説明

インクジェット記録装置

【課題】 廃インクを効率よく蒸発させるとともに、大量の廃インクを効果的な貯蔵するとともに、装置を傾けたときでもタンクからインクが漏れ出すことを防止したインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】 上面が開口した箱型の貯蔵手段と、該貯蔵手段に吸引する吸引手段と、前記貯蔵手段に収容され、前記吸収手段により廃液を吸入された廃液を保持する吸収体と、を備え、前記吸収体は、前記吸引手段により廃液が流入される廃液受部を除いて配置されるとともに、少なくとも前記吸収体の収容されていない流入部を被覆する被覆手段を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出して用紙上に画像を形成するインクジェット記録装置に関する。さらに詳しくは、記録ヘッドのメンテナンス動作を行うことにより排出される廃インクを収容する貯蔵手段を備えたインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット記録装置においては、長期間使用しなかった後に使用再開する際、記録ヘッドに多数形成されているインク吐出口の目詰まりの影響を排除するために、当該使用再開前に当該インク吐出口を含むインクの流路に対して負圧を掛け、当該流路に溜まったインクや気泡を除去するメンテナンス処理が必要である。そして、この抜き取られたインクは、廃インクとして記録装置の外部に排出されるのではなく、当該プリンタ内の廃インクタンクに貯蔵される。
【0003】
また、いわゆる縁なし印刷をする場合、印刷用紙の範囲外までインクの吐出範囲とするため、プラテン上に溜まったインクを廃インクとして回収し、廃インクタンクに貯蔵するようにしている。
【0004】
そこで、この廃インクの外部への漏出を防止するため、下記特許文献1乃至3に係る技術が開発されている。
【特許文献1】特許第3284453号公報(第2図及び第3図)
【特許文献2】特開平11−129504号公報(第1図、第2図及び第3図)
【特許文献3】特開2001−171148号公報(第6図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のいずれの構成によっても、廃インクタンク自体の全体形状が単純な直方体であったため、廃インクの迅速な吸収を促すことは可能であるが大量の廃インクが一度に発生した場合にそれらの蒸発が遅れ、装置本体が傾けられてしまうと、タンク壁を伝わって廃インクが漏れ出してしまう問題点があった。
【0006】
また、廃インクタンクが二つに分割されている場合でも、一方の貯蔵室が一杯になったら廃インクを他の貯蔵室に流れ込ませることが必要になり、この場合でもやはり廃インクが漏れ出してしまう場合があるという問題点があった。
【0007】
近年、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックに加え、写真の中間調部分をきれいに見せる色としてイエロー、マゼンダ、シアンの少なくとも2色の中間色を入れて6色、もしくは7色としている。そのため、従来の4色のものに比べてメンテナンス処理の回数も増えて廃インクの量も増える。そのため、回収された廃インクを効率よく蒸発させるため、上面が開口した箱型形状のタンク開口部の面積を大きくすることが考えられるが、それに伴ってタンクを浅底とするため、貯蔵できる廃インク量も少なくなり、さらに使用開始後の輸送などにより、装置を傾けたときにインクが装置内に漏れ出してしまい、搬送経路などを汚してしまうという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は上記の各問題点に鑑みて為されたもので、その目的は、廃インクの迅速なる蒸発と大量の廃インクの効果的な貯蔵とを、狭い占有空間で両立させることができると共に、廃インクの貯蔵部が複数ある場合の各貯蔵部に略均等に廃インクを流入させることが可能な構造を備える廃インクタンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の記録装置は、上面が開口した箱型の貯蔵手段と、該貯蔵手段に吸引する吸引手段と、前記貯蔵手段に収容され、前記吸収手段により廃液を吸入された廃液を保持する吸収体と、を備え、前記吸収体は、前記吸引手段により廃液が流入される廃液受部を除いて配置されるとともに、少なくとも前記吸収体の収容されていない流入部を被覆する被覆手段を有することを特徴とする。