説明

インク供給装置およびカートリッジ収容装置

【課題】インクカートリッジが収納された状態で気体通路の開口付近のシール性を高めて、該開口からのインク漏れを防止することが可能なインク供給装置およびカートリッジ収容装置を提供する。
【解決手段】インクカートリッジ100の本体40に大気連通バルブ80が設けられている。大気連通バルブ80は、シール部材83とキャップ85とを有する。壁面に形成された開口82にキャップ85によってシール部材83が取り付けられている。カートリッジ装着部202の奥面に押圧部216が設けられている。インクカートリッジ100がカートリッジ装着部202に装着されると、押圧部216の先端がシール部材83の大径孔63に嵌め入れられる。これにより、大径孔63の内面と押圧部216の外周面とが液密に密着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクが収容されるインク室を有するインクカートリッジと、このインクカートリッジを収納可能なカートリッジ収納部とを具備するインク供給装置およびカートリッジ収容装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式の画像記録装置には、インク供給装置が設けられている。インク供給装置は、インクが収容されるインク室を有するインクカートリッジと、このインクカートリッジを着脱可能に保持するカートリッジケース(カートリッジ収納部)とを備える。カートリッジケースにインクカートリッジが装着されると、インク室から画像記録装置側に至るインク通路が形成される。このインク通路を通じてインク室から画像記録装置の記録ヘッドにインクが供給されると、そのインクは記録ヘッドによって選択的にノズルから噴出される。この噴出されたインク滴が用紙に付着されることによって用紙に画像が記録される。
【0003】
この種のインクカートリッジの一例が特許文献1に開示されている。このインクカートリッジには、インクが導出されるインク供給部と、インク室に空気を取り入れるための大気導入部とが設けられている。大気導入部は、インクカートリッジの壁面に形成された開口と、この開口の周縁に設けられた可撓性を有する筒状部材と、開口を開閉可能な弁体を移動させるロッドとを有する。カートリッジケースには、インク供給部に対応する位置にインクニードルが設けられている。インクカートリッジがカートリッジケースに装着されると、まず最初に、大気導入部のロッドがカートリッジケースの奥面に当たってインク室側へ押し込まれる。これにより、上記弁体が移動して上記開口が開放されて、インク室と外部とが連通する。そして、インクカートリッジがカートリッジケースの奥部まで挿入されると、大気導入部の筒状部材が奥面に密着され、且つ、インク供給部にインクニードルが挿通される。
【0004】
【特許文献1】特開2007−196647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の従来のインクカートリッジでは、大気導入部の筒状部材がカートリッジケースの奥面に当接したときに挫屈する場合がある。この場合、奥面と筒状部材との間に隙間が生じ、十分なシール性を発揮することができない。ところで、画像記録装置が初期不良や故障などの不具合を起こした場合は、その画像記録装置は販売元或いはメーカへ返却される。この際に、画像記録装置にインクカートリッジが装着されたまま返却されることがある。画像記録装置が返却されるまでの物流過程において、画像記録装置が逆さまに積載されたり、その長手方向を縦にした状態で積載される場合がある。この画像記録装置に装着されたインクカートリッジが上述のごとく十分なシール性を有していない場合は、大気導入部の開口を通じてインクが外部に漏れ出してしまい、他の運搬物をインクで汚すおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、インクカートリッジが収納された状態で気体通路の開口付近のシール性を高めて、該開口からのインク漏れを防止することが可能なインク供給装置およびカートリッジ収容装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明のインク供給装置は、インクが収容されるインク室を有するインクカートリッジと、
上記インクカートリッジを収納可能なカートリッジ収納部とを具備する。上記インクカートリッジは、上記カートリッジ収納部に対する挿入方向の前面に設けられた開口を有し、該開口から上記インク室に連続する気体通路と、上記気体通路の内面に装着され、内孔を有する環状の弾性部材とを備える。上記カートリッジ収納部は、上記インクカートリッジの挿入方向の前面と対面する壁面に設けられ、上記インクカートリッジが当該カートリッジ収納部に収納された状態で先端が上記内孔に挿入され、且つ外周面が上記内孔の内面に密着される凸部を備える。
【0008】
弾性部材の内孔は、凸部の外径よりも少し小さいサイズに形成されている。弾性部材の内孔に凸部が挿入されると、弾性部材が上記内孔の径方向へ撓まされる。これにより、上記内孔の内面に凸部の外周面が密着する。このとき、弾性部材は凸部によって幾分か撓まされるが、挫屈したり或いは偏った変形をすることはない。したがって、インクカートリッジ装着時に連通口付近におけるシール性が高められる。
【0009】
(2) 上記凸部は、その先端から上記カートリッジ収納部の背面に貫通する内孔を有する筒である。
【0010】
これにより、凸部の先端が弾性部材の内孔に挿入されると、インク室が気体通路および凸部の内孔を通じて外部に連通する。そのため、インクカートリッジの上記開口付近のシール性が保持され、且つ、インク室が常に大気と同圧に保持される。
【0011】
(3) 本発明のインク供給装置は、上記カートリッジ収納部の背面における上記凸部の開口付近に配設され、気体を通す通気性及び液体を吸収する吸収性を有する吸収体を更に備える。
【0012】
これにより、インク室のインクが気体通路から凸部の内孔を通じて外部へ漏れた場合でも、漏出したインクが吸収体に吸収される。このため、カートリッジ収納部の背面周辺がインクで汚れることはない。
【0013】
(4) 上記凸部は、上記壁面から上記インクカートリッジの挿入方向と同方向へ突出している。
【0014】
これにより、弾性部材の内孔へ凸部が挿入され易くなる。
