説明

インクジェット記録装置

【課題】 コントローラーエンジン間の画像転送量を削減することによる処理速度の向上、さらに転送時間短縮による消費電力の低下させる。
【解決手段】 コントローラからのバンド情報から、エンジン側で白のラインを付加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータや複写装置、ワードプロセッサ等のOA機器が広く普及しており、これらの機器の画像形成(記録)装置の一種としてインクジェット方式によりディジタル画像記録を行う記録装置が急速に発展、普及している。特にOA機器の高機能化とともに、それらの機器のカラー化が進んでおり、これに伴って様々なカラーインクジェット記録装置が開発されてきている。
【0003】
一般にインクジェット記録装置は、記録ヘッドおよびインクタンクを搭載するキャリッジと、記録紙を搬送する搬送機構と、これらを制御する制御回路とを具備している。このような記録装置では、インク液滴を吐出させる複数の吐出口を有した記録ヘッドを記録紙の搬送方向(副走査方向)と直行する方向(主走査方向)にシリアル・スキャンさせながらインク吐出を行う一方で、記録ヘッドからのインク吐出がない間に記録紙を記録ヘッドの記録幅に等しい量で間欠的に搬送することにより記録動作を実行する。さらには、カラー記録が可能な記録装置の場合、複数色の記録ヘッドにから吐出されるインク液滴の重ねあわせによりカラー画像を形成する。
【0004】
インクジェット記録装置において、インクを吐出させる方法としては、吐出口近傍に発熱素子(電気熱エネルギー変換体)を設け、この発熱素子に電気信号を印加することによりインクを局所的に加熱して圧力変化を起こさせ、インクを吐出口から吐出させる方法や、ピエゾ素子等の圧電素子を用い、インクに機械的圧力を付与してインクを吐出する方法が従来より知られている。
【0005】
このインクジェット記録方法は、記録信号に応じてインクを微少な液滴として吐出口から記録媒体上に吐出することにより文字や図形などの記録を行うものであり、ノンインパクトであるため騒音が少ないこと、ランニング・コストが低いこと、装置が小型化しやすいこと、およびカラー化が比較的容易であること、などの利点を有していることから、コンピュータやワードプロセッサ等と併用され、あるいは単独で使用される複写機、プリンタ、ファクシミリ等の記録装置において、画像形成(記録)手段として広く用いられている。
【0006】
図1および図2はそれぞれインクジェット記録装置のコントローラ部およびエンジン部の概略構成を示すブロック図である。
【0007】
まずコントローラ部の機能および概略動作について説明する。CPU101はUSBインタフェース104あるいはIEEE1394インタフェース105を介してホストPC106,107に接続されており、制御プログラムを格納したROM109や更新可能な制御プログラムや処理プログラムや各種定数データなどを格納したEEPROM110、及びホストPC106から受信したコマンド信号や画像情報を格納するためのRAM108にアクセスし、これらのメモリに格納された情報に基づいて記録動作を制御する。操作パネル112のキーから入力される指示情報は操作パネルインタフェース111を介してCPU101に伝達され、またCPU101からの命令により同様に操作パネルインタフェース111を介して操作パネル112のLED点灯やLCD表示が制御される。拡張インタフェース115はLANコントローラやHDDなどの拡張カードを接続することにより機能拡張を行うためのインタフェースである。画像情報は画像データ処理ブロック113により各インク色のドットデータに変換され、エンジン(図外)へ出力される。またコントローラとエンジンの間の各種コマンドやステータス情報の送受信は同様に画像データ処理ブロック113を介して行われる。
【0008】
次にエンジン部の機能および動作概要について説明する。エンジン部はバンドメモリ制御ブロック212を介してコントローラ(図外)と接続されている。バンドメモリ制御ブロック212は、プリントヘッドのデータ形式に変換し、ヘッドデータ生成部215はマルチパス、つなぎすじ等を考慮してヘッドに送るデータを生成する。CPU201は制御プログラムを格納したROM203や更新可能な制御プログラムや処理プログラムや各種定数データなどを格納したEEPROM204、及びコントローラ(図外)から受信したコマンド信号や画像情報を格納するためのRAM202にアクセスし、これらのメモリに格納された情報に基づいて記録動作を制御する。出力ポート205及びキャリッジモータ制御回路207を介してキャリッジモータ209を動作させることによりキャリッジ211を移動させ、また、出力ポート205及び紙搬送モータ制御回路206を介して紙送りモータ208を動作させることにより搬送ローラなどの紙搬送機構210を動作させる。さらにCPU201は、RAM202に格納されている各種情報に基づきバンドメモリ制御ブロック212やヘッドデータ生成ブロック215やプリントヘッド制御ブロック214を制御してプリントヘッド217を駆動することにより記録媒体上に所望の画像を記録することができる。
