説明

インクジェット記録装置

【課題】生産性を落とすことがなく、光源や光線による記録媒体への悪影響を最小限にして高精細な記録画像を得ることができるインクジェット記録装置を提供すること。
【解決手段】記録媒体P上に光硬化性インクを吐出する記録ヘッド4と、記録媒体P上に吐出された光硬化性インクに光線を照射する光源5と、記録ヘッド4と光源5とを搭載し、主走査方向Aに往復移動可能に構成されたキャリッジ3とを備えたインクジェット記録装置であって、光源5から照射された光線の照射範囲Lが記録媒体Pを超えてから、キャリッジ3の折り返し動作を行うように制御する制御部13を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に係り、特に、光硬化性インクを使用し、キャリッジに光源を搭載するシリアル方式のインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、簡易かつ安価に画像を記録できる画像記録手段として、インクジェット方式を用いた画像記録装置(インクジェット記録装置)が知られており、インクジェット記録装置は様々な分野で利用されてきた。
【0003】
また、インクジェット記録装置が利用される分野のうち、商品や商品の包装に画像記録を行う分野では、商品や商品の包装に、樹脂や金属等のインク吸収性に乏しい材料からなる記録媒体に画像を記録する場合が多い。このような記録媒体にインクを定着させるために、インクジェット記録装置に特定の波長の光線が照射されると高分子化して硬化する性質をもつ光硬化性インクを用い、記録媒体にインクを吐出させた後、光線を照射して記録媒体上のインクを硬化・定着させていた。
【0004】
このような光硬化性インクを用いたインクジェット記録装置において、インクを吐出するノズルが形成された記録ヘッドと、記録ヘッドの両側部にノズルから吐出されたインクに対して光線を照射する光源とを搭載したキャリッジと、キャリッジを支持するガイドレールとを備え、キャリッジが主走査方向に往復移動可能に構成されているシリアル式のインクジェット記録装置が知られている(特許文献1)。シリアル式のインクジェット記録装置の画像記録中におけるキャリッジの動作には、一定速度を保って移動しながらノズルからインクを吐出させる動作の他に、キャリッジを折り返す折り返し動作があり、折り返し動作ではキャリッジの加減速動作及び停止動作が行われている。
【0005】
しかしながら、このようなインクジェット記録装置においては、キャリッジをガイドレールに沿って移動させ、ガイドレールの両端で折り返し動作を行うため、キャリッジの走査時間が長くなり、生産性を落としてしまうことがあった。これを防ぐために、従来では、パソコン等の外部入力装置から画像データを取得した際に、記録媒体に実際に記録される領域(画像記録領域X)を算出し、画像記録領域Xに対応させてキャリッジの移動を制御しており、特許文献2では、図6に示すように、画像記録領域Xに応じてキャリッジの移動範囲Mを定め、画像記録領域Xにキャリッジが折り返し動作を行う領域T及び予備領域Rを加えた分だけキャリッジ3を移動させていた。ここで、予備領域Rとは、光源1から放射状に照射される光線の照射範囲のうち、照射開口と対向する位置を超えて記録媒体Pに照射される光線の照射範囲を考慮した領域であり、キャリッジの移動範囲Mに予備領域Rを加味させることにより光源1の照射開口より記録媒体Pに照射される光線の照射範囲が広い場合にも対応することができるようになっている。
【特許文献1】特開昭60−132767号公報
【特許文献2】特開2003−127347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、キャリッジ3の折り返し動作が画像が実際に記録されない記録媒体の領域の上方で行われており、図7に示すように記録媒体P上方を移動する際にキャリッジの移動速度が記録媒体の光源の影響を受けない下限速度を下回っていた。その結果、画像が記録されない領域の記録媒体は画像が記録される領域Xの記録媒体に比べて、記録媒体P上に光源1が滞留する時間が多くなり、光源1から熱を受けて記録媒体Pの伸びや縮み、ゆがみを生じさせたり、照射される光線の成分により記録媒体Pを劣化をさせてしまっていた。また、記録媒体Pのゆがみはジャムや搬送量を変動させる等記録媒体Pの搬送に影響を与え、記録画像の劣化を生じさせていた。
【0007】
そこで、本発明は前記した点に鑑みてなされたもので、生産性を落とさず、光源や光線による記録媒体への悪影響をなくして高精細な記録画像を得ることができるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、請求項1に記載の発明に係るインクジェット記録装置は、
記録媒体上に光硬化性インクを吐出する記録ヘッドと、前記記録媒体上に吐出された前記光硬化性インクに光線を照射する光源と、前記記録ヘッドと前記光源とを搭載し、主走査方向に往復移動可能に構成されたキャリッジとを備えたインクジェット記録装置であって、
