説明

インクジェット記録装置

【課題】背景用ヘッドをキャリッジに搭載させても、キャリッジ寸法の増大により生じる搬送精度の低下や画像ずれを防ぎ、高精細な画像を得ることができるインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】周面に記録媒体Pを保持して回転するドラム回転体3と、記録媒体に対して実画像用インクを吐出する画像用ヘッド及び背景用インクを吐出する背景用ヘッドを備えてなるヘッドユニット5と、記録媒体上に光を照射する光照射装置7とを備え、ヘッドユニット及び光照射装置は周面に対向しかつドラム回転体の回転方向に並べられて配置され、制御部はドラム回転体を回転させ、ヘッドユニットを主走査方向に沿って相対的に移動させながら、画像用ヘッド及び背景用ヘッドのうちいずれか一方のヘッドで記録した後、他方のヘッドで記録される前に一方のヘッドにより記録されたインクに対し、光照射装置により光が照射されるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録装置に係り、特に背景用インクを用いたインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、普通紙を代表とする様々な記録媒体に対して印刷可能な記録装置として、インクジェット記録装置が知られている。インクジェット記録装置は、記録ヘッドの記録媒体に対向する面に設けられたノズルから色材であるインクを直接記録媒体に対して吐出して、記録媒体上に着弾、浸透若しくは定着させることで記録媒体上に画像を形成する記録装置であり、工程の単純さ、印刷時における静粛性及び印字、印画品質の点で非常に優れた特徴がある。
【0003】
このようなインクジェット記録装置においては、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのプロセスカラーのインクを用いて印刷が行われることが一般的である。近年では、この他に特殊な印刷として、プロセスカラーの他に、特別色などで印字を重ねることで、得られる画像の付加価値を向上させる手法が試みられている。
【0004】
例えば、軟包材やフィルムなどの透明基材に白インクで印字する画像形成方法が知られている。この画像形成方法では、透明基材に対し、プロセスカラーで反転画像を印字した後、印字面上に白インクを重ね打ちする。このようにすることで、印字された画像を白インクの付着面と反対側の面、すなわち、透明基材側から眺めたときに正しい像として観察され、かつ、透名基材であるがゆえに生じる色透けにより画像の判別が不明瞭となるのを防止する効果を与える。この白インクによる印字は、基材に対して画像形成面と反対側に行われるため、裏刷りと呼ばれている。
【0005】
一方、基材に、色つきの基材を用いた場合には、該基材上に画像を印字しても基材の色に影響され、正しい色として認識できない場合がある。このような場合においては、白インクで基材表面上を印字した後、印字面上にプロセスカラーによる画像を印字する。この白インクによる印字は、基材に対して画像形成面側に行われるため、表刷りと呼ばれている。
【0006】
そして、前述したようなプロセスカラーからなる画像形成用の実画像インクの他に、背景色として白インクなどの非プロセスカラーを用いて行う画像形成法を適用したインクジェット記録装置が開発されている(特許文献1〜特許文献3参照。)。
【0007】
かかるインクジェット記録装置では、実画像インクを吐出する記録ヘッド(画像用ヘッド)を挟む位置に背景用インクを吐出する記録ヘッド(背景用ヘッド)を配設している。
【0008】
特許文献1では、裏刷りを行う場合、キャリッジの進行方向に対し、画像用ヘッドよりも前方する位置に背景用ヘッドを配置し、表刷りを行う場合、キャリッジの進行方向に対し、画像用ヘッドよりも後方の位置に背景用ヘッドを配置している。したがって、表刷り、裏刷りの両方を行う場合には、画像用ヘッドの両側に背景用ヘッドを配置する必要がある。また、本文献では、基材の搬送方向に対し、画像用ヘッドより下流側に背景用ヘッドを配置して表刷りを行い、画像用ヘッドより上流側に背景用ヘッドを配置して裏刷りを行う装置も例示されている。
【特許文献1】特開2003−285422号公報
【特許文献2】特開2004−306591号公報
【特許文献3】特開2005−59214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