【0009】
また、図外の電源回路からは、CPUや各種制御回路を動作させるためのロジック駆動電圧Vcc(たとえば3.3V)、各種モータ駆動電圧Vm(たとえば24V)、記録ヘッドを駆動させるためのヒート電圧Vh(たとえば12V)、等が出力される。
【0010】
上述の処理過程にあるように、入力された多階調の画像情報はハーフトーン処理によってインクジェット記録装置が出力可能な階調数(ドットデータ)に変換される。この疑似階調表現手法としてディザ法と誤差拡散法が広く知られている。
【0011】
ディザ法では、マトリクス状に構成された閾値からなるディザマトリクスを用意し、この各閾値と入力データの各画素との1対1の画素比較を行いON/OFFを決定する。一方、誤差拡散法では、注目画素について周辺画素に拡散係数を割り当て、注目画素において発生する量子化誤差を拡散係数に応じて周辺画素に振り分ける。これにより画像全体の濃度は保存されることになり、良好な疑似階調表現が可能となる。
【0012】
一般にパターンディザ法では誤差拡散法を適用した画像に比べて画品位が低下する傾向にあるが、並列処理が可能なため高速処理が容易である。誤差拡散法は誤差が伝播するまで次画素の処理に移行できないため高速処理が困難である。
【0013】
従来のインクジェット記録方法においては、インクのにじみのない高発色のカラー画像を得るためにはインク吸収層を有する専用コート紙を使用する必要があったが、近年はインクの改良等によりプリンタや複写機等で大量に使用される普通紙への印字適性を持たせた方法も実用化されている。さらにはOHPシートや布、プラスチック・シート等の様々な記録媒体への対応が望まれており、こうした要求に応えるため、インクの吸収特性が異なる記録媒体(記録メディア)を必要に応じて選択した際に記録媒体の種類に係わりなく最良の記録が可能な記録装置の開発および製品化が進められている。また記録媒体の大きさについても、宣伝広告用のポスタや衣類等の織布では大サイズのものが要求されてきている。このようなインクジェット記録装置は、優れた記録手段として幅広い分野で需要が高まっており、より一層高品位な画像の提供が求められ、また更なる高速化への要求も一段と高まっていると言える。
【0014】
一般に、カラーインクジェット記録方法は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の3色のカラーインクを使用し、また、さらにブラック(Bk)を加えた4色のインクを使用してカラー記録を実現する。このようなカラーインクジェット記録装置においては、キャラクタのみを記録するモノクロ専用のインクジェット記録装置と異なり、カラー画像の記録するにあたり、画像の発色性や階調表現性、一様性など、様々な要素を考慮する必要がある。
【0015】
しかし、記録される画像の品位は記録ヘッド単位の性能に依存するところが大きい。記録ヘッドの吐出口の形状や電気熱変換体(吐出ヒータ)の品質のばらつき等の記録ヘッド製造工程時に生じるノズル毎の僅かな特性の違いが、それぞれに吐出されるインクの吐出量や吐出方向の向きに影響を及ぼし、これらの影響が最終的に形成される記録画像の濃度ムラとして現れ、画像品位を劣化させる原因となる。その結果として、記録ヘッドの主走査方向に対して周期的にエリア・ファクタ100%を満たせない“白”の部分が存在したり、逆に必要異常にドットが重なり合ったり、あるいは白筋が発生したりすることとなる。これらの現象が通常人間の目で濃度ムラとして感知される。
【0016】
そこで、これらの濃度ムラ対策としてマルチパス記録法と呼ばれる方式が提案されている。ここでは、簡単のために8ノズルからなる単一色のインクを用いて記録を行う記録ヘッドを用いた場合を例に挙げて説明する。
【0017】
マルチパス記録の第1走査では、偶数列パターン、第2走査では、奇数列パターンとする場合や、第1走査では、千鳥パターン、第2走査では逆千鳥のパターンを用いて記録データを間引くことによりパス・データを生成する固定マスク方式を採用して2パス記録を実現する場合について説明する。第1走査において千鳥パターンを記録し、記録幅の半分(4ドット幅)だけ紙送りを行った後、第2走査において逆千鳥パターンを記録することにより記録を完成する。すなわち、順次4ドット単位の紙送りと千鳥/逆千鳥パターンの記録を交互に行うことにより、4ドット単位の記録領域を1スキャン毎に完成させていく。
