説明

インクジェット記録装置および記録方法

【課題】インクジェット記録装置において、記録ヘッドの往走査および復走査によって画像を記録する双方向記録において色むらの発生を軽減すると共に、記録時間の増加を抑制する。
【解決手段】画像データを構成する単位画像データの値に基づいて定められた色むら発生値が、予め定めた閾値以上であるか否かを判定する。この色むら発生値が閾値以上のときには、単位画像データに対応する単位領域に対し記録ヘッドの往走査と復走査とによるドットの形成を可能とするデータを記録データとして生成する。また、色むら発生値が閾値未満であるときには、単位領域に対し前記記録ヘッドによる往走査と復走査のいずれか一方でのみドットの形成を可能とするデータを前記記録データとして生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドを走査させながら記録媒体にインク等の記録液体を吐出して画像を記録するインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法に関する。特に、記録ヘッドの往復両走査において画像の記録を可能とするインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを吐出するノズルを複数備えた記録ヘッドやインクタンクを搭載するキャリッジと、記録媒体を搬送する搬送手段と、これらを制御する制御手段とを備えた、シリアル型のインクジェット記録装置が広く用いられている。このインクジェット記録装置は、キャリッジを記録媒体の搬送方向と直交する方向(主走査方向)に移動させつつ記録ヘッドよりインクを吐出させて記録を行う主走査と、記録時に記録媒体を記録ヘッドの記録幅に対応する距離だけ搬送する副走査とを繰り返し行う。また、現在用いられているインクジェット記録装置の多くは、複数色のインクを用いてフルカラー画像を記録できるものとなっている。例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(B)などのインクを吐出可能な記録ヘッドがキャリッジに搭載され、これらのインクを用いてフルカラー画像を記録する。キャリッジには、各インクに対応する複数の記録ヘッドが順次、主走査方向に沿って配置されているものが多い。
【0003】
主走査における往方向に沿ってBk,C,M,Yの順で記録ヘッドが配列されている場合、記録媒体に対して往方向への走査で記録する時の記録順は、Bk,C,M,Yとなり、復方向への走査で記録する時の記録順は、Y,M,C,Bkとなる。このように、往方向への走査と、復方向への走査とで記録順が異なることにより、記録媒体上でインクが重なる順序が、往方向で記録する時と、復方向で記録する時とで異なることとなる。このため、記録媒体の搬送距離毎に色相が異なり、これが色むらとなって画像品質の低下を招く可能性がある。
【0004】
上記のように、往方向への記録と復方向への記録とを行ういわゆる双方向記録における色むらを防止するための技術を開示する文献として特許文献1がある。この特許文献1には、記録データに基づいて各インク色についてドット数カウントを行い、色むらの発生するインク打ち込みの閾値を越えた場合、記録方向を往方向もしくは復方向に固定する記録方法が開示されている。このように記録方向を固定して記録すれば、各インクの記録順は一定となるため、色むらを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−180017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の技術においては、色むらの発生するインク打ち込みの閾値を越えた場合、記録方向を往方向もしくは復方向に固定してしまうため、記録時間を増加させてしまうという課題がある。
【0007】
本発明は、双方向記録における色むらの発生を軽減すると共に、記録時間の増加を抑制することが可能なインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0009】
すなわち、本発明の第1の形態は、異なるインクの吐出を可能とする複数の記録ヘッドを所定の主走査方向に沿って往復移動させると共に、インクの吐出、非吐出を規定する記録データに基づいて前記各記録ヘッドからのインクの吐出を制御して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置であって、前記記録データを画像データに基づいて生成する記録データ生成手段と、前記画像データを構成する単位画像データの値に基づいて定められた色むら発生値が、予め定めた閾値以上であるか否かを判定する判定手段と、を備え、前記記録データ生成手段は、前記色むら発生値が閾値以上であるとき前記単位画像データに対応する単位領域に対し前記記録ヘッドによる往走査と復走査とによるドットの形成を可能とし、前記色むら発生値が閾値未満であるとき前記単位領域に対し前記記録ヘッドによる往走査と復走査のいずれか一方でのみドットの形成を可能とするデータを前記記録データとして生成することを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の形態は、異なるインクの吐出を可能とする複数の記録ヘッドを所定の主走査方向に沿って往復移動させると共に、インクの吐出、非吐出を規定する記録データに基づいて前記各記録ヘッドからのインクの吐出を制御して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、前記記録データを画像データに基づいて生成する記録データ生成工程と、前記画像データを構成する単位画像データの値に基づいて定められた色むら発生値が、予め定めた閾値以上であるか否かを判定する判定工程と、を備え、前記記録データ生成工程は、前記色むら発生値が閾値以上であるとき前記単位画像データに対応する単位領域に対し前記記録ヘッドによる往走査と復走査とによるドットの形成を可能とし、前記色むら発生値が閾値未満であるとき前記単位領域に対し前記記録ヘッドによる往走査と復走査のいずれか一方でのみドットの形成を可能とするデータを前記記録データとして生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、記録ヘッドの往走査および復走査における記録動作を実施しつつ、色むらの発生を軽減すると共に、記録時間の増加を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態におけるインクジェット記録装置の平面図である。
【図2】第1の実施形態に用いる記録ヘッドの吐出口の配列を模式的に示す平面図である。