前記光源から照射された光線の照射範囲が記録媒体を超えてから、前記キャリッジの折り返し動作を行うように制御する制御部を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、記録媒体上に光硬化性インクを吐出する記録ヘッドと、前記記録媒体上に吐出された前記光硬化性インクに光線を照射する光源と、前記記録ヘッドと前記光源とを搭載し、主走査方向に往復移動可能に構成されたキャリッジとを備えたインクジェット記録装置であって、
前記光源から照射された光線の照射範囲が記録媒体を超えてから、前記キャリッジの折り返し動作を行うように制御する制御部を備えたので、キャリッジの移動範囲を最小限に抑えながらキャリッジが折り返し動作を行う際に光線を記録媒体に曝さないようにすることができる。そのため、光源の熱や光線の成分による記録媒体の伸びや縮み、ゆがみ、劣化を防ぐことができる。また、記録媒体のゆがみを防ぐことができるので、記録媒体の搬送に影響を与えることもなく、ジャムや搬送量の変動による記録画像の劣化を防ぐことができる。
【0010】
請求項2に記載の発明に係るインクジェット記録装置は、
請求項1において、
前記照射範囲を記憶する照射範囲記憶部を備えており、前記制御部は、前記照射範囲記憶部に記憶された前記照射範囲に基づき、前記キャリッジの移動範囲を制御することを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、前記照射範囲を記憶する照射範囲記憶部を備えており、前記制御部は、前記照射範囲記憶部に記憶された前記照射範囲に基づき、前記キャリッジの移動範囲を制御するので、前記光源から照射された光線の照射範囲が記録媒体上にある状態でキャリッジの折り返し動作を行わないように制御することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明に係るインクジェット記録装置は、
請求項1又は2において、
前記照射範囲が記録媒体上を移動する下限速度を記憶する下限速度記憶部を備えており、前記制御部は、前記下限速度記憶部に記憶された前記下限速度以上の速度でキャリッジの移動動作を行うように制御することを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、前記照射範囲が記録媒体上を移動する下限速度を記憶する下限速度記憶部を備えており、前記制御部は、前記下限速度記憶部に記憶された前記下限速度以上の速度でキャリッジの移動動作を行うように制御するので、キャリッジは記録媒体上を移動する際に、下限速度以上の速度で移動することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明に係るインクジェット記録装置は、
請求項3において、
前記制御部は、前記下限速度を前記記録媒体の種類に対応させて設定することを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、前記制御部は、前記下限速度を前記記録媒体の種類に対応させて設定するので、記録媒体の種類に応じて前記照射範囲が記録媒体上を移動する下限速度を設定することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明に係るインクジェット記録装置は、
請求項1から4いずれか一項において、
前記光源から照射される光線は紫外線であることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、前記光源から照射される光線は紫外線であるので、紫外線により硬化するインクを使用した場合に、紫外線を照射して記録媒体上に吐出されたインクに硬化することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明に係るインクジェット記録装置は、
請求項1から5いずれか一項において、前記光硬化性インクは、カチオン重合系の紫外線硬化性インクであることを特徴とする。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、前記光硬化性インクは、カチオン重合系の紫外線硬化性インクであるので、紫外線を照射させることによりインクを硬化させることができる。また、カチオン重合系インクは、ラジカル重合系インクに比べ、紫外線に対する感度が高く、酸素による重合反応の阻害が少ないので、記録媒体上に吐出されたインクの硬化に必要な照度を低減させることができる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、キャリッジの移動範囲を最小限に抑えながらキャリッジが折り返し動作を行う際に光線を記録媒体に曝さないようにすることができ、光源の熱や光線の成分による記録媒体の伸びや縮み、ゆがみ、劣化を防ぐことができ、ジャムや搬送量の変動による記録画像の劣化を防ぐことができる。したがって、生産性を落とすことがなく、光源や光線による記録媒体への悪影響をなくして高精細な記録画像を得ることができる。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、前記光源から照射された光線の照射範囲が記録媒体上にある状態でキャリッジの折り返し動作を行わないように制御することができるので、キャリッジが折り返し動作を行う際に光線を確実に記録媒体に曝さないようにすることができ、光源や光線による記録媒体への悪影響をなくして高精細な記録画像を得ることができる。
