説明

インク吐出部の回復装置、インク吐出装置、並びにインク吐出部の回復方法

【課題】インク吐出部の吐出面に付着したインクを確実に払拭除去することができ、吐出面を容易に直ちに初期の表面状態に復帰させることができるインク吐出部の回復装置を提供する。
【解決手段】インク吐出部1の吐出口9から押し出されるインクを吸収し透過させるためのインク吸収部材5と、インク吐出部にインクを供給し吐出口からインクを押し出すためのインク供給手段2と、不連続に接触する少なくとも2つの接触部3a、3b、3cを有する吸液性の払拭部材3をインク吐出部の吐出面21に摺接させることにより該吐出面に付着したインクを払拭除去するための払拭手段と、払拭部材に洗浄液を供給する洗浄液供給手段4と、を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出して画像を形成するインク吐出部の回復装置、インク吐出装置、並びにインク吐出部の回復方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写機、ファクシミリ等の機能を有する記録装置、あるいはコンピュータやワードプロセッサ等を含む複合電子機器やワークステーションなどの出力機器として用いられる記録装置は、画像情報に基づいて紙やプラスチックシートなどの記録媒体に画像を記録していくように構成されており、種々の記録方式のものが使用されている。そのうち、インクジェットヘッド(インク吐出部)から記録媒体へインクを吐出して画像を形成するインクジェット記録装置(インク吐出装置)は、ヘッドのコンパクト化が容易であり、高精細な画像を高速で記録することができる。また、普通紙に特別な処理をせずに記録することができ、ノンインパクト方式であるため騒音が少なく、しかも多種類のインクを使用してカラー画像を形成するのが容易であるなどの利点を有している。このようなインク吐出装置は、記録紙、プラスチックシート、布、不織布、ガラス基板等の記録媒体に画像を形成する装置として使用されている。
【0003】
近年、インクジェット方式の描画装置(画像形成装置)を工業用のパターニングに利用することが盛んになってきている。このようなインク吐出装置によれば、パターニングに際して記録媒体の必要な部分にのみインクを付与することが可能となる。また、インク吐出装置を採用することにより、プリント製品及びその製造装置のコストを抑えることが可能となり、かつプリント製品の材料費を低減することも可能となる。
【0004】
特に、インク吐出装置を工業用に適用する場合は、インクの吐出状態の安定性が極めて重要になってくる。インクジェットプリンタ等のインク吐出装置においては、インク吐出部内部あるいは吐出口(ノズル)周辺部のインク状態の変化によってインク吐出状態が大きく変化することがある。この場合の「インク状態の変化」とは、インクジェットヘッド等のインク吐出部内に気泡が溜まったり、インクが乾燥して粘度が増加したり、あるいはインク内の溶解成分が固化するなどの現象を指す。このような現象が生じた場合には、ヘッド内あるいは吐出口周辺部のインクを初期状態に戻す必要がある。具体的には、ヘッドのインク供給側から加圧したり、ヘッドの吐出口側から吸引することにより、変質したインクをヘッドから押し出したり、吐出口近傍に付着した固形分を除去する必要がある。このような処理操作は回復動作と呼ばれている。
【0005】
この回復動作後のインク吐出部の吐出面(ノズル面)には、吐出口から押し出された変質インクや吸引された変質インクを含むインクが付着している。このように吐出口(ノズル)周辺に付着したインクは、プリント時の吐出不良の原因となり得ることから、除去する必要がある。具体的には、吐出面をブレードなどの清掃部材で払拭することにより吐出口周辺の付着インクを除去するワイピング動作が行われている。このワイピング動作の1つとして、特許文献1には、吸液性を有する払拭部材に対し上方より洗浄液を供給し、該払拭部材内の洗浄液の吸収量を調整しながら吐出面を払拭する動作が行われている。
【0006】
