説明

インクジェット記録装置、インクジェット画像形成方法及びインクジェットインク

【課題】シリコーン撥水膜を有するノズルを備えるインク吐出用ヘッドの撥水性低下を防止し、長期に亘り、吐出安定性に優れ、高濃度の画像を形成できるインクジェット記録装置、及びインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】インク吐出用ヘッドは、インクが接する面にシリコーン撥水膜を有するノズルを備え、インクは、少なくとも、着色剤、水及び水溶性有機溶媒を含み、着色剤は、樹脂で部分被覆されたカーボンブラックを含み、かつ、樹脂で部分被覆されたカーボンブラックの着色剤に対する割合をR(質量%)、個数カウント法で計測したインクの粒度分布において粒子径が0.5μm以上の粗大粒子の数をN(個/5μL)としたとき、下記の(1)式、及び、(2)式を満たすことを特徴とするインクジェット記録装置。1.0×10<N×R/100<1.0×10(1)20.0<R≦100.0(2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置、インクジェット画像形成方法及びインクジェットインクに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、微細なノズルヘッドからインク液滴を吐出して、文字や図形を紙などの記録媒体の表面に記録する方法である。
インクジェット記録方法としては、電歪素子を用いて電気信号を機械信号に変換し、ノズルヘッド部分に貯えたインク液滴を断続的に吐出して記録媒体表面に文字や記号を記録する方法や、あるいはノズルヘッドの吐出口付近でインク液の一部を急速に加熱して泡を発生させ、その泡による体積膨張でインク液滴を断続的に吐出して、記録媒体表面に文字や記号を記録する方法などが知られている。
【0003】
インクジェット記録用インクとしては、水溶性染料を用いたインクや、顔料を水中に分散させた水系顔料インクが知られており、近年では耐水性や耐光性に優れる水性顔料インクが用いられることが多くなっている。
【0004】
前記水系顔料インクとしては、界面活性剤や高分子分散剤等の分散剤により、顔料を水性分散媒中に分散するものや、顔料表面を酸化反応等により親水化処理して分散するものが知られている。
【0005】
前記顔料を界面活性剤、高分子分散剤等の分散剤により分散させたインクは、分散剤が顔料粒子表面に付着(吸着)しているだけであるため、インク液がノズルヘッドの細いノズルを通って吐出される際に強い剪断力が加わると、顔料粒子表面に付着(吸着)していた分散剤が離脱して分散性が低下し、吐出が不安定になることがある。
また、分散剤の残存物がインク中に残り、分散剤が十分に分散に寄与せず顔料から脱離して粘度が高くなることがあり、保存安定性が充分でない。
【0006】
また、顔料表面を親水化処理して分散するものは、保存安定性は良好であるが、前記インクを用いて形成された画像は、定着性が充分でなく、耐擦過性や蛍光マーカーペンによる耐マーカー性は十分でない。
【0007】
顔料系インクジェットインクに含まれる顔料の記録媒体に対する定着性、及び分散安定性(保存安定性)を向上させる目的で、着色剤粒子がポリマーで被覆されたマイクロカプセル化顔料を使用したインクが知られている。
しかし、マイクロカプセル化顔料を用いたインクジェットインクは、顔料を樹脂で被覆するため、画像濃度が低下し、印字濃度の高い記録物を得ることが困難である。
【0008】
一方、インクジェット記録装置のインク吐出用ヘッドは、インク液滴を安定に吐出させるため、撥水膜が形成されており、該撥水膜が削られると撥水性が失われて、ノズルの吐出口近辺にインクが付着及び残存し易くなって、インクの吐出安定性が低下することがある。
【0009】
特許文献1の特開2004−59913号公報には、保存安定性、吐出安定性を確保する目的で、粗大粒子の数を一定の数以下にしたインクが開示されている。
しかし、インク吐出用ヘッドは、ヘッドに付着したインクをゴムブレード等によってワイピングするメンテナンスが必要であり、ノズルに付着したインクをゴムブレード等でワイピングすることで、ノズルの撥水膜が削られ、撥水性が失われることがあり、撥水性低下による吐出安定性の低下は解消できていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、シリコーン撥水膜を有するノズルを備えるインク吐出用ヘッドの撥水性低下を防止し、長期に亘り、吐出安定性に優れ、高濃度の画像を形成できるインクジェット記録装置、及びインクジェット記録方法を提供することを目的とする。
また、前記インクジェット記録装置、及びインクジェット記録方法に用いられる保存安定性・吐出安定性に優れ、高濃度の画像を形成できるインクジェットインクの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らが鋭意検討した結果、樹脂被覆顔料を用いたインクにおいて、被覆樹脂の含有量が少なく、かつ、大粒径で遮蔽効果の高い顔料を用いると、印字濃度は高くできるが、被覆樹脂の含有量を少なくした顔料は、樹脂による被覆が不十分となり、硬いカーボンブラックが露出し、ワイピング等の際、ノズルの撥水膜を削り、撥水性を低下させる新たな問題が生じることを見出した。
そして、撥水性低下防止について検討したところ、着色剤中の部分被覆されたカーボンブラックの割合及びインク中の0.5μm以上の粗大粒子の数を一定範囲にすることにより、ノズルの撥水性を低下させることなく、保存安定性に優れ、高濃度の画像を形成できることを見出した。
【0012】
上記課題は、本発明の下記(1)〜(7)によって解決される。
(1)「少なくとも、インクと該インクを吐出するインク吐出用ヘッドとを有するインクジェット記録装置であって、
前記インク吐出用ヘッドは、インクが接する面にシリコーン撥水膜を有するノズルを備え、
前記インクは、少なくとも、着色剤、水及び水溶性有機溶媒を含み、
前記着色剤は、樹脂で部分被覆されたカーボンブラックを含み、かつ、前記樹脂で部分被覆されたカーボンブラックの前記着色剤に対する割合をR(質量%)、個数カウント法で計測したインクの粒度分布において粒子径が0.5μm以上の粗大粒子の数をN(個/5μL)としたとき、下記の(1)式、及び、(2)式を満たすことを特徴とするインクジェット記録装置;

1.0×10<N×R/100<1.0×10 (1)
20.0<R≦100.0 (2)」、

(2)「樹脂で部分被覆されたカーボンブラックにおける前記樹脂の含有量が、1質量%以上40質量%以下であることを特徴とする前記第(1)項に記載のインクジェット記録装置」、
(3)「インクが、0.01質量%以上5質量%以下の下記一般式(1)で表されるポリエーテル変性シリコーン化合物を、さらに含むことを特徴とする前記第(1)項または第(2)項に記載のインクジェット記録装置;
【0013】
【化1】


(但し、一般式(1)中、l,m,n,p,qは自然数を表し、l+m+n<2000,p+q<100を満たす。)」、
(4)「個数カウント法で計測したインクの粒度分布において粒子径が1.0μm以上の粗大粒子の数が、1.0×10(個/5μL)未満であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載のインクジェット記録装置」、
(5)「R(質量%)が、35.0<R<90.0であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(4)項のいずれかに記載のインクジェット記録装置」、
(6)「少なくとも、着色剤、水及び水溶性有機溶媒を含むインクであって、
前記着色剤は、樹脂で部分被覆されたカーボンブラックを含み、かつ、前記樹脂で部分被覆されたカーボンブラックの前記着色剤に対する割合をR(質量%)、個数カウント法で計測したインクの粒度分布において粒子径が0.5μm以上の粗大粒子の数をN(個/5μL)としたとき、下記の(1)式、及び、(2)式を満たし、
インクが接する面にシリコーン撥水膜を有するノズルを備えるインク吐出用ヘッドを有するインクジェット記録装置に用いられることを特徴とするインク;

1.0×10<N×R/100<1.0×10 (1)
20.0<R≦100.0 (2)」、

(7)「少なくとも、インクと該インクを吐出するインク吐出用ヘッドとを用いて画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記インク吐出用ヘッドは、インクが接する面にシリコーン撥水膜を有するノズル板を備え、
前記インクは、少なくとも、着色剤、水及び水溶性有機溶媒を含み、
前記着色剤は、樹脂で部分被覆されたカーボンブラックを含み、かつ、前記樹脂で部分被覆されたカーボンブラックの前記着色剤に対する割合をR(質量%)、個数カウント法で計測したインクの粒度分布において粒子径が0.5μm以上の粗大粒子の数をN(個/5μl)としたとき、下記の(1)式、及び、(2)式を満たすことを特徴とするインクジェット記録方法;