【図3】第1の実施形態における制御系の概略構成を示すブロック図である。
【図4】第1の本実施形態における記録データの生成処理の概略を模式的に示す図である。
【図5】第1の実施形態で行われる2カラム間引き方法の一例を模式的に示す図である。
【図6】第1の実施形態による記録データの生成手順を説明するための模式図である。
【図7】第1の実施形態に用いられるドット配置パターンデータを示す模式図である。
【図8】第1の実施形態における記録データの生成処理に関するフローチャートである。
【図9】第1の実施形態によるデータ処理および記録動作の概略を示す模式図である。
【図10】第2の実施形態におけるインデックスパターンデータセットとインデックスパターンデータの割り付けパターンの一例を模式的に示した図である。
【図11】第2の実施形態による記録データの生成処理に関するフローチャートである。
【図12】第2の実施形態によるデータ処理および記録動作の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を詳細に説明する。
【0014】
図1は、本実施形態におけるインクジェット記録装置(以下、単に記録装置ともいう)の平面図である。ここに示すインクジェット記録装置は、比較的大判の記録媒体に記録を行うものであり、記録媒体をY方向(搬送方向)へと搬送する不図示の搬送ユニットを含む記録装置の本体2を備える。この本体2には、ガイド軸33に沿って主走査方向に移動可能に取り付けられたキャリッジ1が設けられている。キャリッジ1はベルト34を介して不図示のキャリッジモータから伝達される駆動力によって主走査方向(X方向)に沿って往復移動可能に構成されている。このキャリッジ1にはインク滴を吐出する複数のノズルを有する記録ヘッド5が複数個搭載されており、記録ヘッド5はキャリッジ1と共に主走査方向に移動する。また、キャリッジ1には、光学式センサ32が設けられている。この光学センサ32は、キャリッジ1と共に主走査方向へと移動しつつプラテン4上における記録媒体の存否を検出する。また、本実施形態のインクジェット記録装置は、記録ヘッドの各ノズルのインク不吐出を検知できる投光部および受光部を有する不吐出ノズル検知ユニット36を備える。具体的には、投光部から受光部に至る光路を遮断するインク滴の有無を検知することによって各ノズルの不吐出を検出する。
【0015】
また、このインクジェット記録装置には、記録ヘッド5の各ノズルの吐出性能を適正な状態に保つため、記録ヘッドの回復手段が備えられている。この回復手段は、記録ヘッド5のノズル先端に形成される吐出口をポンプに連結されているキャップで覆い、ポンプによりキャップ内に発生させた負圧によって、ノズル内の増粘インク等を吸引排出させる、いわゆる吸引回復機構30によって構成される。
【0016】
図2は本発明の実施形態に用いる記録ヘッドの吐出口の配列を模式的に示す平面図である。ここに示す記録ヘッド5には、インクを吐出するノズルが複数備えられている。このノズルは、インクを吐出する吐出口nと、これに連通する不図示のインク流路からなり、各ノズルのインク流路内には、インクを局所的に加熱して膜沸騰を起こさせ、その発泡エネルギでインクを吐出させる電気熱変換体が設けられている。記録ヘッドには、使用する複数色のインクそれぞれに対応した吐出口列が配列されている。本実施形態の各吐出口列は、記録媒体の搬送方向である副走査方向に沿って、1200dpiの密度で配列された1280個の吐出口から構成されている。
【0017】
本実施形態における記録ヘッドは、フルカラー画像の記録を可能とするため、ブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを吐出する吐出口列101〜104をX方向に沿って順次配置した、いわゆる横並びヘッドとなっている。なお、ノズル列101からはBk、ノズル列102からはC、ノズル列103からはM、ノズル列104からはYのインクがそれぞれ吐出される。
【0018】
このように構成されたインクジェット記録装置において、記録媒体は不図示の搬送ユニットから副走査方向に搬送される。記録ヘッド5は、不図示の記録制御部から記録信号を受け取り、キャリッジ1と共に主走査方向に移動しつつ、記録媒体の記録領域に向かってインクを吐出する。このような記録動作と、所定量だけ記録媒体を副走査方向に搬送する搬送動作と、を繰り返すことにより記録を行う。すなわち、記録ヘッドを走査させることによって画像の記録を行う。
【0019】
図3は、本実施形態における制御系の概略構成を示すブロック図である。主制御部300は、演算、選択、判別、制御などの処理動作を実行するCPU301と、CPU301によって実行すべき制御プログラム等を格納するROM302と、記録データのバッファ等として用いられるRAM303、および入出力ポート304等を備えている。なお、CPUは、後述の選択工程を行う第1の選択手段、および第2の選択手段として機能する。そして、入出力ポート304には、搬送モータ(LFモータ)312、キャリッジモータ(CRモータ)313、記録ヘッド5及び切断ユニット317におけるアクチュエータなどの各駆動回路305,306,307,308が接続されている。さらに入出力ポート304には、種々のセンサ類が接続されている。例えば、記録ヘッドの温度を検出するヘッド温度センサ314、キャリッジ1が記録ヘッドの回復動作を行うホームポジションの位置に有ることを検出するホームポジションセンサ314、記録ヘッド5の吐出状態を検査する不吐ノズル検出ユニットなどが接続されている。さらに、主制御部300はインターフェース回路311を介してホストコンピュータ315に接続されている。
【0020】
以上の構成を有するインクジェット記録装置によって実施される記録動作を説明する。
【0021】
本実施形態では、後述のドット配置パターンデータ(インデックスパターンデータともいう)を用いて、多値の入力画像データをドットを形成するか否か、すなわち記録ヘッドにおけるインク滴の吐出、非吐出を表す2値のデータ(記録データ)に変換する。この2値化処理は、例えば、ホスト装置において画像データを比較的低解像度に量子化し、その量子化した多値の画像データを記録装置本体に転送する。記録装置本体では受信した画像データをインデックスパターンデータを用いて2値のデータ(記録データ)に変換し、これをバッファに展開する。
【0022】
