説明

インクジェット記録装置

【課題】 インクジェット記録装置において、印刷中のジョブに関しては、サイレントモードへの移行/解除を行うことができなかった。このため、使用者がサイレントモードであると勘違いして印刷ジョブを開始した場合には、ジョブが終了するまで記録装置の作動音を我慢するか、或いは、印刷ジョブを一旦キャンセルしてサイレントモードへ移行後に再度印刷ジョブを開始する必要があった。
【解決手段】 印刷速度を優先した第一の動作モードと、前記第一の動作モードよりも動作時の静音性が高い第二の動作モードを設定可能な動作制御手段と、使用者からの指示が入力される所定のキーを備え、印刷ジョブ中であっても前記キーの操作によって前記第二の動作モードへの移行及び同モードの解除が選択できることを特徴としたインクジェット記録装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関し、特に、使用者の要求に応じて容易に且つ即座に静音性の高いモードへの移行/解除が可能なインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、記録ヘッドを主走査方向へ往復移動しながらインクを吐出し、且つ印刷媒体を副走査方向へ搬送することで当該印刷媒体に印刷を行うインクジェット記録装置において、プリンタの動作速度を抑えることで作動音を低減するモード(以下、サイレントモード)を備えたインクジェット記録装置が存在する(例えば特許文献1)。これは、深夜における使用や図書館における使用など、静粛性が要求される環境での使用を考慮した機能である。サイレントモードでは、主に印刷媒体の搬送及び排出時のモーター駆動速度を抑えることで静音性を高めているが、そのモードへの移行は、印刷ジョブの開始前、ホストコンピュータに予めインストールされているプリンタドライバによって使用者が設定しておく必要があった。つまり、印刷中のジョブに関しては、サイレントモードへの移行/解除を行うことができなかった。
【特許文献1】特開2003−91391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように、インクジェット記録装置において、印刷中のジョブに関しては、サイレントモードへの移行/解除を行うことができなかった。このため、使用者がサイレントモードであると勘違いして印刷ジョブを開始した場合には、ジョブが終了するまで記録装置の作動音を我慢するか、或いは、印刷ジョブを一旦キャンセルしてサイレントモードへ移行後に再度印刷ジョブを開始する必要があった。また、サイレントモードではない速度を優先した通常のモード(以下、通常モード)で印刷中に、一時的に作動音を落としたい状況になった場合、例えば、電話がかかってきた場合などには、印刷を一時停止する必要があった。この場合、サイレントモードで印刷していれば、作動音を気にする必要もなく、印刷を続行することが可能である。
【0004】
本発明の目的は、キーからの入力によってサイレントモードへの移行/解除を可能にすることにより、使用者が容易に且つ即座にサイレントモードと通常モードを設定できるようにすることにある。それによって、状況に応じた最適なモードでの効率の良い印刷が可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明におけるインクジェット記録装置は、印刷速度を優先した第一の動作モードと、前記第一の動作モードよりも動作時の静音性が高い第二の動作モードを設定可能な動作制御手段と、使用者からの指示が入力される所定のキーを備え、印刷ジョブ中であっても前記キーの操作によって前記第二の動作モードへの移行及び同モードの解除が選択できることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
以上説明したように本発明によれば、所定のキーからの入力によってサイレントモードへの移行/解除を可能にすることで、使用者は容易に且つ即座にサイレントモードと通常モードの設定ができるようになる。それによって、状況に応じた最適なモードでの効率の良い印刷が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(実施例1)
図1は、本発明を適用可能なインクジェット記録装置の概略を示す斜視図である。記録装置100の給紙位置に挿入された印刷媒体105は、送りローラ106によって矢印P方向に送られ、記録ヘッド104の印字可能領域へ搬送される。印字可能領域における印刷媒体105の下部には、プラテン107が設けらている。キャリッジ101は、2つのガイド軸102と103によって、それらの軸方向に沿う方向に移動可能となっており、不図示のステッピングモータの駆動により、印字領域を含む走査領域を、主走査方向である矢印Q1、Q2で示す方向に沿って往復走査する。1回の主走査が終了すると、印刷媒体を矢印P方向である副走査方向に一定量だけ送り次の主走査に備える。これらの主走査と副走査を繰り返し1頁の印字動作を行う。
【0008】
図1において、キャリッジ101に登載された記録ヘッド104は、インクを吐出可能な吐出口とインクを収容するインクタンクを含む構成であり、記録ヘッドの吐出口は下方に位置する印刷媒体にインクを吐出して印字するようにキャリッジ上に搭載されている。 また、108はスイッチ部と表示部であり、スイッチ部は記録装置の電源のオン/オフの切り替えや各種印字モードの設定等に使用され、表示部は記録装置の状態を表示可能に構成される。
【0009】
記録ヘッドの構成は、Y、M、C、Bkの4色を印字可能であり、Y、M、Cの吐出口の数は各128個、Bkは320個であり、各色の吐出口の配置ピッチは数副走査方向に対して、1/600dpiであり、約42ミクロンである。記録ヘッドの駆動周波数は、15kHzであり、主走査方向に対して600dpiの密度で印字動作可能である。したがって、印字動作時のキャリッジの主走査速度は25inch/sである。
【0010】
本実施例における記録ヘッドの各吐出口付近には、インク滴を吐出するために熱エネルギーを発生する発熱体が設けられている。発熱体の発熱により急速に加熱されたノズル内のインクは膜沸騰により気泡を形成し、気泡生成の圧力によりインク滴が印刷媒体に向かって吐出され文字や画像を形成する。電気・熱変換体である発熱体を使用した記録方法は、インク滴吐出時に熱エネルギー印加により形成される気泡を使用しているため、通称バブルジェット(登録商標)記録方法と呼ばれている。