1.0×10<N×R/100<1.0×10 (1)
20.0<R≦100.0 (2)」。
【発明の効果】
【0014】
以下の詳細かつ具体的な説明から理解されるように、ワイピングによるノズル撥水性の低下を緩和でき、長期に亘り、吐出安定性に優れ、高濃度の画像を形成できるインクジェット記録装置、及びインクジェット記録方法が提供される。
また、前記インクジェット記録装置、及びインクジェット記録方法に用いられる保存安定性・吐出安定性に優れ、高濃度の画像を形成できるインクジェットインクが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】インクジェット記録装置のインクカートリッジ装填部のカバーを開いた状態の斜視説明図である。
【図2】インクジェット記録装置の全体構成を説明する概略構成図である。
【図3】本発明のインクジェットヘッドの一例を示す概略拡大図である。
【図4】本発明のインクカートリッジのインク袋の一例を示す概略図である。
【図5】図4のインク袋をカートリッジケース内に収容したインクカートリッジを示す概略図である。
【図6】インクジェット記録装置の機構部の平面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のインクについて詳細に説明する。
本発明のインクは、インクが接する面にシリコーン撥水膜を有するノズルを備えるインク吐出用ヘッドを有するインクジェット記録装置に用いられるものであり、少なくとも、着色剤、水及び水溶性有機溶媒を含み、前記着色剤は、樹脂で部分被覆されたカーボンブラックを含み、かつ、前記樹脂で部分被覆されたカーボンブラックの前記着色剤に対する割合をR(質量%)、個数カウント法で計測したインクの粒度分布において粒子径が0.5μm以上の粗大粒子の数をN(個/5μL)としたとき、下記の(1)式、及び、(2)式を具備するものである。
1.0×10<N×R/100<1.0×10 (1)
20.0<R≦100.0 (2)
【0017】
前記R(樹脂で部分被覆されたカーボンブラック質量/着色剤の質量×100)が20以下であると保存安定性が低下し、画像濃度が低下することがある。
前記R(質量%)としては、上記(1)式及び(2)式を満たす限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、35.0<R<95.0であることが好ましく、40.0<R<90.0であることがさらに好ましい。
前記Rが35質量%未満であると、画像濃度が低下することがあり、95質量%を超えると、吐出安定性が低下することがある。
【0018】
また、前記N×R/100が、1.0×10以下であると、大粒径粒子が少なく遮蔽効果が得られず画像濃度が低下し、1.0×10を超えるとノズルの撥水膜を削り易くワイピング耐久性が低下し、吐出安定性が低下する。
また、個数カウント法で計測したインクの粒度分布において粒子径が1.0μm以上の粗大粒子の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.0×10(個/5μL)未満であることが吐出安定性の点で好ましい。
【0019】
<着色剤>
前記着色剤は、樹脂で部分被覆されたカーボンブラックを少なくとも含み、さらに必要に応じてその他の着色剤を含む。
【0020】
<<樹脂で部分被覆されたカーボンブラック>>
カーボンブラックを完全に被覆するのではなく、部分的に被覆することで、画像濃度低下防止と保存(分散)安定性及び定着性とを両立させることができる。
樹脂で部分被覆されたカーボンブラックのカーボンブラックを部分被覆する樹脂の含有量は、樹脂の種類等にもよるが、1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、5質量%以上35質量%以下であることがより好ましい。
前記含有量が1質量%未満では保存(分散)安定性が低下し、また、カーボンブラックの露出が多く、ノズルの撥水膜を削り易くなる。前記含有量が、40質量%を超えると画像濃度及び発色性が低下する。
ここで、「部分被覆」とは、例えば、ピンホール、亀裂などの被覆欠陥などに伴う一部の露出ではなく、完全にカーボンブラックが露出する部分を有する状態を意味する。
【0021】
樹脂で部分被覆されたカーボンブラックは、インク中での分散性向上のため、予め、水、水と混和可能な有機溶媒等の水系媒体中に分散した顔料分散体として用いることができる。該顔料分散体は、該顔料分散体をフィルター等でろ過し粗大粒子数を調整し、樹脂部分被覆型顔料分散体とすることが好ましく、また、顔料分散体中の樹脂で部分被覆されたカーボンブラックの含有量が10wt%以上20wt%以下になるよう作製することが好ましい。
【0022】
<<<カーボンブラック>>>
前記カーボンブラックとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜、ファーネス法、チャネル法等で製造されたカーボンブラックを使用できるが、BET法による比表面積が、50m/g〜300m/g、DBP吸油量が、40mL/100g〜150mL/100g、揮発分が0.5%〜10%、pH値が2〜9を有するものが好ましい。
このようなものとしては、例えば、No.2300、No.900、MCF−88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B(以上、三菱化学株式会社製)、Raven700、5750、5250、5000、3500、1255(以上、コロンビアンケミカルズ製)、Regal400R、330R、660R、MogulL、Monarch700、800、880、900、1000、1100、1300、Monarch1400(以上、キャボット製)、カラーブラックFW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリンテックス35、U、V、140U、140V、スペシャルブラック6、5、4A、4(以上、デグッサ製)等を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
前記カーボンブラックの平均一次粒径は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、10nm〜150nmが好ましく、20nm〜100nmがより好ましく、30nm〜80nmが更に好ましい。前記平均一次粒径が150nmを超えると、印写画像の彩度が低下するのみならずインク保存時の増粘凝集や印写時のノズルの詰まりが生じやすくなることがある。一方、顔料の平均一次粒径が10nm未満であると、耐光性が低下するのみならず保存安定性も悪化する傾向がある。
【0024】
前記顔料の平均一次粒径は、例えば日機装株式会社製のマイクロトラックUPA−150を用い、測定サンプル中の顔料濃度(質量濃度)が0.01質量%になるように純水で希釈したサンプルを用い、粒子屈折率1.51、粒子密度1.4g/cm3、溶媒パラメーターは純水のパラメーターを用い、23℃で測定した 50%平均粒径(D50)を意味する。
【0025】
<<<樹脂>>>
前記カーボンブラックは、樹脂によって部分被覆することで、分散安定性が向上し、かつ画像濃度の低下を防止することができる。
前記樹脂は、水性媒体に対して分散機能を有する樹脂であればよく、親水性基を有する有機高分子材料を好ましく使用できる。
カーボンブラックを部分被覆する前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリウレア、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、多糖類、ゼラチン、アラビアゴム、デキストラン、カゼイン、タンパク質、天然ゴム、カルボキシポリメチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸セルロース、ポリエチレン、ポリスチレン、(メタ)アクリル酸の重合体または共重合体、(メタ)アクリル酸エステルの重合体または共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アルギン酸ソーダ、脂肪酸、パラフィン、ミツロウ、水ロウ、硬化牛脂、カルナバロウ、アルブミンなどが挙げられる。
これらの中で、カルボン酸基またはスルホン酸基などのアニオン性基を有するアニオン性有機高分子材料を使用することが可能である。
【0026】
また、前記樹脂としてノニオン性有機高分子材料を用いることができ、前記ノニオン性有機高分子材料としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートまたはそれらの(共)重合体、2−オキサゾリンのカチオン開環重合体などが挙げられる。特に、ポリビニルアルコールの完全ケン化物は、水溶性が低く、熱水には解け易いが冷水には解けにくいという性質を有しており特に好ましい。
また、カーボンブラックを部分被覆する樹脂の数平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2,000以上であることが好ましい。また、前記樹脂の質量平均分子量としては、5,000以上であることが好ましい。
【0027】
カーボンブラックを部分被覆する方法としては、水不溶性の顔料を有機高分子材料で被覆してマイクロカプセル化する、従来公知の方法を用いることが可能である。
従来公知の方法として、化学的製法、物理的製法、物理化学的方法、機械的製法などが挙げられ、具体的には、以下の方法を用いることができる。
【0028】
(1)界面重合法(2種のモノマーもしくは2種の反応物を、分散相と連続相に別々に溶解しておき、両者の界面において両物質を反応させて被覆膜を形成させる方法)、
(2)in−situ重合法(液体または気体のモノマーと触媒、もしくは反応性の物質2種を連続相核粒子側のどちらか一方から供給して反応を起こさせ被覆膜を形成させる方法)、
(3)液中硬化被膜法(顔料を含む有機高分子材料溶液の滴を硬化剤などにより、液中で不溶化して被覆膜を形成する方法)、
(4)コアセルベーション(相分離)法(顔料を分散している有機高分子材料分散液を、有機高分子材料濃度の高いコアセルベート(濃厚相)と希薄相に分離させ、被覆膜を形成させる方法)、
(5)液中乾燥法(顔料を有機高分子材料の溶液に分散した液を調製し、この分散液の連続相が混和しない液中に分散液を入れて、複合エマルションとし、有機高分子材料を溶解している媒質を徐々に除くことで被覆膜を形成させる方法)、
(6)融解分散冷却法(加熱すると液状に溶融し常温では固化する有機高分子材料を利用し、この材料を加熱液化し、その中に顔料子を分散し、それを微細な粒子にして冷却し被覆膜を形成させる方法)、
(7)気中懸濁被覆法(粉体の顔料を流動床によって気中に懸濁し、気流中に浮遊させながら、有機高分子材料のコーティング液を噴霧混合させて、被覆膜を形成させる方法)、
(8)スプレードライング法(カプセル化原液を噴霧してこれを熱風と接触させ、揮発分を蒸発乾燥させ被覆膜を形成させる方法)、
(9)酸析法(アニオン性基を含有する有機高分子材料のアニオン性基の少なくとも一部を塩基性化合物で中和することで水に対する溶解性を付与し顔料と共に水性媒体中で混練した後、酸性化合物で中性または酸性にし、有機高分子材料を析出させ顔料に固着せしめた後に中和し分散させる方法)、
(10)転相乳化法(水に対して分散能を有するアニオン性有機高分子材料と顔料とを含有する混合体を有機溶媒相とし、前記有機溶媒相に水を投入するかもしくは、水に前記有機溶媒相を投入する方法)、などが挙げられる。
【0029】
また、マイクロカプセル化の方法によって、それに適した有機高分子材料を選択することが好ましい。例えば、(1)の界面重合法による場合は、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、エポキシ樹脂などが適している。(2)のin−situ重合法による場合は、(メタ)アクリル酸エステルの重合体または共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミドなどが適している。(3)の液中硬化法による場合は、アルギン酸ソーダ、ポリビニルアルコール、ゼラチン、アルブミン、エポキシ樹脂などが適している。(4)のコアセルベーション法による場合は、ゼラチン、セルロース類、カゼインなどが適している。
【0030】
また、樹脂によってカーボンブラックを部分被覆する方法として、(10)の転相乳化法または(9)の酸析法を用いる場合は、マイクロカプセルの被覆膜を形成する有機高分子材料としては、アニオン性有機高分子材料を使用することが好ましい。
【0031】
樹脂によってカーボンブラックを部分被覆する方法として、前記転相乳化法を用いる場合、水に対して自己分散能または溶解能を有するアニオン性有機高分子材料と、カーボンブラックとの複合物または複合体、あるいはカーボンブラック、硬化剤およびアニオン性有機高分子材料との混合体を有機溶媒相とし、該有機溶媒相に水を投入するか、あるいは水中に該有機溶媒相を投入して、自己分散(転相乳化)化しながらマイクロカプセル化することができる。
上記転相乳化法において、有機溶媒相中に、インク用のビヒクルや添加剤を混入させて製造しても何等問題はない。特に、直接インク用の分散液を製造できることからいえば、インクの液媒体を混入させる方がより好ましい。
【0032】
一方、樹脂によってカーボンブラックを部分被覆する方法として、前記酸析法を用いる場合、アニオン性基含有有機高分子類のアニオン性基の一部または全部を塩基性化合物で中和し、自己分散性有機顔料または自己分散型カーボンブラックなどの色材と、水性媒体中で混練する工程および酸性化合物でpHを中性または酸性にしてアニオン性基含有有機高分子類を析出させて、顔料に固着する工程とからなる製法によって得られる含水ケーキを、塩基性化合物を用いてアニオン性基の一部または全部を中和することによりマイクロカプセル化することができる。
このようにすることによって、微細で顔料を多く含むアニオン性マイクロカプセル化顔料を含有する水性分散液を製造することができる。
【0033】
また、上記に挙げるマイクロカプセル化の際に用いられる溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルキルアルコール類;ベンゾール、トルオール、キシロールなどの芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;クロロホルム、二塩化エチレンなどの塩素化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類(登録商標)などが挙げられる。なお、上記の方法により調製したマイクロカプセルを遠心分離または濾過などによりこれらの溶剤中から一度分離して、これを水および必要な溶剤とともに撹拌、再分散を行い、目的とする本発明に用いることができるインクを得る。
以上の方法により、樹脂で部分被覆されたカーボンブラックを得ることができる。前記樹脂で部分被覆されたカーボンブラックの平均一次粒径は、50nm〜180nmであることが好ましい。
【0034】
本発明の着色剤は、樹脂で部分被覆されたカーボンブラックの他、本発明の目的を逸脱しない範囲内で、界面活性剤で分散されるカーボンブラック、自己分散性のカーボンブラックを用いることができる。
界面活性剤分散型カーボンブラックは、カーボンブラック粒子表面に界面活性剤が付着することで液中に分散されるため、顔料の粒径が大きくても、十分な量の界面活性剤もしくは官能基が存在すればカーボンブラック粒子が界面活性剤に囲まれるため、撥水膜を削る効果は小さいが、カーボンブラック粒子から脱離して粘度が高くなることがあり、保存安定性が低下することがある。
また、自己分散型カーボンブラックは、カーボンブラック粒子表面に親水性の官能基が存在することで液中に分散されるものであり、カーボンブラック粒子が露出しているため、撥水膜が削られ、吐出安定性が低下することがある。
【0035】
<水溶性有機溶剤(湿潤剤)>
本発明のインクは、水溶性有機溶剤を含むものであり、湿潤剤を併用することもできる。該水溶性有機溶剤は、温度23℃、相対湿度80%環境中の平衡水分量が40wt%以上である多価アルコールを少なくとも1種類以上含むものであることが好ましく、沸点及び粘度が高い水溶性有機溶剤Aと沸点及び粘度が低い水溶性有機溶剤Bとを組み合わせることが、より好ましい。
前記水溶性有機溶剤Aは、常圧で沸点が250℃を超えるものであることが好ましく、例えば、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール(bp190−191℃/24hPa)、グリセリン(bp290℃)、ジグリセリン(bp270℃/20hPa)、トリエチレングリコール(bp285℃)、テトラエチレングリコール(bp324−330℃)等が挙げられる。
また、沸点及び粘度が低い湿潤剤Bは、常圧で沸点が140〜250℃未満であるものが好ましく、例えば、ジエチレングリコール(bp245℃)、1,3−ブタンジオール(bp203−204℃)等が挙げられる。
特に、グリセリンと1,3−ブタンジオールとの組合せであることが好ましい。
【0036】
水溶性有機溶剤Aと水溶性有機溶剤Bとの量比B/A(質量比)は、後述するその余の湿潤剤Cの量や浸透剤などの他の添加剤の種類や量にも少なからず依存するので、一概に云えないが、例えば10/90〜90/10の範囲であることが好ましい。
【0037】
ここで、前記平衡水分量は、塩化カリウム飽和水溶液を用いデシケーター内の温湿度を温度23±1℃、相対湿度80±3%に保ち、このデシケーター内に各水溶性有機溶剤を1gずつ秤量したシャーレを保管し、下記式により求めた飽和水分量(すなわち、平衡水分量)である。