図4は、記録装置本体が多値の入力データを受信してから記録データを生成するまでの処理の概略を模式的に示す図である。図において、ホストコンピュータ315から受け取った入力画像データは600dpiの解像度に内部処理された画素データ401(図4(a))に変換される。なお、ここでいう画素データとは、記録すべき画像の最小単位の領域である画素にインクを付与するための多値の画像データ(単位画像データ)を意味し、この段階での画素データは、0〜256段階のレベルを有する。次に、画素データ401を0〜8の9段階のレベルの画素データ402(図4(b))に変換するための量子化処理が行われる。次に、予め定められたインデックスパターンデータに基づき、図4(c)に示す縦2エリア×横4エリアのマトリクスM(単位領域)に対し、ドットを形成するか否かを表す2値のデータ(記録データ)403を割り当てる。なお、以下の説明において、記録データの中でドットの形成を表すデータ、すなわちインク滴を吐出させるためのデータを、特にドットデータと称す。図4(c)は、画素データが4値であった場合を示しており、マトリクスM内にはドットデータが4つ割り当てられている。このインデックスパターンデータに基づく処理(以下、インデックス処理と称す)を施すことにより、横2400dpi、縦1200dpiの解像度を有する2値化データを記録データとして生成することができる。以上が記録データ生成処理の概略である。
【0023】
上記記録データを主制御部300が受信すると、CPU301は、ROM302に格納されたプログラムおよびRAM303に格納されたデータなどに基づき、入出力ポート304を介して各モータや記録ヘッドなどの駆動を制御し、記録動作を行う。記録動作としては、キャリッジ1の駆動速度を高速化するため、記録ヘッドによる1回の記録走査によって記録可能な領域内の画像を、複数回の記録走査に分割して記録する記録方法がある。この記録方法を分割記録方法と称す。本実施形態における記録技術は、この分割記録方法と、前述の記録データの生成方法とを用いることによって実現される。以下、本実施形態における記録技術を、具体的な例を挙げてより詳細に説明する。
【0024】
本実施形態における分割記録方法は、各記録走査における記録解像度を下げ、記録走査毎に特定のカラムデータのみを記録する2カラム間引き方法を用いる。
【0025】
図5は本実施形態で行われる2カラム間引き方法の一例を模式的に示す図である。この2カラム間引き方法では、記録データを奇数カラムデータと、偶数カラムデータとに分け、奇数カラムデータに基づく記録走査と、偶数カラムデータに基づく記録走査とを順次繰り返す。従って、各記録走査によって用いるべきカラムデータは、一義的に決まることとなる。いま、図5に示す縦4エリア×横2エリアからなるマトリクス(単位領域)の記録データにおいて、図中の左端から右方向へと順次割り当てられたカラムデータ501,502,503,504に基づいて記録を行う場合、各カラムは次のように記録される。すなわち、往復両方向においてドットの記録を行う、いわゆる双方向記録走査を2カラム間引き方法によって実行するとき、奇数カラムデータ(501と503)は、往方向への記録走査(以下、往走査)において用いられる。また、偶数カラムデータ(502と504)は、復方向の記録走査(以下、復走査)において用いられる。
【0026】
図6は、本実施形態における記録データの生成手順を説明するための模式図である。入力されたR、G、Bの多値の画素データは、600dpiの解像度の画素データ601に処理される(図6(a))。次に、R、G、Bの多値(8ビット:0から255)の入力画素データを、C、M、Y、Bkの多値(8ビット:0から255)の画素データ602(図6(b))に変換する。この後、C、M、Y、Bkの多値の画素データを、量子化処理によって0から4の5レベルのC、M、Y、Bkの画素データ(図6(c))に変換する。次に、量子化処理された各画素データのレベルに基づいて後述のインデックスパターンデータを参照し、図6(d)に示す横4エリア、縦2エリアからなるマトリクスM内に割り当てるべきドットデータを生成する。
【0027】
上述した2カラム間引き方法と、マトリクスMにドットデータが割り当てられたエリアの位置とを考慮すると、マトリクスMに記載された1,3,5,7の数字で示すエリアに展開されるドットデータは、往方向への記録走査において用いられるデータとなる。一方、マトリクスMに記載された2,4,6,8の数字で示すエリアに展開されるドットデータは、復方向への記録走査において用いられるドットデータとなる。
【0028】
上記の2値の記録データに基づいて実際に記録を行った際のドットの着弾位置を、図6(e)の記録結果605に示す。記録解像度は1200dpiであるので、マトリクスMにおけるエリア1,2に展開された2値の記録データに基づいて吐出されたインク滴は、着弾位置Aに着弾する。同様にエリア3,4に展開されたドットデータに基づいて吐出されたインク滴は、着弾位置Bに着弾する。さらに、エリア5,6に展開されたドットデータに基づいて吐出されたインク滴は、着弾位置Cに着弾する。エリア7,8に展開されたドットデータに基づいて吐出されたインク滴は、ドット着弾位置Dに着弾する。
【0029】
2カラム間引き方法の特性とインク滴の着弾位置とを考慮すると、横2400dpiの解像度の記録データに基づき、横1200dpiの記録解像度で画像を記録する場合、図6(e)の着弾位置A、B,C,Dのそれぞれに1つずつインク滴を着弾させれば良い。すなわち、マトリクスMの中で、1か2のエリア、3か4のエリア、5か6のエリア、7か8のエリアのいずれか一方に割り当てられた画素データに基づき記録を行えば良い。またエリア1,3,5,7に割り当てられた画素データは往方向での記録走査に用いられ、エリア2,4,6,8に割り当てられたデータは、復方向での記録走査に用いられる。なお、本実施形態では、上述した2カラム間引き方式を採用する例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、固定のデータ間引き処理と記録走査方向とが確定していれば良い。
【0030】
次に、本実施形態によって実行される色むら抑制制御について説明する。この色むら抑制制御は、入力される画素データ単位で記録方向を選択することによって、画像に発生する色むらを抑制するものである。以下、図を参照しつつ説明する。
【0031】
図7は、本実施形態において用いられるドット配置パターンデータを示す模式図である。図中に記載のレベル1からレベル4は、量子化処理された画素データのレベルを示している。図7(a)に示すインデックスパターンデータA(第1のドット配置パターンデータ)は、横4エリア、縦2エリアからなるマトリクスM内にドットデータを割り当てたパターンデータ701〜704からなる。また、図7(b)に示すインデックスパターンデータB(第2のドット配置パターンデータ)は、横4エリア、縦2エリアからなるマトリクスM内にドットデータを割り当てたパターンデータ705〜708よりなる。ここで、一方のインデックスパターンデータAのパターンデータ701〜704は、レベル1からレベル4にそれぞれ対応しており、第2のインデックスパターンデータBのパターンデータ705〜708はレベル1からレベル4にそれぞれ対応している。ここで、レベル1は、マトリクスMの中にドットデータが1つ、レベル2ではドットデータが2つ、レベル3ではドットデータが3つ、レベル4ではドットデータが4つ割り当てられている。なお、量子化処理された画素データのレベルは、前述のように0から4の5段階であり、レベル0ではマトリクスM内にドットデータを割り当てない。
