説明

インク組成物およびこれを作製する方法

アニオン性アクリラートコポリマー結合剤、酸化自己分散型顔料および水性ビヒクルを含むインク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
概して本発明は、インク組成物及びこれの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷もしくは記録システムは、たとえば紙のような印刷媒体へ像を形成する効果的な方法として用いられる。一般的に、インクの液滴は、インクジェット記録システムによって高速でノズルから紙上に放出され、その上に像を作成する。一般に、審美的に美しい印刷性能かつ長続きする印刷性能の両方を示す像(たとえばグラフィック、テキストおよび/もしくはそれらの組み合わせ)を印刷媒体上に形成するインクジェットインクを用いることが望ましい。そのような印刷性能の例は、印刷品質(例えば、光学濃度、彩度および/もしくはその類のもの)ならびに耐久性(例えば、水水堅牢度、耐水性、退色耐性、耐久性、酸およびアルカリハイライトマーカーによるスメアへの耐性および/もしくはその類のもの)を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、いくつかの場合、インクが印刷媒体へと付着するとき、印刷品質とインクの耐久性との間でのトレードオフ(trade off)が起こるかも知れない。たとえば、あるインクは実質的に優れた光学濃度を持つが、水およびハイライトマーカーによるスメアに対する実質的に貧弱な耐性を示す。また他の例では、あるインクは水およびハイライトマーカーによるスメアに対する実質的に耐性であるが、比較的貧弱な光学濃度を持つ。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の実施態様の特徴および利点は、以下の詳細な記載および図への参照によって明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】図1は、さまざまな印刷媒体へと印刷されたインク組成物の二つの実施態様の光学濃度の測定結果を描写するグラフである。
【図2】図2は、インク組成物の二つの実施態様のそれぞれ異なるサンプルの、うつったインクのパーセントの測定結果を描写するグラフである。
【図3】図3は、サンプルのインクBならびに対照のインクC、DおよびEの、平均光学濃度対シングルパスの平均スメアを描写するグラフである。
【図4】図4は、サンプルのインクBならびに対照のインクC、DおよびEの、平均光学濃度対ダブルパスの平均スメアを描写するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
ここに開示されるインク組成物の実施態様は、有利にも十分に耐久性であり、非常に高い光学濃度を示し、そして非常に優れた印刷品質を示す。アニオン性アクリラートコポリマー結合剤と酸化自己分散型顔料との組み合わせが、向上した耐久性、光学濃度および印刷品質に寄与すると信じられている。インクの実施態様は、任意のインクジェット印刷プロセスに用いられ得、特に熱インクジェット印刷における使用に適するであろう。
【0007】
ここに開示されるとき、インク組成物は、水性インクビヒクル(Vehicle)中にアニオン性アクリラートコポリマー結合剤および酸化自己分散型顔料を含有する。
【0008】
インク組成物において用いられるアニオン性アクリラートコポリマー結合剤は、一般に式[CHR−CR’−COOR’’]によって表わされる。コポリマーの分子量は変化すると理解されよう。一実施態様において、nは10から1000を超える範囲であり、そしてR、R’およびR’’はそれぞれ、水素、アルキル基、アリール基またはそれらの組み合わせより選択される。R、R’およびR’’の好適な官能基の他の非限定的な例は、ベンゾアート、カルボキシラート、スルホナート、ホスファート、ボラートおよび/もしくはそれらの組み合わせを含む。任意の官能基が、固有の特性を持つコポリマーをもたらすために選択され得る。一つもしくはそれ以上の官能基がコポリマー鎖の骨格に沿って選択的に配置され得ることは理解されよう。いかなる理論にとらわれることなく、生じるコポリマー結合剤の実施態様は、可溶性、ならびに印刷媒体上に定着するときの該結合剤を含むインクの水およびスメア耐性を思いがけなく、そして予想に反して向上させるような親水性/疎水性バランスを持つように定められる。
【0009】
一実施態様において、コポリマー結合剤は、メチルトリメチルシリルジメチルケトンアセタールコポリマー、シラン化ポリ(ビニルアルコール)、エトキシトリエチレングリコールメタクリラート、テトラブチルアンモニウムクロロベンゾアート、トリメチルシリルメタクリラート、1,1−ビス(トリメチルシロキシ)−2−メチルプロペンもしくはそれらの組み合わせより選択される一つもしくはそれ以上の繰り返しユニットを含有する、グラフトもしくはブロックコポリマーのいずれかである。他の実施態様において、コポリマー結合剤はアニオン性アクリラート系基移動重合化コポリマー結合剤である。
【0010】
非限定的例として、インクに存在するコポリマー結合剤の量は、約0.5wt%から約3wt%の範囲である。
【0011】
一実施態様において、インク組成物は、インクビヒクル中に溶解するベンゾアート塩をまた含んでよい。いずれの理論にとらわれることなく、ベンゾアート塩は顔料と相互作用して、顔料の安定性、インクの耐久性および印刷性能を改善すると信じられている。好適なベンゾアート塩の非限定的例は、安息香酸アンモニウム、安息香酸アルキルアンモニウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウムおよび/もしくはそれらの組み合わせを含む。一実施態様において、インク組成物中に存在するベンゾアート塩量は、約0.1wt%から約3wt%の範囲である。
【0012】
インク組成物は、酸化自己分散型顔料を着色剤としてさらに含む。ここで用いるとき、用語「顔料」は、それが用いられる液体媒体へと実質的に不溶である着色剤を指す。自己分散型顔料は、表面で化学的に、たとえば、電荷もしくはポリマー基によって修飾されるものを含む。化学的修飾は、顔料が液体中に分散するようにおよび/もしくは実質的に分散したままでいることを助ける。一般的に、自己分散型顔料は、従来型の顔料および染料と比較してより大きな安定性とより小さい粘度とを持つ傾向にあり、それゆえ、ここに開示されるインク組成物の配合において実質的により大きい柔軟性をもたらす。非自己分散型顔料は、液体ビヒクル中にもしくは顔料表面に物理的にコートされた、独立した結合していない分散剤(例えば、ポリマー、オリゴマー、界面活性剤など)を用いる。
【0013】
酸化自己分散型顔料は、オゾン酸化もしくは任意の他の酸化方法を介して形成されることは理解されよう。
【0014】
実施態様において、着色剤の分散は、一つもしくはそれ以上のブラック自己分散型顔料、またはブラック自己分散型顔料とブラック非自己分散型顔料との組み合わせを含む。一実施態様において、インク組成物中に存在するブラック顔料の量は約2wt%から約6wt%の範囲である。ここで概してブラック顔料に言及するが、ここに開示されるインク組成物は任意の他の好適な色の顔料(自己分散型、非自己分散型もしくはそれらの組み合わせ)を含んでよいことは理解されよう。
【0015】
好適なブラック自己分散型顔料の非限定的例は、その全てをここでの参照により組み入れる、2005年2月8日にYehらに特許された米国特許第6,852,156号に記載される。
【0016】
インク組成物の実施態様はまた、インクビヒクルを含む。ここで用いられるとき、用語「インクビヒクル」は、ビヒクルを形成する水と溶媒(および必要ならば添加剤)との混合を示し、ここでアニオン性アクリラートコポリマー結合剤および着色剤分散はインク組成物を形成するために配合される。好適な添加剤の例は、界面活性剤、殺生物剤、緩衝剤、金属イオン封鎖剤、キレート化剤および/もしくはその類のものを含むが、それらには限定されない。非限定的な例において、インクビヒクルは少なくとも一つの溶媒、界面活性剤および水を含む。
【0017】
インクビヒクルにおいて用いられる溶媒は水性もしくは混和性の溶媒である。インク組成物に好適な溶媒の非限定的例は、エトキシ化グリセロール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリジノン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、3−メトキシブタノール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン2,5−ジオール、トリメチロールプロパン、3−ヘキシン−2,5−ジオール、スルホラン、3−ピリジルカルビノール、ピリジン誘導体、およびそれらの組み合わせを含む。一実施態様において、インクにおいて用いられる溶媒の量は約2wt%から約20wt%の範囲である。
【0018】
界面活性剤を、少なくとも一部は、吐出安定性、耐水性およびにじみのようなインクの物理特性の調節における補助のためにインク組成物中に含み得る。一つもしくはそれ以上の界面活性剤は、インクの配合物中に用いられ得る。界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤および/もしくはそれらの組み合わせより選択され得る。
