説明

インク組成物、インクジェット記録用インク組成物、インクセット、インクカートリッジ、インクジェット記録方法及び記録物

【課題】高温環境下で保存しても色素が分解や変色することのないインク組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物を含むインク組成物であって、該一般式(1)で表される化合物の含有率が0.1質量%以上7.0質量%未満であり、水酸基を3個以上有する保湿剤の含有率が8.0質量%未満であり、かつ、前記水酸基を3個以上有する保湿剤/前記一般式(1)で表される化合物のモル比が15.0未満であるインク組成物。


式中、Ar、Arは芳香族複素環基または非芳香族複素環基を表し、A、Aは各々、水素原子又は置換基を表す。Yは−OMまたは−NRを表し、Mは水素原子又は金属イオンを表し、R、Rは各々、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基又は複素環基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク組成物に含まれる一般式(1)で表される化合物が長期保存においても変色・褪色せずに安定であり、かつインク組成物による印字画像が耐光性および耐オゾン性に優れるインク組成物、これを用いたインクジェット記録用インク組成物、インクセット、インクカートリッジ、インクジェット記録方法及び記録物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、画像記録材料としては、特にカラー画像を形成するための材料が主流であり、具体的には、インクジェット方式の記録材料、感熱転写方式の記録材料、電子写真方式の記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インク、記録ペン等が盛んに利用されている。
【0003】
インク組成物に用いられる色素に対しては、溶剤に対する溶解性あるいは分散性が良好なこと、高濃度記録が可能であること、色相が良好であること、画像の保存安定性が良好なこと水や薬品に対する堅牢性に優れていること、毒性がないこと、純度が高いこと、更には、安価に入手できることが要求されている。
【0004】
すなわち光、熱、環境中の活性ガス(NOx、オゾン等の酸化性ガスの他SOxなど)に対して、色素分子の高電位化によって改良できるようになってきた(特許文献1)。
【0005】
一方、インク組成物への要求性能として、例えばインク組成物からの色素析出やインク組成物の凍結(特許文献2)、インク組成物を基質上に印字した際のカール防止(特許文献3)、インク組成物の腐敗防止ばかりでなく(特許文献4)、印字の際の色素の滲みの防止(特許文献5)などが挙げられ、それを改良するためにインク組成物には様々な添加剤が使用されている。
【0006】
特許文献6に記載のように、添加剤により色素の性能やインク組成物の保存安定性付与として、色素の溶解安定化は改良された。しかしながら、求められる全ての要求を高いレベルで満たすインク組成物を創製することは難しい。
【特許文献1】特開2007−63520号公報
【特許文献2】特開2001−271013号公報
【特許文献3】特開平6−240189号公報
【特許文献4】特開平6−234943号公報
【特許文献5】特開平6−136309号公報
【特許文献6】特開2007−70566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、例えば夏季の車中で起こり得るような高温環境下で保存してもインク組成物から色素が分解や変色することのないインク組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の高電位化された色素は、画像の光堅牢性、オゾンガス堅牢性に優れる一方で、電子が豊富な求核種の攻撃を受けやすく、インク組成物に含まれる添加剤、特に水酸基を3個以上有する保湿剤によって分解が促進し、インク組成物を長期保存した場合に褪色したり変色することが新たに分かってきた。
【0009】
そこで本発明者らは、色素の性能とインク組成物の保存安定化の両立をねらい、画像の光堅牢性、オゾンガス堅牢性を保持しかつ、保存安定性を付与する技術構築を推進した。
【0010】
本発明者は、光、熱、環境中の活性ガスに対する耐性に優れた高電位色素を含有するインク組成物において、前記高電位色素の分解を促進するインク組成物中の成分について調査したところ、水酸基を有する化合物が前記高電位色素の分解に関連していることを見出した。中でも水酸基を3個以上有する化合物がインク組成物中に特定量以上存在すると前記高電位色素の分解が顕著であり、また、インク組成物中の前記高電位色素濃度が小さい場合にも前記高電位色素の分解が著しいことが判明した。これは、該水酸基を3個以上有する化合物が高電位色素と特異的に多点相互作用することで電子効果に基づく色素の活性化が誘起され加水分解が促進し、高電位色素が分解するためと推測される。しかしながら、本発明はこのような推測によって限定されない。インク組成物中の水酸基を有する化合物は保湿剤として使われており、またインク組成物への添加量も多い。そこで、水酸基を有する保湿剤、特に水酸基を3個以上有する保湿剤に着目し、その使用量を調整することで、インク組成物の保存安定性を改良し、該インク組成物による印字画像物の光堅牢性およびオゾンガス堅牢性を両立できることを見出し本発明を完成するに至った。
本発明の課題は、以下の手段により解決することができる。
<1> 下記一般式(1)で表される化合物を含むインク組成物であって、該一般式(1)で表される化合物の含有率が0.1質量%以上7.0質量%未満であり、水酸基を3個以上有する保湿剤の含有率が8.0質量%以下であり、かつ、前記水酸基を3個以上有する保湿剤/前記一般式(1)で表される化合物のモル比が15.0未満であることを特徴とするインク組成物。
【0011】
【化1】

【0012】
上記一般式(1)中、ArおよびArはそれぞれ独立に芳香族炭化水素環基、非芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基または非芳香族複素環基を表し、AおよびAはそれぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。Yは−OMまたは−NRを表し、Mは水素原子または金属イオンを表し、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基または複素環基を表す。
<2> 前記水酸基を3個以上有する保湿剤の含有率が5.0質量%以下であることを特徴とする<1>に記載のインク組成物。
<3> 前記水酸基を3個以上有する保湿剤/前記一般式(1)で表される化合物のモル比が5.0未満であることを特徴とする<1>または<2>に記載のインク組成物。
<4> 前記モル比が2.0未満であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれかに記載のインク組成物。
<5> 水酸基数が0〜2個である保湿剤を含有することを特徴とする<1>〜<4>のいずれかに記載のインク組成物。
<6> 前記水酸基を3個以上有する保湿剤の含有率が全保湿剤の18.0質量%未満であることを特徴とする<1>〜<5>のいずれかに記載のインク組成物。保湿剤には尿素及び糖類を含む。
<7> 前記水酸基を3個以上有する保湿剤の含有率が全保湿剤の10.0質量%未満であることを特徴とする<1>〜<6>のいずれかに記載のインク組成物。
<8> 前記水酸基を3個以上有する保湿剤の含有率が全保湿剤の4.0質量%未満であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のインク組成物。
<9> 前記一般式(1)で表される化合物が一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする<1>〜<8>のいずれかに記載のインク組成物。
【0013】
【化2】

【0014】
上記一般式(2)中、A、A、Yは一般式(1)におけるA、A、Yと同義である。Y、およびYはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、XおよびXはそれぞれ独立にハメットのσp値0.20以上の電子求引性基を表す。Z、Zはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、または複素環基を表す。
<10> 前記一般式(2)で表される化合物が一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする<9>に記載のインク組成物。
【0015】
【化3】

【0016】
上記一般式(3)中、A、A、X、X、Y、Yは一般式(2)におけるA、A、X、X、Y、Yと同義である。W11、W12、W13、W14、W15、W21、W22、W23、W24及びW25はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、Mは水素原子または金属イオンを表す。
<11> 前記一般式(1)で表される化合物が一般式(4)で表される化合物であることを特徴とする<1>〜<8>のいずれかに記載のインク組成物。
【0017】
【化4】

【0018】
上記一般式(4)中、A、A、Yは一般式(1)におけるA、A、Yと同義である。DおよびDはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。
<12> 前記一般式(4)で表される化合物が一般式(5)で表される化合物であることを特徴とする<11>に記載のインク組成物。
【0019】
【化5】

