説明

インクレチンホルモン活性を持つペプチドの経上皮送達

インクレチンホルモン活性を持つペプチドを使って糖尿病および関連疾患を処置するための組成物および方法を開示する。好ましくは、インクレチンホルモン活性を持つペプチドはGLP−1、エキセンディンまたはGLP−1もしくはエキセンディンの類似体である。インクレチンホルモン活性を持つペプチドは、経上皮担体ペプチドを使って経上皮的に投与される。経上皮ペプチドは、経上皮送達を刺激するために、十分なアミノ基、グアニジン基またはアミジノ基を含有する。一部の実施形態では、経上皮担体とインクレチンホルモン活性を持つペプチドとが、硬膏剤または貼付剤の感圧接着剤層に包埋される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2004年10月19日に出願された米国仮特許出願第60/620,001号に基づく優先権を主張し、この仮特許出願は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明の実施形態は、慢性疾患状態、特に真性糖尿病を処置するために、インクレチンホルモン活性を持つペプチドを経上皮送達するための組成物および方法に関する。局所送達を容易にするためにオリゴペプチドを使用する。
【背景技術】
【0003】
真性糖尿病は上昇した血糖値(高血糖)を特徴とする一群の代謝性疾患である。高血糖は、インスリン分泌の絶対的もしくは相対的不足、またはインスリン作用に対する抵抗性、あるいはその両方の結果である。糖尿病例の大半は二つのカテゴリー、すなわち1型糖尿病および2型糖尿病に分類される。2型糖尿病は最も一般的な形態の糖尿病であり、全症例の90%を占める。1600万人の米国人が2型糖尿病を持つと推定されている。2型糖尿病は通常、代償性インスリン分泌応答が不十分な状況下で、インスリン作用に対する抵抗性によって引き起こされる(Jay S. Skyler「Diabetes Mellitus: Pathogenesis and Treatment Strategies(真性糖尿病:病理発生過程および処置戦略)」Journal of Medicinal Chemistry, 2004, vol. 47, 4113−4117参照)。
【0004】
インスリンは糖質代謝および脂質代謝の制御に重要な役割を果たしている。グルコースが食餌糖質から遊離し、血中に吸収されると、血中グルコース濃度の上昇がインスリンの放出を刺激する。インスリンは、筋組織、脂肪組織および他のいくつかの組織へのグルコースの侵入を助長する。またインスリンは、肝臓を刺激してグルコースをグリコーゲンの形で貯蔵させる。血中グルコース濃度が低下するにつれて、インスリン分泌は途絶える。インスリンが存在しなくなると、体内の細胞は脂肪酸のような代替燃料を使ってエネルギーを得るようになり、次に酵素が肝臓中のグリコーゲンを分解するようになる。
【0005】
インスリンは脂質代謝にも重要な影響を及ぼす。インスリンは肝臓における脂肪酸の合成を促進する。肝臓がグリコーゲンで飽和すると、肝細胞によって取り込まれたさらなるグルコースはいずれも、脂肪酸の合成につながる経路にシャントされ、その脂肪酸はリポタンパク質として肝臓から運び出される。インスリンは脂肪組織における脂肪の分解も阻害する。全身的に見ると、インスリンには脂肪節約効果がある。ほとんどの細胞が、インスリンにより、エネルギー獲得のために脂肪酸よりも糖質を優先的に酸化するようになるだけでなく、インスリンは脂肪組織における脂肪の蓄積も間接的に刺激する。
【0006】
インスリンが糖質代謝および脂質代謝の制御に果たす重要な役割ゆえに、インスリン分泌およびインスリン作用の乱れは、多くの器官および組織に、広範囲にわたる壊滅的な影響を及ぼす。真性糖尿病は、人間の最も重要な代謝性疾患であり、インスリン不足状態である。1型真性糖尿病、すなわちインスリン依存性真性糖尿病は、膵島β細胞の免疫介在性破壊の結果であり、その結果、インスリン不足と、インスリン補充の必要が生じる。2型真性糖尿病、すなわちインスリン非依存性真性糖尿病は、標的組織がインスリンに対して適当に応答することができないインスリン抵抗性の症候群である。糖尿病患者は、糖質代謝、脂肪代謝およびタンパク質代謝の改変を含む、広範な代謝の乱れを起こす。時間が経つにつれて、代謝の混乱がさまざまな器官(特に眼、腎臓、神経、心臓および血管)の長期損傷、機能障害および不全をもたらしうる。
【0007】
2型糖尿病を処置するために現在使用されている薬物には、インスリン、ビグアニド類、スルホニル尿素類およびチアゾリジンジオン類などがある。2型糖尿病の自然進行ゆえに、ほとんどの糖尿病患者は、最終的にはインスリン治療を必要とするようになる。これらの薬物の大きな短所には、血中グルコースの低下(低血糖)、体重増加および浮腫などがある。また、膵臓におけるインスリン産生β細胞の機能を存続させる潜在能力を持つものは、これらの化合物にはない。
【0008】
インクレチンホルモンは、グルコースレベルが正常である時、または特にグルコースレベルが上昇している時に、放出されるインスリンの量の増加を引き起こすホルモンである。これらのインクレチンホルモンは、インスリン分泌によって定義される初期インクレチン作用に留まらず、他の作用も持っている。これらは、グルカゴン産生を減少させ、胃内容排出を遅延させる作用も持っている。これらはインスリン感受性を改善する作用も持ちうる。また、これらは、島細胞新生(すなわち新しい島の形成)を増加させうる。インクレチンホルモンは、グルコースが腸を介して吸収される時のインスリン応答を増強する。ヒトでは二つのインクレチンホルモン、すなわちグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)と、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)とが知られている。糖尿病、肥満、心血管疾患およびアルツハイマー病などの状態の処置におけるインクレチンホルモンの治療的使用は、現在、活発な研究活動の領域になっている。
【0009】
グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)は、42アミノ酸の胃腸ペプチドである。GIPは、グルコースまたは脂肪の吸収後に、十二指腸の内分泌K細胞から放出される。グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)は、遠位小腸における栄養素の存在に呼応して、下部腸管のL細胞で合成される。GIPとGLP−1はどちらも、膵β細胞からのグルコース誘発インスリン分泌を強化する。
【0010】
GIPおよびGLP−1が糖質代謝および脂質代謝に及ぼす重要な効果は、それらの受容体の遺伝子の欠失に関する実験によって実証されている。GIP受容体のノックアウトは、著しいグルコース不耐性に関係する。また、GIP受容体を欠くマウスは、高脂肪食を与えた場合に、肥満からもインスリン抵抗性からも保護されることがわかっている。GLP−1受容体を持たないマウスはグルコース不耐性であり、空腹時高血糖を示す。
【0011】
GLP−1は、最も強力なインスリン分泌刺激物質の一つであり、β細胞に対して10ピコモル/リットルの50%有効濃度を持っている。GLP−1のインスリン分泌刺激効果は、厳密にグルコース依存性である。GLP−1はインスリン生合成およびインスリン遺伝子転写の全ての段階を刺激することにより、分泌に向けて、インスリンの増強された連続的供給をもたらす。GLP−1はβ細胞に対する栄養効果を持っている。これはβ細胞増殖を刺激し、膵管上皮における前駆細胞からの新しいβ細胞の分化を増進する。またGLP−1は、β細胞におけるサイトカイン誘発性アポトーシスおよび脂肪酸誘発性アポトーシスをどちらも阻害する。2型真性糖尿病を持つ患者は、GLP−1分泌が著しく損なわれており、GIPに対するβ細胞の応答性も損なわれている。しかし2型糖尿病患者では、GLP−1注射後に、ほぼ正常なインスリン応答が修復される。したがってGLP−1は魅力的な抗糖尿病剤になる。
【0012】
エキセンディンペプチドは、トカゲの一種、ドクトカゲ(Heloderma)属の唾液腺から単離された。これらは、外分泌腺から単離され、その後、内分泌作用を持つことが示されたことから、このように名付けられた。エキセンディン−3はメキシコドクトカゲ(Heloderma horridum)から単離され、エキセンディン−4はアメリカドクトカゲ(Heloderma suspectum)から単離された。これら二つのペプチドは、アミノ末端から2番目および3番目の残基に置換があることを除いて同一の配列を持ち、どちらのペプチドも、分散膵腺房細胞におけるcAMP活性を刺激することができる。エキセンディン−4は哺乳類GLP−1受容体の強力なアゴニストである。エキセンディン−4は、主として、アミノペプチダーゼ・ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)による不活化に対するその耐性ゆえに、糖尿病の処置に関して、ネイティブGLP−1よりもはるかに強力である。2位にアラニンを含有するGLP−1とは対照的に、エキセンディン−4は2位にグリシンを持ち、したがってDPP−IVの基質ではなく、インビボではるかに長いt1/2を持つ。
【0013】
MiniMedインスリンポンプを使って患者に天然GLP−1を6週間注入する研究では、GLP−1が迅速に、主に最初の1週間以内の処置で、空腹時血中グルコースを4〜5mM低下させうることが実証された(Zander, M.; Madsbad, S.; Madsen, J. L.; Hoist, J. J.「Effect of 6−Week Course of Glucagon−Like Peptide 1 on Glycaemic Control, Insulin Sensitivity, and Beta−Cell Function in Type 2 Diabetes: A Parallel−Group Study(グルカゴン様ペプチド1の6週間投与が2型糖尿病における血糖管理、インスリン感受性およびベータ細胞機能に及ぼす効果:並行群間試験)」Lancet 2002, 359, 824−830)。GLP−1とその類似体、例えばLillyおよびAmylinのエキセンディン−4(エキセナチド,AC2993)(Stoffers, D. A.; Desai, B. M.; DeLeon, D. D.; Simmons, R. A.「Neonatal Exendin−4 Prevents the Development of Diabetes in the Intrauterine Growth Retarded Rat(新生仔期エキセンディン−4は子宮内発育遅延ラットにおける糖尿病の発症を予防する)」Diabetes 2003, 52, 734−740)、Novo Nordiskのリラグルチド(γ−L−グルタモイル(N−R−ヘキサデカノイル))−Lys26,Arg34−GLP−1(7−37),NN2211)(Elbrond, B.; Jakobsen, G.; Larsen, S.; Agerso, H.; Jensen, L. B.; Rolan, P.; Sturis, J.; Hatorp, V.; Zdravkovic, M.「Pharmacokinetics, Pharmacodynamics, Safety, and Tolerability of a Single−Dose of NN2211, a Long−Acting Glucagon−Like Peptide 1 Derivative, in Healthy Male Subjects(健常男性被験者における長時間作用型グルカゴン様ペプチド1誘導体NN2211の単回投与の薬物動態、薬力学、安全性、および忍容性)」Diabetes Care 2002, 25, 1398−1404)、ConjuchemのCJC−1131(D−Ala8Lys37[2−[2−[2−マレイミドプロピオンアミド(エトキシ)エトキシ]アセトアミド−GLP−1(7−37))(Kim, J. G.; Baggio, L. L.; Bridon, D. P.; Castaigne, J. P.; Robitaille, M. F.; Jette, L.; Benquet, C; Drucker, D. J.「Development and Characterization of a Glucagon−Like Peptide 1−Albumin Conjugates: The Ability To Activate the Glucagon−Like Peptide 1 Receptor in Vivo(グルカゴン様ペプチド1−アルブミンコンジュゲートの開発と特性解析:インビボでグルカゴン様ペプチド1受容体を活性化する能力)」Diabetes 2003, 52, 751−759)、ZealandおよびAventisのZP−10A(Petersen, J. S.; Thorkildsen, C; Lundgren, K.; Neve, S.「ZP10: A New GLP−1 Agonist That Prevents Diabetes Progression and Increases Insulin mRNA Expression in Db/Db Mice(ZP10:Db/Dbマウスにおける糖尿病の進行を予防しインスリンmRNA発現を増加させる新しいGLP−1アゴニスト)」Diabetologia 2002, 45, A147)ならびにIpsenのBIM−51077(Dong, J. Z.; Shen, Y.; Zhang, J.; Taylor, J. E.; Woon, C; Morgan, B.; Skinner, S.; Cawthorne, M.; Culler, M.; Moreau, J.「Design and Synthesis of a Novel GLP−1 Analog, BIM−51077, Which Has Significantly Improved in Vivo Activity(著しく改善されたインビボ活性を持つ新規GLP−1類似体BIM−51077の設計と合成)」Biopolymers 2003, 71, 391)などは、強力なグルコース低下性を持つので、2型糖尿病患者の処置を目的とするその使用が検討されることになった。上記を下記表1に要約する。
【表1】

【0014】
薬物送達は、GLP−1およびその類似体を治療剤へと展開する上で、最大の難問である。上述の化合物は全てペプチドであり、注射する必要がある。一過性の悪心および嘔吐は、この化合物クラスの主要副作用であり、注射によって導入されるピーク濃度に関係している。これらの副作用がヒト試験におけるGLP−1の投薬量を制限した(Drucker, Daniel J.「Enhancing Incretin Action for the Treatment of Type 2 Diabetes(2型糖尿病を処置するためのインクレチン作用の増進)」(2003年10月)Diabetes Care vol. 26 (10): 2929−2940)。同様にNielsenらは、エキセナチド(合成エキセンディン−4)の至適グルコース低下用量範囲は0.05〜0.2μg/kgであるが、悪心および嘔吐が用量を制限すると報告している(Nielsonら(2003年4月)「Pharmacology of exenatide (synthetic exendin−4) for the treatment of type 2 diabetes(2型糖尿病の処置に関するエキセナチド(合成エキセンディン−4)の薬理学)」Current Opinion in Investigational Drugs vol. 4 (4): 401−405)。望ましくない副作用を最小限に抑えつつ、GLP−1またはその類似体などの糖尿病薬物処置剤の治療用量を与える必要がある。
【0015】
経皮経路による薬物送達には明確な利点がある。第1に、経皮送達は、経口送達と比較して、患者のコンプライアンスを改善する可能性がある。同じ薬物であれば用量を減らすことができ、悪心などの副作用を最小限に抑えるのに役立つ。第2に、初回通過代謝の問題が回避されると共に、経口送達および消化管吸収によって生じる極大および極小も回避される。薬物を投与すべき時間に関して制約はなく、患者が事後に摂食してもよいかどうかに関する制約もない。特に、複数日用の貼付剤による送達は、特定の時間に薬を服用することを覚えておく必要がなく、使い勝手がよくなり、便利である。経口送達または注射と比較した経皮送達のさらなる利点は、有害な副作用が起きたら単に貼付剤を取り除くだけで、投薬をすぐに停止できるということである。
【0016】
人体における最大の器官として、ヒト皮膚の最も重要な機能の一つは、有毒な化学薬品および微生物の移入から身体を防御するために、物理化学的障壁を提供することである。最も粗大なレベルで見るとヒト皮膚は三つの層で構成されている。皮膚の外面に位置する角質層は、脂質に富む細胞外マトリックスに取り囲まれた、ケラチンで満たされた細胞の、生きていない層であり、これが皮膚への薬物送達の一次障壁となっている。その下の表皮は血管を欠く生存可能な組織である。真皮−表皮接合部のすぐ下では、真皮が、経皮投与された薬物を取り込んで全身に分布させることができる毛細血管係蹄を含有している。大半の分子にとって、角質層は、薬物送達に対する律速的障壁である。分子が無傷の角質層を横切るために利用することができる経路は、基本的に三つある。経付属器官経路では、薬物分子が毛包または汗管の孔を利用して、角質層の障壁を迂回する。経細胞経路では、二重層脂質とケラチンで満たされた細胞との間の分配、およびそれに続く水和ケラチンを通した拡散を含む、一連の事象によって、薬物分子が角質層を横切る。細胞間脂質経路は、ほとんどの非荷電小分子がケラチノサイト間の連続的脂質ドメインを通って移動することによって角質層を横断する主要経路を与える。
【0017】
経皮送達技術の成功にもかかわらず、経皮経路によって投与することができる薬物の数は非常に限られている。現在皮膚越しに投与されている薬物はいずれも、低い分子量(<500Da)、高い親油性(油溶性)および少ない必要用量(数ミリグラムまで)という、三つの制約的特徴を持っている。経皮薬物送達に関するこれらの制約を取り除くことを目指す未来技術の兆しがいくつかある。これらの技術の一つが、細胞透過性を持つペプチドオリゴマーを経皮担体として使用することである。細胞透過性ペプチドは、受容体非依存的非エンドソーム機序により(潜在的には細胞膜の二重層脂質と相互作用しそれを破壊することにより)、細胞膜を横切って透過することができる、短いポリカチオンオリゴマーである。これらのペプチドが持つ経皮活性も同じ機序によって説明されるかもしれない。最近の論文で、Rothbardら(Rothbard, J. B.; Garlington, S.; Lin, Q.; Kirschberg, T.; Kreider, E.; McGrane, P. L.; Wender, P. A.; Khavari, P. A.「Conjugation of arginine oligomers to cyclosporine A facilitates topical delivery and inhibition of inflammation(アルギニンオリゴマーをシクロスポリンAにコンジュゲートすることによって局所送達および炎症の阻害が促進される)」Nature Medicine, 2000, 6, 1253−1257)は、アルギニンの七量体をpH感受性リンカーを介してシクロスポリンAにコンジュゲートすることにより、R7−CsAを作製した。皮膚を透過することができなかった無修飾のシクロスポリンAとは異なり、局所的に適用されたR7−CsAは、マウス皮膚およびヒト皮膚の細胞内に効率よく輸送された。R7−CsAは真皮Tリンパ球に到達し、皮膚の炎症を抑制した。
【0018】
本発明者らは、インクレチンホルモン活性を持つペプチド薬、特にGLP−1またはエキセンディン−4を投与するための経皮送達方法を発見した。GLP−1注射後は、2型糖尿病患者において、ほぼ正常なインスリン応答が修復されうることは、実証されている。したがって、GLP−1およびそのより安定な類似体エキセンディン−4は魅力的な抗糖尿病剤である。これらのペプチド薬は糖尿病、肥満、心血管疾患およびアルツハイマー病の処置に有用である。
【0019】
そのような慢性障害の処置には、経口、経鼻または経皮などの非侵襲的で患者に優しい薬物送達方法の方が、注射または薬物ポンプの植込みよりも、明らかに実用的である。これらのうち、GLP−1またはエキセンディン−4の投与に関して、経皮送達には、経口送達または経鼻送達と比較して、多くの利点がある。経口送達されるペプチド/タンパク質薬は、消化管による吸収に先だって、苛酷な条件にさらされる。鼻腔粘膜による吸収中には、かなりの代謝が起こりうる。本発明では、エキセンディン−4を既知の経皮担体アルギニンオリゴマーとうまくコンジュゲートさせた。我々の生物学的データは、そのようなコンジュゲートの経皮送達が、エキセンディン−4単独の場合と比較して、著しく増進されることを示した。
【発明の開示】
【0020】
本発明の実施形態は、インクレチンホルモン活性を持つペプチドおよび経上皮担体を皮膚接触基剤と共に含む局所用調製物を含む、糖尿病を処置するための組成物に向けられる。好ましい実施形態では、皮膚接触基剤における、インクレチンホルモン活性を持つペプチドの濃度が、0.001%〜70%であり、皮膚接触基剤における経上皮担体の濃度が0.001%〜70%である。好ましくは、経上皮担体は、無傷の動物上皮組織層を横切ってなされる、インクレチンホルモン活性を持つペプチドの送達を、経上皮担体の不在下でそのペプチドを送達する場合と比較して増加させるために、十分なアミノ基、グアニジン基またはアミジノ基を含む。
【0021】
好ましい実施形態では、局所用調製物が、以下の構造VまたはVIの一方を持つコンジュゲートである:
【化1】