【0015】
(5) 上記弾性部材は、上記気体通路の開口の周縁に装着されている。
【0016】
(6) 本発明のインク供給装置は、弁体と、付勢部材とを更に備える。弁体は、上記気体通路に設けられている。この弁体は、上記気体通路を閉塞する第1姿勢と上記気体通路を開放する第2姿勢との間で姿勢変化可能に構成されている。付勢部材は、上記気体通路を閉塞する方向へ上記弁体を付勢する。上記弁体は、上記インクカートリッジが上記カートリッジ収納部に収納された状態で上記凸部に押圧されることによって上記付勢部材の付勢力に抗して上記第1姿勢から上記第2姿勢に変化する。
【0017】
(7) 上記弁体は、上記インクカートリッジの挿入方向と同方向へスライド可能に設けられている。
【0018】
これにより、凸部による上記弁体の姿勢変化が容易となる。
【0019】
(8) 上記弁体は、上記第1姿勢で上記気体通路の開口から外側へ突出する突出部を有する。上記突出部は、上記インクカートリッジが上記カートリッジ収納部に収納された状態で上記凸部に押圧される。
【0020】
(9) 本発明は、インクが収容されるインク室を有するインクカートリッジを収納可能なカートリッジ収容装置として捉えてもよい。このカートリッジ収容装置は、上記カートリッジ収納部に対する挿入方向の前面に設けられた開口を有し、該開口から上記インク室に連続する気体通路と、上記気体通路の内面に装着され、内孔を有する環状の弾性部材とを備えたインクカートリッジに適用可能である。当該カートリッジ収容装置は、上記インクカートリッジの挿入方向の前面と対面する壁面に設けられ、上記インクカートリッジが当該カートリッジ収容装置に収納された状態で先端が上記内孔に挿入され、且つ外周面が上記内孔の内面に密着される凸部を備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、インクカートリッジが収納された状態で気体通路の開口付近のシール性を高めて、該開口からのインク漏れを防止することることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下の実施形態は本発明を具体化した一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0023】
[インク供給装置10]
図1は、本発明の一実施形態に係るインク供給装置10の斜視図である。図1に示されるように、インク供給装置10は、大別して、インクカートリッジ100(本発明のインクカートリッジの一例)と、このインクカートリッジ100が着脱可能に収容されるベースユニット200(本発明のカートリッジ収納部、カートリッジ収容装置の一例)とにより構成されている。インク供給装置10は、所謂インクジェット記録方式のプリンタや複写機、ファクシミリ装置などの画像記録装置に用いられるものであり、インクカートリッジ100に収容されたインクを画像記録装置の画像記録ヘッドへ供給する役割を担う。以下、インク供給装置10の各構成について添付図を参照しながら分説する。
【0024】
[インクカートリッジ100]
まず、図2から図5を参照して、インクカートリッジ100について説明する。ここに、図2は、インクカートリッジ100の外観構成を示す斜視図であり、(A)には、スライダ41が第1位置にある状態が示されており、(B)には、スライダ41が第2位置にある状態が示されている。図3は、インクカートリッジ100の側面図であり、(A)には、スライダ41が第1位置にある状態が示されており、(B)には、スライダ41が第2位置にある状態が示されている。図4は、本体40の構成を示す斜視図であり、(A)には、本体40の前面34側から見た斜視図が示されており、(B)には、本体40の後面35側から見た斜視図が示されている。図5は、インクカートリッジ100の挿入方向前方側の部分拡大図であり、大気連通バルブ80およびインク供給バルブ90が詳細に示されている。
【0025】
図2及び図3に示されるように、インクカートリッジ100は、扁平形状の略六面体として構成されている。詳細には、インクカートリッジ100は、幅方向(矢印31の方向)に細く、高さ方向(矢印32の方向)及び奥行き方向(矢印33の方向)が上記幅方向よりも長い略直方体形状に形成されている。このインクカートリッジ100は、図2及び図3に示された起立状態、つまり、図中の下側の面を底面とし、図中の上側の面を天面としてベースユニット200(図6参照)に対して矢印30で示される方向(以下「挿入方向30」と称する。)に挿入される。
【0026】
インクカートリッジ100は、大別して、内部にインクが収容される本体40(図4参照)と、スライダ41と、本体カバー42とを備えている。インクカートリッジ100の外装はスライダ41及び本体カバー42によって概ね構成されている。本体40は、スライダ41及び本体カバー42で覆い隠されている。なお、本実施形態では、本体40、スライダ41及び本体カバー42は樹脂材料により構成されている。樹脂材料としては、例えば、ナイロン、ポリエチレンやポリプロピレンなどが該当する。
【0027】
本体カバー42は、本体40(図4参照)の概ね全体を覆う。詳細には、この本体カバー42によって、本体40の上面36(図4参照)の一部と本体40の前面34(図4参照)とを除く大部分が覆われる。これにより、本体40の大部分、特に本体40の側面38,39(図4参照)が外部からの衝撃などから保護される。なお、本体カバー42の構成は本発明に関係しないため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0028】
スライダ41は、図示しないコイルバネを介して本体40に取り付けられている。本体カバー42が本体40(図4参照)に装着された状態で本体カバー42の挿入方向30の前方側の前方部46と、本体40の前面34(図4参照)とがスライダ41によって覆われる。スライダ41は、インクカートリッジ100の奥行き方向(矢印33の方向)へスライドするように構成されている。図2(A)及び図3(A)には、スライダ41が本体40の挿入方向30の前面34(図4参照)から最も離された第1位置にある状態が示されており、図2(B)及び図3(B)には、スライダ41が本体40の前面34に最も近づけられた第2位置にある状態が示されている。
【0029】