【0020】
上記一般式(5)中、A、A、D、Dは一般式(4)におけるA、A、D、Dと同義である。Mは一般式(1)におけるMと同義である。
<13> <1>〜<12>のいずれかに記載のインク組成物を使用することを特徴とするインクジェット記録用インク組成物。
<14> インクジェット記録方法に用いるインクセットであって、<1>〜<13>のいずれかに記載のインク組成物を構成成分として含んでなることを特徴とするインクセット。
<15> <1>〜<13>のいずれかに記載のインク組成物を含んでなることを特徴とするインクカートリッジ。
<16> <14>に記載のインクセットを一体的に又は独立に収容してなることを特徴とするインクカートリッジ。
<17> インク組成物の液滴を吐出し、該液滴を記録媒体に付着させて記録を行うインクジェット記録方法であって、<14>に記載のインクセット又は<15>または<16>に記載のインクカートリッジを用いて記録することを特徴とするインクジェット記録方法。
<18> <17>に記載のインクジェット記録方法によって印刷されたことを特徴とする記録物。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高温環境下で保存された場合でも色素の褪色や変色を抑制し、さらに、そのインク組成物による印字画像の光堅牢性やオゾンガス堅牢性に優れたインク組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0023】
本発明のインク組成物は、一般式(1)で表される化合物及び水酸基を3個以上有する保湿剤を含み、該一般式(1)で表される化合物の含有率が0.1質量%以上7.0質量%未満であり、前記水酸基を3個以上有する保湿剤の含有率が8.0質量%以下であり、かつ、前記水酸基を3個以上有する保湿剤/前記一般式(1)で表される化合物のモル比が15.0未満であるインク組成物である。
本発明の好ましい態様として、前記水酸基を3個以上有する保湿剤/前記一般式(1)で表される化合物のモル比が15.0未満、より好ましくは5.0未満、更に好ましくは0.01以上5.0未満、殊更好ましくは0.01以上2.0未満で、特に好ましくは0.01以上0.40未満であるインク組成物が挙げられる。
また、本発明の好ましい態様として、前記水酸基数が0〜2個である保湿剤を含むインク組成物が挙げられ、特に好ましくは、水酸基数が0個または1個である保湿剤を含むインク組成物が挙げられる。
また、本発明の更に好ましい態様として、インク組成物中の全保湿剤に対する水酸基を3個以上有する保湿剤が18.0質量%未満、好ましくは10.0質量%未満、より好ましくは0.01質量%以上10.0質量%未満、更に好ましくは0.01質量%以上4.0質量%未満、殊更好ましくは0.01質量%以上1.0質量%未満のインク組成物があげられる。
以降、本発明のインク組成物について詳しく説明する。
【0024】
〔一般式(1)で表される化合物〕
まず、本明細書中で用いられるハメットの置換基定数σp値について若干説明する。
ハメット則はベンゼン誘導体の反応または平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年 L.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができるが、例えば、J.A.Dean編、「Lange’s Handbook of Chemistry」第12版、1979年(Mc Graw−Hill)や「化学の領域」増刊、122号、96〜103頁、1979年(南江堂)に詳しい。なお、本発明において各置換基をハメットの置換基定数σpにより限定したり、説明したりするが、これは上記の成書で見出せる、文献既知の値がある置換基にのみ限定されるという意味ではなく、その値が文献未知であってもハメット則に基づいて測定した場合にその範囲内に包まれるであろう置換基をも含むことはいうまでもない。本発明の一般式(1)〜(5)で表される化合物はベンゼン誘導体ではないが、置換基の電子効果を表す尺度として、置換位置に関係なくσp値を使用する。本発明においては今後、σp値をこのような意味で使用する。
【0025】
本発明における一般式(1)で表される化合物を説明する。
【0026】
【化6】

【0027】
ArおよびArはそれぞれ独立に置換基を有しても良い芳香族炭化水素環基、非芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基または非芳香族複素環基を表す。
【0028】
およびAはそれぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、この置換基は更に置換基を有していても良い。
【0029】
Yは−OMまたは−NRを表し、Mは水素原子または金属イオンを表し、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子もしくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基または複素環基を表す。
【0030】
以下に、前記一般式(1)について更に詳しく説明する。
【0031】
ArおよびArは芳香族炭化水素環基、非芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基または非芳香族複素環基を表し、単環であっても、さらに他の環が縮環していても良い。前記各環は置換基を有しても良く、該置換基としては後述の置換基(SUB)が挙げられる。芳香族炭化水素環基としては、後述の置換基(SUB)に記載のアリール基が挙げられる。非芳香族炭化水素環基としては、後述の置換基(SUB)に記載のシクロアルキル基、ビシクロアルキル基等が挙げられる。非芳香族複素環基としては、ピペリジル基、ピペリジノ基、モルホリニル基、モルホリノ基等が挙げられる。ArおよびArは芳香族複素環基が好ましく、より好ましくは含窒素5〜7員環の芳香族複素環基であり、5〜6員環の芳香族複素環が好ましい。
以下にArおよびArの好ましい例、より好ましい例、更に好ましい例を示すが、ArおよびArのアゾ基と結合する置換位置および、ArおよびArの有しても良い置換基とその置換位置は限定されない。ArおよびArの好ましい例としては、フェニル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ベンゾピラゾリル基、トリアゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアジアゾリル基、ピロリル基、ベンゾピロリル基、インドリル基、イソオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、チオフェニル基、ベンゾチオフェニル基、フラニル基、ベンゾフラニル基、ピリジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、キナゾリニル基、キノクサリニル基、またはトリアジニル基が挙げられる。
【0032】
ArおよびArとしてより好ましくはピリジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、またはチアジアゾリル基であり、更に好ましい例は、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、またはチアジアゾリル基である。特に好ましくはピラゾリル基またはチアジアゾリル基である。
【0033】
これらの基は更に置換基を有していても良い。
【0034】
ArおよびArに置換する基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルもしくはアリールスルフィニル基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールもしくは複素環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基、およびイオン性親水性基が挙げられる。より好ましくは、ハロゲン原始、アルキル基、アリール基、複素環基、シアノ基、アミノ基、アシルアミノ基およびアルキルまたはアリールスルホニル基であり、更に好ましくはアルキル基、アリール基、シアノ基、−SOCHおよび−SOPhである。
【0035】
ArおよびArとして好ましくはピラゾリル基であり、その置換基がアルキル基、アリール基、シアノ基、−SOCHおよび−SOPhであり、最も好ましくはピラゾリル基の置換基がアリール基、およびシアノ基である。また、ArおよびArとして好ましくはチアジアゾリル基でもあり、その置換基がアルキル基、フェニル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、フェノキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、及びアリールアミノ基から選ばれる基であり、アルキル基、フェニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、またはアリールアミノ基が好ましく、更に好ましくはアルキル基、およびアリール基である。
【0036】
ここで前記ArおよびArに置換しうる置換基(SUB)の詳細を説明する。
【0037】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0038】
アルキル基としては、直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基が挙げられ、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えば、アルコキシ基、アルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。詳細には、アルキル基としては、好ましくは、置換基を除いた状態で炭素数1から30のアルキル基であり、炭素数1から20のアルキル基がより好ましく、炭素数1から15の置換もしくは無置換のアルキル基が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2―エチルヘキシル基等が挙げられる。シクロアルキル基としては、好ましくは、置換基を除いた状態で炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルキル基であり、より好ましくは炭素数3から20のシクロアルキル基であり、炭素数3から15のシクロアルキル基が更に好ましい。シクロアルキル基の好ましい例として、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等が挙げられ、ビシクロアルキル基としては、好ましくは、置換基を除いた状態で炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基が好ましく、炭素数5から20のビシクロアルキル基がより好ましく、炭素数5から15のビシクロアルキル基が更に好ましい。つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル基等が挙げられる。置換基の例には、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子およびイオン性親水性基が含まれる。
但し、ここではアリール基が置換したアルキル基(アラルキル基)は含まないものとする。
【0039】
アルケニル基としては、直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基が挙げられ、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を包含する。詳細には、アルケニル基としては、好ましくは、アルケニル基の置換基を除いた状態で炭素数2から30、より好ましくは炭素数2から20、更に好ましくは炭素数2から15の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基等が挙げられ、シクロアルケニル基としては、好ましくは、シクロアルケニル基の置換基を除いた状態で炭素数3から30、より好ましくは炭素数3から20、更に好ましくは炭素数3から15の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基である。つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基等が挙げられ、ビシクロアルケニル基としては、好ましくは、ビシクロアルケニル基の置換基を除いた状態で炭素数5から30、より好ましくは炭素数5から20、更に好ましくは炭素数5から15の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基である。つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル基等が挙げられる。置換基の例には、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子およびイオン性親水性基が含まれる。
【0040】
アルキニル基としては、好ましくは、置換基を除いた状態の炭素数2から30、より好ましくは炭素数2から20、更に好ましくは2から15の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。置換基の例には、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子およびイオン性親水性基が含まれる。
【0041】
アラルキル基としては、置換基を有するアラルキル基および無置換のアラルキル基が含まれる。アラルキル基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が7から30、より好ましくは7から20、さらに好ましくは7から15である置換もしくは無置換のアラルキル基が好ましい。アラルキル基の例には、ベンジル基、および2−フェネチル基が含まれる。置換基の例には、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子およびイオン性親水性基が含まれる。
【0042】
アリール基としては、好ましくは、置換基を除いた状態の炭素数6から30、より好ましくは炭素数6から20、更に好ましくは炭素数6から15の置換もしくは無置換のアリール基である。例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基等が挙げられる。置換基の例には、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子およびイオン性親水性基が含まれる。
【0043】
複素環基としては、好ましくは、5または6員の置換もしくは無置換の芳香族もしくは非芳香族の複素環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、複素環基の置換基を除いた状態で炭素数2から30、より好ましくは炭素数2から20、更に好ましくは炭素数2から15の5または6員の芳香族の複素環基である。例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基等が挙げられる。置換基の例には、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子およびイオン性親水性基が含まれる。
【0044】
アルコキシ基としては、好ましくは、置換基を除いた状態の炭素数1から30、より好ましくは炭素数1から20、更に好ましくは炭素数1から15の置換もしくは無置換のアルコキシ基を表し、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基等が挙げられる。置換基の例には、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子およびイオン性親水性基が含まれる。
【0045】
アリールオキシ基としては、好ましくは、置換基を除いた状態の炭素数6から30、より好ましくは炭素数6から20、更に好ましくは炭素数6から15の置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表し、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基等が挙げられる。置換基の例には、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子およびイオン性親水性基が含まれる。
【0046】
シリルオキシ基としては、好ましくは、置換基を除いた状態の炭素数0から20、より好ましくは炭素数0から20、更に好ましくは炭素数0から15の置換もしくは無置換のシリルオキシ基を表し、例えば、トリメチルシリルオキシ基、ジフェニルメチルシリルオキシ基等が挙げられる。置換基の例には、アルキル基、アリール基、および複素環基が含まれる。
【0047】
複素環オキシ基としては、好ましくは、置換基を除いた状態の炭素数2から30、より好ましくは炭素数2から20、更に好ましくは炭素数2から15の置換もしくは無置換の複素環オキシ基を表し、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基等が挙げられる。置換基の例には、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子およびイオン性親水性基が含まれる。
【0048】
アシルオキシ基としては、好ましくは、ホルミルオキシ基、置換基を除いた状態で炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基であり、置換基を除いた状態で炭素数6から30、より好ましくは炭素数6から20、更に好ましくは炭素数6から15の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基である。例えば、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基等が挙げられる。置換基の例には、アルキル基、およびアリール基が含まれる。
【0049】
カルバモイルオキシ基としては、好ましくは、置換基を除いた状態の炭素数1から30、より好ましくは炭素数1から20、更に好ましくは炭素数1から15の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基等が挙げられる。置換基の例には、アルキル基、アリール基、および複素環基が含まれる。
【0050】
アルコキシカルボニルオキシ基としては、好ましくは、置換基を除いた状態の炭素数2から30、より好ましくは炭素数2から20、更に好ましくは炭素数2から15の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基等が挙げられる。置換基の例には、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子およびイオン性親水性基が含まれる。
【0051】
アリールオキシカルボニルオキシ基としては、好ましくは、置換基を除いた状態の炭素数7から30、より好ましくは炭素数7から20、更に好ましくは炭素数7から15の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。置換基の例には、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子およびイオン性親水性基が含まれる。
【0052】
アミノ基としては、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、複素環アミノ基を含み、好ましくは、アミノ基、置換基を除いた状態の炭素数が1から30、より好ましくは1から20、更に好ましくは1から15の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基であり、置換基を除いた状態の炭素数が6から30、より好ましくは6から20、更に好ましくは6から15の置換もしくは無置換のアリールアミノ基であり、例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基等が挙げられる。置換基の例にはアルキル基、アリール基、複素環基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子およびイオン性親水性基が含まれる。
【0053】
アシルアミノ基としては、好ましくは、ホルミルアミノ基、置換基を除いた状態の炭素数が1から30、より好ましくは1から20、更に好ましくは1から15の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、置換基を除いた状態の炭素数が6から30、より好ましくは6から20、更に好ましくは6から15の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基であり、例えば、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基等が挙げられる。置換基の例には、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子およびイオン性親水性基が含まれる。
【0054】
アミノカルボニルアミノ基としては、好ましくは、置換基を除いた状態の炭素数1から30、より好ましくは炭素数1から20、更に好ましくは炭素数1から15の置換もしくは無置換のウレイド基、例えば、ウレイド基、N,N−ジメチルウレイド基、N,N−ジエチルウレイド基、モルホリノカルボニルアミノ基等が挙げられる。置換基の例には、アルキル基、アリール基、および複素環基が含まれる。
【0055】
アルコキシカルボニルアミノ基としては、好ましくは、置換基を除いた状態の炭素数2から30、より好ましくは炭素数2から20、更に好ましくは炭素数2から15の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基を表し、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。置換基の例には、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子およびイオン性親水性基が含まれる。
【0056】
アリールオキシカルボニルアミノ基としては、好ましくは、置換基を除いた状態の炭素数7から30、より好ましくは炭素数7から20、更に好ましくは炭素数7から15の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基を表し、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。置換基の例には、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子およびイオン性親水性基が含まれる。
【0057】
スルファモイルアミノ基としては、好ましくは、置換基を除いた状態の炭素数0から30、より好ましくは炭素数0から20、更に好ましくは炭素数0から15の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基等が挙げられる。置換基の例には、アルキル基、アリール基、および複素環基が含まれる。
【0058】
アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基としては、好ましくは、置換基を除いた状態の炭素数が1から30、より好ましくは1から20、更に好ましくは1から15の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基であり、炭素数が6から30、より好ましくは6から20、更に好ましくは6から15の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ基である。例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基等が挙げられる。置換基の例には、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子およびイオン性親水性基が含まれる。
【0059】
アルキルチオ基としては、好ましくは、置換基を除いた状態の炭素数1から30、より好ましくは炭素数1から20、更に好ましくは炭素数1から15の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基等が挙げられる。置換基の例には、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子およびイオン性親水性基が含まれる。
【0060】
アリールチオ基としては、好ましくは、置換基を除いた状態の炭素数6から30、より好ましくは炭素数6から20、更に好ましくは炭素数6から15の置換もしくは無置換のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基等が挙げられる。置換基の例には、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子およびイオン性親水性基が含まれる。
【0061】
複素環チオ基としては、好ましくは、置換基を除いた状態の炭素数2から30、より好ましくは炭素数2から20、更に好ましくは炭素数2から15の置換または無置換の複素環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基等が挙げられる。置換基の例には、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子およびイオン性親水性基が含まれる。
【0062】
スルファモイル基としては、好ましくは、置換基を除いた状態の炭素数0から30、より好ましくは炭素数0から20、更に好ましくは炭素数0から15の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル基等が挙げられる。置換基の例には、アルキル基、アリール基、および複素環基が含まれる。
【0063】
アルキルまたはアリールスルフィニル基としては、好ましくは、置換基を除いた状態の炭素数が1から30、より好ましくは1から20、更に好ましくは1から15の置換または無置換のアルキルスルフィニル基であり、置換基を除いた状態の炭素数が6から30、より好ましくは6から20、更に好ましくは6から15の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基等が挙げられる。置換基の例には、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子およびイオン性親水性基が含まれる。
【0064】
アルキルまたはアリールスルホニル基としては、好ましくは、置換基を除いた状態の炭素数が1から30、より好ましくは1から20、更に好ましくは1から15の置換または無置換のアルキルスルホニル基、置換基を除いた状態の炭素数が6から30、より好ましくは6から20、更に好ましくは6から15の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基等が挙げられる。置換基の例には、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子およびイオン性親水性基が含まれる。
【0065】
アシル基としては、好ましくは、ホルミル基、置換基を除いた状態の炭素数が2から30、より好ましくは2から20、更に好ましくは2から15の置換または無置換のアルキルカルボニル基、置換基を除いた状態の炭素数が7から30、より好ましくは7から20、更に好ましくは7から15の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、置換基を除いた状態の炭素数が2から30、より好ましくは2から20、更に好ましくは2から15の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合している複素環カルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイル基、2−クロロアセチル基、ステアロイル基、ベンゾイル基、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル基、2−ピリジルカルボニル基、2−フリルカルボニル基等が挙げられる。置換基の例には、アルキル基、アリール基、および複素環基が含まれる。
【0066】
アリールオキシカルボニル基としては、好ましくは、アリールオキシカルボニル基の置換基を除いた状態で炭素数7から30、より好ましくは炭素数7から20、更に好ましくは炭素数7から15の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−t−ブチルフェノキシカルボニル基等が挙げられる。置換基の例には、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子およびイオン性親水性基が含まれる。
【0067】
アルコキシカルボニル基としては、好ましくは、アルコキシカルボニル基の置換基を除いた状態で炭素数2から30、より好ましくは炭素数2から20、更に好ましくは炭素数2から15の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。置換基の例には、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子およびイオン性親水性基が含まれる。
【0068】
カルバモイル基としては、好ましくは、カルバモイル基の置換基を除いた状態で炭素数1から30、より好ましくは炭素数1から20、更に好ましくは炭素数1から15の置換もしくは無置換のカルバモイル基、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基等が挙げられる。置換基の例には、アルキル基、アリール基、および複素環基が含まれる。
【0069】
アリールまたは複素環アゾ基としては、好ましくは置換基を除いた状態の炭素数が6から30、より好ましくは6から20、更に好ましくは6から15の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、置換基を除いた状態の炭素数が3から30、より好ましくは3から20、更に好ましくは3から15の置換もしくは無置換の複素環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ等が挙げられる。置換基の例には、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子およびイオン性親水性基が含まれる。
【0070】
イミド基としては、好ましくは、イミド基の置換基を除いた状態で炭素数0から30、より好ましくは炭素数0から20、更に好ましくは炭素数0から15の置換もしくは無置換のイミド基を表し、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基等が挙げられる。置換基の例には、アルキル基、アリール基、および複素環基が含まれる。
【0071】
ホスフィノ基としては、好ましくは、置換基を除いた状態の炭素数が0から30、より好ましくは0から20、更に好ましくは0から15の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基等が挙げられる。
【0072】
ホスフィニル基としては、好ましくは、置換基を除いた状態の炭素数が0から30、より好ましくは0から20、更に好ましくは0から15の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基等が挙げられる。置換基の例には、アルキル基、アリール基、および複素環基が含まれる。
【0073】
ホスフィニルオキシ基としては、好ましくは、置換基を除いた状態の炭素数が0から30、より好ましくは0から20、更に好ましくは0から15の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基等が挙げられる。置換基の例には、アルキル基、アリール基、および複素環基が含まれる。
【0074】
ホスフィニルアミノ基としては、好ましくは、置換基を除いた状態の炭素数が0から30、より好ましくは0から20、更に好ましくは0から15の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基が挙げられる。置換基の例には、アルキル基、アリール基、および複素環基が含まれる。
【0075】
シリル基としては、好ましくは、置換基を除いた状態の炭素数が0から30、より好ましくは0から20、更に好ましくは0から15の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基等が挙げられる。置換基の例には、アルキル基、アリール基、複素環基が含まれる。
【0076】
イオン性親水性基としては、スルホ基、カルボキシル基、ホスホノ基、および4級アンモニウム基等が含まれる。イオン性親水性基としては、カルボキシル基およびスルホ基が好ましく、特にカルボキシル基が好ましい。カルボキシル基およびスルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対イオンの例には、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)および有機カチオン(例、テトラメチルグアニジウムイオン)が含まれる。
塩の状態のイオン性親水性基の例としては、スルホン酸リチウム、カルボン酸カリウム、テトラメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。
【0077】
上記の置換基の中で、水素原子を有するものは、該水素原子が上記の置換基で置換されていても良い。そのような置換基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル基、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル基、アセチルアミノスルホニル基、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0078】
およびAはそれぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。該置換基としては前記置換基(SUB)に記載のものが適用できる。AおよびAとして好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルもしくはアリールスルフィニル基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールもしくは複素環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基またはイオン性親水性基を表し、より好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アミノ基、アルキル基、アリール基もしくは複素環基で置換されたアミノ基、チオ基、アルキルもしくはアリールチオ基、複素環チオ基、またはイオン性親水性基を表す。その中でも好ましいAおよびAとしては水素原子、総炭素数1から8のアルキル基または総炭素数6から12のアリール基であり、水素原子、イソプロピル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基が最も好ましい。各基は更に置換基を有していても良い。
【0079】
Yは−OMまたは−NRを表し、Mは水素原子または金属イオンを表し、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子もしくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基または複素環基を表す。Yとして好ましくは−OMである。Mとして好ましくは水素原子、アルカリ金属イオンであり、更に好ましくは、アルカリ金属イオンである。アルカリ金属イオンの中でも、リチウムイオン、ナトリウムイオン、またはカリウムイオンがより好ましく、リチウムイオン、またはカリウムイオンが更に好ましい。Yが−NRである場合、RおよびRはそれぞれ前記置換基(SUB)に記載の対応する基が適用できる。RおよびRとしてより好ましくは水素原子、アルキル基またはアリール基であり、更に好ましくは水素原子またはアルキル基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0080】
以上をまとめると、本発明の一般式(1)は、下記(イ)〜(ハ)の組み合わせからなるものが好ましい。
(イ)ArおよびArはそれぞれ独立に、好ましくは、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、またはチアジアゾリル基であり、特に好ましくはピラゾリル基またはチアジアゾリル基である。ピラゾリル基の置換基として好ましくはアルキル基、アリール基、シアノ基、−SOCHまたは−SOPhであり、最も好ましくはピラゾリル基の置換基がアリール基、またはシアノ基であり、チアジアゾリル基の置換基として好ましくは、アルキル基またはアリール基である。
(ロ)AおよびAはそれぞれ独立に、水素原子、総炭素数1から8のアルキル基、総炭素数6から12のアリール基が好ましく、水素原子、イソプロピル基、sec−ブチル基、またはtert−ブチル基がより好ましく、tert−ブチル基が最も好ましい。
(ハ)Yは−OMまたは−NRを表し、好ましくはYは−OMである。Mはアルカリ金属イオンが好ましく、アルカリ金属イオンの中でも、リチウムイオンまたはカリウムイオンが更に好ましい。RおよびRはそれぞれ独立に、好ましくは水素原子またはアルキル基であり、特に好ましくは水素原子である。
なお、一般式(1)で表される化合物は、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、置換基のより多くが前記の好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記の好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0081】
一般式(1)で表される化合物の中でも、下記一般式(2)で表される化合物がより好ましい。
【0082】
【化7】

