インクジェット記録装置
【課題】記録ヘッドのクリーニング中に、被記録媒体が載置されたトレイが装置内へ挿入されても、当該トレイの障害物への衝突を防止できる手段を提供する。
【解決手段】記録メディア69を載置可能なメディアトレイ71は、トレイガイド76に支持されつつ装置内へ搬送される。トレイガイド76は、メディアトレイ71を装置内へ進入可能に支持する第1位置と、第1位置から退避した第2位置に移動可能である。搬送用モータ102が正転された場合、メディアトレイ71は装置から排出される向きへ搬送され、クリーニングで使用されるポンプ124が駆動される。搬送用モータ102が逆転された場合、メディアトレイ71は装置へ引き込まれる向きへ搬送され、クリーニングで使用されるポート切替機構121が駆動される。制御部130は、クリーニングの実行中に、トレイガイド76が第2位置でなくなると、搬送用モータ102を正転させる。
【解決手段】記録メディア69を載置可能なメディアトレイ71は、トレイガイド76に支持されつつ装置内へ搬送される。トレイガイド76は、メディアトレイ71を装置内へ進入可能に支持する第1位置と、第1位置から退避した第2位置に移動可能である。搬送用モータ102が正転された場合、メディアトレイ71は装置から排出される向きへ搬送され、クリーニングで使用されるポンプ124が駆動される。搬送用モータ102が逆転された場合、メディアトレイ71は装置へ引き込まれる向きへ搬送され、クリーニングで使用されるポート切替機構121が駆動される。制御部130は、クリーニングの実行中に、トレイガイド76が第2位置でなくなると、搬送用モータ102を正転させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドから被記録媒体にインク滴を吐出することによって画像記録を行うインクジェット記録装置に関し、より詳細には吸引ポンプによって記録ヘッドからインクを吸引するパージ機構を備えたインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、入力信号に基づいてインク滴を吐出して被記録媒体に画像記録を行う画像記録装置が知られている。このような画像記録装置は、一般に「インクジェットプリンタ」と称される。インクジェットプリンタにおける画像記録は、記録ヘッドのノズルからインク滴が選択的に吐出されることによって実現される。
【0003】
記録ヘッドにおいて、ノズルへ通ずるインク流路に気泡が生じたり異物が詰まったりすることが起こり得る。これらは、ノズルからのインク滴の吐出に対して障害となり得る。このような障害を防止又は回復するために、記録ヘッドのノズルから気泡や異物を除去する手法が知られている。このような手法は、一般に「パージ」と称される。パージはメンテナンスユニットによって実現される。メンテナンスユニットは、記録ヘッドのノズルを覆うキャップや記録ヘッドのノズルを覆ったキャップ内に吸引圧を発生させるポンプなどで構成される。キャップやポンプの駆動源としてモータが用いられる。インクジェットプリンタでは、パージの他に、記録ヘッド内の気泡や混色インクの除去などを行うフラッシングや、ノズルに付着したインクを拭い取るワイプも行われる。これらの処理は「クリーニング」と総称される。
【0004】
また、モータから各駆動部への駆動伝達を切り換える動力伝達切換手段を有する画像記録装置が知られている(特許文献1参照)。この動力伝達切換手段は、キャリッジの移動位置に応じて、各駆動部へ択一的に動力を伝達する。
【0005】
また、インクジェットプリンタを含む画像記録装置において画像記録が行われる被記録媒体には、記録用紙などの他、CDやDVDなどの剛性の高い被記録媒体も提案されている。一般に、CDやDVDなどの剛性の高い被記録媒体に画像記録が行われる際、当該被記録媒体は専用のトレイに載置される。トレイは、画像記録装置に設けられた挿入口から挿入され、画像記録装置内を搬送される。特許文献2には、このような画像記録装置の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−90761号公報
【特許文献2】特開2005−247584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年のインクジェットプリンタの更なる小型化の要請に鑑みると、上述の動力伝達切換手段の構造は単純化されることが望ましい。例えば、以下のような構造が考えられる。
【0008】
トレイや記録用紙を搬送させるローラ対と、メンテナンスユニットとは、共通の駆動源で駆動される。ローラ対は、駆動ローラ及び従動ローラで構成されている。駆動源の駆動力は、動力伝達切換手段によって、駆動ローラ及びメンテナンスユニットへ伝達される。
【0009】
ローラ対は、記録用紙の搬送時において記録用紙を挟持可能に相互に当接し、トレイ搬送時においてトレイを挟持可能に相互に離間するように構成されている。駆動ローラは、キャリッジの移動位置に関わらず駆動伝達され、正転及び逆転可能である。
【0010】
メンテナンスユニットは、記録ヘッドを搭載したキャリッジがメンテナンスユニットと対向する位置(パージを行うときの位置)にあるときに駆動伝達され、画像記録を行う位置にあるときに駆動伝達されない。メンテナンスユニットにおいては、正転の駆動が伝達されたとき、ポンプの駆動が実行され、逆転の駆動が伝達されたとき、キャップとポンプの連通、遮断が切り換えられる。
【0011】
インクジェットプリンタの動力伝達切換手段が上述のような構造であるとき、クリーニングの処理過程において、正転及び逆転の駆動がメンテナンスユニットへ伝達される。また、駆動ローラは、クリーニングの処理過程において、駆動伝達されて正転及び逆転可能である。
【0012】
すると、以下の問題が生じる。クリーニングの実行中に、CDやDVDなどの被記録媒体が載置されたトレイが、インクジェットプリンタに設けられた挿入口から挿入された場合、挿入されたトレイは、クリーニングの実行中にもかかわらず、ローラ対によってインクジェットプリンタの内部へ搬送されてしまう。当該搬送は想定外の搬送であるために、当該トレイは必要以上に搬送されるおそれがある。その結果、当該トレイは、インクジェットプリンタの内部の壁面などの障害物に衝突してしまうおそれがある。
【0013】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、記録ヘッドのクリーニング動作中に、被記録媒体が載置されたトレイが装置内へ挿入されても、当該トレイの障害物への衝突を防止することができるインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1) 本発明のインクジェット記録装置は、被記録媒体を載置可能なトレイと、上記トレイが通過する搬送路と、上記トレイを上記搬送路へ進入可能に支持する第1位置、及び上記搬送路と交差する方向に対して上記第1位置と異なる位置である第2位置に移動可能なトレイガイドと、上記トレイガイドの位置を検知する第1検知部と、上記搬送路に設けられており、ノズルが形成されたノズル面を有する記録ヘッドが搭載されており、上記ノズルからインク滴を吐出することによって被記録媒体に画像を記録する記録部と、上記ノズル面を覆う第1姿勢及び上記ノズル面から離間した第2姿勢に姿勢変化可能なキャップと、上記キャップに連通された状態で上記キャップ内からインクを吸引する吸引機構と、上記キャップ及び上記吸引機構の連通の有無を切り替える切替機構と、上記搬送路において上記記録部及び上記トレイガイドの間に設けられており、上記トレイを、上記搬送路に沿って、上記記録部から上記トレイガイドの第1向き、及び上記第1向きと逆向きの第2向きに搬送する第1搬送部と、正転または逆転のうち一方の第1駆動及び他方の第2駆動が可能な第1駆動源と、上記第1駆動源の上記第1駆動を、上記トレイを上記第1向きに搬送する駆動として上記第1搬送部に伝達するとともに上記吸引機構に伝達し、上記第1駆動源の上記第2駆動を、上記トレイを上記第2向きに搬送する駆動として上記第1搬送部に伝達するとともに上記切替機構に伝達する駆動伝達部と、上記記録部及び上記キャップを、予め設定された所定順序に従って動作させ、上記第1駆動源を、上記所定順序に従って上記第1駆動及び上記第2駆動で駆動させることによって、上記吸引機構及び上記切替機構を制御して、上記記録ヘッドのクリーニングの実行を制御する制御部と、を備えている。上記制御部は、上記クリーニングが実行されている状態で、上記トレイガイドが上記第2位置でないことが上記第1検知部によって検知されたことを条件として、上記第1駆動源を上記第1駆動で駆動させる。
【0015】
クリーニングが実行されている状態で、トレイガイドが第2位置でないことが第1検知部によって検知された場合、トレイがトレイガイドによって搬送路へ進入可能に支持されているおそれがある。この場合に、トレイが第1搬送部によって第2向きに搬送されると、トレイはインクジェット記録装置の内部へ搬送されてしまう。そこで、本構成によれば、上述の場合に、制御部が第1駆動源を第1駆動で駆動させる。これにより、トレイがトレイガイドによって支持されていたとしても、当該トレイは、第1搬送部によって第1向きに搬送される。よって、トレイが第1搬送部よりも奥側に引き込まれることが、防止可能である。
【0016】
(2) 本発明のインクジェット記録装置は、上記第1駆動源の駆動量を検知する第2検知部を更に備えている。上記制御部は、上記トレイガイドが上記第2位置でないことが上記第1検知部によって検知された状態で、上記所定順序における上記第1駆動源の上記第2駆動での駆動量が第1所定量以上であることを条件として、上記第1駆動源を上記第1駆動で駆動させる。
【0017】
上述のように、制御部がクリーニング中に第1駆動源を第1駆動で駆動させた場合、クリーニングは中断される。しかし、クリーニングが中断されることは好ましくない。クリーニングが中断されている間、記録ヘッドのノズル面やキャップにインクが残留した状態が維持されることにより、インクの混色や、装置内の他の部分への残留インクの付着による汚れが発生するおそれがあるからである。また、クリーニングが完了するまでの時間が長くなってしまうからである。
【0018】
そこで、本構成においては、クリーニング中における制御部による第1駆動源の第1駆動での駆動が、以下に詳述するように、少なく抑えられる。トレイが第1位置のトレイガイドに支持されている状態で、第1駆動源が第2駆動された場合、トレイは第2向きに搬送されて、インクジェット記録装置の内部へ搬送されてしまう。しかし、当該第2駆動の駆動量が少ない場合、例えば当該第2駆動の駆動量が第1所定量より小さい場合、トレイの第2向きへの搬送量は少なく、トレイの進行向き側に存在する障害物への衝突の可能性が低い。一方、当該第2駆動の駆動量が多い場合、例えば当該第2駆動の駆動量が第1所定量以上の場合、トレイの第2向きへの搬送量は多く、障害物に衝突する可能性が高い。本構成によれば、第1駆動源は、当該第2駆動の駆動量が第1所定量以上の場合、つまりトレイの障害物への衝突の可能性が高い場合にのみ、第1駆動で駆動される。つまり、第1駆動源の第1駆動での駆動が、少なく抑えられる。以上より、クリーニングの中断の発生を少なくすることができる。
【0019】
(3) 本発明のインクジェット記録装置は、上記第1駆動源の駆動量を検知する第2検知部を更に備えている。上記制御部は、上記トレイガイドが上記第2位置でないことが上記第1検知部によって検知された状態での、上記所定順序における上記第1駆動源の上記第2駆動での駆動によって、上記所定順序における上記第1駆動源の上記第1駆動での駆動量の合計と上記所定順序における上記第1駆動源の上記第2駆動での駆動量の合計との差分が第1所定量以上であることを条件として、上記第1駆動源を上記第1駆動で駆動させる。
【0020】
本構成によっても、上述の(2)と同様に、第1駆動源は、トレイの障害物への衝突の可能性が高い場合にのみ、第1駆動で駆動される。つまり、第1駆動源の第1駆動での駆動が、少なく抑えられる。以上より、クリーニングの中断の発生を少なくすることができる。
【0021】
(4) 上記第1所定量は、上記トレイを、上記第1搬送部から上記トレイの先端が衝突し得る障害物まで上記第2向きに搬送させるために必要な上記第1駆動源の駆動量である。
【0022】
本構成によれば、トレイが障害物に衝突するか否かが、第1所定量を境界として明確に区別できる。
【0023】
(5) 本発明のインクジェット記録装置は、被記録媒体を載置可能なトレイと、上記トレイが通過する搬送路と、上記トレイを上記搬送路へ進入可能に支持する第1位置、及び上記搬送路と交差する方向に対して上記第1位置と異なる位置である第2位置に移動可能なトレイガイドと、上記トレイガイドの位置を検知する第1検知部と、上記搬送路に設けられており、ノズルが形成されたノズル面を有する記録ヘッドが搭載されており、上記ノズルからインク滴を吐出することによって被記録媒体に画像を記録する記録部と、上記ノズル面を覆う第1姿勢及び上記ノズル面から離間した第2姿勢に姿勢変化可能なキャップと、上記キャップに連通された状態で上記キャップ内からインクを吸引する吸引機構と、上記キャップ及び上記吸引機構の連通の有無を切り替える切替機構と、上記搬送路において上記記録部及び上記トレイガイドの間に設けられており、上記トレイを、上記搬送路に沿って、上記記録部から上記トレイガイドの第1向き、及び上記第1向きと逆向きの第2向きに搬送する第1搬送部と、上記搬送路において上記記録部に対して上記トレイガイドと反対側に設けられた第1ローラと、上記第1ローラに当接した当接姿勢及び上記第1ローラから離間した離間姿勢とに姿勢変化可能な第2ローラとで構成されており、上記トレイを上記搬送路に沿って上記第1向き及び上記第2向きに搬送する第2搬送部と、正転または逆転のうち一方の第1駆動及び他方の第2駆動が可能な第1駆動源と、上記第2ローラを上記当接姿勢と上記離間姿勢とに姿勢変化させる第2駆動源と、上記第1駆動源の上記第1駆動を、上記トレイを上記第1向きに搬送する駆動として上記第1搬送部及び上記第2搬送部に伝達するとともに上記吸引機構に伝達し、上記第1駆動源の上記第2駆動を、上記トレイを上記第2向きに搬送する駆動として上記第1搬送部及び上記第2搬送部に伝達するとともに上記切替機構に伝達する駆動伝達部と、上記第1駆動源の駆動量を検知する第2検知部と、上記記録部及び上記キャップを、予め設定された所定順序に従って動作させ、上記第1駆動源を、上記所定順序に従って上記第1駆動及び上記第2駆動で駆動させることによって、上記吸引機構及び上記切替機構を制御して、上記記録ヘッドのクリーニングの実行を制御する制御部と、を備えている。上記制御部は、上記クリーニングが実行されている状態で、上記トレイガイドが上記第2位置でないことが上記第1検知部によって検知されたこと、上記所定順序における上記第1駆動源の上記第2駆動での駆動量が第2所定量以上であることを条件として、上記第2駆動源を制御して、上記第2搬送部の上記第2ローラを上記当接姿勢から上記離間姿勢に姿勢変化させる。
【0024】
クリーニングが実行されている状態で、トレイガイドが第2位置でないことが第1検知部によって検知された場合、トレイがトレイガイドによって搬送路へ進入可能に支持されているおそれがある。この場合に、トレイが第1搬送部によって第2向きに搬送されると、トレイはインクジェット記録装置の内部へ搬送されてしまう。トレイの第1搬送部による搬送量が多い場合、例えば第1駆動源の駆動量が第2所定量以上である場合、トレイは、相互に当接した第1ローラ及び第2ローラで構成される第2搬送部に衝突するおそれがある。そこで、本構成によれば、上述の場合に、制御部は、第2駆動源を制御して、第2ローラを第1ローラから離間させる。これにより、トレイが第2搬送部に衝突することが回避可能である。
【0025】
(6) 上記第2所定量は、上記トレイを、上記第1搬送部から上記第2搬送部まで搬送させるために必要な上記第1駆動源の駆動量である。
【0026】
本構成によれば、トレイが第2搬送部に衝突するか否かが、第2所定量を境界として明確に区別できる。
【0027】
(7) 本発明のインクジェット記録装置は、上記搬送路において上記第2搬送部に対して上記記録部と反対側に設けられており、上記搬送路を搬送される上記トレイを検知する第3検知部を更に備えている。上記制御部は、上記クリーニングが実行されている状態で、上記トレイが上記第3検知部によって検知されたことを条件として、上記第1駆動源を上記第1駆動で駆動させる。
【0028】
第3検知部よりも第2向き側に障害物が存在する場合、第2向きに搬送されているトレイが、第3検知部によって検知された後、更に第2向きに搬送されると、トレイは障害物に衝突するおそれがある。そこで、本構成によれば、トレイが第3検知部によって検知された場合に、制御部が第1駆動源を第1駆動で駆動させる。これにより、当該トレイは、第1搬送部及び第2搬送部によって第1向きに搬送される。よって、トレイが、第2搬送部よりも奥側に引き込まれることがない。以上より、トレイが障害物と衝突することが、防止可能である。
【0029】
(8) 上記制御部は、上記トレイが上記第3検知部によって検知された状態で、上記所定順序における上記第1駆動源の上記第2駆動での駆動量が第3所定量以上であることを条件として、上記第1駆動源を上記第1駆動で駆動させる。
【0030】
本構成においては、上述の(2)と同様に、クリーニング中における制御部による第1駆動源の第1駆動での駆動が、以下に詳述するように、少なく抑えられる。トレイが第3検知部によって検知された状態で、第1駆動源が第2駆動された場合、トレイは第2向きに搬送されてしまう。しかし、当該第2駆動の駆動量が少ない場合、例えば当該第2駆動の駆動量が第3所定量より小さい場合、トレイの第2向きへの搬送量は少なく、トレイの進行向き側に存在する障害物への衝突の可能性が低い。一方、当該第2駆動の駆動量が多い場合、例えば当該第2駆動の駆動量が第3所定量以上の場合、トレイの第2向きへの搬送量は多く、障害物に衝突する可能性が高い。本構成によれば、第1駆動源は、当該第2駆動の駆動量が第3所定量以上の場合、つまりトレイの障害物への衝突の可能性が高い場合にのみ、第1駆動で駆動される。つまり、第1駆動源の第1駆動での駆動が、少なく抑えられる。以上より、クリーニングの中断の発生を少なくすることができる。
【0031】
(9) 上記第3所定量は、上記トレイを、上記第3検知部による検知位置から上記トレイの先端が衝突し得る障害物まで上記第2向きに搬送させるために必要な上記第1駆動源の駆動量である。
【0032】
本構成によれば、トレイが障害物に衝突するか否かが、第3所定量を境界として明確に区別できる。
【0033】
(10) 上記制御部は、上記トレイが上記第3検知部によって検知された状態で、上記所定順序における上記第1駆動源の上記第1駆動での駆動量が、上記トレイを上記第3検知部による検知位置から上記第1向きに搬送して排出させるために必要な第4所定量以下であることを条件として、上記所定順序における上記第1駆動源の上記第1駆動での駆動量を上記第4所定量とする。
【0034】
トレイが第3検知部によって検知された状態で、第1駆動源が第1駆動された場合、トレイは第1向き、つまりトレイが排出される向きに搬送される。しかし、当該第1駆動の駆動量が少ない場合、例えば当該第1駆動の駆動量が第4所定量以下である場合、トレイの第1向きへの搬送量は少ない。すると、トレイが排出位置まで到達しないまま、当該第1駆動が停止してしまうおそれがある。そして、次に、第1駆動源が第2駆動された場合、トレイは第2向きに搬送されてしまう。そこで、本構成によれば、制御部は、第1駆動源の第1駆動での駆動量を第4所定量とする。これにより、トレイを確実に排出することができる。
【0035】
(11) 本発明のインクジェット記録装置は、上記キャップの姿勢を検知する第4検知部を更に備えている。上記制御部は、上記キャップが上記第2姿勢であることが上記第4検知部によって検知されたことを更なる条件として、上記第1駆動源を上記第1駆動で駆動させる。
【0036】
第1駆動源が第1駆動で駆動された場合、当該第1駆動は駆動伝達部によって吸引機構に伝達される。これにより、吸引機構が駆動される。キャップが第1姿勢のときに吸引機構が駆動されると、インクは、記録ヘッドからキャップを介して吸引される。これにより、インクが無駄に消費されてしまう。そこで、本構成によれば、制御部は、キャップが第2姿勢であることを条件として、第1駆動源を第1駆動で駆動させる。これにより、キャップが第2姿勢のときに吸引機構が駆動されても、インクは、吸引機構に吸引されない。よって、本構成によれば、インクの無駄な消費を防止することができる。
【0037】
(12) 本発明のインクジェット記録装置は、上記クリーニングが実行されている状態で、上記トレイガイドが上記第2位置でないことが上記第1検知部によって検知された場合に、上記クリーニングの上記所定順序に従った動作のうち未実行の動作を記憶する記憶部を更に備えている。上記制御部は、上記第1駆動源を上記第1駆動で駆動させた後、上記トレイガイドが上記第2位置であることが上記第1検知部によって検知されたことを条件として、上記記憶部に記憶されている上記未実行の動作を実行する。
【0038】
本構成によれば、トレイがトレイガイドによって搬送路へ進入不可能な状態となってから、クリーニングの実行を再開することが可能である。
【0039】
(13) 本発明のインクジェット記録装置は、上記ノズル面に当接可能な第3姿勢、及び上記ノズル面から離間した第4姿勢に姿勢変化可能なワイプ部を更に備えている。上記記録部は、上記第1向きと交差し且つ上記ノズル面に沿った第3方向へ往復移動可能である。上記第3姿勢の上記ワイプ部は、上記記録部の移動によって、上記ノズル面のうち上記ノズルが形成された領域の全てと当接可能である。上記駆動伝達部は、上記第1駆動源の上記第2駆動を上記ワイプ部に伝達し、上記ワイプ部を上記第3姿勢及び上記第4姿勢に姿勢変化させる。
【0040】
本構成によれば、ワイプ部及びノズル面が当接している状態において、記録部が第3方向へ移動する。これにより、ノズル面に付着したインクを、ワイプ部によって拭い取ることができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明においては、クリーニングが実行されている状態で、トレイガイドが第2位置でないことが第1検知部によって検知された場合、制御部が第1駆動源を第1駆動で駆動させる。これにより、トレイがトレイガイドによって支持されていたとしても、当該トレイは第1搬送部によって第1向きに搬送されて装置外に排出される。よって、記録ヘッドのクリーニング動作中に、トレイが装置内へ挿入されても、当該トレイが障害物へ衝突することが防止可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、本発明の実施形態の一例である複合機10の外観斜視図である。
【図2】図2は、プリンタ部11の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
【図3】図3は、プリンタ部11の内部構造を示す部分平面図である。
【図4】図4は、メディアトレイ71の平面図である。
【図5】図5は、パージ機構44の断面図であり、(A)にはキャップ46がリフトアップされていない状態が示されており、(B)にはキャップ46がリフトアップされた状態が示されている。
【図6】図6は、ポート切替機構121の平面図であり、(A)には吸気ポート93が他のポート94〜98の何れとも連通されていない状態が示されており、(B)には吸気ポート93とBkポート95が連通されている状態が示されており、(C)には吸気ポート93が他のポート94〜98の何れとも連通されていない状態が示されており、(D)には吸気ポート93とCoポート96が連通されている状態が示されている。
【図7】図7は、制御部130の構成を示すブロック図である。
【図8】図8は、複合機10の外観斜視図であり、(A)にはメディアトレイ71が前側開口13から挿入されている状態が示されており、(B)にはメディアトレイ71が後側開口87から突出している状態が示されている。
【図9】図9は、メディアトレイ71の排出制御について説明するためのフローチャートである。
【図10】図10は、変形例1におけるメディアトレイ71の排出制御について説明するためのフローチャートである。
【図11】図11は、変形例2におけるメディアトレイ71の排出制御について説明するためのフローチャートである。
【図12】図12は、変形例3におけるメディアトレイ71の排出制御について説明するためのフローチャートである。
【図13】図13は、変形例3におけるメディアトレイ71の排出制御について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明では、ベクトルにおいて矢印を考慮して起点から終点に向かう進みが「向き」と表現され、ベクトルにおいて矢印を考慮せずに起点と終点とを結ぶ線上の往来が「方向」と表現される。また、以下の説明では、複合機10が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向7が定義され、前側開口13が設けられている側を手前側(正面)として前後方向8が定義され、複合機10を手前側(正面)から見て左右方向9が定義される。
【0044】
[複合機10]
図1に示されるように、本発明のインクジェット記録装置の一例である複合機10は、概ね薄型の直方体に形成されている。インクジェット記録方式のプリンタ部11が、複合機10の下部に設けられている。複合機10は、ファクシミリ機能及びプリント機能などの各種の機能を有している。なお、本実施形態において、複合機10はプリント機能として片面画像記録機能のみ有しているが、複合機10は両面画像記録機能を有していてもよい。
【0045】
プリンタ部11は筐体14を有する。上下方向7及び左右方向9に拡がる前壁17が、筐体14の前側に形成されている。前壁17に対向して配置された後壁16(図8(B)参照)が、筐体14の後側に形成されている。前側開口13が、前壁17の概ね中央部に形成されている。給紙トレイ20及び排紙トレイ21が、前側開口13から前後方向に挿抜可能である。所望のサイズの記録用紙が給紙トレイ20に載置される。
【0046】
図2に示されるように、プリンタ部11は、記録用紙を1枚ずつ分離して湾曲路66へ給送する給紙部15、及び記録用紙に画像を記録するインクジェット記録方式の記録部24(本発明の記録部の一例)などを備えている。プリンタ部11は、外部機器から受信した印刷データなどに基づいて、記録用紙に画像を記録する。また、複合機10は、記録用紙よりも厚みがあるCD−ROMやDVD−ROMなどの記録メディア69(本発明の被記録媒体の一例、図3参照)の盤面上に、記録部24によって画像を記録する機能を有する。記録メディア69は、後述するメディアトレイ71(本発明のトレイの一例)に載置される。そして、記録メディア69が載置されたメディアトレイ71は、プリンタ部11の内部を搬送される。当該機能については後述する。
【0047】
[給紙部15]
図2に示されるように、給紙部15は、給紙トレイ20の上側に設けられている。給紙部15は、給紙ローラ25、給紙アーム26、及び駆動伝達機構27を備えている。給紙ローラ25は、給紙アーム26の前端部で軸支されている。給紙アーム26は、軸28を中心として、矢印29の方向に回動する。これにより、給紙ローラ25は給紙トレイ20に接離可能である。給紙ローラ25は、複数のギヤが噛合された駆動伝達機構27によって、給紙用モータ101(図7参照)の駆動力が伝達されて回転する。給紙ローラ25は、給紙トレイ20上に積載された記録用紙を1枚ずつ分離して湾曲路66へ供給する。
【0048】
[湾曲路66及び直線路65]
図2に示されるように、湾曲路66及び直線路65(本発明の搬送路の一例)が、プリンタ部11の内部に形成されている。図2に一点鎖線で示されるように、湾曲路66は、給紙トレイ20の後側の端部から第1ローラ対58に亘って延設されており、記録用紙を案内可能な経路である。図2に二点鎖線及び破線で示されるように、直線路65は、前壁17の前側開口13における排紙トレイ21の上側から記録部24を経て後壁16の後側開口87に亘って延設されており、記録用紙及びメディアトレイ71を案内可能な経路である。
【0049】
湾曲路66は、給紙トレイ20の後側の端部から後方斜め上に延びながら、前方へUターンして第1ローラ対58に至る湾曲状の通路である。記録用紙は、湾曲路66を搬送方向(図2において一点鎖線で示される方向)に沿って、図2において一点鎖線に付された矢印の向きに湾曲されて案内される。湾曲路66は、第1ローラ対58において直線路65と連続している。これにより、記録用紙は、湾曲路66を介して直線路65(詳細には直線路65を構成する第1経路65A)に案内される。湾曲路66は、所定間隔を隔てて互いに対向する内側ガイド部材19及び外側ガイド部材22によって区画されている。
【0050】
直線路65は、前後方向8に延設された直線状の通路であり、第1経路65Aと第2経路65Bとに区分されている。第1経路65Aは、第1ローラ対58から前側開口13における排紙トレイ21の上側に亘って前後方向8に延設された直線状の通路である。第1経路65Aは、所定間隔を隔てて互いに対向する上側ガイド部材52と、プラテン42及びプラテン42を支持するプラテン支持部材53とによって区画されている。第2経路65Bは、第1ローラ対58から前方に向かって延設された第1経路65Aと逆向き、つまり後方に向かって後側開口87まで延設されている。つまり、第1経路65A及び第2経路65Bは、第1ローラ対58を境界として、連続する一つの直線状の経路を構成している。第2経路65Bは、所定間隔を隔てて互いに対向する上側ガイド部材52及び下側ガイド部材51によって区画されている。
【0051】
記録用紙は、直線路65を記録部24から後述するトレイガイド76(本発明のトレイガイドの一例)に向かう向き、つまり後方から前方に向かう第1向き5(図2参照、本発明の第1向きに相当)に案内される。記録用紙は、記録部24によって画像を記録された後に排紙トレイ21に排出される。また、前側開口13から挿入されたメディアトレイ71は、直線路65を第1向き5及び第1向き5と逆向き(前方から後方に向かう向き)の第2向き6(図2参照、本発明の第2向きに相当)に案内される。つまり、メディアトレイ71は、直線路65を通過する。
【0052】
[記録部24]