したがって、使用開始後に輸送などの理由から装置を傾けた状態としても、吸収体のない廃液受部を被覆手段により覆うことによりインクが垂れて装置内に漏れ出さない。
【0010】
また、本発明の記録装置は、用紙を積載する給紙手段と、給紙手段から下から上にUターン搬送する搬送手段と、搬送経路に配置され用紙に画像形成する記録手段と、を備えた記録装置において、前記搬送手段のUターン湾曲の外側には、記録部からの廃インクを吸引する吸引手段により吸引された廃インクを貯蔵する貯蔵手段が配置されることを特徴とする。したがって、インクジェット記録装置において排出される多量の廃インクを効率的に貯蔵可能であり、コンパクトな装置とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、貯蔵手段の廃液流入部付近を除いて吸収体を収容し、インク流入をスムーズにする一方、少なくとも吸収体の収容されていない流入部を被覆手段により被覆した。したがって、インクタンクが傾けられたときでも、タンク内壁を伝わって廃液流入部に溜まったインクが装置内に漏れ出すことを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための最良の形態について、図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、インクジェット方式のプリンタに備えられる廃インクタンクに対して本発明を適用した場合の実施の形態である。
【0013】
(1)第1実施形態
始めに、本願に係る第1実施形態について、図1乃至図5を用いて説明する。なお、図1は第1実施形態に係る廃インクタンクの外観斜視図であり、図2は当該廃インクタンク自体の細部構成を示す上面図であり、図3は図2におけるA部分の拡大上面図であり、図4は当該廃インクタンクの使用状態における上面図であり、図5は当該廃インクタンクのインクジェット記録装置への装着状態を示す内部透視図である。
【0014】
なお、本記録装置に用いられる記録ヘッドはインクジェット方式のものであり、圧電素子の圧力によってインクを吐出する方式を採用しているが、これに限られず熱エネルギーを利用して気泡を生じさせ、気泡の圧力によってインクを吐出する方式に用いてもよい。
【0015】
まず、第1実施形態に係る廃インクタンク自体の構造について、図1乃至図3を用いて説明する。図1乃至図3に示すように、第1実施形態に係る廃インクタンク1は、例えばポリプロピレン等の樹脂にて一体成型により形成されるものであり、浅底で蒸発を期待すべく、上面を広く開口させた開口部を備えた直方体形状を全体として有する第一貯蔵部2と、第一貯蔵部2よりも深底であって、開口面積は小さな直方体形状を全体として有する第二貯蔵部3と、第一貯蔵部2と第二貯蔵部3とを廃インクの流入が可能に接続すると共に当該廃インクが図示しない廃インクポンプ等から流し込まれる廃インク受部4と、により構成されている。
【0016】
このとき、第一貯蔵部2、及び第二貯蔵部3は、上面が全て開口されており、廃インク吸収用の図示しない吸収フォーム40、41が詰められた状態で使用されるものである。そして、当該第二貯蔵部3と廃インク受部4とは連通口20を介して廃インク受部4から第二貯蔵部3への流入が自在となるように接続されている。
【0017】