【0083】
上記一般式(2)中、A、A、Yは一般式(1)におけるA、A、Yと同義である。Y、およびYはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。
【0084】
およびXはそれぞれ独立にハメットのσp値0.20以上の電子求引性基を表す。
【0085】
、Zはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、または複素環基を表す。
【0086】
以下に、一般式(2)の基について詳細に説明する。
【0087】
、A、及びYは一般式(1)で説明した詳細と同義である。
【0088】
およびYとして好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、シアノ基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、複素環オキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アルキル基、アリール基もしくは複素環基で置換されたアミノ基、アシルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ニトロ基、チオ基、アルキルもしくはアリールチオ基、アシルチオ基、カルバモイルチオ基、複素環チオ基、アルコキシカルボニルチオ基、アリールオキシカルボニルチオ基、アルキルもしくはアリールスルフィニル基、スルファモイル基、イオン性親水性基、またはアシルアミノ基である。前記の各基は前記置換基(SUB)に記載の対応する基の記載が適用できる。
【0089】
およびYとして更に好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、シアノ基、アルコキシ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルバモイル基、またはアルコキシカルボニル基であり、特に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、または複素環基が好ましく、水素原子が最も好ましい。
【0090】
置換基σp値が0.20以上のXおよびXとして好ましくは、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアリールホスフィニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アリールオキシ基、ハロゲン化アルキルアミノ基、ハロゲン化アルキルチオ基、σp値が0.20以上の他の置換基で置換されたアリール基、複素環基、ハロゲン原子、アゾ基およびセレノシアネート基が挙げられる。前記の各基は前記置換基(SUB)に記載の対応する基の記載が適用できる。
【0091】
好ましいXおよびXは、シアノ基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはハロゲン原子であり、より好ましくは、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基であり、最も好ましくはシアノ基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基である。この中でもシアノ基が最も好ましい。
【0092】
およびZとして好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、またはシリル基を挙げることができ、各々はさらに置換基を有していてもよい。
【0093】
およびZの中でも特に好ましいものは、アルキル基、アリール基、複素環基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アリールカルボニル基またはカルバモイル基がより好ましく、置換アリール基が更に好ましい。
【0094】
以上をまとめると、本発明の一般式(2)は、下記(イ)〜(ホ)の組み合わせからなるものが好ましい。
(イ)YおよびYはそれぞれ独立に、特に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、または複素環基が好ましく、水素原子が最も好ましい。
(ロ)AおよびAはそれぞれ独立に、水素原子、総炭素数1から8のアルキル基、総炭素数6から12のアリール基が好ましく、イソプロピル基、sec−ブチル基、またはtert−ブチル基がより好ましく、tert−ブチル基が最も好ましい。
(ハ)XおよびXはそれぞれ独立に、シアノ基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基が好ましくシアノ基が更に好ましい。
(ニ)ZおよびZはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、複素環基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アリールカルボニル基またはカルバモイル基がより好ましく、置換アリール基が更に好ましい。該置換アリール基は少なくとも2つ(好ましくは2つ)がスルホ基またはカルボキシル基を置換基として有するフェニル基が好ましい。
(ホ)Yは−OMが好ましい。Mはアルカリ金属イオンが好ましく、アルカリ金属イオンの中でも、リチウムイオンまたはカリウムイオンが更に好ましい。
なお、一般式(2)で表される化合物は、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、置換基のより多くが前記の好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記の好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0095】
一般式(2)で表される化合物の中でも、下記一般式(3)で表される化合物がさらに好ましい。
【0096】
【化8】

