説明

インクジェット記録装置

【課題】サブインクタンクに収容されるインクの漏れを抑制することができるインクジェット記録装置を提供すること。
【解決手段】記録ヘッド22よりも低い位置に配置されメインインクタンク23に収容されたインクを一旦収容し且つ記録ヘッド22へインクを供給しサブインクタンク上部孔245を有するサブインクタンク24と、大気と第1廃インクタンク26の内部とを連通させる大気連通孔264と、廃インクタンク上部孔265と、を有し、記録ヘッド22よりも低い位置に配置され、サブインクタンク上部孔245から溢れ出したインクを廃インクタンク上部孔265を介して収容する第1廃インクタンク26と、第1廃インクタンク26を介してサブインクタンク24の内部と大気とを連通させてサブインクタンク24から溢れ出したインクを記録ヘッド22よりも低い位置を経由させて第1廃インクタンク26へ排出する連通路121と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドのインク噴射用ノズルからインクを噴射して、用紙などの記録媒体上に記録を行うインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用紙などの記録媒体上に記録を行うインクジェット記録装置として、インク噴射用ノズルが形成されたノズル面を有する記録ヘッドと、記録ヘッドに供給されるインクを収容するメインインクタンクと、メインインクタンクに収容されたインクを一旦収容し且つ記録ヘッドへインクを供給するサブインクタンクと、を備えるインクジェット記録装置が知られている。
【0003】
このようなインクジェット記録装置において、記録ヘッドよりも低い位置に配置されると共に、大気とサブインクタンクの内部とを連通させる連通孔を有するサブインクタンクを備えるインクジェット記録装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載されるインクジェット記録装置は、サブインクタンクを記録ヘッドよりも低い位置に配置することにより、サブインクタンクに収容されるインクの液面の高さと記録ヘッドのノズル面とに高さの差(水頭差)を設けて、記録ヘッドのインク噴射用ノズルからのインクの漏れを抑制することができる。
【0004】
水頭差を利用して記録ヘッドのインク噴射用ノズルからのインクの漏れを抑制する技術においては、サブインクタンクにその内部と大気とを連通させる連通孔を設け、重力によるインクの圧力差を高さの差に置き換えて水頭差として設定する。水頭差を利用するインクジェット記録装置は、記録ヘッドのインク噴射用ノズルからのインクの漏れを簡易な構成で抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−23806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載されるインクジェット記録装置においては、大気とサブインクタンクの内部とを連通させる連通孔を有するため、メインインクタンクからサブインクタンクへ多量のインクが供給された場合に、連通孔を介してインクジェット記録装置の内部にインクが漏れ出す可能性があった。そのため、水頭差の技術を利用しつつ、サブインクタンクに収容されるインクの漏れを抑制することができるインクジェット記録装置が望まれている。
【0007】
本発明は、記録ヘッドよりも低い位置に配置されると共に大気と連通されるサブインクタンクを有し、サブインクタンクに収容されるインクの漏れを抑制することができるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、インク噴射用ノズルを有する記録ヘッドと、前記記録ヘッドに供給されるインクを収容するメインインクタンクと、前記記録ヘッドよりも低い位置に配置され、前記メインインクタンクに収容されたインクを一旦収容し且つ前記記録ヘッドへインクを供給し、上部側にサブインクタンク上部孔を有するサブインクタンクと、前記記録ヘッドよりも低い位置に配置される第1廃インクタンクであって、上部側に設けられると共に大気と該第1廃インクタンクの内部とを連通させる大気連通孔と、上部側に設けられる廃インクタンク上部孔と、を有し、前記サブインクタンク上部孔から溢れ出したインクを該廃インクタンク上部孔を介して収容する第1廃インクタンクと、一端が前記サブインクタンク上部孔に接続されると共に、他端が前記廃インクタンク上部孔に接続され、前記第1廃インクタンクを介して前記サブインクタンクの内部と大気とを連通させる連通路であって、前記サブインクタンクから溢れ出したインクを前記記録ヘッドよりも低い位置を経由させて前記第1廃インクタンクへ排出する連通路と、を備えるインクジェット記録装置に関する。
【0009】
また、前記サブインクタンクは、前記第1廃インクタンクよりも高い位置に配置されることが好ましい。
【0010】
また、前記メインインクタンクは、1又は複数設けられ、前記第1廃インクタンクに収容可能なインクの容量は、前記1又は複数のメインインクタンクに収容可能なインクの容量の合計以上であることが好ましい。
【0011】
また、前記インク噴射用ノズルから排出されたインクを収容する第2廃インクタンクを更に備えることが好ましい。
【0012】
また、前記第1廃インクタンクに収容されるインクの量を検知する検知センサと、前記検知センサにより検知されたインクの量が所定の閾値以上の場合に前記第1廃インクタンクに収容されたインクの量が所定の量以上であることを報知する報知部と、を更に備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、記録ヘッドよりも低い位置に配置されると共に大気と連通されるサブインクタンクを有し、サブインクタンクに収容されるインクの漏れを抑制することができるインクジェット記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態におけるインクジェット記録装置1の概要を正面側から模式的に示す縦断面図である。
【図2】本実施形態のインクジェット記録装置1において、各記録ヘッド22に対応してキャップユニット50が装着された状態における記録部20及び搬送ユニット30の周辺を示す平面図である。
【図3】本実施形態のインクジェット記録装置1におけるインク給排液部100の構成を模式的に示す概略構成図である。
【図4】本実施形態のインクジェット記録装置1における電源がオンされた直後のインク給排液部100の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1及び図2により、本実施形態のインクジェット記録装置1における全体構造の概要を説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態におけるインクジェット記録装置1の概要を正面側から模式的に示す縦断面図である。図2は、本実施形態のインクジェット記録装置1において、各記録ヘッド22に対応してキャップユニット50が装着された状態における記録部20及び搬送ユニット30の周辺を示す平面図である。