図5はインク吐出部を払拭清掃する回復装置の従来例を示す図である。図5において、インク吐出部であるインクジェットヘッド111に対してインク供給系112よりインクが供給される。インク吐出部111は主走査方向である図4中の図示左右方向に移動可能であり、該吐出部111の吐出面121にはヘッド移動方向と交差する方向に配列された複数の吐出口からなる吐出口列が設けられている。回復装置100のベース部材116にはインク受け(回復桶)115及び払拭部材113が装着されている。ヘッド111の吐出面(吐出口が配列された面)121を払拭する回復動作は、ベース部材116を平行移動させて払拭部材113を該吐出面に摺接させることによって行われる。このベース部材116の平行移動は、吐出面121の吐出口配列方向(吐出口列の方向)と交差する方向、すなわち図5中の図示左右方向に行われる。
【0007】
払拭部材113は多孔質材等の吸液性に優れた材質で形成されている。この払拭部材113の上方には、該払拭部材に洗浄液を供給するための洗浄液供給口114が配設されている。また、払拭部材113の下部には、該払拭部材の内部に含まれる洗浄液を適宜排出するための洗浄液排出口117が設けられている。この洗浄液排出口117は、払拭部材113内の洗浄液の吸収量(吸液量)を調整するためのものである。
【0008】
インクジェットヘッド111の回復動作を行う際は、まず、洗浄液供給口114から吸液性の払拭部材113に対して洗浄液を供給する。洗浄液は、払拭部材113の上部に注がれ、やがて該払拭部材の内部へ浸透し始める。次いで、洗浄液排出口117に接続された減圧手段を作用させることにより、払拭部材113の上部に浸透した洗浄液を該払拭部材の内部を通過させて洗浄液排出口117から排出する。このとき、インクの成分や払拭部材113の材質や状態などに応じて、払拭部材113の吸液量が適正な量になるように排出量や排出時間を調整する。
【0009】
このように払拭部材113の吸液量が調整された段階で、インクジェットヘッド111の吐出口がインク受け115の真上にくる位置までベース部材116を図示左右方向に移動させる。次に、インク供給系112を背部から加圧することにより、ヘッド111の吐出口からインクを押し出す。押し出されたインクはインク受け115の内部に排出される。さらに、ベース部材116をヘッド111の吐出口列と交差する方向(図示左右方向)に移動させることで、払拭部材113をヘッド111の吐出面121に摺接させ、該吐出面に付着したインクを払拭する。
【特許文献1】特開平10−157151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図5に示すようなインクジェットヘッドの回復装置では、吐出面121に付着したインクを完全に払拭除去することは困難である。特に一旦固化してしまうと再度溶解させることが困難な性状を示すインクにおいては、吐出面(ノズル面)上の払拭し切れなかった固化成分によりインク吐出が不安定になってしまうことがある。
【0011】
本発明はこのような技術的課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、インク吐出部の吐出面に付着したインクを確実に払拭除去することができ、吐出面を容易にかつ直ちに初期の表面状態に復帰させることができ、再現性のある安定した画像形成を長時間にわたって維持することができるインク吐出部の回復装置、インク吐出装置、並びにインク吐出部の回復方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によるインク吐出部の回復装置は、上記目的を達成するため、インクを吐出して記録媒体に画像を形成するインク吐出部の回復装置において、前記インク吐出部の吐出口から押し出されるインクを吸収し透過させるためのインク吸収部材と、前記インク吐出部にインクを供給し前記吐出口からインクを押し出すことで前記インク吸収部材にインクを接触させ吸収させるインク供給手段と、不連続に接触する少なくとも2つの接触部を有する吸液性の払拭部材を前記インク吐出部の吐出面に摺接させることにより該吐出面に付着したインクを払拭除去するための払拭手段と、を具備することを特徴とする。
【0013】
本発明によるインク吐出装置は、上記目的を達成するため、インク吐出部から記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインク吐出装置において、上記構成のインク吐出部の回復装置を有することを特徴とする。
【0014】
