説明

インク供給装置

【課題】センサにインクが付着することに起因する検知機能の低下を防止することが可能なインク供給装置を提供すること。
【解決手段】カートリッジケース110にスライド部材135と光センサ126とが設けられている。インクカートリッジ30には前壁40から突出する突出部材76が設けられている。カートリッジケース110にインクカートリッジ30が挿入される過程で、突出部材76がスライド部材135を押して挿入向き50側へ移動させると、このスライド部材135が光センサ126によって検知される。装着位置にインクカートリッジ30が装着された状態で、制御部90は、光センサ126の信号に基づいて突出部材76の有無を検知することで、装着状態の良否を判定する。光センサ126は突出部材135を直接検知しないので、漏れ出たインクが光センサ126まで運ばれにくくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクカートリッジを挿入可能なカートリッジ収容部を備えたインク供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクを用いて記録用紙に画像を記録するインクジェット記録装置(以下「記録装置」と略称する。)が広く知られている。この記録装置は、インクジェット記録方式の記録ヘッドを備えており、当該記録ヘッドは、供給されたインクを記録用紙へ向けてノズルから選択的に噴出する。これにより、記録用紙に画像が記録される。上記記録装置は、インクカートリッジが収容されるカートリッジ収容部を備える。インクカートリッジは、カートリッジ収容部に設けられた開口部を通じてカートリッジ収容部内に挿入される。インクカートリッジには、インクを外部へ供給するためのインク供給部が設けられている。インクカートリッジがカートリッジ収容部の奥まで挿入されて装着されると、インク供給部が開放されて、インクを記録ヘッドへ供給することが可能な状態となる。
【0003】
上記カートリッジ収容部には、特許文献1及び特許文献2に記載のように、1以上のセンサが設けられている。例えば、特許文献1には、インクカートリッジの種類を判定する判定処理に用いられるセンサが開示されており、特許文献2には、インクカートリッジの装着状態やインク残量を検知する用途に用いられるセンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−246999号公報
【特許文献2】特開2005−254734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のカートリッジ収容部では、インクカートリッジがカートリッジ収容部から取り出される際に、インク供給部から滲み出たインクが垂れ落ちて、カートリッジ収容部を汚す場合がある。カートリッジ収容部にインクが付着した状態で新しいインクカートリッジがカートリッジ収容部に挿入されると、垂れ落ちたインクを新しいインクカートリッジが挿入向きへ移動させて、当該インクをセンサまで運び、センサをインクで汚すおそれがある。また、新しいインクカートリッジは、内部の気圧が大気圧と異なるため、インクカートリッジが装着されてインク供給部が開放されたときに、インク供給部の周辺に付着したインクが気流の変動によって飛び散り、飛び散ったインク滴がセンサに付着するおそれがある。また、使用中のインクカートリッジを脱着する場合は、インクカートリッジの脱着時にインク供給部からインクが垂れ落ち、再度装着する際にインクをセンサまで運び、センサをインクで汚すおそれがある。このようにセンサにインクが付着すると、センサの検知機能が著しく低下するという問題が生じる。例えば、センサがリミットスイッチなどの接点スイッチである場合は、付着したインクにより接点が動作しなくなるという問題が生じ得る。また、センサが光学センサである場合は、受光部にインクが付着して、センシングできなくなる。また、導線やパターン配線にインクが付着して導線やパターン配線が腐食するおそれもある。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、センサにインクが付着することに起因する検知機能の低下を防止することが可能なインク供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明は、インクカートリッジを挿入可能なカートリッジ収容部を備えたインク供給装置として構成されている。このインク供給装置は、上記インクカートリッジが開口部を通じて上記カートリッジ収容部に挿入される過程において、一方端が上記インクカートリッジに接することにより第1位置から該第1位置よりも上記インクカートリッジの挿入向き側へ隔てられた第2位置へ移動可能な移動部材と、上記第2位置における上記移動部材の他方端の有無を検知するセンサーと、を具備する。
【0008】
この構成では、インクカートリッジが開口部からカートリッジ収容部の内部に挿入されると、インクカートリッジが移動部材の一方端に接する。この状態でインクカートリッジが更に挿入向きへ挿入されると、移動部材が第1位置から第2位置へ向けて移動する。移動部材が第2位置に到達すると、移動部材の他方端がセンサの検知領域に進入する。これにより、移動部材がセンサによって検知される。
【0009】
このように、本発明のインク供給装置では、インクカートリッジはセンサで直接に検知されず、カートリッジ収容部におけるインクカートリッジの有無が移動部材を介して間接的に検知される。このような移動部材が設けられているため、インクカートリッジの外面にインクが付着していても、センサにインクが付着し難いため、インクの付着によるセンサの検知機能の低下が防止される。
【0010】
なお、本明細書においては別段の定めがない限り、「方向」とは、例えば+,−のように相対する向きを有する両矢印の直線で表されるものであり、「向き」とは、方向のうち例えば+若しくは−のように1つのアローヘッドを有する矢印で表されるものである。
【0011】
(2) 上記カートリッジ収容部は、上記挿入向き側に設けられた奥壁から上記開口部へ向けて突出するインク供給管を有する。この場合、上記第1位置は、上記移動部材の他方端が上記インク供給管の突出端よりも上記挿入向き側へ隔てられた位置である。
【0012】
これにより、インクカートリッジの装着時にインク供給管からインクが垂れ落ちても、この垂れ落ちたインクが上記移動部材の他方端に付着しない。そのため、インクがセンサまで運ばれることはない。
【0013】
(3) 上記第2位置は、上記移動部材の他方端が上記カートリッジ収容部の上記挿入向き側に設けられた奥壁から上記挿入向き側へ隔てられた位置である。
【0014】
これにより、第2位置に移動部材が配置されたときに、他方端がカートリッジ収容部の外部に露出される。
【0015】
(4) 本発明のインク供給装置は、上記移動部材を上記挿入向きとは反対の脱抜向きへ付勢する付勢手段を更に備える。
【0016】