【0019】
好適なアニオン性界面活性剤の非限定的例は、直鎖脂肪酸のナトリウム塩;直鎖脂肪酸のカリウム塩;ココナツ油脂肪酸のナトリウム塩;ココナツ油脂肪酸のカリウム塩;トールオイル脂肪酸のナトリウム塩;トールオイル脂肪酸のカリウム塩;アミン塩;アクリル化ポリペプチド;直鎖アルキルベンゼンスルホナート;高級アルキルベンゼンスルホナート;ベンゼン;トルエン;キシレン;クメンスルホナート;リグノスルホナート;石油スルホナート;N−アシル−n−アルキルタウラート;パラフィンスルホナート;2級n−アルカンスルホナート;アルファオレフィンスルホナート;スルホこはく酸エステル;アルキルナフタレンスルホナート;イセチオナート;硫酸エステル塩;硫酸化ポリオキシエチレン化直鎖アルコール;硫酸化トリグリセリド油;リン酸エステル;ポリリン酸エステル;ペルフルオロ化アニオン性界面活性剤;および/もしくはそれらの混合物を含む。
【0020】
好適なノニオン性界面活性剤の非限定的例は、アルキルフェノールエトキシラート;ポリオキシエチレナート;直鎖アルコールエトキシラート;ポリオキシエチレン化ポリオキシプロピレングリコール;ポリオキシエチレン化メルカプタン;長鎖カルボン酸エステル;天然酸のグリセロールエステル;天然酸のポリグリセリルエステル;脂肪酸のグリセロールエステル;脂肪酸のポリグリセリルエステル;プロピレングリコール;ソルビトールエステル;ポリオキシエチレン化ソルビトールエステル;ポリオキシエチレングリコールエステル;ポリオキシエチレン化脂肪酸;酸化ポリエチレン;ポリエチレングリコール;アルカノールアミン凝縮物;アルカノールアミド;第三級アセチレングリコール;ポリオキシエチレン化シリコーン;N−アルキルピロリドン;アルキルポリグリコシドおよび/もしくはそれらの混合物を含む。
【0021】
好適な両性イオン界面活性剤の非限定的例は、ベータ−N−アルキルアミノプロピオン酸;N−アルキル−ベータ−イミノジプロピオン酸;イミダゾリンカルボキシラート;N−アルキルベタイン、アミンオキシド、スルホベタイン界面活性剤および/もしくはそれらの混合物を含む。
【0022】
他の添加剤もまたインク組成物中に含め得る。ここで用いるとき、用語「添加剤」は、インクの性能、環境効果、審美的効果もしくは他の同類の性質を向上させる作用をするインクの構成要素を指す。ここで上述のとおり、インクの他の好適な添加剤の例は、緩衝剤、pH調整剤、殺生物剤、金属イオン封鎖剤、キレート化剤もしくはその類のものならびに/またはそれらの組み合わせを含む。
【0023】
インクビヒクルのバランスは水を含む。
【0024】
インク組成物の作製実施態様は、インクビヒクルを提供するかもしくは作製するステップ、および結合剤および顔料の分散をインクビヒクルへと添加するステップを含む。一実施態様において、ベンゾアート塩もまた、インクビヒクルへと添加される。非限定的例において、結合剤およびベンゾアート塩はインクビヒクルへと顔料分散の添加以前に添加される。
【0025】
ここに開示されるインク組成物の実施態様を用いる方法の実施態様において、インク組成物は基体の少なくとも一部に定着し、像/印刷を形成する。用いられるインク組成物の量は、少なくとも一部は、所望の形成される像/印刷に依存する。好適なインクジェット印刷技術の非限定的な例は、ドロップ−オン−デマンドインクジェット印刷、より詳細には熱インクジェット印刷を含む。好適なインクジェット印刷技術の他の非限定的例は、圧電インクジェット印刷および連続インクジェット印刷を含む。そのようなインクジェット印刷プロセスのための好適なプリンターは、ポータブルドロップ−オン−デマンドインクジェットプリンター(例えば、手持ちプリンター、腕取り付け可能プリンター、腕取り付け可能プリンターなど)、卓上ドロップ−オン−デマンドインクジェットプリンター、もしくはそれらの組み合わせを含む。好適な基体の非限定的例は、コートされた紙、コートされてない紙、業務文書(例えばカタログ)、ラベル、ポストカード紙、光沢紙、写真用紙、スライドおよび/もしくはその類のもの、ならびに/またはそれらの組み合わせを含む。
【0026】
本開示の実施態様をさらに例示するために、実施例がここにもたらされる。これらの実施例は目的を例示するためにもたらされ、開示される実施態様の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0027】
実施例1