本発明によるインク吐出部の回復方法は、上記目的を達成するため、インクを吐出して記録媒体に画像を形成するインク吐出部の回復方法において、前記インク吐出部にインクを供給し前記吐出口からインクを押し出すことでインク吸収部材にインクを接触させ吸収させるインク供給工程と、前記インク吐出部の吐出口から押し出されるインクを前記インク吸収部材を透過させて排出するインク排出工程と、不連続に接触する少なくとも2つの接触部を有する吸液性の払拭部材を前記インク吐出部の吐出面に摺接させることにより該吐出面に付着したインクを除去する払拭工程と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、インク吐出部の吐出面に付着したインクを確実に払拭除去することができるインク吐出部の回復装置、インク吐出装置、並びにインク吐出部の回復方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を具体的に説明する。なお、各図面を通して同一符号は同一又は対応部分を示すものである。図1は本発明によるインク吐出部の回復装置を備えたインク吐出装置の一実施形態を示す斜視図である。図1はインク吐出装置がカラーフィルタを製造するためのインクジェット記録装置である場合を例示する。図1において、インクジェット記録装置60は不図示の架台上に載置され、図1中のX方向及びY方向に移動可能なXYテーブル62と、このXYテーブル62の上方に不図示の支持部材を介して架台上に固定されたインク吐出部であるインクジェットヘッド1を備えている。XYテーブル62上には、ブラックマトリックス及び樹脂組成物層が形成された記録媒体としてのガラス基板64が載置されている。このインクジェット記録装置60は、記録媒体であるガラス基板64上にカラー画像を描画(パターニング)するためのインク吐出装置である。
【0017】
インクジェットヘッド1は、赤色インクを吐出する赤色ヘッド1aと緑色インクを吐出する緑色ヘッド1bと青色インクを吐出する青色ヘッド1cとで構成され、これらのヘッド1a、1b、1cはそれぞれ独立にインクを吐出することができる。すなわち、本実施形態におけるインクジェット記録装置60は、インク吐出部1から記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインク吐出装置を構成するものである。また、XYテーブル62の端部には、インクジェットヘッド1の回復動作を行うための回復装置50が設けられ、該回復装置50はXYテーブル62に対してZ方向(上下方向)に移動可能に配設されている。この回復装置50は、インクジェットヘッド1の吐出口の目詰まりを防止し、吐出面に付着したインク滴やゴミ等を払拭除去して正常なインク吐出状態を維持する機能を有する。
【0018】
図2は本発明によるインク吐出部の回復装置の一実施形態を示す図である。図2において、インクジェットヘッド1に対してインク供給手段(インク供給系)2からインクが供給されている。インクジェットヘッド1の吐出面21には図2中で紙面に垂直な方向に配列された複数の吐出口(ノズル)9からなる吐出口列が形成されている。回復装置50のベース部材6には、各吐出口9から押し出されるインクを浸透除去するための吸液性を有する清掃部材(インク吸収部材)5と、吐出面21に付着したインクを払拭除去するための吸液性を有する払拭部材3が装着されている。
【0019】
通常、画像形成動作は、インク供給系2の供給圧力を吐出口9からインクが溢れる圧力より小さい値に保持した状態で実行される。ヘッド1の吐出面21の吐出口9の周辺を払拭するワイピング動作は、ベース部材6を該吐出面の吐出口列と交差する方向(図2中で左右方向)に平行移動させて払拭部材3を該吐出面21に摺接させることによって行われる。払拭部材3及び清掃部材5はいずれも吸液性(吸水性)を有する部材で形成されている。払拭部材3及び清掃部材5の上方には、該払拭部材及び該清掃部材に洗浄液を供給するための洗浄液供給手段の供給口4が配設されている。払拭部材3の下部には、該払拭部材の吸液量(洗浄液の量)を調整すべく該払拭部材内の洗浄液を排出するための排出口8が設けられている。清掃部材5の下部には、該清掃部材の内部からインク及び洗浄液を排出するための排出口7が設けられている。これらの排出口7、8は、それぞれ吸引ポンプ等の減圧手段に接続されている。
【0020】
インク吸収部材5は、ベース部材6を上下方向に移動させることにより、インク吐出部1の吐出面21に対して接触離間する方向に移動可能であり、該吐出面に対する近接及び離間を制御できるように構成されている。また、払拭部材3(その摺接部3a、3b、3c)はインク吸収部材5の頂面より所定高さだけ高く形成されており、ベース部材6を所定量下降させてインク吸収部材5を吐出面21から離間させた状態で払拭部材3により吐出面21を払拭(ワイピング)できるように構成されている。