この構成では、移動部材が上記第2位置から上記第1位置側へ付勢されるため、移動部材がインクカートリッジによって押圧されていない状態では、移動部材は第1位置に配置される。つまり、移動部材がインクカートリッジによって押圧されていない状態では、移動部材がセンサの検知範囲から外れる。
【0017】
(5) 上記インクカートリッジがインクの供給が可能な装着位置に配置された状態で、当該インクカートリッジの外面に接して上記カートリッジ収容部に対する脱抜向きへの移動を規制する規制部材を更に備える。
【0018】
インクカートリッジが装着位置に到達すると、規制部材がインクカートリッジの外面に当接する。これにより、外面との間に生じる摩擦力や、外面との係合により生じる係合力などが作用して、インクカートリッジが脱抜向きへ移動することが制止される。この規制部材による制止が解除されると、付勢手段によって移動部材が脱抜向きへ付勢されることにより、インクカートリッジが同じ向きへ付勢される。これにより、インクカートリッジは、脱抜向きへ移動する。
【0019】
(6) 上記インクカートリッジと上記センサとの間に、上記カートリッジ収容部の上記挿入向き側に設けられた奥壁が配置されている。この場合、上記移動部材は、上記奥壁に形成された切欠口を介して上記第1位置と上記第2位置との間を移動可能に支持されている。
【0020】
これにより、インクカートリッジやインク供給管から漏れたインクが奥壁によって遮断されるため、漏れ出たインクがセンサ側へ流れにくくなる。
【0021】
(7) 上記移動部材の上記一方端、及び、上記インクカートリッジにおける上記一方端との接触部の双方若しくはいずれか一方に少なくとも一条の溝が形成されている。
【0022】
これにより、上記移動部材の上記一方端や、上記インクカートリッジにおける上記一方端との接触部に付着したインクは、溝に沿って流れる落ちるため、センサにインクが流れにくくなる。
【0023】
(8) 上記移動部材は、インクの供給が可能な装着位置に上記インクカートリッジが到達したときに上記第2位置に配置される。
【0024】
この場合、移動部材を検知したときにセンサから出力される出力信号は、インクカートリッジが装着位置に到達したことを示す。
【0025】
(9) 上記移動部材は、インクの供給が可能な装着位置に上記インクカートリッジが到達するまでに上記第2位置に配置される。
【0026】
この場合、移動部材を検知したときにセンサから出力される出力信号は、インクカートリッジがカートリッジ収容部に挿入されたことを示す。
【0027】
(10) 上記インクカートリッジは、上記カートリッジ収容部に対する挿入向きの前方側に、インクを外部に供給するインク供給部を有する。上記インクカートリッジにおける上記一方端との接触部は、上記カートリッジ収容部に対する上記インクカートリッジの装着姿勢において、上記インク供給部の下方に設けられている。
【0028】
この構成では、インク供給部から垂れ落ちたインクが上記接触部に付着し易い。そのため、当該構成に本発明は好適に用いられる。
【0029】
(11) 上記インクカートリッジにおける上記一方端との接触部は、上記インク供給部よりも上記挿入向きへ突出している。
【0030】
これにより、上記接触部にインクが付着し難くなる。
【0031】
(12) 上記センサは、光を受光可能な受光部と該受光部へ向けて光を発光する発光部とを有するものが考えられる。この場合、上記発光部から上記受光部に至る検知領域に検知対象が進入したことにより、その有無を検知する。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、センサにインクが付着することに起因する検知機能の低下を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、プリンタ10の内部構造を模式的に示す模式断面図である。
【図2】図2は、インクカートリッジ30の構成を示す模式図であり、(A)にはインクカートリッジ30の斜視図が示されており、(B)にはインクカートリッジ30の縦断面図が示されている。
【図3】図3は、インク供給装置100の縦断面構造を模式的に示す断面図である。
【図4】図4は、インクカートリッジ30がカートリッジケース110に装着される過程を時系列的に示す模式断面図である。
【図5】図5は、インクカートリッジ30がカートリッジケース110に装着される過程を時系列的に示す模式断面図である。
【図6】図6は、光センサ114,126,141の出力信号を示す波形図であり、(A)には、インクカートリッジ30の装着姿勢が正常なときの出力波形が示されており、(B)には、インクカートリッジ30の装着姿勢が異常なときの出力波形が示されている。
【図7】図7は、制御部90の構成の概略を示すブロック図である。
【図8】図8は、制御部90によって行われる状態判定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明が具体化された一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0035】
図1は、本発明の実施形態に係るインクカートリッジ30が適用されるプリンタ10の内部構造を模式的に示す模式断面図である。
【0036】
[プリンタ10の概要]
プリンタ10は、インクジェット記録方式に基づいて、記録用紙に対してインク滴を選択的に吐出することにより画像を記録するものである。図1に示されるように、プリンタ10は、インク供給装置100(本発明のインク供給装置の一例)を備えている。インク供給装置100には、カートリッジケース110(本発明のカートリッジ装着部の一例)が設けられており、このカートリッジケース110に4つのインクカートリッジ30(本発明のインクカートリッジの一例)が水平に保持可能である。カートリッジケース110の開口112の下端部にはカバー(不図示)が倒伏可能に軸支されている。カバーは、開口112の下端部を中心に回動することにより、開口112を開放する開放姿勢と閉塞する閉塞姿勢とに姿勢変化する。なお、インクカートリッジ30は、開口112からカートリッジケース110に挿入される。
【0037】
各インクカートリッジ30には、プリンタ10で使用可能なインクが貯留されている。具体的には、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色のインクがそれぞれの色に対応するインクカートリッジ30に貯留されている。図1に示されるように、インクカートリッジ30に貯留されたインクは、インクチューブ20を通じて記録ヘッド21に供給される。給紙ローラ23によって搬送路24へ送給された記録用紙は、搬送ローラ対25によってプラテン26上へ搬送され、記録ヘッド21によって、プラテン26上を通過する記録用紙に画像が記録される。プラテン26を通過した記録用紙は、排出ローラ対22によって、搬送路24の最下流側に設けられた排紙トレイ16に排出される。
【0038】
[インクカートリッジ30]
図2は、インクカートリッジ30の構成を示す模式図であり、(A)にはインクカートリッジ30の斜視図が示されており、(B)にはインクカートリッジ30の縦断面図が示されている。