【0018】
次に、記録ドットと非記録ドットとが乱数的に配列されたランダム・マスク・パターンなどを用いて記録データを間引くことによりパス・データを生成するテーブル参照方式を採用し2パス記録を実現する場合について説明する。図3は記録走査毎のマスク・テーブルの一例を示す図であり、テーブル領域A、Bはそれぞれ第1パス、第2パスにおいて使用する相補的なマスク・テーブルである。テーブルは1bit/dotで、0はマスク対象であることを示し、1は非マスク対象であることを示す。マスク・テーブルA、Bはそれぞれ主走査方向12画素*副走査方向4画素に対応したサイズのテーブルであり、これを各方向に繰り返し展開してマスク・データとして使用する。記録ヘッドが備えるノズル数は8であり、2パス記録における紙搬送量に相当する画素数は8/2=4であり、これはテーブルA及びBの副走査方向サイズと一致する。
【0019】
図4は図3で示したマスク・テーブルを用いた記録走査の様子を説明する図である。8のノズルに対応する8ラインのデータに対して、4ライン毎にA、Bをマスク・パターンとして適用する。各記録走査においては、格納されたマスク・テーブルを用いて画像データのマスク処理(記録ドットを非記録ドットに置き換える)を実行し、パス・データを生成出力する。具体的には、画像データとマスク・データとの論理積をとることにより、マスク・データが1である場合には画像データをそのまま出力し、マスク・データが0である場合には画像データは0に置き換えることにより実現される。全ての画像領域は常に2回の走査によりA、Bの順にマスク処理されて記録データが生成されることになる。ここで、A、BのマスクOFF(1)比率は等しく各々50%程度である。
【0020】
このようにして、一つのラインを異なる二つのノズルを用いて記録することにより、濃度ムラを抑えた高品位な画像を形成することができる。また、マルチパス記録法は、インクを乾かしながら記録していくことによりブリーディング(にじみ)を抑えるといった効果や、走査毎の記録ドットを低減することから吐出不良の原因となる記録ヘッドの昇温を抑制する効果、なども同時に達成できる。ここでは主走査方向について説明したが、副走査方向に対して連続するドットを間引いて記録することにより更なる高画質化が可能になる。また、ノズル解像度よりも高い解像度で副走査方向の画像形成を実現したい場合には、この副走査方向の間引き記録は必須の処理となる。
【0021】
各走査のパス・データを生成する方法としては、上述のように、記録ドットと非記録ドットとが乱数的に配列されたランダム・マスク・パターンなどを用いて記録データを間引く方法(特許文献1)によりパス・データを生成する方法(テーブル参照方式と称す)や、偶数列/奇数列パターンや千鳥/逆千鳥パターンを用いて記録データを間引くことによりパス・データを生成する方法(固定マスク方式と称す)のほかに、記録ドットに着目して間引き処理を行うことによりパス・データを生成する方法(データマスク方式と称す)、あるいはこれらを併用した方式などが知られている。
【特許文献1】特開平7−52390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
最近のインクジェット装置は、電子写真装置に比べて部品点数も少なく、小型化できるという利点から、コンシューマの分野だけでなくオフィスにおいてもローコストプリンタから大伸ばし印刷ができるプリンタまで幅広く用いられている。
【0023】
さらにインクジェット記録装置は高画質化/高速化が進み、印刷に要するデータ帯域も年々増加している。たとえば、印字解像度という観点においても、従来は360dpi×360dpi程度であったが、最新の記録装置では2880×2880dpiという機器も登場し、従来に比べて64倍のデータ量が必要となっている。また、記録ヘッドの多ノズル化や高周波数化も数倍程度進んでいる。従って、データ帯域は従来の100倍以上必要な状況になってきている。
【0024】
これに対して、ホストコンピュータとのインタフェースも高速化が進み、近年では400Mbit/secのIEEE1394や480Mbit/secのUSB2.0、キガビットの帯域を持つGigabit Ethernet(登録商標)などが広く普及するようになってきており、また圧縮技術も進歩しているが、必要帯域として充分であるとは言い難い状態である。
【0025】