【0022】
請求項3に記載の発明によれば、キャリッジは記録媒体上を移動する際に、下限速度以上の速度で移動することができるので、キャリッジが記録媒体上を移動する際に下限速度を下回った速度で移動して、記録媒体にインクを硬化・定着させる以外に必要以上に光源や光線による影響を与えないようにすることができ、請求項1及び2の効果に加え、さらに光源や光線による記録媒体への悪影響をなくすことができる。
また、キャリッジを下限速度で移動させた場合では、記録媒体に悪影響を与えない最大の光量を照射させることができ、確実に記録媒体上のインクを硬化・定着させてさらに画質を高めることができる。従って、インク吸収性に乏しい記録媒体を使用した場合においても高精細な記録画像を得ることができる。
【0023】
請求項4に記載の発明によれば、記録媒体の種類に応じて前記照射範囲が記録媒体上を移動する下限速度を設定することができるので、記録媒体の種類に応じて下限速度を設定して光源や光線による記録媒体への悪影響をなくすことができる。
【0024】
請求項5に記載の発明によれば、紫外線により硬化するインクを使用した場合に、紫外線を照射して記録媒体上に吐出されたインクに硬化することができるので、樹脂製フィルム等非吸収性の記録媒体においてもインクを硬化させることができ、記録媒体の種類を問わずインクを硬化させることができる。
【0025】
請求項6に記載の発明によれば、紫外線を照射させることによりインクを硬化させることができ、また、ラジカル重合系インクに比べ、記録媒体上に吐出されたインクの硬化に必要な照度を低減させることができるので、記録媒体を問わず、低照度でも適正にインクを硬化させることができ、高精細な記録画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の具体的な実施形態を図1から図5を参照して説明する。ただし、図1から図5は本発明の実施形態の一例を示したものであり、発明の範囲を図示例に限定するものではない。従って、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0027】
本実施形態によるインクジェット記録装置の内部には、図1に示すように、棒状のガイドレール1が設けられている。ガイドレール1にはキャリッジモータ2(図2参照)により駆動されるキャッリジ3が支持されており、キャリッジ3はガイドレール1に沿って主走査方向Aに往復移動可能に構成されている。また、ガイドレール1には、図示しないリニアエンコーダが設けられており、キャリッジ3は、リニアエンコーダによりキャリッジ3の現在の位置を検知可能に構成されている。
【0028】
キャリッジ3には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色毎に複数の記録ヘッド4,4,4,4が搭載されており、記録ヘッド4の記録媒体Pの記録面(上面)に対向する面には、インクを吐出するための図示しない複数のノズルが記録ヘッド4の長手方向に沿って配列されている。
【0029】
また、キャリッジ3の記録ヘッド4の主走査方向Aにおける両側部には、光源5が備えられており、光源5は光線を照射することにより記録媒体P上に着弾した光硬化性インクを硬化及び定着させるようになっている。なお、本実施形態において光源5から照射される光線は紫外線であり、紫外線を照射する光源としては、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、熱陰極管、冷陰極管、エキシマーランプ、紫外線レーザー又はLED(Light Emitting Diode)等が適用可能であるが、本発明は、特に高圧水銀ランプ等の熱を発生する光源の適用に有効である。
【0030】
また、キャリッジ3の移動可能範囲のうち記録媒体に記録を行う領域には、記録媒体Pを被記録面から支持する平板状のプラテン6が設けられている。
プラテン6の主走査方向Aと直交する方向である副走査方向Bにおける上流側には、図示しない搬送モータにより駆動される搬送ローラ7が設けられている。
【0031】