[式中、
Qは経上皮担体を含み;
Lはペプチドを含み;
Xはペプチド上の官能基と担体上の官能基との間に形成される結合であり;
Yはリンカー上の官能基と担体上の官能基との間に形成される結合であり;
Zはペプチド上の官能基とリンカー上の官能基との間に形成される結合であり;
Tは小さなオリゴペプチドリンカーであり;そして
mは1〜5の整数である]。
【0022】
好ましい実施形態では、構造VおよびVIが、加水分解またはグルタチオンを使った還元による分解を受けて、インクレチンホルモン活性を持つペプチドを、その生物活性型で放出する能力を持つ。好ましい実施形態では、X、YおよびZが、−S−S−、−C(=O)O−、−C(=O)S−、−C(=O)NH−、−C(=S)NH−、−OC(=O)NH−、−NHC(=O)NH−、−CA=N−、アセタール結合、セミアセタール結合、−SONH−、および−SONH−から独立して選択される(式中、AはH、アルキルまたはアリールである)。
【0023】
一部の好ましい実施形態では、ペプチドおよび経上皮担体が、静電相互作用、水素結合、π−スタッキング相互作用およびファンデルワールス相互作用などの非共有結合的相互作用によって会合する。
【0024】
好ましい実施形態では、経上皮担体が、単量体型ペプチドとその二量体型との混合物を含む。好ましくは、経上皮担体は5〜50個のアミノ酸を含み、そのうち少なくとも3個のアミノ酸はアルギニンもしくはリジンまたはその類似体である。好ましくは、経上皮担体中の少なくとも一つのアミノ酸がD−アミノ酸である。一部の好ましい実施形態では、経上皮担体中のアミノ酸が全てD−アミノ酸である。
【0025】
好ましい実施形態では、経上皮担体が少なくとも一つのシステインアミノ酸残基を含む。より好ましくは、経上皮担体が、インクレチン活性を持つペプチドにジスルフィド結合を介して結合されたペプチド単量体、そのホモ二量体、または単量体とホモ二量体との混合物を含む。好ましい実施形態では、経上皮担体中の少なくとも一つのアミノ酸がD−アミノ酸である。一部の好ましい実施形態では、経上皮担体中のアミノ酸が全てD−アミノ酸である。
【0026】
好ましい実施形態では、インクレチン活性を持つペプチドが少なくとも一つのシステインアミノ酸残基を含み、その少なくとも一つのシステインは、付加または置換によって導入されるか、インクレチン活性を持つペプチドに元から存在している。好ましくは、インクレチン活性を持つペプチドのN末端またはC末端にシステインアミノ酸残基が取り付けられるか、インクレチン活性を持つペプチド中のセリンアミノ酸残基の一つがシステインアミノ酸残基で置き換えられる。
【0027】
好ましい一実施形態では、インクレチン活性を持つペプチドがアミノ酸配列:HGEGTFTSDL SKQMEEEAVR LFIEWLKNGG PSSGAPPPS(配列番号6)を含み、そのアミノ酸配列のN末端またはC末端にシステインアミノ酸残基が取り付けられるか、そのアミノ酸配列中のセリンアミノ酸残基の一つがシステインアミノ酸残基で置き換えられる。
【0028】
好ましい一実施形態では、インクレチン活性を持つペプチドがアミノ酸配列:HSDGTFITSDL SKQMEEEAVR LFIEWLKNGG PSSGAPPPS(配列番号33)を含み、そのアミノ酸配列のN末端またはC末端にシステインアミノ酸残基が取り付けられるか、そのアミノ酸配列中のセリンアミノ酸残基の一つがシステインアミノ酸残基で置き換えられる。
【0029】
好ましい一実施形態では、インクレチン活性を持つペプチドがアミノ酸配列:HAEGTFTSDV SSYLEGOAAK EFIAWLVKGR(配列番号7)を含み、そのアミノ酸配列のN末端またはC末端にシステインアミノ酸残基が取り付けられるか、そのアミノ酸配列中のセリンアミノ酸残基の一つがシステインアミノ酸残基で置き換えられる。
【0030】
より好ましい一実施形態では、経上皮担体が5〜50個のアミノ酸を含む。経上皮担体の少なくとも3個のアミノ酸はアルギニンもしくはリジンまたはその類似体であり、経上皮担体は少なくとも一つのシステインアミノ酸残基を含む。インクレチン活性を持つペプチドは、少なくとも一つのシステインアミノ酸残基(付加もしくは置換によって導入されるもの、またはそのインクレチン活性を持つペプチド中に元から存在するもの)を含む。さらに好ましい実施形態では、経上皮担体が、インクレチン活性を持つペプチドにジスルフィド結合を介して結合されたペプチド単量体、そのホモ二量体、または単量体とホモ二量体との混合物を含む。さらに好ましい実施形態では、経上皮担体中の少なくとも一つのアミノ酸がD−アミノ酸である。非常に好ましい一実施形態では、経上皮担体中のアミノ酸が全てD−アミノ酸である。好ましくは、インクレチン活性を持つペプチドのN末端またはC末端にシステインアミノ酸残基が取り付けられるか、インクレチン活性を持つペプチド中のセリンアミノ酸残基の一つがシステインアミノ酸残基で置き換えられる。
【0031】
より好ましい一実施形態では、経上皮担体が5〜50個のアミノ酸を含む。経上皮担体の少なくとも3個のアミノ酸はアルギニンもしくはリジンまたはその類似体であり、経上皮担体は少なくとも一つのシステインアミノ酸残基を含む。インクレチン活性を持つペプチドは、少なくとも一つのシステインアミノ酸残基(付加もしくは置換によって導入されるもの、またはそのインクレチン活性を持つペプチド中に元から存在するもの)を含む。より好ましくは、インクレチン活性を持つペプチドが、アミノ酸配列:HGEGTFTSDL SKQMEEEAVR LFIEWLKNGG PSSGAPPPS(配列番号6)を含み、そのアミノ酸配列のN末端またはC末端にシステインアミノ酸残基が取り付けられるか、そのアミノ酸配列中のセリンアミノ酸残基の一つがシステインアミノ酸残基で置き換えられる。
【0032】
さらに好ましい一実施形態では、経上皮担体が5〜50個のアミノ酸を含む。経上皮担体の少なくとも3個のアミノ酸はアルギニンもしくはリジンまたはその類似体であり、経上皮担体は少なくとも一つのシステインアミノ酸残基を含む。インクレチン活性を持つペプチドは、少なくとも一つのシステインアミノ酸残基(付加もしくは置換によって導入されるもの、またはそのインクレチン活性を持つペプチド中に元から存在するもの)を含む。好ましくは、インクレチン活性を持つペプチドはアミノ酸配列:HSDGTFITSDL SKQMEEEAVR LFIEWLKNGG PSSGAPPPS(配列番号33)を含み、そのアミノ酸配列のN末端またはC末端にシステインアミノ酸残基が取り付けられるか、そのアミノ酸配列中のセリンアミノ酸残基の一つがシステインアミノ酸残基で置き換えられる。
【0033】
さらに好ましい一実施形態では、経上皮担体が5〜50個のアミノ酸を含む。経上皮担体の少なくとも3個のアミノ酸はアルギニンもしくはリジンまたはその類似体であり、経上皮担体は少なくとも一つのシステインアミノ酸残基を含む。インクレチン活性を持つペプチドは、少なくとも一つのシステインアミノ酸残基(付加もしくは置換によって導入されるもの、またはそのインクレチン活性を持つペプチド中に元から存在するもの)を含む。好ましくは、インクレチン活性を持つペプチドはアミノ酸配列:HAEGTFTSDV SSYLEGOAAK EFIAWLVKGR(配列番号7)を含み、そのアミノ酸配列のN末端またはC末端にシステインアミノ酸残基が取り付けられるか、そのアミノ酸配列中のセリンアミノ酸残基の一つがシステインアミノ酸残基で置き換えられる。
【0034】
一部の好ましい実施形態では、経上皮担体が、下記の構造(I)を持つグアニジニウム基を含む少なくとも一つのペプチドを含む:
【化2】

[式中、R、R、R、RおよびRは、水素、置換されていてもよいC−C12アルキル基、置換されていてもよいC−C12アルケニル基または置換されていてもよいC−C12アルキニル基から、それぞれ独立して選択される。ただし、R、R、R、RおよびRが全て水素であることはないものとする。より好ましくは、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基は、他のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基もしくは芳香族基、O、N、S、F、Cl、Br、P、および/またはSiで、さらに置換される。]
一部の好ましい実施形態では、グアニジニウム基中の3個の窒素原子のうち、任意の1個が、0個または1個環系に参加する。ただし、グアニジニウム基中の2個の窒素原子が同じ環系に参加することはないものとする。
【0035】
これに代わる好ましい実施形態では、グアニジニウム基中の3個の窒素原子のうち、任意の2個が、同じ環系に参加し、グアニジニウム基中の残りの窒素原子は0個または1個の環系に参加する。ただし、グアニジニウム基中の残りの窒素原子が1個の環系に参加する場合、その1個環系は、グアニジニウム基中の2個の窒素原子を含有する環系には縮合していないものとする。
【0036】
これに代わる好ましい実施形態では、グアニジニウム基中の3個の窒素原子のうち、任意の2個が、同じ環系に参加し、グアニジニウム基中の残りの窒素原子が、グアニジニウム基中の2個の窒素原子を含有する環系に縮合している1個の環系に参加する。
【0037】
一部の好ましい実施形態では、経上皮担体が、式(II)の構造:
【化3】

[式中、Rはグアニジニウム頭部を含み、R’はHであり、nは6〜40の整数である]
を含有するペプチドを含む。好ましい実施形態では、ペプチド結合のうち1個以上が、−C(=O)NHO−、−C(=O)NHNH−、−S(=O)(=O)NR−、−P(=O)(−OR)NR’−、−CH2NR−、−CH2CH2C(=O)NR−、−C(=O)O−、−C(=S)NR−、−S(=O)(=0)CH2−、−SOCH2−および−CH2OC(=O)NR−から選択される少なくとも一つで置き換えられる。
【0038】
好ましい実施形態では、経上皮担体が、式(III)の構造:
【化4】

[式中、nは6〜40の整数である]
を含む。
【0039】
好ましい実施形態では、経上皮担体が、式(IV)のペプトイド:
【化5】

[式中、RまたはR’のどちらか一方はグアニジニウム頭部を含み、nはペプトイド中の単量体単位の数である]
を含む。好ましくは、グアニジニウム頭部は、α炭素原子またはα窒素原子に、結合を介して連結される。より好ましくは、その結合は、C、O、N、S、F、Cl、Br、Pおよび/またはSi原子を含む。より好ましくは、結合は1〜30原子長である。
【0040】
好ましい実施形態では、インクレチンホルモン活性を持つペプチドが、2型糖尿病、肥満、心血管疾患および/またはアルツハイマー病である疾患の治療剤である。好ましい実施形態では、インクレチンホルモン活性を持つペプチドがグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)、エキセンディン−4またはその類似体である。好ましい実施形態では、インクレチンホルモン活性を持つペプチドが、グルカゴン様ペプチド−1受容体およびグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド受容体を標的としている。
【0041】
好ましい実施形態では、皮膚接触基剤が、軟膏剤、ゲル剤、乳剤、懸濁剤、パップ剤、硬膏剤、ローション剤またはリニメント剤である。より好ましくは、皮膚接触基剤が、感圧接着剤および裏打ちを含む硬膏剤である。さらに好ましくは、硬膏剤は、感圧接着剤層に加えられる水または有機液体成分を含む。さらに好ましくは、有機液体成分は、グリコール、オリーブ油、ヒマシ油、スクアラン、オレンジ油、鉱油、C6−20脂肪酸、C6−20脂肪酸エステルまたはC1−20アルコールである。好ましい実施形態では、皮膚接触基剤が徐放をもたらす。
【0042】
本発明の好ましい実施形態では、上皮組織が皮膚組織である。
【0043】
本発明の好ましい実施形態は、上述した局所用調製物のいずれかの使用を含む、ヒト対象の糖尿病を処置する方法に向けられる。
【0044】
本発明の好ましい実施形態は、ヒト対象の糖尿病を処置するための医薬(この処置は、インクレチンホルモン活性を持つペプチドおよび経上皮担体を含む局所用調製物を用意するステップ;その局所用調製物を、前記活性剤が患者の皮膚上に局所的に放出されるように、患者の皮膚と接触させて置くステップ、ならびに重篤な悪心および/または嘔吐を誘発することなく、ヒト対象におけるインスリンの分泌をインビボで刺激するために、インクレチンホルモン活性を持つペプチドの有効量を送達するステップを含み、経上皮担体は、無傷の動物皮膚組織層を横切ってなされる活性剤の送達を、経上皮担体の不在下でそのペプチドを送達する場合と比較して増加させるために、十分なアミノ基、グアニジン基またはアミジノ基を含む)の製造に向けられる。好ましい実施形態では、インクレチンホルモン活性を持つペプチドの濃度が0.001%〜70%であり、経上皮担体の濃度が0.001%〜70%である。
【0045】
好ましい実施形態では、局所用調製物が、下記の構造VまたはVIの一方を持つコンジュゲートである:
【化6】