【0039】
インクカートリッジ30はインクが貯留される容器である。インクカートリッジ30の内部空間がインク貯留室36である。インクカートリッジ30は、図2(A)に示された起立状態、つまり、図中の下側の面を底面とし、図中の上側の面を上面としてカートリッジケース110に対して矢印50で示される向き(以下「挿入向き50」と称する。)に挿入される。
【0040】
図2に示されるように、インクカートリッジ30は、略直方体形状に形成されている。詳細には、インクカートリッジ30は、幅方向51に細く、高さ方向52と奥行き方向53が上記幅方向51よりも大きい扁平形状に形成されている。インクカートリッジ30は、例えば、光が透過可能な樹脂で構成されている。詳細には、インクカートリッジ30は、可視光や赤外光などの光が透過可能な透明又は半透明の樹脂で構成されている。
【0041】
インクカートリッジ30は、略直方体形状に形成された残量検知部34を備える。残量検知部34を通じてインク貯留室36のインク量が視覚的にユーザに把握され、光学的に後述する光センサ114によって検知される。そのため、残量検知部34は、光が透過可能な部材で構成されている。本実施形態では、残量検知部34は、インクカートリッジ30の挿入向き50の前方側の前壁40と一体に形成されており、インクカートリッジ30の他の部分と同じように、光が透過可能な透明又は半透明の樹脂で構成されている。したがって、外部から残量検知部34に入射された光は、残量検知部34を透過することができる。残量検知部34は、前壁40において高さ方向52の中段付近から外向き(図2(B)の右向き)へ突出している。残量検知部34の幅(幅方向51の寸法)は、前壁40の幅よりも小さく形成されている。具体的には、残量検知部34は、後述する光センサ114(図3参照)の検知領域115に進入可能な幅に形成されている。
【0042】
図2(B)に示されるように、残量検知部34の内部は中空状に形成されている。残量検知部34の内部の空間35は、残量検知部34を構成する底壁34A、側壁34B、上壁34D、及び前壁34Eによって区画されている。空間35はインク貯留室36に連通している。この空間35に、後述するセンサーアーム60が備える遮光板62が挿入されている。
【0043】
センサーアーム60は、インクカートリッジ30の内部に設けられている。センサーアーム60は、合成樹脂で構成されている。センサーアーム60は、大別して、アーム本体63と、遮光板62と、フロート部64とを有する。センサーアーム60は、インク貯留室36のインクの有無に応じて遮光板62が残量検知部34の底壁34Aに当接する姿勢(以下「下位姿勢」と称する。)と底壁34Aから上方へ離れて上壁34Dに当接する姿勢(以下「上位姿勢」と称する。)との間で回動可能である。なお、図2(B)では、遮光板62が底壁34Aに当接した姿勢が実線で示され、遮光板62が底壁34Aから離れた姿勢が破線で示されている。残量検知部34内における遮光板62の位置をユーザに視覚的に認識させることにより、インク貯留室36に貯留されているインクの液量をユーザに判断させることができる。また、残量検知部34内における遮光板62の位置を後述する光センサ114(図3参照)に検知させることにより、後述する制御部90にインク貯留室36におけるインクの液量を判定させることができる。
【0044】
アーム本体63は、インクカートリッジ30の側壁41に支持された支軸66に回動可能に支持されている。これにより、センサーアーム60がインクカートリッジ30の内部において矢印67及び矢印68の向きへ揺動可能となる。
【0045】
フロート部64はアーム本体63の一方端に設けられている。フロート部64は、例えば、内部が中空状に形成されており、インクなどの液体に対して浮力を有する浮力体の役割を担っている。したがって、フロート部64は、インク量の増減に応じて上下に変位する。これにより、フロート部64の変位に応じてセンサーアーム60が回動する。なお、フロート部64を中空形状とせず、支軸66からフロート部64に至る部分或いはその一部分をインクの比重よりも小さい比重の素材で形成してもよい。
【0046】
遮光板62は、フロート部64とは反対側のアーム本体63の他方端に設けられている。センサーアーム60が図2(B)において時計方向(矢印67の向き)へ回動されると、遮光板62が空間35内を下方へ移動する。そして、遮光板62が残量検知部34の底壁34Aに当接し、上記下位姿勢(図2(B)の実線で示す姿勢)を維持する。一方、センサーアーム60が図2(B)において反時計方向(矢印68の向き)へ回動されると、遮光板62が上方へ移動して、底壁34Aから離れる。そして、遮光板62が上壁34Dに当接し、上記上位姿勢(図2(B)の破線で示す姿勢)を維持する。
【0047】
なお、遮光板62が上記下位姿勢にあるときは、遮光板62は側壁34Bの下部の照射部34Cに対向配置される。つまり、遮光板62と照射部34Cと幅方向51において重なる。一方、遮光板62が上記上位姿勢にあるときは、遮光板62は照射部34Cから上方へずれた位置に配置される。つまり、上記上位姿勢では、遮光板62と照射部34Cは幅方向51において重ならない。
【0048】
本実施形態では、インク貯留室36に所定量のインクがある場合に、センサーアーム60は、フロート部64の浮力によって矢印67の向きへ回動され、遮光板62が上記下位姿勢側へ移動し、下位姿勢を維持する。一方、インク貯留室36に所定量未満のインクしかない場合は、センサーアーム60は、フロート部64の重みで矢印68の向きへ回動され、遮光板62が上記上位姿勢側へ移動し、上位姿勢を維持する。このように上下方向へ遮光板62が移動することによって、後述する光センサ114の光が遮光板62によって遮断され又は残量検知部34を幅方向51へ通過可能となる。
【0049】
カートリッジケース110において、インクの供給が可能な位置(以下「装着位置」と称する。)にインクカートリッジ30が装着された状態で、後述する光センサ114(図3参照)の発光素子から残量検知部34の側壁34Bの照射部34Cへ向けて光が出射される。このとき、遮光板62が上記下位姿勢(図2(B)の実線で示された姿勢)にある場合は、光は遮光板62によって遮断される。一方、遮光板62が上記上位姿勢(図2(B)の破線で示された姿勢)にある場合は、光は遮光板62によって遮断されずに、光センサ114の受光素子に到達する。したがって、当該受光素子の出力信号の波形を解析したり、或いは出力信号の減衰量や有無を検知することによって、制御部90は、インク貯留室36内のインクが所定量以上あるかどうかを判定することができる。
【0050】