飽和水分量(%)=(有機溶剤に吸収した水分量/有機溶剤)×100
【0038】
本発明の記録用インクには、上記水溶性有機溶剤A、B以外にも必要に応じて水溶性有機溶剤A、Bの一部に代えて、または水溶性有機溶剤A、Bに加えて、その余の水溶性有機溶剤または湿潤剤Cを併用することができる。
該水溶性有機溶剤または湿潤剤Cとしては、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、その他の湿潤剤などが挙げられる。
【0039】
前記多価アルコール類としては、例えば、ジプロピレングリコール(bp232℃)、1,5−ペンタンジオール(bp242℃)、3−メチル−1,3−ブタンジオール(bp203℃)、プロピレングリコール(bp187℃)、2−メチル−2,4−ペンタンジオール(bp197℃)、エチレングリコール(bp196−198℃)、トリプロピレングリコール(bp267℃)、ヘキシレングリコール(bp197℃)、ポリエチレングリコール(粘調液体〜固体)、ポリプロピレングリコール(bp187℃)、1,6−ヘキサンジオール(bp253−260℃)、1,2,6−ヘキサントリオール(bp178℃)、トリメチロールエタン(固体、mp199−201℃)、トリメチロールプロパン(固体、mp61℃)などが挙げられる。
【0040】
前記多価アルコールアルキルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル(bp135℃)、エチレングリコールモノブチルエーテル(bp171℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(bp194℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(bp231℃)、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル(bp229℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(bp132℃)、などが挙げられる。
【0041】
前記多価アルコールアリールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル(bp237℃)、エチレングリコールモノベンジルエーテルなどが挙げられる。
【0042】
前記含窒素複素環化合物としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(bp202℃)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(bp226℃)、ε−カプロラクタム(bp270℃)、γ−ブチロラクトン(bp204−205℃)などが挙げられる。
前記アミド類としては、例えば、ホルムアミド(bp210℃)、N−メチルホルムアミド(bp199−201℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(bp153℃)、N,N−ジエチルホルムアミド(bp176−177℃)などが挙げられる。
【0043】
前記アミン類としては、例えば、モノエタノールアミン(bp170℃)、ジエタノールアミン(bp268℃)、トリエタノールアミン(bp360℃)、N,N−ジメチルモノエタノールアミン(bp139℃)、N−メチルジエタノールアミン(bp243℃)、N−メチルエタノールアミン(bp159℃)、N−フェニルエタノールアミン(bp282−287℃)、3−アミノプロピルジエチルアミン(bp169℃)などが挙げられる。
【0044】
前記含硫黄化合物類としては、例えば、ジメチルスルホキシド(bp139℃)、スルホラン(bp285℃)、チオジグリコール(bp282℃)などが挙げられる。
【0045】
その他の固体湿潤剤としては、糖類などが好ましい。該糖類の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類、四糖類を含む)、多糖類などが挙げられる。具体的には、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオースなどが挙げられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、α-シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。また、これらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖(例えば、糖アルコール(一般式:HOCH2(CHOH)nCH2OH(ただし、nは2〜5の整数を表す)で表される。)、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ酸などが挙げられる。これらの中でも、糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビットなどが挙げられる。
【0046】
<浸透剤>
本発明のインクは、浸透剤を含んでもよい。浸透剤をインクに添加することで、表面張力が低下し、紙等の記録媒体にインク滴が着弾した後の記録媒体中への浸透が速くなるため、フェザリングやカラーブリードを軽減することができる。
【0047】
前記浸透剤としては、界面活性剤を用いることができ、該界面活性剤は、親水基の極性によりノニオン性、アニオン性、両性に分類され、また、疎水基の構造により、フッ素系、シリコーン系、アセチレン系等に分類される。
【0048】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオール、グリコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、アセチレングリコールなどが挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩などが挙げられる。
【0049】
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物等が挙げられる。一般にフッ素系化合物として市販されているものを挙げると、サーフロンS−111、S−112、S−113、S121、S131、S132、S−141、S−144、S−145(旭硝子社製)、フルラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129、FC−135、FC−170C、FC−430、FC−431、FC−4430(住友スリーエム社製),メガファックF−470、F−1405、F474(DIC社製)、ゾニールFS−300、FSN、FSN−100、FSO、FSO−100(デュポン社製)、エフトップEF−351、352、801、802(ジェムコ社製)、FT−250、251(ネオス社製)、PF−151N,PF−136A、PF−156A(OMNOVA社製)などが挙げられる。これらの中でも、Dupont社製のFSO、FSO−100、FSN、FSN−100、FS−300が良好な印字品質、保存性を提供でき好ましい。
【0050】
前記シリコーン系界面活性剤としては、ポリエーテル変性シリコーン化合物を好ましく使用することができ、ポリエーテル変性シリコーン化合物は、ポリシロキ酸の側鎖にポリエーテル基を導入した側鎖型(ペンダント型)、ポリシロキサンの片末端にポリエーテル基を導入した片末端型、両端に導入した両末端型(ABA型)、ポリシロキサンの側鎖と両末端の両方にポリエーテル基を導入した側鎖両末端型、ポリエーテル基を導入したポリシロキサン(A)と未導入のポリシロキサン(B)を繰返し結合したABn型、枝分かれしたポリシロキサンの末端にポリエーテル基を導入した枝分かれ型等に分類することができる。
本発明においては、前記シリコーン系界面活性剤が、ポリシロキサンの側鎖にポリエーテル基を導入した構造を有する側鎖型(ペンダント型)であることが好ましく、下記一般式(1)で表されるポリエーテル変性シリコーン化合物が好ましい。
また、前記インクが、0.01質量%以上5質量%以下の下記一般式(1)で表されるポリエーテル変性シリコーン化合物をさらに含むことが吐出安定性の点で好ましい。
【0051】
【化2】


