説明

インクジェット記録装置

【課題】インクジェット記録装置における記録ヘッドの着脱などのために操作レバーが複数設けられている場合にこれら操作部を常に正しい順序で操作することを可能とする。
【解決手段】ヘッドセットレバー780の回動操作が完了して、記録ヘッドをキャリッジ部から取り外すことが可能となる。このとき、ヘッドセットレバー780の上記回動操作によって、リンク780を介して接続された被供給口挿脱部800がスライドし、被供給口挿脱部800のニードルパイプは記録ヘッドから最も離れた状態となるとともに、ニ−ドル挿脱レバー830がケース壁913の下方に移動した状態となる。これにより、操作者は、ヘッドセットレバー750が開状態では、ニ−ドル挿脱レバー830のみを回動させることができない。このように、ヘッドセットレバー750が開状態にあるときに、被供給口挿脱部800のインク供給口102への接続に用いられるニ−ドル挿脱レバー830の操作を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関し、詳しくは、記録ヘッドを搭載して移動可能なキャリッジに対する記録ヘッドの着脱と、記録ヘッドとインク供給路相互の着脱をそれぞれ対応する操作レバーによって行うインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の着脱機構では、例えば、記録ヘッドと、記録ヘッドへインクを供給するためのインク供給路と、を相互に着脱する構成として、インク供給路側のニードルパイプを記録ヘッド側の、ゴム等で成型されたシール接続部材に挿入するものがある。そして、このようなニードルパイプをシール接続部材に挿入して接続を行うには、比較的大きな力が必要となる場合が多い。従って、上記着脱の構成では、操作レバー等の梃子を利用した部材を用い上記着脱のための操作力を小さくすることが行われている。また、これとは別に、記録ヘッドをキャリッジに対して着脱するための操作レバーも設けられることが多い。
【0003】
これらのレバーの操作は、通常別々に行うように構成されているため、操作者は複数のレバーの操作を行う。このため、操作者がレバーの操作順序を誤るといった誤操作を行う可能性がある。このような誤操作があると、インク供給系の適確な接続ができずインクの漏洩を生じさせて記録ヘッドがインク不吐出になったり、インク供給系のジョイント構造や記録ヘッドの構成部品を損傷させたりすることがある。
【0004】
これに対し、特許文献1には、記録ヘッドをキャリッジに対して着脱するためのヘッドセットレバーとインク供給路と記録ヘッドとの着脱を行うためのニードル移動レバーの2つのレバーを設けた構成において、誤った操作が途中で阻止される構成が記載されている。具体的には、ヘッドセットレバーの操作によって記録ヘッドがキャリッジに装着されないうちに誤ってニードル移動レバーを操作すると、このニードル移動レバーによって動作する部分がヘッドセットレバーと干渉してそれ以上の動作を不能とするものである。この構成により、操作レバーの誤操作がその途中で阻止されると共に、操作者にレバーの誤操作を認識させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−234179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、2つの操作レバーのうち、どちらのレバーからでも操作が可能である。このため、操作者は誤った順序でレバーを操作させる可能性がある。この場合、操作の途中で2つのレバーが相互に干渉することによってその操作が阻止されるものの、例えば、操作者が過大な力を作用させて操作を行っているような場合には、上記相互干渉の部分を基点として無理な力が働き装置の一部を損傷させるようなことがある。
【0007】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、操作レバーなど操作部が複数設けられている場合にこれら操作部を常に正しい順序で操作することを可能とするインクジェット記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのために本発明では、インクを吐出する記録ヘッドを備えた記録ヘッド部を着脱自在に装着し、記録ヘッドからインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置であって、記録ヘッド部に対して着脱自在に装着される連結部であって、インクタンクから記録ヘッド部へインクを供給するためのインク供給路を記録ヘッド部に連結するための連結部と、前記連結部の記録ヘッド部に対する連結および分離の操作をするための第1操作部材と、記録ヘッド部の前記インクジェット記録装置に対する装着および取り外しの操作をするための第2操作部材と、前記第1操作部材の操作によって前記連結部を記録ヘッドから分離した状態で前記第2操作部材を操作することによる、記録ヘッド部を前記インクジェット記録装置から取り外し可能とする動作に連動して、前記第1操作部材を記録ヘッド部の装着位置から離れる方向へ移動させるリンク機構と、前記リンク機構によって前記第1操作部材が移動した位置で、当該第1操作部材を覆う部材と、を具えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上の構成によれば、操作レバーなど操作部が複数設けられている場合にこれら操作部を常に正しい順序で操作することを可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の内部構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示したインクジェット記録装置を、外装を構成するメインケースで覆った状態を示す斜視図である。
【図3】図1に示したキャリッジ部に着脱自在に搭載されるカートリッジタイプの記録ヘッド部を示す斜視図である。
【図4】上記キャリッジ部の詳細な構成を示す斜視図である。
【図5】同じく上記キャリッジ部の詳細な構成を示す斜視図である。
【図6】同じく上記キャリッジ部の詳細な構成を示す斜視図である。
【図7】本発明に実施形態に関し、記録ヘッド部がキャリッジに装着固定され、被供給口挿脱部が連結された状態を示す斜視図である。
【図8】同じく、記録ヘッド部は装着されているが、被供給口挿脱部は切離された状態を示す斜視図である。
【図9】同じく、記録ヘッド部が取り外され、被供給口挿脱部は記録ヘッド部から切離された状態を示す斜視図である。
【図10】本発明に実施形態に係る被供給口挿脱部を示す斜視図である。
【図11】上記被供給口挿脱部に設けられたニードル挿脱レバーを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置を示す斜視図である。本実施形態の記録装置は、大きく分けて、給紙部20、記録媒体搬送部(用紙搬送部)30、排紙部40、記録ヘッド部100を搭載するキャリッジ部70、記録ヘッド回復部(回復ユニット)50および供給タンクユニット60を有して構成されている。
【0013】
ホスト装置(不図示)から送られて来た記録データは、制御基板5に構成される記録装置制御部(不図示)の所定の記憶部に一時的に格納され、同制御部は、記録開始指令があると格納した記録データに基づいて記録動作が開始する。記録が開始されると、先ず給紙動作が行われる。給紙部20は自動給送部(ASF:Automatic Sheet Feeder)によって構成され、この自動給送部から記録動作ごとに記録媒体としての記録シートが1枚ずつ用紙搬送部30に向けて給送される。そして、給送された記録シートは、用紙搬送部30で所定改行量ずつ搬送される。
【0014】
用紙搬送部上方にはキャリッジ部70が構成されている。キャリッジ部70は、主に、記録ヘッドと、この記録ヘッドを搭載し記録シートの搬送方向と交叉(通常直交)する方向に走査(移動)するキャリッジと、を備えて構成される。キャリッジの移動は、装置のシャーシに固定されたガイドシャフト14とシャーシの上部に固定されたサポートレール15とによって案内支持されている。このキャリッジは、キャリッジモータ17とアイドラプーリ18との間に張架されたキャリッジベルト16を介してキャリッジモータ17の駆動力が伝達されることにより、ガイドシャフト14に沿って往復移動(走査)することができる。また、キャリッジには、流路連結機構としての被供給口挿脱部800が装着され、この被供給口挿脱部を介して可撓性のチューブから成る供給チューブ630が記録ヘッドに連結されている。このインク供給チューブ630は、キャリッジの走査範囲全域で追従できるように這いまわされて供給タンクユニット60に接続されている。
【0015】
供給タンクユニット60には、インク色ごとのメインタンク610が着脱可能に装着される。また、このメインタンク610に貯蔵されたインクを記録ヘッドへ移送するためのポンプ等で形成した供給ポンプユニット640が設けられている。この供給タンクユニット60は、装置前面となる排紙口近傍に配設されている。以上の構成により、キャリッジ部70の走査中においても、メインタンク610に貯蔵されているインクは、供給ポンプユニット640によってインク供給チューブ630を介して記録ヘッドへ供給することが可能となる。
【0016】
