説明

インクジェット記録装置及び廃インクタンクの空き容量判定方法

【課題】廃インク吸収体が収納された廃インクタンクを有するインクジェット記録装置において、廃インクタンクの空き容量を精度良く検出することを可能にする。
【解決手段】記録ヘッド46から排出された廃インクが流入する廃インク量検出室43と、廃インク量検出室43と廃インクタンク46との連通、遮断を切換えるよう開閉する弁44とを備える。また、弁44を閉じることによって廃インク量検出室43に廃インクを溜めた後、弁43を開いて廃インク量検出室43から廃インクタンク43へと一定量の廃インクを流入させ、その際の所要時間に基づいて廃インクタンク46の空き容量を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクを吐出することで記録を行うインクジェット記録装置に関する。特に本発明は、記録ヘッドから排出された、記録に寄与しないインク(廃インク)を貯蔵する廃インクタンクの実際の空き容量を精度良く判定することが可能なインクジェット記録装置及び廃インクタンクの空き容量判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット記録装置は、記録媒体を横切って往復移動するキャリッジに搭載されるインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッドと称す)を利用して記録を行う、所謂シリアル型のインクジェット記録装置が広く用いられている。このシリアル型のインクジェット記録装置では、記録ヘッドがキャリッジと共に記録媒体を横切って移動すると共に、その移動の間に記録ヘッドの各インク吐出用のノズル内に設けられた吐出エネルギー発生部が駆動され、記録媒体上にインクを吐出してイメージまたは文字を形成する。また、記録ヘッドへのインクの補給は、インクタンクからのインクを記録ヘッドへと供給することによって行う。
【0003】
インクジェット記録装置においては、記録ヘッドのインク吐出部に、紙粉やゴミ等の異物が付着したり、吐出部分のインクが乾燥して粘度が増したり固着したりすることによって、インク滴の飛翔方向がずれ、画像品質が低下するなどの吐出不良が発生することがある。また、増粘、固着などが進めば、インク滴が吐出されない吐出不能状態に陥ることもあり、その場合には画像に及ぼす悪影響はより深刻化する。こうした問題を軽減するため、現在のインクジェット記録装置には、非記録時に記録ヘッドのノズルの開口部(吐出口)を、ゴム状の弾性部材で形成されたキャップにより密閉する構成が採られている。しかし、非記録時にインク吐出部をキャップにより密閉するという対策のみでは、記録動作を行わずに長時間放置した場合に、ノズル内の表面側のインクが増粘することがある。このため、長期間放置した後の始めの数回のインク吐出動作では、インク滴を適正に吐出させることができないことがある。
【0004】
そのため、記録動作の開始前にまずインクを吐出し、ノズル内のインクの状態を正常状態に復帰させる予備吐出動作を行っている。さらに、前記予備吐出動作でノズル内のインク状態が正常に復帰しない場合には、キャッピング状態でポンプ等により強制的にノズル内のインクを吸引あるいは加圧してインクを排出させ、ノズル内のインクを正常に復帰させる回復動作も行われている。また、記録動作中にも、インクの吐出によって次第に記録ヘッドの吐出口が形成されている面(吐出口面)にインクが付着してきて、これが吐出不良の原因となるため、所定のタイミングで記録ヘッドの予備吐出動作を行っている。上記のような予備吐出動作や吸引動作により吐出口より排出されたインクは、廃インクとして装置内で処理される。また、縁無し記録時に記録媒体の外側へ吐出されたインクも、同様に廃インクとして処理される。
【0005】
インクジェット記録装置内には、このような廃インクを貯蔵するための廃インクタンクが付設されている。廃インクタンクには、インクジェット記録装置の製品寿命の間に発生する廃インクを全て貯蔵するパーマネントタイプのものと、途中で交換するタイプのものがある。これらいずれのタイプの廃インクタンクにあっても、廃インクが廃インクタンクから溢れることを防止するために、廃インクタンクの空き容量検出を行うのが一般的である。
【0006】
もっとも一般的な廃インク量の検出方法として、ドットカウント法が知られている。1ノズルから1回で吐出されるインク量は、通常一定の量に定められている。(例えば5pl〜1pl等)。1回の吐出によるインク吐出量をもとにして、予備吐出動作や吸引動作によって排出される廃インク量を算出するものである。具体的には、吐出の回数(ドット数)に1回の吐出における吐出インク量を乗じ、その累積値によって、インク吐出総量を求め廃インクタンクの残量を検出する方法である。しかし、この方法では規定されている1回当りの排出量にばらつきがある他、廃インクの蒸発による減少分が加味されておらず、精度の良い空き容量検出手段であるとは言い難い。
【0007】
このような問題を解決するため、特許文献1においては、廃インクタンクにおける廃インクの液面の上下に応じて移動するフロートボールを用い、フロートボールの上下位置をセンサによって検出することで空き容量を検出する技術が開示されている。この方法によれば精度良く空き容量を検出することができるが、取り外しのとき等に廃インクがこぼれるのを防止するための廃インク吸収体を利用することができず、取扱い難いという問題がある。
【0008】
これに対し、廃インク吸収体を利用した廃インクタンクの空き容量検出手段として、特許文献2には、廃インクタンク内部に設けられた廃インク吸収体と、廃インク吸収体の所定の部位に接触して設けられた体積膨張体とを備えたものが開示されている。この体積膨張体は、廃インクを吸収することで、廃インク吸収体よりも大きな体積膨張率で膨張をするものとなっており、この体積膨張体の膨張の程度によって廃インクタンク内の空き容量を検出するようになっている。但し、体積膨張体に廃インクが到達するのは廃インク吸収体すべてが廃インクを吸収してからであって、前記より大きな体積膨張体の体積変化を検出することによって廃インクタンクの満杯を検出している。
【0009】