インクカートリッジ30の前壁40には、大気連通口71とインク供給部72(本発明のインク供給部の一例)とが設けられている。大気連通口71及びインク供給部72は、上述した残量検知部34とともに、いずれも前壁40に設けられている。大気連通口71は、前壁40において、残量検知部34より上方の壁面に形成されている。この大気連通口71は、前壁40を奥行き方向53に貫通する貫通孔であり、大気連通口71を介してインク貯留室36の空気層と大気とが連通される。インクカートリッジ30が未使用状態(例えば工場出荷状態)にあるときは、大気連通口71は周知のシール部材で塞がっている。インクカートリッジ30が使用される際には、ユーザによって上記シール部材が剥がされた後に、インクカートリッジ30はカートリッジケース110に装着される。上記シール部材が剥がされることにより、大気連通口71が大気と連通されて、インク貯留室36内の気圧が大気圧となる。インク供給部72は、残量検知部34より下方の壁面に設けられている。このインク供給部72は、弾性を有する環状部材で構成されており、前壁40から外方(挿入向き50側)へ突出している。インク供給部72の中心部に奥行き方向53に延びる貫通孔73が形成されており、この貫通孔73を通ってインク貯留室36からインクが外部へ供給される。
【0051】
インク供給部72は、図2(B)に示されるように、後述する突出部材76(本発明のの接触部の一例)の突出端と残量検知部34の突出端とを通る仮想平面56よりも、前壁40側に収まるように設けられている。つまり、インク供給部72は、仮想平面56を挿入向き50側へ越えていない。このため、インクカートリッジ30が前壁40側から落下しても、落下時の衝撃が直接にインク供給部72に加わらないため、インク供給部72が衝撃から保護される。
【0052】
インクカートリッジ30は、奥行き方向53へ延びるリブ43を有する。リブ43はインクカートリッジ30の上壁39に突設されている。リブ43は、上壁39の幅よりも小さい幅に形成されている。リブ43の前壁40側の端部44は、前壁40と同一面となる位置にあり、その反対側(挿入向き50の後方側)の端部45は、上壁39において奥行き方向53の中央部付近に位置している。リブ43の端部45は、カートリッジケース110の装着位置にインクカートリッジ30が装着された状態で、後述するロックレバー145が係合する部分である。
【0053】
[突出部材76]
インクカートリッジ30は、突出部材76を有する。突出部材76は、前壁40の下端に設けられている。インクカートリッジ30が上記装着位置に装着される姿勢にあるときに、突出部材76は、インク供給部72の下方に設けられている。突出部材76の幅は、前壁40の幅と同じサイズであり、前壁40から外方(挿入向き50側)へ顎状に突出している。本実施形態では、突出部材76は、インク供給部72よりも外方へ突出している。つまり、突出部材76の突出量は、インク供給部72の突出量よりも大きい。突出部材76は、カートリッジケース110にインクカートリッジ30が挿入される過程で、カートリッジケース110にスライド可能に支持されたスライド部材135(本発明の移動部材の一例、図3参照)に当接しつつ当該スライド部材135を挿入向き50へ押圧する。これにより、当該スライド部材135を挿入向き50と同じ向きへスライド移動させる。
【0054】
なお、インクカートリッジ30は、インク貯留室36を構成する透光性のある材質からなる内部容器と、その内部容器を両側面からカバーする透光性のない材質からなるカバー部材とから構成されている。本実施形態において、突出部材76は、そのカバー部材に一体に形成されており、そのカバー部材から挿入向き50へ突出されている。各図においては、インクカートリッジ30が模式的に現されているので、この内部容器とカバー部材とが区別されていない。
【0055】
突出部材76の挿入向き50側の端面77には、高さ方向52に伸びる複数の縦溝78が形成されている。縦溝78は、端面77に付着したインクを保持しつつ下方へ導くためのものである。縦溝78は、端面77に少なくとも一条形成されていれば足りるのであって、好ましくは、本実施形態の如く、端面77の全域に多数の縦溝78が形成されている構成が採用される。このような縦溝78が形成されているため、端面77にインクが付着した状態で、突出部材76とスライド部材135とが当接した場合でも、当接時にインクが飛び散ることが防止される。なお、縦溝78の本数や溝幅などは、インクの性質(粘性など)によって適宜設計される要素である。
【0056】
[インク供給装置100]
次に、図3を参照して、インクカートリッジ30が装着されるインク供給装置100の構成について説明する。ここに、図3は、インク供給装置100の縦断面構造を模式的に示す断面図である。
【0057】
インク供給装置100は、プリンタ10に設けられている。インク供給装置100は、プリンタ10が備える記録ヘッド21(図1参照)へインクを供給するものである。インク供給装置100は、複数のインクカートリッジ30を装着可能なカートリッジケース110を備えている。以下、カートリッジケース110について詳細に説明する。
【0058】
[カートリッジケース110]
図3に示されるように、カートリッジケース110の内部に、インクカートリッジ30が収容される。インクカートリッジ30は、カートリッジケース110内において、水平方向へ移動可能に支持される。カートリッジケース110は、その前面に開口112(本発明の開口部の一例)を有する。開口112を通じてカートリッジケース110の内部にインクカートリッジ30が挿入される。
【0059】
カートリッジケース110の奥側の中央部に、光センサ114が設けられている。光センサ114は、カートリッジケース110の背面(挿入向き50側の面)を構成する奥壁117に設けられている。光センサ114は、カートリッジケース110に装着されたインクカートリッジ30内に配置されているセンサーアーム60の遮光板62を検知するためのものである。本実施形態では、光センサ114として、発光素子及び受光素子(ともに不図示)を有する透過型のフォトインタラプタが用いられている。発光素子は、受光素子へ向けて可視光又は赤外光などの光を発光するものであり、例えば発光ダイオードが該当する。また、受光素子は、光を受光可能なものであり、例えばフォトトランジスタである。これら発光素子及び受光素子は、互いに水平方向に対向するように配置されている。光センサ114は、インクカートリッジ30毎に設けられている。つまり、カートリッジケース110に4つのインクカートリッジ30が装着可能である場合は、4つのインクカートリッジ30それぞれに対応する4つの光センサ114がカートリッジケース110に設けられている。なお、光センサ114に代えて、反射型のフォトインタラプタが採用されてもよい。
【0060】
光センサ114は、後述する制御部90(図4参照)に電気的に接続されており、受光素子から出力される電気信号が出力信号として制御部90に入力される。本実施形態では、カートリッジケース110の装着位置にインクカートリッジ30が装着されると、光センサ114の発光素子から受光素子に至る検知領域115に残量検知部34の下部が進入する。つまり、残量検知部34の側壁34Bの照射部34C(図2参照)が検知領域115内に配置される。検知領域115に残量検知部34が進入したときの光センサ114の出力信号(受光量)に基づいて、制御部90は、インクの残量が所定量になったかどうかを判定する。