スライダ41には、開口177と開口178とが設けられている。開口177は、後述する大気連通バルブ80に対応する位置に形成されている。開口178は、後述するインク供給バルブ90に対応する位置に形成されている。したがって、本体40にスライダ41が取り付けられても、大気連通バルブ80及びインク供給バルブ90は各開口177,178を通じて外部に露出されている。図2及び図3に示されるように、スライダ41が上記コイルバネの付勢力に抗して上記第1位置から上記第2位置までスライドすると、インク供給バルブ90のキャップ95(図4参照)が外部へ露出される。また、スライダ41が上記第2位置から上記第1位置にスライドすると、キャップ95がスライダ41内に没入される。なお、スライダ41の構成及びスライダ41をスライドさせる機構は本発明に関係しないため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0030】
図4に示されるように、本体40は、インクカートリッジ100と概ね同形状の外形を呈しており、扁平形状の略六面体として構成されている。本実施形態では、図4に示されるように、本体40において、挿入方向30の前方側の面を前面34、挿入方向30の後方側の面を後面35、鉛直上方側の面を上面36、鉛直下方側の面を下面37とする。また、前面34、後面35、上面36、下面37それぞれに隣接し、互いに対向する2つの面を側面38,39とする。後面35から見て左側が左側面38であり、右側が右側面39である。これら一対の側面38,39が本体40において最大面積となっている。
【0031】
本体40は、大別して、フレーム50と、アーム70と、大気連通バルブ80と、インク供給バルブ90と、フレーム50に溶着された透明なフィルム(不図示)とにより構成されている。なお、図4では、上記フィルムの図示が省略されている。
【0032】
フレーム50は、本体40の筐体を構成する部材である。フレーム50は、本体40の六面34〜39を形成する。したがって、本体40の六面34〜39は、フレーム50の六面に一致する。以下において、本体40の各面に付された符号を用いてフレーム50の各面を示す。
【0033】
フレーム50は、透光性のある部材、例えば、透明又は半透明の樹脂材料で構成されている。このフレーム50は、樹脂材料を射出成形することにより得られる。樹脂材料としては、ポリアセタールやナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが該当する。
【0034】
図4に示されるように、フレーム50は、環状の外周壁51と、複数の内壁52とを備える。内壁52は、外周壁51の内側に配設されている。外周壁51及び内壁52は、フレーム50として一体に形成されている。外周壁51及び内壁52は、本体40の左側面38から右側面39に渡って設けられている。外周壁51は、内部に空間を形成するように、前面34、上面36、後面35、下面37に概ね沿って環状に配設されている。これにより、フレーム50の左側面38に開口57が形成され、右側面39に開口58が形成される。
【0035】
上記フィルムは、フレーム50の両側面38,39(図4の左右の2面)側の縁部、つまり、外周壁51の側面38,39側の外縁部分に、周知の熱溶着法によって溶着される。上記フィルムによって開口57,58が閉塞される。これにより、外周壁51と上記フィルムとによって囲まれた空間がインク室102として区画される。このように区画されたインク室102にインクが収容される。なお、本実施形態では、フレーム50と上記フィルムとによってインク室102が形成されることとしたが、例えば、フレーム50自体を直方体の容器状に形成することによってその内部にインク室102が形成されてもよい。
【0036】
内壁52は、外周壁51で囲まれた領域内に配設されている。この内壁52における側面38,39側の外縁部分にも上記フィルムが溶着される。これにより、上記フィルムの弛みを抑制することができる。また、スライダ41及び本体カバー42が本体40側に変形したとしても、内壁52によってスライダ41及び本体カバー42の変形が規制される。
【0037】
フレーム50の前面34には、検知部140が形成されている。検知部140は、インク室102に収容されているインクの量を視覚的或いは光学的に検知するためのものである。検知部140は、フレーム50に一体に形成されている。したがって、検知部140は、フレーム50と同じ材質、つまり、透光性のある透明又は半透明の樹脂材料で構成されている。そのため、検知部140は、外部からの光を透過することができる。
【0038】
検知部140は、略直方体形状を呈している。検知部140は、本体40の前面34の中段付近から本体40の外部へ向けて突設されている。この検知部140は、略矩形状の5つの隔壁からなり、内部が中空に形成されている。検知部140の内部には、上記隔壁によって囲まれた空間142が形成されている。検知部140のインク室102側には壁は設けられておらず、空間142がインク室102に連続している。なお、検知部140は、前面34の中段付近から本体40の内側へ向けて窪まされた凹陥部の底面に設けられていてもよい。また、検知部140は、前面34の中段付近から本体40の内側へ向けて窪まされた形状に形成されていてもよい。
【0039】
検知部140は、ベースユニット200にインクカートリッジ100が装着された際に、ベースユニット200に取り付けられたフォトインタラプタなどの光センサ181の光路183(図8参照)に挿入される。詳細には、検知部140は、その側壁に設定された照射領域144と光路183とが交差するように挿入される。
【0040】
本体40の内部、つまりインク室102にアーム70が設けられている。アーム70は、遮光性のある樹脂材料で構成されている。アーム70は、外周壁51の幅方向(矢印31の方向)の中心に立設されたリブ74に揺動可能に支持されている。アーム70の一端に浮力体としての役割を担うフロート部73が設けられている。アーム70の他端には、空間142に配置されるインジケータ部72が設けられている。インク室102内のインク量に応じてフロート部73が上下に変位すると、アーム70が揺動し、その揺動動作に応じてインジケータ部72が空間172内で上下に移動する。この上下に移動するインジケータ部72が検知部140を介して検知されることで、インクが所定量以上あるかどうかの判別が可能となる。
