説明

インクジェット記録装置、および該インクジェット記録装置の吐出制御方法

【課題】吐出休止後の第一発目の吐出からインク滴を常に安定して吐出できるノズル構造および吐出制御方法を提供する。
【解決手段】吐出方向に関して穴径が変わらないノズル1の先端部分が拡径されるように、流路形成部材3の吐出口4が開口される面に対して凹状の窪みが液溜まり2として形成されている。液溜まり2を形成することで吐出口4周辺のインク溶質5の濃度が吐出口4中心よりも高くなる。この状態でノズル1より吐出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録装置に関し、特にインクジェット方式の吐出特性を改善するためのノズル構造や吐出制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、電気的な記録信号に基づいて記録ヘッドの各吐出口から微小な粒状のインク滴を吐出し、吐出口に対面して設けられた記録媒体にそのインク滴を着弾させることにより文字、図形などの記録を行うものである。
【0003】
このようなインクジェット方式の記録ヘッドのインク吐出機構は次のように構成されている。記録ヘッド内に設けられた、圧電素子または電気熱変換素子(以下「ヒータ」と称する)等の吐出圧発生素子は、電気エネルギーを力学的なエネルギーに変換してインクを吐出している。
【0004】
特にヒータの加熱によりインクを瞬時に沸騰させ、その時に発生する気泡の圧力を用いた方法、いわゆる熱インクジェット記録方法(特許文献1〜4参照)は、記録装置の小型化、記録ヘッドの高密度化が容易であるなどの特徴を持つことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−59911号公報
【特許文献2】特開昭61−59912号公報
【特許文献3】特開昭61−59913号公報
【特許文献4】特開昭61−59914号公報
【特許文献5】特開昭57−61576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インクジェット記録装置に用いられるインクは、水を溶媒とする染料、有機溶剤、界面活性剤等が添加された水性インクが現在の主流である。このような水性インクは時間の経過や温度によってインク中に含まれる水分などの揮発成分が蒸発する場合がある。特に非吐出時(記録を中断または中止している期間)において記録ヘッド内のインクの揮発成分が蒸発してしまうと吐出口近傍のインク粘度や溶剤組成、組成濃度が変化することになる。この結果、非吐出状態が数秒から数十秒続くだけで最初の1発目の吐出速度が数10%以上低下したり、インクによっては不吐出になったりする場合がある。この現象はノズルの吐出口径が小さくなるほど起こりやすい。
【0007】
写真画像などではより高品質な画像が要求されるため、近年、吐出されるインク滴を微小化する傾向にあり、上述の弊害が、形成される画像に影響を与えることになりがちである。
【0008】
また、インクに耐水染料が使用されたり、インク中に顔料分散剤や混色防止や対光性を高めるための数々の添加剤が加えられたりすると非吐出時のインクの状態が悪化しやすくなる傾向にあり、上述の弊害も発生しやすくなる場合がある。
【0009】
このような弊害を防止するために従来から主として次の2つのような方法が実行されている。
【0010】
第一の方法として、記録前や記録途中に、記録ヘッドをいったん記録領域以外の所定位置に移動させて吐出口より一定量のインク滴を吐出する、いわゆる予備吐出である。この方法によって、吐出前に変質したインクを捨て、バルク部分のインクで吐出口内を満たすことが可能となる。なお、ここでいう「バルク」とは、液体の表面に対して、液体の奥深い所を指す。
【0011】
第二の方法として特許文献5に記載された方法が挙げられる。この方法は非吐出時にインク滴が吐出しない程度の低い駆動電圧で圧電振動子を振動させることにより吐出口内のインクを攪拌し吐出口内の変質したインクとバルク部分のインクを入れ替えることで上記の弊害を回避するものである。
【0012】
しかし、このような解決手段には次のような問題点が存在する。
【0013】
第一の方法では記録動作中に行う予備吐出のために単位時間あたりの記録媒体への記録枚数、すなわちスループットが下がり、その上インク消費量が増えると同時に廃インク量も増える。また、第二の方法では、吐出圧発生素子がヒータからなる熱インクジェット記録方法の記録ヘッドに対してはインクを攪拌するためにだけに圧電素子を設けるのはコストアップにつながり有効ではない。
【0014】
このような従来技術の問題に鑑み、本発明の目的は非吐出時間の存在に起因する吐出不良現象の原因を解析し、吐出休止後の第一発目の吐出からインク滴を常に安定して吐出できるようなノズル形態や吐出制御方法を与えるものである。なお、ノズルとは、吐出圧発生素子が配置された室からインク吐出口までを連通する部分をいう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の態様の一つは、記録媒体にインク滴を吐出する吐出口を有するインクジェット記録装置の吐出制御方法に係るものである。この方法では、上記目的を達成するために、インク吐出時に吐出口内のインク界面が盛り上がって形成されるインク液柱の側面において表面張力勾配が発生しないように制御しながら、吐出口からインク滴を吐出する。