また、第一貯蔵部2は、やはり上面が全て開口されており、更にその内部にそれ自体の平面形状がT字形の仕切り壁5乃至7が千鳥状に一体に形成されている。仕切り壁5と7の基部は、第一貯蔵部2の一方の壁に一体に形成されており、また仕切り壁6の基部は第一貯蔵部2の他方の壁に一体に形成されている。また、当該第一貯蔵部2と廃インク受部4とは連通口21を介して廃インクの廃インク受部4から第一貯蔵部2への流入が自在となるように傾斜面をもって接続されている。従って、第一貯蔵部2に詰め込まれる後述の吸収フォームは、連通口21の位置から第一貯蔵部2内の仕切り壁5乃至7の間の空間を通って第一貯蔵部2の連通口21に対して反対側の端部まで連続して詰め込まれることになる。なお、第一貯蔵部2の底壁はインク受部4から遠い側の方が低く形成され、その間は傾斜面11を介して接続される。これにより、廃インクが遠い方に流れ込み易く、より多くの廃インクを蓄積できる。
【0018】
次に、廃インク受部4は、吸引手段としての上記廃インクポンプから廃インクが流入してくる図示しないチューブを介してチューブ接続部8及び9に接続される。このチューブ接続部8及び9は、貯蔵手段の側壁に形成されており、夫々の廃インク受部4への開口部8A及び9Aからは気泡や増粘したインクが混入した廃インクが廃インク受部4に流れ込むことになる。
【0019】
ここで、チューブ接続部8が挿入されることになるチューブは、ノズルをキャップするインクキャップ(不図示)に接続されており、廃インクタンク1が装填されるプリンタに備えられた図示しないメンテナンス部において上記廃インクポンプにより吸引された廃インクが流れ込むことになる。
【0020】
一方、チューブ接続部9が挿入されることになるチューブは、図示しない切り換えユニットに備えられた大気連通孔に接続されており、当該大気連通孔から漏れ出てくる廃インクを廃インクタンク1に導く。
【0021】
このとき、上記廃インクポンプにより吸引される廃インクの量は大気連通孔から漏れ出てくる廃インクの量よりも格段に多いので、図1乃至図4に示すようにチューブ接続部8の内径(すなわち、開口部8Aの直径)はチューブ接続部9の内径(すなわち、開口部9Aの直径)よりも大きく形成されている。
【0022】
次に、図1及び図3に示すように、廃インク受部4においては、その底面22が廃インクタンク1の使用状態において水平となるように形成されており、この構造により開口部8A及び9Aから吐出された廃インクは、ほぼ均等に第一貯蔵部2又は第二貯蔵部3に振り分けられ、夫々連通口21又は20を介して第一貯蔵部2内の吸収フォーム又は第二貯蔵部3内の吸収フォームに吸い取られる。
【0023】
更に、廃インク受部4の開口部8Aに対面する廃インク受壁10が設けられている。この結果、流入してくる廃インクが廃インク受壁10に当たった後、各貯蔵部に振り分けられるため、スムーズ且つ均等に各貯蔵部に廃インクを流入させることができる。
【0024】
更にまた、廃インク受部4の底面22から各連通口20及び21に繋がる部分は、境界部24を境界として水平な底面22から一段下がった高さにある各連通口20及び21に向かう傾斜面23とされている。これにより、廃インク受部4に流入した廃インクがよりスムーズ且つ迅速に各連通口20及び21に導かれることとなる。
【0025】
次に、図1乃至図3を用いて構造を説明した廃インクタンク1に上記吸収フォームを省略した状態について、図4に示す上面図を用いて説明する。
【0026】
図4に示すように、第一貯蔵部2においては、吸収フォーム41が、仕切り壁5乃至7以外の全ての部分が詰められて用いられる。そして、この吸収フォーム41の連通口21に対向する面から廃インクが徐々に吸収され、最終的には第一貯蔵部2内の吸収フォーム41全体に染み込んで貯蔵されるとともに、蒸発に供されることとなる。
【0027】
一方、第二貯蔵部3においては、三つに分割された吸収フォーム40が当該第二貯蔵部3の内部全体に渡って詰め込まれている。そのため、各吸収フォーム40間での廃インクの移動が抑止できる。このとき、各吸収フォーム40夫々が廃インクタンク1の使用状態において鉛直方向に縦長の直方体形状となるため、連通口20からの廃インクの吸収(第二貯蔵部3の鉛直縦方向の吸収)が迅速に為されることとなる。
【0028】