図2に示されるように、記録部24は、直線路65に設けられている。詳細には、記録部24は、直線路65の上側に設けられている。図2及び図3に示されるように、記録部24は、記録ヘッド38(本発明の記録ヘッドの一例)を搭載して、第1向き5と交差し且つ後述するノズル面39に沿った方向(主走査方向、本発明の第3方向に相当)へ往復移動するキャリッジ40を備えている。なお、本実施形態において、第3方向は、左右方向9である。
【0053】
キャリッジ40は、例えば、プリンタ部11の内部に設けられたフレーム(不図示)に取り付けられた2本のガイドレール35、36によって支持されている。詳細には、2本のガイドレール35、36は、左右方向9に延設されている。また、2本のガイドレール35、36は、前後方向8に所定間隔をあけて配置されている。キャリッジ40は、2本のガイドレール35、36を跨ぐようにして配置されている。これにより、キャリッジ40は、2本のガイドレール35、36上を左右方向9に摺動可能である。ガイドレール36の上面に、ベルト駆動機構37が配設されている。また、ベルト駆動機構37を構成するベルト41は、キャリッジ40と連結されている。キャリッジ駆動モータ103(図7参照)からベルト駆動機構37に駆動力が伝達されることにより、キャリッジ40は左右方向9に摺動される。
【0054】
図2に示されるように、記録ヘッド38は、キャリッジ40の下面側に露出されている。記録ヘッド38には、インクカートリッジ(不図示)からインクチューブ33(図3参照)を通じてシアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(Bk)の各色インクが供給される。記録ヘッド38の下面側のノズル面39(本発明のノズル面の一例)には、複数のノズル(不図示、本発明のノズルの一例)が形成されている。各ノズルは、CMYBkの各色インクごとに設けられている。各ノズルから各色インクが微小なインク滴として吐出される。
【0055】
以上より、記録ヘッド38が、記録部24の下方に設けられたプラテン42上を搬送される記録用紙に対して走査されつつ、記録用紙に対してインク滴を吐出する。これにより、記録用紙に画像が記録される。なお、プラテン42は、記録用紙を支持する。また、後述するように、記録部24は、記録メディア69の盤面上にも画像を記録可能である。
【0056】
[第1ローラ対58及び第2ローラ対59]
図2に示されるように、直線路65において、記録部24に対してトレイガイド76と反対側、つまり記録部24よりも第1向き5の上流側には、直線路65の上側に配置された第1搬送ローラ60(本発明の第1ローラに相当)と、直線路65の下側に第1搬送ローラ60に対向して配置されたピンチローラ61(本発明の第2ローラに相当)とよりなる第1ローラ対58(本発明の第2搬送部の一例)が設けられている。ピンチローラ61は、バネなどの弾性部材(不図示)によって第1搬送ローラ60のローラ面に圧接されている。第1ローラ対58は、記録用紙を挟持して直線路65に沿って第1向き5に搬送し、メディアトレイ71を挟持して直線路65に沿って第1向き5及び第2向き6に搬送する。
【0057】
直線路65において、記録部24及びトレイガイド76の間、つまり記録部24よりも第1向き5の下流側には、第1経路65Aの下側に配置された第2搬送ローラ62と、第1経路65Aの上側に第2搬送ローラ62に対向して配置された拍車63よりなる第2ローラ対59(本発明の第1搬送部の一例)が設けられている。拍車63は、バネなどの弾性部材(不図示)によって第2搬送ローラ62のローラ面に圧接されている。第2ローラ対59は、記録部24を通過した記録用紙を狭持して直線路65に沿って第1向き5に、つまり排紙トレイ21へ向けて搬送する。また、第2ローラ対59は、メディアトレイ71を挟持して直線路65に沿って第1向き5及び第2向き6に搬送する。
【0058】
第1搬送ローラ60及び第2搬送ローラ62は、後述する搬送用モータ102(図7参照)から後述する駆動伝達機構(不図示)を介して駆動力が伝達されて回転される。第1搬送ローラ60及び第2搬送ローラ62は、画像記録時に間欠駆動される。そのため、記録用紙及び記録メディア69は、所定の改行幅で送られながら画像が記録される。
【0059】
[シート検知部110]
図2に示されるように、プリンタ部11は、直線路65を搬送される記録用紙及びメディアトレイ71を検知するシート検知部110(本発明の第3検知部の一例)を備えている。シート検知部110は、直線路65において、第1ローラ対58に対して記録部24と反対側、つまり第1ローラ対58よりも第1向き5の上流側に設けられている。
【0060】
シート検知部110は、例えば、検出子112A,112Bを有する回転体112と、発光素子(例えば発光ダイオード)及び当該発光素子から発光された光を受光する受光素子(例えばフォトトランジスタ)を有するフォトインタラプタ等の光センサ111とにより構成されている。回転体112は、支軸123を中心に回転可能に設けられている。検出子112Aは支軸123から直線路65に突出している。回転体112に外力が加えられていない状態で、検出子112Bは、光センサ111の発光素子から受光素子に至る光路に進入して、当該光路を通る光を遮断している。回転体112が記録用紙またはメディアトレイ71の先端に押されることによって回転すると、検出子112Bは当該光路から外れて、当該光路に光が通る。
【0061】
[ロータリーエンコーダ122]
図7に示されるように、複合機10は、搬送用モータ102の駆動量を検知するロータリーエンコーダ122を備えている。
【0062】
ロータリーエンコーダ122は、搬送用モータ102の軸(不図示)に取り付けられており、軸と一体に回転するエンコーダディスク(不図示)と、光センサ(不図示)とで構成されている。エンコーダディスクには、その回転中心と同心の円周方向に、一定間隔で光を透過する透過部と光を透過しない非透過部とが等ピッチで交互に複数配置されたパターンが形成されている。光センサは、エンコーダディスクのうち、第1パターンが形成されている位置と対向する位置に設けられている。エンコーダディスクが搬送用モータ102の軸と共に回転すると、エンコーダディスクに配置されたパターンが光センサによって検出される。そして、当該検出の度に、パルス信号が光センサによって生成される。生成されたパルス信号は、光センサから後述する制御部130へと出力される。制御部130は、光センサからのパルス信号に基づいて、搬送用モータ102の駆動量を算出する。以上より、本発明の第2検出部は、ロータリーエンコーダ122と制御部130とで構成されている。
【0063】
[メディアトレイ71]
図4に示されるように、メディアトレイ71は薄板形状の樹脂板である。図2及び図4に示されるように、メディアトレイ71は、上面72を上側にしてトレイガイド76に載置され、前側開口13から挿入される。メディアトレイ71は、第2向き6に挿入される。メディアトレイ71は、第1ローラ対58及び第2ローラ対59によって、前側開口13から直線路65に沿って搬送される。なお、図4においては、メディアトレイ71が複合機10に挿入された状態で、上下方向7、前後方向8、及び左右方向9が定義される。
【0064】
メディアトレイ71の上面72側には、記録メディア69を載置可能なメディア載置部70が形成されている。メディア載置部70は、円形状の凹みである。当該凹みの直径は、載置される記録メディア69(円形のCD−ROMやDVD−ROMなど)の直径と同一または少しだけ大きい。また、円形の嵌合部73が、当該凹みの中央部から上側に突出して形成されている。円形のCD−ROMやDVD−ROMなどには、通常、中央部分に円形の孔が設けられている。嵌合部73は、当該孔と略同一の大きさであり、当該孔と嵌合する。これにより、記録メディア69がメディア載置部70に載置された場合に、記録メディア69は前後方向8及び左右方向9にずれない。
【0065】
[トレイガイド76]
図2に示されるように、メディアトレイ71を支持可能なトレイガイド76が、排紙トレイ21の上側に設けられている。トレイガイド76は、概ね薄板形状の底板75と、底板75の左右方向9の両端部から立設され、メディアトレイ71が挿入される方向(前後方向8)に沿って配置された右ガイド板(不図示)及び左ガイド板(不図示)とを備えている。底板75の上面にはメディアトレイ71が載置される。右ガイド板と左ガイド板との間の間隔は、メディアトレイ71の幅方向(左右方向9)の長さと同一または若干大きい。これにより、メディアトレイ71が底板75に載置されながら前側開口13から挿入されるとき、メディアトレイ71は左右方向9にずれない。
【0066】
トレイガイド76は、メディアトレイ71を直線路へ進入可能に支持する第1位置(図2に破線で示される位置、本発明の第1位置に相当)、及び上下方向7に対して第1位置と異なる位置(本実施形態では第1位置よりも上方の位置)である第2位置(図2に実線で示される位置、本発明に第2位置に相当)に移動可能である。
【0067】
本実施形態において、トレイガイド76は、以下に説明するような構成によって、第1位置及び第2位置に移動可能である。トレイガイド76の右側及び左側には、複合機10のフレーム(不図示)が配置されている。フレームには、長孔が形成されている。トレイガイド76は、両側面から突出した突出部(不図示)を有している。突出部は、長孔に挿入されている。これにより、トレイガイド76は、長孔に沿って摺動可能である。トレイガイド76は、長孔の両端(上端及び下端)において固定可能である。トレイガイド76が長孔の上端に位置している場合、トレイガイド76は第1位置である。また、トレイガイド76が長孔の下端に位置している場合、トレイガイド76は第2位置である。なお、トレイガイド76が移動するための構成は、上述したような構成に限らない。
【0068】
[姿勢検出センサ77]
プリンタ部11におけるトレイガイド76及びその近傍に、トレイガイド76の位置を検知する姿勢検出センサ77(図7参照、本発明の第1検知部の一例)が設けられている。
【0069】
姿勢検出センサ77は、例えば、トレイガイド76の左側面に取り付けられており、トレイガイド76から遠ざかる向き、つまり左向きに光を照射する発光部(不図示)と、プリンタ部11のフレームにおける発光部と対向可能な位置に取り付けられた受光部(不図示)とで構成されている。発光部及び受光部は、以下の説明内容を満たすような位置に取り付けられている。つまり、トレイガイド76が第2位置である場合、発光部によって照射された光は受光部で受光される。これにより、トレイガイド76が第2位置に位置していることが検知される。一方、トレイガイド76が第2位置から移動すると、発光部も移動するため、発光部によって照射された光は受光部で受光されない。これにより、トレイガイド76が第2位置に位置していないことが検知される。
【0070】
[第2搬送ローラ62及びプラテン42の姿勢変化]
図2に示されるように、第2ローラ対59の第2搬送ローラ62は、拍車63に当接した当接姿勢(図2に実線で示されている。)と、拍車63から離間した離間姿勢(図2に破線で示されている。)とに姿勢変化可能である。第2搬送ローラ62が当接姿勢をとっている場合、第2ローラ対59は記録用紙の挟持が可能である。これにより、第2ローラ対59は、記録用紙を直線路65に沿って搬送させる。一方、第2搬送ローラ62が離間姿勢をとっている場合、第2ローラ対59のローラ間の間隔は、メディアトレイ71を挟持するのに適した間隔となる。これにより、第2ローラ対59は、メディアトレイ71を直線路65に沿って搬送させる。
【0071】
また、プラテン42も下方に移動可能である。プラテン42が下方に移動していない場合(図2に実線で示されている。)、プラテン42と記録部24の間の間隔は、記録用紙が記録部24の下方を通過可能な間隔である。一方、プラテン42が下方に移動している場合(図2に破線で示されている。)、当該間隔は、メディアトレイ71が記録部24の下方を通過可能な間隔である。
【0072】
第2搬送ローラ62及びプラテン42の下方への移動は、例えば、第2搬送ローラ62及びプラテン42の下方に設けられた偏心カム140及びプラテン支持部材53によって実行される。偏心カム140は、左右方向9を軸方向として複合機10の筐体14を構成するフレーム(不図示)に回転自在に支持されている。偏心カム140は、軸142からの径が周期的に変化する円盤である。プラテン支持部材53は、偏心カム140に載置されるようにして支持されている。第2搬送ローラ62は、プラテン支持部材53に回転可能に支持されている。プラテン42は、上述したようにプラテン支持部材53に支持されている。
【0073】
偏心カム140の軸142は、連動部材143を介してトレイガイド76と連結されている。連動部材143は、軸142と一体に取り付けられており、連動部材143の軸142を中心とした回動と、軸142の回転とは連動している。これにより、トレイガイド76が第2位置から第1位置へ姿勢変化すると、連動部材143が下方(図2の紙面上における時計回り)に回動する。つまり、連動部材143は、図2の実線の状態から破線の状態へ遷移する。これにより、軸142が矢印144の向きに回転され、偏心カム140が回転される。偏心カム140が回転されると、その周面がプラテン支持部材53に対して摺動される。偏心カム140の周面は、軸142からの径が周期的に変化する。これにより、プラテン支持部材53が上下方向7へ移動する。プラテン支持部材53の上下方向7への移動によって、第2搬送ローラ62及びプラテン42が上下方向7へ移動される。
【0074】
[ピンチローラ61の姿勢変化]
図2に示されるように、第1ローラ対58のピンチローラ61は、第1搬送ローラ60に当接した図2に実線で示されている当接姿勢(本発明の当接姿勢に相当)と、第1搬送ローラ60から離間した図2に破線で示されている離間姿勢(本発明の離間姿勢に相当)とに姿勢変化可能である。ピンチローラ61が当接姿勢をとっている場合、記録用紙の挟持が可能である。これにより、第1ローラ対58は、記録用紙を直線路65に沿って搬送させる。一方、ピンチローラ61が離間姿勢をとっている場合、第1ローラ対58のローラ間の間隔は、メディアトレイ71を挟持するのに適した間隔となる。これにより、第1ローラ対58は、メディアトレイ71を直線路65に沿って搬送させる。
【0075】
ピンチローラ61の下方への移動は、例えば、ピンチローラ61の下方に設けられた偏心カム150及びローラ支持部材151によって実行される。偏心カム150は、左右方向9を軸方向として複合機10の筐体14を構成するフレーム(不図示)に回転自在に支持されている。偏心カム150は、軸152からの径が周期的に変化する円盤である。ローラ支持部材151は、偏心カム150に載置されるようにして支持されている。ピンチローラ61は、ローラ支持部材151に回転可能に支持されている。
【0076】
本実施形態では、偏心カム150は、給紙用モータ101(図7参照、本発明の第2駆動源の一例)から駆動伝達されて回転される。偏心カム150が回転されると、その周面がローラ支持部材151に対して摺動される。偏心カム150の周面は、軸152からの径が周期的に変化する。これにより、ローラ支持部材151が上下方向7へ移動する。ローラ支持部材151の上下方向7への移動によって、ピンチローラ61が上下方向7へ移動される。つまり、給紙用モータ101は、ピンチローラ61を当接姿勢と離間姿勢とに姿勢変化させる。
【0077】
[搬送用モータ102及び駆動伝達機構]
搬送用モータ102(図7参照、本発明の第1駆動源の一例)は、正転(本発明の第1駆動の一例)及び逆転(本発明の第2駆動の一例)が可能である。なお、正転が本発明の第2駆動であり、逆転が本発明の第1駆動であってもよい。
【0078】
駆動伝達機構(不図示、本発明の駆動伝達部の一例)は、遊星ギヤなどから構成されており、搬送用モータ102の正転の駆動力を後述するポンプ124(図7参照、本発明の吸引機構の一例)に伝達し、逆転の駆動力を後述するポート切替機構121(本発明の切替機構の一例)及びワイパーブレード56に伝達する。また、第1搬送ローラ60及び第2搬送ローラ62は、駆動伝達機構によって搬送用モータ102の正転の駆動力が伝達されると、メディアトレイ71を第1向き5へ搬送させる向きに回転し、駆動伝達機構によって搬送用モータ102の逆転の駆動力が伝達されると、メディアトレイ71を第2向き6へ搬送させる向きに回転する。
【0079】
[メンテナンスユニット80]
図3に示されるように、プラテン42の左右方向9の両側の記録用紙及びメディアトレイ71が通過しない領域、つまり記録部24の往復移動範囲における退避位置には、メンテナンスユニット80が配置される。メンテナンスユニット80は、パージ機構44と廃液タンク(不図示)などを備えている。
【0080】
パージ機構44は、記録ヘッド38のノズル等からインクと共に気泡や異物を吸引除去するパージを実行する。図3及び図5に示されるように、パージ機構44は、記録ヘッド38のノズルを覆うキャップ46(本発明のキャップの一例)と、記録ヘッド38の排気孔を覆う排気キャップ120と、キャップ46または排気キャップ120に接続されて吸引を行うポンプ124と、キャップ46及び排気キャップ120を記録ヘッド38に接離させるためのリフトアップ機構55と、ポンプ124、廃液タンク、及びノズル面39を拭うワイパーブレード56(本発明のワイプ部の一例)を接続するポンプチューブ82などを有する。
【0081】
キャップ46は、ゴムにより構成されている。キャップ46は、リフトアップ機構55によりノズル面39(図2参照)に密着し、ノズル面39との間に空間を形成すると共にノズルを覆う。キャップ46の内部は、カラーインク(CMY)のノズルと黒インク(Bk)のノズルとに応じて2つの空間に区画されており、カラーインク及び黒インクに対応してそれぞれノズル面39との間に空間が形成される。図示されていないが、キャップ46の各空間の底部には吸気口が設けられており、各吸気口は、後述するポート切替機構121を介してポンプ124及び廃液タンクに接続されている。排気キャップ120もゴムにより構成されている。排気キャップ120もノズル面39(図2参照)に密着し、記録ヘッド38の排気孔を覆う。
【0082】
ポンプ124は、ロータリー式のチューブポンプである。本実施形態では、ポンプ124は、内壁面を備えたケーシングと、この内壁面に沿って転動される転動ローラとを有する。ポンプチューブ82が上記転動ローラと上記内壁面との間に配置され、上記転動ローラが駆動される。これにより、ポンプチューブ82が扱かれ、ポンプチューブ82内のインクが上流側(キャップ46及び排気キャップ120の吸気口など)から下流側(廃液タンク)へ押し出される。
【0083】
図5(A)に示されるように、リフトアップ機構55は、左右一対の等長リンク64を備えている。この等長リンク64が回動することによって、ホルダ90が平行移動し、待機位置と密着位置との間で変位する。図5(A)では、ホルダ90は待機位置にあり、図5(B)では、ホルダ90は密着位置にある。ホルダ90は、鉛直上方へ突出された当接レバー91を備えている。キャリッジ40が図5において当接レバー91を右方向に押圧することにより、ホルダ90が密着位置に移動される。キャップ46および排気キャップ120は、ホルダ90に搭載されている。キャップ46および排気キャップ120は、ホルダ90が密着位置に移動されることにより、記録ヘッド38のノズル面39におけるノズルの周囲および排気孔の周囲に密着された第1姿勢(本発明の第1姿勢に相当)となり、ホルダ90が待機位置に移動されることにより、記録ヘッド38のノズル面39から離間された第2姿勢(本発明の第2姿勢に相当)となる。また、キャップ46が第1姿勢及び第2姿勢へ姿勢変化されるのであれば、キャップ46を姿勢変化させる構造は、上述したようなリフトアップ機構55によって行われるものに限らない。例えば、モータの駆動力によってキャップ46を姿勢変化させてもよい。
【0084】
キャップ46の近傍には、キャップ46の姿勢を検知する位置検出センサ104(図7参照、本発明の第4検知部の一例)が設けられている。位置検出センサ104は、例えば、キャップ46の姿勢変化に対応して上下に摺動する摺動体と、発光素子(例えば発光ダイオード)及び当該発光素子から発光された光を受光する受光素子(例えばフォトトランジスタ)を有するフォトインタラプタ等の光センサとにより構成されている。摺動体は、キャップ46が第1姿勢のときに、発光素子から受光素子に至る光路に位置して、当該光路を通る光を遮断する。当該遮断の有無によって、キャップ46の姿勢が検知される。
【0085】
ワイパーブレード56は、ワイパーホルダ68に嵌め込まれており、ワイパーホルダ68に対して出没可能に設けられている。ワイパーブレード56は、ゴムにより構成されている。ワイパーブレード56の長さ(図5において紙面に垂直な方向の寸法)は、ノズル面39までの長さに対応している。ワイパーブレード56は、ワイパーホルダ68から突出されることにより、ノズル面39に当接可能な状態である第3姿勢(本発明の第3姿勢に相当)をとり、ワイパーホルダ68に没入されることにより、ノズル面39から離間した状態である第4姿勢(本発明の第4姿勢に相当)をとる。つまり、ワイパーブレード56は、第3姿勢及び第4姿勢に姿勢変化可能である。ワイパーブレード56の姿勢変化については、後述される。
【0086】
ワイパーブレード56が記録ヘッド38の下面に当接した状態で、つまりワイパーブレード56が第3姿勢の状態で、キャリッジ40が移動すると、ワイパーブレード56はノズル面39に形成されたノズルと当接する。ここで、ワイパーブレード56は、キャリッジ40の移動によって、ノズル面39のうちノズルが形成された領域の全てと当接可能である。これにより、ワイパーブレード56は、ノズル面39に付着したインクを拭い取る。このインクの拭い取りはワイプと呼ばれる。
【0087】
ワイパーブレード56は、駆動伝達機構により搬送用モータ102から逆転の駆動力が伝達されることによって、第3姿勢及び第4姿勢に姿勢変化される。ワイパーブレード56は、パージが終了した後、記録ヘッド38が画像記録領域側に移動される際に、第4姿勢から第3姿勢に姿勢変化されて突出される。なお、当該姿勢変化のタイミングは、後述する切替部材92の回転位相が所定の位相になったときのタイミングである。つまり、パージが終了した後、切替部材92が所定の位相となるように、後述する回転体92Aが回転される。
【0088】
図3に示されるように、キャリッジ40の画像記録領域の外側であってパージ機構44の反対側に廃インクトレイ45が配設されている。廃インクトレイ45は、記録ヘッド38のインクの空吐出を受けるものである。この空吐出は、フラッシングと呼ばれる。フラッシングは、パージとは別の動作として行われる。フラッシングが実行されることによって、記録ヘッド38内の気泡や混色インクの除去等のメンテナンスが行われる。なお、廃インクトレイ45内にはフェルトが敷設されており、フラッシングされたインクは、このフェルトに吸収されて保持される。
【0089】
[ポート切替機構121]
ポート切替機構121(図5参照)は、キャップ46及び排気キャップ120とポンプ124及び廃液タンクとの連通状態を、接続状態または遮断状態に切り換える。図5及び図6に示されるように、ポート切替機構121は、6つのポート93〜98が設けられたカバー99と、カバー99の内部に配置された円盤状の切替部材92とを備えている。切替部材92は、搬送用モータ102(図7参照)により回転され、上記各ポート93〜98を後述のように接続する。カバー99は樹脂からなり、有底の円筒状に形成されている。カバー99の底壁の中心に吸気ポート93が形成されている。吸気ポート93にポンプチューブ82が接続されている。ポンプチューブ82は、ポンプ124を介して廃液タンクに接続されている。
【0090】
他の5つのポート94〜98は、カバー99の側壁において周方向に所定の間隔を空けて設けられている。排気ポート94は、ポンプチューブ82とは別のチューブ(不図示)によって排気キャップ120(図5参照)に連通している。Bkポート95は、上述のチューブとは別のチューブ(不図示)によってキャップ46(図5参照)に連通している。具体的には、Bkポート95は、キャップ46とノズル面39との間に形成された黒インク用の空間に連通している。Coポート96は、上述のチューブとは別のチューブ(不図示)によってキャップ46(図4参照)に連通している。具体的には、Coポート96は、キャップ46とノズル面39との間に形成されたカラーインク用の空間に連通している。大気ポート97、98は大気に開放されている。
【0091】
メンテナンスユニット80により記録ヘッド38から吸引されたインクは、以下のようにして廃液タンクに送られる。以下、図6に基づいて、インク吸引の処理手順の一例について説明する。
【0092】
キャリッジ40が移動されて当接レバー91を右向きに押圧すると、図5(B)に示されるように、ホルダ90が密着位置に移動される。これにより、リフトアップ機構55によって、キャップ46がノズル面39に密着して両者間に空間が形成され、キャップ46は第1姿勢となる。切替部材92が駆動され、吸気ポート93とBkポート95が連通される状態となる(図6(B)参照、以下、この状態を第2状態と記す。)。つまり、キャップ46とノズル面39との間に形成される空間のうち黒インクに対応する部分がポンプ124に接続される。第2状態で、ポンプ124が駆動されると黒インクの吸引が実行される。つまり、ポンプ124の駆動によって、キャップ46とノズル面39との間に形成される空間のうち黒インクに対応する部分に負圧がかかり、貯留されていた黒インクがポンプ124側へ吸引される。吸引されたインクは、ポンプチューブ82を経て廃液タンクに吸収される。
【0093】
インクの吸引が開始されてから所定時間(例えばノズルなどからインクが十分に吸引される時間)の経過後、切替部材92が駆動され、吸気ポート93が他のポート94〜98の何れとも連通されていない第1状態となる(図6(C)参照)。つまり、キャップ46とノズル面39との間に形成される空間は、大気から遮断されると共にポンプ124と非連通状態となる。これにより、ポンプ124による吸引量が安定する。
【0094】
次に、切替部材92が駆動され、吸気ポート93とCoポート96が連通される状態となる(図6(D)参照、以下、この状態も図6(B)と同様に第2状態と記す。)。つまり、キャップ46とノズル面39との間に形成される空間のうちカラーインクに対応する部分がポンプ124に接続される。第2状態で、ポンプ124が駆動されるとカラーインクの吸引が実行される。つまり、ポンプ124の駆動によって、キャップ46とノズル面39との間に形成される空間のうちカラーインクに対応する部分に負圧がかかり、貯留されていたカラーインクがポンプ124側へ吸引される。吸引されたインクは、ポンプチューブ82を経て廃液タンクに吸収される。
【0095】
インクの吸引を開始してから所定時間(例えばノズルなどからインクが十分に吸引される時間)の経過後、切替部材92が駆動され、第1状態となる(図6(C)参照)。つまり、キャップ46とノズル面39との間に形成される空間は、大気から遮断されると共にポンプ124と非連通状態となる。これにより、ポンプ124による吸引量が安定する。
【0096】
その後、キャリッジ40が移動されて当接レバー91から離れると、図5(A)に示されるように、ホルダ90が待機位置に移動される。つまり、リフトアップ機構55により、キャップ46は、ノズル面39から離間されて第2姿勢となる。
【0097】
キャップ46が第2姿勢へ姿勢変化した状態で、切替部材92が駆動され第2状態とされ、更にポンプ124が駆動されると、キャップ46内の清掃のための空吸引が実行される。つまり、ポンプ124が駆動されても、キャップ46がノズル面39から離間されているために、インクは吸引されないのである。この空吸引は、吸気ポート93とBkポート95が連通された状態、及び吸気ポート93とCoポート96が連通された状態のそれぞれにおいて実行される。
【0098】
図6(A)に破線で示されるように、切替部材92の上部又は下部には、切替部材92と一体に回転する回転体92Aが設けられている。回転体92Aには、径方向外側へ向かって突出する凸部92B、92C、92Dが設けられている。これら凸部92B、92C、92Dは、回転体92Aの回転に対して位相が異なる位置に配置されており、各凸部92B、92C、92Dの間は、回転体92Aの所定の回転角度だけ離間されている。また、回転体92Aの外周と対向する位置には、センサ92Eが配置されている。センサ92Eと凸部92B、92C、92Dが対向する場合、センサ92Eからオンの電気信号が出力され、センサ92Eと凸部92B、92C、92Dが対向しない場合、センサ92Eからオフの電気信号が出力される。センサ92Eの出力(オン/オフ)の周期によって、切替部材92の回転位相が把握される。
【0099】
以上説明した動作(吸引及び空吸引)の他、排気及びワイプが所定のタイミングで実行される。排気は、切替部材92の駆動によって、吸気ポート93と排気ポート94が連通されることで実行される。ワイプは、キャップ46が第2姿勢へ姿勢変化した状態において、切替部材92が所定の位相となったタイミングで実行される。つまり、当該タイミングにおいて、ワイパーブレード56は、駆動伝達機構により搬送用モータ102から逆転の駆動力が伝達されることによって、第3姿勢及び第4姿勢に姿勢変化される。その状態において、記録ヘッド38が移動され、ノズル面39に付着したインクが拭い取られる。
【0100】
[制御部130]
以下、図7が参照されて、制御部130(本発明の制御部の一例)の概略構成が説明される。制御部130が後述するフローチャートにしたがってメディアトレイ71の排出制御を行うことによって、本発明が実現される。
【0101】
制御部130は、複合機10の全体動作を制御するものである。制御部130は、CPU131、ROM132、RAM133(本発明の記憶部の一例)、EEPROM134、ASIC135を主とするマイクロコンピュータとして構成されている。これらは内部バス137によって接続されている。
【0102】
ROM132には、CPU131が複合機10の各種動作を制御するためのプログラムが格納されている。RAM133は、CPU131が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記録する記憶領域、或いはデータ処理の作業領域として使用される。EEPROM134には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
【0103】