【0041】
図5に示されるように、フレーム50の前面34の上部、言い換えれば、検知部140の上方に、円形の開口82が設けられている。開口82に連続してフレーム50の内部側に円筒状の空気通路55(本発明の気体通路の一例)が形成されている。空気通路55は、本体40の奥行き方向(矢印33の方向)へ延設されている。空気通路55は、その奥部においてインク室102の上部に連通している。つまり、インク室102の上部に溜まる空気層と空気通路55とが連通している。この空気通路55に大気連通バルブ80が収容されている。
【0042】
大気連通バルブ80は、開口82からインク室102に至る空気通路55を開放又は閉塞する弁機構として構成されている。この大気連通バルブ80は、主として、バルブ本体87(本発明の弁体の一例)、バネ86(本発明の付勢部材の一例)、シール部材83(本発明の弾性部材の一例)、キャップ85などの部材で構成されている。
【0043】
開口82の周縁にシール部材83を介してキャップ85が取り付けられている。シール部材87は、例えば弾性を有する合成樹脂で構成されており、概ね筒状に形成されている。したがって、シール部材87は、断面視で環状に形成されている。シール部材87は、小径孔62と大径孔63とを有する。外径孔63側の端部67の外周壁は、外力が加えられると撓まされる程度の薄肉厚に形成されている。小径孔62側の端部64の外径は、開口82よりも幾分か大きく形成されている。この端部64が開口82から空気通路55内に嵌入されることにより、端部64の外周縁と空気通路55の内面とが液密に密着される。また、シール部材87の外周面には鍔65が形成されている。シール部材87が空気通路55に嵌入された際に、鍔65が開口82の周縁に当接することによって、それ以上の進入が阻止される。
【0044】
キャップ85は、開口82の周縁に取り付けられる。キャップ85の蓋部68には貫通孔66が形成されており、キャップ85が取り付けられた際に、シール部材87の大径孔63側の端部67が貫通孔66から外部へ露出される。また、シール部材87の鍔65が貫通孔66の周縁によって開口82の周縁に押し付けられる。
【0045】
キャップ85及びシール部材83が開口82に取り付けられると、キャップ85の貫通孔66及びシール部材83の内孔(小径孔62及び大径孔63)によって、空気通路55と本体40の外部とを連通する大気連通口81が形成される。この大気連通口81は、インクカートリッジ100がベースユニット200に装着されたときに、ベースユニット200が備える筒状の押圧部216(図8参照、本発明の凸部の一例)が挿入される部分である。
【0046】
バルブ本体87は、空気通路55において、本体40の奥行き方向へスライド可能に設けられている。つまり、バルブ本体87は、インクカートリッジ100の挿入方向30と同じ方向へスライド可能に設けられている。バルブ本体87は、蓋体88と、ロッド84(本発明の突出部の一例)とを有する。ロッド84は、蓋体88の中央から外部側(図5の右方向)へ突出している。蓋体88は、バネ86によって、シール部材83側へ付勢されている。言い換えれば、バネ86は、大気連通口81を閉塞する方向へバルブ本体87を付勢している。ロッド84は、図5に示されるように、蓋体88がシール部材83に当接した第1姿勢(本発明の第1姿勢に相当)で、大気連通口81を通じて外部へ露出される。なお、バネ86はバルブ本体87を付勢する付勢部材の一例であって、これに代えてゴムやスポンジなどのように弾性力によってバルブ本体87を付勢する部材を採用することも可能である。
【0047】
ロッド84に外力が加えられていない場合は、バネ86の付勢力を受けた蓋体88は、シール部材83に当接した上記第1姿勢を維持する。これにより、大気連通口81が閉塞される。一方、バネ86の付勢力より大きな外力がロッド84に加えられてロッド84が大気連通口81内に押し込まれると、蓋体88がシール部材83から離れた第2姿勢(本発明の第2姿勢に相当)に変化する。これにより、大気連通口81が開放される。このとき、インク室102と本体40の外部とが連通して、インク室102内の空気層が大気圧と同圧になる。
【0048】
また、図5に示されるように、フレーム50の前面34の下部、言い換えれば、検知部140の下方に、円形の開口92が設けられている。開口92に連続してフレーム50の内部側に円筒状のバルブ収容室54が形成されている。バルブ収容室54は、本体40の奥行き方向(矢印33の方向)へ延設されている。バルブ収容室54は、その奥部においてインク室102に連通している。バルブ収容室54に、インク供給バルブ90が収容されている。
【0049】
インク供給バルブ90は、開口92からインク室102に至るインク経路を開放又は閉塞する弁機構として構成されている。このインク供給バルブ90は、主として、バルブ本体97、バネ96、シール部材93、キャップ95などの部材で構成されている。
【0050】
開口92の周縁にシール部材93を介してキャップ95が取り付けられている。キャップ95及びシール部材93それぞれの中央には貫通孔(不図示)が設けられている。キャップ95及びシール部材93が開口92の周縁に取り付けられると、上記貫通孔によって、バルブ収容室54と本体40の外部とを連通するインク供給口91が形成される。このインク供給口91は、インクカートリッジ100がベースユニット200(図6参照)に装着されたときに、管状のインクニードル209(図6参照)が挿入される部分である。
【0051】
バルブ本体97は、バルブ収容室54において、本体40の奥行き方向へスライド可能に設けられている。バルブ本体97は、バネ96によって、シール部材93側へ付勢されている。言い換えれば、バネ96は、上記インク供給口91を閉塞する方向へバルブ本体97を付勢している。図5に示されるように、バルブ本体97がシール部材93に当接した状態で、インク供給口91が閉塞される。
【0052】
バルブ本体97に外力が加えられていない場合、つまり、インク供給口91にインクニードル209(図6参照)が挿入されていない場合は、バネ96の付勢力を受けたバルブ本体97は、シール部材93に当接した状態を維持する。これにより、インク供給口91が閉塞される。一方、インク供給口91にインクニードル209が挿入されて、バネ96の付勢力より大きな外力がバルブ本体97に加えられると、バルブ本体97がシール部材93から離れる。これにより、インク供給口91が開放される。このとき、インク室102内のインクをインクニードル209を通じてベースユニット200側へ導出することが可能となる。