[式中、
Qは経上皮担体を含み;
Lはペプチドを含み;
Xはペプチド上の官能基と担体上の官能基との間に形成される結合であり;
Yはリンカー上の官能基と担体上の官能基との間に形成される結合であり;
Zはペプチド上の官能基とリンカー上の官能基との間に形成される結合であり;
Tは小さなオリゴペプチドリンカーであり;そして
mは1〜5の整数である]。
【0046】
好ましい実施形態では、構造VおよびVIが、加水分解またはグルタチオンを使った還元による分解を受けて、インクレチンホルモン活性を持つペプチドを、その生物活性型で放出する能力を持つ。好ましい実施形態では、X、YおよびZが、−S−S−、−C(=O)O−、−C(=O)S−、−C(O)NH−、−C(=S)NH−、−OC(O)NH−、−NHC(=O)NH−、−CA=N−、アセタール結合、セミアセタール結合、−SONH−、および−SONH−から独立して選択される(式中、AはH、アルキルまたはアリールである)。
【0047】
一部の好ましい実施形態では、ペプチドおよび経上皮担体が、静電相互作用、水素結合、π−スタッキング相互作用およびファンデルワールス相互作用などの非共有結合的相互作用によって会合する
好ましい実施形態では、経上皮担体が、単量体型ペプチドとその二量体型との混合物を含む。好ましくは、経上皮担体は5〜50個のアミノ酸を含み、そのうち少なくとも3個のアミノ酸はアルギニンもしくはリジンまたはその類似体である。好ましくは、経上皮担体中の少なくとも一つのアミノ酸がD−アミノ酸である。一部の好ましい実施形態では、経上皮担体中のアミノ酸が全てD−アミノ酸である。
【0048】
好ましい実施形態では、経上皮担体が少なくとも一つのシステインアミノ酸残基を含む。より好ましくは、経上皮担体が、インクレチン活性を持つペプチドにジスルフィド結合を介して結合されたペプチド単量体、そのホモ二量体、または単量体とホモ二量体との混合物を含む。好ましい実施形態では、経上皮担体中の少なくとも一つのアミノ酸がD−アミノ酸である。一部の好ましい実施形態では、経上皮担体中のアミノ酸が全てD−アミノ酸である。
【0049】
好ましい実施形態では、インクレチン活性を持つペプチドが少なくとも一つのシステインアミノ酸残基を含む。この場合、その少なくとも一つのシステインは、付加または置換によって導入されるか、インクレチン活性を持つペプチドに元から存在している。好ましくは、インクレチン活性を持つペプチドのN末端またはC末端にシステインアミノ酸残基が取り付けられるか、インクレチン活性を持つペプチド中のセリンアミノ酸残基の一つがシステインアミノ酸残基で置き換えられる。
【0050】
好ましい一実施形態では、インクレチン活性を持つペプチドがアミノ酸配列:HGEGTFTSDL SKQMEEEAVR LFIEWLKNGG PSSGAPPPS(配列番号6)を含み、そのアミノ酸配列のN末端またはC末端にシステインアミノ酸残基が取り付けられるか、そのアミノ酸配列中のセリンアミノ酸残基の一つがシステインアミノ酸残基で置き換えられる。
【0051】
好ましい一実施形態では、インクレチン活性を持つペプチドがアミノ酸配列:HSDGTFITSDL SKQMEEEAVR LFIEWLKNGG PSSGAPPPS(配列番号33)を含み、そのアミノ酸配列のN末端またはC末端にシステインアミノ酸残基が取り付けられるか、そのアミノ酸配列中のセリンアミノ酸残基の一つがシステインアミノ酸残基で置き換えられる。
【0052】
好ましい一実施形態では、インクレチン活性を持つペプチドがアミノ酸配列:HAEGTFTSDV SSYLEGOAAK EFIAWLVKGR(配列番号7)を含み、そのアミノ酸配列のN末端またはC末端にシステインアミノ酸残基が取り付けられるか、そのアミノ酸配列中のセリンアミノ酸残基の一つがシステインアミノ酸残基で置き換えられる。
【0053】
より好ましい一実施形態では、経上皮担体が5〜50個のアミノ酸を含む。経上皮担体の少なくとも3個のアミノ酸はアルギニンもしくはリジンまたはその類似体であり、経上皮担体は少なくとも一つのシステインアミノ酸残基を含む。インクレチン活性を持つペプチドは、少なくとも一つのシステインアミノ酸残基(付加もしくは置換によって導入されるもの、またはそのインクレチン活性を持つペプチド中に元から存在するもの)を含む。さらに好ましい実施形態では、経上皮担体が、インクレチン活性を持つペプチドにジスルフィド結合を介して結合されたペプチド単量体、そのホモ二量体、または単量体とホモ二量体との混合物を含む。さらに好ましい実施形態では、経上皮担体中の少なくとも一つのアミノ酸がD−アミノ酸である。非常に好ましい一実施形態では、経上皮担体中のアミノ酸が全てD−アミノ酸である。好ましくは、インクレチン活性を持つペプチドのN末端またはC末端にシステインアミノ酸残基が取り付けられるか、インクレチン活性を持つペプチド中のセリンアミノ酸残基の一つがシステインアミノ酸残基で置き換えられる。
【0054】
より好ましい一実施形態では、経上皮担体が5〜50個のアミノ酸を含む。経上皮担体の少なくとも3個のアミノ酸はアルギニンもしくはリジンまたはその類似体であり、経上皮担体は少なくとも一つのシステインアミノ酸残基を含む。インクレチン活性を持つペプチドは、少なくとも一つのシステインアミノ酸残基(付加もしくは置換によって導入されるもの、またはそのインクレチン活性を持つペプチド中に元から存在するもの)を含む。より好ましくは、インクレチン活性を持つペプチドが、アミノ酸配列:HGEGTFTSDL SKQMEEEAVR LFIEWLKNGG PSSGAPPPS(配列番号6)を含み、そのアミノ酸配列のN末端またはC末端にシステインアミノ酸残基が取り付けられるか、そのアミノ酸配列中のセリンアミノ酸残基の一つがシステインアミノ酸残基で置き換えられる。
【0055】
さらに好ましい一実施形態では、経上皮担体が5〜50個のアミノ酸を含む。経上皮担体の少なくとも3個のアミノ酸はアルギニンもしくはリジンまたはその類似体であり、経上皮担体は少なくとも一つのシステインアミノ酸残基を含む。インクレチン活性を持つペプチドは、少なくとも一つのシステインアミノ酸残基(付加もしくは置換によって導入されるもの、またはそのインクレチン活性を持つペプチド中に元から存在するもの)を含む。好ましくは、インクレチン活性を持つペプチドはアミノ酸配列:HSDGTFITSDL SKQMEEEAVR LFIEWLKNGG PSSGAPPPS(配列番号33)を含み、そのアミノ酸配列のN末端またはC末端にシステインアミノ酸残基が取り付けられるか、そのアミノ酸配列中のセリンアミノ酸残基の一つがシステインアミノ酸残基で置き換えられる。
【0056】
さらに好ましい一実施形態では、経上皮担体が5〜50個のアミノ酸を含む。経上皮担体の少なくとも3個のアミノ酸はアルギニンもしくはリジンまたはその類似体であり、経上皮担体は少なくとも一つのシステインアミノ酸残基を含む。インクレチン活性を持つペプチドは、少なくとも一つのシステインアミノ酸残基(付加もしくは置換によって導入されるもの、またはそのインクレチン活性を持つペプチド中に元から存在するもの)を含む。好ましくは、インクレチン活性を持つペプチドはアミノ酸配列:HAEGTFTSDV SSYLEGOAAK EFIAWLVKGR(配列番号7)を含み、そのアミノ酸配列のN末端またはC末端にシステインアミノ酸残基が取り付けられるか、そのアミノ酸配列中のセリンアミノ酸残基の一つがシステインアミノ酸残基で置き換えられる。
【0057】
一部の好ましい実施形態では、経上皮担体が、下記の構造(I)を持つグアニジニウム基を含む少なくとも一つのペプチドを含む:
【化7】

[式中、R、R、R、RおよびRは、水素、置換されていてもよいC−C12アルキル基、置換されていてもよいC−C12アルケニル基または置換されていてもよいC−C12アルキニル基から、それぞれ独立して選択される。ただし、R、R、R、RおよびRが全て水素であることはないものとする。より好ましくは、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基は、他のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基もしくは芳香族基、O、N、S、F、Cl、Br、P、および/またはSiで、さらに置換される。]
一部の好ましい実施形態では、グアニジニウム基中の3個の窒素原子のうち、任意の1個が、0個または1個の環系に参加する。ただし、グアニジニウム基中の2個の窒素原子が同じ環系に参加することはないものとする。
【0058】
これに代わる好ましい実施形態では、グアニジニウム基中の3個の窒素原子のうち、任意の2個が、同じ環系に参加し、グアニジニウム基中の残りの窒素原子は0個または1個の環系に参加する。ただし、グアニジニウム基中の残りの窒素原子が1個の環系に参加する場合、その1個の環系は、グアニジニウム基中の2個の窒素原子を含有する環系には縮合していないものとする。
【0059】
これに代わる好ましい実施形態では、グアニジニウム基中の3個の窒素原子のうち、任意の2個が、同じ環系に参加し、グアニジニウム基中の残りの窒素原子が、グアニジニウム基中の2個の窒素原子を含有する環系に縮合している1個の環系に参加する。
【0060】
一部の好ましい実施形態では、経上皮担体が、式(II)の構造:
【化8】

[式中、Rはグアニジニウム頭部を含み、R’はHであり、nは6〜40の整数である]
を含有するペプチドを含む。好ましい実施形態では、ペプチド結合のうち1個以上が、−C(=O)NHO−、−C(=O)NHNH−、−S(=O)(=O)NR−、−P(=O)(−OR)NR’−、−CH2NR−、−CH2CH2C(=O)NR−、−C(=O)O−、−C(=S)NR−、−S(=O)(=0)CH2−、−SOCH2−および−CH2OC(=O)NR−から選択される少なくとも一つで置き換えられる。
【0061】
好ましい実施形態では、経上皮担体が、式(III)の構造:
【化9】

[式中、nは6〜40の整数である]
を含む。
【0062】
好ましい実施形態では、経上皮担体が、式(IV)のペプトイド:
【化10】

[式中、RまたはR’のどちらか一方はグアニジニウム頭部を含み、nはペプトイド中の単量体単位の数である]
を含む。好ましくは、グアニジニウム頭部は、α炭素原子またはα窒素原子に、結合を介して連結される。より好ましくは、その結合は、C、O、N、S、F、Cl、Br、Pおよび/またはSi原子を含む。より好ましくは、結合は1〜30原子長である。
【0063】
好ましい実施形態では、インクレチンホルモン活性を持つペプチドが、2型糖尿病、肥満、心血管疾患および/またはアルツハイマー病である疾患の治療剤である。好ましい実施形態では、インクレチンホルモン活性を持つペプチドがグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)、エキセンディン−4またはその類似体である。好ましい実施形態では、インクレチンホルモン活性を持つペプチドが、グルカゴン様ペプチド−1受容体およびグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド受容体を標的としている。
【0064】
本発明の好ましい実施形態では、上皮組織が皮膚組織である。
【0065】
本発明のさらなる態様、特徴および利点は、以下に記載する好ましい実施形態の詳細な説明から明らかになるだろう。
【0066】
本発明のこれらの特徴および他の特徴を、以下に、本発明の限定ではなく例示を意図する好ましい実施形態の図面を参照しながら説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0067】
ここに記述する実施形態は本発明の好ましい実施形態を表すが、当業者であれば本発明の要旨から逸脱することなく変更形態を考えつくであろうと理解すべきである。したがって本発明の範囲は本願請求項によってのみ決定されるべきである。
定義
「上皮」という用語はその通常の意味で使用され、身体の、自由で開いた表面の全てを覆う細胞の外層である上皮に関し、皮膚、および身体の外側に通じる粘膜を含む。
【0068】
「経上皮」という用語は上皮を通した薬物などの物質の侵入を指し、直接的な局所適用ならびに貼付剤などの支持材料を使った適用を含む。
【0069】
「経皮(transdermal)」または「経皮膚(transcutaneous)」という用語は、真皮または皮膚を通した薬物などの物質の侵入を指し、直接的な局所適用ならびに貼付剤などの支持材料を使った適用を含む。
【0070】
「経皮担体」または「経皮輸送体」とは、真皮を横切る薬物などの化合物の移動を促進する任意の化合物を指す。
【0071】
「タンパク質導入ドメイン(PTD)」または「細胞透過ペプチド(CPP)」とは、当該ペプチドをカーゴに共有結合的にまたは非共有結合的に取り付けた場合に、そのカーゴの膜トランスロケーションを媒介する能力を持つ任意のペプチドを含む、経皮担体のクラスを指す。
【0072】
「経皮調製物」とは、少なくとも一つの皮膚層を横切って輸送されるべき少なくとも一つの化合物とその輸送を容易にする追加成分とを含む組成物を指す。追加材料には、1以上の経上皮担体ならびに貼付剤材料などの固形支持体が含まれうる。貼付剤材料は、皮膚に貼付するために1以上の接着剤を含みうる。好ましい実施形態では、輸送されるべき化合物が、インクレチンホルモン活性を持つペプチドである。好ましい実施形態では、経上皮調製物が少なくとも一つのPTDを含む。場合により、後述するように、経上皮輸送を増進するために他の成分が含まれていてもよい。
【0073】
「ペプチド」とは、ペプチド結合によって接合されたアミノ酸から構成される化合物を指す。アミノ酸はD−アミノ酸もしくはL−アミノ酸またはその混合物であることができる。ペプチド鎖は鎖状または分枝状であることができる。一般に、ペプチドは少なくとも2個のアミノ酸残基を含有し、一般的には50アミノ酸長未満である。
【0074】
「カーゴ」とは、少なくとも一つの皮膚層を横切って輸送される1以上の化合物を指す。好ましい実施形態では、カーゴが、インクレチンホルモン活性を持つペプチドである。
【0075】
「担体−カーゴ複合体」とは、輸送されるべき化合物と輸送体との複合体またはコンジュゲートを指す。好ましい実施形態では、担体とカーゴの両方がペプチドである。カーゴはインクレチンホルモン活性を持つペプチドであり、担体は好ましくはPTD、より好ましくはアミノ基、グアニジン基および/またはアミジノ基に富むペプチドである。担体は、後述するように、共有結合的相互作用または非共有結合的相互作用によって、カーゴと複合体化させることができる。
【0076】
「類似体」とは、類似するアミノ酸配列を持ち、少なくとも一部の機能的性質を保っている、機能的変種を指す。本発明に関して、GLP−1またはエキセンディンの類似体とは、GLP−1と類似するアミノ酸配列を持ち、関連GLP−1、エキセンディンまたはそのアゴニストのインスリン分泌刺激性を、少なくともある程度は保っている機能的変種を指す。類似するアミノ酸配列とは、類似体と関連GLP−1、エキセンディンまたはそのアゴニストとの間の配列一致度の量を指す。好ましくは配列一致度は少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%である。
【0077】
「機能的変種」とは、特定のエキセンディンもしくはGLP−1またはそのアゴニストの1以上の活性に代えることができる活性を持つ誘導体を指す。
【0078】
「元から」という用語は、その通常の意味を持つと解釈され、特に、特定のアミノ酸を元から含有しているペプチドに関して使用される。化学的手段または組換え手段などによる修飾を必要とせず、特定のアミノ酸がネイティブペプチド中に存在する場合に、そのペプチドはその特定アミノ酸を元から含有するという。
インクレチンホルモン活性を持つペプチド
定義上、インクレチンホルモンは、グルコースレベルが正常である時、あるいは特にグルコースレベルが上昇している時に、放出されるインスリンの量の増加を引き起こすホルモンである。ヒトでは二つのインクレチンホルモン、すなわちグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)およびグルカゴン様ペプチド−1(GLP−I)が知られている。現在、糖尿病、肥満、心血管疾患およびアルツハイマー病の潜在的な新しい処置パラダイムの基礎として、GLP−1が大いに注目されている。
【0079】
GLP−1はプレプログルカゴン遺伝子の産物である。これは食物摂取に呼応して下部腸路のL細胞で合成される。膵臓では、GLP−1が、厳密にグルコース依存的な形で、β細胞からのグルコース誘発インスリン分泌を強化する。GLP−1は、インスリン生合成の全段階の刺激、島のグルコース感受性の修復、ならびにグルコース輸送体GLUT−2およびグルコキナーゼの発現増加の刺激など、2型糖尿病の処置に関連する機能的に重要な効果を、他にもいくつか持っている。GLP−1は、β細胞増殖の刺激、膵管上皮中の前駆細胞からの新しいβ細胞の分化の増進、およびβ細胞におけるサイトカイン誘発アポトーシスおよび脂肪酸誘発アポトーシスの阻害など、β細胞に対する栄養効果も持っている。GLP−1はグルカゴン分泌を阻害し、それが肝グルコース放出量の低下をもたらす。腸では、GLP−1は、運動性および胃内容排出の強力な阻害剤であり、胃酸分泌を阻害することも示されている。胃内容排出の阻害は、食物摂取量の減少および体重の減少につながる。したがって、GLP−1化合物クラスは、血中グルコースを管理することだけでなく、他のいくつかの効果によっても、2型糖尿病疾患の進行を管理することができるだろうと、現在考えられている。
【0080】
糖尿病処置におけるGLP−1化合物クラスの臨床的潜在能力は、そのグルコース低下効果によって実証されている。公表された研究の一つでは、天然GLP−1が、皮下ポンプ注入により、最長6週間にわたって糖尿病患者に投与された。この研究により、主に最初の1週間の処置で、空腹時血中グルコースを迅速に4〜5mM低下させるというGLP−1の潜在能力が実証された。現在利用可能な糖尿病薬は、スルホニル尿素類、メトホルミンまたはインスリン抵抗性改善薬を含めて、いずれもこの効果を持っていない。また、現在利用することができる他の糖尿病薬のいずれとも異なり、GLP−1は唯一、低血糖および体重増加などの重篤な副作用を誘発することなく、効率のよいグルコース管理を達成することができる。
【0081】
GLP−1の生物学的機能は、Gタンパク質共役受容体の一つ、GLP−1受容体との相互作用による。GLP−1受容体は、主として膵島に位置するものの、心臓および脳でも発現される。心臓におけるGLP−1受容体の存在は、血中グルコースを低下させるGLP−1の利益と共に、心血管合併症を処置するためにGLP−1を使用することの根拠を与えうる。また、GLP−1化合物クラスにはアルツハイマー病を処置する潜在能力があることを示唆する証拠も出てきつつある。GLP−1は神経突起伸長を誘発し、培養ニューロン細胞における興奮毒性細胞死および酸化的傷害に対抗して保護することが実証されている。さらにまた、GLP−1およびエキセンディン−4は、マウス脳におけるβ−アミロイドペプチド(Aβ)の内在性レベルを低下させ、ニューロン中のβ−アミロイド前駆体タンパク質のレベルを低下させることが示された。
【0082】
GLP−1の二つのサブクラスが臨床開発中である。一つは天然GLP−1であり、もう一つはLillyおよびAmylinのエキセンディン−4である。エキセンディン−4は現在、第3相臨床開発の段階にあり、β細胞の成長、複製および新生を刺激する効果が示された。他にも、いくつかの企業のいくつかのGLP−1類似体が、現在開発中である。Novo Nordiskは、1日1回の注射治療として、リラグルチドによる第2相臨床試験を完了している。リラグルチドはGLP−1と等効力であり、エキセンディン−4の10倍を超える長い半減期を持つ。Conjuchemは反応性GLP−1類似体CJC−1131を開発中である。CJC−1131は、DPP−IV分解から保護するために修飾された。CJC−1131は、そのコンジュゲートがアルブミンの半減期を持つことになるように、皮下注射後にアルブミンに共有結合するようにも設計された。Human Genome Scienceは、GLP−1類似体とアルブミンとの融合タンパク質アルブゴン(Albugon)を使って、創薬中である。Zealand PharmaはGLP−1類似体ZP10Aおよびエキセンディン−4類似体ZP10Aを公表した。Ipsenはプロテアーゼ安定化GLP−1類似体BIM−51077を公表した。
【0083】
インクレチンホルモン活性を持つペプチドは、グルカゴン様ペプチド1受容体またはグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド受容体のどちらか一方に結合する能力を持つ任意のペプチドであることもできる。インクレチンホルモン活性を持つペプチドには、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、グルコース依存性インスリン分泌刺激ペプチド(GIP)およびGLP−1アゴニスト、例えばエキセンディン4などがある。場合により、インクレチンホルモン活性を持つペプチドを、システイン残基により、そのN末端またはC末端で修飾するか、セリン残基の一つを置換することによって修飾してもよい。インクレチンホルモン活性を持つペプチドには、以下に挙げるものが含まれる(これらは表1および/または表2にも列挙する):GLP−1、GIP、エキセンディン−3、エキセンディン−4、リラグルチド、CJC−1131およびZP10A。
【0084】
インクレチンホルモン活性を持つペプチドの臨床的潜在能力は、糖尿病、肥満、心血管疾患およびアルツハイマー病を含む慢性障害の処置にある。これらのペプチドを効率よく投与することは、慢性障害の処置に有用な治療剤への展開にとって大きな難問である。実際、現在ペプチド薬に利用することができる実行可能な唯一の送達系路である注射に代わる安全で便利で対費用効果の高い方法が、差し迫って必要とされている。注射は患者およびその医療提供者の負担を増すだけでなく、注射によって誘発されるGLP−1化合物クラスのピーク濃度は、患者に悪心および嘔吐も引き起こした。経上皮送達系路はGLP−1化合物クラスにとって極めて魅力的である。効率のよい経上皮送達は、経上皮経路の作出と、薬物の性質を改善することに依存する。GLP−1およびエキセンディン−4のサイズを持つ化合物の場合、これらの性質は、
(1)望ましい物理的性質(水溶性、logPなど)
(2)プロテアーゼ(DPP−IVなど)作用に対する安定性
からなる。
【0085】
これらの性質の改善はペプチドの化学修飾によって達成することができる。そのような修飾には、リン酸化、グリコシル化、架橋、アシル化、タンパク質分解的切断、抗体分子、膜分子または他のリガンドへの結合などがある。
【0086】
本発明の実施形態は、経上皮担体を使用して、インクレチンホルモン活性を持つ1以上のペプチドを、患者の皮膚を通して送達することに向けられる。インクレチンホルモン活性を持つペプチドには、GLP−1、エキセンディンおよびその類似体が含まれる。インクレチンホルモン活性を持つペプチドの限定でない例を、表2に記載する
【表2】

