説明

インクジェット記録装置

【課題】記録ヘッドを加熱する場合において、インクの不吐出が生じないようにできるインクジェット記録装置の制御方法を提供する。
【解決手段】メディア31にインクを吐出する記録ヘッド32と、記録ヘッド32を加熱する加熱手段46と、記録ヘッド32へ供給するインクを保留しておくインク収納部12と、インク収納部12内の圧力を負圧になるように調整する負圧調整部40とを具備するインクジェット記録装置30を制御する制御方法であって、インクジェット記録装置30をオフにする際に、加熱部46による記録ヘッド32の加熱をオフにするとともに、負圧調整部40をオフにせずにインク収納部12内の負圧を維持し、その後、負圧調整部40をオフにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドへインクを供給するサブタンク内の圧力を制御することができるインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録ヘッドからインクをメディアに吐出させるインクジェット記録装置においては、記録ヘッドに微少な開口部が複数形成され、この開口部よりインクを吐出させるようにしている。
このとき、記録ヘッド内部の圧力が、大気圧と同一又は大気圧よりも高くなってしまうと、記録ヘッドへのインクの送り込み圧力によって、インクが少しずつ記録ヘッドの開口部から漏れ出してしまうという問題点がある。
【0003】
そこで、記録ヘッド内部を弱い負圧にしておくために、小容量のインクのサブタンクを設け、このサブタンク内を弱い負圧に調整してサブタンクから記録ヘッドへインクを供給することにより、記録ヘッドからのインクの漏れを防止する構成が従来から知られている。
【0004】
なお、特許文献1に示すように、記録ヘッドからのインクの吐出に関して、吐出されるインク量を安定させて記録濃度を一定に保持するために記録温度を所定温度以上に加熱する構成が知られている。
この特許文献1には、記録ヘッドを第1の温度範囲に保つヘッド加熱用ヒータと、記録ヘッドの吐出終了からの時間を計時するタイマとを有しており、タイマが所定時間を計時した場合に、記録ヘッドを第1の温度範囲よりも低い第2の温度範囲に保持する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−137247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来のインクジェット記録装置によれば、記録ヘッドが常に加熱されているために、たとえばUVインク等の高粘度のインクを用いた場合であってもインクの粘度を下げて良好に吐出することができる。
また、インクの吐出終了から所定時間経過後は、記録ヘッドの温度を下げることによって、インク水分の蒸発があまり生じないようにして、ノズル詰まり等の原因によるインク不吐出を防止することができるとしている。
【0007】
しかし、上述した従来のインクジェット記録装置では、インク吐出終了から所定時間経過後に記録ヘッドの温度を下げたとしても、インクの不吐出が生じる場合があるという課題がある。そこで、本発明者等は鋭意研究を重ねた結果、その原因を突き止めることができた。
【0008】
そこで、本発明は上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、記録ヘッドを加熱する場合において、インクの不吐出が生じないようにできるインクジェット記録装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかるインクジェット記録装置の制御方法によれば、メディアにインクを吐出する記録ヘッドと、該記録ヘッドを加熱する加熱部と、前記記録ヘッドへ供給するインクを保留しておくインク収納部と、該インク収納部内の圧力を負圧になるように調整する負圧調整部とを具備するインクジェット記録装置を制御する制御方法であって、前記インクジェット記録装置をオフにする際に、前記加熱部による記録ヘッドの加熱をオフにするとともに、前記負圧調整部をオフにせずに前記インク収納部内の負圧を維持し、その後、前記負圧調整部をオフにすることを特徴としている。
【0010】
この方法を採用することによる作用は以下のとおりである。
すなわち、本発明者等は、記録ヘッドの加熱とインク収納部の負圧調整を同時にオフにした場合において、次に起動したときの印字においてノズル抜けが生じていることを見出し、その原因を追究した。その結果、インク収納部内のインクは記録ヘッドが加熱されていることにより、温度が高いことがわかっているが、記録ヘッドの加熱とインク収納部の負圧調整を同時にオフとした場合には、その後インク収納部内のインク温度が低下してインク収納部内の空気の体積が収縮し、インク収納部内の(インク以外の空気部分の圧力)、負圧が大きくなってしまうことを見出した。インク収納部内の負圧が大きくなると、記録ヘッドのインク吐出部分である開口部からインク収納部内へ空気が流入してしまい、換言すればインク収納部内と外部とが連通してしまうので、次に起動したときにインク収納部と外部とが連通してしまった部位にインクが再導入し難く、これがノズル抜けの原因になっているのではないかということに想到した。