本実施形態におけるプログラムは、メンテナンスユニット80によるクリーニングを制御するためクリーニング実行プログラムである。クリーニングとは、パージ、ワイプ、及びフラッシングなどの総称である。クリーニング実行プログラムには、キャップの姿勢変化、キャリッジの移動、吸引、空吸引、排気、ワイプ、及びフラッシングなどのクリーニングにおいて実行される動作の順序が記されている。また、クリーニング実行プログラムには、ポンプ124、ポート切替機構121、キャリッジ40、及びキャップ46などを駆動させるために各モータ101、102、103に与える命令が記されている。また、クリーニング実行プログラムには、各センサ104、111やロータリーエンコーダ122などからデータを受け取るタイミングや、受け取ったデータを使用する処理内容が記されている。以上より、クリーニング実行プログラムに記されたクリーニングの順序は、本発明の予め設定された所定順序に相当する。また、制御部130は、記録部24及びキャップ46を、クリーニング実行プログラムに従って動作させ、搬送用モータ102を、クリーニング実行プログラムに従って正転及び逆転で駆動させることによって、ポンプ124及びポート切替機構121を制御して、記録ヘッド38のクリーニングの実行を制御する。
【0104】
ASIC135には、各種モータ101、102、103、各種センサ77、104、111、及びロータリーエンコーダ122などが接続されている。
【0105】
ASIC135には、各種モータ101、102、103を制御する駆動回路が組み込まれている。CPU131から上記駆動回路に所定のモータを回転させるための駆動信号が入力されると、駆動信号に応じた駆動電流が駆動回路から当該所定のモータへ出力される。これにより、当該所定のモータが駆動、つまり所定の回転速度で正転または逆転される。給紙用モータ101の正転または逆転の一方によって給紙ローラ25が回転し、給紙用モータ101の正転または逆転の他方によって偏心カム150が回転する。搬送用モータ102の正転及び逆転は、上述したように、駆動伝達機構によって第1搬送ローラ60、第2搬送ローラ62、ポート切替機構121、ポンプ124、及びワイパーブレード56に伝達される。キャリッジ駆動モータ103の駆動によって、キャリッジ40が左右方向9に摺動する。
【0106】
姿勢検出センサ77は、受光部で受けた光の強度に応じたアナログの電気信号(電圧信号または電流信号)を出力する。出力された信号は制御部130に入力される。制御部130は、入力された信号の電気レベル(電圧値または電流値)が所定の閾値以上であるかどうかを判断する。例えば、入力された信号が所定の閾値以上である場合、制御部130は、トレイガイド76が第2位置に位置していると判断する。一方、入力された信号が所定の閾値未満である場合、制御部130は、トレイガイド76が第2位置に位置していないと判断する。
【0107】
位置検出センサ104及び光センサ111は、受光素子で受けた光の強度に応じたアナログの電気信号(電圧信号又は電流信号)を出力する。出力された信号は、制御部130に入力される。制御部130は、入力された信号の電気的レベル(電圧値又は電流値)が所定の閾値以上であるかどうかが判断される。入力された信号が所定の閾値以上である場合にHIGHレベル信号と判定され、所定の閾値未満の場合にLOWレベル信号と判定される。これにより、制御部130は、キャップ46の姿勢、及びシート検知部110によるメディアトレイ71の検知の有無を判断する。
【0108】
ロータリーエンコーダ122の光センサによって生成されたパルス信号は、制御部130に入力される。上述したように、制御部130は、光センサからのパルス信号に基づいて、搬送用モータ102の駆動量を算出する。
【0109】
[記録メディア69への画像記録]
以下、複合機10にメディアトレイ71が挿入され、メディアトレイ71に載置された記録メディア69に画像が記録される手順が説明される。図2及び図8(A)に示されるように、ユーザの操作によってトレイガイド76が第2位置から第1位置へ移動されると、当該移動に連動して偏心カム140が回転する。これにより、第2搬送ローラ62が当接姿勢から離間姿勢に姿勢変化され、プラテン42が下方に移動される。ユーザは、記録メディア69が載置されたメディアトレイ71を、トレイガイド76に支持されるようにセットする。この際、メディアトレイ71は、複合機10への挿入側の先端(後側の端部)が第2ローラ対59に当接した状態で、トレイガイド76にセットされる。
【0110】
次に、複合機10の正面上部に設けられた操作パネル18(図1参照)の操作により、記録メディア69へ画像を記録する機能が選択されると、給紙用モータ101が駆動されて、偏心カム150が回転する。これにより、ピンチローラ61が当接姿勢から離間姿勢へ姿勢変化される。
【0111】
その後、操作パネル18の操作によって、記録メディア69への画像記録が指示されると、第1搬送ローラ60及び第2搬送ローラ62が逆転駆動される。これにより、メディアトレイ71は、第2ローラ対59によって第2向き6に搬送される。搬送されるメディアトレイ71は、記録部24の下側を通過して、第2向き6の下流側から第1ローラ対58に挟持される。
【0112】
その後、2つのローラ対58、59に挟持されたメディアトレイ71は、更に第2向き6に搬送される。そして、図8(B)に示されるように、メディアトレイ71は、後側開口87を介して複合機10の外部に突出した状態となる。
【0113】
この状態において、第1搬送ローラ60及び第2搬送ローラ62の回転方向が逆転から正転に切り換えられる。これにより、メディアトレイ71が第1向き5に搬送され、メディアトレイ71に載置された記録メディア69が記録部24の下方を通る。このとき、搬送される記録メディア69に対して、記録ヘッド38からインク滴が吐出される。これにより、記録メディア69の盤面上に画像が記録される。その後、メディアトレイ71は前側開口13から複合機10の外部に排出される。
【0114】
[メディアトレイ71の排出制御]
上述の如く構成されたプリンタ部11においては、メンテナンスユニット80によるクリーニング中に、複合機10に挿入されたメディアトレイ71が排出される制御が、制御部130によって実行される。以下、図9のフローチャートに基づいて、メディアトレイ71の排出制御の処理手順が説明される。排出制御は、例えば複合機10のユーザによる操作パネル18の操作によって、クリーニングが指示された場合に実行される処理である。
【0115】
本実施形態及び後述される変形例において、クリーニング実行プログラムに記されたクリーニングの実行順序は、以下の順序であるとする。なお、本順序は一例であって、異なる順序であってもよい。また、ポンプ124による吸引量の安定のために行われる切替部材92の駆動、つまり吸気ポート93が他のポート94〜98の何れとも連通されていない状態とする切替部材92の駆動は、省略される。また、フラッシング処理は、省略される。
【0116】
以下に本実施形態及び後述される変形例におけるクリーニングの実行順序が示される。キャップ46の初期状態は、ノズル面39を覆う第1姿勢である。第1の処理として、切替部材92が駆動されて吸気ポート93とBkポート95とが連通される。第2の処理として、ポンプ124が駆動されて黒インクの吸引が実行される。第3の処理として、切替部材92が駆動されて吸気ポート93とCoポート96とが連通される。第4の処理として、ポンプ124が駆動されてカラーインクの吸引が実行される。第5の処理として、切替部材92が駆動されて吸気ポート93と排気ポート94とが連通され、排気が実行される。第6の処理として、キャップ46が第1姿勢からノズル面39から離間した第2姿勢に姿勢変化される。第7の処理として、切替部材92が駆動されて吸気ポート93とBkポート95とが連通される。第8の処理として、ポンプ124が駆動されて黒インクの空吸引が実行される。第9の処理として、ワイプが実行される。つまり、ワイパーブレード56が第4姿勢から第3姿勢に姿勢変化されて突出され、次にキャリッジ40の移動によって記録ヘッド38が移動され、最後にワイパーブレード56が第3姿勢から第4姿勢に姿勢変化されてワイパーホルダ68に没入される。第10の処理として、切替部材92が駆動されて吸気ポート93とCoポート96とが連通される。第11の処理として、ポンプ124が駆動されてカラーインクの空吸引が実行される。第12の処理として、キャップ46が第2姿勢から第1姿勢に姿勢変化される。
【0117】
制御部130は、図9のフローチャートにおけるステップSA2、SA6、SA7、SA9、SA10、SA12、SA13、SA16で説明するように、クリーニングが実行されている状態で、トレイガイド76が第2位置でないことが姿勢検出センサ77によって検知されたことを条件として、搬送用モータ102を正転させる。また、制御部130は、図9のフローチャートにおけるステップSA2、SA7、SA10、SA13で説明するように、クリーニングが実行されている状態で、トレイガイド76が第2位置でないことが姿勢検出センサ77によって検知された場合に、クリーニングの実行順序に従った動作のうち未実行の動作を、RAM133記憶する。また、制御部130は、図9のフローチャートにおけるステップSA18、SA19で説明するように、搬送用モータ102を正転させた後、トレイガイド76が第2位置であることが姿勢検出センサ77によって検知されたことを条件として、RAM133に記憶されている未実行の動作以降の動作を実行する
【0118】
複合機10のユーザによる操作パネル18の操作によって、記録ヘッド38のクリーニング動作が指示されると、クリーニングが開始される(SA1、以下ステップをSと記す。)。制御部130は、姿勢検出センサ77からの入力信号に基づいて、トレイガイド76が第2位置であるか否かを判断する(SA2)。トレイガイド76が第2位置であると判断された場合(SA2:No)、制御部130は、クリーニング実行プログラムの実行を開始する。これにより、ステップSA3以降の処理が実行される。
【0119】
一方、トレイガイド76が第2位置でないと判断された場合(SA2:Yes)、制御部130は、クリーニング実行プログラムによるクリーニングの実行順序に従った動作のうち、未実行の動作についての情報をRAM133に記憶する。ステップSA2での判断時点では、クリーニング実行プログラムは実行開始されていない。よって、制御部130は、RAM133の中に次に動作すべき処理が記憶される未実行処理記憶領域を割り当てて、当該未実行処理記憶領域に第1の処理が次に実行される旨の情報を記憶する。
【0120】
ステップSA2の次に、制御部130は、キャリッジ駆動モータ103を駆動させてキャリッジ40を移動させ、ホルダ90が密着位置から待機位置に移動されて、キャップ46が第1姿勢から第2姿勢に姿勢変化される(SA5)。その後、制御部130は、搬送用モータ102を正転で駆動させる(SA6)。これにより、第2搬送ローラ62は、メディアトレイ71を第1向き5へ搬送させる向きに回転する。よって、第2位置のトレイガイド76に、メディアトレイ71がセットされても、当該メディアトレイ71が直線路65に沿って複合機10の内部へ引き込まれることはない。
【0121】
なお、ステップSA6における搬送用モータ102の正転での駆動量は、所定の駆動量が設定される。当該所定の駆動量は、例えば、トレイガイド76にセットされたメディアトレイ71が第2ローラ対59によって第1向き5へ押し戻され、第2ローラ59から離間されるのに十分な駆動量である。メディアトレイ71が第2ローラ対59から離間していれば、メディアトレイ71は、第2ローラ対59によって複合機10の内部へ引き込まれることはないからである。
【0122】
ステップSA6の次に、制御部130は、キャリッジ40を移動させることによって、キャップ46を第2姿勢から第1姿勢に姿勢変化させる(SA17)。その後、制御部130は、トレイガイド76が第2位置であると判断されるまで待機する(SA18:No)。トレイガイド76が第2位置であると判断されると(SA18:Yes)、制御部130は、RAM133の未実行処理記憶領域を参照する。そして、制御部130は、未実行処理記憶領域に記憶されている情報に対応する処理からクリーニングの実行順序に従ってクリーニングを実行する(SA19)。ステップSA2においてトレイガイド76が第2位置でないと判断された場合、未実行処理記憶領域に第1の処理が次に実行される旨の情報が記憶されている。そのため、制御部130は、第1の処理からクリーニングの実行順序に従ってクリーニングを実行する(SA19)。そして、第12の処理まで実行されると、クリーニングは終了する(SA20)。
【0123】
ステップSA2において、トレイガイド76が第2位置であると判断された場合(SA2:No)、制御部130は、記録ヘッド38に付着したインクの吸引及び排気を実行する(SA3)。具体的には、制御部130は、クリーニングの実行順序のうち、第1の処理から第5の処理を実行する。次に、制御部130は、第6の処理及び第7の処理を実行する(SA4)。つまり、制御部130は、キャリッジ40を移動させることによって、キャップ46を第1姿勢から第2姿勢に姿勢変化させる(SA4)。また、制御部130は、搬送用モータ102を駆動させることによってポート切替機構121の切替部材92を駆動させて、吸気ポート93とBkポート95とを連結させる(SA4)。
【0124】
次に、制御部130は、トレイガイド76が第2位置であるか否かを判断する(SA7)。トレイガイド76が第2位置であると判断された場合(SA7:No)、制御部130は、ステップSA7以降の処理を実行する。
【0125】
一方、トレイガイド76が第2位置でないと判断された場合(SA7:Yes)、制御部130は、RAM133の未実行処理記憶領域に、第8の処理が次に実行される旨の情報を記憶する。また、制御部130は、搬送用モータ102を正転させることにより、ポンプ124を駆動する。ステップSA7の時点において、キャップ46がノズル面39から離間した第2姿勢であり、且つ吸気ポート93とBkポート95とが連結された状態である。よって、ポンプ124の駆動によって、空吸引が実行される(SA9)。なお、ステップSA9における空吸引は、第8の処理とは異なる処理として実行される。また、空吸引の実行により、搬送用モータ102が正転される。これにより、第2搬送ローラ62は、メディアトレイ71を第1向き5へ搬送させる向きに回転する。搬送用モータ102の正転での駆動量は、例えばステップSA6の場合と同様である。その後、上述したステップSA17〜SA20の処理が実行される。
【0126】
ステップSA7において、トレイガイド76が第2位置であると判断された場合(SA7:No)、制御部130は、ポンプ124を駆動する。これにより、ステップSA9と同様に、空吸引が実行される(SA8)。具体的には、制御部130は、クリーニングの実行順序のうち、第8の処理を実行する。
【0127】
空吸引の実行後、制御部130は、トレイガイド76が第2位置であるか否かを判断する(ステップSA10)。トレイガイド76が第2位置であると判断された場合(SA10:No)、制御部130は、ステップSA11以降の処理を実行する。
【0128】
一方、トレイガイド76が第2位置でないと判断された場合(SA10:Yes)、制御部130は、RAM133の未実行処理記憶領域に、第9の処理が次に実行される旨の情報を記憶する。また、制御部130は、搬送用モータ102を正転させる(SA12)。これにより、第2搬送ローラ62は、メディアトレイ71を第1向き5へ搬送させる向きに回転する。搬送用モータ102の正転での駆動量は、例えばステップSA6の場合と同様である。その後、上述したステップSA17〜SA20の処理が実行される。
【0129】
ステップSA10において、トレイガイド76が第2位置であると判断された場合(SA10:No)、制御部130は、ワイプ及びポートの切替を実行する(SA11)。具体的には、制御部130は、クリーニングの実行順序のうち、第9の処理及び第10の処理を実行する。
【0130】
ポートの切替(第10の処理)の実行後、制御部130は、トレイガイド76が第2位置であるか否かを判断する(ステップSA13)。トレイガイド76が第2位置であると判断された場合(SA13:No)、制御部130は、ステップSA14以降の処理を実行する。
【0131】
一方、トレイガイド76が第2位置でないと判断された場合(SA13:Yes)、制御部130は、RAM133の未実行処理記憶領域に、第11の処理が次に実行される旨の情報を記憶する。また、制御部130は、ステップSA9と同様にして空吸引を実行する(SA16)。なお、ステップSA16における空吸引は、第11の処理とは異なる処理として実行される。また、空吸引の実行により、搬送用モータ102が正転される。これにより、第2搬送ローラ62は、メディアトレイ71を第1向き5へ搬送させる向きに回転する。搬送用モータ102の正転での駆動量は、例えばステップSA6の場合と同様である。その後、上述したステップSA17〜SA20の処理が実行される。
【0132】
ステップSA13において、トレイガイド76が第2位置であると判断された場合(SA13:No)、制御部130は、ポンプ124を駆動する。これにより、ステップSA8と同様に、空吸引が実行される(SA14)。具体的には、制御部130は、クリーニングの実行順序のうち、第11の処理を実行する。
【0133】
その後、制御部130は、キャリッジ40を移動させることによって、キャップ46を第2姿勢から第1姿勢に姿勢変化させる(SA15)。具体的には、制御部130は、クリーニングの実行順序のうち、第12の処理を実行する。そして、第12の処理まで実行されると、クリーニングは終了する(SA20)。
【0134】
なお、上述した図9のフローチャートの処理においては、ステップSA6、SA12における搬送用モータ102の正転での駆動量、及びステップSA9、SA16における空吸引のための搬送用モータ102の正転での駆動量には、所定の駆動量が設定された。
【0135】
しかし、ステップSA6、SA9、SA12、SA16における搬送用モータ102の正転での駆動は、制御部130によってトレイガイド76が第2位置であると判断されるまで実行されてもよい。この場合、図9におけるステップSA17及びステップSA18の処理の順序が入れ替わる。つまり、制御部130によってトレイガイド76が第2位置であると判断されると(SA18)、搬送用モータ102の正転での駆動は停止される。その後、制御部130は、キャップ46を第2姿勢から第1姿勢に姿勢変化させる(SA17)。
【0136】
[実施形態の効果]
記録ヘッド38のクリーニングが実行されている状態で、トレイガイド76が第2位置でないことが姿勢検出センサ77によって検知された場合、メディアトレイ71がトレイガイド76によって直線路65へ進入可能に支持されているおそれがある。この場合に、メディアトレイ71が第2ローラ対59によって第2向き6に搬送されると、メディアトレイ71は複合機10の内部へ搬送されてしまう。そこで、本実施形態によれば、上述の場合に、制御部130が搬送用モータ102を正転させる。これにより、メディアトレイ71がトレイガイド76によって支持されていたとしても、メディアトレイ71は、第2ローラ対59によって第1向き5に搬送される。よって、メディアトレイ71が第2ローラ対59よりも奥側に引き込まれることが、防止可能である。よって、記録ヘッド38のクリーニング動作中に、メディアトレイ71が装置内へ挿入されても、メディアトレイ71が障害物へ衝突することが防止可能である。
【0137】
また、本実施形態によれば、制御部130は、トレイガイド76が第2位置でないことを条件としてクリーニングを再開させる。つまり、メディアトレイ71がトレイガイド76によって直線路65へ進入不可能な状態となってから、クリーニングの実行を再開することが可能である。
【0138】
また、本実施形態によれば、ワイパーブレード56及びノズル面39が当接している状態において、記録部24が左右方向9へ移動する。これにより、ノズル面39に付着したインクを、ワイパーブレード56によって拭い取ることができる。
【0139】
[実施形態の変形例1]
以下、図10のフローチャートに基づいて、変形例1におけるメディアトレイ71の排出制御の処理手順が説明される。
【0140】
制御部130は、図10のフローチャートにおけるステップSB9、SB14で説明するように、トレイガイド76が第2位置でないことが姿勢検出センサ77によって検知された状態で、クリーニングの実行順序における搬送用モータ102の逆転での駆動量が後述する第1所定量(本発明の第1所定量に相当)以上であることを条件として、搬送用モータ102を正転させてもよい。また、制御部130は、図10のフローチャートにおけるステップSB12、SB13で説明するように、キャップ46が第2姿勢であることが位置検出センサ104によって検知されたことを更なる条件として、搬送用モータ102を正転させてもよい。
【0141】
なお、図10のフローチャートの説明において、図9のフローチャートと同様の処理である部分は、その詳細な説明が省略される。
【0142】
図10のステップSB1〜SB3の処理は、図9のステップSA1〜SA3の処理と同様である。また、図10のステップSB5、SB6の処理は、図9のステップSA5、SA6の処理と同様である。また、図10のステップSB17〜SB20の処理は、図9のステップSA17〜SA20の処理と同様である。
【0143】
ステップSB3の次に、制御部130は、クリーニングの実行順序のうち、第6の処理を実行する。つまり、制御部130は、キャリッジ40を移動させることによって、キャップ46を第1姿勢から第2姿勢に姿勢変化させる(SB4)。
【0144】
次に、制御部130は、トレイガイド76が第2位置であるか否かを判断する(SB7)。トレイガイド76が第2位置であると判断された場合(SB7:No)、制御部130は、ステップSA10以降の処理を実行する。つまり、クリーニングが続行される。具体的には、クリーニングの実行順序のうち、第7の処理以降の処理が実行される。
【0145】
一方、トレイガイド76が第2位置でないと判断された場合(SA7:Yes)、制御部130は、クリーニングの実行順序に従って次の動作が実行される場合の搬送用モータ102の向きを判断する(SB8)。つまり、次の動作において、搬送用モータ102が正転されるのか、逆転されるのか、或いは搬送用モータ102が駆動されない動作(例えばキャップ46の姿勢変化)が実行されるのかが判断される。搬送用モータ102が逆転されない場合(SB8:No)、メディアトレイ71が装置内へ引き込まれるおそれがないため、クリーニングが続行される(SB10)。
【0146】
一方、搬送用モータ102が逆転される場合(SB8:Yes)、制御部130は、ロータリーエンコーダ122の光センサからのパルス信号に基づいて、当該逆転の駆動量が第1所定量以上であるか否かを判断する(SB9)。
【0147】
ここで、第1所定量は、メディアトレイ71を、第2ローラ対59からメディアトレイ71の先端が衝突し得る障害物まで第2向き6に搬送させるために必要な搬送用モータ102の駆動量である。障害物は、例えば、ローラが相互に当接された第1ローラ対58や、メディアトレイ71が衝突し得る位置に配置されている複合機10のフレームや、複合機10に後側開口87が形成されていない場合における複合機10の後壁16(図2及び図8参照)や、第2経路65Bが形成されていない場合における外側ガイド部材22(図2に破線で示されている。)や、複合機10が設置されている室の壁(詳細には複合機10の背面に複合機10と対向して存在する壁)などである。
【0148】
図2に示されるように、障害物が第1ローラ対58の場合、第1所定量は、メディアトレイ71を、区間Aだけ第2向き6に搬送させるために必要な搬送用モータ102の駆動量である。障害物が複合機10の後壁16或いは室の壁の場合、第1所定量は、メディアトレイ71を、区間B1だけ第2向き6に搬送させるために必要な搬送用モータ102の駆動量である。障害物が外側ガイド部材22の場合、第1所定量は、メディアトレイ71を、区間B2だけ第2向き6に搬送させるために必要な搬送用モータ102の駆動量である。
【0149】
当該逆転の駆動量が第1所定量未満である場合(SB9:No)、制御部130は、搬送用モータ102を正転させなくてもメディアトレイ71が装置内において障害物に衝突するおそれがないと判断する。よって、クリーニングが続行される(SB10)。一方、当該逆転の駆動量が第1所定量以上である場合(SB9:Yes)、制御部130は、位置検出センサ104からの入力信号に基づいて、キャップ46が第1姿勢であるか否かを判断する(SB12)。キャップ46が第1姿勢であると判断された場合(SB12:Yes)、制御部130は、キャップ46を第1姿勢から第2姿勢に姿勢変化させてから(SB13)、搬送用モータ102を正転で駆動させる(SB14)。一方、キャップが第2姿勢であると判断された場合(SB12:No)、制御部130は、キャップ46を姿勢変化させることなく、搬送用モータ102を正転で駆動させる(SB14)。つまり、制御部130は、キャップ46が第2姿勢であると判断されたことを条件として、搬送用モータ102を正転で駆動させる。
【0150】
なお、本実施形態においては、第6の処理においてキャップ46が第2姿勢に姿勢変化されてから最終の第12の処理までの間に、キャップ46は姿勢変化されない。このため、ステップSB12においては、キャップ46は常に第2姿勢である。しかしながら、上述したように、クリーニングの実行順序は一例である。よって、クリーニングの実行順序によっては、ステップSB12において、キャップ46が第1姿勢である場合もあり得る。
【0151】
搬送用モータ102の正転より、第2搬送ローラ62は、メディアトレイ71を第1向き5へ搬送させる向きに回転する。ここで、ステップSB14における搬送用モータ102の正転での駆動量は、所定の駆動量が設定される。当該所定の駆動量は、例えば、トレイガイド76にセットされたメディアトレイ71が第2ローラ対59によって第1向き5へ押し戻され、第2ローラ59よりも前方へ搬送されて、第2ローラ59から離間するのに十分な駆動量である。メディアトレイ71が第2ローラ対59よりも前方において第2ローラ対59から離間されていれば、メディアトレイ71は第2ローラ対59によって複合機10の内部へ引き込まれることはないからである。
【0152】
ステップSB14の次に、制御部130は、ポート切替機構121の切替部材92を駆動することにより吸気ポート93とBkポート95とを連結させてから、搬送用モータ102を正転させることによりポンプ124を駆動する。ステップSB14の時点において、キャップ46がノズル面39から離間した第2姿勢である。よって、ポンプ124の駆動によって、空吸引が実行される(SB15)。なお、ステップSB15における空吸引は、第8の処理や第11の処理とは異なる処理として実行される。空吸引が実行された後、制御部130は、ポート切替機構121の切替部材92を駆動して、ポート切替機構121を予め設定された回転位相である原点位置に移動させる(SB16)。その後、ステップSB17〜SB19の処理が実行される。
【0153】
ステップSB7〜SB10、SB12〜SB19の処理が、クリーニングにおける全ての処理が実行されるまで繰り返される(SB11)。そして、第12の処理まで実行されると、クリーニングは終了する(SB20)。
【0154】
変形例1においては、ステップSB6、SB14において、制御部130がクリーニング中に搬送用モータ102を正転させているとき、クリーニングは中断された状態である。しかし、クリーニングが中断されることは好ましくない。クリーニングが中断されている間、記録ヘッド38のノズル面39やキャップ46にインクが残留した状態が維持されることにより、インクの混色や、装置内の他の部分への残留インクの付着による汚れが発生するおそれがあるからである。また、クリーニングが完了するまでの時間が長くなってしまうからである。
【0155】
そこで、変形例1においては、クリーニング中における制御部130による搬送用モータ102の正転での駆動が、以下に詳述するように、少なく抑えられる。メディアトレイ71が第1位置のトレイガイド76に支持されている状態で、搬送用モータ102が逆転された場合、メディアトレイ71は第2向き6に搬送されて、複合機10の内部へ搬送されてしまう。しかし、当該逆転の駆動量が少ない場合、例えば当該逆転の駆動量が第1所定量より小さい場合、メディアトレイ71の第2向き6への搬送量は少なく、メディアトレイ71の進行向き側に存在する障害物への衝突の可能性が低い。一方、当該逆転の駆動量が多い場合、例えば当該逆転の駆動量が第1所定量以上の場合、メディアトレイ71の第2向き6への搬送量は多く、障害物に衝突する可能性が高い。変形例1によれば、搬送用モータ102は、当該逆転の駆動量が第1所定量以上の場合、つまりメディアトレイ71の障害物への衝突の可能性が高い場合にのみ、正転される。つまり、搬送用モータ102の正転での駆動が、少なく抑えられる。以上より、クリーニングの中断の発生を少なくすることができる。
【0156】
また、変形例1においては、搬送用モータ102が正転で駆動された場合、当該正転は駆動伝達機構によってポンプ124に伝達される。これにより、ポンプ124が駆動される。キャップ46が第1姿勢のときにポンプ124が駆動されると、インクは、記録ヘッド38からキャップ46を介して吸引される。これにより、インクが無駄に消費されてしまう。そこで、変形例1によれば、制御部130は、キャップ46が第2姿勢であることを条件として、搬送用モータ102を正転させる。これにより、ポンプ124が駆動されても、キャップ46が第2姿勢であるために、インクはポンプ124に吸引されない。よって、インクの無駄な消費を防止することができる。
【0157】
[実施形態の変形例2]
以下、図11のフローチャートに基づいて、変形例2におけるメディアトレイ71の排出制御の処理手順が説明される。
【0158】
制御部130は、図11のフローチャートにおけるステップSC8、SC11、SC14、SC18で説明するように、トレイガイド76が第2位置でないことが姿勢検出センサ77によって検知された状態で、クリーニングの実行順序における搬送用モータ102の逆転での駆動量によって、上記実行順序における搬送用モータ102の正転での駆動量の合計と上記実行順序における搬送用モータ102の逆転での駆動量の合計との差分が第1所定量以上であることを条件として、搬送用モータ102を正転で駆動させてもよい。
【0159】