【0097】
上記一般式(3)中、A、A、X、X、Y、Yは一般式(2)におけるA、A、X、X、Y、Yと同義である。W11、W12、W13、W14、W15、W21、W22、W23、W24及びW25はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。
【0098】
Mは水素原子または金属イオンを表す。
【0099】
以下に、一般式(3)の基について詳細に説明する。
【0100】
およびAは一般式(1)で説明した詳細と同義である。
【0101】
およびYは、一般式(2)で説明した詳細と同義である。
【0102】
およびXは、一般式(2)で説明した詳細と同義である。
【0103】
11、W12、W13、W14、W15、W21、W22、W23、W24及びW25として好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、シアノ基、アルコキシ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基(それらの塩を含む)、カルボキシル基(それらの塩を含む)、水酸基(塩でもよい)、ホスホノ基(塩でもよい)又は4級アンモニウムであり、その中でも水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、スルホ基(それらの塩を含む)、カルボキシル基(それらの塩を含む)、水酸基(塩でもよい) (それらの塩を含む)が好ましく、更に水素原子、スルホ基(それらの塩を含む)、またはカルボキシル基(それらの塩を含む)が好ましく、特にW11、W12、W13、W14及びW15のうち少なくとも1つがスルホ基(それらの塩を含む)、またはカルボキシル基(それらの塩を含む)で、且つW21、W22、W23、W24及びW25のうち少なくとも1つがスルホ基(それらの塩を含む)、またはカルボキシル基(それらの塩を含む)である場合が好ましい。W11〜W15の中の2つ、かつ、W21〜W25の中の2つがカルボキシル基(それらの塩を含む)であり、かつ他は水素原子である場合が好ましい。前記のハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、シアノ基、アルコキシ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基の各基は前記置換基(SUB)に記載の対応する基の記載が適用できる。
【0104】
Mは水素原子または金属イオンを表す。より好ましくは、水素原子、アルカリ金属イオンであり、更に好ましくは、アルカリ金属イオンである。アルカリ金属イオンの中でも、リチウムイオン、ナトリウムイオン、またはカリウムイオンがより好ましく、リチウムイオン、またはカリウムイオンが最も好ましい。
【0105】
以上をまとめると、本発明の一般式(3)は、下記(イ)〜(ホ)の組み合わせからなるものが好ましい。
(イ)YおよびYはそれぞれ独立に、特に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、または複素環基が好ましく、水素原子、またはアルキル基がより好ましく、水素原子が最も好ましい。
(ロ)AおよびAはそれぞれ独立に、水素原子、総炭素数1から8のアルキル基、総炭素数6から12のアリール基が好ましく、イソプロピル基、sec−ブチル基、またはtert−ブチル基がより好ましく、tert−ブチル基が最も好ましい。
(ハ)XおよびXは、シアノ基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基が好ましくシアノ基が更に好ましい。
(ニ)W11、W12、W13、W14、W15、W21、W22、W23、W24及びW25はそれぞれ独立に、水素原子、スルホ基(それらの塩を含む)、カルボキシル基(それらの塩を含む)が好ましく、特にW11、W12、W13、W14及びW15のうち少なくとも1つがスルホ基(それらの塩を含む)、またはカルボキシル基(それらの塩を含む)で、且つW21、W22、W23、W24及びW25のうち少なくとも1つがスルホ基(それらの塩を含む)、またはカルボキシル基(それらの塩を含む)である場合が好ましい。W11〜W15の中の2つ、かつ、W21〜W25の中の2つがカルボキシル基(それらの塩を含む)である場合が好ましい。
(ホ)Mはアルカリ金属イオンが好ましく、アルカリ金属イオンの中でも、リチウムイオンまたはカリウムイオンが更に好ましい。
なお、一般式(3)で表される化合物は、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、置換基のより多くが前記の好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記の好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0106】
一般式(1)で表される化合物の中で好ましい例として、さらに下記一般式(4)で表される化合物が挙げられる。
【0107】
【化9】

【0108】
上記一般式(4)中、A、A、Yは一般式(1)におけるA、A、Yと同義である。DおよびDはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。
【0109】
以下に置換基の詳細を説明する。
【0110】
およびAは一般式(1)で説明した詳細と同義である。
【0111】
Yは一般式(1)で説明した詳細と同義である。
【0112】
およびDとして好ましくは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基)、アシルアミノ基(アミド基)、アミノカルボニルアミノ基(ウレイド基)、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルファモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、カルバモイル基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基、アゾ基、またはイミド基を挙げることができ、前記の各基は前記置換基(SUB)に記載の対応する基の記載が適用できる。各々はさらに置換基を有していてもよい。
【0113】
およびDは更に好ましくはそれぞれ独立に置換アルキル基、置換アリール基、置換複素環基、置換アルキルチオ基、置換アリールチオ基、置換複素環チオ基、置換アルキルアミノ基、置換アリールアミノ基、置換複素環基が好ましく、その中でも置換アリール基、置換アリールチオ基が好ましく、特に置換アリール基が好ましい。該置換アリール基は少なくとも2つ(好ましくは2つ)がスルホ基またはカルボキシル基を有するフェニル基が好ましい。
【0114】
以上をまとめると、本発明の一般式(4)は、下記(イ)〜(ハ)の組み合わせからなるものが好ましい。
(イ)AおよびAはそれぞれ独立に、水素原子、総炭素数1から8のアルキル基、総炭素数6から12のアリール基が好ましく、イソプロピル基、sec−ブチル基、またはtert−ブチル基がより好ましく、tert−ブチル基が最も好ましい。
(ロ)DおよびDはそれぞれ独立に、置換アルキル基、置換アリール基、置換複素環基、置換アルキルチオ基、置換アリールチオ基、置換複素環チオ基が好ましく、その中でも置換アリール基、置換アリールチオ基が好ましく、特に置換アリール基が好ましい。該置換アリール基は少なくとも2つ(好ましくは2つ)がスルホ基またはカルボキシル基を有するフェニル基が好ましい。
(ハ)Yは−OMが好ましい。Mはアルカリ金属イオンが好ましく、アルカリ金属イオンの中でも、リチウムイオンまたはカリウムイオンが更に好ましい。
なお、一般式(4)で表される化合物は、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、置換基のより多くが前記の好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記の好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0115】
一般式(4)で表される化合物の中でも、下記一般式(5)で表される化合物がより好ましい。
【0116】
【化10】

【0117】
上記一般式(5)中、A、A、D、Dは一般式(4)におけるA、A、D、Dと同義である。Mは一般式(1)におけるMと同義である。
【0118】
以下に一般式(5)の置換基の詳細を説明する。
【0119】
およびAは一般式(1)で説明した詳細と同義である。
【0120】
およびDは一般式(4)で説明した詳細と同義である。
【0121】
Mは一般式(1)で説明した詳細と同義である.
【0122】
以上をまとめると、本発明の一般式(5)は、下記(イ)〜(ハ)の組み合わせからなるものが好ましい。
(イ)AおよびAはそれぞれ独立に、水素原子、総炭素数1から8のアルキル基、または総炭素数6から12のアリール基が好ましく、イソプロピル基、sec−ブチル基、またはtert−ブチル基がより好ましく、tert−ブチル基が最も好ましい。
(ロ)DおよびDはそれぞれ独立に、置換アルキル基、置換アリール基、置換複素環基、置換アルキルチオ基、置換アリールチオ基、または置換複素環チオ基が好ましく、その中でも置換アリール基、または置換アリールチオ基が好ましく、特に置換アリール基が好ましい。該置換アリール基は少なくとも2つ(好ましくは2つ)がスルホ基またはカルボキシル基を有するフェニル基が好ましい。
(ハ)Mはアルカリ金属イオンが好ましく、アルカリ金属イオンの中でも、リチウムイオンまたはカリウムイオンが更に好ましい。
なお、一般式(5)で表される化合物は、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、置換基のより多くが前記の好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記の好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0123】
以下に一般式(1)で表される化合物について具体例を挙げるが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0124】
【化11】