このような背景の中で、ホストコンピュータ等との間で画像情報や各種制御情報のやりとりをするためのインタフェースや、入力画像情報をインク色ごとのドットのON/OFFデータに変換するための画像データ処理ブロック、などで構成されるコントローラ(図1)と、記録紙の搬送やキャリッジの駆動を行うとともに記録ヘッドを制御して画像を形成するエンジン(図2)により構成されているインクジェット装置において、コントローラとエンジン間の画像転送量は大きくなってきている。
【0026】
一般に大伸ばしプリンタのように1ラインのデータ長が長いプリンタでは、図6のように1ページをバンド単位で区切り、バンドすべてが白の場合はエンジンに対して画像転送を行わず、エンジン側で白を埋めるような方法を取り高速化を図る方法が取られている。
【0027】
しかしながら、このような方式では図7のように1バンド中に1ラインでもデータがある場合でもバンド単位で画像転送を行ってしまう。そのため画像によっては無駄な白データを多く送ってしまい、コントローラーエンジン間の転送処理速度を圧迫することがあった。
【0028】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、その目的はコントローラとエンジン間の画像転送量を削減し処理速度向上を図り、さらに転送時間短縮によって消費電力を下げることができるインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記課題を解決するために、本発明のインクジェット記録装置は、複数の吐出部を有するプリントヘッドを記録媒体の同一領域に対して複数回走査させ、入力された画像情報に基づいて記録媒体にインクを吐出して各画素にドットを形成することにより画像をプリントするインクジェット記録装置であって、ホスト側から転送される印刷データを受信してイメージデータに変換するプリンタコントローラ部と、前記プリンタコントローラ部からバンド単位で転送されるイメージデータを受信して装置各部を駆動制御するプリンタエンジン部と、前記プリンタコントローラ部は、前記バンド内で少なくとも白でないデータが一つでもあるラインのみを前記プリンタエンジン部へ転送する手段と、前記プリンタエンジン部において白ラインを付加する手段を有することを特徴とする。
【0030】
また、本発明の別のインクジェット記録装置は、複数の吐出部を有するプリントヘッドを記録媒体の同一領域に対して複数回走査させ、入力された画像情報に基づいて記録媒体にインクを吐出して各画素にドットを形成することにより画像をプリントするインクジェット記録装置であって、ホスト側から転送される印刷データを受信してイメージデータに変換するプリンタコントローラ部と、前記プリンタコントローラ部からMラインのイメージデータを受信して、装置各部を駆動制御するプリンタエンジン部と、前記プリンタエンジン部は、前記プリンタコントローラ部から受信したMラインに対しておいて白ラインを付加しNラインとして処理を行う手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、複数の吐出部を有するプリントヘッドを記録媒体上の同一領域に対して複数回走査させ、入力された画像情報に基づいて記録媒体にインクを吐出して各画素にドットを形成することにより画像をプリントするインクジェット記録装置であって、コントローラーエンジン間の転送において少なくとも白でないデータが一つでもあるラインのみを転送し、エンジン側で全て白のラインを付加することで画像転送量を削減し、処理速度向上を図ることができる。また転送時間短縮によって消費電力を下げることができるなど優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0033】
(第一の実施例)
以下、図面を参照して本発明の第1の実施例を詳細に説明する。図5は本発明によるインクジェット記録装置の記録部の構成を示したものである。
【0034】
501は記録ヘッドであり、ブラック(Bk)・シアン(Cy)・マゼンタ(Mg)・イエロー(Ye)の4色のカラーインクがそれぞれ封入されたインクタンクと、それぞれに対応した独立した4つのヘッドからなるマルチヘッドにより構成されている。各色のノズル数は16ノズルである。502は記録ヘッド501を支持し、記録とともにこれらを移動させるキャリッジである。キャリッジ502はX方向へステー506を用いて移動することが可能である。キャリッジ502は非記録状態などの待機時には図のホーム・ポジション位置HPにある。503は紙送りローラであり、記録紙504を抑えながら回転し、記録紙504をY方向に随時送っていく。また505は給紙ローラであり、記録紙504の給紙を行うとともに、紙送りローラ503及び補助ローラと同様に記録紙504を抑える役割を果たす。ここで、記録ヘッド501は、Bk・Cy・Mg・Yeの4色について、それぞれ紙送り方向に配置された1024個のノズルをそれぞれ有している。