(但し、一般式(1)中、l,m,n,p,qは自然数を表し、l+m+n<2000,p+q<100を満たす。)
【0052】
一般に市販されているシリコーン系界面活性剤としては、例えば、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−618,KF−6011、KF−6015、KF−6004(信越化学工業社製)、SF−3771、SF−8427、SF−8428、SH−3749、SH−8400、FZ−2101、FZ−2104、FZ−2118、FZ−2203、FZ−2207、L−7604(東レ・ダウコーニング社製)、BYK−345、BYK−346、BYK−348(ビッグケミー・ジャパン社製)等を挙げることができる。
アセチレングリコール系の界面活性剤としては、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールなどのアセチレングリコール系等が挙げられる。
例えばサーフィノール104、82、465、485、TG(エアープロダクツ社製)を用いることができる。
【0053】
界面活性剤を浸透剤としてインクへ添加する場合の添加量は、0.01〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3質量%である。
【0054】
また、本発明のインクでは、2種類以上の界面活性剤を併用してもよい。また、浸透性向上のため、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール等の炭素数8〜11のポリオールを併用してもよい。
【0055】
<分散剤>
本発明のインクは、高分子分散剤や界面活性剤を含んでもよい。このような顔料を分散させるための分散剤としては、通常の水溶性樹脂や水溶性界面活性剤を用いることができる。
水溶性樹脂の具体例としては、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体等から選ばれた少なくとも2つ以上の単量体からなるブロック共重合体、あるいはランダム共重合体、又はこれらの塩等が挙げられる。
これらの水溶性樹脂は、塩基を溶解させた水溶液に可溶なアルカリ可溶型樹脂であり、これらの中でも質量平均分子量3000〜20000のものが、インクジェット用記録液に用いた場合に、分散液の低粘度化が可能であり、かつ分散も容易であるという利点があるので特に好ましい。
【0056】
また、本発明で分散剤として使用できる水溶性界面活性剤の具体例としては、一般にノニオン性、アニオン性、両性に分類され、顔料種別あるいはインク処方に応じて適宜選択して用いる。
【0057】
ノニオン性界面活性剤としてはポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−α−ナフチルエーテル、ポリオキシエチレン−β−ナフチルエーテル、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル、ポリオキシエチレンモノスチリルナフチルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルナフチルエーテル、が挙げられる。
また、これらの界面活性剤のポリオキシエチレンの一部をポリオキシプロピレンに置き換えたポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体等の界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の芳香環を有する化合物をホルマリン等で縮合させた界面活性剤も使用できる。
ノニオン系界面活性剤のHLBは12〜19.5のものが好ましく、13〜19のものがより好ましい。HLBが12未満では界面活性剤の分散媒へのなじみが悪いため分散安定性が悪化する傾向があり、HLBが19.5を超えると界面活性剤が顔料に吸着しにくくなるため、やはり分散安定性が悪化する傾向がある。
【0058】
アニオン性界面活性剤としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルカルボン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、メラニンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、スルホコハク酸アルキル二塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、N−アシルアミノ酸塩、アシル化ペプチド、石鹸などが挙げられる。
【0059】
また、本発明のインクは、必要に応じて、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤、を含んでもよい。
【0060】
前記消泡剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばシリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点でシリコーン系消泡剤が好ましい。
【0061】
前記pH調整剤としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物;水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、などが挙げられる。
【0062】
前記防腐防黴剤としては、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、等が挙げられる。
前記pH調整剤としては、調合されるインクに悪影響をおよぼさずにpHを7以上に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて任意の物質を使用することができる。
【0063】
前記防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト、などが挙げられる。
【0064】
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、りん系酸化防止剤、などが挙げられる。
【0065】
本発明のインクの物性は、目的に応じて適宜調節することができるが、例えば、粘度は、25℃で、5mPa・s〜20mPa・sが好ましく、6mPa・s〜15mPa・sがより好ましい。前記粘度が20mPa・sを超えると、吐出安定性の確保が困難になることがある。
【0066】
また、表面張力は、25℃で、20mN/m〜40mN/mが好ましい。前記表面張力が、20mN/m未満であると、記録媒体上での滲みが顕著になり、安定した噴射が得られないことがあり、40mN/mを超えると、記録媒体へのインク浸透が十分に起らず、乾燥時間の長時間化を招くことがある。また、pHは、7〜10であることが好ましい。
【0067】
<インクジェット記録装置、及びインクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録装置は、少なくとも、インクと該インクを吐出するインク吐出用ヘッドとを有するインクジェット記録装置であって、前記インク吐出用ヘッドは、インクが接する面にシリコーン撥水膜を有するノズルを備え、前記インクは、上述した本発明のインクである。
本発明のインクジェット記録方法は、少なくとも、インクと該インクを吐出するインク吐出用ヘッドとを用いて画像を記録するインクジェット記録方法であって、前記インク吐出用ヘッドは、インクが接する面にシリコーン撥水膜を有するノズル板を備え、前記インクは、上述した本発明のインクである。
前記インクジェット記録方法は、前記インクジェット記録装置により好適に実施することができる。
本発明のインクは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、インクジェット記録用プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機などに好適に使用することができる。また、特にフッ素系シランカップリング剤を含む撥
インク層、又はシリコーン樹脂を含む撥インク層を有するインクジェットヘッドを備えた記録装置に対してもヘッド固着を生じないという優れた特性を有する。
【0068】
以下、インクジェット記録装置について概要を説明する。
図1に示すインクジェット記録装置は、装置本体(101)と、装置本体(101)に装着した用紙を装填するための給紙トレイ(102)と、装置本体(101)に装着され画像が記録(形成)された用紙をストックするための排紙トレイ(103)と、インクカートリッジ装填部(104)とを有する。
【0069】
インクカートリッジ装填部(104)の上面には、操作キーや表示器などの操作部(105)が配置されている。インクカートリッジ装填部(104)は、インクカートリッジ(200)の脱着を行うための開閉可能な前カバー(115)を有している。(111)は上カバー、(112)は前カバーの前面である。
【0070】
装置本体(101)内には、図2、図3に示すように、左右の側板(不図示)に横架したガイド部材であるガイドロッド(131)とステー(132)とで、キャリッジ(133)を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ(不図示)によって、図3の横方向の矢印で示す方向(キャリッジ走査方向)に移動走査する。なお、図3の縦方向の矢印は、ベルト用紙搬送方向を示す。
【0071】
キャリッジ(133)には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する4個のインク吐出用ヘッドからなる記録ヘッド(134)の複数のインク吐出口を、主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0072】
記録ヘッド(134)を構成するインクジェット記録用ヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、インクを吐出するためのエネルギー発生手段として備えたものなどが使用できる。
【0073】
また、キャリッジ(133)には、記録ヘッド(134)に各色のインクを供給するための各色のサブタンク(135)を搭載している。サブタンク(135)には、インク供給チューブ(不図示)を介して、インクカートリッジ装填部(104)に装填された本発明のインクカートリッジ(200)から、本発明のインクセットに係るインクが供給されて補充される。
【0074】
一方、給紙トレイ(103)の用紙積載部(圧板)(141)上に積載した用紙(142)を給紙するための給紙部として、用紙積載部(141)から用紙(142)を1枚ずつ分離給送する半月コロ〔給紙コロ(143)〕、及び給紙コロ(143)に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド(144)を備え、この分離パッド(144)は給紙コロ(143)側に付勢されている。
【0075】
この給紙部から給紙された用紙(142)を記録ヘッド(134)の下方側で搬送するための搬送部として、用紙(142)を静電吸着して搬送するための搬送ベルト(151)と、給紙部からガイド(145)を介して送られる用紙(142)を搬送ベルト(151)との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ(152)と、略鉛直上方に送られる用紙(142)を略90°方向転換させて搬送ベルト(151)上に倣わせるための搬送ガイド(153)と、押さえ部材(154)で搬送ベルト(151)側に付勢された先端加圧コロ(155)とが備えられ、また、搬送ベルト(151)表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ(156)が備えられている。
【0076】
搬送ベルト(151)は無端状ベルトであり、搬送ローラ(157)とテンションローラ(158)との間に張架されて、ベルト搬送方向に周回可能である。この搬送ベルト(151)は、例えば、抵抗制御を行っていない厚さ40μm程度の樹脂材、例えば、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体(ETFE)で形成した用紙吸着面となる表層と、この表層と同材質でカーボンによる抵抗制御を行った裏層(中抵抗層、アース層)とを有している。搬送ベルト(151)の裏側には、記録ヘッド(134)による印写領域に対応してガイド部材(161)が配置されている。なお、記録ヘッド(134)で記録された用紙(142)を排紙するための排紙部として、搬送ベルト(151)から用紙(142)を分離するための分離爪(171)と、排紙ローラ(172)及び排紙コロ(173)とが備えられており、排紙ローラ(172)の下方に排紙トレイ(103)が配されている。
【0077】
装置本体(101)の背面部には、両面給紙ユニット(181)が着脱自在に装着されている。両面給紙ユニット(181)は、搬送ベルト(151)の逆方向回転で戻される用紙(142)を取り込んで反転させて再度、カウンタローラ(152)と搬送ベルト(151)との間に給紙する。なお、両面給紙ユニット(181)の上面には手差し給紙部(182)が設けられている。
【0078】
このインクジェット記録装置においては、給紙部から用紙(142)が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙(142)は、ガイド(145)で案内され、搬送ベルト(151)とカウンタローラ(152)との間に挟まれて搬送される。更に先端を搬送ガイド(153)で案内されて先端加圧コロ(155)で搬送ベルト(151)に押
し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0079】
このとき、帯電ローラ(156)によって搬送ベルト(157)が帯電されており、用紙(142)は、搬送ベルト(151)に静電吸着されて搬送される。そこで、キャリッジ(133)を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド(134)を駆動することにより、停止している用紙(142)にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙(142)を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙(142)の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙(142)を排紙トレイ(103)に排紙する。
そして、サブタンク(135)内のインクの残量ニアーエンドが検知されると、インクカートリッジ(200)から所要量のインクがサブタンク(135)に補給される。
【0080】
このインクジェット記録装置においては、本発明のインクカートリッジ(200)中のインクを使い切ったときには、インクカートリッジ(200)における筐体を分解して内部のインク袋だけを交換することができる。また、インクカートリッジ(200)は、縦置きで前面装填構成としても、安定したインクの供給を行うことができる。したがって、装置本体(101)の上方が塞がって設置されているような場合、例えば、ラック内に収納したり、あるいは装置本体(101)の上面に物が置かれているような場合でも、インクカートリッジ(200)の交換を容易に行うことができる。
【0081】
なお、ここでは、キャリッジが走査するシリアル型(シャトル型)インクジェット記録装置に適用した例で説明したが、ライン型ヘッドを備えたライン型インクジェット記録装置にも同様に適用することができる。
【0082】
次に図4、5のインクカートリッジについて説明する。インクカートリッジ(200)は、インク注入口(242)からインク袋(241)内に充填され、排気した後、該インク注入口(242)は融着により閉じられる。使用時には、ゴム部材からなるインク排出口(243)に装置本体の針を刺して装置に供給される。
【0083】
インク袋(241)は、透気性のないアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。このインク袋(241)は、通常、プラスチック製のカートリッジケース(244)内に収容され、各種インクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いられるようになっている。
【0084】