【0017】
図1及び図2に示すように、本実施形態のインクジェット記録装置1は、本体2内に、記録部20と、クリーニング部25と、搬送ユニット30と、インク給排液部100と、搬送ユニット30を昇降させる昇降装置40と、キャップユニット50と、キャップユニット50を水平移動させる第1水平移動機構(図示せず)と、クリーニング部25を水平移動させる第2水平移動機構(図示せず)とを備える。
本実施形態のインクジェット記録装置1は、更に、給紙カセット3と、給紙ローラ4と、用紙搬送路5と、レジストローラ対6と、乾燥装置7と、排紙ローラ対8と、排紙口9と、排紙トレイ10と、を備える。
【0018】
図1及び図2に示すように、搬送ユニット30は、駆動ローラ32と、従動ローラ33と、駆動ローラ32及び従動ローラ33に掛け渡される搬送ベルト31と、搬送ベルト31のテンションを調整するテンションローラ34と、搬送ベルト31の搬送面の下側(記録部20とは反対側)に装備される空気吸引ユニット(図示せず)とを有する。搬送ベルト31及び空気吸引ユニットの上面には、それぞれ吸引用の貫通孔(図示せず)が多数設けられている。
【0019】
駆動ローラ32及び従動ローラ33が正面視で反時計方向に回転することにより、搬送ベルト31の上面部分で形成される搬送面31Aは、水平面(X−Y平面)内の用紙搬送方向Pの一方から他方に向けて水平移動される。つまり、搬送ベルト31の搬送面31A上においては、用紙搬送方向Pは、水平方向Xとほぼ一致する。空気吸引ユニットは、搬送ベルト31の搬送面31Aの下側(記録部20とは反対側)に配置され、搬送ベルト31の搬送面31Aに記録媒体としての用紙Tを吸着させる吸引力を作用させる。
搬送ベルト31としては、両端部を互いに重ね合わせて接合してエンドレス状にしたベルトや、継ぎ目を有しない(シームレス)ベルト等を用いることができる。
【0020】
図2に示すように、所定の記録時には、記録媒体としての用紙Tは、搬送ベルト31の搬送面31A上に、用紙搬送方向Pの一方側から導入される。搬送面31Aには、空気吸引ユニット(図示せず)の動作に伴って、前記の吸引用の貫通孔(図示せず)を介して搬送ベルト31に作用する吸引力が生じている。搬送ベルト31の搬送面31A上に導入された用紙Tは、前記吸引力により搬送面31Aに吸着されて、用紙搬送方向Pの他方側に向けて搬送される。このように搬送ベルト31の搬送面31Aに吸着された状態で搬送される用紙Tに向けて、後述する記録部20の記録ヘッド22からインクが吐出されることにより、用紙Tに画像等が記録される(印刷される)。
【0021】
図1に示すように、給紙カセット3は、用紙Tを積層状態で収容するものであり、本体2の内部の下方における搬送ユニット30の用紙搬送方向Pの上流側に配置されている。給紙ローラ4は、給紙カセット3の上方に配置されている。この給紙ローラ4により、用紙Tは、図1における給紙カセット3の右上方に向けて送り出される。
【0022】
用紙搬送路5、レジストローラ対6、記録部20及び搬送ユニット30は、給紙カセット3の用紙搬送方向Pの下流側に配置されている。給紙カセット3から送り出された用紙Tは、用紙搬送路5を通ってレジストローラ対6に到達する。レジストローラ対6は、用紙Tの斜め送りを矯正して用紙Tを再度送り出す。記録部20とレジストローラ対6との間の用紙搬送路5に設けられた用紙先端検出センサ(図示せず)により、用紙Tの先端部が検出され、その検出されたタイミングに基づいて、記録部20は、後述するようなインクの吐出動作を実行する。
【0023】
図1に示すように、乾燥装置7は、本体2の内部の上方における搬送ユニット30の用紙搬送方向Pの下流側に配置されている。乾燥装置7は、記録部20において吐出されるインクにより記録された後における用紙Tのインクを乾燥させる。
【0024】
排紙ローラ対8、排紙口9及び排紙トレイ10は、乾燥装置7の用紙搬送方向Pの下流側に、この順で配置されている。乾燥装置7によりインクの乾燥が終了した用紙Tは、排紙ローラ対8により用紙搬送方向Pの下流側に送られ、排紙口9を通して、本体2の外側に設けられた排紙トレイ10に送られて、本体2の外部に排出される。
【0025】
図1及び図2に示すように、記録部20は、4色に対応する記録ヘッド22を有する。4色に対応する記録ヘッド22とは、ブラック用の記録ヘッド22K、シアン用の記録ヘッド22C、マゼンタ用の記録ヘッド22M、イエロー用の記録ヘッド22Yである。これら4色の記録ヘッド22K、22C、22M、22Yは、用紙搬送方向P(水平方向X)に直交する用紙幅方向Yに沿って長く延びている。記録ヘッド22K、22C、22M、22Yは、搬送ベルト31の用紙搬送方向Pに沿って、用紙搬送方向Pの上流側から下流側に向かって順に配列して配置されている。本実施形態においては、4色の記録ヘッド22K、22C、22M、22Yそれぞれにおいて、1色の記録ヘッドにつき1個の記録ヘッドを配置している。
【0026】
4色の記録ヘッド22K、22C、22M、22Yは、インク噴射用ノズルが形成されたノズル面221(図3参照)を有する。ノズル面221は、4色の記録ヘッド22K、22C、22M、22Yの下面である。各記録ヘッド22K、22C、22M、22Yにおけるノズル面221は、搬送ベルト31の搬送面31Aに対向する。4色の記録ヘッド22K、22C、22M、22Yは、ノズル面221に形成されたインク噴射用ノズルから噴射されたインクにより用紙Tに画像を記録する。
【0027】
図1に示すように、インク給排液部100は、4つのメインインクタンク23K、23C、23M、23Yと、4つのサブインクタンク24K、24C、24M、24Yと、1つの第1廃インクタンク26と、を主体に構成される。
4つのメインインクタンク23K、23C、23M、23Yは、4色の記録ヘッド22K、22C、22M、22Yそれぞれに対応して、搬送ユニット30の上方に配置されている。4つのメインインクタンク23K、23C、23M、23Yは、4色の記録ヘッド22K、22C、22M、22Yに供給されるインクを収容する。4つのメインインクタンク23K、23C、23M、23Yに収容された各色のインクは、後述する4つのサブインクタンク24K、24C、24M、24Yに供給される。4つのメインインクタンク23K、23C、23M、23Yは、搬送ベルト31の用紙搬送方向Pに沿って、用紙搬送方向Pの上流側から下流側に向かって順に配列して配置されている。