また、特許文献3には、廃インク量検出室を内部に持ち、廃インク量検出室以外の廃インクタンク部分は廃インク吸収体で埋められている廃インクタンクが開示されている。この廃インクタンクでは、廃インクは最初は廃インク吸収体に吸収されていくが、廃インク吸収体の全てが廃インクを吸収すると、その後は廃インク吸収体へと流入してきた廃インクが前記廃インク量検出室に溢れ出る。廃インク量検出室には、溢れ出た廃インクを検出する手段が備えられており、廃インク量検出室内に溢れ出た廃インクを検出することによって廃インクタンクが満杯であることを検出するようになっている。
【0010】
【特許文献1】特開平2−011334号公報
【特許文献2】特許第2746624号公報
【特許文献3】特許第3625805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献2及び3においては、検出できるのは廃インクタンクが満杯状態にあるか否かを検出するものとなっている。このため、ユーザは予知されることなく、廃インクタンクが満杯になったことを知らされこととなり、記録作業に支障を来たすという問題が生じる。すなわち、交換用の廃インクタンクの準備、あるいは製品寿命を迎えたインクジェット記録装置の交換準備などが行われていない状態で廃インクタンクの満杯を知らされることとなるため、ユーザは記録作業を長時間に亘って中断せざるを得ない事態に陥ることがある。従って、こうした事態を避けるためにも、廃インクタンクが満杯に近づいた場合には、それを検出してユーザに知らせることが可能なインクジェット記録装置が望まれている。
【0012】
このような要請に対応するために、特許文献2または3と前述のドットカウント法とを組み合わせることとも考えられる。すなわち、廃インクが満杯に近づいてきたことをドットカウント法で検出し、満杯になったことを、特許文献2または3に開示の技術で検出するという方法を採ることも考えられる。しかし、前述のようにドットカウント法の精度は良いとは言えないため、満杯に近づいたとのメッセージを受けて準備を行ったにも拘わらず、満了検出までに相当の期間が経過することもあり、準備を促すタイミングとして不適切な感をユーザに与えることがある。
【0013】
本発明は、廃インク吸収体が収納された廃インクタンクを有するインクジェット記録装置において、廃インクタンクの空き容量を精度良く検出することを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成を備える。
すなわち、本発明の第1の形態は、記録ヘッドから記録媒体へのインク吐出によって画像の記録を可能とすると共に、前記記録ヘッドから排出された記録に使用されない廃インクを吸収する廃インク吸収体が収納された廃インクタンクを有するインクジェット記録装置であって、前記記録ヘッドから排出された廃インクが流入する廃インク保持部と、前記廃インクタンクと前記廃インクタンクとの連通、遮断を切換える切換え手段と、前記廃インク保持部と前記廃インクタンクとを遮断することによって前記廃インク保持部に溜められた一定量の廃インクが、前記廃インク保持部と前記廃インクタンクとを連通させることによって前記廃インクタンクへと流入する際の所要時間に基づいて廃インクタンクの空き容量を判定する判定手段を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の第2の形態は、記録ヘッドから記録媒体へのインク吐出によって画像の記録を可能とすると共に、前記記録ヘッドから排出された記録に使用されない廃インクを吸収する廃インク吸収体が収納された廃インクタンクを有するインクジェット記録装置における廃インクタンクの空き容量判定方法であって、前記記録ヘッドから排出された廃インクが流入する廃インク保持部と前記廃インクタンクとの連通を遮断して前記廃インク保持部に廃インクを溜める工程と、前記廃インク保持部に溜められた一定量の廃インクが、前記廃インク保持部と前記廃インクタンクとを連通させることによって前記廃インクタンクへと流入する際の所要時間を計測する工程と、前記所要時間に基づいて廃インクタンクの空き容量を判定する工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、廃インク保持部から廃インクタンクへと一定量の廃インクが流入するのに要する時間を計測し、その計測時間によって、廃インクタンク内の廃インク吸収体の空き容量を検出する。このため、廃インクタンク内に実際に収容されている廃インクの量を実際の状態に即して高精度に判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態におけるインクジェット記録装置1の構成を模式的に示す図である。このインクジェット記録装置1では、インクタンク10から供給されたインクが、インク供給管20を経由して記録ヘッド30に供給される。
【0019】
記録ヘッド30は、図外のキャリッジと共に図の紙面と直交する方向に往復移動(主走査)を行うようになっている。また、記録ヘッド30には、主走査方向と交差する方向(例えば主走査方向と直交する方向)に沿って、インク吐出用のノズルが配列されており、このノズル内に設けられたヒータなどのインク吐出エネルギー発生素子を駆動することによってインクが吐出される。
【0020】
記録媒体への記録は、キャリッジと共に記録ヘッド30を主走査方向へと移動させつつ、記録データに従ってノズルからインクを吐出させることにより行う。また、記録ヘッド30の各ノズル内のインクを吐出に適した状態にするため、各ノズル内から排出されたインク、すなわち記録に使用されなかったインク(以下、廃インクと称す)は、まず、吸引キャップ40や予備吐口41に集められる。そして、廃インク回収管42及び廃インク量検出室43を経由して、最終的に廃インクタンク46に蓄積される。なお、この廃インク量検出室43と弁44および廃インク量検出室43から弁44に至る廃インク回収管42によって廃インク保持部が構成されている。
【0021】
インクタンク10は、その外殻をなす所定の剛性を供えたケース14と、このケース内に収納され、柔軟部材で形成されたインク袋体11とを備える。インク袋体11のインク供給口はゴム栓12によって密閉されており、ここにインク供給管20の一端に設けられた先鋭の中空管であるインク針が差し込まれることにより、インク袋体11内のインクをインク供給管20へと導出可能になっている。また、ケース14は、その空気導入口に設けたゴム栓13を介して、加圧ポンプの一端部に接続可能となっており、インク袋11のゴム栓12へとインク針を差し込むと同時に、加圧ポンプ50がケース14の内部空間と連通する。加圧ポンプ50を動作させることでケースの内部は、その全域に渡って加圧される。このため、ケース14の内部が加圧されると、インク袋体11が押し潰され、インクがインク供給管20へと押し出される。インクタンク10から供給されたインクは、インク供給管20を経由して記録ヘッド30に供給される。