【0021】
以上説明した実施形態は、インクを吐出して記録媒体に画像を形成するインク吐出部の回復装置において、インク吐出部1の吐出口9から押し出されるインクを吸収し透過させるためのインク吸収部材5と、インク吐出部にインクを供給し吐出口からインクを押し出すことでインク吸収部材にインクを接触させ吸収させるインク供給手段2と、不連続に接触する少なくとも2つの接触部3a、3b、3cを有する吸液性の払拭部材3を吐出面21に摺接させることにより該吐出面に付着したインクを払拭除去するための払拭手段3と、を具備するように構成されている。このような構成によれば、インク吐出部1の吐出面21に付着したインクを確実に払拭除去することができる。また、吐出面を容易にかつ直ちに初期の表面状態に復帰させることができ、再現性のある安定した画像形成を長時間にわたって維持することができる。
【0022】
次に、インクジェットヘッド1の回復動作について説明する。本実施形態では、インクとして樹脂分を1wt%含むインクを使用し、溶媒としてはイソプロピルアルコール、エチレングリコール及び水を使用した。まず、回復動作を行うときに、インク吸収部材5及び払拭部材3に洗浄液供給手段の供給口4から洗浄液を供給する。供給される洗浄液はインク吸収部材5及び払拭部材3のそれぞれの上部にかけられ、やがて該インク吸収部材及び該払拭部材の内部へ浸透し始める。次いで、インク吸収部材5の排出口7及び払拭部材3の排出口8に接続された吸引ポンプ等の減圧手段を作動させることによりこれらの排出口7、8に負圧を作用させる。インク吸収部材5及び払拭部材3の上部に浸透した洗浄液は、これらの負圧により、該インク吸収部材及び該払拭部材の内部を通過し、排出口7、8から排出される。
【0023】
インク吸収部材5及び払拭部材3の吸液量(吸水量)が0.3g/cm3 以下となるように、洗浄液の供給量及び排出時間を調整する。このようにインク吸収部材5及び払拭部材3の吸液量が調整された段階で、インク吸収部材5の位置がインクジェットヘッド1の吐出口9と対向する位置になるようにベース部材6を図示左右方向に移動させる。インク吸収部材5が吐出口9と対向する位置にきた段階で、インク供給系2の背部を加圧することにより、ヘッド1の吐出口9からインクを押し出す。吐出口9から排出されたインクは該吐出口に近接したインク吸収部材5に接触し、該インク吸収部材に吸収される。
【0024】
少なくともインク供給系2からのインク押し出しが停止するまでインク吸収部材5は吐出口9と対向する位置にあり、その位置で該インク吸収部材へのインク吸収動作を継続させる。また、ベース部材6を上下方向に移動させることでインク吸収部材5をヘッド1の吐出面21に対して接近離隔方向に移動させるための移動手段が設けられている。インク供給系2からのインク押し出しが停止した後、ベース部材6を移動させてインク吸収部材5を吐出面21から離間させることにより、吐出口9の近傍のインクをできるだけ該吐出口の周辺部に広げないようにしてインク吸収部材5に吸収させる。続いて、ベース部材6を水平方向に移動させることにより払拭部材3を吐出面21に接触(摺接)させ、該吐出面21の払拭動作を行う。
【0025】
本実施形態では、払拭部材3は不連続な複数(図示の例では3つ)の部位(又は部材)で形成されている。すなわち、払拭部材3は弾性部材であり、該払拭部材の各接触部3a、3b、3cの形態は摺接方向断面が円弧状をした部分円筒形状に形成されている。このため、ベース部材6を水平方向に移動させて複数の接触部(払拭部)3a、3b、3cで連続的に摺接させることにより、吐出口周辺部の残留インクを速やかに払拭除去することができる。
【0026】
以上説明した本実施形態に係る回復動作においては、インクを吐出して記録媒体に画像を形成するインク吐出部の回復方法において、インク吐出部1にインクを供給し吐出口9からインクを押し出すことでインク吸収部材5にインクを接触させ吸収させるインク供給工程と、インク吐出部の吐出口から押し出されるインクをインク吸収部材5を透過させて排出するインク排出工程と、不連続に接触する少なくとも2つの接触部3a、3b、3cを有する吸液性の払拭部材3をインク吐出部の吐出面21に摺接させることにより該吐出面に付着したインクを除去する払拭工程と、を具備するインク吐出部の回復方法が実行されている。