【0028】
4つのサブインクタンク24K、24C、24M、24Yは、4つのメインインクタンク23K、23C、23M、23Yそれぞれに対応して、搬送ユニット30の下方に配置されている。4つのサブインクタンク24K、24C、24M、24Yは、4つのメインインクタンク23K、23C、23M、23Yに収容された各色のインクを一旦収容する。4つのサブインクタンク24K、24C、24M、24Yは、搬送ベルト31の用紙搬送方向Pに沿って、用紙搬送方向Pの上流側から下流側に向かって順に配列して配置されている。
4つのサブインクタンク24K、24C、24M、24Yに収容された各色のインクは、4つのサブインクタンク24K、24C、24M、24Yから4色の記録ヘッド22K、22C、22M、22Yへ供給される。
【0029】
第1廃インクタンク26は、4つのサブインクタンク24K、24C、24M、24Yの下方に配置されている。第1廃インクタンク26は、4つのサブインクタンク24K、24C、24M、24Yから溢れ出したインクを収容する。
インク給排液部100の詳細については後述する。
【0030】
なお、以下の説明において、特に特定する必要がある場合を除いて、4色の記録ヘッド22K、22C、22M、22Y、4つのメインインクタンク23K、23C、23M、23Y、及び4つのサブインクタンク24K、24C、24M、24Yについては、それぞれの識別記号である「K」、「C」、「M」、「Y」を省略して、単に「記録ヘッド22」、「メインインクタンク23」及び「サブインクタンク24」と記載する。
【0031】
記録部20の各記録ヘッド22は、外部コンピュータ(図示せず)から受信した画像データ情報(例えば、文字、図形、模様)に対応して、搬送ベルト31の搬送面31A上に載置された用紙Tに向かって4色のインクを吐出する。図2に示すように、各記録ヘッド22は、矩形板状の記録ヘッド支持部材21に支持されており、この記録ヘッド支持部材21と共に、本体2に固定されている。そして、搬送ベルト31の回転移動と共に、所定のタイミングで各記録ヘッド22から4色のインクが順次吐出されることにより、用紙Tには、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの4色のインクが重ね合わせられ、カラーインク画像が印刷される。
【0032】
記録ヘッド22のインク吐出方式としては、例えば、ピエゾ素子(図示せず)を用いてインクを押し出すピエゾ方式や、発熱体(図示せず)によって気泡を発生させ、圧力を掛けてインクを吐出するサーマルインクジェット方式等の各種吐出方式を採用することができる。
【0033】
図1に示すように、搬送ユニット30を昇降させる昇降装置40は、搬送ユニット30の下方に配置されている。昇降装置40は、搬送ユニット30を記録ヘッド22に対して、水平面(X−Y平面)に垂直な方向Z(以下「上下方向Z」ともいう)に昇降(移動)させるものである。この昇降装置40による搬送ユニット30の上下方向Zの移動により、搬送ベルト31の搬送面31Aは、記録ヘッド22のノズル面221(図3参照)に対して相対的に接近又は離間可能に構成されている。
【0034】
図1に示すように、昇降装置40は、搬送ベルト31の下方における用紙搬送方向Pの上流側及び下流側に配置された2つの偏心カム41を備える。偏心カム41は、搬送ユニット30の正面側及び背面側にそれぞれ2個ずつ、合計4個設けられる。偏心カム41の偏心周面は、搬送ユニット30の外底面に下方から接近する。図1に示すように、各偏心カム41は、用紙幅方向Yに延びる軸部42を備えると共に、回転軸線が偏在するカムで構成される。偏心カム41は、モータ(図示せず)を介して、軸部42を中心として回転される。偏心カム41は、その周縁部に、複数のベアリング43を備えている。ベアリング43の周面の一部は、偏心カム41の周面から外方に突出している。
【0035】
ベアリング43は、偏心カム41の回転軸線と平行な軸線を中心として回転自在となっている。ベアリング43は、偏心カム41の先端側から回転軸線側に向かって順次配置されている。通常の印刷状態においては、図1に示すように、軸部42から最も離れたベアリング43は、搬送ユニット30の外底面に下方から当接する。これにより、搬送ユニット30は、最高位置に上昇移動される。
【0036】
この状態から、用紙搬送方向Pの上流側の偏心カム41を正面視で反時計方向に回転させると共に、用紙搬送方向Pの下流側の偏心カム41を正面視で時計方向に回転させる。これにより、複数のベアリング43は、軸部42から最も離れたベアリング43から軸部42に最も近いベアリング43の順で、搬送ユニット30の外底面に順次当接する。そのため、搬送ユニット30を下降させることができる。
複数のベアリング43は、偏心カム41の回転時において、周縁方向で隣り合う2個のベアリング43が同時に搬送ユニット30の外底面に当接する期間を有するような間隔に、配置されている。
【0037】
昇降装置40の偏心カム41を回転させて搬送ユニット30を下降させることにより、搬送ユニット30における搬送ベルト31の搬送面31Aは、記録ヘッド22に対して下方に離間される。
【0038】
図1に示すように、キャップユニット50は、記録部20の下方で且つ搬送ユニット30の上方(記録部20と搬送ユニット30との間)に配置可能に構成される。図2に示すように、キャップユニット50は、各記録ヘッド22に対応して設けられる複数のキャップケース52と、複数のキャップケース52を所定の位置関係に固定支持したキャップベース部材53とを備える。
【0039】
キャップユニット50は、記録部20と搬送ユニット30との間に配置された状態において、昇降装置40により搬送ユニット30の昇降に連動して昇降可能に構成される。昇降装置40の偏心カム41を回転させて搬送ユニット30を下降させることにより、キャップユニット50は、搬送ベルト31の搬送面31Aの下降に連動して、記録ヘッド22に対して下方に離間される。
【0040】
これにより、記録ヘッド22からキャップユニット50が離脱される。そして、キャップユニット50が記録ヘッド22から離脱された状態で、記録ヘッド22のノズル面221のインク噴射用ノズル(図示せず)からインクを噴射させることにより、インク噴射用ノズル内に残留する高い粘度のインクを吐出させてインク詰まりを解消するための吐出回復処理、すなわち、パージを実行することが可能である。
【0041】
一方、昇降装置40の偏心カム41を前述とは逆方向に回転させて搬送ユニット30を上昇させることにより、搬送ユニット30は、通常の記録位置(印刷位置)に戻される。
【0042】