なお、各吸収フォーム40及び41の材料として具体的には、例えば、フェルト等の繊維質素材や多孔質素材を用いて当該吸収フォーム40及び41を形成することが適切である。
【0029】
次に、第1実施形態に係る廃インクタンク1の使用時の状態について、図5を用いて説明する。なお、図5は廃インクタンク1(吸収フォーム40及び41は図示を省略している)を含むプリンタの内部機構を示す斜視図である。
【0030】
図5に示すように、実施形態に係るプリンタPは、記録用紙が装填されたカートリッジが挿入されるカートリッジ挿入口35がその正面下部に開口された筐体36を有しており、この筐体36内に紙送り機構37及び記録ヘッド38等が組み込まれている。そして、第1実施形態に係る廃インクタンク1は、装置本体の後方上部の弧状ガイドの湾曲部の上方空間であって、画像読取部との空間にガイドプレート上に載せられている。この第一貯蔵部2及び第二貯蔵部3夫々における開口部が上方を向くように組み込まれる。
【0031】
以上説明したように、第1実施形態に係る廃インクタンク1の構造によれば、吸収フォームに吸収された廃インクを蒸発させるため浅く且つ開口部が広い第一貯蔵部2と、深底で吸収フォームに大量の廃インクを蓄積可能な第二貯蔵部3と、により廃インクタンク1が形成されているので、廃インクの迅速なる蒸発と大量の廃インクの効果的な貯蔵とを、狭い占有空間で両立させることができる。
【0032】
また、使用状態において水平となる廃インク受部4内の底面22及び傾斜部23により第一貯蔵部2と第二貯蔵部3とが接続されているので、各貯蔵部に略均等に廃インクを流入させることができる。
【0033】
更に、廃インク受部4の開口部8Aに対面する廃インク受壁10が設けられている。この結果、流入してくる廃インクが廃インク受壁10に当たった後、各貯蔵部に振り分けられるため、スムーズ且つ均等に各貯蔵部に廃インクを流入させることができる。
【0034】
更にまた、開口部9Aより直径が大きい開口部8Aに対面する位置に廃インク受壁10が設けられているので、大量の廃インクが吐出される場合でもスムーズに各貯蔵部に流入させることができる。
【0035】
なお、上記廃インク受壁10に関しては、少なくとも開口部8Aに対面する位置に形成されていれば良く、これ以外に、例えば、開口部8Aから開口部9Aまでに至る長さの廃インク受壁が当該開口部8A及び9Aに対面する位置に形成されていてもよいし、或いは、開口部8Aに対面する位置に形成されている廃インク受壁と開口部9Aに対面する位置に形成されている廃インク受壁とが分離独立して夫々の開口部に対面する位置に形成されていても良い。
【0036】
また、第一貯蔵部2においては、T字形の平面形状を夫々有する複数の仕切り壁5乃至7が千鳥状に配置されているので、輸送などにより装置が傾き、それにより廃インクタンク1が傾斜しても第一貯蔵部2内に貯蔵された廃インクの水頭圧が仕切り壁5乃至7により区画ごとに分散されて小さくなるため、当該廃インクが溢れ難くなる。
【0037】
更に、廃インク受部4の底面に、廃インクが流し込まれる位置から連通面20及び連通面21に向けて傾斜する傾斜面23が形成されているので、スムーズに廃インクを各貯蔵部に流入させることができる。
【0038】
更にまた、第一貯蔵部2内において、各仕切り壁5乃至7の間の空間に連続する吸収フォーム41が挿入されているので、各仕切り壁5乃至7間における水頭圧が下げられることで、廃インクタンク1を傾斜させも第一貯蔵部2に貯蔵されている廃インクが溢れ難くなる。なお、仕切り壁5乃至7は平面視T字形状としたが、タンクを区画することにより水頭圧を分散させることができる形状であればよい。
【0039】
また、第二貯蔵部3に、使用状態において鉛直方向に分割されている吸収フォーム40が挿入されている。これにより吸収フォーム40間での廃インクの移動が抑制され、廃インクが溢れ難くなる。
【0040】
(2)第2実施形態
次に、本発明に係る他の実施形態である第2実施形態について、図6乃至図8を用いて説明する。なお、図6乃至図8において、図1乃至図3に示す部材と同様の構成部材については、同一の部材番号を付して説明は省略する。