いずれにせよ、このようにキャリッジ移動方向に沿って画像用ヘッドを挟む形で背景ヘッドを挟むと、背景用ヘッドの個数が増大し、キャリッジ寸法が大きくなる。ここで、特許文献1においては、画像用インクとの混合を防ぐために、背景用ヘッドから吐出された後該インクを即硬化させるような構成として、背景用ヘッドから背景用インクを吐出後に紫外線照射により基材上に着弾したインクを硬化させる構成をとっている。しかしながら、この構成ではさらにキャリッジ寸法が増大してしまう。
【0010】
特に、記録媒体の搬送方向の上流及び下流に背景用ヘッドを配置する構成では、基材に印字するプラテン面の面積が大きくなり、搬送精度を損なう問題も生じてしまう。
さらには、該インクを紫外線照射装置から照射させることで硬化させる場合には、該紫外線照射装置のアーク長が延びるため、新たに発熱による問題も生じさせてしまう。
【0011】
そこで、キャリッジに複数の背景用ヘッドを搭載させるのを避けるために、画像用ヘッドの片側のみに背景用ヘッドを搭載し、表刷りを行う場合には往動で背景用画像を印字した後、複動で該背景用画像が印字された基材に対して実画像を印字する構成の装置も開発されている。
【0012】
しかしながら、この場合においても、搬送精度によっては背景用画像と実画像との間に画像ずれを生じさせてしまう恐れがある。
このように、画像用ヘッドの他に、背景用ヘッドをキャリッジに搭載させることで高精細な記録画像を得ることができない場合を生じさせていた。
【0013】
そこで、本発明は、背景用ヘッドをキャリッジに搭載させても、キャリッジ寸法の増大により生じる搬送精度の低下や、画像ずれを防ぎ、高精細な画像を得ることができるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述の問題を解決するために、請求項1に記載のインクジェット記録装置は、
周面に記録媒体を保持して回転するドラム回転体と、
前記記録媒体に対して実画像用インクを吐出する画像用ヘッド及び背景用インクを吐出する背景用ヘッドを備えてなるヘッドユニットと、
前記記録媒体上のインクを硬化させるための光を照射する光照射装置とを備え、
前記ヘッドユニット及び前記光照射装置は、前記周面に対向し、かつ、前記ドラム回転体の回転方向に沿って並べられて配置されており、
前記ドラム回転体を回転させ、前記ヘッドユニットを前記ドラム回転体の軸方向に沿って相対的に移動させながら、前記画像用ヘッド及び前記背景用ヘッドのうちいずれか一方のヘッドで記録した後、他方のヘッドで記録される前に、一方のヘッドにより記録されたインクに対し、前記光照射装置により光が照射されるようにドラム回転体を制御する制御部を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、前述のようにヘッドユニットと、ドラム回転体と、光照射装置とを配置させた状態で、ドラム回転体を回転させ、ヘッドユニットをドラム回転体の軸方向に沿って相対的に移動させながら、画像用ヘッド又は背景用ヘッドのいずれか一方のヘッドからインク吐出動作を行った後、回転動作が行われて該ヘッドから吐出されたインクを記録媒体上で硬化させることができ、その後、吐出動作を行っていないヘッドからインク吐出動作を行わせるので、回転動作を挟んで前後に記録媒体上に吐出される実画像用インクと背景用インクが混ざるのを防いで、実画像インクによる印字と背景用インクによる印字を適切に行うことができる。
また、画像用ヘッドと背景用ヘッドとからなるヘッドユニットをドラム回転体の軸方向に沿って相対的に移動させながら、インク吐出動作を行わせるため、記録媒体の幅いっぱいにノズルが形成された記録ヘッドを形成させる必要がなく、ヘッドユニットを小型化させることができる。
また、記録媒体をドラム回転体に巻きつけて搬送するので、ヘッドユニットが増大することで加味される搬送精度や光源の発熱に対する問題を考慮することがなくインク吐出動作を行うことができる。
また、画像用ヘッドと背景用ヘッドとを一体に構成させてヘッドユニットを形成しているため、ヘッドユニットを移動させる際には、画像用ヘッドと背景用ヘッドを同時に移動させることができ、画像用ヘッドで印字される画像と、背景用ヘッドで印字される画像との間にずれによる画像ずれの発生を防ぐことができる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェット記録装置において、