なお、図11のフローチャートの説明において、図9及び図10のフローチャートと同様の処理である部分は、その詳細な説明が省略される。
【0160】
図11のステップSC1〜SC7の処理は、図10のステップSB1〜SB7の処理と同様である。また、図11のステップSC12、SC13の処理は、図10のステップSB12、SB13の処理と同様である。また、図11のステップSC15〜SC17の処理は、図9のステップSB14〜SB16の処理と同様である。また、図11のステップSC19〜SC21の処理は、図9のステップSB17〜SB19の処理と同様である。また、図11のステップSC22の処理は、図9のステップSB10の処理と同様である。
【0161】
ステップSC7において、トレイガイド76が第2位置であると判断された場合(SC7:No)、クリーニングが続行される(SC22)。一方、ステップSC7において、トレイガイド76が第2位置でないと判断された場合(SC7:Yes)、制御部130は、クリーニングの実行順序に従って次の動作が実行される場合の搬送用モータ102の向きを判断する(SC8)。つまり、次の動作において、搬送用モータ102が逆転されるのか否かが判断される。
【0162】
搬送用モータ102が逆転されない場合(SC8:No)、クリーニングが続行される(SC22)。一方、搬送用モータ102が逆転される場合(SC8:Yes)、制御部130は、当該逆転の駆動量と累積駆動量との合計が第1所定量以上であるか否かを判断する(SC11)。
【0163】
ここで、第1所定量は、変形例1の場合と同様である。また、累積駆動量は、クリーニングの実行順序の各々における搬送用モータ102の駆動量(例えば、正転はプラスの値で、逆転はマイナスの値とされる。)を累積して加算した合計である。換言すると、累積駆動量は、クリーニングの実行順序における搬送用モータ102の正転での駆動量の合計と上記実行順序における搬送用モータ102の逆転での駆動量の合計との差分である。なお、累積駆動量は、ステップSC18においてリセットされるまで加算される。
【0164】
当該逆転の駆動量と累積駆動量との合計が第1所定量未満である場合(SC11:No)、制御部130は、搬送用モータ102を正転させなくてもメディアトレイ71が装置内において障害物に衝突するおそれがないと判断する。よって、制御部130は、累積駆動量に当該逆転の駆動量を加算して新たな累積駆動量とした上で(SC14)、クリーニングを続行する(SC22)。
【0165】
一方、当該逆転の駆動量と累積駆動量との合計が第1所定量以上である場合(SC11:Yes)、制御部130は、ステップSC12以降の処理を実行する。そして、ステップSC18において、累積駆動量は零にリセットされる。
【0166】
ステップSC7〜SC22の処理が、クリーニングにおける全ての処理が実行されるまで繰り返される(SC23)。そして、第12の処理まで実行されると、クリーニングは終了する(SC24)。
【0167】
変形例2によっても、変形例1と同様に、搬送用モータ102は、メディアトレイ71の障害物への衝突の可能性が高い場合にのみ、正転で駆動される。つまり、搬送用モータ102の正転での駆動が、少なく抑えられる。以上より、クリーニングの中断の発生を少なくすることができる。
【0168】
[実施形態の変形例3]
以下、図12及び図13のフローチャートに基づいて、変形例3におけるメディアトレイ71の排出制御の処理手順が説明される。
【0169】
制御部130は、図12のフローチャートにおけるステップSD7、SD8で説明するように、クリーニングが実行されている状態で、トレイガイド76が第2位置でないことが姿勢検出センサ77によって検知されたこと、クリーニングの実行順序における搬送用モータ102の逆転での駆動量が後述する第2所定量(本発明の第2所定量に相当)以上であることを条件として、給紙用モータ101を制御して、第1ローラ対58のピンチローラ61を当接姿勢から離間姿勢に姿勢変化させてもよい。
【0170】
また、制御部130は、図13のフローチャートにおけるステップSE3〜SE6で説明するように、メディアトレイ71がシート検知部110によって検知された状態で、クリーニングの実行順序における搬送用モータ102の逆転での駆動量が後述する第3所定量(本発明の第3所定量に相当)以上であることを条件として、搬送用モータ102を正転で駆動させてもよい。
【0171】
また、制御部130は、図13のフローチャートにおけるステップSE8、SE9で説明するように、メディアトレイ71がシート検知部110によって検知された状態で、クリーニングの実行順序における搬送用モータ102の正転での駆動量が、後述する第4所定量(本発明の第4所定量に相当)以下であることを条件として、クリーニングの実行順序における搬送用モータ102の正転での駆動量を第4所定量としてもよい。
【0172】
なお、図12及び図13のフローチャートの説明において、図9、図10、及び図11のフローチャートと同様の処理である部分は、その詳細な説明が省略される。
【0173】
図12のステップSD1〜SD3の処理は、図10のステップSB1、SB3、SB4の処理と同様である。また、図13のステップSE4〜SE6の処理は、図10のステップSB12〜SB14の処理と同様である。
【0174】
変形例3においては、ステップSD1において、クリーニングが開始されると、第1ローラ対58のピンチローラ61が当接姿勢から離間姿勢へ姿勢変化される場合がある。以下に詳述する。上述したように、記録メディア69に画像が記録される場合、メディアトレイ71が第1位置のトレイガイド76にセットされた状態で、操作パネル18が操作されて記録メディア69への画像記録が指示されると、給紙用モータ101が駆動されて、ピンチローラ61が当接姿勢から離間姿勢へ姿勢変化される。一方、クリーニングが実行される場合、通常は、トレイガイド76が第1位置にされることはない。しかし、操作パネル18が操作されてクリーニングの実行が指示されたときに、トレイガイド76が第1位置であると、給紙用モータ101が駆動されて、ピンチローラ61が当接姿勢から離間姿勢へ姿勢変化される。
【0175】
つまり、ステップSD1におけるクリーニングの開始時点において、トレイガイド76が第2位置でない場合、ピンチローラ61が当接姿勢から離間姿勢へ姿勢変化される。一方、ステップSD1におけるクリーニングの開始時点において、トレイガイド76が第2位置である場合、ピンチローラ61は当接姿勢を維持し、姿勢変化されない。
【0176】
ステップSD1〜SD3が実行された後、ステップSD4において、トレイガイドが第2位置であると判断された場合(SD4:No)、クリーニングが続行される(SD10)。
【0177】
一方、ステップSD4において、トレイガイド76が第2位置でないと判断された場合(SD4:Yes)、制御部130は、ピンチローラ61の姿勢が当接姿勢または離間姿勢のいずれであるかを判断する(SD5)。なお、ピンチローラ61の近傍に、ピンチローラ61の姿勢を検知するセンサを設けておくことにより、制御部130は、当該センサからの入力信号に基づいて、当該判断を行うことができる。また、制御部130は、ピンチローラ61の姿勢変化のために給紙用モータ101を駆動した際に、ピンチローラ61の現在の姿勢についての情報をRAM133に記憶しておき、記憶した当該情報によって当該判断を行うこともできる。
【0178】
ピンチローラ61が離間姿勢であると判断された場合(SD5:No)、後述するステップSE1(図13参照)以降の処理が実行される。一方、ピンチローラ61が当接姿勢であると判断された場合(SD5:Yes)、制御部130は、クリーニングの実行順序に従って次の動作が実行される場合の搬送用モータ102の向きを判断する(SD6)。つまり、次の動作において、搬送用モータ102が逆転されるのか否かが判断される。
【0179】
搬送用モータ102が逆転されないと判断された場合(SD6:No)、クリーニングが続行される(SD10)。一方、搬送用モータ102が逆転されると判断された場合(SD6:Yes)、制御部130は、ロータリーエンコーダ122の光センサからのパルス信号に基づいて、当該逆転の駆動量が第2所定量以上であるか否かを判断する(SD7)。
【0180】
ここで、第2所定量は、メディアトレイ71を、図2に示される区間Aだけ第2向き6に搬送させるために必要な搬送用モータ102の駆動量である。換言すると、第2所定量は、メディアトレイ71を、第2ローラ対59から第1ローラ対58まで搬送させるために必要な搬送用モータ102の駆動量である。
【0181】
当該逆転の駆動量が第2所定量未満である場合(SD7:No)、クリーニングが続行される(SD10)。一方、当該逆転の駆動量が第2所定量以上である場合(SD7:Yes)、制御部130は、給紙用モータ101を駆動させて、ピンチローラ61を当接姿勢から離間姿勢へ姿勢変化させる(SD8)。これにより、搬送用モータ102の逆転によって第2向き6に搬送されるメディアトレイ71は、第1ローラ対58に衝突しない。その結果、メディアトレイ71は、第1ローラ対58よりも第1向き5の上流側に搬送されることが可能となる。ステップSD8の後、制御部130は、ポート切替機構121の切替部材92を駆動して、ポート切替機構121を原点位置に移動させる(SD9)。その後、クリーニングが続行される(SD10)。
【0182】
ステップSD5において、ピンチローラ61が離間姿勢であると判断された場合(SD5:No)、図13に示されるように、制御部130は、光センサ111からの入力信号に基づいて、シート検知部110によってメディアトレイ71が検知されたか否かを判断する(SE1)。
【0183】
シート検知部110によってメディアトレイ71が検知されていない場合(SE1:No)、クリーニングが続行される(SD10、図12参照)。一方、シート検知部110によってメディアトレイ71が検知されている場合(SE1:Yes)、制御部130は、クリーニングの実行順序に従って次の動作が実行される場合の搬送用モータ102の向きを判断する(SE2、SE7)。つまり、次の動作において、搬送用モータ102が正転されるのか、逆転されるのか、或いは搬送用モータ102が駆動されない動作(例えばキャップ46の姿勢変化)が実行されるのかが判断される。
【0184】
搬送用モータ102が逆転されない場合(SE2:No)、次の動作において搬送用モータ102が正転されるのか、或いは搬送用モータ102が駆動されない動作が実行されるのかが判断される(SE7)。搬送用モータ102が正転されない場合(SE7:No)、クリーニングが続行される(SD10、図12参照)。搬送用モータ102が正転される場合(SE7:Yes)、制御部130は、ロータリーエンコーダ122の光センサからのパルス信号に基づいて、当該正転の駆動量が第4所定量(本発明の第4所定量に相当)以上であるか否かを判断する(SE8)。
【0185】
ここで、第4所定量は、メディアトレイ71をシート検知部110による検知位置から第1向き5に搬送して排出させるために必要な搬送用モータ102の正転での駆動量である。例えば、第4所定量は、当該検知位置から、第2ローラ59よりも第1向き5の下流側まで、メディアトレイ71を搬送するために必要な搬送用モータ102の正転での駆動量である。具体的には、第4所定量は、メディアトレイ71を、少なくとも図2に示される区間Cだけ第1向き5に搬送させるために必要な搬送用モータ102の駆動量である。
【0186】
当該正転の駆動量が第4所定量より大きい場合(SE8:No)、クリーニングが続行される(SD10、図12参照)。一方、当該正転の駆動量が第4所定量以下の場合(SE8:Yes)、制御部130は、搬送用モータ102を、当該正転の駆動量ではなく第4所定量だけ駆動させる(SE9)。つまり、搬送用モータ102の駆動量が、当該正転の駆動量から第4所定量に変更される。その後、クリーニングが続行される(SD10、図12参照)。
【0187】
ステップSE2において、搬送用モータ102が逆転される場合(SE2:Yes)、制御部130は、ロータリーエンコーダ122の光センサからのパルス信号に基づいて、当該逆転の駆動量が第3所定量(本発明の第3所定量に相当)以上であるか否かを判断する(SE3)。
【0188】
ここで、第3所定量は、メディアトレイ71を、シート検知部110による検知位置からメディアトレイ71の先端が衝突し得る障害物まで第2向き6に搬送させるために必要な搬送用モータ102の駆動量である。障害物は、例えば、メディアトレイ71が衝突し得る位置に配置されている複合機10のフレームや、複合機10に後側開口87が形成されていない場合における複合機10の後壁16(図8参照)や、第2経路65Bが形成されていない場合における外側ガイド部材22(図2に破線で示されている。)や、複合機10が設置されている室の壁(詳細には複合機10の背面に複合機10と対向して存在する壁)などである。
【0189】
図2に示されるように、障害物が複合機10の後壁16或いは室の壁の場合、第3所定量は、メディアトレイ71を、区間D1だけ第2向き6に搬送させるために必要な搬送用モータ102の駆動量である。障害物が外側ガイド部材22の場合、第3所定量は、メディアトレイ71を、区間D2だけ第2向き6に搬送させるために必要な搬送用モータ102の駆動量である。
【0190】
当該逆転の駆動量が第3所定量未満の場合(SE3:No)、クリーニングが続行される(SD10、図12参照)。一方、当該逆転の駆動量が第3所定量以上の場合(SE3:Yes)、ステップSE4〜SE6が実行された後、クリーニングが続行される(SD10、図12参照)。
【0191】
ステップSD4〜SD10、SE1〜SE9の処理が、クリーニングにおける全ての処理が実行されるまで繰り返される(SD11)。そして、制御部130は、第12の処理まで実行された時点において、ピンチローラ61が離間姿勢である場合(SD12:Yes)、ピンチローラ61を当接姿勢に姿勢変化させてから(SD13)、クリーニングを終了する(SD14)。一方、制御部130は、ピンチローラ61が当接姿勢である場合(SD12:No)、ピンチローラ61の姿勢を当接姿勢に維持したまま、クリーニングを終了する(SD14)。
【0192】
なお、上述の説明では、ステップSE1において、シート検知部110によってメディアトレイ71が検知された場合(SE1:Yes)、ステップSE2〜SE5が実行されてからステップSE6が実行された。しかし、ステップSE2〜SE5が実行されずに、直ちにステップSE6が実行されてもよい。つまり、制御部130は、クリーニングが実行されている状態で、メディアトレイ71がシート検知部110によって検知されたことを条件として、搬送用モータ102を正転で駆動させてもよい。
【0193】
クリーニングが実行されている状態で、トレイガイド76が第2位置でないことが姿勢検出センサ77によって検知された場合、メディアトレイ71がトレイガイド76によって直線路65へ進入可能に支持されているおそれがある。この場合に、メディアトレイ71が第2ローラ対59によって第2向き6に搬送されると、メディアトレイ71は複合機10の内部へ搬送されてしまう。メディアトレイ71の第2ローラ対59による搬送量が多い場合、例えば搬送用モータ102の駆動量が第2所定量以上である場合、メディアトレイ71は、相互に当接した第1搬送ローラ60及びピンチローラ61で構成される第1ローラ対58に衝突するおそれがある。そこで、変形例3によれば、上述の場合に、制御部130は、給紙用モータ101を制御して、ピンチローラ61を第1搬送ローラ60から離間させる。これにより、メディアトレイ71が第1ローラ対58に衝突することが回避可能である。
【0194】
また、シート検知部110よりも第2向き6側に障害物が存在する場合、第2向き6に搬送されているメディアトレイ71が、シート検知部110によって検知された後、更に第2向き6に搬送されると、メディアトレイ71は障害物に衝突するおそれがある。そこで、変形例3によれば、メディアトレイ71がシート検知部110によって検知された場合に、制御部130が搬送用モータ102を正転させる。これにより、メディアトレイ71は、第1ローラ対58及び第2ローラ対59によって第1向き5に搬送される。よって、メディアトレイ71が、第1ローラ対58よりも奥側に引き込まれることがない。以上より、メディアトレイ71が障害物と衝突することが、防止可能である。
【0195】
また、変形例3においては、変形例1と同様に、クリーニング中における制御部130による搬送用モータ102の正転での駆動が、以下に詳述するように、少なく抑えられる。メディアトレイ71がシート検知部110によって検知された状態で、搬送用モータ102が逆転された場合、メディアトレイ71は第2向き6に搬送されてしまう。しかし、当該逆転の駆動量が少ない場合、例えば当該逆転の駆動量が第3所定量より小さい場合、メディアトレイ71の第2向き6への搬送量は少なく、メディアトレイ71の進行向き側に存在する障害物への衝突の可能性が低い。一方、当該逆転の駆動量が多い場合、例えば当該逆転の駆動量が第3所定量以上の場合、メディアトレイ71の第2向き6への搬送量は多く、障害物に衝突する可能性が高い。変形例3によれば、搬送用モータ102は、当該逆転の駆動量が第3所定量以上の場合、つまりメディアトレイ71の障害物への衝突の可能性が高い場合にのみ、正転で駆動される。つまり、クリーニングの中断の原因である搬送用モータ102の正転での駆動が、少なく抑えられる。
【0196】
また、トレイがシート検知部110によって検知された状態で、搬送用モータ102が正転された場合、メディアトレイ71は第1向き5に搬送される。しかし、当該正転の駆動量が少ない場合、例えば当該正転の駆動量が第4所定量以下である場合、メディアトレイ71の第1向き5への搬送量は少ない。すると、メディアトレイ71が排出位置まで到達しないまま、当該正転が停止してしまうおそれがある。そして、次に、搬送用モータ102が逆転された場合、メディアトレイ71は第2向き6に搬送されてしまう。そこで、変形例3によれば、制御部130は、搬送用モータ102の正転での駆動量を第4所定量とする。これにより、メディアトレイ71を確実に排出することができる。
【0197】
[実施形態の変形例4]
図9〜図12においては、クリーニングの実行順序のうち、第1の処理から第6の処理の間は、トレイガイド76が第2位置であるか否かの判断が実行されていない。しかし、第1の処理から第6の処理の間においても、当該判断が実行されてもよい。
【0198】
例えば、図9においては、第1の処理から第7の処理の間に、トレイガイド76が第2位置でないと判断されると、ステップSA5以降の処理が実行される。また、図10においては、第1の処理から第6の処理の間に、トレイガイド76が第2位置でないと判断されると、ステップSB5以降の処理が実行される。また、図11においては、第1の処理から第6の処理の間に、トレイガイド76が第2位置でないと判断されると、ステップSC5以降の処理が実行される。また、図12においては、第1の処理から第6の処理の間に、トレイガイド76が第2位置でないと判断されると、ステップSD5以降の処理が実行される。
【0199】
また、図9〜図12においては、トレイガイド76が第2位置であるか否かの判断は、所定のタイミングでのみ実行されていた。しかし、制御部130は、姿勢検出センサ77からの入力信号を常時参照してもよい。これにより、当該判断は、上記所定のタイミング以外のタイミングでも実行される。
【0200】
例えば、図9においては、第1の処理の実行開始から第8の処理の実行開始までの間に、トレイガイド76が第2位置でないと判断されると、ステップSA5以降の処理が実行される。また、第8の処理の実行開始から第9の処理の実行開始までの間に、トレイガイド76が第2位置でないと判断されると、ステップSA12以降の処理が実行される。また、第9の処理の実行開始から第11の処理の実行開始までの間に、トレイガイド76が第2位置でないと判断されると、ステップSA16以降の処理が実行される。また、第11の処理の実行開始以降に、トレイガイド76が第2位置でないと判断されると、ステップSA12以降の処理が実行される。
【0201】
また、例えば、図10においては、第1の処理の実行開始から第7の処理の実行開始までの間に、トレイガイド76が第2位置でないと判断されると、ステップSB5以降の処理が実行される。また、第7の実行開始以降に、トレイガイド76が第2位置でないと判断されると、ステップSB8以降の処理が実行される。
【0202】
また、例えば、図11においては、第1の処理の実行開始から第7の処理の実行開始までの間に、トレイガイド76が第2位置でないと判断されると、ステップSC5以降の処理が実行される。また、第7の実行開始以降に、トレイガイド76が第2位置でないと判断されると、ステップSC8以降の処理が実行される。
【0203】
また、例えば、図12においては、クリーニングの実行開始から実行終了までの間に、トレイガイド76が第2位置でないと判断されると、ステップSD5以降の処理が実行される。
【符号の説明】
【0204】
10・・・複合機
24・・・記録部
46・・・キャップ
56・・・ワイパーブレード
58・・・第1ローラ対
59・・・第2ローラ対
65・・・直線路
71・・・メディアトレイ
76・・・トレイガイド
77・・・姿勢検出センサ
101・・・給紙用モータ
102・・・搬送用モータ
104・・・位置検出センサ
110・・・シート検知部
121・・・ポート切替機構
122・・・ロータリーエンコーダ
124・・・ポンプ
130・・・制御部
133・・・RAM
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドから被記録媒体にインク滴を吐出することによって画像記録を行うインクジェット記録装置に関し、より詳細には吸引ポンプによって記録ヘッドからインクを吸引するパージ機構を備えたインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、入力信号に基づいてインク滴を吐出して被記録媒体に画像記録を行う画像記録装置が知られている。このような画像記録装置は、一般に「インクジェットプリンタ」と称される。インクジェットプリンタにおける画像記録は、記録ヘッドのノズルからインク滴が選択的に吐出されることによって実現される。
【0003】
記録ヘッドにおいて、ノズルへ通ずるインク流路に気泡が生じたり異物が詰まったりすることが起こり得る。これらは、ノズルからのインク滴の吐出に対して障害となり得る。このような障害を防止又は回復するために、記録ヘッドのノズルから気泡や異物を除去する手法が知られている。このような手法は、一般に「パージ」と称される。パージはメンテナンスユニットによって実現される。メンテナンスユニットは、記録ヘッドのノズルを覆うキャップや記録ヘッドのノズルを覆ったキャップ内に吸引圧を発生させるポンプなどで構成される。キャップやポンプの駆動源としてモータが用いられる。インクジェットプリンタでは、パージの他に、記録ヘッド内の気泡や混色インクの除去などを行うフラッシングや、ノズルに付着したインクを拭い取るワイプも行われる。これらの処理は「クリーニング」と総称される。
【0004】
また、モータから各駆動部への駆動伝達を切り換える動力伝達切換手段を有する画像記録装置が知られている(特許文献1参照)。この動力伝達切換手段は、キャリッジの移動位置に応じて、各駆動部へ択一的に動力を伝達する。
【0005】
また、インクジェットプリンタを含む画像記録装置において画像記録が行われる被記録媒体には、記録用紙などの他、CDやDVDなどの剛性の高い被記録媒体も提案されている。一般に、CDやDVDなどの剛性の高い被記録媒体に画像記録が行われる際、当該被記録媒体は専用のトレイに載置される。トレイは、画像記録装置に設けられた挿入口から挿入され、画像記録装置内を搬送される。特許文献2には、このような画像記録装置の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−90761号公報
【特許文献2】特開2005−247584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年のインクジェットプリンタの更なる小型化の要請に鑑みると、上述の動力伝達切換手段の構造は単純化されることが望ましい。例えば、以下のような構造が考えられる。
【0008】
トレイや記録用紙を搬送させるローラ対と、メンテナンスユニットとは、共通の駆動源で駆動される。ローラ対は、駆動ローラ及び従動ローラで構成されている。駆動源の駆動力は、動力伝達切換手段によって、駆動ローラ及びメンテナンスユニットへ伝達される。
【0009】
ローラ対は、記録用紙の搬送時において記録用紙を挟持可能に相互に当接し、トレイ搬送時においてトレイを挟持可能に相互に離間するように構成されている。駆動ローラは、キャリッジの移動位置に関わらず駆動伝達され、正転及び逆転可能である。
【0010】
メンテナンスユニットは、記録ヘッドを搭載したキャリッジがメンテナンスユニットと対向する位置(パージを行うときの位置)にあるときに駆動伝達され、画像記録を行う位置にあるときに駆動伝達されない。メンテナンスユニットにおいては、正転の駆動が伝達されたとき、ポンプの駆動が実行され、逆転の駆動が伝達されたとき、キャップとポンプの連通、遮断が切り換えられる。
【0011】
インクジェットプリンタの動力伝達切換手段が上述のような構造であるとき、クリーニングの処理過程において、正転及び逆転の駆動がメンテナンスユニットへ伝達される。また、駆動ローラは、クリーニングの処理過程において、駆動伝達されて正転及び逆転可能である。
【0012】
すると、以下の問題が生じる。クリーニングの実行中に、CDやDVDなどの被記録媒体が載置されたトレイが、インクジェットプリンタに設けられた挿入口から挿入された場合、挿入されたトレイは、クリーニングの実行中にもかかわらず、ローラ対によってインクジェットプリンタの内部へ搬送されてしまう。当該搬送は想定外の搬送であるために、当該トレイは必要以上に搬送されるおそれがある。その結果、当該トレイは、インクジェットプリンタの内部の壁面などの障害物に衝突してしまうおそれがある。
【0013】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、記録ヘッドのクリーニング動作中に、被記録媒体が載置されたトレイが装置内へ挿入されても、当該トレイの障害物への衝突を防止することができるインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1) 本発明のインクジェット記録装置は、被記録媒体を載置可能なトレイと、上記トレイが通過する搬送路と、上記トレイを上記搬送路へ進入可能に支持する第1位置、及び上記搬送路と交差する方向に対して上記第1位置と異なる位置である第2位置に移動可能なトレイガイドと、上記トレイガイドの位置を検知する第1検知部と、上記搬送路に設けられており、ノズルが形成されたノズル面を有する記録ヘッドが搭載されており、上記ノズルからインク滴を吐出することによって被記録媒体に画像を記録する記録部と、上記ノズル面を覆う第1姿勢及び上記ノズル面から離間した第2姿勢に姿勢変化可能なキャップと、上記キャップに連通された状態で上記キャップ内からインクを吸引する吸引機構と、上記キャップ及び上記吸引機構の連通の有無を切り替える切替機構と、上記搬送路において上記記録部及び上記トレイガイドの間に設けられており、上記トレイを、上記搬送路に沿って、上記記録部から上記トレイガイドの第1向き、及び上記第1向きと逆向きの第2向きに搬送する第1搬送部と、正転または逆転のうち一方の第1駆動及び他方の第2駆動が可能な第1駆動源と、上記第1駆動源の上記第1駆動を、上記トレイを上記第1向きに搬送する駆動として上記第1搬送部に伝達するとともに上記吸引機構に伝達し、上記第1駆動源の上記第2駆動を、上記トレイを上記第2向きに搬送する駆動として上記第1搬送部に伝達するとともに上記切替機構に伝達する駆動伝達部と、上記記録部及び上記キャップを、予め設定された所定順序に従って動作させ、上記第1駆動源を、上記所定順序に従って上記第1駆動及び上記第2駆動で駆動させることによって、上記吸引機構及び上記切替機構を制御して、上記記録ヘッドのクリーニングの実行を制御する制御部と、を備えている。上記制御部は、上記クリーニングが実行されている状態で、上記トレイガイドが上記第2位置でないことが上記第1検知部によって検知されたことを条件として、上記第1駆動源を上記第1駆動で駆動させる。
【0015】
クリーニングが実行されている状態で、トレイガイドが第2位置でないことが第1検知部によって検知された場合、トレイがトレイガイドによって搬送路へ進入可能に支持されているおそれがある。この場合に、トレイが第1搬送部によって第2向きに搬送されると、トレイはインクジェット記録装置の内部へ搬送されてしまう。そこで、本構成によれば、上述の場合に、制御部が第1駆動源を第1駆動で駆動させる。これにより、トレイがトレイガイドによって支持されていたとしても、当該トレイは、第1搬送部によって第1向きに搬送される。よって、トレイが第1搬送部よりも奥側に引き込まれることが、防止可能である。
【0016】
(2) 本発明のインクジェット記録装置は、上記第1駆動源の駆動量を検知する第2検知部を更に備えている。上記制御部は、上記トレイガイドが上記第2位置でないことが上記第1検知部によって検知された状態で、上記所定順序における上記第1駆動源の上記第2駆動での駆動量が第1所定量以上であることを条件として、上記第1駆動源を上記第1駆動で駆動させる。
【0017】
上述のように、制御部がクリーニング中に第1駆動源を第1駆動で駆動させた場合、クリーニングは中断される。しかし、クリーニングが中断されることは好ましくない。クリーニングが中断されている間、記録ヘッドのノズル面やキャップにインクが残留した状態が維持されることにより、インクの混色や、装置内の他の部分への残留インクの付着による汚れが発生するおそれがあるからである。また、クリーニングが完了するまでの時間が長くなってしまうからである。
【0018】