【0053】
図4に示されるように、フレーム50の上面36に、台状に形成された台状部124が設けられている。この台状部124は、上面36における奥行き方向(矢印33の方向)の中間部分から挿入方向30の後方へ延出されている。この台状部124は、本体40が本体カバー42で覆われた状態で、本体カバー42の上面に設けられた開口128(図2参照)から外部に露出される。なお、台状部124の後端は後面35に達していない。
【0054】
台状部124には、該台状部124から上方へ突出するストッパ125が設けられている。ストッパ125は、台状部124において挿入方向30の前方側の端部に設けられている。ストッパ125は、台状部124から垂直な垂直壁126と、垂直壁126の上端から概ね45度の角度で挿入方向30の前方側の上面36へ傾斜する傾斜リブ127とからなる。このストッパ125は、インクカートリッジ100がベースユニット200に装着されたときに、ベースユニット200からインクカートリッジ100が抜け落ちないようにインクカートリッジ100を固定するためのものである。インクカートリッジ100の固定は、ストッパ125と後述するロックレバー230(図6参照)との係合により達成される。
【0055】
[ベースユニット200]
次に、図6から図8を参照して、ベースユニット200の構成について説明する。ここに、図6は、ベースユニット200の構成を示す斜視図である。図7は、ベースユニット200の平面図である。図8は、図7における切断線VIII−VIIIの断面図である。
【0056】
図6に示されるように、ベースユニット200は、前面に開口207を有する概ね箱状に形成されたフレーム204によってその筐体が形成されている。フレーム204の内部空間が、インクカートリッジ100を収容するためのカートリッジ装着部202である。このカートリッジ装着部202には、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色に対応する4つのインクカートリッジ100が収容可能である。
【0057】
図6及び図8に示されるように、カートリッジ装着部202には、内部空間を縦方向に長い4つの空間に仕切り分ける3つのプレート223が設けられている。このプレート223によって仕切り分けられた各空間それぞれにインクカートリッジ100が収容される。プレート223は、カートリッジ装着部202の奥面に設けられている。プレート223は、上記奥面から開口207側へ立設されている。これらプレート223は、ベースユニット200の幅方向に配列されている。
【0058】
フレーム204の底面に、4つのガイド溝206が設けられている。これらガイド溝206は、インクカートリッジ100をカートリッジ装着部202の奥部まで円滑に案内するものである。ガイド溝206は、ベースユニット200の奥行き方向に真っ直ぐに延設されている。各ガイド溝206は、ベースユニット200の幅方向へ所定間隔を隔てて配列されている。最も左端部のガイド溝206は、他のガイド溝206に比べて幅が大きく形成されている。これは、他のインクカートリッジよりも幅広に形成されたブラックインクのインクカートリッジの挿入を可能とするためである。各インクカートリッジ100は、その下端がガイド溝206に沿って奥部へ案内されることで、カートリッジ装着部202に円滑に挿入される。
【0059】
図8に示されるように、ベースユニット200は押圧部216を備える。押圧部216は、インクカートリッジ100の挿入方向30の前面に対応する壁面、つまり、カートリッジ装着部202の奥面の上部に設けられている。押圧部216は、上記奥面において、大気連通バルブ80(図4参照)に対応する位置に配置されている。この押圧部216は、インクカートリッジ100がカートリッジ装着部202に挿入された際に、開口177(図2参照)を通じて大気連通バルブ80のロッド84を押圧する。本実施形態では、カートリッジ装着部202に収容可能な4つのインクカートリッジ100に対応して4つの押圧部216が設けられている。
【0060】
図8に示されるように、押圧部216は、奥面に対して垂直に突出した突起状に形成されている。つまり、押圧部216は、インクカートリッジ100の挿入方向30と同方向に突出している。この押圧部216は、インクカートリッジ100がカートリッジ装着部202に挿入される過程において、スライダ41の開口177(図2参照)に挿通される。押圧部216の突出長さは、インクカートリッジ100がカートリッジ装着部202に挿入されたときに、他の部位に先立って押圧部216が開口177に挿通され得る寸法に設定されている。押圧部216が開口177に挿通されると、開口177を有するスライダ41の挿入位置及び挿入方向が位置決めされる。
【0061】
押圧部216は、その内部を空気が通過可能なように、円筒状に形成されている。押圧部216の内孔は、ベースユニット200の背面側で外部に連通している。つまり、押圧部216は、その先端からベースユニット200の背面に貫通する内孔を有する。
【0062】
押圧部216の先端に窪み217が形成されている。窪み217の内径は、ロッド84(図4参照)の先端部の外径よりも大きく設定されている。この窪み217の底面に複数の孔269が設けられている。孔269は、窪み217の底面の中心から径方向へ離間した位置に設けられている。この孔269を通じて、押圧部216の内孔に空気が流入する。
【0063】
押圧部216は、先端側の小径筒部266と基端側(奥面側)の大径筒部267とからなる。小径筒部266から大径筒部267に至る部位には傾斜面268が設けられている。
小径筒部266は、シール部材83(図5参照)の大径孔63に挿入可能な寸法に形成されている。インクカートリッジ100がカートリッジ装着部202に装着された状態で、小径筒部266が大径孔63に嵌め入れられる。このとき、小径筒部266の外周面と大径孔63の内面とが液密に密着される。大径筒部267は、小径筒部266の外径よりも十分に大きい。この大径筒部267は、開口177に挿通可能な寸法に形成されている。