【0035】
以上の構成における基本的な記録動作について説明する。待機時にホーム・ポジション位置HPにあるキャリッジ502は記録開始命令によりX方向に移動しながら記録ヘッド501の複数のノズルにより記録データに従い記録紙504上にインクを吐出し記録を行う。記録紙504端部まで記録データの記録が終了するとキャリッジ502は元のホーム・ポジション位置に戻る。紙送りローラ503が矢印方向へ回転することによりY方向へ所定幅だけ紙送りし、再びキャリッジ502はX方向に移動しながらインクを吐出して記録を開始する。このようなスキャン動作と紙送り動作との繰り返しによりデータ記録を実現する。
【0036】
なお、本実施例のインクジェット記録装置は、ホストコンピュータ等との間で画像情報や各種制御情報のやりとりをするためのインタフェースや、入力画像情報をインク色ごとのドットのON/OFFデータに変換するための画像データ処理ブロック、などで構成されるコントローラ(図1)と、記録紙の搬送やキャリッジの駆動を行うとともに記録ヘッドを制御して画像を形成するエンジン(図2)、などにより構成されている。
【0037】
また、本実施例におけるインクジェット記録装置は、同一記録領域を複数回走査させて画像を形成するマルチパス記録方式を採用している。先に述べたとおり、マルチパス記録は、一つのラインを複数のノズルを用いて画像を形成することにより、ノズル毎のインクの吐出量や吐出方向の微少な違いによる濃度ムラを抑え、同時にパス毎の記録デューティを低減してインク滲みなどによる画品位の劣化を防ぐ記録方式である。
【0038】
ここで、2パス記録を例に挙げて説明する。キャリッジを最大吐出周波数に相当する速度以下で駆動して、各走査ではマスク・テーブルを参照しながら2回の記録走査で画像を完成させるものである。走査間で行われる紙搬送量は使用ノズル数を2で除したノズル分の幅に相当する。
【0039】
先に述べたとおり、記録ヘッドは各色1024ノズルずつ備えており、紙搬送に対して先行側よりノズル番号を#0,1,2,3,…,1023と付与している。本実施例では偶数列と奇数列とを交互に形成する固定マスク方式を採用している。第1パスではX座標=2nである偶数列のドットのみを形成する。そして、使用ノズル数の半分に相当する幅の紙搬送を行った後に、第2パスではX座標=2n+1である奇数列のドットのみを形成する。そして、また使用ノズル数の半分に相当する幅の紙搬送を行う。以後は、偶数列のドット形成、紙搬送、奇数列のドット形成、紙搬送、を順次繰り返して実行していく。
【0040】
以下、図を参照しながら、コントローラとエンジン間の画像転送量を削減する制御方法について詳細に説明する。図10はコントローラ内の画像データ処理ブロックとエンジン内のバンドメモリメモリ制御ブロックの、コントローラ−エンジン間の画像転送を制御するブロックとその周辺に着目した概略ブロック図である。
【0041】
所望の画像処理を行ったあと一旦画像データはメモリ制御部1001を介してSDRAM114へ保存される。1002はコントローラがエンジンと通信を行うエンジンIF制御部であり、1003はエンジンがコントローラと通信を行うコントローラIF制御部である。コントローラとエンジンは、主に画像を転送するパラレルバスと、コントローラとエンジン間の各種コマンドやステータス情報の送受信を行うためのシリアルバスとで接続されている。1004は印字幅データ生成部で、コントローラから受信したデータが印字幅に満たない場合に白データのフィルなどを行って印字幅にデータを合わせたのちにメモリコントローラ1007を介してメモリ213に保存する。1005はラスタ・カラム変換部であり、図9のようにラスタ方向でメモリ213に保存されているデータを、プリントヘッド217に合わせてカラム方向に変換して出力するものである。簡単のため図9では7ラスタ×7カラムのバッファの例を示したが、通常ラスタ方向は1バンド分のライン数に合わせるようにバッファの大きさを調整している。
【0042】
次に本発明において特徴的な、コントローラ−エンジン間の転送量を削減するための制御方法について図11を参照しながら詳細を説明する。
【0043】