このため、上記の制御方法を採用することによって、加熱部をオフにして温度を低下させている間は負圧調整を実行し、記録ヘッドの温度低下に基づいてインク収納部内の負圧がインク収納部内と外部とが連通してしまうヘッド限界負圧域に至らぬようにすることができる。
【0011】
この点を図7及び図8に基づいて説明する。
図7は従来のサブタンク(特許請求の範囲でいうインク収納部、以下同じ)内の負圧変化とサブタンク側面温度変化を示したグラフである。
この図7に示すように、まず電源をオフにすると、約34℃であったサブタンク側面温度が電源オフにしてからの経過時間に対して反比例的に減少する。これに伴い、サブタンク内負圧も反比例的に増大する。ところが、本発明者らは、サブタンク内の負圧が、電源オフから約1.4時間経過後に約−5kPaに増大したのち、約50秒の間に約−2.6kPaまで減少するという知見を得た。本発明者らは、この現象が、サブタンク内と外部とが連通した結果であることを、鋭意研究の結果確認した。そして、サブタンク内の負圧が、約−4.1kPaよりも大きい負圧をヘッド限界負圧域とし、ヘッド限界負圧域に到達しないように負圧調整を行うことで、サブタンク内と外部とが連通しないようにすることができることを見出した。
【0012】
一方、図8は本発明によるサブタンク(特許請求の範囲でいうインク収納部、以下同じ)内の負圧変化とサブタンク側面温度変化を示したグラフである。
このグラフによると、まず記録ヘッドの加熱のみをオフにしてから約2時間後に、サブタンク側面温度は約10℃低下する。この間、負圧調整部はオンのままであるので、サブタンク内負圧は、初期の−2.3kPaという値を維持している。
そして、記録ヘッドの加熱をオフにしてから約2時間後に負圧調整部をオフにする。すると、サブタンク内の負圧は反比例的に増大するが、図7の場合と異なり、予めサブタンクの温度が低下しているので急激な増大はなく、負圧調整部をオフにしてから約6.6時間後に一定となる(約−3.5kPa)。このように、図8の場合では、サブタンク内負圧は、約−3.5kPaで一定となり、ヘッド限界負圧域まで到達しない。サブタンク内負圧がヘッド限界負圧域まで到達するまでのマージンは約0.6kPa程度ある。このように、加熱部をオフとしてから所定時間経過後に負圧調整部をオフとすることによって、サブタンク内の負圧がヘッド限界負圧域に到達しないようにして、サブタンク内と外部とが連通しないようにすることができる。
【0013】
本発明にかかるインクジェット記録装置の制御方法によれば、メディアにインクを吐出する記録ヘッドと、該記録ヘッドを加熱する加熱部と、前記記録ヘッドへ供給するインクを保留しておくインク収納部と、該インク収納部内の圧力を負圧になるように調整する負圧調整部とを具備するインクジェット記録装置を制御する制御方法であって、前記インクジェット記録装置をオフにする際に、前記加熱部による記録ヘッドの加熱をオフにするとともに、前記負圧調整部は、所定の周期で繰り返し起動するスリープモードとして制御されることを特徴としている。
この方法を採用することによる作用は以下のとおりである。
上述したように、記録ヘッドの加熱とインク収納部の負圧調整を同時にオフにした場合において、次に起動したときの印字においてノズル抜けが生じていることが見出されたが、これを解決するには、加熱部における加熱終了後であってもインク収納部内が負圧が大きくならないよう、すなわちインク収納部内と外部とが連通してしまうヘッド限界負圧域に至らぬように調整されればよい。そこで、負圧制御部が所定の周期で繰り返し起動して負圧を調整することによって、記録ヘッドの温度低下に基づいてインク収納部内の負圧がインク収納部内と外部とが連通してしまうヘッド限界負圧域に至らぬようにすることができる。
【0014】
本発明にかかるインクジェット記録装置の制御方法によれば、メディアにインクを吐出する記録ヘッドと、該記録ヘッドを加熱する加熱部と、前記記録ヘッドへ供給するインクを保留しておくインク収納部と、該インク収納部内の圧力を負圧になるように調整する負圧調整部とを具備するインクジェット記録装置を制御する制御方法であって、予め設定された所定時間、インクジェット記録装置が操作されていない場合には、自動的に加熱部をオフにするとともに、前記負圧調整部をオフにせずに前記インク収納部内の負圧を維持し、その後、前記負圧調整部をオフにすることを特徴としている。