吐出動作モードとして、裏刷りモードと、表刷りモードとを備えており、
前記制御部は、裏刷りモード時のインク吐出動作を画像用ヘッドから開始させ、
表刷りモード時のインク吐出動作を背景用ヘッドから開始させることを特徴とする。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、2種類の吐出動作モードとして、表刷りモードと裏刷りモードとを具備し、裏刷りモードでは、画像用ヘッドからインクを吐出した後に、背景用ヘッドからインクを吐出させるインク吐出動作を行うことで記録媒体に対して裏刷りを行い、表刷りモードでは、背景用ヘッドからインクを吐出した後に、画像用ヘッドからインクを吐出させるインク吐出動作を行うことで記録媒体に対して表刷りが行われる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録装置において、
前記背景用インクは、非プロセスカラーインクであることを特徴とする。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、背景用インクは、非プロセスカラーであるので、例えば、裏刷りモードを行うことで、実画像用インクの記録による実画像を形成した後、非プロセスカラーインクの記録による背景画像を形成することができる。また、表刷りモードを行うことで、背景画像を形成した後、実画像を形成することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のインクジェット記録装置において、
前記非プロセスカラーインクは、ホワイトインク又はクリアインクであることを特徴とする。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、非プロセスカラーインクは、ホワイトインク又はクリアインクであるので、例えば、非プロセスカラーインクとして、ホワイトインクを用いた場合には、裏刷りモードを行うことで、透明基材に対し、実画像を形成した後、背景画像を形成することができる。また、表刷りモードを行うことで、背景画像を形成した後、実画像を形成することができる。色つきの基材を用いた場合であっても、基材の地色に影響されず所望の色からなる画像を施すことができる。
【0022】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記背景用ヘッド及び前記画像用ヘッドは、前記ドラム回転体の軸方向に沿って順に配置されることを特徴とする。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、背景用ヘッド及び画像用ヘッドをドラム回転体の軸方向に沿って順に配置させることで、請求項1〜請求項4と同様の作用を奏することができる。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に記載の発明によれば、記録媒体を保持して回転するドラム回転体を備えたインクジェット記録装置において、画像用ヘッドと背景用ヘッドを具備した場合であっても、高精細な画像形成を行うと共に、ヘッドユニットを小型化させることができ、装置全体が大型化されるのを防ぐことができる。
【0025】
請求項2に記載の発明によれば、前述のように制御することで、表刷りと裏刷りの両方を行うことができる。
【0026】
請求項3に記載の発明によれば、背景用インクに非プロセスカラーインクを用いることで、実画像用インクと非プロセスカラーインクとによる表刷りと裏刷りの両方を行うことができる。
【0027】
請求項4に記載の発明によれば、非プロセスカラーインクに、ホワイトインクを用いた場合には、裏刷りモードを行うことで、透明基材に対し鮮明な画像を施すことができ、表刷りモードを行うことで、色つきの基材を用いた場合であっても、基材の地色に影響されず所望の色からなる画像を施すことができ、高精細な記録画像を得ることができる。
【0028】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜請求項4と同様の作用を奏するので、高精細な画像形成を行うと共に、ヘッドユニットを小型化させることができ、装置全体が大型化されるのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(第1の実施形態)
【0030】
以下、本発明の第1の実施形態について、図1〜図6を参照しながら説明する。