キャリッジ上の基板はフレキシブルフラットケーブル(FFC)733を介して装置本体側の回路基板(制御回路)と電気的に結合されている。これにより、FFC733を介してヘッド制御回路からの信号が記録ヘッドに伝達され、記録ヘッドから記録データに応じてインクを吐出することができる。また、記録ヘッドの走査方向と平行に張架されたコードストリップを、キャリッジに搭載されたCRエンコーダ(不図示)によって読み取ることにより、走査における記録ヘッドからの吐出タイミングを定めることができる。このようにして、1ライン分の記録が終了すると、用紙搬送部30によって所定量だけ記録シートを搬送(紙送り)する。この動作を繰り返して実施することにより、記録シート全面にわたって記録を行った後、用紙排紙部40で記録シートを排出して記録が終了する。
【0017】
図2は、図1に示したインクジェット記録装置を、ASF20を除いて、外装を構成するメインケース910で覆った状態を示す斜視図である。メインケース910は樹脂からなり、複数の部品を組み合わせて構成されていてもよいし、一部品で構成されていてもよい。メインケース910の上面には、電源ボタン(不図示)と、主として、インクジェット記録装置に異常が発生した際にリセットを行うために用いられるリセットボタン(不図示)が設けられている。メインケース910の前面には、アクセスカバー(不図示)が開閉可能に設けられている。不図示のアクセスカバーを開くことによって、図2に示すように、メインケース910内の記録機構部の主要部分を露出させることができる。なお、インクジェット記録装置には、アクセスカバー(不図示)が開いたことを検知するカバー開閉検知手段が設けられており、これによって、アクセスカバー(不図示)が開いたことが検知される。メインケース910の開口部911には、切り欠き部912が形成されており、この切り欠き部912によって、後述されるようにニ−ドル挿脱レバーを操作するための空間が形成されている。
【0018】
(各部の詳細の説明)
次に、以上説明したインクジェット記録装置におけるキャリッジ部や記録ヘッド部などの詳細について説明する。
【0019】
<記録ヘッド部>
図3は、キャリッジ部70に着脱自在に搭載されるカートリッジタイプの記録ヘッド部を示す斜視図である。本実施形態の記録ヘッド部100は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)、淡シアン(LC)、淡マゼンタ(LM)の6色のインクについてそれぞれの吐出口列を備えている。各吐出口列における複数の吐出口それぞれの内部には、インク吐出のエネルギーとして用いられる熱エネルギーを発生するヒータが設けられ、このヒータに記録信号に応じて電気パルスを印加することにより吐出口からインクが吐出される。
【0020】
また、記録ヘッド部100の内部には、インク色ごとにサブタンク(不図示)が設けられ、メインインクタンク610から記録ヘッド部100へ送られる対応するインクを一時的に貯留する。このメインインクタンクからサブタンクへインクを供給するための供給チューブ630(図1)はインク供給口102において、記録ヘッド部100に接続される。具体的には、供給口102は記録ヘッド部100と一体化されて構成されている円筒状の突出部を有する。そして、この円筒状突出部は、それぞれ先端部に、被供給口挿脱部800(図1)の被供給口を形成するニードルパイプが挿入できるようにそのニードルパイプの外径よりも大きい穴が形成されたものである。また、円筒状突出部の内側には、ゴムや軟質樹脂等で成形された円筒形状のシール接続部材105が嵌入されている。このシール接続部材105は、その中央には上記ニードルパイプの外径より小さい径の小孔が形成され、この小孔のニードルパイプを挿入する側にはテーパが設けられている。このようにインク供給口102にシール接続部材105を設けることにより、被供給口挿脱部800がインク供給口102に接続される際には、ニードルパイプは、シール接続部材105の小孔を押し広げながら挿入される。これによって、ニードルパイプの外側面と小孔の内側面との面接触による密閉が確保される。
【0021】
記録ヘッド部100の本体部の左右両側壁の上面には、傾斜角をもって形成された傾斜面109や位置決め掛合部101が設けられている。これにより、記録ヘッド部100をキャリッジに装着する際に、後述するヘッドセットレバーの回動に応じて記録ヘッド部100をキャリッジ上の所定の装着位置に移動させて位置付けることができる。
【0022】
<キャリッジ>
図4〜図6は、キャリッジ部70の詳細な構成を示す斜視図であり、後述のヘッドセットレバー(第2操作部材)およびニ−ドル挿脱レバー(第1操作部材)の操作に応じた3つの状態を示している。
【0023】