そこで、本構成においては、クリーニング中における制御部による第1駆動源の第1駆動での駆動が、以下に詳述するように、少なく抑えられる。トレイが第1位置のトレイガイドに支持されている状態で、第1駆動源が第2駆動された場合、トレイは第2向きに搬送されて、インクジェット記録装置の内部へ搬送されてしまう。しかし、当該第2駆動の駆動量が少ない場合、例えば当該第2駆動の駆動量が第1所定量より小さい場合、トレイの第2向きへの搬送量は少なく、トレイの進行向き側に存在する障害物への衝突の可能性が低い。一方、当該第2駆動の駆動量が多い場合、例えば当該第2駆動の駆動量が第1所定量以上の場合、トレイの第2向きへの搬送量は多く、障害物に衝突する可能性が高い。本構成によれば、第1駆動源は、当該第2駆動の駆動量が第1所定量以上の場合、つまりトレイの障害物への衝突の可能性が高い場合にのみ、第1駆動で駆動される。つまり、第1駆動源の第1駆動での駆動が、少なく抑えられる。以上より、クリーニングの中断の発生を少なくすることができる。
【0019】
(3) 本発明のインクジェット記録装置は、上記第1駆動源の駆動量を検知する第2検知部を更に備えている。上記制御部は、上記トレイガイドが上記第2位置でないことが上記第1検知部によって検知された状態での、上記所定順序における上記第1駆動源の上記第2駆動での駆動によって、上記所定順序における上記第1駆動源の上記第1駆動での駆動量の合計と上記所定順序における上記第1駆動源の上記第2駆動での駆動量の合計との差分が第1所定量以上であることを条件として、上記第1駆動源を上記第1駆動で駆動させる。
【0020】
本構成によっても、上述の(2)と同様に、第1駆動源は、トレイの障害物への衝突の可能性が高い場合にのみ、第1駆動で駆動される。つまり、第1駆動源の第1駆動での駆動が、少なく抑えられる。以上より、クリーニングの中断の発生を少なくすることができる。
【0021】
(4) 上記第1所定量は、上記トレイを、上記第1搬送部から上記トレイの先端が衝突し得る障害物まで上記第2向きに搬送させるために必要な上記第1駆動源の駆動量である。
【0022】
本構成によれば、トレイが障害物に衝突するか否かが、第1所定量を境界として明確に区別できる。
【0023】
(5) 本発明のインクジェット記録装置は、被記録媒体を載置可能なトレイと、上記トレイが通過する搬送路と、上記トレイを上記搬送路へ進入可能に支持する第1位置、及び上記搬送路と交差する方向に対して上記第1位置と異なる位置である第2位置に移動可能なトレイガイドと、上記トレイガイドの位置を検知する第1検知部と、上記搬送路に設けられており、ノズルが形成されたノズル面を有する記録ヘッドが搭載されており、上記ノズルからインク滴を吐出することによって被記録媒体に画像を記録する記録部と、上記ノズル面を覆う第1姿勢及び上記ノズル面から離間した第2姿勢に姿勢変化可能なキャップと、上記キャップに連通された状態で上記キャップ内からインクを吸引する吸引機構と、上記キャップ及び上記吸引機構の連通の有無を切り替える切替機構と、上記搬送路において上記記録部及び上記トレイガイドの間に設けられており、上記トレイを、上記搬送路に沿って、上記記録部から上記トレイガイドの第1向き、及び上記第1向きと逆向きの第2向きに搬送する第1搬送部と、上記搬送路において上記記録部に対して上記トレイガイドと反対側に設けられた第1ローラと、上記第1ローラに当接した当接姿勢及び上記第1ローラから離間した離間姿勢とに姿勢変化可能な第2ローラとで構成されており、上記トレイを上記搬送路に沿って上記第1向き及び上記第2向きに搬送する第2搬送部と、正転または逆転のうち一方の第1駆動及び他方の第2駆動が可能な第1駆動源と、上記第2ローラを上記当接姿勢と上記離間姿勢とに姿勢変化させる第2駆動源と、上記第1駆動源の上記第1駆動を、上記トレイを上記第1向きに搬送する駆動として上記第1搬送部及び上記第2搬送部に伝達するとともに上記吸引機構に伝達し、上記第1駆動源の上記第2駆動を、上記トレイを上記第2向きに搬送する駆動として上記第1搬送部及び上記第2搬送部に伝達するとともに上記切替機構に伝達する駆動伝達部と、上記第1駆動源の駆動量を検知する第2検知部と、上記記録部及び上記キャップを、予め設定された所定順序に従って動作させ、上記第1駆動源を、上記所定順序に従って上記第1駆動及び上記第2駆動で駆動させることによって、上記吸引機構及び上記切替機構を制御して、上記記録ヘッドのクリーニングの実行を制御する制御部と、を備えている。上記制御部は、上記クリーニングが実行されている状態で、上記トレイガイドが上記第2位置でないことが上記第1検知部によって検知されたこと、上記所定順序における上記第1駆動源の上記第2駆動での駆動量が第2所定量以上であることを条件として、上記第2駆動源を制御して、上記第2搬送部の上記第2ローラを上記当接姿勢から上記離間姿勢に姿勢変化させる。
【0024】
クリーニングが実行されている状態で、トレイガイドが第2位置でないことが第1検知部によって検知された場合、トレイがトレイガイドによって搬送路へ進入可能に支持されているおそれがある。この場合に、トレイが第1搬送部によって第2向きに搬送されると、トレイはインクジェット記録装置の内部へ搬送されてしまう。トレイの第1搬送部による搬送量が多い場合、例えば第1駆動源の駆動量が第2所定量以上である場合、トレイは、相互に当接した第1ローラ及び第2ローラで構成される第2搬送部に衝突するおそれがある。そこで、本構成によれば、上述の場合に、制御部は、第2駆動源を制御して、第2ローラを第1ローラから離間させる。これにより、トレイが第2搬送部に衝突することが回避可能である。
【0025】
(6) 上記第2所定量は、上記トレイを、上記第1搬送部から上記第2搬送部まで搬送させるために必要な上記第1駆動源の駆動量である。
【0026】
本構成によれば、トレイが第2搬送部に衝突するか否かが、第2所定量を境界として明確に区別できる。
【0027】
(7) 本発明のインクジェット記録装置は、上記搬送路において上記第2搬送部に対して上記記録部と反対側に設けられており、上記搬送路を搬送される上記トレイを検知する第3検知部を更に備えている。上記制御部は、上記クリーニングが実行されている状態で、上記トレイが上記第3検知部によって検知されたことを条件として、上記第1駆動源を上記第1駆動で駆動させる。
【0028】
第3検知部よりも第2向き側に障害物が存在する場合、第2向きに搬送されているトレイが、第3検知部によって検知された後、更に第2向きに搬送されると、トレイは障害物に衝突するおそれがある。そこで、本構成によれば、トレイが第3検知部によって検知された場合に、制御部が第1駆動源を第1駆動で駆動させる。これにより、当該トレイは、第1搬送部及び第2搬送部によって第1向きに搬送される。よって、トレイが、第2搬送部よりも奥側に引き込まれることがない。以上より、トレイが障害物と衝突することが、防止可能である。
【0029】
(8) 上記制御部は、上記トレイが上記第3検知部によって検知された状態で、上記所定順序における上記第1駆動源の上記第2駆動での駆動量が第3所定量以上であることを条件として、上記第1駆動源を上記第1駆動で駆動させる。
【0030】
本構成においては、上述の(2)と同様に、クリーニング中における制御部による第1駆動源の第1駆動での駆動が、以下に詳述するように、少なく抑えられる。トレイが第3検知部によって検知された状態で、第1駆動源が第2駆動された場合、トレイは第2向きに搬送されてしまう。しかし、当該第2駆動の駆動量が少ない場合、例えば当該第2駆動の駆動量が第3所定量より小さい場合、トレイの第2向きへの搬送量は少なく、トレイの進行向き側に存在する障害物への衝突の可能性が低い。一方、当該第2駆動の駆動量が多い場合、例えば当該第2駆動の駆動量が第3所定量以上の場合、トレイの第2向きへの搬送量は多く、障害物に衝突する可能性が高い。本構成によれば、第1駆動源は、当該第2駆動の駆動量が第3所定量以上の場合、つまりトレイの障害物への衝突の可能性が高い場合にのみ、第1駆動で駆動される。つまり、第1駆動源の第1駆動での駆動が、少なく抑えられる。以上より、クリーニングの中断の発生を少なくすることができる。
【0031】
(9) 上記第3所定量は、上記トレイを、上記第3検知部による検知位置から上記トレイの先端が衝突し得る障害物まで上記第2向きに搬送させるために必要な上記第1駆動源の駆動量である。
【0032】
本構成によれば、トレイが障害物に衝突するか否かが、第3所定量を境界として明確に区別できる。
【0033】
(10) 上記制御部は、上記トレイが上記第3検知部によって検知された状態で、上記所定順序における上記第1駆動源の上記第1駆動での駆動量が、上記トレイを上記第3検知部による検知位置から上記第1向きに搬送して排出させるために必要な第4所定量以下であることを条件として、上記所定順序における上記第1駆動源の上記第1駆動での駆動量を上記第4所定量とする。
【0034】
トレイが第3検知部によって検知された状態で、第1駆動源が第1駆動された場合、トレイは第1向き、つまりトレイが排出される向きに搬送される。しかし、当該第1駆動の駆動量が少ない場合、例えば当該第1駆動の駆動量が第4所定量以下である場合、トレイの第1向きへの搬送量は少ない。すると、トレイが排出位置まで到達しないまま、当該第1駆動が停止してしまうおそれがある。そして、次に、第1駆動源が第2駆動された場合、トレイは第2向きに搬送されてしまう。そこで、本構成によれば、制御部は、第1駆動源の第1駆動での駆動量を第4所定量とする。これにより、トレイを確実に排出することができる。
【0035】
(11) 本発明のインクジェット記録装置は、上記キャップの姿勢を検知する第4検知部を更に備えている。上記制御部は、上記キャップが上記第2姿勢であることが上記第4検知部によって検知されたことを更なる条件として、上記第1駆動源を上記第1駆動で駆動させる。
【0036】
第1駆動源が第1駆動で駆動された場合、当該第1駆動は駆動伝達部によって吸引機構に伝達される。これにより、吸引機構が駆動される。キャップが第1姿勢のときに吸引機構が駆動されると、インクは、記録ヘッドからキャップを介して吸引される。これにより、インクが無駄に消費されてしまう。そこで、本構成によれば、制御部は、キャップが第2姿勢であることを条件として、第1駆動源を第1駆動で駆動させる。これにより、キャップが第2姿勢のときに吸引機構が駆動されても、インクは、吸引機構に吸引されない。よって、本構成によれば、インクの無駄な消費を防止することができる。
【0037】
(12) 本発明のインクジェット記録装置は、上記クリーニングが実行されている状態で、上記トレイガイドが上記第2位置でないことが上記第1検知部によって検知された場合に、上記クリーニングの上記所定順序に従った動作のうち未実行の動作を記憶する記憶部を更に備えている。上記制御部は、上記第1駆動源を上記第1駆動で駆動させた後、上記トレイガイドが上記第2位置であることが上記第1検知部によって検知されたことを条件として、上記記憶部に記憶されている上記未実行の動作を実行する。
【0038】
本構成によれば、トレイがトレイガイドによって搬送路へ進入不可能な状態となってから、クリーニングの実行を再開することが可能である。
【0039】
(13) 本発明のインクジェット記録装置は、上記ノズル面に当接可能な第3姿勢、及び上記ノズル面から離間した第4姿勢に姿勢変化可能なワイプ部を更に備えている。上記記録部は、上記第1向きと交差し且つ上記ノズル面に沿った第3方向へ往復移動可能である。上記第3姿勢の上記ワイプ部は、上記記録部の移動によって、上記ノズル面のうち上記ノズルが形成された領域の全てと当接可能である。上記駆動伝達部は、上記第1駆動源の上記第2駆動を上記ワイプ部に伝達し、上記ワイプ部を上記第3姿勢及び上記第4姿勢に姿勢変化させる。
【0040】
本構成によれば、ワイプ部及びノズル面が当接している状態において、記録部が第3方向へ移動する。これにより、ノズル面に付着したインクを、ワイプ部によって拭い取ることができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明においては、クリーニングが実行されている状態で、トレイガイドが第2位置でないことが第1検知部によって検知された場合、制御部が第1駆動源を第1駆動で駆動させる。これにより、トレイがトレイガイドによって支持されていたとしても、当該トレイは第1搬送部によって第1向きに搬送されて装置外に排出される。よって、記録ヘッドのクリーニング動作中に、トレイが装置内へ挿入されても、当該トレイが障害物へ衝突することが防止可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、本発明の実施形態の一例である複合機10の外観斜視図である。
【図2】図2は、プリンタ部11の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
【図3】図3は、プリンタ部11の内部構造を示す部分平面図である。
【図4】図4は、メディアトレイ71の平面図である。
【図5】図5は、パージ機構44の断面図であり、(A)にはキャップ46がリフトアップされていない状態が示されており、(B)にはキャップ46がリフトアップされた状態が示されている。
【図6】図6は、ポート切替機構121の平面図であり、(A)には吸気ポート93が他のポート94〜98の何れとも連通されていない状態が示されており、(B)には吸気ポート93とBkポート95が連通されている状態が示されており、(C)には吸気ポート93が他のポート94〜98の何れとも連通されていない状態が示されており、(D)には吸気ポート93とCoポート96が連通されている状態が示されている。
【図7】図7は、制御部130の構成を示すブロック図である。
【図8】図8は、複合機10の外観斜視図であり、(A)にはメディアトレイ71が前側開口13から挿入されている状態が示されており、(B)にはメディアトレイ71が後側開口87から突出している状態が示されている。
【図9】図9は、メディアトレイ71の排出制御について説明するためのフローチャートである。
【図10】図10は、変形例1におけるメディアトレイ71の排出制御について説明するためのフローチャートである。
【図11】図11は、変形例2におけるメディアトレイ71の排出制御について説明するためのフローチャートである。
【図12】図12は、変形例3におけるメディアトレイ71の排出制御について説明するためのフローチャートである。
【図13】図13は、変形例3におけるメディアトレイ71の排出制御について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明では、ベクトルにおいて矢印を考慮して起点から終点に向かう進みが「向き」と表現され、ベクトルにおいて矢印を考慮せずに起点と終点とを結ぶ線上の往来が「方向」と表現される。また、以下の説明では、複合機10が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向7が定義され、前側開口13が設けられている側を手前側(正面)として前後方向8が定義され、複合機10を手前側(正面)から見て左右方向9が定義される。
【0044】
[複合機10]
図1に示されるように、本発明のインクジェット記録装置の一例である複合機10は、概ね薄型の直方体に形成されている。インクジェット記録方式のプリンタ部11が、複合機10の下部に設けられている。複合機10は、ファクシミリ機能及びプリント機能などの各種の機能を有している。なお、本実施形態において、複合機10はプリント機能として片面画像記録機能のみ有しているが、複合機10は両面画像記録機能を有していてもよい。
【0045】
プリンタ部11は筐体14を有する。上下方向7及び左右方向9に拡がる前壁17が、筐体14の前側に形成されている。前壁17に対向して配置された後壁16(図8(B)参照)が、筐体14の後側に形成されている。前側開口13が、前壁17の概ね中央部に形成されている。給紙トレイ20及び排紙トレイ21が、前側開口13から前後方向に挿抜可能である。所望のサイズの記録用紙が給紙トレイ20に載置される。
【0046】
図2に示されるように、プリンタ部11は、記録用紙を1枚ずつ分離して湾曲路66へ給送する給紙部15、及び記録用紙に画像を記録するインクジェット記録方式の記録部24(本発明の記録部の一例)などを備えている。プリンタ部11は、外部機器から受信した印刷データなどに基づいて、記録用紙に画像を記録する。また、複合機10は、記録用紙よりも厚みがあるCD−ROMやDVD−ROMなどの記録メディア69(本発明の被記録媒体の一例、図3参照)の盤面上に、記録部24によって画像を記録する機能を有する。記録メディア69は、後述するメディアトレイ71(本発明のトレイの一例)に載置される。そして、記録メディア69が載置されたメディアトレイ71は、プリンタ部11の内部を搬送される。当該機能については後述する。
【0047】
[給紙部15]
図2に示されるように、給紙部15は、給紙トレイ20の上側に設けられている。給紙部15は、給紙ローラ25、給紙アーム26、及び駆動伝達機構27を備えている。給紙ローラ25は、給紙アーム26の前端部で軸支されている。給紙アーム26は、軸28を中心として、矢印29の方向に回動する。これにより、給紙ローラ25は給紙トレイ20に接離可能である。給紙ローラ25は、複数のギヤが噛合された駆動伝達機構27によって、給紙用モータ101(図7参照)の駆動力が伝達されて回転する。給紙ローラ25は、給紙トレイ20上に積載された記録用紙を1枚ずつ分離して湾曲路66へ供給する。
【0048】
[湾曲路66及び直線路65]
図2に示されるように、湾曲路66及び直線路65(本発明の搬送路の一例)が、プリンタ部11の内部に形成されている。図2に一点鎖線で示されるように、湾曲路66は、給紙トレイ20の後側の端部から第1ローラ対58に亘って延設されており、記録用紙を案内可能な経路である。図2に二点鎖線及び破線で示されるように、直線路65は、前壁17の前側開口13における排紙トレイ21の上側から記録部24を経て後壁16の後側開口87に亘って延設されており、記録用紙及びメディアトレイ71を案内可能な経路である。
【0049】
湾曲路66は、給紙トレイ20の後側の端部から後方斜め上に延びながら、前方へUターンして第1ローラ対58に至る湾曲状の通路である。記録用紙は、湾曲路66を搬送方向(図2において一点鎖線で示される方向)に沿って、図2において一点鎖線に付された矢印の向きに湾曲されて案内される。湾曲路66は、第1ローラ対58において直線路65と連続している。これにより、記録用紙は、湾曲路66を介して直線路65(詳細には直線路65を構成する第1経路65A)に案内される。湾曲路66は、所定間隔を隔てて互いに対向する内側ガイド部材19及び外側ガイド部材22によって区画されている。
【0050】
直線路65は、前後方向8に延設された直線状の通路であり、第1経路65Aと第2経路65Bとに区分されている。第1経路65Aは、第1ローラ対58から前側開口13における排紙トレイ21の上側に亘って前後方向8に延設された直線状の通路である。第1経路65Aは、所定間隔を隔てて互いに対向する上側ガイド部材52と、プラテン42及びプラテン42を支持するプラテン支持部材53とによって区画されている。第2経路65Bは、第1ローラ対58から前方に向かって延設された第1経路65Aと逆向き、つまり後方に向かって後側開口87まで延設されている。つまり、第1経路65A及び第2経路65Bは、第1ローラ対58を境界として、連続する一つの直線状の経路を構成している。第2経路65Bは、所定間隔を隔てて互いに対向する上側ガイド部材52及び下側ガイド部材51によって区画されている。
【0051】
記録用紙は、直線路65を記録部24から後述するトレイガイド76(本発明のトレイガイドの一例)に向かう向き、つまり後方から前方に向かう第1向き5(図2参照、本発明の第1向きに相当)に案内される。記録用紙は、記録部24によって画像を記録された後に排紙トレイ21に排出される。また、前側開口13から挿入されたメディアトレイ71は、直線路65を第1向き5及び第1向き5と逆向き(前方から後方に向かう向き)の第2向き6(図2参照、本発明の第2向きに相当)に案内される。つまり、メディアトレイ71は、直線路65を通過する。
【0052】
[記録部24]
図2に示されるように、記録部24は、直線路65に設けられている。詳細には、記録部24は、直線路65の上側に設けられている。図2及び図3に示されるように、記録部24は、記録ヘッド38(本発明の記録ヘッドの一例)を搭載して、第1向き5と交差し且つ後述するノズル面39に沿った方向(主走査方向、本発明の第3方向に相当)へ往復移動するキャリッジ40を備えている。なお、本実施形態において、第3方向は、左右方向9である。
【0053】
キャリッジ40は、例えば、プリンタ部11の内部に設けられたフレーム(不図示)に取り付けられた2本のガイドレール35、36によって支持されている。詳細には、2本のガイドレール35、36は、左右方向9に延設されている。また、2本のガイドレール35、36は、前後方向8に所定間隔をあけて配置されている。キャリッジ40は、2本のガイドレール35、36を跨ぐようにして配置されている。これにより、キャリッジ40は、2本のガイドレール35、36上を左右方向9に摺動可能である。ガイドレール36の上面に、ベルト駆動機構37が配設されている。また、ベルト駆動機構37を構成するベルト41は、キャリッジ40と連結されている。キャリッジ駆動モータ103(図7参照)からベルト駆動機構37に駆動力が伝達されることにより、キャリッジ40は左右方向9に摺動される。
【0054】
図2に示されるように、記録ヘッド38は、キャリッジ40の下面側に露出されている。記録ヘッド38には、インクカートリッジ(不図示)からインクチューブ33(図3参照)を通じてシアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(Bk)の各色インクが供給される。記録ヘッド38の下面側のノズル面39(本発明のノズル面の一例)には、複数のノズル(不図示、本発明のノズルの一例)が形成されている。各ノズルは、CMYBkの各色インクごとに設けられている。各ノズルから各色インクが微小なインク滴として吐出される。
【0055】
以上より、記録ヘッド38が、記録部24の下方に設けられたプラテン42上を搬送される記録用紙に対して走査されつつ、記録用紙に対してインク滴を吐出する。これにより、記録用紙に画像が記録される。なお、プラテン42は、記録用紙を支持する。また、後述するように、記録部24は、記録メディア69の盤面上にも画像を記録可能である。
【0056】
[第1ローラ対58及び第2ローラ対59]
図2に示されるように、直線路65において、記録部24に対してトレイガイド76と反対側、つまり記録部24よりも第1向き5の上流側には、直線路65の上側に配置された第1搬送ローラ60(本発明の第1ローラに相当)と、直線路65の下側に第1搬送ローラ60に対向して配置されたピンチローラ61(本発明の第2ローラに相当)とよりなる第1ローラ対58(本発明の第2搬送部の一例)が設けられている。ピンチローラ61は、バネなどの弾性部材(不図示)によって第1搬送ローラ60のローラ面に圧接されている。第1ローラ対58は、記録用紙を挟持して直線路65に沿って第1向き5に搬送し、メディアトレイ71を挟持して直線路65に沿って第1向き5及び第2向き6に搬送する。
【0057】
直線路65において、記録部24及びトレイガイド76の間、つまり記録部24よりも第1向き5の下流側には、第1経路65Aの下側に配置された第2搬送ローラ62と、第1経路65Aの上側に第2搬送ローラ62に対向して配置された拍車63よりなる第2ローラ対59(本発明の第1搬送部の一例)が設けられている。拍車63は、バネなどの弾性部材(不図示)によって第2搬送ローラ62のローラ面に圧接されている。第2ローラ対59は、記録部24を通過した記録用紙を狭持して直線路65に沿って第1向き5に、つまり排紙トレイ21へ向けて搬送する。また、第2ローラ対59は、メディアトレイ71を挟持して直線路65に沿って第1向き5及び第2向き6に搬送する。
【0058】
第1搬送ローラ60及び第2搬送ローラ62は、後述する搬送用モータ102(図7参照)から後述する駆動伝達機構(不図示)を介して駆動力が伝達されて回転される。第1搬送ローラ60及び第2搬送ローラ62は、画像記録時に間欠駆動される。そのため、記録用紙及び記録メディア69は、所定の改行幅で送られながら画像が記録される。
【0059】
[シート検知部110]
図2に示されるように、プリンタ部11は、直線路65を搬送される記録用紙及びメディアトレイ71を検知するシート検知部110(本発明の第3検知部の一例)を備えている。シート検知部110は、直線路65において、第1ローラ対58に対して記録部24と反対側、つまり第1ローラ対58よりも第1向き5の上流側に設けられている。
【0060】
シート検知部110は、例えば、検出子112A,112Bを有する回転体112と、発光素子(例えば発光ダイオード)及び当該発光素子から発光された光を受光する受光素子(例えばフォトトランジスタ)を有するフォトインタラプタ等の光センサ111とにより構成されている。回転体112は、支軸123を中心に回転可能に設けられている。検出子112Aは支軸123から直線路65に突出している。回転体112に外力が加えられていない状態で、検出子112Bは、光センサ111の発光素子から受光素子に至る光路に進入して、当該光路を通る光を遮断している。回転体112が記録用紙またはメディアトレイ71の先端に押されることによって回転すると、検出子112Bは当該光路から外れて、当該光路に光が通る。
【0061】
[ロータリーエンコーダ122]
図7に示されるように、複合機10は、搬送用モータ102の駆動量を検知するロータリーエンコーダ122を備えている。
【0062】
ロータリーエンコーダ122は、搬送用モータ102の軸(不図示)に取り付けられており、軸と一体に回転するエンコーダディスク(不図示)と、光センサ(不図示)とで構成されている。エンコーダディスクには、その回転中心と同心の円周方向に、一定間隔で光を透過する透過部と光を透過しない非透過部とが等ピッチで交互に複数配置されたパターンが形成されている。光センサは、エンコーダディスクのうち、第1パターンが形成されている位置と対向する位置に設けられている。エンコーダディスクが搬送用モータ102の軸と共に回転すると、エンコーダディスクに配置されたパターンが光センサによって検出される。そして、当該検出の度に、パルス信号が光センサによって生成される。生成されたパルス信号は、光センサから後述する制御部130へと出力される。制御部130は、光センサからのパルス信号に基づいて、搬送用モータ102の駆動量を算出する。以上より、本発明の第2検出部は、ロータリーエンコーダ122と制御部130とで構成されている。
【0063】
[メディアトレイ71]
図4に示されるように、メディアトレイ71は薄板形状の樹脂板である。図2及び図4に示されるように、メディアトレイ71は、上面72を上側にしてトレイガイド76に載置され、前側開口13から挿入される。メディアトレイ71は、第2向き6に挿入される。メディアトレイ71は、第1ローラ対58及び第2ローラ対59によって、前側開口13から直線路65に沿って搬送される。なお、図4においては、メディアトレイ71が複合機10に挿入された状態で、上下方向7、前後方向8、及び左右方向9が定義される。
【0064】
メディアトレイ71の上面72側には、記録メディア69を載置可能なメディア載置部70が形成されている。メディア載置部70は、円形状の凹みである。当該凹みの直径は、載置される記録メディア69(円形のCD−ROMやDVD−ROMなど)の直径と同一または少しだけ大きい。また、円形の嵌合部73が、当該凹みの中央部から上側に突出して形成されている。円形のCD−ROMやDVD−ROMなどには、通常、中央部分に円形の孔が設けられている。嵌合部73は、当該孔と略同一の大きさであり、当該孔と嵌合する。これにより、記録メディア69がメディア載置部70に載置された場合に、記録メディア69は前後方向8及び左右方向9にずれない。
【0065】
[トレイガイド76]
図2に示されるように、メディアトレイ71を支持可能なトレイガイド76が、排紙トレイ21の上側に設けられている。トレイガイド76は、概ね薄板形状の底板75と、底板75の左右方向9の両端部から立設され、メディアトレイ71が挿入される方向(前後方向8)に沿って配置された右ガイド板(不図示)及び左ガイド板(不図示)とを備えている。底板75の上面にはメディアトレイ71が載置される。右ガイド板と左ガイド板との間の間隔は、メディアトレイ71の幅方向(左右方向9)の長さと同一または若干大きい。これにより、メディアトレイ71が底板75に載置されながら前側開口13から挿入されるとき、メディアトレイ71は左右方向9にずれない。
【0066】
トレイガイド76は、メディアトレイ71を直線路へ進入可能に支持する第1位置(図2に破線で示される位置、本発明の第1位置に相当)、及び上下方向7に対して第1位置と異なる位置(本実施形態では第1位置よりも上方の位置)である第2位置(図2に実線で示される位置、本発明に第2位置に相当)に移動可能である。
【0067】
本実施形態において、トレイガイド76は、以下に説明するような構成によって、第1位置及び第2位置に移動可能である。トレイガイド76の右側及び左側には、複合機10のフレーム(不図示)が配置されている。フレームには、長孔が形成されている。トレイガイド76は、両側面から突出した突出部(不図示)を有している。突出部は、長孔に挿入されている。これにより、トレイガイド76は、長孔に沿って摺動可能である。トレイガイド76は、長孔の両端(上端及び下端)において固定可能である。トレイガイド76が長孔の上端に位置している場合、トレイガイド76は第1位置である。また、トレイガイド76が長孔の下端に位置している場合、トレイガイド76は第2位置である。なお、トレイガイド76が移動するための構成は、上述したような構成に限らない。
【0068】
[姿勢検出センサ77]
プリンタ部11におけるトレイガイド76及びその近傍に、トレイガイド76の位置を検知する姿勢検出センサ77(図7参照、本発明の第1検知部の一例)が設けられている。
【0069】
姿勢検出センサ77は、例えば、トレイガイド76の左側面に取り付けられており、トレイガイド76から遠ざかる向き、つまり左向きに光を照射する発光部(不図示)と、プリンタ部11のフレームにおける発光部と対向可能な位置に取り付けられた受光部(不図示)とで構成されている。発光部及び受光部は、以下の説明内容を満たすような位置に取り付けられている。つまり、トレイガイド76が第2位置である場合、発光部によって照射された光は受光部で受光される。これにより、トレイガイド76が第2位置に位置していることが検知される。一方、トレイガイド76が第2位置から移動すると、発光部も移動するため、発光部によって照射された光は受光部で受光されない。これにより、トレイガイド76が第2位置に位置していないことが検知される。