【0032】
図7(a)に示すインデックスパターンデータAでは、図6に示すマトリクス701〜704における奇数と偶数のエリア2,3,6,7にドットデータが割り当てられているため、往走査と復走査のそれぞれにおいてドットが記録される。すなわち、レベル1では、マトリクス701に示すようにエリア2(図6のマトリクスM参照)にドットデータが割り当てられているため、このドットデータに従って復走査でドットが記録される。また、レベル2では、マトリクス702に示すようにエリア2,7にドットデータが割り当てられているため、このドットデータに従って往走査と副走査とでドットが記録される。レベル3では、マトリクス703に示すように画素生成位置2,3,7にドットデータが割り当てられているため、このドットデータに従って往走査と副走査とでドットが記録される。さらに、レベル4では、マトリクス704に示すように画素生成位置2,3,6,7にドットデータが割り当てられているため、このドットデータに従って往走査と副走査とでドットが記録される。
【0033】
一方、図7(b)インデックスパターンデータBでは、図6に示すマトリクス705〜708におけるエリア1,3,5,7にドットデータが割り当てられているため、往走査のみでドットが記録される。すなわち、レベル1では、マトリクス705に示すようにエリア1にドットデータが割り当てられ、レベル2ではマトリクス706に示すようにエリア1,7にドットデータが割り当てられている。さらに、レベル3ではマトリクス707に示すようにエリア1,3,7にドットデータが割り当てられ、レベル4ではマトリクス708に示すようにエリア1,3,5,7にドットデータが割り当てられている。このように、インデックスパターンデータBのマトリクス705〜708では、いずれも奇数のエリア1,3,5,7にドットデータが割り当てられているため、いずれのドットデータに基づく記録動作も往走査で行われることとなる。
【0034】
以上説明したインデックスパターンデータAとインデックスパターンデータBの2種類のパターンデータを有するパターンデータ群をインデックスパターンデータセット(ドット配置パターンデータセット)と称す。このインデックスパターンデータセットの中のいずれのインデックスパターンデータを選択すべきかを、後述の処理によって判断し、この判断結果に基づいてインデックスパターンデータAまたはBを選択する。そして、選択したインデックスパターンデータAまたはBの中から画素データに対応したマトリクスを選択し、それを記録データとして展開する。
【0035】
次に、前述のインデックスパターンデータA,Bを用いたデータ処理を、図6のデータ処理の流れに沿って説明する。
【0036】
前述のように、解像度600dpiの解像度に処理された8ビットのRGBの入力画像データ601は、C、M、Y、Bkの画素データ602に変換される。次に、多値(0〜255)の画素データは、量子化処理によって0から4の5レベルのC、M、Y、Bkの画素データ603に変換される。また、C、M、Y、Bkの多値の画素入力値(0〜255)に基づき、画像の記録方式として双方向記録と片方向記録のいずれを実行すべきかの判定を行う。この判定方法については後述する。ここで双方方向記録を実効すべきであると判断された場合には、インデックスパターンデータAを選択し、このインデックスパターンデータAの中から、画素データのレベルに応じたパターンデータを選択する。例えば、量子化された画素データのレベルがレベル3であった場合、図7のパターンデータ703に基づいて画素データを展開する。インデックスパターンデータAでは、図6のマトリクスMに記載されたエリア2,3,6,7にドットデータが割り当てられているので往走査と副走査とで記録される。一方、工程603の判定結果により片方向記録を実行すべきと判断された場合には、インデックスパターンデータBが選択され、このインデックスパターンデータBの中から、画素データのレベルに応じたパターンデータが選択される。例えば603の処理結果がレベル3であった場合、図7のパターンデータ707に基づいて画素パターンデータが展開される。
【0037】
このように記録データ生成方法と、複数記録走査にて分割して記録する記録方法とを組み合わせた記録方式を採ることによって所定の画素で形成されるマトリクス(ここでは横4エリア×縦2エリア)毎に記録走査の方向を選択することが可能である。
【0038】
次に、上述した双方向記録と片方向記録のいずれの記録方式を選択すべきかの判定方法について説明する。
【0039】
各インク色に対応する多値(0〜255)の画素データにおいて、シアンの画素入力値をVc、マゼンタの画素入力値をVm、イエローの画素入力値をVy、ブラックの画素入力値をVk、とする。また各インクの重み付けNについてシアンの重み付けをNc、マゼンタの重み付けをNm、イエローの重み付けをNy、ブラックの重み付けをNk、とする。これらの重み付けは、色むらに対する各インクの寄与度に鑑みて設定する。ここで、双方向記録と片方向記録のいずれの記録方式を採るべきかの判定の基準となる閾値をSとする。
【0040】
一方、所定領域で入力される各インク色の画素入力値とその重み付け係数により算出される値(色むら発生値)をKとしたとき、Kは次式により求められる。
【0041】
K=Nc×Vc+Nm×Vm+Ny×Vy+Nk×Vk (式1)
【0042】
本実施形態では実験の結果より各インクの色むら発生の寄与率を考慮し、重み付け係数をNc=1.3、Nm=1.0、Ny=1.5、Nk=0.7とした。例えばVcが210、Vmが128、Vyが32、Vkが16の場合、各インク色の入力値とその重み付けにより算出されたKは460となる。前記重み付けに従って得られたK値が400以上の場合に、色むらが起き易いと判断されたので、閾値S=400と設定した。各インク色の画素入力値とその重み付けにより算出された値Kを、閾値Sと比較し、双方向記録を行うか、片方向記録を行うかを判定する。
【0043】