【0031】
図1は、本実施形態におけるインクジェット記録装置100の概略構成図である。
【0032】
インクジェット記録装置100では、記録媒体Pがインクジェット記録装置100の内部に搬入されるようになっており、インクジェット記録装置100の内部には、搬入された記録媒体Pを下方から支持する支持部材1が設けられている。
【0033】
支持部材1における記録媒体Pの搬送方向(副走査方向)の下流側一端には、記録媒体Pを搬送するローラ1aが配設されており、このローラ1aの上方には、後述の回転機構2(図6参照)により回転可能に構成され、ドラム状に形成された回転体(ドラム回転体)3が、その軸方向(以下、主走査方向と呼ぶ。)に延在するように備えられている。
ドラム回転体3の外周面には、記録媒体Pを挟持するチャッキング機構4が取り付けられている。チャッキング機構4は、記録媒体Pの搬送方向下流側端部と上流側端部を挟持する一対の部材から形成されており、ドラム回転体3を回転機構2により回転させた際には、給紙トレイ1から搬入された記録媒体Pの搬送方向下流側端部を挟持した後、ドラム回転体3の回転に伴い、記録媒体Pの搬送方向上流側端部を挟持するようになっている。そのため、記録媒体Pは、ドラム回転体3の回転中、チャッキング機構4によりドラム回転体3の外周面上に巻き付けられた状態で保持可能になっている。なお、インクジェット記録装置100に適用可能な記録媒体Pは、ドラム回転体3の外周の長さより小さいサイズのものである。
【0034】
なお、チャッキング機構4は、記録媒体Pを挟持して保持する機構としたが、静電気を発生させることでドラム回転体3に吸着させて保持可能な構成であってもよいし、バキューム吸引によりドラム回転体3に吸着させて保持可能な構成であってもよい。
【0035】
また、ドラム回転体3の外周面と対向する位置には、主走査方向に延在する一対のガイドレール(図示せず)が設けられており、ガイドレールには、ヘッドユニット5が主走査方向に往復自在となるように支持されている。
ヘッドユニット5には、インクを吐出する複数の記録ヘッド6,6,・・が搭載されており、記録ヘッド6のインク吐出面は、ドラム回転体3上の記録媒体Pと対向するように配置され、記録ヘッド6から吐出されたインクは、ドラム回転体3上の記録媒体Pの所定位置に着弾するように位置調整がなされている。
【0036】
ここで、複数の記録ヘッド6は、実画像用インクとしてプロセスカラーのインクを吐出する画像用ヘッド6aと、背景用インクとして非プロセスカラーのインクを吐出する背景用ヘッド6bとから構成されており、図2に示すように、主走査方向に沿ってノズル列が形成され、非プロセスカラーとしてクリア(Clear)、ホワイト(W)のインクを吐出する記録ヘッドと、プロセスカラーとしてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のインクを吐出する記録ヘッドとがそれぞれ千鳥状に順に配置されている。
【0037】
ここで、本発明のインクジェット記録装置100には、紫外線の被照射により硬化する光硬化型インク(ラジカル重合系インク,カチオン重合系インク及びハイブリッド型インクを含む。)が好適に使用されるが、本実施形態においては、酸素による重合反応の阻害作用が少なく低照度の紫外線でも長時間照射することで硬化できるエネルギー蓄積型のカチオン重合系インクが特に好適に使用される。
【0038】
なお、画像用ヘッド6aと背景用ヘッド6bの配置パターンとしては、図2に示すパターンの他に図3及び図4に示すような配置パターンであってもよい。
図3では、図2と同様、主走査方向に沿って非プロセスカラーのインクを吐出する記録ヘッド6とプロセスカラーのインクを吐出する記録ヘッド6が配置されているが、主走査方向に沿ってホワイト(W)、マゼンタ(M)、ブラック(K)が千鳥状に順に配置されてなる第1のヘッドユニットが配置されており、第1のヘッドユニットと平行して、クリア(Clear)、イエロー(Y)、シアン(C)が千鳥状に順に配置されてなる第2のヘッドユニットが配置されてヘッドユニット5を構成している。
図4も、図2及び図3と同様、主走査方向に沿って非プロセスカラーのインクを吐出する記録ヘッド6とプロセスカラーのインクを吐出する記録ヘッド6が配置されているが、プロセスカラーのインクを吐出する記録ヘッド6同士が平行に配置された第3のヘッドユニットと、非プロセスカラーのインクを吐出する記録ヘッド6同士が平行に配置された第4のヘッドユニットとが配置されてヘッドユニット5を構成している。