さらに、図6に示すように、キャリッジ(33)の走査方向の一方側の非印字領域には、記録ヘッド(34)のノズルの状態を維持し、回復するための維持装置(91)を配置してもよい。この維持装置(91)には、記録ヘッド(34)の各ノズル面をキャピングするための各キャップ(92)と、ノズル面をワイピングするためのワイパーブレード(93)と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行なうときの液滴を受ける空吐出受け(94)、この空吐出受けに一体成型され、ワイパーブレード(93)に付着した記録液を除去するための清掃部材であるワイパークリーナ(94)、およびワイパーブレード(93)のクリーニング時にワイパーブレード(93)をワイパークリーナ側に押し付けるクリーナ手段を構成するクリーナコロ(96)などを備えている。以上の構成において記録ヘッド(34)が、ワイパーブレード(93)の位置を通過する際、移動経路中に突出させれば、記録ヘッド(34)の吐出口がワイピングされることになる。
なお、図6中の符号(10)はインクカートリッジ、符号(21)はフレーム、符号(23)は供給ポンプユニット、符号(33)はキャリッジ、符号(34)はヘッド、符号(35)はサブタンク、符号(26)はチューブ、符号(42)は用紙、符号(51)は搬送ベルトをそれぞれ示す。また、図6の縦方向の矢印は、キャリッジ走査方向を示し、縦方向の矢印は、ベルト用紙搬送方向を示す。
【0085】
前記ワイパーブレードの部材としては、従来公知のゴム、エラストマー等を使用することができ、例えば、フッ素ゴム、シリコーンゴム、EPDM等を挙げることができるが、EPDMであることが好ましい。
【0086】
本発明のインクジェット記録装置は、上記インクジェット記録装置に限られるものではなく、ワイピングの方法、機構、ワイピング条件は目的に応じて適宜変更することができる。
【0087】
<インク吐出用ヘッド>
本発明のインク吐出用ヘッドは、インクが接する面にシリコーン撥水膜を有するノズルを備えるものである。
シリコーンは、SiとO からできたシロキサン結合を基本骨格とし、側鎖に有機基を有するオルガノポリシロキサン類である。
シリコーン撥水膜をノズル面上に形成する方法としては、液状のシリコーン溶液または分散液をスピンコート、ディッピング、スプレーコート等の塗布により形成する方法、電着法等が挙げられる。
シリコーン撥水膜を形成する際、電着法以外ではノズル孔及びノズル板裏面をフォトレジスト、水溶性樹脂等でマスキングし、シリコーン膜形成後、レジストを剥離除去すればノズル板表面のみに、シリコーンの撥水層を形成することができる。
ただし、本発明においては、これらシリコーン樹脂層の形成方法は限定されるものではない。
シリコーン撥水膜は、一般的に膜厚は厚い方が機械的耐久性は高いが、本発明のインク吐出用ヘッドは、ノズル板の撥インク層であり、単純に基板上に上塗りするだけではなく、ノズル孔を作製しなければならない等の制限があるため、シリコーン層の厚みは、0.1〜 5.0μm 程度が好ましく、特にノズル径精度等を考慮すると0.5〜2.0μmが好ましい。
【0088】
本発明の撥インク層は、シリコーン層を硬化させてなる。シリコーンの硬化反応は、シラノール基間の脱水縮合反応、シラノール基と加水分解性シリル基との縮合反応、メチルシリル基、ビニルシリル基の有機過酸化物による反応、ビニルシリル基とヒドロキシシリル基との付加反応等があり、常温、または加熱によって反応が進行する。また、アクリル基、エポキシ基光(紫外線) 反応を利用した硬化反応もあり、本発明では、これら硬化反応は使用条件に適したものを選択できる。
中でも、シラノール基と加水分解性シリル基との縮合反応が特に効果的である。加水分解性シリル基としては、アルコキシシリル基、オキシムシリル基、アセトキシシリル基、アミノキシシリル基、プロペノキシシリル基等が挙げられ、特にアルコキシシリル基、オキシムシリル基が効果的である。
【0089】
シリコーン皮膜の硬化度を上げるためには、硬化温度を上げるのが最も効果的である。
ただし、硬化温度を上げすぎるとシリコーン皮膜の表面が酸化し、本来の機能である撥インク性が低下する問題があることから、撥インク性を低下させずに硬化度を上げることが必要となる。
この対策として、不活性雰囲気下での加熱硬化、酸化防止剤存在下での加熱硬化等が挙げられる。
【0090】
前記シリコーン撥水膜に用いるシリコーンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、東レ・ダウコーニング株式会社製、シリコーンレジンSR2411、SR2410などが挙げられ、これらは機械的耐久性もさることながら、ノズル板としての撥インク性を確保できる点で好ましい。
【実施例】
【0091】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
<顔料分散体の調製>
(合成例1)ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体A
まず、ポリマー溶液の調製として、機械式撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管および滴下ロートを備えた1Lフラスコ内を十分に窒素ガスで置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー(東亜合成株式会社製、商品名:AS−6)4.0g、及びメルカカプトエタノール0.4gを仕込み、65℃に昇温した。次にスチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0gポリエチレングリコールメタクリレート36.0g、ヒドロキシエチルメタクリレート60.0g、スチレンマクロマー36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスジメチルバレロニトリル2.4g、及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を2.5時間かけてフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8g、及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけてフラスコ内に滴下した。65℃で1時間熟成した後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に、1時間熟成した。反応終了後、フラスコ内に、メチルエチルケトン364gを添加し、濃度が50質量%のポリマー溶液800gを得た。次にポリマー溶液の一部を乾燥し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準:ポリスチレン、溶媒:テトラヒドロフラン)で測定したところ、質量平均分子量は15,000であった。
得られたポリマー溶液28g、カーボンブラック26g、1mol/L水酸化カリウム溶液13.6g、メチルエチルケトン20g、及びイオン交換水30gを十分に撹拌した。その後、3本ロールミル(株式会社ノリタケカンパニー製、商品名:NR−84A)を用いて20回混練した。得られたペーストをイオン交換水200gに投入し、十分に撹拌した後、エバポレーターを用いてメチルエチルケトン、及び水を留去し、黒色の樹脂被覆型顔料分散体160gを得た。そして、最後に、この顔料分散体を孔径0.8μmのメンブレンフィルターを用いてろ過し、フィルターでろ過した後、40℃で顔料分散体の水分を蒸発させ、顔料濃度を16.3%になるように調整し、[ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体A]を作製した。得られた顔料分散体 5μl中に存在する粗大粒子数をAccuSizer780(Particle Sizing Systems社製)により測定したところ、粒子径0.5μm以上の粗大粒子数が1.3×10個、1.0μm以上の粗大粒子数が8.9×10個であった。樹脂で部分被覆されたカーボンブラックにおける樹脂の含有率は、35質量%であった。
【0092】
(合成例2)ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体B
ろ過に用いたメンブレンフィルターの孔径を1.2μmに変更した以外は、合成例1と同様にして、[ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体B]を得た。
得られた顔料分散体 5μl中に存在する粗大粒子数をAccuSizer780(Particle Sizing Systems社製)により測定したところ、粒子径0.5μm以上の粗大粒子数が1.4×10個、1.0μm以上の粗大粒子数が1.3×10個であった。
【0093】
(合成例3)ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体C
ろ過に用いたメンブレンフィルターの孔径を0.45μmに変更した以外は、合成例1と同様にして、[ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体C]を得た。
得られた顔料分散体 5μl中に存在する粗大粒子数をAccuSizer780(Particle Sizing Systems社製)により測定したところ、粒子径0.5μm以上の粗大粒子数が1.8×10個、1.0μm以上の粗大粒子数が7.5×10個であった。
【0094】
(合成例4)ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体D
ろ過に用いたメンブレンフィルターの孔径を0.22μmに変更した以外は、合成例1と同様にして、[ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体D]を得た。
得られた顔料分散体 5μl中に存在する粗大粒子数をAccuSizer780(Particle Sizing Systems社製)により測定したところ、粒子径0.5μm以上の粗大粒子数が9.6×10個、1.0μm以上の粗大粒子数が1.3×10個であった。
【0095】
(合成例5)ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体E
ろ過に用いたメンブレンフィルターの孔径を3.0μmにした以外は、合成例1と同様にして、[ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体E]を得た。
得られた顔料分散体 5μl中に存在する粗大粒子数をAccuSizer780(Particle Sizing Systems社製)により測定したところ、粒子径0.5μm以上の粗大粒子数が2.8×10個、1.0μm以上の粗大粒子数が2.0×10個であった。
【0096】
(合成例6)ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体F
メンブレンフィルターによるろ過を行わなかったこと以外は、合成例1と同様にして、[ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体F]を得た。
得られた顔料分散体 5μl中に存在する粗大粒子数をAccuSizer780(Particle Sizing Systems社製)により測定したところ、粒子径0.5μm以上の粗大粒子数が3.6×10個、1.0μm以上の粗大粒子数が5.1×10個であった。
【0097】
(合成例7) ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体G
(合成例1)と同様にして、濃度が50質量%のポリマー溶液を作製し、得られたポリマー溶液0.13g、カーボンブラック26g、1mol/L水酸化カリウム溶液13.6g、メチルエチルケトン20g、及びイオン交換水30gを十分に撹拌した。それ以外の操作については、合成例1と同様にして、[ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体G]を作製した。
得られた顔料分散体 5μl中に存在する粗大粒子数をAccuSizer780(Particle Sizing Systems社製)により測定したところ、粒子径0.5μm以上の粗大粒子数が1.1×10個、1.0μm以上の粗大粒子数が7.8×10個であった。
また、樹脂で部分被覆されたカーボンブラックにおける樹脂の含有率は、0.5質量%であった。
【0098】
(合成例8) ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体H
(合成例1)と同様にして、濃度が50質量%のポリマー溶液を作製し、得られたポリマー溶液0.53g、カーボンブラック26g、1mol/L水酸化カリウム溶液13.6g、メチルエチルケトン20g、及びイオン交換水30gを十分に撹拌した。それ以外の操作については、合成例1と同様にして、[ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体H]を作製した。
得られた顔料分散体 5μl中に存在する粗大粒子数をAccuSizer780(Particle Sizing Systems社製)により測定したところ、粒子径0.5μm以上の粗大粒子数が1.2×10個、1.0μm以上の粗大粒子数が8.1×10個であった。
また、樹脂で部分被覆されたカーボンブラックにおける樹脂の含有率は、2.0質量%であった。
【0099】
(合成例9) ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体I
(合成例1)と同様にして、濃度が50質量%のポリマー溶液を作製し、得られたポリマー溶液21.3g、カーボンブラック26g、1mol/L水酸化カリウム溶液13.6g、メチルエチルケトン20g、及びイオン交換水30gを十分に撹拌した。それ以外の操作については、合成例1と同様にして、[ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体I]を作製した。
得られた顔料分散体 5μl中に存在する粗大粒子数をAccuSizer780(Particle Sizing Systems社製)により測定したところ、粒子径0.5μm以上の粗大粒子数が1.8×10個、1.0μm以上の粗大粒子数が9.9×10個であった。
また、樹脂で部分被覆されたカーボンブラックにおける樹脂の含有率は、45.0質量%であった。
【0100】
(合成例10)ブラック界面活性剤分散型顔料分散体
カーボンブラック 175質量部
(NIPEX160、degussa社製、BET比表面積150m/g、平均一次粒径20nm、pH4.0、DBP吸油量620g/100g)
ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物 175質量部
(竹本油脂株式会社製パイオニンA−45−PN、ナフタレンスルホン酸2量体、3量体、及び4量体の合計含有量=50質量%)
蒸留水 650質量部
上記の混合物をプレミックスし、混合スラリー(a)を作製した。これをディスクタイプのメディアミル(アシザワ・ファインテック株式会社製、DMR型)で0.05mmジルコニアビーズ、充填率55%を用いて周速10m/s、液温10℃で3分間循環分散し、遠心分離機(久保田商事株式会社製、Model−7700)で粗大粒子を遠心分離し、[ブラック界面活性剤分散型顔料分散体]を得た。得られた顔料分散体 5μl中に存在する粗大粒子数をAccuSizer780(Particle Sizing Systems社製)により測定したところ、粒子径0.5μm以上の粗大粒子数が1.6×10個、1.0μm以上の粗大粒子数が2.3×10個であった。
また、得られた顔料分散体について、水分を蒸発させた後、固形分測定を実施し、仕込み比から計算して、顔料濃度が16.3wt%となることを確認した。
【0101】
(実施例1)
下記材料を混合し、1時間撹拌して均一に混合した。
付着防止剤 0.05部
(信越化学工業株式会社製ポリエーテル変性シリコーンオイルKF−353)
界面活性剤 1.0部
(Dupon社製ポリオキシエチレンパーフロロアルキルエーテル成分40質量%ゾニールFS−300)
3−メチル−1,3−ブタンジオール 20部
2−ピロリドン 2.0部
グリセリン 8.0部
浸透剤(2−エチル−1,3−ヘキサンジオール) 2.0部
防腐剤 0.05部
(Proxel GXL:1,2−benzisothiazolin−3−oneを主成分とした防黴剤(アビシア社製、成分20質量%、ジプロピレングリコール含有)
純水 残量