上記のように、各インク色の画素入力値を用いて算出した値Kが閾値Sより小さい場合には、双方向記録を実施したとしても、往走査と副走査とで色むらが発生しない。このため、往走査および復走査でドットの記録を行う前記インデックスパターンデータAを選択する。一方、各インク色の画素入力値を用いて算出した値Kが閾値S以上である場合に双方向記録を行うと、往走査と副走査とで色むらが発生するため往方向のみでドットの記録を行う前記インデックスパターンデータBを選択する。以上のような手順でインデックスパターンデータの選択を行い、入力される画素単位(600dpi)で最適な記録方式が双方向記録であるか片方向記録であるかを判定して、その判定結果に従ってドットの記録を行う。
【0044】
図8は、上記の記録データの生成処理に関するフローチャートである。
【0045】
S801では、各インク色の画素入力値である、Vc、Vm、Vy、Vkを取得する。ここで、S802ではS801で入力された各インク色の画素入力値から、画素入力値と重み付け係数とによりKの値を算出する。S803ではS802で算出したKの値が予め設定した閾値S以上であるか否かを判断する。ここでKの値が閾値未満(S未満)であると判断された画素には、往走査と復走査とで記録が行われるインデックスパターンデータAを選択する(S804)。一方、S803でKの値が閾値Sを越えると判断された画素には、S805にて往方向走査のみで記録が行われるインデックスパターンデータBを選択する。S806にて全入力画素に対しインデックスパターンデータの選択処理が終了したかを判断する。終了と判断されるまでS801に戻り処理を続行する。終了と判断された場合には記録データを生成し、記録を開始する(S807)。
【0046】
図9は、本実施形態によって所定領域内の画像を形成する際のデータ処理および処理されたデータに基づいて行われる記録動作などを説明するための模式図である。図9(a)は、横12画素、縦12画素のサイズを有し、解像度が600dpiである入力画像データの各画素データに対し、図8のフローチャートに基づき画素入力値と重み付けにより算出されるKの値が閾値以上(S以上)であるか否かを判断した結果を示している。ここで、白抜きの画素はKの値が閾値S未満であると判断された画素を示している。一方、黒く塗りつぶされた画素はKの値が閾値S以上であると判断された画素を示している。
【0047】
また、図9(b)は図9(a)の判定結果に基づいて選択されたインデックスパターンデータを示している。図中にAと記された画素は、前記インデックスパターンデータAが選択され、図中にBと記された画素には、前記インデックスパターンデータBが選択された状態を示している。図9(b)において前記インデックスパターンデータAが選択された画素は往走査および復走査で記録される。また、前記インデックスパターンデータBが選択された画素は往走査のみで記録される。よって、図9(c)中の○印が記載された画素は往復方向で記録されることとなる。また、×印の記載された画素は往方向のみで記録されることとなる。
【0048】
図9(d)は2回の走査で記録すべき画像を完成させる、いわゆる2パス分割記録の動作を示す模式図である。この2パス分割記録では、まず、記録ヘッドを往方向(X1方向)に移動させて1回目の記録走査を行う。次に、記録副走査方向に記録媒体を搬送させ、その後、記録ヘッドを復方向(X2方向)に移動させて2回目の記録走査を行う。次いで、副走査方向に記録媒体を搬送し、その後、記録ヘッドを往方向に移動させて3回目の記録走査を行う。
【0049】
一方、図9(e)は同図(c)に示す領域内の画素が同図(d)の記録動作における何回目の走査で記録されるかを示す模式図である。ここで、図示の各画素内に記載されている数字1,2,3は、1回目の記録走査、2回目の記録走査、3回目の記録走査を意味している。すなわち、1,2の数字が記載されている画素は、1回目の記録走査と2回目の記録走査とで記録される画素であり、これらの画素は往走査と復走査とで記録される。また、2、3の数字が記載されている画素は、2回目の記録走査と3回目の記録走査とで記録される画素であり、これらの画素も往走査と副走査とで記録される。
【0050】
一方、1の数字が記載されている画素は、1回目の記録走査のみで記録される画素であり、これは往走査でのみ記録される。また、3の数字が記載されている画素は、3回目の記録走査のみで記録される画素であり、往走査でのみ記録される。このように、色むらが発生しないと判断された画素は、2パス分割記録によって、往・復両走査で記録される。これに対し、色むらが発生すると判断された画素は、往方向への1回の走査(1パス記録走査)のみで記録される。この場合、復方向への記録時は空のスキャンとなり記録を行わない。このように、本実施形態では、2パス分割記録の走査を維持しつつ、色むらが発生する画素に対しては1回の往走査で記録を行うことで、記録時間を増大、および色むらの発生を抑制することが可能となる。
【0051】
以上説明したように、この第1の実施形態では、入力される画素データ単位で往復記録時の色むらが発生するか否かを判断し、色むらが発生する領域においては、記録走査回数を半減させて往走査のみで記録するインデックスパターンデータを選択する。これにより、各画素を記録する際の記録走査の方向を制御することが可能となり、往走査および復走査による記録時の色むらを抑制することが可能となり、かつ記録時間の増大も防止した記録が可能になる。
【0052】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。なお、この第2の実施形態においても、図1ないし図3に示す構成を備えるものとする。
【0053】
この第2の実施形態では、複数組のインデックスパターンデータセットを用いて、単位領域毎に記録方向を選択して色むらの発生を抑制する。すなわち、上記第1の実施形態1では、インデックスパターンデータAとインデックスパターンデータBとからなる1種類のインデックスパターンデータセットを用いて1画素毎にインデックスパターンデータを選択するものとした。これに対し、この第2の実施形態では、複数のインデックスパターンデータセットを用いることで、記録データの分散性を向上させテクスチャの発生を抑制するものとなっている。
【0054】
画素データ単位のデータ処理の手順は上述した第1の実施形態と同様である。図10は、この第2の実施形態における複数組のインデックスパターンデータセットと、各記録画素に対するインデックスパターンデータの割り付けを規定するインデックス割付パターンの一例を模式的に示した図である。上記第1の実施形態では、記録画素に対して、往走査と復走査とで記録を行うインデックスパターンデータAと片方向でのみで記録を行うインデックスパターンデータBとを選択的して使用した。これに対し、第2の実施形態では図10に示すような複数組のインデックスパターンデータセットの中から、記録画素の位置に応じたインデックスパターンデータセットを選択する。本実施形態では図10(a)〜(d)に示す4種類のインデックスパターンデータセットを用いて説明する。