【0016】
また本発明の他の態様は、記録媒体にインク滴を吐出する吐出口を有するインクジェット記録装置に係るものである。この記録装置では、インク吐出時に吐出口内のインク界面が盛り上がって形成されるインク液柱の側面において吐出方向に表面張力勾配が発生しないように制御する制御手段を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、吐出休止後の第一発目の吐出からインク滴を常に安定して吐出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一の実施例を説明するための図。
【図2】本発明の第二の実施例を説明するための図。
【図3】本発明の第三の実施例を説明するための図。
【図4】インクジェット記録装置のノズルからの吐出を一定時間休止した後、一発目の液滴を吐出したときの速度変化を、休止時間に応じて示した図。
【図5】連続吐出後に一定時間休止してからノズルより液滴を吐出する過程を説明する図。
【図6】インクの粘度増加による吐出速度低下を説明する図。
【図7】吐出液柱の側面に生じたインク溶質濃度勾配に応じて表面張力勾配を発生させることを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について図面を参照しながら具体的に説明する。
【0020】
まず、本発明を想起するに至った経緯を説明する。本願発明の原理説明でもある。
【0021】
インクジェット記録装置のインク吐出用のノズルから連続吐出し、一定時間休止した後、一発目の液滴を吐出したときの速度変化を図4に示す。このインクジェット記録装置(インクジェットヘッドと呼ぶ。)は、吐出圧発生素子が形成配設された主面を持つ基板と、この基板の主面に接合された流路形成部材とを備える。流路形成部材には、基板の主面の吐出圧発生素子を収容する圧力室と、液体が直接供給される圧力室と、液室と圧力室を接続する流路と、圧力室から吐出口までを連通するノズルとが形成されている。吐出口の開口方向は紙などの記録媒体に向けられることになる。吐出圧発生素子は、パルス電圧が印加されることで、吐出口からインク滴を吐出させる吐出圧を発生する。
【0022】
こうした装置構成でノズル径をφ30μm、吐出時のパルス電圧の印加時間を2μ秒とし、このパルス電圧を印加した時点から50マイクロ秒後の液滴位置をストロボ写真撮影したものから、図4に示す吐出速度を求めた。この図によれば、吐出動作の休止時間が数秒以上経った時点から液滴の吐出速度は低下している。液滴吐出速度の低下量は、最終的には、連続吐出速度の半分から、インクによっては2割程度まで低下する。連続吐出時の吐出速度は10m/秒程度であるので速度低下量は5m/秒以上に達する。
【0023】
上記の観察結果を元に、連続吐出後に一定時間休止してからノズルより液滴を吐出するプロセスは図5のように考えられる。
【0024】
すなわち、連続吐出直後のノズル1内はインクで満たされており、吐出口付近はバルク部分のインク組成に近いと考えられる(図5(a))。
【0025】
その後、休止時間中にノズル1からの溶媒(水)の蒸発による移流や、界面活性剤・添加剤などの拡散によって、吐出口付近(該吐出口4の中に満たされたインクと前記吐出口の外の空気との界面)にインク溶質5が濃集する(図5(b))。
【0026】
この状態から吐出を開始すると、まず、吐出口内のインク界面が盛り上がって、ノズル先端部から、吐出圧力に対応した一定高さの液柱6が吐出される(図5(c))。液柱の体積は圧電素子を用いたノズルでは圧電体の体積変化量、発熱体を用いたノズルでは発生した泡体積にそれぞれ対応する。
【0027】
その後、吐出した液柱6が伸び始め(図5(d))、液柱6の根元付近6aが吐出口内の液体から分離(図5(e))する。そして、尾の部分6bが液柱の先端部6aに吸収されながら液滴となって飛翔していく。近似的には、最初に吐出した液柱がその体積を保存したまま細長く伸び、吐出口の液体から切れて液滴になると考えられる。
【0028】
休止時間を変化させながら観察した結果、連続吐出時の液滴の速度に対して、休止後の第一発目の液滴速度が減少するのは、主として、インク吐出時の液柱が伸びるときに働く抵抗力が、休止時間が増加するほど大きくなる結果である、と推定された。
【0029】
本発明ではこの抵抗力として2つの要因、(1)粘度の増加によって液柱の伸びに抵抗する力と、(2)吐出液柱側面の表面張力の勾配に起因するMarangoni圧(マランゴニ圧)、を考え、その大きさを見積もった。
【0030】
(1)粘度増加による速度低下
この大きさの見積もりは文献( J.f.Dijkstan,“Hydrodynamics of small tubular pumps", J.Fluid Mech. (1984),vol.139,pp173-191)に述べられている。図6に示すように、最初の液柱の体積が保存されるように半径が小さくなりつつ液柱が伸びるとする。初期の液柱長さをL、液柱半径をr、インクの密度をρ、粘度をμとする。ここでは休止時間の存在によりノズル内のインク全体の粘度が上昇すると考える。上記の文献より速度低下量Δvは液柱先端速度vと液柱の平均速度vaveの差に比例すると考えられ、液柱の体積一定条件を課すると、
【0031】
【数1】