【0041】
上述した第1実施形態においては、開口部8Aの正面に廃インク受壁10を設けたが、この廃インク受壁10を省略して廃インクタンクを形成することもできる。
【0042】
すなわち、図6乃至図8に示すように、第2実施形態に係る廃インクタンク30は、上記廃インク受壁10がない廃インク受部31を備える以外は、第1実施形態に係る廃インクタンク1と同様の構造を備えている。
【0043】
このような構造を備える廃インク受部31であっても、底面22と傾斜面23とを備えることにより各連通口20及び21へスムーズに廃インクを導くことができる。
【0044】
以上説明した第2実施形態に係る廃インクタンク30であっても、廃インク受壁10に係る部分を除き、上述した第1実施形態に係る廃インクタンク1と同様の効果を奏し得る。
【0045】
なお、上述してきた各実施形態においては、仕切り壁5乃至7の平面形状がT字形である場合について説明したが、仕切り壁はタンクを区画することにより水頭圧を分散させることができる形状であればよく、平面形状がL字形であっても良いし、或いは曲線鉤形であっても良い。更に、第一貯蔵部2の長手方向の側壁から内側に延在し且つ当該長手方向に所定の角度をもって傾斜している板が千鳥状に形成されていても仕切り壁としての機能を発揮し得る。
【0046】
さらに以下には、廃インクタンク1である第一貯蔵部2、第二貯蔵部3の上面をフィルムで被覆し、装置が傾いたときに吸収フォーム40、41に吸収された廃インクが漏れ出して装置本体内を汚損することを防止した実施例を開示する。第3実施形態は、第一貯蔵部2内で吸収フォーム40の収納されていない廃インク受部4近傍をフィルムで被覆したものである。また、第3実施形態の変形例は、浅底で上面が開口した箱型の第一貯蔵部の長手方向で第二貯蔵部3とは対向する位置をフィルムで被覆したものである。第4実施形態は、第一貯蔵部2、第二貯蔵部3の上面領域をすべてフィルムで被覆し、必要に応じて蒸発用孔を穿孔したものである。
【0047】
(3)第3実施形態
本発明に係る他の実施形態である第3実施形態について、図9を用いて説明する。なお、図9において、図1乃至図3に示す部材と同様の構成部材については、同一の部材番号を付して細分説明は省略する。
【0048】
上述した第一、第二の実施形態と同様に、廃インクタンク1である第一貯蔵部2、第二貯蔵部3には吸収フォーム40及び41が充填されるが、第一貯蔵部2、第二貯蔵部3の連通部である廃インク受部4には、インク流入するときに負荷となるため、通常吸収フォーム40は充填されない。そのため、廃インクタンクを傾けた状態で輸送されると、吸収フォーム40、41やインク受部4に溜まったインクが底部に対して垂直に立設されるタンク内壁や仕切り壁5乃至7を伝わって装置本体内に漏れ出してしまうことがある。
【0049】
また、インク流路やインクタンクに蓄積された気泡を除去するメンテナンス機構を設けると、廃インク受部4に気泡が集積し、開口部8A、9Aから流入してくる気泡の混ざった廃インクと衝突して弾け飛び、搬送経路など紙搬送面に付着してしまう。特に、廃インクタンク1をキャリッジとほぼ平行な位置であって、搬送経路の上方に配置している(図5参照)。そのため、搬送経路上にインクが落下し易く、次に送られてくる用紙の裏面(画像形成側と反対面)が汚れてしまうことがある。また、用紙に画像形成中にインクが飛ぶと、用紙上に廃インクが点となって付着し、記録画質の低下をもたらす。
【0050】
そのため、吸収フォーム40の収納されていない廃インク受部4の上面を囲うようにフィルム51を溶着により固定している。このフィルム51は、浅底で開口面積を大きくもたせた第一貯蔵部2の機能としてのインク蒸発の効果を保持するため、インク受部4のみを覆うものでよい。これにより、メンテナンス処理による廃インクの吸引時に発生する廃インクの飛散を防止しつつ、輸送など装置本体が傾けられたときでも、インク受部4に溜まったインクが内壁を伝って装置本体内に漏れ出すことを防止できる。