この方法によれば、操作されていない時間があればその間に加熱部をオフにしておくことができるので、装置全体がオフとなるまでの時間を短縮することができ、また加熱部をオフにして温度を低下させている間は負圧調整を実行し、記録ヘッドの温度低下に基づいてインク収納部内の負圧がインク収納部内と外部とが連通してしまうヘッド限界負圧域に至らぬようにすることができる。
【0015】
また本発明にかかるインクジェット記録装置の制御方法において、前記負圧調整部は、前記インク収納部内の空気と、前記記録ヘッドに形成されたインクが吐出される複数の開口部とが連通してしまうヘッド限界負圧域に至らぬように負圧調整を行うことが好ましい。
この方法によれば、インク収納部内の負圧がヘッド限界負圧にさえ到達しなければ、インク収納部内の空気と記録ヘッドの開口部とが連通してしまうことがなく、次に起動したときのノズル抜けという問題が生じないようにすることができる。
【0016】
また本発明にかかるインクジェット記録装置の制御方法において、前記加熱部をオフにする際に、前記負圧調整部は、インク収納部内をインクのボタ落ちが生じない程度に負圧を小さくさせておくことが好ましい。
この方法によれば、温度の低下に伴ってインク収納部内の負圧が大きくなってしまうことを防止するという本願発明の課題について、ボタ落ちが生じない程度に予め負圧を小さくしておくことにより、たとえ負圧が大きくなったとしてもインク収納部内の空気と記録ヘッドの開口部とが連通してしまうような大きな負圧になることを防止できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、インク収納部内の負圧が大きくなることに基づく、インクの不吐出という問題を生じさせないことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】インクジェット記録装置の概略構成図である。
【図2】第1の実施形態における制御ブロック図である。
【図3】第1の実施形態における制御方法を示すタイムチャートである。
【図4】第2の実施形態における制御ブロック図である。
【図5】第2の実施形態における制御方法を示すタイムチャートである。
【図6】第3の実施形態における制御方法を示すタイムチャートである。
【図7】従来のサブタンク内の圧力変化を示すグラフである。
【図8】本発明を実施した場合のサブタンク内の圧力変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
以下、本発明の好適な実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1に、インクジェット記録装置における記録ヘッドへのインク供給に関する概略図を示す。
インクジェット記録装置30は、メディア31にインクジェットにより印刷を施す装置であって、インクをメディア31に吐出する記録ヘッド32と、記録ヘッド32に供給するインクを貯留しているサブタンク(特許請求の範囲でいうインク収納部)12とを備えている。
サブタンク12には、インクカートリッジ33がインク供給管34を介して接続されている。インク供給管34の中途部には圧送ポンプ35が設けられており、圧送ポンプ35の駆動によって、インクカートリッジ33内のインクがサブタンク12内に供給される。
【0020】
サブタンク12には、負圧調整部40が設けられている。負圧調整部40は、サブタンク12の上部であるエア溜まり部分に接続された気体流路43と、気体流路43に接続された調圧ポンプ41と、気体流路41内の圧力を検出する圧力センサ44と、制御弁42とを有している。
負圧調整部40は、サブタンク12内の、インク上方のエア溜まり部分の圧力が弱い負圧となるように調整し、記録ヘッド32のノズル孔の吐出口からのインクのボタ落ち(後述する)を回避するものである。
【0021】
このように、負圧調整部40によって、サブタンク12内のエア溜まり部分を弱い負圧に調整しておかないと、例えばサブタンク12内圧が大気圧以上になってしまう場合にはインクが記録ヘッド32から押し出されてしまういわゆる「ボタ落ち」が生じてしまう。
このため、負圧調整部40によって、サブタンク12内のエア溜まり部分が大気圧よりも若干小さい負圧(−2.5kPa〜−2.3kPa)となるように調整されている。
【0022】
記録ヘッド32には加熱部46が設けられている。加熱部46は、記録ヘッド32の周囲に温水が引き回されるように、温水流通管47に温水が流通するように設けられている。加熱部46は、水を加熱するヒータ48と、ヒータ48で加熱された温水を循環させるための循環ポンプ49とを備えている。