記録ヘッド30は、その壁の一部が可撓膜31により構成されている。可撓膜31は、インクの消費に伴う記録ヘッド30の内部の圧力変化に応じて伸縮する。可撓膜31の伸縮は、可撓膜31の一端部に接続されたアーム32に伝わり、アーム32の他端部に接続された弁33に伝わる。弁33は可撓膜31の伸縮に伴ってインク供給管20と記録ヘッド30との接続部30aを開閉させる。
【0022】
前述のように、インクジェット記録装置において、廃インクは、記録ヘッド30の吐出の信頼性を保つために不可避的に発生する。この廃インクは、吸引キャップ40に廃棄されるものと、予備吐口41に廃棄されるものとに大別される。吸引キャップ40は、記録媒体が通過する領域(記録領域)から外れた場所に位置し、非記録時に記録ヘッド30のインク吐出口が形成されている面(吐出口面)を保護・保湿するために使われる。この他、吸引キャップは、記録開始前や記録中に行われる予備吐出においてインクを受けたり、ノズル内のインクを吸引回復したりするときにも使用される。
【0023】
予備吐出によって吸引キャップ40の表面に溜まった廃インクは、吸引ポンプ51によって回収され、廃インク回収管42及び廃インク量検出室43を経由して廃インクタンク46に蓄えられる。また、吸引回復が行われるときは、記録ヘッド30のインク吐出面と吸引キャップ40とが密着し、吸引ポンプ51を動作させることで記録ヘッド30からインクが吸い出され、廃インク回収管42及び廃インク量検出室43を経由して廃インクタンク46に蓄えられる。
【0024】
予備吐口41は、吸引キャップ40が配置されている位置とは反対側の記録領域から外れた位置に設置される場合、あるいは記録領域内の適当な位置に設置される場合がある。予備吐口41に溜まった廃インクは、重力によって廃インク回収管42及び廃インク量検出室43を経由して廃インクタンク46に蓄えられる。
【0025】
廃インク量検出室43には、ここに溜まる廃インクの量を電気的に検出する廃インク量検出手段45が設けられている。すなわち、本実施形態における廃インク量検出手段45は棒状または板状の3つの電極45−0(第1の電極)、電極45−1(第3の電極)及び電極45−2(第2の電極)を備える。ここで電極45−1、45−2は廃インク量検出室43の上面部に、電極45−0は底面にそれぞれ設けられている。上面部に設けられた電極45−1の下端部は、電極45−2の下端部より上方に位置している。
【0026】
そして、これらの電極45−0と45−1との間の導通状態、及び電極45−0と45−2との間の導通状態をそれぞれ検出することによって廃インク量を検出することができる。すなわち、廃インク量検出室43の底部に設けられた電極45−0と電極45−1との間隔は、電極45−0と電極45−2との間隔よりも大きい。このため、電極45−0と45−2との間が非導通から導通へと切換わった直後の廃インクの量(第2の廃インク量)は、電極45−0と45−1とが非導通から導通へと切換わった直後の廃インクの量(第2の廃インク量)よりも多いと判定することができる。なお、廃インクタンク46の内部には吸収体が充填されており、交換作業のとき等において廃インクが外部へと漏出するのを防止している。
【0027】
次に、記録動作におけるインクの流れと各部の動きを説明する。
【0028】
(初期充填動作)
まず、記録ヘッドへのインクの初期充填動作を説明する。
インクタンク10からインク供給管20へのインクの導出は、加圧ポンプ50を使用してケース14内を加圧することによって行う。しかし、記録ヘッド30内の弁33がインク供給管20と記録ヘッド30との連通を遮断する力は前記圧力よりも大きいため、このままでは弁33が開いてインク供給管20と記録ヘッド30とが連通することはない。
【0029】
弁33を開くためには、吸引キャップ40を記録ヘッド30に密着させ、吸引ポンプ51を作動させることで、記録ヘッド30の内部を減圧する必要がある。すなわち、記録ヘッド30内を吸引ポンプ51によって減圧し、可撓膜31と共にアーム32を移動させることにより、弁33はアーム33と共に移動して開き、記録ヘッド30にインクを供給することができる。所定量のインクが記録ヘッド内に供給されたら吸引ポンプ51を止め、吸引キャップ40を記録ヘッド50から離間させる。その結果、記録ヘッド30内の負圧値との釣り合いによって弁33が閉じるまでインクが記録ヘッド30内に供給される。
【0030】
(記録中のインク供給動作)
次に、記録中に行われる記録ヘッドへのインク供給動作を説明する。
記録中は常に加圧ポンプ50が動作しているので、インク袋体11内に貯蔵されたインクは常に加圧状態にある。記録によって記録ヘッド30内のインクが消費されていくと、記録ヘッド30内の負圧が高まり、その結果、弁33が開く。このため、加圧されたインクが記録ヘッド30に供給され、記録ヘッド30内の負圧との釣り合いによって弁33は閉じられる。記録中は上記の動作の繰り返しによって、インクタンク10に蓄えられたインクが記録ヘッド30に供給される。
【0031】
(廃インクタンクの空き容量検出動作)
次に、廃インクタンク46内に廃インクを貯留できる空き容量の検出動作を説明する。
本実施形態では、前述のドットカウント法と、本実施形態特有の検出動作とを組み合わせて正確な廃インク量の検出を可能にしている。本実施形態で用いるドットカウント法では、予備吐出動作や吸引回復動作等の排出動作によって廃インクがどれだけ排出されるかをドット数に換算した値で予め規定しておき、排出動作の回数と1回当りの排出量(ドットカウント値)とを掛け合わせて排出インク量を検出する。さらにその検出値を廃インクタンク46の容量から減算することによって廃インクタンク46内の空き容量を算出している。但し、このドットカウント法は、前述の背景技術の欄でも述べたように、十分な検出精度を得られないことから、本実施形態では、さらに後述の空き容量検出動作を行って精度の高い検出を行っている。
【0032】