このうち、図6は、ヘッドセットレバー750の操作によって記録ヘッド部100をキャリッジ710から取り外した状態を示している。キャリッジ部70には、記録ヘッド部100を記録ヘッド収容部に案内するキャリッジカバー720と、記録ヘッド部をキャリッジの所定位置に固定するためのヘッド固定部740を一体に形成したヘッドセットレバー750が設けられている。キャリッジ710の記録ヘッド収容部には、記録ヘッド部100をその装着位置に位置決めするために位置決め突起部711が設けられている。これらに対応して記録ヘッド部100には位置決め突起部711に係合する位置決め掛合部101がそれぞれ形成されている。また、ヘッド固定部740において、ヘッド固定カムホルダ741の一部にばね(不図示)により付勢されたヘッド固定カム744が設けられている。このヘッド固定カム744は、記録ヘッド部100に形成された傾斜面109に当接係合して記録ヘッド部100を所定の装着位置に案内して固定する方向に力を加える。また、ヘッド固定カムホルダ741は、その両端部に設けられた回転軸742を中心としてキャリッジ710に対して揺動できるように構成されている。また、このヘッド固定カムホルダ741には、後述するヘッドセットレバー750の案内溝753に係合して、ヘッドセットレバー750の開閉に連動してヘッド固定部740を揺動させるための力を受ける作用ボス743が設けられている。
【0024】
ヘッドセットレバー750は、キャリッジ710に設けられたレバー回転軸713を中心として回動できるように構成されている。このヘッドセットレバー750の案内溝753と上述のヘッド固定カムホルダ741のボス743が係合している。これにより、ヘッドセットレバー750の開閉操作に応じて、ヘッド固定カムホルダ741が揺動し、ヘッド固定部740の開閉動作を行うことができる。ヘッドセットレバー750を軸713を中心に時計方向に回動させることにより、記録ヘッド部100をキャリッジ710上の所定の装着位置へ案内して移動させることができる。
【0025】
ヘッドセットレバー750の一端には、被供給口挿脱部800にリンク部材780を介して連結するレバー側リンク連結部753が設けられている。リンク部材780の一端側にはレバー側リンク連結部755と係合する連結丸穴部781が設けられている。また、リンク部材780の連結丸穴部781から離れたもう一端側には、ニードル挿脱レバー830に連動して、被供給口挿脱部800を並進移動させるリンク連結部825と係合する連結長穴部782が設けられている。なお、連結長穴782は、後述するニードル挿脱動作時における被供給口挿脱部800の並進移動によって、リンク部材780を介してヘッドセットレバー750を揺動させることが無いような不感帯域となる長穴が形成されている。以上の構成により、ヘッドセットレバー750の開閉に伴い、リンク部材780がレバー側リンク連結部753を中心に動作する。このとき、リンク部材の動作によって連結長穴部782が動作して長穴端部782bが被供給側連結部と当接して被供給口側リンク連結部825により接続された被供給口挿脱部800が連動して移動することができる。
【0026】
なお、レバー側リンク連結部753は、ヘッドセットレバー750の揺動に伴って、レバー側リンク連結部753からリンク部材を介した被供給口挿脱部を大きな軌跡で揺動するように構成されている。ヘッドセットレバー750の操作部751は、その操作力を小さくするように、回転軸755までの距離がより離れた個所に設けられている。すなわち、ヘッドセットレバーを比較的小さな力で操作しても、被供給口挿脱部800が大きく移動するよう構成されている。
【0027】
キャリッジカバー720の両側には、被供給口挿脱部800を搭載し、左右方向にスライド可能ように案内する一対のガイド部材で構成された被供給口スライド部721が設けられている。これによって、被供給口挿脱部はキャリッジカバー720に設けられた一対のガイド部材で並進運動するように規制案内される。この結果、ヘッドセットレバー750の操作による揺動ないし回動に連動して、被供給口挿脱部800は並進運動を行うことができる。また上述のようにヘッドセットレバー操作部の揺動に伴って、被供給口挿脱部800も大きく移動することができる。つまり、被供給口挿脱部800の並進移動量が大きくなるよう構成されている。本実施形態では、ヘッドセットレバーをおおよそ100度回動させることによって、被供給口挿脱部800がおおよそ30mm程度移動させることができる。なお、ヘッドセットレバーの回動角度や、被供給口挿脱部の移動量はこの値に限るものではないことはもちろんである。
【0028】
キャリッジカバー720の被供給口スライド部721の近傍には、被供給口挿脱部800に設けられたニ−ドル挿脱レバーの外周カムと摺擦する押し出し案内部722とニ−ドル挿脱レバー830の内周カム面をガイドする引き込み案内部723とが設けられている。