【0087】
本発明で有用なインクレチンホルモン活性を持つペプチド化合物は、化学合成によって製造するか、組換えDNA技法を使って製造することができる。エキセンディンまたはGLP−1アゴニスト類似体または誘導体は、本発明の方法に包含される。類似体または誘導体は、類似するアミノ酸配列を持ち、関連エキセンディンもしくはGLP1またはそのアゴニストのインスリン分泌刺激性をある程度は保っている、エキセンディンまたはGLP−1の機能的変種である。機能的変種とは、特定のエキセンディンもしくはGLP−1またはそのアゴニストの1以上の活性に代えることができる活性を持つ誘導体を意味する。好ましい機能的変種は、特定のエキセンディンもしくはGLP−1またはそのアゴニストの活性を全て保っているが、機能的変種は、定量的に測定した場合に、例えば本明細書に開示するような機能アッセイで測定して、より強い活性またはより弱い活性を持っていてもよい。誘導体は、関連エキセンディンもしくはGLP−1またはそのアゴニストに対して、少なくとも約50%の配列類似度、好ましくは約70%、より好ましくは約90%、さらに好ましくは約95%の配列類似度を持つ。「配列類似度」とは、ポリペプチドの起源とは関わりなく、二つの異なるポリペプチド中のアミノ酸配列間に見られる「ホモロジー」を指す。
【0088】
誘導体は、翻訳中または翻訳後に起こる、例えばリン酸化、グリコシル化、架橋、アシル化、タンパク質分解的切断、抗体分子、膜分子または他のリガンドへの結合などによる修飾を含む。
【0089】
誘導体は、標準的な化学的技法および組換え核酸分子技法を使って製造することができる。特定ポリペプチドへの修飾は、例えば部位特異的突然変異誘発法や固相合成中のアミノ酸置換によるもののように、意図的であってもよいし、例えばポリペプチドを産生する宿主における突然変異によるもののように、偶発的であってもよい。ポリペプチドは、誘導体を含めて、例えばSambrookら「Molecular Cloning」Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)に記述されているような標準的技法を使って取得することができる。
【0090】
上述の化合物はさまざまな無機および有機の酸および塩基と塩を形成する。そのような塩には、有機酸および無機酸、例えばHCl、HBr、HSO、HPO、トリフルオロ酢酸、酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、マレイン酸、フマル酸およびショウノウスルホン酸などを使って製造される塩が含まれる。塩基を使って製造される塩には、アンモニウム塩、アルカリ金属塩、例えばナトリウム塩およびカリウム塩、ならびにアルカリ土類塩、例えばカルシウム塩およびマグネシウム塩などがある。塩は、通常の手段によって、例えば遊離酸型または遊離塩基型の生成物を、1当量以上の適当な塩基または酸と、その塩が不溶性であるような溶媒もしくは媒質中で反応させるか、または水などの溶媒中で反応させた後、それを減圧下でもしくは凍結乾燥で除去することによって、あるいは既存の塩のイオンを適切なイオン交換樹脂で別のイオンと交換することなどによって、形成させることができる。
【0091】
上述のインクレチンホルモン活性を持つペプチドを含む組成物は、薬学的に許容できる塩(例えば酸付加塩)および/またはその複合体として調剤することもできる。薬学的に許容できる塩は、それが投与される濃度では無毒性の塩である。
【0092】
薬学的に許容できる塩には、酸付加塩、例えば硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、スルファミン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩およびキナ酸塩を含有するものがある。薬学的に許容できる塩は、塩酸、硫酸、リン酸、スルファミン酸、酢酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、マロン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、およびキナ酸などの酸から得ることができる。そのような塩は、例えば、遊離酸型または遊離塩基型の生成物を、1当量以上の適当な塩基または酸と、その塩が不溶性であるような溶媒もしくは媒質中で反応させるか、または水などの溶媒中で反応させた後、それを減圧下でもしくは凍結乾燥で除去することによって、あるいは既存の塩のイオンを適切なイオン交換樹脂で別のイオンと交換することなどによって、製造することができる。
インクレチンホルモン活性を持つペプチドを送達するための経上皮担体
経上皮経路の作出は、経上皮送達にとって極めて重要である。経上皮経路の作出には、マイクロニードルおよび化学的増進剤の使用など、さまざまな方法を利用することができる。経上皮担体と共有結合的にまたは非共有結合的にコンジュゲートされた薬物には、他の経上皮送達法に付随する副作用である皮膚の炎症を引き起こさないという、潜在的利点がある。最近の報文では、Rothbardら(Rothbard, J. B.; Garlington, S.; Lin, Q.; Kirschberg, T.; Kreider, E.; McGrane, P. L.; Wender, P. A.; Khavari, P. A.「Conjugation of arginine oligomers to cyclosporine A facilitates topical delivery and inhibition of inflammation(シクロスポリンAへのアルギニンオリゴマーのコンジュゲーションにより局所送達および炎症の抑制が助長される)」Nature Medicine, 2000, 6, 1253−1257)が、pH感受性リンカーを介してアルギニンの七量体をシクロスポリンAにコンジュゲートすることにより、R7−CsAを製造した。皮膚を透過することができなかった無修飾のシクロスポリンAとは対照的に、局所的に適用されたR7−CsAはマウス皮膚およびヒト皮膚の細胞中に効率よく輸送された。R7−CsAは真皮Tリンパ球に到達し、皮膚の炎症を抑制した。
【0093】
アルギニン七量体は、一般にタンパク質導入ドメイン(PTD)または細胞透過ペプチド(CPP)として知られている化合物クラスに属する。この化合物クラスには、当該ペプチドをカーゴに共有結合的にまたは非共有結合的に取り付けた場合に、そのカーゴの膜トランスロケーションを媒介する能力を持つ任意のペプチドが含まれる。公表された科学文献には、細胞膜を横切るカーゴのトランスロケーションを媒介することができるペプチド配列が、極めて数多く記載されている。アルギニンオリゴマーは、検討されたPTDのなかで、皮膚組織を横切ってカーゴをトランスロケートさせる効力が示された最初のPTDである。
【0094】
ヒト皮膚は三つの層で構成されている。皮膚の外面に位置する角質層は、脂質に富む細胞外マトリックスに取り囲まれた、ケラチンで満たされた細胞の、生きていない層であり、これが皮膚への薬物送達の一次障壁となっている。その下の表皮は血管を欠く生存可能な組織である。真皮−表皮接合部のすぐ下では、真皮が、経上皮投与された薬物を取り込んで全身に分布させることができる毛細血管係蹄を含有している。大半の分子にとって、角質層は、薬物送達に対する律速的障壁である。角質層は、どちらの組織も脂質に富むという点で、細胞膜とも多少類似している。
【0095】
アルギニン七量体は、培養細胞の培地に添加されると細胞に侵入することができる86残基タンパク質であるヒト免疫不全ウイルス(HIV)tatタンパク質の修飾によって得られた。HIV tatタンパク質に由来する多くのペプチドは、細胞透過効果を持つことが知られている。トランスロケーション効果を担う最小ドメインは、残基49−57からなる。HIV tat(49−57)はアルギニンに富み、塩基性が高い。さらに、HIV tat(49−57)中のグアニジニウム頭部が細胞へのその取り込みを主に担っていることも実証された。HIV tat(49−57)中の非アルギニン残基を全てアルギニンに置き換えたところ、優れた取り込み率を示す輸送体が得られた。最近、この輸送体の正に帯電した水溶性グアニジニウム頭部が細胞表面上の水素結合受容官能基と二座の水素結合を形成し、その結果生じるイオン対複合体が脂質二重層中に分配し、膜を横切って移動すると提唱された(J. B. Rothbardら「Role of Membrane Potential and Hydrogen Bonding in the Mechanism of Translocation of Guanidinium−Rich Peptides into Cells(細胞内へのグアニジニウムリッチペプチドのトランスロケーションの機序における膜電位および水素結合の役割)」J. Am. Chem. Soc. (2004), 126, 9506−9507)。アルギニンリッチオリゴペプチドが薬物送達用の経皮経路を効率よく作出することができる理由は、この機序によって、少なくとも部分的には説明される。というのも、既知の三つの経皮経路のうち二つでは、水相と脂質相との間で薬物の分配が起こるからである。すなわち、経細胞経路では、二重層脂質とケラチンで満たされた細胞との間の分配、およびそれに続く水和ケラチンを通した拡散を含む、一連の事象によって、薬物分子が角質層を横切る。細胞間脂質経路は、ほとんどの非荷電小分子がケラチノサイト間の連続的脂質ドメインを通って移動することによって角質層を横断する主要経路を与える。
【0096】
最もよく特徴づけられたアルギニンリッチPTDの一例として、ショウジョウバエホメオタンパク質アンテナペディアのホメオドメイン(pAntp)に由来するペプチド、ペネトラチン、およびHIV tatに由来するペプチドが挙げられる。代表的配列を以下に示す:
pAntp(43−58);ペネトラチン:RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号36)
レトロインベルソ型pAntp(43−58):kkwkmrrnqfwvkvqr(全てD−アミノ酸)(配列番号37)
W/Rペネトラチン:RRWRRWWRRWWRRWRR(配列番号38)
pAntp(52−58):RRMKWKK(配列番号39)
HIV tat(49−57):RKKRRQRRR(配列番号40)
HIV tat(48−60):GRKKRRQRRRPPQ(配列番号41)
HIV tat(47−57):YGRKKRRQRRR(配列番号42)
r7:rrrrrrr(全てD−アミノ酸)(配列番号43)
r9:rrrrrrrrr(全てD−アミノ酸)(配列番号44)。
【0097】
本発明は、1以上の上皮層(好ましくは動物皮膚組織の1以上の層)中への、およびそのような層を横切る、インクレチンホルモン活性を持つペプチドの輸送を与える組成物および方法を提供する。本方法では、皮膚または他の上皮組織を、経上皮輸送体に共有結合によって連結された、または経上皮輸送体と非共有結合的に会合した、インクレチンホルモン活性を持つペプチドを含むコンジュゲートと接触させる。本発明の経上皮輸送体は、1以上の無傷の皮膚または他の上皮組織層中への、およびそのような層を横切る、コンジュゲートの送達を増加させるために十分なグアニジノ部分またはアミジノ部分を含む分子である。本方法および組成物は、真性糖尿病、および肥満を含む関連疾患ならびにアルツハイマー病の処置に有用である。
【0098】
経上皮担体は、皮膚などの上皮組織を通したインクレチンホルモン活性を持つペプチドの移動を容易にする任意の組成物であることができる。好ましくは、経上皮担体は、1以上のアミノ基、グアニジン基および/またはアミジノ基を含有するペプチドである。「グアニジニウム基」という用語は、以下の構造(I)を持つ部分を指す:
【化11】