【0064】
カートリッジ装着部202の奥面の下部に、インク供給口91と連結される連結部208が設けられている。連結部208は、奥面において、インクカートリッジ100のインク供給バルブ90に対応する位置に配置されている。本実施形態では、カートリッジ装着部202に収容可能な4つのインクカートリッジ100に対応して4つの連結部208が設けられている。なお、図6では、最も右側に配置された連結部208がフレーム204の側壁によって隠されている。
【0065】
連結部208は、インクニードル209と、保持部210とを有する。インクニードル209は、管状の樹脂針からなる。インクニードル209は、図8に示されるように、ベースユニット200の背面側で可撓性を有するインクチューブ212に接続されている。各インクニードル209から背面側へ引き出された各インクチューブ212は、ベースユニット200の背面において上方へ引き上げられたのち、画像記録装置が備える記録ヘッドまで引き回されている。
【0066】
保持部210は、凹陥状に形成されている。保持部210の中心にインクニードル209が配置されている。インクカートリッジ100がカートリッジ装着部202に装着されると、キャップ95(図2(B)参照)が保持部210に挿通される。このとき、キャップ95の周面が保持部210の凹陥部に装着される。これにより、キャップ95の周面と保持部210の凹陥部の内面とが密着して、凹陥部キャップ95と保持部210とが緩みなく連結される。また、インク供給口91がインクニードル209に正確に位置決めされる。
【0067】
カートリッジ装着部202の奥面において、連結部209の上側に光センサ181が設けられている。この光センサ181は、インクカートリッジ100の検知部140に対応する位置に配置されている。光センサ181は、インク室102内のインク量が所定量になったかどうかを検知するために用いられる。また、カートリッジ装着部202の天面の奥部に光センサ182(図8参照)が設けられている。この光センサ182は、カートリッジ装着部202にインクカートリッジ100が装着されたかどうかを判定するために用いられる。本実施形態では、カートリッジ装着部202に収容可能な4つのインクカートリッジ100に対応して4つの光センサ181及182が設けられている。なお、図6では、最も右側に配置された光センサ181がフレーム204の側壁によって隠されている。
【0068】
光センサ181,182としては、発光素子及び受光素子を有する透過型のフォトインタラプタが用いられる。光センサ181の発光素子と受光素子との間に、発光素子から出射された光の通路である光路183が形成されている。また、光センサ182にも、同様の光路184が形成されている。
【0069】
ベースユニット200の背面には、インク吸収部250が設けられている。インク吸収部250は、インクなどの液体を吸収して保持する吸収体251と、この吸収体251をベースユニット200の背面側で支持する支持部材252とを備える。吸収体251は、インクなどの液体を吸収して保持可能な吸収性と、空気(気体)を通す通気性とを兼ね備えるものであれば如何なる素材で構成されていてもよい。吸収体251の一例としては、例えば、スポンジやフォームラバー、脱脂綿などが考えられる。
【0070】
支持部材252は、フレーム204に取り付け可能に構成されている。支持部材252が吸収体251を保持した状態でフレーム204に取り付けられることで、吸収体251がベースユニット200の背面に密着される。これにより、押圧部216の背面側の開口218(図8参照)が吸収体251によって閉塞される。なお、吸収体251は、上述したように通気性を有するため、開口218が吸収体251で閉塞されても押圧部216の内孔が密閉されることはない。
【0071】
フレーム204には、ロックレバー230が設けられている。ロックレバー230は、カートリッジ装着部202に装着されたインクカートリッジ100が脱落しないようにインクカートリッジ100を固定(ロック)するためのものであり、フレーム204の開口207の上縁部205付近に設けられている。本実施形態では、カートリッジ装着部202に収容可能な4つのインクカートリッジ100に対応して4つのロックレバー230が設けられている。ロックレバー230が設けられているため、カートリッジ装着部202にインクカートリッジ100が装着された状態を維持したまま、このインクカートリッジ100をカートリッジ装着部202に確実に固定することができる。
【0072】
図8に示されるように、ロックレバー230は、全体がアーム状に形成されている。ロックレバー230の中央付近に支持軸232が設けられている。この支持軸232がフレーム204に軸支されている。これにより、フレーム204の上縁部205付近でロックレバー230が支持軸232を中心に回動可能に支持される。
【0073】
ロックレバー230は、入力部234と、作用部236と、係合部243とにより構成されている。入力部234は、支持軸232から図8の紙面左側(開口207側)に設けられており、作用部236は支持軸232から図8の紙面右側(カートリッジ装着部202の奥側)に設けられている。入力部234は、上面に僅かな窪みを有する皿状に形成されている。そのため、手の指の腹で入力部234を下方へ押圧し易くなっている。
【0074】
支持軸232から入力部234に至る部位の下端に、係合部243が設けられている。この係合部243は、入力部234が下方へ押圧された際にカートリッジ装着部202側へ降下して、インクカートリッジ100の上面を構成する部位に当接するよう構成されている。
【0075】
作用部236の先端には、インクカートリッジ100のストッパ125に当接される当接部237が設けられている。当接部237の下部は、湾曲状に形成されている。作用部236は、支持軸232から当接部237に至って概ね真っ直ぐに形成されている。
【0076】