【0029】
<被供給口挿脱部>
被供給口挿脱部800は、キャリッジ部70に設けられ、記録ヘッド部100に対する挿脱動作によって供給チューブ822による流路を記録ヘッド部100内の流路に対して連結および分離させる機能を果たすものである。図10は、被供給口挿脱部800を示す斜視図であり、図11は被供給口挿脱部800に設けられたニードル挿脱レバー830を模式的に示す断面図である。
【0030】
被供給口挿脱部800は、図10に示すように、記録ヘッド部100のインク供給口102のシール接続部材105に挿入されるニードルパイプ811を備えている。ニードルパイプ811は中空の管状のものであり、記録ヘッド部100のシール接続部材105に対応して配設されている。また、被供給口挿脱部800の他方の面には、インク色ごとにメインインクタンクと接続するインク供給チューブ630が連結された複数のチューブ連結部材816が配設される。そして、これらの連結部材816とニードルパイプ811は被供給口挿脱部の本体内部に設けられたインク供給路(不図示)を介して連通している。
【0031】
また、被供給口挿脱部800には、記録ヘッド部100のインク供給口側の複数(2本)のガイド用ボス穴106に対応した複数のガイド用ボス821が設けられている。これにより、ニードルパイプ811をインク供給口102のシール接続部材105に挿入する際に、ガイド用ボス穴106に沿って被供給口挿脱部800の移動が案内される。被供給口挿脱部800の左右には、キャリッジカバー2の、被供給口スライドガイド部721に設けられた一対のガイド体に沿って左右方向に移動しうるように、ガイド体に係合するスライド部材820が設けられる。そして、スライド部材820にはそれぞれ内方へ突出する摺動部821が設けられている。
【0032】
スライド部材820には、操作者が被供給口挿脱部の挿脱動作のために操作する操作部を備えたニ−ドル挿脱レバー830が、レバー回転軸822を中心にして回動可能に軸支されている。このニ−ドル挿脱レバー830には、上述したリンク部材780に設けられた連結長穴部782が回動自在に取り付けられる被供給口側リンク連結部825が構成されている。
【0033】
ニードル挿脱レバー830を回動するように操作することによって、被供給口挿脱部800のニードルパイプ811が記録ヘッド部100のインク供給口102に対して挿脱され、メインインクタンクからのインク供給路の連通または切離を行うことができる。記録ヘッド部100のインク供給口102と被供給口挿脱部800との接続を行うには、ニードルパイプ811をゴム等で成型されたシール接続部材105に挿入することで流路のシール性を確保する。このため、このニードルパイプ811をシール接続部材105に挿入するに際して大きな力が必要となる場合が多い。このため、図11に示すように、ニ−ドル挿脱レバー830の操作部831と回転軸822との距離L1は、キャリッジカバーの各案内軸722、723と作用する内周カム面までの距離L2および外周カム面との距離L3との距離の比率大きく設定する。これにより、被供給口挿脱部800の移動が、ニードルパイプ811がシール接続部材105から抜けるのに十分な量のみで移動するようにしている。この結果、操作者は比較的小さな操作力を作用させるだけで、ニードルパイプ811をシール接続部材105から挿脱することができる。本実施形態では、L1とL2またはL3との比率がおよそ7〜10:1となるよう構成されており、ニ−ドル挿脱レバー830をおおよそ90度ほど回動することによって、被供給口挿脱部800のスライド量はおよそ7mm程度となるように構成されている。このように、ニ−ドル挿脱レバー830の操作による被供給口挿脱部800のスライド量が、前述のヘッドセットレバー750の開閉操作に伴うスライド量よりも小さくなるよう構成されている。
【0034】
(操作時の手順)
次に、記録ヘッド部100をキャリッジ710から取り外す際の操作について、主に、図7〜図9を参照して説明する。なお、この操作は、記録ヘッドが未装着の場合でも、同様に記録ヘッド部100の装着前動作としても行われる。
【0035】
先ず、操作者が所定の操作を行うことにより、インクジェット記録装置を、インクジェットカートリッジ交換モードへ移行させる。本実施形態では、インクジェット記録装置の制御部は、リセットボタン(不図示)を一定時間(例えば3秒)以上押し続けることによって、インクジェットカートリッジ交換モードに移行させることできる。なお、インクジェットカートリッジ交換モードに移行させるためのボタンを別に設け、このボタンの操作によりインクジェットカートリッジ交換モードに移行するようにしてもよい。インクジェット記録装置がインクジェットカートリッジ交換モードに移行すると、図2に示したように、キャリッジ部70は、その移動範囲のほぼ中間部である、インクジェットカートリッジ交換位置に移動される。