インクジェット記録装置1が使用開始された直後や、廃インクタンク46が新しいものに交換された直後は、廃インクタンク46は廃インクを十分に貯蔵するスペースを持っている。このため、廃インク量検出室43に流入してきた廃インクは弁44を介してそのまま廃インクタンク46に流入させる。しかし、前述のドットカウント法により廃インクタンク46が満杯近くになったと判定されたときには、以下に述べるような廃インク量検出動作を行う。
まず、弁44を閉じ、廃インクを廃インク量検出室43に溜める。そして、廃インク量検出室43内の廃インクが、電極45−1によって検出されるまで溜まったら(廃インクが電極45−1と電極45−0とが導通状態になるまで溜まったら)弁44を開ける。すると溜まっていた廃インクが廃インクタンク46に流入していくが、その際の廃インクタンク46内に収納されている廃インク吸収体46aが廃インクを吸収する速度は、それまでに廃インク吸収体46aに吸収されている廃インク量が多くなるほど低下する。
【0033】
図2に、廃インク吸収体46aの廃インク吸収量と、一定量(ここでは、電極45−1の下端位置から電極45−2の下端位置までの廃インク量)の廃インクを吸収するために必要とする時間との関係を示す。図示のように、廃インク吸収体46a内に吸収されている廃インクが満杯に近いほど、新たに流入してきた廃インクを吸収するには時間がかかる。この点に着目し、本実施形態では廃インク量が電極45−1の下端位置を下回ってから電極45−2の下端位置を下回るまでの所要時間をカウントする。そして、カウントした所要時間が閾値TH1未満(第1の閾値未満)であれば廃吸収体46aにはまだ空き領域が十分に存在すると判定されるので、特に何の動作も行わない。
【0034】
また所要時間が閾値TH1以上であり、かつ閾値TH1より長い閾値TH2(第2の閾値)未満(第2の閾値未満)であれば、廃インクタンク46が満杯に迫っていることをユーザに知らせるべく、所定の報知動作を行う報知手段を駆動する。さらに前記所要時間が閾値TH2以上(第2の閾値以上)であれば廃インクタンク46は満杯であると判定し、その判定結果に基づいて弁44を閉じると共に報知手段を駆動し、ユーザに廃インクタンク46の交換を促す。なお、この報知手段としては、表示手段、または音声発生手段など種々のものが適用可能である。また、この報知手段は、インクジェット記録装置とホストコンピュータのいずれか一方または双方に設けることが可能である。例えば、報知手段をホストコンピュータに設ける場合には、ディスプレーの画面上に表示させることができ、インクジェット記録装置1に報知手段を設ける場合には、後述の操作パネルにおける表示パネルなどに表示させることができる。
【0035】
図3は本発明を実施したインクジェット記録装置の制御系の構成を表すブロック図である。
図3において、100は操作パネルであり、この操作パネル100上には操作用のキー及び表示パネルが配されている。操作パネル制御部101は、操作パネル100上のキーの状態を監視し、押下されたキーによって適切な制御コマンドを、CPU103を含むインクジェット記録装置の制御部に対して送信する。また、表示パネルに表示する文字列を作成し、表示パネルの制御を行う。また、表示パネル上に配されたキーによりユーザがキー入力をすることが可能になっており、操作用のキーを用いてエラー発生状態からの回復処理の開始などのような、インクジェット記録装置1に対する種々の動作の指定を入力することが可能である。
【0036】
インターフェース104は、インクジェット記録装置とホストコンピュータ105とを接続し、ホストコンピュータ105よりデータを受信したり、ステータスを送信したりする機能を持ち、ホストコンピュータ105とのデータ送受信用通信ポートとして動作する。
【0037】
また、制御回路のバス106は、制御手段としてのCPU103とその他の装置を接続する機能を持つ。不揮発性メモリ102は各種情報を保存記録している記録装置であり、電力の供給が断たれても記録した情報を保持し続けることが可能である。モータドライバ107は、インクジェット記録装置のキャリッジを主走査方向へと移動させるキャリッジモータ、記録用紙の給紙、搬送、排紙を行う紙送りモータ、記録ヘッドの回復動作を行う回復モータ等の各種モータ類を制御するための制御回路である。
【0038】
記録ヘッド30は、記録用紙上に画像を記録する機能を持つ。交換式ヘッドの場合、ヘッド毎に固有のヘッドIDを持ち、ヘッドが交換されたかどうかはこのIDを比較することで判別できる。また本実施形態における記録ヘッド30は、ノズルからインクを吐出させる吐出エネルギー発生素子として電気熱変換素子(ヒータ)を用いている。なお、このヒータの発熱量(ヘッドランク)、温度センサ補正値(ヘッド内部の温度を示すセンサのバラツキの補正値)等には個体差があるため、それらはインクジェット記録装置の初期化動作の際にチェックされる。
【0039】
RAM(Random Access Memory)109は、電力が供給されている間のみ情報を保持できる記録装置であり、電力の供給が断たれると保持している情報は消滅する。ROM(Read Only Memory)110は、読み出しのみ可能な記録装置で、インクジェット記録装置の制御プログラムが格納されており、CPU103がこの制御プログラムを参照して制御、演算、比較、判定などの動作を行う。
【0040】
加減圧ポンプ制御部111は、図1に示す加圧ポンプ50及び吸引ポンプ51を制御するためのモジュールである。インクジェット記録装置1の動作状況に応じ、CPU103により加減圧ポンプ制御部111は制御される。廃インク量検出部112は、図1中の廃インク量検出手段45を制御し、廃インク量検出室43の廃インクタンク46の空き容量を検出する。そして、検出した廃インクタンクの空き容量値は、CPU103に送られ、CPU103は廃インク量検出室43の廃インクタンク46の空き容量に応じた制御を行う。廃インク弁制御部113は、CPU103からの制御指示に応じて図1中の弁44の開閉動作を制御をするモジュールであり、CPU103と共に制御手段を構成している。また、タイマー(時間計測手段)114は、前述のように、廃インクタンク46内の廃インク吸収体46aにおけるインクの吸収時間などを含む種々の時間計測動作を行う。なお、廃インク量検出手段45と、時間を計測する時間計測手段114と、制御手段(廃インク弁制御部113およびCPU103)などにより、本発明における判定手段が構成されている。
【0041】
以下にCPU103を含む制御系の制御動作を、図4のフローチャートを参照しつつ、より具体的に説明する。