ここで、キャップユニット50が記録部20と搬送ユニット30との間に配置された状態においては、記録ヘッド22のノズル面221(図3参照)には、キャップユニット50を装着することが可能となる。また、後述する第1水平移動機構(図示せず)によりキャップユニット50が記録部20と搬送ユニット30との間に配置されない状態においては、記録ヘッド22は、搬送ベルト31の搬送面31A上に載置された用紙Tに向けてインクを吐出することができる。
【0043】
キャップユニット50は、第1水平移動機構(図示せず)によってキャップベース部材53が水平方向に移動操作されることにより、用紙搬送方向P(図1参照)に水平移動可能に構成されている。
【0044】
キャップユニット50は、第1水平移動機構による移動操作により、キャップケース52が各記録ヘッド22に着脱可能な着脱位置、又は着脱位置から水平方向に離れた退避位置に位置切り替えられる。記録部20における記録動作時には、キャップユニット50は、退避位置に配置される。
【0045】
クリーニング部25は、キャップユニット50の下方で且つ搬送ユニット30の上方(キャップユニット50と搬送ユニット30との間)に配置可能に構成される。クリーニング部25は、キャップユニット50と同様に、キャップユニット50と搬送ユニット30との間に配置された状態において、昇降装置40により搬送ユニット30の昇降に連動して昇降可能に構成される。
【0046】
また、クリーニング部25は、第2水平移動機構(図示せず)により用紙搬送方向P(図1参照)に水平移動可能に構成される。クリーニング部25は、第2水平移動機構による移動操作により、各記録ヘッド22の下方に配置されて各記録ヘッド22をクリーニングすることが可能なワイプ位置、又はワイプ位置から水平方向に離れた退避位置に切り替えられる。記録部20における記録動作時や、キャップユニット50が記録ヘッド22のノズル面221(図3参照)に装着される場合には、クリーニング部25は、退避位置に配置される。
【0047】
以下、図3を参照して、本実施形態のインクジェット記録装置1における特徴部分であるインク給排液部100に関連する構成について詳細に説明する。図3は、本実施形態のインクジェット記録装置1におけるインク給排液部100の構成を模式的に示す概略構成図である。
【0048】
図3に示すように、インク給排液部100は、記録ヘッド22と、メインインクタンク23と、サブインクタンク24と、第1廃インクタンク26と、第2廃インクタンク27と、キャップケース52と、第1インク供給路122と、第2インク供給路123と、連通路121と、インク排出路124と、第1ポンプ105と、第2ポンプ106と、開閉弁109と、第1液面検知センサ107と、検知センサとしての第2液面検知センサ108と、弁開閉駆動部110と、制御部150と、を備える。
【0049】
記録ヘッド22は、前述の通り、インク噴射用ノズルが形成されたノズル面221を有する。記録ヘッド22は、ノズル面221に形成されたインク噴射用ノズルから噴射されたインクにより用紙Tに画像を記録する。
【0050】
メインインクタンク23は、記録ヘッド22に供給されるインクを収容する。メインインクタンク23に収容されたインクは、第1インク供給路122(後述)を介してサブインクタンク24(後述)へ供給される。
【0051】
サブインクタンク24は、メインインクタンク23よりも低い位置に配置される。サブインクタンク24は、記録ヘッド22よりも低い位置に配置される。サブインクタンク24は、メインインクタンク23に収容されたインクを一旦収容する。サブインクタンク24は、記録ヘッド22へインクを供給する。言い換えると、サブインクタンク24に収容されたインクは、第2インク供給路123(後述)を介して、記録ヘッド22へ供給される。
【0052】
第1インク供給路122は、メインインクタンク23とサブインクタンク24とを接続する。第1インク供給路122は、略垂直方向に延びる筒状のチューブにより構成される。第1インク供給路122は、メインインクタンク23に収容されたインクをサブインクタンク24へ供給する。第1インク供給路122の上流側の端部は、メインインクタンク23の底部に接続される。第1インク供給路122の下流側の端部は、サブインクタンク24に接続されており、サブインクタンク24の底部から離間した状態で、サブインクタンク24に収容されたインクの中に開口している。
【0053】
開閉弁109は、第1インク供給路122の途中に設けられる。開閉弁109は、第1インク供給路122を開放又は閉止可能に構成される。
【0054】
開閉弁109が開放状態にある場合には、メインインクタンク23に収容されるインクは、第1インク供給路122を通してサブインクタンク24へ向けて流通することが可能である。また、開閉弁109が閉止状態にある場合には、メインインクタンク23に収容されるインクは、第1インク供給路122を通してサブインクタンク24へ向けての流通が不能である。
開閉弁109としては、例えば、電磁式の開閉弁又は電動式の開閉弁が用いられる。開閉弁109は、後述する弁開閉駆動部110により開放状態又は閉止状態に切り替えられる。
【0055】
本実施形態においては、サブインクタンク24がメインインクタンク23よりも低い位置に配置されると共に、第1インク供給路122が略垂直方向に延びるように配置される。そのため、メインインクタンク23に収容されたインクは、開閉弁109が開放状態にある場合には、重力により第1インク供給路122を通してサブインクタンク24へ供給される。
【0056】
サブインクタンク24は、上部側にサブインクタンク上部孔245を有する。サブインクタンク上部孔245には、連通路121(後述)の一端が接続される。連通路121(後述)の他端は、第1廃インクタンク26(後述)に接続される。そのため、サブインクタンク24の内部と第1廃インクタンク26(後述)の内部とは、連通路121(後述)を介して連通される。
また、詳細については後述するが、第1廃インクタンク26(後述)の内部は、大気連通孔264(後述)により大気と連通されている。そのため、サブインクタンク24の内部は、第1廃インクタンク26(後述)を介して大気と連通される。
【0057】
以上のように、サブインクタンク24は、記録ヘッド22よりも低い位置に配置されると共に、その内部が大気と連通される。このようにして、サブインクタンク24に収容されるインクの液面と記録ヘッド22のノズル面221とには、高さの差(水頭差)Hが設けられる。記録ヘッド22のノズル面221がサブインクタンク24に収容されるインクの液面よりも高い位置に位置されるため、記録ヘッド22のノズル面221に形成されたインク噴射用ノズルからのインクの漏れを抑制することができる。
【0058】
また、サブインクタンク24に収容されたインクは、その液面がサブインクタンク上部孔245に達した場合には、サブインクタンク上部孔245を介してサブインクタンク24から溢れ出す。そして、サブインクタンク24から溢れ出したインクは、サブインクタンク上部孔245を介して連通路121(後述)に導出される。