ここに開示される実施態様に従い2つのインクが作製された。第一のインク(インクA)は、インクビヒクル中に、E.I.duPont de Nemours and Company、Wilmington,DEによって製造される約0.9wt%のアクリラート基移動重合化(GTP)コポリマー結合剤および約3.5wt%のオゾン酸化自己分散化ブラック顔料を含んだ。インクビヒクルは、2−ピロリドン、LEG−1、1,5−ペンタンジオールおよび水の溶媒系を含んだ。インクビヒクルは、エトキシ化アルコール界面活性剤もまた含んだ。第二のインク(インクB)は、インクAと類似の配合を有したが、インクBは少し多い顔料の装填(約3.75wt%)を有し、0.2wt%のアンモニウムベンゾアートを含んだ。
【0028】
インクAおよびBは、HP DESKJET6540プリンターを用いて多くの普通紙へと印刷された。紙は、Hewlett Packard(以下「HP」)Advanced papar(Adv)、HP All−in−One paper(AIO)、Data Copy paper(DC)、HP Color Inkjet paper(HPCIJ)、HP Multipurpose paper(HPMP)、HP BrightWhiter paper(HPBW)、Gilbert Bond paper(GBND)、Kodak BrightWhite paper(KBW)、Hammermill copy paper(HamCo)、Microprint Multisystems papar(MMS)、Flagship Multipurpose paper(Flagshi)、HP Everyday Inkjet paper(HPEI)、JK copier paper(JKC)、Hansol Multipurpose PPC papre(HPPC)、Golden Star Multipurpose paper(GOISTAR)、Oji Sunace PPC paper(Sunace)、Hokuetsu Kin Mari paper(HKM)、Double A Premium paper(DA)、PaperOne all purpose paper(POAP)、IQ Allround paper(IQAA)、HP Office paper(HPO、図1のx軸に沿った第一の表出は紙の一領域であり、図1のx軸に沿った第二の表出は紙の他の領域である)、HP Printing paper(HPP)、HP BrightWhite80Gsmpaper(HPBW、図1のx軸に沿う第二の表出)Multicopy Original White paper(MC)、Stein Beis Recyconomic paper(SBR)、Rey Matt paper(RM)、First choice multiuse(FCMU)、Classic laid imaging(CLI)、Navigator soporset preprint(NSPP)およびUPM Office Multifunction(UPMO)を含んだ。略号は図1において紙を認識するのに用いられるものと対応する。
【0029】
それぞれの媒体上に印刷されたインクAおよびBの光学濃度がGreytag Macbeth Densitometerを用いて測定された。すぐ上に提供されるそれぞれの紙に対する光学濃度の結果は図1にグラフとして描かれる。
【0030】
図1に示されるように、インクAおよびBの両方とも比較的高い光学濃度を示した。この実施例において、より高い数字がより高い光学濃度に対応し、そして一般的に、1.3と等しいかもしくはそれ以上の光学濃度が高いと見なされた。これらの結果は、ここに開示されるインクを用いて印刷される像は、比較的暗く、もっとも少ないブラック対カラーのにじみを持ち、優れた耐水性を持ち、酸およびアルカリのスメアに対する優れた抵抗性を持ちおよび/もしくはそれらの組み合わせであることを示す。インクB(すなわちアンモニウムベンゾアートを含むインク)の光学濃度は、インクAの光学濃度よりも少し高かったが、光学濃度は非常に似ていた。このように、インクAおよびBは望ましい印刷品質を示す。
【0031】
ハイライトマーカー耐性およびスメアに関するインクの耐久性はまた、インクAおよびBに対して評価された。これらのインクは、例えばHP Advanced papar、HP BrightWhiter paper、HP All−in−One paper、Data Copy paperおよびGilbert Bond paperのような広範囲の種類の普通紙へと印刷された。