【0055】
図10(a)にインデックスパターンデータセット1を記す。インデックスパターンデータセット1は、往走査と復走査による記録を実行するインデックスパターンデータ1Aと、片方向のみの記録を実行するインデックスパターンデータ1Bとを持つ構成となっている。また、図10(b)にインデックスパターンデータセット2、図10(c)にインデックスパターンデータセット3、図10(d)にインデックスパターンデータセット4を示している。これらのインデックスパターンデータセットも、往走査と復走査による記録を行うインデックスパターンデータ2A,3A,4Aと、片方向のみの記録を実行するインデックスパターンデータ2B,3B,4Bとを有する。
【0056】
図10(e)にインデックスパターンデータセットの選択(第1の選択工程)に用いるインデックス割付けパターンデータを示す。この第2の実施形態では横256画素、縦256画素のサイズのインデックス割付けパターンデータを繰り返し使用する。入力される画素位置に応じて、インデックス割付けパターンデータから上述した4種類のインデックスパターンデータセットを選択する。図10(e)内で1と指定された画素位置に記録データが存在する場合、インデックスパターンデータセット1を選択する。同様に2と指定された画素位置に記録データが存在する場合にはインデックスパターンデータセット2を、3と指定された画素位置に記録データが存在する場合にはインデックスパターンデータセット3をそれぞれ選択する。さらに4と指定された画素位置に記録データが存在する場合にはインデックスパターンデータセット4をそれぞれ選択する。
【0057】
また、各インデックスパターンデータセットにおける一対のインデックスパターンデータのうち、双方向記録を行うためのインデックスパターンデータと、片方向記録のためのインデックスパターンデータのいずれを選択するかの判定を行う。この判定は上記第1の実施形態と同様に画素入力値、重み付け係数と上述の式1を用いて行う。
【0058】
以上のインデックスパターンデータ選択方法を使用した記録データの作成処理を、インデックスパターンデータセット1が選択される画素位置を例にして説明する。まず、上述したインデックス割付けパターンデータから入力画素の画素位置に応じて、上述した4種類のインデックスパターンデータセットからインデックスパターンデータセット1を選択する。次に前述の双方向記録を行うか片方向記録を行うかの判定結果に基づいてインデックスパターンデータ1A、もしくはインデックスパターンデータ1Bを選択し(第2の選択工程)、選択されたインデックスパターンデータに基づいて画素データを展開する。
【0059】
図11は、この第2の実施形態における記録データの生成処理に関するフローチャートである。S1101では、各インク色の画素入力値である、Vc、Vm、Vy、Vkを取得する。S1102ではS1101で入力された各インク色の画素入力値から、インク量とその重み付け係数とによりKの値を算出する。S1103では、S1102で算出したKの値が予め設定された閾値S以上であるか否かを判定する。次に、S1103にて記録データの画素位置に対応したインデックスパターンデータセットを図10(e)に示すインデックス割付パターンデータを参照し、選択する。
【0060】
ここではS1103において、インデックスパターンデータセット1を選択する画素を例に説明する。S1104でKの値が閾値S未満であると判断された画素には、S1103においてインデックスパターンデータセット1を選択しているので、S1105にて往走査と復走査とで記録が行われるインデックスパターンデータ1Aを選択する。一方、S1104でKの値が閾値S以上であると判断された画素は、S1103においてインデックスパターンデータセット1を選択しているので、S1106にて往方向走査のみで記録が行われるインデックスパターンデータ1Bを選択する。S1107にて全入力画素に対しインデックスパターンデータ選択処理が終了したかを判断する。終了と判断されるまでS1101に戻り処理を繰り返す。そして、全ての入力画素に対してインデックスパターンデータの選択処理が終了したと判断された場合には記録データを生成し、記録を開始する。
【0061】
図12は、この第2の実施形態によって所定領域内の画像を形成する際のデータ処理および処理されたデータに基づいて行われる記録動作などを説明するための模式図である。図12(a)は横12画素、縦12画素のサイズを有し、解像度が600dpiである入力画像データの各画素データに対し、図11のフローチャートに基づき画素入力値と重み付け係数とにより算出されるK値が閾値S以上か否かを判定した結果を示している。ここで、白抜きの画素はKの値が閾値S未満であると判断された画素を示している。一方、黒く塗りつぶされた画素はKの値が閾値S以上であると判断された画素を示している。
【0062】
また、図12(b)は、縦12画素、横12画素のサイズの画像の各画素位置に応じたインデックスパターンデータセットを選択するためのインデックス割付けパターンデータの模式図である。図12(c)は、図12(a)の判定結果と、図12(b)に記載のインデックス割付けパターンデータより選択されたインデックスパターンデータセットとに基づいて、最終的に各画素に割り当てるインデックスパターンデータを示している。ここで、図12(c)の中に1A、2A、3A、4Aと記された画素に対しては、前記インデックスパターンデータ1A、インデックスパターンデータ2A、インデックスパターンデータ3A、インデックスパターンデータ4Aをそれぞれ選択する。一方、図12(c)の中に1B、2B、3B、4Bと記された画素では、前記インデックスパターンデータ1B、インデックスパターンデータ2B、インデックスパターンデータ3B、インデックスパターンデータ4Bをそれぞれ選択する。
【0063】
図12(d)は、各画素を記録する際の走査方向を示しており、同図から明らかなように、図12(c)において1A、2A、3A、4Aを選択した画素は往走査および復走査で記録する。また、図12(c)において1B、2B、3B、4Bを選択した画素は往方向のみで記録する。よって、図12(d)中の○印が記載された画素は往復方向で記録される。×印の記載された画素は往方向のみで記録される。
【0064】