【0059】
第1廃インクタンク26は、サブインクタンク24よりも低い位置に配置される。第1廃インクタンク26は、記録ヘッド22よりも低い位置に配置される。
【0060】
第1廃インクタンク26は、上部側に設けられる大気連通孔264と、上部側に設けられる廃インクタンク上部孔265と、を有する。
大気連通孔264は、第1廃インクタンク26の上部において外部に向けて開口する。これにより、大気連通孔264は、大気と第1廃インクタンク26の内部とを連通させる。
【0061】
廃インクタンク上部孔265は、第1廃インクタンク26の上部において開口する。廃インクタンク上部孔265には、連通路121(後述)の他端が接続される。サブインクタンク24から溢れ出したインクは、連通路121を通り、廃インクタンク上部孔265を介して第1廃インクタンク26に収容される。
【0062】
このように、第1廃インクタンク26は、サブインクタンク24から溢れ出たインクを収容する。第1廃インクタンク26に収容可能なインクの容量は、4つのメインインクタンク23K、23C、23M、23Y(図1参照)に収容可能なインクの容量の合計以上である。つまり、第1廃インクタンク26は、4つのメインインクタンク23K、23C、23M、23Yに収容されるインクの全てが4つのサブインクタンク24K、24C、24M、24Yを介して排出された場合に、4つのメインインクタンク23K、23C、23M、23Yに収容されるインクの全てを収容可能である。
【0063】
連通路121は、サブインクタンク24と第1廃インクタンク26とを接続する。具体的には、連通路121の上流側の一端は、サブインクタンク上部孔245に接続される。連通路121の下流側の他端は、廃インクタンク上部孔265に接続される。
【0064】
連通路121は、上方に凸の略U字状に湾曲された筒状のチューブにより構成される。連通路121の頂上の部分は、記録ヘッド22よりも低い位置に位置される。連通路121を構成するチューブの内径は、第1インク供給路122を構成するチューブの内径よりも大きく形成される。
【0065】
前述の通り、第1廃インクタンク26の内部は、大気連通孔264により大気と連通されている。そのため、連通路121は、第1廃インクタンク26を介してサブインクタンク24の内部と大気とを連通させる。
【0066】
また、連通路121は、サブインクタンク24から溢れ出したインクを記録ヘッド22よりも低い位置(連通路121における頂上の部分)を経由させて第1廃インクタンク26へ排出する。
【0067】
第2インク供給路123は、サブインクタンク24と記録ヘッド22とを接続する。第2インク供給路123は、上方に凸の略U字状に湾曲された筒状のチューブにより構成される。第2インク供給路123は、サブインクタンク24に収容されたインクを記録ヘッド22へ供給する。第2インク供給路123の上流側の端部は、サブインクタンク24の下方側におけるインクが収容される部分の側面に接続される。第2インク供給路123の下流側の端部は、記録ヘッド22の上部に接続される。
【0068】
第1ポンプ105は、第2インク供給路123の途中に設けられる。第1ポンプ105は、パージを実行する際に、サブインクタンク24に収容されたインクを記録ヘッド22へ向けて供給する。
【0069】
キャップケース52は、記録ヘッド22に対応して設けられる。キャップケース52は、対応する記録ヘッド22の下方側に配置される。キャップケース52には、パージの実行後における記録ヘッド22のインク噴射用ノズルから噴射された(排出された)インクが収容される。
【0070】
第2廃インクタンク27は、キャップケース52よりも低い位置に配置される。第2廃インクタンク27は、キャップケース52に収容された記録ヘッド22のインク噴出用ノズルから排出されたインクをインク排出路124(後述)を介して収容する。
【0071】
インク排出路124は、キャップケース52と第2廃インクタンク27とを接続する。インク排出路124は、筒状のチューブにより構成される。インク排出路124は、キャップケース52に収容されたインクを第2廃インクタンク27へ排出する。インク排出路124の上流側の端部は、キャップケース52の底部に接続される。インク排出路124の下流側の端部は、第2廃インクタンク27の上部に接続されており、第2廃インクタンク27の内部に開口している。
【0072】
第2ポンプ106は、インク排出路124の途中に設けられる。第2ポンプ106は、キャップケース52に収容されたインクを吸引して第2廃インクタンク27へ向けて排出する。
【0073】
第1液面検知センサ107は、サブインクタンク24の側面に設けられる。第1液面検知センサ107は、サブインクタンク24に収容されるインクの量を検知する。第1液面検知センサ107は、サブインクタンク24に収容されるインクの液面の高さが所定の閾値未満であることを検知する。これにより、第1液面検知センサ107は、サブインクタンク24に収容されるインクが所定量未満であることを検知する。
【0074】
所定の閾値としては、例えば、パージ動作時にパージのための記録ヘッド22へ供給されるインクの量を確保することができるインクの液面の高さ、印刷時に記録ヘッド22へ供給されるインクの量を確保することができるインクの液面の高さ、記録ヘッド22へインクを供給するためのインクの液面と記録ヘッド22のノズル面221との高さの差(水頭差)Hを確保することができるインクの液面の高さが設定される。
第1液面検知センサ107は、インクの液面の高さが所定の閾値未満であることを検知した場合には、後述する弁開閉制御部152に検知信号を出力する。
【0075】
第2液面検知センサ108は、第1廃インクタンク26の側面に設けられる。第2液面検知センサ108は、第1廃インクタンク26に収容されるインクの量を検知する。第2液面検知センサ108は、第1廃インクタンク26に収容されるインクの液面の高さが所定の閾値以上であることを検知する。所定の閾値としては、例えば、サブインクタンク24から第1廃インクタンク26にインクが溢れ出していることを検知するため、第2液面検知センサ108で検知可能な最も低いインクの液面の高さを設定することができる。第2液面検知センサ108は、インクの液面の高さが所定の閾値以上であることを検知した場合には、後述する報知部151に検知信号を出力する。
【0076】
弁開閉駆動部110は、開閉弁109を開放状態又は閉止状態に切り替える。弁開閉駆動部110は、後述する弁開閉制御部152により制御される。
【0077】
制御部150は、報知部151と、弁開閉制御部152と、第1ポンプ制御部153と、第2ポンプ制御部154と、を備える。