【0036】
図7は、記録ヘッド部100がキャリッジに装着固定され、被供給口挿脱部800が連結された状態を示す斜視図である。図8は、記録ヘッド部100は装着されているが、被供給口挿脱部800は切離された状態を示す斜視図である。また、図9は、記録ヘッド部100が取り外され、被供給口挿脱部800は記録ヘッド部100から切離された状態を示す斜視図である。
【0037】
(開操作の手順)
<ニ−ドル挿脱レバーの操作>
図7〜図9に示すように記録ヘッド着脱位置において、メインケース91の開口部911には、切り欠き部912が形成されており、この切り欠き部912によってニ−ドル挿脱レバー830を操作できるような空間が形成されている。
【0038】
図4および図7に示すように、この位置では、操作者は記録ヘッド部100が装着された状態から、図4の矢印A1方向に、第1のレバーであるニ−ドル挿脱レバー830を、回転軸822を支点にして操作して回動させることができる。ここで、ニ−ドル挿脱レバー830を回動操作すると、ニ−ドル挿脱レバー830の外周カム面832がキャリッジカバー720上の押し出し案内軸722に摺擦されながら押され、被供給口挿脱部800を、図5の矢印B1方向へ並進移動(第1の移動)させる。このとき、記録ヘッドのインク供給口に設けられたシール接続部からニードルパイプが切離されて移動し抜脱することにより、インク供給路の連結が切り離される。(図5および図8)。
【0039】
上述したように、このときの被供給口挿脱部800のスライド移動量は、ニードルパイプ811がシール接続部105から離間するだけの量となるよう構成されている。また、被供給口挿脱部800がスライド移動している間は、スライド部820上の被供給口側リンク連結部780はリンク780に設けられた連結長穴部780内を移動できるように構成されている。これにより、ニ−ドル挿脱レバー830の操作を行っても、リンク部材780の不感帯部としての連結長穴部780内を移動するため、ヘッドセットレバー750を揺動させる力は生じない。また、図6に示すように、ニ−ドル挿脱レバー830の回動が終了した状態では、ニ−ドル挿脱レバー830のニードル挿脱レバー開口規制部825が、被供給口挿脱部800に設けられた回転止めに当接して停止する。ニ−ドル挿脱レバー830が、上述した開とされた状態では、操作者が手を離してもニ−ドル挿脱レバー830の自重による回転モーメントによって、この姿勢が保持されるように構成されている。
【0040】
<ヘッドセットレバーの操作>
操作者は、図5および図8に示す状態から、図5に示す矢印C1方向に第2のレバーであるヘッドセットレバー750を、回転軸713を支点にして回動させることができる。これにより、ヘッドセットレバー750の案内溝752に係合するヘッド固定カムホルダボス743に操作力が伝達され、ヘッド固定カム744を介したヘッド固定バネの押圧力を越えたところで、ヘッド固定部740による記録ヘッドの固定を開放することができる。この間のヘッドセットレバー750の回動に伴って、リンク780がレバー側リンク連結部753を中心に動作する。そのとき、リンク部材780は被供給口側リンク連結部825により接続された被供給口挿脱部800を、矢印B1方向へさらに遠くへ並進移動(第2の移動)させる。すなわち、被供給口挿脱部800は、キャリッジカバー710に設けられたガイド部721によりガイドされて、供給チューブの復元力Fに抗して記録ヘッド部100から遠ざかる方向に移動する。
【0041】
そして、ヘッドセットレバー780の回動操作が完了すると、これに連動したヘッド固定部70がヘッド固定カムホルダ軸742を中心とする回動によって開かれて、ヘッドセットレバー750が完全に開状態とされた、図6および図9に示す状態となる。このとき、リンク780を介して接続された被供給口挿脱部800の矢印B1方向へのスライド移動も終了する。このとき、被供給口挿脱部800のニードルパイプ811は記録ヘッドから最も離れた状態となる。
【0042】