【0070】
[第2搬送ローラ62及びプラテン42の姿勢変化]
図2に示されるように、第2ローラ対59の第2搬送ローラ62は、拍車63に当接した当接姿勢(図2に実線で示されている。)と、拍車63から離間した離間姿勢(図2に破線で示されている。)とに姿勢変化可能である。第2搬送ローラ62が当接姿勢をとっている場合、第2ローラ対59は記録用紙の挟持が可能である。これにより、第2ローラ対59は、記録用紙を直線路65に沿って搬送させる。一方、第2搬送ローラ62が離間姿勢をとっている場合、第2ローラ対59のローラ間の間隔は、メディアトレイ71を挟持するのに適した間隔となる。これにより、第2ローラ対59は、メディアトレイ71を直線路65に沿って搬送させる。
【0071】
また、プラテン42も下方に移動可能である。プラテン42が下方に移動していない場合(図2に実線で示されている。)、プラテン42と記録部24の間の間隔は、記録用紙が記録部24の下方を通過可能な間隔である。一方、プラテン42が下方に移動している場合(図2に破線で示されている。)、当該間隔は、メディアトレイ71が記録部24の下方を通過可能な間隔である。
【0072】
第2搬送ローラ62及びプラテン42の下方への移動は、例えば、第2搬送ローラ62及びプラテン42の下方に設けられた偏心カム140及びプラテン支持部材53によって実行される。偏心カム140は、左右方向9を軸方向として複合機10の筐体14を構成するフレーム(不図示)に回転自在に支持されている。偏心カム140は、軸142からの径が周期的に変化する円盤である。プラテン支持部材53は、偏心カム140に載置されるようにして支持されている。第2搬送ローラ62は、プラテン支持部材53に回転可能に支持されている。プラテン42は、上述したようにプラテン支持部材53に支持されている。
【0073】
偏心カム140の軸142は、連動部材143を介してトレイガイド76と連結されている。連動部材143は、軸142と一体に取り付けられており、連動部材143の軸142を中心とした回動と、軸142の回転とは連動している。これにより、トレイガイド76が第2位置から第1位置へ姿勢変化すると、連動部材143が下方(図2の紙面上における時計回り)に回動する。つまり、連動部材143は、図2の実線の状態から破線の状態へ遷移する。これにより、軸142が矢印144の向きに回転され、偏心カム140が回転される。偏心カム140が回転されると、その周面がプラテン支持部材53に対して摺動される。偏心カム140の周面は、軸142からの径が周期的に変化する。これにより、プラテン支持部材53が上下方向7へ移動する。プラテン支持部材53の上下方向7への移動によって、第2搬送ローラ62及びプラテン42が上下方向7へ移動される。
【0074】
[ピンチローラ61の姿勢変化]
図2に示されるように、第1ローラ対58のピンチローラ61は、第1搬送ローラ60に当接した図2に実線で示されている当接姿勢(本発明の当接姿勢に相当)と、第1搬送ローラ60から離間した図2に破線で示されている離間姿勢(本発明の離間姿勢に相当)とに姿勢変化可能である。ピンチローラ61が当接姿勢をとっている場合、記録用紙の挟持が可能である。これにより、第1ローラ対58は、記録用紙を直線路65に沿って搬送させる。一方、ピンチローラ61が離間姿勢をとっている場合、第1ローラ対58のローラ間の間隔は、メディアトレイ71を挟持するのに適した間隔となる。これにより、第1ローラ対58は、メディアトレイ71を直線路65に沿って搬送させる。
【0075】
ピンチローラ61の下方への移動は、例えば、ピンチローラ61の下方に設けられた偏心カム150及びローラ支持部材151によって実行される。偏心カム150は、左右方向9を軸方向として複合機10の筐体14を構成するフレーム(不図示)に回転自在に支持されている。偏心カム150は、軸152からの径が周期的に変化する円盤である。ローラ支持部材151は、偏心カム150に載置されるようにして支持されている。ピンチローラ61は、ローラ支持部材151に回転可能に支持されている。
【0076】
本実施形態では、偏心カム150は、給紙用モータ101(図7参照、本発明の第2駆動源の一例)から駆動伝達されて回転される。偏心カム150が回転されると、その周面がローラ支持部材151に対して摺動される。偏心カム150の周面は、軸152からの径が周期的に変化する。これにより、ローラ支持部材151が上下方向7へ移動する。ローラ支持部材151の上下方向7への移動によって、ピンチローラ61が上下方向7へ移動される。つまり、給紙用モータ101は、ピンチローラ61を当接姿勢と離間姿勢とに姿勢変化させる。
【0077】
[搬送用モータ102及び駆動伝達機構]
搬送用モータ102(図7参照、本発明の第1駆動源の一例)は、正転(本発明の第1駆動の一例)及び逆転(本発明の第2駆動の一例)が可能である。なお、正転が本発明の第2駆動であり、逆転が本発明の第1駆動であってもよい。
【0078】
駆動伝達機構(不図示、本発明の駆動伝達部の一例)は、遊星ギヤなどから構成されており、搬送用モータ102の正転の駆動力を後述するポンプ124(図7参照、本発明の吸引機構の一例)に伝達し、逆転の駆動力を後述するポート切替機構121(本発明の切替機構の一例)及びワイパーブレード56に伝達する。また、第1搬送ローラ60及び第2搬送ローラ62は、駆動伝達機構によって搬送用モータ102の正転の駆動力が伝達されると、メディアトレイ71を第1向き5へ搬送させる向きに回転し、駆動伝達機構によって搬送用モータ102の逆転の駆動力が伝達されると、メディアトレイ71を第2向き6へ搬送させる向きに回転する。
【0079】
[メンテナンスユニット80]
図3に示されるように、プラテン42の左右方向9の両側の記録用紙及びメディアトレイ71が通過しない領域、つまり記録部24の往復移動範囲における退避位置には、メンテナンスユニット80が配置される。メンテナンスユニット80は、パージ機構44と廃液タンク(不図示)などを備えている。
【0080】
パージ機構44は、記録ヘッド38のノズル等からインクと共に気泡や異物を吸引除去するパージを実行する。図3及び図5に示されるように、パージ機構44は、記録ヘッド38のノズルを覆うキャップ46(本発明のキャップの一例)と、記録ヘッド38の排気孔を覆う排気キャップ120と、キャップ46または排気キャップ120に接続されて吸引を行うポンプ124と、キャップ46及び排気キャップ120を記録ヘッド38に接離させるためのリフトアップ機構55と、ポンプ124、廃液タンク、及びノズル面39を拭うワイパーブレード56(本発明のワイプ部の一例)を接続するポンプチューブ82などを有する。
【0081】
キャップ46は、ゴムにより構成されている。キャップ46は、リフトアップ機構55によりノズル面39(図2参照)に密着し、ノズル面39との間に空間を形成すると共にノズルを覆う。キャップ46の内部は、カラーインク(CMY)のノズルと黒インク(Bk)のノズルとに応じて2つの空間に区画されており、カラーインク及び黒インクに対応してそれぞれノズル面39との間に空間が形成される。図示されていないが、キャップ46の各空間の底部には吸気口が設けられており、各吸気口は、後述するポート切替機構121を介してポンプ124及び廃液タンクに接続されている。排気キャップ120もゴムにより構成されている。排気キャップ120もノズル面39(図2参照)に密着し、記録ヘッド38の排気孔を覆う。
【0082】
ポンプ124は、ロータリー式のチューブポンプである。本実施形態では、ポンプ124は、内壁面を備えたケーシングと、この内壁面に沿って転動される転動ローラとを有する。ポンプチューブ82が上記転動ローラと上記内壁面との間に配置され、上記転動ローラが駆動される。これにより、ポンプチューブ82が扱かれ、ポンプチューブ82内のインクが上流側(キャップ46及び排気キャップ120の吸気口など)から下流側(廃液タンク)へ押し出される。
【0083】
図5(A)に示されるように、リフトアップ機構55は、左右一対の等長リンク64を備えている。この等長リンク64が回動することによって、ホルダ90が平行移動し、待機位置と密着位置との間で変位する。図5(A)では、ホルダ90は待機位置にあり、図5(B)では、ホルダ90は密着位置にある。ホルダ90は、鉛直上方へ突出された当接レバー91を備えている。キャリッジ40が図5において当接レバー91を右方向に押圧することにより、ホルダ90が密着位置に移動される。キャップ46および排気キャップ120は、ホルダ90に搭載されている。キャップ46および排気キャップ120は、ホルダ90が密着位置に移動されることにより、記録ヘッド38のノズル面39におけるノズルの周囲および排気孔の周囲に密着された第1姿勢(本発明の第1姿勢に相当)となり、ホルダ90が待機位置に移動されることにより、記録ヘッド38のノズル面39から離間された第2姿勢(本発明の第2姿勢に相当)となる。また、キャップ46が第1姿勢及び第2姿勢へ姿勢変化されるのであれば、キャップ46を姿勢変化させる構造は、上述したようなリフトアップ機構55によって行われるものに限らない。例えば、モータの駆動力によってキャップ46を姿勢変化させてもよい。
【0084】
キャップ46の近傍には、キャップ46の姿勢を検知する位置検出センサ104(図7参照、本発明の第4検知部の一例)が設けられている。位置検出センサ104は、例えば、キャップ46の姿勢変化に対応して上下に摺動する摺動体と、発光素子(例えば発光ダイオード)及び当該発光素子から発光された光を受光する受光素子(例えばフォトトランジスタ)を有するフォトインタラプタ等の光センサとにより構成されている。摺動体は、キャップ46が第1姿勢のときに、発光素子から受光素子に至る光路に位置して、当該光路を通る光を遮断する。当該遮断の有無によって、キャップ46の姿勢が検知される。
【0085】
ワイパーブレード56は、ワイパーホルダ68に嵌め込まれており、ワイパーホルダ68に対して出没可能に設けられている。ワイパーブレード56は、ゴムにより構成されている。ワイパーブレード56の長さ(図5において紙面に垂直な方向の寸法)は、ノズル面39までの長さに対応している。ワイパーブレード56は、ワイパーホルダ68から突出されることにより、ノズル面39に当接可能な状態である第3姿勢(本発明の第3姿勢に相当)をとり、ワイパーホルダ68に没入されることにより、ノズル面39から離間した状態である第4姿勢(本発明の第4姿勢に相当)をとる。つまり、ワイパーブレード56は、第3姿勢及び第4姿勢に姿勢変化可能である。ワイパーブレード56の姿勢変化については、後述される。
【0086】
ワイパーブレード56が記録ヘッド38の下面に当接した状態で、つまりワイパーブレード56が第3姿勢の状態で、キャリッジ40が移動すると、ワイパーブレード56はノズル面39に形成されたノズルと当接する。ここで、ワイパーブレード56は、キャリッジ40の移動によって、ノズル面39のうちノズルが形成された領域の全てと当接可能である。これにより、ワイパーブレード56は、ノズル面39に付着したインクを拭い取る。このインクの拭い取りはワイプと呼ばれる。
【0087】
ワイパーブレード56は、駆動伝達機構により搬送用モータ102から逆転の駆動力が伝達されることによって、第3姿勢及び第4姿勢に姿勢変化される。ワイパーブレード56は、パージが終了した後、記録ヘッド38が画像記録領域側に移動される際に、第4姿勢から第3姿勢に姿勢変化されて突出される。なお、当該姿勢変化のタイミングは、後述する切替部材92の回転位相が所定の位相になったときのタイミングである。つまり、パージが終了した後、切替部材92が所定の位相となるように、後述する回転体92Aが回転される。
【0088】
図3に示されるように、キャリッジ40の画像記録領域の外側であってパージ機構44の反対側に廃インクトレイ45が配設されている。廃インクトレイ45は、記録ヘッド38のインクの空吐出を受けるものである。この空吐出は、フラッシングと呼ばれる。フラッシングは、パージとは別の動作として行われる。フラッシングが実行されることによって、記録ヘッド38内の気泡や混色インクの除去等のメンテナンスが行われる。なお、廃インクトレイ45内にはフェルトが敷設されており、フラッシングされたインクは、このフェルトに吸収されて保持される。
【0089】
[ポート切替機構121]
ポート切替機構121(図5参照)は、キャップ46及び排気キャップ120とポンプ124及び廃液タンクとの連通状態を、接続状態または遮断状態に切り換える。図5及び図6に示されるように、ポート切替機構121は、6つのポート93〜98が設けられたカバー99と、カバー99の内部に配置された円盤状の切替部材92とを備えている。切替部材92は、搬送用モータ102(図7参照)により回転され、上記各ポート93〜98を後述のように接続する。カバー99は樹脂からなり、有底の円筒状に形成されている。カバー99の底壁の中心に吸気ポート93が形成されている。吸気ポート93にポンプチューブ82が接続されている。ポンプチューブ82は、ポンプ124を介して廃液タンクに接続されている。
【0090】
他の5つのポート94〜98は、カバー99の側壁において周方向に所定の間隔を空けて設けられている。排気ポート94は、ポンプチューブ82とは別のチューブ(不図示)によって排気キャップ120(図5参照)に連通している。Bkポート95は、上述のチューブとは別のチューブ(不図示)によってキャップ46(図5参照)に連通している。具体的には、Bkポート95は、キャップ46とノズル面39との間に形成された黒インク用の空間に連通している。Coポート96は、上述のチューブとは別のチューブ(不図示)によってキャップ46(図4参照)に連通している。具体的には、Coポート96は、キャップ46とノズル面39との間に形成されたカラーインク用の空間に連通している。大気ポート97、98は大気に開放されている。
【0091】
メンテナンスユニット80により記録ヘッド38から吸引されたインクは、以下のようにして廃液タンクに送られる。以下、図6に基づいて、インク吸引の処理手順の一例について説明する。
【0092】
キャリッジ40が移動されて当接レバー91を右向きに押圧すると、図5(B)に示されるように、ホルダ90が密着位置に移動される。これにより、リフトアップ機構55によって、キャップ46がノズル面39に密着して両者間に空間が形成され、キャップ46は第1姿勢となる。切替部材92が駆動され、吸気ポート93とBkポート95が連通される状態となる(図6(B)参照、以下、この状態を第2状態と記す。)。つまり、キャップ46とノズル面39との間に形成される空間のうち黒インクに対応する部分がポンプ124に接続される。第2状態で、ポンプ124が駆動されると黒インクの吸引が実行される。つまり、ポンプ124の駆動によって、キャップ46とノズル面39との間に形成される空間のうち黒インクに対応する部分に負圧がかかり、貯留されていた黒インクがポンプ124側へ吸引される。吸引されたインクは、ポンプチューブ82を経て廃液タンクに吸収される。
【0093】
インクの吸引が開始されてから所定時間(例えばノズルなどからインクが十分に吸引される時間)の経過後、切替部材92が駆動され、吸気ポート93が他のポート94〜98の何れとも連通されていない第1状態となる(図6(C)参照)。つまり、キャップ46とノズル面39との間に形成される空間は、大気から遮断されると共にポンプ124と非連通状態となる。これにより、ポンプ124による吸引量が安定する。
【0094】
次に、切替部材92が駆動され、吸気ポート93とCoポート96が連通される状態となる(図6(D)参照、以下、この状態も図6(B)と同様に第2状態と記す。)。つまり、キャップ46とノズル面39との間に形成される空間のうちカラーインクに対応する部分がポンプ124に接続される。第2状態で、ポンプ124が駆動されるとカラーインクの吸引が実行される。つまり、ポンプ124の駆動によって、キャップ46とノズル面39との間に形成される空間のうちカラーインクに対応する部分に負圧がかかり、貯留されていたカラーインクがポンプ124側へ吸引される。吸引されたインクは、ポンプチューブ82を経て廃液タンクに吸収される。
【0095】
インクの吸引を開始してから所定時間(例えばノズルなどからインクが十分に吸引される時間)の経過後、切替部材92が駆動され、第1状態となる(図6(C)参照)。つまり、キャップ46とノズル面39との間に形成される空間は、大気から遮断されると共にポンプ124と非連通状態となる。これにより、ポンプ124による吸引量が安定する。
【0096】
その後、キャリッジ40が移動されて当接レバー91から離れると、図5(A)に示されるように、ホルダ90が待機位置に移動される。つまり、リフトアップ機構55により、キャップ46は、ノズル面39から離間されて第2姿勢となる。
【0097】
キャップ46が第2姿勢へ姿勢変化した状態で、切替部材92が駆動され第2状態とされ、更にポンプ124が駆動されると、キャップ46内の清掃のための空吸引が実行される。つまり、ポンプ124が駆動されても、キャップ46がノズル面39から離間されているために、インクは吸引されないのである。この空吸引は、吸気ポート93とBkポート95が連通された状態、及び吸気ポート93とCoポート96が連通された状態のそれぞれにおいて実行される。
【0098】
図6(A)に破線で示されるように、切替部材92の上部又は下部には、切替部材92と一体に回転する回転体92Aが設けられている。回転体92Aには、径方向外側へ向かって突出する凸部92B、92C、92Dが設けられている。これら凸部92B、92C、92Dは、回転体92Aの回転に対して位相が異なる位置に配置されており、各凸部92B、92C、92Dの間は、回転体92Aの所定の回転角度だけ離間されている。また、回転体92Aの外周と対向する位置には、センサ92Eが配置されている。センサ92Eと凸部92B、92C、92Dが対向する場合、センサ92Eからオンの電気信号が出力され、センサ92Eと凸部92B、92C、92Dが対向しない場合、センサ92Eからオフの電気信号が出力される。センサ92Eの出力(オン/オフ)の周期によって、切替部材92の回転位相が把握される。
【0099】
以上説明した動作(吸引及び空吸引)の他、排気及びワイプが所定のタイミングで実行される。排気は、切替部材92の駆動によって、吸気ポート93と排気ポート94が連通されることで実行される。ワイプは、キャップ46が第2姿勢へ姿勢変化した状態において、切替部材92が所定の位相となったタイミングで実行される。つまり、当該タイミングにおいて、ワイパーブレード56は、駆動伝達機構により搬送用モータ102から逆転の駆動力が伝達されることによって、第3姿勢及び第4姿勢に姿勢変化される。その状態において、記録ヘッド38が移動され、ノズル面39に付着したインクが拭い取られる。
【0100】
[制御部130]
以下、図7が参照されて、制御部130(本発明の制御部の一例)の概略構成が説明される。制御部130が後述するフローチャートにしたがってメディアトレイ71の排出制御を行うことによって、本発明が実現される。
【0101】
制御部130は、複合機10の全体動作を制御するものである。制御部130は、CPU131、ROM132、RAM133(本発明の記憶部の一例)、EEPROM134、ASIC135を主とするマイクロコンピュータとして構成されている。これらは内部バス137によって接続されている。
【0102】
ROM132には、CPU131が複合機10の各種動作を制御するためのプログラムが格納されている。RAM133は、CPU131が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記録する記憶領域、或いはデータ処理の作業領域として使用される。EEPROM134には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
【0103】
本実施形態におけるプログラムは、メンテナンスユニット80によるクリーニングを制御するためクリーニング実行プログラムである。クリーニングとは、パージ、ワイプ、及びフラッシングなどの総称である。クリーニング実行プログラムには、キャップの姿勢変化、キャリッジの移動、吸引、空吸引、排気、ワイプ、及びフラッシングなどのクリーニングにおいて実行される動作の順序が記されている。また、クリーニング実行プログラムには、ポンプ124、ポート切替機構121、キャリッジ40、及びキャップ46などを駆動させるために各モータ101、102、103に与える命令が記されている。また、クリーニング実行プログラムには、各センサ104、111やロータリーエンコーダ122などからデータを受け取るタイミングや、受け取ったデータを使用する処理内容が記されている。以上より、クリーニング実行プログラムに記されたクリーニングの順序は、本発明の予め設定された所定順序に相当する。また、制御部130は、記録部24及びキャップ46を、クリーニング実行プログラムに従って動作させ、搬送用モータ102を、クリーニング実行プログラムに従って正転及び逆転で駆動させることによって、ポンプ124及びポート切替機構121を制御して、記録ヘッド38のクリーニングの実行を制御する。
【0104】
ASIC135には、各種モータ101、102、103、各種センサ77、104、111、及びロータリーエンコーダ122などが接続されている。
【0105】
ASIC135には、各種モータ101、102、103を制御する駆動回路が組み込まれている。CPU131から上記駆動回路に所定のモータを回転させるための駆動信号が入力されると、駆動信号に応じた駆動電流が駆動回路から当該所定のモータへ出力される。これにより、当該所定のモータが駆動、つまり所定の回転速度で正転または逆転される。給紙用モータ101の正転または逆転の一方によって給紙ローラ25が回転し、給紙用モータ101の正転または逆転の他方によって偏心カム150が回転する。搬送用モータ102の正転及び逆転は、上述したように、駆動伝達機構によって第1搬送ローラ60、第2搬送ローラ62、ポート切替機構121、ポンプ124、及びワイパーブレード56に伝達される。キャリッジ駆動モータ103の駆動によって、キャリッジ40が左右方向9に摺動する。
【0106】
姿勢検出センサ77は、受光部で受けた光の強度に応じたアナログの電気信号(電圧信号または電流信号)を出力する。出力された信号は制御部130に入力される。制御部130は、入力された信号の電気レベル(電圧値または電流値)が所定の閾値以上であるかどうかを判断する。例えば、入力された信号が所定の閾値以上である場合、制御部130は、トレイガイド76が第2位置に位置していると判断する。一方、入力された信号が所定の閾値未満である場合、制御部130は、トレイガイド76が第2位置に位置していないと判断する。
【0107】
位置検出センサ104及び光センサ111は、受光素子で受けた光の強度に応じたアナログの電気信号(電圧信号又は電流信号)を出力する。出力された信号は、制御部130に入力される。制御部130は、入力された信号の電気的レベル(電圧値又は電流値)が所定の閾値以上であるかどうかが判断される。入力された信号が所定の閾値以上である場合にHIGHレベル信号と判定され、所定の閾値未満の場合にLOWレベル信号と判定される。これにより、制御部130は、キャップ46の姿勢、及びシート検知部110によるメディアトレイ71の検知の有無を判断する。
【0108】
ロータリーエンコーダ122の光センサによって生成されたパルス信号は、制御部130に入力される。上述したように、制御部130は、光センサからのパルス信号に基づいて、搬送用モータ102の駆動量を算出する。
【0109】
[記録メディア69への画像記録]
以下、複合機10にメディアトレイ71が挿入され、メディアトレイ71に載置された記録メディア69に画像が記録される手順が説明される。図2及び図8(A)に示されるように、ユーザの操作によってトレイガイド76が第2位置から第1位置へ移動されると、当該移動に連動して偏心カム140が回転する。これにより、第2搬送ローラ62が当接姿勢から離間姿勢に姿勢変化され、プラテン42が下方に移動される。ユーザは、記録メディア69が載置されたメディアトレイ71を、トレイガイド76に支持されるようにセットする。この際、メディアトレイ71は、複合機10への挿入側の先端(後側の端部)が第2ローラ対59に当接した状態で、トレイガイド76にセットされる。
【0110】
次に、複合機10の正面上部に設けられた操作パネル18(図1参照)の操作により、記録メディア69へ画像を記録する機能が選択されると、給紙用モータ101が駆動されて、偏心カム150が回転する。これにより、ピンチローラ61が当接姿勢から離間姿勢へ姿勢変化される。
【0111】
その後、操作パネル18の操作によって、記録メディア69への画像記録が指示されると、第1搬送ローラ60及び第2搬送ローラ62が逆転駆動される。これにより、メディアトレイ71は、第2ローラ対59によって第2向き6に搬送される。搬送されるメディアトレイ71は、記録部24の下側を通過して、第2向き6の下流側から第1ローラ対58に挟持される。
【0112】
その後、2つのローラ対58、59に挟持されたメディアトレイ71は、更に第2向き6に搬送される。そして、図8(B)に示されるように、メディアトレイ71は、後側開口87を介して複合機10の外部に突出した状態となる。
【0113】
この状態において、第1搬送ローラ60及び第2搬送ローラ62の回転方向が逆転から正転に切り換えられる。これにより、メディアトレイ71が第1向き5に搬送され、メディアトレイ71に載置された記録メディア69が記録部24の下方を通る。このとき、搬送される記録メディア69に対して、記録ヘッド38からインク滴が吐出される。これにより、記録メディア69の盤面上に画像が記録される。その後、メディアトレイ71は前側開口13から複合機10の外部に排出される。
【0114】
[メディアトレイ71の排出制御]
上述の如く構成されたプリンタ部11においては、メンテナンスユニット80によるクリーニング中に、複合機10に挿入されたメディアトレイ71が排出される制御が、制御部130によって実行される。以下、図9のフローチャートに基づいて、メディアトレイ71の排出制御の処理手順が説明される。排出制御は、例えば複合機10のユーザによる操作パネル18の操作によって、クリーニングが指示された場合に実行される処理である。
【0115】
本実施形態及び後述される変形例において、クリーニング実行プログラムに記されたクリーニングの実行順序は、以下の順序であるとする。なお、本順序は一例であって、異なる順序であってもよい。また、ポンプ124による吸引量の安定のために行われる切替部材92の駆動、つまり吸気ポート93が他のポート94〜98の何れとも連通されていない状態とする切替部材92の駆動は、省略される。また、フラッシング処理は、省略される。
【0116】
以下に本実施形態及び後述される変形例におけるクリーニングの実行順序が示される。キャップ46の初期状態は、ノズル面39を覆う第1姿勢である。第1の処理として、切替部材92が駆動されて吸気ポート93とBkポート95とが連通される。第2の処理として、ポンプ124が駆動されて黒インクの吸引が実行される。第3の処理として、切替部材92が駆動されて吸気ポート93とCoポート96とが連通される。第4の処理として、ポンプ124が駆動されてカラーインクの吸引が実行される。第5の処理として、切替部材92が駆動されて吸気ポート93と排気ポート94とが連通され、排気が実行される。第6の処理として、キャップ46が第1姿勢からノズル面39から離間した第2姿勢に姿勢変化される。第7の処理として、切替部材92が駆動されて吸気ポート93とBkポート95とが連通される。第8の処理として、ポンプ124が駆動されて黒インクの空吸引が実行される。第9の処理として、ワイプが実行される。つまり、ワイパーブレード56が第4姿勢から第3姿勢に姿勢変化されて突出され、次にキャリッジ40の移動によって記録ヘッド38が移動され、最後にワイパーブレード56が第3姿勢から第4姿勢に姿勢変化されてワイパーホルダ68に没入される。第10の処理として、切替部材92が駆動されて吸気ポート93とCoポート96とが連通される。第11の処理として、ポンプ124が駆動されてカラーインクの空吸引が実行される。第12の処理として、キャップ46が第2姿勢から第1姿勢に姿勢変化される。
【0117】
制御部130は、図9のフローチャートにおけるステップSA2、SA6、SA7、SA9、SA10、SA12、SA13、SA16で説明するように、クリーニングが実行されている状態で、トレイガイド76が第2位置でないことが姿勢検出センサ77によって検知されたことを条件として、搬送用モータ102を正転させる。また、制御部130は、図9のフローチャートにおけるステップSA2、SA7、SA10、SA13で説明するように、クリーニングが実行されている状態で、トレイガイド76が第2位置でないことが姿勢検出センサ77によって検知された場合に、クリーニングの実行順序に従った動作のうち未実行の動作を、RAM133記憶する。また、制御部130は、図9のフローチャートにおけるステップSA18、SA19で説明するように、搬送用モータ102を正転させた後、トレイガイド76が第2位置であることが姿勢検出センサ77によって検知されたことを条件として、RAM133に記憶されている未実行の動作以降の動作を実行する
【0118】
複合機10のユーザによる操作パネル18の操作によって、記録ヘッド38のクリーニング動作が指示されると、クリーニングが開始される(SA1、以下ステップをSと記す。)。制御部130は、姿勢検出センサ77からの入力信号に基づいて、トレイガイド76が第2位置であるか否かを判断する(SA2)。トレイガイド76が第2位置であると判断された場合(SA2:No)、制御部130は、クリーニング実行プログラムの実行を開始する。これにより、ステップSA3以降の処理が実行される。
【0119】
一方、トレイガイド76が第2位置でないと判断された場合(SA2:Yes)、制御部130は、クリーニング実行プログラムによるクリーニングの実行順序に従った動作のうち、未実行の動作についての情報をRAM133に記憶する。ステップSA2での判断時点では、クリーニング実行プログラムは実行開始されていない。よって、制御部130は、RAM133の中に次に動作すべき処理が記憶される未実行処理記憶領域を割り当てて、当該未実行処理記憶領域に第1の処理が次に実行される旨の情報を記憶する。
【0120】