コントローラのCPU101は、画像処理の終了を検知した後にエンジンへの画像転送を画像データ処理ブロック113へ指示する(S1101)。次にS1102においてSDRAMから画像データを読み出す。そしてS1103ではコントローラからエンジンへ転送しているライン数のカウント値(M)と全て白のラインを含んだ1バンドのライン数をカウント値(N)を初期化する(M<=N)。なお図には記載していないが、予めCPU101は1バンド単位内で1ラインが全て白であるかないかは検出しており、図8のようにライン全てが白の場合は‘0’、データがある場合には‘1’を画像処理ブロック113のレジスタへ書き込んでいる。またこの情報はシリアル通信によってエンジン側にも転送される。エンジンIF制御部1002はレジスタの値を参照して、‘1’の場合のラインのみエンジンへ画像データを転送する(S1104)。S1105では1バンド中でNライン目が全て白かどうか判断し、もしNライン目が全て白ならば白をメモリ213へ書き込み(S1106)、Mのカウンタ値はそのままでNのカウンタ値のみを1カウントする(S1107)。またNライン目が全て白でなければ、コントローラから転送された画像データをNライン目に書き込み(S1108)、Mのカウンタ値、Nのカウンタ値とも1カウントする(S1110)。全て白のラインも含めて1バンド分のライン数を満たすまでS1104からS1110を繰り返す(S1108)。
【0044】
なお本実施例では、全て白かどうかの判断後に、全て白のラインにおいても白のデータをメモリ213に書き込む制御方法を述べたが、判断する前にメモリ213内の1バンド分を白でライトし、コントローラから転送されたデータのみをメモリ213へ書き込む方法でも同様の効果を発揮する。
【0045】
このような制御を行えば無駄な画像転送を行うことがなくなるため、高速、高画質なヘッドを持つプリンタにおいてもコントローラ−エンジン画像転送量を最小限に抑えることができる。なお上記制御方法には直接記載はしていないが、本発明がバンド単位のラスタスキップと併用できることは明らかである。
【0046】
(第二の実施例)
本実施例では、ラスタ・カラム変換を行う際にラインが全て白のラインに対応するものである。すなわち、ラスタ・カラム変換の際にメモリ213から有効データのあるラインのみを読み出し、全て白のラインはスキップする制御を行う。
【0047】
図12を参照しながら本実施例の詳細な説明を行う。
【0048】
まずS1201ではラスタ・カラム変換部1005内のバッファをクリア(全て白にフィル)する。S1202では全て白でないライン数のカウント値(M)と全て白のラインを含んだ1バンドのライン数をカウント値(N)を初期化する(M<=N)。本実施例では、メモリ213には、全て白のラインを除いた画像データのみが保存されている。図には記載していないが、予めコントローラから1ラインが全て白であるかないかの情報はシリアル通信によってエンジン側にも転送される。S1203ではこの情報を元に1バンド中でNライン目が全て白かどうか判断する。もし全て白であればメモリ213から読み出しをスキップする。Nライン目が全て白でないならば、メモリ213からMライン目を読み出し、バッファ内のNライン目へ書き込む(S1204)。書き込みが終了した後にMのカウンタ値を1カウントする(S1205)。そしてS1206でNのカウンタ値を1カウントする。S1207では全て白のラインも含めてバッファのライン数を満たすまで終了したかを判断し、もし終了してなければS1203〜S1206を繰り返す。バッファの書き込みが終了したあとに、ラスタ・カラム変換が行われ、後段のブロックへ画像が転送される(S1208)。
【0049】
なお本実施例では、最初にラスタ・カラム変換部1005内のバッファをクリア(領域全て白にフィル)し、全て白の場合はバッファへの書き込みをスキップする制御方法を述べたが、対象ラインが全て白の場合にはバッファに白をライトすることでも同様の効果を発揮する。
【0050】
ちなみに本発明は記録ヘッドの動作原理や構成により制限されるものではない。すなわち、記録ヘッドは、吐出口近傍に発熱素子(電気/熱エネルギー変換素子)を設け、この発熱素子に電気信号を印加することによりインクを局所的に加熱して圧力変化を起こさせ、インクを吐出口から吐出させるサーマル方式であってもよいし、ピエゾ素子等の電気/圧力変換手段を用い、インクに機械的圧力を付与してインクを吐出させるピエゾ方式であってもよい。
【0051】
また、本発明に係るインクジェット記録装置の形態は、コンピュータやワードプロセッサをはじめとする情報処理装置の画像出力装置として一体または別体に設けられるものに限らず、読取装置と組み合わせた複写装置や通信機能を有するファクシミリ装置などであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】インクジェット記録装置におけるコントローラ部の概略ブロック図である。
【図2】インクジェット記録装置におけるエンジン部の概略ブロック図である。
【図3】マルチパスの2パスデータ生成のためのマスク・テーブルの一例を示す図である。
【図4】図3のマスク・テーブルを用いたマルチパス記録の様子を説明する図である。