【0061】
カートリッジケース110の奥側の下部に、光センサ126(本発明のセンサの一例)が設けられている。光センサ126は、奥壁117の背面側(図3の右側)に設けられている。奥壁117を境に、挿入向き50側に光センサ126が配置されており、挿入向き50とは反対の脱抜向き54側にインクカートリッジ30の収容スペースが確保されている。したがって、カートリッジケース110にインクカートリッジ30が装着された状態において、インクカートリッジ30と光センサ126との間に奥壁117が設けられている。なお、本実施形態では、本発明のセンサの一例として光センサ126を採用しているが、この光センサ126に代えて、赤外線センサや、リミットスイッチなどの接点スイッチ、或いはパルス信号を利用した近接スイッチなどを用いてもよい。
【0062】
光センサ126はカートリッジケース110に装着されたインクカートリッジ30の突出部材76の有無を検知するためのものである。詳細には、スライド部材135の端部138を直接検知することによって、突出部材76の有無を間接的に検知する。本実施形態では、光センサ126として、互い水平方向に対向するように配置された発光素子及び受光素子を有する透過型のフォトインタラプタが用いられている。光センサ126は、後述する制御部90(図4参照)に電気的に接続されており、受光素子から出力される電気信号が出力信号として制御部90に入力される。光センサ126は、インクカートリッジ30毎に設けられている。つまり、カートリッジケース110に4つのインクカートリッジ30が装着可能である場合は、4つのインクカートリッジ30それぞれに対応する4つの光センサ126がカートリッジケース110に設けられている。なお、光センサ126に代えて、反射型のフォトインタラプタが採用されてもよい。
【0063】
[スライド部材135]
カートリッジケース110には、スライド部材135が設けられている。スライド部材135は、インクカートリッジ30ごとに設けられている。つまり、カートリッジケース110に4つのインクカートリッジ30が装着可能である場合は、4つのインクカートリッジそれぞれに対応する4つのスライド部材135が設けられている。
【0064】
スライド部材135は、インクカートリッジ30及びカートリッジケース110とは、別部材として構成されている。このスライド部材135は、可視光又は赤外光などの光を透過しにくい部材で構成されている。スライド部材135は、カートリッジケース110の底壁132の奥側に形成された凹陥部130に配置されている。奥壁117の下部に奥壁117を貫通する開口129(本発明の切欠口の一例)が形成されている。開口129は、奥壁117の下部が切り欠かれることで構成される。凹陥部130は、開口129に連続している。スライド部材135は、凹陥部130の底面に沿ってインクカートリッジ30の挿抜方向105と同方向へスライド可能に支持されている。このスライド部材135は、図3(A)に示されるように、スライド部材135における挿入向き50側の端部138(本発明のスライド部材の他方端に相当)が光センサ126の発光素子から受光素子に至る検知領域127から開口129側へ隔てられた第1位置(図4に示される位置)と、端部135が検知領域127に配置された第2位置(第1位置から挿入向き50側へ隔てられた位置、図5に示される位置)との間でスライドするように移動可能である。言い換えると、スライド部材135は、開口129を通じて上記第1位置と上記第2位置との間を移動可能である。このような移動を実現するべく、スライド部材135のスライド範囲内に光センサ126の検知領域127が位置するように、光センサ126が配置されている。
【0065】
なお、本実施形態では、上記第1位置は、図4に示されるように、スライド部材135の端部138が、後述するインクニードル122(本発明のインク供給管の一例)の突出端123(本発明の突出端に相当)よりも挿入向き側へ隔てられた位置に設定されている。このため、インクカートリッジ30の取り外し時にインクニードル122から垂れ落ちたインクがスライド部材135の端部138に付着しない。そのため、インクがセンサ126に流れることはない。
【0066】
スライド部材135には、インクカートリッジ30の挿入過程で突出部材76によって押圧される被押圧部137(本発明のスライド部材の一方端に相当)が設けられている。被押圧部137は、スライド部材135の本体136から上方へ突出している。被押圧部137は、カートリッジケース110におけるインクカートリッジ30の挿入経路に配置されている。詳細には、被押圧部137は、インクカートリッジ30の突出部材76の進入経路に配置されている。
【0067】
凹陥部130にはコイルバネ139(本発明の付勢手段の一例)が設けられている。コイルバネ139の一端が、開口112側に位置する凹陥部130の端部133に連結されている。コイルバネ139の他端は、スライド部材135に連結されている。コイルバネ139が自然長である場合、つまり、スライド部材135に外力が加えられていない状態では、スライド部材135は光センサ126に対して端部133側の第1位置に配置されている。一方、インクカートリッジ30がカートリッジケース110に挿入される過程で、インクカートリッジ30の突出部材76の端面77が被押圧部137に接して押圧する。突出部材76から押圧力を受けると、スライド部材135が挿入向き50へ移動するとともにコイルバネ139が伸びる。このとき、コイルバネ139は圧縮方向にバネ力を発生させて、スライド部材135を脱抜向き54へ付勢する。そして、インクカートリッジ30がインクの供給が可能な装着位置に到達すると、スライド部材135が第2位置に到達して、スライド部材135の端部138が検知領域127に進入する。これにより、検知領域127を通る光が端部138によって遮断される。検知領域127にスライド部材135の端部138が進入したときの光センサ126の出力信号(受光量)に基づいて、制御部90は端部138が検知領域127に到達した、すなわち、インクカートリッジ30が装着位置に到達したと判定できる。
【0068】
[ロック機構144]
カートリッジケース110にロック機構144(本発明の規制部材の一例)が設けられている。ロック機構144は、インクカートリッジ30が装着位置に配置された状態で、そのインクカートリッジ30が挿入向き50とは反対の脱抜向き54へ移動することを規制して、上記装着位置でインクカートリッジ30を制止させる役割を担う。このロック機構144は、カートリッジケース110において、光センサ126とは鉛直方向に関して反対側に配置されている。言い換えると、光センサ126は、鉛直方向に関してロック機構144とは反対側に配置されている。詳細には、ロック機構144は、開口112の上部に設けられている。
【0069】