インクの耐久性を評価するために用いられるハイライトマーカーは、Stanford Accent Fiber tip highlighters、Sharpie Accent Fiber tip highlighters、Avery Hi−Liter Plastic Nib highlighters、Sharpie Accent Comfort Grip highlighters、Staple brand highlighters、Sharpie Plastic Nib highlighters、Bic Bright liner highlighters、Stabilo Boss highlighters、Zebra Zazzle highlightersおよびFaber−Castell Textliner highlightersを含んだ。印刷物は、それぞれの印刷媒体へのインク印刷後、約5分後および約1時間後のシングルパスおよびダブルパスのハイライトマーカーのスメアで試験された。印刷された領域から印刷されなかった領域へとうつったかもしくはスメアされたインクはGreytag Macbeth Densitometerによって測定された。これらの結果は図2にグラフで描写される。図2に示されるように、インクB(すなわちアンモニウムベンゾアート)は、インクAと比較して、ハイライトマーカースメアに対してより耐性である。
【0032】
印刷物はそれらの耐水性を試験された。これは、印刷の約5分後および印刷の約1時間後のそれぞれの印刷媒体の印刷された領域上にわたって水を滴らせることによって達成された。それぞれのサンプルに対して、うつったインクのパーセントがGreytag Macbeth Densitometerを用いて測定され、この結果もまた図2に示された。一般に、うつったパーセントがより低いほど、ハイライトマーカーおよび水に対する耐性がより良い。図2に示されるように、インクBは、インクAと比較されるとき、より高い耐水性を示した。
【0033】
実施例2
実施例1からのインクBはこの実施例においてもまた用いられた。比較例のインクC、DおよびEが(実施例1の)インクAの代わりに用いられた。比較例のインクC、DおよびEは、着色剤としての表面修飾の自己分散型カーボンブラック顔料、溶媒、界面活性剤およびある場合では添加剤を含んだ。比較例のインクのいずれも、ここに開示される実施態様に従う酸化カーボンブラックおよびアンモニウムベンゾアートの組み合わせを含んで配合されなかった。
【0034】
インクBおよび比較例のインクC、DおよびEの光学濃度および耐久性(シングルおよびダブルパスハイライトマーカースメアに関連する)が測定され、そして比較された。インクはGilbert bond paper、HP Multipurpose paper、HP BrightWhite paper、HP Advanced paperおよびHP all−in−one paper上へとHP DESK JET 6540プリンターを用いて印刷された。
【0035】
光学濃度はGreytag Macbeth Densitometerを用いて測定された。印刷物は、印刷媒体へのインク印刷後、約5分後および約1時間後のシングルパスおよびダブルパスハイライトマーカースメアを試験された。
【0036】
光学濃度対シングルパススメアの結果(mOD)は図3に示され、そして光学濃度対ダブルパススメアの結果(mOD)は図4に示される。比較例のインクの全ての結果は、光学濃度とスメアとの間の典型的なトレードオフ、すなわち、高い光学濃度が達成されるとき、スメアが概してより高く、そして低いスメアが達成されるとき、光学濃度が概してより低いということを示した。
【0037】
図3および4に図示されるように、比較例のインクCはより低いスメアおよびより低い光学濃度を持ち、一方で比較例のインクDおよびEはより高い光学濃度およびより高いスメアを持つ。際立った対照として、インクBは高い光学濃度と比較的低いスメアの両方を示した。
【0038】
いくつかの実施態様は詳細に記載されたが、開示された実施態様は修正し得ることは当業者には明らかであろう。それゆえ、先の記述は限定ではなく、例示と見なされるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク組成物であって:
アニオン性アクリラートコポリマー結合剤;
酸化自己分散型顔料;および
水性ビヒクル;
を含有する、インク組成物。
【請求項2】
前記インク組成物中に存在する前記アニオン性アクリラートコポリマー結合剤の量が約0.5wt%から約3wt%の範囲である、請求項1に定義されるインク組成物。
【請求項3】
ベンゾアート塩をさらに含有する、請求項1に定義されるインク組成物。
【請求項4】
前記ベンゾアート塩が、アンモニウムベンゾアート、アルキルアンモニウムベンゾアート、ナトリウムベンゾアート、カリウムベンゾアート、リチウムベンゾアートおよびそれらの組み合わせより選択される、請求項3に定義されるインク組成物。