【0039】
さらに、ドラム回転体3の外周面と対向する位置であって、ヘッドユニット5に対して記録媒体Pの搬送方向下流側には、主走査方向に延在する一対のガイドレール(図示せず。)が設けられており、ガイドレールには、光照射装置7が主走査方向に往復自在となるように支持されている。
光照射装置7は、インクを硬化させることが可能な光を照射するものであり、その内部には、光源が備えられている。光照射装置7に用いられる光源としては紫外線、電子線、X線、可視光、赤外光などを照射する蛍光灯、水銀ランプ、メタルハイドランプなどを使用することができるが、本実施形態においては光源として紫外線を使用している。
【0040】
また、ドラム回転体3の側方には、メンテナンスユニット8が備えられている。ここでは、図5に示すように、図5中左側にメンテナンスユニット8が配設されており、ドラム回転体3に対し、メンテナンスユニット8が配置されている側をヘッドユニット5及び光照射装置7のホームポジションとして以下の説明を行う。
【0041】
次にインクジェット記録装置100の制御構成について説明する。
図6に示すように、インクジェット記録装置100は、制御部9を備えており、制御部9には、前述の記録ヘッド6及び光照射装置7の他、画像処理部10、記録ヘッド6を駆動するヘッド駆動部11、主走査機構12、回転機構2、搬送機構13が電気的に接続されており、制御部9は上記各構成部をそれぞれ駆動制御するようになっている。
【0042】
画像処理部10は、ネットワークを通じて接続されたホストシステム14からインタフェース(I/F)15を介して送られる符号化された入力画像データを、インクジェット記録装置100で処理できるデータ形式にするために復号化してヘッド駆動部11に送るようになっている。ホストシステム14では、記録用の画像データをインクジェット記録装置100に送るほか、吐出動作モードの選択も含め、インクジェット記録装置100の全体の動作制御を行うための入力を行うようになっている。なお、吐出動作モードとは、インクジェット記録装置100によるインク吐出動作を目的に応じて選択可能とするために設けたものであり、ここでは、記録媒体Pに対し、表刷りを行うことが可能な表刷りモードと、裏刷りを行うことが可能な裏刷りモードとが存在している。
【0043】
ここで、裏刷りモードで、ホワイトインクを用いた場合には、記録媒体Pが透明基材である場合、該透明基材に対し、実画像を形成した後、背景画像を形成することができる。また、表刷りモードで、ホワイトインクを用いた場合には、記録媒体Pが色つきの基材である場合、背景画像を形成した後、実画像を形成することができ、基材の地色に影響されず所望の色からなる画像を施すことができる。
【0044】
ヘッド駆動部11は、制御部9から送られる信号に基づいて、画像処理部10で得られた記録画像に関するデータを記録するように、記録ヘッド6の圧電素子に対するパルス電圧の印加により記録ヘッド6のノズルからのインク吐出を制御するようになっている。
【0045】
主走査機構12は、ヘッドユニット5及び光照射装置7を駆動する駆動モータ(図示せず)を備えており、制御部9がこの駆動モータを駆動制御することによって、ヘッドユニット5及び光照射装置7がガイドレールに沿って主走査方向に走査されるようになっている。主走査機構11は、ヘッドユニット5と光照射装置7とを同期させた状態で主走査方向に走査させるようになっており、ヘッドユニット5の記録ヘッド6から吐出された記録媒体P上のインクに対して光照射装置7から光を照射させることができ、当該インクを硬化させることができるようになっている。
【0046】
搬送機構13は、記録媒体Pを所定の単位送り量でインクジェット記録装置100の内部に搬送するように周期的に回転駆動する搬送モータや搬送ローラ(いずれも図示せず)を備えており、制御部9がこの搬送モータを駆動制御することによって、記録媒体Pを1枚ずつ内部に搬入することができるようになっている。
【0047】
回転機構2は、ドラム回転体3を所定の回転数で回転させるように駆動する駆動モータ及びドラム回転体3が一定速度に達すると、ドラム回転体3に記録媒体Pを保持させ、画像記録後、記録媒体Pの保持を解除するようにチャッキング機構4を作動させる駆動モータ(いずれも図示せず。)を備えており、制御部9がこれら駆動モータを駆動制御することによって、記録媒体Pをドラム回転体3に保持させ、その状態で回転することができるようになっている。