【0051】
さらに、輸送時の姿勢変化や振動によりインクが溢れ出ることを防止するためには、吸収フォーム40のインク受部4側である仕切り壁5の第一貯蔵部2の長手方向と直交する壁部までフィルム51で被覆することが好ましい。吸収フォーム41のインク受部4側は、インクの流入口であるため、吸収フォーム41の保持能力を超えたインクがタンク底面に溜まっていることが多い。フィルム51でこの部分を覆ったことにより、装置を傾けたときに、その溜まったインクが底面から内壁を伝わって装置本体内に漏れ出すことを防止できる。
【0052】
(3−1)変形例1
第3実施形態の変形例として、図10を用いて説明する。第一貯蔵部2は、浅底の上面が開口した箱型に形成され、開口部に吸収フォーム41が収納される。この第一貯蔵部2は、蒸発が期待され、そのため開口面積を大きくし、さらに浅底として蒸発を促がしている。この第一貯蔵部2には廃インク収容量は第二貯蔵部3より小さなものである。第二貯蔵部3は、深底の上面が開口した箱型で形成されている。この第二貯蔵部3は貯蔵できるインクを大容量とする。そして、この開口部には複数の吸収フォーム41がインク流入方向に対して平行に複数収容されている。この複数収容されることにより、それぞれの吸収フォーム41との間で一旦インクの流れが断たれる。そのため、装置本体が傾けられて置かれたとき等、吸収フォーム間でインクの移動が妨げられ、第二貯蔵部3からインクが容易に漏れ出すことを防止できる。特に、この吸収フォーム41は、毛羽立ちを抑えるための層を周囲に有するものが好ましい。
【0053】
そして、この変形例1では、第一貯蔵部2のインク受部4にフィルム52が溶着されるだけでなく、対向側、すなわち先端側にもフィルム53がタンク上面に沿って溶着される。このフィルム53は、使用開始後の輸送などにより、第一貯蔵部2の先端を底に傾斜状態で置かれたとき、吸収フォーム41に保持されたインクが漏れ出したとき、タンク内壁がフィルム53により被覆され、その上面が密閉されているため、内壁を伝ってインクが漏れ出すことを防止している。
【0054】
(3−2)変形例2
また、第3の実施形態の変形例としてフィルム54が第一貯蔵部2の上面に溶着など固着手段により密閉されていない例について図11を参照して説明する。図11において、フィルム54は上面から垂下される脚部57を備える。この脚部57は、第一貯蔵部2に装着可能に構成されており、タンク内壁に沿ってフィルム54の周囲に必要に応じて取り付けられる。
【0055】
本変形例では、たとえば、オフィスに設置される比較的大型のインクジェットプロッタなど輸送の際にも専用コンテナで行う等必ず所定方向に設置される記録装置において、廃インクを貯蔵する第一貯蔵部2に対して開口部を覆うフィルム54と、フィルムから垂下される脚部57よりなる被覆手段を配置したことを特徴とする。これにより、必要に応じて着脱できるため、廃インクが飛散して装置内を汚損する場合に被覆手段であるフィルム54を第一貯蔵部2に装着することが好ましい。また、フィルム54を溶着などの方法によりタンクに固着しないため、吸収フォーム40、41をタンクの内壁面に接触するように収容できる。また、その吸収フォーム40、41とタンク内壁との間に脚部57を挿入して取り付けることにより、タンクが傾けられたときでも一旦はフィルムによりインクを保持できる。
(4)第4実施形態
【0056】
本発明に係る他の実施形態である第4実施形態について、図12を用いて説明する。なお、図12において、図1乃至図3に示す部材と同様の構成部材については、同一の部材番号を付して説明は省略する。上記廃インクポンプの機能により吸引された廃インクが流れ込むチューブ接続部8と、大気連通孔に接続されるチューブ接続部9とからインクが流入可能に配置されている。
【0057】