【0027】
このような回復方法によれば、インク吐出部1の吐出面21に付着したインクを確実に払拭除去することができ、吐出面を容易にかつ直ちに初期の表面状態に復帰させることができ、再現性のある安定した画像形成を長時間にわたって維持することができる。
また、上記の回復動作においては、さらに、払拭部材3に洗浄液を供給する洗浄液供給工程が実行されており、このような洗浄工程を付加することにより、吐出面に付着したインクを一層確実に払拭除去することができる。
【0028】
図3はインク吐出部の吐出口周辺部を光顕微鏡で観察した比較結果を示す図であり、(a)は本実施形態による回復動作を行った後の状態を示し、(b)は従来技術による回復動作を行った後の状態を示す。ここで、従来例は、本実施形態において、第1の動作である吐出口9から押し出されるインクを吐出面21から離間したインク吸収部材5による浸透除去工程が無いものである。図3から明らかなように、本実施形態による上記回復動作は吐出口周辺部のワイピング性能が非常に優れており、(a)に示すように付着インクがきれいに払拭されている。
【0029】
図4はインク吐出部の吐出面21の撥水性を水の接触角により評価した結果を示す図表である。図4から明らかなように、本実施形態の上記回復動作を行った後では、吐出面21の撥水性能が初期状態に戻っていることが確認された。なお、本実施形態では、インク吸収部材5及び払拭部材3の吸液量を制御する操作をインクジェット記録装置の上で行ったが、これは、全く別の装置でインク吸収部材5及び払拭部材3の吸液量を調整した後でこれらをインク吐出装置に取り付け、そこで前述と同一の回復動作を実施しても良く、これによっても前述の実施形態と全く同じ効果を奏することができる。また、一連の回復動作を実施した後に、インク吐出装置(インクジェット記録装置)上に配置された洗浄液供給源からの洗浄液をインク吸収部材5及び払拭部材3にかけ、さらに排出口7、8から洗浄液を排出させることにより、インク吸収部材5及び払拭部材3を連続的に使用することが可能となる。
【0030】
なお、以上の実施形態では、インク吐出装置がカラーフィルタ等のガラス基板に画像を形成する装置である場合を例に挙げて説明したが、本発明は、インク吐出部からインクを吐出して画像を形成する装置であれば、プリンタ、複写機、ファクシミリ等の機能を有するインクジェット式の記録装置、あるいはコンピュータやワードプロセッサ等を含む複合電子機器やワークステーションなどの出力機器として用いられる記録装置に対しても同様に適用可能であり、同様の作用効果を奏するものである。
【0031】
また、以上の実施形態では、記録媒体をセットしたXYテーブルを固定位置にあるインク吐出部に対して移動させて画像を形成するインク吐出装置を例に挙げて説明したが、本発明は、記録情報に基づいて普通紙などの通常のシート材にインクを吐出して画像を形成するプリンタ等のインクジェット記録装置並びにその回復装置及び回復方法においても同様に適用可能なものであり、同様の作用効果を奏するものである。また、本発明をプリンタ等の記録装置に適用する場合、本発明は、記録媒体に沿って移動可能な記録ヘッドを用いるシリアルタイプの記録装置、あるいは記録媒体の幅方向に延びるライン記録ヘッドを用いて搬送方向の副走査のみで記録していくラインタイプの記録装置など、記録走査の形態に関わらず広く適用可能なものであり、同様の作用効果を奏するものである。
【0032】
さらに、本発明は、インクを吐出するインク吐出部を用いるインク吐出装置であれば、1個のインク吐出部を用いる装置、異なる色のインクを用いる複数のインク吐出部を用いる装置、あるいは同一色彩で異なる濃度のインクを用いる複数のインク吐出部を用いる装置、さらには、これらを組み合わせた装置の場合にも、同様に適用することができ、同様の作用効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明によるインク吐出部の回復装置を備えたインク吐出装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明によるインク吐出部の回復装置の一実施形態を示す図である。
【図3】インク吐出部の吐出口周辺部を光顕微鏡で観察した比較結果を示す図であり、(a)は本実施形態による回復動作を行った後の状態を示し、(b)は従来技術による回復動作を行った後の状態を示す。