【請求項5】
前記インク組成物中に存在する前記ベンゾアート塩の量が約0.1wt%から約3wt%の範囲である、請求項3に定義されるインク組成物。
【請求項6】
前記水性インクビヒクルが:
少なくとも一つの溶媒;
界面活性剤;および
水;
を含む、請求項1に定義されるインク組成物。
【請求項7】
前記少なくとも一つの溶媒が、エトキシ化グリセロール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリジノン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、3−メトキシブタノール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン2,5−ジオール、トリメチロールプロパン、3−ヘキシン−2,5−ジオール、スルホラン、3−ピリジルカルビノール、ピリジン誘導体、およびそれらの組み合わせより選択される、請求項6に定義されるインク組成物。
【請求項8】
前記界面活性剤が、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、およびそれらの組み合わせより選択される、請求項6に定義されるインク組成物。
【請求項9】
前記インク組成物が、基体上に定着するときに十分に耐久性であり、かつ非常に望ましい印刷品質を示す、請求項1に定義されるインク組成物。
【請求項10】
前記酸化自己分散型顔料がカーボンブラックである、請求項1に定義されるインク組成物。
【請求項11】
前記アニオン性アクリラートコポリマー結合剤が、以下の式:[CHR−CR’−COOR’’]を持ち、ここでR、R’およびR’’がそれぞれ、水素、アルキル基、アリール基、ベンゾアート、カルボキシラート、スルホナート、ホスファート、ボラートおよびそれらの組み合わせより選択され、そしてここでnが10から1000の範囲である、請求項1に定義されるインク組成物。
【請求項12】
前記アニオン性アクリラートコポリマー結合剤がアクリラート系基移動重合化コポリマー結合剤である、請求項1に定義されるインク組成物。
【請求項13】
前記酸化自己分散型顔料がオゾン酸化されている、請求項1に定義されるインク組成物。
【請求項14】
インク組成物を作製する方法であって、前記方法が:
水性インクビヒクルを提供するステップ;
アニオン性アクリラートコポリマー結合剤を水性インクビヒクルに添加するステップ;および
酸化自己分散型顔料を水性インクビヒクルに添加するステップ;
を含有する、方法。
【請求項15】
ベンゾアート塩を水性インクビヒクルに添加するステップをさらに含有する、請求項14に定義される方法。
【請求項16】
前記アニオン性アクリラートコポリマー結合剤および前記ベンゾアート塩が、前記酸化自己分散型顔料の添加より前に前記水性インクビヒクルへと添加される、請求項15に定義される方法。
【請求項17】
前記ベンゾアート塩が、アンモニウムベンゾアート、アルキルアンモニウムベンゾアート、ナトリウムベンゾアート、カリウムベンゾアート、リチウムベンゾアートおよびそれらの組み合わせより選択される、求項15に定義される方法。
【請求項18】
前記水性インクビヒクルが、
少なくとも一つの溶媒;
界面活性剤;および
水;
を含む、請求項14に定義される方法。
【請求項19】
基体上に印刷を形成する方法であって、前記方法が:
アニオン性アクリラートコポリマー結合剤;
酸化自己分散型顔料;および
水性ビヒクル;
を含む、インクを提供するステップ;そして
前記インクを前記基体上に定着させるステップ
を含有する、方法。
【請求項20】
前記インクがベンゾアート塩をさらに含む、請求項19に定義される方法。
【請求項21】
定着がインクジェット印刷によって達成される、請求項19に定義される方法。
【請求項22】
前記基体が、コートされた普通紙、コートされない普通紙、業務文書、ラベル、ポストカード紙、光沢紙、写真用紙、スライドおよびそれらの組み合わせより選択される、請求項19に定義される方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−535279(P2010−535279A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520115(P2010−520115)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/071361
【国際公開番号】WO2009/058447
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】