報知部151には、警告表示部155が接続される。報知部151は、第2液面検知センサ108から出力された検知信号を監視して、第1廃インクタンク26に収容されるインクの液面の高さが所定の閾値以上であるか否かを判定する。
【0078】
報知部151は、第2液面検知センサ108により検知されたインクの量が所定の閾値以上である場合に、第1廃インクタンク26に収容されたインクの量が所定の量以上であることを報知する。具体的には、例えば、報知部151は、インクジェット記録装置1の電源がオンされた直後において、第2液面検知センサ108から出力された検知信号を監視して、第1廃インクタンク26に収容されるインクの液面の高さが所定の閾値以上であると判定された場合には、警告表示部155にメッセージを表示するように制御する。
【0079】
弁開閉制御部152は、第1液面検知センサ107から出力された検知信号を監視して、サブインクタンク24に収容されるインクの液面の高さが所定の閾値未満であるか否かを判定する。弁開閉制御部152は、サブインクタンク24に収容されるインクの液面の高さが所定の閾値未満であると判定された場合には、開閉弁109を開放するように弁開閉駆動部110を制御する。
【0080】
第1ポンプ制御部153は、パージ時において、パージを実行する際に必要な量のインクをサブインクタンク24から記録ヘッド22へ供給するように第1ポンプ105を制御する。
第2ポンプ制御部154は、キャップケース52に収容されたインクを吸引して第2廃インクタンク27へ排出するように第2ポンプ106を制御する。
【0081】
次に、図1及び図3を参照して、本実施形態のインクジェット記録装置1のインク給排液部100の動作について簡単に説明する。
ユーザは、インクジェット記録装置1に所定の印刷命令を指示する。これにより、インクジェット記録装置1は、印刷命令を受け付ける。インクジェット記録装置1は、用紙Tに印刷を開始する。
【0082】
印刷時においては、記録ヘッド22には、サブインクタンク24からインクが供給される。ここで、サブインクタンク24には、メインインクタンク23から供給されたインクが収容されている。
【0083】
記録ヘッド22に供給されたインクは、記録ヘッド22のノズル面221のインク噴射用ノズルから用紙Tに向けて噴射される。これにより、用紙Tには、所定の印刷が行われる。
【0084】
サブインクタンク24に収容されるインクの量は、所定量未満にならないように確保される。具体的には、弁開閉制御部152は、第1液面検知センサ107からの検知信号を監視して、サブインクタンク24に収容されるインクの液面の高さが所定の閾値未満であるか否かを判定する。弁開閉制御部152は、サブインクタンク24に収容されるインクの液面の高さが所定の閾値未満であると判定された場合には、開閉弁109が開放状態になるように弁開閉駆動部110を制御する。
【0085】
これにより、サブインクタンク24に収容されるインクの量が所定量未満の場合には、メインインクタンク23に収容されるインクは、開閉弁109を開状態とすることで、重力により第1インク供給路122を介してサブインクタンク24に補充される。従って、サブインクタンク24に収容されるインクの量は、所定量以上に確保される。
【0086】
ここで、サブインクタンク24に収容されるインクの量が所定量未満となる要因としては、印刷によるインクの消費や、パージによるインクの消費などがある。
パージは、インク噴射用ノズル内に残留する高い粘度のインクを吐出させてインク詰まりを解消するために、所定のタイミングで行われる。パージ時においては、第1ポンプ制御部153は、パージを実行する際に必要とされる量のインクを、サブインクタンク24から記録ヘッド22へ供給するように第1ポンプ105を制御する。これにより、インク噴射用ノズル内に残留する高い粘度のインクが吐出されて、インク噴射用ノズルのインク詰まりが解消される。パージの実行後において、記録ヘッド22のインク噴射用ノズルから噴射されたインクは、キャップケース52に収容される。
【0087】
また、記録ヘッド22の噴射用ノズルからは、インクが漏れないことが好ましい。そのため、本実施形態におけるインクジェット記録装置1においては、サブインクタンク24に収容されるインクの液面と記録ヘッド22におけるノズル面221とには、水頭差Hが設けられている。具体的には、サブインクタンク24は、記録ヘッド22よりも低い位置に配置され、且つ、サブインクタンク24の内部は、大気と連通されている。これにより、記録ヘッド22のインク噴射用ノズルからインクが漏れることが抑制される。
【0088】
また、前述の通り、パージの実行後において、キャップケース52には、記録ヘッド22の噴射用ノズルから噴射されたインクが収容される。そのため、第2ポンプ制御部154は、所定のタイミングで、キャップケース52に収容されたインクを吸引して第2廃インクタンク27に排出するように第2ポンプ106を制御する。そして、キャップケース52に収容されたインクは、第2廃インクタンク27に排出されて収容される。これにより、キャップケース52からインクが溢れ出すことが抑制される。
【0089】
ところで、第1インク供給路122の途中に設けられる開閉弁109の破損等により、メインインクタンク23に収容されるインクがサブインクタンク24に多量に供給される場合がある。多量のインクがサブインクタンク24に供給されると、インクの液面が上昇していく。そして、サブインクタンク24に収容しきれない量のインクがサブインクタンク24に供給された場合には、サブインクタンク24に収容されたインクは、サブインクタンク上部孔245から溢れ出すこととなる。
【0090】
本実施形態においては、サブインクタンク上部孔245には、連通路121の一端が接続されている。連通路121の他端は、第1廃インクタンク26に接続されている。そして、連通路121は、記録ヘッド22よりも低い位置を経由して第1廃インクタンク26に接続されている。また、第1廃インクタンク26は、記録ヘッド22及びサブインクタンク24よりも低い位置に配置される。
【0091】
そのため、サブインクタンク24に収容しきれずにサブインクタンク24から溢れ出したインクは、連通路121を介して第1廃インクタンク26へ排出される。これにより、サブインクタンク24から溢れ出したインクは、第1廃インクタンク26に収容されるため、インクジェット記録装置1の内部に漏れることが抑制される。
【0092】
また、連通路121を構成する円筒状のチューブは、第1インク供給路122を構成するチューブよりも径が大きい。そのため、サブインクタンク24から溢れ出したインクは、連通路121をスムーズに通り、第1廃インクタンク26へ排出される。
【0093】