ロックレバー230の上側に引きバネ219が設けられている。引きバネ219の奥側の一端は、当接部237の上方でフレーム204に固定されている。詳細には、フレーム204の上面に平板状のリブ221が立設されており、このリブ221から水平方向へ突出された掛け部239に引きバネ219の一端が掛け止めされている。一方、引きバネ219の手前側の一端は、支持軸232の上部から上方へ突出するL字状の掛け部241に掛け止めされている。掛け部241は、掛け部239よりも少し下方に位置している。引きバネ219は、所謂引っ張りバネとして用いられている。つまり、引きバネ219を伸張させて収縮方向へ力を発生させた状態で当該引きバネ219が掛け部239,241に固定されている。そのため、ロックレバー230は、図8において矢印245(図8の時計方向)へ回動する力を引きバネ219から受ける。なお、フレーム204の開口207の上縁部205によってロックレバー230の過度な回動が規制されている。したがって、入力部234に外力が加えられていない状態では、ロックレバー230は、上縁部205で矢印245方向の回動が規制された状態で保持されている。この状態で、入力部234は、概ね水平方向の姿勢に保持されている。本実施形態では、少なくとも、当接部237がカートリッジ装着部202側へ降下して、インクカートリッジ100の台状部124に当接することが可能な範囲内で、ロックレバー230は矢印245の方向へ回動する。
【0077】
[インクカートリッジ100の装着動作]
以下、図9から図11を参照して、ベースユニット200に対するインクカートリッジ100の装着動作について説明する。ここに、図9は、インクカートリッジ100がカートリッジ装着部202に挿入される過程を示す断面図である。図10は、インクカートリッジ100がカートリッジ装着部202に装着されて固定された状態を示す断面図である。図11は、インクカートリッジ100の装着状態における大気連通バルブ80付近の拡大断面図である。なお、図11では、バネ86の図示が省略されている。
【0078】
図9に示されるように、フレーム204の開口207からカートリッジ装着部202内へ向けてインクカートリッジ100が挿入されると、インクカートリッジ100の前端がロックレバー230の当接部237に当接する。このとき、インクカートリッジ100から力を受けて、当接部237が上方へ押し上げられる。これにより、ロックレバー230が引きバネ219の引っ張り力に抗して矢印246へ回動する。この回動動作に連動して、入力部234が若干下方へ傾けられる。つまり、入力部234が水平姿勢から傾斜姿勢へ変化する。
【0079】
インクカートリッジ100がカートリッジ装着部202の奥部へ進入すると、まず、開口177に押圧部216の小径筒部266が挿入される。更に奥部へ進入すると、押圧部216の傾斜部268及び大径筒部267が開口177に順次挿入される。
【0080】
更にインクカートリッジ100が奥部へ進入すると、スライダ41の上端が光センサ182の光路184を遮蔽する。これにより、スライダ41が光センサ182によって検知される。その後、スライダ41の前面がカートリッジ装着部202の奥面に当接する。
【0081】
スライダ41がカートリッジ装着部202の奥面に当接した状態でインクカートリッジ100が挿入方向30へ押し付けられると、スライダ41と本体40との間に介在する図示しないコイルバネが圧縮される。これにより、スライダ41が奥面に当接して静止したままの状態で、本体40だけが挿入方向30へ移動する。つまり、本体40がスライダ41に近づく方向へ移動する。スライダ41は、相対的に、第1位置(図2(A)参照)から第2位置(図2(B)参照)へ移動する。
【0082】
本体40がスライダ41に最も近づく位置(第2位置)まで移動すると、つまり、本体40がカートリッジ装着部202の奥部まで挿入されると、図10に示されるように、ロッド84が押圧部216の先端に当接する。このとき、ロッド84の先端は、押圧部216の先端の窪み217に入り込む。このため、ロッド84の先端は窪み217によって確実に捉えられる。
【0083】
ロッド84が押圧部216から押圧力を受けると、ロッド84が後退して蓋体88がシール部材83から離れる。これにより、大気連通口81が開放されて、インク室102が大気と同圧になる。ロッド84が更に後退すると、図11に示されるように、押圧部216の先端の小径筒部266がシール部材83の大径孔63に嵌入される。このとき、大径孔63の内面と小径筒部266の外周面とが密着して、その密着部分(図11において破線で囲まれた部分)がシールされる。一方、大気連通口81は、窪み217の孔269から押圧部216の内孔、及びベースユニット200の背面側の開口218を経て吸収体251に通じている(図11の太線矢印参照)。したがって、大気連通口81が密閉されることはない。
【0084】
図10に示されるように、本体40の移動過程において、開口178からインク供給バルブ90のキャップ95が露出されて、インク供給口91にインクニードル209が挿通される。これにより、インク室102内のインクがインクニードル209、インクチューブ212を通じて画像記録装置側へ供給可能となる。また、光センサ181の光路183に検知部140が進入して、光路183を遮蔽する。これにより、検知部140の照射領域144(図4参照)に光が照射され得る。
【0085】
図10に示されるように、インクカートリッジ100がカートリッジ装着部202の奥部まで挿入される過程において、ロックレバー230の先端にある当接部237は、上壁163から傾斜リブ127に至る部分を摺接しながら相対的にインクカートリッジ100の後方へ移動する。そして、インクカートリッジ100がカートリッジ装着部202の奥部まで挿入されたときに、当接部237がストッパ125を乗り越える。このとき、引きバネ219の引っ張り力を受けて作用部236が矢印245方向へ回動されて、当接部237が台状部124の上面へ移る。これにより、当接部237がストッパ125に当接する。そのため、コイルバネ48,49によって本体40が後方へ移動しようとしてもその移動が規制される。その結果、図25に示されるように、ベースユニット200に対してインクカートリッジ100が固定される。
【0086】
このように、本実施形態では、インクカートリッジ100がカートリッジ装着部202に装着されたときに、押圧部216の小径筒部266がシール部材83の大径孔63に嵌入される。このとき、大径孔63の内面と小径筒部266の外周面とが密着して、その密着部分(図11において破線で囲まれた部分)が確実にシールされる。そのため、仮に、インクカートリッジ100が装着された状態で画像記録装置が傾けられたり、逆さにされたりした場合でも、大気連通口81付近からインクが漏れ出すことを抑止できる。また、インク連通孔81にインクが流入されたとしても、押圧部216の内孔を経て案内されて、開口218が流れ出たインクは吸収体251に吸収されて保持される。そのため、ベースユニット200の背面側がインクで汚れることを抑止できる。