ロック機構144は、大別すると、ロックレバー145と、ロックレバー145に付勢力を付与するコイルバネ148とにより構成されている。ロックレバー145は、図3(B)に示されるアンロック位置と、図3(A)に示されるロック位置との間で回動可能に支持されている。ロックレバー145に外力が加えられていない状態では、ロックレバー145はコイルバネ148によって常にロック位置側へ付勢されている。ロックレバー145の一端に係合端部146が設けられている。ロック機構144は、係合端部146がインクカートリッジ30の端部45と係合することにより、カートリッジケース110におけるインクカートリッジ30のロックが実現される。
【0070】
ロック機構144の近傍に、光センサ141が設けられている。光センサ141は、上述した光センサ114及び光センサ126と同様に構成されており、検知領域142を有する。ロックレバー145の係合端部146とは反対側に被検知部147が設けられている。光センサ141は、被検知部147の回動範囲に検知領域142が位置するように配置されている。したがって、被検知部147は、ロックレバー145の位置に応じて検知領域142に進入可能である。本実施形態では、ロックレバー145が上記ロック位置にあるときに被検知部147が検知領域142に配置され、ロックレバー145が上記アンロック位置にあるときに検知領域142から退避した位置に配置される。被検知部147が検知領域142に進入又は検知領域142から退出したときの光センサ141の出力信号(受光量)に基づいて、制御部90は、ロックレバー145がロック位置にあるかどうかを判定することができる。
【0071】
[インクニードル122]
奥壁117の下部には、カートリッジケース110の内部から背面側へ貫通する孔119が形成されている。孔119のカートリッジケース110内部側にインク供給部72と連結する連結部121が設けられている。連結部121には、管状のインクニードル122が取り付けられている。インクニードル122は、開口122へ向けて、つまり、脱抜向き54へ突出している。孔119の背面側にインクチューブ20(図1参照)が接続されている。カートリッジケース110にインクカートリッジ30が装着されると、インクニードル122がインク供給部72の貫通孔73に挿入されて、インク供給部72と連結部121とが連結する。これにより、貫通孔73からインクチューブ20に至るインク通路が形成される。
【0072】
[インクカートリッジ30の装着動作]
以下、図4から図6を参照して、インクカートリッジ30をカートリッジケース110に装着する動作について説明する。ここに、図4及び図5は、インクカートリッジ30がカートリッジケース110に装着される過程を時系列的に示す模式断面図である。図6は、光センサ114,126,141の出力信号を示す波形図である。
【0073】
インクカートリッジ30がカートリッジケース110に対して挿入向き50へ挿入されると、まず、リブ43がロックレバー145の係合端部146に当接する。これにより、ロックレバー145が反時計方向に回動し、係合端部146が上方へ持ち上げられて上記ロック位置(図3(A)参照)から上記アンロック位置に配置される(図4(A)参照)。持ち上げられた係合端部146は、リブ43の上面に配置される。その後、インクカートリッジ30の更なる挿入動作に伴い、係合端部146は、リブ43の上面を滑る。インクカートリッジ30が挿入される前は、ロックレバー145は上記ロック位置(図3(A)参照)にあり、ロックレバー145の被検知部147によって検知領域142の光が遮断されている。そのため、光センサ141の出力信号のレベルはLOWとなっている(図6(A)参照)。上述のごとく、インクカートリッジ30が挿入されてロックレバー145が上記アンロック位置に配置されると、被検知部147が検知領域142から退出する。そのため、光センサ141の出力信号のレベルはLOWからHIに変化する(図6(A)のT0)。
【0074】
更にインクカートリッジ30が挿入されると、残量検知部34の前壁34Eが光センサ114の検知領域115を通過する(図4(B)参照)。このとき、光センサ114の出力信号のレベルは、前壁34Eが検知領域115を通過中はHIからLOWに変化し(図6(A)のT1)、前壁34Eが検知領域115を通り過ぎるとLOWからHIに戻る(図6(A)のT2)。前壁34Eが検知領域115を通過する間は、光は前壁34Eを幅方向51へ進む。前壁34Eには、光を透過しにくい材質で構成されたカバー或いはシール等の部材が取り付けられており、前壁34Eを幅方向51へ進む光は、前壁34Eによって吸収或いは反射されて減衰される。そのため、受光素子では、所定値以上の受光量が得られず、LOWレベル信号が出力される。前壁34Eは、上述した部材を有するものに限られず、例えば、発光素子から出射された光の全部又は一部を反射、回折させるなどして光の向きを変えることにより受光素子に至る光の光量を遮断又は低下させたり、また、すりガラスや絞り、スリットなどで光を減衰させたりして、受光素子に到達する光量を所定量未満にさせるものであってもよい。
【0075】
また、図4(B)に示されるように、突出部材76がスライド部材135の被押圧部137に当接して、突出部材76が被押圧部137を挿入向き50と同じ向きへ押し付ける。
【0076】
更にインクカートリッジ30が挿入向き50へ挿入されると、スライド部材135は、突出部材76から押圧力を受けて挿入向き50と同じ向きへ移動し始める。このとき、スライド部材135の移動とともに、コイルバネ139が伸長する。コイルバネ139が伸長することにより、コイルバネ139はスライド部材135に対して圧縮方向のバネ力を与える。つまり、スライド部材135は、コイルバネ139による圧縮方向のバネ力によって、挿入向き50とは反対の脱抜向き54へ弾性付勢される。
【0077】
そして、図5(C)に示されるように、インクカートリッジ30がカートリッジケース110の奥部まで挿入されて、インクカートリッジ30が装着位置に到達すると、残量検知部34の照射部34Cが光センサ114の検知領域115に進入する。このとき、インク貯留室36に所定量以上のインクが貯留している場合、つまり、遮光板62が下位姿勢(実線参照)にある場合は、遮光板62によって光センサ114の光が遮断される。この場合、図6(A)に示されるように、光センサ114の出力信号のレベルは、HIからLOWに変化する(図6(A)のT3)。一方、インク貯留室36のインクが所定量未満である場合、つまり、遮光板62が上位姿勢(破線参照)にある場合は、遮光板62によって光センサ114の光が遮断されないので、信号のレベルはHIを維持する(図6(A)の破線参照)。
【0078】
また、インクカートリッジ30が装着位置まで挿入される過程で、スライド部材135が突出部材76によって押圧されることによって、スライド部材135が光センサ126の検知領域127に進入する。このとき、光センサ126の出力信号のレベルは、HIからLOWに変化する(図6(A)のT4)。
【0079】