ステップSA2の次に、制御部130は、キャリッジ駆動モータ103を駆動させてキャリッジ40を移動させ、ホルダ90が密着位置から待機位置に移動されて、キャップ46が第1姿勢から第2姿勢に姿勢変化される(SA5)。その後、制御部130は、搬送用モータ102を正転で駆動させる(SA6)。これにより、第2搬送ローラ62は、メディアトレイ71を第1向き5へ搬送させる向きに回転する。よって、第2位置のトレイガイド76に、メディアトレイ71がセットされても、当該メディアトレイ71が直線路65に沿って複合機10の内部へ引き込まれることはない。
【0121】
なお、ステップSA6における搬送用モータ102の正転での駆動量は、所定の駆動量が設定される。当該所定の駆動量は、例えば、トレイガイド76にセットされたメディアトレイ71が第2ローラ対59によって第1向き5へ押し戻され、第2ローラ59から離間されるのに十分な駆動量である。メディアトレイ71が第2ローラ対59から離間していれば、メディアトレイ71は、第2ローラ対59によって複合機10の内部へ引き込まれることはないからである。
【0122】
ステップSA6の次に、制御部130は、キャリッジ40を移動させることによって、キャップ46を第2姿勢から第1姿勢に姿勢変化させる(SA17)。その後、制御部130は、トレイガイド76が第2位置であると判断されるまで待機する(SA18:No)。トレイガイド76が第2位置であると判断されると(SA18:Yes)、制御部130は、RAM133の未実行処理記憶領域を参照する。そして、制御部130は、未実行処理記憶領域に記憶されている情報に対応する処理からクリーニングの実行順序に従ってクリーニングを実行する(SA19)。ステップSA2においてトレイガイド76が第2位置でないと判断された場合、未実行処理記憶領域に第1の処理が次に実行される旨の情報が記憶されている。そのため、制御部130は、第1の処理からクリーニングの実行順序に従ってクリーニングを実行する(SA19)。そして、第12の処理まで実行されると、クリーニングは終了する(SA20)。
【0123】
ステップSA2において、トレイガイド76が第2位置であると判断された場合(SA2:No)、制御部130は、記録ヘッド38に付着したインクの吸引及び排気を実行する(SA3)。具体的には、制御部130は、クリーニングの実行順序のうち、第1の処理から第5の処理を実行する。次に、制御部130は、第6の処理及び第7の処理を実行する(SA4)。つまり、制御部130は、キャリッジ40を移動させることによって、キャップ46を第1姿勢から第2姿勢に姿勢変化させる(SA4)。また、制御部130は、搬送用モータ102を駆動させることによってポート切替機構121の切替部材92を駆動させて、吸気ポート93とBkポート95とを連結させる(SA4)。
【0124】
次に、制御部130は、トレイガイド76が第2位置であるか否かを判断する(SA7)。トレイガイド76が第2位置であると判断された場合(SA7:No)、制御部130は、ステップSA7以降の処理を実行する。
【0125】
一方、トレイガイド76が第2位置でないと判断された場合(SA7:Yes)、制御部130は、RAM133の未実行処理記憶領域に、第8の処理が次に実行される旨の情報を記憶する。また、制御部130は、搬送用モータ102を正転させることにより、ポンプ124を駆動する。ステップSA7の時点において、キャップ46がノズル面39から離間した第2姿勢であり、且つ吸気ポート93とBkポート95とが連結された状態である。よって、ポンプ124の駆動によって、空吸引が実行される(SA9)。なお、ステップSA9における空吸引は、第8の処理とは異なる処理として実行される。また、空吸引の実行により、搬送用モータ102が正転される。これにより、第2搬送ローラ62は、メディアトレイ71を第1向き5へ搬送させる向きに回転する。搬送用モータ102の正転での駆動量は、例えばステップSA6の場合と同様である。その後、上述したステップSA17〜SA20の処理が実行される。
【0126】
ステップSA7において、トレイガイド76が第2位置であると判断された場合(SA7:No)、制御部130は、ポンプ124を駆動する。これにより、ステップSA9と同様に、空吸引が実行される(SA8)。具体的には、制御部130は、クリーニングの実行順序のうち、第8の処理を実行する。
【0127】
空吸引の実行後、制御部130は、トレイガイド76が第2位置であるか否かを判断する(ステップSA10)。トレイガイド76が第2位置であると判断された場合(SA10:No)、制御部130は、ステップSA11以降の処理を実行する。
【0128】
一方、トレイガイド76が第2位置でないと判断された場合(SA10:Yes)、制御部130は、RAM133の未実行処理記憶領域に、第9の処理が次に実行される旨の情報を記憶する。また、制御部130は、搬送用モータ102を正転させる(SA12)。これにより、第2搬送ローラ62は、メディアトレイ71を第1向き5へ搬送させる向きに回転する。搬送用モータ102の正転での駆動量は、例えばステップSA6の場合と同様である。その後、上述したステップSA17〜SA20の処理が実行される。
【0129】
ステップSA10において、トレイガイド76が第2位置であると判断された場合(SA10:No)、制御部130は、ワイプ及びポートの切替を実行する(SA11)。具体的には、制御部130は、クリーニングの実行順序のうち、第9の処理及び第10の処理を実行する。
【0130】
ポートの切替(第10の処理)の実行後、制御部130は、トレイガイド76が第2位置であるか否かを判断する(ステップSA13)。トレイガイド76が第2位置であると判断された場合(SA13:No)、制御部130は、ステップSA14以降の処理を実行する。
【0131】
一方、トレイガイド76が第2位置でないと判断された場合(SA13:Yes)、制御部130は、RAM133の未実行処理記憶領域に、第11の処理が次に実行される旨の情報を記憶する。また、制御部130は、ステップSA9と同様にして空吸引を実行する(SA16)。なお、ステップSA16における空吸引は、第11の処理とは異なる処理として実行される。また、空吸引の実行により、搬送用モータ102が正転される。これにより、第2搬送ローラ62は、メディアトレイ71を第1向き5へ搬送させる向きに回転する。搬送用モータ102の正転での駆動量は、例えばステップSA6の場合と同様である。その後、上述したステップSA17〜SA20の処理が実行される。
【0132】
ステップSA13において、トレイガイド76が第2位置であると判断された場合(SA13:No)、制御部130は、ポンプ124を駆動する。これにより、ステップSA8と同様に、空吸引が実行される(SA14)。具体的には、制御部130は、クリーニングの実行順序のうち、第11の処理を実行する。
【0133】
その後、制御部130は、キャリッジ40を移動させることによって、キャップ46を第2姿勢から第1姿勢に姿勢変化させる(SA15)。具体的には、制御部130は、クリーニングの実行順序のうち、第12の処理を実行する。そして、第12の処理まで実行されると、クリーニングは終了する(SA20)。
【0134】
なお、上述した図9のフローチャートの処理においては、ステップSA6、SA12における搬送用モータ102の正転での駆動量、及びステップSA9、SA16における空吸引のための搬送用モータ102の正転での駆動量には、所定の駆動量が設定された。
【0135】
しかし、ステップSA6、SA9、SA12、SA16における搬送用モータ102の正転での駆動は、制御部130によってトレイガイド76が第2位置であると判断されるまで実行されてもよい。この場合、図9におけるステップSA17及びステップSA18の処理の順序が入れ替わる。つまり、制御部130によってトレイガイド76が第2位置であると判断されると(SA18)、搬送用モータ102の正転での駆動は停止される。その後、制御部130は、キャップ46を第2姿勢から第1姿勢に姿勢変化させる(SA17)。
【0136】
[実施形態の効果]
記録ヘッド38のクリーニングが実行されている状態で、トレイガイド76が第2位置でないことが姿勢検出センサ77によって検知された場合、メディアトレイ71がトレイガイド76によって直線路65へ進入可能に支持されているおそれがある。この場合に、メディアトレイ71が第2ローラ対59によって第2向き6に搬送されると、メディアトレイ71は複合機10の内部へ搬送されてしまう。そこで、本実施形態によれば、上述の場合に、制御部130が搬送用モータ102を正転させる。これにより、メディアトレイ71がトレイガイド76によって支持されていたとしても、メディアトレイ71は、第2ローラ対59によって第1向き5に搬送される。よって、メディアトレイ71が第2ローラ対59よりも奥側に引き込まれることが、防止可能である。よって、記録ヘッド38のクリーニング動作中に、メディアトレイ71が装置内へ挿入されても、メディアトレイ71が障害物へ衝突することが防止可能である。
【0137】
また、本実施形態によれば、制御部130は、トレイガイド76が第2位置でないことを条件としてクリーニングを再開させる。つまり、メディアトレイ71がトレイガイド76によって直線路65へ進入不可能な状態となってから、クリーニングの実行を再開することが可能である。
【0138】
また、本実施形態によれば、ワイパーブレード56及びノズル面39が当接している状態において、記録部24が左右方向9へ移動する。これにより、ノズル面39に付着したインクを、ワイパーブレード56によって拭い取ることができる。
【0139】
[実施形態の変形例1]
以下、図10のフローチャートに基づいて、変形例1におけるメディアトレイ71の排出制御の処理手順が説明される。
【0140】
制御部130は、図10のフローチャートにおけるステップSB9、SB14で説明するように、トレイガイド76が第2位置でないことが姿勢検出センサ77によって検知された状態で、クリーニングの実行順序における搬送用モータ102の逆転での駆動量が後述する第1所定量(本発明の第1所定量に相当)以上であることを条件として、搬送用モータ102を正転させてもよい。また、制御部130は、図10のフローチャートにおけるステップSB12、SB13で説明するように、キャップ46が第2姿勢であることが位置検出センサ104によって検知されたことを更なる条件として、搬送用モータ102を正転させてもよい。
【0141】
なお、図10のフローチャートの説明において、図9のフローチャートと同様の処理である部分は、その詳細な説明が省略される。
【0142】
図10のステップSB1〜SB3の処理は、図9のステップSA1〜SA3の処理と同様である。また、図10のステップSB5、SB6の処理は、図9のステップSA5、SA6の処理と同様である。また、図10のステップSB17〜SB20の処理は、図9のステップSA17〜SA20の処理と同様である。
【0143】
ステップSB3の次に、制御部130は、クリーニングの実行順序のうち、第6の処理を実行する。つまり、制御部130は、キャリッジ40を移動させることによって、キャップ46を第1姿勢から第2姿勢に姿勢変化させる(SB4)。
【0144】
次に、制御部130は、トレイガイド76が第2位置であるか否かを判断する(SB7)。トレイガイド76が第2位置であると判断された場合(SB7:No)、制御部130は、ステップSA10以降の処理を実行する。つまり、クリーニングが続行される。具体的には、クリーニングの実行順序のうち、第7の処理以降の処理が実行される。
【0145】
一方、トレイガイド76が第2位置でないと判断された場合(SA7:Yes)、制御部130は、クリーニングの実行順序に従って次の動作が実行される場合の搬送用モータ102の向きを判断する(SB8)。つまり、次の動作において、搬送用モータ102が正転されるのか、逆転されるのか、或いは搬送用モータ102が駆動されない動作(例えばキャップ46の姿勢変化)が実行されるのかが判断される。搬送用モータ102が逆転されない場合(SB8:No)、メディアトレイ71が装置内へ引き込まれるおそれがないため、クリーニングが続行される(SB10)。
【0146】
一方、搬送用モータ102が逆転される場合(SB8:Yes)、制御部130は、ロータリーエンコーダ122の光センサからのパルス信号に基づいて、当該逆転の駆動量が第1所定量以上であるか否かを判断する(SB9)。
【0147】
ここで、第1所定量は、メディアトレイ71を、第2ローラ対59からメディアトレイ71の先端が衝突し得る障害物まで第2向き6に搬送させるために必要な搬送用モータ102の駆動量である。障害物は、例えば、ローラが相互に当接された第1ローラ対58や、メディアトレイ71が衝突し得る位置に配置されている複合機10のフレームや、複合機10に後側開口87が形成されていない場合における複合機10の後壁16(図2及び図8参照)や、第2経路65Bが形成されていない場合における外側ガイド部材22(図2に破線で示されている。)や、複合機10が設置されている室の壁(詳細には複合機10の背面に複合機10と対向して存在する壁)などである。
【0148】
図2に示されるように、障害物が第1ローラ対58の場合、第1所定量は、メディアトレイ71を、区間Aだけ第2向き6に搬送させるために必要な搬送用モータ102の駆動量である。障害物が複合機10の後壁16或いは室の壁の場合、第1所定量は、メディアトレイ71を、区間B1だけ第2向き6に搬送させるために必要な搬送用モータ102の駆動量である。障害物が外側ガイド部材22の場合、第1所定量は、メディアトレイ71を、区間B2だけ第2向き6に搬送させるために必要な搬送用モータ102の駆動量である。
【0149】
当該逆転の駆動量が第1所定量未満である場合(SB9:No)、制御部130は、搬送用モータ102を正転させなくてもメディアトレイ71が装置内において障害物に衝突するおそれがないと判断する。よって、クリーニングが続行される(SB10)。一方、当該逆転の駆動量が第1所定量以上である場合(SB9:Yes)、制御部130は、位置検出センサ104からの入力信号に基づいて、キャップ46が第1姿勢であるか否かを判断する(SB12)。キャップ46が第1姿勢であると判断された場合(SB12:Yes)、制御部130は、キャップ46を第1姿勢から第2姿勢に姿勢変化させてから(SB13)、搬送用モータ102を正転で駆動させる(SB14)。一方、キャップが第2姿勢であると判断された場合(SB12:No)、制御部130は、キャップ46を姿勢変化させることなく、搬送用モータ102を正転で駆動させる(SB14)。つまり、制御部130は、キャップ46が第2姿勢であると判断されたことを条件として、搬送用モータ102を正転で駆動させる。
【0150】
なお、本実施形態においては、第6の処理においてキャップ46が第2姿勢に姿勢変化されてから最終の第12の処理までの間に、キャップ46は姿勢変化されない。このため、ステップSB12においては、キャップ46は常に第2姿勢である。しかしながら、上述したように、クリーニングの実行順序は一例である。よって、クリーニングの実行順序によっては、ステップSB12において、キャップ46が第1姿勢である場合もあり得る。
【0151】
搬送用モータ102の正転より、第2搬送ローラ62は、メディアトレイ71を第1向き5へ搬送させる向きに回転する。ここで、ステップSB14における搬送用モータ102の正転での駆動量は、所定の駆動量が設定される。当該所定の駆動量は、例えば、トレイガイド76にセットされたメディアトレイ71が第2ローラ対59によって第1向き5へ押し戻され、第2ローラ59よりも前方へ搬送されて、第2ローラ59から離間するのに十分な駆動量である。メディアトレイ71が第2ローラ対59よりも前方において第2ローラ対59から離間されていれば、メディアトレイ71は第2ローラ対59によって複合機10の内部へ引き込まれることはないからである。
【0152】
ステップSB14の次に、制御部130は、ポート切替機構121の切替部材92を駆動することにより吸気ポート93とBkポート95とを連結させてから、搬送用モータ102を正転させることによりポンプ124を駆動する。ステップSB14の時点において、キャップ46がノズル面39から離間した第2姿勢である。よって、ポンプ124の駆動によって、空吸引が実行される(SB15)。なお、ステップSB15における空吸引は、第8の処理や第11の処理とは異なる処理として実行される。空吸引が実行された後、制御部130は、ポート切替機構121の切替部材92を駆動して、ポート切替機構121を予め設定された回転位相である原点位置に移動させる(SB16)。その後、ステップSB17〜SB19の処理が実行される。
【0153】
ステップSB7〜SB10、SB12〜SB19の処理が、クリーニングにおける全ての処理が実行されるまで繰り返される(SB11)。そして、第12の処理まで実行されると、クリーニングは終了する(SB20)。
【0154】
変形例1においては、ステップSB6、SB14において、制御部130がクリーニング中に搬送用モータ102を正転させているとき、クリーニングは中断された状態である。しかし、クリーニングが中断されることは好ましくない。クリーニングが中断されている間、記録ヘッド38のノズル面39やキャップ46にインクが残留した状態が維持されることにより、インクの混色や、装置内の他の部分への残留インクの付着による汚れが発生するおそれがあるからである。また、クリーニングが完了するまでの時間が長くなってしまうからである。
【0155】
そこで、変形例1においては、クリーニング中における制御部130による搬送用モータ102の正転での駆動が、以下に詳述するように、少なく抑えられる。メディアトレイ71が第1位置のトレイガイド76に支持されている状態で、搬送用モータ102が逆転された場合、メディアトレイ71は第2向き6に搬送されて、複合機10の内部へ搬送されてしまう。しかし、当該逆転の駆動量が少ない場合、例えば当該逆転の駆動量が第1所定量より小さい場合、メディアトレイ71の第2向き6への搬送量は少なく、メディアトレイ71の進行向き側に存在する障害物への衝突の可能性が低い。一方、当該逆転の駆動量が多い場合、例えば当該逆転の駆動量が第1所定量以上の場合、メディアトレイ71の第2向き6への搬送量は多く、障害物に衝突する可能性が高い。変形例1によれば、搬送用モータ102は、当該逆転の駆動量が第1所定量以上の場合、つまりメディアトレイ71の障害物への衝突の可能性が高い場合にのみ、正転される。つまり、搬送用モータ102の正転での駆動が、少なく抑えられる。以上より、クリーニングの中断の発生を少なくすることができる。
【0156】
また、変形例1においては、搬送用モータ102が正転で駆動された場合、当該正転は駆動伝達機構によってポンプ124に伝達される。これにより、ポンプ124が駆動される。キャップ46が第1姿勢のときにポンプ124が駆動されると、インクは、記録ヘッド38からキャップ46を介して吸引される。これにより、インクが無駄に消費されてしまう。そこで、変形例1によれば、制御部130は、キャップ46が第2姿勢であることを条件として、搬送用モータ102を正転させる。これにより、ポンプ124が駆動されても、キャップ46が第2姿勢であるために、インクはポンプ124に吸引されない。よって、インクの無駄な消費を防止することができる。
【0157】
[実施形態の変形例2]
以下、図11のフローチャートに基づいて、変形例2におけるメディアトレイ71の排出制御の処理手順が説明される。
【0158】
制御部130は、図11のフローチャートにおけるステップSC8、SC11、SC14、SC18で説明するように、トレイガイド76が第2位置でないことが姿勢検出センサ77によって検知された状態で、クリーニングの実行順序における搬送用モータ102の逆転での駆動量によって、上記実行順序における搬送用モータ102の正転での駆動量の合計と上記実行順序における搬送用モータ102の逆転での駆動量の合計との差分が第1所定量以上であることを条件として、搬送用モータ102を正転で駆動させてもよい。
【0159】
なお、図11のフローチャートの説明において、図9及び図10のフローチャートと同様の処理である部分は、その詳細な説明が省略される。
【0160】
図11のステップSC1〜SC7の処理は、図10のステップSB1〜SB7の処理と同様である。また、図11のステップSC12、SC13の処理は、図10のステップSB12、SB13の処理と同様である。また、図11のステップSC15〜SC17の処理は、図9のステップSB14〜SB16の処理と同様である。また、図11のステップSC19〜SC21の処理は、図9のステップSB17〜SB19の処理と同様である。また、図11のステップSC22の処理は、図9のステップSB10の処理と同様である。
【0161】
ステップSC7において、トレイガイド76が第2位置であると判断された場合(SC7:No)、クリーニングが続行される(SC22)。一方、ステップSC7において、トレイガイド76が第2位置でないと判断された場合(SC7:Yes)、制御部130は、クリーニングの実行順序に従って次の動作が実行される場合の搬送用モータ102の向きを判断する(SC8)。つまり、次の動作において、搬送用モータ102が逆転されるのか否かが判断される。
【0162】
搬送用モータ102が逆転されない場合(SC8:No)、クリーニングが続行される(SC22)。一方、搬送用モータ102が逆転される場合(SC8:Yes)、制御部130は、当該逆転の駆動量と累積駆動量との合計が第1所定量以上であるか否かを判断する(SC11)。
【0163】
ここで、第1所定量は、変形例1の場合と同様である。また、累積駆動量は、クリーニングの実行順序の各々における搬送用モータ102の駆動量(例えば、正転はプラスの値で、逆転はマイナスの値とされる。)を累積して加算した合計である。換言すると、累積駆動量は、クリーニングの実行順序における搬送用モータ102の正転での駆動量の合計と上記実行順序における搬送用モータ102の逆転での駆動量の合計との差分である。なお、累積駆動量は、ステップSC18においてリセットされるまで加算される。
【0164】
当該逆転の駆動量と累積駆動量との合計が第1所定量未満である場合(SC11:No)、制御部130は、搬送用モータ102を正転させなくてもメディアトレイ71が装置内において障害物に衝突するおそれがないと判断する。よって、制御部130は、累積駆動量に当該逆転の駆動量を加算して新たな累積駆動量とした上で(SC14)、クリーニングを続行する(SC22)。
【0165】
一方、当該逆転の駆動量と累積駆動量との合計が第1所定量以上である場合(SC11:Yes)、制御部130は、ステップSC12以降の処理を実行する。そして、ステップSC18において、累積駆動量は零にリセットされる。
【0166】
ステップSC7〜SC22の処理が、クリーニングにおける全ての処理が実行されるまで繰り返される(SC23)。そして、第12の処理まで実行されると、クリーニングは終了する(SC24)。
【0167】
変形例2によっても、変形例1と同様に、搬送用モータ102は、メディアトレイ71の障害物への衝突の可能性が高い場合にのみ、正転で駆動される。つまり、搬送用モータ102の正転での駆動が、少なく抑えられる。以上より、クリーニングの中断の発生を少なくすることができる。
【0168】
[実施形態の変形例3]
以下、図12及び図13のフローチャートに基づいて、変形例3におけるメディアトレイ71の排出制御の処理手順が説明される。
【0169】
制御部130は、図12のフローチャートにおけるステップSD7、SD8で説明するように、クリーニングが実行されている状態で、トレイガイド76が第2位置でないことが姿勢検出センサ77によって検知されたこと、クリーニングの実行順序における搬送用モータ102の逆転での駆動量が後述する第2所定量(本発明の第2所定量に相当)以上であることを条件として、給紙用モータ101を制御して、第1ローラ対58のピンチローラ61を当接姿勢から離間姿勢に姿勢変化させてもよい。
【0170】
また、制御部130は、図13のフローチャートにおけるステップSE3〜SE6で説明するように、メディアトレイ71がシート検知部110によって検知された状態で、クリーニングの実行順序における搬送用モータ102の逆転での駆動量が後述する第3所定量(本発明の第3所定量に相当)以上であることを条件として、搬送用モータ102を正転で駆動させてもよい。
【0171】
また、制御部130は、図13のフローチャートにおけるステップSE8、SE9で説明するように、メディアトレイ71がシート検知部110によって検知された状態で、クリーニングの実行順序における搬送用モータ102の正転での駆動量が、後述する第4所定量(本発明の第4所定量に相当)以下であることを条件として、クリーニングの実行順序における搬送用モータ102の正転での駆動量を第4所定量としてもよい。
【0172】
なお、図12及び図13のフローチャートの説明において、図9、図10、及び図11のフローチャートと同様の処理である部分は、その詳細な説明が省略される。
【0173】
図12のステップSD1〜SD3の処理は、図10のステップSB1、SB3、SB4の処理と同様である。また、図13のステップSE4〜SE6の処理は、図10のステップSB12〜SB14の処理と同様である。
【0174】
変形例3においては、ステップSD1において、クリーニングが開始されると、第1ローラ対58のピンチローラ61が当接姿勢から離間姿勢へ姿勢変化される場合がある。以下に詳述する。上述したように、記録メディア69に画像が記録される場合、メディアトレイ71が第1位置のトレイガイド76にセットされた状態で、操作パネル18が操作されて記録メディア69への画像記録が指示されると、給紙用モータ101が駆動されて、ピンチローラ61が当接姿勢から離間姿勢へ姿勢変化される。一方、クリーニングが実行される場合、通常は、トレイガイド76が第1位置にされることはない。しかし、操作パネル18が操作されてクリーニングの実行が指示されたときに、トレイガイド76が第1位置であると、給紙用モータ101が駆動されて、ピンチローラ61が当接姿勢から離間姿勢へ姿勢変化される。
【0175】
つまり、ステップSD1におけるクリーニングの開始時点において、トレイガイド76が第2位置でない場合、ピンチローラ61が当接姿勢から離間姿勢へ姿勢変化される。一方、ステップSD1におけるクリーニングの開始時点において、トレイガイド76が第2位置である場合、ピンチローラ61は当接姿勢を維持し、姿勢変化されない。
【0176】
ステップSD1〜SD3が実行された後、ステップSD4において、トレイガイドが第2位置であると判断された場合(SD4:No)、クリーニングが続行される(SD10)。
【0177】
一方、ステップSD4において、トレイガイド76が第2位置でないと判断された場合(SD4:Yes)、制御部130は、ピンチローラ61の姿勢が当接姿勢または離間姿勢のいずれであるかを判断する(SD5)。なお、ピンチローラ61の近傍に、ピンチローラ61の姿勢を検知するセンサを設けておくことにより、制御部130は、当該センサからの入力信号に基づいて、当該判断を行うことができる。また、制御部130は、ピンチローラ61の姿勢変化のために給紙用モータ101を駆動した際に、ピンチローラ61の現在の姿勢についての情報をRAM133に記憶しておき、記憶した当該情報によって当該判断を行うこともできる。
【0178】
ピンチローラ61が離間姿勢であると判断された場合(SD5:No)、後述するステップSE1(図13参照)以降の処理が実行される。一方、ピンチローラ61が当接姿勢であると判断された場合(SD5:Yes)、制御部130は、クリーニングの実行順序に従って次の動作が実行される場合の搬送用モータ102の向きを判断する(SD6)。つまり、次の動作において、搬送用モータ102が逆転されるのか否かが判断される。
【0179】
搬送用モータ102が逆転されないと判断された場合(SD6:No)、クリーニングが続行される(SD10)。一方、搬送用モータ102が逆転されると判断された場合(SD6:Yes)、制御部130は、ロータリーエンコーダ122の光センサからのパルス信号に基づいて、当該逆転の駆動量が第2所定量以上であるか否かを判断する(SD7)。
【0180】
ここで、第2所定量は、メディアトレイ71を、図2に示される区間Aだけ第2向き6に搬送させるために必要な搬送用モータ102の駆動量である。換言すると、第2所定量は、メディアトレイ71を、第2ローラ対59から第1ローラ対58まで搬送させるために必要な搬送用モータ102の駆動量である。
【0181】
当該逆転の駆動量が第2所定量未満である場合(SD7:No)、クリーニングが続行される(SD10)。一方、当該逆転の駆動量が第2所定量以上である場合(SD7:Yes)、制御部130は、給紙用モータ101を駆動させて、ピンチローラ61を当接姿勢から離間姿勢へ姿勢変化させる(SD8)。これにより、搬送用モータ102の逆転によって第2向き6に搬送されるメディアトレイ71は、第1ローラ対58に衝突しない。その結果、メディアトレイ71は、第1ローラ対58よりも第1向き5の上流側に搬送されることが可能となる。ステップSD8の後、制御部130は、ポート切替機構121の切替部材92を駆動して、ポート切替機構121を原点位置に移動させる(SD9)。その後、クリーニングが続行される(SD10)。
【0182】
ステップSD5において、ピンチローラ61が離間姿勢であると判断された場合(SD5:No)、図13に示されるように、制御部130は、光センサ111からの入力信号に基づいて、シート検知部110によってメディアトレイ71が検知されたか否かを判断する(SE1)。
【0183】
シート検知部110によってメディアトレイ71が検知されていない場合(SE1:No)、クリーニングが続行される(SD10、図12参照)。一方、シート検知部110によってメディアトレイ71が検知されている場合(SE1:Yes)、制御部130は、クリーニングの実行順序に従って次の動作が実行される場合の搬送用モータ102の向きを判断する(SE2、SE7)。つまり、次の動作において、搬送用モータ102が正転されるのか、逆転されるのか、或いは搬送用モータ102が駆動されない動作(例えばキャップ46の姿勢変化)が実行されるのかが判断される。
【0184】
搬送用モータ102が逆転されない場合(SE2:No)、次の動作において搬送用モータ102が正転されるのか、或いは搬送用モータ102が駆動されない動作が実行されるのかが判断される(SE7)。搬送用モータ102が正転されない場合(SE7:No)、クリーニングが続行される(SD10、図12参照)。搬送用モータ102が正転される場合(SE7:Yes)、制御部130は、ロータリーエンコーダ122の光センサからのパルス信号に基づいて、当該正転の駆動量が第4所定量(本発明の第4所定量に相当)以上であるか否かを判断する(SE8)。