【0125】
【化12】

【0126】
【化13】

【0127】
【化14】

【0128】
上記化合物については、特開2006−57076号公報、特開2007−217681号公報に記載の合成法により合成される。
【0129】
[インク組成物]
【0130】
本発明のインクは、媒体を含有させることができるが、媒体として溶媒を用いた場合は特にインクジェット記録用インクとして好適である。本発明のインクは、媒体として、親油性媒体や水性媒体を用いて、それらの中に、本発明の一般式(1)で表される化合物を溶解及び/又は分散させることによって作製することができる。好ましくは、水性媒体を用いる場合である。なお、本発明のインク組成物を単に「インク」と略記することがある。媒体には様々な機能が備わっている。インクの噴射口での乾操による目詰まりを防止するための保湿剤、インクを紙によりよく浸透させるための浸透促進剤の他、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、分散剤、分散安定剤、防黴剤、防錆剤、pH調整剤等の効果があり、媒体の組み合わせでインク組成物としての物性や品質を調整したり改良したりすることが可能である。
【0131】
本発明で用いられる一般式(1)で表される化合物を水性媒体に分散させる場合は、特開平11−286637号、特開2001−240763号、特開2001−262039号、特開2001−247788号のように染料と油溶性ポリマーとを含有する着色微粒子を水性媒体に分散したり、特開2001−262018号、特開2001−240763号、特開2001−335734号、特開2002−80772号のように高沸点有機溶媒に溶解した本発明の一般式(1)で表される化合物を水性媒体中に分散することが好ましい。本発明で用いられる一般式(1)で表される化合物を水性媒体に分散させる場合の具体的な方法、使用する油溶性ポリマー、高沸点有機溶剤、添加剤及びそれらの使用量は、前記特許文献に記載されたものを好ましく使用することができる。あるいは、前記一般式(1)の化合物を固体のまま微粒子状態に分散してもよい。分散時には、分散剤や界面活性剤を使用することができる。分散装置としては、簡単なスターラーやインペラー攪拌方式、インライン攪拌方式、ミル方式(例えば、コロイドミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテーターミル等)、超音波方式、高圧乳化分散方式(高圧ホモジナイザー;具体的な市販装置としてはゴーリンホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、DeBEE2000等)を使用することができる。上記のインクジェット記録用インクの調製方法については、先述の特許文献以外にも特開平5−148436号、同5−295312号、同7−97541号、同7−82515号、同7−118584号、特開平11−286637号、特開2001−271003号の各公報に詳細が記載されていて、本発明のインクジェット記録用インクの調製にも利用できる。
【0132】
本発明のインク組成物は、一般式(1)で表される化合物と保湿剤を含み、該一般式(1)で表される化合物の含有率が0.1質量%以上7.0質量%未満であり、水酸基を3個以上有する保湿剤の含有率が8.0質量%以下であり、かつ、前記水酸基を3個以上有する保湿剤/前記一般式(1)で表される化合物のモル比が15.0未満であるインク組成物である。
本発明のインク組成物(好ましくはインクジェット記録用インク組成物)100質量部中に、一般式(1)で表される化合物が固形分で0.1質量%以上7.0質量%未満で、即ち、一般式(1)で表される化合物の含有率0.1以上7.0未満質量%で使用される。好ましくは0.1質量%以上6.8質量%以下であり、0.5質量%以上6.7質量%以下が更に好ましい。
【0133】
本発明において好ましい態様は、本発明の一般式(1)で表される化合物を水性媒体で使用する場合には、本発明のインク組成物は少なくとも水と一般式(1)で表される化合物とを含み、該一般式(1)で表される化合物の含有率が0.1質量%以上7.0質量%未満であり、水酸基を3個以上有する保湿剤の含有率が8.0質量%以下であり、かつ、前記水酸基を3個以上有する保湿剤/前記一般式(1)で表される化合物のモル比が15.0未満である水性媒体からなるインク組成物であり、好ましくは、水酸基数が0〜2個の保湿剤を含有するインク組成物である。保湿剤は、他の用途、例えば、乾燥防止剤、浸透促進剤、湿潤剤等として用いられ、またこれらの用途に限定されることはない。例えばトリエタノールアミンは保湿剤としての効果もあるが、一方でpH調整剤としての効果もある。この場合、保湿剤としての量の制限を受ける。以下に保湿剤について詳細を記載する。
【0134】
本発明で使用の保湿剤について説明する。保湿剤とは、少なくとも保湿剤を含むインク組成物中に溶解し、水の蒸発を緩和する働きのあるものを言う。この性質を利用し、色材がインク組成物から析出してくる等の要因の一つであるインク組成物の乾燥(濃縮)を抑制することが出来る。本発明で使用する保湿剤は、25℃において液状であれば水より高い沸点を有する親水性有機溶剤であり、25℃において固体であれば、水に溶解する化合物であり、その溶解度は水に対して0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上の固体保湿剤である。ここで親水性有機溶剤とは、水にある比率で混合した際に液分離することなく均一状態になる有機溶剤のことを言う。水に対する親水性有機溶媒の25℃における溶解度(相互溶解度とも言う)が、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上のものが更に好ましい。また該親水性有機溶剤は100℃以上、好ましくは105℃以上、さらに好ましくは110℃以上の沸点を有するものが好ましい。
一般に保湿剤には、多価アルコール誘導体、グリコールエーテル誘導体、アルキルアミン誘導体、尿素誘導体、カルボン酸およびその塩の誘導体、アミノ酸およびその塩の誘導体、糖誘導体などが挙げられ、好ましくは多価アルコール誘導体、グリコールエーテル誘導体、アルキルアミン誘導体、尿素誘導体、カルボン酸およびその塩の誘導体であり、更に多価アルコール誘導体、グリコールエーテル誘導体、アルキルアミン誘導体、尿素誘導体が好ましい。
ここで誘導体とは、アルキル化、アリール化、複素環化、エステル化、エーテル化、ハロゲン化、アミド化、ヒドロキシル化、アミノ化など置換反応によって適当な置換基が修飾された化合物を言う。
保湿剤の中でも分子量が1000以下の化合物が好ましく、より好ましくは分子量が900以下であり、さらに800以下の保湿剤が好ましい。
保湿剤は水酸基の有無で大別できる。以下に水酸基を有する保湿剤について具体例を挙げて説明する。
【0135】
水酸基を3個以上有する保湿剤として例えば、多価アルコール類(例えば、グリセリン、エリスリトール、シクロヘキサントリオール、ブタントリオール、トリスヒドロキシメチルエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール、ヘプタントリオール、スレイトール、アドニトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、イノシトール、ベンゼントリオール)、エーテル誘導体(例えば、ジペンタエリスリトール)、アルコールアミン(例えば、トリエタノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、テトラキスヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ペントロール、グルコースアミン、ヒアルロン酸ナトリウム)、テトラヒドロキシエチル尿素などの尿素誘導体が挙げられる。より好ましくは、グリセリン、エリスリトール、シクロヘキサントリオール、トリスヒドロキシメチルエタン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、イノシトール、ベンゼントリオール、ジペンタエリスリトール、トリエタノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、ペントロール、グルコースアミンであり、更に好ましくはグリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタンである。
水酸基を3個以上有する保湿剤のインク組成物中の含有率は8.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以下であることが更に好ましく、1.0質量%以下であることが特に好ましい。より好ましくは、水酸基を3個以上有する保湿剤のインク組成物中の含有率は0.01質量%以上8.0質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下であることが更に好ましく、0.01質量%以上1.0質量%以下であることが特に好ましい。
【0136】
水酸基が1個もしくは2個の保湿剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール等に代表される多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、セリン、ホモセリンなどのアミン類、2−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン等の複素環類が挙げられる。より好ましくは、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、2−ヒドロキシエチル−2−ピロリドンであり、更に好ましくは、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、2−ヒドロキシエチル−2−ピロリドンである。
水酸基が1もしくは2個の保湿剤のインク組成物中の含有率は0.5以上40以下質量%であることが好ましく、5以上30以下質量%であることがより好ましい。
【0137】
また、本発明のインク組成物は、前記水酸基数が0〜2個である保湿剤を含むインク組成物が好ましく、中でも水酸基数が0個または1個である保湿剤を含むインク組成物が更に好ましい。
【0138】
水酸基を有しない保湿剤の例としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、アミン(例えば、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)、極性溶媒(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、3−スルホレン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン)、尿素誘導体(尿素、エチレン尿素、チオ尿素)、カルボン酸誘導体(ピリドンカルボン酸、乳酸、クエン酸およびこれらの塩)が挙げられる。好ましくはテトラエチレングリコールジメチルエーテル、モルホリン、スルホラン、2−ピロリドン、尿素、エチレン尿素であり、更に好ましくは、2−ピロリドン、尿素、エチレン尿素である。水酸基を有しない保湿剤のインク組成物中の含有率は0.5質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
【0139】
本発明の好ましい態様は、一般式(1)で表される化合物及び水酸基を3個以上有する保湿剤を含み、前記水酸基を3個以上有する保湿剤/前記一般式(1)で表される化合物のモル比が15.0未満、好ましくは5.0未満、更に好ましくは0.01以上5.0未満、より好ましくは0.01以上2.0未満、殊更好ましくは0.01以上0.40未満のインク組成物である。
特に、本発明のより好ましい態様は、上記の条件に加え、インク組成物中の全保湿剤に対する水酸基を3個以上有する保湿剤が18.0質量%未満、好ましくは10.0質量%未満、より好ましくは0.01質量%以上10.0質量%未満、更に好ましくは0.01質量%以上4.0質量%未満、殊更好ましくは0.01質量%以上1.0質量%未満であるインク組成物である。
【0140】
以下に、インク組成物に添加でき、保湿効果とは異なる効果を与える媒体を説明する。
【0141】
本発明に使用される浸透促進剤としてはエタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール等のアルコール類やラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムやノニオン性界面活性剤等を用いることができる。
本発明ではジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル系浸透促進剤が好ましく用いられる。これらは印字の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない添加量の範囲で使用するのが好ましい。
ただし、本発明では浸透促進剤として用いる化合物が保湿剤にも該当する場合は、保湿剤であるとして添加量を換算するため、前記の添加量の制限が適用される。
【0142】
本発明で画像の保存性を向上させるために使用される紫外線吸収剤としては特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤も用いることができる。これらは5質量%未満での使用が好ましい。ただし、本発明では紫外線吸収剤として用いる化合物が保湿剤にも該当する場合は、保湿剤であるとして添加量を換算するため、前記の添加量の制限が適用される。
【0143】
本発明では、画像の保存性を向上させるために使用される酸化防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としてはハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、複素環類などがあり、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体などがある。より具体的にはリサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのIないしJ項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。これらは5質量%未満での使用が好ましい。ただし、本発明では酸化防止剤として用いる化合物が保湿剤にも該当する場合は、保湿剤であるとして添加量を換算するため、前記の添加量の制限が適用される。
【0144】
本発明に使用される消泡剤は、ジメチルポリシロキサンとポリアルキレンオキサイドとのコポリマーであり、ペンダント型、末端変性型又はABN型等があるが、ペンダント型が好ましい。これらのコポリマーはFZ−2203、−2207、−2222、−2166(日本ユニカー社製 商品名)等が挙げられる。これらは5質量%未満での使用が好ましい。ただし、本発明では消包剤として用いる化合物が保湿剤にも該当する場合は、保湿剤であるとして添加量を換算するため、前記の添加量の制限が適用される。
【0145】
本発明に使用される防黴剤としてはデヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンおよびその塩等が挙げられる。これらはインク中に0.02〜5.00質量%使用するのが好ましい。