更にまた、インクカートリッジ30が装着位置に到達すると、リブ43の端部45がロックレバー145の係合端部146を通り過ぎる。これにより、係合端部146がリブ43によって支持されなくなるので、リブ43によって持ち上げられていたロックレバー145が下方へ回動し、係合端部146がインクカートリッジ30の上壁39の上面に配置される。このとき、ロックレバー145の被検知部147によって検知領域142の光が遮断される。これにより、光センサ141の出力信号のレベルはHIからLOWに変化する(図6(A)のT5)。
【0080】
その後、インクカートリッジ30を挿入向き50への押圧力が解除されると、インクカートリッジ30は、コイルバネ139による脱抜向き54へのバネ力を受ける。このバネ力は、コイルバネ139からスライド部材135、被押圧部137を介してインクカートリッジ30の突出部材76に伝達される。図5(D)に示されるように、このバネ力を受けたインクカートリッジ30は、脱抜向き54へ移動する。このとき、インクカートリッジ30は、ロックレバー145の係合端部146とリブ43の端部45との間に設けられた隙間分だけ脱抜向き54へ移動するが、係合端部146と端部45とが当接係合することによって、インクカートリッジ30は、脱抜向き54への移動が制止される。
【0081】
[制御部90]
以下、図7を参照して、制御部90の概略構成を説明する。ここに、図7は、制御部90の構成の概略を示すブロック図である。
【0082】
制御部90は、プリンタ10の全体動作を制御するものである。制御部90は、図7に示されるように、CPU91、ROM92、RAM93、EEPROM94、ASIC95を主とするマイクロコンピュータとして構成されている。
【0083】
ROM92には、CPU91がプリンタ10の各種動作を制御するためのプログラムや、後述する状態判定処理を実行するためのプログラムなどが格納されている。RAM93は、CPU91が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記録する記憶領域、或いはデータ処理の作業領域として使用される。EEPROM94には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
【0084】
ASIC95には、タイマ96が内蔵されている。タイマ96は、所定の信号が入力されたときに、予め設定された時間(本実施形態ではΔt)の計時を開始し、当該設定時間が経過した場合に、そのことを示す信号を出力するものである。なお、タイマ96に代えて、上述の機能を有する手段、例えば遅延回路などが採用されてもよい。
【0085】
ASIC95には、光センサ126や光センサ141が接続されている。なお、図7には図示されていないが、給紙ローラ23や搬送ローラ対25等(図1参照)の各ローラを駆動させる駆動回路や、プリンタ10に画像記録指示等を入力するための入力部や、プリンタ10に関する情報を表示する表示部なども接続されている。
【0086】
光センサ126は、受光素子で受けた光の強度に応じたアナログの電気信号(電圧信号又は電流信号)を出力する。出力された出力信号は、制御部90に入力されて、当該制御部90において、その電気的レベル(電圧値又は電流値)が所定の閾値以上の場合にHIレベル信号と判定され、所定の閾値未満の場合にLOWレベル信号と判定される。本実施形態では、上記出力信号は、光センサ126の検知領域127において光が遮断されている場合にLOWレベル信号と判定され、遮断されていない場合にHIレベル信号と判定される。
【0087】
光センサ141は、上述の光センサ126と同じ構成を有し、受光素子で受けた光の強度(受光量)に応じた電気信号を出力するものである。詳細については説明を省略する。
【0088】
[状態判定処理]
本実施形態では、光センサ126及び光センサ141それぞれの出力信号に基づいて、カートリッジケース110に装着されるインクカートリッジ30の装着状態が良好であるか不良であるかを判定する状態判定処理が制御部90によって判定される。
【0089】
以下、図8のフローチャートを参照しながら、上記状態判定処理の手順について説明する。ここに、図8は、制御部90によって行われる状態判定処理の手順の一例を示すフローチャートである。この状態判定処理は、図中のステップS1から開始される。
【0090】
まず、ステップS1では、カートリッジケース110にインクカートリッジ30が装着位置に装着されたかどうかが判断される。言い換えると、インクカートリッジ30がロック機構144によって装着位置でロックされたかどうかが判断される。具体的には、光センサ141の信号レベルがHIからLOWに変化したかどうかによって判断される。ここで、インクカートリッジ30が装着位置でロックされたと判断されると(S1のYes)、次のステップS2において、タイマ96によるカウントが開始される。
【0091】
タイマ96によって設定時間Δtがカウントされると(S3のYes)、次のステップS4では、設定時間Δtが経過したことをトリガとして、光センサ126の信号レベルがHIであるかLOWであるかが判断される。この判断は、インクカートリッジ30の装着状態が良好か不良かを判定するために行われる。例えば、図6(A)を参照すると、時刻T6における光センサ126の信号レベルがLOWである場合は、インクカートリッジ30がカートリッジケース110において良好に装着されていると判定される。一方、図6(B)を参照すると、時刻T6における光センサ126の信号レベルがHIである場合は、インクカートリッジ30が装着位置でロックされているが、突出部材76が検知できていないので、インクカートリッジ30の装着状態が不良であると判定される。
【0092】
ステップS4において、光センサ126の信号レベルがLOWであると判断された場合は、装着不良を示すビットフラグがCPU91のレジスタ等にセットされる(S5)。一方、ステップS4において、光センサ126の信号レベルがHIであると判断された場合は、装着良好を示すビットフラグがCPU91のレジスタ等にセットされる(S6)。なお、セットされたビットフラグが示す各装着状態は、例えば、プリンタ10が具備する表示部や、プリンタ10にネットワーク接続された情報処理装置(パーソナルコンピュータ)などに出力される。
【0093】
[インクカートリッジ30の脱抜動作]
インクカートリッジ30がカートリッジケース110から脱抜される際には、ユーザがロックレバー145における被検知部147の端部を押し下げる。これにより、ロックレバー145が反時計方向へ回動して、ロック位置(図3(A)参照)からアンロック位置(図3(B)参照)へ向かって移動する。ロックレバー145がアンロック位置に到達すると、係合端部146がインクカートリッジ30のリブ43よりも上方に配置される。これにより、係合端部146がリブ43の端部45から離れる。これと同時に、伸長されていたコイルバネ139が収縮し始まる。これにより、コイルバネ139に発生していた脱抜向き54への弾性付勢力がスライド部材135の本体136、及び被押圧部137を経てインクカートリッジ30に伝達される。この弾性付勢力を受けて、インクカートリッジ30は、装着位置から脱抜向き54へ移動する。インクカートリッジ30は、移動時に支持面等から摩擦力を受けることによって、徐々に移動速度が低下する。そして、インクカートリッジ30の後壁側の一部が開口112から外部へ飛び出した位置で停止する。これにより、ユーザは、インクカートリッジ30の飛び出した部分を指で摘むなどして、インクカートリッジ30をカートリッジケース110から容易に取り出すことができる。