本実施形態では、加熱部46によって記録ヘッド32は48℃程度に加熱されている。この程度の温度に加熱されていれば、UVインク等の高粘度のインクを吐出する場合であっても、インクの粘度が下がるために良好にインクの吐出が行える。
【0023】
次に、インクジェット記録装置の負圧調整および記録ヘッドの加熱に関する制御機構のブロック図を図2に示す。
負圧調整部40および記録ヘッド32の加熱部46の制御は、制御部50によって行われている。制御部50は、CPU等のマイクロプロセッサ並びにROMおよびRAMからなるメモリを有しており、メモリに記憶されている制御プログラムに基づいて、予め決められた動作を実行可能である。
制御部50には、操作パネル52が接続されている。操作パネル52は、ユーザが操作することによってインクジェット記録装置の動作について制御可能である。
【0024】
制御部50には、圧力センサ44で検出された圧力データが入力され、圧力センサ44によって検出されたサブタンク12内の圧力に基づいて、調圧ポンプ41および制御弁42を制御してサブタンク12内の圧力を所定の負圧に維持することができる。
また、制御部50には、加熱部46が接続されており、制御部50からの制御信号によって、加熱部46のヒータ48のオン−オフおよび循環ポンプ49のオン−オフを制御することができる。
【0025】
図3に、本実施形態における制御方法を示す。
ユーザは、インクジェット記録装置30をオフにしようとする際には、操作パネル52を操作して、インクジェット記録装置30をオフにする。操作パネル52には、「オフ」スイッチを設けておき、「オフ」スイッチが操作されることで、制御部50は予めメモリに記憶されている制御プログラムに基づいた動作を実行する。
「オフ」スイッチが押下されると、制御部50は、まず加熱部46をオフにする。具体的には、まずヒータ48のみをオフにし、循環ポンプ49はまだオンのままにしておく。すると、徐々に冷えた水が加熱部46内を循環するようになり、記録ヘッド32の温度を徐々に下げることができる。
次に、制御部50は、ヒータ48をオフにしてから所定時間経過後に循環ポンプ49をオフにする。これで加熱部50の動作は完全にオフとなる。
【0026】
なお、制御部50は、加熱部46をオフにしても、負圧調整部40をオフにはせずにそのまま動作させる。
制御部50は、加熱部46のヒータ48をオフにしてから、予め設定された所定時間経過後に負圧調整部40をオフにする。したがって、加熱部46のオフによってサブタンク12の温度が低下し、サブタンク12内のインクの容積が減少した場合であっても、サブタンク12内のエア溜まり部分の圧力は大きな負圧にならずに、一定の圧力を維持できている。ここで、所定時間とは、実験的に計測した結果、サブタンク12内の温度がほぼ一定となるには約2時間かかるので、2時間程度が好ましいことが判明している。
【0027】
なお、負圧調整部40は、サブタンク12内の空気と、記録ヘッド32の開口部とが連通してしまうヘッド限界負圧域に至らぬように負圧調整を実行する。このようにすることにより、サブタンク12内と外気とが記録ヘッド32を通して連通してしまうことを防止できるので、次に起動したときのノズル抜けという問題を起こさないようにすることができる。
【0028】
負圧調整部40がオフになると、インクへジェット記録装置30全体の動作がオフとなる。
そして次回に電源をオンにした場合であっても、オフにする際にサブタンク12内がインク収納部内と外部とが連通してしまうヘッド限界負圧域に至らぬような負圧としており、外部と連通していないので、ノズル抜けが生じておらず、良好なインク吐出が可能である。
【0029】
また、本実施形態において、加熱部46をオフとしてから、負圧調整部40をオフとするまでの時間を、周囲温度に応じて増減させるようにしてもよい。
すなわち、インクジェット記録装置30に室温検出センサ55を設け、制御部50は、室温検出センサ55によって検出された室温が低いときは、加熱部46のヒータ48をオフにしてから、負圧調整部40をオフにするまでの時間を、温度低下に伴って短くなるように制御する。このようにすることで、全体の電源がオフになるまでの時間を短くすることができる。
【0030】
(第2の実施形態)
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。
なお、インクジェット記録装置における記録ヘッドへのインク供給に関する構成は、第1の実施形態と同一であるので、図1を参照し、ここでは説明を省略する。
図4に、本実施形態におけるインクジェット記録装置の負圧調整および記録ヘッドの加熱に関する制御機構のブロック図を示す。なお、図2に示した構成と同一の構成要素については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0031】