なお、サブインクタンク24に多量のインクが収容された場合には、インクは、第2インク供給路123側へも移動する。ここで、第1廃インクタンク26は、記録ヘッド22よりも低い位置に配置されている。また、連通路121は、サブインクタンク24から第1廃インクタンク26までの間において、サブインクタンク24から溢れ出したインクを記録ヘッド22よりも低い位置(連通路121における頂上の部分)を経由させるように配置されている。
【0094】
そのため、サブインクタンク24から第2インク供給路123へ移動したインクは、記録ヘッド22には到達しない。従って、記録ヘッド22のインク噴射用ノズルからインクが漏れることを抑制することができる。
【0095】
また、第1廃インクタンク26に収容可能なインクの容量は、4つのメインインクタンク23K、23C、23M、23Y(図1参照)に収容可能なインクの容量の合計以上である。そのため、4つのメインインクタンク23K、23C、23M、23Yに収容されるインクの全てを4つのサブインクタンク24K、24C、24M、24Y(図1参照)を介して第1廃インクタンク26に収容可能である。
【0096】
従って、第1廃インクタンク26は、4つのサブインクタンク24K、24C、24M、24Yから溢れ出す可能性のあるインクの全てを収容することができる。これにより、サブインクタンク24から溢れ出したインクは、その全てが第1廃インクタンク26に収容されるため、インクジェット記録装置1の内部に漏れることが一層抑制される。
【0097】
ここで、メインインクタンク23に収容されるインクが減少した場合に、新たなインクをメインインクタンク23に補充する場合又は新たなインクが収容されたメインインクタンク23に交換する場合がある。メインインクタンク23にインクを補充する場合又は新たなメインインクタンク23に交換する場合には、第1廃インクタンク26に排出されるインクは、第1廃インクタンク26に収容可能なインクの容量を超えてしまう可能性がある。
【0098】
そのため、所定量以上のインクが第1廃インクタンク26に収容されたことを、第1廃インクタンク26からインクが溢れ出す前に検知したい場合がある。
また、第1廃インクタンク26に収容されるインクの量を検知することにより、サブインクタンク24から所定の量以上のインクが溢れ出しているという異常を検知したい場合がある。
そこで、本実施形態においては、インクジェット記録装置1は、電源がオンされた直後において、第1廃インクタンク26に収容されたインクの液面の高さを検知する。
【0099】
以下に、図4を参照して、本実施形態のインクジェット記録装置1における電源がオンされた直後のインク給排液部100の動作について説明する。図4は、本実施形態のインクジェット記録装置1における電源がオンされた直後のインク給排液部100の動作を説明するフローチャートである。
【0100】
図4に示すように、ステップST1において、インクジェット記録装置1は、ユーザにより、電源がオンされる。
【0101】
ステップST2において、報知部151は、第2液面検知センサ108からの検知信号を監視して、第1廃インクタンク26に収容されるインクの液面の高さが所定の閾値以上であるか否かを判定する。第1廃インクタンク26に収容されるインクの液面の高さが所定の閾値以上であると判定された場合(YES)には、ステップST3へ進む。第1廃インクタンク26に収容されるインクの液面の高さが所定の閾値未満であると判定された場合(NO)には、ステップST4へ進む。
【0102】
ステップST3において、報知部151は、警告表示部155にメッセージを表示させる。これにより、ユーザは、第1廃インクタンク26に収容されるインクの液面の高さが所定以上であることを把握することができる。そして、第1廃インクタンク26に収容されるインクを回収する必要が生じていることを検知することや、サブインクタンク24から所定の量以上のインクが溢れ出しているという異常を検知することができる。
この場合、例えば、インクジェット記録装置1は、印刷命令を受け付けない状態に移行される。そして、警告表示部155にメッセージを表示した状態で、制御は終了する。
【0103】
ステップST2における第1廃インクタンク26に収容されるインクの液面の高さが所定の閾値未満であると判定された場合(NO)のステップST4において、インクジェット記録装置1は、印刷命令を受け可能な状態となる。そして、印刷命令が指示されることにより、インクジェット記録装置1は、印刷命令を受け付ける。
【0104】
ステップST5において、インクジェット記録装置1が印刷命令を受け付けることにより、サブインクタンク24に収容されたインクは、サブインクタンク24から第2インク供給路123を介して記録ヘッド22に供給される。これにより、所定の印刷が開始される。そして、制御は終了する。
【0105】
本実施形態のインクジェット記録装置1によれば、例えば、次のような効果が奏される。
本実施形態のインクジェット記録装置1においては、インク噴射用ノズルを有する記録ヘッド22と、記録ヘッド22に供給されるインクを収容するメインインクタンク23と、記録ヘッド22よりも低い位置に配置され、メインインクタンク23に収容されたインクを一旦収容し且つ記録ヘッド22へインクを供給し、上部側にサブインクタンク上部孔245を有するサブインクタンク24と、記録ヘッド22よりも低い位置に配置される第1廃インクタンク26であって、上部側に設けられると共に大気と第1廃インクタンク26の内部とを連通させる大気連通孔264と、上部側に設けられる廃インクタンク上部孔265と、を有し、サブインクタンク上部孔245から溢れ出したインクを廃インクタンク上部孔265を介して収容する第1廃インクタンク26と、一端がサブインクタンク上部孔245に接続されると共に、他端が廃インクタンク上部孔265に接続され、第1廃インクタンク26を介してサブインクタンク24の内部と大気とを連通させる連通路121であって、サブインクタンク24から溢れ出したインクを記録ヘッド22よりも低い位置を経由させて第1廃インクタンク26へ排出する連通路121と、を備える。
【0106】
そのため、サブインクタンク24は、記録ヘッド22よりも低い位置に配置される。また、サブインクタンク24の内部は、大気と連通している。これにより、記録ヘッド22のノズル面221とサブインクタンク24に収容されるインクの液面とには、水頭差Hが設けられる。また、サブインクタンク24に収容しきれずにサブインクタンク24から溢れ出したインクは、連通路121を介して第1廃インクタンク26へ排出される。従って、記録ヘッド22のインク噴射用ノズルからインクが漏れることを抑制しつつ、サブインクタンク24に収容されるインクの漏れを抑制することができる。
【0107】