式(I)において、R、R、R、RおよびRは、水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基であることができる。一定の実施形態では、R、R、R、RおよびRの全てが同時に水素原子であることはできない。アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基は、他のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基または芳香族基、ならびにO、N、S、F、Cl、Br、P、および/またはSiなどのヘテロ原子を持つ官能基で、さらに置換することができる。
【0099】
グアニジニウム基中の3個の窒素原子のうち、任意の1個は、0個または1個の環系に独立して参加することができる。一定の実施形態では、グアニジニウム基中の2個の窒素原子が同じ環系に参加することはない。
【0100】
別の実施形態では、グアニジニウム基中の3個の窒素原子のうち、任意の2個が、同じ環系に参加し、グアニジニウム基中の残りの窒素原子は0個または1個の環系に参加することができ、グアニジニウム基中の残りの窒素原子が1個の環系に参加する場合、この環系は、グアニジニウム基中の2個の窒素原子を含有する環系には縮合していない。
【0101】
一部の実施形態では、グアニジニウム基中の3個の窒素原子のうち、任意の2個が、同じ環系に参加し、グアニジニウム基中の残りの窒素原子が、グアニジニウム基中の2個の窒素原子を含有する環系に縮合している1個の環系に参加する。
【0102】
上述の環系は4員、5員、6員または7員であることができる。各環系は0個、1個、または複数の多重結合を含有するか、芳香族であることができる。環系のそれぞれは0個または1個の環系に縮合していてもよい。環系のそれぞれは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基もしくは芳香族基、ならびにO、N、S、F、Cl、Br、P、および/またはSiなどのヘテロ原子を持つ官能基で置換されていてもよい。2個の環系が1個の共通する結合を共有する場合、それらは縮合しているという。
【0103】
「アミジノ基」という用語は式:−C(=NH)(NH)を持つ部分を指す。アミノ基、グアニジン基および/またはアミド基は、輸送ペプチドを構成するアミノ酸上に見出しうる。リジンおよびアルギニンは輸送ペプチドにとって特に好ましいアミノ酸残基である。
【0104】
一定の実施形態では、ペプチドが一般式(II)の構造である:
【化12】

[式中、グアニジニウム頭部はRの一部であり、R’はHであり、nはこのペプチド中のアミノ酸単量体単位の数である]。ペプチド構造II)において、構造断片−C(=O)NR’−はペプチド結合と呼ばれる。この構造断片の厳密な性質が経上皮担体のトランスロケーション効率に及ぼす影響は極めてわずかである。したがって、ペプチド結合の任意の一つを、以下の代替の一つで置き換えることができる:−C(=O)NHO−、−C(=O)NHNH−、−S(=O)(=O)NR−、−P(=O)(−OR)NR’−、−CHNR−、−CHCHC(=O)NR−、−C(=O)O−、−C(=S)NR−、−S(=O)(=0)CH−、−SOCH−および−CHOC(=O)NR−。
【0105】
他の経上皮担体、例えば式(III)の構造:
【化13】