図12(e)は、2回の走査で記録すべき画像を完成させる、いわゆる2パス分割記録の動作を示す模式図であり、この2パス分割記録の基本的な動作は、上記第1の実施形態と同様である。また、図12(f)は、同図(e)に示す領域内の画素が同図(e)の記録動作における何回目の走査で記録されるかを示す模式図である。ここで、図示の各画素内に記載されている数字1,2,3は、1回目の記録走査、2回目の記録走査、3回目の記録走査をそれぞれ意味している。すなわち、1,2の数字が1,2の数字が記載されている画素は、1回目の記録走査と2回目の記録走査とで記録される画素であり、これらの画素は往走査と復走査とで記録される。また、2、3の数字が記載されている画素は、2回目の記録走査と3回目の記録走査とで記録される画素であり、これらの画素も往走査と副走査とで記録される。
【0065】
一方、1の数字が記載されている画素は、1回目の記録走査のみで記録を行うので往方向でのみ記録される。また、3の数字が記録されている画素は、3回目の記録走査のみで記録される画素であり、往走査でのみ記録される。このように、色むらが発生しないと判断された画素は、2パス分割記録によって往・復両走査で記録される。これに対し、色むらが発生すると判断された画素は、往方向への1回の記録走査(1パス記録走査)での記録印字となり往方向でのみ記録される。この場合、復方向への記録時は空のスキャンとなり記録を行わない。このように、この第2の実施形態においても、前記2パス分割記録の走査を保ちつつ、1回の往走査で記録することで、記録時間を増大、および色むらの発生を抑制することが可能となる。
【0066】
以上説明したように、この第2の実施形態においても、入力される画素データ単位で往復記録時の色むらが発生し易いか否かを判断し、色むらが発生し易い領域では記録走査回数を半減させて往方向のみで記録を行う。従って、この第2の実施形態においても、上記第1の実施形態と同様に、各画素を記録する際の記録走査の方向を制御することが可能となり、往走査および復走査を実行することによる記録時の色むら、および記録時間の増加を抑制することが可能となる。さらに、この第2の実施形態によれば、記録データの分散性を高め記録走査の方向をより分散させることが可能であるため、テクスチャの発生も抑制することが可能となり、より高品質な画像を形成することが可能になる。
【0067】
(その他の実施形態)
上述の各実施形態では、インクジェット記録装置が本発明のデータ処理装置としての機能を有し、ドット配置パターンデータ(インデックスパターンデータ)を用いた2値化処理と、カラム間引き方法を用いた記録方法とを組み合わせた処理を行うものとなっている。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、往方向、復方向に記録データの分配を可能とし、所定領域において記録データの設定が可能であるインクジェット記録装置でも構わない。
【0068】
また、上記実施形態では、色むら発生値を各インク色の画素データの値と重み付け係数とに基づいて算出し、算出した色むら発生値に基づいてインデックスパターンデータの選択を行うようにした。しかし、色むら発生値の算出を行う単位である単位領域を一つの画素とせず、複数の画素からなる領域とし、その複数の画素を含んだ単位領域毎に色むら発生値を算出しても良い。この場合、単位領域内の複数の画素に使用するインデックスパターンデータは、その単位領域に対応する各インク色の画素データに、インク色毎に定めた重み付け係数とを乗じて得られる乗算値の総和に基づき選択する。つまり、単位領域内に位置する各画素の記録データは、同一のインデックスパターンデータを用いて定めることとなる。
【0069】
さらに、本発明は、上述した各実施形態の機能を実現する、図8、および図11に示したフローチャートの手順を実現するプログラムコード、またはそれを記憶した記憶媒体によっても実現することができる。また、システムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても達成される。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0070】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも含む。
【0071】
さらに、「インク」とは、上記「記録」の定義と同様広く解釈されるべきものである。つまり本実施形態で用いた「インク」とは、記録媒体上に付与されることで、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。
【0072】
またさらに、「ノズル」とは、特にことわらない限り吐出口、ないしこれに連通する液路およびインク吐出に利用されるエネルギを発生する素子を総括して言うものとする。
【0073】
また、本発明は、電気熱変換素子を用いてインクを吐出する方式を示したが、ピエゾなどの電気機械変換素子を用いてインクを吐出する方式を採用することも可能である。
【0074】
また本実施形態では、記録媒体の幅寸法を光学式センサを用いて検出し、その検出データを制御手段であるCPUに入力するようにしたが、記録媒体の幅寸法は、予め使用者が入力手段を介してCPUに入力するようにしてもよい。
【0075】
加えて、本発明に係るインクジェット記録装置は、コンピュータ等の情報処理機器の画像出力端末として一体または別体に設けられるものの他、リーダ等と組み合わせた複写装置、さらには送受信機能を有するファクシミリ装置の形態を採るものであっても良い。
【0076】
なお本発明は、前述した実施形態の機能処理を実現するソフトウェアのプログラムを、システムあるいは装置に対して直接または遠隔から供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータが該供給されたプログラムコードを読み出して実行する場合を含む。この場合、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、該コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。また、コンピュータにインストールされるプラグラムは、本発明の機能処理を実現するものであればよく、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等、プログラムの形態は問わない。
【0077】
その他、プログラムの供給方法としては、クライアントコンピュータのブラウザを用いてインターネットに接続しホームページから本発明のプログラムそのもの、もしくは圧縮され自動インストール機能を含むファイルをダウンロードすることでも供給できる。また、本発明のプログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるホームページからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムファイルを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明の範囲に含まれるものである。