本実施形態では、制御部50はスリープモードを実行できるスリープモード制御手段56を備えている。本実施形態におけるスリープモード制御手段56は、操作パネル52から電源オフの操作がされた場合に、加熱部46と負圧調整部40とを同時にオフにし、その後負圧調整部40に関しては所定間隔おきに起動するようにプログラミングされた制御プログラムである。
【0032】
図5に、本実施形態における制御方法を示す。
ユーザは、インクジェット記録装置30をオフにしようとする際には、操作パネル52を操作して、インクジェット記録装置30をオフにする。操作パネル52には、「オフ」スイッチを設けておき、「オフ」スイッチが操作されることで、制御部50は予めメモリに記憶されている制御プログラムに基づいた動作を実行する。
「オフ」スイッチが押下されると、制御部50は、加熱部46および負圧調整部46をオフにする。なお、上記実施形態と同様に、加熱部46のオフについては、まずヒータ48のみをオフにし、循環ポンプ49はまだオンのままにし、ヒータ48をオフにしてから所定時間経過後に循環ポンプ49をオフにするとよい。すると、徐々に冷えた水が加熱部46内を循環するようになり、記録ヘッド32の温度を徐々に下げることができる。
【0033】
次に、制御部50のスリープモード制御手段56が、ヒータ48をオフにしてから所定間隔おきに負圧調整部40をオン−オフする。例えば5分間隔で負圧調整部40を起動させることで、インクの温度低下による容積減少に基づくサブタンク12内の負圧増大を防止することができる。
そして、加熱部46をオフにしてから所定時間経過後(実験的には2時間程度経過すると、サブタンク12内温度が一定となるので、約2時間程度が好ましい)、スリープモード制御手段56は、負圧調整部40のオン−オフを停止するように制御する。
【0034】
なお、サブタンク12内の温度がほぼ一定となる2時間が経過したのちも、スリープモード制御手段56は、負圧調整部40の所定間隔おきのオン−オフを実行してもよい。この場合、スリープモード制御手段56は、サブタンク12内の温度が一定となる前に負圧調整部40をオン−オフした間隔よりも長い間隔(例えば、20分間隔程度)でオン−オフ制御すればよい。
【0035】
オン−オフ制御されている負圧調整部40は、サブタンク12内の空気と、記録ヘッド32の開口部とが連通してしまうヘッド限界負圧域に至らぬように負圧調整を実行する。このようにすることにより、サブタンク12内と外気とが記録ヘッド32を通して連通してしまうことを防止できるので、次に起動したときのノズル抜けという問題を起こさないようにすることができる。
【0036】
(第3の実施形態)
続いて、本発明の第3の実施形態について説明する。
なお、インクジェット記録装置における記録ヘッドへのインク供給に関する構成は、第1の実施形態と同一であり、制御ブロック図については第2の実施形態と同一であるので、ここでは説明を省略する。
本実施形態では、予め設定された所定時間インクジェット記録装置30を操作しなかった場合に、自動的にスリープモードにするようにプログラミングされた制御プログラムであるスリープモード制御手段56が設けられている。
本実施形態では、所定時間(例えば1時間)インクジェット記録装置30が操作されなかった場合、スリープモード制御手段56の制御によってスリープモードとなる。
【0037】
図6に、本実施形態における制御方法を示す。
ユーザがインクジェット記録装置30を所定時間操作しなかった場合、スリープモード制御手段56がまず加熱部46をオフにする。具体的には、まずヒータ48のみをオフにし、循環ポンプ49はまだオンのままにしておく。すると、徐々に冷えた水が加熱部46内を循環するようになり、記録ヘッド32の温度を徐々に下げることができる。
次に、スリープモード制御手段56は、ヒータ48をオフにしてから所定時間経過後に循環ポンプ49をオフにする。これで加熱部50の動作は完全にオフとなる。
【0038】
なお、スリープモード制御手段56は、加熱部46をオフにしても、負圧調整部40をオフにはせずにそのまま動作させる。
スリープモード制御手段56は、加熱部46のヒータ48をオフにしてから、予め設定された所定時間経過後に負圧調整部40をオフにする。したがって、加熱部46のオフによってサブタンク12の温度が低下し、サブタンク12内のインクの容積が減少した場合であっても、サブタンク12内のエア溜まり部分の圧力は、インク収納部内と外部とが連通してしまうヘッド限界負圧域に至らぬような負圧としており、一定の圧力を維持できている。ここで、所定時間とは、実験的に計測した結果、サブタンク12内の温度がほぼ一定となるには約2時間かかるので、2時間程度が好ましいことが判明している。
負圧調整部40がオフになると、インクへジェット記録装置30全体の動作がオフとなる。