尚、これらの詳細については「防菌防黴剤事典」(日本防菌防黴学会事典編集委員会編)等に記載されている。
また、防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。これらは、インク中に0.02〜5.00質量%使用するのが好ましい。
【0146】
本発明に使用されるpH調整剤は、pH調節、分散安定性付与などの点で好適に使用する事ができ、23℃でのインクのpHが8〜11、好ましくは7〜9に調整されていることが好ましい。pHが8未満である場合は一般式(1)の化合物の溶解性が低下してノズルが詰まりやすく、11を超えると耐水性が劣化する傾向がある。pH調整剤としては、塩基性のものとして有機塩基、無機アルカリ等が、酸性のものとして有機酸、無機酸等が挙げられる。
前記有機塩基としては、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等が挙げられる。より好ましくはジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミンであり、更に好ましくはN−メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミンである。前記無機アルカリとしては、アルカリ金属の水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等)、炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等)、アンモニウム等が挙げられる。また、前記有機酸としては、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、アルキルスルホン酸等が挙げられる。
前記無機酸としては、塩酸、硫酸、リン酸等が挙げられる。本発明ではpH調整剤として用いる化合物が保湿剤にも該当する場合は、保湿剤であるとして添加量を換算するため、保湿剤に相当するので前記の添加量の制限が適用される。なおトリエタノールアミンは水酸基を3個以上有する保湿剤に該当するので、前記の添加量の制限が適用される。
【0147】
本発明では表面張力調整剤等として、ノニオン、カチオンあるいはアニオン系界面活性剤が挙げられる。例えばアニオン系界面活性剤としては脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等を挙げることができ、ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等を挙げることができる。これらは5質量%未満での使用が好ましい。ただし、本発明では表面張力調整剤として用いる化合物が保湿剤にも該当する場合は、保湿剤であるとして添加量を換算するため、前記の添加量の制限が適用される。
【0148】
本発明ではアセチレングリコール系(好ましくはアセチレン系ポリオキシエチレンオキシド)界面活性剤が好ましく用いられ、その例として、SURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社、サーフィノール465など)が挙げられる。界面活性剤の含有量はインク組成物全量に対して0.001〜15質量%、好ましくは0.005〜10質量%、更に好ましくは0.01〜5質量%、特に好ましくは0.1〜5質量%である。
本発明で用いるインクの表面張力は動的・静的表面張力のいずれも、25℃において20〜50mN/m以下であることが好ましく、20〜40mN/m以下であることが更に好ましい。表面張力が50mN/mを超えると吐出安定性、混色時のにじみ、ひげ等印字品質が著しく低下する。また、インクの表面張力を20mN/m以下にすると吐出時、ハード表面へのインクの付着等により印字不良となる場合がある。
【0149】
本発明のインク粘度は、25℃において1〜30mPa・sであることが好ましい。更に好ましくは2〜15mPa・sであり、特に好ましくは2〜10mPa・sである。30mPa・sを超えると記録画像の定着速度が遅くなり、吐出性能も低下する。1mPa・s未満では、記録画像がにじむために品位が低下する。
粘度の調製はインク溶剤の添加量で任意に調製可能である。インク溶剤として例えば、グリセリン、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエタノールアミン、2−ピロリドン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルなどがある。より好ましくは、ジエチレングリコール、ブロピレングリコール、2−ピロリドン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルであり、更に好ましくはジエチレングリコール、2−ピロリドン、トリエチレングリコールモノブチルエーテルである。グリセリンは水酸基を3個以上有する保湿剤に該当するので、前記の添加量の制限が適用される。
また、粘度調整剤を使用してもよい。粘度調整剤としては、例えば、セルロース類、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーやノニオン系界面活性剤等が挙げられる。更に詳しくは、「粘度調製技術」(技術情報協会、1999年)第9章、及び「インクジェットプリンタ用ケミカルズ(98増補)−材料の開発動向・展望調査−」(シーエムシー、1997年)162 〜174 頁に記載されている。これらは5質量%未満での使用が好ましい。ただし、本発明では粘度調整剤として用いる化合物が保湿剤にも該当する場合は、保湿剤であるとして添加量を換算するため、前記の添加量の制限が適用される。
【0150】
本発明のインクは、イエローインクとして用いることが好ましい。イエロー単色の画像形成のみならず、フルカラーの画像形成に用いることができる。フルカラー画像を形成するために、イエローインクの他に、マゼンタインク、シアンインクを用いることができ、また、色調を整えるために、更にブラックインクを用いてもよい。本発明のインクは、ブラックインク等の色調を整えるためにも用いても良い。
【0151】
本発明の記録方法の奏する効果を有する範囲において、使用できるマゼンタインクとしては、例えばカプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類などを有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカプラー成分としてピラゾロン類、ピラゾロトリアゾール類などを有するアゾメチン染料;例えばアリーリデン染料、スチリル染料、メロシアニン染料、シアニン染料、オキソノール染料などのようなメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料などのようなカルボニウム染料、例えばナフトキノン、アントラキノン、アントラピリドンなどのようなキノン染料、例えばジオキサジン染料等のような縮合多環染料等を挙げることができる。
【0152】
本発明の記録方法の奏する効果を有する範囲において、使用できるシアンインクとしては、例えばカプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類などを有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、ピロロトリアゾールのような複素環類などを有するアゾメチン染料;シアニン染料、オキソノール染料、メロシアニン染料などのようなポリメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料などのようなカルボニウム染料;フタロシアニン染料;アントラキノン染料;インジゴ・チオインジゴ染料などを挙げることができる。
【0153】
適用できる黒色材料としては、ジスアゾ、トリスアゾ、テトラアゾ染料のほか、カーボンブラックの分散体を挙げることができる。
本発明のインクセットは、前記本発明のイエローインク組成物と、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、ブラックインク組成物等の、黄色系以外の他色インク組成物とを一体的に、もしくは独立に収容したインクカートリッジからなり、本発明のインクセットは、前記本発明のイエローインク組成物を収容する以外は従来公知の方法を適宜用いてインクカートリッジとすることができる。
【0154】
[インク記録方法]
次に、上述のインク組成物を用いた本発明の記録方法について説明する。
本発明のインクは記録媒体に記録される。本発明の好ましいインクジェット記録方法は、前記インクジェット記録用インクにエネルギーを供与して、記録媒体としての公知の受像材料、即ち普通紙、樹脂コート紙、例えば特開平8−169172号公報、同8−27693号公報、同2−276670号公報、同7−276789号公報、同9−323475号公報、特開昭62−238783号公報、特開平10−153989号公報、同10−217473号公報、同10−235995号公報、同10−337947号公報、同10−217597号公報、同10−337947号公報等に記載されているインクジェット専用紙、フィルム、電子写真共用紙、布帛、ガラス、金属、陶磁器等に画像を形成する。なお、本発明のインクジェット記録方法として特開2003−306623号公報段落番号0093〜0105の記載が適用できる。
【0155】
画像を形成する際に、光沢性や耐水性を与えたり耐候性を改善する目的からポリマーラテックス化合物を併用してもよい。ラテックス化合物を受像材料に付与する時期については、着色剤を付与する前であっても、後であっても、また同時であってもよく、したがって添加する場所も受像紙中であっても、インク中であってもよく、あるいはポリマーラテックス単独の液状物として使用しても良い。
具体的には、特開2002−166638号公報、特開2002−121440号公報、特開2002−154201号公報、特開2002−144696号公報、特開2002−080759号公報、特開2002−187342号公報、特開2002−172774号公報に記載された方法を好ましく用いることができる。
【0156】
以下に、本発明のインクを用いてインクジェットプリントをするのに用いられる記録媒体(記録紙及び記録フィルム)について説明する。記録紙及び記録フィルムにおける支持体は、LBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGP等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ等からなり、必要に応じて従来公知の顔料、バインダー、サイズ剤、定着剤、カチオン剤、紙力増強剤等の添加剤を混合し、長網抄紙機、円網抄紙機等の各種装置で製造されたもの等が使用可能である。これらの支持体の他に合成紙、プラスチックフィルムシートのいずれであってもよく、支持体の厚みは10〜250μm、坪量は10〜250g/m2が望ましい。支持体には、そのままインク受容層及びバックコート層を設けてもよいし、デンプン、ポリビニルアルコール等でサイズプレスやアンカーコート層を設けた後、インク受容層及びバックコー卜層を設けてもよい。更に支持体には、マシンカレンダー、TGカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダー装置により平坦化処理を行ってもよい。本発明では支持体としては、両面をポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブテン及びそれらのコポリマー)でラミネートした紙及びプラスチックフィルムがより好ましく用いられる。ポリオレフィン中に、白色顔料(例えば、酸化チタン、酸化亜鉛)又は色味付け染料(例えば、コバルトブルー、群青、酸化ネオジウム)を添加することが好ましい。
【0157】
支持体上に設けられるインク受容層には、顔料や水性バインダーが含有される。顔料としては、白色顔料が好ましく、白色顔料としては、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、合成非晶質シリカ、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、二酸化チタン、硫化亜鉛、炭酸亜鉛等の白色無機顔料、スチレン系ピグメント、アクリル系ピグメント、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。インク受容層に含有される白色顔料としては、多孔性無機顔料が好ましく、特に細孔面積が大きい合成非晶質シリカ等が好適である。合成非晶質シリカは、乾式製造法によって得られる無水珪酸及び湿式製造法によって得られる含水珪酸のいずれも使用可能であるが、特に含水珪酸を使用することが望ましい。
【0158】
本発明のインクジェット記録方法はインクジェットの記録方式に制限はなく、公知の方式、例えば静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、電歪素子の機械的変形によりインク滴を形成するインクジェットヘッドを用いる、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して、放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット方式等に用いられる。インクジェット記録方式には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。本発明の記録方法は、インクジェット記録方式が特に好適に使用できるが、一般の筆記具用、記録計、ペンプロッター等の用途にも使用できることは言うまでもない。
【実施例】
【0159】
以下、本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
下記の成分に超純水(抵抗値18MΩ以上)を加え1リッターとした後、30〜40℃で加熱しながら1時間撹拌した。その後、平均孔径0.25μmのミクロフィルターで減圧濾過してインク液を得た。このインク液に超純水を加えてインク1の質量を1000gとした。このインク1において、水酸基を3個以上有する保湿剤/前記一般式(1)で表される化合物のモル比は0.31であり、全保湿剤に対する水酸基を3個以上有する保湿剤の含有率は0.70質量%である。
【0160】
〔インク1処方〕
化合物1 65g/l
尿素 10g/l
トリエチレングリコール 90g/l
グリセリン 1.2g/l
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 90g/l
2−ピロリドン 50g/l
トリエタノールアミン 0.5g/l
サーフィノール465(日信化学工業株式会社製) 10g/l
プロキセルXL2(富士フイルムイメージングカラランツ社製) 5g/l
〔インク2〜39の作成〕
表1及び3に示す化合物および添加剤とそれらの量を変更した以外は、インク1の処方に従いインク2〜66を作成した。表中で「モル比」とは水酸基を3個以上有する保湿剤/前記一般式(1)で表される化合物のモル比を表す。例えば、インク3では、水酸基を3個以上有する保湿剤はグリセリンおよびトリエタノールアミンである。
【0161】
【表1】