搬送ローラ7及びプラテン6の副走査方向Bにおけるさらに上流側には長尺状の記録媒体Pが巻回されている記録媒体元巻きローラ8が設けられている。記録媒体元巻きローラ8は軸芯回りに回転自在であるとともに、その一端部が記録媒体Pの幅に合わせて可動自在に構成されている。本実施形態において、搬送モータ及び搬送ローラ7、プラテン6、記録媒体元巻きローラとから搬送機構9(図2参照)が構成されており、記録媒体Pを副走査方向Bに間欠的に搬送するようになっている。
【0032】
記録媒体元巻きローラ8には記録媒体幅検知センサ10(図2参照)が備えられており、元巻きローラ8が記録媒体の幅に応じて幅方向に可動することにより、可動幅を計測して記録媒体Pの主走査方向Aにおける幅寸法を検知することができるようになっている。
【0033】
また、記録媒体元巻きローラ8には記録媒体種検知センサ11(図2参照)が備えられており、記録媒体Pの種類を検知することができるようになっている。記録媒体種検知センサ11としては、例えば、赤外線等を記録媒体に向けて発射し、記録媒体で反射する割合や当該記録媒体で反射して戻るまでの時間を計測し、記録媒体の表面特性や厚さを計測して記録媒体の種類を検知するものがあげられる。
【0034】
なお、本実施形態における記録媒体幅検知センサ10及び記録媒体種検知センサ11としては、前記したようなセンサに限るものではない。また、設置箇所も記録媒体元巻きローラ8以外に、キャリッジ3に備えることも可能である。記録媒体Pの幅寸法及び種類を検知させるよう構成させたものであればいずれのものを用いてもよい。
【0035】
また、インクジェット記録装置には操作パネル12(図2参照)が備えられており、ユーザは記録媒体Pの種類を予め登録されている記録媒体の種類に対応させて手入力することができるようになっている。
【0036】
次に、本実施形態における制御構成について詳細に説明する。
図2に示すように、インクジェット記録装置にはCPU等から構成された制御部13が備えられている。
【0037】
制御部13には外部に接続されたパソコン等のホストコンピュータ14からI/F(インターフェース)15を介して入力された画像データを元に画像処理を行う画像処理部16が接続されている。
【0038】
また、制御部13には光源5、キャリッジモータ2、搬送機構9、記録ヘッド4を駆動させるヘッド駆動部17が接続されており、画像データを基に各部材における動作を制御するようになっている。また、制御部13には記録媒体幅検知センサ10、記録媒体種検知センサ11、操作パネル12、リニアエンコーダが接続されており、記録媒体幅検知センサ10、記録媒体種検知センサ11、操作パネル12、リニアエンコーダで検知されたデータを基に演算して後述する不揮発性メモリ18に各種設定値を記憶させるようになっている。
【0039】
不揮発性メモリ18は制御部13の外部に接続されており、制御部13で設定された各種設定値を記憶し、必要に応じて制御部13に信号を出力するようになっている。
【0040】
不揮発性のメモリ18には光源5から照射される光線の主走査方向Aにおける照射範囲Lを記憶する照射範囲記憶部19が備えられている。図3に示すように、照射範囲Lは光源5の照射開口より広くなっており、これらを考慮して照射範囲記憶部19は照射範囲Lを記憶するようになっている。
【0041】
また、不揮発性のメモリ18には記録媒体幅検知センサ10で検知された記録媒体の幅寸法を記憶する記録媒体幅記憶部20が備えられており、制御部13は図4に示すように記録媒体幅記憶部20で記憶された記録媒体の幅Yに対応させてキャリッジの移動範囲Mを定め、キャリッジ3を移動させるようになっている。なお、本実施形態では、図4及び図5に示すように、記録媒体の幅Yにキャリッジ3が折り返し動作を行う領域T及び予備領域Rを加えた分だけ往復移動させるようになっている。
【0042】
また、不揮発性のメモリ18には、記録媒体種記憶部21が備えられている。
制御部13は記録媒体種検知センサ11で検知された記録媒体Pの種類あるいは操作パネル12で入力された記録媒体Pの種類を予め登録されている記録媒体Pの種類を対応させるようになっており、記録媒体種記憶部21は登録されている記録媒体と記録媒体種検知センサ11あるいは操作パネル12で入力された記録媒体Pの種類に対応させた状態の記録媒体の種類を記憶するようになっている。
【0043】
さらに、不揮発性のメモリ18には、キャリッジの移動速度の下限速度を記憶する下限速度記憶部22が備えられている。キャリッジの下限速度とは、画像記録中にキャリッジ3の移動に伴って光源5が移動する際に、光源5が発する熱や光線により記録媒体Pにインクを硬化・定着させる以外に影響を与えないとされる移動速度の限界である。
制御部13は下限速度を記録媒体種記憶部21に記憶された記録媒体Pの種類に対応させて設定するようになっており、下限速度記憶部22は、制御部13により設定された下限速度を記憶するようになっている。下限速度を記録媒体の種類に対応させる例としては、熱に弱い記録媒体を用いた場合では制御部13は下限速度を速い速度に設定し、記録媒体P上を移動する際のキャリッジの移動速度を速くして熱による影響を受けないようになっている。