を含むものなども、使用することができる。
【0106】
経上皮担体はペプトイドであることもできる。例えば式(IV)のペプトイドでは、
【化14】

グアニジニウム頭部がR’の一部であり、R基は水素であるか、20種類の天然アミノ酸側鎖の一つであることができる。グアニジニウム頭部はRまたはR’の一部であることができ、α炭素原子またはα窒素原子に結合を介して連結することができる。その結合の長さは1〜30原子であることができ、炭素に加えて、O、N、S、F、Cl、Br、Pおよび/またはSiなどのヘテロ原子を含有してもよい。結合中の原子はどれでも、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基および/または芳香族基ならびにO、N、S、F、Cl、Br、P、またはSiなどのヘテロ原子を持つ官能基で置換されうる。結合中の任意の2個以上の原子が環構造に参加してもよい。
【0107】
好ましい実施形態では、経上皮担体が輸送ペプチドである。好ましくは、輸送ペプチドの長さは3〜60アミノ酸、より好ましくは5〜50アミノ酸である。好ましくは、アミノ酸の少なくとも20%がアルギニンまたはリジンである。より好ましくは、アミノ酸の少なくとも35%がアルギニンまたはリジンであり、より好ましくは、アミノ酸の少なくとも50%がアルギニンまたはリジンである。より好ましくは、アミノ酸の少なくとも60%がアルギニンまたはリジンである。より好ましくは、アミノ酸の少なくとも80%がアルギニンまたはリジンである。非常に好ましい経上皮ペプチド担体はR7Cであり、これは7個のアルギニンおよび1個のシステインである。アミノ酸は天然アミノ酸でも非天然アミノ酸でもよい。例えば経上皮担体は1個以上のD−アミノ酸を含有することができる。輸送ペプチドは、化学合成および組換え法を含む、当技術分野で知られる任意の手段によって製造される。
【0108】
本発明の経上皮輸送体は、1以上の皮膚層中への、および1以上の皮膚層を横切る、インクレチンホルモン活性を持つ化合物の送達を増加させるために、十分なグアニジノ部分および/またはアミジノ部分を持つ分子である。経上皮輸送体は一般に主鎖構造を持ち、そこにグアニジノ側鎖部分および/またはアミジノ側鎖部分が取り付けられる。一部の実施形態では、主鎖がサブユニット(例えば繰返し単量体単位)からなるポリマーであり、そのサブユニットの少なくとも一部がグアニジノ部分またはアミジノ部分を含有する。一部の好ましい実施形態では、単量体単位がジスルフィド結合によって接合される。好ましくは、そのジスルフィド結合は、経上皮輸送体の末端にあるシステイン残基によってもたらされる。一部の実施形態では、不均一な経上皮輸送体を使用する。例えば経上皮輸送体は単量体単位と二量体単位の両方を含みうる。
【0109】
経上皮輸送体は、典型的には少なくとも5個のグアニジノ部分および/またはアミジノ部分を示し、より好ましくは7個以上のそのような部分を示す。好ましくは、経上皮輸送体は25個以下のグアニジノ部分および/またはアミジノ部分を持ち、多くの場合、15個以下のそのような部分を持つ。一部の実施形態では、経上皮輸送体が、本質的に50個以下のサブユニットからなり、本質的に25個以下、20個以下、または15個以下のサブユニットからなることができる。経上皮輸送体は5サブユニットほどの短さでもよく、その場合は全てのサブユニットがグアニジノ側鎖部分またはアミジノ側鎖部分を含む。経上皮輸送体は、例えば、少なくとも6個のサブユニットを持つことができ、一部の実施形態では、少なくとも7〜10個のサブユニットを持つことができる。一般に、サブユニットの少なくとも50%は、グアニジノ側鎖部分またはアミジノ側鎖部分を含有する。より好ましくは、経上皮輸送体中のサブユニットの少なくとも70%が、また時にはサブユニットの少なくとも90%が、グアニジノ側鎖部分またはアミジノ側鎖部分を含有する。
【0110】
経上皮輸送体中のグアニジノ部分および/またはアミジノ部分の一部または全部は、連続していてよい。例えば経上皮輸送体は、6〜25個の連続するグアニジノおよび/またはアミジノ含有サブユニットを含むことができる。一部の実施形態では、7個以上の連続するグアニジノおよび/またはアミジノ含有サブユニットが存在する。一部の実施形態では、少なくとも6個の連続するアルギニン残基を含有するポリマーによって例示されるように、グアニジノ部分を含有する各サブユニットが連続している。
【0111】
経上皮輸送体は一般にペプチドである。アルギニン残基またはアルギニンの類似体は、グアニジノ部分を持つサブユニットを構成することができる。そのようなアルギニン含有ペプチドは、全てD−アミノ酸からなるか、全てL−アミノ酸からなるか、D−アミノ酸とL−アミノ酸の混成であることができ、アルギニン残基間に追加のアミノ酸、アミノ酸類似体、または他の分子を含むことができる。場合により、経上皮担体は、送達すべき化合物が直接的にまたはリンカーを介して取り付けられる非アルギニン残基を含むこともできる。一部の実施形態では、少なくとも1個のD−アルギニンを経上皮輸送体中に使用することが好ましい。一部の例では、経上皮輸送体は少なくとも約50%がD−アルギニン残基である。一部の実施形態では、サブユニットの全てがD−アルギニン残基である輸送体を使用する。もっぱらD−アミノ酸だけを含有する組成物には、酵素分解が少ないという利点がある。
【0112】
好ましくは、経上皮輸送体は鎖状である。好ましい一実施形態では、インクレチンホルモン活性を持つペプチドが、経上皮輸送体の末端に取り付けられる。好ましい実施形態では、この取り付けがジスルフィド結合によって行なわれる。一部の好ましい実施形態では、そのジスルフィド結合が、経上皮輸送体上の末端システインに連結された、インクレチンホルモン活性を持つペプチド上の末端システインによってもたらされる。一部の実施形態では、インクレチンホルモン活性を持つペプチドが、単一の輸送体ポリマーに連結されて、コンジュゲートを形成する。他の実施形態では、コンジュゲートが、単一の経上皮輸送体に連結されたインクレチンホルモン活性を持つペプチドに連結された1個を超える経上皮輸送体を含むことができる。
【0113】
より一般的には、各サブユニットは、(i)11より大きい、好ましくは12.5以上のpKaを持ち、(ii)プロトン化された状態で、共鳴安定化した正電荷を共有している少なくとも2個のジェミナルアミノ基(NH)を含有し、それが当該部分に二座性を与えている、塩基性の高い側鎖部分を含有することが好ましい。
【0114】
グアニジノ部分またはアミジノ部分は、側鎖リンカーによって主鎖に連結されるので、主鎖から離れるように伸びる。側鎖原子は、好ましくは、メチレン炭素原子として与えられるが、酸素、硫黄または窒素などの他の原子が1個以上存在することもできる。
【0115】
一部の実施形態では、経上皮輸送体が、D−アミノ酸残基またはL−アミノ酸残基から構成される。アミノ酸は天然アミノ酸または非天然アミノ酸であることができる。アルギニン(α−アミノ−δ−グアニジノ吉草酸)およびα−アミノ−ε−アミジノ−ヘキサン酸(等配電子アミジノ類似体)は、適切なグアニジノ含有およびアミジノ含有アミノ酸サブユニットの例である。アルギニン中のグアニジニウム基は、約12.5のpKaを持つ。一部の好ましい実施形態では、輸送体が少なくとも6個の連続するアルギニン残基で構成される。
【0116】
他のアミノ酸、例えばα−アミノ−β−グアニジノ−プロピオン酸、α−アミノ−γ−グアニジノ−酪酸、またはα−アミノ−ε−グアニジノ−カプロン酸(主鎖と中心グアニジニウム炭素との間にそれぞれ2個、3個または5個の側鎖リンカー原子を含有する)も使用することができる。
【0117】
経上皮輸送体は、当技術分野で知られる任意の方法で構築される。典型的なペプチドポリマーは合成的に、好ましくはペプチド合成装置(例えばApplied Biosystems Model 433)を使って製造するか、当技術分野で周知の方法によって組換え的に合成することができる。組換え合成は、一般に、経上皮輸送体が、インクレチンホルモン活性を持つペプチドに融合されたペプチドである場合に用いられる。
【0118】
固相ペプチド合成では、通常のアミノ酸に代えて、N−メチルおよびヒドロキシアミノ酸を使用することができる。しかし、ペプチド結合を減らした経上皮輸送体を製造するには、含有するペプチド結合の数を減らしたアミノ酸の二量体を合成する必要がある。そのような二量体は、標準的固相合成手法を使ってポリマー中に組み入れられる。
【0119】
本発明の経上皮輸送体には、当該コンジュゲートの皮膚を通した輸送の速度に著しい影響を及ぼさない1以上の非グアニジノ/非アミジノサブユニット(例えばグリシン、アラニン、およびシステインなど)またはリンカー(例えばアミノカプロン酸基)を隣接させることができる。また、遊離アミノ末端基はいずれも、インビボでのユビキチン化を防ぐために、アセチル基またはベンジル基などのブロック基でキャッピングすることができる。
【0120】
経上皮輸送体がペプトイドポリマーである場合、合成法の一つは以下のステップを含む:1)ペプトイドポリアミンを塩基およびピラゾール−1−カルボキサミジンで処理して混合物を得る;2)その混合物を加熱してから冷ます;3)冷却した混合物を酸性化する;そして4)酸性化した混合物を精製する。好ましくは、ステップ1で使用する塩基は炭酸ナトリウムなどの炭酸塩であり、加熱ステップ2では混合物を約50℃に約24時間〜約48時間加熱する。精製ステップでは、好ましくは、クロマトグラフィー(例えば逆相HPLC)を行う。
【0121】
インクレチンホルモン活性を持つペプチドは、いくつかの実施形態に従って、経上皮輸送体に連結することができる。ある実施形態では、インクレチンホルモン活性を持つペプチドが、単一の経上皮輸送体に、経上皮輸送体の末端への結合または試薬内の内部サブユニットへの結合により、適切な連結基を介して連結される。第2の実施形態では、インクレチンホルモン活性を持つペプチドが、1個を超える経上皮輸送体に、上記と同じ方法で取り付けられる。第3の実施形態では、コンジュゲートが、経上皮輸送体の各末端に取り付けられたインクレチンホルモン活性を持つペプチド2個を含有する。今述べた第1の実施形態および第3の実施形態については、標的膜と自由に相互作用することができるように、インクレチンホルモン活性を持つペプチドは、一般に、どのグアニジノ側鎖またはアミジノ側鎖にも取り付けられない。
【0122】
本発明のコンジュゲートは、単純明快な合成スキームによって製造することができる。さらにまた、コンジュゲート生成物は、通常、長さおよび組成が実質的に均一であるので、不均一な混合物よりも、その効果の一貫性および再現性が高くなる。
【0123】
本発明のインクレチンホルモン活性を持つペプチドは、化学的方法または組換え法により、経上皮輸送体に共有結合的に取り付けることができる。
【0124】
インクレチンホルモン活性を持つ1個以上のペプチドは、当技術分野で知られるいくつかの方法により、直接的に(例えばカルボジイミドを使って)、または連結部分を介して、本発明の経上皮輸送体に連結することができる(例えばWong, S. S.編「Chemistry of Protein Conjugation and Cross−Linking」CRC Press, Inc., フロリダ州ボカラトン、Fla(1991)などを参照されたい)。特に、カルバメート結合、エステル結合、チオエーテル結合、ジスルフィド結合、およびヒドラゾン結合は、一般に形成させることが容易で、ほとんどの用途に適している。細胞膜を横切る物質の輸送後に結合がサイトゾル内で容易に分解されるべき場合は、エステル結合およびジスルフィド結合が好ましい。
【0125】
さまざまな官能基(ヒドロキシル、アミノ、ハロゲンなど)を使って、生物学的に活性な薬剤を輸送ポリマーに取り付けることができる。インクレチンホルモン活性を持つペプチドの活性部位の一部であることが知られていない基が好ましい。当該ポリペプチドまたはその一部が送達後もその物質に取り付けられたままである場合は、特にそうである。
【0126】
ポリマーは一般に、Fmocなどのアミノ末端保護基を使って製造される。Fmocは、遊離のN末端アミンに薬剤を連結することができるように、完成した樹脂結合ポリペプチドのN末端から切断することができる。そのような場合は、通例、取り付けられる薬剤を、当技術分野で周知の方法で活性化することにより、ポリマーのアミノ基とそれぞれアミド結合またはカルバメート結合を形成させるのに有効な、活性エステルまたは活性カーボネート部分を作る。もちろん他の連結化学を使用することもできる。
【0127】
副反応を最小限に抑えるのに役立つように、グアニジノ部分およびアミジノ部分は、通常の保護基、例えばカルボベンジルオキシ基(CBZ)、ジ−t−BOC、PMC、Pbf、N−NOなどを使ってブロックすることができる。
【0128】
カップリング反応は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリジノン、ジクロロメタン、水など、数々の溶媒のいずれかで、既知のカップリング法によって行なわれる。典型的なカップリング試薬には、例えばO−ベンゾトリアゾリルオキシテトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ブロモ−トリス(ピロリジノ)ホスホニウムブロミド(PyBroP)などがある。他の試薬には、N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、4−ピロリジノピリジン、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシベンゾトリアゾールなどがある。
【0129】
インクレチンホルモン活性を持つペプチドは、当技術分野で周知の方法に従って、関心対象のポリペプチドと経上皮輸送体とを含む融合タンパク質用のベクターを構築することにより、組換え手段を使って経上皮輸送体に取り付けることができる。一般に、経上皮輸送体成分は、関心対象のポリペプチドのC末端またはN末端に、場合により短いペプチドリンカーを介して取り付けることができる。
【0130】
経上皮担体ペプチドとインクレチンホルモン活性を持つペプチドとの間の結合は共有結合であっても非共有結合であってもよい。非共有結合的相互作用には、静電相互作用、水素結合、π−スタッキング相互作用、およびファンデルワールス相互作用が含まれうる。好ましい実施形態では、特異的に切断可能なまたは特異的に放出可能な結合を使って、インクレチンホルモン活性を持つペプチドが経上皮輸送体に取り付けられる。本明細書においてコンジュゲートまたはリンカーの「切断(cleavedまたはcleavage)」とは、経上皮輸送体分子からの、インクレチンホルモン活性を持つペプチドの放出による、インクレチンホルモン活性を持つ活性ペプチドの放出を指す。「特異的に切断可能な」または「特異的に放出可能な」とは、輸送体が(例えばタンパク質分解によって)分解されるのではなく、輸送体とインクレチンホルモン活性を持つペプチドとの間の結合が切断されることを指す。
【0131】
一部の実施形態では、結合が容易に切断されうる結合である。これは、インビボに見出される条件下で、切断を受けやすいことを意味する。したがって、1以上の皮膚層中に、および1以上の皮膚層を通って前進する時、インクレチンホルモン活性を持つペプチドは、経上皮輸送体から放出される。容易に切断されうる結合は、例えば特異的活性を持つ酵素(例えばエラスターゼ、プロテアーゼ、ホスファターゼ、ペプチダーゼなど)によって切断される結合、または加水分解によって切断される結合であることができる。この目的には、カルボン酸エステルおよびジスルフィド結合を含有するリンカーが好ましい場合がある。この場合、前者の基は酵素的または化学的に加水分解され、後者は例えばグルタチオンの存在下でジスルフィド交換によって切り離される。結合は、皮膚組織の1以上の層中に存在することが知られている酵素活性によって切断されうるように選択することができる。例えば皮膚の顆粒層は比較的高濃度のN−ペプチダーゼ活性を持つ。
【0132】
特異的に切断可能なリンカーは、経上皮輸送体分子上に工作することができる。例えば、プロテアーゼ認識部位または他のそのように特異的に認識される酵素切断部位を構成するアミノ酸を使って、インクレチンホルモン活性を持つペプチドに経上皮輸送体を連結することができる。あるいは、例えば光または他の刺激への曝露などによって切断することができる、化学タイプまたは他のタイプのリンカーを使って、インクレチンホルモン活性を持つペプチドを経上皮輸送体に連結することもできる。
【0133】
送達されるべきインクレチンホルモン活性を持つペプチドと経上皮輸送担体とが特異的に切断可能なリンカーまたは特異的に放出可能なリンカーによって連結されているコンジュゲートは、半減期を持つだろう。この場合、「半減期」という用語は、皮膚へのコンジュゲートの適用後に、コンジュゲートの量の半分が解離した状態になって遊離の薬剤を放出するのに要する時間の量を指す。一部の実施形態では、半減期が典型的には5分〜24時間の間にあり、より好ましくは30分〜2時間の間にある。コンジュゲートの半減期は後述のように改変することができる。
【0134】
一部の実施形態では、リンカーの切断速度がpH依存的である。例えば、リンカーは、酸性pH(例えばpH6.5以下、より好ましくは約6以下、さらに好ましくは約5.5以下)で安定な結合を、インクレチンホルモン活性を持つペプチドと経上皮輸送体との間に形成させることができる。しかし、コンジュゲートが生理的pH(例えばpH7以上、好ましくは約pH7.4)に置かれると、リンカーは切断を受けて薬剤を放出するだろう。そのようなpH感受性は、例えば、プロトン化された場合に(すなわち酸性pHで)求核剤として作用しない官能基を含めることなどによって得ることができる。より高い(例えば生理的)pHでは、その官能基がもはやプロトン化されなくなり、したがって求核剤として作用することができる。適切な官能基の例は、例えばNおよびSを含む。そのような官能基を使って、自己切断が起こるpHを微調整することができる。一部の実施形態では、担体−カーゴ複合体の半減期が、皮膚組織との接触後、5分〜24時間の間である。より好ましくは、担体−カーゴ複合体の半減期は、皮膚接触後、30分〜2時間の間である。
【0135】
もう一つの実施形態では、連結部分が自己犠牲によって切断される。そのような連結部分は、インクレチンホルモン活性を持つペプチドから遠い方に求核剤(例えば酸素、窒素および硫黄)を含有し、インクレチンホルモン活性を持つペプチドに近い方に切断可能な基(例えばエステル、カーボネート、カルバメートおよびチオカルバメート)を含有する。切断可能基への求核剤の分子内攻撃によって共有結合の切断が起こり、その結果、連結部分がインクレチンホルモン活性を持つペプチドから放出される。
【0136】
リンカーは以下の官能基の1以上を含有しうる:−S−S−、−C(=O)O−、−C(=O)S−、−C(=O)NH−、−C(=S)NH−、−OC(=O)NH−、−NHC(=O)NH−、−CA=N−、−SONH−および−SONH−(Aは、H、アルキルおよびアリールからなる群より選択される)。
【0137】
インクレチンホルモン活性を持つペプチドは、加水分解によって、またはグルタチオンを使った還元によって、経上皮担体ペプチドから分離することができる。あるいは、インクレチンホルモン活性を持つペプチドおよび経上皮担体ペプチドは、静電相互作用、水素結合、π−スタッキング相互作用およびファンデルワールス相互作用などの非共有結合的相互作用によって会合してもよい。一部の実施形態では、インクレチンホルモン活性を持つペプチドを輸送するために、1個を超える経上皮担体が使用される。例えば、経上皮担体は、単量体、二量体、三量体などの1以上を含みうる。あるいは、経上皮担体は、本明細書に記載する経上皮担体の異形を二つ以上含有してもよい。
【0138】
インクレチンホルモン活性を持つペプチドは、皮膚または他の上皮組織に直接適用するか、硬膏剤材料または貼付剤材料を使って適用することにより、経上皮的に送達することができる。一部の実施形態では、インクレチンホルモン活性を持つペプチドと経上皮担体ペプチドとを含有する組成物が、皮膚などの上皮組織に直接適用される。一部の実施形態では、インクレチンホルモン活性を持つペプチドと経上皮担体とが、クリーム剤、ローション剤または軟膏剤などの皮膚接触基剤に組み入れられる。
【0139】
上述のカーゴ−担体複合体が組み入れられる皮膚接触基剤には、それが皮膚と接触させられ、それによって、皮膚表面からのインクレチンホルモン活性を持つペプチドの経皮膚投与が可能になる限り、特に制約はない。基剤の具体例として、軟膏剤、ゲル剤、乳剤、懸濁剤、パップ剤もしくは硬膏剤などの半固形調製物もしくは固形調製物を構成するもの、またはローション剤もしくはリニメント剤などの液状調製物を構成するものが挙げられる。
【0140】
軟膏基剤としては、通常、油脂、ワックスおよび炭化水素などの疎水性基剤を使用することができる。具体例として、黄色ワセリン、白色ワセリン、パラフィン、流動パラフィン、プラスチベースおよびシリコーンなどの無機基剤、ならびにミツロウおよび動物性油脂もしくは植物性油脂などの動物性または植物性基剤が挙げられる。
【0141】
ゲル調製物には、カルボキシビニルポリマー、ゲル基剤、無脂肪軟膏剤、およびポリエチレングリコールなどのヒドロゲル基剤を使用することができる。
【0142】
乳剤用基剤の例には、親水性軟膏およびバニシングクリームなどの油中水型基剤、ならびに親水性ワセリン、精製ラノリン、アクアホール(aquahole)、オイセリン(oicerin)、ネオセリン(neocerin)、水添ラノリン、コールドクリームおよび親水性プラスチベースなどの水中油型基剤がある。
【0143】
懸濁剤用基剤の例には、ローション剤、およびステアリルアルコールまたはセチルアルコールなどの微粒子がプロピレングリコールに懸濁されているFAPG基剤(脂肪アルコール−プロピレングリコール)、すなわちリオゲル基剤がある。
【0144】
パップ剤用基剤の例には、ゼラチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、カオリン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、グリセリン、プロピレングリコールおよび水などがある。
【0145】
ローション剤は、活性成分が水性液体中に微細かつ均一に分散されている調製物であり、懸濁ローション剤および乳化ローション剤に分類することができる。懸濁化剤の例には、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロースおよびベントナイトなどがある。乳化剤の例には、ラウリル硫酸ナトリウム、ツイーンおよびスパンなどがある。
【0146】
リニメント剤は油性溶液剤タイプ、アルコール溶液剤タイプ、乳剤タイプおよび懸濁剤タイプに分類することができる。そのようなリニメント剤には、水、エタノール、脂肪油、グリセリン、セッケン、乳化剤または懸濁化剤などの添加剤を加えることができる。
【0147】
本発明の調製物は既知の方法によって製造することができる。例えば上述の軟膏剤は、通常の混合法または溶融法によって製造することができる。混合法では、活性成分を基剤の一部と混合し、得られた混合物に残りの部分を加え、混合物が均質になるようにそれらを混合することによって、調製物が得られる。大量生産には、ニーダー、ロールミルまたはミキサーを使用する。溶融法では、融点が高いものから低いものへと順に基剤成分を融解し、固化するまでそれらを混合する。大量生産には、ミキサーまたは3本ロールミルを使用する。皮膚用パスタ剤またはパップ剤は軟膏剤に似ているが、皮膚用パスタ剤は、軟膏剤と比べて比較的大量の活性成分を含有する。パスタ剤は、軟膏剤に用いられる方法に従って製造されるが、一般に、溶融法が使用される。パップ剤は、湿布剤として使用される外用調製物であり、活性成分粉末と精油成分とを含有する。
【0148】
本発明の一部の実施形態では、常温で接着性を持ついわゆる感圧接着剤が皮膚接触基剤として用いられる感圧接着剤テープの形をした硬膏剤を使用することが好ましい。取り扱いが容易なように、感圧接着剤の層は裏打材の片面に形成される。
【0149】
上述の感圧接着剤層は、接着剤層が皮膚表面と接触することによって引き起こされる発疹を防ぐことを目的として、好ましくは、通常使用される医用感圧接着剤から形成される。その例には、アクリル系感圧接着剤;天然ゴム感圧接着剤;合成ゴム感圧接着剤、例えば合成イソプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、スチレン/ブタジエンゴム、スチレン/イソプレン/スチレンゴムおよびスチレン/ブタジエン/スチレンゴム;シリコーン感圧接着剤;ビニルエステル感圧接着剤;ならびにビニルエーテル感圧接着剤などがある。それらのうち、品質が安定していることおよび接着特性の調節が容易であることを考慮して、アクリル系、ゴムまたはシリコーン感圧接着剤から選択される少なくとも一つの接着剤を使用することが好ましい。特に、アクリル酸アルキルまたはメタクリル酸アルキルを主成分とするアクリル系感圧接着剤が好ましい。
【0150】
上述のアクリル系感圧接着剤としては、重合される単量体の総量に基づいて40重量%を下回らない比率の(メタ)アクリル酸アルキルを重合することによって製造されるポリマーが好ましい。50〜98重量%の1以上の(メタ)アクリル酸アルキルと2〜50重量%の1以上の共重合可能な単量体とを共重合させることによって製造されるコポリマーが特に好ましい。
【0151】
そのような(メタ)アクリル酸アルキルの例として、C2−18(好ましくはC4−12)アルキル基を持つ1級〜3級アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのエステルが挙げられる。
【0152】
共重合可能な単量体の例として、それぞれが、その分子中に共重合反応に参加する少なくとも一つの不飽和二重結合を持ち、かつその側鎖中にカルボキシル基(例えば(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸もしくは無水マレイン酸)、ヒドロキシル基(例えば(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルもしくは(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル)、スルホキシル基(例えばスチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸スルホプロピル、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸もしくはアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸)、アミノ基(例えば(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルもしくは(メタ)アクリル酸tert−ブチルアミノエチル)、アミド基(例えば(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドもしくはN−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド)、またはアルコキシル基(例えば(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールもしくは(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル)を持っている単量体が挙げられる。
【0153】
共重合可能な単量体の例には、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニル−2−ピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルカプロラクタム、ビニルオキサゾールおよびビニルモルホリンなどがある。
【0154】
上に例示した共重合可能な単量体は、単独でまたは組み合わせて、共重合に供することができる。しかし、接着性もしくは粘着性、または感圧接着剤層からのインクレチンホルモン活性を持つペプチドもしくは薬理学的に許容されるその塩の放出性などといった接着特性の観点から、必須成分として、1〜50重量%(好ましくは3〜20重量%)の量のカルボキシル含有単量体およびヒドロキシル含有単量体から選択される少なくとも一つの単量体と、必要であれば上に例示した他の単量体、例えば40重量%を超えない(好ましくは30重量%を超えない)量の酢酸ビニルまたはN−ビニル−2−ピロリドンなどのビニル単量体とを使って、共重合を行なうことが好ましい(それぞれ重合させる単量体の総量に基づく)。
【0155】
アクリル系感圧接着剤の具体例には、アクリル酸2−エチルヘキシルとアクリル酸とのコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシルとアクリル酸ヒドロキシエチルとのコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシルとメタクリル酸メチルとのコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−メトキシエチルおよび酢酸ビニルのコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシルとビニルピロリドンとのコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチルおよびアクリル酸2−メトキシエチルのコポリマー、ならびにアクリル酸2−エチルヘキシル、ビニルピロリドンおよびアクリル酸のコポリマーなどがある。
【0156】
本発明で使用することができるアクリル系感圧接着剤は、一般に、10,000〜100,000の数平均分子量および100,000〜2,000,000の重量平均分子量を持つ。
【0157】
本発明の経上皮調製物では、グリコール、油脂、脂肪酸、アルコールおよび脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも一つの有機液体成分を皮膚接触基剤中に組み入れることができる。そのような成分は、活性成分の皮膚接着性もしくは皮膚透過性の改善または皮膚刺激性の低下などといった利点をもたらすことができる。
【0158】
グリコールの例には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールおよびポリプロピレングリコールなどがある。高分子量のポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールとしては、200〜1000の重量平均分子量を持つものが好ましく使用される。
【0159】
油脂の例には、オリーブ油、ヒマシ油、スクアラン、オレンジ油および鉱油などがある。
【0160】
脂肪酸の例には、C6−20脂肪酸、例えばモノカプリン酸、オレイン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ウンデシレン酸、イソステアリン酸およびリノール酸などがある。
【0161】
脂肪酸エステルの例には、C6−20脂肪酸エステル、例えばミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、パルミチン酸オクチル、オレイン酸エチル、フタル酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、乳酸エチル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ニコチン酸ラウリルおよびラウリルピロリドンカルボキシレートなどがある。
【0162】
アルコールの例には、上述したグリコール以外のC1−20アルコール、例えばエタノール、メタノール、オクチルアルコール、エトキシル化ステアリルアルコール、1,3−ブタンジオール、デシルアルコール、シネオールおよびオレイルアルコールなどがある。
【0163】
有機液体成分は皮膚接触基剤に2〜50重量%の量で組み入れられることが好ましい。
【0164】
本発明の調製物を、皮膚接触基剤として感圧接着剤を持つ硬膏剤の形で使用する場合は、その感圧接着剤層に上述した有機液体成分の1以上を組み入れることにより、活性成分の経皮膚透過を改善することができる。感圧接着剤層は、有機液体成分とのその適合性ゆえに、可塑性を持たせることができるので、そのような有機液体成分の添加により、皮膚表面への接着時に柔らかい肌触りを与えることが可能になる。さらにまた、架橋処理によって適当な粘着力を感圧接着剤層に付与することもでき、そうすることにより、使用後に硬膏剤をはぎ取る際の皮膚刺激を減少させることができる。
【0165】
有機液体成分は、感圧接着剤層に、感圧接着剤100重量部につき25〜200重量部、好ましくは40〜180重量部、特に好ましくは60〜180重量部の量で加えられる。有機液体成分が少量すぎると、何も利益が得られない。一方、量が多すぎると、感圧接着剤層の過剰な可塑化によって粘着力が低下し、それが、架橋処理後でさえ皮膚表面に糊残り現象を引き起こして、剥離時の皮膚刺激の増加をもたらす。
【0166】
本発明では、ロジン、ロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、クロマン−インデン樹脂、石油樹脂またはテルペンフェノール樹脂などを、必要に応じて、感圧接着剤層に加えることができる。
【0167】
上述の硬膏剤は、感圧接着剤層をその上に支持するための裏打材を必要とする。そのような裏打材の例には、酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、酢酸ビニル−塩化ビニルコポリマー、軟質ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、サーリンまたはポリテトラフルオロエチレンの単層フィルムまたはラミネートフィルム、さまざまな金属箔および金属皮膜フィルムなどがある。また、そのような材料でできた繊維の織布もしくは不織布、布および紙も使用することができる。
【0168】
裏打材としては、結果として得られる経皮膚調製物を皮膚表面に適用した時に十分な可撓性および皮膚追随性を使用することができる。裏打材の厚さは一般に0.5〜200μm、好ましくは2〜100μm、より好ましくは5〜50μmである。
【0169】
活性成分の徐放性を改善することを目指して、徐放性基剤を使用することにより、本発明の経上皮調製物を、徐放性調製物として調剤することができる。そのような調製物は、通常の手段で製造された組成物を特殊なマトリックスに組み入れることによって得るか、組成物が皮膚または他の上皮表面にフィルムを通して接着され、そのフィルムによって活性成分の放出が制御されるようになっている持続作用調製物として得ることができる。そのような徐放性経上皮調製物用のフィルムとしては、0.1〜1μmの平均孔径を持つ微孔性フィルムを使用することができる。微孔性フィルムの素材の例には、ポリプロピレン、ポリオレフィンおよびポリテトラフルオロエチレンなどがある。
【0170】
本発明の糖尿病用薬物処置の一実施形態である硬膏剤は、感圧接着剤層の一方の面に剥離紙を接着させ、他方の面に裏打層を接着させることによって得ることができる。感圧接着剤層は、感圧接着剤の成分を適当な溶媒に溶解し、得られた溶液を裏打材または剥離紙に適用し、次に、得られた材料または紙を溶媒が除去されるように乾燥させることによって形成される。
【0171】
皮膚接触基剤層には、抗酸化剤、顔料、充填剤、経皮増進剤、安定剤、薬物溶出助剤または薬物溶出抑制剤を、必要に応じて、皮膚接触基剤100重量部につき約2〜50重量部の量で組み入れることができる。
【0172】
経皮透過増進剤としては、感圧接着剤層への薬物の溶解性および分散性を改善する機能を持つ化合物、ケラチン保水力、ケラチン軟化力またはケラチン浸透性(弛緩)を改善することによって、または浸透増進剤もしくは開孔剤として作用することによって、または皮膚の表面状態を変化させることによって、経皮膚吸収を改善する機能を持つ化合物、およびこれらの機能を同時に持つ化合物、ならびにこれらの機能を持つだけでなく、薬物の効力をさらに増加させる薬物効果改善機能も持つ化合物を含む、さまざまな化合物を使用することができる。
【0173】
これらの経皮膚透過増進剤を以下に例示する:
主に薬物溶解性を改善する化合物として、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、およびポリエチレングリコールなどのグリコール;
主に薬物分散性を改善する化合物として、オリーブ油、スクアレンおよびラノリンなどの油脂;
主にケラチンの保水力を改善する化合物として、尿素およびアラントインなどの尿素誘導体;
主にケラチン浸透性を改善する化合物として、ジメチルデシルホスホキシド、メチルオクチルスルホキシド、ジメチルラウリルアミド、ドデシルピロリドン、イソソルビトール、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドおよびジメチルホルムアミドなどの極性溶媒;
主にケラチン軟化力を改善するサリチル酸;
主に浸透性増進剤としてのアミノ酸;
主に開孔剤としてのニコチン酸ベンジル;
主に皮膚の表面状態を変化させる機能を持つラウリル硫酸ナトリウム;ならびに
優れた経皮膚吸収性を持つ薬物と併用されるサロコルム(salocolum)。
【0174】
可塑剤、例えばアジピン酸ジイソプロピル、フタル酸エステルおよびセバシン酸ジエチル、炭化水素、例えば流動パラフィン、種々の乳化剤、エトキシド化ステリルアルコール、グリセロールモノエステル、例えばオレイン酸モノグリセリド、カプリル酸モノグリセリドおよびラウリン酸モノグリセリド、高級脂肪酸エステル、例えばグリセロールジエステル、グリセロールトリエステル、またはその混合物、ミリスチン酸イソプロピルおよびパルミチン酸オクチル、ならびに高級脂肪酸、例えばオレイン酸およびカプリル酸も有用である。
【0175】
これらの経皮膚透過増進剤は二つ以上の混合物として使用してもよい。
【0176】
本発明の好ましい実施形態は、抗糖尿病ペプチド薬の経皮送達を容易にするためのオリゴペプチドの使用を開示する。好ましい実施形態では、主としてアルギニン残基から構成されるペプチドオリゴマーが、グルカゴン様ペプチド−1およびエキセンディン−4などの抗糖尿病薬に共有結合によってつながれる。一部の実施形態では、アルギニン含有オリゴマーが、非共有結合的相互作用によって、エキセンディン−4と複合体を形成する。
【実施例1】
【0177】
N−末端システイン残基を持つエキセンディン−4の固相合成
ペプチドの配列は:
N−CHGEGTFTSD LSKQMEEEAV RLFIEWLKNG GPSSGAPPPS−CONH(配列番号31)
である。
【0178】
合成は、以下のステップから構成される:(1)樹脂の膨潤/脱保護;(2)ペプチド鎖の伸長;(3)切断および(4)精製。
【0179】
1.樹脂の膨潤/脱保護:Fmoc−Rink(Fmoc−Rinkリンカーは4’−{(R,S)−α−[1−(9−フルオレニル)メトキシカルボニルアミノ]−2,4−ジメトキシベンジル}フェノールとも呼ばれている)アミド樹脂540mg(0.64ミリモル/g置換,0.346ミリモルスケール)を、反応容器中、窒素ガスをバブリングしながら、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)で膨潤させた。40分後にDMFを排出した。樹脂を20%ピペリジン/DMF溶液で2回処理することにより、樹脂上のFmoc(9−フルオレニルメトキシカルボニル)保護基を除去した。各処理を5分間続けた。脱保護後に樹脂をDMFで十分に洗浄した。
【0180】
2.ペプチド鎖の伸長:最初の10残基を組み入れる方法は、残りの残基とは異なる。最初の10残基にはダブルカップリングを使用した。各カップリングに30分かけた。各カップリングでは、Fmoc保護アミノ酸単量体(0.707ミリモル)2当量およびHOBt(N−ヒドロキシベンゾトリアゾール)2当量(96mg,0.707ミリモル)をDMF 2mlに溶解した。その混合物にDIC(1,3−ジイソプロピルカルボジイミド)120マイクロリットルを加えた。活性化のためにその溶液を少なくとも10分間は室温に保ってから、樹脂に加えた。プレ活性化アミノ酸を添加した後、DIPEA(ジイソプロピルエチルアミン)120マイクロリットルを加えた。樹脂とプレ活性化アミノ酸単量体溶液とを含有する懸濁液を、窒素ガスをバブリングしながら、室温に静置した。樹脂がプレ活性化単量体溶液と効率よく混合されるように、バブリングガスの圧力を調節した。最初の10残基については、第2カップリングの最後にピペリジン脱保護ステップを行なった。最初の10残基より後の残基の場合、活性化ステップでは、Fmoc保護アミノ酸単量体4当量(1.414ミリモル)、HOBt 4当量(192mg,1.414ミリモル)を、DMF 5ml中で混合し、その溶液にDIC 240マイクロリットルを加えた。プレ活性化アミノ酸を添加した後、DIPEA 240マイクロリットルを加えた。各カップリングサイクルの最後に、アミノ酸溶液を排出し、樹脂をDMFで十分に洗浄した。樹脂を20%ピペリジン/DMF溶液で2回処理した。各処理を3分間続けた。2回目のピペリジン処理後に樹脂を十分に洗浄した。反応は全て、窒素ガスをバブリングしている反応容器中で行なった。
【0181】
Cys40を組み入れた後、樹脂を脱保護し、DMFで十分に洗浄した。
【0182】
3.切断:樹脂をDMF、DCM(ジクロロメタン)およびメタノールで十分に洗浄した後、風乾した。次に樹脂を、95:2.5:2.5のTFA(トリフルオロ酢酸)/TIS(トリイソプロピルシラン)/水から構成される切断混合液に懸濁し、室温で3時間静置した。最後に、TFAをロータリーエバポレーションにより除去した。得られた残渣を20%アセトニトリル/水混合物に溶解し、透明な溶液を濾過によって集めた。その溶液を凍結乾燥した。
【0183】
4.精製:粗生成物を水に溶解し、40分間で30%アセトニトリル/水(0.1%TFA)から55%アセトニトリル/水(0.1%TFA)への勾配を使って、分取用HPLCで精製した。合わせた生成物画分を凍結乾燥することにより、精製品100mgを得た。
【実施例2】
【0184】
経上皮担体およびカーゴペプチドの固相合成
r7cペプチドの配列は:
N−RRRRRRRC−CONH(配列番号32)
である。
【0185】
Ex4−L−R7の配列は
NH2−HGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPPSRRRRRRR−CONH2(配列番号45)
である。
【0186】
Ex4−D−R7の配列は
NH2−HGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPPSR−CONH2(全てDアミノ酸である配列番号45)
である。
【0187】
Ex4の配列は
NH2−HGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPPS−CONH2(配列番号6)
である。
【0188】
経上皮担体およびカーゴの合成は、実施例1に記載した手順と同じ手順に従う。
【実施例3】
【0189】
コンジュゲーションのための経上皮担体の活性化
【化15】