【0185】
ここで、第4所定量は、メディアトレイ71をシート検知部110による検知位置から第1向き5に搬送して排出させるために必要な搬送用モータ102の正転での駆動量である。例えば、第4所定量は、当該検知位置から、第2ローラ59よりも第1向き5の下流側まで、メディアトレイ71を搬送するために必要な搬送用モータ102の正転での駆動量である。具体的には、第4所定量は、メディアトレイ71を、少なくとも図2に示される区間Cだけ第1向き5に搬送させるために必要な搬送用モータ102の駆動量である。
【0186】
当該正転の駆動量が第4所定量より大きい場合(SE8:No)、クリーニングが続行される(SD10、図12参照)。一方、当該正転の駆動量が第4所定量以下の場合(SE8:Yes)、制御部130は、搬送用モータ102を、当該正転の駆動量ではなく第4所定量だけ駆動させる(SE9)。つまり、搬送用モータ102の駆動量が、当該正転の駆動量から第4所定量に変更される。その後、クリーニングが続行される(SD10、図12参照)。
【0187】
ステップSE2において、搬送用モータ102が逆転される場合(SE2:Yes)、制御部130は、ロータリーエンコーダ122の光センサからのパルス信号に基づいて、当該逆転の駆動量が第3所定量(本発明の第3所定量に相当)以上であるか否かを判断する(SE3)。
【0188】
ここで、第3所定量は、メディアトレイ71を、シート検知部110による検知位置からメディアトレイ71の先端が衝突し得る障害物まで第2向き6に搬送させるために必要な搬送用モータ102の駆動量である。障害物は、例えば、メディアトレイ71が衝突し得る位置に配置されている複合機10のフレームや、複合機10に後側開口87が形成されていない場合における複合機10の後壁16(図8参照)や、第2経路65Bが形成されていない場合における外側ガイド部材22(図2に破線で示されている。)や、複合機10が設置されている室の壁(詳細には複合機10の背面に複合機10と対向して存在する壁)などである。
【0189】
図2に示されるように、障害物が複合機10の後壁16或いは室の壁の場合、第3所定量は、メディアトレイ71を、区間D1だけ第2向き6に搬送させるために必要な搬送用モータ102の駆動量である。障害物が外側ガイド部材22の場合、第3所定量は、メディアトレイ71を、区間D2だけ第2向き6に搬送させるために必要な搬送用モータ102の駆動量である。
【0190】
当該逆転の駆動量が第3所定量未満の場合(SE3:No)、クリーニングが続行される(SD10、図12参照)。一方、当該逆転の駆動量が第3所定量以上の場合(SE3:Yes)、ステップSE4〜SE6が実行された後、クリーニングが続行される(SD10、図12参照)。
【0191】
ステップSD4〜SD10、SE1〜SE9の処理が、クリーニングにおける全ての処理が実行されるまで繰り返される(SD11)。そして、制御部130は、第12の処理まで実行された時点において、ピンチローラ61が離間姿勢である場合(SD12:Yes)、ピンチローラ61を当接姿勢に姿勢変化させてから(SD13)、クリーニングを終了する(SD14)。一方、制御部130は、ピンチローラ61が当接姿勢である場合(SD12:No)、ピンチローラ61の姿勢を当接姿勢に維持したまま、クリーニングを終了する(SD14)。
【0192】
なお、上述の説明では、ステップSE1において、シート検知部110によってメディアトレイ71が検知された場合(SE1:Yes)、ステップSE2〜SE5が実行されてからステップSE6が実行された。しかし、ステップSE2〜SE5が実行されずに、直ちにステップSE6が実行されてもよい。つまり、制御部130は、クリーニングが実行されている状態で、メディアトレイ71がシート検知部110によって検知されたことを条件として、搬送用モータ102を正転で駆動させてもよい。
【0193】
クリーニングが実行されている状態で、トレイガイド76が第2位置でないことが姿勢検出センサ77によって検知された場合、メディアトレイ71がトレイガイド76によって直線路65へ進入可能に支持されているおそれがある。この場合に、メディアトレイ71が第2ローラ対59によって第2向き6に搬送されると、メディアトレイ71は複合機10の内部へ搬送されてしまう。メディアトレイ71の第2ローラ対59による搬送量が多い場合、例えば搬送用モータ102の駆動量が第2所定量以上である場合、メディアトレイ71は、相互に当接した第1搬送ローラ60及びピンチローラ61で構成される第1ローラ対58に衝突するおそれがある。そこで、変形例3によれば、上述の場合に、制御部130は、給紙用モータ101を制御して、ピンチローラ61を第1搬送ローラ60から離間させる。これにより、メディアトレイ71が第1ローラ対58に衝突することが回避可能である。
【0194】
また、シート検知部110よりも第2向き6側に障害物が存在する場合、第2向き6に搬送されているメディアトレイ71が、シート検知部110によって検知された後、更に第2向き6に搬送されると、メディアトレイ71は障害物に衝突するおそれがある。そこで、変形例3によれば、メディアトレイ71がシート検知部110によって検知された場合に、制御部130が搬送用モータ102を正転させる。これにより、メディアトレイ71は、第1ローラ対58及び第2ローラ対59によって第1向き5に搬送される。よって、メディアトレイ71が、第1ローラ対58よりも奥側に引き込まれることがない。以上より、メディアトレイ71が障害物と衝突することが、防止可能である。
【0195】
また、変形例3においては、変形例1と同様に、クリーニング中における制御部130による搬送用モータ102の正転での駆動が、以下に詳述するように、少なく抑えられる。メディアトレイ71がシート検知部110によって検知された状態で、搬送用モータ102が逆転された場合、メディアトレイ71は第2向き6に搬送されてしまう。しかし、当該逆転の駆動量が少ない場合、例えば当該逆転の駆動量が第3所定量より小さい場合、メディアトレイ71の第2向き6への搬送量は少なく、メディアトレイ71の進行向き側に存在する障害物への衝突の可能性が低い。一方、当該逆転の駆動量が多い場合、例えば当該逆転の駆動量が第3所定量以上の場合、メディアトレイ71の第2向き6への搬送量は多く、障害物に衝突する可能性が高い。変形例3によれば、搬送用モータ102は、当該逆転の駆動量が第3所定量以上の場合、つまりメディアトレイ71の障害物への衝突の可能性が高い場合にのみ、正転で駆動される。つまり、クリーニングの中断の原因である搬送用モータ102の正転での駆動が、少なく抑えられる。
【0196】
また、トレイがシート検知部110によって検知された状態で、搬送用モータ102が正転された場合、メディアトレイ71は第1向き5に搬送される。しかし、当該正転の駆動量が少ない場合、例えば当該正転の駆動量が第4所定量以下である場合、メディアトレイ71の第1向き5への搬送量は少ない。すると、メディアトレイ71が排出位置まで到達しないまま、当該正転が停止してしまうおそれがある。そして、次に、搬送用モータ102が逆転された場合、メディアトレイ71は第2向き6に搬送されてしまう。そこで、変形例3によれば、制御部130は、搬送用モータ102の正転での駆動量を第4所定量とする。これにより、メディアトレイ71を確実に排出することができる。
【0197】
[実施形態の変形例4]
図9〜図12においては、クリーニングの実行順序のうち、第1の処理から第6の処理の間は、トレイガイド76が第2位置であるか否かの判断が実行されていない。しかし、第1の処理から第6の処理の間においても、当該判断が実行されてもよい。
【0198】
例えば、図9においては、第1の処理から第7の処理の間に、トレイガイド76が第2位置でないと判断されると、ステップSA5以降の処理が実行される。また、図10においては、第1の処理から第6の処理の間に、トレイガイド76が第2位置でないと判断されると、ステップSB5以降の処理が実行される。また、図11においては、第1の処理から第6の処理の間に、トレイガイド76が第2位置でないと判断されると、ステップSC5以降の処理が実行される。また、図12においては、第1の処理から第6の処理の間に、トレイガイド76が第2位置でないと判断されると、ステップSD5以降の処理が実行される。
【0199】
また、図9〜図12においては、トレイガイド76が第2位置であるか否かの判断は、所定のタイミングでのみ実行されていた。しかし、制御部130は、姿勢検出センサ77からの入力信号を常時参照してもよい。これにより、当該判断は、上記所定のタイミング以外のタイミングでも実行される。
【0200】
例えば、図9においては、第1の処理の実行開始から第8の処理の実行開始までの間に、トレイガイド76が第2位置でないと判断されると、ステップSA5以降の処理が実行される。また、第8の処理の実行開始から第9の処理の実行開始までの間に、トレイガイド76が第2位置でないと判断されると、ステップSA12以降の処理が実行される。また、第9の処理の実行開始から第11の処理の実行開始までの間に、トレイガイド76が第2位置でないと判断されると、ステップSA16以降の処理が実行される。また、第11の処理の実行開始以降に、トレイガイド76が第2位置でないと判断されると、ステップSA12以降の処理が実行される。
【0201】
また、例えば、図10においては、第1の処理の実行開始から第7の処理の実行開始までの間に、トレイガイド76が第2位置でないと判断されると、ステップSB5以降の処理が実行される。また、第7の実行開始以降に、トレイガイド76が第2位置でないと判断されると、ステップSB8以降の処理が実行される。
【0202】
また、例えば、図11においては、第1の処理の実行開始から第7の処理の実行開始までの間に、トレイガイド76が第2位置でないと判断されると、ステップSC5以降の処理が実行される。また、第7の実行開始以降に、トレイガイド76が第2位置でないと判断されると、ステップSC8以降の処理が実行される。
【0203】
また、例えば、図12においては、クリーニングの実行開始から実行終了までの間に、トレイガイド76が第2位置でないと判断されると、ステップSD5以降の処理が実行される。
【符号の説明】
【0204】
10・・・複合機
24・・・記録部
46・・・キャップ
56・・・ワイパーブレード
58・・・第1ローラ対
59・・・第2ローラ対
65・・・直線路
71・・・メディアトレイ
76・・・トレイガイド
77・・・姿勢検出センサ
101・・・給紙用モータ
102・・・搬送用モータ
104・・・位置検出センサ
110・・・シート検知部
121・・・ポート切替機構
122・・・ロータリーエンコーダ
124・・・ポンプ
130・・・制御部
133・・・RAM
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体を載置可能なトレイと、
上記トレイが通過する搬送路と、
上記トレイを上記搬送路へ進入可能に支持する第1位置、及び上記搬送路と交差する方向に対して上記第1位置と異なる位置である第2位置に移動可能なトレイガイドと、
上記トレイガイドの位置を検知する第1検知部と、
上記搬送路に設けられており、ノズルが形成されたノズル面を有する記録ヘッドが搭載されており、上記ノズルからインク滴を吐出することによって被記録媒体に画像を記録する記録部と、
上記ノズル面を覆う第1姿勢及び上記ノズル面から離間した第2姿勢に姿勢変化可能なキャップと、
上記キャップに連通された状態で上記キャップ内からインクを吸引する吸引機構と、
上記キャップ及び上記吸引機構の連通の有無を切り替える切替機構と、
上記搬送路において上記記録部及び上記トレイガイドの間に設けられており、上記トレイを、上記搬送路に沿って、上記記録部から上記トレイガイドの第1向き、及び上記第1向きと逆向きの第2向きに搬送する第1搬送部と、
正転または逆転のうち一方の第1駆動及び他方の第2駆動が可能な第1駆動源と、
上記第1駆動源の上記第1駆動を、上記トレイを上記第1向きに搬送する駆動として上記第1搬送部に伝達するとともに上記吸引機構に伝達し、上記第1駆動源の上記第2駆動を、上記トレイを上記第2向きに搬送する駆動として上記第1搬送部に伝達するとともに上記切替機構に伝達する駆動伝達部と、
上記記録部及び上記キャップを、予め設定された所定順序に従って動作させ、上記第1駆動源を、上記所定順序に従って上記第1駆動及び上記第2駆動で駆動させることによって、上記吸引機構及び上記切替機構を制御して、上記記録ヘッドのクリーニングの実行を制御する制御部と、を備え、
上記制御部は、
上記クリーニングが実行されている状態で、上記トレイガイドが上記第2位置でないことが上記第1検知部によって検知されたことを条件として、上記第1駆動源を上記第1駆動で駆動させるインクジェット記録装置。
【請求項2】
上記第1駆動源の駆動量を検知する第2検知部を更に備え、
上記制御部は、
上記トレイガイドが上記第2位置でないことが上記第1検知部によって検知された状態で、上記所定順序における上記第1駆動源の上記第2駆動での駆動量が第1所定量以上であることを条件として、上記第1駆動源を上記第1駆動で駆動させる請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
上記第1駆動源の駆動量を検知する第2検知部を更に備え、
上記制御部は、
上記トレイガイドが上記第2位置でないことが上記第1検知部によって検知された状態での、上記所定順序における上記第1駆動源の上記第2駆動での駆動によって、上記所定順序における上記第1駆動源の上記第1駆動での駆動量の合計と上記所定順序における上記第1駆動源の上記第2駆動での駆動量の合計との差分が第1所定量以上であることを条件として、上記第1駆動源を上記第1駆動で駆動させる請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
上記第1所定量は、上記トレイを、上記第1搬送部から上記トレイの先端が衝突し得る障害物まで上記第2向きに搬送させるために必要な上記第1駆動源の駆動量である請求項2または3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
被記録媒体を載置可能なトレイと、
上記トレイが通過する搬送路と、
上記トレイを上記搬送路へ進入可能に支持する第1位置、及び上記搬送路と交差する方向に対して上記第1位置と異なる位置である第2位置に移動可能なトレイガイドと、
上記トレイガイドの位置を検知する第1検知部と、
上記搬送路に設けられており、ノズルが形成されたノズル面を有する記録ヘッドが搭載されており、上記ノズルからインク滴を吐出することによって被記録媒体に画像を記録する記録部と、
上記ノズル面を覆う第1姿勢及び上記ノズル面から離間した第2姿勢に姿勢変化可能なキャップと、
上記キャップに連通された状態で上記キャップ内からインクを吸引する吸引機構と、
上記キャップ及び上記吸引機構の連通の有無を切り替える切替機構と、
上記搬送路において上記記録部及び上記トレイガイドの間に設けられており、上記トレイを、上記搬送路に沿って、上記記録部から上記トレイガイドの第1向き、及び上記第1向きと逆向きの第2向きに搬送する第1搬送部と、
上記搬送路において上記記録部に対して上記トレイガイドと反対側に設けられた第1ローラと、上記第1ローラに当接した当接姿勢及び上記第1ローラから離間した離間姿勢とに姿勢変化可能な第2ローラとで構成されており、上記トレイを上記搬送路に沿って上記第1向き及び上記第2向きに搬送する第2搬送部と、
正転または逆転のうち一方の第1駆動及び他方の第2駆動が可能な第1駆動源と、
上記第2ローラを上記当接姿勢と上記離間姿勢とに姿勢変化させる第2駆動源と、
上記第1駆動源の上記第1駆動を、上記トレイを上記第1向きに搬送する駆動として上記第1搬送部及び上記第2搬送部に伝達するとともに上記吸引機構に伝達し、上記第1駆動源の上記第2駆動を、上記トレイを上記第2向きに搬送する駆動として上記第1搬送部及び上記第2搬送部に伝達するとともに上記切替機構に伝達する駆動伝達部と、
上記第1駆動源の駆動量を検知する第2検知部と、
上記記録部及び上記キャップを、予め設定された所定順序に従って動作させ、上記第1駆動源を、上記所定順序に従って上記第1駆動及び上記第2駆動で駆動させることによって、上記吸引機構及び上記切替機構を制御して、上記記録ヘッドのクリーニングの実行を制御する制御部と、を備え、
上記制御部は、
上記クリーニングが実行されている状態で、上記トレイガイドが上記第2位置でないことが上記第1検知部によって検知されたこと、上記所定順序における上記第1駆動源の上記第2駆動での駆動量が第2所定量以上であることを条件として、上記第2駆動源を制御して、上記第2搬送部の上記第2ローラを上記当接姿勢から上記離間姿勢に姿勢変化させるインクジェット記録装置。
【請求項6】
上記第2所定量は、上記トレイを、上記第1搬送部から上記第2搬送部まで搬送させるために必要な上記第1駆動源の駆動量である請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
上記搬送路において上記第2搬送部に対して上記記録部と反対側に設けられており、上記搬送路を搬送される上記トレイを検知する第3検知部を更に備え、
上記制御部は、
上記クリーニングが実行されている状態で、上記トレイが上記第3検知部によって検知されたことを条件として、上記第1駆動源を上記第1駆動で駆動させる請求項5または6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
上記制御部は、
上記トレイが上記第3検知部によって検知された状態で、上記所定順序における上記第1駆動源の上記第2駆動での駆動量が第3所定量以上であることを条件として、上記第1駆動源を上記第1駆動で駆動させる請求項7に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
上記第3所定量は、上記トレイを、上記第3検知部による検知位置から上記トレイの先端が衝突し得る障害物まで上記第2向きに搬送させるために必要な上記第1駆動源の駆動量である請求項8に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
上記制御部は、
上記トレイが上記第3検知部によって検知された状態で、上記所定順序における上記第1駆動源の上記第1駆動での駆動量が、上記トレイを上記第3検知部による検知位置から上記第1向きに搬送して排出させるために必要な第4所定量以下であることを条件として、上記所定順序における上記第1駆動源の上記第1駆動での駆動量を上記第4所定量とする請求項7から9のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
上記キャップの姿勢を検知する第4検知部を更に備え、
上記制御部は、
上記キャップが上記第2姿勢であることが上記第4検知部によって検知されたことを更なる条件として、上記第1駆動源を上記第1駆動で駆動させる請求項1から10のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
上記クリーニングが実行されている状態で、上記トレイガイドが上記第2位置でないことが上記第1検知部によって検知された場合に、上記クリーニングの上記所定順序に従った動作のうち未実行の動作を記憶する記憶部を更に備え、
上記制御部は、
上記第1駆動源を上記第1駆動で駆動させた後、上記トレイガイドが上記第2位置であることが上記第1検知部によって検知されたことを条件として、上記記憶部に記憶されている上記未実行の動作を実行する請求項1から11のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
上記ノズル面に当接可能な第3姿勢、及び上記ノズル面から離間した第4姿勢に姿勢変化可能なワイプ部を更に備え、
上記記録部は、上記第1向きと交差し且つ上記ノズル面に沿った第3方向へ往復移動可能であり、
上記第3姿勢の上記ワイプ部は、上記記録部の移動によって、上記ノズル面のうち上記ノズルが形成された領域の全てと当接可能であり、
上記駆動伝達部は、上記第1駆動源の上記第2駆動を上記ワイプ部に伝達し、上記ワイプ部を上記第3姿勢及び上記第4姿勢に姿勢変化させる請求項1から12のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項1】
被記録媒体を載置可能なトレイと、
上記トレイが通過する搬送路と、
上記トレイを上記搬送路へ進入可能に支持する第1位置、及び上記搬送路と交差する方向に対して上記第1位置と異なる位置である第2位置に移動可能なトレイガイドと、
上記トレイガイドの位置を検知する第1検知部と、
上記搬送路に設けられており、ノズルが形成されたノズル面を有する記録ヘッドが搭載されており、上記ノズルからインク滴を吐出することによって被記録媒体に画像を記録する記録部と、
上記ノズル面を覆う第1姿勢及び上記ノズル面から離間した第2姿勢に姿勢変化可能なキャップと、
上記キャップに連通された状態で上記キャップ内からインクを吸引する吸引機構と、
上記キャップ及び上記吸引機構の連通の有無を切り替える切替機構と、
上記搬送路において上記記録部及び上記トレイガイドの間に設けられており、上記トレイを、上記搬送路に沿って、上記記録部から上記トレイガイドの第1向き、及び上記第1向きと逆向きの第2向きに搬送する第1搬送部と、
正転または逆転のうち一方の第1駆動及び他方の第2駆動が可能な第1駆動源と、
上記第1駆動源の上記第1駆動を、上記トレイを上記第1向きに搬送する駆動として上記第1搬送部に伝達するとともに上記吸引機構に伝達し、上記第1駆動源の上記第2駆動を、上記トレイを上記第2向きに搬送する駆動として上記第1搬送部に伝達するとともに上記切替機構に伝達する駆動伝達部と、
上記記録部及び上記キャップを、予め設定された所定順序に従って動作させ、上記第1駆動源を、上記所定順序に従って上記第1駆動及び上記第2駆動で駆動させることによって、上記吸引機構及び上記切替機構を制御して、上記記録ヘッドのクリーニングの実行を制御する制御部と、を備え、
上記制御部は、
上記クリーニングが実行されている状態で、上記トレイガイドが上記第2位置でないことが上記第1検知部によって検知されたことを条件として、上記第1駆動源を上記第1駆動で駆動させるインクジェット記録装置。
【請求項2】
上記第1駆動源の駆動量を検知する第2検知部を更に備え、
上記制御部は、
上記トレイガイドが上記第2位置でないことが上記第1検知部によって検知された状態で、上記所定順序における上記第1駆動源の上記第2駆動での駆動量が第1所定量以上であることを条件として、上記第1駆動源を上記第1駆動で駆動させる請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
上記第1駆動源の駆動量を検知する第2検知部を更に備え、
上記制御部は、
上記トレイガイドが上記第2位置でないことが上記第1検知部によって検知された状態での、上記所定順序における上記第1駆動源の上記第2駆動での駆動によって、上記所定順序における上記第1駆動源の上記第1駆動での駆動量の合計と上記所定順序における上記第1駆動源の上記第2駆動での駆動量の合計との差分が第1所定量以上であることを条件として、上記第1駆動源を上記第1駆動で駆動させる請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
上記第1所定量は、上記トレイを、上記第1搬送部から上記トレイの先端が衝突し得る障害物まで上記第2向きに搬送させるために必要な上記第1駆動源の駆動量である請求項2または3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
被記録媒体を載置可能なトレイと、
上記トレイが通過する搬送路と、
上記トレイを上記搬送路へ進入可能に支持する第1位置、及び上記搬送路と交差する方向に対して上記第1位置と異なる位置である第2位置に移動可能なトレイガイドと、
上記トレイガイドの位置を検知する第1検知部と、
上記搬送路に設けられており、ノズルが形成されたノズル面を有する記録ヘッドが搭載されており、上記ノズルからインク滴を吐出することによって被記録媒体に画像を記録する記録部と、
上記ノズル面を覆う第1姿勢及び上記ノズル面から離間した第2姿勢に姿勢変化可能なキャップと、
上記キャップに連通された状態で上記キャップ内からインクを吸引する吸引機構と、
上記キャップ及び上記吸引機構の連通の有無を切り替える切替機構と、
上記搬送路において上記記録部及び上記トレイガイドの間に設けられており、上記トレイを、上記搬送路に沿って、上記記録部から上記トレイガイドの第1向き、及び上記第1向きと逆向きの第2向きに搬送する第1搬送部と、
上記搬送路において上記記録部に対して上記トレイガイドと反対側に設けられた第1ローラと、上記第1ローラに当接した当接姿勢及び上記第1ローラから離間した離間姿勢とに姿勢変化可能な第2ローラとで構成されており、上記トレイを上記搬送路に沿って上記第1向き及び上記第2向きに搬送する第2搬送部と、
正転または逆転のうち一方の第1駆動及び他方の第2駆動が可能な第1駆動源と、
上記第2ローラを上記当接姿勢と上記離間姿勢とに姿勢変化させる第2駆動源と、
上記第1駆動源の上記第1駆動を、上記トレイを上記第1向きに搬送する駆動として上記第1搬送部及び上記第2搬送部に伝達するとともに上記吸引機構に伝達し、上記第1駆動源の上記第2駆動を、上記トレイを上記第2向きに搬送する駆動として上記第1搬送部及び上記第2搬送部に伝達するとともに上記切替機構に伝達する駆動伝達部と、
上記第1駆動源の駆動量を検知する第2検知部と、
上記記録部及び上記キャップを、予め設定された所定順序に従って動作させ、上記第1駆動源を、上記所定順序に従って上記第1駆動及び上記第2駆動で駆動させることによって、上記吸引機構及び上記切替機構を制御して、上記記録ヘッドのクリーニングの実行を制御する制御部と、を備え、
上記制御部は、
上記クリーニングが実行されている状態で、上記トレイガイドが上記第2位置でないことが上記第1検知部によって検知されたこと、上記所定順序における上記第1駆動源の上記第2駆動での駆動量が第2所定量以上であることを条件として、上記第2駆動源を制御して、上記第2搬送部の上記第2ローラを上記当接姿勢から上記離間姿勢に姿勢変化させるインクジェット記録装置。
【請求項6】
上記第2所定量は、上記トレイを、上記第1搬送部から上記第2搬送部まで搬送させるために必要な上記第1駆動源の駆動量である請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
上記搬送路において上記第2搬送部に対して上記記録部と反対側に設けられており、上記搬送路を搬送される上記トレイを検知する第3検知部を更に備え、
上記制御部は、
上記クリーニングが実行されている状態で、上記トレイが上記第3検知部によって検知されたことを条件として、上記第1駆動源を上記第1駆動で駆動させる請求項5または6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
上記制御部は、
上記トレイが上記第3検知部によって検知された状態で、上記所定順序における上記第1駆動源の上記第2駆動での駆動量が第3所定量以上であることを条件として、上記第1駆動源を上記第1駆動で駆動させる請求項7に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
上記第3所定量は、上記トレイを、上記第3検知部による検知位置から上記トレイの先端が衝突し得る障害物まで上記第2向きに搬送させるために必要な上記第1駆動源の駆動量である請求項8に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
上記制御部は、
上記トレイが上記第3検知部によって検知された状態で、上記所定順序における上記第1駆動源の上記第1駆動での駆動量が、上記トレイを上記第3検知部による検知位置から上記第1向きに搬送して排出させるために必要な第4所定量以下であることを条件として、上記所定順序における上記第1駆動源の上記第1駆動での駆動量を上記第4所定量とする請求項7から9のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
上記キャップの姿勢を検知する第4検知部を更に備え、
上記制御部は、
上記キャップが上記第2姿勢であることが上記第4検知部によって検知されたことを更なる条件として、上記第1駆動源を上記第1駆動で駆動させる請求項1から10のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
上記クリーニングが実行されている状態で、上記トレイガイドが上記第2位置でないことが上記第1検知部によって検知された場合に、上記クリーニングの上記所定順序に従った動作のうち未実行の動作を記憶する記憶部を更に備え、
上記制御部は、
上記第1駆動源を上記第1駆動で駆動させた後、上記トレイガイドが上記第2位置であることが上記第1検知部によって検知されたことを条件として、上記記憶部に記憶されている上記未実行の動作を実行する請求項1から11のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
上記ノズル面に当接可能な第3姿勢、及び上記ノズル面から離間した第4姿勢に姿勢変化可能なワイプ部を更に備え、
上記記録部は、上記第1向きと交差し且つ上記ノズル面に沿った第3方向へ往復移動可能であり、
上記第3姿勢の上記ワイプ部は、上記記録部の移動によって、上記ノズル面のうち上記ノズルが形成された領域の全てと当接可能であり、
上記駆動伝達部は、上記第1駆動源の上記第2駆動を上記ワイプ部に伝達し、上記ワイプ部を上記第3姿勢及び上記第4姿勢に姿勢変化させる請求項1から12のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−139905(P2012−139905A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293965(P2010−293965)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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