これに以下の顔料分散体を加え、1時間撹拌した後、平均孔径5.0μmのポリビニリデンフロライドメンブレンフィルターにて加圧ろ過し、粗大粒子やゴミを除去して、実施例1の[インク1]を得た。
[ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体A] 25部
[ブラック界面活性剤分散型顔料分散体] 25部
pH調製剤(2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール) 1.0部
【0102】
(実施例2)
実施例1において、[ブラック界面活性剤分散型顔料分散体]を、東洋インキ株式会社製の自己分散型顔料分散体(商品名:KM−9036)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして[インク2]を得た。
前記東洋インキ株式会社製顔料分散体の 5μl中に存在する粗大粒子数をAccuSizer780(Particle Sizing Systems社製)により測定したところ、粒子径0.5μm以上の粗大粒子数が7.2×10個、1.0μm以上の粗大粒子数が2.4×10個であった。
【0103】
(実施例3)
実施例1において、[ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体A]25部を、[ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体B]25部に代えたこと以外は、実施例1と同様にして[インク3]を得た。
【0104】
(実施例4)
実施例1において、[ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体A]を50部とし、[ブラック界面活性剤分散型顔料分散体]を加えないこと以外は、実施例1と同様にして[インク4]を得た。
【0105】
(実施例5)
実施例4において、[ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体A]を[ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体G]に代えること以外は、実施例4と同様にして[インク5]を得た。
【0106】
(実施例6)
実施例4において、[ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体A]を[ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体H]に代えること以外は、実施例4と同様にして[インク6]を得た。
【0107】
(実施例7)
実施例4において、[ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体A]を[ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体I]に代えること以外は、実施例4と同様にして[インク7]を得た。
【0108】
(実施例8)
実施例1において、付着防止剤を0.05部から3.5部に代えたこと以外は、実施例1と同様にして[インク8]を得た。
【0109】
(実施例9)
実施例1において、付着防止剤を0.05部から2.5部に代えたこと以外は、実施例1と同様にして[インク9]を得た。
【0110】
(実施例10)
実施例1において、付着防止剤を0.05部から0.008部に代えたこと以外は、実施例1と同様にして[インク10]を得た。
【0111】
(実施例11)
実施例1において、付着防止剤を0.05部から0.02部に代えたこと以外は、実施例1と同様にして[インク11]を得た。
【0112】
(実施例12)
実施例1において、付着防止剤を加えないこと以外は、実施例1と同様にして[インク12]を得た。
【0113】
(実施例13)
実施例1において、[ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体A]を15部とし、[ブラック界面活性剤分散型顔料分散体]を35部としたこと以外は、実施例1と同様にして[インク13]を得た。
【0114】
(実施例14)
実施例1において、[ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体A]を20部とし、[ブラック界面活性剤分散型顔料分散体]を30部としたこと以外は、実施例1と同様にして[インク14]を得た。
【0115】
(実施例15)
実施例1において、[ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体A]を45部とし、[ブラック界面活性剤分散型顔料分散体]を5部としたこと以外は、実施例1と同様にして[インク15]を得た。
【0116】
(実施例16)
実施例1において、[ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体A]を、[ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体C]50部に代え、[ブラック界面活性剤分散型顔料分散体]を加えないこと以外は、実施例1と同様にして[インク16]を得た。
【0117】
(実施例17)
実施例1において、[ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体A]を、[ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体E]50部に代え、[ブラック界面活性剤分散型顔料分散体]を加えないこと以外は、実施例1と同様にして[インク17]を得た。
【0118】
(比較例1)
実施例1において、[ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体A]を、[ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体D]50部に代え、[ブラック界面活性剤分散型顔料分散体]を加えないこと以外は、実施例1と同様にして[インク18]を得た。
【0119】
(比較例2)
実施例1において、[ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体A]を、[ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体F]50部に代え、[ブラック界面活性剤分散型顔料分散体]を加えないこと以外は、実施例1と同様にして[インク19]を得た。
【0120】
(比較例3)
実施例1において、[ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体A]を加えず、[ブラック界面活性剤分散型顔料分散体]を50部としたこと以外は、実施例1と同様にして[インク20]を得た。
【0121】
(比較例4)
実施例1において、[ブラック樹脂部分被覆型顔料分散体A]を5.0部とし、[ブラック界面活性剤分散型顔料分散体]を45部としたこと以外は、実施例1と同様にして[インク21]を得た。
【0122】
(比較例5)
実施例1において、水溶性有機溶剤、湿潤剤及び浸透剤加えない以外は、実施例1と同様にして[インク22]を得た。
【0123】
[インク1〜22]の組成を表1−1、表1−2、表1−3に示す。
【0124】
【表1−1】