インクジェット記録装置1に電源が投入されると、予備吐出あるいは吸引回復動作によって排出されたインク量を前述のドットカウント法によってカウントし、廃インクタンクの空き容量の計測を行う(S1)。この後、記録動作指示を、ホストコンピュータ105から記録指示を受けると、インクジェット記録装置1のCPU103は、ROM110より制御プログラムを読み出し、プログラムに従って各部の動作制御を実行する。すなわち、インターフェース104は、ホストコンピュータ105より記録データを受信し、RAM109に書き込み、書き込まれたデータに基づいてCPU103がモータドライバ107、記録ヘッド30の制御を行い、記録用紙に対し記録データに基づいて記録動作を行う(S2,S3)。
【0042】
次に、CPU103はドットカウントにより廃インクタンク46が満杯に近づいたか否かを判定する(S4)。ここで、廃インクタンク46内の廃インク量が満杯に近づいたと判定された場合、その判定結果に基づいてCPU103は、次に説明する廃インクタンクの空き容量の検出動作を実行する。
まず、CPU103は廃インク弁制御部113に対して弁44を閉じるように指示を発し、この指示を受信した廃インク弁制御部113は、弁44を閉じる(S5)。
次に、CPU103は廃インク量検出部112に対して、廃インク量検出室43内の廃インク量が電極45−1の下端位置に達したかどうかを検出するように指示を発する(S6)。この指示を受信した廃インク量検出部112は、電極45−0と電極45−1とが導通しているか否かの確認を連続的に行い、導通が確認されたらCPU103に信号を送る。CPU103は、電極45−0と電極45−1とが導通していることを示す信号を受信すると、廃インク弁制御部113に対して弁44を開けるように指示を発し(S7,S8)、この指示を受信した廃インク弁制御部113は弁44を開く。
【0043】
次に、CPU103は廃インク量検出部112に対して、廃インク量検出室43の廃インク量が電極45−2の下端位置を下回ったかどうかを検出するように指示を発する(S9)。指示を受信した廃インク検出部112は、電極45−0と電極45−1とが導通しているか否かの確認を連続的に行い、導通が遮断されたことが確認されたらCPU103に信号を送る。電極45−0と電極45−1とが導通していることを示す信号を受信すると、CPU103はタイマー114に対して、時間の計測を開始するように指示を発し(S10,S11)、その指示を受信したタイマー114は時間の計測を開始する。
【0044】
次に、CPU103は、廃インク量検出部112に対して、廃インク量検出室の廃インク量が電極45−2の下端部を下回ったかどうかを検出するように指示を発する(S12)。この指示を受信した廃インク量検出部112は、電極45−0と電極45−2とが導通しているか否かの確認を連続的に行い、導通が遮断されたことが確認されるとCPU103に信号を送る。CPU103は、電極45−0と電極45−2との導通が遮断されたことを示す信号を受信すると、タイマー114に対して時間Tの計測を終了する指示を送ると共に、計測した時間を送信するように指示を発する(S13,S14)。CPU103からの指示を受信したタイマー114は、時間Tの計測を終了し、計測した時間をCPU103に送信する。
【0045】
タイマー114から送信された時間Tのデータを受けて、CPU103は不揮発性メモリ102より読み出した閾値TH1、閾値TH2と、計測された時間Tとを比較する(S15)。ここで計測された時間Tが閾値TH1未満であれば、S5へ戻り、再び廃インクタンクの空き容量検出動作を実行する。また、計測された時間Tが閾値TH1以上かつ閾値TH2未満(第1の閾値以上かつ第2の閾値未満)であれば、CPU103は操作パネル制御部101に対して廃インクタンク46が満杯に近づいていることをユーザに知らせるメッセージを発するように指示を出す(S16)と共に、S5へ戻り、再び廃インク量検出動作を実行する。
【0046】
CPU103からの指示を受信した操作パネル制御部101は、廃インクタンク46が満杯に近づいていることをユーザに知らせるメッセージを表示パネル上に表示する。なお、このメッセージの表示は、インクジェット記録装置側だけでなく、ホストコンピュータ105側で行うようにすることも可能である。すなわち、メッセージに関するデータをインターフェース104を介してホストコンピュータ105に送り、ホストコンピュータ105のディスプレーにメッセージを表示させるようにすることも可能である。
【0047】
一方、タイマで計測された時間が閾値TH2を上回っていれば、CPU103は操作パネル制御部101に対して廃インクタンク46が満杯であり、交換を促すメッセージをユーザに対して発するように指示を発する(S17)。さらに、廃インク弁制御部113に対して弁44を閉じるように指示を発する(S18)。
【0048】
命令を受信した操作パネル制御部101は、表示パネル上に廃インクタンク46が満杯であると判定し、廃インクタンク46の交換を促すメッセージを表示パネルに表示させるか、あるいはメッセージをホストコンピュータへと送りディスプレーに表示させる。また、指示を受信した廃インク弁制御部113は、弁44を閉じる。この後、廃インクタンク46が交換されるまでは、CPU103は記録動作の指示を発生せず、記録動作を禁止状態にする(S20)。廃インクタンク46が交換されると、CPU103は廃インク弁制御部113に対して弁44を開けるように指示を発し(S21)、指示を受けた廃インク弁制御部113が弁44を開く。また、CPU103は廃インクカウンタ46をリセットし(S22)、次の記録動作に備える。
【0049】
以上のように、本実施形態では、廃インクタンク46における廃インク吸収体46aが一定量の廃インクを吸収するための所要時間を計測し、その計測時間によって廃インクタンク46の空き容量を判定している。このため、廃インク量を廃インク滴の数に換算して、その廃インク滴の数によって廃インクタンク内の空き容量を求めるドットカウント法のみを用いる場合に比べて、実際に廃インクタンク内に貯留されている廃インクの量に即した空き容量の判定が可能となる。このため、判定の精度は大幅に向上する。また、廃インクタンクの満杯が近づいてきたらユーザに対して交換の準備をするようメッセージを発するため、廃インクタンク46が満杯になったことによる記録の機会の消失を極力抑えることが可能になる。
【0050】