【0162】
【表2】

【0163】
【表3】

【0164】
なお比較化合物1〜6の構造を下記に示す。
【0165】
【化15】

【0166】
(強制加熱実験)
表1、表2および表3の処方で作成したインク10mLを、サンプル瓶に入れ、70℃で6日間保存した。化合物の残存率は高速液体クロマトグラフィー(HPLC:島津製作所製 LC−20AT)で測定を実施した。残存率がHPLCの面積%で、80%未満をF、80以上84未満%をE、84以上88未満%をD、88以上92未満%をC、92以上96未満%をB、96以上100以下%をAとして評価を行い、表4、表5および表6中には熱安定性として表示した。
【0167】
(印字画像評価実験)
表1、表2および表3の処方で作成したインクをEPSON社製インクジェットプリンターPM−G800のカートリッジに装填し、受像シートには、紙aとしてEPSON 写真用紙<光沢>と、紙bとして写真用紙クリスピア<高光沢>、紙cとしてCanon社製PR101を、紙dとしてHewlett−Packard社製アドバンストフォトペーパーを、紙eとして富士フイルム株式会社製画彩を使用し、階段状に濃度が変化した単色画像パターンをPM−G800にて印字させ、画像堅牢性の評価を行った。
【0168】
画像保存性について色濃度を測定することで以下の評価を行った。
[1]光堅牢性は印字直後の画像濃度CiをX−rite 310にて測定した後、アトラス社製ウェザーメーターを用い画像にキセノン光(10万ルックス)を7日照射した後、再び画像濃度Cfを測定し色素の残存率(Cf/Ci)×100を求め評価を行った。色素の残像率について反射濃度が0.7,1.2,2.0の3点にて評価し、いずれの濃度でも色素の残存率が85%以上の場合をA、1点が85%未満の場合をB、2点が85%の場合をC、3点全ての濃度で85%未満の場合をDとした。
[2]耐オゾン性(オゾン堅牢性)については、オゾンガス濃度が5ppmに設定されたボックス内に7日間放置し、オゾンガス下放置前後の画像濃度を反射濃度計(X−Rite310TR)を用いて測定し、色素残存率として評価した。尚、前記反射濃度は、0.7、1.2及び2.0の3点で測定した。ボックス内のオゾンガス濃度は、APPLICS製オゾンガスモニター(モデル:OZG−EM−01)を用いて設定した。何れの濃度でも色素の残存率が85%以上の場合をA、1点が85%未満をB、2点が85%未満の場合をC、全ての濃度で85%未満の場合をDとして、四段階で評価した。
表4、表5および表6に結果をまとめる。表4、表5および表6中で「モル比」とは水酸基を3個以上有する保湿剤/前記一般式(1)で表される化合物のモル比を表す。また、表4、表5および表6中で「質量%(*1)」とは水酸基を3個以上有する保湿剤のインク全量に対する質量%を表し、「質量%(*2)」とは水酸基を3個以上有する保湿剤の全保湿剤に対する質量%を表す。
【0169】
【表4】

【0170】
【表5】

【0171】
【表6】

【0172】
表4、表5および表6の結果から、本発明のインク組成物は熱安定性が高く、長期保存が可能であり、これらの性能のバランスが優れることが分かった。また、本発明のインク組成物を用いた印字画像は光堅牢性、オゾンガス堅牢性について優れ、これらの性能のバランスが優れていることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物と保湿剤とを含むインク組成物であって、該一般式(1)で表される化合物の含有率が0.1質量%以上7.0質量%未満であり、水酸基を3個以上有する保湿剤の含有率が8.0質量%以下であり、かつ、前記水酸基を3個以上有する保湿剤/前記一般式(1)で表される化合物のモル比が15.0未満であることを特徴とするインク組成物。
【化1】

上記一般式(1)中、ArおよびArはそれぞれ独立に芳香族炭化水素環基、非芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基または非芳香族複素環基を表し、AおよびAはそれぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。Yは−OMまたは−NRを表し、Mは水素原子または金属イオンを表し、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基または複素環基を表す。
【請求項2】
前記水酸基を3個以上有する保湿剤の含有率が5.0質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
前記モル比が5.0未満であることを特徴とする請求項1または2に記載のインク組成物。
【請求項4】
前記モル比が2.0未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインク組成物。
【請求項5】
水酸基数が0〜2個である保湿剤を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインク組成物。
【請求項6】
前記水酸基を3個以上有する保湿剤の含有率が全保湿剤の18.0質量%未満であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のインク組成物。
【請求項7】
前記水酸基を3個以上有する保湿剤の含有率が全保湿剤の10.0質量%未満であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のインク組成物。
【請求項8】
前記水酸基を3個以上有する保湿剤の含有率が全保湿剤の4.0質量%未満であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のインク組成物。
【請求項9】
前記一般式(1)で表される化合物が一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のインク組成物。
【化2】

上記一般式(2)中、A、A、Yは一般式(1)におけるA、A、Yと同義である。Y、およびYはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、XおよびXはそれぞれ独立にハメットのσp値0.20以上の電子求引性基を表す。Z、Zはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、または複素環基を表す。
【請求項10】
前記一般式(2)で表される化合物が一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする請求項9に記載のインク組成物。
【化3】

上記一般式(3)中、A、A、X、X、Y、Yは一般式(2)におけるA、A、X、X、Y、Yと同義である。W11、W12、W13、W14、W15、W21、W22、W23、W24及びW25はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、Mは水素原子または金属イオンを表す。
【請求項11】
前記一般式(1)で表される化合物が一般式(4)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のインク組成物。
【化4】

上記一般式(4)中、A、A、Yは一般式(1)におけるA、A、Yと同義である。DおよびDはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。
【請求項12】
前記一般式(4)で表される化合物が一般式(5)で表される化合物であることを特徴とする請求項11に記載のインク組成物。
【化5】

上記一般式(5)中、A、A、D、Dは一般式(4)におけるA、A、D、Dと同義である。Mは一般式(1)におけるMと同義である。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載のインク組成物を使用することを特徴とするインクジェット記録用インク組成物。
【請求項14】
インクジェット記録方法に用いるインクセットであって、請求項1〜13のいずれかに記載のインク組成物を構成成分として含んでなることを特徴とするインクセット。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれかに記載のインク組成物を含んでなることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項16】
請求項14に記載のインクセットを一体的に又は独立に収容してなることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項17】
インク組成物の液滴を吐出し、該液滴を記録媒体に付着させて記録を行うインクジェット記録方法であって、請求項14に記載のインクセット又は請求項15または16に記載のインクカートリッジを用いて記録することを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項18】
請求項17に記載のインクジェット記録方法によって印刷されたことを特徴とする記録物。

【公開番号】特開2009−298966(P2009−298966A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157029(P2008−157029)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】