【0048】
ここで、回転機構2は、インクジェット記録装置100の搬送機構を構成するものであるが、以下の説明においては、回転機構2による記録媒体Pの搬送と、それ以外の機構による記録媒体Pの搬送とを区別して説明し、回転機構2によらない記録媒体Pの搬送機構を搬送機構13として説明する。
【0049】
制御部9は、CPU、ROM、RAM(いずれも図示せず)などからなり、ROMに記録された処理プログラムをRAMに展開してCPUによりこの処理プログラムを実行するようになっている。
【0050】
具体的には、制御部9は、ホストシステム14において設定された吐出動作モードの指示信号を主走査機構12に送り、記録が開始されるまでヘッドユニット5及び光照射装置7をホームポジションの位置で待機させるように制御するようになっている。
【0051】
また、制御部9は、プリント動作時にホストシステム14において吐出動作モードが設定された場合、指定されたモードに応じて、プリント直後にヘッドユニット5及び光照射装置7を所定のポジションに速やかに移動させて待機させるように制御するようになっている。例えば、裏刷りを連続して行う場合には、これらの部材をホームポジションの位置に移動させて待機させ、裏刷りの後に表刷りを行う場合には、プリント終了後の位置、つまりホームポジションと反対側の位置に待機させるようになっている。
【0052】
また、制御部9は、ホストシステム14において設定された吐出動作モードや駆動周波数などの指示信号をヘッド駆動部11に送り、ヘッド駆動部11から所定の画像記録情報に基づいて記録ヘッド6の圧電素子に対してパルス電圧を印加させ、記録ヘッド6のノズルから所定の周期でインクが吐出されるように制御するようになっている。
【0053】
また、制御部9は、記録媒体Pを副走査方向に搬送させるように搬送機構13を制御するとともに、ドラム回転体3を回転させるように回転機構2を制御するようになっている。
【0054】
また、制御部9は、図5に示すように画像記録時にヘッドユニット5及び光照射装置7を主走査方向に沿ってドラム回転体3に対して相対的に移動させるように主走査機構12を制御するようになっている。
【0055】
さらに、制御部9は、ドラム回転体3を回転させ、ヘッドユニット5とをドラム回転体3の軸方向に沿って相対的に移動させながら、画像用ヘッド及び背景用ヘッドのうち、いずれか一方のヘッドで記録した後、他方の記録ヘッドで記録するようになっており、一方のヘッドで記録した後、他方の記録ヘッドで記録される前に、一方のヘッドにより記録されたインクに対し、前記光照射装置により光が照射されるようにドラム回転体3を制御するようになっている。
【0056】
また、制御部9は、ホストシステム14において設定された吐出動作モードの指示信号をヘッド駆動部11に送り、設定された吐出動作モードに応じて、決められた記録ヘッド6からインクの吐出を開始するように制御するようになっている。
【0057】
ここで、設定された吐出動作モードが裏刷りモードである場合、画像用ヘッド6aからインク吐出動作を開始させるようにヘッド駆動部11を制御するようになっている。一方、表刷りモードである場合、背景用ヘッド6bからインク吐出動作を開始させるようにヘッド駆動部11を制御するようになっている。つまり、制御部9は、回転機構2によりドラム回転体3を2回転させることで、ヘッドユニット5に対応する領域の画像を記録媒体P上に形成することができる。これより、従来のように画像用ヘッド6aを挟んで両側に背景用ヘッド6bを配置させる構成でなくても、表刷りと裏刷りの両方を行うことが可能となる。
【0058】
また、制御部9は、画像用ヘッド6aと背景用ヘッド6bにて交互に行われるインク吐出動作の間にドラム回転体3を1回転させるように回転機構2を制御するようになっている。
【0059】
次にインクジェット記録装置100の動作について説明する。
ホストシステム14にて、吐出動作モードが入力され、ホストシステム14から入力画像データがI/F15を介して画像処理部10に送られると、吐出動作モードに応じてヘッドユニット5及び光照射装置7を所定位置に移動させ、画像記録が開始されるまで待機させている。
このとき、ホストシステム14において、裏刷りモードが入力された場合、ヘッドユニット5及び光照射装置7をホームポジションで待機させる。一方、表刷りモードが入力された場合、ヘッドユニット5及び光照射装置7をドラム回転体3を挟んでホームポジションと反対側の位置で待機させる。