と近似的に表される。
【0032】
バルクインクの粘度をμ1、休止時間中に増粘したインクの粘度をμ2とすると、連続吐出速度に対する速度低下量は、
【0033】
【数2】

となる。
【0034】
吐出速度を求めるために行った液柱の形態観察から、液柱の初期高さLは50μmと求められる。連続吐出時のインクがほぼ水と同じであるとすると、密度ρは1g/cm3、粘度μ1は1cPとなる。このインクが休止時間中に増粘により粘度μ2が10cPになったとしたときの速度低下量は(2)式より
【0035】
【数3】

となる。
【0036】
実測される速度低下量は5〜10m/sであるから、粘度が10倍になったとしても増粘効果だけでは速度低下の理由を説明できない。実測値と合わせるためには休止時に粘度が100倍程度まで増加するとしなければならない。
【0037】
(2)Marangoni圧による速度低下
連続吐出時では、ノズル内には、インク溶質が均一な状態であるインクが満たされているため、吐出口における空気とインクの界面の表面張力はほぼ水(72mN/m)に近いと考えられる。
【0038】
休止時には、インクに含まれる溶媒(水)の蒸発による移流や拡散によって吐出口近傍にインク溶質(界面活性剤や添加材など)が濃集し始め、空気とインクの界面でのインク溶質の密度が次第に増加する。その結果、その界面は、水の表面張力(72mN/m)の状態からインクの表面張力(30〜35mN/m)の状態へと変化していくものと考えられる。
【0039】
この変化は数秒から数10秒の時間範囲で起き、界面が平衡濃度に達すると表面張力は一定値を保つと思われる。この状態で吐出圧発生素子にパルス電圧を印加して形成された長さL、半径rの液柱を考える(図7参照)。その液柱の先端部は、休止時に形成された界面がそのまま持ち上がって、インク溶質が濃集して表面張力が低下していると考えられる。これに対して液柱の根元部分はバルク部分のインク組成から成るためその表面張力は水の表面張力に近い。したがって、液柱の側面において表面張力勾配が吐出方向に沿って発生する。つまり、溶質に起因する液柱側面の表面張力は液柱の先端から根元側に行くほど大きくなる。
【0040】
Marangoni圧とは表面張力の勾配が存在するときにそれを解消するために表面張力の小さい領域から大きい領域へ流れを生み出そうとする圧力をいい、
【0041】
【数4】

で定義される。ここでγは表面張力、Γは溶質の界面濃度、∇sは界面方向での空間微分を示す。
【0042】
表面張力と界面濃度は以下のような状態方程式で表される依存関係にある。
【0043】
【数5】

ここでRはガス定数、Tはインク温度、γ0は純水の表面張力、Γ∞は界面濃度の上限値である。(5)式から分かるように溶質が界面に集まるほど表面張力が低下する。
【0044】
図7に示された液柱に対して、(4)式で与えられるMarangoni圧による力Fは以下のように表される(ただし吐出方向をZ軸とした)。
【0045】
【数6】

ここで、γ(L)およびγ(0)はそれぞれ液柱先端部および液柱根元部での表面張力を表す。この力は液柱が伸びようとするのに対して反対向きの抵抗力となる。この力が時間Δt働いたとき、連続吐出時の速度からの減少量Δvは
【0046】
【数7】