【0094】
なお、本実施形態では、インクカートリッジ30が装着位置に到達したときにスライド部材135が第2位置に配置される構成について説明した。この場合は、制御部90によって、インクカートリッジ30が装着位置に到達したことが検知される。これに対して、インクカートリッジ30が装着位置に到達するまでにスライド部材135が第2位置に配置される構成としてもよい。この場合は、制御部90によって、インクカートリッジ30がカートリッジケース110に挿入されたことが検知される。
【0095】
[実施形態の効果]
上述したように本実施形態が構成されているため、インクカートリッジ30は光センサ126によって直接に検知されず、カートリッジケース110におけるインクカートリッジ30の有無がスライド部材135を介して間接的に検知される。このようなスライド部材135が設けられているため、インクカートリッジ30の外面や突出部材76の端面77にインクが付着していても、光センサ126にインクが付着し難いため、インクの付着によるセンサの検知機能の低下や、検知不良が防止される。
【0096】
なお、上述の各実施形態では、光センサ126,141の各検知領域に進入するスライド部材135や被検知部147は、光を遮断し、或いは光を通過させるものとしたが、これらは、必ずしも各光センサ126,141において発光素子から受光素子に到達する光量を完全に遮断する必要はなく、例えば、発光素子から受光素子へ向かって出射された光の全部又は一部を反射又は回折するなど、光の向きを変えて受光素子に至る光量を遮断又は低下させたり、磨りガラスや絞りのような部材によって光を減衰させたりして、受光素子が受光する光量をある程度以下とするものであってもよい。
【0097】
[変形例]
なお、上述の実施形態では、突出部材76の端面77に複数の縦溝78が形成された例について説明したが、上記縦溝78と同様に縦溝をスライド部材135の被押圧部137に形成してもよい。この縦溝は、被押圧部137において、突出部材76の端面77が接触する領域に形成されている。当該領域に上記縦溝が形成されることによって、仮に端面77から被押圧部137にインクが移っても、そのインクは縦溝内に保持されつつ、下方へ導かれる。これにより、突出部材76と被押圧部137とが当接した場合でも、当接時にインクが飛び散ることが防止される。
【符号の説明】
【0098】
10・・・プリンタ
30・・・インクカートリッジ
72・・・インク供給部
76・・・突出部材
77・・・端面
78・・・縦溝
90・・・制御部
100・・・インク供給装置
110・・・カートリッジケース
126・・・光センサ
135・・・スライド部材
137・・・被押圧部
138・・・端部
139・・・コイルバネ
141・・・光センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクカートリッジを挿入可能なカートリッジ収容部を備えたインク供給装置であって、
上記インクカートリッジが開口部を通じて上記カートリッジ収容部に挿入される過程において、一方端が上記インクカートリッジに接することにより第1位置から該第1位置よりも上記インクカートリッジの挿入向き側へ隔てられた第2位置へ移動可能な移動部材と、
上記第2位置における上記移動部材の他方端の有無を検知するセンサーと、を具備するインク供給装置。
【請求項2】
上記カートリッジ収容部は、上記挿入向き側に設けられた奥壁から上記開口部へ向けて突出するインク供給管を有し、
上記第1位置は、上記移動部材の他方端が上記インク供給管の突出端よりも上記挿入向き側へ隔てられた位置である請求項1に記載のインク供給装置。
【請求項3】
上記第2位置は、上記移動部材の他方端が上記カートリッジ収容部の上記挿入向き側に設けられた奥壁から上記挿入向き側へ隔てられた位置である請求項1又は2に記載のインク供給装置。
【請求項4】
上記移動部材を上記挿入向きとは反対の脱抜向きへ付勢する付勢手段を更に備える請求項1から3のいずれかに記載のインク供給装置。
【請求項5】
上記インクカートリッジがインクの供給が可能な装着位置に配置された状態で、当該インクカートリッジの外面に接して上記カートリッジ収容部に対する脱抜向きへの移動を規制する規制部材を更に備える請求項1から4のいずれかに記載のインク供給装置。
【請求項6】
上記インクカートリッジと上記センサとの間に、上記カートリッジ収容部の上記挿入向き側に設けられた奥壁が配置されており、
上記移動部材は、上記奥壁に形成された切欠口を介して上記第1位置と上記第2位置との間を移動可能に支持されている請求項1から5のいずれかに記載のインク供給装置。
【請求項7】
上記移動部材の上記一方端、及び、上記インクカートリッジにおける上記一方端との接触部の双方若しくはいずれか一方に少なくとも一条の溝が形成されている請求項1から6のいずれかに記載のインク供給装置。
【請求項8】
上記移動部材は、インクの供給が可能な装着位置に上記インクカートリッジが到達したときに上記第2位置に配置される請求項1から7のいずれかに記載のインク供給装置。
【請求項9】
上記移動部材は、インクの供給が可能な装着位置に上記インクカートリッジが到達するまでに上記第2位置に配置される請求項1から7のいずれかに記載のインク供給装置。
【請求項10】
上記インクカートリッジは、上記カートリッジ収容部に対する挿入向きの前方側に、インクを外部に供給するインク供給部を有し、
上記インクカートリッジにおける上記一方端との接触部は、上記カートリッジ収容部に対する上記インクカートリッジの装着姿勢において、上記インク供給部の下方に設けられている請求項1から9のいずれかに記載のインク供給装置。
【請求項11】
上記インクカートリッジにおける上記一方端との接触部は、上記インク供給部よりも上記挿入向きへ突出している請求項10に記載のインク供給装置。
【請求項12】
上記センサは、光を受光可能な受光部と該受光部へ向けて光を発光する発光部とを有し、上記発光部から上記受光部に至る検知領域に検知対象が進入したことにより、その有無を検知するものである請求項1から11のいずれかに記載のインク供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−228375(P2010−228375A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80582(P2009−80582)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】