【0044】
なお、制御部13は、下限速度記憶部22で記憶された下限速度以上の速度で記録媒体P上においてキャリッジ3を移動させるようになっている。そのため、図5に示すように、キャリッジ3が移動する際に、キャリッジの折り返し動作である加減速及び停止動作が記録媒体P上で行われないようになっており、記録媒体Pにおいて熱や光線による影響を受けないようになっている。
【0045】
また、制御部13は、キャリッジ3を下限速度で移動させた場合に、記録媒体Pに悪影響を与えない最大の光量を照射させるようになっている。
【0046】
また、制御部13には読み出し専用のメモリであるROM23が備えられており、制御部13により実行される各種制御処理等を記憶している。
【0047】
ここで、本実施形態で使用されるインクについて説明する。
インクは、光硬化性インクであり、本実施形態では紫外線を照射されることによって硬化し、画像を形成する紫外線硬化性インクである。
【0048】
紫外線硬化性インクが硬化する反応は、紫外線硬化反応と呼ばれ、その方法は、210〜400nmの波長を持つ光線すなわち紫外線をプレポリマー、モノマー、光重合開始剤、添加剤からなる紫外線硬化樹脂に照射し、短時間で樹脂を硬化させる、というものである。紫外線硬化性インクとしては、紫外線硬化樹脂に含まれる成分のうち、少なくとも重合性モノマー及び光開始剤、さらに色材を含むものが好ましい。
【0049】
また、紫外線硬化性インクは、重合化合物としてラジカル重合化合物を含むラジカル重合系インクと、カチオン重合性化合物を含むカチオン重合系インクとに大別される。
ラジカル重合の反応としては、紫外線を照射されると光重合開始剤がラジカルになり、これが重合性モノマーの重合性二重結合(不飽和基)に接近して二重結合部分が活性化されて次々と鎖状に結合されていく反応のことをいい、光重合反応は空気中の酸素によって阻害されるので、空気に触れている紫外線硬化樹脂の表面の硬化を短時間に処理するために比較的多量の紫外線照射が必要となる。従って、高出力の光源装置を搭載することとなって装置の長大化、装置の製造コストの増大を招いてしまう。
一方、カチオン重合の反応は、紫外光で励起された塩が水素供与化合物から水素を引き抜いて水素イオンを放出させ、この水素イオンがターゲットを攻撃することによって開始する反応をいい、これによると、紫外線照射の際に空気中の酸素に阻害されることなく記録媒体上のインクを硬化させることができる。
【0050】
そこで、酸素による重合反応の阻害が少ない又は無いカチオン重合系インクのほうが機能性・汎用性に優れるため、本実施形態では、特に、カチオン重合系インクを用いることとしている。
なお、カチオン重合系インクに含まれるカチオン重合性モノマーとしては、各種公知のカチオン重合性のモノマーを併用できる。例えば、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、その他にもオキセタン化合物などが挙げられる。
【0051】
次に、本実施の形態に用いられる記録媒体Pについて説明する。
記録媒体Pとしては、非吸収性記録媒体、吸収性記録媒体のいずれも用いることが可能である。
非吸収性記録媒体として、いわゆる軟包装に用いられる透明又は不透明な非吸収性の樹脂製フィルムが適用出来る。
吸収性記録媒体としては、例えば通常のインクジェットプリンタに適用される普通紙、再生紙、光沢紙等の各種紙、各種布地、各種不織布などが挙げられる。
また、記録媒体Pの形態としては、ロール状、カットシート状、板状等が適用可能である。
さらに、本実施の形態に用いられる記録媒体Pとして、樹脂により表面を被覆した各種紙、顔料を含むフィルム、発泡フィルム等の不透明な公知の記録媒体も適用可能である。
【0052】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0053】
記録装置本体を作動させ、記録装置本体にホストPC10からI/F11を介して所定の画像情報が画像処理部16に送られると、制御部13は記録媒体幅検知センサ10により記録媒体の幅Yを検知させるとともに、記録媒体種検知センサ11により記録媒体Pの種類を検知させて、記録媒体Pの種類に対応したキャリッジ3の下限速度を設定する。
【0054】
そして、制御部13は搬送機構9により記録媒体Pを副走査方向Bに搬送させる。
【0055】
その後、光源5を点灯させ、記録媒体Pに向かって光線を照射させるとともに、キャリッジモータ2を駆動してキャリッジ3を記録媒体Pの直上を主走査方向Aに沿って移動させる。
【0056】
そして、キャリッジ3の移動中に、画像情報に基づき、ヘッド駆動部17を介して記録ヘッド4を駆動させ、各ノズルから記録媒体Pに向けてインクを吐出させる。記録ヘッド4から吐出されたインクはキャリッジ3の進行方向下流側の光源5から照射された光線により速やかに硬化され、記録媒体P上に定着される。