【0125】
【表1−2】

【0126】
【表1−3】


※1 東洋インキ株式会社製 顔料分散体 5μl中に存在する粗大粒子数をAccuSizer780(Particle Sizing Systems社製)により測定したところ、粒子径0.5μm以上の粗大粒子数が7.2×10個、1.0μm以上の粗大粒子数が2.4×10個であった。
※2 信越化学工業株式会社製ポリエーテル変性シリコーンオイル
※3 ゾニールFS−300:ポリオキシエチレンパーフロロアルキルエーテル(Dupon社製、成分40質量%)
※4 Proxel GXL:1,2−benzisothiazolin−3−oneを主成分とした防黴剤(アビシア社製、成分20質量%、ジプロピレングリコール含有)
【0127】
<インクの評価>
前記調整例1〜18で作製した各インクの保存性と粗大粒子数を以下の方法により評価した。
【0128】
<顔料分散体及びインク中に含まれる粗大粒子数の測定>
AccuSizer780(Particle Sizing Systems社製)により、各分散体及びインク5μl中に存在する粒子径0.5μm以上の粗大粒子数及び1.0μm以上の粗大粒子数の測定を行った。
【0129】
<インクの保存性評価>
保存性の評価は、作製した直後のインクの粘度を測定した後、該インクをポリエチレン容器に入れ、密封し、70℃で2週間保存した後の粘度を測定し、初期の粘度からの変化率によって下記の基準をもとに評価した。
(保存安定性評価基準)
○:初期粘度を基準とした保存後粘度の変化率が5%未満
△:初期粘度を基準とした保存後粘度の変化率が5%以上50%未満
×:初期粘度を基準とした保存後粘度の変化率が50%以上
インクの粘度の測定には、東機産業株式会社製の粘度計RE80Lを使用し、50回転にて25℃における粘度を測定した。
結果を表2に示す。
【0130】
【表2】