図4のフローチャートではS1〜S3において、プリンタの電源を入れた場合におけるシーケンスを説明している。これは一つの例であり、S4の「廃インクタンクが満杯に近づいたか否か」を確認する判断ステップは、記録動作の最中に行なわれることもある。例えば記録中に定期的に行なわれる予備吐動作の前後や、予め記録装置側で定めた時間毎、あるいは、一定の印刷枚数・印字量毎などに確認するステップが行なわれる場合もある。また、記録動作以外の場合においても例えば電源を入れた状態で記録が行なわれないまま期間が経過した後の初めての印刷時など、さまざまな場合があり、本発明を適用可能である。
【0051】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図4に基づき説明する。
図5は、本発明の第2実施例におけるインクジェット記録装置1を示している。この第2の実施形態は、廃インク量検出室48と廃インク量検出手段47とが上記第1の実施形態に示したものと異なるが、他の点は第1の実施形態と同様である。従って、図5に示す第2の実施形態において、図1に示した上記第1の実施形態と同一部分には同一符号を付し、その説明の詳細は省く。
【0052】
この第2の実施形態における廃インク量検出室48に設けられている廃インク量検出手段47は、2つのフォトセンサ47−1、47−2と、廃インク量検出室43の底面に設けられた撥水性の白色板48aとで構成されている。白色板48aは廃インクで覆われていなければ入射光を反射し、白色板48aが廃インクで覆われていれば入射光をほとんど反射しない。このため、白色板48aからの反射光の有無を廃インク量検出手段47によって検出することで、廃インク量検出室48における廃インクの有無を検出し得るようになっている。また廃インク量検出室48の底面は、入口から出口に向かって傾斜がつけられており、前述のフォトセンサ47−1、47−2が底面の傾斜方向において異なる位置からの反射光を検出し得るように配置されている。すなわち、フォトセンサ47−1は、フォトセンサ47−2よりも浅い位置(傾斜面の中の重力方向において高い位置)からの反射光を受光し得るように配置されている。このためフォトセンサ47−1は、フォトセンサ47−2が検出する廃インク量(第2の廃インク量)よりも多い所定の廃インク量以上(第1の廃インク量以上)が廃インク量検出室43に溜まるとこれを検出する。このように、この第2の実施形態では、廃インク量検出質48に溜まる廃インクの量を光学的に検出するものとなっている。
【0053】
図6はこの第2の実施形態における制御系の制御動作を示す図である。
この第2の実施形態におけるS1〜S3では、上記第1の実施形態と同様にドットカウント法により廃インクタンク内の廃インク量が満杯に近づいたか否かを判定する。そして、S4において満杯に近づいたと判定された場合には、弁44を閉じ(S5)、廃インク量検出手段47による廃インクタンクの空き容量の検出動作を実行させる。
【0054】
次に、CPU103は廃インク量検出部112に対して、廃インク量検出室43内の廃インクが、白色板48aからフォトセンサ47−1への反射光を遮断する位置まで溜まったか否かを検出ように指示を発する(S6)。この指示を受信した廃インク量検出部112は、フォトセンサ47−1への反射強度が一定値以下まで低下したか否か、すなわち、フォトセンサ47−1の出力が一定値以下まで低下したか否かの確認を連続的に行う。そして、フォトセンサ47−1の出力値が一定値以下になったことが確認された場合には、CPU103に信号を送る。CPU103は、フォトセンサ47−1の出力値が一定値以下になったことを示す信号を受信すると、廃インク弁制御部113に対して弁44を開けるように指示を発し(S7,S8)、この指示を受信した廃インク弁制御部113は弁44を開ける。
【0055】
次に、CPU103は、廃インク量検出室43内の廃インクが減少し、フォトセンサ47−1に受光される白色板48aからの反射光強度が一定値以上になったか否かを検出ように指示を発する(S9)。指示を受信した廃インク検出部112は、フォトセンサ47−1の出力が一定値以上になったか否か(反射強度が一定値以上になったか否か)の確認を連続的に行い、一定値以上になったことが確認された時点でCPU103に信号を送る。この信号を受信すると、CPU103はタイマー114に対して時間の計測を開始するように指示を発し(S10,S11)、指示を受信したタイマー114は時間の計測を開始する。
【0056】
次に、CPU103は、フォトセンサ47−2に受光される白色板48からの反射光強度が一定値以上になる位置まで廃インク量検出室43内の廃インクが減少したか否かを検出するように、廃インク量検出部112に対して指示を発する(S12)。指示を受信した廃インク検出部112は、フォトセンサ47−2の出力が一定値以上になったか否か(反射強度が一定値以上になったか否か)の確認を連続的に行い、一定値以上になったことが確認されたらCPU103に信号を送る。すなわち、廃インク量検出室43内の廃インクが一定量以下になったことが確認されるとCPU103は信号を送る。CPU103は、フォトセンサ47−2の出力が一定値以上になったことを示す信号を受信すると、タイマー114に対して時間Tの計測を終了する指示を送ると共に、計測した時間を送信するように指示を発する(S13,S14)。CPU103からの指示を受信したタイマー114は、時間Tの計測を終了し、計測した時間をCPU103に送信する。
【0057】
この後、この第2の実施形態においても、タイマー114から送信された時間Tのデータに基づき、CPU103は不揮発性メモリ102より読み出した閾値TH1、TH2と、計測された時間Tとを比較する(S15)。そして、比較結果に基づき、上記第1の実施形態と同様にS16〜S17の動作を行い、廃インクタンク46が、満杯状態、満杯に近い状態のいずれかを表示させる。廃インクタンク46が満杯の場合には、弁44の閉じを指示する(S18)と共に、廃インクタンク46が交換されたか否かを判定する(S19)。廃インクタンク46が交換されていない場合には、記録動作を禁止する指示を出し(S20)、廃インクタンク46が交換された場合には、弁44を開くことを指示する(S21)と共に、廃インクカウンタ46をリセットする指示を出し(S22)、次の記録動作に備える。
【0058】
(第3の実施形態)