【0011】
なお、本発明ではこの方式の記録ヘッドに限定されることは無く、例えば圧電素子を使用した吐出方式の記録ヘッドでも良い。
【0012】
図2は、本発明を適用可能なインクジェット記録装置の主要部を示すブロック図である。ホスト装置500から記録装置100に印字すべき文字や画像のデータが送信され、受信バッファー401に蓄えられる。また、正しくデータが転送されているかどうかを確認するデータ、および記録装置100の動作状態を知らせるデータが記録装置100からホスト装置500に送信される。
【0013】
受信バッファー401に蓄えられたデータは、CPU402の管理下において、記録ヘッドが主走査した時に印字を行うためのデ−タに加工され、ランダムアクセスメモリ部403内のプリントバッファ−部に記憶される。プリントバファ−部のデ−タは、記録ヘッドコントロール部410により記録ヘッド104に転送され、記録ヘッドを制御して文字や画像のデ−タを印字する。また、記録ヘッドコントロール部410は、記録ヘッド104の状態を示す温度情報等を検出してCPU402に送り、記録ヘッドコントロール部410にその情報を伝達し、記録ヘッドを制御する。
【0014】
機械コントロール部404は、CPU402からの指令によりキャリッジモータやラインフィードモータ等の機械部405を駆動制御する。
【0015】
センサ/SWコントロール部406は、各種センサやSW(スイッチ)からなるセンサ/SW部407からの信号をCPU402に送る。
【0016】
表示素子コントロール部408は、CPU402からの指令により、表示パネル群のLEDや液晶表示素子等からなる表示部409を制御するよう構成されている。
【0017】
図3、図4は本発明におけるインクジェット記録装置のサイレントモード移行/解除の動作を表したフローチャートである。この処理を実現するプログラムは図2のROM411に格納されており、そのプログラムをCPU402が実行する。本実施例において、印刷は、図2の受信バッファ401にホストコンピュータによって転送される印刷コマンド及びデータに基づいて行われる。印刷コマンドには、印刷媒体搬送命令も含まれる。サイレントモードは印刷媒体の搬送速度を通常モードよりも低減することで実現する。
【0018】
以上を踏まえた上で以下にフローチャートの説明を示す。
【0019】
図3は、本発明におけるインクジェット記録装置の印刷中にサイレントモード移行/解除のためのキー操作があった場合の処理を表したものである。本実施例においては、サイレントモード移行/解除は、一つのキーに対する同一操作で行うものとする。即ち、通常モード中にキーを押下されればサイレントモードへと移行し、サイレントモード中にキーを押下された場合はサイレントモードを解除して通常モードへと戻る。まず、ステップS301、ステップS302では、キーの押下状態を監視しながら、印刷処理を行っている。キーの押下があった場合には、ステップS304へ進み、現在行われている印刷がサイレントモードであるか、通常モードであるかを判断する。サイレントモードである場合には、今回のキー操作を「サイレントモード解除」とみなし、図2のRAM403に用意されたサイレント移行フラグをOFF設定にする(S305)。通常モードで動作している場合には、「サイレントモード移行」とみなし、サイレント移行フラグをON設定にする(S306)。その後、通常の印刷処理(S302)を続ける。ステップS303では、受信した印刷コマンドから印刷終了か否かを判別している。印刷終了コマンドを受信した場合は、印刷を終了し、そうでない場合は、キーの監視(S301)と印刷処理(S302)へ戻る。
【0020】
図4は、印刷中に印刷媒体搬送命令を受信した場合の、本実施例におけるインクジェット記録装置の動作を表したものである。ステップS401では、CPU402が解析した印刷コマンドが印刷媒体搬送命令か否かを判別している。印刷媒体搬送命令でない場合は、ステップS402へ進み、そのコマンドに対応した処理を行う。印刷媒体搬送命令であった場合には、ステップS403へ進み、RAM403に用意されたサイレント移行フラグがON/OFFどちらの設定になっているかを判別する。ONの場合には、ステップS404へ進み、搬送速度を低く抑えて印刷媒体の搬送を行う(サイレントモード)。OFFの場合には、ステップS405へ進み、速度を優先して印刷媒体の搬送を行う(通常モード)。
【0021】
ステップS406でCPU402が印刷終了コマンドを検知するまで、ステップ401からの処理を繰り返す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係るインクジェット記録装置の記録部の概略を示す斜視図である。
【図2】本実施の形態に係るインクジェット記録装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態係るインクジェット記録装置におけるサイレントモード移行/解除の動作を表したフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態係るインクジェット記録装置におけるサイレントモード時及び通常モード時の印刷媒体搬送の流れを表したフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吐出口からインクを吐出可能な記録ヘッドを主走査方向へ往復移動しながらインクを吐出し、且つ印刷媒体を副走査方向へ搬送することで当該印刷媒体に印刷を行うインクジェット記録装置において、
前記印刷を行わせるための動作手段として、印刷速度を優先した第一の動作モードと、前記第一の動作モードよりも動作時の静音性が高い第二の動作モードを設定可能な動作制御手段と、使用者からの指示が入力される所定のキーを備え、印刷ジョブ中であっても前記キーの操作によって前記第二の動作モードへの移行及び同モードの解除が選択できることを特徴としたインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−103094(P2006−103094A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−291321(P2004−291321)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】