【0131】
(インク吐出用ヘッドの作製)
Ni電鋳ノズル表面上に、シリコーンレジン(東レ・ダウコーニング株式会社製、SR2411 加水分解性シリル基がオキシムシリル基)をスプレー法にて塗布して約1.0μmシリコーン層を形成した。この際、ノズル孔及びノズル板裏面を水溶性樹脂でマスキングし、シリコーン層塗布形成後、剥離除去して形成した。これを大気中で260℃、30分間加熱硬化させて撥インク層を有するインク吐出用ヘッドを作製した。
【0132】
<印字評価>
インク1〜22を、シリコーン撥水膜が塗布されたノズル板を具備したヘッドを備えた図1に示すインクジェット記録装置を用い、以下の方法で評価した。
さらに、インク1について、電鋳工法によるNiメッキ膜のあるノズルを具備したヘッドを備えたインクジェット記録装置(比較例6)、及び、撥水膜を塗布しないノズルを具備したヘッドを備えたインクジェット記録装置(比較例7)を用いて、同様に評価した。
印字評価は、温度24±0.5℃、50±5%RHに調整された環境下、インクジェットプリンタ(IPSiO GX3000、株式会社リコー製)を用い、インクの吐出量が均しくなるようにピエゾ素子の駆動電圧を変動させ、被記録材上に同じ付着量のインクが付くように設定して行った。
以下にそれぞれの評価項目及びその評価方法を示す。
【0133】
(吐出安定性)
インクジェットプリンタにインク1〜18を充填して、ベタ及び線のパターンを含むチャートをマイペーパー(株式会社リコー製(上質紙)、坪量69.6g/m、サイズ度23.2秒、透気度21.0秒)に100枚連続印字した。印字中、チャートにインクのドット抜けや飛行曲がりが見られた際には、正常印刷への復帰動作としてプリンターノズルのクリーニングを行い、その合計回数を評価した。得られた合計回数から各インクセットの吐出安定性を下記評価基準により評価した。
〔評価基準〕
◎:クリーニングなし。
○:クリーニング1回。
△:クリーニング2回以上5回未満。
×:クリーニング5回以上。
【0134】
(ワイピング耐久性=クリーニング性)
インクジェットプリンタにインク1〜18を充填して、ノズルチェックパターンをマイペーパーに印字し、ヘッドに問題がないことを確認した。その後、ヘッドのワイピング動作が含まれるプリンターノズルのクリーニングを50回連続して行い、クリーニング終了後、再度ノズルチェックパターンをマイペーパー(株式会社リコー製(上質紙) 坪量69.6g/m、サイズ度23.2秒、透気度21.0秒)に印字した。インクのドット抜けや飛行曲がりがあったノズルの数を数え、その合計数を評価した。得られた合計数から各インクのワイピング耐久性を下記評価基準により評価した。
〔評価基準〕
◎:ドット抜けまたは飛行曲がりなし。
○:ドット抜けまたは飛行曲がり1つ以上3つ未満。
×:ドット抜けまたは飛行曲がり3つ以上
【0135】
<画像濃度(OD値)>
Microsoft Word2003にて作成した64point文字「■」の記載のあるチャートをマイペーパーに打ち出し、印字面の「■」部をX−Rite938にて測色し、下記評価基準により判定した。印字モードはプリンタ添付のドライバで「普通紙−はやい」モード印字した。
〔評価基準〕
◎:OD値 ブラック1.20以上
○:OD値 ブラック1.10以上1.20未満
△:OD値 ブラック1.00以上1.10未満
×:OD値 ブラック1.00未満
評価結果を表3に示す。
【0136】
【表3】

【符号の説明】
【0137】
10 インクカートリッジ
21 フレーム
23 供給ポンプユニット
33 キャリッジ
34 ヘッド
35 サブタンク
36 チューブ
42 用紙
51 搬送ベルト
91 維持装置
92a〜92d キャップ
93 ワイパーブレード
94 空吐出受け/ワイパークリーナー
96 クリーナコロ
101 装置本体
102 給紙トレイ
103 排紙トレイ
104 インクカートリッジ装填部
105 操作部
111 上カバー
112 前カバーの前面
115 前カバー
131 ガイドロッド
132 ステー
133 キャリッジ
134 記録ヘッド
135 サブタンク
141 用紙載置部
142 用紙
143 給紙コロ
144 分離パッド
145 ガイド
151 搬送ベルト
152 カウンタローラ
153 搬送ガイド
154 押さえ部材
155 加圧コロ
156 帯電ローラ
157 搬送ローラ
158 テンションローラ
161 ガイド部材
171 分離爪
172 排紙ローラ
173 排紙コロ
181 両面給紙ユニット
182 手差し給紙部
200 カートリッジ
241 収容袋
242 注入口
243 排出口
244 カートリッジケース
【先行技術文献】
【特許文献】
【0138】
【特許文献1】特開2004−59913号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、インクと該インクを吐出するインク吐出用ヘッドとを有するインクジェット記録装置であって、
前記インク吐出用ヘッドは、インクが接する面にシリコーン撥水膜を有するノズルを備え、
前記インクは、少なくとも、着色剤、水及び水溶性有機溶媒を含み、
前記着色剤は、樹脂で部分被覆されたカーボンブラックを含み、かつ、前記樹脂で部分被覆されたカーボンブラックの前記着色剤に対する割合をR(質量%)、個数カウント法で計測したインクの粒度分布において粒子径が0.5μm以上の粗大粒子の数をN(個/5μL)としたとき、下記の(1)式、及び、(2)式を満たすことを特徴とするインクジェット記録装置。
1.0×10<N×R/100<1.0×10 (1)
20.0<R≦100.0 (2)
【請求項2】
樹脂で部分被覆されたカーボンブラックにおける前記樹脂の含有量が、1質量%以上40質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
インクが、0.01質量%以上5質量%以下の下記一般式(1)で表されるポリエーテル変性シリコーン化合物を、さらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【化1】

(但し、一般式(1)中、l,m,n,p,qは自然数を表し、l+m+n<2,000、p+q<100を満たす。)

【請求項4】
個数カウント法で計測したインクの粒度分布において粒子径が1.0μm以上の粗大粒子の数が、1.0×10(個/5μL)未満であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
R(質量%)が、35.0<R<90.0であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
少なくとも、着色剤、水及び水溶性有機溶媒を含むインクであって、
前記着色剤は、樹脂で部分被覆されたカーボンブラックを含み、かつ、前記樹脂で部分被覆されたカーボンブラックの前記着色剤に対する割合をR(質量%)、個数カウント法で計測したインクの粒度分布において粒子径が0.5μm以上の粗大粒子の数をN(個/5μL)としたとき、下記の(1)式、及び、(2)式を満たし、
インクが接する面にシリコーン撥水膜を有するノズルを備えるインク吐出用ヘッドを有するインクジェット記録装置に用いられることを特徴とするインク。
1.0×10<N×R/100<1.0×10 (1)
20.0<R≦100.0 (2)

【請求項7】
少なくとも、インクと該インクを吐出するインク吐出用ヘッドとを用いて画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記インク吐出用ヘッドは、インクが接する面にシリコーン撥水膜を有するノズル板を備え、
前記インクは、少なくとも、着色剤、水及び水溶性有機溶媒を含み、
前記着色剤は、樹脂で部分被覆されたカーボンブラックを含み、かつ、前記樹脂で部分被覆されたカーボンブラックの前記着色剤に対する割合をR(質量%)、個数カウント法で計測したインクの粒度分布において粒子径が0.5μm以上の粗大粒子の数をN(個/5μl)としたとき、下記の(1)式、及び、(2)式を満たすことを特徴とするインクジェット記録方法。
1.0×10<N×R/100<1.0×10 (1)
20.0<R≦100.0 (2)

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−67162(P2013−67162A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−173651(P2012−173651)
【出願日】平成24年8月6日(2012.8.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】