そして次回に電源をオンにした場合であっても、オフにする際にサブタンク12内がインク収納部内と外部とが連通してしまうヘッド限界負圧域に至らぬような負圧としており、外部と連通していないので、ノズル抜けが生じておらず、良好なインク吐出が可能である。
【0039】
なお、負圧調整部40は、サブタンク12内の空気と、記録ヘッド32の開口部とが連通してしまうヘッド限界負圧域に至らぬように負圧調整を実行する。このようにすることにより、サブタンク12内と外気とが記録ヘッド32を通して連通してしまうことを防止できるので、次に起動したときのノズル抜けという問題を起こさないようにすることができる。
【0040】
なお、上述してきた各実施形態において、加熱部46をオフにする際に、負圧調整部40は、サブタンク12内を、インクのボタ落ちが生じない程度に負圧を小さくさせておくとよい。例えば、通常時の負圧は−2.5kPa〜−2.3kPaであるが、これを−1.0kPa程度に小さく(圧力を上げる)することにより、温度低下に伴ってサブタンク12内の負圧が大きくなったとしても、予め負圧を小さくしておけば、なるべくヘッド限界負圧域にまでその負圧が達しないようにすることができる。
【符号の説明】
【0041】
12 サブタンク
30 インクジェット記録装置
31 メディア
32 記録ヘッド
33 インクカートリッジ
34 インク供給管
35 圧送ポンプ
40 負圧調整部
41 調圧ポンプ
42 制御弁
43 気体流路
44 圧力センサ
46 加熱部
47 温水流通管
48 ヒータ
49 循環ポンプ
50 制御部
52 制御パネル
55 室温検出センサ
56 スリープモード制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディアにインクを吐出する記録ヘッドと、
該記録ヘッドを加熱する加熱部と、
前記記録ヘッドへ供給するインクを保留しておくインク収納部と、
該インク収納部内の圧力を負圧になるように調整する負圧調整部とを具備するインクジェット記録装置を制御する制御方法であって、
前記インクジェット記録装置をオフにする際に、
前記加熱部による記録ヘッドの加熱をオフにするとともに、前記負圧調整部をオフにせずに前記インク収納部内の負圧を維持し、
その後、前記負圧調整部をオフにすることを特徴とするインクジェット記録装置の制御方法。
【請求項2】
メディアにインクを吐出する記録ヘッドと、
該記録ヘッドを加熱する加熱部と、
前記記録ヘッドへ供給するインクを保留しておくインク収納部と、
該インク収納部内の圧力を負圧になるように調整する負圧調整部とを具備するインクジェット記録装置を制御する制御方法であって、
前記インクジェット記録装置をオフにする際に、
前記加熱部による記録ヘッドの加熱をオフにするとともに、
前記負圧調整部は、所定の周期で繰り返し起動するスリープモードとして制御されることを特徴とするインクジェット記録装置の制御方法。
【請求項3】
メディアにインクを吐出する記録ヘッドと、
該記録ヘッドを加熱する加熱部と、
前記記録ヘッドへ供給するインクを保留しておくインク収納部と、
該インク収納部内の圧力を負圧になるように調整する負圧調整部とを具備するインクジェット記録装置を制御する制御方法であって、
予め設定された所定時間、インクジェット記録装置が操作されていない場合には、自動的に加熱部をオフにするとともに、前記負圧調整部をオフにせずに前記インク収納部内の負圧を維持し、
その後、前記負圧調整部をオフにすることを特徴とするインクジェット記録装置の制御方法。
【請求項4】
前記負圧調整部は、
前記インク収納部内の空気と、前記記録ヘッドに形成されたインクが吐出される複数の開口部とが連通してしまうヘッド限界負圧域に至らぬように負圧調整を行うことを特徴とする請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項記載のインクジェットの記録装置の制御方法。
【請求項5】
前記加熱部をオフにする際に、前記負圧調整部は、インク収納部内をインクのボタ落ちが生じない程度に負圧を小さくさせておくことを特徴とする請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項記載のインクジェット記録装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−10313(P2013−10313A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145545(P2011−145545)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【Fターム(参考)】