上記第1の実施形態および第2の実施形態においては、廃インクタンク46の満杯が検出されると、直ちに廃インクタンクが交換されるまで記録動作を禁止するものとした(S20)。しかし、この第3の実施形態では、廃インクタンク46の満杯が検出された場合に、直ちに記録動作を禁止するのではなく、以下のような処理を行うようにすることも可能である。
【0059】
すなわち、計測された時間Tが閾値TH2を上回っていた場合には、CPU103は廃インクタンク46が満杯であると判定し、操作パネル制御部101に対して交換を促すメッセージを発生させるための指示を出す(S17)。またこれと共に、廃インク弁制御部113に対して弁44を閉じるように指示を発行する(S18)。指示を受信した操作パネル制御部101は、パネル上に廃インクタンク46が満杯であり交換が必要であることを示すメッセージを表示し、命令を受信した廃インク弁制御部113は弁44を閉じる。
【0060】
ここで、上記第1の実施形態のように廃インク量検出手段として電極を用いている場合、CPU103は、廃インク量検出部112に対して廃インク量検出室43の廃インクが電極45−1の下端位置を超えたかどうかの検出を行うように指示を発する(S18A)。また図7には記載しないが、第2の実施形態のように、廃インク量検出手段としてフォトセンサを用いている場合には、フォトセンサ47−1への反射光強度が一定値を下回る位置まで廃インクが減少したか否かの検出を行うように指示を発する。
【0061】
CPU103の指示受けた廃インク検出部112は、廃インクの液面が電極45−1との接触位置に達したか否か、すなわち電極45−0と45−1とが導通しているか否かの確認を連続的に行う(S18B)。そして、両電極が導通したことが確認されれば廃インク検出量検出部112が検出信号をCPU103に送信する。また図7には記載していないが、インク量検出手段としてフォトセンサを用いる場合には、フォトセンサ47−1の反射光強度が一定値より低下したか否かの確認を連続的に行い、一定値より低下した場合には廃インク検出量検出部112がCPU103に信号を送る。廃インク検出量検出部112からの信号を受けたCPU103は、記録動作を禁止する(S20)。
【0062】
但し、この第3の実施形態においては、計測時間Tが閾値TH2よりも長い(T>T2)と判定された場合にも、廃インクが電極47−1の下端に接触する位置またはフォトセンサ47−1の出力が一定値以下となるまでは、記録動作を禁止しない。従って、引き続き実行することが可能になり、また記録動作と同時に廃インクタンク46を交換することも可能になる。廃インクタンク46が交換されると、CPU103は、廃インク弁制御部113に対して弁44を開けるように指示を出す(S21)と共に、廃インクカウンタをリセットするよう指示を出す。
【0063】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態においては、タイマー114で計測した所要時間を第1の閾値TH1、第2の閾値TH2と比較し、その大小関係に基づいて空き容量を3段階に判定するようにしている。しかしながら、図2に示すような所要時間の変化に応じて空き容量を4段階以上の多段階、あるいは連続的に求めるようにしてもよい。
【0064】
上記各実施形態では、交換型の廃インクタンクを有するシリアル型のインクジェット記録装置を例に挙げて説明したが、本発明はシリアル型のインクジェット記録装置に限らず、廃インクタンクを備えるものであれば、他のタイプのインクジェット記録装置にも適用可能である。例えば、フルライン型のインクジェット記録装置にも本発明は適用可能である。さらに廃インクタンクとしては、交換型の廃インクタンクに限らず、記録装置と一体化した交換不能な廃インクタンクを有するものにも適用可能である。交換不能な廃インクタンクを備えたインクジェット記録装置であっても、廃インクタンクが満杯状態にあるか否かを正確に認識することが可能になり、廃インクタンクからの廃インクの漏出などを未然に防ぐことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるインクジェット記録装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】本発明の第1及び第2の実施形態における、廃インク吸収体の廃インク吸収量と、一定量の廃インクを吸収するために必要とする時間との関係を示す図である。
【図3】本発明の第1及び第2の実施形態における、インクジェット記録装置の構成を表すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における制御系の制御動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施形態におけるインクジェット記録装置の構成を模式的に示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態における制御系の制御動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第3の実施形態における制御系の制御動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0066】
1 インクジェット記録装置
10 インクタンク
11 インク袋体
12、13 ゴム栓
14 ケース
20 インク供給管
30 記録ヘッド
31 可撓膜
32 アーム
33 弁
40 吸引キャップ
41 予備吐口
42 廃インク回収管
43 廃インク量検出室
44 弁
45、47 廃インク量検出手段
46 廃インクタンク
46a 廃インク吸収体
48 白色板
50 加圧ポンプ
51 吸引ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドから記録媒体へのインク吐出によって画像の記録を可能とすると共に、前記記録ヘッドから排出された記録に使用されない廃インクを吸収する廃インク吸収体が収納された廃インクタンクを有するインクジェット記録装置であって、
前記記録ヘッドから排出された廃インクが流入する廃インク保持部と、
前記廃インクタンクと前記廃インクタンクとの連通、遮断を切換える切換え手段と、