また、本実施形態のインクジェット記録装置1においては、サブインクタンク24は、第1廃インクタンク26よりも高い位置に配置される。そのため、サブインクタンク24から溢れ出したインクは、第1廃インクタンク26へ排出されやすい。これにより、サブインクタンク24に収容されるインクの漏れを一層抑制することができる。
【0108】
また、本実施形態のインクジェット記録装置1においては、メインインクタンク23は、1又は複数設けられ、第1廃インクタンク26に収容可能なインクの容量は、1又は複数のメインインクタンク23に収容可能なインクの容量の合計以上である。
【0109】
そのため、4つのメインインクタンク23K、23C、23M、23Yに収容されるインクの全てを4つのサブインクタンク24K、24C、24M、24Yを介して第1廃インクタンク26に収容可能である。これにより、第1廃インクタンク26は、4つのメインインクタンク23K、23C、23M、23Yに収容されるインクの全てが4つのサブインクタンク24K、24C、24M、24Yを介して排出された場合に、4つのメインインクタンク23K、23C、23M、23Yに収容されるインクの全てを収容可能である。従って、第1廃インクタンク26に収容されたインクがインクジェット記録装置1の内部に漏れることを抑制することができる。
【0110】
また、本実施形態のインクジェット記録装置1においては、記録ヘッド22のインク噴射用ノズルから排出されたインクを収容する第2廃インクタンク27を更に備える。そのため、サブインクタンク24から溢れ出したインクを収容する第1廃インクタンク26は、第2廃インクタンク27と別のインクタンクとして構成される。
【0111】
これにより、サブインクタンク24から溢れ出したインクは、第1廃インクタンク26のみに収容される。従って、サブインクタンク24から溢れ出したインクの量を容易に把握することができる。
そして、第1廃インクタンク26には、サブインクタンク24から溢れ出したインクのみが収容される。従って、第1廃インクタンク26に必要とされる収容可能なインクの容量を容易に把握できるため、第1廃インクタンク26の容量を容易に設定することができる。
更に、第1廃インクタンク26に収容されたインクの量を監視するだけで、サブインクタンク24からインクが溢れ出していることを検知することができる。
【0112】
また、本実施形態のインクジェット記録装置1においては、第1廃インクタンク26に収容されるインクの量を検知する第2液面検知センサ108と、第2液面検知センサ108により検知されたインクの量が所定の閾値以上の場合に第1廃インクタンク26に収容されたインクの量が所定の量以上であることを報知する報知部151と、を更に備える。
【0113】
そのため、第1廃インクタンク26に収容されたインクの量が所定の量以上であることを容易に把握することができる。これにより、第1廃インクタンク26からインクが溢れ出す前に、第1廃インクタンク26からインクを回収して、第1廃インクタンク26に収容されたインクの漏れを抑制することができる。また、サブインクタンク24から所定の量以上のインクが溢れ出していることを検知することができる。
【0114】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
例えば、前述の実施形態においては、第1廃インクタンク26がサブインクタンク24よりも低い位置に配置される構成としているが、これに制限されない。第1廃インクタンク26がサブインクタンク24よりも高い位置に配置される構成としてもよい。
【符号の説明】
【0115】
1……インクジェット記録装置、22……記録ヘッド、23……メインインクタンク、24……サブインクタンク、26……第1廃インクタンク、27……第2廃インクタンク、108……第2液面検知センサ(検知センサ)、151…報知部、121…連通路、245……サブインクタンク上部孔、264……大気連通孔、265……廃インクタンク上部孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク噴射用ノズルを有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに供給されるインクを収容するメインインクタンクと、
前記記録ヘッドよりも低い位置に配置され、前記メインインクタンクに収容されたインクを一旦収容し且つ前記記録ヘッドへインクを供給し、上部側にサブインクタンク上部孔を有するサブインクタンクと、
前記記録ヘッドよりも低い位置に配置される第1廃インクタンクであって、上部側に設けられると共に大気と該第1廃インクタンクの内部とを連通させる大気連通孔と、上部側に設けられる廃インクタンク上部孔と、を有し、前記サブインクタンク上部孔から溢れ出したインクを該廃インクタンク上部孔を介して収容する第1廃インクタンクと、
一端が前記サブインクタンク上部孔に接続されると共に、他端が前記廃インクタンク上部孔に接続され、前記第1廃インクタンクを介して前記サブインクタンクの内部と大気とを連通させる連通路であって、前記サブインクタンクから溢れ出したインクを前記記録ヘッドよりも低い位置を経由させて前記第1廃インクタンクへ排出する連通路と、
を備えるインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記サブインクタンクは、前記第1廃インクタンクよりも高い位置に配置される
請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記メインインクタンクは、1又は複数設けられ、
前記第1廃インクタンクに収容可能なインクの容量は、前記1又は複数のメインインクタンクに収容可能なインクの容量の合計以上である
請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記インク噴射用ノズルから排出されたインクを収容する第2廃インクタンクを更に備える
請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記第1廃インクタンクに収容されるインクの量を検知する検知センサと、
前記検知センサにより検知されたインクの量が所定の閾値以上の場合に前記第1廃インクタンクに収容されたインクの量が所定の量以上であることを報知する報知部と、を更に備える
請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−30398(P2012−30398A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169655(P2010−169655)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】