ここで、図9に示すように、メインケース910の開口部911の上記スライド方向には、ケース壁913がメインケースと一体的に設けられている。これにより、上述したヘッドセットレバー750の回動操作によって、被供給口挿脱部800を矢印B1方向(図5)へスライド移動した状態では、ニ−ドル挿脱レバー830の操作部831がケース壁913の下方に移動した状態となる。すなわち、このケース壁913の位置は、操作者がニ−ドル挿脱レバー830を操作できない位置、または、操作者がニ−ドル挿脱レバー811を回動させようとしてもニ−ドル挿脱レバー830が干渉して回動させることができない位置である。これにより、操作者は、ヘッドセットレバー750が開状態では、ニ−ドル挿脱レバー830のみを回動させることができない。このように、ヘッドセットレバー750が開状態にあるときに、被供給口挿脱部800のインク供給口102への接続に用いられるニ−ドル挿脱レバー830の操作を規制する構造が設けられている。その結果、操作者が誤ってニ−ドル挿脱レバー830をヘッドセットレバー750よりも先に操作してしまうことがなくなる。この状態において、操作者は、記録ヘッド部100をキャリッジ部70から斜め上方に引き出すことで、記録装置から取り外すことが可能となる。
【0043】
なお、図6および図9の状態では、ヘッドセットレバー750のレバー側リンク連結部753は、カバーの回転軸とジョイント−リンク連結部825とを結んだ線上の支点を越える構成となっている。ヘッドセットレバー750の開閉いずれの状態でも、被供給口挿脱部800はチューブの復元力Fによって、記録ヘッドへ近づく方向(矢印B2)へ付勢されている。従って、図6に示すように支点を越えた状態では、チューブの復元力Fはリンク機構を介してヘッドセットレバー750のレバー側リンク連結部755を矢印C1方向へと付勢するトグル機構となり、ヘッドセットレバー750を開状態側へ押圧付勢することになる。以上により、ヘッドセットレバー750を開状態としたときに、キャリッジ部70に特別な付勢部材等を設けることが無くても、ヘッドセットレバー750を開状態(図6ならびに図9)に付勢して安定保持できる。
【0044】
(閉操作の手順)
次に、操作者が記録ヘッド部100をキャリッジ710へ装着する場合について説明する。
【0045】
先ず、図6および図9に示す状態で、操作者はキャリッジ部70へ記録ヘッド部100を装着する。続いて、図6に示す矢印C2方向に、ヘッドセットレバー750を回動操作する。このヘッドセットレバー750の回動に連動して、ヘッド固定部740がヘッド固定カムホルダ741の軸742を中心とする揺動によって記録ヘッド部を固定する動作を行う。このとき、ヘッド固定部740に設けられたヘッド固定カム744が記録ヘッド部100に当接して、ヘッド固定カム744を介したヘッド固定バネの押圧力によって、記録ヘッド部100をキャリッジ710に押圧して位置決め固定する。
【0046】
同時に、ヘッドセットレバー750の回動に連動して、リンク部材780が移動する。すなわち、リンク部材780の連結長穴部が移動して被供給口側リンク連結部950と当接すると、被供給口挿脱部800が矢印B2方向へと直線移動する。この移動において、被供給口挿脱部800は、キャリッジカバーに設けられたガイド部721に規制案内され、記録ヘッド部100に近づく方向に大きく移動する。これにより、ニードルパイプ811は、記録ヘッド部100のシール接続部105の近傍まで移動する。
【0047】
以上のヘッドセットレバー750の回動に連動した被供給口挿脱部800の並進移動によって、メインケース910のケース壁913に隠れていたニ−ドル挿脱レバー830の操作部831が移動して開口部911の切り欠き部912の下方まで移動する。これにより、ヘッドセットレバーが閉状態になると、操作者が、ニ−ドル挿脱レバー830の操作が可能な状態となる(図5および図8)。
【0048】
続いて、記録ヘッド部100が装着固定された図5および図8の状態から、ニ−ドル挿脱レバー830を図5に示す矢印A2方向に回動させる。これにより、ニ−ドル挿脱レバー830の内周カム面が833キャリッジカバー720上の引き込み案内軸723に作用しながら引き込まれ、被供給口挿脱部800を矢印B2方向へ並進移動させる。この被供給口挿脱部800がスライド移動している間は、スライド部820上の被供給口側リンク連結部825はリンク780に設けられた不感帯域である連結長穴部780B内を移動するよう構成されている。従って、ニ−ドル挿脱レバー830の操作によってヘッドセットレバー750がリンク780を介した回動が生じない。
【0049】
ニ−ドル挿脱レバー830の操作によって被供給口挿脱部800が記録ヘッド部100の方向に進行していくと、被供給口挿脱部800に設けられた位置決めガイド用ボス821が記録ヘッド部100のガイド用ボス穴106に挿入されて直接案内が行われる。さらに、ニ−ドル挿脱レバー830の操作に連動した並進運動によって、ニードルパイプ811が記録ヘッド部100に形成されたインク供給口102に挿入される。すなわち、ニードルパイプ811は、シール接続部材105の小孔を押し広げながら挿入され、ニードルパイプ811の外側面と小孔の内側面との面接触によりインク供給路としての密閉が確保される。この様に、被供給口挿脱部800は記録ヘッド部100に直接位置決めされてからニードルパイプ811が挿入されることになり、安定して確実な流路の連通が可能となる。
