製した。この時、インクジェット記録用紙の灰分は35質量%、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の40質量%、アニオン要求量はインクジェット記録用紙1g当り0.16meqであった。
【0059】
(比較例8)
インク定着向上剤を含有しないこと以外は、実施例2と同様にして、比較例8のインクジェット記録用紙を作製した。この時、インクジェット記録用紙の灰分は20質量%、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の40質量%、アニオン要求量はインクジェット記録用紙1g当り0meqであった。
【0060】
<コックリング>
インクジェット記録用紙をA4判に断裁した後、インクジェットプリンタPIXUS iP4100(キヤノン社製)を用いてブラック100%ベタ印刷パターン(幅150mm×長さ200mm)を印刷し、印刷1時間後のインクジェット記録用紙の波打ちを目視評価した。3以上の評価では、実用上問題ないレベルである。
5:コックリングが全くない。
4:コックリングがほとんどない
3:わずかにコックリングが発生している。
2:少しコックリングが生じている。
1:コックリングが多発している。
【0061】
<白色度>
JIS−P8148に規定された白色度測定方法を用いて、インクジェット記録用紙の白色度を測定した。
【0062】
<インク裏抜け>
インクジェット記録用紙をA4判に断裁した後、インクジェットプリンタPIXUS iP4100(キヤノン社製)を用いてブラック100%ベタ印刷パターン(幅100mm×長さ100mm)を印刷し、ブラック100%ベタ印刷部の反対面側から白色度の測定を行い、「印刷のない白色部の白色度(%)」−「ブラックベタ印刷部の白色度(%)」で、インクジェット記録用紙のインク裏抜けを評価した。白色度の測定は、日本電色社製PF−10を用いて、標準板の上にサンプルを一枚乗せ、UVカットの条件で行った。インク裏抜けは値の小さい方が良好である。3以上の評価では、実用上問題ないレベルである。
5:10%未満。
4:10%以上、13%未満。
3:13%以上、16%未満。
2:16%以上、19%未満。
1:19%以上。
【0063】
<ニジミ>
インクジェット記録用紙をA4判に断裁した後、インクジェットプリンタPIXUS iP4100(キヤノン社製)を用いてブラックの細線パターンを印刷し、細線のニジミの程度を目視により評価した。3以上の評価では、実用上問題ないレベルである。
5:ニジミが全くない。
4:ニジミがほとんどない。
3:わずかにニジミが発生している。
2:少しニジミが発生している。
1:ニジミが多発している。
【0064】
<印刷ムラ>
インクジェット記録用紙をA4判に断裁した後、インクジェットプリンタPIXUS iP4100(キヤノン社製)を用いてグリーン(マゼンタとシアンのそれぞれ100%)のベタ印刷パターン(幅100mm×長さ100mm)を印刷し、印刷部の印刷ムラの程度を目視により評価した。3以上の評価では、実用上問題ないレベルである。
5:印刷ムラがない。
4:印刷ムラがほとんどない。
3:わずかに印刷ムラが発生している。
2:少し印刷ムラが発生している。
1:印刷ムラが多発している。
【0065】
<表面強度>
RI印刷適性機を用いて墨色ベタ印刷を施した。印刷は以下の条件で行った。
インキ:IGT測定用インキ 墨 TV.20(DIC社製)
インキ量:1.0cc
印刷回転速度:80rpm
その後、印刷面のピッキングの程度を目視で判定した。3以上の評価では、実用上問題ないレベルである。
5:ピッキング全くなし。
4:ほとんどピッキングなし。
3:わずかにピッキングが見られる。
2:少しピッキングが見られる。
1:かなりピッキングが見られる。
【0066】
【表1】

【0067】
実施例1〜18の結果から、本発明のインクジェット記録用紙は、コックリング、インク裏抜け、ニジミおよび印刷ムラの抑制効果、および、高い白色度と表面強度を有することがわかる。一方、比較例1〜8の結果から、パルプ、インク定着向上剤、灰分、白色度、アニオン要求量のいずれかが本発明を満足しないインクジェット記録用紙は、コックリング、インク裏抜け、ニジミおよび印刷ムラの抑制効果、および、高い白色度と表面強度のいずれか、あるいは複数を有さないことがわかる。
【0068】
実施例2、18の結果から、機械パルプの白色度を75%以上にすることによって記録用紙の高い白色度が得られ、白色顔料によって高い白色度を得る場合よりも高い表面強度を有することがわかる。
【0069】
実施例2、13〜15および実施例10〜12の結果から、カチオン性ポリアクリルアミドを含有することで、より優れたインク裏抜けおよび印刷ムラの抑制効果、および、より高い表面強度を有することがわかる。
【0070】
実施例2、16〜17の結果から、フィルムトランスファーコーターを用いてインク定着向上剤を塗布して含有させることで、より優れたインク裏抜け抑制効果および高い表面強度を有することがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプおよび填料を含有する原料を抄紙してなる非塗工紙タイプのインクジェット記録用紙であって、パルプが機械パルプを含有し、前記機械パルプの含有量が全パルプ含有量の20〜60質量%であり、記録用紙中の灰分が10〜30質量%であり、記録用紙の白色度が80%以上であり、記録用紙がインク定着向上剤を含有し、アニオン要求量が記録用紙1g当り0.02meq以上であることを特徴とするインクジェット記録用紙。
【請求項2】
前記機械パルプの白色度が75%以上である請求項1に記載のインクジェット記録用紙。
【請求項3】
記録用紙が、カチオン性ポリアクリルアミドを含有する請求項1に記載のインクジェット記録用紙。
【請求項4】
記録用紙が、前記インク定着向上剤をフィルムトランスファーコーターで塗布して含有する請求項1に記載のインクジェット記録用紙。

【公開番号】特開2011−110702(P2011−110702A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265891(P2009−265891)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】