【0060】
そして、制御部9は、回転機構2を制御して、ドラム回転体3を回転させる。
ドラム回転体3が所定の回転数に達すると、搬送機構13を制御して記録媒体Pを支持部材1上に搬送させる。その後、ローラ1aに記録媒体Pの先端が到達すると、チャッキング機構4に挟持され、ドラム回転体3の周面上に保持される。そして、ドラム回転体3の回転とともに記録媒体Pが回転される。
【0061】
そして、制御部9は、画像処理部10により入力された画像データに基づいてヘッド駆動部11を制御して、記録ヘッド6からインクが吐出させる。
【0062】
このとき、ホストシステム14において、裏刷りモードが入力された場合、まず、画像用ヘッド6aから記録媒体上にインクを吐出させている。そして、ドラム回転体3の回転に伴い、光照射装置7から紫外線が照射され、記録媒体P上のインクが速やかに硬化される。これより記録媒体Pでは、実画像インクが硬化した状態となっている。その後、記録媒体Pが、再びヘッドユニット5と対向し、背景用ヘッド6bからインクを吐出させる。同様に、記録媒体P上の背景用ヘッド6bから吐出されたインクも硬化され、実画像インクの上に背景用インクが記録され記録媒体Pに対し、裏刷りが施される。
【0063】
一方、ホストシステム14において、表刷りモードが入力された場合、まず、背景用ヘッド6bから記録媒体上にインクを吐出させている。そして、ドラム回転体3の回転に伴い、光照射装置7から紫外線が照射され、記録媒体P上のインクが速やかに硬化される。これより記録媒体Pでは、背景用インクが硬化した状態となっている。その後、記録媒体Pが、再びヘッドユニット5と対向し、画像用ヘッド6aからインクを吐出させる。同様に、記録媒体P上の画像用ヘッド6aから吐出されたインクも硬化され、背景用インクの上に実画像インクが記録され記録媒体Pに対し、表刷りが施される。
【0064】
その後、主走査方向における一走査が終了すると、記録媒体Pの幅全域に画像記録が施され、画像記録が終了する。そして、チャッキング機構4による記録媒体Pの保持が解除され、画像が記録された記録媒体Pが回収される。
【0065】
なお、ホストシステム14からのモード指定がプリント動作時に行われた場合、制御部9は指定されたモードに応じて、プリント直後にヘッドユニット5及び光照射装置7を所定のポジションに速やかに移動させる。例えば、裏刷りを連続して行う場合には、これらの部材をホームポジションの位置に移動させて待機させ、裏刷りの後に表刷りを行う場合には、プリント終了後の位置、つまりホームポジションと反対側の位置に待機させる。
【0066】
以上のように、本実施形態のインクジェット記録装置100によれば、画像用ヘッド6a又は背景用ヘッド6bのいずれか一方の記録ヘッド6からインク吐出動作を行った後、回転動作が行われて該ヘッド6から吐出されたインクを記録媒体P上で硬化させ、その後、吐出動作を行っていない記録ヘッド6からインク吐出動作を行わせるので、回転動作を挟んで前後に記録媒体P上に吐出される実画像用インクと背景用インクとが混ざるのを防ぎつつ、実画像インクによる印字と背景用インクによる印字を適切に行うことができる。
また、画像用ヘッド6aと背景用ヘッド6bとからなるヘッドユニット5をドラム回転体3に対し主走査方向に沿って相対的に移動させながら、インク吐出動作を行わせるため、記録媒体Pの幅いっぱいにノズルが形成された記録ヘッド6を形成させる必要がなく、ヘッドユニット5を小型化させることができる。
また、記録媒体Pをドラム回転体3に巻きつけて搬送するので、ヘッドユニット5が増大することで加味される搬送精度や光源の発熱に対する問題を考慮することがなくインク吐出動作を行うことができる。
また、画像用ヘッド6aと背景用ヘッド6bとを一体に構成させてヘッドユニット5を形成しているため、ヘッドユニット5を移動させる際には、画像用ヘッド6aと背景用ヘッド6bを同時に移動させることができ、画像用ヘッド6aで印字される画像と、背景用ヘッド6bで印字される画像との間にずれによる画像ずれの発生を防ぐことができる。
【0067】
したがって、記録媒体を保持して回転するドラム回転体を備えたインクジェット記録装置において、画像用ヘッドと背景用ヘッドを具備した場合であっても、高精細な画像形成を行うと共に、ヘッドユニットを小型化させることができ、装置全体が大型化されるのを防ぐことができる。
【0068】