精製したr7cの試料(250mg,0.2ミリモル)を3:1の酢酸/水 70mLに溶解した。この溶液に、ジチオ−ビス(5−ニトロピリジン)(DTNP)20当量を加えた。その混合物を室温で72時間撹拌した。溶媒をロータリーエバポレーションにより40℃で除去した。残渣を水に再溶解し、酢酸エチルで洗浄することにより、過剰のDTNPを除去した。その水溶液を凍結乾燥することにより、生成物150mg(0.11ミリモル,55%)を得た。
【実施例4】
【0190】
エキセンディン−4と経上皮担体とのコンジュゲーション
【化16】

エキセンディン−4の試料(25mg,5.5ミリモル)を脱気した1M酢酸アンモニウム水溶液(pH6)2.4mLに溶解した。その溶液を、脱気した0.1%HOAc水溶液15mL中の5−スルフェニル−2−ニトロピリジン(SNP)連結r7c(実施例3参照,37ミリモル)51mgの溶液で、滴定した。その混合物を終夜、室温(R.T.)に保った。凍結乾燥によって溶媒を除去した。粗生成物を分取用HPLCで精製することにより、精製品4.0mg(0.80ミリモル,15%)を得た。
【実施例5】
【0191】
マウスにおけるインクレチンペプチド検出:ヌードマウス皮膚におけるGLP−1検出
【表3】

【0192】
上述(表3)のように製造したGLP−1ペプチドでマウス皮膚を処置した。マウスに麻酔薬を注射し、ペプチド溶液をマウス皮膚に適用した(図1参照)。処置したマウスを1〜2時間後に屠殺し、処置した皮膚を摘出した。処置した皮膚を液体窒素で急速冷凍し、ポリマーに包埋した。切片(厚さ5〜6μm)をガラススライド上に封入した。ペプチドの可視化は、以下の免疫組織化学的方法によって行なった。
【0193】
薄切した切片を100%アセトンで固定し、PBS中の4%BSA/0.1%トリトンX−100で、室温にて1時間ブロックした。切片を、4%BSA−PBS溶液中の40μg/mlヤギ抗GLP−1ポリクローナル抗体(ヤギ抗GLP−1(C−17)IgG,Santa Cruz Biotechnology, Inc.,200μg/ml)と共に、4℃で終夜インキュベートした。切片をPBS中で5分ずつ3回洗浄した。次に切片を、PBSで1:100希釈したFITC標識ウサギ抗ヤギIgG(FITCコンジュゲートAffiniPureウサギ抗ヤギIgG(H+L),305−095−003,Jackson ImmunoResearch LABORATORIES, INC.)と共に、室温で1時間インキュベートした。切片をPBSで5分ずつ3回洗浄し、溶液から丁寧に取り出した(完全に乾燥させないこと)。Cytoseal 60(Electron Microscopy Science)を使って切片を封入した。次に、Axioscope顕微鏡で免疫反応を観察した。図1に、試料Dおよび試料Eによる皮膚透過を示す。
【表4】

【0194】
適用範囲:J、K、L群では15mm×15mm。M、N群では40mm×40mm
糖尿病マウス:BLS.Cg−+Leprdb/Leprdb/Jcl,日本クレア,雌,13〜14週齢
一晩絶食後に、血液(約30μL)を尾静脈から採取し、Savon試験片を使って初期血中グルコースレベル(0分)をチェックした。血液の一部を遠心分離して血清を得た。試験試料(10μLまたは40μL)をマウスの背部皮膚に適用し、120分間インキュベートした(このインキュベーション期間の終了時までに試料は干上がった)。
【0195】
グルコースを経口投与した(グルコース濃度:250mg/mL PBS,量:4mL/kg)。グルコース経口投与の30、60、120、240分後に、血液(約30μL)を尾静脈から採取し、Savon試験片を使って血中グルコースレベルをチェックした。血液の一部を遠心分離して血清を得た。
【0196】
切片研究用に皮膚を採取した。
【0197】
血中インスリンレベルを測定するまで血清(0、30、120分)を−40度で保存した。インスリンレベルはELISAキット(Mercodia Ultrasensitive Mouse Insulin ELISA)によって測定した。
免疫組織化学(ウサギ抗Ex−4ポリクローナル抗体による)
15μm厚の皮膚凍結切片を調製した。凍結切片を、シラン被覆スライド(DAKO,No.S3003)に室温(RT)で30分間、接着させた。そのスライドをアセトン中、4℃で10分間固定した後、PBS中、室温で10分間洗浄した。
【0198】
スライドを3%過酸化水素/PBS中、室温で10分間インキュベートして、内在性ペルオキシダーゼ活性を失わせてから、PBSをそれぞれ5分ずつ3回交換することによって洗浄した。
【0199】
組織切片の免疫染色には、「ABC high−HRP Immunostaining Kit」(東洋紡,No.ISK−201)を使用した。全てのステップを湿潤チャンバー中、室温で行なった。切片を「ブロッキング試薬(Blocking Reagent)」(PBS中の正常ヤギ血清)中で1時間インキュベートした。ブロッキング試薬を除去した後、一次抗体(ホクドー,ウサギ抗Ex−4ポリクローナル抗体,「ブロッキング試薬」中、40μg/ml)と共に、30分間インキュベートした。PBSをそれぞれ5分ずつ3回交換することで、切片を洗浄した。
【0200】
切片を「ビオチンコンジュゲート二次抗体(Biotin−conjugated secondary antibody)」と共に30分間インキュベートした後、PBSをそれぞれ5分ずつ3回交換することによって洗浄した。
【0201】
切片を「アビジン−ビオチン化ペルオキシダーゼ複合体試薬(Avidin−biotinylated peroxidase complex reagent)」と共に30分間インキュベートした後、PBSをそれぞれ5分ずつ3回交換することによって洗浄した。
【0202】
切片を「ペルオキシダーゼ基質(Peroxidase substrate)」(TMB:3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)中で7分間インキュベートした後、脱イオン水中でそれぞれ1分ずつ2回洗浄した。
【0203】
過剰の水を拭き取り、直ちに水性永久封入剤(DAKO,No.S1964)を1滴加え、カバースリップで覆い、光学顕微鏡(×100)で観察した。
【0204】
結果は、Ex4が、R7(DまたはL)の助けを借りることにより、皮膚を通してうまく送達されうることを示した(図2)。
【実施例6】
【0205】
血中グルコース検出
ヌードマウスを処置するために実施例4のペプチドを製造した。0.2M酢酸カリウム(pH3.8)で希釈することにより、1mMペプチドの溶液を調製した。マウスに麻酔薬を注射した。マウスの背部を0.9%NaClまたはアルコールで拭いた。ペプチド溶液30μlをマウスの背部に適用し、乾燥させた。
【0206】
別法として、ペプチド溶液100μlを貼付剤の布に適用した。その貼付剤をマウスの背部に適用し、マウスの上に一晩放置した。グルコース検出試験中は、ペプチド溶液100μlを含有する新しい貼付剤を、毎日、マウスの背部に適用した。
【0207】
グルコース検出は以下のように行なった。試験動物に麻酔薬を注射した。グルコースレベルを検出するために尾静脈から採血した。時刻0にグルコース(31mg/50μl蒸留水)を尾静脈に注射した。3分前に、尾を切り、グルコース負荷の3、6、10、20、30、および50分後に採血した。グルコース検出キットでグルコースレベルを検出した。グルコース検出の終了後に、心臓から全血を採取し、処置した皮膚を摘出した。摘出した皮膚を使い捨ての小さな皿に置き、液体窒素で直ちに凍結した。血液試料を5000rpmで5〜10分間遠心分離し、上清を集め、冷凍庫で保存した。
【0208】
R7−s−s−Ex4、R7−s−s−R7およびC−Ex4から構成される製剤をヌードマウスの皮膚に適用すると、これらの組成物は、尾静脈に投与したグルコース負荷後のマウスにおけるグルコース回復速度を増加させる(図3)。
【実施例7】
【0209】
インビトロヒト皮膚フラックス試験プロトコール
表皮および角質層を含有するヒト皮膚を使って、インビトロフラックス試験を行なった。0.01%NaNを含有する食塩水をレセプター溶液として使用した。ヒト皮膚をセル上にセットした。皮膚の有効範囲の直径は3/8インチ、面積は0.11平方インチだった。試験試料溶液(200μL)を皮膚に負荷した。フラックス試験中はレセプター溶液を撹拌し続け、セルを32℃に保った。6、22、30、および48時間時点で、分析のためにレセプター溶液を集めた。6、22、および30時間時点では、0.01%NaNを含有する食塩水を、試料採取後のレセプターセルに追加した。集めたレセプター溶液を凍結乾燥によって濃縮し、300μLの溶媒(5%アセトニトリル、0.1%TFA)に再溶解し、HPLCで分析した。HPLCの条件を以下に記載する。
HPLC条件
移動相(勾配)
B%:5%15分→95%→3分→95%→2分→5%→7分→5%
B%:5%→95%(15分)
B%:95%(3分)
B%:95%→5%(2分)
B%:5%(7分)
溶媒A:0.1%TFA/水。溶媒B:0.1%TFA/アセトニトリル。
【0210】
流速:1mL/分,カラム温度:室温
注入量:25OμL,検出器:フォトダイオードアレイ(280nm)
カラム:Waters Symmetry C18 5μm 100A,4.6×150mm
【表5】