と与えられる。
【0047】
液滴の吐出速度は吐出時のパルス電圧印加から50μ秒後の液滴の位置から求めるため、Δtを50μ秒、液柱の長さLを50μm、液柱の半径rを10μmとし、表面張力としてγ(L)=35mN/m、γ(0)=72mN/mとしたとき
【0048】
【数8】

となる。
【0049】
実測される速度低下量は5〜10m/sであるから(8)式の値はほぼ対応することが分かる。
【0050】
上記2つのモデル(増粘効果と表面張力勾配)を用いて連続吐出時に対する速度低下量を見積もった結果、液柱側面の溶質の濃度勾配に起因するMarangoni圧が抵抗力の最も大きな要因であることが分かった。従来考えられていた粘度の増加による速度低下モデルでは休止時に100倍粘度が増加することを考えなければならず、現実的ではないことが分かった。
【0051】
以上の解析結果から休止時間後、最初の1発目の吐出不良を改善するには吐出液柱側面の表面張力勾配を解消するようなノズル構造や吐出制御方法を考えれば良い。以下に、その実施例を示す。
【0052】
[実施例1]
液柱側面に生じたインク溶質の濃度分布を均一にするためには吐出前の吐出口内におけるインク界面上のインク溶質に濃度分布をつけ、吐出時の不均一を補償する必要がある。図1はその方策としての第一の実施例のノズル構造を示す。図1に示すように、ノズル1の先端の周辺に液溜まり2が設けられている。具体的には、吐出方向に関して穴径が変わらないノズル1の先端部分が拡径されるように、流路形成部材3の吐出口4が開口される面に対して凹状の窪みが液溜まり2として形成されている。
【0053】
本実施例のノズル構造によれば、吐出休止時にインク溶媒の蒸発による流れや拡散によってノズル先端(吐出口の中のインクと吐出口の外の空気との界面)側に集まったインク溶質5は、液溜まり2に滞留する。そのため、図1(a)に示すように吐出口4周辺のインク溶質5の濃度が吐出口4の中心部よりも高くなる。この吐出休止状態から吐出を行ってインク液柱6がノズルより吐出される際、インク液柱6の側面に液溜まり2からインク溶質5が供給される。その結果、図1(b)に示すようにインク液柱6の側面の溶質濃度が均一になり、液柱側面の表面張力勾配が発生しない。
【0054】
ノズル1の径がφ30μmの場合、液溜まり2としてはφ40〜50μm径、深さ5〜10μm程度が望ましい。更に、液溜まりの形状は上記に限るものではなく、ノズル先端付近の穴の内側面を掘り込んで溝を形成してもよい。
【0055】
[実施例2]
インク溶質がイオン性を持つ場合、電界を利用して吐出口での休止時のインク溶質分布を制御することが可能である。図2はその方策としての第二の実施例のノズル構造を示す。図2に示すように、ノズル1を取り囲むリング状電極7が、吐出口を開口するノズル先端の周辺に設けられている。リング状電極7と吐出圧発生用ヒータの電極8との間に電圧を印加すると、ノズル先端周辺部にインク溶質を引き付けることができ、実施例1と同様な効果を得ることができる。
【0056】
[実施例3]
水の表面張力γは(9)式に示されるように温度を上げると減少することが知られている(thermocapillary効果)。
【0057】
【数9】