前記廃インク保持部と前記廃インクタンクとを遮断することによって前記廃インク保持部に溜められた一定量の廃インクが、前記廃インク保持部と前記廃インクタンクとを連通させることによって前記廃インクタンクへと流入する際の所要時間に基づいて廃インクタンクの空き容量を判定する判定手段を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記所要時間が長いほど前記廃インクタンク内の空き容量が少ないと判定することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記所要時間が予め定めた第1の閾値以上であり、かつ前記第1の閾値より長い時間である第2の閾値未満である場合には前記廃インクタンクの空き容量が少ないと判定し、前記所要時間が前記第1の閾値未満である場合には前記空き容量が十分に存在していると判定し、前記所要時間が前記第2の閾値以上である場合には廃インクタンクの空き容量が無いと判定することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記廃インク保持部は、前記記録ヘッドから排出された廃インクが流入する中空の廃インク量検出室と、前記廃インク量検出室と前記廃インクタンクとの連通、遮断を切換えるよう開閉する弁と、を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記判定手段は、予め定めた第1の廃インク量以上の廃インクが前記廃インク量検出室内に溜まるまで前記弁を閉じ、その後に前記弁を開くことによって前記廃インク量検出室内の廃インク量が前記第1の廃インク量から該第1の廃インク量より少ない量の第2の廃インク量へと減少するまでの時間を計測し、前記計測時間に基づいて前記廃インクタンクの空き容量を判定することを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記判定手段は、前記廃インク量検出室内に溜まっている廃インク量を計測する廃インク量検出手段と、時間を計測する時間計測手段と、前記廃インク量検出手段からの信号に基づいて前記弁の開閉動作と前記時間計測手段による時間計測動作とを制御する制御手段と、を備えることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記判定手段の判定結果に応じた報知動作を行う報知手段をさらに備え、前記報知手段は、前記判定手段によって前記廃インクタンクの空き容量が少ないと判定された場合には廃インクタンクまたはインクジェット記録装置の交換の準備を促すメッセージを発し、前記判定手段によって空きが無いと判定された場合には廃インクタンクまたはインクジェット記録装置の交換を促すメッセージを発することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記廃インク量検出手段は、前記廃インク量検出室に溜められる廃インクの液面の高さを、高さの異なる少なくとも2つの位置において電気的に検出することを特徴とする請求項6または7に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記廃インク量検出手段は、前記廃インク量検出室の底面に配置された第1の電極と、前記廃インク量検出室において前記第1の電極より上方に位置する第2の電極と、前記第2の電極より上方に位置する第3の電極とを設けたことを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記廃インク量検出手段は、前記廃インク量検出室に溜められる廃インクの液面の高さを、高さの異なる少なくとも2つの位置において光学的に検出することを特徴とする請求項6または7に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
前記廃インク量検出手段は、前記廃インク量検出室の底面を形成する傾斜した白色板と、前記底面の傾斜の向きに沿って前記廃インク量検出室の上面に設けら前記白色板からの反射光強度を検出する2つのフォトセンサと、からなることを特徴とする請求項10に記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記判定手段によって前記廃インクタンクの空き容量が無いと判定された場合には、空き容量を有する廃インクタンクに交換されるまで記録動作を禁止することを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
前記判定手段によって前記廃インクタンクの空き容量が無いと判定された場合には、前記弁を閉じ、前記廃インク量検出部における廃インクのタンク内の廃インクが予め定めた第1の廃インク量に達するまで記録動作を可能とすることを特徴とする請求項12に記載のインクジェット記録装置。
【請求項14】
前記記録ヘッドから排出される廃インクの量を、前記記録ヘッドから吐出されるインク滴の数に換算し、そのインク滴の数の累積値を求めるカウント手段をさらに備え、前記カウント値が予め定めた一定値に達した時点で、前記判定手段による前記廃インクタンクの空き容量の判定を行うことを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項15】
記録ヘッドから記録媒体へのインク吐出によって画像の記録を可能とすると共に、前記記録ヘッドから排出された記録に使用されない廃インクを吸収する廃インク吸収体が収納された廃インクタンクを有するインクジェット記録装置における廃インクタンクの空き容量判定方法であって、
前記記録ヘッドから排出された廃インクが流入する廃インク保持部と前記廃インクタンクとの連通を遮断して前記廃インク保持部に廃インクを溜める工程と、
前記廃インク保持部に溜められた一定量の廃インクが、前記廃インク保持部と前記廃インクタンクとを連通させることによって前記廃インクタンクへと流入する際の所要時間を計測する工程と、
前記所要時間に基づいて廃インクタンクの空き容量を判定する工程とを備えたことを特徴とするインクジェット記録装置における廃インクタンクの空き容量判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−143017(P2010−143017A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321085(P2008−321085)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】