【0087】
なお、上述した大気連通バルブ80は、大気連通口81を開閉するための一例であって、必ずしも本発明を実現するうえで必要なものではない。少なくとも、開口82に大気連通口81を形成するシール部材83が取り付けられていればよい。もちろん、シール部材83は、上述した構成のものに限定されない。例えば、シール部材83として環状に形成されたO型或いはY型のゴムリング(本発明の弾性部材の一例)を採用することも可能である。要するに、押圧部216が挿通された際に押圧部216の外周面に密着してその密着部分をシールするものであれば、如何なる形態のシール部材でも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るインク供給装置10の斜視図である。
【図2】図2は、インクカートリッジ100の外観構成を示す斜視図であり、(A)には、スライダ41が第1位置にある状態が示されており、(B)には、スライダ41が第2位置にある状態が示されている。
【図3】図3は、インクカートリッジ100の側面図であり、(A)には、スライダ41が第1位置にある状態が示されており、(B)には、スライダ41が第2位置にある状態が示されている。
【図4】図4は、本体40の構成を示す斜視図であり、(A)には、本体40の前面34側から見た斜視図が示されており、(B)には、本体40の後面35側から見た斜視図が示されている。
【図5】図5は、インクカートリッジ100の挿入方向前方部の部分拡大図である。
【図6】図6は、ベースユニット200の構成を示す斜視図である。
【図7】図7は、ベースユニット200の平面図である。
【図8】図8は、図7における切断線VIII−VIIIの断面図である。
【図9】図9は、インクカートリッジ100がカートリッジ装着部202に挿入される過程を示す断面図である。
【図10】図10は、インクカートリッジ100がカートリッジ装着部202に装着されて固定された状態を示す断面図である。
【図11】図11は、インクカートリッジ100の装着状態における大気連通バルブ80付近の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0089】
40・・・本体
41・・・スライダ
42・・・本体カバー
54・・・インク通路
55・・・空気通路
70・・・アーム
80・・・大気連通バルブ
81・・・大気連通口
83・・・シール部材
87・・・バルブ本体
90・・・インク供給バルブ
91・・・インク供給口
100・・・インクカートリッジ
140・・・検知部
200・・・ベースユニット
202・・・カートリッジ装着部
216・・・押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクが収容されるインク室を有するインクカートリッジと、
上記インクカートリッジを収納可能なカートリッジ収納部とを具備し、
上記インクカートリッジは、
上記カートリッジ収納部に対する挿入方向の前面に設けられた開口を有し、該開口から上記インク室に連続する気体通路と、
上記気体通路の内面に装着され、内孔を有する環状の弾性部材とを備え、
上記カートリッジ収納部は、
上記インクカートリッジの挿入方向の前面と対面する壁面に設けられ、上記インクカートリッジが当該カートリッジ収納部に収納された状態で先端が上記内孔に挿入され、且つ外周面が上記内孔の内面に密着される凸部を備えるインク供給装置。
【請求項2】
上記凸部は、その先端から上記カートリッジ収納部の背面に貫通する内孔を有する筒である請求項1に記載のインク供給装置。
【請求項3】
上記カートリッジ収納部の背面における上記凸部の開口付近に配設され、気体を通す通気性及び液体を吸収する吸収性を有する吸収体を更に備える請求項2に記載のインク供給装置。
【請求項4】
上記凸部は、上記壁面から上記インクカートリッジの挿入方向と同方向へ突出している請求項1から3のいずれかに記載のインク供給装置。
【請求項5】
上記弾性部材は、上記気体通路の開口の周縁に装着されている請求項1から4のいずれかに記載のインク供給装置。
【請求項6】
上記気体通路に設けられ、上記気体通路を閉塞する第1姿勢と上記気体通路を開放する第2姿勢との間で姿勢変化可能な弁体と、
上記気体通路を閉塞する方向へ上記弁体を付勢する付勢部材とを更に備え、
上記弁体は、上記インクカートリッジが上記カートリッジ収納部に収納された状態で上記凸部に押圧されることによって上記第1姿勢から上記第2姿勢に変化する請求項1から5のいずれかに記載のインク供給装置。
【請求項7】
上記弁体は、上記インクカートリッジの挿入方向と同方向へスライド可能に設けられている請求項6に記載のインク供給装置。
【請求項8】
上記弁体は、上記第1姿勢で上記気体通路の開口から外側へ突出する突出部を有し、
上記突出部は、上記インクカートリッジが上記カートリッジ収納部に収納された状態で上記凸部に押圧される請求項6又は7に記載のインク供給装置。
【請求項9】
インクが収容されるインク室を有するインクカートリッジを収納可能なカートリッジ収容装置であって、
上記インクカートリッジは、
上記カートリッジ収納部に対する挿入方向の前面に設けられた開口を有し、該開口から上記インク室に連続する気体通路と、
上記気体通路の内面に装着され、内孔を有する環状の弾性部材とを備えてなり、
当該カートリッジ収容装置は、
上記インクカートリッジの挿入方向の前面と対面する壁面に設けられ、上記インクカートリッジが当該カートリッジ収容装置に収納された状態で先端が上記内孔に挿入され、且つ外周面が上記内孔の内面に密着される凸部を備えるカートリッジ収容装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−132115(P2009−132115A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311812(P2007−311812)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】