ここで、γ0は温度T0における表面張力であり、T0は環境温度であり室温をとることが多い。βは水の場合、負である。本実施例はこの効果を用いて吐出液柱側面の表面張力勾配を解消する方法を示す。図3はこの方法を行う第三の実施例のノズル構造を示す。図3(a)(b)に示すように、ノズル1を取り囲むリング状ヒータ9が、吐出口を開口するノズル先端の内周面に設けられている。
【0058】
休止時にはリング状ヒータ9は通電されておらず、図3(a)に示すようにインク溶質は吐出口のインクと空気の界面に一様に濃集する。吐出圧発生用ヒータにパルス電圧を入力するタイミングと同期させてリング状ヒータ9にパルス電流iを流し、ノズル1内のインクの側面を加熱する。このとき、ノズル穴側面でインクが発泡しない程度の電流をリング状ヒータ9に流す。
【0059】
図3(b)は吐出液柱の様子および、液柱の吐出方向長さと温度分布を模式的に示したものである。インク溶質はインク液柱6の先端部に濃集しているため、溶質に起因する液柱側面の表面張力は液柱の先端から根元側に行くほど大きくなる。一方、液柱側面の表面温度(表面温度上昇部分10の温度)が液柱の先端から根元側に行くほど高くなるようなタイミングで、吐出圧発生用ヒータへのパルス電圧とリング状ヒータ9へのパルス電流iとを同期させている。この事によって、溶質に起因する液柱側面の表面張力が液柱の先端から根元側に行くほど大きくなるのとは反対に、温度勾配に起因する液柱側面の表面張力は液柱の先端から根元側に行くほど小さくなる。つまり、溶質分布に起因する液柱側面の表面張力勾配が、温度分布に起因する液柱側面の表面張力勾配によって小さく低減される。
【0060】
このように、吐出時のインク液柱の側面に吐出方向に生じる表面張力勾配であって溶質分布と温度分布に起因する2つの表面張力勾配は互いに反対傾向にあるため、インク液柱の側面は吐出方向に沿って略一定の表面張力を持つことになる。そのため、液柱にはMarangoni圧がかからず、吐出速度の低下を防止することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 ノズル
2 液溜まり
3 流路形成部材
4 吐出口
5 インク溶質
6 インク液柱
7 リング状電極
8 吐出圧発生用ヒータの電極
9 リング状ヒータ
10 液柱側面の表面温度上昇部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体にインク滴を吐出する吐出口を有するインクジェット記録装置の吐出制御方法であって、
インク吐出時に吐出口内のインク界面が盛り上がって形成されるインク液柱の側面において吐出方向に表面張力勾配が発生しないように制御しながら、前記吐出口からインク滴を吐出することを特徴とする吐出制御方法。
【請求項2】
前記吐出口の中に満たされたインクと前記吐出口の外の空気との界面において吐出休止時に濃集するインク溶質の濃度が前記吐出口の中心部より前記吐出口の周辺部の方が高くなるようにしておき、その後、前記吐出口からインク滴を吐出することを特徴とする請求項1に記載の吐出制御方法。
【請求項3】
前記吐出口の中に満たされたインクと前記吐出口の外の空気との界面にインク溶質が濃集している吐出休止状態から前記吐出口よりインク滴を吐出するときに形成されるインク液柱の側面において吐出方向に沿って発生する表面張力勾配を、インク吐出時に該インク液柱の側面を加熱することで該側面に吐出方向に沿って発生する温度勾配に起因する表面張力勾配で低減しながら、前記吐出口からインク滴を吐出することを特徴とする請求項1に記載の吐出制御方法。
【請求項4】
記録媒体にインク滴を吐出する吐出口を有するインクジェット記録装置であって、
インク吐出時に吐出口内のインク界面が盛り上がって形成されるインク液柱の側面において吐出方向に表面張力勾配が発生しないように制御する制御手段を備えた、インクジェット記録装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記吐出口の中に満たされたインクと前記吐出口の外の空気との界面にて吐出休止時に濃集するインク溶質の濃度が前記吐出口の中心部より前記吐出口の周辺部の方が高くなるように制御することを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
請求項5に記載のインクジェット記録装置において、
前記制御手段は、前記吐出口の周辺に形成された液溜まりを含むことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項7】
請求項5に記載のインクジェット記録装置において、
前記制御手段は、前記吐出口の周辺に形成された電極であって、電圧が印加されて前記インク溶質を引き付ける電極を含むことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項8】
請求項4に記載のインクジェット記録装置において、
前記制御手段は、前記吐出口の中に満たされたインクと前記吐出口の外の空気との界面にインク溶質が濃集している吐出休止状態から前記吐出口よりインク滴を吐出するときに形成されるインク液柱の側面において吐出方向に沿って発生する表面張力勾配を、インク吐出時に、該インク液柱の側面を加熱することで該側面に吐出方向に沿って発生した温度勾配に起因する表面張力勾配で低減することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項9】
請求項8に記載のインクジェット記録装置において、
パルス電圧が印加されることで、前記吐出口から前記インク滴を吐出させる吐出圧を発生する吐出圧発生素子を有し、
前記制御手段は、
前記吐出口の周辺に設けられたヒータと、
前記吐出圧発生素子に印加する前記パルス電圧と同期して前記ヒータにパルス電圧を印加するヒータ駆動手段と、
を含むことを特徴とする、インクジェット記録装置。

【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−37123(P2011−37123A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186370(P2009−186370)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】