この廃インクタンクの上面全域をフィルム56で覆い、タンク外壁に溶着されている。これは、使用開始後に装置を輸送するとき等、装置を傾けて輸送すると、吸収フォーム40、41に吸収されたインクが漏れ出し、タンク1の内壁面を伝って装置本体内に漏れ出すことがある。この漏れ出したインクが搬送経路に落下して、次に送られてくる用紙の裏面(画像形成側と反対面)が汚れてしまうこと、用紙に画像形成中にインクが飛散すると、飛散したインクが用紙上に付着し、記録画質の低下をもたらす。そこで、廃インクタンク1の外壁の上面全域をフィルム56で被覆して溶着などにより上面とフィルムとの隙間を無くすように固着している。
【0058】
また、吸収フォーム40、41に吸収されたインクが蒸発できるようフィルム54には千鳥状に配置される仕切り壁5乃至7に沿って多数の孔55が穿設されている。この多数の孔55は、タンク内壁面近傍から外れた領域であって、仕切り壁5、6、7の周囲を取り巻くように配置される。これにより、吸収フォーム41に吸収されたインクの蒸発を期待できるとともに、輸送や振動によるインクの漏れ出しを防止できる。また、前記貯蔵手段内を複数の領域に区画する区画手段である仕切り壁5乃至7の近傍をはずして蒸発用孔55が形成されている。インク受部4よりの吸収フォーム41はその吸収力を上回る廃インクが滞留状態にあり、この状態で装置が傾けられると、蒸発孔55を介して廃インクが装置内に漏れ出してしまう。そのため、この蒸発用の孔55は、第一貯蔵部2内に形成される仕切り壁5乃至7や貯蔵部2の外枠をなす内壁面から離間して設けられている。また、第一貯蔵部2の長手方向であって仕切り壁5よりインク受部4側には孔が形成されないことが好ましい。インク受部に溜まったインクが仕切り壁5を伝って漏れ出すことを防止するためである。
【0059】
さらに、インク受部4は、ポンプにより勢いよくインクが流れ込んでくるため、インク受部4に増粘したインクが堆積してしまうと、インクが流れ込む支障となりメンテナンス動作に支障を来たす。そのため、通常インク受部4近傍には吸収フォーム41が配置されていない。ところで、このインク受部4には少量ではあるものの、常にインクが溜まっている。そのため、使用開始後の輸送や装置を傾ける動作によりインクが装置内に漏れ出し、搬送経路を汚してしまうことがある。そのため、このインク受部4を含む廃インクタンク全域をフィルムで覆っている。この孔は、さらに仕切り壁5の幅方向に伸びる壁より仕切り壁7側にのみ形成されている。そのため、インク受部4からのインク漏れ出しをさらに防止できる。
【0060】
なお、このフィルム56に蒸発孔55を形成したものを開示したが、これは第一貯蔵部2に蓄積された廃インクを蒸発させることを重視したものであり、例えば、第一貯蔵部2に廃インクが所定量溜まったときに交換可能とするものであれば、蒸発孔55はまったく形成しなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、インクジェット記録装置において、好適であるが、プリンタに限らず、インクジェット方式の記録部を備えた複合機(具体的には、プリンタ機能のほかにファクシミリ機能、コピー機能、又はスキャナ機能の少なくとも2つの機能を備えた複合機)に適用するとより顕著な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】第1実施形態に係る廃インクタンクの外観斜視図であり、(a)は正面上方から見た概観斜視図であり、(b)は裏面上方から見た斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る廃インクタンク自体の細部構成を示す上面図である。
【図3】図2におけるA部分の拡大上面図である。
【図4】第1実施形態に係る廃インクタンクの使用状態における上面図である。
【図5】第1実施形態に係る廃インクタンクのインクジェットプリンタへの装着状態を示す内部透視図である。
【図6】第2実施形態に係る廃インクタンクの外観斜視図であり、(a)は正面上方から見た概観斜視図であり、(b)は裏面上方から見た斜視図である。
【図7】第2実施形態に係る廃インクタンクの細部構成を示す上面図である。
【図8】図7におけるB部分の拡大上面図である。