【0050】
なお、図4のようにニ−ドル挿脱レバー830の回動が終了した状態では、ニ−ドル挿脱レバー830が、キャリッジ710に設けられた突起部に係合する。これにより、キャリッジ部70の走査においてもニ−ドル挿脱レバー830の姿勢が保持される。以上のように、操作者は、順次、ニ−ドル挿脱レバー830およびヘッドセットレバー750の回動操作をさせることにより、記録ヘッドの位置決め固定および接続部の連結動作を完了させることができる。(図4および図7)
【0051】
以上説明したように、本実施形態によれば、操作者が特に意識しなくても、正しい順序で2つの操作レバーを操作することができる。
【0052】
なお、上述した実施形態では、記録ヘッドに供給チューブでインクを供給する場合を例に挙げて説明したが、本発明は、記録ヘッドに直接、タンクを装着する方法にも適用することができる。すなわち、キャリッジ部への記録ヘッドの固定を実施するレバーと、キャリッジ部上にてタンクに設けられた被供給口を、記録ヘッドのインク供給口へ挿入させる動作を実施するためのレバーと言った複数のレバーが構成された場合に、同様に適用することができる。
【0053】
また、上述の実施形態では、キャリッジ部に1つの記録ヘッドを装着する場合を例に挙げて説明したが、本発明は、記録ヘッドの数に関わりなく自由に実施できる。例えば、1個以上の記録ヘッドを用いるインクジェット記録装置の他、異なる色のインクを使用する複数の記録ヘッドを用いるカラー記録用のインクジェット記録装置似て起用できる。あるいは、同一色彩で異なる濃度のインクを使用する複数の記録ヘッドを用いる階調記録用のインクジェット記録装置、さらには、これらを組み合わせたインクジェット記録装置の場合にも、同様に適用することができる。
【0054】
さらに、本発明は、インクジェット記録装置の場合、例えば、ピエゾ素子等の電気機械変換体等を用いるインクジェットヘッドカートリッジ(記録ヘッド)を使用するものにも適用できる。
【符号の説明】
【0055】
100 記録ヘッド部(ヘッドカートリッジ)
102 インク供給口
105 シール接続部材
610 メインタンク
630 供給チューブ
70 キャリッジ部
710 キャリッジ
740 ヘッド固定部
750 ヘッドセットレバー
755 レバー側リンク連結部
780 リンク部材
782 連結長穴部
800 被供給口挿脱部
811 ニードルパイプ
830 ニードル挿脱レバー
910 メインケース
911 メインケース開口部
912 メインケース開口切り欠き部
913 メインケース壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する記録ヘッドを備えた記録ヘッド部を着脱自在に装着し、記録ヘッドからインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置であって、
記録ヘッド部に対して着脱自在に装着される連結部であって、インクタンクから記録ヘッド部へインクを供給するためのインク供給路を記録ヘッド部に連結するための連結部と、
前記連結部の記録ヘッド部に対する連結および分離の操作をするための第1操作部材と、
記録ヘッド部の前記インクジェット記録装置に対する装着および取り外しの操作をするための第2操作部材と、
前記第1操作部材の操作によって前記連結部を記録ヘッドから分離した状態で前記第2操作部材を操作することによる、記録ヘッド部を前記インクジェット記録装置から取り外し可能とする動作に連動して、前記第1操作部材を記録ヘッド部の装着位置から離れる方向へ移動させるリンク機構と、
前記リンク機構によって前記第1操作部材が移動した位置で、当該第1操作部材を覆う部材と、
を具えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記第1操作部材の操作によって前記連結部を記録ヘッドから分離するときに、当該連結部が移動するときの移動量よりも、前記第2操作部材を操作することによる、前記第1操作部材を記録ヘッド部の装着位置から離れる方向への移動に伴う前記連結部の移動量のほうが大きいことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−45890(P2012−45890A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192346(P2010−192346)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】