【図4】インク吐出部の吐出面の撥水性を水の接触角により評価した結果を示す図表である。
【図5】インク吐出部を払拭清掃するの回復装置の従来例を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 インク吐出部(インクジェットヘッド)
2 インク供給手段(インク供給系)
3 払拭手段(払拭部材)
4 洗浄液供給手段の供給口
5 インク吸収部材(清掃部材)
6 ベース部材
7、8 排出口
9 吐出口(吐出口列)
21 吐出面
50 回復装置
60 インク吐出装置(インクジェット記録装置)
62 XYテーブル
64 記録媒体(ガラス基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出して記録媒体に画像を形成するインク吐出部の回復装置において、
前記インク吐出部の吐出口から押し出されるインクを吸収し透過させるためのインク吸収部材と、
前記インク吐出部にインクを供給し前記吐出口からインクを押し出すことで前記インク吸収部材にインクを接触させ吸収させるインク供給手段と、
不連続に接触する少なくとも2つの接触部を有する吸液性の払拭部材を前記インク吐出部の吐出面に摺接させることにより該吐出面に付着したインクを払拭除去するための払拭手段と、
を具備することを特徴とするインク吐出部の回復装置。
【請求項2】
前記払拭部材に洗浄液を供給する洗浄液供給手段を具備することを特徴とする請求項1に記載のインク吐出部の回復装置。
【請求項3】
前記インク吸収部材は、前記吐出面に対して接触離間する方向に移動可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインク吐出部の回復装置。
【請求項4】
前記吐出口からのインク押し出しが停止した後に前記インク吸収部材を前記吐出面から離間させる方向に移動させることを特徴とする請求項3に記載のインク吐出部の回復装置。
【請求項5】
前記払拭部材は弾性部材であり、該払拭部材の前記接触部の形態は摺接方向断面が円弧状をした部分円筒形状であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインク吐出部の回復装置。
【請求項6】
前記インク吸収部材は、減圧手段に接続された排出口を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインク吐出部の回復装置。
【請求項7】
前記払拭部材は、減圧手段に接続された排出口を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のインク吐出部の回復装置。
【請求項8】
インク吐出部から記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインク吐出装置において、請求項1〜7のいずれか1項に記載のインク吐出部の回復装置を有することを特徴とするインク吐出装置。
【請求項9】
インクを吐出して記録媒体に画像を形成するインク吐出部の回復方法において、
前記インク吐出部にインクを供給し前記吐出口からインクを押し出すことでインク吸収部材にインクを接触させ吸収させるインク供給工程と、
前記インク吐出部の吐出口から押し出されるインクを前記インク吸収部材を透過させて排出するインク排出工程と、
不連続に接触する少なくとも2つの接触部を有する吸液性の払拭部材を前記インク吐出部の吐出面に摺接させることにより該吐出面に付着したインクを除去する払拭工程と、
を具備することを特徴とするインク吐出部の回復方法。
【請求項10】
前記払拭部材に洗浄液を供給する洗浄液供給工程を具備することを特徴とする請求項9に記載のインク吐出部の回復方法。
【請求項11】
前記吐出口からのインク押し出しが停止した後に前記インク吸収部材を前記吐出面から離間させる工程を有することを特徴とする請求項9又は10に記載のインク吐出部の回復方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−334963(P2006−334963A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163579(P2005−163579)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】