【図9】第3実施形態に係る廃インクタンクの外観斜視図である。
【図10】第3実施形態に係る廃インクタンクの変形例1を示す上面図である。
【図11】第3実施形態に係る廃インクタンクの変形例2を示す上面図である。
【図12】第4実施形態に係る廃インクタンクの細部構成を示す上面図である。
【符号の説明】
【0063】
1、30 廃インクタンク
2 第一貯蔵部
3 第二貯蔵部
4、31 廃インク受部
5、6、7 仕切り壁
8、9 チューブ接続部
8A、9A 開口部
10 廃インク受壁
20、21 連通口
22 底面
23 傾斜面
24 境界部
35 カートリッジ挿入口
36 筐体
37 紙送り機構
38 記録ヘッド
40、41 吸収フォーム
51、52、53、56 フィルム
55 蒸発孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口した箱型の貯蔵手段と、該貯蔵手段に吸引する吸引手段と、前記貯蔵手段に収容され、前記吸収手段により廃液を吸入された廃液を保持する吸収体と、を備え、
前記吸収体は、前記吸引手段により廃液が流入される廃液受部を除いて収容されるとともに、少なくとも前記吸収体の収容されていない流入部を被覆する被覆手段を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記被覆手段は、少なくとも前記流入部を被覆した状態で固着されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記被覆手段は、前記貯蔵手段の上面全域を被覆するとともに、その上面には蒸発用孔を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記蒸発用孔は、前記貯蔵手段の底面から立設される内壁、前記貯蔵手段の底面から立設され、貯蔵手段を複数の領域に区画する区画手段から離間して形成することを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
浅底で上面を開口し、該開口部に吸収体を収容した第一貯蔵手段と、前記第一貯蔵手段より深底であって、前記第一貯蔵手段の開口部より小さな開口部を備える第二貯蔵手段と、前記第一貯蔵手段と第二貯蔵手段とを接続し且つ廃液が流し込まれる廃液流入部とを備え、
少なくとも前記第一貯蔵手段の廃液流入部付近であって、吸収体の収容されていない領域を被覆する被覆手段を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記被覆手段は、前記貯蔵手段の前記流入部とは反対側を被覆してなることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記被覆手段は、少なくとも前記流入部を被覆する上面部と、前記上面部から垂下され流入部に挿脱自在に取り付けられる脚部とを備えることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
用紙を積載する給紙手段と、給紙手段から下から上にUターン搬送する搬送手段と、搬送経路に配置され用紙に画像形成する記録手段と、を備えた記録装置において、
前記搬送手段のUターン湾曲の外側には、記録部からの廃インクを吸引する吸引手段により吸引された廃インクを貯蔵する貯蔵手段が配置されることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記貯蔵手段は、浅底で上面を開口し、該開口部に吸収体を収容した第一貯蔵部と、前記第一貯蔵部より深底であって、前記第一貯蔵部の開口部より小さな開口部を備える第二貯蔵部とを含み、
前記第一貯蔵部は搬送領域の湾曲外側のガイドの上方に配置され、前記第二貯蔵部は搬送領域外に収納されることを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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