なお、本実施形態においては、制御部9は、回転機構2によりドラム回転体3を2回転させることで、ヘッドユニット5に対応する領域の画像を記録媒体P上に形成させ、これを複数回繰り返すことで記録媒体幅いっぱいの画像記録を終了させる構成としたが、往動で画像用ヘッド6aから実画像用インクを吐出させて記録媒体幅いっぱいの画像を記録した後、ドラム回転体3を1回転させて光照射装置7により当該インク(実画像用インク)を硬化させる。その後、複動で背景用ヘッド6bから背景用インクを吐出させて背景画像を記録し、再びドラム回転体3を1回転させ、同様に背景用インクを硬化させる。その後、所定送り量ドラム回転体3を回転させる。この動作をドラム回転体3が1回転するまで行うように制御することで、記録媒体Pへの画像記録を完了させることも可能である。
【0069】
また、本実施形態において、光照射装置7をヘッドユニット5と対応するように形成させ、図5に示すように該光照射装置7をヘッドユニット5と同期して移動するような構成としたが、ドラム回転体3の主走査方向の幅に対応する大きさの光照射装置を配設する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】第1の実施形態のインクジェット記録装置の概略構成を表す側断面図である。
【図2】図1のヘッドユニットの構成を表す上面図である。
【図3】他のパターンのヘッドユニットの構成を表す上面図である。
【図4】他のパターンのヘッドユニットの構成を表す上面図である。
【図5】図1の実施形態でドラム回転体に対し、ヘッドユニットと光照射装置が相対的に移動することを説明するための図である。
【図6】図1の制御構成を表すブロック図である。
【符号の説明】
【0071】
100 インクジェット記録装置
1 プラテン
1a ローラ
2 回転機構
3 プラテン
5 ヘッドユニット
6 記録ヘッド
6a 画像用ヘッド
6b 背景用ヘッド
7 光照射装置
8 メンテナンスユニット
9 制御部
10 画像処理部
11 ヘッド駆動部
12 主走査機構
13 搬送機構
14 ホストシステム
15 インタフェース
P 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面に記録媒体を保持して回転するドラム回転体と、
前記記録媒体に対して実画像用インクを吐出する画像用ヘッド及び背景用インクを吐出する背景用ヘッドを備えてなるヘッドユニットと、
前記記録媒体上のインクを硬化させるための光を照射する光照射装置とを備え、
前記ヘッドユニット及び前記光照射装置は、前記周面に対向し、かつ、前記ドラム回転体の回転方向に沿って並べられて配置されており、
前記ドラム回転体を回転させ、前記ヘッドユニットを前記ドラム回転体の軸方向に沿って相対的に移動させながら、前記画像用ヘッド及び前記背景用ヘッドのうちいずれか一方のヘッドで記録した後、他方のヘッドで記録される前に、一方のヘッドにより記録されたインクに対し、前記光照射装置により光が照射されるようにドラム回転体を制御する制御部を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
吐出動作モードとして、裏刷りモードと、表刷りモードとを備えており、
前記制御部は、裏刷りモード時のインク吐出動作を画像用ヘッドから開始させ、
表刷りモード時のインク吐出動作を背景用ヘッドから開始させることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記背景用インクは、非プロセスカラーインクであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記非プロセスカラーインクは、ホワイトインク又はクリアインクであることを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記背景用ヘッド及び前記画像用ヘッドは、前記ドラム回転体の軸方向に沿って順に配置されることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−118421(P2007−118421A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−314590(P2005−314590)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】