【0211】
これらの好ましい組成物(第2群および第3群)はヒト皮膚組織由来の角質層を透過した(図4)。
【0212】
本発明の要旨から逸脱せずに数多くのさまざまな変更を加えうることは、当業者には理解されるだろう。したがって、本発明の形態は単なる例示であって、本発明の範囲を限定しようとするものでないことは、明確に理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0213】
【図1】R7媒介経皮投与後に、緑色蛍光シグナル(FITC)で可視化することによる、GLP1カーゴペプチドの免疫組織学的検出を示す図。図Aはビオチン−SH−GLP1(PTD担体なし)を示し、図Bはペプチド上にジスルフィド架橋コンジュゲーションを持つGLP1のR7媒介経皮送達を示し、図Cはペプチド上にジスルフィド架橋コンジュゲーションを持つGLP1のTatペプチド媒介経皮送達を示す。
【図2】R7媒介経皮投与後に、HRP−TMB染色で可視化することによる、Ex−4カーゴペプチドの免疫組織学的検出を示す図。図Aはバックグラウンドシグナルを示し、図BはEx−4−D−R7経皮送達の証拠を示し、図CはEx−4−L−R7経皮送達の証拠を示す。
【図3】静脈内グルコース負荷後のヌードマウスにおける血中グルコース回復に関するR7媒介経皮Ex4治療試験を示す図。図Aは実験の概略を示し、図BはR7−Ex4がグルコース回復に及ぼす影響を示す。
【図4】R7媒介Ex4がヒト皮膚の透過に及ぼす影響を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖尿病を処置する為の組成物であって、
インクレチンホルモン活性を持つペプチドと経上皮担体とを含む局所用調製物、および
皮膚接触基剤
を含み、
皮膚接触基剤中のインクレチンホルモン活性を持つペプチドの濃度が0.001%〜70%であり、
皮膚接触基剤中の経上皮担体の濃度が0.001%〜70%であり、
経上皮担体が、無傷の動物上皮細胞層を横切ってなされるインクレチンホルモン活性を持つペプチドの送達を、経上皮担体の不在下でそのペプチドを送達する場合と比較して増加させるために、十分なアミノ基、グアニジン基またはアミジノ基を含む、
組成物。
【請求項2】
局所用調製物が、以下の構造:
【化1】

[式中、
Qは経上皮担体を含み;
Lはペプチドを含み;
Xはペプチド上の官能基と担体上の官能基との間に形成される結合であり;
Yはリンカー上の官能基と担体上の官能基との間に形成される結合であり;
Zはペプチド上の官能基とリンカー上の官能基との間に形成される結合であり;
Tは小さなオリゴペプチドリンカーであり;そして
mは1〜5の整数である]
からなる群より選択されるコンジュゲートである、請求項1の組成物。
【請求項3】
構造VおよびVIが、加水分解またはグルタチオンを使った還元による分解を受けて、インクレチンホルモン活性を持つペプチドを、その生物活性型で放出する能力を持つ、請求項2の組成物。
【請求項4】
X、YおよびZが、−S−S−、−C(=O)O−、−C(=O)S−、−C(=O)NH−、−C(=S)NH−、−OC(=O)NH−、−NHC(=O)NH−、−CA=N−、アセタール結合、セミアセタール結合、−SONH−、および−SONH−からなる群(式中、AはH、アルキルおよびアリールからなる群より選択される)より独立して選択される、請求項2の組成物。
【請求項5】
ペプチドおよび経上皮担体が、静電相互作用、水素結合、π−スタッキング相互作用およびファンデルワールス相互作用からなる群より選択される非共有結合的相互作用によって会合する、請求項1の組成物。
【請求項6】
経上皮担体が単量体型ペプチドとその二量体型との混合物を含む、請求項5の組成物。
【請求項7】
経上皮担体が5〜50個のアミノ酸を含み、そのうち少なくとも3個のアミノ酸はアルギニンもしくはリジンまたはその類似体である、請求項1の組成物。
【請求項8】
経上皮担体中の少なくとも一つのアミノ酸がD−アミノ酸である、請求項7の組成物。
【請求項9】
経上皮担体中のアミノ酸が全てD−アミノ酸である、請求項7の組成物。
【請求項10】
経上皮担体が少なくとも一つのシステインアミノ酸残基を含む、請求項7の組成物。
【請求項11】
経上皮担体が、インクレチン活性を持つペプチドにジスルフィド結合を介して結合されたペプチド単量体、そのホモ二量体、または単量体とホモ二量体との混合物を含む、請求項10の組成物。
【請求項12】
経上皮担体中の少なくとも一つのアミノ酸がD−アミノ酸である、請求項11の組成物。
【請求項13】
経上皮担体中のアミノ酸が全てD−アミノ酸である、請求項11の組成物。
【請求項14】
インクレチン活性を持つペプチドが少なくとも一つのシステインアミノ酸残基を含み、その少なくとも一つのシステインは、付加または置換によって導入されるか、インクレチン活性を持つペプチドに元から存在している、請求項1の組成物。
【請求項15】
インクレチン活性を持つペプチドのN末端またはC末端にシステインアミノ酸残基が取り付けられるか、インクレチン活性を持つペプチド中のセリンアミノ酸残基の一つがシステインアミノ酸残基で置き換えられる、請求項14の組成物。
【請求項16】
インクレチン活性を持つペプチドがアミノ酸配列:HGEGTFTSDL SKQMEEEAVR LFIEWLKNGG PSSGAPPPS(配列番号6)を含み、そのアミノ酸配列のN末端またはC末端にシステインアミノ酸残基が取り付けられるか、そのアミノ酸配列中のセリンアミノ酸残基の一つがシステインアミノ酸残基で置き換えられる、請求項1の組成物。
【請求項17】
インクレチン活性を持つペプチドがアミノ酸配列:HSDGTFITSDL SKQMEEEAVR LFIEWLKNGG PSSGAPPPS(配列番号33)を含み、そのアミノ酸配列のN末端またはC末端にシステインアミノ酸残基が取り付けられるか、そのアミノ酸配列中のセリンアミノ酸残基の一つがシステインアミノ酸残基で置き換えられる、請求項1の組成物。
【請求項18】
インクレチン活性を持つペプチドがアミノ酸配列:HAEGTFTSDV SSYLEGOAAK EFIAWLVKGR(配列番号7)を含み、そのアミノ酸配列のN末端またはC末端にシステインアミノ酸残基が取り付けられるか、そのアミノ酸配列中のセリンアミノ酸残基の一つがシステインアミノ酸残基で置き換えられる、請求項1の組成物。
【請求項19】
経上皮担体が5〜50個のアミノ酸を含み、経上皮担体の少なくとも3個のアミノ酸はアルギニンもしくはリジンまたはその類似体であり、経上皮担体が少なくとも一つのシステインアミノ酸残基を含み、かつインクレチン活性を持つペプチドが少なくとも一つのシステインアミノ酸残基を含み、その少なくとも一つのシステインは、付加もしくは置換によって導入されるか、またはそのインクレチン活性を持つペプチド中に元から存在する、請求項1の組成物。
【請求項20】
経上皮担体が、インクレチン活性を持つペプチドにジスルフィド結合を介して結合されたペプチド単量体、そのホモ二量体、または単量体とホモ二量体との混合物を含む、請求項19の組成物。
【請求項21】
経上皮担体中の少なくとも一つのアミノ酸がD−アミノ酸である、請求項20の組成物。
【請求項22】
経上皮担体中のアミノ酸が全てD−アミノ酸である、請求項20の組成物。
【請求項23】
インクレチン活性を持つペプチドのN末端またはC末端にシステインアミノ酸残基が取り付けられるか、インクレチン活性を持つペプチド中のセリンアミノ酸残基の一つがシステインアミノ酸残基で置き換えられる、請求項19の組成物。
【請求項24】
インクレチン活性を持つペプチドがアミノ酸配列:HGEGTFTSDL SKQMEEEAVR LFIEWLKNGG PSSGAPPPS(配列番号6)を含み、そのアミノ酸配列のN末端またはC末端にシステインアミノ酸残基が取り付けられるか、そのアミノ酸配列中のセリンアミノ酸残基の一つがシステインアミノ酸残基で置き換えられる、請求項19の組成物。
【請求項25】
インクレチン活性を持つペプチドがアミノ酸配列:HSDGTFITSDL SKQMEEEAVR LFIEWLKNGG PSSGAPPPS(配列番号33)を含み、そのアミノ酸配列のN末端またはC末端にシステインアミノ酸残基が取り付けられるか、そのアミノ酸配列中のセリンアミノ酸残基の一つがシステインアミノ酸残基で置き換えられる、請求項19の組成物。
【請求項26】
インクレチン活性を持つペプチドがアミノ酸配列:HAEGTFTSDV SSYLEGOAAK EFIAWLVKGR(配列番号7)を含み、そのアミノ酸配列のN末端またはC末端にシステインアミノ酸残基が取り付けられるか、そのアミノ酸配列中のセリンアミノ酸残基の一つがシステインアミノ酸残基で置き換えられる、請求項19の組成物。
【請求項27】
経上皮担体が、以下の構造(I):
【化2】

[式中、R、R、R、RおよびRは、水素、置換されていてもよいC−C12アルキル基、置換されていてもよいC−C12アルケニル基または置換されていてもよいC−C12アルキニル基からなる群より、それぞれ独立して選択される。ただし、R、R、R、RおよびRが全て水素であることはないものとする]
を持つグアニジニウム基を含む少なくとも一つのペプチドを含む、請求項1の組成物。
【請求項28】
アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基が、他のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基もしくは芳香族基、O、N、S、F、Cl、Br、P、および/またはSiで、さらに置換される、請求項27の組成物。
【請求項29】
グアニジニウム基中の3個の窒素原子のうち、任意の1個が、0個または1個の環系に参加する(ただし、グアニジニウム基中の2個の窒素原子が同じ環系に参加することはないものとする)、請求項27の組成物。
【請求項30】
グアニジニウム基中の3個の窒素原子のうち、任意の2個が、同じ環系に参加し、グアニジニウム基中の残りの窒素原子が0個または1個の環系に参加する(ただし、グアニジニウム基中の残りの窒素原子が1個環系に参加する場合、前記1個の環系は、グアニジニウム基中の2個の窒素原子を含有する環系には縮合していないものとする)、請求項27の組成物。
【請求項31】
グアニジニウム基中の3個の窒素原子のうち、任意の2個が、同じ環系に参加し、グアニジニウム基中の残りの窒素原子が、グアニジニウム基中の2個の窒素原子を含有する環系に縮合している1個環系に参加する、請求項27の組成物。
【請求項32】
経上皮担体が、式(II)の構造:
【化3】

[式中、Rはグアニジニウム頭部を含み、R’はHであり、nは6〜40の整数である]
を含有するペプチドを含む、請求項1の組成物。
【請求項33】
ペプチド結合のうち、1個以上が、−C(=O)NHO−、−C(=O)NHNH−、−S(=O)(=O)NR−、−P(=O)(−OR)NR’−、−CHNR−、−CHCHC(=O)NR−、−C(=O)O−、−C(=S)NR−、−S(=O)(=O)CH−、−SOCH−および−CHOC(=O)NR−からなる群より選択される少なくとも一つで置き換えられる、請求項32の組成物。
【請求項34】
経上皮担体が、式(III)の構造:
【化4】

[式中、nは6〜40の整数である]
を含む、請求項1の組成物。
【請求項35】
経上皮担体が、式(IV)のペプトイド:
【化5】

[式中、RまたはR’のどちらか一方はグアニジニウム頭部を含み、nはペプトイド中の単量体単位の数である]
を含む、請求項1の組成物。
【請求項36】
グアニジニウム頭部が、α炭素原子またはα窒素原子に、結合を介して連結される、請求項35の組成物。
【請求項37】
結合が、C、O、N、S、F、Cl、Br、Pおよび/またはSi原子を含む、請求項36の組成物。
【請求項38】
結合が1〜30原子長である、請求項36の組成物。
【請求項39】
インクレチンホルモン活性を持つペプチドが、2型糖尿病、肥満、心血管疾患および/またはアルツハイマー病からなる群より選択される疾患の治療剤である、請求項1の組成物。
【請求項40】
インクレチンホルモン活性を持つペプチドがグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)、エキセンディン−4およびその類似体からなる群より選択される、請求項1の組成物。
【請求項41】
インクレチンホルモン活性を持つペプチドが、グルカゴン様ペプチド−1受容体およびグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド受容体を標的としている、請求項1の組成物。
【請求項42】
皮膚接触基剤が、軟膏剤、ゲル剤、乳剤、懸濁剤、パップ剤、硬膏剤、ローション剤またはリニメント剤からなる群より選択される、請求項1の組成物。
【請求項43】
皮膚接触基剤が、感圧接着剤および裏打ちを含む硬膏剤である、請求項1の組成物。
【請求項44】
感圧接着剤層に加えられる水または有機液体成分をさらに含む、請求項43の組成物。
【請求項45】
有機液体成分が、グリコール、オリーブ油、ヒマシ油、スクアラン、オレンジ油、鉱油、C6−20脂肪酸、C6−20脂肪酸エステルおよびC1−20アルコールからなる群より選択される、請求項44の組成物。
【請求項46】
皮膚接触基剤が徐放をもたらす、請求項1の組成物。
【請求項47】
上皮組織が皮膚組織である、請求項1の組成物。
【請求項48】
ヒト対象における糖尿病の処置に用いられる、請求項1〜47のいずれかに記載の組成物。
【請求項49】
ヒト対象における糖尿病を処置するための医薬の製造における、インクレチンホルモン活性を持つペプチドと経上皮担体とを含む局所用調製物の使用であって、
その処置は、前記局所用調製物を患者の皮膚と接触させて置くことにより、前記活性剤が前記患者の前記皮膚上に局所的に放出されるようにすること、ならびに重篤な悪心および/または嘔吐を誘発することなく、ヒト対象におけるインスリンの分泌をインビボで刺激するために、インクレチンホルモン活性を持つペプチドの有効量を送達することを含み、
経上皮担体が、無傷の動物皮膚組織層を横切ってなされる活性剤の送達を、経上皮担体の不在下でそのペプチドを送達する場合と比較して増加させるために、十分なアミノ基、グアニジン基またはアミジノ基を含む
使用。
【請求項50】
インクレチンホルモン活性を持つペプチドが、2型糖尿病、肥満、心血管疾患および/またはアルツハイマー病からなる群より選択される疾患の治療剤である、請求項49の方法。
【請求項51】
インクレチンホルモン活性を持つペプチドがグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)、エキセンディン−4およびその類似体からなる群より選択される、請求項49の方法。
【請求項52】
インクレチンホルモン活性を持つペプチドが、グルカゴン様ペプチド−1受容体およびグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド受容体を標的としている、請求項49の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−517055(P2008−517055A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537888(P2007−537888)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/032636
【国際公開番号】WO2006/044063
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】