【0057】
このとき、キャリッジ3は図4及び図5に示すように、記録媒体の幅Yに対応して往復移動され、照射範囲Lが記録媒体P上にある状態ではキャリッジ3の折り返し動作を行わないよう制御される。そのため、記録媒体P上では常に一定の速度で移動し、折り返し動作を行う際に記録媒体Pが熱や光線に曝されて熱や光線による影響を受けることがない。従って、記録媒体Pは実際に画像が記録される領域Xのみならず画像が記録されない領域においても熱や光線による影響を受けることがない。
また、キャリッジ3を必要以上に移動させないので、キャリッジ3の移動範囲Mを最小限にして走査時間を延長させることもなく、生産性を落とすこともない。
加えて、キャリッジ3は記録媒体P上において常に下限速度以上の速度で移動されるので、画像記録中においても熱や光線により必要以上に記録媒体Pに影響を与えることがない。なお、キャリッジ3を下限速度で移動させた場合には、記録媒体Pに悪影響を与えない最大の光量を照射させて、確実に記録媒体P上のインクを硬化・定着させることができ、インク吸収性に乏しい記録媒体を用いた場合においても画質を高めることができる。
【0058】
以降、記録装置本体が上記の各動作を繰り返すことにより、記録媒体P上に画像が記録される。
【0059】
以上のように、本発明におけるインクジェット記録装置では、記録媒体の幅Yに対応させてキャリッジ3の移動を制御し、光源5から照射された光線の照射範囲Lが記録媒体Pを超えてから、キャリッジ3の折り返し動作を行うように制御することで、生産性を落とさず、光源5の熱や光線による記録媒体Pへの悪影響をなくして高精細な記録画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明を適用したインクジェット記録装置の概略平面図である。
【図2】本発明に係るインクジェット記録装置の制御構成図である。
【図3】図1におけるキャリッジを拡大した側方断面図である。
【図4】本発明に係るインクジェット記録装置のキャリッジの移動範囲を示す説明図である。
【図5】本発明に係るインクジェット記録装置におけるキャリッジの移動速度とキャリッジの位置とを対応付けた説明図である。
【図6】従来技術を適用したインクジェット記録装置のキャリッジの移動範囲を示す説明図である。
【図7】図6のインクジェット記録装置におけるキャリッジの移動速度とキャリッジの位置とを対応付けた説明図である。
【符号の説明】
【0061】
3 キャリッジ
4 記録ヘッド
5 光源
13 制御部
19 照射範囲記憶部
20 記録媒体幅記憶部
21 記録媒体種記憶部
22 下限速度記憶部
L 照射範囲
M キャリッジの移動範囲
P 記録媒体
R 予備領域
T 折り返し動作を行う領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上に光硬化性インクを吐出する記録ヘッドと、前記記録媒体上に吐出された前記光硬化性インクに光線を照射する光源と、前記記録ヘッドと前記光源とを搭載し、主走査方向に往復移動可能に構成されたキャリッジとを備えたインクジェット記録装置であって、
前記光源から照射された光線の照射範囲が記録媒体を超えてから、前記キャリッジの折り返し動作を行うように制御する制御部を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記照射範囲を記憶する照射範囲記憶部を備えており、前記制御部は、前記照射範囲記憶部に記憶された前記照射範囲に基づき、前記キャリッジの移動範囲を制御することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記照射範囲が記録媒体上を移動する下限速度を記憶する下限速度記憶部を備えており、前記制御部は、前記下限速度記憶部に記憶された前記下限速度以上の速度でキャリッジの移動動作を行うように制御することを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記下限速度を前記記録媒体の種類に対応させて設定することを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記光線は紫外線であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記光硬化性インクは、カチオン重合系の紫外線硬化性インクであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−26970(P2006−26970A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−205969(P2004−205969)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】