【図5】インクジェット記録装置の記録部の構成を示したものである。
【図6】従来例のバンドスキップを説明する図である。
【図7】従来例のバンドスキップの問題点を説明する図である。
【図8】本発明における全て白ラインの判別方法を説明する図である。
【図9】ラスタ・カラム変換を説明する図である。
【図10】本発明の実施例における記録制御方法の構成を示す概略ブロック図である。
【図11】本発明の第1の実施例における記録制御動作を説明するフローチャートである。
【図12】本発明の第2の実施例における記録制御動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
101 CPU
102 バスブリッジ
103 メモリコントローラ
104 USBインタフェース
105 IEEE1394インタフェース
106、107 ホストPC
108 RAM
109 ROM
110 EEPROM
111 操作パネルインタフェース
112 操作パネル
113 画像データ処理ブロック
114 SDRAM
115 拡張インタフェース
201 CPU
202 RAM
203 ROM
204 EEPROM
205 出力ポート
206 紙搬送モータ制御回路
207 キャリッジモータ制御回路
208 紙送りモータ
209 キャリッジモータ
210 紙搬送機構
211 キャリッジ
212 バンドメモリ制御ブロック
213 メモリ
214 プリントヘッド制御ブロック
215 ヘッドデータ生成ブロック
216 SDRAM
217 プリントヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吐出部を有するプリントヘッドを記録媒体の同一領域に対して複数回走査させ、入力された画像情報に基づいて記録媒体にインクを吐出して各画素にドットを形成することにより画像をプリントするインクジェット記録装置であって、
ホスト側から転送される印刷データを受信してイメージデータに変換するプリンタコントローラ部と、
前記プリンタコントローラ部からバンド単位で転送されるイメージデータを受信して装置各部を駆動制御するプリンタエンジン部と、
前記プリンタコントローラ部は、前記バンド内で少なくても白でないデータが一つでもあるラインのみを前記プリンタエンジン部へ転送する手段と、前記プリンタエンジン部において白ラインを付加する手段を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記プリンタコントローラ部は全て白データであるラインを検出する手段を有し、前記プリンタエンジン部へ前記ライン情報を転送することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記白ラインを付加する手段は、前記プリンタコントローラ部から転送された前記ライン情報に基づいてライン単位で白データを埋めることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
複数の吐出部を有するプリントヘッドを記録媒体上の同一領域に対して複数回走査させ、入力された画像情報に基づいて記録媒体にインクを吐出して各画素にドットを形成することにより画像をプリントするインクジェット記録装置であって、
ホスト側から転送される印刷データを受信してイメージデータに変換するプリンタコントローラ部と、
前記プリンタコントローラ部からMラインのイメージデータを受信して、装置各部を駆動制御するプリンタエンジン部と、
前記プリンタエンジン部は、前記プリンタコントローラ部から受信したMラインに対しておいて白ラインを付加しNラインとして処理を行う手段を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記プリンタコントローラ部から受信するMラインのイメージデータは、1ライン中に少なくとも白でないデータが一つでもあることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記プリンタコントローラ部は全て白データであるラインを検出する手段を有し、前記プリンタエンジン部へ前記ライン情報を転送することを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記白ラインを付加する手段は、前記プリンタコントローラ部から転送された前記ライン情報に基づいてライン単位で白データを埋めることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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