【0078】
またコンピュータが読み出したプログラムを実行して、前述した実施形態の機能が実現される他、そのプログラムによってコンピュータ上で稼動しているOS等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現され得る。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、上述の記録媒体を用いる機器すべてに適用可能である。具体的な適用機器としては、プリンタ、複写機、ファクシミリ等の事務機器や、工業用生産機器などを挙げることができる。また、本発明は、大型の記録媒体に対して高速に記録を行う機器などに特に有効である。
【符号の説明】
【0080】
101 ノズル列
102 ノズル列
103 ノズル列
104 ノズル列
1 キャリッジ
2 装置本体
5 記録ヘッド
35 切断ユニット
300 主制御部
301 CPU
302 ROM
303 RAM
315 ホストコンピュータ
n ノズル
M マトリクス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なるインクの吐出を可能とする複数の記録ヘッドを所定の主走査方向に沿って往復移動させると共に、インクの吐出、非吐出を規定する記録データに基づいて前記各記録ヘッドからのインクの吐出を制御して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置であって、
前記記録データを画像データに基づいて生成する記録データ生成手段と、
前記画像データを構成する単位画像データの値に基づいて定められた色むら発生値が、予め定めた閾値以上であるか否かを判定する判定手段と、を備え、
前記記録データ生成手段は、前記色むら発生値が閾値以上であるとき前記単位画像データに対応する単位領域に対し前記記録ヘッドによる往走査と復走査とによるドットの形成を可能とし、前記色むら発生値が閾値未満であるとき前記単位領域に対し前記記録ヘッドによる往走査と復走査のいずれか一方でのみドットの形成を可能とするデータを前記記録データとして生成することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記記録データ生成手段は、
前記単位領域内に形成すべきドットからなるパターンを前記記録ヘッドの往走査と復走査とで記録可能とするパターンデータを、前記単位画像データの値に応じて複数備えた第1のドット配置パターンデータと、
前記単位領域内に形成すべきドットからなるパターンを前記記録ヘッドの往走査と復走査のうち、予め定めた一方への移動においてのみ記録可能とするパターンデータを、前記単位画像データの値に応じて複数備えた第2のドット配置パターンデータと、
前記色むら発生値が前記閾値以上であるとき前記第1のドット配置パターンデータを選択し、前記色むら発生値が前記閾値未満であるとき前記第2のドット配置パターンデータを選択する選択手段と、を備え、
前記選択手段によって選択したドット配置パターンを構成する複数のパターンの中から前記単位画像データの値に応じたパターンデータを前記単位画像の記録データとして定めることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記記録データ生成手段は、
前記単位領域内に形成すべきドットからなるパターンを前記記録ヘッドの往走査と復走査とで記録可能とするパターンデータを、前記画像データの値に応じて複数備えた第1のドット配置パターンデータと、前記単位領域内に形成すべきドットからなるパターンを前記記録ヘッドの往走査と復走査のうち、予め定めた一方への移動においてのみ記録可能とするパターンデータを、前記画像データの値に応じて複数備えた第2のドット配置パターンデータと、からなる複数のドット配置パターンデータセットと、
記録すべき画像の中の前記単位領域の位置に応じて前記ドット配置パターンデータセットの中から所定のドット配置パターンデータを選択する第1の選択手段と、
前記色むら発生値が前記閾値以上であるとき、前記第1の選択手段によって選択されたドット配置パターンデータセットの中から前記第2のドット配置パターンデータを選択し、前記色むら発生値が前記閾値未満であるとき、前記第1の選択手段によって選択されたドット配置パターンデータセットの中から前記第1のドット配置パターンデータを選択する第2の選択手段と、を備え、
前記選択手段によって選択したドット配置パターンを構成する複数のパターンの中から前記単位画像データの値に応じたパターンデータを前記単位画像の記録データとして定めることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記色むら発生値は、前記複数のインク色に対応した複数の前記単位画像データの値それぞれに、前記各インク色毎に定められた重み付け係数を乗じて得られる複数の乗算値の総和であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記単位領域は画素であり、前記単位画像データは、前記画素の中にドットを形成するデータであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
異なるインクの吐出を可能とする複数の記録ヘッドを所定の主走査方向に沿って往復移動させると共に、インクの吐出、非吐出を規定する記録データに基づいて前記各記録ヘッドからのインクの吐出を制御して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記記録データを画像データに基づいて生成する記録データ生成工程と、
前記画像データを構成する単位画像データの値に基づいて定められた色むら発生値が、予め定めた閾値以上であるか否かを判定する判定工程と、を備え、
前記記録データ生成工程は、前記色むら発生値が閾値以上であるとき前記単位画像データに対応する単位領域に対し前記記録ヘッドによる往走査と復走査とによるドットの形成を可能とし、前記色むら発生値が閾値未満であるとき前記単位領域に対し前記記録ヘッドによる往走査と復走査のいずれか一方でのみドットの形成を可能とするデータを前記記録データとして生成することを特徴とするインクジェット記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−20526(P2012−20526A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160998(P2010−160998)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】